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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023086296
(43)【公開日】2023-06-22
(54)【発明の名称】波動伝播機構
(51)【国際特許分類】
   B25J 18/06 20060101AFI20230615BHJP
   F16H 25/16 20060101ALI20230615BHJP
   B62D 57/02 20060101ALI20230615BHJP
【FI】
B25J18/06
F16H25/16 A
B62D57/02 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021200712
(22)【出願日】2021-12-10
(71)【出願人】
【識別番号】504174135
【氏名又は名称】国立大学法人九州工業大学
(74)【代理人】
【識別番号】100197642
【弁理士】
【氏名又は名称】南瀬 透
(74)【代理人】
【識別番号】100099508
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 久
(74)【代理人】
【識別番号】100182567
【弁理士】
【氏名又は名称】遠坂 啓太
(74)【代理人】
【識別番号】100219483
【弁理士】
【氏名又は名称】宇野 智也
(72)【発明者】
【氏名】永岡 健司
(72)【発明者】
【氏名】赤星 美彩子
(72)【発明者】
【氏名】舎川 拓馬
【テーマコード(参考)】
3C707
3J062
【Fターム(参考)】
3C707BS17
3C707HS11
3C707HS27
3J062AA27
3J062AB31
3J062AC07
3J062BA11
3J062CC13
3J062CC23
(57)【要約】
【課題】回転を利用した新たな波動伝播機構を提供する。
【解決手段】螺旋状の段差(凸部(211)、平坦部(212)を有し、回転する螺旋翼(21)と、螺旋翼(21)の前記段差により螺旋翼(21)に対して上下し、螺旋翼(21)の軸と平行する伝播方向に複数配置されたピストン(31、32)と、ピストン(31、32)と連結され、伝播する力を伝達するための伝達部(51)とを有する伝播手段と、を有する波動伝播機構(11)。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
螺旋状の段差を有し、回転する螺旋翼と、
前記螺旋翼の前記段差により前記螺旋翼に対して上下し、前記螺旋翼の軸と平行する伝播方向に複数配置されたピストンと、前記ピストンと連結され、伝播する力を伝達するための伝達部とを有する伝播手段と、
を有する波動伝播機構。
【請求項2】
前記螺旋翼が、中空の軸部材を有し、
前記軸部材の内部に、前記螺旋翼を回転させるためのモータを有する、請求項1に記載の波動伝播機構。
【請求項3】
前記伝播手段が、前記螺旋翼の周方向の異なる位置に複数設けられ、
前記螺旋翼が、前記螺旋状の段差を複数有する多重螺旋構造を有し、前記伝播方向に直交する面における前記ピストンの上下が同期するものである、請求項1または2に記載の波動伝播機構。
【請求項4】
前記複数設けられたそれぞれの前記伝播手段の前記伝達部が、環状のガイド部材で連結された請求項1~3のいずれかに記載の波動伝播機構。
【請求項5】
前記伝達部が、前記伝播方向に傾くことができるように前記ピストンに連結され、
隣り合う前記伝達部を拘束する拘束部を有する、請求項1~4のいずれかに記載の波動伝播機構。
【請求項6】
前記ピストンの周囲を覆う被覆部材を有する、請求項1~5のいずれかに記載の波動伝播機構。
【請求項7】
請求項1~6のいずれかに記載の波動伝播機構を複数有する、連結波動伝播機構。
【請求項8】
それぞれの波動伝播機構が、右回りの螺旋翼を有するものと、左回りの螺旋翼を有するものとを有する、請求項7記載の連結波動伝播機構。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、波動伝播機構に関する。
【背景技術】
【0002】
軸方向に環状波動を伝播する機構は、移動体や物体搬送、地中掘削への応用が期待できる基盤技術である。これまで、波動に着目したロボット機構や構造が開発されている。従来技術では、波動伝播に類するミミズの蠕動運動を機械的に模擬した移動ロボット(非特許文献1、5)や,機械構造だけで波動を実現するロボット移動機構(非特許文献2~7)、さらには応用例として粒状体の搬送(非特許文献7)、液固燃料の混合搬送(非特許文献9)などの研究開発がなされている。波動の生成方法としては、空気圧人工筋アクチュエータの伸縮(非特許文献1、9)や、単一螺旋軸の回転とリンクを使用した面波動(非特許文献2~4、8)、複数螺旋軸をメッシュチューブで覆った全周波動(非特許文献7)が代表的である。
