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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023085993
(43)【公開日】2023-06-21
(54)【発明の名称】精神的ストレスの予防又は改善剤
(51)【国際特許分類】
   A23L 33/10 20160101AFI20230614BHJP
   A61P 25/20 20060101ALI20230614BHJP
   A61P 25/22 20060101ALI20230614BHJP
   A61P 3/02 20060101ALI20230614BHJP
   A61P 25/24 20060101ALI20230614BHJP
   A61K 31/352 20060101ALI20230614BHJP
   A61K 36/38 20060101ALI20230614BHJP
   A23L 33/105 20160101ALI20230614BHJP
   A61K 131/00 20060101ALN20230614BHJP
【FI】
A23L33/10
A61P25/20
A61P25/22
A61P3/02
A61P25/24
A61K31/352
A61K36/38
A23L33/105
A61K131:00
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021200347
(22)【出願日】2021-12-09
(71)【出願人】
【識別番号】000186588
【氏名又は名称】小林製薬株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100124431
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 順也
(74)【代理人】
【識別番号】100174160
【弁理士】
【氏名又は名称】水谷 馨也
(74)【代理人】
【識別番号】100175651
【弁理士】
【氏名又は名称】迫田 恭子
(72)【発明者】
【氏名】宮島 崇広
(72)【発明者】
【氏名】中田 孝広
【テーマコード(参考)】
4B018
4C086
4C088
【Fターム(参考)】
4B018LB01
4B018LB10
4B018LE02
4B018MD07
4B018MD52
4B018ME14
4B018MF01
4B018MF06
4B018MF14
4C086AA01
4C086AA02
4C086BA08
4C086GA17
4C086MA01
4C086MA04
4C086NA14
4C086ZA05
4C086ZA12
4C086ZC21
4C088AB12
4C088AC04
4C088BA10
4C088CA08
4C088NA14
4C088ZA05
4C088ZA12
4C088ZC21
(57)【要約】
【課題】本発明は、精神的ストレスの予防又は改善剤を提供することを目的とする。
【解決手段】α-マンゴスチンは、精神的ストレスに対する改善作用を発揮できるため、精神的ストレスの予防又は改善剤の有効成分として使用できる。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
α-マンゴスチンを含有する、精神的ストレスの予防又は改善剤。
【請求項2】
α-マンゴスチンとして、マンゴスチンの抽出物及び/又は加工物を含む、請求項1に記載の予防又は改善剤。
【請求項3】
前記精神的ストレスが、精神疾患を伴わない精神的ストレスである、請求項1又は2に記載の予防又は改善剤。
【請求項4】
精神的ストレスが、継続的な精神的ストレスである、請求項1~3のいずれかに記載の予防又は改善剤。
【請求項5】
精神的ストレスを有する者の、継続的な疲れの予防又は改善に使用される、請求項1~4のいずれかに記載の予防又は改善剤。
【請求項6】
前記精神的ストレスを有する者の、他人との付き合いの身体的及び/又は心理的な理由による妨げの予防又は改善に使用される、請求項1~5のいずれかに記載の予防又は改善剤。
【請求項7】
前記精神的ストレスを有する者の、仕事及び/又は日常活動時における心理的な理由による問題の予防又は改善に使用される、請求項1~6のいずれかに記載の予防又は改善剤。
【請求項8】
前記精神的ストレスを有する者の、継続的に神経質で憂鬱な気分の予防又は改善に使用される、請求項1~7のいずれかに記載の予防又は改善剤。
【請求項9】
前記精神的ストレスが、夜間排尿に対する精神的ストレスである、請求項1~4のいずれかに記載の予防又は改善剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、精神的ストレスの予防又は改善剤に関する。
【背景技術】
