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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023085994
(43)【公開日】2023-06-21
(54)【発明の名称】乳化組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/245 20060101AFI20230614BHJP
   A61K 8/41 20060101ALI20230614BHJP
   A61K 31/135 20060101ALI20230614BHJP
   A61Q 19/00 20060101ALI20230614BHJP
   A61K 9/10 20060101ALI20230614BHJP
   A61K 47/18 20170101ALI20230614BHJP
   A61K 31/4166 20060101ALI20230614BHJP
   A61P 17/00 20060101ALI20230614BHJP
   A61P 29/00 20060101ALI20230614BHJP
   A61K 8/49 20060101ALI20230614BHJP
   A61K 8/06 20060101ALI20230614BHJP
【FI】
A61K31/245
A61K8/41
A61K31/135
A61Q19/00
A61K9/10
A61K47/18
A61K31/4166
A61P17/00
A61P29/00
A61K8/49
A61K8/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021200348
(22)【出願日】2021-12-09
(71)【出願人】
【識別番号】000186588
【氏名又は名称】小林製薬株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100124431
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 順也
(74)【代理人】
【識別番号】100174160
【弁理士】
【氏名又は名称】水谷 馨也
(74)【代理人】
【識別番号】100175651
【弁理士】
【氏名又は名称】迫田 恭子
(72)【発明者】
【氏名】中嶋 安弓
【テーマコード(参考)】
4C076
4C083
4C086
4C206
【Fターム(参考)】
4C076AA09
4C076AA16
4C076BB31
4C076CC04
4C076CC18
4C076DD08
4C076DD09
4C076DD38
4C076DD43
4C076DD46
4C076DD49
4C076DD54
4C076EE23
4C076EE32
4C076FF36
4C076FF63
4C076GG45
4C083AC022
4C083AC122
4C083AC182
4C083AC302
4C083AC422
4C083AC432
4C083AC551
4C083AC552
4C083AC681
4C083AC682
4C083AD272
4C083CC05
4C083DD31
4C083DD33
4C083DD41
4C083EE01
4C083EE13
4C083FF05
4C086AA01
4C086BC38
4C086MA03
4C086MA04
4C086MA22
4C086MA28
4C086MA63
4C086NA03
4C086ZA89
4C086ZB11
4C206AA01
4C206FA05
4C206FA33
4C206KA01
4C206MA03
4C206MA04
4C206MA42
4C206MA48
4C206MA83
4C206NA03
4C206ZA89
4C206ZB11
(57)【要約】
【課題】本発明は、ウフェナマートを含む乳化組成物の乳化安定性を向上させる新たな製剤処方を提供することを目的とする。
【解決手段】ウフェナマートを含む乳化組成物に、ジフェンヒドラミンとアラントイン及びその誘導体よりなる群から選択される少なくとも1種とを配合すると、乳化組成物の乳化安定性が向上する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)ウフェナマートと、(B)ジフェンヒドラミンと、(C)アラントイン及びその誘導体よりなる群から選択される少なくとも1種とを含有する、乳化組成物。
