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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023087228
(43)【公開日】2023-06-23
(54)【発明の名称】ガス処理方法およびガス処理装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/3065 20060101AFI20230616BHJP
【FI】
H01L21/302 105A
H01L21/302 101B
【審査請求】未請求
【請求項の数】17
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021201496
(22)【出願日】2021-12-13
(71)【出願人】
【識別番号】000219967
【氏名又は名称】東京エレクトロン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099944
【弁理士】
【氏名又は名称】高山 宏志
(72)【発明者】
【氏名】出道 仁彦
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼橋 哲朗
(72)【発明者】
【氏名】石 昌煥
(72)【発明者】
【氏名】小林 純
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 彰弘
【テーマコード(参考)】
5F004
【Fターム(参考)】
5F004AA01
5F004AA05
5F004BA04
5F004BB18
5F004BB30
5F004BC03
5F004CA02
5F004CA08
5F004DA20
5F004DA22
5F004DA23
5F004DA25
5F004DB03
5F004DB07
5F004EA37
(57)【要約】
【課題】高アスペクト比の凹部を有する基板のガス処理において、凹部のトップとボトムで均一に処理を行うことができるガス処理方法およびガス処理装置を提供する。
【解決手段】凹部を有する基板にガス処理を施すガス処理方法は、チャンバー内に凹部を有する基板を配置することと、真空引きされたチャンバー内に圧力調整用ガスを供給してチャンバー内の圧力を上昇させ、予め定められた圧力に調圧することと、次いで、チャンバー内で処理ガスによる処理反応を生じさせて基板の凹部の側壁に対してガス処理を行うこととを有し、調圧することを実施する際の圧力調整ガスの少なくとも一部として、処理反応を生じさせる処理ガスを用いる。
【選択図】図11
【特許請求の範囲】
【請求項1】
凹部を有する基板にガス処理を施すガス処理方法であって、
チャンバー内に凹部を有する基板を配置することと、
真空引きされた前記チャンバー内に圧力調整用ガスを供給して前記チャンバー内の圧力を上昇させ、予め定められた圧力に調圧することと、
次いで、前記チャンバー内で処理ガスによる処理反応を生じさせて前記基板の前記凹部の側壁に対してガス処理を行うことと、
を有し、
前記調圧することを実施する際の前記圧力調整用ガスの少なくとも一部として、前記処理反応を生じさせる前記処理ガスを用いる、ガス処理方法。
【請求項2】
前記基板の前記凹部のアスペクト比は、25以上である、請求項1に記載のガス処理方法。
【請求項3】
前記ガス処理はエッチングである、請求項1または請求項2に記載のガス処理方法。
【請求項4】
前記処理ガスは塩基性ガスおよびフッ素含有ガスであり、前記基板の凹部の側壁に存在するシリコン酸化物系材料をエッチングする、請求項3に記載のガス処理方法。
【請求項5】
前記基板は、前記シリコン酸化物系材料であるSiO膜とSiN膜が交互に複数積層してなる積層構造部と、前記積層構造部の積層方向に形成された前記凹部としてのホールとを有し、前記ホールの側壁に存在する前記SiO膜をエッチングする、請求項4に記載のガス処理方法。
【請求項6】
前記調圧することを実施する際に前記圧力調整用ガスは、前記処理ガスとしての塩基性ガスおよびフッ素含有ガスの他に不活性ガスを含む、請求項4または請求項5に記載のガス処理方法。
【請求項7】
前記処理ガスとしての塩基性ガスおよびフッ素含有ガス、ならびに不活性ガスは、前記調圧することを実施する際に供給され、前記ガス処理を行うことを実施する際にも継続して供給される、請求項6に記載のガス処理方法。
【請求項8】
