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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023087396
(43)【公開日】2023-06-23
(54)【発明の名称】プラズマ処理装置及び電位制御方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/3065 20060101AFI20230616BHJP
   H05H 1/46 20060101ALN20230616BHJP
【FI】
H01L21/302 101G
H01L21/302 101C
H05H1/46 L
H05H1/46 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】19
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021201751
(22)【出願日】2021-12-13
(71)【出願人】
【識別番号】000219967
【氏名又は名称】東京エレクトロン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】石川 真矢
(72)【発明者】
【氏名】針生 大輝
【テーマコード(参考)】
2G084
5F004
【Fターム(参考)】
2G084AA02
2G084CC12
2G084CC13
2G084CC14
2G084CC33
2G084DD03
2G084DD13
2G084DD37
2G084DD38
2G084DD55
5F004AA16
5F004BA20
5F004BB13
5F004BB22
5F004BB25
5F004BB26
5F004CA04
5F004CA06
(57)【要約】
【課題】基板側とエッジリング側とで電位を独立して制御できること。
【解決手段】プラズマ処理装置は、チャンバと、電気バイアスを発生するバイアス電源と、チャンバ内で基板及びエッジリングを支持する基板支持器であって、基板を保持する第1の領域と、第1の領域を囲むように設けられておりエッジリングを保持する第2の領域と、電気バイアスを受けるために第1の領域内に設けられた第1のバイアス電極と、第1の領域内に設けられ接地される第1のインピーダンス調整電極と、電気バイアスを受けるために第2の領域内に設けられた第2のバイアス電極と、第2の領域内に設けられ接地される第2のインピーダンス調整電極とを有する基板支持器と、第1のインピーダンス調整電極と第2のインピーダンス調整電極との少なくとも一方に接続されるインピーダンス調整機構と、バイアス電源と第1のバイアス電極と第2のバイアス電極とを接続する電気的パスとを備える。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
チャンバと、
電気バイアスを発生するように構成されたバイアス電源と、
前記チャンバ内で基板及びエッジリングを支持するように構成された基板支持器であって、
前記基板を保持するように構成された第1の領域と、
前記第1の領域を囲むように設けられており、前記エッジリングを保持するように構成された第2の領域と、
前記電気バイアスを受けるために前記第1の領域内に設けられた第1のバイアス電極と、
前記第1の領域内に設けられ接地される第1のインピーダンス調整電極と、
前記電気バイアスを受けるために前記第2の領域内に設けられた第2のバイアス電極と、
前記第2の領域内に設けられ接地される第2のインピーダンス調整電極と、
を有する前記基板支持器と、
前記第1のインピーダンス調整電極と、前記第2のインピーダンス調整電極との少なくとも一方に接続されるインピーダンス調整機構と、
前記バイアス電源と、前記第1のバイアス電極と、前記第2のバイアス電極とを接続する電気的パスと、
を備えるプラズマ処理装置。
【請求項2】
前記第1のバイアス電極と、前記第1のインピーダンス調整電極とは、平行になるように配置される、
請求項1に記載のプラズマ処理装置。
【請求項3】
前記第2のバイアス電極と、前記第2のインピーダンス調整電極とは、平行になるように配置される、
請求項1又は2に記載のプラズマ処理装置。
【請求項4】
前記第1のインピーダンス調整電極は、前記第1のバイアス電極よりも前記基板を保持する面側に配置される、
請求項1~3のいずれか1つに記載のプラズマ処理装置。
【請求項5】
前記第2のインピーダンス調整電極は、前記第2のバイアス電極よりも前記エッジリングを保持する面側に配置される、
請求項1~4のいずれか1つに記載のプラズマ処理装置。
【請求項6】
前記電気バイアスは、高周波である、
請求項1~5のいずれか1つに記載のプラズマ処理装置。
【請求項7】
前記電気バイアスは、パルス波である、
請求項1~5のいずれか1つに記載のプラズマ処理装置。
【請求項8】
前記インピーダンス調整機構は、可変抵抗、可変コンデンサ及び可変インダクタのうち、少なくとも1つによって構成される、
請求項1~7のいずれか1つに記載のプラズマ処理装置。
【請求項9】
前記インピーダンス調整機構は、可変抵抗、可変コンデンサ、可変インダクタ及び直流電源のうち、少なくとも1つによって構成される、
請求項1~7のいずれか1つに記載のプラズマ処理装置。
【請求項10】
前記第1のインピーダンス調整電極及び前記第2のインピーダンス調整電極は、前記インピーダンス調整機構が接続されない場合、所定値のインピーダンスを介して接地されるか、又は、接地されない、
請求項1~9のいずれか1つに記載のプラズマ処理装置。
【請求項11】
前記第1のインピーダンス調整電極及び前記第2のインピーダンス調整電極は、前記基板及び前記エッジリングを、前記第1の領域及び前記第2の領域にそれぞれ静電吸着するための吸着電極としても機能する、
請求項1~10のいずれか1つに記載のプラズマ処理装置。
【請求項12】
前記第1のインピーダンス調整電極及び前記第2のインピーダンス調整電極のうち少なくとも一方は、複数の領域に分割されており、前記複数の領域それぞれを独立してインピーダンスの調整が可能である、
請求項1~11のいずれか1つに記載のプラズマ処理装置。
【請求項13】
前記電気的パスは、前記バイアス電源が前記基板支持器の基台に接続され、前記基台に前記第1のバイアス電極及び前記第2のバイアス電極が接続される、
請求項1~12のいずれか1つに記載のプラズマ処理装置。
