(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023008657
(43)【公開日】2023-01-19
(54)【発明の名称】密着膜形成材料、これを用いた密着膜の形成方法、及び密着膜形成材料を用いたパターン形成方法
(51)【国際特許分類】
G03F 7/11 20060101AFI20230112BHJP
H01L 21/027 20060101ALI20230112BHJP
G03F 7/039 20060101ALN20230112BHJP
【FI】
G03F7/11 502
G03F7/11 503
H01L21/30 573
H01L21/30 563
G03F7/039 601
【審査請求】未請求
【請求項の数】20
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021112381
(22)【出願日】2021-07-06
(71)【出願人】
【識別番号】000002060
【氏名又は名称】信越化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100102532
【弁理士】
【氏名又は名称】好宮 幹夫
(74)【代理人】
【識別番号】100194881
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 俊弘
(74)【代理人】
【識別番号】100215142
【弁理士】
【氏名又は名称】大塚 徹
(72)【発明者】
【氏名】中原 貴佳
(72)【発明者】
【氏名】美谷島 祐介
(72)【発明者】
【氏名】原田 裕次
(72)【発明者】
【氏名】荻原 勤
【テーマコード(参考)】
2H225
5F146
【Fターム(参考)】
2H225AE04N
2H225AE05N
2H225AF18N
2H225AF24N
2H225AF24P
2H225AF35N
2H225AF53N
2H225AF53P
2H225AF64N
2H225AF68N
2H225AF68P
2H225AH16
2H225AJ13
2H225AJ54
2H225AJ59
2H225AM16N
2H225AM22N
2H225AM93N
2H225AM99N
2H225AN39N
2H225AN51P
2H225AN88P
2H225BA24N
2H225BA26P
2H225CA12
2H225CB10
2H225CC03
2H225CC15
5F146HA01
5F146NA06
5F146NA19
(57)【要約】 (修正有)
【課題】半導体装置製造工程における多層レジスト法による微細パターニングプロセスにおいて、レジスト上層膜との高い密着性を有し、微細パターンの倒れ抑止効果を有するとともに良好なパターン形状を形成できる密着膜を与える密着膜形成材料、該材料を用いたパターン形成方法、及び前記密着膜の形成方法を提供する。
【解決手段】ケイ素含有中間膜とレジスト上層膜との間に形成される密着膜の密着膜形成材料であって、前記密着膜形成材料は、フェノール性水酸基を有する特定の構造単位を有する樹脂、式(2)で示される化合物を一種以上含有する架橋剤、光酸発生剤、及び有機溶剤を含むものであることを特徴とする密着膜形成材料。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケイ素含有中間膜とレジスト上層膜との間に形成される密着膜の密着膜形成材料であって、前記密着膜形成材料は、(A)下記一般式(1)で示される構造単位を有する樹脂、(B)下記一般式(2)で示される化合物を一種以上含有する架橋剤、(C)光酸発生剤、及び(D)有機溶剤を含むものであることを特徴とする密着膜形成材料。
【化1】
(式中、R
01は水素原子又はメチル基であり、R
02は炭素数1~3のアルキル基であり、mは1又は2の整数、nは0~4の整数を示し、m+nは1以上5以下の整数である。Xは単結合、又は、炭素数1~10の酸素原子を含んでもよいアルキレン基を示す。)
【化2】
(式中、Qは単結合、又は、炭素数1~20のq価の炭化水素基である。R
03は水素原子又はメチル基である。qは1~5の整数である。)
【請求項2】
前記ケイ素含有中間膜は、ケイ素含有レジスト中間膜、又は無機ハードマスク中間膜であることを特徴とする請求項1に記載の密着膜形成材料。
【請求項3】
前記(C)光酸発生剤として、下記一般式(3)で示される化合物を一種類以上含有するものであることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の密着膜形成材料。
【化3】
(式中、R
04、R
05及びR
06は、それぞれ独立にヘテロ原子で置換されていてもよく、ヘテロ原子が介在してもよい炭素数1~10の直鎖状、又は炭素数3~10の分岐状もしくは環状のアルキル基又はアルケニル基を示すか、あるいはヘテロ原子で置換されていてもよく、ヘテロ原子が介在してもよい炭素数6~18のアリール基またはアラルキル基を示す。また、R
04、R
05及びR
06のうちいずれか二つは相互に結合して式中の硫黄原子と共に環を形成してもよい。Y
-は下記一般式(4)又は(5)のいずれかを示す。)
【化4】
(式中、R
07及びR
08は相互に独立にヘテロ原子で置換されていてもよく、ヘテロ原子が介在してもよい炭素数3~40の脂肪族環構造を含む一価の炭化水素基を示す。)
【請求項4】
前記一般式(4)が下記一般式(4’)で示されるものであることを特徴とする請求項3に記載の密着膜形成材料。
【化5】
(式中、R
09は水素原子又はトリフルオロメチル基を表す。R
10はヘテロ原子で置換されていてもよく、ヘテロ原子が介在してもよい炭素数3~30の脂肪族環構造を含む一価の炭化水素基を示す。)
【請求項5】
前記一般式(1)中のXが-C(=O)O-であることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の密着膜形成材料。
【請求項6】
前記(A)樹脂の重量平均分子量が、1,000~20,000であることを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の密着膜形成材料。
【請求項7】
前記(B)架橋剤の含有量が、前記(A)樹脂の含有量に対し10質量%~50質量%であることを特徴とする請求項1から請求項6のいずれか一項に記載の密着膜形成材料。
【請求項8】
前記(C)光酸発生剤の含有量が、前記(A)樹脂の含有量に対し1質量%~20質量%であることを特徴とする請求項1から請求項7のいずれか一項に記載の密着膜形成材料。
【請求項9】
さらに界面活性剤、可塑剤および色素のうち1種以上を含有することを特徴とする請求項1から請求項8のいずれか一項に記載の密着膜形成材料。
【請求項10】
熱酸発生剤を含有しないことを特徴とする請求項1から請求項9のいずれか一項に記載の密着膜形成材料。
【請求項11】
被加工基板にパターンを形成する方法であって、
(I-1)被加工基板上に、レジスト下層膜を形成する工程、
(I-2)該レジスト下層膜上に、ケイ素含有レジスト中間膜を形成する工程、
(I-3)該ケイ素含有レジスト中間膜上に、請求項1から請求項10のいずれか一項に記載の密着膜形成材料を塗布後、熱処理することにより密着膜を形成する工程、
(I-4)該密着膜上に、フォトレジスト材料を用いてレジスト上層膜を形成する工程、
(I-5)該レジスト上層膜をパターン露光した後、現像液で現像して、前記レジスト上層膜にパターンを形成する工程、
(I-6)該パターンが形成されたレジスト上層膜をマスクにして、ドライエッチングで前記密着膜にパターンを転写する工程、
(I-7)該パターンが形成された密着膜をマスクにして、ドライエッチングで前記ケイ素含有レジスト中間膜にパターンを転写する工程、及び
(I-8)該パターンが転写されたケイ素含有レジスト中間膜をマスクにして、ドライエッチングで前記レジスト下層膜にパターンを転写する工程、
を有することを特徴とするパターン形成方法。
【請求項12】
被加工基板にパターンを形成する方法であって、
(II-1)被加工基板上に、レジスト下層膜を形成する工程、
(II-2)該レジスト下層膜上に、ケイ素酸化膜、ケイ素窒化膜、及びケイ素酸化窒化膜から選ばれる無機ハードマスク中間膜を形成する工程、
(II-3)該無機ハードマスク中間膜上に、請求項1から請求項10のいずれか一項に記載の密着膜形成材料を塗布後、熱処理することにより密着膜を形成する工程、
(II-4)該密着膜上に、フォトレジスト材料を用いてレジスト上層膜を形成する工程、
(II-5)該レジスト上層膜をパターン露光した後、現像液で現像して、前記レジスト上層膜にパターンを形成する工程、
(II-6)該パターンが形成されたレジスト上層膜をマスクにして、ドライエッチングで前記密着膜にパターンを転写する工程、
