(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023086090
(43)【公開日】2023-06-21
(54)【発明の名称】ニップ形成ユニット及び画像形成装置
(51)【国際特許分類】
G03G 15/20 20060101AFI20230614BHJP
G03G 15/14 20060101ALI20230614BHJP
G03G 15/00 20060101ALI20230614BHJP
B41J 2/01 20060101ALI20230614BHJP
【FI】
G03G15/20 530
G03G15/14 101
G03G15/00 550
B41J2/01 125
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022168319
(22)【出願日】2022-10-20
(31)【優先権主張番号】P 2021200075
(32)【優先日】2021-12-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(74)【代理人】
【識別番号】100107423
【弁理士】
【氏名又は名称】城村 邦彦
(72)【発明者】
【氏名】古市 祐介
(72)【発明者】
【氏名】島田 浩幸
(72)【発明者】
【氏名】染矢 幸通
【テーマコード(参考)】
2C056
2H033
2H171
2H200
【Fターム(参考)】
2C056FD13
2C056HA45
2C056HA46
2H033AA16
2H033AA23
2H033BA15
2H033BA20
2H033BA21
2H033BA25
2H033BB05
2H033BB06
2H033BB13
2H033BB14
2H033BB15
2H033BB29
2H033BB30
2H033BE03
2H171FA19
2H171GA09
2H171GA40
2H171JA12
2H171JA41
2H171LA07
2H200FA06
2H200KA02
2H200KA03
2H200KA14
2H200KA15
2H200KA29
2H200PB21
(57)【要約】
【課題】簡単な構成で定着ベルトと分離部材との間の間隔を最適化する。
【解決手段】回転可能な可撓性の無端ベルト(定着ベルト20)と、無端ベルトの内周面に接触可能に設けられたニップ形成部材(ヒータ22)と、無端ベルトを介してニップ形成部材と圧接してニップを形成する加圧部材(加圧ローラ21)と、無端ベルトの両端部をガイドするガイド部材(フランジ400)とを有し、被搬送体がニップを通過して搬送されるニップ形成ユニットにおいて、ニップを通過した被搬送体を無端ベルトから分離させる分離部材(分離板310)を備え、当該分離部材は、無端ベルトに接触しない非接触部(先端部311)と、無端ベルトに接触することにより非接触部と無端ベルトとの間隔を所定の大きさに保持する接触部313とを有することを特徴とする。
【選択図】
図9A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転可能な可撓性の無端ベルトと、
前記無端ベルトの内周面に接触可能に設けられたニップ形成部材と、
前記無端ベルトを介して前記ニップ形成部材と圧接してニップを形成する加圧部材と、 前記無端ベルトの両端部をガイドするガイド部材とを有し、
被搬送体が前記ニップを通過して搬送されるニップ形成ユニットにおいて、
前記ニップを通過した前記被搬送体を前記無端ベルトから分離させる分離部材を備え、当該分離部材は、前記無端ベルトに接触しない非接触部と、前記無端ベルトに接触することにより前記非接触部と前記無端ベルトとの間隔を所定の大きさに保持する接触部とを有することを特徴とするニップ形成ユニット。
【請求項2】
前記分離部材を前記無端ベルトに対して近付ける方向と遠ざける方向で移動可能に配設すると共に、前記近付ける方向の移動位置を定める第1規制部と前記遠ざける方向の移動位置を定める第2規制部を有する移動規制手段を配設したことを特徴する請求項1のニップ形成ユニット。
【請求項3】
前記分離部材が、前記近付ける方向に付勢手段で付勢されていることを特徴とする請求項2のニップ形成ユニット。
【請求項4】
前記ニップ形成部材が、前記加圧部材に対して、前記ニップが前記加圧部材で加圧される接近位置と前記ニップが脱圧される離反位置との間を移動可能に配設され、前記分離部材が前記第1規制部で移動規制された状態で前記ニップ形成部材が前記離反位置に移動可能に構成されていることを特徴とする請求項3のニップ形成ユニット。
【請求項5】
前記分離部材が前記遠ざける方向に移動する際、前記加圧部材に対して接触する前に前記第2規制部で移動規制されることを特徴とする請求項2から4のいずれか1項のニップ形成ユニット。
【請求項6】
左右一対の側板の間に移動可能に支持された分離板で前記分離部材が構成され、前記分離板と前記側板の間に前記移動規制手段が配設されていることを特徴とする請求項2から4のいずれか1項のニップ形成ユニット。
【請求項7】
前記移動規制手段が、前記分離板の端部に形成された被移動規制片と、前記側板に形成された移動規制穴によって構成され、前記移動規制穴の一端部によって前記第1規制部が構成され、前記移動規制穴の他端部によって前記第2規制部が構成されていることを特徴とする請求項6のニップ形成ユニット。
【請求項8】
前記接触部が前記被搬送体の通過領域外に設けられていることを特徴とする請求項1から4のいずれか1項のニップ形成ユニット。
【請求項9】
前記無端ベルトを加熱するために前記ニップ形成部材に配設されたヒータが、前記無端ベルトの両端部を加熱する端部ヒータと中央部を加熱する中央ヒータの少なくとも3つに分割されていることを特徴とする請求項1から4のいずれか1項のニップ形成ユニット。
【請求項10】
請求項1から4のいずれか1項のニップ形成ユニットを有することを特徴とする画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ニップを通過した被搬送体を無端ベルトから分離させる分離部材を備えたニップ形成ユニットと、当該ニップ形成ユニットを備えた画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
複写機、プリンタ等の画像形成装置において、用紙等の記録媒体に形成された画像を定着する定着装置として、無端状のベルトを用いたベルト方式の定着装置が知られている(例えば、特許文献1:特開2015-011167号公報参照)。
【0003】
特許文献1に開示された定着装置は、定着ベルトに近接して配置した用紙分離板で定着ベルトから用紙を分離する。このように用紙分離板を使用する場合、定着ベルトと用紙分離板との間隔が小さ過ぎると、用紙分離板が定着ベルトに接触してベルトに傷が付きやすくなり、これが異常画像発生の原因になる。
【0004】
また定着ベルトと用紙分離板との間隔が大き過ぎると、この大きな間隔を用紙が通過して定着ベルトに巻付き、用紙ジャムが発生しやすくなる。したがって、用紙分離板を定着ベルトに接触しない範囲でできるだけベルトに近付ける必要がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の定着装置は、分離板移動機構で前記間隔を最適化するが、分離板移動機構は分離板を駆動する駆動部や各種センサによって構造が複雑となりコスト高になるという課題がある。そこで本発明の目的は、簡単な構成で無端ベルトと分離部材との間の間隔を最適化し、これにより無端ベルトからの被搬送体の分離性を向上することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するため、本発明のニップ形成ユニットは、回転可能な可撓性の無端ベルトと、前記無端ベルトの内周面に接触可能に設けられたニップ形成部材と、前記無端ベルトを介して前記ニップ形成部材と圧接してニップを形成する加圧部材と、前記無端ベルトの両端部をガイドするガイド部材とを有し、被搬送体が前記ニップを通過して搬送されるニップ形成ユニットにおいて、前記ニップを通過した前記被搬送体を前記無端ベルトから分離させる分離部材を備え、当該分離部材は、前記無端ベルトに接触しない非接触部と、前記無端ベルトに接触することにより前記非接触部と前記無端ベルトとの間隔を所定の大きさに保持する接触部とを有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、無端ベルトと分離部材との間の間隔を最適化し、これにより無端ベルトからの被搬送体の分離性を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の実施形態に係る画像形成装置の概略構成図である。
【
図3】ヒータ、ヒータホルダ及びガイド部の斜視図である。
【
図6】ヒータの制御動作を示すフローチャートである。
【
図7A】用紙分離機構を備えた定着装置の概念図である。
【
図7Bc】用紙分離機構の分離板が変形した状態の平面図である。
【
図7Bd】用紙分離機構の分離板が変形した状態の斜視図である。
【
図7Be】用紙分離機構の分離板が変形した状態の平面図である。
【
図7C】定着ベルトの両端を保持するフランジでベルトに張力を掛ける図である。
【
図7D】フランジとヒータホルダの位置関係を示す図である。
【
図8B】引張バネを取付けた用紙分離機構の側面図である。
【
図9A】用紙分離機構を備えた定着装置の側面図である。
【
図9B】用紙ジャムが発生した状態の定着装置の側面図である。
【
図9C】用紙を引抜く状態を示す定着装置の側面図である。
【
図9D】定着ベルトを脱圧移動する際の定着装置の側面図である。
【
図10】定着ベルトの脱圧量を説明するための定着装置の平面図である。
【
図11B】定着ベルトから切出した一端部の斜視図である。
【
図11C】定着ベルトから切出した一端部の展開平面図である。
【
図12A】定着ベルトのたるみを示す側面図である。
【
図12B】定着ベルトのたるみを示す側面図である。
【
図13】定着ベルトのたるみ率の測定方法を示す側面図である。
【
図14】本発明の他の実施形態に係る定着装置の概略構成を示す側面断面図である。
【
図15】ヒータ、第1高熱伝導部材、ヒータホルダの斜視図である。
【
図16】第1高熱伝導部材の配置を示すヒータの平面図である。
【
図17】
図14とは異なる実施形態の定着装置の概略構成を示す側面断面図である。
【
図18】ヒータ、第1高熱伝導部材、第2高熱伝導部材、ヒータホルダの斜視図である。
【
図19】第1高熱伝導部材および第2高熱伝導部材の配置を示すヒータの平面図である。
【
図20】
図15と第2高熱伝導部材の配置が異なるヒータを示す平面図である。
【
図22】第1高熱伝導部材の配置の他の例を示すヒータの平面図である。
【
図23】第1高熱伝導部材の配置のさらに別の例を示すヒータの平面図である。
【
図24】拡大分割領域を示すヒータの平面図である。
【
図25】上記実施形態とは異なる定着装置の構成を示す図である。
【
図26】
図25に示されるヒータ、第1高熱伝導部材、第2高熱伝導部材、ヒータホルダの斜視図である。
【
図27】第1高熱伝導部材及び第2高熱伝導部材の配置を示すヒータの平面図である。
【
図28】第1高熱伝導部材及び第2高熱伝導部材の配置の他の例を示すヒータの平面図である。
【
図29】第2高熱伝導部材の配置のさらに別の例を示すヒータの平面図である。
【
図30】上記実施形態とは異なる定着装置の構成を示す図である。
【
図31】グラフェンの原子結晶構造を示す図である。
【
図32】グラファイトの原子結晶構造を示す図である。
【
図33】サーミスタの配置の変形例を示す定着装置の側面断面図である。
【
図34】上記と異なる定着装置の概略構成を示す側面断面図である。
【
図35】上記と異なる定着装置の概略構成を示す側面断面図である。
【
図36】上記と異なる定着装置の概略構成を示す側面断面図である。
【
図37】
図1と異なる画像形成装置の概略構成図である。
【
図38】本発明の一実施形態に係る定着装置の概略構成を示す側面断面図である。
【
図40】ヒータおよびヒータホルダの斜視図である。
【
図41】ヒータに対するコネクタの取付状態を示す斜視図である。
【
図42】サーミスタとサーモスタットの配置を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、添付の図面に基づき、本発明について説明する。なお、本発明を説明するための各図面において、同一の機能もしくは形状を有する部材や構成部品等の構成要素については、判別が可能な限り同一符号を付すことにより一度説明した後ではその説明を省略する。