【請求項2】
油性基剤の含有量が0.05~20重量%である、請求項1に記載の乳化組成物。
【請求項3】
前記(A)成分1重量部に対する前記(B)成分の含有量が、0.05~1重量部である、請求項1又は2に記載の乳化組成物。
【請求項4】
前記(A)成分1重量部に対する前記(C)成分の含有量が、0.01~0.5重量部である、請求項1~3のいずれかに記載の乳化組成物。
【請求項5】
pHが4~6である、請求項1~4のいずれかに記載の乳化組成物。
【請求項6】
水中油型乳化組成物である、請求項1~5のいずれかに記載の乳化組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ウフェナマートを含み、優れた乳化安定性を発現する乳化組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
ウフェナマートは、医薬品の非ステロイド系抗炎症剤として外用剤に広く使用されている。しかしながら、ウフェナマートは水難溶性の成分であるため、水を含む外用医薬品等の製剤中に安定に配合することは容易ではない。
【0003】
一般的に、水難溶性の成分を外用組成物に安定に配合する技術は成分に応じて様々に検討されている。ウフェナマートに関しては、特許文献1に、(a)ウフェナマートと、(b)グリセリン脂肪酸モノエステルと、(c)ポリオキシエチレン(2~50モル付加)アルキルエーテルを含み、(b)成分/(c)成分=0.1~1.3(質量比)の割合で含有する皮膚外用医薬乳化製剤が、ウフェナマートを安定に配合できることが記載されている。また、特許文献2には、(A)グリチルレチン酸、グリチルリチン酸、これらの誘導体、及びこれらの塩よりなる群から選択される少なくとも1種、並びに(B)ウフェナマートと共に、(C)ジフェンヒドラミン及び/又はその塩、並びに(D)25℃で固体の高級アルコールを配合することで、乳化安定性が向上することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2011-219369号公報
【特許文献2】特開2018-197201号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
これまでも、ウフェナマートを含む乳化組成物の乳化安定性を向上させるための製剤処方は検討されてきたが、それぞれの製剤技術に必要な特定組成を有しない乳化組成物や、新たな基剤組成を有する乳化組成物についても、ウフェナマートを含む乳化組成物の乳化安定性を向上できる新たな製剤処方が望まれる。
【0006】
そこで、本発明の目的は、ウフェナマートを含む乳化組成物の乳化安定性を向上させる新たな製剤処方を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、前記課題を解決すべく鋭意検討を行ったところ、ウフェナマートを含む乳化組成物において、ジフェンヒドラミンとアラントイン類とを組み合わせて配合することで、乳化安定性を向上できることを見出した。本発明で見いだされた製剤処方による乳化安定性は非常に高いため、本来的に乳化安定性が悪く相分離しやすい、油性基剤が少ない基剤組成の場合であっても、効果的に乳化安定性を向上できることも見出した。本発明は、これらの知見に基づいて更に検討を重ねることにより完成したものである。
【0008】
即ち、本発明は、下記に掲げる態様の発明を提供する。
項1. (A)ウフェナマートと、(B)ジフェンヒドラミンと、(C)アラントイン及びその誘導体よりなる群から選択される少なくとも1種とを含有する、乳化組成物。
項2. 油性基剤の含有量が0.05~20重量%である、項1に記載の乳化組成物。
項3. 前記(A)成分1重量部に対する前記(B)成分の含有量が、0.05~1重量部である、項1又は2に記載の乳化組成物。
項4. 前記(A)成分1重量部に対する前記(C)成分の含有量が、0.01~0.5重量部である、項1~3のいずれかに記載の乳化組成物。
項5. pHが4~6である、項1~4のいずれかに記載の乳化組成物。
