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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023086535
(43)【公開日】2023-06-22
(54)【発明の名称】導体パターンの製造方法
(51)【国際特許分類】
   H05K 3/08 20060101AFI20230615BHJP
   H01B 13/00 20060101ALI20230615BHJP
【FI】
H05K3/08 D
H01B13/00 503D
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021201116
(22)【出願日】2021-12-10
(71)【出願人】
【識別番号】000137694
【氏名又は名称】株式会社ミツトヨ
(74)【代理人】
【識別番号】100087480
【弁理士】
【氏名又は名称】片山 修平
(74)【代理人】
【識別番号】100134511
【弁理士】
【氏名又は名称】八田 俊之
(72)【発明者】
【氏名】三宅 耕作
【テーマコード(参考)】
5E339
5G323
【Fターム(参考)】
5E339AB02
5E339AB07
5E339AD01
5E339BC02
5E339BD05
5E339BE05
5E339BE13
5E339CC02
5E339CD01
5E339CE11
5E339CF16
5E339CF17
5E339DD03
5E339EE02
5G323CA04
(57)【要約】
【課題】 製造コストを抑制しつつ、導体パターンのエッジを高精度に形成することができる、導体パターンの製造方法を提供する。
【解決手段】 導体パターンの製造方法は、一方の主面に導体が設けられた基板を用意する工程と、前記導体に対して、短パルスレーザによって、導体パターンの輪郭を形成する工程と、前記導体のうち、前記導体パターン以外の領域の少なくとも一部をエッチングによって除去する工程と、を含むことを特徴とする。
【選択図】 図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一方の主面に導体が設けられた基板を用意する工程と、
前記導体に対して、短パルスレーザによって、導体パターンの輪郭を形成する工程と、
前記導体のうち、前記導体パターン以外の領域の少なくとも一部をエッチングによって除去する工程と、を含むことを特徴とする導体パターンの製造方法。
【請求項2】
フォトリソグラフィにより前記導体上にレジストパターンを形成した後に、前記レジストパターンをマスクとして用いてエッチングを行ない、その後に前記短パルスレーザによって前記導体パターンの輪郭を形成することを特徴とする請求項1に記載の導体パターンの製造方法。
【請求項3】
前記導体に対して、前記短パルスレーザによって前記導体パターンの輪郭を形成した後に、前記導体パターンが覆われるようにレジストパターンを形成し、その後に、前記レジストパターンで覆われていない前記導体をエッチングによって除去することを特徴とする請求項1に記載の導体パターンの製造方法。
【請求項4】
互いに離間する複数の前記導体が並ぶように基板上に形成する工程を含み、
前記導体に対して、前記短パルスレーザによって前記導体パターンの輪郭を形成した後に、前記導体パターンが覆われるようにレジストパターンを形成し、その後に、前記レジストパターンで覆われていない前記導体をエッチングによって除去することを特徴とする請求項1に記載の導体パターンの製造方法。
【請求項5】
互いに離間する複数の導体を基板上に形成する工程と、
前記導体に対して、短パルスレーザによって導体パターン以外の領域を除去する工程と、を含むことを特徴とする導体パターンの製造方法。
【請求項6】
前記導体を、印刷またはスタンプめっきによって前記基板上に形成することを特徴とする請求項5に記載の導体パターンの製造方法。
【請求項7】
前記短パルスレーザによって形成するレーザ加工溝の幅を3μm以上、100μm以下とすることを特徴とする請求項1~6のいずれか一項に記載の導体パターンの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本件は、導体パターンの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
エンコーダなどに用いるためのスケールが開示されている。これらのスケールには、コイルや目盛格子などのスケールパターンが形成されている。このスケールパターンは、基板上の導体層を加工することによって形成されている(例えば、特許文献1~4参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003-166853号公報