(II-7)該パターンが形成された密着膜をマスクにして、ドライエッチングで前記無機ハードマスク中間膜にパターンを転写する工程、及び
(II-8)該パターンが転写された無機ハードマスク中間膜をマスクにして、ドライエッチングで前記レジスト下層膜にパターンを転写する工程、
を有することを特徴とするパターン形成方法。
【請求項13】
前記無機ハードマスク中間膜をCVD法あるいはALD法によって形成することを特徴とする請求項12に記載のパターン形成方法。
【請求項14】
前記レジスト上層膜に回路パターンを形成する方法として、波長が10nm以上300nm以下の光リソグラフィー、電子線による直接描画、ナノインプリンティングまたはこれらの組み合わせを用いることを特徴とする請求項11から請求項13のいずれか一項に記載のパターン形成方法。
【請求項15】
現像方法として、アルカリ現像または有機溶剤による現像を用いることを特徴とする請求項11から請求項14のいずれか一項に記載のパターン形成方法。
【請求項16】
前記被加工基板として、半導体装置基板、又は該半導体装置基板上に金属膜、金属炭化膜、金属酸化膜、金属窒化膜、金属酸化炭化膜及び金属酸化窒化膜のいずれかが成膜されたものを用いることを特徴とする請求項11から請求項15のいずれか一項に記載のパターン形成方法。
【請求項17】
前記金属として、ケイ素、チタン、タングステン、ハフニウム、ジルコニウム、クロム、ゲルマニウム、銅、銀、金、アルミニウム、インジウム、ガリウム、ヒ素、パラジウム、鉄、タンタル、イリジウム、コバルト、マンガン、モリブデンまたはこれらの合金を用いることを特徴とする請求項16に記載のパターン形成方法。
【請求項18】
半導体装置の製造工程で使用される密着層として機能する密着膜の形成方法であって、被加工基板上に請求項1から請求項10のいずれか一項に記載の密着膜形成材料を回転塗布し、該密着膜形成材料を塗布した基板を100℃以上300℃以下の温度で10~600秒間の範囲で熱処理することにより硬化膜を形成することを特徴とする密着膜の形成方法。
【請求項19】
半導体装置の製造工程で使用される密着層として機能する密着膜の形成方法であって、被加工基板上に請求項1から請求項10のいずれか一項に記載の密着膜形成材料を回転塗布し、該密着膜形成材料を塗布した基板を酸素濃度0.1%以上21%以下の雰囲気で熱処理することにより硬化膜を形成することを特徴とする密着膜の形成方法。
【請求項20】
半導体装置の製造工程で使用される密着層として機能する密着膜の形成方法であって、被加工基板上に請求項1から請求項10のいずれか一項に記載の密着膜形成材料を回転塗布し、該密着膜形成材料を塗布した基板を酸素濃度0.1%未満の雰囲気で熱処理することにより硬化膜を形成することを特徴とする密着膜の形成方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、密着膜形成材料、該密着膜形成材料を用いた密着膜の形成方法、及び前記密着膜形成材料を用いたパターン形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
LSIの高集積化と高速度化に伴い、パターン寸法の微細化が急速に進んでいる。リソグラフィー技術は、この微細化に併せ、光源の短波長化とそれに対するレジスト組成物の適切な選択により、微細パターンの形成を達成してきた。その中心となったのは単層で使用するポジ型フォトレジスト組成物である。この単層ポジ型フォトレジスト組成物は、塩素系あるいはフッ素系のガスプラズマによるドライエッチングに対しエッチング耐性を持つ骨格をレジスト樹脂中に持たせ、かつ露光部が溶解するようなレジスト機構を持たせることによって、露光部を溶解させてパターンを形成し、残存したレジストパターンをエッチングマスクとしてフォトレジスト組成物を塗布した被加工基板をドライエッチング加工するものである。
【0003】
ところが、使用するフォトレジスト膜の膜厚をそのままで微細化、即ちパターン幅をより小さくした場合、フォトレジスト膜の解像性能が低下し、また現像液によりフォトレジスト膜をパターン現像しようとすると、いわゆるアスペクト比が大きくなりすぎ、結果としてパターン崩壊が起こってしまう。このため微細化に伴いフォトレジスト膜の膜厚は薄膜化されてきた。
【0004】
一方、被加工基板の加工には、通常パターンが形成されたフォトレジスト膜をエッチングマスクとして、ドライエッチングにより被加工基板を加工する方法が用いられるが、現実的にはフォトレジスト膜と被加工基板の間に完全なエッチング選択性を取ることのできるドライエッチング方法がないため、被加工基板の加工中にフォトレジスト膜もダメージを受け、被加工基板加工中にフォトレジスト膜が崩壊し、レジストパターンを正確に被加工基板に転写できなくなる。そこで、パターンの微細化に伴い、フォトレジスト組成物により高いドライエッチング耐性が求められてきた。また、露光波長の短波長化によりフォトレジスト組成物に使用する樹脂は、露光波長における光吸収の小さな樹脂が求められたため、i線、KrF、ArFへの変化に対し、ノボラック樹脂、ポリヒドロキシスチレン、脂肪族多環状骨格を持った樹脂へと変化してきているが、現実的には前記ドライエッチング条件におけるエッチング速度は速いものになってきてしまっており、解像性の高い最近のフォトレジスト組成物は、むしろエッチング耐性が弱くなる傾向がある。
【0005】
このことから、より薄くよりエッチング耐性の弱いフォトレジスト膜で被加工基板をドライエッチング加工しなければならないことになり、この加工工程における材料及びプロセスの確保は急務になってきている。
【0006】
このような問題点を解決する方法の一つとして、多層レジスト法がある。この方法は、フォトレジスト膜(即ち、レジスト上層膜)とエッチング選択性が異なる中間膜をレジスト上層膜と被加工基板の間に介在させ、レジスト上層膜にパターンを得た後、レジスト上層膜パターンをドライエッチングマスクとして、ドライエッチングにより中間膜にパターンを転写し、さらに中間膜をドライエッチングマスクとして、ドライエッチングにより被加工基板にパターンを転写する方法である。
【0007】
多層レジスト法の一つに、単層レジスト法で使用されている一般的なレジスト組成物を用いて行うことができる3層レジスト法がある。この3層レジスト法では、例えば、被加工基板上にノボラック等による有機膜をレジスト下層膜として成膜し、その上にケイ素含有膜をケイ素含有レジスト中間膜として成膜し、その上に通常の有機系フォトレジスト膜をレジスト上層膜として形成する。フッ素系ガスプラズマによるドライエッチングに対しては、有機系のレジスト上層膜は、ケイ素含有レジスト中間膜に対して良好なエッチング選択比が取れるため、レジスト上層膜パターンはフッ素系ガスプラズマによるドライエッチングを用いることでケイ素含有レジスト中間膜に転写される。さらに、酸素ガス又は水素ガスを用いたエッチングに対しては、ケイ素含有レジスト中間膜は、レジスト下層膜に対して良好なエッチング選択比を取ることができるため、ケイ素含有中間層膜パターンは酸素ガス又は水素ガスを用いたエッチングによってレジスト下層膜に転写される。この方法によれば、直接被加工基板を加工するための十分な膜厚を持ったパターンは形成することが難しいフォトレジスト組成物や、基板を加工するためにはドライエッチング耐性が十分でないフォトレジスト組成物を用いても、ケイ素含有膜(ケイ素含有レジスト中間膜)にパターンを転写することができれば、加工に十分なドライエッチング耐性を持つノボラック等による有機膜(レジスト下層膜)のパターンを得ることができる。
【0008】
一方、近年においては、ArF液浸リソグラフフィー、EUVリソグラフィーなどの登場により、より微細なパターンの形成が可能となりつつあるが、一方で超微細パターンは接地面積が小さいため極めて倒れが発生し易く、パターン倒れの抑制が非常に大きな課題である。昨今では微細パターンにおけるレジスト上層膜とレジスト下層膜との界面での相互作用がパターン倒れ影響を与えるとされ、レジスト下層膜の性能改善も必要とされている。
【0009】
パターン倒れを抑制するために、ラクトン構造やウレア構造のような極性官能基を含有するレジスト下層膜を用いてレジスト上層膜との密着性を向上させる材料が報告されている(特許文献1、2)。しかしながら、より微細なパターン形成が求められる現状においてこれらの材料ではパターン倒れ抑制性能が十分とは言えない。さらに、フェノール性水酸基含有の樹脂とビニルエーテル基を有する化合物を組み合わせたレジスト下層膜が報告されているが、熱硬化性が十分とは言えない(特許文献3)。以上のことからより高いパターン倒れ抑制性能および密着性を有する材料が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】国際公開第2003/017002号
【特許文献2】国際公開第2018/143359号