項6. 水中油型乳化組成物である、項1~5のいずれかに記載の乳化組成物。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、ウフェナマートを含む乳化組成物の乳化安定性を向上させる新たな製剤処方が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の乳化組成物は、(A)ウフェナマート(以下において、「(A)成分」とも表記する。)と、(B)ジフェンヒドラミン(以下において、「(B)成分」とも表記する。)と、(C)アラントイン及びその誘導体よりなる群から選択される少なくとも1種(以下において、「(C)成分」又は「アラントイン類」とも表記する。)とを含有することを特徴とする。以下、本発明の乳化組成物について詳述する。
【0011】
(A)ウフェナマート
本発明の乳化組成物は、(A)成分としてウフェナマートを含有する。ウフェナマートは、ウフェナマートは、フルフェナム酸ブチルとも呼ばれる脂溶性化合物であり、非ステロイド性抗炎症薬として公知の薬剤である。
【0012】
本発明の乳化組成物において、(A)成分の含有量については、発揮させるべき薬効等に応じて適宜設定されるが、例えば1~20重量%、好ましくは1~8重量%、更に好ましくは3~6重量%、さらに好ましくは4.5~5.5重量%が挙げられる。
【0013】
(B)ジフェンヒドラミン
本発明の乳化組成物は、(B)成分としてジフェンヒドラミンを含有する。(A)成分を含む乳化組成物は本来的に乳化安定性が悪いが、本発明の(A)成分を含む乳化組成物は、(B)成分を(C)成分と組み合わせて配合することで、優れた乳化安定性を発現できる。
【0014】
ジフェンヒドラミンは脂溶性化合物であり、抗ヒスタミン作用を有することが知られている公知の薬剤である。
【0015】
本発明の乳化組成物における(B)成分の含有量については特に制限されず、付与すべき乳化安定性の程度に応じて適宜設定すればよいが、例えば0.01~5重量%が挙げられる。乳化安定性をより一層効果的に抑制させる観点から、本発明の乳化組成物における(B)成分の含有量として、好ましくは0.1~3重量%、より好ましくは0.5~1.5重量%、さらに好ましくは0.8~1.2重量%が挙げられる。
【0016】
本発明の乳化組成物において、(A)成分に対する(B)成分の比率については、(A)成分及び(B)成分の各含有量に応じて定まるが、(A)成分1重量部に対する(B)成分の含有量として、例えば0.05~1重量部が挙げられる。乳化安定性をより一層高める観点から、(A)成分1重量部に対する(B)成分の含有量として、好ましくは0.1~0.5重量部、より好ましくは0.18~0.35重量部が挙げられる。
【0017】
(C)アラントイン類
本発明の乳化組成物は、(C)成分としてアラントイン及びその誘導体よりなる群から選択される少なくとも1種を含有する。(A)成分を含む乳化組成物は本来的に乳化安定性が悪いが、本発明の(A)成分を含む乳化組成物は、(C)成分を(B)成分と組み合わせて配合することで、優れた乳化安定性を発現できる。
【0018】
アラントインは、5-ウレイドヒダントインとも称される水溶性化合物であり、抗炎症作用、細胞賦活作用、止血作用、殺菌作用、抗潰瘍作用等を有することが知られている公知の薬剤である。
【0019】
アラントインの誘導体としては、薬学的に許容でき且つ水溶性であることを限度として特に制限されないが、具体的には、アラントインクロルヒドロキシアルミニウム、アラントインジヒドロキシアルミニウム等が挙げられる。これらのアラントインの誘導体は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0020】
本発明の乳化組成物において、(C)成分として、アラントイン及びその誘導体の中から、1種を選択して使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。これらの(C)成分の中でも、乳化安定性をより一層向上させる観点から、好ましくはアラントインが挙げられる。
【0021】
本発明の乳化組成物において、(C)成分の含有量については特に制限されず、付与すべき乳化安定性の程度に応じて適宜設定すればよいが、例えば0.01~1重量%が挙げられる。乳化安定性をより一層効果的に抑制させる観点から、本発明の乳化組成物における(C)成分の含有量として、好ましくは0.05~0.5重量%、より好ましくは0.08~0.3重量%、さらに好ましくは0.18~0.25重量%が挙げられる。
【0022】
