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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023087245
(43)【公開日】2023-06-23
(54)【発明の名称】上部電極及びプラズマ処理装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/3065 20060101AFI20230616BHJP
【FI】
H01L21/302 101L
H01L21/302 101B
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021201526
(22)【出願日】2021-12-13
(71)【出願人】
【識別番号】000219967
【氏名又は名称】東京エレクトロン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100122507
【弁理士】
【氏名又は名称】柏岡 潤二
(72)【発明者】
【氏名】岩佐 琥偉
(72)【発明者】
【氏名】戸来 雅也
(72)【発明者】
【氏名】仙田 孝博
【テーマコード(参考)】
5F004
【Fターム(参考)】
5F004AA16
5F004BA09
5F004BB12
5F004BB22
5F004BB23
5F004BB28
5F004BB29
5F004BB30
(57)【要約】
【課題】上部電極での異常放電を抑制する技術を提供する。
【解決手段】開示される上部電極は、容量結合型のプラズマ処理装置においてシャワーヘッドを構成する。上部電極は、第1の部材及び第2の部材を含む。第1の部材は、導電体から形成されている。第1の部材は、複数の第1の孔を提供する。複数の第1の孔は、第1の部材を貫通する。第2の部材は、本体及び被覆層を含む。本体は、導電体から形成されており、第1の部材の上方に設けられている。被覆層は、本体の表面を覆っている。第2の部材は、一つ以上の第2の孔を提供する。被覆層の二次電子放出係数は1より小さい。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
容量結合型のプラズマ処理装置においてシャワーヘッドを構成する上部電極であって、
導電体から形成されている第1の部材であり、該第1の部材を貫通する複数の第1の孔を提供する、該第1の部材と、
導電体から形成されており前記第1の部材の上方に設けられた本体及び該本体の表面の少なくとも一部を覆う被覆層を含み、一つ以上の第2の孔を提供する、第2の部材と、
を備え、
前記被覆層の二次電子放出係数が1より小さい、
上部電極。
【請求項2】
前記被覆層は、導電体から形成されている、請求項1に記載の上部電極。
【請求項3】
前記被覆層は、ポリイミド、ポリテトラフルオロエチレン、又はペルフルオロアルコキシエチレンを含む、請求項1に記載の上部電極。
【請求項4】
容量結合型のプラズマ処理装置においてシャワーヘッドを構成する上部電極であって、
導電体から形成されている第1の部材であり、該第1の部材を貫通する複数の第1の孔を提供する、該第1の部材と、
導電体から形成されており前記第1の部材の上方に設けられた本体及び該本体の表面の少なくとも一部を覆う被覆層を含み、一つ以上の第2の孔を提供する、第2の部材と、
を備え、
前記被覆層は、ダイヤモンドライクカーボン、アモルファスカーボン、又はシリコンカーバイドを含む層である、
上部電極。
【請求項5】
前記第2の部材は、前記被覆層と前記本体の前記表面との間に設けられた絶縁層を更に含む、請求項2又は4に記載の上部電極。
【請求項6】
前記第1の部材と前記第2の部材との間に設けられた導電部材を更に備え、
前記導電部材は、前記第1の部材及び前記被覆層に接触している、
請求項2,4,5の何れか一項に記載の上部電極。
【請求項7】
前記第2の部材は、前記一つ以上の第2の孔として、前記複数の第1の孔にそれぞれ連通する複数の第2の孔を提供している、請求項1~6の何れか一項に記載の上部電極。
【請求項8】
前記第2の部材は、前記複数の第2の孔の各々の前記第1の部材の側の開口を画成する端部を含み、
前記端部は、テーパ状をなしており、
前記複数の第2の孔の各々の前記開口の直径は、前記複数の第1の孔の各々の直径よりも大きく、
前記端部の表面は、前記被覆層から形成されている、
請求項7に記載の上部電極。
【請求項9】
前記第2の部材は、ガス拡散室を提供し、
前記複数の第2の孔はそれぞれ、前記ガス拡散室から前記第1の孔に向けて延びている、
請求項7又は8に記載の上部電極。
【請求項10】
前記第2の部材は、その中で冷媒を流すために設けられた流路を更に提供している、請求項1~9の何れか一項に記載の上部電極。
【請求項11】
前記複数の第1の孔の各々及び前記一つ以上の第2の孔の各々のうち少なくとも一方はガス孔である、請求項1~10の何れか一項に記載の上部電極。
【請求項12】
前記被覆層は、前記本体の前記表面のうち少なくとも、前記第1の部材と対面する全領域を覆っている、請求項1~11の何れか一項に記載の上部電極。
【請求項13】
前記被覆層は、前記本体の前記表面のうち少なくとも、前記第2の孔の各々の前記第1の部材の側の開口を画成し且つ前記第1の部材と対面する領域を覆っている、請求項1~12の何れか一項に記載の上部電極。
【請求項14】
前記被覆層は、前記本体の前記表面のうち少なくとも、前記第1の孔の各々の前記第2の部材側の開口と対面する領域を覆っている、請求項1~13の何れか一項に記載の上部電極。