【特許文献3】特許第5708938号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は前記事情に鑑みなされたもので、半導体装置製造工程における多層レジスト法による微細パターニングプロセスにおいて、レジスト上層膜との高い密着性を有し、微細パターンの倒れ抑止効果を有するとともに良好なパターン形状を形成できる密着膜を与える密着膜形成材料、該材料を用いたパターン形成方法、及び前記密着膜の形成方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するために、本発明では、ケイ素含有中間膜とレジスト上層膜との間に形成される密着膜の密着膜形成材料であって、前記密着膜形成材料は、(A)下記一般式(1)で示される構造単位を有する樹脂、(B)下記一般式(2)で示される化合物を一種以上含有する架橋剤、(C)光酸発生剤、及び(D)有機溶剤を含むものである密着膜形成材料を提供する。
【化1】
(式中、R
01は水素原子又はメチル基であり、R
02は炭素数1~3のアルキル基であり、mは1又は2の整数、nは0~4の整数を示し、m+nは1以上5以下の整数である。Xは単結合、又は、炭素数1~10の酸素原子を含んでもよいアルキレン基を示す。)
【化2】
(式中、Qは単結合、又は、炭素数1~20のq価の炭化水素基である。R
03は水素原子又はメチル基である。qは1~5の整数である。)
【0013】
このような密着膜形成材料であれば、レジスト上層膜との高い密着性を有し、微細パターンの倒れ抑止効果を有するするとともに良好なパターン形状を与える密着膜を形成することができる。
【0014】
また、本発明では、前記ケイ素含有中間膜は、ケイ素含有レジスト中間膜、又は無機ハードマスク中間膜であることが好ましい。
【0015】
本発明では、ケイ素含有中間膜はこのような中間膜を好適に用いることができる。
【0016】
また、本発明では、前記(C)光酸発生剤として、下記一般式(3)で示される化合物を一種類以上含有するものであることが好ましい。
【化3】
(式中、R
04、R
05及びR
06は、それぞれ独立にヘテロ原子で置換されていてもよく、ヘテロ原子が介在してもよい炭素数1~10の直鎖状、又は炭素数3~10の分岐状もしくは環状のアルキル基又はアルケニル基を示すか、あるいはヘテロ原子で置換されていてもよく、ヘテロ原子が介在してもよい炭素数6~18のアリール基またはアラルキル基を示す。また、R
04、R
05及びR
06のうちいずれか二つは相互に結合して式中の硫黄原子と共に環を形成してもよい。Y
-は下記一般式(4)又は(5)のいずれかを示す。)
【化4】
(式中、R
07及びR
08は相互に独立にヘテロ原子で置換されていてもよく、ヘテロ原子が介在してもよい炭素数3~40の脂肪族環構造を含む一価の炭化水素基を示す。)
【0017】
このような密着膜形成材料であれば、微細パターンの倒れ抑止効果を有し、かつ、レジスト上層膜のパターン形状、露光感度等を適度に調整することができる。
【0018】
この時、前記一般式(4)が下記一般式(4’)で示されるものであることが好ましい。
【化5】
(式中、R
09は水素原子又はトリフルオロメチル基を表す。R
10はヘテロ原子で置換されていてもよく、ヘテロ原子が介在してもよい炭素数3~30の脂肪族環構造を含む一価の炭化水素基を示す。)
【0019】
このような密着膜形成材料であれば、十分な酸性度を有し、酸拡散を適度に調整することが可能であり、加えてレジスト上層膜由来の残渣低減に効果的な場合がある。
【0020】
また、本発明では、前記一般式(1)中のXが-C(=O)O-であることが好ましい。
【0021】
このような密着膜形成材料であれば、レジスト上層膜とのより高い密着性を有し、微細パターンの倒れ抑止効果を有する密着膜を形成することができる。
【0022】
また、本発明では、前記(A)樹脂の重量平均分子量が、1,000~20,000であることが好ましい。
【0023】
このような重量平均分子量範囲の樹脂を含む密着膜形成材料であれば、優れた成膜性を有し、また加熱硬化時の昇華物の発生を抑え、昇華物による装置の汚染を抑制することができる。また、塗布欠陥の発生を抑制でき、更に優れた密着膜形成材料となる。
【0024】
また、本発明では、前記(B)架橋剤の含有量が、前記(A)樹脂の含有量に対し10質量%~50質量%であることが好ましい。
【0025】
このような密着膜形成材料であれば、架橋反応性が上昇するため密着膜の溶剤耐性が向上するとともに、レジスト上層膜との高い密着性を維持した密着膜を形成することができる。
【0026】
また、本発明では、前記(C)光酸発生剤の含有量が、前記(A)樹脂の含有量に対し1質量%~20質量%であることが好ましい。
【0027】
このような密着膜形成材料であれば、レジスト上層膜のパターン形状、露光感度等を適度に調整することができ、レジスト上層膜のフォトリソグラフィーに好適である。
【0028】
また、本発明では、さらに界面活性剤、可塑剤および色素のうち1種以上を含有することが好ましい。
【0029】
これらの各種添加剤の有無/選択により、成膜性、埋め込み性、光学特性など顧客要求に応じた性能の微調整が可能となり、実用上好ましい。
【0030】
また、本発明では、熱酸発生剤を含有しないことが好ましい。
【0031】
このような密着膜形成材料であれば、ベーク後に密着膜表面が酸性に偏り、発生した酸がレジスト上層膜に拡散することでパターン形状がアンダーカット形状になりパターン倒れを誘発することや、逆に裾引き形状になることを防止できる。
【0032】
また、本発明では、被加工基板にパターンを形成する方法であって、
(I-1)被加工基板上に、レジスト下層膜を形成する工程、
(I-2)該レジスト下層膜上に、ケイ素含有レジスト中間膜を形成する工程、
(I-3)該ケイ素含有レジスト中間膜上に、上記に記載の密着膜形成材料を塗布後、熱処理することにより密着膜を形成する工程、
(I-4)該密着膜上に、フォトレジスト材料を用いてレジスト上層膜を形成する工程、
(I-5)該レジスト上層膜をパターン露光した後、現像液で現像して、前記レジスト上層膜にパターンを形成する工程、
(I-6)該パターンが形成されたレジスト上層膜をマスクにして、ドライエッチングで前記密着膜にパターンを転写する工程、
(I-7)該パターンが形成された密着膜をマスクにして、ドライエッチングで前記ケイ素含有レジスト中間膜にパターンを転写する工程、及び
(I-8)該パターンが転写されたケイ素含有レジスト中間膜をマスクにして、ドライエッチングで前記レジスト下層膜にパターンを転写する工程、
を有するパターン形成方法を提供する。
【0033】
また、本発明では、被加工基板にパターンを形成する方法であって、
(II-1)被加工基板上に、レジスト下層膜を形成する工程、
(II-2)該レジスト下層膜上に、ケイ素酸化膜、ケイ素窒化膜、及びケイ素酸化窒化膜から選ばれる無機ハードマスク中間膜を形成する工程、
(II-3)該無機ハードマスク中間膜上に、上記に記載の密着膜形成材料を塗布後、熱処理することにより密着膜を形成する工程、
(II-4)該密着膜上に、フォトレジスト材料を用いてレジスト上層膜を形成する工程、
(II-5)該レジスト上層膜をパターン露光した後、現像液で現像して、前記レジスト上層膜にパターンを形成する工程、
(II-6)該パターンが形成されたレジスト上層膜をマスクにして、ドライエッチングで前記密着膜にパターンを転写する工程、
(II-7)該パターンが形成された密着膜をマスクにして、ドライエッチングで前記無機ハードマスク中間膜にパターンを転写する工程、及び
(II-8)該パターンが転写された無機ハードマスク中間膜をマスクにして、ドライエッチングで前記レジスト下層膜にパターンを転写する工程、
を有するパターン形成方法を提供する。
【0034】
このように、本発明の密着膜形成材料は、ケイ素含有中間膜(ケイ素含有レジスト中間膜、無機ハードマスク中間膜)上に前記の密着膜を形成した4層レジストプロセスなどの種々のパターン形成方法に好適に用いることができ、これらのパターン形成方法であれば、密着膜形成によりパターン倒れを効果的に緩和でき、レジスト上層膜のフォトリソグラフィーに好適である。
【0035】
この時、前記無機ハードマスク中間膜をCVD法あるいはALD法によって形成することが好ましい。
【0036】
また、本発明では、前記レジスト上層膜に回路パターンを形成する方法として、波長が10nm以上300nm以下の光リソグラフィー、電子線による直接描画、ナノインプリンティングまたはこれらの組み合わせを用いることが好ましい。
【0037】
また、本発明では、現像方法として、アルカリ現像または有機溶剤による現像を用いることが好ましい。
【0038】
本発明では、上記のようなパターン形成方法を用いることで、パターン形成を良好かつ効率的に行うことができる。
【0039】