【0010】
(●画像形成装置)
図1は、本発明の実施の一形態に係る画像形成装置の概略構成図である。
図1に示す画像形成装置100は、画像形成装置本体に対して着脱可能な4つの作像ユニット1Y,1M,1C,1Bkを備える。
【0011】
各作像ユニット1Y,1M,1C,1Bkは、カラー画像の色分解成分に対応するイエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの異なる色の現像剤を収容している以外は同様の構成となっている。具体的には、各作像ユニット1Y,1M,1C,1Bkは、像担持体としてのドラム状の感光体2と、感光体2の表面を帯電する帯電装置3と、感光体2の表面に現像剤としてのトナーを供給してトナー画像を形成する現像装置4と、感光体2の表面をクリーニングするクリーニング装置5とを備える。
【0012】
また、画像形成装置100は、各感光体2の表面を露光し静電潜像を形成する露光装置6と、被搬送体ないし記録媒体としての用紙Pを供給する給紙装置7と、各感光体2に形成されたトナー画像を用紙Pに転写する転写装置8と、用紙Pに転写されたトナー画像を定着するニップ形成ユニットとしての定着装置9と、用紙Pを装置外に排出する排紙装置10とを備える。記録媒体としては、用紙P(普通紙)の他、厚紙、はがき、封筒、薄紙、塗工紙(コート紙やアート紙等)、トレーシングペーパ、OHPシート、プラスチックフィルム、プリプレグ、銅箔等が含まれる。
【0013】
転写装置8は、複数のローラによって張架された中間転写体としての無端状の中間転写ベルト11と、各感光体2上のトナー画像を中間転写ベルト11へ転写する一次転写部材としての4つの一次転写ローラ12と、中間転写ベルト11上に転写されたトナー画像を用紙Pへ転写する二次転写部材としての二次転写ローラ13とを有する。複数の一次転写ローラ12は、それぞれ、中間転写ベルト11を介して感光体2に接触している。
【0014】
これにより、中間転写ベルト11と各感光体2とが互いに接触し、これらの間に一次転写ニップが形成されている。一方、二次転写ローラ13は、中間転写ベルト11を介して中間転写ベルト11を張架するローラの1つに接触している。これにより、二次転写ローラ13と中間転写ベルト11との間には二次転写ニップが形成されている。
【0015】
また、画像形成装置100内には、給紙装置7から送り出された用紙Pが搬送される用紙搬送路14が形成されている。この用紙搬送路14における給紙装置7から二次転写ニップ(二次転写ローラ13)に至るまでの途中には、一対のタイミングローラ15が設けられている。
【0016】
次に、
図1を参照して前記画像形成装置の印刷動作について説明する。
【0017】
印刷動作開始の指示があると、各作像ユニット1Y,1M,1C,1Bkにおいては、感光体2が
図1の時計回りに回転駆動され、帯電装置3によって感光体2の表面が均一な高電位に帯電される。次いで、原稿読取装置によって読み取られた原稿の画像情報、あるいは端末からプリント指示されたプリント情報に基づいて、露光装置6が各感光体2の表面を露光することで、露光された部分の電位が低下して静電潜像が形成される。そして、この静電潜像に対して現像装置4からトナーが供給され、各感光体2上にトナー画像が形成される。
【0018】
各感光体2上に形成されたトナー画像は、各感光体2の回転に伴って一次転写ニップ(一次転写ローラ12の位置)に達すると、
図1の反時計回りに回転駆動する中間転写ベルト11に順次重なり合うように転写される。そして、中間転写ベルト11上に転写されたトナー画像は、中間転写ベルト11の回転に伴って二次転写ニップ(二次転写ローラ13の位置)へ搬送され、二次転写ニップにおいて搬送されてきた用紙Pに転写される。
【0019】
この用紙Pは、給紙装置7から供給されたものである。給紙装置7から供給された用紙Pは、タイミングローラ15によって一旦停止された後、中間転写ベルト11上のトナー画像が二次転写ニップに至るタイミングに合わせて二次転写ニップへ搬送される。かくして、用紙P上にフルカラーのトナー画像が担持される。また、トナー画像が転写された後、各感光体2上に残留するトナーは各クリーニング装置5によって除去される。
【0020】
トナー画像が転写された用紙Pは、定着装置9へと搬送され、定着装置9によって用紙Pにトナー画像が定着される。その後、用紙Pは排紙装置10によって装置外に排出されて、一連の印刷動作が完了する。
【0021】
(●定着装置)
続いて、ニップ形成ユニットとしての定着装置の実施形態について説明する。
図2に示すように、本実施形態に係る定着装置9は、無端状のベルトから成る定着ベルト20と、定着ベルト20の外周面に接触して定着ニップNを形成する対向部材としての加圧ローラ21と、定着ベルト20を加熱する加熱部材としてのヒータ22と、ヒータ22を保持する保持部材としてのヒータホルダ23と、ヒータホルダ23を支持する支持部材としてのステー24と、定着ベルト20の温度を検知する温度検知手段としてのサーミスタ25等を備えている。
【0022】
定着ベルト20は、例えば外径が25mmで厚みが40~120μmのポリイミド(PI)製の筒状基体を有している。定着ベルト20の最表層には、耐久性を高めて離型性を確保するために、PFAやPTFE等のフッ素系樹脂による厚みが5~50μmの離型層が形成される。
【0023】
基体と離型層の間に厚さ50~500μmのゴム等からなる弾性層を設けてもよい。また、定着ベルト20の基体はポリイミドに限らず、PEEKなどの耐熱性樹脂やニッケル(Ni)、SUSなどの金属基体であってもよい。定着ベルト20の内周面に摺動層としてポリイミドやPTFEなどをコートしてもよい。
【0024】
加圧ローラ21は、例えば外径が25mmであり、中実の鉄製芯金21aと、この芯金21aの表面に形成された弾性層21bと、弾性層21bの外側に形成された離型層21cとで構成されている。弾性層21bはシリコーンゴムで形成されており、厚みは例えば3.5mmである。弾性層21bの表面は離型性を高めるために、厚みが例えば40μm程度のフッ素樹脂層による離型層21cを形成するのが望ましい。
【0025】
加圧ローラ21が付勢手段によって定着ベルト20側へ付勢されることで、加圧ローラ21は定着ベルト20を介してヒータ22に圧接される。これにより、定着ベルト20と加圧ローラ21との間に定着ニップNが形成される。また、加圧ローラ21は駆動手段によって回転駆動されるように構成されており、加圧ローラ21が
図2の矢印方向に回転すると、これに伴って定着ベルト20が従動回転する。
【0026】
ヒータ22は、定着ベルト20の幅方向に渡って長手状に設けられた面状の加熱部材であり、板状の基材30と、基材30上に設けられた抵抗発熱体31と、抵抗発熱体31を被覆する絶縁層32等で構成されている。また、ヒータ22は、絶縁層32側で定着ベルト20の内周面に対して接触しており、抵抗発熱体31から発された熱は、絶縁層32を介して定着ベルト20へと伝達される。
【0027】
本実施形態では、抵抗発熱体31や絶縁層32が基材30の定着ベルト20側(定着ニップN側)に設けられているが、反対に、抵抗発熱体31や絶縁層32を基材30のヒータホルダ23側に設けてもよい。その場合、抵抗発熱体31の熱が基材30を介して定着ベルト20に伝達されることになるため、基材30は窒化アルミニウムなどの熱伝導率の高い材料で構成されることが望ましい。また、基材30を熱伝導率の良い材料で構成することで、抵抗発熱体31を基材30の定着ベルト20側とは反対側に配置しても、定着ベルト20を十分に加熱することが可能である。
【0028】
ヒータホルダ23及びステー24は、定着ベルト20の内周側に配置されている。ステー24は、金属製のチャンネル材で構成され、その両端部分が定着装置9の両側板に支持されている。ステー24によってヒータホルダ23及びこれに保持されるヒータ22が支持されていることで、加圧ローラ21が定着ベルト20に加圧された状態で、ヒータ22が加圧ローラ21の押圧力を確実に受けとめて定着ニップNを安定的に形成する。
【0029】
ヒータホルダ23は、ヒータ22の熱によって高温になりやすいため、耐熱性の材料で形成されることが望ましい。例えば、ヒータホルダ23をLCPなどの低熱伝導性の耐熱性樹脂で形成した場合は、ヒータ22からヒータホルダ23への伝熱が抑制され効率的に定着ベルト20を加熱することができる。
【0030】
また、ヒータ22に対するヒータホルダ23の接触面積を少なくし、ヒータ22からヒータホルダ23へ伝わる熱量を低減するため、ヒータホルダ23はヒータ22の基材30に対して突起部23aを介して接触している。さらに、本実施形態のように、ヒータホルダ23の突起部23aを、基材30の抵抗発熱体31が配置されている箇所の裏側以外、すなわち基材30の温度が高くなりやすい箇所を避けて接触させることで、ヒータホルダ23へ伝わる熱量をさらに低減して効率的に定着ベルト20を加熱できる。
【0031】
また、ヒータホルダ23には、定着ベルト20をガイドするガイド部26が設けられている。ガイド部26は、ヒータ22のベルト回転方向の上流側(
図2におけるヒータ22の下側)と下流側(
図2におけるヒータ22の上側)とにそれぞれ設けられている。
【0032】
また、
図3に示すように、上流側と下流側のガイド部26は、ヒータ22の長手方向(ベルト幅方向)に渡って間隔をあけて複数配置されている。各ガイド部26は、略扇型に形成されており、定着ベルト20の内周面に対向するようにベルト周方向に延在する円弧状又は凸曲面状のベルト対向面260を有する(
図2参照)。また、
図3に示すように、本実施形態においては、ヒータ22の長手方向両端部に配置されたガイド部26の幅Wが他のガイド部26よりも大きく形成されている以外、各ガイド部26の幅W、ベルト周方向の長さ(周長)L、高さEは同じに形成されている。
【0033】
本実施形態に係る定着装置9において、印刷動作が開始されると、加圧ローラ21が回転駆動され、定着ベルト20が従動回転を開始する。このとき、定着ベルト20の内周面がガイド部26のベルト対向面260に接触してガイドされることで、定着ベルト20は安定かつ円滑に回転する。
【0034】
また、ヒータ22の抵抗発熱体31に電力が供給されることで、定着ベルト20が加熱される。そして、定着ベルト20の温度が所定の目標温度(定着温度)に到達した状態で、
図2に示すように、未定着トナー画像が担持された用紙Pが、定着ベルト20と加圧ローラ21との間(定着ニップN)に搬送されることで、未定着トナー画像が加熱及び加圧されて用紙Pに定着される。
【0035】
(●ヒータの構成)
図4は、本実施形態に係るヒータの平面図である。
図4に示すように、本実施形態に係るヒータ22は、その長手方向(ベルト幅方向)に間隔をあけて配置された複数の抵抗発熱体31を有している。言い換えれば、複数の抵抗発熱体31によって、ベルト幅方向に複数に分割された発熱部35が構成されている。当該発熱部35は、両端部を加熱する端部ヒータと中央部を加熱する中央ヒータの少なくとも3つ或いは4つ以上に分割することができる。
【0036】
各抵抗発熱体31は、基材30の長手方向両端部に設けられた一対の電極部34に対して給電線33を介して電気的に並列に接続されている。給電線33は、抵抗発熱体31よりも抵抗値の小さい導体で構成されている。
【0037】
互いに隣り合う抵抗発熱体31同士の隙間は、抵抗発熱体31間の絶縁性を確保する観点から、0.2mm以上が好ましく、0.4mm以上がさらに好ましい。また、互いに隣り合う抵抗発熱体31同士の隙間は、大き過ぎると、その隙間の部分で温度低下が生じやすくなるため、長手方向に渡る温度ムラを抑制する観点から、5mm以下が好ましく、1mm以下がさらに好ましい。
【0038】
抵抗発熱体31は、PTC(正の温度抵抗係数)特性を有する材料で構成されており、温度が上昇すると抵抗値が上昇(ヒータ出力が低下)する特徴がある。この特徴により、例えば発熱部35の全体幅よりも幅の小さい用紙を通紙した場合、紙幅より外側の領域では用紙によって定着ベルト20の熱が奪われないため、その部分に相当する抵抗発熱体31の温度が上昇する。
【0039】
抵抗発熱体31にかかる電圧は一定なので、紙幅より外側の抵抗発熱体31の温度が上昇し、その抵抗値が上昇すると、反対に出力(発熱量)が相対的に低下し、端部温度上昇が抑制される。また、複数の抵抗発熱体31が電気的に並列接続されていることで、印刷スピードを維持したまま非通紙部温度上昇を抑制することができる。