【請求項15】
その内部に処理空間を提供するプラズマ処理チャンバと、
前記プラズマ処理チャンバ内に設けられた基板支持部と、
請求項1~14の何れか一項に記載の上部電極であり、前記基板支持部の上方に設けられた、該上部電極と、
を備えるプラズマ処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、上部電極及びプラズマ処理装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
基板に対するプラズマ処理では、プラズマ処理装置が用いられる。一種のプラズマ処理装置は、容量結合型のプラズマ処理装置であり、プラズマ処理チャンバ、基板支持部、及び上部電極を備える。基板支持部は、プラズマ処理チャンバの中に設けられている。上部電極は、基板支持部の上方に設けられている。上部電極は、シャワーヘッドを構成しており、シリコン電極板を含んでいる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003-51485号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本開示は、上部電極での異常放電を抑制する技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
一つの例示的実施形態において、上部電極が提供される。上部電極は、容量結合型のプラズマ処理装置においてシャワーヘッドを構成する。上部電極は、第1の部材及び第2の部材を備える。第1の部材は、導電体から形成されている。第1の部材は、複数の第1の孔を提供する。複数の第1の孔は、第1の部材を貫通する。第2の部材は、本体及び被覆層を含む。本体は、導電体から形成されており、第1の部材の上方に設けられている。被覆層は、本体の表面の少なくとも一部を覆う。第2の部材は、一つ以上の第2の孔を提供する。被覆層の二次電子放出係数は1より小さい。
【発明の効果】
【0006】
一つの例示的実施形態によれば、上部電極での異常放電が抑制される。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】一つの例示的実施形態に係るプラズマ処理装置を概略的に示す図である。
図2】一つの例示的実施形態に係る上部電極の部分拡大断面図である。
図3】一つの例示的実施形態に係る上部電極の部分拡大断面図である。
図4】別の例示的実施形態に係る上部電極の部分拡大断面図である。
図5】更に別の例示的実施形態に係る上部電極の部分拡大断面図である。
図6】更に別の例示的実施形態に係る上部電極の部分拡大断面図である。
図7】実験装置を示す断面模式図である。
図8】実験結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、種々の例示的実施形態について説明する。
【0009】
一つの例示的実施形態において、上部電極が提供される。上部電極は、容量結合型のプラズマ処理装置においてシャワーヘッドを構成する。上部電極は、第1の部材及び第2の部材を備える。第1の部材は、導電体から形成されている。第1の部材は、複数の第1の孔を提供する。複数の第1の孔は、第1の部材を貫通する。第2の部材は、本体及び被覆層を含む。本体は、導電体から形成されており、第1の部材の上方に設けられている。被覆層は、本体の表面の少なくとも一部を覆う。第2の部材は、一つ以上の第2の孔を提供する。被覆層の二次電子放出係数は1より小さい。
【0010】
上記実施形態では、二次電子放出係数が1より小さい被覆層により第2の部材の本体の表面が覆われている。したがって、電子又は正イオンがプラズマ処理チャンバ内のプラズマから複数の第1の孔に進入して第2の部材に衝突しても、第2の部材から放出される二次電子の量は少ない。結果として、上部電極での異常放電が抑制される。
【0011】
一つの例示的実施形態において、被覆層は、導電体から形成されていてもよい。この実施形態によれば、二次電子は、被覆層を介して上部電極からグランドに排出される。二次電子は、例えば、被覆層、第1の部材、及びプラズマ処理チャンバ内のプラズマを介して、グランドに排出される。したがって、第1の部材と第2の部材との間の電位差が抑制される。故に、上部電極での異常放電が更に抑制される。
【0012】
一つの例示的実施形態において、被覆層は、ポリイミド、ポリテトラフルオロエチレン又はペルフルオロアルコキシエチレンを含んでいてもよい。
【0013】
別の例示的実施形態においても、上部電極が提供される。上部電極は、容量結合型のプラズマ処理装置においてシャワーヘッドを構成する。上部電極は、第1の部材及び第2の部材を備える。第1の部材は、導電体から形成されている。第1の部材は、複数の第1の孔を提供する。複数の第1の孔は、第1の部材を貫通する。第2の部材は、本体及び被覆層を含む。本体は、導電体から形成されており、第1の部材の上方に設けられている。被覆層は、本体の表面の少なくとも一部を覆う。第2の部材は、一つ以上の第2の孔を提供する。被覆層は、ダイヤモンドライクカーボン、アモルファスカーボン、又はシリコンカーバイドを含む層である。
【0014】
ダイヤモンドライクカーボン、アモルファスカーボン、及びシリコンカーバイドの二次電子放出係数は1より小さい。したがって、上記実施形態にでは、電子又は正イオンがプラズマ処理チャンバ内のプラズマから複数の第1の孔に進入して第2の部材に衝突しても、第2の部材から放出される二次電子の量は少ない。また、二次電子は、ダイヤモンドライクカーボンの層を介して上部電極からグランドに排出される。したがって、第1の部材と第2の部材との間の電位差が抑制される。故に、上部電極での異常放電が抑制される。