また、本発明では、前記被加工基板として、半導体装置基板、又は該半導体装置基板上に金属膜、金属炭化膜、金属酸化膜、金属窒化膜、金属酸化炭化膜及び金属酸化窒化膜のいずれかが成膜されたものを用いることが好ましい。
【0040】
この時、前記金属として、ケイ素、チタン、タングステン、ハフニウム、ジルコニウム、クロム、ゲルマニウム、銅、銀、金、アルミニウム、インジウム、ガリウム、ヒ素、パラジウム、鉄、タンタル、イリジウム、コバルト、マンガン、モリブデンまたはこれらの合金を用いることが好ましい。
【0041】
本発明のパターン形成方法であれば、上記のような被加工基板を上記のように加工してパターンを形成することができる。
【0042】
また、本発明では、半導体装置の製造工程で使用される密着層として機能する密着膜の形成方法であって、被加工基板上に上記の密着膜形成材料を回転塗布し、該密着膜形成材料を塗布した基板を100℃以上300℃以下の温度で10~600秒間の範囲で熱処理することにより硬化膜を形成する密着膜の形成方法を提供する。
【0043】
また、本発明では、半導体装置の製造工程で使用される密着層として機能する密着膜の形成方法であって、被加工基板上に上記の密着膜形成材料を回転塗布し、該密着膜形成材料を塗布した基板を酸素濃度0.1%以上21%以下の雰囲気で熱処理することにより硬化膜を形成する密着膜の形成方法を提供する。
【0044】
このような方法により、密着膜形成時の架橋反応を促進させ、レジスト上層膜とのミキシングをより高度に抑制することができる。また、熱処理温度、時間及び酸素濃度を前記範囲の中で適宜調整することにより、用途に適した密着膜のパターンの倒れ抑止効果を有し、かつ、レジスト上層膜のパターン形状調整特性を得ることができる。
【0045】
また、本発明では、半導体装置の製造工程で使用される密着層として機能する密着膜の形成方法であって、被加工基板上に上記の密着膜形成材料を回転塗布し、該密着膜形成材料を塗布した基板を酸素濃度0.1%未満の雰囲気で熱処理することにより硬化膜を形成する密着膜の形成方法を提供する。
【0046】
このような方法により、被加工基板が酸素雰囲気下での加熱に不安定な素材を含む場合であっても、被加工基板の劣化を起こすことなく、密着膜形成時の架橋反応を促進させ、上層膜とのインターミキシングをより高度に抑制することができ有用である。
【発明の効果】
【0047】
以上説明したように、本発明であれば、レジスト上層膜との高い密着性を有し、微細パターンの倒れ抑止効果を有する密着膜形成材料を提供できる。また、この密着膜形成材料は、高い密着性を有し、微細パターンの倒れ抑止効果を有するとともに、レジスト上層膜のパターン形状、露光感度等を適度に調整することが可能なため、例えば、ケイ素含有中間膜上に該密着膜を形成した4層レジストプロセス、といった多層レジストプロセスにおいて極めて有用である。また、本発明の密着膜の形成方法であれば、被加工基板上で十分に硬化し、かつ、レジスト上層膜との高い密着性を有する密着膜を形成することができる。また、本発明のパターン形成方法であれば、多層レジストプロセスにおいて、被加工基板に微細なパターンを高精度で形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【
図1】本発明の4層レジストプロセスによるパターン形成方法の一例の説明図である。
【
図2】実施例における密着性測定方法を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0049】
前述のように、半導体装置製造工程における多層レジスト法による微細パターニングプロセスにおいて、レジスト上層膜との高い密着性を有し、微細パターンの倒れ抑止効果を有する密着膜形成材料、該材料を用いたパターン形成方法、密着膜の形成方法が求められていた。
【0050】
本発明者らは、前記課題について鋭意検討を重ねた結果、多層リソグラフィーにおいて、密着膜形成によるレジスト上層膜との高い密着性を有し、微細パターンの倒れ抑止効果を有する密着膜形成材料、該材料を用いたパターン形成方法の探索を行ってきた。その結果、特定構造の化合物を主成分とする密着膜形成材料、該材料を用いたパターン形成方法、及び密着膜の形成方法が非常に有効であることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0051】
即ち、本発明は、ケイ素含有中間膜とレジスト上層膜との間に形成される密着膜の密着膜形成材料であって、前記密着膜形成材料は、(A)下記一般式(1)で示される構造単位を有する樹脂、(B)下記一般式(2)で示される化合物を一種以上含有する架橋剤、(C)光酸発生剤、及び(D)有機溶剤を含むものである密着膜形成材料である。
【化6】
(式中、R
01は水素原子又はメチル基であり、R
02は炭素数1~3のアルキル基であり、mは1又は2の整数、nは0~4の整数を示し、m+nは1以上5以下の整数である。Xは単結合、又は、炭素数1~10の酸素原子を含んでもよいアルキレン基を示す。)
【化7】
(式中、Qは単結合、又は、炭素数1~20のq価の炭化水素基である。R
03は水素原子又はメチル基である。qは1~5の整数である。)
【0052】
以下、本発明について詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0053】
[密着膜形成材料]
本発明では、ケイ素含有中間膜とレジスト上層膜との間に形成される密着膜を与える密着膜形成材料であって、前記密着膜形成材料は、(A)下記一般式(1)で示される構造単位を有する樹脂、(B)下記一般式(2)で示される化合物を一種以上含有する架橋剤、(C)光酸発生剤、及び(D)有機溶剤を含むものである密着膜形成材料を提供する。なお、本発明の密着膜形成材料において、(A)樹脂は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。さらに、前記密着膜形成材料は、上記(A)~(D)成分以外の成分を含んでもよい。以下各成分について説明する。
【0054】
[(A)樹脂]
本発明の密着膜形成材料に含まれる(A)樹脂は、下記一般式(1)で示されるものである。
【化8】
(式中、R
01は水素原子又はメチル基であり、R
02は炭素数1~3のアルキル基であり、mは1又は2の整数、nは0~4の整数を示し、m+nは1以上5以下の整数である。Xは単結合、又は、炭素数1~10の酸素原子を含んでもよいアルキレン基を示す。)
【0055】
前記一般式(1)中のR01は水素原子又はメチル基であり、R02は炭素数1~3のアルキル基であり、mは1又は2の整数、nは0~4の整数を示し、m+nは1以上5以下の整数であり、好ましくは、mは1又は2の整数、nは0又は1の整数、m+nは1以上3以下の整数であり、更に好ましくは、mは1、nは0、m+nは1である。
【0056】
前記一般式(1)中のXは、単結合、又は、炭素数1~10の酸素原子を含んでもよいアルキレン基である。前記X中の酸素原子は、カルボニル基、水酸基、エーテル結合を形成することができる。例えば、エステル結合は、炭素数1の酸素原子を含むアルキレン基である。
前記Xとして、前記具体的には以下のものなどを例示できるがこれらに限定されない。
【化9】
(式中、破線は結合手を示す。)
【0057】
前記一般式(1)中のR02としてメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基が挙げられるが、レジスト上層膜との密着性の観点からメチル基であることが好ましい。
【0058】
前記一般式(1)で示される樹脂の例として、具体的には下記を例示できるがこれらに限定されない。下記式中R
01は前記と同じである。
【化10】
【0059】
【0060】
これらの樹脂を含む密着膜形成材料であれば、レジスト上層膜との高い密着性を有し、微細パターンの倒れ抑止効果を有する密着膜形成材料を形成することができ、かつ容易に製造可能である。
【0061】
このような樹脂を含む密着膜形成材料を半導体装置等の製造工程における微細加工に適用される多層レジスト膜形成に用いることで、レジスト上層膜との高い密着性を有し、微細パターンの倒れ抑止効果を有する密着膜を形成するための密着膜形成材料、密着膜の形成方法、及びパターン形成方法を提供することが可能となる。
【0062】
前記樹脂は、公知の方法によって、必要に応じて保護基で保護した各単量体を重合させ、その後必要に応じて脱保護反応を行うことで合成することができる。重合反応は、特に限定されないが、好ましくはラジカル重合、アニオン重合である。これらの方法については、特開2004-115630号公報を参考にすることができる。
【0063】