【0040】
なお、発熱部35を構成する発熱体は、PTC特性を有する抵抗発熱体以外のものであってもよい。また、発熱体は、ヒータ22の短手方向に複数列に配置されていてもよい。
【0041】
抵抗発熱体31は、例えば、銀パラジウム(AgPd)やガラス粉末などを調合したペーストをスクリーン印刷等により基材30に塗工し、その後、当該基材30を焼成することによって形成することができる。本実施形態では、抵抗発熱体31の抵抗値を常温で80Ωとしている。
【0042】
抵抗発熱体31の材料は、前述したもの以外に、銀合金(AgPt)や酸化ルテニウム(RuO2)の抵抗材料を用いてもよい。給電線33や電極部34の材料は、銀(Ag)もしくは銀パラジウム(AgPd)をスクリーン印刷等で形成することができる。
【0043】
基材30の材料としては、耐熱性及び絶縁性に優れるアルミナや窒化アルミニウムなどのセラミックや、ガラス、マイカなどの非金属材料が好ましい。本実施形態では、短手幅8mm、長手幅270mm、厚さ1.0mmのアルミナ基材を使用している。
【0044】
他に、金属などの導電材料に絶縁性材料を積層したもので、基材30を構成してもよい。金属材料としては、アルミニウムやステンレスなどが低コストで好ましい。また、ヒータ22の均熱性を向上し画像品位を高めるために、基材30を銅、グラファイト、グラフェンなどの高熱伝導率の材料で構成してもよい。
【0045】
絶縁層32は、例えば厚さ75μmの耐熱性ガラスで構成される。絶縁層32によって抵抗発熱体31と給電線33とを被覆し、これらを絶縁・保護すると共に、定着ベルト20との摺動性を維持する。
【0046】
図5は、本実施形態に係るヒータへの電力供給回路を示す図である。
【0047】
図5に示すように、本実施形態では、各抵抗発熱体31に電力を供給するため電力供給回路が、交流電源200とヒータ22の電極部34とを電気的に接続することで構成されている。また、電力供給回路には、供給電力量を制御するトライアック210が設けられている。
【0048】
各抵抗発熱体31への供給電力量は、温度検知手段としてのサーミスタ25の検知温度に基づいて制御部220がトライアック210を介して制御する。制御部220は、CPU、ROM、RAM、I/Oインターフェース等を包含するマイクロコンピュータで構成される。
【0049】
本実施形態では、温度検知手段としてのサーミスタ25が、最小通紙幅内であるヒータ22の長手方向中央領域と、ヒータ22の長手方向一端部側とに、それぞれ配置されている。さらに、ヒータ22の長手方向一端部側には、抵抗発熱体31の温度が所定温度以上となった場合に、抵抗発熱体31への電力供給を遮断する電力遮断手段としてのサーモスタット27が配置されている。サーミスタ25及びサーモスタット27は、基材30の裏面(抵抗発熱体31を配置した側とは反対側)に接触して抵抗発熱体31の温度を検知する。
【0050】
続いて、
図6のフローチャートを参照しつつ、本実施形態に係るヒータの制御動作について説明する。まず、画像形成装置において印刷動作が開始されると(
図6のS1)、制御部220により交流電源200からヒータ22の各抵抗発熱体31への電力供給が開始される(
図6のS2)。
【0051】
これにより、各抵抗発熱体31が発熱を開始し、定着ベルト20が加熱される。このとき、ヒータ22の長手方向中央領域に配置されたサーミスタ(中央サーミスタ)25によって、ヒータ22の中央領域に位置する抵抗発熱体31の温度T4が検知される(
図6のS3)。そして、制御部220が、中央サーミスタ25から得られた温度T4に基づいて、各抵抗発熱体31が所定温度になるように、トライアック210により各抵抗発熱体31への供給電力量を制御する(
図6のS4)。
【0052】
また、同時にヒータ22の長手方向端部側に配置されたサーミスタ(端部サーミスタ)25によっても抵抗発熱体31の温度T8が検知される(
図6のS5)。そして、端部サーミスタ25によって検知された温度T8が所定温度TN以上(T8≧TN)か否かが判定され(
図6のS6)、所定温度TN未満であれば、異常低温発生(断線発生)としてヒータ22への電力供給が遮断され(
図6のS7)、画像形成装置の操作パネルにエラー表示が示される(
図6のS8)。一方、検知された温度T8が所定温度TN以上であれば、異常低温発生なしとして印刷動作が開始される(
図6のS9)。
【0053】
また、万が一、抵抗発熱体31が破損、断線するなどにより中央サーミスタ25の検知に基づく温度制御が不能になった場合は、長手方向端部の抵抗発熱体31を含む他の抵抗発熱体31が異常高温になる虞がある。その場合は、抵抗発熱体31が所定温度以上になったときにサーモスタット27が作動して抵抗発熱体31への電力供給を遮断することで、抵抗発熱体31が異常高温となるのを回避する。
【0054】
(●用紙分離機構)
図7Aは、定着ニップを通過した用紙を定着ベルト20から分離する用紙分離機構300を備えた定着装置の概念図を示すものである。この用紙分離機構300は、用紙分離部材としての分離板310を有し、当該分離板310によって定着ベルト20から用紙を分離する。当該分離板310は、後述するように定着ベルト20に対して近付く方向と遠ざかる方向に移動可能に配設されている。
【0055】
ニップ形成部材としてのヒータ22とヒータホルダ23は、加圧ローラ21に対して、定着ニップが加圧ローラ21で加圧される接近位置と、定着ニップが脱圧される離反位置との間を、
図7Aで左右方向に移動可能に配設されている。そして、分離板310が後述する回動規制穴321の第1規制部で回動規制された状態で、ヒータ22とヒータホルダ23が前記離反位置に移動可能に構成されている。
【0056】
分離板310は、定着ベルト20の軸線方向と平行に延在し、その長手方向両端部に、定着ベルト20の外周面に当接する接触部313を有する。この接触部313が定着ベルト20の軸線方向両端部の外周面に当接することで、分離板310と定着ベルト20との間の間隔を所定の大きさに規制する。
【0057】
定着ベルト20は、その軸線方向両端部がガイド部材としてのフランジ400によって摺動可能に支持されている。フランジ400はリング状に構成され、定着ベルト20の軸線方向両端部の内周に摺動可能に嵌挿されている。これにより、定着ベルト20の回転がフランジ400によってガイドされる。
【0058】
図7Baのように、定着ベルト20の軸線方向両端部の内周面と、フランジ400の外周面との間には、一般に隙間(ガタ)Cが形成されている。この隙間Cが存在することで、定着ベルト20のスムーズな周回走行が可能となる。
【0059】
しかし、定着ベルト20と加圧ローラ21の平行度がズレていると、定着ベルト20が加圧ローラ21に倣ってフランジ400に対して傾斜することがある。そうすると、定着ベルト20の周回走行性が不安定化し、用紙ジャムの要因ともなる。
【0060】
本発明実施形態では、
図7Ba⇒
図7Bbのように、分離板310の長手方向両端部の接触部313の少なくとも一方を、定着ベルト20の少なくとも一方の端部外周面に当接させることで、定着ベルト20の傾斜(平行度ズレ)を抑制し、定着ベルト20の周回走行性を安定化する。接触部313の位置は、
図7Ba、
図7Bbのように、フランジ400に対して定着ベルト20の半径方向で対向する位置にすることができる。こうすることで、定着ベルト20のガタつき量を最小化することができる。
【0061】
詳しくは、
図7Baでは分離板310が定着ベルト20ないしフランジ400対して比較的離間した位置にある。このため、分離板310の片方(左方)の接触部313は定着ベルト20の端部外周面に当接しているが、反対側の接触部313は定着ベルト20の端部外周面から離間している。
【0062】
このため、分離板310の、定着ベルト20に対して接触しない非接触部としての先端部311と定着ベルト20の外周面との間に比較的大きな間隔が生じている。このように大きな間隔があると、当該間隔を用紙が通過して定着ベルト20に巻付き、用紙ジャムが発生しやすくなる。
【0063】
そこで、分離板310の先端部311が定着ベルト20に接触しない範囲で、
図7Bbのように分離板310を定着ベルト20に近付ける。これにより、分離板310の両端の接触部313が定着ベルト20の両端外周面に接触した状態で左右のフランジ400に接近する。
【0064】
図7Baでは、フランジ400と定着ベルト20との間のガタCにより、フランジ400の軸線に対する定着ベルト20の傾斜(平行度ズレ)が大きくなり、定着ベルト20の周回走行性が不安定化する。しかし、
図7Bbのように分離板310の両端の接触部313を左右のフランジ400に接近させると、定着ベルト20の傾斜(平行度ズレ)を抑制して定着ベルト20の周回走行性を安定化することができる。
【0065】
図7Bbの状態では、左右のフランジ400の下側に比較的大きなガタCができるが、分離板310の両端の接触部313が左右のフランジ400に接近しているため、左右のフランジ400の上側のガタCは小さい。このため定着ベルト20の傾斜(平行度ズレ)が大きくなって定着ベルト20の周回走行性が不安定化することはない。
【0066】
次に、分離板310の変形(弾性変形)について
図7Bc~
図7Beを参照して説明する。分離板310はステンレス等の耐熱性を有する金属で構成されるが、板厚が薄いために変形しやすい。このため、分離板310を
図7Ba⇒
図7Bbのように定着ベルト20に接近させていくと、分離板310の左右いずれか一方のT部に(
図7BcのT部)が定着ベルト20の回転に引きずられて回転方向下流側(紙面奥側)に変位することがある。
【0067】
また、分離板310を
図7Bbのように定着ベルト20に接近させなくても、
図7Baに示す定着ベルト20の左右のガタCが(規則的又は不規則的に)増減変動することで、前述と同様に左右いずれか一方の接触部313が定着ベルト20の回転に引きずられて回転方向下流側(
図7Bcの紙面奥側)に変位することがある。そうすると、分離板310が
図7Bc、
図7BdのT部に示すように長手方向で捩れたり、短手方向で座屈(弾性座屈)したりする。
【0068】
しかしながら、このように分離板310が変形(弾性変形)しても、分離板310の左右の接触部313が
図7Beのように定着ベルト20に接触することで、分離板310の先端部311と定着ベルト20の外周面との間の「間隔小」を一定に維持することができる。この「間隔小」の大きさは、定着ベルト20の左右のガタCの大きさが変動しても定着ベルト20の軸線方向で常に一定であるため、用紙ジャムを効果的に防止することができる。
【0069】
図7BeのT部は、
図7Bcと
図7BdのT部に対応している。このT部において、図示例ではフランジ400と定着ベルト20の間のガタC(小)は反対側のガタC(小)と同程度であるが、分離板310の接触部313が定着ベルト20の端部を押すことによって上側のガタCはさらに小さくなり、反対側のガタCは大きくなる。これにより、定着ベルト20の傾きは小さくなり、軸線方向のベルト寄りによるベルトの端部破損が発生しにくくなる効果も得られる。
【0070】
定着ベルト20からの用紙の分離性を向上するために、定着ニップ出口側における定着ベルト20の曲率を大きくするのが有効であることが知られている。そこで、
図7Cのようにヒータを保持したニップ形成部材NFを定着ベルト20の軸線方向長さよりも短くし、フランジ400を矢印のように定着ニップから離れる方向に移動して定着ベルト20を引っ張る。これにより、定着ベルト20の軸線方向全長にわたって、定着ニップ出口側と入口側における定着ベルト20の曲率が増大し、用紙の分離性が良好になる。
【0071】
一方、
図7Dのように面状ヒータを含むニップ形成部材SHが、定着ベルト20の軸線方向長さよりも長くて定着ベルト20の軸線方向両端からはみ出している場合、フランジ400を定着ニップから離れる方向に引っ張ろうとすると、定着ベルト20にテンションが掛かり過ぎる場合がある。定着ベルト20にテンションが掛かり過ぎると定着ベルト20の内面が摩耗したり、摺動負荷が大きくなって定着ベルト20がスリップしたりして用紙搬送不良が発生する。
【0072】