本発明の乳化組成物において、(A)成分に対する(C)成分の比率については、(A)成分及び(C)成分の各含有量に応じて定まるが、(A)成分1重量部に対する(C)成分の含有量として、例えば0.01~0.3重量部が挙げられる。乳化安定性をより一層高める観点から、(A)成分1重量部に対する(C)成分の含有量として、好ましくは0.03~0.12重量部、より好ましくは0.04~0.08重量部が挙げられる。
【0023】
本発明の乳化組成物において、(B)成分に対する(C)成分の比率については、(B)成分及び(C)成分の各含有量に応じて定まるが、(B)成分1重量部に対する(C)成分の含有量として、例えば0.05~0.5重量部が挙げられる。乳化安定性をより一層高める観点から、(B)成分1重量部に対する(C)成分の含有量として、好ましくは0.08~0.4重量部、より好ましくは0.18~0.3重量部が挙げられる。
【0024】
油性基剤
本発明の乳化組成物は、油相の基剤成分を含む。油性基剤としては薬学的又は香粧学的に許容されることを限度として特に制限されないが、例えば、油類(中鎖脂肪酸トリグリセリド、オリーブ油、サフラワー油、大豆油、つばき油、とうもろこし油、なたね油、ひまわり油、綿実油、落花生油、ラード、スクワラン、魚油等)、鉱物油(流動パラフィン、パラフィン、ゲル化炭化水素、ワセリン等)、ワックス類又はロウ類(ミツロウ、カルナウバロウ、キャンデリラロウ、セレシン、ライスワックス、マイクロクリスタリンワックス等)、エステル油(イソオクタン酸セチル、ミリスチン酸イソプロピル、アジピン酸イソプロピル、セバシン酸ジエチル、セバシン酸イソプロピル、パルミチン酸イソプロピル、パルミチン酸セチル、オレイン酸エチル等)、脂肪酸アルキルエステル、高級脂肪酸(ステアリン酸、オレイン酸、パルミチン酸、ベヘン酸、リノール酸、ラノリン等)、高級脂肪酸エステル(パルミチン酸セチル、パルミチン酸イソプロピル、リノール酸エチル等)、高級アルコール(ステアリルアルコール、セタノール、ベヘニルアルコール、ミリスチルアルコール、オレイルアルコール、ヘキサデシルアルコール、ラノリンアルコール等)、コレステロール、トリ2-エチルヘキサン酸グリセリル、2-エチルヘキサン酸セチル、シリコーンオイル(ジメチルポリシロキサン、環状シリコーン等)等が挙げられる。
【0025】
これらの油分は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0026】
これらの油性基剤の中でも、乳化安定性をより一層向上させる観点から、好ましくは、油類が挙げられ、より好ましくは中鎖脂肪酸トリグリセリド、スクワランが挙げられる。なお、中鎖脂肪酸トリグリセリドを構成する脂肪酸鎖の平均炭素数は6以上12以下である。中鎖脂肪酸トリグリセリドにおける上記脂肪酸の平均炭素数とは、中鎖脂肪酸トリグリセリドの構成脂肪酸の炭素数(例えば、カプリル酸であれば8、カプリン酸であれば10)を構成脂肪酸の組成比によって加重平均した値である。乳化安定性をより一層向上させる観点から、構成脂肪酸の平均脂肪鎖長としては、好ましくは8~10、より好ましくは9.5以下が挙げられる。本発明で使用される中鎖脂肪酸トリグリセリドの構成脂肪酸それぞれの炭素数は、平均炭素数が上述した範囲内であれば特に制限されないが、例えば6以上12以下が挙げられる。当該構成脂肪酸は、飽和型及び不飽和型のいずれであってもよいが、好ましくは飽和型が挙げられる。本発明で用いられる中鎖脂肪酸トリグリセリドの好ましい具体例としては、炭素数8以上10以下の飽和脂肪酸のトリグリセリドが挙げられる。
【0027】
本発明の乳化組成物における油性基剤の含有量(総量)としては、例えば0.05~20重量%が挙げられる。乳化安定性をより一層高める観点から、好ましくは0.1~20重量%、より好ましくは0.5~20重量%、さらに好ましくは1~20重量%、一層好ましくは1.2~20重量%が挙げられる。
【0028】
また、本発明の乳化組成物の乳化安定性は非常に高いため、本来的に乳化安定性が悪く相分離しやすい、油性基剤が少ない基剤組成の場合であっても、効果的に乳化安定性を向上できる。このような観点から、本発明の乳化組成物における油性基剤の含有量(総量)の好適な例として、0.05~10重量%、より好ましくは0.05~5重量%、さらに好ましくは0.05~3重量%、一層好ましくは0.05~2重量%が挙げられる。
【0029】