【0003】
これら既存の軸方向波動伝播機構では、比較的大きな高圧コンプレッサを必要とする点、長尺な螺旋軸の強度不足とそれを環状配置する際に機械連動部品(歯車など)を機構周囲に追加する必要がある点が問題点として挙げられる。
【0004】
近年、波動に着目したロボット機構や構造が開発されている。先行研究では、移動を目的としたロボットや粒状体の搬送のための波動機構などがあり、その波動の生成方法は様々である。
例えば、空気圧人工筋アクチュエータを用いて4つの節を順に伸縮させる蠕動運動ロボット、ベルト駆動型の移動・搬送機構、複数の波動伝播ユニットとギア機構を組み合わせた軸方向波動伝播ギア機構などがある。
【0005】
それらのうち、Ben-Gurion大学が開発したSAWロボット(single actuator wave robot)はスパイラル状の螺旋部品を使用して1つの面にメカニカルな波動を連続生成し、水平面や凹凸面を推進した。
【0006】
さらに、ユニバーサルジョイントで2つのSAWロボットを連結したRSAWロボットは、方向転換したり障害物を乗り越えたりすることが可能であることが示された。
【0007】
一方で、粒状体を搬送する機構としては、印刷機用トナーなどの粉体搬送に、空気圧駆動を利用した蠕動運動型コンベア機構が提案されている。また、本発明者らはSAWロボットを応用したメカニズムで粒状体を搬送できることを示した。
【0008】
また、伸縮する構造に関するものであるが、特許文献1は、螺旋翼体を回動させることにより移送を行う移送装置において、螺旋翼体を、回動軸の外周に螺旋翼を形成した軸付螺旋翼体と、同軸付螺旋翼体の回動軸に巻き付く螺旋翼を有する軸無螺旋翼体とから構成するとともに、各螺旋翼体を回動させるための翼体回動手段をそれぞれ具備し、軸付螺旋翼体と軸無螺旋翼体との回転数の差により軸付螺旋翼体に対して軸無螺旋翼体が伸縮すべく構成したことを特徴とする伸縮可能な移送装置を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2002-179238号公報
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】嵯峨, 上田, 中村: 人工筋アクチュエータを用いた蠕動運動型ロボットの開発, 計測自動制御学会論文集, 41(12), 1013-1018,2005.
【非特許文献2】D. Zarrouk, M. Mann, N. Degani, T. Yehuda, N. Jarbi, A. Hess: Single Actuator Wave-Like Robot (SAW): Design, Modeling, and Experiments, Bioinspir. Biomim.,11(4), #046004, 2016.
【非特許文献3】西村, 藤本, 鉄井, 藤田, 野村, 高根, 小松, 多田隈, 昆陽, 田所: 軸方向波動伝播ギア機構, 計測自動制御学会東北支部 第310回研究集会, #310-10, 2017.
【非特許文献4】西村, 藤本, 清水, 小松, 多田隈, 昆陽, 田所: 軸方向推進の観点からの全方向駆動メカニズム,ロボティクス・メカトロニクス講演会2018講演概要集, #1P2-K03, 2018.
【非特許文献5】M. Kamata,S. Yamazaki,Y. Tanise,Y. Yamada,T. Nakamura, Morphological Change in Peristaltic Crawling Motion of a Narrow Pipe Inspection Robot Inspired by Earthworm’s Locomotion,Adv. Robot.,32(7), 386-397, 2018.
【非特許文献6】D. Shachaf, O. Inbar, D. Zarrouk: RSAW, A Highly Reconfiurable Wave Robot: Analysis, Design, and Experiments, IEEE Robot. Automat. Lett.,4(4), 4475-4482, 2019.
【非特許文献7】M. Watanabe, K. Tadakuma, M. Konyo, S. Tadokoro: Bundled Rotary Helix Drive Mechanism Capable of Smooth Peristaltic Movement, IEEE Robot. Automat. Lett., 5(4), 5237-5244,
【非特許文献8】赤星, 永岡: 月・惑星掘削探査のための波動伝搬機構を用いた土砂搬送メカニズムの基礎検討,ロボティクス・メカトロニクス講演会2020講演概要集, #2P1-B07, 2020.