【請求項14】
前記電気的パスは、前記バイアス電源が前記基板支持器の基台に接続されず、前記バイアス電源と、前記第1のバイアス電極及び前記第2のバイアス電極とが直接接続される、
請求項1~12のいずれか1つに記載のプラズマ処理装置。
【請求項15】
前記電気的パスは、前記バイアス電源が前記基板支持器の基台に接続され、前記基台と、前記第1のバイアス電極及び前記第2のバイアス電極との間が、磁界共鳴、電界共鳴、容量結合又は誘導結合で接続される、
請求項1~12のいずれか1つに記載のプラズマ処理装置。
【請求項16】
前記バイアス電源は、少なくとも第1のバイアス電源と、第2のバイアス電源とを含み、
前記電気的パスは、前記第1のバイアス電源と、前記第1のバイアス電極及び前記第2のバイアス電極のうち、少なくとも1つとを接続する第1の電気的パス、並びに、前記第2のバイアス電源と、前記第1のバイアス電極及び前記第2のバイアス電極のうち、少なくとも1つとを接続する第2の電気的パスを含む、
請求項1~15のいずれか1つに記載のプラズマ処理装置。
【請求項17】
プラズマ処理装置における電位制御方法であって、
前記プラズマ処理装置は、
チャンバと、
電気バイアスを発生するように構成されたバイアス電源と、
前記チャンバ内で基板及びエッジリングを支持するように構成された基板支持器であって、
前記基板を保持するように構成された第1の領域と、
前記第1の領域を囲むように設けられており、前記エッジリングを保持するように構成された第2の領域と、
前記電気バイアスを受けるために前記第1の領域内に設けられた第1のバイアス電極と、
前記第1の領域内に設けられ接地される第1のインピーダンス調整電極と、
前記電気バイアスを受けるために前記第2の領域内に設けられた第2のバイアス電極と、
前記第2の領域内に設けられ接地される第2のインピーダンス調整電極と、
を有する前記基板支持器と、
前記第1のインピーダンス調整電極と、前記第2のインピーダンス調整電極との少なくとも一方に接続されるインピーダンス調整機構と、
前記バイアス電源と、前記第1のバイアス電極と、前記第2のバイアス電極とを接続する電気的パスと、
を備え、
前記インピーダンス調整機構によって、前記第1のインピーダンス調整電極と、前記第2のインピーダンス調整電極との少なくとも一方の電位を制御することで、前記基板と前記エッジリングとの少なくとも一方の電位を制御する工程、を有する、
電位制御方法。
【請求項18】
前記電位を制御する工程は、前記第1のバイアス電極と前記第1のインピーダンス調整電極との間のインピーダンスよりも、前記第1のインピーダンス調整電極と接地との間のインピーダンスが大きくなるように、前記インピーダンス調整機構のインピーダンスを制御することで、前記第1のインピーダンス調整電極の電位を制御する、
請求項17に記載の電位制御方法。
【請求項19】
前記電位を制御する工程は、前記第2のバイアス電極と前記第2のインピーダンス調整電極との間のインピーダンスよりも、前記第2のインピーダンス調整電極と接地との間のインピーダンスが大きくなるように、前記インピーダンス調整機構のインピーダンスを制御することで、前記第2のインピーダンス調整電極の電位を制御する、
請求項17又は18に記載の電位制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、プラズマ処理装置及び電位制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
プラズマ処理装置では、基板(以下、ウエハともいう。)とエッジリングとの電位差によってプラズマシースの厚みが異なる場合がある。このため、電界の向きが基板と垂直にならずにイオンの軌道が傾き、エッチングホールが斜めに傾くチルティングが発生する。また、エッジリングが侵食された場合に、エッジリングの下に配置された輪状電極に接続された可変コンデンサを調整することで、エッジリングでのRF(Radio Frequency)電圧を増加させることが提案されている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2017-130659号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本開示は、基板側とエッジリング側とで電位を独立して制御できるプラズマ処理装置及び電位制御方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の一態様によるプラズマ処理装置は、チャンバと、電気バイアスを発生するように構成されたバイアス電源と、チャンバ内で基板及びエッジリングを支持するように構成された基板支持器であって、基板を保持するように構成された第1の領域と、第1の領域を囲むように設けられており、エッジリングを保持するように構成された第2の領域と、電気バイアスを受けるために第1の領域内に設けられた第1のバイアス電極と、第1の領域内に設けられ接地される第1のインピーダンス調整電極と、電気バイアスを受けるために第2の領域内に設けられた第2のバイアス電極と、第2の領域内に設けられ接地される第2のインピーダンス調整電極と、を有する基板支持器と、第1のインピーダンス調整電極と、第2のインピーダンス調整電極との少なくとも一方に接続されるインピーダンス調整機構と、バイアス電源と、第1のバイアス電極と、第2のバイアス電極とを接続する電気的パスと、を備える。
【発明の効果】
【0006】
本開示によれば、基板側とエッジリング側とで電位を独立して制御できる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1図1は、本開示の一実施形態におけるプラズマ処理装置の一例を示す図である。
図2図2は、本実施形態における電極の構成の一例を示す図である。
図3図3は、本実施形態における静電チャック及びプラズマの等価回路の一例を示す図である。
図4図4は、本実施形態におけるインピーダンス調整機構の回路構成の一例を示す図である。
図5図5は、エッジリングの電位制御の実験結果の一例を示す図である。
図6図6は、エッジリングの電位制御の実験結果の一例を示す図である。
図7図7は、エッジリングの電位制御の実験結果の一例を示す図である。
図8図8は、変形例1におけるインピーダンス調整機構の接続の一例を示す図である。