【0015】
一つの例示的実施形態において、第2の部材は、被覆層と本体の表面との間に設けられた絶縁層を更に含んでいてもよい。この実施形態では、第2の部材の本体と第1の部材とは、互いに直接的に導通しない。
【0016】
一つの例示的実施形態において、上部電極は、第1の部材と第2の部材との間に設けられた導電部材を更に備えていてもよい。導電部材は、第1の部材及び被覆層に接触していてもよい。この実施形態では、二次電子は、被覆層及び導電部材を介して第1の部材に流れる。第1の部材に流れた二次電子は、プラズマ処理チャンバ中のプラズマを介してグランドに排出される。したがって、第1の部材と第2の部材との間の電位差が抑制される。故に、上部電極での異常放電が更に抑制される。
【0017】
一つの例示的実施形態において、第2の部材は、一つ以上の第2の孔として、複数の第2の孔を提供していてもよい。複数の第2の孔はそれぞれ、複数の第1の孔にそれぞれ連通する。
【0018】
一つの例示的実施形態において、第2の部材は、複数の第2の孔の各々の第1の部材の側の開口を画成する端部を含んでいてもよい。端部は、テーパ状をなしていてもよい。複数の第2の孔の各々の開口の直径は、複数の第1の孔の各々の直径よりも大きくてもよい。端部の表面は、被覆層から形成されていてもよい。複数の第1の孔に進入した電子又は正イオンは、複数の第2の孔の各々の端部に衝突し得る。この実施形態では、複数の第2の孔の各々の端部の表面が上記被覆層から形成されているので、当該端部における二次電子の発生が効果的に抑制される。
【0019】
一つの例示的実施形態において、第2の部材は、ガス拡散室を提供してもよい。複数の第2の孔はそれぞれ、ガス拡散室から第1の孔に向けて延びていてもよい。
【0020】
一つの例示的実施形態において、第2の部材は、その中で冷媒を流すために設けられた流路を更に提供していてもよい。
【0021】
一つの例示的実施形態において、複数の第1の孔の各々及び一つ以上の第2の孔の各々のうち少なくとも一方はガス孔であってもよい。
【0022】
一つの例示的実施形態において、被覆層は、本体の表面のうち少なくとも、第1の部材と対面する全領域を覆っていてもよい。
【0023】
一つの例示的実施形態において、被覆層は、本体の表面のうち少なくとも、第2の孔の各々の第1の部材の側の開口を画成する領域を覆っていてもよい。当該領域は、第1の部材と対面している。
【0024】
一つの例示的実施形態において、被覆層は、本体の表面のうち少なくとも、第1の孔の第2の部材側の開口と対面する領域を覆っていてもよい。当該領域は、プラズマ処理チャンバ内のプラズマから複数の第1の孔の各々に進入する電子又は正イオンの衝突を受け易い領域である。この実施形態では、当該領域が被覆層に覆われているので、当該領域からの2次電子の発生が抑制される。したがって、上部電極での異常放電が更に抑制される。
【0025】
更に別の例示的実施形態において、プラズマ処理装置は、プラズマ処理チャンバ、基板支持部、及び上部電極を備える。プラズマ処理チャンバは、その内部に処理空間を提供する。基板支持部は、プラズマ処理チャンバ内に設けられる。上部電極は、上述の種々の例示的実施形態のうち何れかの上部電極であり、基板支持部の上方に設けられる。
【0026】
以下に、プラズマ処理システムの構成例について説明する。図1は、容量結合型のプラズマ処理装置の構成例を説明するための図である。
【0027】
プラズマ処理システムは、容量結合型のプラズマ処理装置1及び制御部2を含む。容量結合型のプラズマ処理装置1は、プラズマ処理チャンバ10、ガス供給部20、電源30及び排気システム40を含む。また、プラズマ処理装置1は、基板支持部11及びガス導入部を含む。ガス導入部は、少なくとも1つの処理ガスをプラズマ処理チャンバ10内に導入するように構成される。ガス導入部は、シャワーヘッド13を含む。基板支持部11は、プラズマ処理チャンバ10内に配置される。シャワーヘッド13は、基板支持部11の上方に配置される。一実施形態において、シャワーヘッド13は、プラズマ処理チャンバ10の天部(ceiling)の少なくとも一部を構成する。プラズマ処理チャンバ10は、シャワーヘッド13、プラズマ処理チャンバ10の側壁10a及び基板支持部11により規定されたプラズマ処理空間10sを有する。プラズマ処理チャンバ10は、少なくとも1つの処理ガスをプラズマ処理空間10sに供給するための少なくとも1つのガス供給口と、プラズマ処理空間からガスを排出するための少なくとも1つのガス排出口とを有する。プラズマ処理チャンバ10は接地される。シャワーヘッド13及び基板支持部11は、プラズマ処理チャンバ10の筐体とは電気的に絶縁される。
【0028】
基板支持部11は、本体部111及びリングアセンブリ112を含む。本体部111は、基板Wを支持するための中央領域111aと、リングアセンブリ112を支持するための環状領域111bとを有する。ウェハは基板Wの一例である。本体部111の環状領域111bは、平面視で本体部111の中央領域111aを囲んでいる。基板Wは、本体部111の中央領域111a上に配置され、リングアセンブリ112は、本体部111の中央領域111a上の基板Wを囲むように本体部111の環状領域111b上に配置される。従って、中央領域111aは、基板Wを支持するための基板支持面とも呼ばれ、環状領域111bは、リングアセンブリ112を支持するためのリング支持面とも呼ばれる。