【0002】
現代社会は、科学技術の高度発達等により、便利で快適な生活が実現した一方で、競争及び管理の激化により、ストレスが過負荷となり精神的に支障をきたしやすくなっている。精神的なストレスは生活の質を低下させる要因となるため、長寿社会をより快適に送るための障壁となる。
【0003】
ストレスに対する対処法としては、抗不安薬、睡眠薬等の抗ストレス薬物を服用してストレスに晒されたときの心身の反応を一時的に緩和することが有効な手段と考えられている。代表的な抗不安薬であるベンゾジアゼピン系の薬物は、大脳辺縁様体-新皮質系に対する直接作用が少ないため、意識水準に影響を与えずに不安・緊張・抑うつ及び筋緊張等を軽減すると報告されている。
【0004】
近年では、食品として摂取可能な抗ストレス成分についても研究されており、特に、γ-アミノ酪酸(GABA)が抗ストレス成分として注目されている。GABAは、小腸で吸収されて血中に取り込まれ、末梢の自律神経系においてノルアドレナリン等の興奮系ホルモンの放出を抑制し、副交感神経を亢進する事で、事務的作業による一時的・心理的なストレスを低減すると報告されている(非特許文献1~4)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】Int.J.Food Sci.Nutr.,60, 106-113,(2009)
【非特許文献2】J.Jpn.Soc.Nutr.Food Sci.,61, 129-133,(2008)
【非特許文献3】J.Physiol.Anthropol.,28, 101-107,(2009)
【非特許文献4】BioFactors 26,201-208,(2006)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
抗ストレス薬物は、医師の指導の元で慎重に適用する必要があり、また、連続的な投与による副作用が大きい。一方、GABAは、事務的作業に伴う一時的なストレスといったように、一時的な精神的ストレスの緩和に有効とされるが、ストレスにより継続的に低下している心理状態の改善に対して有効に適用されるものではない。従って、ストレスにより継続的に低下している心理状態を改善するには、結局、ストレスの原因を減らすことしか解決方法がなく、しかもそれは現状困難である。
【0007】
そこで、本発明は、精神的ストレスの予防又は改善剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、前記課題を解決すべく鋭意検討を行ったところ、α-マンゴスチンが、精神的ストレスに対する改善作用を発揮でき、精神的ストレスの予防又は改善剤の有効成分として使用できることを見出した。本発明は、この知見に基づいて、更に検討を重ねることにより完成したものである。
【0009】
即ち、本発明は、精神的ストレスの予防又は改善用途に関し、下記に掲げる態様の発明を提供する。
項1. α-マンゴスチンを含有する、精神的ストレスの予防又は改善剤。
項2. α-マンゴスチンとして、マンゴスチンの抽出物及び/又は加工物を含む、項1に記載の予防又は改善剤。
項3. 前記精神的ストレスが、精神疾患を伴わない精神的ストレスである、項1又は2に記載の予防又は改善剤。
項4. 精神的ストレスが、継続的な精神的ストレスである、項1~3のいずれかに記載の予防又は改善剤。
項5. 精神的ストレスを有する者の、継続的な疲れの予防又は改善に使用される、項1~4のいずれかに記載の予防又は改善剤。
項6. 前記精神的ストレスを有する者の、他人との付き合いの身体的及び/又は心理的な理由による妨げの予防又は改善に使用される、項1~5のいずれかに記載の予防又は改善剤。
項7. 前記精神的ストレスを有する者の、仕事及び/又は日常活動時における心理的な理由による問題の予防又は改善に使用される、項1~6のいずれかに記載の予防又は改善剤。
項8. 前記精神的ストレスを有する者の、継続的に神経質で憂鬱な気分の予防又は改善に使用される、項1~7のいずれかに記載の予防又は改善剤。
項9. 前記精神的ストレスが、夜間排尿に対する精神的ストレスである、項1~4のいずれかに記載の予防又は改善剤。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、α-マンゴスチンを使用することにより、精神的ストレスの改善作用を複合的に発揮させることができるので、精神的ストレスを効果的に予防又は改善することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の精神的ストレスの予防又は改善剤の摂取による、SF-8に規定の8つの下位尺度の測定結果に基づく総合スコア(精神的健康をあらわすサマリースコア)を示す。
図2】本発明の精神的ストレスの予防又は改善剤の摂取による、SF-8に規定の活力の測定結果を示す。