前記塩基性ガスはNHガスであり、前記フッ素含有ガスはHFガスである、請求項4から請求項7のいずれか一項に記載のガス処理方法。
【請求項9】
前記ガス処理の後に前記チャンバー内を真空引きすることをさらに有し、前記調圧すること、前記ガス処理すること、前記真空引きすることを複数回繰り返す、請求項4から請求項8のいずれか一項に記載のガス処理方法。
【請求項10】
凹部を有する基板にガス処理を施すガス処理装置であって、
凹部を有する基板を収容するチャンバーと、
前記チャンバー内で前記基板を載置する載置台と、
前記チャンバー内にガスを供給するガス供給部と、
前記チャンバー内を排気する排気部と、
制御部と、
を具備し、
前記制御部は、
前記チャンバー内に前記基板を配置することと、
真空引きされた前記チャンバー内に圧力調整用ガスを供給して前記チャンバー内の圧力を上昇させ、予め定められた圧力に調圧することと、
次いで、前記チャンバー内で処理ガスによる処理反応を生じさせて前記基板の前記凹部の側壁に対してガス処理を行うことと、
を実行させ、
前記調圧することを実施する際の前記圧力調整用ガスの少なくとも一部として、前記処理反応を生じさせる前記処理ガスを用いるように制御する、ガス処理装置。
【請求項11】
前記基板の前記凹部のアスペクト比は、25以上である、請求項10に記載のガス処理装置。
【請求項12】
前記ガス処理はエッチングである、請求項10または請求項11に記載のガス処理装置。
【請求項13】
前記処理ガスは塩基性ガスおよびフッ素含有ガスであり、前記基板の凹部の側壁に存在するシリコン酸化物系材料をエッチングする、請求項12に記載のガス処理装置。
【請求項14】
前記制御部は、前記調圧することを実施する際に前記圧力調整用ガスとして、前記処理ガスとしての塩基性ガスおよびフッ素含有ガスの他に不活性ガスを含むように前記ガス供給部を制御する、請求項13に記載のガス処理装置。
【請求項15】
前記制御部は、前記処理ガスとしての塩基性ガスおよびフッ素含有ガス、ならびに不活性ガスを、前記調圧することを実施する際に供給させ、前記ガス処理を行うことを実施する際にも継続して供給させるように前記ガス供給部を制御する、請求項14に記載のガス処理装置。
【請求項16】
前記塩基性ガスはNHガスであり、前記フッ素含有ガスはHFガスである、請求項13から請求項15のいずれか一項に記載のガス処理装置。
【請求項17】
前記制御部は、前記ガス処理の後に前記チャンバー内を真空引きすることをさらに実行し、前記調圧すること、前記ガス処理すること、前記真空引きすることを複数回繰り返すように制御する、請求項13から請求項16のいずれか一項に記載のガス処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ガス処理方法およびガス処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体装置の製造過程においては、基板である半導体ウエハに対して処理ガスにより化学的処理を行う技術が知られている。例えば、特許文献1、2には、半導体ウエハに存在するシリコン酸化膜(SiO膜)を、フッ化水素(HF)ガスとアンモニア(NH)ガスを用いて、エッチングを行う技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007-180418号公報
【特許文献2】特開2017-191897号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本開示は、高アスペクト比の凹部を有する基板のガス処理において、凹部のトップとボトムで均一に処理を行うことができるガス処理方法およびガス処理装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の一態様に係るガス処理方法は、凹部を有する基板にガス処理を施すガス処理方法であって、チャンバー内に凹部を有する基板を配置することと、真空引きされた前記チャンバー内に圧力調整用ガスを供給して前記チャンバー内の圧力を上昇させ、予め定められた圧力に調圧することと、次いで、前記チャンバー内で処理ガスによる処理反応を生じさせて前記基板の前記凹部の側壁に対してガス処理を行うことと、を有し、前記調圧することを実施する際の前記圧力調整用ガスの少なくとも一部として、前記処理反応を生じさせる前記処理ガスを用いる。
【発明の効果】
【0006】