【0029】
一実施形態において、本体部111は、基台1110及び静電チャック1111を含む。基台1110は、導電性部材を含む。基台1110の導電性部材は下部電極として機能し得る。静電チャック1111は、基台1110の上に配置される。静電チャック1111は、セラミック部材1111aとセラミック部材1111a内に配置される静電電極1111bとを含む。セラミック部材1111aは、中央領域111aを有する。一実施形態において、セラミック部材1111aは、環状領域111bも有する。なお、環状静電チャックや環状絶縁部材のような、静電チャック1111を囲む他の部材が環状領域111bを有してもよい。この場合、リングアセンブリ112は、環状静電チャック又は環状絶縁部材の上に配置されてもよく、静電チャック1111と環状絶縁部材の両方の上に配置されてもよい。また、後述するRF(RadioFrequency)電源31及び/又はDC(Direct Current)電源32に結合される少なくとも1つのRF/DC電極がセラミック部材1111a内に配置されてもよい。この場合、少なくとも1つのRF/DC電極が下部電極として機能する。後述するバイアスRF信号及び/又はDC信号が少なくとも1つのRF/DC電極に供給される場合、RF/DC電極はバイアス電極とも呼ばれる。なお、基台1110の導電性部材と少なくとも1つのRF/DC電極とが複数の下部電極として機能してもよい。また、静電電極1111bが下部電極として機能してもよい。従って、基板支持部11は、少なくとも1つの下部電極を含む。
【0030】
リングアセンブリ112は、1又は複数の環状部材を含む。一実施形態において、1又は複数の環状部材は、1又は複数のエッジリングと少なくとも1つのカバーリングとを含む。エッジリングは、導電性材料又は絶縁材料で形成され、カバーリングは、絶縁材料で形成される。
【0031】
また、基板支持部11は、静電チャック1111、リングアセンブリ112及び基板のうち少なくとも1つをターゲット温度に調節するように構成される温調モジュールを含んでもよい。温調モジュールは、ヒータ、伝熱媒体、流路1110a、又はこれらの組み合わせを含んでもよい。流路1110aには、ブラインやガスのような伝熱流体が流れる。一実施形態において、流路1110aが基台1110内に形成され、1又は複数のヒータが静電チャック1111のセラミック部材1111a内に配置される。また、基板支持部11は、基板Wの裏面と中央領域111aとの間の間隙に伝熱ガスを供給するように構成された伝熱ガス供給部を含んでもよい。
【0032】
シャワーヘッド13は、ガス供給部20からの少なくとも1つの処理ガスをプラズマ処理空間10s内に導入するように構成される。シャワーヘッド13は、少なくとも1つのガス供給口13a、少なくとも1つのガス拡散室13b、及び複数のガス導入口13cを有する。ガス供給口13aに供給された処理ガスは、ガス拡散室13bを通過して複数のガス導入口13cからプラズマ処理空間10s内に導入される。また、シャワーヘッド13は、少なくとも1つの上部電極14を含む。なお、ガス導入部は、シャワーヘッド13に加えて、側壁10aに形成された1又は複数の開口部に取り付けられる1又は複数のサイドガス注入部(SGI:Side Gas Injector)を含んでもよい。
【0033】
ガス供給部20は、少なくとも1つのガスソース21及び少なくとも1つの流量制御器22を含んでもよい。一実施形態において、ガス供給部20は、少なくとも1つの処理ガスを、それぞれに対応のガスソース21からそれぞれに対応の流量制御器22を介してシャワーヘッド13に供給するように構成される。各流量制御器22は、例えばマスフローコントローラ又は圧力制御式の流量制御器を含んでもよい。さらに、ガス供給部20は、少なくとも1つの処理ガスの流量を変調又はパルス化する1又はそれ以上の流量変調デバイスを含んでもよい。
【0034】
電源30は、少なくとも1つのインピーダンス整合回路を介してプラズマ処理チャンバ10に結合されるRF電源31を含む。RF電源31は、少なくとも1つのRF信号(RF電力)を少なくとも1つの下部電極及び/又は少なくとも1つの上部電極14に供給するように構成される。これにより、プラズマ処理空間10sに供給された少なくとも1つの処理ガスからプラズマが形成される。従って、RF電源31は、プラズマ処理チャンバ10において1又はそれ以上の処理ガスからプラズマを生成するように構成されるプラズマ生成部の少なくとも一部として機能し得る。また、バイアスRF信号を少なくとも1つの下部電極に供給することにより、基板Wにバイアス電位が発生し、形成されたプラズマ中のイオン成分を基板Wに引き込むことができる。
【0035】
一実施形態において、RF電源31は、第1のRF生成部31a及び第2のRF生成部31bを含む。第1のRF生成部31aは、少なくとも1つのインピーダンス整合回路を介して少なくとも1つの下部電極及び/又は少なくとも1つの上部電極14に結合され、プラズマ生成用のソースRF信号(ソースRF電力)を生成するように構成される。一実施形態において、ソースRF信号は、10MHz~150MHzの範囲内の周波数を有する。一実施形態において、第1のRF生成部31aは、異なる周波数を有する複数のソースRF信号を生成するように構成されてもよい。生成された1又は複数のソースRF信号は、少なくとも1つの下部電極及び/又は少なくとも1つの上部電極14に供給される。
【0036】