前記樹脂は重量平均分子量(Mw)が1,000~20,000であることが好ましく、5,000~15,000であることがより好ましい。Mwが1,000以上であれば優れた成膜性を有し、また加熱硬化時の昇華物の発生を抑え、昇華物による装置の汚染を抑制することができる。一方、Mwが20,000以下であれば、溶剤への溶解性不足による塗布性不良や塗布欠陥の発生を抑制できる。また、前記樹脂は、分子量分布(Mw/Mn)が1.0~2.8であることが好ましく、1.0~2.5であることがより好ましい。なお、本発明においてMw及び分子量分布は、テトラヒドロフラン(THF)を溶媒として用いたゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によるポリスチレン換算測定値である。
【0064】
[(B)架橋剤]
本発明の密着膜形成材料は、(B)成分として下記一般式(2)で示される架橋剤を含有する。これによって、硬化性を高め、レジスト上層膜とのインターミキシングを抑制する。この効果に加え、膜厚均一性が向上する場合もある。また、下記一般式(2)で示される架橋剤であれば他の架橋剤と比べて架橋速度が速く熱酸発生剤を含まない場合でも十分な硬化性を獲得できる。このため、本発明の密着膜形成材料は、熱酸発生剤を必要とせず、含まないことが好ましい。
【化12】
(式中、Qは単結合、又は、炭素数1~20のq価の炭化水素基である。R
03は水素原子又はメチル基である。qは1~5の整数である。)
【0065】
前記一般式(2)中のQは単結合、又は、炭素数1~20のq価の炭化水素基である。qは1~5の整数であり、2または3であることがより好ましい。Qが炭素数1~20のq価の炭化水素基である場合、Qは炭素数1~20の炭化水素からq個の水素を除いたq価の炭化水素基である。この場合の炭素数1~20の炭化水素としてより具体的には、メタン、エタン、プロパン、ブタン、イソブタン、ペンタン、シクロペンタン、ヘキサン、シクロヘキサン、メチルペンタン、メチルシクロヘキサン、ジメチルシクロヘキサン、トリメチルシクロヘキサン、ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、エチルイソプロピルベンゼン、ジイソプロピルベンゼン、メチルナフタレン、エチルナフタレン、エイコサンを例示できる。
【0066】
前記一般式(2)中のR03は水素原子又はメチル基であり、好ましくはメチル基である。
【0067】
前記一般式(2)で示される化合物の例として、具体的には下記の化合物を例示できるがこれらに限定されない。下式中、R
03は前記と同様である。
【化13】
【0068】
【0069】
前記(B)架橋剤は1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。(B)架橋剤を添加する添加量は、前記(A)樹脂の含有量(100質量%)に対して好ましくは10質量%~50質量%であり、より好ましくは15質量%~30質量%である。添加量が10質量%以上であれば十分な硬化性を有し、レジスト上層膜とのインターミキシングを抑制することができる。一方、添加量が50質量%以下であれば、組成物中の(A)樹脂の比率が低くなり密着性が劣化する恐れがない。
【0070】
[(C)光酸発生剤]
また、本発明の密着膜形成材料は、(C)成分として光酸発生剤を含有する。光酸発生剤としては下記一般式(3)で示されることが好ましい。
【化15】
(式中、R
04、R
05及びR
06は、それぞれ独立にヘテロ原子で置換されていてもよく、ヘテロ原子が介在してもよい炭素数1~10の直鎖状、又は炭素数3~10の分岐状もしくは環状のアルキル基又はアルケニル基を示すか、あるいはヘテロ原子で置換されていてもよく、ヘテロ原子が介在してもよい炭素数6~18のアリール基またはアラルキル基を示す。また、R
04、R
05及びR
06のうちいずれか二つは相互に結合して式中の硫黄原子と共に環を形成してもよい。Y
-は下記一般式(4)又は(5)のいずれかを示す。)
【化16】
(式中、R
07及びR
08は相互に独立にヘテロ原子で置換されていてもよく、ヘテロ原子が介在してもよい炭素数3~40の脂肪族環構造を含む一価の炭化水素基を示す。)
【0071】
このとき、前記一般式(4)が下記一般式(4’)で示されることがより好ましい。
【化17】
(式中、R
09は水素原子又はトリフルオロメチル基を表す。R
10はヘテロ原子で置換されていてもよく、ヘテロ原子が介在してもよい炭素数3~30の脂肪族環構造を含む一価の炭化水素基を示す。)
【0072】
前記一般式(3)中のR04、R05及びR06としては、それぞれ独立にヘテロ原子で置換されていてもよく、ヘテロ原子が介在してもよい炭素数1~10の直鎖状、又は炭素数3~10の分岐状もしくは環状のアルキル基又はアルケニル基を示すか、あるいはヘテロ原子で置換されていてもよく、ヘテロ原子が介在してもよい炭素数6~18のアリール基またはアラルキル基である。具体的にはメチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、tert-ブチル基、シクロプロピル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロプロピルメチル基、4-メチルシクロヘキシル基、シクロヘキシルメチル基、ノルボルニル基、アダマンチル基等のアルキル基、ビニル基、アリル基、プロペニル基、ブテニル基、ヘキセニル基、シクロヘキセニル基等のアルケニル基、フェニル基、ナフチル基、チエニル基等のアリール基、ベンジル基、1-フェニルエチル基、2-フェニルエチル基等のアラルキル基等が挙げられ、好ましくはアリール基である。また、これらの基の水素原子の一部が酸素原子、硫黄原子、窒素原子、ハロゲン原子といったヘテロ原子と置き換わっていてもよく、酸素原子、硫黄原子、窒素原子等のヘテロ原子が介在していてもよく、その結果ヒドロキシ基、シアノ基、カルボニル基、エーテル結合、エステル結合、スルホン酸エステル結合、カーボネート結合、ラクトン環、スルトン環、カルボン酸無水物、ハロアルキル基等を形成又は介在してもよい。また、R04、R05及びR06のうちいずれか二つは相互に結合して式中の硫黄原子と共に環を形成してもよい。
【0073】
また、前記一般式(3)中のY
-としては、上記一般式(4)又は(5)のいずれかであり、具体的には以下のものなどを例示できるがこれらに限定されない。一般式(4)又は(5)式中、R
07及びR
08は相互に独立にヘテロ原子で置換されていてもよく、ヘテロ原子が介在してもよい炭素数3~40の脂肪族環構造を含む一価の炭化水素基を示し、好ましくは1-ノルボルニル基、1-アダマンチル基、2-アダマンチル基、4-オキソ-1-アダマンチル基である。
【化18】
【0074】
【0075】
【0076】
【0077】
【0078】
【0079】
【0080】
【0081】
一般式(4’)中、R09は水素原子又はトリフルオロメチル基を表し、好ましくはトリフルオロメチル基である。R10はヘテロ原子で置換されていてもよく、ヘテロ原子が介在してもよい炭素数3~30の脂肪族環構造を含む一価の炭化水素基を示し、好ましくは1-ノルボルニル基、1-アダマンチル基、2-アダマンチル基、4-オキソ-1-アダマンチル基である。
【0082】
前記(C)光酸発生剤は1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることでレジスト上層膜のパターン形状、露光感度等を適度に調整することができる。(C)光酸発生剤を添加する添加量は、前記(A)樹脂の含有量(100質量%)に対して好ましくは1質量%~20質量%であり、より好ましくは5質量%~15質量%である。(C)光酸発生剤の添加量が前記範囲内であれば解像性が良好であり、レジスト現像後又は剥離時において異物の問題が生じる恐れがない。
【0083】
[(D)有機溶剤]
本発明の密着膜の形成方法に用いる密着膜形成材料に含まれる(D)有機溶剤としては、前記(A)樹脂、(B)架橋剤、(C)光酸発生剤、存在する場合にはその他添加剤等が溶解するものであれば特に制限はない。具体的には、特開2007-199653号公報中の(0091)~(0092)段落に記載されている溶剤などの沸点が180℃未満の溶剤を使用することができる。中でも、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテル、2-ヘプタノン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン及びこれらのうち2種以上の混合物が好ましく用いられる。
【0084】
このような組成物であれば、回転塗布で塗布することができ、また前述のような本発明の密着膜形成材料を含有するため、レジスト上層膜との高い密着性を有し、微細パターンの倒れ抑止効果を有する密着膜を形成するための密着膜形成用組成物となる。
【0085】
[その他の添加剤]
本発明の密着膜形成材料には、上記(A)~(D)成分の他に、さらに界面活性剤、可塑剤および色素のうち1種以上を含有することができる。以下各成分について説明する。