【非特許文献9】S. Oshino, R. Nishihama, K. Wakamatsu, K. Inoue, D. Matsui, M. Okui, K. Nakajima, Y. Kuniyoshi, T. Nakamura: Generalization Capability of Mixture Estimation Model for Peristaltic Continuous Mixing Conveyor, IEEE Access (Early access), doi: 10.1109/ACCESS.2021.3112614, 2021.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
非特許文献1~9や、特許文献1など、様々な伝播機構や移送機構などが開示されている。しかし、各種機構を適用したい需要によって、適用できる条件は異なる。このため、異なる条件で採用できる可能性がある、新たな伝播機構を提供することは有用である。
【0012】
係る状況下、本発明は、回転を利用した新たな波動伝播機構を提供することを目的とし、搬送や移動に用いることができる波動伝播機構を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明者は、上記課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、下記の発明が上記目的に合致することを見出し、本発明に至った。すなわち、本発明は、以下の発明に係るものである。
【0014】
<1> 螺旋状の段差を有し、回転する螺旋翼と、前記螺旋翼の前記段差により前記螺旋翼に対して上下し、前記螺旋翼の軸と平行する伝播方向に複数配置されたピストンと、前記ピストンと連結され、伝播する力を伝達するための伝達部とを有する伝播手段と、を有する波動伝播機構。
<2> 前記螺旋翼が、中空の軸部材を有し、前記軸部材の内部に、前記螺旋翼を回転させるためのモータを有する、前記の波動伝播機構。
<3> 前記伝播手段が、前記螺旋翼の周方向の異なる位置に複数設けられ、
前記螺旋翼が、前記螺旋状の段差を複数有する多重螺旋構造を有し、前記伝播方向に直交する面における前記ピストンの上下が同期するものである、前記の波動伝播機構。
<4> 前記複数設けられたそれぞれの前記伝播手段の前記伝達部が、環状のガイド部材で連結された前記の波動伝播機構。
<5> 前記伝達部が、前記伝播方向に傾くことができるように前記ピストンに連結され、隣り合う前記伝達部を拘束する拘束部を有する、前記の記載の波動伝播機構。
<6> 前記ピストンの周囲を覆う被覆部材を有する、前記の波動伝播機構。
<7> 前記の波動伝播機構を複数有する、連結波動伝播機構。
<8> それぞれの波動伝播機構が、右回りの螺旋翼を有するものと、左回りの螺旋翼を有するものとを有する、前記の連結波動伝播機構。
【発明の効果】
【0015】
本発明の波動伝播機構は、回転を利用したものであり、波状の伝播を生み出し、搬送や移動に用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の実施形態に係る連結波動伝播機構の斜視図である。
図2】本発明の実施形態に係る連結波動伝播機構を着色した斜視図である。
図3】本発明の実施形態に係る連結波動伝播機構を正面視した断面図である。
図4】本発明の実施形態に係る波動伝播機構を正面視した断面図である。
図5】本発明に用いる螺旋翼の一例の斜視図である。
図6】本発明に用いる螺旋翼の他の例の正面図である。
図7】本発明の実施形態に係る波動伝播機構を側面視した断面図である。
図8】本発明の波動伝播機構の動きを説明するための概要図である。
図9】本発明の波動伝播機構の動きを説明するための概要図である。
図10】波動伝播手段の動きを説明するための概要図である。
図11】本発明による伝播手段の作用機序の概念を説明するための概要図である。
図12】本発明による伝播手段の作用機序の概念を説明するための概要図である。
図13】本発明の波動伝播機構の製造例の製造工程における像である。
図14】本発明の連結波動伝播機構の製造例の像である。
図15】本発明の連結波動伝播機構の製造例の移動例を示した像である。
図16】移動例を評価する状態を示した像である。
図17】製造例の連結波動伝播機構の移動量を評価した結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下に本発明の実施の形態を詳細に説明するが、以下に記載する構成要件の説明は、本発明の実施態様の一例(代表例)であり、本発明はその要旨を変更しない限り、以下の内容に限定されない。なお、本明細書において「~」という表現を用いる場合、その前後の数値を含む表現として用いる。
【0018】
[本発明の波動伝播機構]
本発明の波動伝播機構は、螺旋状の段差を有し回転する螺旋翼と、前記螺旋翼の前記段差により前記螺旋翼に対して上下し前記螺旋翼の軸と平行する伝播方向に複数配置されたピストンと、前記ピストンと連結され伝播する力を伝達するための伝達部とを有する伝播手段と、を有する。本発明の波動伝播機構は、回転を利用したものであり、波状の伝播を生み出し、搬送や移動に用いることができる。
【0019】
[連結波動伝播機構100、波動伝播機構11、12]