その他、定着ベルト20にテンションが掛かり過ぎると定着ユニットの組立性にも問題が出る。そのため、フランジ400とニップ形成部材SHは定着ベルト20内面にガタを持たせるよう径方向の大きさを小さめに設定していた。その結果、定着ニップ出口側における定着ベルト20の曲率を大きくするのには限界があり、用紙分離性の改善に課題が残っていた。本発明実施形態によれば、このような課題も解決することができる。
【0073】
図8Aは、用紙分離機構300と分離板310の具体的な実施形態を示すものである。この実施形態では、分離板310が支軸322を中心として回動可能に配設されている。すなわち、分離板310は、
図9Aに示すように分離板310の先端部311が定着ベルト20に対して近付く方向と遠ざかる方向に回動可能に配設されている。
【0074】
支軸322は、
図8Cのように(片方のみ図示する)一対の側板320の互い対向する内面に突設されている。当該支軸322が、分離板310の両端部に形成された軸穴315に回転可能に嵌合される。
【0075】
前記側板320は、加圧ローラ21の両端軸部を回転自在に支承するためのU字状の切欠き324を有する。側板320の切欠き324の上方に隣接した位置に、支軸322を中心とする扇状の移動規制穴としての回動規制穴321が形成されている。この回動規制穴321によって、分離板310の回動範囲(移動位置)を規制する。
【0076】
分離板310は
図8Cのように、長手方向両端部に、長手方向に突出した被移動規制片としての被回動規制片312を有し、この被回動規制片312が回動規制穴321に挿入されている。これら被回動規制片312と回動規制穴321とによって、分離板310の移動規制手段ないし回動規制手段が構成されている。
【0077】
すなわち、回動規制穴321の一端部(
図8Cで左側端部)が、分離板310の先端部311が定着ベルト20に対して近付く方向の分離板310の移動位置ないし回動位置を定める第1規制部を構成する。また、回動規制穴321の他端部(
図8Cで右側端部)が、分離板310の先端部311が定着ベルト20から遠ざかる方向の分離板310の移動位置ないし回動位置を定める第2規制部を構成する。尚、規制穴321の第1規制部、第2規制部以外の面(円弧状の面)と被回動規制片312との間には適切なクリアランスが設けられているため、円弧状の面が被回動規制片312と干渉して分離板310の回転が阻害されることはない。
【0078】
分離板310の先端部311が定着ベルト20に近付く方向に回動するとき、当該先端部311と定着ベルト20の望ましい間隔は、0.6~1.2mmもしくは0.6~1.3mmである。定着ベルト20と分離板310との間隔が小さ過ぎると、分離板310が定着ベルト20に接触してベルトに傷が付きやすくなり、これが異常画像発生の原因になる。前述した0.6mmの間隔があれば、定着ベルト20に傷が付くのを防止することができる。
【0079】
定着ベルト20と分離板310との間隔が大き過ぎると、この大きな間隔を用紙が通過して定着ベルト20に巻付き、用紙ジャムが発生しやすくなる。前述した1.2mmもしくは1.3mm以下の間隔であれば、用紙が定着ベルト20に巻付いて用紙ジャムとなるのを防止することができる。なお、被回動規制片312と回動規制穴321の関係は逆にすることも可能であり、分離板310側に被回動規制穴、側板320側に回動規制片を設けることも可能である。
【0080】
分離板310の長手方向両端部であって短手方向下端部に、L字状の接触部313が形成されている。この接触部313が、定着ベルト20のガタつき量を抑制するため、フランジ400に対して定着ベルト20の半径方向で対向する位置に配置される。
【0081】
分離板310の両端部のバネ係合部314と、側板上端部のバネ係合部323との間に、引張バネ330が架け渡されている。この引張バネ330によって、分離板310が支軸322を中心として
図8B、
図8Cで時計方向に付勢されている。
【0082】
この回動付勢方向は、分離板310の先端部311が定着ベルト20に近付く方向である。分離板310は前述したように変形しやすいため、分離板310の回動付勢を確実にするためにその両端部に引張バネ330を取付けるのが望ましい。
【0083】
もし接触部313が無かった場合には、引張バネ330の付勢力によって、
図9Aのように、分離板310の先端部311を定着ベルト20の外周面に対して当接させることができる。この状態で、回動規制穴321の片側端部(左側端部)に、被回動規制片312が当接するような位置に321aは設けられている。したがって、仮に何らかの原因により接触部313が機能しない状態になったとしても、分離板310は
図9Aの状態からさらに時計方向に回動することができない。
【0084】
(●用紙ジャムの対応)
図9Bのように、用紙ジャムが発生して用紙Pが定着ベルト20に巻き付いた場合、分離板310が用紙Pから逃げるように反時計方向に回動して用紙Pとの衝突を回避することができる。これにより、用紙Pを損傷するのを防止することができる。また、定着ベルト20に巻き付いた用紙Pを
図9Cのように定着ニップから下方に引き抜く際に、分離板310が用紙Pから逃げるように反時計方向に回動するので、用紙Pを損傷することなく引き抜くことができる。
【0085】
分離板310の作用で用紙分離性が高まっても、印刷設定を間違えた場合など、用紙Pの先端までトナーが載っている画像を定着させようとすると、分離板310と定着ベルト20との間に用紙Pが潜り込み、用紙Pが定着ベルト20に巻き付く場合がある。用紙Pが定着ベルト20に複数層分巻き付いたり、用紙Pに大きなシワが発生すると、用紙Pを引き抜くときに分離板310に強く接触して分離板310が変形したり定着ベルト20に傷が付いたりする場合がある。
【0086】
そこで本実施形態は、引張バネ330で分離板310を押さえる構成にしている。この構成であれば、用紙Pを引き抜くときに分離板310が引張バネ330に抗して開放されるので、分離板310の変形や傷付きを抑制できる。また、用紙Pを引き抜くときの力も小さくすることができるので、操作性がよくなる。
【0087】
引き抜くときの力を小さくするには、分離板310の開放量、すなわち分離板310の被回動規制片312と側板320の回動規制穴321とのクリアランスを、定着ニップ脱圧時の脱圧量より大きくすることが有効である。定着ニップ脱圧時の脱圧量は、加圧状態と脱圧状態とで、
図10に示すように、加圧ローラ21の芯金Mとニップ形成部材SHとの距離GAPを、ノギス等で測定し差し引くことで求めることができる。
【0088】
しかしながら、回動規制穴321の開放量を大きくし過ぎると、分離板310の先端部311が加圧ローラ21に接触したり、当該接触により加圧ローラ21を傷付けたりする場合がある。このため、分離板310の先端部311が加圧ローラ21に接触するよりも手前の位置で分離板310が回動停止するように、回動規制穴321の大きさを設定する構成が好ましい。すなわち、分離板310が、その先端部311と定着ベルト20との間の間隔を広げる方向に回動する際、加圧ローラ21に対して接触する前に、回動規制穴321の第2規制部としての他端部(
図8Cで右側端部)で回動規制する。
【0089】
加圧ローラ21との接触を防ぐ他の方法として、分離板310の支軸322の位置を工夫し、加圧ローラ21に当接しないレイアウトにしてもよい。そのためには、加圧ローラ21の径を定着ベルト20よりも小さくしたり、加圧ローラ21の中心を定着ベルト20中心よりも分離板310から離れる方向(
図9Dで下方)にずらすことも有効である。
【0090】
(●定着ニップの加圧と脱圧の構成)
【0091】
定着ニップの加圧構成として、第1と第2の2つの加圧構成が可能である。第1の加圧構成は、定着ベルト20側(ヒータホルダ23)を固定し、加圧ローラ21を定着ベルト20に対して接離可能にすると共に定着ベルト20側に付勢する構成である。第2の加圧構成は、加圧ローラ21側(加圧ローラ21の芯金)を固定し、定着ベルト20側を加圧ローラ21に対して接離可能にすると共に加圧ローラ21側に付勢する構成である。
【0092】
後者の第2の加圧構成の方が、用紙ジャムの処理時に用紙Pを引き抜く力をさらに小さくすることができるので望ましい。すなわち、第2の加圧構成であれば、脱圧すると定着ベルト20と加圧ローラ21が離れると共に、定着ベルト20と分離板310も離れる。したがって、引張バネ330の変位が小さくなり、用紙Pを引き抜く力をさらに小さくすることができる。
【0093】
加えて、回動規制穴321における付勢方向のクリアランスを、脱圧量より小さくすることにより、脱圧時に分離板310の
図9Bの時計方向の回転が規制される結果、定着ベルト20と分離板310の先端部311との間の間隔が広がるので、より一層用紙Pを引き抜きやすくなる。
【0094】
また、用紙ジャムの際は定着ニップから十分に紙が見えていないとユーザは用紙Pを引き抜きにくい。定着ベルト20と分離板310の先端部311との間の間隔を広げることができれば、加圧ローラ21と定着ベルト20を容易に逆回転させることができ、用紙Pを定着ニップ上流側(
図9Bで下方)に向けて十分な長さで引き出すことができる。
【0095】
一方、用紙ジャム処理時における定着ベルト20の順回転と逆回転では、定着ベルト20の軌跡が変わる。このため、定着ベルト20の軌跡が変わっても、定着ベルト20と分離板310の先端部311とが接触しない第2の加圧構成の方が好ましい。
【0096】
(●内周使用率)
定着ベルト20の内周使用率(特開2019-082733参照)は、95~99.8%が好ましい。当該内周使用率は、定着ベルト20を
図11Aの斜線部のように切り出し、定着ベルト20をフランジ400に巻き掛けた時の
図11Bの重なり量Wを用いて、以下の式で算出するこができる。
内周使用率=[(定着ベルト20の周長-重なり量W)/定着ベルト20周長L]×100%
定着ベルト20周長Lは、
図11Cのように、切り出した斜線部の全長となる。
【0097】
前記内周使用率は、単に定着ベルト20の周長Lに対するガイド部の周長の長さの比率を表したものであり、組立性(嵌合)の指標にはなるが、ベルト寄りや用紙分離性の指標としては改善の余地がある。つまり、同じ内周使用率であっても、
図12A、
図12Bのように、定着ベルト20の剛性や定着ニップ幅、フランジ400形状により、定着ニップ幅方向のたるみが異なる。具体的には、定着ベルト20の剛性が高く、定着ニップ幅が狭く、フランジ400のガイド形状が真円から遠いほど、たるみが小さくなる。
【0098】
そこで、定着ニップ下流側のたるみを直接ハイトゲージで測定することで、たるみ率を規定するとよい。
図13を参照して当該たるみ率の測定方法を説明する。
【0099】
定着ユニットを
図13の向きにして固定し、加圧ローラ21で定着ニップを加圧した状態で加圧ローラ21を一周以上回転させて停止する。その時の定着ベルト20軸線方向でフランジ400がある領域の、定着ベルト20頂点の高さ座標を
図13(a)のようにハイトゲージで測定する。
【0100】
次に、頂点座標測定した位置を
図13(b)のようにフランジに押さえつけた時の高さ座標を測定する。押さえつける前後の高さ寸法差をたるみ量とし、たるみ率は下式で算出する。
たるみ率=[たるみ量/ベルト径]×100%
【0101】
たるみ率が小さ過ぎると組み立てにくく、フランジ400と定着ベルト20の摺擦により定着ベルト20が摩耗する問題がある。たるみ率が大き過ぎると定着ベルト20が傾きやすくなる他、定着ニップ出口の曲率が小さくなって分離性が悪くなり、分離板310の配置も難しくなる。そのため、たるみ率は0.1~10%が好ましく、0.5~5%がより好ましい。
(●高熱伝導部材の配置)
次に、前述したヒータホルダ23に高熱伝導部材を配置した実施形態を
図14~
図32を参照して説明する。
図14に示すように、本実施形態に係る定着装置9は、回転部材あるいは定着部材としての定着ベルト20と、対向回転部材あるいは加圧部材としての加圧ローラ21と、加熱部材としてのヒータ22と、保持部材としてのヒータホルダ23と、支持部材としてのステー24と、温度検知部材としてのサーミスタ25と、第1高熱伝導部材28等を備えている。
【0102】
定着ベルト20は無端状のベルトからなる。加圧ローラ21は定着ベルト20の外周面に接触して、定着ベルト20との間に定着ニップNを形成する。ヒータ22は定着ベルト20を加熱する。ヒータホルダ23はヒータ22を保持する。ステー24はヒータホルダ23を支持する。
【0103】
サーミスタ25は第1高熱伝導部材28の温度を検知する。