【特許文献2】特開2016-44967号公報
【特許文献3】特開平10-332360号公報
【特許文献4】特開2008-126230号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1,2のようなエッチング技術を用いると、スケールパターンのエッジを高精度に形成することが困難である。特に厚膜導体からなるパターンの場合はエッジテーパ領域が高さ方向にも広がるため困難である。特許文献3のようなレーザ加工技術を用いても、スケールパターンのエッジを高精度に形成することが困難である。特許文献4のような短パルスレーザを用いると、スケールパターンのエッジを高精度に形成できるようになるが、加工時間が長くなって製造コストが増大してしまう。
【0005】
1つの側面では、本発明は、製造コストを抑制しつつ、導体パターンのエッジを高精度に形成することができる、導体パターンの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
1つの態様では、本発明に係る導体パターンの製造方法は、一方の主面に導体が設けられた基板を用意する工程と、前記導体に対して、短パルスレーザによって、導体パターンの輪郭を形成する工程と、前記導体のうち、前記導体パターン以外の領域の少なくとも一部をエッチングによって除去する工程と、を含むことを特徴とする。
【0007】
上記導体パターンの製造方法において、フォトリソグラフィにより前記導体上にレジストパターンを形成した後に、前記レジストパターンをマスクとして用いてエッチングを行ない、その後に前記短パルスレーザによって前記導体パターンの輪郭を形成してもよい。
【0008】
上記導体パターンの製造方法において、前記導体に対して、前記短パルスレーザによって前記導体パターンの輪郭を形成した後に、前記導体パターンが覆われるようにレジストパターンを形成し、その後に、前記レジストパターンで覆われていない前記導体をエッチングによって除去してもよい。
【0009】
上記導体パターンの製造方法において、互いに離間する複数の前記導体が並ぶように基板上に形成する工程を含み、前記導体に対して、前記短パルスレーザによって前記導体パターンの輪郭を形成した後に、前記導体パターンが覆われるようにレジストパターンを形成し、その後に、前記レジストパターンで覆われていない前記導体をエッチングによって除去してもよい。
【0010】
本発明に係る他の導体パターンの製造方法は、互いに離間する複数の導体を基板上に形成する工程と、前記導体に対して、短パルスレーザによって導体パターン以外の領域を除去する工程と、を含むことを特徴とする。
【0011】
上記導体パターンの製造方法において、前記導体を、印刷またはスタンプめっきによって前記基板上に形成してもよい。
【0012】
上記導体パターンの製造方法において、前記短パルスレーザによって形成するレーザ加工溝の幅を3μm以上、100μm以下としてもよい。
【発明の効果】
【0013】
製造コストを抑制しつつ、導体パターンのエッジを高精度に形成することができる、導体パターンの製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】(a)はスケールの平面図であり、(b)は(a)のA-A線断面図である。
図2】(a)~(c)は第1実施形態に係るスケールの製造方法を例示する図である。
図3】(a)~(c)は第2実施形態に係るスケールの製造方法を例示する図である。
図4】(a)および(b)は第3実施形態に係るスケールの製造方法を例示する図である。
図5】(a)~(d)は第4実施形態に係るスケールの製造方法を例示する図である。
図6】(a)はスケールの平面図であり、(b)は(a)のA-A線断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
(第1実施形態)
図1(a)は、第1実施形態に係る製造方法によって製造されるスケール100の平面図である。図1(b)は、図1(a)のA-A線断面図である。スケール100は、一例として、電磁誘導式のスケールである。図1(a)および図1(b)で例示するように、スケール100は、基板10上にスケールパターン20(導体パターン)が配置された構造を有している。スケールパターン20は、複数の格子が所定の間隔で配列された構造を有し、目盛格子を構成している。例えば、スケールパターン20の各格子は、基板10の一方の主面上において、各格子の配列方向と直交する方向に長さ方向を有している。各格子の配列方向をX軸とする。基板10に対するスケールパターン20の積層方向をZ軸とする。各格子の長さ方向であって、X軸およびZ軸と直交する方向をY軸とする。