第2のRF生成部31bは、少なくとも1つのインピーダンス整合回路を介して少なくとも1つの下部電極に結合され、バイアスRF信号(バイアスRF電力)を生成するように構成される。バイアスRF信号の周波数は、ソースRF信号の周波数と同じであっても異なっていてもよい。一実施形態において、バイアスRF信号は、ソースRF信号の周波数よりも低い周波数を有する。一実施形態において、バイアスRF信号は、100kHz~60MHzの範囲内の周波数を有する。一実施形態において、第2のRF生成部31bは、異なる周波数を有する複数のバイアスRF信号を生成するように構成されてもよい。生成された1又は複数のバイアスRF信号は、少なくとも1つの下部電極に供給される。また、種々の実施形態において、ソースRF信号及びバイアスRF信号のうち少なくとも1つがパルス化されてもよい。
【0037】
また、電源30は、プラズマ処理チャンバ10に結合されるDC電源32を含んでもよい。DC電源32は、第1のDC生成部32a及び第2のDC生成部32bを含む。一実施形態において、第1のDC生成部32aは、少なくとも1つの下部電極に接続され、第1のDC信号を生成するように構成される。生成された第1のバイアスDC信号は、少なくとも1つの下部電極に印加される。一実施形態において、第2のDC生成部32bは、少なくとも1つの上部電極14に接続され、第2のDC信号を生成するように構成される。生成された第2のDC信号は、少なくとも1つの上部電極14に印加される。
【0038】
種々の実施形態において、第1及び第2のDC信号のうち少なくとも1つがパルス化されてもよい。この場合、電圧パルスのシーケンスが少なくとも1つの下部電極及び/又は少なくとも1つの上部電極14に印加される。電圧パルスは、矩形、台形、三角形又はこれらの組み合わせのパルス波形を有してもよい。一実施形態において、DC信号から電圧パルスのシーケンスを生成するための波形生成部が第1のDC生成部32aと少なくとも1つの下部電極との間に接続される。従って、第1のDC生成部32a及び波形生成部は、電圧パルス生成部を構成する。第2のDC生成部32b及び波形生成部が電圧パルス生成部を構成する場合、電圧パルス生成部は、少なくとも1つの上部電極14に接続される。電圧パルスは、正の極性を有してもよく、負の極性を有してもよい。また、電圧パルスのシーケンスは、1周期内に1又は複数の正極性電圧パルスと1又は複数の負極性電圧パルスとを含んでもよい。なお、第1及び第2のDC生成部32a,32bは、RF電源31に加えて設けられてもよく、第1のDC生成部32aが第2のRF生成部31bに代えて設けられてもよい。
【0039】
排気システム40は、例えばプラズマ処理チャンバ10の底部に設けられたガス排出口10eに接続され得る。排気システム40は、圧力調整弁及び真空ポンプを含んでもよい。圧力調整弁によって、プラズマ処理空間10s内の圧力が調整される。真空ポンプは、ターボ分子ポンプ、ドライポンプ又はこれらの組み合わせを含んでもよい。
【0040】
制御部2は、本開示において述べられる種々の工程をプラズマ処理装置1に実行させるコンピュータ実行可能な命令を処理する。制御部2は、ここで述べられる種々の工程を実行するようにプラズマ処理装置1の各要素を制御するように構成され得る。一実施形態において、制御部2の一部又は全てがプラズマ処理装置1に含まれてもよい。制御部2は、処理部2a1、記憶部2a2及び通信インターフェース2a3を含んでもよい。制御部2は、例えばコンピュータ2aにより実現される。処理部2a1は、記憶部2a2からプログラムを読み出し、読み出されたプログラムを実行することにより種々の制御動作を行うように構成され得る。このプログラムは、予め記憶部2a2に格納されていてもよく、必要なときに、媒体を介して取得されてもよい。取得されたプログラムは、記憶部2a2に格納され、処理部2a1によって記憶部2a2から読み出されて実行される。媒体は、コンピュータ2aに読み取り可能な種々の記憶媒体であってもよく、通信インターフェース2a3に接続されている通信回線であってもよい。処理部2a1は、CPU(Central Processing Unit)であってもよい。記憶部2a2は、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)、HDD(Hard Disk Drive)、SSD(Solid State Drive)、又はこれらの組み合わせを含んでもよい。通信インターフェース2a3は、LAN(Local Area Network)等の通信回線を介してプラズマ処理装置1との間で通信してもよい。
【0041】
プラズマ処理装置1において、上部電極14は、シャワーヘッド13を構成する。以下、図2及び図3を参照しつつ、一つの例示的実施形態に係る上部電極14について説明する。図2及び図3は、一つの例示的実施形態に係る上部電極14の部分拡大断面図である。上部電極14は、プラズマ処理装置1において上部電極として用いられ得る。
【0042】
図2に示すように、上部電極14は、第1の部材51及び第2の部材52を含んでいる。第1の部材51は、プラズマ処理チャンバ10内の空間(プラズマ処理空間10s)を上方から画成する天板であり得る。第1の部材51は、略円盤形状を有していてもよい。第1の部材51は、複数の第1の孔51hを提供する。複数の第1の孔51hは、第1の部材51をその板厚方向に貫通している。第1の部材51は、導電体から形成されている。第1の部材51は、シリコン又は炭化ケイ素のようなシリコン含有材料から形成され得る。
【0043】