本発明の乳化組成物は、水相の基剤成分として水を含む。本発明の乳化組成物における水の含有量についても特に限定されないが、例えば、60~95重量%が挙げられる。乳化安定性をより一層高める観点からは、本発明の乳化組成物における水の含有量としては、好ましくは60~90重量%、より好ましくは60~80重量%が挙げられる。
【0030】
また、本発明の乳化組成物の乳化安定性は非常に高いため、本来的に乳化安定性が悪く相分離しやすい、水の量が多い基剤組成の場合であっても、効果的に乳化安定性を向上できる。このような観点から、本発明の乳化組成物における水の含有量の好適な例として、好ましくは65~95重量%、より好ましくは69~95重量%が挙げられる。
【0031】
界面活性剤
本発明の乳化組成物は、油相と水相とを乳化させるための界面活性剤を含む。界面活性剤としては、薬学的又は香粧学的に許容されることを限度として特に制限されないが、例えば、ノニオン性界面活性剤、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、両性界面活性剤等が挙げられる。これらの他の界面活性剤の中でも、乳化安定性を向上させる観点から、ノニオン性界面活性剤が挙げられる。
【0032】
ノニオン性界面活性剤としては、具体的には、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油;ソルビタン脂肪酸エステル類(例えば、ソルビタンモノオレエート、ソルビタンモノイソステアレート、ソルビタンモノラウレート、ソルビタンモノパルミテート、ソルビタンモノステアレート(モノステアリン酸ソルビタン)、ソルビタンセスキオレエート、ソルビタントリオレエート、ペンタ-2-エチルヘキシル酸ジグリセロールソルビタン、テトラ-2-エチルヘキシル酸ジグリセロールソルビタン等);グリセリン脂肪酸エステル類(例えば、モノ綿実油脂肪酸グリセリル、モノエルカ酸グリセリル、セスキオレイン酸グリセリル、モノステアリン酸グリセリル(ステアリン酸グリセリン)、α,α’-オレイン酸ピログルタミン酸グリセリル、モノステアリン酸グリセリンリンゴ酸等);プロピレングリコール脂肪酸エステル類(例えば、モノステアリン酸プロピレングリコール等);グリセリンアルキルエーテル;ステアレス-2;ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル類(例えば、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレエート、ポリオキシエチレンソルビタンモノステアレート、ポリオキシエチレンソルビタンテトラオレエート等);ポリオキシエチレンソルビット脂肪酸エステル類(例えば、ポリオキシエチレンソルビットモノラウレート、ポリオキシエチレンソルビットモノオレエート、ポリオキシエチレンソルビットペンタオレエート、ポリオキシエチレンソルビットモノステアレート等);ポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステル類(例えば、ポリオキシエチレングリセリンモノステアレート、ポリオキシエチレングリセリンモノイソステアレート、ポリオキシエチレングリセリントリイソステアレート等);ポリオキシエチレン脂肪酸エステル類(例えば、ポリオキシエチレンモノオレエート、ポリオキシエチレンモノステアレート(ステアリン酸ポリオキシル)、ポリオキシエチレンジステアレート、ポリオキシエチレンモノジオレエート、ジステアリン酸エチレングリコール等);ポリオキシエチレンアルキル又はアラキルエーテル類(例えば、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンセチルエーテル、ポリオキシエチレンベヘニルエーテル、ポリオキシエチレン2-オクチルドデシルエーテル、ポリオキシエチレンアラキルエーテル、ポリオキシエチレンコレスタノールエーテル等)及びこれらのリン酸又はリン酸塩(ポリオキシエチレンセチルエーテルリン酸ナトリウム等);プルロニック(登録商標)型類(例えば、プルロニック(登録商標)等);ポリオキシエチレン・ポリオキシプロピレンアルキルエーテル類(例えば、ポリオキシエチレン・ポリオキシプロピレン-セチルエーテル、ポリオキシエチレン・ポリオキシプロピレン-2-デシルテトラデシルエーテル、ポリオキシエチレン・ポリオキシプロピレンモノブチルエーテル、ポリオキシエチレン・ポリオキシプロピレン水添ラノリン、ポリオキシエチレン・ポリオキシプロピレングリセリンエーテル等);ステアレス-21等が挙げられる。