【0086】
(界面活性剤)
本発明の密着膜形成材料には、スピンコーティングにおける塗布性を向上させるために界面活性剤を添加することができる。界面活性剤としては、例えば、特開2009-269953号公報中の(0142)~(0147)記載のものを用いることができる。
【0087】
(可塑剤)
また、本発明の密着膜形成材料には、可塑剤を添加することができる。可塑剤としては、特に限定されることはなく、公知の種々の系統の可塑剤を広く用いることができる。一例として、フタル酸エステル類、アジピン酸エステル類、リン酸エステル類、トリメリット酸エステル類、クエン酸エステル類などの低分子化合物、ポリエーテル系、ポリエステル系、特開2013-253227記載のポリアセタール系重合体などのポリマーを例示できる。
【0088】
(色素)
また、本発明の密着膜形成材料には、多層リソグラフィーのパターニングの際の解像性を更に向上させるために、色素を添加することができる。色素としては、露光波長において適度な吸収を有する化合物であれば特に限定されることはなく、公知の種々の化合物を広く用いることができる。一例として、ベンゼン類、ナフタレン類、アントラセン類、フェナントレン類、ピレン類、イソシアヌル酸類、トリアジン類を例示できる。
【0089】
また、本発明の密着膜形成材料は、レジスト下層膜及びケイ素含有中間膜を用いた4層レジストプロセス等といった多層レジストプロセス用密着膜材料として、極めて有用である。
【0090】
前記ケイ素含有中間膜は、後述するパターン形成方法に応じて、ケイ素含有レジスト中間膜、又は無機ハードマスク中間膜とすることができる。前記無機ハードマスク中間膜は、ケイ素酸化膜、ケイ素窒化膜、及びケイ素酸化窒化膜から選ばれることが好ましい。
【0091】
[密着膜の形成方法]
本発明では、前述の密着膜形成材料を用い、半導体装置製造工程における多層レジスト法による微細パターニングプロセスにおいて、レジスト上層膜との高い密着性を有し、微細パターンの倒れ抑止効果を有する密着膜を形成する方法を提供する。
【0092】
本発明の密着膜の形成方法では、前記の密着膜形成材料を、スピンコート法等で被加工基板上にコーティングする。スピンコート後、有機溶媒を蒸発させ、レジスト上層膜やケイ素含有中間膜とのインターミキシング防止のため、架橋反応を促進させるためのベーク(熱処理)を行う。ベークは100℃以上300℃以下、10~600秒の範囲内で行うことが好ましく、より好ましくは200℃以上250℃以下、10~300秒の範囲内で行う。密着膜へのダメージやウエハーの変形への影響を考えると、リソグラフィーのウエハープロセスでの加熱温度の上限は、300℃以下とすることが好ましく、より好ましくは250℃以下である。
【0093】
また、本発明の密着膜の形成方法では、被加工基板上に本発明の密着膜形成材料を、前記同様スピンコート法等でコーティングし、該密着膜形成材料を、酸素濃度0.1%以上21%以下の雰囲気中で焼成して硬化させることにより密着膜を形成することもできる。本発明の密着膜形成材料をこのような酸素雰囲気中で焼成することにより、十分に硬化した膜を得ることができる。
【0094】
ベーク中の雰囲気としては空気中のみならず、N2、Ar、He等の不活性ガスを封入してもよい。この時、酸素濃度0.1%未満の雰囲気とすることができる。また、ベーク温度等は、前記と同様とすることができる。被加工基板が酸素雰囲気下での加熱に不安定な素材を含む場合であっても、被加工基板の劣化を起こすことなく、密着膜形成時の架橋反応を促進させることができる。
【0095】
[パターン形成方法]
本発明では、前述のような密着膜形成材料を用いた4層レジストプロセスによるパターン形成方法として、以下の2つの方法を提供する。まず、被加工基板にパターンを形成する方法であって、少なくとも、被加工基板上に有機膜材料を用いてレジスト下層膜を形成し、該レジスト下層膜上にケイ素原子を含有するレジスト中間層膜材料を用いてケイ素含有中間膜(ケイ素含有レジスト中間膜)を形成し、該ケイ素含有レジスト中間膜上に本発明の密着膜形成材料を用いて密着膜を形成し、該密着膜上にフォトレジスト組成物からなるレジスト上層膜材料を用いてレジスト上層膜を形成して多層レジスト膜とし、前記レジスト上層膜のパターン回路領域を露光した後、現像液で現像して前記レジスト上層膜にレジスト上層膜パターンを形成し、該得られたレジスト上層膜パターンをエッチングマスクにして前記密着膜をエッチングして密着膜パターンを形成し、該得られた密着膜パターンをエッチングマスクにして前記ケイ素含有レジスト中間膜をエッチングしてケイ素含有レジスト中間膜パターンを形成し、該得られたケイ素含有レジスト中間膜パターンをエッチングマスクにして前記レジスト下層膜をエッチングしてレジスト下層膜パターンを形成し、さらに、該得られたレジスト下層膜パターンをエッチングマスクにして前記被加工基板をエッチングして前記被加工基板にパターンを形成するパターン形成方法を提供する。
【0096】
前記4層レジストプロセスのケイ素含有レジスト中間膜としては、ポリシルセスキオキサンベースの中間層膜も好ましく用いられる。ケイ素含有レジスト中間膜に反射防止効果を持たせることによって、反射を抑えることができる。特に193nm露光用としては、レジスト下層膜として芳香族基を多く含み基板エッチング耐性が高い材料を用いると、k値が高くなり、基板反射が高くなるが、ケイ素含有レジスト中間膜で反射を抑えることによって基板反射を0.5%以下にすることができる。反射防止効果があるケイ素含有レジスト中間膜としては、248nm、157nm露光用としてはアントラセン、193nm露光用としてはフェニル基又はケイ素-ケイ素結合を有する吸光基をペンダントし、酸あるいは熱で架橋するポリシルセスキオキサンが好ましく用いられる。
【0097】
この場合、CVD法よりもスピンコート法によるケイ素含有レジスト中間膜の形成の方が、簡便でコスト的なメリットがある。
【0098】
また、ケイ素含有中間膜として無機ハードマスク中間膜を形成してもよく、この場合には、少なくとも、被加工基板上に有機膜材料を用いてレジスト下層膜を形成し、該レジスト下層膜上にケイ素酸化膜、ケイ素窒化膜、及びケイ素酸化窒化膜から選ばれる無機ハードマスク中間膜を形成し、該無機ハードマスク中間膜上に本発明の密着膜形成材料を用いて密着膜を形成し、該密着膜上にフォトレジスト組成物からなるレジスト上層膜材料を用いてレジスト上層膜を形成して前記レジスト上層膜のパターン回路領域を露光した後、現像液で現像して前記レジスト上層膜にレジスト上層膜パターンを形成し、該得られたレジスト上層膜パターンをエッチングマスクにして前記密着膜をエッチングして密着膜パターンを形成し、該得られた密着膜パターンをエッチングマスクにして前記無機ハードマスク中間膜をエッチングして無機ハードマスク中間膜パターンを形成し、該得られた無機ハードマスク中間膜パターンをエッチングマスクにして前記レジスト下層膜をエッチングしてレジスト下層膜パターンを形成し、さらに、該得られたレジスト下層膜パターンをエッチングマスクにして前記被加工基板をエッチングして前記被加工基板にパターンを形成することができる。
【0099】
前記のように、レジスト下層膜の上に無機ハードマスク中間膜を形成する場合は、CVD法やALD法等で、ケイ素酸化膜、ケイ素窒化膜、及びケイ素酸化窒化膜(SiON膜)を形成できる。例えばケイ素窒化膜の形成方法としては、特開2002-334869号公報、国際公開第2004/066377号に記載されている。無機ハードマスク中間膜の膜厚は5~200nmが好ましく、より好ましくは10~100nmである。また、無機ハードマスク中間膜としては、反射防止膜としての効果が高いSiON膜が最も好ましく用いられる。SiON膜を形成する時の基板温度は300~500℃となるために、レジスト下層膜としては300~500℃の温度に耐える必要がある。
【0100】
前記4層レジストプロセスにおけるレジスト上層膜は、ポジ型でもネガ型でもどちらでもよく、通常用いられているフォトレジスト組成物と同じものを用いることができる。フォトレジスト組成物をスピンコート後、プリベークを行うが、60~180℃で10~300秒の範囲が好ましい。その後常法に従い、露光を行い、さらに、ポストエクスポジュアーベーク(PEB)、現像を行い、レジスト上層膜パターンを得る。なお、レジスト上層膜の厚さは特に制限されないが、30~500nmが好ましく、特に50~400nmが好ましい。
【0101】
レジスト上層膜に回路パターン(レジスト上層膜パターン)を形成する。回路パターンの形成においては、波長が10nm以上300nm以下の光を用いたリソグラフィー、電子線による直接描画、ナノインプリンティング、又はこれらの組み合わせによって回路パターンを形成することが好ましい。
【0102】