図2に示すように、第2の部材52は、第1の部材51の上方に設けられている。第2の部材52は、第1の部材51と第2の部材52との間に間隙13sを提供するように第1の部材51の上方に設けられ得る。第2の部材52は、略円盤形状を有していてもよい。図1に示すように、第2の部材52は、流路52fを提供していてもよい。流路52fは、第2の部材52の中に冷媒を流すために設けられている。流路52fは、チラーユニットから供給される冷媒を受ける。チラーユニットは、プラズマ処理チャンバ10の外部に設けられている。冷媒は、流路52fを流れて、チラーユニットに戻される。第2の部材52は、上述したガス拡散室13bをその内部に提供していてもよい。
【0044】
図2に示すように、第2の部材52は、一つ以上の第2の孔52hを提供する。以下では、複数の第2の孔52hを提供する第2の部材52について説明するが、第2の部材52は、単一の第2の孔52hを提供していてもよい。複数の第1の孔51hの各々及び一つ以上の第2の孔52hの各々のうち少なくとも一方はガス孔であってもよい。本実施形態では、一例として、複数の第1の孔51hの各々及び一つ以上の第2の孔52hの各々の双方がガス孔である。
【0045】
複数の第2の孔52hは、ガス拡散室13bから下方に向けて延びている。一実施形態において、複数の第2の孔52hは、ガス拡散室13bから複数の第1の孔51hに向けて延びている。複数の第1の孔51hの各々の中心線と、複数の第2の孔52hのうち対応の第2の孔52hの中心線は、同一直線上に整列している。複数の第2の孔52hは、複数の第1の孔51hにそれぞれ連通している。複数の第2の孔52hはそれぞれ、複数の第1の孔51hと共に複数のガス導入口13c(図1参照)を構成する。
【0046】
図2に示すように、第2の部材52は、本体52a及び被覆層52bを含んでいる。本体52aは、第1の部材51の上方に設けられている。本体52aは、第1の部材51と対面するように第1の部材51の上方に設けられ得る。本体52aは、導電体から形成されている。本体52aは、アルミニウムなどの金属から形成され得る。被覆層52bは、本体52aの表面を覆っている。
【0047】
被覆層52bは、1よりも小さい二次電子放出係数を有する。すなわち、被覆層52bは、1より小さい二次電子放出係数を有する材料から形成されている。二次電子は、一次電子又は正イオンが固体に衝突したときに、当該固体の表面から放出される電子である。二次電子放出係数は、固体に衝突する一次電子又は正イオンの個数に対する、当該固体から放出される二次電子の数の比の値である。したがって、被覆層52bから放出される二次電子の数は、被覆層52bに衝突する一次電子又は正イオンの数よりも小さい。
【0048】
一実施形態において、被覆層52bは、導電体から形成されていてもよい。一実施形態において、被覆層52bは、ダイヤモンドライクカーボン(DLC)を含む層、アモルファスカーボン(AC)を含む層、又はシリコンカーバイド(SiC)を含む層であってもよい。ダイヤモンドライクカーボン及びアモルファスカーボンは、導電体である。ダイヤモンドライクカーボン及びアモルファスカーボンの二次電子放出係数は、0.78である。シリコンカーバイドの二次電子放出係数は、1より小さい。被覆層52bは、コバルトを含む層であってもよい。コバルトの二次電子放出係数は、0.97である。被覆層52bは、チタンを含む層であってもよい。チタンの二次電子放出係数は、0.67である。被覆層52bは、アルミニウムを含む層であってもよい。アルミニウムの二次電子放出係数は、0.79である。被覆層52bは、マグネシウムを含む層であってもよい。マグネシウムの二次電子放出係数は、0.67である。被覆層52bは、シリコンを含む層であってもよい。シリコンの二次電子放出係数は、0.73である。
【0049】
別の実施形態において、被覆層52bは、絶縁体によって形成されていてもよい。被覆層52bは、ポリイミド(PI)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、又はペルフルオロアルコキシエチレン(PFA)を含んでいてもよい。ポリイミド、ポリテトラフルオロエチレン、又はペルフルオロアルコキシエチレンの各二次電子放出係数は、1より小さい。
【0050】
被覆層52bの厚さは、0.1μm以上、20μm以下であってもよい。被覆層52bがダイヤモンドライクカーボンを含む層、アモルファスカーボンを含む層、又はシリコンカーバイドを含む層である場合は、被覆層52bの厚さは0.1μm以上、1μm以下であってもよい。被覆層52bがポリイミド、ポリテトラフルオロエチレン、又はペルフルオロアルコキシエチレンを含む場合には、被覆層52bの厚さは、10μm以上、20μm以下であってもよい。被覆層52bの形成方法は限定されない。被覆層52bは、塗布方、物理蒸着法(PVD)、化学蒸着法(CVD)、又は溶射などによって形成されてもよい。
【0051】
一実施形態において、第2の部材52は、絶縁層52cを更に含んでいてもよい。絶縁層52cは、被覆層52bと本体52aの表面との間に設けられている。すなわち、本体52aの表面は、絶縁層52cによって覆われており、絶縁層52cは、被覆層52bによって覆われている。この実施形態では、第2の部材52の本体52aと第1の部材51は、互いに直接的に導通しない。絶縁層52cは、酸化アルミニウム(Al)から形成されていてもよい。絶縁層52cは、例えば、本体52aに対する陽極酸化処理により形成される。絶縁層52cと被覆層52bとの厚さの比は、(絶縁層52cの厚さ):(被覆層52bの厚さ)=99:1~50:50の範囲、90:10~60:40の範囲、又は85:15~70:30の範囲であってもよい。一例として、絶縁層52cと被覆層52bとの厚さの比は、(絶縁層52cの厚さ):(被覆層52bの厚さ)=8:2であってもよい。