【0033】
これらの界面活性剤は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0034】
これらのノニオン性界面活性剤の中でも、乳化安定性をより一層向上させる観点から、
ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油及びポリオキシエチレンアルキルエーテル類(好ましくは、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンセチルエーテル、ポリオキシエチレンベヘニルエーテル、ポリオキシエチレン2-オクチルドデシルエーテル)が挙げられる。
【0035】
界面活性剤のHLB値としては、例えば8~20、好ましくは9~18、より好ましくは10~17が挙げられる。HLB値(親水性-親油性のバランス)は、界面活性剤の全分子量に占める親水基部分の分子量を示すものであり、グリフィン(Griffin)の式により求められるものである。
【0036】
本発明の乳化組成物における界面活性剤の含有量については、使用する当該界面活性剤の種類等に応じて適宜設定すればよいが、例えば2~7重量%、好ましくは3~6重量%、より好ましくは4~5.2重量%が挙げられる。
【0037】
他の成分
本発明の乳化組成物は、前述する成分の他に、必要に応じて、通常使用される他の添加剤が含まれていてもよい。このような添加剤としては、例えば、多価アルコール、増粘剤、pH調節剤、緩衝剤、可溶化剤、キレート剤、防腐剤、保存剤、酸化防止剤、安定化剤、香料、着色料等が挙げられる。
【0038】
多価アルコールとしては、薬学的又は香粧学的に許容されることを限度として特に制限されないが、例えば、プロピレングリコール、1,3-ブチレングリコール、エチレングリコール、イソプレングリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール等の2価アルコール;グリセリン等の3価アルコール等が挙げられる。これらの多価アルコールは、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。これらの多価アルコールの中でも、好ましくはプロピレングリコール、1,3-ブチレングリコール、ジプロピレングリコール、グリセリンが挙げられる。本発明の乳化組成物が多価アルコールを含む場合、多価アルコールの含有量としては特に限定されないが、例えば5~15重量%、好ましくは8~12重量%、より好ましくは9~11重量%が挙げられる。
【0039】
増粘剤としては、例えば、セルロース系増粘剤(例えば、カルメロースナトリウム、ヒドロプロピルセルロース、ヒドロキシエチルメチルセルロース、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース等)、キサンタンガム、カルボキシビニルポリマー等が挙げられる。これらの増粘剤は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。これらの増粘剤の中でも、好ましくはセルロース系増粘剤が挙げられ、より好ましくはカルメロースナトリウムが挙げられる。本発明の乳化組成物が増粘剤を含む場合、増粘剤の含有量としては特に限定されないが、例えば1~7重量%、好ましくは1.25~5重量%、より好ましくは1.5~3重量%が挙げられる。
【0040】
更に、本発明の乳化組成物は、前述する成分の他に、薬学的又は香粧学的な生理機能を発揮できる薬効成分が、必要に応じて含まれていてもよい。このような薬効成分としては、例えば、ステロイド剤、抗ヒスタミン剤、局所麻酔剤、抗炎症剤、殺菌剤、鎮痒剤、保湿剤、血行促進成分、ビタミン類、ムコ多糖類等が挙げられる。これらの薬効成分は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。これらの薬効成分の中でも、好ましくは、グリチルリチン酸ジカリウム(抗炎症剤)、ヘパリン類似物質(抗炎症剤、保湿剤、血行促進剤)が挙げられる。また、本発明の乳化組成物においてこれらの薬効成分を含有させる場合、その含有量については、使用する薬効成分の種類、期待する効果等に応じて適宜設定すればよい。
【0041】
pH