本開示によれば、高アスペクト比の凹部を有する基板のガス処理において、凹部のトップとボトムで均一に処理を行うことができるガス処理方法およびガス処理装置が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】一実施形態のガス処理方法を実施するためのガス処理装置の一例を示す断面図である。
図2】一実施形態に係るエッチング方法に用いられる基板の構造の一例を示す断面図である。
図3図2の基板をエッチングした状態を示す断面図である。
図4】従来技術における具体的なガス供給タイミングと圧力とを示す図である。
図5図4に示す処理をアスペクト比が大きい凹部を有する基板に適用した場合のエッチング状態を示す断面図である。
図6図2に示す構造の基板において、従来技術を適用した場合の調圧ステップおよびエッチングステップにおける凹部へのガス供給を模式的に示す図である。
図7図2に示す構造の基板に対し従来技術を適用した場合のエッチングステップにおける凹部のトップ部およびボトム部でのHFガス量を示す図である。
図8】実施形態の一例におけるの具体的なガス供給タイミングと圧力とを示す図である。
図9図2に示す構造の基板において、実施形態を適用した場合の調圧ステップおよびエッチングステップにおける凹部へのガス供給を模式的に示す図である。
図10図2に示す構造の基板に対し実施形態を適用した場合のエッチングステップにおける凹部のトップ部およびボトム部でのHFガス量を示す図である。
図11】実施形態のエッチングにおける圧力およびガス供給シーケンスの一例を示す図である。
図12】実施形態のエッチングにおける圧力およびガス供給シーケンスの他の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図面を参照しながら、実施形態について説明する。
【0009】
<ガス処理装置>
図1は、一実施形態のガス処理方法を実施するためのガス処理装置の一例を示す断面図である。図1に示すガス処理装置は、基板の例えば表面に存在するシリコン酸化物系材料をエッチングするエッチング装置として構成されている。シリコン酸化物系材料としては、代表例としてSiOを挙げることができるが、SiON、SiOCN、SiOCであってもよい。
【0010】
図1に示すように、ガス処理装置1は、密閉構造のチャンバー10を備えており、チャンバー10の内部には、基板Wを略水平にした状態で載置させる載置台12が設けられている。基板WとしてはSiウエハ等の半導体ウエハが例示されるが、これに限るものではない。
【0011】
また、ガス処理装置1は、チャンバー10に処理ガスを供給するガス供給機構13、チャンバー10内を排気する排気機構14を備えている。
【0012】
チャンバー10は、チャンバー本体21と蓋部22とによって構成されている。チャンバー本体21は、略円筒形状の側壁部21aと底部21bとを有し、上部は開口となっており、この開口が内部に凹部を有する蓋部22で閉止される。側壁部21aと蓋部22とは、シール部材(図示せず)により密閉されて、チャンバー10内の気密性が確保される。
【0013】
蓋部22の内部には、載置台12に臨むようにガス導入部材であるシャワーヘッド26がはめ込まれている。シャワーヘッド26は側壁と上部壁とを有し円筒状をなす本体31と、本体31の底部に設けられたシャワープレート32とを有している。本体31の外周部とシャワープレート32とはシールリング(図示せず)によりシールされ密閉構造となっている。また、本体31の中央部とシャワープレート32との間にはガスを拡散するための空間33が形成されている。
【0014】
蓋部22の天壁には、第1のガス導入孔34および第2のガス導入孔35が垂直に形成されており、これら第1のガス導入孔34および第2のガス導入孔35がシャワーヘッド26の上部壁を貫通して空間33に接続されている。シャワープレート32には、空間33から垂直に延び、貫通してチャンバー10の内部に臨む、複数のガス吐出孔37が形成されている。
【0015】
したがって、シャワーヘッド26においては、第1のガス導入孔34および第2のガス導入孔35から空間33にガスが供給され、空間33内で混合されたガスがガス吐出孔37を介して吐出される。
【0016】
チャンバー本体21の側壁部21aには、基板Wを搬入出する搬入出口41が設けられており、この搬入出口41はゲートバルブ42により開閉可能となっており、隣接する他のモジュールとの間で基板Wが搬送可能となっている。
【0017】