図9図9は、変形例2におけるインピーダンス調整機構の接続の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下に、開示するプラズマ処理装置及び電位制御方法の実施形態について、図面に基づいて詳細に説明する。なお、以下の実施形態により開示技術が限定されるものではない。
【0009】
チルティングの抑制のためには、エッジリングの駆動やエッジリングへのDC(Direct Current)印加が考えられるが、これらは機械的な動作を行うパーツやDCを印加するためのハウジングが必要になる。このため、プラズマ処理装置内部の空間の占有率増加や設計コストの増大等が問題となる。また、チルティングは、ウエハとエッジリングとの電位差だけでなく、基板支持部の電極やセラミック板の微妙な厚みの違いにより発生する電位差による、ウエハ全面で半径方向や周方向にプラズマシースの位置依存性が現れるグローバルチルティングも問題となる。そこで、ウエハ(基板)側とエッジリング側とで電位を独立して制御することが期待されている。
【0010】
[プラズマ処理装置1の構成]
以下に、プラズマ処理装置1の一例としての誘導結合プラズマ処理装置の構成例について説明する。図1は、本開示の一実施形態におけるプラズマ処理装置の一例を示す図である。図1に示すように、誘導結合プラズマ処理装置1は、ICP(Inductively Coupled Plasma)方式のプラズマ処理装置であり、プラズマ処理チャンバ10、ガス供給部20、電源30及び排気システム40を含む。プラズマ処理チャンバ10は、誘電体窓101を含む。また、プラズマ処理装置1は、基板支持部11、ガス導入部及びアンテナ14を含む。基板支持部11は、基板支持器の一例であり、プラズマ処理チャンバ10内に配置される。アンテナ14は、プラズマ処理チャンバ10上又はその上方(すなわち誘電体窓101上又はその上方)に配置される。プラズマ処理チャンバ10は、誘電体窓101、プラズマ処理チャンバ10の側壁102及び基板支持部11により規定されたプラズマ処理空間10sを有する。
【0011】
基板支持部11は、本体部111及びリングアセンブリ112を含む。本体部111は、基板(ウエハ)Wを支持するための中央領域(基板支持面)111aと、リングアセンブリ112を支持するための環状領域(リング支持面)111bとを有する。本体部111の環状領域111bは、平面視で本体部111の中央領域111aを囲んでいる。基板Wは、本体部111の中央領域111a上に配置され、リングアセンブリ112は、本体部111の中央領域111a上の基板Wを囲むように本体部111の環状領域111b上に配置される。中央領域111aは、第1の領域の領域の一例であり、環状領域111bは、第2の領域の一例である。
【0012】
一実施形態において、本体部111は、基台111c及び静電チャック111dを含む。基台111cは、導電性部材を含む。基台111cの導電性部材は後述する第1のバイアス電極33及び第2のバイアス電極34と接続される電気的パス35の一部として機能する。静電チャック111dは、基台111cの上に配置される。静電チャック111dは、図示しない吸着電極を有する。静電チャック111dの上面は、基板支持面111aを有する。リングアセンブリ112は、1又は複数の環状部材を含む。1又は複数の環状部材のうち少なくとも1つはエッジリングである。また、図示は省略するが、基板支持部11は、静電チャック111d、リングアセンブリ112及び基板Wのうち少なくとも1つをターゲット温度に調節するように構成される温調モジュールを含んでもよい。温調モジュールは、ヒータ、伝熱媒体、流路、又はこれらの組み合わせを含んでもよい。流路には、ブラインやガスのような伝熱流体が流れる。また、基板支持部11は、基板Wの裏面と基板支持面111aとの間に伝熱ガスを供給するように構成された伝熱ガス供給部を含んでもよい。
【0013】
静電チャック111dは、基板支持面111aの下部において、基板支持面111a側から順に、第1のインピーダンス調整電極50と第1のバイアス電極33とを内部に備え、誘電体、例えばセラミックスで形成される。また、静電チャック111dは、リング支持面111bの下部において、リング支持面111b側から順に、第2のインピーダンス調整電極51と第2のバイアス電極34とを内部に備える。第1のバイアス電極33及び第2のバイアス電極34は、基台111cと導電性部材で接続され、電気的パス35が形成される。なお、第1のバイアス電極33及び第2のバイアス電極34と、基台111cとの接続は、導電性部材に限定されず、例えば、磁気共鳴、電界共鳴、容量結合及び誘導結合等のバイアスRF信号を供給可能な手法であればよい。また、電気的パス35は、後述する第2のRF生成部31bが基台111cに接続されず、第2のRF生成部31bと、第1のバイアス電極33及び第2のバイアス電極34とが直接接続されるようにしてもよい。
【0014】
第1のインピーダンス調整電極50は、インピーダンス調整機構52を介して接地される。インピーダンス調整機構52は、第1のバイアス電極33から供給されるRF信号(電気バイアス)の一部についてグランドに流す量を調整する。第1のインピーダンス調整電極50によって、RF信号のうちグランドに流す量を調整することで、基板Wの電位を調整し、チルト角を制御したり、エッチングレートの調整に利用する。なお、第1のインピーダンス調整電極50は、第1のバイアス電極33と平行になるように配置される。
【0015】
第2のインピーダンス調整電極51は、インピーダンス調整機構53を介して接地される。インピーダンス調整機構53は、第2のバイアス電極34から供給されるRF信号(電気バイアス)の一部についてグランドに流す量を調整する。第2のインピーダンス調整電極51によって、RF信号のうちグランドに流す量を調整することで、リングアセンブリ112の電位を調整し、チルト角を制御したり、エッチングレートの調整に利用する。なお、第2のインピーダンス調整電極51は、第2のバイアス電極34と平行になるように配置される。
【0016】