図1は、本発明の実施形態に係る連結波動伝播機構100の斜視図である。この連結波動伝播機構100は、波動伝播機構11、12を連結したものである。また、図2は、本発明の実施形態に係る連結波動伝播機構を着色した斜視図である。図3は、本発明の実施形態に係る連結波動伝播機構100を正面視した断面図である。図4は、本発明の実施形態に係る波動伝播機構11を正面視した断面図である。
【0020】
本願の波動伝播機構11、12や、連結波動伝播機構100の説明において、図3、4に示す左右をX方向とし、これらの図における左向きをX方向の正の方向として説明する。また、図3、4に示す上下をZ方向とし、上向きをZ方向の正の方向として説明する。また、X方向とZ方向と直交する方向をY方向とし、図3、4における手前側をY方向の正の方向として説明する。
【0021】
波動伝播機構11は、螺旋翼21と、伝播手段51を有する。伝播手段51は、ピストン31と、伝達部41とを有する。設計した波動伝播ユニットの全体図を図1に示す。波動伝播機構11は、螺旋翼21を用いて、図のようにユニットの周囲四方に波動を伝播可能な新しいメカニズムに関するものである。以下に、さらに螺旋翼21と他の部品の詳細な仕組みを説明する。
【0022】
[螺旋翼21]
波動伝播機構11は螺旋翼21を内蔵している。波動伝播機構12は螺旋翼22を内蔵している。図5は、螺旋翼21の一例の斜視図である。螺旋翼21は、螺旋状の段差を有する。そして、波動伝播機構11の螺旋翼21は、回転する。螺旋翼の回転は、外部から回転させてもよいし、内部に配置したモータ25により回転させてもよい。
【0023】
螺旋翼21は、軸部材210を用いたものである。螺旋翼21は、この軸部材210の周囲に、凸部211をらせん状に配置している。この凸部211は山型であり、X方向の幅は、対応する位置に配置されたピストン31の上下に寄与する。この螺旋状に凸部211を設けることで、平坦部212との間に螺旋状の段差が生じる。
【0024】
[螺旋翼23]
図6は、螺旋翼21の変形例である、螺旋翼23の正面図である。本発明の波動伝播機構に用いる螺旋翼は、螺旋状の段差があればよく、この図6に示すような形状で達成することもできる。この螺旋翼23は、軸部材230の周囲に、半円柱状のものを螺旋状に巻き付けることで凸部231を設けているこれにより、凸部231がない部分は、凹部232となり螺旋状の段差が生じる。以下、螺旋翼21を用いたものを例に、説明を行う。
【0025】
[軸部材]
螺旋翼21は、軸部材210を用いたものとすることができる。軸部材210があることで、螺旋翼21は強度が高いものとすることができる。軸部材は、中空の筒状でもよいし、内部が充填されたものでもよい。軸部材は中空でなくてもよい。
【0026】
螺旋翼21は、軸部材210の内部に、螺旋翼21を回転させるためのモータ25を有する。螺旋階段状に螺旋翼21は、波動伝播機構100の中心軸上に設置している。軸部材210は、円筒部品である。
【0027】
また、軸部材210内部に前述したように、螺旋翼21を回転させるためのモータなどを内蔵でき、波動伝播機構100は、外部から螺旋翼21を回転させずに波動を伝播させることもできる。
【0028】
[伝播手段51]
伝播手段51は、ピストン31と、伝達部41とを有し、螺旋翼21による螺旋状の段差の回転を、伝播方向への波動伝播として伝播する。
【0029】
[ピストン31]
ピストン31は、螺旋翼の段差により前記螺旋翼に対して上下するピストンである。また、ピストン31は、螺旋翼の軸と平行する伝播方向に複数配置されている。図4の波動伝播機構11では、螺旋翼21の上下のそれぞれのX方向を、それぞれ伝播方向とすることができる。ここでは、X方向に12個のピストンと、それぞれのピストンに連結された伝達部41とが1組の伝播手段となり、伝播手段51が伝播方向に並べられている。
【0030】
[伝達部41]
伝達部41は、ピストン31と連結され、伝播する力を伝達するための部材である。伝達部41は、移動場所や、搬送対象と接触して、波動伝播を伝達する部分である。伝達部は、移動や搬送の目的、対象によって、適宜その形状を調整することができる。例えば、板状部材などを伝達部41に用いることができる。
【0031】
[波動伝播の推定原理]
波動伝播機構11、12や連結波動伝播機構100の波動伝播の推定原理をより詳しく説明する。図7は、本発明の実施形態に係る波動伝播機構を側面視した断面図である。図8は、本発明の波動伝播機構の動きを説明するための概要図である。図7は、図3におけるAA線の矢視方向の断面図である。
【0032】
図9は、本発明の波動伝播機構の動きを説明するための概要図である。図10は、波動伝播手段の動きを説明するための概要図である。
【0033】
[伝播方向]
伝播手段は、波動を伝播させたい方向の数によって、螺旋翼の周囲に1つ以上設ける。伝播手段は、螺旋翼の周方向の異なる位置に複数設けることもできる。複数設けることで、波動伝播機構11の姿勢が変わった場合や移動させたい場所が変わった場合なども、伝播方向が複数存在するため、継続して波動伝播させることができる。また、複数の面に同時に接することでより強い波動伝播させた移動や搬送などもできる。なお、複数設ける場合、ピストン移動ができる空間を設けるために、その数は、6以下や、4以下とすることが好ましい。
【0034】
螺旋翼21は、螺旋状の段差を複数有する多重螺旋構造を有するものとすることができる。また、多重螺旋構造とする場合、伝播方向に直交する面におけるピストンの上下が同期することが好ましい。