【0016】
基板10は、例えば、プリプレグ(強化プラスチック成形材料)、ポリイミド、ガラス、CFRP(炭素繊維強化プラスチック)、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、ポリアセタール樹脂、エンジニアリングプラスチック、ステンレス、インバー合金、アルミニウム、アルミニウム合金などで構成されている。
【0017】
スケールパターン20は、電磁誘導式の場合は銅、銀、金などの抵抗の低い金属導体からなる材料で形成されており、光電式の場合は銅、銀、金などの抵抗の低い金属導体で形成されており、または、クロム、チタン、チタンシリサイドなどの反射率の高い導体からなる材料で形成されている。スケールパターン20の各格子のX軸方向の幅は、例えば、光電式ではL&Sで2μm以上、50μm以下、電磁誘導式では500μm以上3000μm以下である。各格子のZ軸方向の厚さは、高周波による反磁界応答を十分に得るために、例えば、5μm以上、30μm以下である。
【0018】
スケールパターン20のエッジ位置がエンコーダ精度に最も影響するため、エッジ部分の位置のみならず、エッジ位置を不鮮明にさせるエッジテーパやエッジラフネスの無い加工精度の良い形状が求められている。
【0019】
例えば、特許文献1,2のように、導体膜の表面にレジスト層を形成した後に、露光、現像、エッチングといった工程を経て加工されたスケールパターンの場合、加工基材上の位置ごとに加工ばらつきが存在するため、工程ごとにエッジ粗さが増大する。また、エッチング工程では膜厚方向の上部が最もエッチングされて下部が残る傾向があるため、テーパ角度が60度~70度となり、テーパ領域が2~15μm程度に不均質に広がり、エッジ位置の加工精度の向上を妨げる。
【0020】
また、特許文献3のように、レーザ加工を用いることで厚い金属に対して1つの工程によってパターンエッジを加工できるため、エッジラフネスを小さく、長尺基板のようにマスク露光が困難な異形基材でも加工することができる。しかしながら、従来のレーザ加工技術では、加工時の材料の飛散にともなう付着物の発生や熱による変形によって1μm以下のエッジラフネスといった精密加工が困難である。
【0021】
また、特許文献4のように、ピコ秒パルス、フェムト秒パルスレーザといった短パルスレーザを用いてガルバノスキャナや精密ステージによってワーク表面を走査することでエッジラフネスの小さな導体パターンを得ることができる。しかしながら、精密であるためにはレーザースポット径を細く絞る必要があり、スポットあたりの加工面積が微細化するため、基板の半分程度の面積を占める導体を除いた部分の面積を加工するためには、長い加工時間が必要であり、スループットが向上しない。したがって、製造コストが増大するという問題点がある。また、短パルスレーザは、単純に発振エネルギを増加させてもエネルギの一部が熱に変換されるため、加工レートが頭打ちとなり増加しないという問題点があり、出力の大きなレーザ発振器を用いてもスループットは改善しない。
【0022】
そこで、本実施形態においては、製造コストを抑制しつつ、スケールパターンのエッジを高精度に形成することができる、スケールの製造方法について説明する。
【0023】
図2(a)で例示するように、一方の主面にスケールパターン20と同材料の導体層30が箔のプレス成型、めっきなどにより成膜された基板10を用意する。導体層30の厚みは、例えば、5μm以上、30μm以下である。この導体層30に対して、フォトレジスト層を形成した後、フォトリソグラフィによりレジストパターン40を形成する。この場合において、後工程でレーザ加工による成形する量を考慮に入れて、X軸方向においてスケールパターン20の各格子よりも一回り大きくなるように、レジストパターン40を形成する。例えば、スケールパターン20の各格子に対するレジストパターン40の余剰分を、X軸方向における両端において、それぞれ10μm以上20μm以下程度とする。レジストパターン40は、スケールパターン20と同様に、複数の格子が所定の間隔で並ぶような形状を有している。
【0024】
次に、図2(b)で例示するように、レジストパターン40をマスクとして用いてエッチングする。それにより、導体層30が部分的に除去され、レジストパターン40と略同形状のパターン30aが形成される。パターン30aは、スケールパターン20と同様に、複数の格子が所定の間隔で並ぶような形状を有している。
【0025】