第1のバイアス電極33及び第2のバイアス電極34は、基板W及びリングアセンブリ112に可能な限り近付けることで、基板W及びリングアセンブリ112と静電チャック111dのセラミックスと当該電極とで構成されるコンデンサのインピーダンスを小さくする。これにより、第1のバイアス電極33及び第2のバイアス電極34と、基板W及びリングアセンブリ112との間の電位差を小さくする。同様に、第1のバイアス電極33及び第2のバイアス電極34と、第1のインピーダンス調整電極50及び第2のインピーダンス調整電極51とで構成されるコンデンサのインピーダンスも小さくなる。また、第1のインピーダンス調整電極50及び第2のインピーダンス調整電極51と、基板W及びリングアセンブリ112とで構成されるコンデンサのインピーダンスも小さくなる。
【0017】
なお、インピーダンス調整機構52,53は、少なくとも一方を設けるようにしてもよいし、両方を設けるようにしてもよい。インピーダンス調整機構52,53のうち一方を設けない場合、設けない側の第1のインピーダンス調整電極50又は第2のインピーダンス調整電極51は、所定値のインピーダンスを介してグランドに接続されるか、又は、グランドに接続されず、フロート状態となる。
【0018】
ガス導入部は、ガス供給部20からの少なくとも1つの処理ガスをプラズマ処理空間10s内に導入するように構成される。一実施形態において、ガス導入部は、中央ガス注入部(CGI:Center Gas Injector)13を含む。中央ガス注入部13は、基板支持部11の上方に配置され、誘電体窓101に形成された中央開口部に取り付けられる。中央ガス注入部13は、少なくとも1つのガス供給口13a、少なくとも1つのガス流路13b、及び少なくとも1つのガス導入口13cを有する。ガス供給口13aに供給された処理ガスは、ガス流路13bを通過してガス導入口13cからプラズマ処理空間10s内に導入される。なお、ガス導入部は、中央ガス注入部13に加えて又はその代わりに、側壁102に形成された1又は複数の開口部に取り付けられる1又は複数のサイドガス注入部(SGI:Side Gas Injector)を含んでもよい。
【0019】
ガス供給部20は、少なくとも1つのガスソース21及び少なくとも1つの流量制御器22を含んでもよい。一実施形態において、ガス供給部20は、少なくとも1つの処理ガスを、それぞれに対応のガスソース21からそれぞれに対応の流量制御器22を介してガス導入部に供給するように構成される。各流量制御器22は、例えばマスフローコントローラ又は圧力制御式の流量制御器を含んでもよい。さらに、ガス供給部20は、少なくとも1つの処理ガスの流量を変調又はパルス化する少なくとも1つの流量変調デバイスを含んでもよい。
【0020】
電源30は、少なくとも1つのインピーダンス整合回路を介してプラズマ処理チャンバ10に結合されるRF電源31を含む。RF電源31は、ソースRF信号及びバイアスRF信号のような少なくとも1つのRF信号(RF電力)を、基板支持部11の導電性部材及びアンテナ14に供給するように構成される。これにより、プラズマ処理空間10sに供給された少なくとも1つの処理ガスからプラズマが形成される。従って、RF電源31は、プラズマ生成部の少なくとも一部として機能し得る。また、バイアスRF信号を基板支持部11の導電性部材に供給することにより、基板Wにバイアス電位が発生し、形成されたプラズマ中のイオンを基板Wに引き込むことができる。
【0021】
一実施形態において、RF電源31は、第1のRF生成部31a及び第2のRF生成部31bを含む。第1のRF生成部31aは、少なくとも1つのインピーダンス整合回路を介してアンテナ14に結合され、プラズマ生成用のソースRF信号(ソースRF電力)を生成するように構成される。一実施形態において、ソースRF信号は、13MHz~150MHzの範囲内の周波数を有する。一実施形態において、第1のRF生成部31aは、異なる周波数を有する複数のソースRF信号を生成するように構成されてもよい。生成された1又は複数のソースRF信号は、アンテナ14に供給される。第2のRF生成部31bは、少なくとも1つのインピーダンス整合回路を介して基板支持部11の導電性部材に結合され、バイアスRF信号(バイアスRF電力)を生成するように構成される。一実施形態において、バイアスRF信号は、ソースRF信号よりも低い周波数を有する。一実施形態において、バイアスRF信号は、400kHz~13.56MHzの範囲内の周波数を有する。一実施形態において、第2のRF生成部31bは、異なる周波数を有する複数のバイアスRF信号を生成するように構成されてもよい。生成された1又は複数のバイアスRF信号は、基板支持部11の基台111cを介して、第1のバイアス電極33及び第2のバイアス電極34に供給される。また、種々の実施形態において、ソースRF信号及びバイアスRF信号のうち少なくとも1つがパルス化されてもよい。
【0022】
また、電源30は、プラズマ処理チャンバ10に結合されるDC電源32を含んでもよい。DC電源32は、バイアスDC生成部32aを含む。一実施形態において、バイアスDC生成部32aは、基板支持部11の導電性部材に接続され、バイアスDC信号を生成するように構成される。生成されたバイアスDC信号は、基板支持部11の基台111cを介して、第1のバイアス電極33及び第2のバイアス電極34に印加される。一実施形態において、バイアスDC信号が、基台111cに印加されてもよい。
【0023】
種々の実施形態において、バイアスDC信号は、パルス化されてもよい。この場合、電圧パルスのシーケンスが少なくとも1つのバイアス電極に印加される。電圧パルスは、矩形、台形、三角形又はこれらの組み合わせのパルス波形を有してもよい。一実施形態において、DC信号から電圧パルスのシーケンスを生成するための波形生成部がバイアスDC生成部32aと少なくとも1つのバイアス電極との間に接続される。従って、バイアスDC生成部32a及び波形生成部は、電圧パルス生成部を構成する。電圧パルスは、正の極性を有してもよく、負の極性を有してもよい。また、電圧パルスのシーケンスは、1周期内に1又は複数の正極性電圧パルスと1又は複数の負極性電圧パルスとを含んでもよい。なお、バイアスDC生成部32aは、RF電源31に加えて設けられてもよく、第2のRF生成部31bに代えて設けられてもよい。
【0024】
アンテナ14は、1又は複数のコイルを含む。一実施形態において、アンテナ14は、同軸上に配置された外側コイル及び内側コイルを含んでもよい。この場合、RF電源31は、外側コイル及び内側コイルの双方に接続されてもよく、外側コイル及び内側コイルのうちいずれか一方に接続されてもよい。前者の場合、同一のRF生成部が外側コイル及び内側コイルの双方に接続されてもよく、別個のRF生成部が外側コイル及び内側コイルに別々に接続されてもよい。