【0035】
[ガイド部材]
図7に示すように、波動伝播機構は、複数設けられたそれぞれの伝播手段の伝達部が、環状のガイド部材61で連結されたものとすることができる。ガイド部材61は螺旋翼21の周囲に配置されている。ガイド部材61はシリンジ63と、シリンジ63内を移動するプランジャー62を有する。このプランジャー62とシリンジ63は、各伝達部間に配置されている。ガイド部材61は、ピストン31の上下に伴い、伝達部が広がったり、縮んだりする動きに伴い、シリンジ63内でプランジャー62が移動する。これにより、伝達部41間の位置の移動範囲を制限して、より安定した波動伝播のための移動を可能とする。
【0036】
螺旋翼21は、凸部211と、平坦部212を有する。ピストン31は、螺旋翼と接する端部311と、伝達部41に連結される端部312を有する。端部312は、内側伝達部412に連結されている。また、内側伝達部412は、外側伝達部411に接続されている。
【0037】
[波動伝播の動き]
本発明の波動伝播機構11は、螺旋階段状に段差が設けられた螺旋翼を用いる。この螺旋翼は円筒状の軸部材を有する部品として、ユニットの中心軸上に設置する。波動伝播機構11は、螺旋翼の周囲に複数組み込まれているピストンをフレームの上下に移動させる。螺旋翼の凸部がピストンに接触することで、バネが圧縮されてピストンがフレームの外側に向かって飛び出す構造である。
【0038】
螺旋翼21がピストンの頂点を超えると、バネの復元力によってピストンは螺旋翼の表面をなぞりながら、平坦部に対応する位置のときフレーム内側に引き込まれていく。ピストンは螺旋翼の回転に従動して上記の一連の動作を繰り返す。
【0039】
螺旋翼は一定角度ずらして階段状に段差が設計されている。したがって、ある側面のピストンはそれぞれタイミングをずらして順に摺動を繰り返す。結果として、このピストンの摺動距離が波動の基本となる振幅を生成する。
【0040】
これらは、生物に見られる波動伝播構造を機械的に模擬して利用することで、コンベヤ方式に見られるような摺動部を外部に持たず、密封状態を保ったまま外皮表面の形状変化で外環境との相対運動を生み出すことができるようになる。
【0041】
[波動伝播機構の原理]
図9は螺旋翼とピストンの一連の動きを示した模式図である。螺旋翼(wing)がピストン(piston)に接触すると、ピストンがフレーム(frame)の外側に向かって飛び出す(Step1)。ピストンとフレームの間には圧縮バネ(spring)が仕込んであり、螺旋翼が接触してピストンが外側に飛び出した際にバネは圧縮される(Step2)。
【0042】
螺旋翼がピストンの頂点Aを超えると、バネの復元力によってピストンは螺旋翼の表面をなぞりながらフレーム内側に引き込まれていく(Step3)。ピストンは螺旋翼の回転に従動して上記の一連の動作を繰り返す。螺旋翼は、図5、6のように一定角度ずらして階段状に設計されている。したがって、ある側面のピストンはそれぞれタイミングをずらして順に摺動を繰り返す。結果として、このピストンの上下の運動による摺動距離が波動の基本となる振幅を生成する。
【0043】
螺旋翼が回転するとピストンは順に往復運動する。したがって、ユニットのある側面のピストン端点をなめらかに繋ぐと波の形状になり、螺旋翼の回転運動に従動して波がユニット側面に伝播する。
【0044】
[伝達部の構造]
図10は、波動伝播手段の動きを説明するための概要図である。伝達部は、伝播方向に傾くことができるようにピストンに連結されていることが好ましい。また、隣り合う伝達部を拘束する拘束部を有することが好ましい。
【0045】
[傾斜構造]
波動伝播によって波動伝播機構を推進させるために、ピストンの端にリンク(板状部品)の伝達部を取り付けている。リンクがピストンの動きに合わせて上下に動くだけでは、機構は推進力が低下する場合がある。そこで、図10のようにリンクとピストンを受働的に回転する関節で接続することが好ましい。ここでは、外側伝達部411と内側伝達部412は、接続部413で接続されている。そして内側伝達部412はピストンと連結するにあたって、回転ピン414を用いて連結されている。このため、ピストンの上下による波や、被接触部に合わせて、伝達部411の面が傾斜する。
【0046】
[拘束部]
伝達部は、隣り合う伝達部を拘束する拘束部415を有することが好ましい。図10において、拘束部415が伝達部411間の距離を拘束している。ここでは拘束部415として、隣接するリンクを非伸縮性糸で繋いでいる。そして、図13図15に示すように、内側伝達部412と、外側伝達部411間に、全体を覆うシリコンカバーに固定している。これにより伝達部411のリンクが回転し波に沿った形状となるように設計した。そして、波の形状を保ちながら波動を連続的に伝播することを可能にした。
【0047】
[回転方向]
連結波動伝播機構100は、波動伝播機構11と、波動伝播機構12を連結したものである。波動伝播機構11と、波動伝播機構12は、一方が右回りの螺旋翼を有するものとして、他方を左回りの螺旋翼を有するものとすることができる。螺旋翼の回転を単一の回転のみとすると、全体が回転してしまい、波動伝播を目的通り行うことができない場合がある。このようなとき、異なる向きに回転する螺旋翼を組み合わせることで、回転の力は反作用するものとなる。このような反作用するものとすれば、連結波動伝播機構100自体が回転することをより確実に防止できる。回転方向が逆向きの状態で、波動伝播する方向を共通する方向とするために、連結波動伝播機構100においては、螺旋翼の螺旋方向を逆向きとしておく。これにより、螺旋翼の回転方向は逆でも、波動伝播する方向は同じものとなる。
