IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 国立大学法人 東京大学の特許一覧 ▶ 株式会社フジタの特許一覧

特開2023-87448走破性判定装置及び走破性判定システム
<>
  • 特開-走破性判定装置及び走破性判定システム 図1
  • 特開-走破性判定装置及び走破性判定システム 図2
  • 特開-走破性判定装置及び走破性判定システム 図3
  • 特開-走破性判定装置及び走破性判定システム 図4
  • 特開-走破性判定装置及び走破性判定システム 図5
  • 特開-走破性判定装置及び走破性判定システム 図6
  • 特開-走破性判定装置及び走破性判定システム 図7
  • 特開-走破性判定装置及び走破性判定システム 図8
  • 特開-走破性判定装置及び走破性判定システム 図9
  • 特開-走破性判定装置及び走破性判定システム 図10
  • 特開-走破性判定装置及び走破性判定システム 図11
  • 特開-走破性判定装置及び走破性判定システム 図12
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023087448
(43)【公開日】2023-06-23
(54)【発明の名称】走破性判定装置及び走破性判定システム
(51)【国際特許分類】
   G01M 17/007 20060101AFI20230616BHJP
【FI】
G01M17/007 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021201835
(22)【出願日】2021-12-13
(71)【出願人】
【識別番号】504137912
【氏名又は名称】国立大学法人 東京大学
(71)【出願人】
【識別番号】302060926
【氏名又は名称】株式会社フジタ
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】千葉 拓史
(72)【発明者】
【氏名】日浦 愛子
(72)【発明者】
【氏名】筑紫 彰太
(72)【発明者】
【氏名】淺間 一
(72)【発明者】
【氏名】山下 淳
(72)【発明者】
【氏名】永谷 圭司
(72)【発明者】
【氏名】ルイ笠原 純ユネス
(57)【要約】
【課題】迅速に走行面の走破性を判定する。
【解決手段】評価対象走行面を走行した試験車両が測定した測定データを取得する情報取得部と、試験車両で種々の走行面を走行して取得した測定データを機械学習し、測定データに基づいて走行面の走破性を判定する判定プログラムを記憶する記憶部と、記憶部で記憶した判定プログラムに基づいて判定対象の測定データを処理して、評価対象走行面の走破性を判定する演算部と、を備え、測定データは、試験車両が評価対象走行面した際の鉛直方向の振動のデータを含む。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
評価対象走行面を走行した試験車両が測定した測定データを取得する情報取得部と、
試験車両で種々の走行面を走行して取得した測定データを機械学習し、測定データに基づいて走行面の走破性を判定する判定プログラムを記憶する記憶部と、
前記記憶部で記憶した判定プログラムに基づいて判定対象の前記測定データを処理して、前記評価対象走行面の走破性を判定する演算部と、を備え、
前記測定データは、前記試験車両が前記評価対象走行面した際の鉛直方向の振動のデータを含む走破性判定装置。
【請求項2】
前記演算部は、前記振動のデータをフーリエ変換し、周波数成分毎の値を算出し、周波数成分毎の値を前記判定プログラムに入力する請求項1に記載の走破性判定装置。
【請求項3】
前記測定データは、前記試験車両による前記評価対象走行面の走行の前後の形状のデータを含む請求項1または請求項2に記載の走破性判定装置。
【請求項4】
前記判定プログラムは、前記周波数のデータと前記形状のデータとを1つのモデルで学習した結果に基づいて判定を行う請求項3に記載の走破性判定装置。
【請求項5】
前記判定プログラムは、前記周波数のデータと前記形状のデータとを別々のモデルで学習し、算出したそれぞれの結果に基づいて判定を行う請求項3に記載の走破性判定装置。
【請求項6】
前記測定データは、前記試験車両による前記評価対象走行面の走行時の前記試験車両の出力のデータを含む請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の走破性判定装置。
【請求項7】
前記演算部は、前記試験車両よりも大きい車両が前記評価対象走行面を走行した場合に、走行できるかを判定する請求項1から請求項6のいずれか一項に記載の走破性判定装置。
【請求項8】
前記判定プログラムは、前記走破性があると対応付けられた走行面を走行して取得した測定データと、前記走破性がないと対応付けられた走行面を走行して取得した測定データと、を教師データとして機械学習している請求項1から請求項7のいずれか一項に記載の走破性判定装置。