【0025】
排気システム40は、例えばプラズマ処理チャンバ10の底部に設けられたガス排出口10eに接続され得る。排気システム40は、圧力調整弁及び真空ポンプを含んでもよい。圧力調整弁によって、プラズマ処理空間10s内の圧力が調整される。真空ポンプは、ターボ分子ポンプ、ドライポンプ又はこれらの組み合わせを含んでもよい。
【0026】
[基板支持部11上の電位]
次に、図2を用いて基板支持部11上の電位について説明する。図2は、本実施形態における電極の構成の一例を示す図である。なお、図2では、第1のバイアス電極33及び第2のバイアス電極34には、第2のRF生成部31bから基台111c及び導電性部材による電気的パス35を介してバイアスRF信号が供給されるものとする。
【0027】
図2に示すように、基板支持面111aでは、その下部に配置される第1のバイアス電極33から供給されるバイアスRF信号が、第1のインピーダンス調整電極50及び基板Wを介してプラズマに供給されるRF信号60と、第1のインピーダンス調整電極50からインピーダンス調整機構52を介してグランドに流れるRF信号62とに分かれる。また、リング支持面111bでは、その下部に配置される第2のバイアス電極34から供給されるバイアスRF信号が、第2のインピーダンス調整電極51及びリングアセンブリ112を介してプラズマに供給されるRF信号61と、第2のインピーダンス調整電極51からインピーダンス調整機構53を介してグランドに流れるRF信号63とに分かれる。
【0028】
このとき、基板Wの上部において所定の電位をイメージする線である電位64と、リングアセンブリ112の上部において所定の電位をイメージする線である電位65とは、例えば図2に示すように、異なる高さであったとする。この場合、例えばインピーダンス調整機構53を調整することで、電位65の高さを範囲66内で調整する。これにより、電位64と電位65との比で電界の向き67に対応するチルト角を制御することができる。なお、図2では、説明のために電界の向き67の角度を強調して表している。また、本実施形態では、第1のインピーダンス調整電極50及び第2のインピーダンス調整電極51を静電チャック111dに埋め込むので、プラズマ処理装置1の構造をコンパクトにすることができる。
【0029】
次に、図3を用いてバイアスRF信号が流れる回路の等価回路について説明する。図3は、本実施形態における静電チャック及びプラズマの等価回路の一例を示す図である。図3では、第1のバイアス電極33及び第2のバイアス電極34に供給されるバイアスRF信号をVRFと表している。また、第1のバイアス電極33及び第2のバイアス電極34と、第1のインピーダンス調整電極50及び第2のインピーダンス調整電極51との間のインピーダンスをZと表している。また、第1のインピーダンス調整電極50及び第2のインピーダンス調整電極51と、基板W及びリングアセンブリ112との間のインピーダンスをZと表し、第1のインピーダンス調整電極50及び第2のインピーダンス調整電極51と、接地(グランド)との間のインピーダンス調整機構52,53のインピーダンスをZと表している。また、基板W及びリングアセンブリ112と接地との間のプラズマのインピーダンスをZと表している。
【0030】
ここで、Zにかかる電圧Vと、Zにかかる電圧Vwaferは、それぞれ下記の式(1)、式(2)で表すことができる。なお、式(1)~(4)では、VRFをVと表している。
【0031】
【数1】

【数2】
【0032】
式(1)を式(2)に代入すると、Zにかかる電圧Vwaferは、下記の式(3)で表すことができる。また、式(3)の分数の項をそれぞれZ、Zで除算すると、下記の式(4)となる。
【0033】
【数3】

【数4】
【0034】
式(4)の分数の項は、f(x)=1/(x+1)の形式となっており、f(x)は、xが小さいほど1に近づく関数である。従って、式(4)より、ZがZに対して小さいほどプラズマに電位が伝わる効率が上がることになる。また、ZがZに対して小さいほどプラズマに電位が伝わる効率が上がることになる。Zを小さくするには、第1のインピーダンス調整電極50及び第2のインピーダンス調整電極51と、基板W及びリングアセンブリ112とをなるべく近づけることが好ましい。同様に、Zを小さくするには、第1のバイアス電極33及び第2のバイアス電極34と、第1のインピーダンス調整電極50及び第2のインピーダンス調整電極51とをなるべく近づけることが好ましい。このように、第1のバイアス電極33及び第2のバイアス電極34、第1のインピーダンス調整電極50及び第2のインピーダンス調整電極51、並びに、基板W及びリングアセンブリ112をなるべく近づけることで、電位制御の感度を上げることができる。
【0035】
[電位制御方法]
図3に示す等価回路より、プラズマ処理装置1における電位制御方法は、第1のバイアス電極33と第1のインピーダンス調整電極50との間のインピーダンスZよりも、第1のインピーダンス調整電極50と接地との間のインピーダンスZが大きくなるように、インピーダンス調整機構52のインピーダンスZを制御することで、第1のインピーダンス調整電極50の電位を制御する。
【0036】
また、プラズマ処理装置1における電位制御方法は、第2のバイアス電極34と第2のインピーダンス調整電極51との間のインピーダンスZよりも、第2のインピーダンス調整電極51と接地との間のインピーダンスZが大きくなるように、インピーダンス調整機構53のインピーダンスZを制御することで、第2のインピーダンス調整電極51の電位を制御する。
【0037】
[インピーダンス調整機構の回路構成]
続いて、図4を用いてインピーダンス調整機構52,53における回路構成のバリエーションについて説明する。図4は、本実施形態におけるインピーダンス調整機構の回路構成の一例を示す図である。図4に示すように、インピーダンス調整機構52,53は、回路70~74といった各種の構成が考えられる。回路70は、インダクタと可変コンデンサとを用いたLC直列回路である。回路71は、抵抗と可変コンデンサとを用いたRC直列回路である。回路72は、抵抗と可変抵抗とを用いたRR直列回路である。回路73は、高周波用のLC直列回路と、低周波用のRR直列回路とをスイッチSWで切替可能とした回路である。回路74は、高効率用のLC直列回路と、低効率用のLC直列回路とをスイッチSWで切替可能とした回路である。回路74は、グラフ75に示すように、スイッチSWを切り替えることで、調整範囲のワイドレンジ化を行ったものである。なお、図4において例示はしていないが、インピーダンス調整機構52,53は、可変インダクタを用いた回路構成としてもよい。