図14の紙面に直交する方向は定着ベルト20、加圧ローラ21、ヒータ22、ヒータホルダ23、ステー24、第1高熱伝導部材28等の長手方向であり、以下、この方向を単に長手方向と呼ぶ。なお、この長手方向は搬送される用紙の幅方向、定着ベルト20のベルト幅方向、そして、加圧ローラ21の軸方向でもある。
【0104】
本実施形態では、前記の間隔における温度落ち込みを抑制して、定着ベルト20の配列方向の温度ムラを抑制するために、前述した第1高熱伝導部材28を設けている。以下、第1高熱伝導部材28についてより詳細に説明する。
【0105】
図14に示すように、第1高熱伝導部材28は、
図14の左右方向において、ヒータ22とステー24との間に配置され、特にヒータ22とヒータホルダ23との間に挟まれる。つまり第1高熱伝導部材28は、一方の面を基材30の裏面に当接させ、他方の面をヒータホルダ23に当接させる。
【0106】
ステー24は、ヒータ22などの厚み方向に延在する二つの垂直部24aの当接面24a1をヒータホルダ23に当接させ、ヒータホルダ23、第1高熱伝導部材28、ヒータ22を支持する。配列交差方向(
図14の上下方向)において、当接面24a1は抵抗発熱体31が設けられる範囲よりも外側に設けられる。これにより、ヒータ22からステー24への伝熱を抑制でき、ヒータ22が定着ベルト20を効率よく加熱できる。
【0107】
図15に示すように、第1高熱伝導部材28は、その厚みが0.3mm、配列方向の長さが222mm、配列交差方向の幅が10mmの板材により構成される。本実施形態では第1高熱伝導部材28は単一の板材により構成されるが、複数の部材からなってもよい。なお、
図15では
図14のガイド部26の記載を省略している。
【0108】
第1高熱伝導部材28は、ヒータホルダ23の凹部23bに嵌め込まれ、その上からヒータ22が取り付けられることで、ヒータホルダ23とヒータ22とに挟み込まれて保持される。本実施形態では、第1高熱伝導部材28の配列方向の幅がヒータ22の配列方向の幅と略同じに設けられる。
【0109】
第1高熱伝導部材28およびヒータ22は、凹部23bを形成する配列方向の両側壁(配列方向規制部)23b1により、配列方向の移動を規制される。このように、第1高熱伝導部材28の定着装置9内での配列方向の位置ズレを規制することで、配列方向の狙いの範囲に対して熱伝導効率を向上させることができる。また、第1高熱伝導部材28およびヒータ22は、凹部23bを形成する配列交差方向の両側壁(配列交差方向規制部)23b2により、配列交差方向の移動を規制される。
【0110】
第1高熱伝導部材28を設ける配列方向の範囲は前記に限らない。例えば
図16に示すように、配列方向の発熱部35に対応する範囲のみに第1高熱伝導部材28を設けてもよい(
図16のハッチング部参照)。
【0111】
加圧ローラ21の加圧力により、第1高熱伝導部材28はヒータ22とヒータホルダ23との間に挟み込まれてこれらの部材に密着する。第1高熱伝導部材28がヒータ22に接触することにより、ヒータ22の配列方向の熱伝導効率が向上する。
【0112】
そして、第1高熱伝導部材28が、配列方向において、ヒータ22の間隔Bに対応する位置に設けられることで、間隔Bにおける熱伝導効率を向上させることができ、配列方向の間隔Bの位置へ伝達される熱量を増やし、配列方向の間隔Bにおける温度を上昇させることができる。従って、ヒータ22の配列方向の温度ムラを抑制できる。
【0113】
これにより、定着ベルト20の配列方向の温度ムラを抑制できる。従って、用紙に定着される画像の定着ムラや光沢ムラを抑制できる。
【0114】
あるいは、間隔において十分な定着性能を確保するために、ヒータ22による余分な加熱をする必要が無くなり、定着装置9の省エネ化を実現できる。また、配列方向の発熱部35全域にわたって第1高熱伝導部材28を設けることにより、ヒータ22による主な加熱領域(つまり、通紙される用紙の画像形成領域)全域において、ヒータ22の伝熱効率を向上させ、ヒータ22ひいては定着ベルト20の配列方向の温度ムラを抑制できる。
【0115】
特に本実施形態では、前記の第1高熱伝導部材28の構成と前述したPTC特性を有する抵抗発熱体31との組み合わせにより、小サイズ用紙通紙時の非通紙領域による過昇温を効果的に抑制できる。つまり、PTC特性により非通紙領域における抵抗発熱体31の発熱量を抑制すると共に、温度が上昇した非通紙部の熱量を通紙部の側へ効率的に伝達することができ、非通紙領域による過昇温を効果的に抑制できる。
【0116】
また間隔Bの周辺においても、間隔Bの発熱量が小さいことによりその温度が小さくなるため、第1高熱伝導部材28を配置することが好ましい。特に本実施形態では、配列方向において、発熱部35の全域にわたって第1高熱伝導部材28が設けられる。これにより、ヒータ22(定着ベルト20)の配列方向の温度ムラをより抑制できる。
【0117】
次に、定着装置の異なる実施形態について説明する。
図17に示すように、本実施形態の定着装置9は、ヒータホルダ23と第1高熱伝導部材28との間に第2高熱伝導部材36を有する。第2高熱伝導部材36は、ヒータホルダ23やステー24、第1高熱伝導部材28等の部材の積層方向(
図17の左右方向)において、第1高熱伝導部材28と異なる位置に設けられる。
【0118】
より詳しくは、第2高熱伝導部材36は第1高熱伝導部材28に重ね合わせされて設けられる。なお、
図17は
図2とは異なり、配列方向の第2高熱伝導部材36が配置され、サーミスタ25が配置されていない断面を示している。
【0119】
第2高熱伝導部材36は基材30よりも熱伝導率の高い部材、例えばグラフェンやグラファイトにより構成される。本実施形態では、第2高熱伝導部材36は厚み1mmのグラファイトシートにより形成される。ただし、第2高熱伝導部材36をアルミニウムや銅、銀などの板材により形成してもよい。
【0120】
図18に示すように、配列方向に部分的に設けられた各第2高熱伝導部材36が、配列方向に複数配置される。ヒータホルダ23の凹部23bの第2高熱伝導部材36が設けられる部分は、その他の部分よりもその深さが一段深く設けられている。
【0121】
第2高熱伝導部材36は、配列方向の両側で、ヒータホルダ23との間に隙間が設けられる。これにより、第2高熱伝導部材36からヒータホルダ23への伝熱を抑制し、ヒータ22が定着ベルト20を効率的に加熱できる。なお、
図18では
図17のガイド部26の記載を省略している。
【0122】
図19に示すように、第2高熱伝導部材36(ハッチング部参照)は、配列方向において、間隔Bに対応する位置で、隣り合う抵抗発熱体31の少なくとも一部に重なる位置に設けられ、特に本実施形態では、間隔B全域にわたって設けられる。ただし
図19(および後述の
図20)では、第1高熱伝導部材28が、配列方向の発熱部35に対応する領域のみに設けられる場合を示しているが、前述のようにこれに限らない。
【0123】
本実施形態のように、第1高熱伝導部材28に加えて、配列方向の間隔Bに対応する位置で、隣り合う抵抗発熱体31の少なくとも一部に重なる位置に第2高熱伝導部材36を設けることで、間隔Bにおける配列方向の熱伝達効率を特に向上させ、ヒータ22の配列方向の温度ムラをより抑制できる。また、最も好ましくは、後述する
図28に示すように、間隔Bに対応する位置でその全域にのみ第1高熱伝導部材89および第2高熱伝導部材90を設けることができる。これにより、間隔Bに対応する位置で、その他の領域と比較して特に熱伝達効率を向上させることができる。
【0124】
前記と異なる本発明の一実施形態では、第1高熱伝導部材28および第2高熱伝導部材36が前記グラフェンシートにより構成される。これにより、グラフェンの面に沿う所定の方向、つまり、厚み方向ではなく配列方向に熱伝導率の高い第1高熱伝導部材28および第2高熱伝導部材36を形成できる。従って、ヒータ22や定着ベルト20の配列方向の温度ムラを効果的に抑制できる。
【0125】
グラフェンは薄片状の粉体である。グラフェンは、後述する
図31に示すように、炭素原子の平面状の六角形格子構造からなる。グラフェンシートとは、シート状のグラフェンであり、通常、単層である。炭素の単一層に不純物を含んでいてもよい。
【0126】
またグラフェンはフラーレン構造を有したものであってもよい。フラーレン構造は、一般的に、同数の炭素原子が5員環および6員環でかご状に縮環した多環体を形成してなる化合物として認識されており、例えば、C60、C70およびC80フラーレン又は3配位の炭素原子を有する他の閉じたかご状構造である。
【0127】
グラフェンシートは、人工物であり、例えば化学気相蒸着(CVD)法で作製されうる。グラフェンシートには市販品を用いることができる。グラフェンシートの大きさ、厚み、あるいは後述するグラファイトシートの層数などは、例えば透過型電子顕微鏡(TEM)によって測定される。
【0128】
また、グラフェンを多層化したグラファイトは大きな熱伝導異方性を持つ。グラファイトは、後述する
図32に示すように、炭素原子の縮合六員環層面が平面状に広がった層を有し、この層が何重にも重なった結晶構造を有する。
【0129】
この結晶構造における炭素原子間は、層内での隣接する炭素原子同士は共有結合をなし、層間の炭素原子同士はファン・デル・ワールス結合をなす。そして、共有結合はファン・デル・ワールス結合に比べてその結合力が大きく、層内での結合と層間での結合とでは大きな異方性を持つ。
【0130】
つまり、第1高熱伝導部材28あるいは第2高熱伝導部材36をグラファイトにより構成することで、第1高熱伝導部材28あるいは第2高熱伝導部材36における配列方向の伝熱効率が厚み方向(つまり、部材の積層方向)に比べて大きくなり、ヒータホルダ23への伝熱を抑制できる。従って、ヒータ22の配列方向の温度ムラを効率よく抑制するとともに、ヒータホルダ23側へ流出する熱を最小限に抑えることができる。また第1高熱伝導部材28あるいは第2高熱伝導部材36をグラファイトにより構成することで、700度程度まで酸化しない優れた耐熱性を第1高熱伝導部材28あるいは第2高熱伝導部材36に持たせることができる。
【0131】
グラファイトシートの物性や寸法は、第1高熱伝導部材28あるいは第2高熱伝導部材36に求められる機能に応じて適宜変更できる。例えば、高純度のグラファイトあるいは単結晶グラファイトを用いる、あるいは、グラファイトシートの厚みを大きくすることで、その熱伝導の異方性を高めることができる。
【0132】
また、定着装置9を高速化するために、厚みの小さいグラファイトシートを用いて定着装置9の熱容量を小さくしてもよい。また、定着ニップNやヒータ22の幅が大きい場合には、それに合わせて第1高熱伝導部材28あるいは第2高熱伝導部材36の配列方向の幅を大きくしてもよい。
【0133】
機械的強度を高める観点から、グラファイトシートの層数は11以上であることが好ましい。またグラファイトシートは部分的に単層と多層の部分とを含んでいてもよい。
【0134】
第2高熱伝導部材36は、配列方向において、間隔B(さらに領域C)に対応する位置で、隣り合う抵抗発熱体31の少なくとも一部に重なる位置に設けられればよく、
図19の配置に限らない。例えば、
図20に示すように、第2高熱伝導部材36Aは、配列交差方向において、基材30よりも配列交差方向の両側へ飛び出して設けられる。
【0135】
また第2高熱伝導部材36Bは、配列交差方向において、抵抗発熱体31が設けられる範囲に設けられる。第2高熱伝導部材36Cは、間隔Bの一部に設けられる。
【0136】
また、
図21に示すように、本実施形態では、第1高熱伝導部材28とヒータホルダ23との間に厚み方向(
図21の左右方向)の隙間(逃げ部23c)を設ける。つまり、ヒータホルダ23のヒータ22、第1高熱伝導部材28、そして第2高熱伝導部材36を配置するための凹部23b(
図18参照)の一部領域であって、配列方向の第2高熱伝導部材36が設けられた部分以外の部分で、配列交差方向の一部領域に、凹部23bの深さをその他の第1高熱伝導部材28を受ける部分よりも深くする、断熱層としての逃げ部23cを設ける。
【0137】
これにより、ヒータホルダ23と第1高熱伝導部材28との接触面積を最小限にとどめることができる。従って、第1高熱伝導部材28からヒータホルダ23への伝熱を抑制し、ヒータ22が定着ベルト20を効率的に加熱できる。なお、配列方向の第2高熱伝導部材36が設けられる断面では、前述の実施形態の
図17のように、第2高熱伝導部材36がヒータホルダ23に当接する。
【0138】
また、特に本実施形態では、配列交差方向(