【請求項9】
請求項1から請求項8のいずれか一項に記載の走破性判定装置と、
評価対象走行面を走行し、走行時に測定した測定データを前記走破性判定装置に供給する試験車両と、を備える走破性判定システム。
【請求項10】
前記走破性判定装置は、前記試験車両と別体であり、前記試験車両と通信で測定データを受信する請求項9に記載の走破性判定システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建設機械が走行する経路の走破性判定装置及び走破性判定システムに関する。
【背景技術】
【0002】
建設機械、特に土木作業に用いる建設機械は、舗装されていない走行面を走行する。走行する走行面を判定する装置としては、特許文献1に、設定された道路を走行する際に用いられるシステムであるが、他の車両の挙動を撮影して、その挙動に基づいて進行方向の道路の状態を検出するシステムが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2021-56874号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、建設機械は、建設現場等、舗装されていない走行面(地面)、例えば河川、海岸での作業を行う場合がある。また、土砂災害等が発生した場合、建設機械で復旧を行う場合がある。建設機械は、水分を含んだ軟弱な地盤を走行する場合、走行面の状態によって、走行部が走行面に埋まり移動できなくなることや、姿勢を維持できないおそれがある。
【0005】
走行面の状態を判定する方法として、作業者がコーンペネトロメーターを地盤に圧入して、貫入試験を行い地盤の強度を測る方法があるが、作業が煩雑となる。また、作業員が現地で作業を行う必要がある。道路等の複数の車両が決まった方向を走行する場合、特許文献1のシステムを用いることができるが、評価対象走行面が道路ではない場合、適用が難しい。
【0006】
本開示は、上記の課題に鑑みてなされたものであって、迅速に走行面の走破性を判定することができる走破性判定装置及び走破性判定システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するため、本開示の一態様の走破性判定装置は、評価対象路面を走行した試験車両が測定した測定データを取得する情報取得部と、試験車両で種々の走行面を走行して取得した測定データを機械学習し、測定データに基づいて走行面の走破性を判定する判定プログラムを記憶する記憶部と、前記記憶部で記憶した判定プログラムに基づいて判定対象の前記測定データを処理して、前記評価対象走行面の走破性を判定する演算部と、を備え、前記測定データは、前記試験車両が前記評価対象走行面した際の鉛直方向の振動のデータを含む。
【0008】
前記演算部は、前記振動のデータをフーリエ変換し、周波数成分毎の値を算出し、周波数成分毎の値を前記判定プログラムに入力する。
【0009】
前記測定データは、前記試験車両による前記評価対象走行面の走行の前後の形状のデータを含む。
【0010】
前記判定プログラムは、前記周波数のデータと前記形状のデータとを1つのモデルで学習した結果に基づいて判定を行う。
【0011】
前記判定プログラムは、前記周波数のデータと前記形状のデータとを別々のモデルで学習し、算出したそれぞれの結果に基づいて判定を行う。
【0012】
前記測定データは、前記試験車両による前記評価対象走行面の走行時の前記試験車両の出力のデータを含む。
【0013】
前記演算部は、前記試験車両よりも大きい車両が前記評価対象走行面を走行した場合に、走行できるかを判定する。
【0014】
前記判定プログラムは、前記走破性があると対応付けられた走行面を走行して取得した測定データと、前記走破性がないと対応付けられた走行面を走行して取得した測定データと、を教師データとして機械学習している。
【0015】
上記の目的を達成するため、本開示の一態様の走破性判定システムは、上記のいずれかに記載の走破性判定装置と、評価対象走行面を走行し、走行時に測定した測定データを前記走破性判定装置に供給する試験車両と、を備える。
【0016】
前記走破性判定装置は、前記試験車両と別体であり、前記試験車両と通信で測定データを受信する。
【発明の効果】
【0017】
本開示によれば、迅速に走行面の走破性を判定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1図1は、本実施形態の走破性判定システムの概略構成を示す模式図である。
図2図2は、本実施形態の走破性判定システムのブロック図である。
図3図3は、走破性判定システムの処理の学習処理の一例を示すフローチャートである。
図4図4は、学習用の測定データの取得方法の一例を説明するための説明図である。
図5図5は、測定データの一例を示す模式図である。
図6図6は、測定データを加工した一例を示す模式図である。
図7図7は、機械学習のモデルの一例を示す模式図である。