【0038】
このように、インピーダンス調整機構52,53では、調整する回路定数の種類(R,L,C)は問わず、可変抵抗、可変コンデンサ、可変インダクタ等を用いることができる。また、インピーダンス調整機構52,53は、バイアスRF信号の周波数、パーツサイズ及び調整範囲に合わせて、1つ以上の可変機構(可変抵抗、可変コンデンサ、可変インダクタ等)を組合せてもよい。なお、インピーダンス調整機構52,53は、ヒータ電流を通す必要がないので、可変抵抗や可変コンデンサを用いることができる。さらに、インピーダンス調整機構52,53は、可変抵抗、可変コンデンサ、可変インダクタ及び直流電源のうち、少なくとも1つによって構成されるようにしてもよい。例えば、バイアスRF信号が高周波の場合、上述のZ及びZが小さい値になるので、直流電源を用いて電位を制御することで、より効果的に電位を制御できる。
【0039】
[実験結果]
次に、図5から図7を用いて、第1のバイアス電極33及び第2のバイアス電極34へのバイアスRF信号の供給の有無と、リングアセンブリ112(エッジリング)側のインピーダンス調整機構53による電位制御の可否との関係についての実験結果を説明する。図5から図7は、エッジリングの電位制御の実験結果の一例を示す図である。なお、図5から図7では、基板Wに代えて、導電性部材(例えばアルミニウム)で構成される基板W1を基板支持面111aに載置し、基板W1及びリングアセンブリ112にプラズマを模擬するコンデンサ76を接続して実験を行った。また、インピーダンス調整機構53のインピーダンスを約100Ωから約1000Ωまで変化させた場合における基板W1及びリングアセンブリ112の電位を、それぞれで規格化した場合の基台111cの電位との比率をグラフ77~79で表す。なお、グラフ77~79では、基板W1で規格化した場合のグラフをウエハ規格化と表し、リングアセンブリ112で規格化した場合のグラフをエッジリング規格化と表している。
【0040】
図5は参考例であり、第2のRF生成部31bから供給されるバイアスRF信号が基台111cに供給され、第1のバイアス電極33及び第2のバイアス電極34に供給されない場合である。なお、図5の例では、インピーダンス調整機構53を第2のバイアス電極34に接続して実験を行った。図5の参考例の場合、グラフ77(エッジリング規格化のグラフ)に示すように、インピーダンス調整機構53のインピーダンスの変化にリングアセンブリ112の電位の比率が追従せず、リングアセンブリ112の電位を制御出来ているとは言えない。
【0041】
図6は参考例であり、第1のバイアス電極33が基台111cと接続され、第2のRF生成部31bから供給されるバイアスRF信号が第1のバイアス電極33に供給される場合である。また、第2のバイアス電極34には、バイアスRF信号がされない。なお、図6の例では、インピーダンス調整機構53を第2のバイアス電極34に接続して実験を行った。図6の参考例の場合、グラフ78(エッジリング規格化のグラフ)に示すように、インピーダンス調整機構53のインピーダンスの変化にリングアセンブリ112の電位の比率が追従せず、リングアセンブリ112の電位を制御出来ているとは言えない。
【0042】
図7は実験例であり、第1のバイアス電極33及び第2のバイアス電極34が基台111cと接続され、第2のRF生成部31bから供給されるバイアスRF信号が第1のバイアス電極33及び第2のバイアス電極34に供給される場合である。なお、図7の例では、インピーダンス調整機構53を第2のインピーダンス調整電極51に接続して実験を行った。図7の実験例の場合、グラフ79(エッジリング規格化のグラフ)に示すように、インピーダンス調整機構53のインピーダンスの変化にリングアセンブリ112の電位の比率が追従しており、リングアセンブリ112の電位を制御出来ている。また、図7の実験例では、リングアセンブリ112の電位を60%程度変化させることができた。図5から図7の実験結果より、第1のバイアス電極33及び第2のバイアス電極34と、第2のインピーダンス調整電極51との組合せにより、リングアセンブリ112の電位を独立して制御することができる。つまり、リングアセンブリ112の電位を独立して制御することで、チルティング制御を行うことができる。
【0043】
[変形例1]
上記の実施形態では、図示しない吸着電極を別途設けたが、第1のインピーダンス調整電極50及び第2のインピーダンス調整電極51を吸着電極としても用いてよく、この場合の実施の形態につき、変形例1として説明する。なお、変形例1におけるプラズマ処理装置1の一部の構成は上述の実施形態と同様であるので、その重複する構成及び動作の説明については省略する。
【0044】
図8は、変形例1におけるインピーダンス調整機構の接続の一例を示す図である。図8に示す変形例1では、第2のインピーダンス調整電極51に代えて、複数の第2のインピーダンス調整電極51a,51bを有する。また、変形例1では、第1のインピーダンス調整電極50に静電吸着用の直流電源54が接続され、第2のインピーダンス調整電極51a,51bに、それぞれ静電吸着用の直流電源56a,56bが接続されている。
【0045】
直流電源54は、ローパスフィルタ55を介して、第1のインピーダンス調整電極50とインピーダンス調整機構52とを接続する回路に接続される。直流電源54が直流高電圧HVwaferを第1のインピーダンス調整電極50に印加することで、基板Wが静電チャック111dに吸着される。同様に、直流電源56a,56bは、ローパスフィルタ57a,57bを介して、第2のインピーダンス調整電極51a,51bとインピーダンス調整機構53a,53bとをそれぞれ接続する回路に接続される。直流電源56a,56bが直流高電圧HVERA,HVERBを第2のインピーダンス調整電極51a,51bにそれぞれ印加することで、リングアセンブリ112が静電チャック111dに吸着される。
【0046】
基板Wの電位は、インピーダンス調整機構52を調整することで、上述の実施形態と同様に制御することができる。また、リングアセンブリ112の電位は、インピーダンス調整機構53a,53bを調整することで、上述の実施形態と同様に制御することができる。なお、インピーダンス調整機構53a,53bは、それぞれ独立して制御を行うことで、リングアセンブリ112の内周側と外周側の電位をそれぞれ制御することができる。