【0048】
波動伝播機構を複数組み合わせて、様々な連結波動伝播機構とすることができる。例えば、前述したように直列させて、波動伝播の安定性を向上させることができる。また、波動伝播機構を並列させることで、回転速度を調整して、全体の波動伝播の向きを変更することができる。これは、波動伝播機構自体が移動する構成等するとき、移動する向きの変更などに利用できる。
【0049】
本発明に係る波動伝播機構は、このような波動機構の新たなメカニズムとして、螺旋翼という部品を用いて機構の四方の側面など、多数の方向に波動を伝播することもできるメカニズムを提案するものである。
【0050】
螺旋翼は円筒形状とすることができるため、線状の螺旋状部品に比べ強度が高く、単一モータでも波動を全周に伝播可能なメカニズムに利用できる。また、空気圧式機構のような外部システムや歯車による動力伝達機構を必要とせず、連続的な波動を生み出すことができる。
【0051】
本発明の波動伝播機構は、この波動伝播機構を導入したもの自体が移動する、移動ロボットなどの移動体として利用することができる。また、波動伝播機構を任意の場所に固定手段で固定して、波動伝播機構の伝播方向を利用し、伝播手段に接するものを搬送する搬送機構にも利用することができる。
【0052】
単一の螺旋翼を利用して、軸方向への環状波動を伝播する機構である。これにより、省スペースで波動を伝播することができる。また、高強度な波動伝播を行うこともできる。また、螺旋翼の外周を覆う環状波動を伝播することができる。
【0053】
本発明によれば、推進性能の評価試験の結果から、単位周期あたりの推進距離は、波動周期によらずほぼ一定とすることができる。さらに、推進距離の時間履歴に関する精細なFFT解析を行った結果、機構の推進に波動周期に連動した特性を有する。さらに表面の水平移動だけでなく、地中の垂直移動など機構の側面全体の波動を活かした動作への応用が可能である。
【0054】
また、様々な表面特性の水平面や砂地などでの走行させることが期待できる。これは、過酷な状況が多い屋外の自然環境下においても利用が期待できる。さらに表面の水平移動だけでなく、地中の垂直移動など機構の側面全体の波動を活かした動作にも利用できる。
【0055】
[推進機構のモデル化]
波動推進機構(波動伝搬機構)のモデル化と推進原理について、さらに詳しく説明する。まず、波の形状とそれに起因する機構の幾何形状の関係性を明らかにする。さらに、波動推進機構の推進原理についてモデル化し、単位周期あたりの推進距離を機構パラメータを用いて表す。図11は、本発明による伝播手段の作用機序の概念を説明するための概要図である。図12は、本発明による伝播手段の作用機序の概念を説明するための概要図である。
【0056】
[波の形状と機構の幾何形状]
波の振幅Aを図11のようにピストン(piston)の摺動距離の半分の長さと定義する。ここでは説明のために水平面(horizontal plane)を基に説明する。ピストンは図9のようにStep1からStep3を繰り返す。その摺動距離は螺旋翼の高さaに等しい。よって、波の振幅Aは、式(1)で表せ、螺旋翼の高さaによって決定される。つまり、波の振幅を大きくしたい場合は、螺旋翼の高さを長く設計すればよい。
【0057】
【数1】
【0058】
[波動推進機構の推進原理]
次に、水平面上を移動する波動推進機構の推進原理として、1つのリンクとピストンの動きに着目する(図12)。
【0059】
ここでは、簡単にするために、リンクと水平面との接触点での滑りがない理想状態を考える。ピストンは水平面に対して鉛直方向に運動し、リンクはピストンとの接続点Cを中心に回転運動する。
リンクが水平面と接触するたびにピストンとリンクは以下の(i)~(v)の動きを繰り返す。なお、図12において、波は紙面右から左に伝播するものとし、リンクやピストンの厚みは無視する。なお、図12の説明において、それぞれ以下である。波動伝播方向(wave propagation direction)。作用機序(mechanism)。ピストン(piston)。リンク(link)。horizontal plane(水平面)。traveling direction(移動方向)。
【0060】
(i) :ピストン端点Cが水平面に近づき、リンクの端点Aが水平面に接触する。
(ii) :ピストン端点Cが水平面に近づくにつれ、リンクは端点Aを中心に紙面向かって反時計回りに回転し、ピストンは水平面に近づきながら、波動の伝播方向と同方向に平行移動する。
(iii):リンクが水平状態になり、リンクの端点Bが水平面に接触する。
(iv) :ピストンが水平面から離れるにつれ、リンクが端点Bを中心に反時計回りに回転し、ピストンは波動の伝播方向へさらに平行移動する。
(v) :ピストン端点Cが水平面からある距離まで離れるとリンクは水平面から離れる。
ピストンの平行移動距離は波動推進機構の移動距離に等しい。よって、リンクが次々と上記の動作をすることで、波動推進機構は連続的に推進することができる。
【0061】
[理想状態での単位周期あたりの推進距離]