図8図8は、走破性判定システムの判定処理の一例を示すフローチャートである。
図9図9は、走破性がないと判定した測定データを加工した一例を示す図である。
図10図10は、走破性があると判定した測定データを加工した一例を示す図である。
図11図11は、走破性判定システムの判定処理の一例を示すフローチャートである。
図12図12は、走破性判定システムの判定処理の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下に、本発明に係る走破性判定システムについて実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、本発明は、以下の実施形態の記載に限定されるものではない。また、以下の実施形態における構成要素には、当業者が置換可能、且つ、容易なもの、或いは実質的に同一のものが含まれる。さらに、以下に記載した実施形態における構成要素は、本発明の要旨を逸脱しない範囲で構成の種々の省略、置換又は変更を行うことができる。以下の実施形態では、本発明に係る走破性判定システムの実施形態の1つを例示する上で、必要となる構成要素を説明し、その他の構成要素を省略する。
【0020】
図1は、本実施形態の走破性判定システムの概略構成を示す模式図である。図2は、本実施形態の走破性判定システムのブロック図である。図1及び図2に示す走破性判定システム10は、試験車両12と、遠隔操作装置13と、走破性判定装置14と、を含む。走破性判定システム10は、評価対象走行面(地面、走行路面)を試験車両12で走行し、走破性を判定する。走破性の基準は、コーン指数の算出等である。コーン指数を算出することで、建設機械の走破性、例えば、試験車両12と異なる建設機械で走行が可能であるか否かを判断することができる。なお、走破性の基準は、コーン指数に限定されず、建設機械の走破性を判断できる種々の基準を用いることができる。また、本実施形態の走破性判定システム10は、試験車両12と、走破性判定装置14と、を別体としたが、一体としてもよい。また、走破性判定装置14は、機械学習の機能と、機械学習の結果を用いて試験車両12で取得した計測データの走破性判定処理を行う機能と、を備えているが、それぞれを別の演算装置で実行してもよい。
【0021】
試験車両12は、悪路でも走行可能な小型の建設機械、例えば、スキッドステアローダである。試験車両12は、本体22と、駆動部24と、を備える。本体22は、試験車両12の躯体であり、駆動源、制御機能等が搭載されている。本実施形態の試験車両12は、遠隔操作可能な機器であり、運転席を備えていないが、運転席と操作部を備えていてもよい。また、試験車両12は、操作者が試験車両12の後方の走行面に立ち、試験車両12を操作する装置であってもよい。駆動部24は、走行面と接触し、試験車両12を移動させる部分である。本実施形態の駆動部24は、履帯である。駆動部24は、タイヤでもよい。
【0022】
試験車両12は、評価対象走行面の走行時の状態を評価するためのセンサとして、本体22に挙動検出部26と、前方形状検出部28と、後方形状検出部30と、位置検出部32、34、36と、が配置されている。また、試験車両12は、制御部40と、通信部42と、を備える。
【0023】
挙動検出部26は、一例として本体22の中央部に配置されている。挙動検出部26は、加速度センサを備え、試験車両12の鉛直方向の振動を検出する。挙動検出部26は、さらに、試験車両12の速度、姿勢等を検出してもよい。挙動検出部26は、例えば、IMU(Inertial Measurement Unit)である。また、挙動検出部26は、制御部40から入力された操作情報(駆動部24への入力値)の情報、つまり操作情報を挙動情報として取得してもよい。
【0024】
前方形状検出部28は、本体22の前方の端部(試験車両12の駆動部24を前進させた際に前側となる面)に配置される。前方形状検出部28は、車両前方側の評価対象走行面の形状を検出する。つまり、前方形状検出部28は、試験車両12が通過する前の評価対象走行面の形状を検出する。後方形状検出部30は、本体22の後方の端部(試験車両12の駆動部24を前進させた際に後ろ側となる面)に配置される。後方形状検出部30は、車両後方側の評価対象走行面の形状を検出する。つまり、後方形状検出部30は、試験車両12が通過した後の評価対象走行面の形状を検出する。前方形状検出部28と、後方形状検出部30は、対象の領域の走行面の形状を検出できる各種機器を用いることができ、カメラ、LiDAR(Light detection and ranging、)、赤外線センサ(検出光となる赤外光を照射し、その反射を検出して走行面との距離を検出するセンサ)等を用いることができる。
【0025】