なお、露光光としては、波長300nm以下の高エネルギー線、具体的には遠紫外線、KrFエキシマレーザー光(248nm)、ArFエキシマレーザー光(193nm)、F2レーザー光(157nm)、Kr2レーザー光(146nm)、Ar2レーザー光(126nm)、3~20nmの軟X線(EUV)、電子ビーム(EB)、イオンビーム、X線等を挙げることができる。
【0103】
また、回路パターンの形成において、アルカリ現像又は有機溶剤によって回路パターンを現像することが好ましい。
【0104】
次に、得られたレジスト上層膜パターンをマスクにしてエッチングを行う。4層レジストプロセスにおける密着膜のエッチングは、酸素系のガスを用いてレジスト上層膜パターンをマスクにして行う。これにより、密着膜パターンを形成する。
【0105】
次いで、得られた密着膜パターンをマスクにしてエッチングを行う。ケイ素含有レジスト中間膜や無機ハードマスク中間膜のエッチングは、フロン系のガスを用いて密着膜パターンをマスクにして行う。これにより、ケイ素含有レジスト中間膜パターンや無機ハードマスク中間膜パターンを形成する。
【0106】
密着膜のエッチングはケイ素含有中間膜のエッチングに先立って連続して行われる場合もあるし、密着膜だけのエッチングを行ってからエッチング装置を変える等してケイ素含有中間膜のエッチングを行うこともできる。
【0107】
次いで、得られたケイ素含有レジスト中間膜パターンや無機ハードマスク中間膜パターンをマスクにして、レジスト下層膜のエッチング加工を行う。
【0108】
次の被加工基板のエッチングも、常法によって行うことができ、例えば被加工基板がSiO2、SiN、シリカ系低誘電率絶縁膜であればフロン系ガスを主体としたエッチング、p-SiやAl、Wでは塩素系、臭素系ガスを主体としたエッチングを行う。基板加工をフロン系ガスでエッチングした場合、3層レジストプロセスにおけるケイ素含有中間膜パターンは基板加工と同時に剥離される。塩素系、臭素系ガスで基板をエッチングした場合は、ケイ素含有中間膜パターンの剥離は基板加工後にフロン系ガスによるドライエッチング剥離を別途行う必要がある。
【0109】
なお、被加工基板としては、特に限定されるものではなく、半導体装置基板、又は該半導体装置基板上に金属膜、金属炭化膜、金属酸化膜、金属窒化膜、金属酸化炭化膜及び金属酸化窒化膜のいずれかが成膜されたものを用いることができる。前記金属として、ケイ素、チタン、タングステン、ハフニウム、ジルコニウム、クロム、ゲルマニウム、銅、銀、金、アルミニウム、インジウム、ガリウム、ヒ素、パラジウム、鉄、タンタル、イリジウム、コバルト、マンガン、モリブデンまたはこれらの合金を用いることができる。
【0110】
具体的には、Si、α-Si、p-Si、SiO2、SiN、SiON、W、TiN、Al等の基板や、該基板上に被加工層が成膜されたもの等が用いられる。被加工層としては、Si、SiO2、SiON、SiN、p-Si、α-Si、W、W-Si、Al、Cu、Al-Si等種々のLow-k膜及びそのストッパー膜が用いられ、通常50~10,000nm、特に100~5,000nmの厚さに形成し得る。なお、被加工層を成膜する場合、基板と被加工層とは、異なる材質のものが用いられる。
【0111】
4層レジストプロセスの一例について、
図1を用いて具体的に示すと下記の通りである。4層レジストプロセスの場合、
図1(A)に示したように、基板1の上に積層された被加工層2上に有機膜材料を用いてレジスト下層膜3を形成した後、ケイ素含有中間膜4を形成し、その上に本発明の密着膜形成材料を用いて密着膜5を形成し、その上にレジスト上層膜6を形成する。
【0112】
次いで、
図1(B)に示したように、レジスト上層膜の所用部分7を露光し、PEB及び現像を行ってレジストパターン6aを形成する(
図1(C))。この得られたレジストパターン6aをマスクとし、O
2系ガスを用いて密着膜5をエッチング加工して密着膜パターン5aを形成する。(
図1(D))。この得られた密着膜5aをマスクとし、CF系ガスを用いてケイ素含有中間膜4をエッチング加工してケイ素含有中間膜パターン4aを形成する(
図1(E))。密着膜パターン5aを除去後、この得られたケイ素含有中間膜パターン4aをマスクとし、O
2系ガスを用いてレジスト下層膜3をエッチング加工し、レジスト下層膜パターン3aを形成する(
図1(F))。さらにケイ素含有中間膜パターン4aを除去後、レジスト下層膜パターン3aをマスクに被加工層2をエッチング加工し、パターン2aを形成する(
図1(G))。
【0113】
このように、本発明のパターン形成方法であれば、多層レジストプロセスにおいて、被加工基板に微細なパターンを高精度で形成することができる。
【実施例0114】
以下、合成例、比較合成例、実施例、及び比較例を示して本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらによって限定されるものではない。なお、分子量の測定法は具体的に下記の方法により行った。テトラヒドロフランを溶離液としたゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によるポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)、数平均分子量(Mn)を求め、分散度(Mw/Mn)を求めた。
【0115】
密着膜形成材料用の(A)樹脂として用いる重合体(A1)~(A6)及び比較重合体(R1)~(R3)の合成には、下記に示す単量体(B1)~(B9)を用いた。
【化26】
【0116】
[合成例1]重合体(A1)の合成
2Lのフラスコに、4-アセトキシスチレン(B1)を16.2g、及び溶媒としてテトラヒドロフラン50gを添加した。この反応容器を窒素雰囲気下、-70℃まで冷却し、減圧脱気、窒素ブローを3回繰り返した。室温まで昇温後、重合開始剤としてAIBN(アゾビスイソブチロニトリル)を1.2g加え、60℃まで昇温後、15時間反応させた。この反応溶液をイソプロピルアルコール1L溶液中に添加し、沈殿させ、得られた白色固体をメタノール100mLとテトラヒドロフラン200mLとの混合溶剤に再度溶解し、トリエチルアミン10g及び水10gを加え、70℃で5時間アセチル基の脱保護反応を行い、酢酸を用いて中和した。反応溶液を濃縮後、アセトン100mLに溶解し、前記と同じ方法によって沈殿させ、続いて濾過、60℃で乾燥を行い、白色重合体(A1)を得た。GPCにより重合平均分子量(Mw)、分散度(Mw/Mn)を求めたところ、Mw=8,500、Mw/Mn=1.68であった。
【化27】
【0117】
[合成例2]重合体(A2)の合成
2Lのフラスコにメタクリル酸4-ヒドロキシフェニル(B2)を17.8g、及び溶媒としてテトラヒドロフラン50gを添加した。この反応容器を窒素雰囲気下、-70℃まで冷却し、減圧脱気、窒素ブローを3回繰り返した。室温まで昇温後、重合開始剤としてAIBN(アゾビスイソブチロニトリル)を1.2g加え、60℃まで昇温後、15時間反応させた。この反応溶液をイソプロピルアルコール1L溶液中に添加し、沈殿させ、得られた白色固体を濾過後、60℃で減圧乾燥し、白色重合体(A2)を得た。GPCにより重合平均分子量(Mw)、分散度(Mw/Mn)を求めたところ、Mw=11,000、Mw/Mn=2.11であった。
【化28】
【0118】
[合成例3~6]重合体(A3)~(A6)の合成
表1に示されるモノマーを使用した以外は、合成例2と同じ反応条件で表1に示されるような重合体(A3)~(A6)を生成物として得た。また、GPCより求めた重量平均分子量(Mw)、分散度(Mw/Mn)を示す。
【表1】
【0119】
[比較合成例1]比較重合体(R1)の合成
2Lのフラスコにメタクリル酸4-メトキシフェニル(B7)を19.2g、及び溶媒としてテトラヒドロフラン50gを添加した。この反応容器を窒素雰囲気下、-70℃まで冷却し、減圧脱気、窒素ブローを3回繰り返した。室温まで昇温後、重合開始剤としてAIBN(アゾビスイソブチロニトリル)を1.2g加え、60℃まで昇温後、15時間反応させた。この反応溶液をイソプロピルアルコール1L溶液中に添加し、沈殿させ、得られた白色固体を濾過後、60℃で減圧乾燥し、白色重合体(R1)を得た。GPCにより重合平均分子量(Mw)、分散度(Mw/Mn)を求めたところ、Mw=11,700、Mw/Mn=2.14であった。
【化29】
【0120】
[比較合成例2]比較重合体(R2)の合成
2Lのフラスコにメタクリル酸3-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル(B8)を23.4g、及び溶媒としてテトラヒドロフラン50gを添加した。この反応容器を窒素雰囲気下、-70℃まで冷却し、減圧脱気、窒素ブローを3回繰り返した。室温まで昇温後、重合開始剤としてAIBN(アゾビスイソブチロニトリル)を1.2g加え、60℃まで昇温後、15時間反応させた。この反応溶液をイソプロピルアルコール1L溶液中に添加し、沈殿させ、得られた白色固体を濾過後、60℃で減圧乾燥し、白色重合体(R2)を得た。GPCにより重合平均分子量(Mw)、分散度(Mw/Mn)を求めたところ、Mw=8,700、Mw/Mn=1.69であった。