【0047】
[変形例2]
上記の実施形態では、第1のインピーダンス調整電極50を1つ設けたが、基板支持面111aを例えば同心円状及び円周方向に複数の領域に分割し、それぞれに対応するインピーダンス調整電極を設けてもよく、この場合の実施の形態につき、変形例2として説明する。なお、変形例2におけるプラズマ処理装置1の一部の構成は上述の実施形態と同様であるので、その重複する構成及び動作の説明については省略する。
【0048】
図9は、変形例2におけるインピーダンス調整機構の接続の一例を示す図である。図9に示す変形例2では、第1のインピーダンス調整電極50に代えて、複数の第1のインピーダンス調整電極50a~50eを有する。また、変形例2では、インピーダンス調整機構52に代えて、複数の第1のインピーダンス調整電極50a~50eにそれぞれ対応するインピーダンス調整機構52a~52eを有する。なお、変形例2では、第2のインピーダンス調整電極51に接続されるインピーダンス調整機構53は省略している。
【0049】
第1のインピーダンス調整電極50cは、例えば、基板支持面111aの中心を含む円形の領域の下部に設けられる。第1のインピーダンス調整電極50b,50dは、第1のインピーダンス調整電極50cを囲む同心円の一部の領域の下部にそれぞれ設けられる。第1のインピーダンス調整電極50a,50eは、第1のインピーダンス調整電極50b,50dを囲む同心円の一部の領域の下部にそれぞれ設けられる。
【0050】
基板Wの上部において所定の電位をイメージする線である電位64a~64eは、インピーダンス調整機構52a~52eをそれぞれ制御することで、独立して制御することができる。つまり、基板W全体で電界の向き68に対応するチルト角を制御することができる。なお、リングアセンブリ112の上部において所定の電位をイメージする線である電位65は、上述の実施形態と同様に、インピーダンス調整機構53で調整することができる。変形例2では、温度感度がない膜についても、基板W上の電位64a~64eを制御することで、エッチングレートの微調整を行うことができる。つまり、温度以外の調整ノブとして作用する。また、基板支持面111aの複数の領域で電位を調整できるので、基板W上のグローバルチルティングを改善することができる。
【0051】
また、上記した実施形態では、電気バイアスとして第2のRF生成部31bからバイアスRF信号を供給する場合について説明したが、これに限定されない。例えば、電気バイアスとしてバイアスDC生成部32aからバイアスDC信号を供給してもよい。この場合、例えば、電気的パス35は、第1のバイアス電源である第2のRF生成部31bと、第1のバイアス電極33及び第2のバイアス電極34のうち、少なくとも1つとを接続する第1の電気的パスを含む。また、例えば、電気的パス35は、第2のバイアス電源であるバイアスDC生成部32aと、第1のバイアス電極33及び第2のバイアス電極34のうち、少なくとも1つとを接続する第2の電気的パスを含む。これにより、第1のバイアス電極33及び第2のバイアス電極34に対して、任意のバイアスRF信号及びバイアスDC信号を供給することができる。
【0052】
以上、本実施形態によれば、プラズマ処理装置1は、チャンバ(プラズマ処理チャンバ10)と、電気バイアスを発生するように構成されたバイアス電源(第2のRF生成部31b、バイアスDC生成部32a)と、チャンバ内で基板W及びエッジリング(リングアセンブリ112)を支持するように構成された基板支持器(基板支持部11)であって、基板Wを保持するように構成された第1の領域(中央領域111a)と、第1の領域を囲むように設けられており、エッジリングを保持するように構成された第2の領域(環状領域111b)と、電気バイアスを受けるために第1の領域内に設けられた第1のバイアス電極33と、第1の領域内に設けられ接地される第1のインピーダンス調整電極50と、電気バイアスを受けるために第2の領域内に設けられた第2のバイアス電極34と、第2の領域内に設けられ接地される第2のインピーダンス調整電極51と、を有する基板支持器と、第1のインピーダンス調整電極50と、第2のインピーダンス調整電極51との少なくとも一方に接続されるインピーダンス調整機構52,53と、バイアス電源と、第1のバイアス電極33と、第2のバイアス電極34とを接続する電気的パス35と、を備える。その結果、基板W側とエッジリング側とで電位を独立して制御できる。
【0053】
また、本実施形態によれば、第1のバイアス電極33と、第1のインピーダンス調整電極50とは、平行になるように配置される。その結果、基板W上の電位を制御することができる。
【0054】
また、本実施形態によれば、第2のバイアス電極34と、第2のインピーダンス調整電極51とは、平行になるように配置される。その結果、エッジリング(リングアセンブリ112)上の電位を制御することができる。
【0055】
また、本実施形態によれば、第1のインピーダンス調整電極50は、第1のバイアス電極33よりも基板Wを保持する面側に配置される。その結果、基板W上の電位を制御することができる。
【0056】
また、本実施形態によれば、第2のインピーダンス調整電極51は、第2のバイアス電極34よりもエッジリングを保持する面側に配置される。その結果、エッジリング上の電位を制御することができる。
【0057】
また、本実施形態によれば、電気バイアスは、高周波である。その結果、基板W側とエッジリング側とで電位を独立して制御できる。
【0058】
また、本実施形態によれば、電気バイアスは、パルス波である。その結果、基板W側とエッジリング側とで電位を独立して制御できる。
【0059】
また、本実施形態によれば、インピーダンス調整機構52,53は、可変抵抗、可変コンデンサ及び可変インダクタのうち、少なくとも1つによって構成される。その結果、基板W上及びエッジリング上の電位を制御できる。
【0060】
また、本実施形態によれば、インピーダンス調整機構52,53は、可変抵抗、可変コンデンサ、可変インダクタ及び直流電源のうち、少なくとも1つによって構成される。その結果、基板W上及びエッジリング上の電位を制御できる。
【0061】