エッチングの加工精度は高くないため、パターン30aの各格子部分は、略台形形状を有するようになる。例えば、パターン30aの各格子部分において、X軸方向の両端のエッジ部分が、ある範囲に分布することになる。本実施形態においては、エッチング加工精度は、低くてもよい。ただし、レーザ加工の範囲を超えない程度の精密さで加工することが求められる。すなわち、エッチング加工精度が高いと、次のレーザ加工工程で除去する面積が減少するため、レーザ加工時間を短くすることができる。エッジの粗さや位置精度によるばらつきは±10μm程度のため、概ね20μm~30μm程度のレーザ加工幅が求められる。
【0026】
次に、図2(c)で例示するように、レジストパターン40を剥離した後に、短パルスレーザによって、パターン30aの各格子部分のエッジ部分を除去し、精密なエッジ端面を得る。短パルスレーザとは、パルス幅がフェムト秒~ピコ秒オーダーで0.1~10J/cmのエネルギ密度のパルスを投入できるレーザと定義することができる。短パルスレーザとして、例えば、ピコ秒レーザ、フェムト秒レーザなどを用いることができる。短パルスレーザを10kHz~5MHzといった高速で繰り返し照射することで、Z軸方向に沿って高い精度でパターン30aの傾斜部分を除去することができる。また、短パルスレーザを用いると、光のエネルギが吸収され熱に変換される時間(約1ナノ秒)よりも短いパルス幅を使用する為、レーザ照射部が溶融する事なく瞬時に昇華するため、熱影響が出にくく、バリやクラック、やけなどを低減したダメージの少ない高精度な微細加工が可能といった理由により、材料の飛散を抑制することができる。
【0027】
本実施形態に係る製造方法によれば、短パルスレーザによってパターン30aの各格子部分のエッジ部分を除去するため、高精度でスケールパターン20のエッジを形成することができる。例えば、エッジラフネスを1μm以下とすることで、スケール100を用いた測定精度を1μm以下とすることができる。また、エッチング加工によって低精度で導体パターンを形成した後に、短パルスレーザを用いるため、スポット径の小さい短パルスレーザだけで加工する場合と比較すると加工時間を短縮化することができる。それにより、製造コストを抑制することができる。以上のことから、製造コストを抑制しつつ、高精度にスケールパターンのエッジを形成することができる。また、短パルスレーザによる加工時間が短縮化されることで、温度ドリフトの影響を少なくすることができる。また、エッチング加工精度が低くてもよいため、高価な高精度リソグラフィ装置などを用いる必要がない。
【0028】
(第2実施形態)
図3(a)で例示するように、一方の主面にスケールパターン20と同材料の導体層50が箔のプレス成型、めっきなどにより成膜された基板10を用意する。導体層50の厚みは、例えば、5μm以上、30μm以下である。短パルスレーザを用いて導体層50を部分的に除去してレーザ加工溝を形成することで、スケールパターン20と同形状の輪郭を形成する。この場合、導体層50から、スケールパターン20に対応するパターン50aと、パターン50a間の残存部分50bとが形成される。精細な加工が可能な短パルスレーザのスポット径は、例えば、3μm以上、10μm以下である。スポット径と同じ幅で輪郭を加工すればよい。したがって、レーザ加工溝の幅も3μm以上、10μm以下とすることができる。均質な膜を加工するため、レーザ加工条件がすべての場所で揃っており、均質な品質のエッジパターンが得られる。
【0029】
次に、図3(b)で例示するように、パターン50aと残存部分50bとを覆うようにフォトレジスト層を形成した後にフォトリソグラフィによりレジストパターン60を形成する。この場合において、後工程でレーザ加工による成形する量を考慮に入れて、X軸方向においてスケールパターン20の各格子よりも一回り大きくなるように、レジストパターン60を形成する。ただし、レジストパターン60は、残存部分50bの表面には残らないようにする。例えば、レジストパターン60の端面を、レーザ加工溝部分のX軸方向の中心付近となるようにする。
【0030】
次に、図3(c)で例示するように、レジストパターン60をマスクとして用いてエッチングすることによって、残存部分50bを除去する。高精度に形成されているパターン50aがレジストパターン60によって保護された状態でエッチングを行なうため、エッチング時間に対する制約が緩く、容易に欠陥なくエッチングすることが可能となる。
【0031】