【化30】
【0121】
[比較合成例3]比較重合体(R3)の合成
2Lのフラスコにメタクリル酸2-オキソテトラヒドロフラン-3-イル(B9)を17.0g、及び溶媒としてテトラヒドロフラン50gを添加した。この反応容器を窒素雰囲気下、-70℃まで冷却し、減圧脱気、窒素ブローを3回繰り返した。室温まで昇温後、重合開始剤としてAIBN(アゾビスイソブチロニトリル)を1.2g加え、60℃まで昇温後、15時間反応させた。この反応溶液をイソプロピルアルコール1L溶液中に添加し、沈殿させ、得られた白色固体を濾過後、60℃で減圧乾燥し、白色重合体(R3)を得た。GPCにより重合平均分子量(Mw)、分散度(Mw/Mn)を求めたところ、Mw=9,700、Mw/Mn=2.03であった。
【化31】
【0122】
密着膜形成材料(AL-1~17、比較AL-1~9)の調製
密着膜形成材料及び比較材料の調製には、前記重合体(A1)~(A6)及び比較重合体(R1)~(R3)、架橋剤として(X1)~(X4)、光酸発生剤として(P1)~(P3)、熱酸発生剤として(AG1)を用いた。PF636(OMNOVA社製)0.1質量%を含むプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)を用い表2に示す割合で溶解させた後、0.1μmのフッ素樹脂製のフィルターで濾過することによって密着膜形成材料(AL-1~17、比較AL-1~9)をそれぞれ調製した。
【化32】
【0123】
【0124】
実施例1 溶剤耐性評価(実施例1-1~1-17、比較例1-1~1-9)
上記で調製した密着膜形成材料(AL-1~17、比較AL1~9)をシリコン基板上に塗布し、220℃で60秒焼成した後、膜厚を測定し、その上にPGMEA溶剤をディスペンスし、30秒間放置しスピンドライ、100℃で60秒間ベークしてPGMEA溶剤を蒸発させ、膜厚を再度測定しPGMEA処理前後の膜厚差を求めることにより溶剤耐性を評価した。結果を表3に示す。
【0125】
【0126】
表3に示されるように、本発明の密着膜形成材料(AL-1~17)を使用した実施例1-1~1-17では、溶剤処理による膜厚の減少がほとんどなく溶剤耐性良好な膜が得られることが分かる。一方、架橋剤を含有しない比較例1-5では十分な溶剤耐性を確保できていないことが分かる。また、比較例1-6と比較例1-7を比較すると、熱酸発生剤を含有しない比較例1-6では硬化性が不足しており、架橋剤X3を使用する場合は熱酸発生剤と組み合わせることが必要であることが分かる。さらに、架橋剤X4を使用した比較例1-8および1-9は220℃の焼成では十分な溶剤耐性を確保できていないことが分かる。
【0127】
実施例2 密着性試験(実施例2-1~2-17、比較例2-1~2-5)
上記の密着膜形成材料(AL-1~17、比較AL1~4、7)を、SiO2ウエハー基板上に塗布し、ホットプレートを用いて大気中、220℃で60秒焼成することにより膜厚200nmの密着膜を形成した。この密着膜付のウエハーを、1×1cmの正方形に切り出し、専用治具を用いて切り出したウエハーにエポキシ接着剤付きのアルミピンを取り付けた。その後、オーブンを用いて150℃で1時間、加熱しアルミピンを基板に接着させた。室温まで冷却した後、薄膜密着強度測定装置(Sebastian Five-A)を用いて抵抗力により、初期の密着性を評価した。
【0128】
図2に密着性測定方法を示す説明図を示す。
図2の8はシリコンウエハー(基板)、9は硬化皮膜、10は接着剤付きアルミピン、11は支持台、12はつかみであり、13は引張方向を示す。密着力は12点測定の平均値であり、数値が高いほど密着膜の基板に対する密着性が高い。得られた数値を比較することにより密着性を評価した。その結果を表4に示す。
【0129】
【0130】
表4に示されるように、本発明の密着膜形成材料(AL-1~17)を使用した実施例2-1~2-17は、水酸基を含まない重合体を含有する比較例2-1や水酸基の近傍に炭素数4のバルキーな置換基を有する重合体を含有する比較例2-2と比べて密着力が優れることが確認された。隣接位に2つの水酸基を有する重合体を含有する実施例2-4および2-14~17は特に優れた密着性を有することが分かる。
【0131】
実施例3 パターン形成試験(実施例3-1~3-17、比較例3-1~3-5)
シリコンウエハー基板上に、信越化学工業(株)製スピンオンカーボンODL-301(カーボン含有量88質量%)を塗布して350℃で60秒間ベークして膜厚200nmのレジスト下層膜を形成した。その上にCVD-SiONハードマスク中間膜を形成し、更に上記密着膜形成材料(AL1~17、比較AL1~4、7)を塗布して220℃で60秒間ベークして膜厚20nmの密着膜を形成しその上にレジスト上層膜材料のArF用単層レジストを塗布し、105℃で60秒間ベークして膜厚100nmのレジスト上層膜を形成した。レジスト上層膜上に液浸保護膜材料(TC-1)を塗布し90℃で60秒間ベークし膜厚50nmの保護膜を形成した。
【0132】
レジスト上層膜材料(ArF用単層レジスト)としては、ポリマー(PRP-A1)、酸発生剤(PAG1)、塩基性化合物(Amine1)を、FC-430(住友スリーエム(株)製)0.1質量%を含む溶媒中に表5の割合で溶解させ、0.1μmのフッ素樹脂製のフィルターで濾過することによって調製した。
【0133】
【0134】
レジスト用ポリマー:PRP-A1
分子量(Mw)=8,600
分散度(Mw/Mn)=1.88
【化33】
【0135】
【0136】
【0137】
液浸保護膜材料(TC-1)としては、保護膜ポリマー(PP1)を有機溶剤中に表6の割合で溶解させ、0.1μmのフッ素樹脂製のフィルターで濾過することによって調製した。
【0138】
【0139】
保護膜ポリマー:PP1
分子量(Mw)=8,800
分散度(Mw/Mn)=1.69
【化36】
【0140】
次いで、ArF液浸露光装置((株)ニコン製;NSR-S610C,NA1.30、σ0.98/0.65、35度ダイポールs偏光照明、6%ハーフトーン位相シフトマスク)で露光し、100℃で60秒間ベーク(PEB)し、2.38質量%テトラメチルアンモニウムヒドロキシド(TMAH)水溶液で30秒間現像し、40nmの1:1ラインアンドスペースパターンを得た。このパターン対象とし、電子顕微鏡にて断面形状およびラフネスを観察した。また、露光量を大きくすることでライン寸法を細らせた場合にラインが倒れずに解像する最小寸法を求め、倒れ限界(nm)とした。数値が小さいほど倒れ耐性が高く好ましい。
【0141】
得られたパターン断面形状を(株)日立製作所製電子顕微鏡(S-4700)で、パターンラフネスを(株)日立ハイテクノロジーズ製電子顕微鏡(CG4000)にて評価した。その結果を表7に示す。
【0142】
【0143】
表7に示されるように、本発明の密着膜形成材料(AL-1~17)を使用した実施例3-1~3-17は比較例に比べ優れた倒れ抑制性能を示し、より微細なパターン形成が可能であることが分かる。さらに、光酸発生剤を適宜調整することによりパターン形状およびパターンラフネスに優れることが分かる。本発明の密着膜形成材料に含まれる樹脂を含まず密着力の低い比較例3-1~3-3はパターン倒れ抑制性能が低く、光酸発生剤を含まない比較例3-4や本発明の密着膜形成材料に含まれる架橋剤を含まない比較例3-5はパターンの断面形状の劣化が見られた。
【0144】
以上のことから、本発明の密着膜形成材料であれば、レジスト上層膜との高い密着性を有し、微細パターンの倒れ抑止効果を有するため、多層レジスト法に用いる密着膜材料として極めて有用であり、またこれを用いた本発明のパターン形成方法であれば、被加工基板に微細なパターンを高精度で形成することができる。
【0145】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。
次いで、ArF液浸露光装置((株)ニコン製;NSR-S610C,NA1.30、σ0.98/0.65、35度ダイポールs偏光照明、6%ハーフトーン位相シフトマスク)で露光し、100℃で60秒間ベーク(PEB)し、2.38質量%テトラメチルアンモニウムヒドロキシド(TMAH)水溶液で30秒間現像し、40nmの1:1ラインアンドスペースパターンを得た。このパターンを対象とし、電子顕微鏡にて断面形状およびラフネスを観察した。また、露光量を大きくすることでライン寸法を細らせた場合にラインが倒れずに解像する最小寸法を求め、倒れ限界(nm)とした。数値が小さいほど倒れ耐性が高く好ましい。