図3】本発明の精神的ストレスの予防又は改善剤の摂取による、SF-8に規定の社会生活機能の測定結果を示す。
図4】本発明の精神的ストレスの予防又は改善剤の摂取による、SF-8に規定の日常役割機能(精神)の測定結果を示す。
図5】本発明の精神的ストレスの予防又は改善剤の摂取による、SF-8に規定の心の健康の測定結果を示す。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の精神的ストレスの予防又は改善剤は、α-マンゴスチンを有効成分として含むことを特徴とする。以下、本発明の精神的ストレスの予防又は改善について詳述する。
【0013】
[α-マンゴスチン]
本発明の精神的ストレスの予防又は改善剤は、有効成分としてα-マンゴスチンを含む。
【0014】
α-マンゴスチンとは、マンゴスチン(Garcinia mangostana)に存在するキサントン誘導体である。本発明で使用されるα-マンゴスチンは、マンゴスチン由来のものであってもよく、また微生物工学的手法又は化学合成により製造されたものであってもよい。本発明で使用されるα-マンゴスチンは、精製品、粗精製品、又は未精製品のいずれであってもよい。
【0015】
また、本発明の精神的ストレスの予防又は改善剤における有効成分として、α-マンゴスチンを含むマンゴスチンの抽出物及び/又は加工物を使用してもよい。
【0016】
マンゴスチン抽出物は、マンゴスチンを抽出処理することにより得られるエキスである。
【0017】
マンゴスチン抽出物の製造において、抽出原料としてマンゴスチンの果皮を好適に使用できるが、果皮以外に、果実、果汁、茎、葉、枝、枝葉、幹、樹皮、根皮、根、種子等が含まれていてもよい。前記抽出原料は、生の状態であってもよいが、必要に応じて、粉砕、切断、蒸熱、揉捻、乾燥、焙煎等の前処理に供されていてもよい。
【0018】
また、マンゴスチン抽出物を得るための抽出処理については、植物抽出物の製造に使用される一般的な抽出手法であればよく、例えば、溶媒抽出処理、超臨界抽出処理、水蒸気蒸留処理等が挙げられる。これらの中でも、好ましくは溶媒抽出処理が挙げられる。溶媒抽出処理に使用される抽出溶媒としては、水;メタノール、エタノール、n-プロパノール、イソプロパノール、n-ブタノール等の炭素数1~4の低級アルコール;プロピレングリコール、1,3-ブチレングリコール等の多価アルコール;アセトン等のケトン類;テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル等の鎖状及び環状エーテル類;ポリエチレングリコール等のポリエーテル類;これらの混合液等が挙げられる。これらの抽出溶媒の中でも、好ましくは、水、低級アルコール、及びこれらの混合液、より好ましくは水、エタノール、及び含水エタノール、更に好ましくは含水エタノールが挙げられる。含水エタノールにおけるエタノール含有量としては、例えば、10~95容量%、好ましくは50~95容量%、より好ましくは70~90容量%が挙げられる。
【0019】
溶媒抽出処理は、抽出溶媒中にマンゴスチンの抽出対象部位を浸漬又は還流させて行えばよい。抽出処理後に固液分離により固形物を除去することにより、α-マンゴスチンを含むマンゴスチン抽出液が得られる。得られた抽出液は、そのまま液状エキスとして使用してもよいが、必要に応じて、一部又は全ての溶媒を除去して濃縮エキス又は乾燥エキスとして使用してもよい。
【0020】
また、マンゴスチンの加工物は、α-マンゴスチンを含むマンゴスチン部位の加工物であればよく、マンゴスチンの果皮の加工物であることが好適であるが、果皮以外に、果実、果汁、茎、葉、枝、枝葉、幹、樹皮、根皮、根、種子等が含まれている加工物であってもよい。また、マンゴスチンの加工物は、α-マンゴスチンを含むマンゴスチン部位の乾燥物、破砕物等が挙げられる。
【0021】
[剤型・形態]
本発明の精神的ストレスの予防又は改善剤の剤型については、特に限定されず、固体状、半固体状、又は液体状のいずれであってもよい。
【0022】
本発明の精神的ストレスの予防又は改善剤は、経口摂取又は経口投与される形態であることが好ましいが、経腸投与又は注射投与される形態のものであってもよい。
【0023】
本発明の精神的ストレスの予防又は改善剤の形態として、具体的には、飲食品及び内服用医薬品(内服用の医薬部外品を含む)が挙げられる。
【0024】
本発明の精神的ストレスの予防又は改善剤を食品の形態にする場合(即ち、精神的ストレスの予防又は改善剤用の食品として提供する場合)、前記有効成分を、そのまま又は他の食品素材や添加成分と組み合わせて所望の形態に調製すればよい。このような食品としては、一般の飲食品の他、保健機能食品(特定保健用食品、機能性表示食品、栄養機能食品、サプリメント等を含む)、病者用食品等の食品等が挙げられる。これらの食品の形態として、特に限定されないが、具体的には、カプセル剤(ソフトカプセル剤、ハードカプセル剤)、錠剤、顆粒剤、粉剤、ゼリー剤、リポソーム製剤等のサプリメント;グミ、キャンディー、ゼリー等の嗜好品;茶飲料、栄養ドリンク、果汁飲料、炭酸飲料、乳酸飲料等の飲料;等が挙げられる。これらの食品の中でも、好ましくはサプリメントが挙げられる。