【0052】
図2に示すように、絶縁層52cは、本体52aの全表面のうち、少なくとも第1の部材51に対面する領域と、複数の第2の孔52hを画成する領域とを覆っていてもよい。被覆層52bは、本体52aの全表面のうち少なくとも第1の部材51に対面する領域の一部を覆っている。本実施形態では、一例として、被覆層52bは、本体52aの表面のうち少なくとも、第1の部材51と対面する全領域を覆っている。
【0053】
なお、被覆層52bは、本体52aの表面のうち少なくとも、第2の孔52hの各々の第1の部材51の側の開口を画成し且つ第1の部材51と対面する領域を覆っていてもよい。被覆層52bがポリイミド、ポリテトラフルオロエチレン、又はペルフルオロアルコキシエチレンを含む場合には、かかる領域に形成された被覆層52bに対する熱による影響が小さくなる。
【0054】
図3に示すように、第2の部材52は、複数の端部52dを含んでいてもよい。複数の端部52dの各々は、複数の第2の孔52hのうち対応の第2の孔52hの第1の部材51側の開口を画成している。複数の端部52dの各々の表面は、被覆層52bから形成されている。複数の端部52dの各々は、テーパ状をなしていてもよい。すなわち、複数の端部52dが画成する複数の第2の孔52hの開口は、その第1の部材51からの距離の減少に応じて増加する直径を有している。
【0055】
一実施形態において、複数の第2の孔52hの各々の開口の直径は、複数の第1の孔51hの各々の直径よりも大きくてもよい。複数の第2の孔52hの各々の直径は、複数の第1の孔51hの各々の直径よりも大きくてもよい。或いは、複数の端部52dの各々がテーパ状をなしている場合には、複数の端部52dの各々が画成する複数の第2の孔52hの開口の各々の直径が、複数の第1の孔51hの各々の直径よりも大きくてもよい。この場合には、複数の端部52dの各々が画成する開口以外の部分において複数の第2の孔52hの各々の直径は、複数の第1の孔51hの各々の直径よりも大きくなくてもよい。
【0056】
図2に示すように、一実施形態において、上部電極14は、導電部材53を更に含んでいてもよい。導電部材53は、第1の部材51と第2の部材52との間に設けられている。導電部材53は、例えば、導電体から形成されたスパイラルチューブ、又はスプリングガスケットであり得る。被覆層52bが導電体から形成されている場合には、導電部材53は、第1の部材51及び被覆層52bに接触している。すなわち、被覆層52bと、第1の部材51とは、導電部材53を介して電気的に接続されている。導電部材53は、第2の部材52の本体52aに更に接触していてもよい。被覆層52bが絶縁体から形成されている場合には、導電部材53は、第1の部材51及び第2の部材52の本体52aに接触している。第1の部材51と、第2の部材52の本体52aとは、導電部材53を介して電気的に接続されている。
【0057】
以下、図2及び図3を参照して、上部電極14における二次電子の挙動について説明する。これらの図において、「+」を囲む円は正イオンCを示している。また、「-」を囲む円は電子Eを示している。本体52aの表面は、二次電子放出係数が1より小さい被覆層52bによって覆われている。したがって、電子E又は正イオンCがプラズマ処理空間10sから複数の第1の孔51hに進入して第2の部材52に衝突しても、第2の部材52から放出される電子E(二次電子)の量は少ない。したがって、上部電極14での異常放電が抑制される。
【0058】
上述したように、一実施形態においては、被覆層52bは、導電体から形成されていてもよい。被覆層52bは、例えば、ダイヤモンドライクカーボンを含む層であってもよい。この実施形態によれば、二次電子は、被覆層52bを介して上部電極14からグランドに排出される。二次電子は、例えば、被覆層52b、第1の部材51、及びプラズマ処理空間10sのプラズマを介して、グランドに排出される。したがって、第1の部材51と第2の部材52との間の電位差が抑制される。故に、上部電極14での異常放電が更に抑制される。
【0059】
また、上述したように、一実施形態においては、導電部材53が、第1の部材51及び被覆層52bに接触していてもよい。この実施形態では、電子E(二次電子)は、被覆層52b及び導電部材53を介して第1の部材51に流れる(図2参照)。第1の部材51に流れた電子Eは、プラズマ処理空間10sのプラズマを介してグランドに排出される。したがって、第1の部材51と第2の部材52との間の電位差が抑制される。故に、上部電極14での異常放電が更に抑制される。
【0060】
また、上述したように、一実施形態においては、第2の部材52は、複数の端部52dを含んでいてもよい。複数の端部52dの各々は、テーパ状をなしていてもよい。複数の端部52dが画成する複数の第2の孔52hの開口の各々の直径は、複数の第1の孔51hの各々の直径よりも大きくてもよい。複数の端部52dの各々の表面は、被覆層52bから形成されていてもよい。複数の第1の孔51hに進入した電子E又は正イオンCは、複数の第2の孔52hの各々の端部52dに衝突し得る(図3参照)。この実施形態では、端部52dの表面が被覆層52bから形成されているので、端部52dからの電子E(二次電子)の放出が効果的に抑制される。
【0061】