図21の上下方向)において、抵抗発熱体31が設けられた範囲全域にわたって逃げ部23cが設けられる。これにより、特に第1高熱伝導部材28からヒータホルダ23への伝熱を抑制し、ヒータ22が定着ベルト20を効率的に加熱できる。なお、断熱層として、逃げ部23cのように空間を設ける構成の他、ヒータホルダ23よりも熱伝導率の低い断熱部材を設ける構成であってもよい。
【0139】
さらに、以上の説明では、第2高熱伝導部材36を第1高熱伝導部材28とは異なる部材として設けたが、これに限らない。例えば、第1高熱伝導部材28の間隔Bに対応する部分を、その他の部分よりも厚みを設けてもよい。
【0140】
図22は、第1高熱伝導部材の配置の他の例を示すヒータの平面図である。
図22に示すように、配列方向の間隔Bに対応する位置で、その全域のみに第1高熱伝導部材89を設けることもできる。なお、
図22では便宜上、抵抗発熱体56と第1高熱伝導部材89を
図22の上下方向にずらして示しているが、両者は配列交差方向のほぼ同じ位置に配置される。ただし、これに限るものではなく、第1高熱伝導部材89が抵抗発熱体56の配列交差方向の一部に設けられていたり、
図23のように配列交差方向の全体を覆うようにして設けられていたりしてもよい。
【0141】
さらに、
図23に示すように、第1高熱伝導部材89を、配列方向の間隔Bに対応する位置に加えて、その間隔Bを間にはさむ両側の抵抗発熱体56にまたがって設けることもできる。この、両側の抵抗発熱体56にまたがって設ける、とは、第1高熱伝導部材89が両側の抵抗発熱体56と配列方向の位置が少なくとも一部重なることを言う。
【0142】
なお、ヒータ22の全ての間隔Bに対応して第1高熱伝導部材89を設けてもよいし、例えば
図23のように間隔Bの1箇所に対応する位置にだけ第1高熱伝導部材89を設けるように、一部の間隔Bに対応する位置にだけ第1高熱伝導部材89を設けてもよい。ここで、配列方向の間隔Bに対応する位置に設ける、とは、間隔Bと配列方向に少なくともその一部が重なることを言う。
【0143】
ここで、本実施形態におけるヒータ63は、後述する
図39に示されるヒータの抵抗発熱体31と同じように、複数の抵抗発熱体56が、ヒータ63の長手方向に互いに間隔をあけて配置されている。しかしながら、複数の抵抗発熱体56が互いに間隔をあけて配置される構成においては、抵抗発熱体56同士の間隔である
図22の分割領域Bにおけるヒータ63の温度が、抵抗発熱体56が配置される部分に比べて低くなる傾向にある。このため、分割領域Bにおいては、定着ベルト61の温度も低くなり、定着ベルト21の温度が長手方向に渡って不均一になる虞がある。
【0144】
そのため、本実施形態においては、分割領域Bにおける温度落ち込みを抑制して、定着ベルト61の長手方向の温度ムラを抑制するために、前記第1高熱伝導部材89を設けている。以下、第1高熱伝導部材89についてより詳細に説明する。
【0145】
図25に示されように、第1高熱伝導部材89は、図の左右方向において、ヒータ63とステー65との間に配置され、特にヒータ63とヒータホルダ64との間に挟まれる。つまり、第1高熱伝導部材89の一方の面は、ヒータ63の基材55の裏面に当接し、第1高熱伝導部材89の他方の面(一方の面とは反対側の面)は、ヒータホルダ64に当接している。
【0146】
ステー65は、ヒータ63などの厚み方向に延在する二つの垂直部65aの当接面65a1をヒータホルダ64に当接させ、ヒータホルダ64、第1高熱伝導部材89、ヒータ63を支持する。長手交差方向(
図25の上下方向)において、当接面65a1は抵抗発熱体56が設けられる範囲よりも外側に設けられる。これにより、ヒータ63からステー65への伝熱を抑制でき、ヒータ63が定着ベルト61を効率よく加熱できる。
【0147】
図26に示されるように、第1高熱伝導部材89は、一定の厚みを有する板状の部材であり、例えば、その厚みが0.3mm、長手方向方向の長さが222mm、長手交差方向の幅が10mmに設定される。本実施形態においては、第1高熱伝導部材89が単一の板材により構成されるが、複数の部材からなってもよい。なお、
図26においては、
図25に記載のガイド部材66が省略されている。
【0148】
第1高熱伝導部材89は、ヒータホルダ64の凹部64bに嵌め込まれ、その上からヒータ63が取り付けられることで、ヒータホルダ64とヒータ63とに挟み込まれて保持される。本実施形態においては、第1高熱伝導部材89の長手方向の幅がヒータ63の長手方向の幅と略同じに設定されている。
【0149】
第1高熱伝導部材89及びヒータ63は、凹部64bの長手方向と交差する方向に配置される両側壁(長手方向規制部)64b1によって、長手方向の移動が規制される。このように、第1高熱伝導部材89の定着装置60内における長手方向の位置ずれが規制されることにより、長手方向の狙いの範囲に対して熱伝導効率を向上させることができる。また、第1高熱伝導部材89及びヒータ63は、凹部64bの長手方向に配置される両側壁(配列交差方向規制部)64b2によって、長手交差方向の移動が規制される。
【0150】
第1高熱伝導部材89が配置される長手方向(矢印X方向)の範囲は、
図26に示される範囲に限らない。例えば、
図29に示されるように、抵抗発熱体56が配置される長手方向の範囲のみに第1高熱伝導部材89が配置されてもよい(
図29におけるハッチング部参照)。
【0151】
また、
図22に示される例のように、長手方向(矢印X方向)の間隔(分割領域)Bに対応する位置で、その全域のみに第1高熱伝導部材89を配置することもできる。なお、
図22においては、便宜上、抵抗発熱体56と第1高熱伝導部材89が
図22の上下方向にずらして示されているが、両者は長手交差方向(矢印Y方向)のほぼ同じ位置に配置される。
【0152】
また、第1高熱伝導部材89は、抵抗発熱体56の長手交差方向(矢印Y方向)の一部に渡って配置されてもよいし、
図23に示される例のように、第1高熱伝導部材89が抵抗発熱体56の長手交差方向(矢印Y方向)の全体に渡って配置されていてもよい。さらに、
図23に示されるように、第1高熱伝導部材89を、長手方向の間隔Bに対応する位置に加えて、その間隔Bを間にはさむ両側の抵抗発熱体56にまたがって配置することもできる。
【0153】
この「第1高熱伝導部材89を両側の抵抗発熱体56にまたがって配置する」とは、第1高熱伝導部材89が両側の抵抗発熱体56と長手方向の位置が少なくとも一部重なることを意味する。また、第1高熱伝導部材89は、ヒータ63の全ての間隔Bに対応する位置に配置されてもよいし、
図23に示される例のように、一部の間隔B(この場合1箇所)に対応する位置だけ配置されてもよい。ここで、「第1高熱伝導部材89が間隔Bに対応する位置に配置される」とは、間隔Bと第1高熱伝導部材89の少なくとも一部が長手方向において重なることを意味する。
【0154】
加圧ローラ62の加圧力により、第1高熱伝導部材89はヒータ63とヒータホルダ64との間に挟み込まれてこれらの部材に密着する。第1高熱伝導部材89がヒータ63に接触することにより、ヒータ63の長手方向の熱伝導効率が向上する。そして、第1高熱伝導部材89が、長手方向において、ヒータ63の間隔Bに対応する位置に配置されることにより、間隔Bにおける熱伝導効率を向上させることができ、間隔Bへ伝達される熱量を増やし、間隔Bにおける温度を上昇させることができる。
【0155】
これにより、ヒータ63の長手方向の温度ムラを抑制でき、定着ベルト61の長手方向の温度ムラを抑制できる。その結果、用紙に定着される画像の定着ムラ及び光沢ムラを抑制できる。
【0156】
また、間隔Bにおいて十分な定着性能を確保するために、ヒータ63の発熱量を多くする必要が無くなり、定着装置の省エネ化を実現できる。特に、抵抗発熱体56が配置される長手方向全域に渡って第1高熱伝導部材89が配置される場合は、ヒータ63による主な加熱領域(つまり、通紙される用紙の画像形成領域)全域において、ヒータ63の伝熱効率を向上させ、ヒータ63ひいては定着ベルト61の長手方向の温度ムラを抑制できる。
【0157】
さらに、第1高熱伝導部材89とPTC特性を有する抵抗発熱体56との組み合わせにより、小サイズ用紙通紙時の非通紙領域による過昇温をより効果的に抑制できる。このPTC特性とは、温度が高くなると抵抗値が高くなる(一定電圧をかけた場合に、ヒータ出力が下がる)特性である。すなわち、抵抗発熱体56がPTC特性を有していることにより、非通紙領域における抵抗発熱体56の発熱量を効果的に抑制できると共に、第1高熱伝導部材89によって、温度が上昇した非通紙領域の熱量を通紙領域へ効率的に伝達できるので、これらの相乗効果により非通紙領域による過昇温を効果的に抑制できる。
【0158】
また、間隔Bの周辺においても、間隔Bの発熱量が小さいことによりヒータ63の温度が低くなるため、第1高熱伝導部材89を配置することが好ましい。例えば、
図24に示される間隔Bの周辺の領域を含む拡大分割領域Cに対応する位置に、第1高熱伝導部材89を配置することにより、間隔B及びその周辺における長手方向の熱伝達効率を向上させ、ヒータ63の長手方向の温度ムラをより効果的に抑制できる。また、第1高熱伝導部材89が、全ての抵抗発熱体56が配置される領域の長手方向全体に渡って配置されている場合は、ヒータ63(定着ベルト61)の長手方向の温度ムラをより確実に抑制できる。
【0159】
続いて、定着装置のさらに別の実施形態について説明する。
図25に示される定着装置60は、ヒータホルダ64と第1高熱伝導部材89との間に第2高熱伝導部材90を有している。第2高熱伝導部材90は、ヒータホルダ64,ステー65、第1高熱伝導部材89などの部材の積層方向(
図25における左右方向)において、第1高熱伝導部材89と異なる位置に設けられる。
【0160】
より詳しくは、第2高熱伝導部材90は、第1高熱伝導部材89に重ね合わせされて設けられる。また、本実施形態においては、前記
図14に示される実施形態と同じように、温度センサ(サーミスタ)67が設けられているが、
図25は、温度センサ67が配置されていない断面を示している。
【0161】
第2高熱伝導部材90は、基材55よりも熱伝導率の高い部材、例えばグラフェン又はグラファイトにより構成される。本実施形態においては、第2高熱伝導部材90が、厚み1mmのグラファイトシートにより構成される。また、第2高熱伝導部材90は、アルミニウム、銅、銀などの板材により構成されてもよい。
【0162】
図26に示されるように、第2高熱伝導部材90は、ヒータホルダ64の凹部64bに複数配置され、各第2高熱伝導部材90同士の間には長手方向の間隔が介在している。ヒータホルダ64の第2高熱伝導部材90が設けられる部分には、その他の部分よりも一段深い窪みが形成されている。
【0163】
第2高熱伝導部材90は、長手方向の両側において、ヒータホルダ64との間に隙間が設けられている。これにより、第2高熱伝導部材90からヒータホルダ64への伝熱が抑制され、ヒータ63によって定着ベルト61が効率的に加熱される。なお、
図26においては、
図25に記載のガイド部材66が省略されている。
【0164】
図27に示されるように、第2高熱伝導部材90(ハッチング部参照)は、長手方向(矢印X方向)において、間隔Bに対応する位置で、隣り合う抵抗発熱体56の少なくとも一部に重なる位置に配置されている。特に、本実施形態においては、第2高熱伝導部材90が、間隔B全域に渡って配置されている。なお、
図27(および後述の
図29)においては、第1高熱伝導部材89が、全ての抵抗発熱体56が配置される領域の長手方向全体に渡って配置されている場合を示しているが、第1高熱伝導部材89の配置範囲はこれに限らない。
【0165】
本実施形態のように、第1高熱伝導部材89に加えて、長手方向の間隔Bに対応する位置で、隣り合う抵抗発熱体56の少なくとも一部に重なる位置に第2高熱伝導部材90が配置されていることにより、間隔Bにおける長手方向の熱伝達効率をより一層向上させ、ヒータ63の長手方向の温度ムラをより効果的に抑制できる。また、最も好ましくは、
図28に示されるように、間隔Bに対応する位置でその全域にのみ第1高熱伝導部材89及び第2高熱伝導部材90を設ける。
【0166】
これにより、間隔Bに対応する位置において、その他の領域と比較して特に熱伝達効率を向上させることができる。なお、