載置台12は、平面視略円形をなしており、チャンバー10の底部21bに固定されている。載置台12の内部には、載置台12の温度を調節する温調器45が設けられている。温調器45は、例えば、抵抗ヒーターや、温度調節用の温調媒体(例えば水など)が循環する温調媒体流路で構成することができる。温調器45により載置台12が所望の温度に温調され、これにより載置台12に載置された基板Wの温度制御がなされる。
【0018】
ガス供給機構13は、HFガス供給源51、Arガス供給源52、NHガス供給源53、およびNガス供給源54を有している。
【0019】
HFガス供給源51は、フッ素含有ガスとしてHFガスを供給するものである。ここでは、フッ素含有ガスとしてHFガスを例示するが、フッ素含有ガスとしては、HFガスの他、Fガス、ClFガス、NFガスを用いることもできる。
【0020】
NHガス供給源53は、塩基性ガスとしてNHガスを供給するものである。ここでは、塩基性ガスとしてNHガスを例示するが、塩基性ガスとしては、NHガスの他、アミンガスを用いることもできる。アミンとしては、メチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン等を挙げることができる。
【0021】
Arガス供給源52およびNガス供給源54は、希釈ガス、パージガス、キャリアガスとしての機能を兼ね備えた不活性ガスとして、Nガス、Arガスを供給するものである。ただし、両方ともArガスまたはNガスであってもよい。また、不活性ガスはArガスおよびNガスに限定されず、Heガス等の他の希ガスを用いることもできる。
【0022】
これらガス供給源51~54には、それぞれ第1~第4のガス供給配管61~64の一端が接続されている。HFガス供給源51に接続された第1のガス供給配管61は、その他端が第1のガス導入孔34に接続されている。Arガス供給源52に接続された第2のガス供給配管62は、その他端が第1のガス供給配管61に接続されている。NHガス供給源53に接続された第3のガス供給配管63は、その他端が第2のガス導入孔35に接続されている。Nガス供給源54に接続された第4のガス供給配管64は、その他端が第3のガス供給配管63に接続されている。
【0023】
フッ素含有ガスであるHFガスと塩基性ガスであるNHガスは、それぞれ不活性ガスであるArガスおよびNガスとともに第1のガス導入孔34および第2のガス導入孔35を介してシャワーヘッド26に至り、シャワーヘッド26のガス吐出孔37からチャンバー10内に吐出される。
【0024】
第1~第4のガス供給配管61~64には、流路の開閉動作および流量制御を行う流量制御部65が設けられている。流量制御部65は例えば開閉弁およびマスフローコントローラ(MFC)またはフローコントロールシステム(FCS)のような流量制御器により構成されている。
【0025】
排気機構14は、チャンバー10の底部21bに形成された排気口71に繋がる排気配管72を有しており、さらに、排気配管72に設けられた、チャンバー10内の圧力を制御するための自動圧力制御弁(APC)73およびチャンバー10内を排気するための真空ポンプ74を有している。
【0026】
チャンバー10の側壁には、チャンバー10内の圧力制御のために高圧用および低圧用の2つのキャパシタンスマノメータ76a,76bが設けられている。載置台12に載置された基板Wの近傍には、基板Wの温度を検出する温度センサ(図示せず)が設けられている。
【0027】
ガス処理装置1を構成するチャンバー10、シャワーヘッド26、載置台12は、アルミニウムのような金属材料で形成されている。これらの表面には酸化皮膜等の皮膜が形成されていてもよい。皮膜としては、例えば、アルミニウムの場合は陽極酸化皮膜(Al)を挙げることができる。セラミックコーティングであってもよい。
【0028】
ガス処理装置1は、さらに制御部80を有している。制御部80はコンピュ
ータで構成されており、CPUを備えた主制御部と、入力装置、出力装置、表示装置、記憶装置(記憶媒体)を有している。主制御部は、ガス処理装置1の各構成部の動作を制御する。主制御部による各構成部の制御は、記憶装置に内蔵された記憶媒体(ハードディスク、光デスク、半導体メモリ等)に記憶された制御プログラムに基づいてなされる。記憶媒体には、制御プログラムとして処理レシピが記憶されており、処理レシピに基づいてガス処理装置1の処理が実行される。
【0029】
<ガス処理方法>
次に、上述したガス処理装置1で行われるガス処理方法の一実施形態について説明する。