前節の理論から理想状態における波動推進機構の単位周期あたりの推進距離を数式化する。パラメータを表1に示す。表1のモデルに用いたパラメータ(Parameteres used in model)は、それぞれ次のものである。
・d1i:ステップ1から3までのピストンの移動距離(Travling distance of piston at step1-3)。
・d2i:ステップ3から5までのピストンの移動距離(Traveling distance of piston at step3-5)。
・d:ステップ1から5までのピストンの移動距離(Traveling distance of piston at step1-5)。
・L:リンク長さ(AB)(Link length between AB)。
・θ1i:ステップ1におけるリンクの絶対傾き角(Absolute angle of link step1)。
・θ2i:ステップ5におけるリンクの絶対傾き角(Absolute angle of link step5)。
・D:1波動周期あたりのピストンの移動距離(Travling distance of piston in one cycle of wave)
・n:1波長あたりのリンク分割数(Number of link per wavelength)。
・T:波動周期(Wave period)。
・v:機構の推進速度(Movement speed of system)
・λ:波長(wavelength)
【0062】
【表1】
【0063】
任意のリンクiについて(i)~(iii)の動作の間でピストンが平行移動する距離d1iは、式(2)である。同様に、(iii)~(v)の間での移動距離d2iは、式(3)である。ゆえに、リンクiが(i)~(v)の一連の動作をする間にピストンが移動する距離dは、式(4)となる。1波長につきリンクがn個である場合、波動1周期での移動距離Dは、式(5)となる。
【0064】
【数2】
【0065】
【数3】
【0066】
【数4】
【0067】
【数5】
【0068】
ピストンが平行移動する距離は波動推進機構の推進距離に等しいから、ピストンの移動距離Dは、波動推進機構の推進距離である。式(5)より、波動推進機構の単位周期あたりの推進距離は波動周期によらず一定であるとわかる。
【0069】
ここで、理想的な波形が伝播する場合、θ1i、θ2iはリンクの長さLによって定まる。また、リンクの長さは1波長あたりのリンク数nにより最大値が制限される。ゆえに、Lは最大値Lmaxを用いてL≦Lmax(n)である。よって、式(5)は以下のように表せる。
【0070】
【数6】
【0071】
また、波動周期がTであるとき、波動推進機構の推進速度vは、単位周期当たりの推進距離Dを用いて、下式(7)と表せる。
【0072】
【数7】
【0073】
次に、式(5)のθ1i、θ2iがすべてのリンクで等しい値であり、θ1i=θ2i(=θ)であると仮定すると、式(5)は以下の式(8)のように表せる。
【0074】
【数8】
【0075】
[製造例]
図13は、本発明の波動伝播機構の製造例の製造工程における像である。図14は、本発明の連結波動伝播機構の製造例の像である。この製造例は、図1、2等に示すような、連結波動伝播機構の製造例である。また、図14に示すように、外側伝達部と内側伝達部の間に、ピストンの周囲を覆う被覆部材を配置したものである。
【0076】
[波動推進機構の設計]
回転モータは螺旋翼に内蔵されている。螺旋翼を回転駆動させる構造となっている。なお、モータはモータハウジングによってフレーム(ユニット本体)に固定されている。使用したモータはmaxon motor社製DCX22S GB KL 24V(ギアヘッド比231:1)であり、コントローラEPOS4で制御される。
【0077】
また、モータ反トルクを相殺するために、図1のように同じユニットを2つ接続する。なお、2つのユニットで伝播する波動の向きを同じにするため、螺旋翼は逆回転にした。また、リンク同士の接続に用いたシリコンをさらに拡張し、ロボットの側面全体を被覆した。この製造例では、波動の振幅は10mm、波長は75mmに設計した。機構全体の重量は2.8kg、最大直径は155mm、全長は515mmである。
【0078】
[移動試験例]
図15は、本発明の連結波動伝播機構の製造例の移動例を示した像である。図16は、移動例を評価する状態を示した像である。図16において、それぞれ以下である。試作機(prototype)。水平面(horizontal p;ane)。電源(power supply)。パーソナルコンピュータ(PC)。カメラ(camera)。モーション・キャプチャ・システム(motion capture system)。
【0079】
[波動推進機構の走行試験]
製造した推進機構の水平面上の推進性能を確認するための走行試験を実施した。評価項目は、波動推進機構の水平面における単位周期あたりの推進距離である。前述した式(5)から、波動推進機構の単位周期あたりの推進距離は波動の周期によらず一定と予想される。そのため、波動の伝播速度を変えて試験を行い、単位周期当たりの推進距離を比較する。また、前述のモデル化された推進距離と実測値を比べる。
【0080】
[試験条件]