本実施形態に係る製造方法によれば、短パルスレーザによって導体層50にレーザ加工溝を形成するため、高精度でパターン50aを形成することができる。例えば、エッジラフネスを1μm以下とすることで、スケール100を用いた測定精度を1μm以下とすることができる。また、残存部分50bについてはエッチングによって除去するため、スポット径の小さい短パルスレーザだけで加工する場合と比較すると加工時間を短縮化することができる。それにより、製造コストを抑制することができる。以上のことから、製造コストを抑制しつつ、スケールパターン20のエッジを高精度に形成することができる。また、短パルスレーザによる加工時間が短縮化されることで、温度ドリフトの影響を少なくすることができる。
【0032】
なお、この方法では、レーザ加工対象の面積を最も小さくすることができ、加工精度のばらつきも小さくなる。また、ウエットエッチング加工不良が生じにくい。また、レジストを永久レジストとすれば、保護膜として、精密に加工された導体パターン端面を保護することができるため、工程の削減も可能となる。従って、第1実施形態よりも生産性も高くなり、精細なスケールパターンの加工が可能である。
【0033】
(第3実施形態)
図4(a)で例示するように、基板10の一方の主面に、スケールパターン20と同材料を含む導体ペーストをインクとして用いて、スクリーン印刷、インクジェット印刷、オフセット印刷などの印刷法で成膜して焼成、またはスタンプめっきなどによって導体70を形成する。導体70の厚みは、例えば、5μm以上、30μm以下である。X軸方向においてスケールパターン20の各格子よりも一回り大きくなるように、導体70を形成する。導体70は、スケールパターン20と同様に、複数の格子が所定の間隔で並ぶような形状を有している。インクはなだらかに広がるため、導体70の各格子部分は、略台形形状を有するようになる。例えば、導体70の各格子部分において、X軸方向の両端のエッジ部分が、Z軸方向に対して傾斜する傾斜部分を有するようになる。
【0034】
次に、図4(b)で例示するように、短パルスレーザによって、スケールパターン20の各格子の端面位置に合わせて、導体70の各格子部分のエッジ部分を除去する。これによって、導体70からスケールパターン20を得ることができる。
【0035】
本実施形態に係る製造方法によれば、短パルスレーザによって導体70の各格子部分のエッジ部分を除去するため、高精度でスケールパターン20のエッジを形成することができる。例えば、エッジラフネスを1μm以下とすることで、スケール100を用いた測定精度を1μm以下とすることができる。また、低精度で導体70を形成した後に、短パルスレーザを用いるため、スポット径の小さい短パルスレーザだけで加工する場合と比較すると加工時間を短縮化することができる。それにより、製造コストを抑制することができる。以上のことから、製造コストを抑制しつつ、スケールパターン20のエッジを高精度に形成することができる。また、短パルスレーザによる加工時間が短縮化されることで、温度ドリフトの影響を少なくすることができる。
【0036】
(第4実施形態)
図5(a)で例示するように、基板10の一方の主面に、スケールパターン20と同材料を含む導体ペーストをインクとして用いて、スクリーン印刷、インクジェット印刷、オフセット印刷などの印刷法で成膜して焼成、またはスタンプめっきなどによって導体80を形成する。導体80の厚みは、例えば、5μm以上、30μm以下である。X軸方向においてスケールパターン20の各格子よりも一回り大きくなるように、導体80を形成する。導体80は、スケールパターン20と同様に、複数の格子が所定の間隔で並ぶような形状を有している。インクはなだらかに広がるため、導体80の各格子部分は、略台形形状を有するようになる。例えば、導体80の各格子部分において、X軸方向の両端のエッジ部分が、Z軸方向に対して傾斜する傾斜部分を有するようになる。
【0037】
次に、図5(b)で例示するように、短パルスレーザを用いて導体80を部分的に除去してレーザ加工溝を形成することで、スケールパターン20と同形状の輪郭を形成する。この場合、導体80から、スケールパターン20と、残存部分80aとが形成される。精細な加工が可能な短パルスレーザのスポット径は、3μm~10μm程度である。スポット径と同じ幅で輪郭を加工すればよい。均質な膜を加工するため、レーザ加工条件がすべての場所で揃っており、均質な品質のエッジパターンが得られる。
【0038】
次に、図5(c)で例示するように、スケールパターン20と残存部分80aとを覆うようにフォトレジスト層を形成した後にフォトリソグラフィによりレジストパターン90を形成する。この場合において、後工程でレーザ加工による成形する量を考慮に入れて、X軸方向においてスケールパターン20の各格子よりも一回り大きくなるように、レジストパターン90を形成する。ただし、レジストパターン90は、残存部分80aの表面には残らないようにする。例えば、レジストパターン90の端面を、レーザ加工溝部分のX軸方向の中心付近となるようにする。