位置検出部32、34、36は、評価対象走行面に対する位置を検出する。位置検出部32、34、36は、GSNN(Global Navigation Satellite System)センサや、試験車両12が走行する領域に対する位置が設定された基地局と通信するビーコン等を用いることができる。位置検出部32は、挙動検出部26に並んで配置される。位置検出部34は、前方形状検出部28に並んで配置される。位置検出部36は、後方形状検出部30に並んで配置される。位置検出部32、34、36は、それぞれの位置情報を取得することで、試験車両12の位置と共に対応する挙動検出部26、前方形状検出部28、後方形状検出部30の位置を検出する。これにより、挙動検出部26、前方形状検出部28、後方形状検出部30の位置を特定でき、それぞれの検出情報を対応付けることができる。
【0026】
制御部40は、試験車両12の走行を制御し、センサで検出した情報を出力する。制御部40は、CPU(Central Processing Unit)マイクロプロセッサ、マイクロコンピュータ、DSP(Digital Signal Processor)、システムLSI(Large Scale Integration)などのプロセッサで実行される演算機能と、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)、フラッシュメモリ、EPROM(Erasable Programmable Read Only Memory)、EEPROM(登録商標)(Electrically Erasable Programmable Read Only Memory)などの不揮発性または揮発性の半導体メモリ、磁気ディスク、フレキシブルディスク、光ディスク、コンパクトディスク、ミニディスク、またはDVDにより実行される記憶機能と、を備え、試験車両12の挙動を制御する。また、制御部40は、各種センサで取得した情報を、通信部42を介して、走破性判定装置14に出力する。
【0027】
通信部42は、相互にデータ通信可能な状態で通信ネットワークに接続され、データを送受信する。通信ネットワークは、公衆通信回線及び専用通信回線等を含んで構築されてよい。通信部42は、遠隔操作が入力される操作部と通信を行い、入力された操作情報を制御部40に出力する。また、通信部42は、センサで検出した情報を走破性判定装置14に出力する。
【0028】
遠隔操作装置13は、試験車両12を遠隔で操作する。遠隔操作装置13は、走破性判定装置40と一体の装置としてもよい。遠隔操作装置13は、試験車両12と通信を行い、試験車両12の移動を制御する。遠隔操作装置13の遠隔操作の方法は、特に限定されず、例えば、試験車両12の操作部と同様の機構を設け、入力された操作を検出しても、キーボード、マウス等で入力された操作を検出してもよい。
【0029】
走破性判定装置40は、試験車両12から受信する測定データを用いて、試験車両12の走破性を判定する。また、走破性判定装置40は、試験車両12から受信する測定データと測定データに対応して入力された情報を教師データとして機械学習を行い、走破性を判定する判定プログラムを作成する。つまり、設定した学習モデルに対する学習を行う。
【0030】
走破性判定装置14は、通信部50と、情報取得部52と、入力部54と、出力部56と、演算部58と、記憶部60と、を備える。
【0031】
通信部50は、相互にデータ通信可能な状態で通信ネットワークに接続され、データを送受信する。情報取得部52は、通信部50が試験車両12と通信して取得した情報、具体的には、評価対象走行面の走行時に各種センサで取得した情報を取得する。
【0032】
入力部54は、走破性判定装置14を操作するオペレータが操作を入力する。入力部54は、キーボート、マウス、タッチパネル等である。出力部56は、走破性判定装置14を操作するオペレータに各種情報を表示する。出力部56は、演算部58により生成された判定結果を表示できる。出力部56は、液晶ディスプレイ(LCD:Liquid Crystal Display)、有機ELディスプレイ(OELD:Organic Electro-Luminescence Display)、又は無機ELディスプレイ(IELD:Inorganic Electro-Luminescence Display)等の表示デバイス、スピーカ等の音声出力部を含んでよい。出力部56は、タッチスクリーンなどの入力デバイスを含んでよい。
【0033】
演算部58は、記憶部60に記憶されているプログラム及びデータに基づいて、試験車両12で検出した情報に対する各種処理を実行する。特に、本実施形態において、演算部58は、試験車両12が走行した評価対象走行面の走破性を判定する処理と、判定に用いるモデルの機械学習を実行する。演算部58は、CPU(Central Processing Unit)マイクロプロセッサ、マイクロコンピュータ、DSP(Digital Signal Processor)、システムLSI(Large Scale Integration)などのプロセッサを含んで実装されてよい。演算部58は、記憶部60に記憶されているプログラムを読み出してRAMなどのワーキングメモリに展開し、ワーキングメモリに展開されたプログラムに含まれる命令をCPUなどのプロセッサに実行させる。これにより、演算部58は、各機能に基づいた各処理を実行できる。演算部58は、機械学習部70と、判定処理部72と、を有する。演算部58の各部については後述する。