本実施形態では、高アスペクト比の凹部を有する基板Wに対して、ガス処理としてエッチング、具体的にはシリコン酸化物系材料からなる膜のエッチングを行う。
【0030】
以下、具体的に説明する。
まず、高アスペクト比の凹部を有する基板Wをチャンバー10内に搬入して、載置台12に載置する。このとき、載置台12は温調器45で温調されている。そして、準備段階としてチャンバー10内の圧力を266.6Pa(2Torr)程度に上昇させて基板Wの温度安定化を図った後、チャンバー10内を真空引きする。
【0031】
基板Wの凹部のアスペクト比としては25以上が好適である。このような高アスペクト比の凹部を有する基板Wとしては、例えば、3D-NAND型不揮発性半導体装置に用いられるものを挙げることができる。図2は、そのような基板Wの構造の一例を示す断面図である。本例においては、基板Wは、シリコン基体100の上に、下部構造101と、その上に形成された、SiO膜111とSiN膜112とが交互に複数積層されてなるONON積層構造部102と、その上に形成された上部構造103とを有している。上部構造103、ONON積層構造部102、および下部構造101には、積層方向に貫通するようにホール106が形成されている。
【0032】
次いで、真空引きされたチャンバー10内にガスを供給してチャンバー10内の圧力を上昇させ、予め定められた設定圧力に調圧し、その圧力で安定させる(調圧ステップ)。
【0033】
次いで、その圧力で、塩基性ガスであるNHガスと、フッ素含有ガスであるHFガスとによりガス処理であるエッチングを行う(エッチングステップ)。この際のエッチングにおいては、凹部の側壁部分に存在するシリコン酸化物系材料をエッチングする。図2の例では、凹部であるホール106の側壁に存在するONON積層構造部102の複数のSiO膜111を図3のようにエッチングする。
【0034】
この際の処理反応であるエッチング反応は、フッ素含有ガスと塩基性ガスとSiO膜111との反応であり、本例ではHFガスおよびNHガスとSiO膜111とが反応してケイフッ化アンモニウム(AFS)が生成される。このAFSは、基板Wの温度を高く設定することにより、昇華させることができる。
【0035】
このようなエッチング処理を予め定められた時間行った後、チャンバー10を真空引きしてチャンバー10内のパージを行う(真空引きステップ)。これにより、昇華したAFS等の残留ガスをチャンバー10から排出する。
【0036】
このようなシーケンスを1回行って所望の量のエッチングを行ってもよいが、このようなシーケンスを複数回繰り返して所望の量のエッチングを行ってもよい。すなわち、調圧→エッチング→真空引き→調圧→エッチング→真空引き→・・・のように複数回繰り返す。これにより、より制御性の良いエッチングを行うことができる。
【0037】
ところで、従来、調圧ステップでは、処理圧力で安定させることを目的としているため、調圧ステップで目的の処理反応を生じさせないことが一般的である。例えば特許文献2では、HFガスとNHガスを用いてSiO膜をエッチングする場合に、調圧ステップである圧力安定化工程においては、Arガス、Nガス、NHガスのみを導入し、エッチング反応(処理反応)を生じさせない。そして、基板処理工程において初めてHFガスを導入してエッチング反応を生じさせている。
【0038】
図4は、従来技術における具体的なガス供給タイミングと圧力とを示す図である。図4に示すように、調圧ステップでは、真空引きした状態のチャンバー内に、圧力調整用ガスとしてArガス、Nガス、NHガスを供給してチャンバー内の圧力を上昇させ、設定圧力で安定させる。そして、エッチングステップでは、チャンバー内の圧力を設定圧力に維持したまま、チャンバー内にHFガスを供給してエッチング反応を生じさせる。予め定められたエッチング時間経過後、Arガス、Nガス、NHガス、HFガスを停止し、チャンバー内の真空引きを行う。
【0039】
しかし、このような従来用いられている図4に示す処理をアスペクト比が大きい凹部を有する基板に適用した場合、凹部のボトム部でトップ部よりもエッチング量が小さくなるトップ-ボトムローディングが生じることが判明した。具体的には、図2の基板の例では、図5に示すように、トップ部のSiO膜111のエッチング量が大きく、ボトム部のSiO膜111のエッチング量が小さくなる。
【0040】
以下、この点について説明する。