以下、図4を参照して、別の例示的実施形態に係る上部電極14Aについて説明する。図4は、別の例示的実施形態に係る上部電極14Aの部分拡大断面図である。上部電極14Aは、絶縁層52cを含んでいない。上部電極14Aでは、被覆層52bは、本体52aの表面を直接覆っている。
【0062】
図5を参照して、更に別の例示的実施形態に係る上部電極14Bについて説明する。図5は、更に別の例示的実施形態に係る上部電極14Bの部分拡大断面図である。上部電極14Bでは、第1の孔51hの中心線と、第2の孔52hの中心線とは、同一直線上に整列していない。上部電極14Bでは、複数の第2の孔52hは、間隙13sを介して複数の第1の孔51hに連通している。図5に示す例示的実施形態では、一例として、被覆層52bは、本体52aの表面のうち少なくとも、第1の孔51hの第2の部材52側の開口と対面する領域を覆っている。
【0063】
図6を参照して、更に別の例示的実施形態に係る上部電極14Cについて説明する。図6は、更に別の例示的実施形態に係る上部電極14Cの部分拡大断面図である。上部電極14Cでは、第2の部材52は、単一の第2の孔52hを提供している。図6に示されるように、この例示的実施形態では、ガス拡散室13bは、第1の部材51と、第2の部材52との間に画成されている。間隙13sの少なくとも一部は、ガス拡散室13bを構成する。単一の第2の孔52hは、ガス供給口13aを構成する。複数の第1の孔51hは、複数のガス導入口13cを構成する。
【0064】
以上、種々の例示的実施形態について説明してきたが、上述した例示的実施形態に限定されることなく、様々な追加、省略、置換、及び変更がなされてもよい。また、異なる実施形態における要素を組み合わせて他の実施形態を形成することが可能である。
【0065】
以下、プラズマ処理装置1の評価のために行った実験について説明する。なお、本開示は以下に説明する実験により限定されるものではない。
【0066】
実験では、被覆層52bに用いられる材質の二次電子放出係数を評価した。図7は、実験に用いられた実験装置70を示す断面模式図である。実験装置70は、正電極71、負電極72、絶縁ネジ73、及び一対の絶縁板74を備えている。正電極71及び負電極72は、一対の絶縁板74を介してサンプルSを挟持している。絶縁ネジ73は、正電極71と負電極72とを互いに連結している。サンプルSは、本体Sa及び被覆層Sbを含んでいる。本体Saは、酸化アルミニウムによって覆われたアルミニウムの試料である。被覆層Sbは、本体Saの表面を覆っている。
【0067】
実験では、サンプルSとして、以下のサンプル1~5の各々を三つずつ評価した。サンプル1~5それぞれの被覆層Sbは、互いに異なる材料から形成されていた。
<サンプル種類>
サンプル1:被覆層Sbの材質は酸化アルミニウム(Al
サンプル2:被覆層Sbの材質はダイヤモンドライクカーボン(DLC)
サンプル3:被覆層Sbの材質はポリイミド(PI)
サンプル4:被覆層Sbの材質はポリテトラフルオロエチレン(PTFE)
サンプル5:被覆層Sbの材質はペルフルオロアルコキシエチレン(PFA)
【0068】
実験では、正電極71及び負電極72を介してサンプル1~5に直流電圧を印加した。そして、直流電圧を増加させて、サンプル1~5の各々で鉛面放電が発生したときの直流電圧、即ち鉛面放電開始電圧(平均値)を求めた。
【0069】
図8は、実験結果を示すグラフである。図8は、サンプル1~5の各々の鉛面放電開始電圧(平均値)を示している。サンプル1(Al)の鉛面放電開始電圧は、2.40kVであった。サンプル2(DLC)の鉛面放電開始電圧は、3.23kVであった。サンプル3(PI)の鉛面放電開始電圧は、4.03kVであった。サンプル4(PTFE)の鉛面放電開始電圧は、3.53kVであった。サンプル5(PFA)の鉛面放電開始電圧は、3.50kVであった。
【0070】
また、サンプル2(DLC)の鉛面放電開始電圧は、サンプル1(Al)の鉛面放電開始電圧の1.35倍であった。したがって、二次電子放出係数が1より小さい材質によって被覆層Sbが形成されている場合には、異常放電が抑制されることが確認された。サンプル3(PI)、サンプル4(PTFE)、及びサンプル5(PFA)の各々の鉛面放電開始電圧は、何れもサンプル2(DLC)の鉛面放電開始電圧よりも大きかった。したがって、ポリイミド(PI)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、又はペルフルオロアルコキシエチレン(PFA)の各二次電子放出係数は、1より小さいことが確認された。
【0071】
以上の説明から、本開示の種々の実施形態は、説明の目的で本明細書で説明されており、本開示の範囲及び主旨から逸脱することなく種々の変更をなし得ることが、理解されるであろう。したがって、本明細書に開示した種々の実施形態は限定することを意図しておらず、真の範囲と主旨は、添付の特許請求の範囲によって示される。
【符号の説明】
【0072】
1…プラズマ処理装置、10…プラズマ処理チャンバ、10s…プラズマ処理空間、11…基板支持部、13…シャワーヘッド、13a…ガス供給口、13b…ガス拡散室、13c…ガス導入口、13s…間隙、14,14A,14B,14C…上部電極、51…第1の部材、51h…第1の孔、52…第2の部材、52a…本体、52b…被覆層、52c…絶縁層、52d…端部、52f…流路、52h…第2の孔、53…導電部材。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8