【0025】
本発明の精神的ストレスの予防又は改善剤を食品の形態にする場合、食品におけるα-マンゴスチンの含有量は、食品の種類、対象者の体格、年齢、症状等を勘案して、1日当たりの摂取・投与量を踏まえて適宜設定すればよいが、例えば、1~80重量%、好ましくは3~50重量%、より好ましくは5~15重量%、さらにより好ましくは6~12重量%が挙げられる。ここで、α-マンゴスチンの含有量は、マンゴスチンの抽出物又は加工物を使用する場合であれば、当該抽出物又は加工物中のα-マンゴスチン量に換算した値である。
【0026】
[用途・用量]
本発明の精神的ストレスの予防又は改善剤は、精神的ストレスの予防が求められる者又は精神的ストレスの症状を有する者に対して使用され、好ましくは、精神的ストレスの症状を有する者に対して使用される。
【0027】
本発明が適用される精神的ストレスは、好ましくは、統合失調症等の精神疾患を伴わない。また、本発明が適用される精神的ストレスは、好ましくは継続的な精神的ストレスである。なお、本発明において、継続的とは、具体的には2週間以上、好ましくは3週間以上、より好ましくは1か月以上継続することを指す。なお、継続する期間の上限としては特に限定されず、好ましくは精神疾患を招来しない限度であればよく、例えば、3年以内、1年以内又は半年以内が挙げられる。
【0028】
本発明が適用される上記精神的ストレスの具体的な症状としてはとくに限定されず、精神的健康状態の低下を示す状態であればよい。例えば、精神的ストレスによる、身体機能の低下(具体的には、入浴、着替え等の活動を自力で行うことの困難性の発生が挙げられる。)の低下;身体面での日常的役割機能の低下(具体的には、仕事及び/又は日常活動をした時に生じる身体的な理由による問題が挙げられる。);体の痛み(具体的には、通常の仕事が非常にさまたげられるほどの非常に激しい体の痛みが挙げられる。);全体的健康感の低下(例えば、健康状態が良くない状態又は徐々に悪くなっていく状態が挙げられる。);活力の低下(例えば、継続的に疲れを感じる、又は更に疲れ果てる状態が挙げられる。);社会的生活機能の低下(例えば、他人(具体的には、家族、友人、近所の人、その他の仲間)との付き合いの身体的及び/又は心理的な理由による妨げが挙げられる。);精神面での日常的役割機能の低下(具体的には、仕事及び/又は日常活動をした時に生じる精神的な理由による問題が挙げられる。);心の健康状態の低下(具体的には、継続的に神経質で憂鬱な気分であることが挙げられる。)等が挙げられ、心理的理由、精神的理由、又は神経質で憂鬱な気分としては、例えば煩わしさが挙げられる。本発明の精神的ストレスの予防又は改善剤は、好ましくは、精神的ストレスを有する者の、上記具体的な症状の予防又は改善に用いることができる。
【0029】
さらに、本発明の精神的ストレスの予防又は改善剤は、上記精神的ストレスの具体的な症状の中でも、より好ましくは、精神的ストレスを有する者の、活力の低下(好ましくは、継続的に疲れを感じる、又は更に疲れ果てる状態が挙げられる。);社会的生活機能の低下(好ましくは、他人(具体的には、家族、友人、近所の人、その他の仲間)との付き合いの身体的及び/又は心理的な理由による妨げが挙げられる。);精神面での日常的役割機能の低下(好ましくは、仕事及び/又は日常活動をした時に生じる精神的な理由による問題が挙げられる。);並びに/若しくは心の健康状態の低下(好ましくは、継続的に神経質で憂鬱な気分であることが挙げられる。)に対して、それらの症状の予防又は改善に用いることができる。
【0030】
上記の精神的ストレスの具体的な症状の程度は、当業者間で広く使用されている健康関連QOL(HRQOL: Health Related Quality of Life)尺度であるSF-8TM(SF8 Health Survey)に規定されるスコアリング方法により測定することができる。
【0031】
また、本発明が適用される上記精神的ストレスの別の例としては、夜間排尿に対する精神的ストレスも挙げられる。夜間排尿に対する精神的ストレスは、夜間就寝中に起きて排尿に行かなければならないことの煩わしさを過度に感じる精神的ストレスであり、日常生活において支障度が高いため問題となる心理状態として知られている。このため、本発明の精神的ストレスの予防又は改善剤は、夜間排尿に対する精神的ストレスを解消し、夜間排尿行為を心理的に受け入れることを可能にする目的で用いることができる。
【0032】
本発明の精神的ストレスの予防又は改善剤の適用対象者は、ヒトを含む哺乳動物であればよいが、好ましくはヒトが挙げられる。