図2に示す構造の基板Wに、調圧用ガスとしてエッチング反応が生じないようにArガス、Nガス、NHガスをチャンバー10内に供給した際には、図6(a)に示すように、これらのガスがホール106内にも存在する。そのため、調圧後にエッチングのためにHFガスを供給した際には、図6(b)に示すように、ホール106内で、Arガス、Nガス、NHガスによりHFガスの拡散が阻害され、ホール106のボトム部にHFガスが到達し難くなる。すなわち、図7に示すように、エッチャントの一部であるHFガスの拡散タイミングがトップ部に比べボトム部の方が遅くなるとともに、HFガスの量自体もトップ部に比べてボトム部のほうが少なくなる。これがエッチングのトップ-ボトムローディングが生じる理由であると考えられる。
【0041】
そこで、本実施形態では、調圧ステップにおいて、圧力調整用ガスとして、Arガス、Nガス、NHガスのみならずHFガスをチャンバー10内に供給する。すなわち、圧力調整用ガスの一部として、処理反応であるエッチング反応を生じさせる処理ガスであるNHガスおよびHFガスの両方を供給する。図8は、実施形態の一例におけるの具体的なガス供給タイミングと圧力とを示す図である。図8に示すように、本例では、調圧ステップにおいて、真空引きした状態のチャンバー内に、圧力調整ガスとして、Arガス、Nガス、NHガスのみならずHFガスも供給してチャンバー内の圧力を上昇させ、設定圧力で安定させる。そして、これらのガスの供給を維持し、かつチャンバー内の圧力を設定圧力に維持したまま、エッチングステップを行う。
【0042】
そのため、図9(a)に示すように、HFガスがArガス、Nガス、NHガスとともにホール106に導入され、図9(b)に示すように、Arガス、Nガス、NHガスにほとんど妨げられることなくHFガスがホール106のボトム部に拡散される。すなわち、図10に示すように、エッチャントであるHFガスの到達タイミングおよび量がトップ部とボトム部とで同程度となり、トップ-ボトムローディングが抑制された均一なエッチングを行うことができる。
【0043】
次に、図2の構造の基板Wに対して実施形態のエッチングを行う際のシーケンスの一例について説明する。図11は、実施形態のエッチングにおける圧力およびガス供給シーケンスの一例を示す図である。
【0044】
載置台12に基板を載置した状態で、最初に、Arガス、Nガス、NHガス、およびHFガスを全て導入してチャンバー10内の圧力を上昇させ、設定温度で安定させる(ステップST1;調圧ステップ)。次いで、Arガス、Nガス、NHガス、およびHFガスの流量、およびチャンバー10内の圧力を維持したまま、ホール106を介してSiO膜111のエッチングを行う(ステップST2;エッチングステップ)。エッチングステップが終了後、チャンバー10を真空引きしてチャンバー10内のパージを行う(ステップST3;真空引きステップ)。以上のステップST1~ステップST3を所望の回数繰り返す。
【0045】
本実施形態では、ステップST1の調圧ステップでHFガスを供給するので、調圧ステップでの圧力が上述したようなエッチング反応が進行する圧力以上になった時点でエッチングが開始される。すなわち、レシピ上のエッチングステップ(ステップST2)に到達する前にエッチング反応が進行する。これに対しては、予め、調圧ステップでのエッチング量を考慮してエッチングステップ(ステップST2)の時間を設定することにより対応することができる。また、レシピ上、調圧ステップをエッチングステップに統合することもできる。
【0046】
エッチングステップ(ステップST2)では、基板温度を75~150℃の範囲にすることが好ましい。これにより、エッチング反応で生成されたAFSを昇華させることができる。エッチングの際の圧力は、26.6~400Pa(0.2~3.0Torr)の範囲が好ましい。
【0047】
また、Arガス、Nガス、NHガス、およびHFガスの流量は、それぞれ、0~200sccm、0~200sccm、200~1000sccm、200~1000sccmの範囲が好ましい。
【0048】
以上は、調圧ステップにおいて、Arガス、Nガス、NHガス、およびHFガスの全てを最初から供給した例を示したが、図12に示すように、エッチングに影響がない範囲でプリフロー(ステップST1´)を行ってもよい。図12では全てのガスをプリフローする例を示しているが、一部のガス(例えばNガスおよびArガス、またはNガス、Arガス、およびNHガス)をプリフローしてもよい。
【0049】
また、以上は、処理温度を高温にして、生成されたAFSを昇華させ、昇華したAFSを真空引きにより排出する処理を繰り返す例を示したが、処理温度を10~75℃、例えば35℃と低温で処理してもよい。この場合は、NHガスおよびHFガスによる処理の後に、別のチャンバーで加熱処理を行ってAFSを昇華させる。これらの処理を1回または複数回行う。