【0034】
記憶部60は、演算部58により実行される各種処理を実現するためのプログラム及びデータを記憶する。記憶部60が記憶するプログラムにより提供される機能は、試験車両12が走行した走行面の走破性を判定する機能、判定プログラムに用いるモデルの機械学習を行う機能を含む。記憶部60が記憶するデータは、試験車両12から受信する測定データ86を含む。測定データ86は、機械学習に用いる学習データとなる加工を行ったデータセットとしてもよい。記憶部60は、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)、フラッシュメモリ、EPROM(Erasable Programmable Read Only Memory)、EEPROM(登録商標)(Electrically Erasable Programmable Read Only Memory)などの不揮発性または揮発性の半導体メモリ、磁気ディスク、フレキシブルディスク、光ディスク、コンパクトディスク、ミニディスク、またはDVDにより実装されてよい。
【0035】
記憶部60は、データ処理プログラム80と、判定プログラム82と、学習プログラム84と、を含む。データ処理プログラム80は、試験車両12で測定した測定データを、判定プログラム82と、学習プログラム84とで処理可能なデータに加工する。データ処理プログラム80は、例えば、指定された期間の測定データのうち振動に関するデータをフーリエ変換して、当該期間の周波数成分(以下、周波数として説明する)を出力データとする。また、データ処理プログラム80は、取得した複数のデータを関連付ける処理を行う。具体的には、データ処理プログラム80は、処理したデータと位置情報とを関連付け、フーリエ変換したデータや、形状の処理結果のデータを同じ領域で対応付ける処理を行う。
【0036】
判定プログラム82は、試験車両12が評価対象走行面を走行して計測した計測データをデータ処理プログラム80で処理したデータを、学習済みプログラムで処理し、処理した結果に基づいて、走破性の判定結果を出力する。
【0037】
学習プログラム84は、複数の測定データと測定データごとに走破性の評価値が対応付けられたデータを教師データとして、振動判定用の学習モデル(以下、学習モデル)に対する機械学習を行う。学習モデルは、特に限定されず、データを処理する各種モデルを用いることができる。また、学習プログラムは、測定データのパラメータ毎に別々のモデルで学習させても、測定データの複数のパラメータを関連付け、1つのモデルで学習させてもよい。
【0038】
次に、演算部58の各部の機能を説明する。機械学習部70は、学習プログラム84を処理することで、実行される。機械学習部70は、複数の測定データと測定データごとに走破性の評価値が対応付けられたデータを教師データとして、学習モデルに対する機械学習を行う。判定処理部72は、判定プログラム82を処理することで、実行される。判定処理部72は、試験車両12が評価対象走行面を走行して取得した測定データを処理して、走破性を判定する。
【0039】
次に、図3から図12を用いて、走破性判定システム10の処理について説明する。まずは、図3から図7を用いて、判定処理での判定基準を機械学習で作成する処理について説明する。図3は、走破性判定システムの処理の学習処理の一例を示すフローチャートである。図4は、学習用の測定データの取得方法の一例を説明するための説明図である。図5は、測定データの一例を示す模式図である。図6は、測定データを加工した一例を示す模式図である。図7は、機械学習のモデルの一例を示す模式図である。
【0040】
走破性判定システム10は、試験車両12で対象の走行面(路面)を走行し、測定データを取得する(ステップS12)。対象の走行面は、走行面の走破性が既知の走行面である。対象の走行面の評価は、走行前に行っても、走行後に行ってもよい。また、走破性の基準は、試験車両12よりも、大型で重量が重い建設機械が走破できるかを評価できる基準である。本実施形態では、走破性があるかないかを判定する場合として説明する。
【0041】
例えば、図4に示す試験領域100は、走行ルート102が設定されている。走行ルート102には、領域110と、領域114が設けられている。領域110は、地盤が軟弱で、走破性がない走行面となる。領域110は、例えば、所定の深さ、例えば、0.15mの粘性土が配置され、領域114は、強固な地盤で走破性がある走行面となる。試験車両10は、領域110を走行する際のデータを取得することで、走破性がない走行面の測定データを取得する。試験車両10は、領域114を走行する際のデータを取得することで、走破性がある走行面の測定データを取得する。また、試験車両10は、領域110、114を設定した所定の速度で走行する。具体的には、図5示す振動のデータを取得する。本実施形態では、測定する振動とは、測定データの鉛直成分を振動として扱う。図5に示す計測結果のうち、期間120が領域110を走行した際の振動の計測結果、期間122が領域114を走行した際の振動の計測得結果となる。振動の測定データの走行位置との対応は、位置検出部28の情報に基づいて対応付ける。なお、本実施形態では鉛直方向の振動について説明するが、他の方向の移動速度や、走行前後の走行面の形状(形状の変化)も測定データとして取得することができる。