【0033】
本発明の精神的ストレスの予防又は改善剤の摂取・投与量としては、例えば、1日当たりのα-マンゴスチン換算量で、1~2000mg程度、好ましくは30~300mg程度、より好ましくは60~200mg、さらに好ましくは75~90mg程度が挙げられる。ここで、α-マンゴスチンの1日当たりの摂取・投与量は、マンゴスチンの抽出物又は加工物を使用する場合であれば、当該抽出物又は加工物中のα-マンゴスチン量に換算した値である。本発明の精神的ストレスの予防又は改善剤は、1日当たり1回、又は1日当たり複数回に分けて摂取又は投与すればよいが、好ましくは、1日当たり1~5回である。
【実施例0034】
以下、実施例を挙げて本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0035】
試験例1:ヒトにおける精神的ストレス改善効果の検証-1
表1示す組成の内容物を含むカプセル剤を調製した。用いたマンゴスチン抽出物は、マンゴスチンの果皮を含水エタノールで抽出処理して得られた抽出物(粉末状)であり、乾燥重量換算でα-マンゴスチンを20重量%含むものである。また、実施例1のカプセル剤の3粒当たりに含まれるマンゴスチン果皮抽出物は400mgでありα-マンゴスチン量として80mgである。
【0036】
過去1カ月以上にわたる継続的な精神的ストレスを訴える被験者44名をランダムに2群(αマンゴスチン摂取群23名及びプラセボ群21名)に分け、αマンゴスチン摂取群に実施例1のカプセル剤(精神的ストレスの予防又は改善剤)を、プラセボ群に比較例1のカプセル剤(プラセボ)を、1日3粒、1日1回の頻度で8週間摂取させた。なお、本試験の被験者には、統合失調症等の精神疾患の人は含まれていない。
【0037】
【表1】
【0038】
SF-8TM(SF8 Health Survey)のスタンダード版(振り返り期間が過去1ヵ月)を使用し、カプセル剤摂取の前後における、SF-8に規定の8つの下位尺度(表2)として示される精神的ストレス症状を、SF-8日本語版マニュアルに基づいてスコアリングした。
【0039】
【表2】
【0040】
図1に、SF-8に規定される8つの下位尺度の測定結果に基づく総合スコア(精神的健康をあらわすサマリースコア)に基づく結果を示し、図2図5に、8つの下位尺度のうち、それぞれ、活力、社会生活機能、日常役割機能(精神)、及び心の健康のスコアに基づく結果を示す。なお、図1図5では、各群における各測定項目について、カプセル剤摂取8週間後のスコアの平均値からカプセル剤摂取前のスコアの平均値を差し引いた値をスコアの変化量として算出し、プラセボ群の変化量を100%とした場合におけるαマンゴスチン摂取群の変化量を算出した値を示した。
【0041】
図1に示されるとおり、本発明の精神的ストレスの予防又は改善剤の摂取により、精神的健康をあらわすサマリースコアが向上したため、精神的ストレスを効果的に改善したことが認められた。
【0042】
また、図2に示される通り、本発明の精神的ストレスの予防又は改善剤の摂取により、SF-8に規定される活力スコアが向上したため、精神的ストレスを有する者の、継続的な疲れを効果的に改善したことが認められた。
【0043】
図3に示される通り、本発明の精神的ストレスの予防又は改善剤の摂取により、SF-8に規定される社会生活機能スコアが向上したため、精神的ストレスを有する者の、他人との付き合いの身体的及び/又は心理的な理由による妨げを効果的に改善したことが認められた。
【0044】
図4に示される通り、本発明の精神的ストレスの予防又は改善剤の摂取により、SF-8に規定される日常役割機能(精神)スコアが向上したため、精神的ストレスを有する者の、仕事及び/又は日常活動時における心理的な理由による問題を効果的に改善したことが認められた。
【0045】
図5に示される通り、本発明の精神的ストレスの予防又は改善剤の摂取により、SF-8に規定される心の健康スコアが向上したため、精神的ストレスを有する者の、継続的に神経質で憂鬱な気分を効果的に改善したことが認められた。
【0046】
試験例2:ヒトにおける精神的ストレス改善効果の検証-2
1か月以上前から夜間の排尿へ行く煩わしさを過度に感じる精神的ストレスを主訴とする被験者10名に、試験例1の実施例1のカプセル剤を、1日3粒、1日1回の頻度で8週間摂取させた。夜間の排尿へ行く煩わしさの精神的ストレス改善度について4段階評価(4:夜間排尿が気にならないくらい著明改善、3:中等度改善、2:軽度改善、1:不変)を行ったところ、10名中8名の改善度が中等度改善以上であった。このことから、本発明の精神的ストレスの予防又は改善剤の摂取により、夜間排尿に対する精神的ストレスを効果的に改善し、夜間排尿行為を心理的に受け入れることができたことが認められた。
図1
図2
図3
図4
図5