図28においては、便宜上、抵抗発熱体56と第1高熱伝導部材89及び第2高熱伝導部材90が、図の上下方向にそれぞれずらして示されているが、これらは長手交差方向(矢印Y方向)のほぼ同じ位置に配置される。ただし、これに限るものではなく、第1高熱伝導部材89及び第2高熱伝導部材90は、抵抗発熱体56の長手交差方向の一部に配置されていてもよいし、長手交差方向の全体を覆うようにして配置されていてもよい。
【0167】
また、第1高熱伝導部材89及び第2高熱伝導部材90の両方が前記グラフェンシートにより構成されてもよい。この場合、グラフェンの面に沿う所定の方向、つまり、厚み方向ではなく長手方向に熱伝導率の高い第1高熱伝導部材89及び第2高熱伝導部材90を形成できる。このため、ヒータ63及び定着ベルト61の長手方向の温度ムラを効果的に抑制できる。
【0168】
グラフェンは薄片状の粉体である。グラフェンは、
図31に示されるように、炭素原子の平面状の六角形格子構造から成る。グラフェンシートとは、シート状のグラフェンであり、通常、単層である。
【0169】
また、グラフェンシートは、炭素の単一層に不純物を含んでいてもよいし、フラーレン構造を有するものであってもよい。フラーレン構造は、一般的に、同数の炭素原子が5員環および6員環でかご状に縮環した多環体を形成して成る化合物として認識されており、例えば、C60、C70およびC80フラーレン又は3配位の炭素原子を有する他の閉じたかご状構造である。
【0170】
グラフェンシートは、人工物であり、例えば化学気相蒸着(CVD)法により作製され得る。グラフェンシートには市販品を用いることができる。グラフェンシートの大きさ、厚み、あるいは後述するグラファイトシートの層数などは、例えば透過型電子顕微鏡(TEM)によって測定される。
【0171】
また、グラフェンを多層化したグラファイトは大きな熱伝導異方性を持つ。グラファイトは、
図32に示すように、炭素原子の縮合六員環層面が平面状に広がった層を有し、この層が何重にも重なった結晶構造を有する。
【0172】
この結晶構造における炭素原子間は、層内での隣接する炭素原子同士は共有結合をなし、層間の炭素原子同士はファン・デル・ワールス結合をなす。そして、共有結合はファン・デル・ワールス結合に比べてその結合力が大きく、層内での結合と層間での結合とでは大きな異方性を持つ。つまり、第1高熱伝導部材89あるいは第2高熱伝導部材90をグラファイトにより構成することにより、第1高熱伝導部材89あるいは第2高熱伝導部材90における長手方向の伝熱効率が厚み方向(つまり、部材の積層方向)に比べて大きくなり、ヒータホルダ64への伝熱を抑制できる。
【0173】
従って、ヒータ63の長手方向の温度ムラを効率よく抑制するとともに、ヒータホルダ64側へ流出する熱を最小限に抑えることができる。また第1高熱伝導部材89あるいは第2高熱伝導部材90をグラファイトにより構成することにより、700度程度まで酸化しない優れた耐熱性を第1高熱伝導部材89あるいは第2高熱伝導部材90に持たせることができる。
【0174】
グラファイトシートの物性や寸法は、第1高熱伝導部材89あるいは第2高熱伝導部材90に求められる機能に応じて適宜変更できる。例えば、高純度のグラファイトあるいは単結晶グラファイトを用いる、あるいは、グラファイトシートの厚みを大きくすることにより、その熱伝導の異方性を高めることができる。
【0175】
また、定着装置を高速化するために、厚みの小さいグラファイトシートを用いて定着装置の熱容量を小さくしてもよい。また、定着ニップN及びヒータ63の幅が大きい場合には、それに合わせて第1高熱伝導部材89あるいは第2高熱伝導部材90の長手方向の幅を大きくしてもよい。
【0176】
機械的強度を高める観点から、グラファイトシートの層数は11以上であることが好ましい。またグラファイトシートは部分的に単層と多層の部分とを含んでいてもよい。
【0177】
第2高熱伝導部材90は、長手方向において、間隔B(さらに拡大分割領域C)に対応する位置で、隣り合う抵抗発熱体56の少なくとも一部に重なる位置に設けられればよく、
図27の配置に限らない。例えば、
図29に示される例のように、第2高熱伝導部材90Aは、長手交差方向(矢印Y方向)において、基材55よりも長手交差方向の両側へ飛び出して設けられていてもよい。
【0178】
また、第2高熱伝導部材90Bは、長手交差方向において、抵抗発熱体56が設けられる範囲に設けられていてもよい。また、第2高熱伝導部材90Cは、間隔Bの一部に設けられていてもよい。
【0179】
また、
図30に示される別の実施形態においては、第1高熱伝導部材89とヒータホルダ64との間に厚み方向(
図30における左右方向)の隙間が設けられている。つまり、ヒータ63、第1高熱伝導部材89、及び第2高熱伝導部材90が配置されるヒータホルダ64の凹部64b(
図26参照)の一部の領域に、断熱層としての逃げ部64cが設けられている。
【0180】
逃げ部64cは、第2高熱伝導部材90(
図30においては図示省略)が設けられる部分以外の長手方向の一部の領域に設けられる。また、逃げ部64cは、ヒータホルダ64の凹部64bの深さをその他の部分よりも深くすることにより形成されている。
【0181】
これにより、ヒータホルダ64と第1高熱伝導部材89との接触面積を最小限にとどめることができるので、第1高熱伝導部材89からヒータホルダ64への伝熱が抑制され、ヒータ63によって定着ベルト61を効率的に加熱できるようになる。なお、長手方向の第2高熱伝導部材90が設けられる断面においては、前記
図25に示される実施形態のように、第2高熱伝導部材90がヒータホルダ64に当接する。
【0182】
また、本実施形態においては、逃げ部64cが、長手交差方向(
図30における上下方向)において、抵抗発熱体56が設けられた範囲全域に渡って設けられている。これにより、第1高熱伝導部材89からヒータホルダ64への伝熱が効果的に抑制され、ヒータ63による定着ベルト61の加熱効率が向上する。なお、断熱層として、逃げ部64cのように空間を設ける構成の他、ヒータホルダ64よりも熱伝導率の低い断熱部材を設ける構成であってもよい。
【0183】
また、本実施形態においては、第2高熱伝導部材90を第1高熱伝導部材89とは異なる部材として設けたが、これに限らない。例えば、第1高熱伝導部材89の間隔Bに対応する部分を、その他の部分よりも厚みを大きくすることにより、第1高熱伝導部材89が第2高熱伝導部材90の機能を兼ねるようにしてもよい。
【0184】
以上の説明においては、本発明を、ベルト式加熱装置(回転体駆動装置)の一例である定着装置に適用する場合を例に説明した。しかしながら、本発明は、定着装置に限らず、用紙に塗布されたインクなどの液体を乾燥させる乾燥装置、被覆部材としてのフィルムを用紙などのシートの表面に熱圧着させるラミネータ、包材のシール部を熱圧着するヒートシーラーなどの加熱装置であってもよい。また、本発明は、ヒータなどの加熱源を有しない回転体駆動装置にも適用可能である。
【0185】
(●定着装置の変形実施形態)
次に、定着装置9の変形実施形態等について
図33~
図43を参照して説明する。
図33はサーミスタの配置を変更したものである。
【0186】
本実施形態では、サーミスタ25が、配列交差方向において、定着ニップNの中央位置NAよりも定着ベルト20の回転方向上流側、言い換えると、定着ニップNの入口側に設けられる。定着ニップNの入口側は特に用紙Pによって熱を奪われやすい領域であるため、サーミスタ25がこの部分の温度を検知することで、定着装置9の定着性を確保し、前記定着オフセットを効果的に抑制できる。
【0187】
図34に示す定着装置9は、定着ベルト20に対して加圧ローラ21側とは反対側に、押圧ローラ44が配置されている。押圧ローラ44は、回転部材としての定着ベルト20に対向して回転する対向回転部材である。この押圧ローラ44とヒータ22とが定着ベルト20を挟んで加熱するように構成されている。
【0188】
一方、加圧ローラ21側では、定着ベルト20の内周にニップ形成部材45が配置されている。ニップ形成部材45は、ステー24によって支持されている。ニップ形成部材45と加圧ローラ21とによって、定着ベルト20を挟んで定着ニップNを形成している。
【0189】
次に、
図35に示す定着装置9では、前述の押圧ローラ44が省略されており、定着ベルト20とヒータ22との周方向接触長さを確保するために、ヒータ22が定着ベルト20の曲率に合わせて円弧状に形成されている。その他は、
図34に示す定着装置9と同じ構成である。
【0190】
最後に、
図36に示す定着装置9について説明する。定着装置9は、加熱アセンブリ92、定着部材である定着ローラ93、対向部材である加圧アセンブリ94からなる。
【0191】
加熱アセンブリ92は、先の実施形態で説明したヒータ22、ヒータホルダ23、ステー24、回転部材としての加熱ベルト120等を有する。定着ローラ93は、回転部材としての加熱ベルト120に対向して回転する対向回転部材である。また、定着ローラ93は、中実の鉄製芯金93aと、この芯金93aの表面に形成された弾性層93bと、弾性層93bの外側に形成された離型層93cとで構成されている。
【0192】
また、定着ローラ93に対して加熱アセンブリ92側とは反対側に、加圧アセンブリ94が設けられている。加圧アセンブリ94は、ニップ形成部材95とステー96とを配置し、これらニップ形成部材95とステー96を内包するように加圧ベルト97を回転可能に配置している。そして、加圧ベルト97と定着ローラ93との間の定着ニップN2に用紙Pを通紙して加熱および加圧して画像を定着する。
【0193】
以上の
図34~
図36の定着装置においても、ヒータ22の抵抗発熱体31同士の分割領域Bにおいてヒータ22の発熱量が小さくなる点は同様である。従って、前述した実施形態と同様に、ヒータ22の分割領域Bに対応する位置に温度検知部材の温度検知素子を設けることにより、回転部材の分割領域に対応する部分を十分に加熱することができる。これにより、画像の定着性を十分に確保し、定着オフセットなどの不具合の発生を防止できる。
【0194】
また、本発明は、前記の実施形態で説明したような定着装置に限らず、用紙に塗布されたインクを乾燥させる乾燥装置、さらには、被覆部材としてのフィルムを用紙等のシートの表面に熱圧着するラミネータや、包材のシール部を熱圧着するヒートシーラーなどの熱圧着装置のような加熱装置にも適用可能である。このような装置にも本発明を適用することで、回転部材の分割領域に対応する部分を十分に加熱することができる。
【0195】
本発明に係る画像形成装置は、
図1に示すカラー画像形成装置に限らず、モノクロ画像形成装置や、複写機、プリンタ、ファクシミリ、あるいはこれらの複合機等であってもよい。例えば
図37に示すように、本実施形態の画像形成装置100は、感光体ドラムなどからなる画像形成手段50と、一対のタイミングローラ15等からなる用紙搬送部と、給紙装置7と、定着装置9と、排紙装置10と、読取部51と、を備える。給紙装置7は複数の給紙トレイを備え、それぞれの給紙トレイが異なるサイズの用紙を収容する。
【0196】
読取部51は原稿Qの画像を読み取る。読取部51は、読み取った画像から画像データを生成する。給紙装置7は、複数の用紙Pを収容し、搬送路へ用紙Pを送り出す。タイミングローラ15は搬送路上の用紙Pを画像形成手段50へ搬送する。
【0197】
画像形成手段50は、用紙Pにトナー像を形成する。具体的には、画像形成手段50は、感光体ドラムと、帯電ローラと、露光装置と、現像装置と、補給装置と、転写ローラと、クリーニング装置と、除電装置とを含む。トナー像は、例えば、原稿Qの画像を示す。
【0198】
定着装置9は、トナー像を加熱および加圧して、用紙Pにトナー像を定着させる。トナー像の定着された用紙Pは、搬送ローラなどにより排紙装置10へ搬送される。排紙装置10は、画像形成装置100の外部に用紙Pを排出する。
【0199】
次に、本実施形態の定着装置9について説明する。前述の実施形態の定着装置と共通する構成については、適宜その記載を省略する。
【0200】
図38に示すように、定着装置9は、定着ベルト20と、加圧ローラ21と、ヒータ22と、ヒータホルダ23と、ステー24と、サーミスタ25等を備える。定着ベルト20と加圧ローラ21との間に定着ニップNが形成される。定着ニップNのニップ幅は10mm、定着装置9の線速は240mm/sである。
【0201】
定着ベルト20はポリイミドの基体と離型層とを備え、弾性層を有していない。離型層は、例えばフッ素樹脂からなる耐熱性のフィルム材からなる。定着ベルト20の外径は約24mmである。
【0202】