【0039】
次に、図5(d)で例示するように、レジストパターン90をマスクとして用いてエッチングすることによって、残存部分80aを除去する。高精度に形成されているスケールパターン20がレジストパターン90によって保護された状態でエッチングを行なうため、エッチング時間に対する制約が緩く、容易に欠陥なくエッチングすることが可能となる。
【0040】
本実施形態に係る製造方法によれば、短パルスレーザによって導体80にレーザ加工溝を形成するため、高精度でスケールパターンのエッジを形成することができる。例えば、エッジラフネスを1μm以下とすることで、スケール100を用いた測定精度を1μm以下とすることができる。また、残存部分80aについてはエッチングによって除去するため、スポット径の小さい短パルスレーザだけで加工する場合と比較すると加工時間を短縮化することができる。それにより、製造コストを抑制することができる。以上のことから、コストを抑制しつつ、加工精度を向上させることができる。また、短パルスレーザによる加工時間が短縮化されることで、温度ドリフトの影響を少なくすることができる。
【0041】
なお、この方法では、レーザ加工対象の面積を最も小さくすることができ、加工精度のばらつきも小さくなる。また、ウエットエッチング加工不良が生じにくい。また、レジストを永久レジストとすれば、保護膜として、精密に加工された導体パターン端面を保護することができるため、工程の削減も可能となる。従って、第1実施形態よりも生産性も高くなり、精細なスケールパターンの加工が可能である。
【0042】
なお、上記各実施形態では、スケールパターンが、複数の格子形状が並ぶ構造を有していたが、それに限られない。例えば、複数のコイルが所定の間隔でX軸方向に並ぶスケールパターンに、上記各実施形態を適用することができる。
【0043】
図6(a)は、複数のコイルが所定の間隔でX軸方向に並ぶスケールパターン20aを備えるスケール100aの平面図である。図6(b)は、図6(a)のA-A線断面図である。図6(a)および図6(b)で例示するように、スケール100aは、基板10上にスケールパターン20aが配置された構造を有している。スケールパターン20aは、複数のコイルが所定の間隔で配列された構造を有している。各コイルの配列方向をX軸とする。
【0044】
第1実施形態の製造方法をスケール100aに適用すると、例えば、コイルパターンのL&Sが1000μm/1000μm程度であれば、パターン両端合わせて50μm程度の幅の加工となるため、抜きパターン部分をすべてレーザ加工した場合と比較して、加工時間を1/20に減じることが可能である。
【0045】
第2実施形態の製造方法をスケール100aに適用すると、例えば5μmのスポット径のレーザを用いた場合、L&Sが1000μm/1000μmの加工であれば、両端合わせて10μm幅となるため、加工時間を1/100に減じることができる。
【0046】
第3実施形態の製造方法をスケール100aに適用すると、例えば、コイルパターンのL&Sが1000μm/1000μm程度であれば、パターン両端合わせて50μm程度の幅の加工となるため、抜きパターン部分をすべてレーザ加工した場合と比較して、加工時間を1/10に減じることが可能である。
【0047】
第4実施形態の製造方法をスケール100aに適用すると、例えば、コイルパターンのL&Sが1000μm/1000μm程度であれば、パターン両端合わせて10μm程度の幅の加工となるため、抜きパターン部分をすべてレーザ加工した場合と比較して、加工時間を1/100に減じることが可能である。
【0048】
上記各実施形態は、電磁誘導式のスケールに適用しているが、他のスケールに適用してもよい。例えば、上記各実施形態は、インジケータ、マイクロメータ、ノギス、ハイトゲージ、リニアエンコーダ、ロータリエンコーダ、温度安定性が得られるガラス基板やスピンドル部品に形成されたアンテナパターン、超高精度センサ、ガラスMEMSセンサなどが備える導体パターンに適用することもできる。
【0049】
以上、本発明の実施例について詳述したが、本発明は係る特定の実施例に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。
【符号の説明】
【0050】
10 基板
20,20a スケールパターン
30 導体層
30a パターン
40 レジストパターン
50 導体層
50a パターン
50b 残存部分
60 レジストパターン
70 導体
80 導体
80a 残存部分
90 レジストパターン
100,100a スケール
図1
図2
図3
図4
図5
図6