また、本実施形態によれば、第1のインピーダンス調整電極50及び第2のインピーダンス調整電極51は、インピーダンス調整機構52,53が接続されない場合、所定値のインピーダンスを介して接地されるか、又は、接地されない。その結果、その結果、基板W上又はエッジリング上の電位を所定値に制御できる。
【0062】
また、本実施形態によれば、第1のインピーダンス調整電極50及び第2のインピーダンス調整電極51は、基板W及びエッジリングを、第1の領域及び第2の領域にそれぞれ静電吸着するための吸着電極としても機能する。その結果、吸着電極をインピーダンス調整電極として活用することができる。
【0063】
また、本実施形態によれば、第1のインピーダンス調整電極50及び第2のインピーダンス調整電極51のうち少なくとも一方は、複数の領域に分割されており、複数の領域それぞれを独立してインピーダンスの調整が可能である。その結果、より細かく電位を制御することができる。
【0064】
また、本実施形態によれば、電気的パス35は、バイアス電源が基板支持器の基台111cに接続され、基台111cに第1のバイアス電極33及び第2のバイアス電極34が接続される。その結果、バイアスRF信号を効率よく供給することができるとともに、電位を制御することができる。
【0065】
また、本実施形態によれば、電気的パス35は、バイアス電源が基板支持器の基台111cに接続されず、バイアス電源と、第1のバイアス電極33及び第2のバイアス電極34とが直接接続される。その結果、バイアスRF信号を効率よく供給することができるとともに、電位を制御することができる。
【0066】
また、本実施形態によれば、電気的パス35は、バイアス電源が基板支持器の基台111cに接続され、基台111cと、第1のバイアス電極33及び第2のバイアス電極34との間が、磁界共鳴、電界共鳴、容量結合又は誘導結合で接続される。その結果、バイアスRF信号を効率よく供給することができるとともに、電位を制御することができる。
【0067】
また、本実施形態によれば、バイアス電源(第2のRF生成部31b、バイアスDC生成部32a)は、少なくとも第1のバイアス電源(第2のRF生成部31b)と、第2のバイアス電源(バイアスDC生成部32a)とを含み、電気的パスは、第1のバイアス電源と、第1のバイアス電極33及び第2のバイアス電極34のうち、少なくとも1つとを接続する第1の電気的パス、並びに、第2のバイアス電源と、第1のバイアス電極33及び第2のバイアス電極34のうち、少なくとも1つとを接続する第2の電気的パスを含む。その結果、バイアスRF信号及びバイアスDC信号を供給することができるとともに、電位を制御することができる。
【0068】
また、本実施形態によれば、プラズマ処理装置1における電位制御方法であって、プラズマ処理装置1は、チャンバと、電気バイアスを発生するように構成されたバイアス電源と、チャンバ内で基板W及びエッジリングを支持するように構成された基板支持器であって、基板Wを保持するように構成された第1の領域と、第1の領域を囲むように設けられており、エッジリングを保持するように構成された第2の領域と、電気バイアスを受けるために第1の領域内に設けられた第1のバイアス電極33と、第1の領域内に設けられ接地される第1のインピーダンス調整電極50と、電気バイアスを受けるために第2の領域内に設けられた第2のバイアス電極34と、第2の領域内に設けられ接地される第2のインピーダンス調整電極51と、を有する基板支持器と、第1のインピーダンス調整電極50と、第2のインピーダンス調整電極51との少なくとも一方に接続されるインピーダンス調整機構52,53と、バイアス電源と、第1のバイアス電極33と、第2のバイアス電極34とを接続する電気的パス35と、を備え、電位制御方法は、インピーダンス調整機構52,53によって、第1のインピーダンス調整電極50と、第2のインピーダンス調整電極51との少なくとも一方の電位を制御することで、基板Wとエッジリングとの少なくとも一方の電位を制御する工程、を有する。その結果、基板W側とエッジリング側とで電位を独立して制御できる。
【0069】
また、本実施形態によれば、電位を制御する工程は、第1のバイアス電極33と第1のインピーダンス調整電極50との間のインピーダンスよりも、第1のインピーダンス調整電極50と接地との間のインピーダンスが大きくなるように、インピーダンス調整機構52のインピーダンスを制御することで、第1のインピーダンス調整電極50の電位を制御する。その結果、基板W上の電位を制御することができる。
【0070】
また、本実施形態によれば、電位を制御する工程は、第2のバイアス電極34と第2のインピーダンス調整電極51との間のインピーダンスよりも、第2のインピーダンス調整電極51と接地との間のインピーダンスが大きくなるように、インピーダンス調整機構53のインピーダンスを制御することで、第2のインピーダンス調整電極51の電位を制御する。その結果、エッジリング上の電位を制御することができる。
【0071】
今回開示された実施形態は、すべての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきである。上記の実施形態は、添付の請求の範囲及びその主旨を逸脱することなく、様々な形体で省略、置換、変更されてもよい。
【0072】
また、上記した実施形態では、プラズマ源として誘導結合型プラズマを用いて基板Wに対してエッチング等の処理を行うプラズマ処理装置1を例に説明したが、開示の技術はこれに限られない。プラズマを用いて基板Wに対して処理を行う装置であれば、プラズマ源は誘導結合プラズマに限られず、例えば、容量結合プラズマ、マイクロ波プラズマ、マグネトロンプラズマ等、任意のプラズマ源を用いることができる。
【符号の説明】
【0073】
1 プラズマ処理装置
10 プラズマ処理チャンバ
11 基板支持部
31a 第1のRF生成部
31b 第2のRF生成部
33 第1のバイアス電極
34 第2のバイアス電極
35 電気的パス
50,50a~50e 第1のインピーダンス調整電極
51,51a,51b 第2のインピーダンス調整電極
52,52a~52e,53,53a,53b インピーダンス調整機構
54,56a,56b 直流電源
55,57a,57b ローパスフィルタ
111 本体部
111a 中央領域
111b 環状領域
111c 基台
111d 静電チャック
112 リングアセンブリ
W 基板
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9