図16は、走行試験時の外観を示したものである。写真のようにテーブル上に導電マットを敷き、その上で波動推進機構を走行させた。波動推進機構の空間位置の検出には、モーション・トラッキング・システムを用いた。波動推進機構に取り付けたトラッキング・マーカーと専用のソフトウェアを用いて、波動推進機構の位置を計測することができる。なお、本試験に使用したモーション・トラッキング・システムは3台である。また、機構の推進を記録するためデジタルカメラを設置した。波動推進機構の波動周期は、0.75秒と0.5秒に設定し、それぞれ10回ずつ試験を行った。
【0081】
[推進機能の評価方法]
波動推進機構の3次元の位置をモーション・トラッキング・カメラで計測する。波動推進機構の走行開始後、ある一定時間が経過した後の定常状態部分を抜き出し、一定時間区間の走行距離から単位周期あたりの推進距離を算出する。
【0082】
[試験結果と考察]
試験の様子を図16に示す。試験結果から、波動推進機構は水平面(導電マット)上を推進できることが確かめられ、水平方向の推進手段として有効であることが示された。
【0083】
図17は、製造例の連結波動伝播機構の移動量を評価結果を示すグラフである。このグラフを用いて、波動推進機構の推進移動距離の時間履歴の代表的な結果を示す。どちらの波動周期においても、波動推進機構はほぼ一定の速度で推進していることがわかる。
【0084】
10回計測した1周期当たりの平均推進距離は、波動周期0.75秒では3.92mm/T(標準偏差0.05)、波動周期0.5秒では4.08mm/T(標準偏差0.01)であった。単位周期当たりの推進距離は波動周期によらずほぼ一定であることから、前章の理論とも整合することが確認できた。また、式(7)より、平均推進速度は、波動周期0.75秒では5.22mm/s(標準偏差0.06)、波動周期0.5秒では8.15mm/s(標準偏差0.03)であった。
【0085】
走行試験で得られた単位周期当たりの推進距離からリンクの角度θを算出すると、波動周期0.75秒ではθ = 22.8°、波動周期0.5 秒ではθ = 23.3°であった.撮影した動画からリンクの角度を観測すると、θ1 の平均はおよそ15°であった。
【0086】
これは走行試験から推測されるリンクの角度より小さいことから、前述のリンクの一連の動きによって推進した距離は機構の推進距離の一部であり、他に推進に寄与する要素が存在すると考えられる。
【0087】
ここで、モーション・キャプチャ・システムで得た推進方向の位置データを用いてFFT解析を行った。その結果、波動周期0.75秒では1.33Hzにピークが現れた。これは波動周期と一致する。同様に、波動周期0.5秒では2.00Hzでピークが現れ、波動周期に一致した。また、動画から波動の端のリンクが、水平面上を推進方向に滑っている様子が観察された。これらの結果から、機構は波動周期に同期した推進特性を持ち、リンクの一連の動作の間に推進する距離は全てのリンクで同じではないと推定される。
【0088】
螺旋翼を用いた波動推進機構を提案し、本機構が水平面上を推進できることが確認された。推進性能の評価試験の結果から、単位周期あたりの推進距離は、波動周期によらずほぼ一定であることが確認された。
また、実験結果とモデル式を比較したところ、機構はリンクの一連の動きによる推進以外に他の推進力を持つと考察された。さらに、FFT解析を行った結果、機構の推進に波動周期に連動した特性があることが確認された。
【産業上の利用可能性】
【0089】
本発明は、物体の移動や搬送に利用することができ、産業上有用である。
【符号の説明】
【0090】
11、12、100 波動伝播機構
21、22、23 螺旋翼
210、230 軸部材
211、231 凸部
212 平坦部
232 凹部
25 モータ
26 回転部
31、32 ピストン
312 端部
41、42 伝達部
411 外側伝達部
412 内側伝達部
413 接続部
414 回転ピン
415 拘束部
51 伝達手段
61 ガイド部材
62 プランジャー
63 シリンジ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
【手続補正書】
【提出日】2022-02-08
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0062
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0062】
【表1】
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0078
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0078】
[移動試験例]
図15は、本発明の連結波動伝播機構の製造例の移動例を示した像である。図16は、移動例を評価する状態を示した像である。図16において、それぞれ以下である。試作機(prototype)。水平面(horizontal pane)。電源(power supply)。パーソナルコンピュータ(PC)。カメラ(camera)。モーション・キャプチャ・システム(motion capture system)。
【手続補正3】
【補正対象書類名】図面
【補正対象項目名】図9
【補正方法】変更
【補正の内容】
図9
【手続補正4】
【補正対象書類名】図面
【補正対象項目名】図11
【補正方法】変更
【補正の内容】
図11
【手続補正5】
【補正対象書類名】図面
【補正対象項目名】図12
【補正方法】変更
【補正の内容】
図12
【手続補正6】
【補正対象書類名】図面
【補正対象項目名】図16
【補正方法】変更
【補正の内容】
図16