本発明の乳化組成物のpHについては特に限定されない。本発明の乳化組成物は、通常の皮膚外用剤に好適な弱酸性のpH範囲で優れた乳化安定性を発現できるため、本発明の乳化組成物の好ましいpH(25℃)としては、例えば4~6、好ましくは4.5~5.5が挙げられる。
【0042】
製剤形態
本発明の乳化組成物の乳化状態については、水中油型又は油中水型のいずれであってもよい。本発明の乳化組成物は乳化安定性に優れるため、本来的に水が多く相分離しやすい、水中油型であっても効果的に乳化安定性を向上させることができる。このような観点から、本発明の乳化組成物の好適な乳化状態としては、水中油型が挙げられる。
【0043】
本発明の乳化組成物の製剤形態については特に制限されず、例えば、乳液剤、クリーム剤、ジェルクリーム剤、ローション剤等が挙げられ、好ましくはジェルクリーム剤が挙げられる。
【0044】
本発明の乳化組成物としては、具体的には、医薬品、医薬部外品、化粧品等が挙げられる。これらの製剤形態の中でも、好ましくは医薬品、医薬部外品が挙げられる。
【0045】
本発明の乳化組成物としては、好ましくは外用剤、より好ましくは皮膚外用剤が挙げられる。
【0046】
製造方法
本発明の乳化組成物は、公知の乳化組成物の製造方法に従って製造することができる。本発明の乳化組成物の製造方法として、例えば、以下に示す方法が挙げられる。先ず、(A)成分、(B)成分、及び油性基剤、並びに必要に応じて添加される他の親油性成分を混合して油相用組成物を調製する。別途、(C)成分、水、及び必要に応じて添加される他の水溶性成分を混合して水相用組成物を調製する。なお、界面活性剤は、油相用組成物又は水相用組成物のいずれか一方又は双方に添加して混合すればよいが、油相用組成物に添加することが好ましい。次いで、得られた油相用組成物と水相用組成物を混合し、ホモミキサー等の乳化手法によって乳化させることにより、本発明の乳化組成物が製造される。
【実施例0047】
以下、実施例を挙げて本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0048】
試験例
表1及び表2に示す組成のジェルクリーム状の水中油型乳化組成物を製造した。なお、表1に示した成分のうち、中和脂肪酸トリグリセリドとしては、NIKKOL トリエスター F-810(トリ(カプリル酸/カプリン酸)グリセリル)を用い、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油20としてはHLBが10.5のものを用い、ポリオキシエチレンベヘニルエーテルとしてはHLBが16.5のものを用いた。具体的には、表1及び表2に示す成分のうち、(A)成分、(B)成分、油性基剤、界面活性剤を所定量計り取り、80℃に加温して混合し、油相用組成物を調製した。別途、(C)成分、水相成分を所定量計り取り、水相用組成物を調製した。水相用組成物を60℃に加温した後に、80℃の油相用組成物を少量ずつ添加し、混合しながら乳化を行った。その後、25℃まで冷却し、ジェルクリーム状の水中油型乳化組成物を得た。
【0049】
得られたジェルクリーム状の水中油型乳化組成物のpH(25℃)を測定した。さらに、得られたジェルクリーム状の水中油型乳化組成物を50℃で2週間保存し、以下の基準に基づいて乳化安定性を評価した。結果を表1及び表2に示す。
【0050】
(乳化安定性の評価基準)
◎:乳化状態が均一であり、相分離も認められなかった。
○:クリーミング傾向があったが、相分離は認められなかった。
△:相分離が認められたが、混合すると元の状態に戻った。
×:著しく相分離が認められた。
【0051】
【表1】
【0052】
【表2】
【0053】
比較例1に示すように、ウフェナマートを含む乳化組成物では乳化安定性が悪いため、著しい相分離が生じた。また、比較例2に示すように、アラントインをさらに配合しても乳化安定性は依然として悪く、著しい相分離が生じた。一方で、比較例3に示すように、ジフェンヒドラミンとアラントインとを組み合わせて配合した乳化組成物も乳化安定性が悪く、著しい相分離が生じた。これに対し、実施例1~6に示す通り、ウフェナマートを含む乳化組成物にさらにジフェンヒドラミンとアラントインとを組み合わせて配合すると、相分離が顕著に抑制され、乳化安定性の顕著な向上効果が認められた。この乳化安定性の向上効果は、実施例2~6の組成で各段顕著であり、さらにこの格段顕著な効果は、実施例3~5に示す通りpH4~6で同等に得られた。