【0050】
なお、本実施形態のように高アスペクト比の凹部を有する基板Wに対して、調圧ステップでHFガスを供給すると、エッチングの際にかえって凹部のボトム部のHFガス濃度が高くなって、エッチングがボトムファーストになることがある。そのような場合は、圧力等のパラメータを調整することにより均一化することができる。
【0051】
<実験例>
次に、実験例について説明する。
ここでは、図2の構造の基板に対し、図1の装置により、エッチングガス(エッチャント)としてNHガスとHFガスを用いて、SiO膜のエッチングを行った。エッチングの際の条件としては、基板温度を80~100℃、圧力
を53.3~106.6Pa(0.4~0.8Torr)、NHガス流量を250~800sccm、HFガス流量を250~800sccm、Arガス流量を50~150sccm、Nガス流量を50~150sccmとした。
【0052】
以上の条件で、調圧ステップでHFガスを供給しない従来シーケンス(シーケンスA)と、調圧ステップでHFガスを供給する実施形態のシーケンス(シーケンスB)とでエッチングを行った。シーケンスAでは、エッチング時間を3secとし、真空引きの時間を60secとし、調圧→エッチング→真空引きのサイクルを9サイクル行った。シーケンスBでは、エッチング時間を0.5secとし、真空引きの時間を60secとし、調圧→エッチング→真空引きのサイクルを6サイクル行った。エッチング後、エッチング量と、最小エッチング量(Min)/ホール内の最大エッチング量(Max)×100で表されるローディング値を求めた。その結果、シーケンスAでは、エッチング量が12.6nm、ローディング値が61.3%のトップファーストとなった。これに対して、シーケンスBでは、エッチング量が9.2nm、ローディング値が87.9%のトップファーストとなり、実施形態の手法を用いることによりトップ-ボトムローディングが改善することが確認された。
【0053】
<他の適用>
以上、実施形態について説明したが、今回開示された実施形態は、全ての点において例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。上記の実施形態は、添付の特許請求の範囲およびその主旨を逸脱することなく、様々な形態で省略、置換、変更されてもよい。
【0054】
例えば、上記実施形態では、NHガスとHFガスを用いてシリコン酸化物系材料のエッチングを行う例を示したが、これに限らず、他のガスエッチングの場合にも同様に適用可能である。
【0055】
また、圧力調整用ガスの一部として、処理反応であるエッチング反応を生じさせる処理ガスであるNHガスとHFガスとを用い、他に不活性ガスであるNガスおよびArガスを用いた例を示したが、圧力調整用ガスは処理反応を生じさせる処理ガスのみであってもよい。すなわち、圧力調整用ガスの少なくとも一部として処理反応を生じさせる処理ガスを用いればよい。
【0056】
さらに、上記実施形態では、基板として、SiO膜とSiN膜とが交互に複数積層されてなるONON積層構造部を有し、その積層方向に凹部としてのホールを有するものを用いた例を示したが、これに限るものではない。例えば、高アスペクト比の凹部の側面に一様にエッチング対象膜が形成されている基板であってもよい。
【0057】
さらにまた、ガス処理はエッチングに限らず、CVD成膜のような他のガス処理であってもよい。他のガス処理の場合にも、高アスペクト比の凹部を有する基板に対して、調圧ステップから処理反応を生じさせる処理ガスを供給することにより、処理のトップ-ボトムローディングを抑制することができる。
【0058】
さらにまた、上記実施形態では、基板として半導体ウエハを例示したが、半導体ウエハに限らず、LCD(液晶ディスプレイ)用基板に代表されるFPD(フラットパネルディスプレイ)基板や、セラミックス基板等の他の基板であってもよい。
【符号の説明】
【0059】
1;ガス処理装置
10;チャンバー
12;載置台
13;ガス供給機構
14;排気機構
26;シャワーヘッド
45;温調器
51;HFガス供給源
53;NHガス供給源
80;制御部
100;シリコン基体
102;ONON積層部
106;ホール(凹部)
111;SiO
W;基板
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