加圧ローラ21は、芯金21aと弾性層21bと離型層21cとを含む。加圧ローラ21の外径は24~30mmで形成され、弾性層21bの厚みは3~4mmで形成される。
【0203】
ヒータ22は、基材と、断熱層と、抵抗発熱体などを含む導体層と、絶縁層とを含み、全体の厚みが1mmで形成される。また、ヒータ22の配列交差方向の幅Yは13mmである。
【0204】
図39に示すように、ヒータ22の導体層は、複数の抵抗発熱体31と、給電線33と、電極部34A~34Cとを備える。本実施形態においても、
図39の拡大図に示すように、複数の抵抗発熱体31が配列方向に分割された分割領域Bが形成される(ただし、
図39では拡大図の範囲のみで分割領域Bを図示しているが、実際は全ての抵抗発熱体31同士の間に分割領域が設けられる)。
【0205】
抵抗発熱体31により、三つの発熱部35A~35Cが構成される。電極部34A,34Bに通電することにより、発熱部35A,35Cが発熱する。電極部34A,34Cに通電することにより、発熱部35Bが発熱する。例えば、小サイズ用紙に定着動作を行う場合には発熱部35Bを発熱させ、大サイズ用紙に定着動作を行う場合には全ての発熱部に発熱させることができる。
【0206】
図40に示すように、ヒータホルダ23は、その凹部23bにヒータ22を保持する。凹部23bは、ヒータホルダ23のヒータ22側に設けられる。凹部23bは、ヒータ22のその他の面よりもステー24側に凹となった基材30に略平行な面23b3と、ヒータホルダ23の配列方向両側(一方側でもよい)でヒータホルダ23の内側に設けられた壁部23b1と、配列交差方向両側でヒータホルダ23の内側に設けられた壁部23b2とにより構成される。
【0207】
ヒータホルダ23はガイド部26を有する。ヒータホルダ23はLCP(液晶ポリマー)により形成される。
【0208】
図41に示すように、コネクタ160は、樹脂製(例えばLCP)のハウジングと、ハウジング内に設けられた複数のコンタクト端子等を備える。コネクタ160は、ヒータ22とヒータホルダ23とを表側と裏側から一緒に挟むようにして取り付けられる。
【0209】
この状態で、各コンタクト端子が、ヒータ22の各電極部に接触(圧接)することで、コネクタ160を介して発熱部35と画像形成装置に設けられた電源とが電気的に接続される。これにより、電源から発熱部35へ電力が供給可能な状態となる。なお、各電極部34は、コネクタ160との接続を確保するため、少なくとも一部が絶縁層に被覆されておらず露出した状態となっている。
【0210】
フランジ53は、定着ベルト20の配列方向の両側に設けられ、定着ベルト20の両端をベルトの内側から保持する。フランジ53は定着装置9の筐体に固定される。フランジ53はステー24の両端に挿入される(
図41のフランジ53からの矢印方向参照)。
【0211】
コネクタ160のヒータ22およびヒータホルダ23に対する取り付け方向はヒータの配列交差方向である(
図41のコネクタ160からの矢印方向参照)。コネクタ160のヒータホルダ23に対する取り付け時に、コネクタ160とヒータホルダ23との一方に設けた凸部が、他方に設けた凹部に係合し、凸部が凹部内を相対移動する構成としてもよい。またコネクタ160は、配列方向のいずれか一方側であって、加圧ローラ21の駆動モータが設けられる側とは反対側で、ヒータ22およびヒータホルダ23に取り付けられる。
【0212】
図42に示すように、定着ベルト20の内周面に対向して、定着ベルト20の配列方向中央側と端部側にそれぞれサーミスタ25が設けられる。サーミスタ25により検知された定着ベルト20の配列方向中央側と端部側のそれぞれの温度に基づいて、ヒータ22を制御する。なお、これらのサーミスタ25のうちいずれか一方は、前述の実施形態と同様、ヒータ22の抵抗発熱体同士の分割領域に対応する位置に設けられる。
【0213】
定着ベルト20の内周面に対向して、定着ベルト20の配列方向中央側と端部側にそれぞれサーモスタット27が設けられる。サーモスタット27により検知された定着ベルト20の温度が定められた閾値を超えた場合には、ヒータ22への通電を停止する。
【0214】
定着ベルト20の配列方向両端には、定着ベルト20の各端部を保持するフランジ53が設けられる。フランジ53はLCP(液晶ポリマー)により形成される。
【0215】
図43に示すように、フランジ53にはスライド溝53aが設けられる。スライド溝53aは、定着ベルト20の加圧ローラ21に対する接離方向に延在する。スライド溝53aには定着装置9の筐体の係合部が係合する。この係合部がスライド溝53a内を相対移動することにより、定着ベルト20は加圧ローラ21に対する接離方向へ移動できる。
【0216】
以上の定着装置9においても、ヒータ22の分割領域Bに対応する位置にサーミスタ25の温度検知素子を設けることにより、定着ベルト20の分割領域に対応する部分を十分に加熱することができる。これにより、画像の定着性を十分に確保し、定着オフセットなどの不具合の発生を防止できる。
【0217】
特に単色のトナーにより画像形成動作を行う画像形成装置の場合、複数色のトナーにより画像形成動作を行う画像形成装置と比較して、相対的にホットオフセットが生じにくい。従って、本発明のように、分割領域に対応する位置に配置した温度検知素子の検知結果に基づいて加熱部材の制御を実施しても、単色のトナーを使用する画像形成装置ではホットオフセットが相対的に生じにくいという利点がある。
【0218】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は前述した実施形態に限定されることなく種々の変形が可能であることは勿論である。例えば前記分離板310は、定着ベルト20に対して近付く方向と遠ざかる方向に移動可能に配設することができ、前述の実施形態のように分離板310を回動可能とする他、ヒータホルダ23と平行状態を維持した状態で定着ベルト20に対する接近離反方向で平行移動可能に構成してもよい。
【0219】
また、分離板310は移動不能な固定配置としてもよい。すなわち、分離板310は、被搬送体としての用紙Pに接触可能かつ定着ベルト20に対しては非接触の先端部311と、定着ベルト20に接触することにより先端部311と定着ベルト20との間隔を所定の大きさに保持する接触部313とを有するものであればよい。
【0220】
また、前記実施形態では無端ベルトとして定着装置60の定着ベルト20を例に説明したが、無端ベルトは感光体ベルトであってもよい。すなわち、像担持体としての感光体ベルトに担持されたトナー像を被搬送体としての記録媒体上に転写する画像形成装置において、前述した分離板によって記録媒体を感光体ベルトから分離する。
【0221】
また、無端ベルトは像担持体としての
図1の中間転写ベルト11であってもよい。すなわち、中間転写ベルト11と二次転写ローラ13の間のニップを通過して搬送される記録媒体を前述した分離板で中間転写ベルト11から分離する。同様に、無端ベルトはインクジェット方式の画像形成装置で使用される中間転写ベルトであってもよい。また、その他インクジェット方式の画像形成装置において、加圧部材が無端ベルトを介してニップ形成部材と圧接してニップを形成し、当該ニップを被搬送体が通過して搬送される構成に適用する場合も、ニップ通過後の被搬送体を前述した分離板で無端ベルトから分離することができる。
【0222】
<付記>
以下、本発明の好ましい態様について付記する。
<第1態様>
回転可能な可撓性の無端ベルトと、
前記無端ベルトの内周面に接触可能に設けられたニップ形成部材と、
前記無端ベルトを介して前記ニップ形成部材と圧接してニップを形成する加圧部材と、
前記無端ベルトの両端部をガイドするガイド部材とを有し、
被搬送体が前記ニップを通過して搬送されるニップ形成ユニットにおいて、
前記ニップを通過した前記被搬送体を前記無端ベルトから分離させる分離部材を備え、当該分離部材は、前記無端ベルトに接触しない非接触部と、前記無端ベルトに接触することにより前記非接触部と前記無端ベルトとの間隔を所定の大きさに保持する接触部とを有することを特徴とするニップ形成ユニット。
<第2態様>
前記分離部材を前記無端ベルトに対して近付ける方向と遠ざける方向で移動可能に配設すると共に、前記近付ける方向の移動位置を定める第1規制部と前記遠ざける方向の移動位置を定める第2規制部を有する移動規制手段を配設したことを特徴する第1態様のニップ形成ユニット。
<第3態様>
前記分離部材が、前記近付ける方向に付勢手段で付勢されていることを特徴とする第2態様のニップ形成ユニット。
<第4態様>
前記ニップ形成部材が、前記加圧部材に対して、前記ニップが前記加圧部材で加圧される接近位置と前記ニップが脱圧される離反位置との間を移動可能に配設され、前記分離部材が前記第1規制部で移動規制された状態で前記ニップ形成部材が前記離反位置に移動可能に構成されていることを特徴とする第3態様のニップ形成ユニット。
<第5態様>
前記分離部材が前記遠ざける方向に移動する際、前記加圧部材に対して接触する前に前記第2規制部で移動規制されることを特徴とする第2態様から第4態様のいずれか1の態様のニップ形成ユニット。
<第6態様>
左右一対の側板の間に移動可能に支持された分離板で前記分離部材が構成され、前記分離板と前記側板の間に前記移動規制手段が配設されていることを特徴とする第2態様から第5態様のいずれか1の態様のニップ形成ユニット。
<第7態様>
前記移動規制手段が、前記分離板の端部に形成された被移動規制片と、前記側板に形成された移動規制穴によって構成され、前記移動規制穴の一端部によって前記第1規制部が構成され、前記移動規制穴の他端部によって前記第2規制部が構成されていることを特徴とする第6態様のニップ形成ユニット。
<第8態様>
前記接触部が前記被搬送体の通過領域外に設けられていることを特徴とする第1態様から第7態様のいずれか1の態様のニップ形成ユニット。
<第9態様>
前記無端ベルトを加熱するために前記ニップ形成部材に配設されたヒータが、前記無端ベルトの両端部を加熱する端部ヒータと中央部を加熱する中央ヒータの少なくとも3つに分割されていることを特徴とする第1態様から第8態様のいずれか1の態様のニップ形成ユニット。
<第10態様>
第1態様から第9態様のいずれか1の態様のニップ形成ユニットを有することを特徴とする画像形成装置。
【符号の説明】
【0223】
1Y,1M,1C,1Bk:作像ユニット 2:感光体
3:帯電装置 4:現像装置
5:クリーニング装置 6:露光装置
7:給紙装置 8:転写装置
9:定着装置 10:排紙装置
11:中間転写ベルト 12:一次転写ローラ
13:二次転写ローラ 13:二次転写ニップ
14:用紙搬送路 15:タイミングローラ
20:定着ベルト 21:加圧ローラ
21:定着ベルト 21a:芯金
21b:弾性層 21c:離型層
22:ヒータ 23:ヒータホルダ
23:ヒータホルダ 23a:突起部
23b:凹部 23b1~23b3:壁部
23c:逃げ部 24:ステー
24a:垂直部 24a1:当接面
25:サーミスタ 26:ガイド部
27:サーモスタット 30:基材
31:抵抗発熱体 31:裏面(抵抗発熱体
32:絶縁層 33:給電線
34:電極 34:電極部
34A,34B:電極部 34A,34C:電極部
34A~34C:電極部 35:発熱部
35A,35C:発熱部 35A~35C:発熱部
35B:発熱部 44:押圧ローラ
45:ニップ形成部材 50:画像形成手段
51:読取部 53:フランジ
53a:スライド溝 55:基材
56:抵抗発熱体 60:定着装置
60:コネクタ 61:定着ベルト
62:加圧ローラ 63:ヒータ
64:ヒータホルダ 64b:凹部
64b1、64b2:両側壁 64c:逃げ部
65:ステー 65a:垂直部
65a1:当接面 66:ガイド部材
67:温度センサ 92:加熱アセンブリ
93:定着ローラ 93a:芯金
93b:弾性層 93c:離型層
94:加圧アセンブリ 95:ニップ形成部材
96:ステー 97:加圧ベルト
100:画像形成装置 120:加熱ベルト
160:コネクタ 200:交流電源
210:トライアック 220:制御部
260:ベルト対向面 300:用紙分離機構
310:分離板(分離部材) 311:先端部
312:被回動規制片 313:接触部
314:バネ係合部 315:軸穴
320:側板 321:回動規制穴
322:支軸 323:バネ係合部
324:切欠き 330:引張バネ
400:フランジ(ガイド部材)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0224】