【0042】
走破性判定システム10は、取得した測定データを機械学習可能なデータに加工する(ステップS14)。走破性判定システム10は、データ処理プログラム80で、測定データを処理する。本実施形態では、計測データのうち振動のデータをフーリエ変換する。これにより、図6に示すように、振動を周波数解析した結果が算出される。走破性判定システム10は、加工結果として、設定した範囲の周波数帯について、周波数毎の出力値を算出する。周波数帯としては、1HzからnHzの範囲が例示される。また、測定データは、例えば、0.6秒の周期で計測を行ったデータである。
【0043】
走破性判定システム10は、測定データに走破性判定結果を対応付ける(ステップS16)。走破性判定システム10は、領域110を走行したデータに対して、走破性なしを対応付け、領域114を走行したデータに対して、走破性ありを対応付ける。
【0044】
走破性判定システム10は、測定データの取得が終了したかを判定する(ステップS18)。走破性判定システム10は、測定データの取得が終了していない(ステップS18でNo)と判定した場合、ステップS12に戻り、測定データをさらに取得する。走破性判定システム10は、ステップS12からステップS16の処理を繰り返し、学習に用いる測定データを蓄積する。
【0045】
走破性判定システム10は、測定データの取得が終了した(ステップS18でYes)と判定した場合、測定データを加工したデータを入力とし、走破性の判定結果を出力とした機械学習を行う(ステップS20)。ここで、機械学習は、図7に示すように学習モデル130に対して、学習データを入力することで、実行する。学習モデル130は、入力層140と出力層144との間に複数の中間層142が設定されたモデルである。機械学習は、入力層140に測定データの入力値を入力し、出力層144に走破性の判定結果を入力して、学習を行い、中間層142の係数を算出することで、学習モデル130を学習済みモデルとする。例えば、本実施形態は、入力層140に、振動をフーリエ変換して算出した1Hzごとの角周波数の出力値を入力する。
【0046】
走破性判定システム10は、学習済プログラムを記憶部に記憶させる(ステップS22)。
【0047】
次に、図8から図10を用いて、評価対象走行面を走行して、走破性を判定する処理について説明する。図8は、走破性判定システムの判定処理の一例を示すフローチャートである。図9は、走破性がないと判定された1Hzから15Hzの範囲を測定データの一例として示す図である。図10は、走破性があると判定された1Hzから15Hzの範囲を測定データの一例として示す図である。図8に示す処理は、測定データのうち、挙動検出部26で検出した振動データに基づいた処理を行う場合である。
【0048】
走破性判定システム10は、測定データを取得する(ステップS32)。具体的には、走破性判定システム10は、試験車両12が評価対象走行面を走行し、走行時にセンサで検出したデータを、通信を介して走破性判定装置14が取得する。
【0049】
走破性判定システム10は、振動データに対してフーリエ変換し、周波数毎の値を算出する(ステップS34)。走破性判定装置14は、測定データをフーリエ変換することで、図9及び図10に示す波形を算出し、対象の周波数範囲の各周波数の出力(振幅)を算出する。ここで、図9は、走破性がない走行面を走行したときの測定データをフーリエ変換した結果である。図10は、走破性がある走行面を走行したときの測定データをフーリエ変換した結果である。図9及び図10に示すように、走破性の有無に応じて、出力が変化する。
【0050】
走破性判定システム10は、加工したデータを学習済みプログラムに入力する(ステップS36)。走破性判定装置14は、学習済みプログラムに、ステップS34で算出した各周波数の出力の情報を入力する。
【0051】
走破性判定システム10は、判定結果を出力する(ステップS38)。本実施形態では、走破性があるか、ないかの判定結果を出力する。
【0052】
走破性判定システム10は、以上のように、評価対象走行面を試験車両12で走行し、走行した際に検出したデータ、特に鉛直方向の振動データを取得し、取得した振動データに基づいて、走破性を評価することで、高い精度で走破性を評価することができる。また、試験車両12で実際に走行させることで、評価に必要なデータを取得できるため、データの取得が容易となる。具体的には、評価対象走行面を評価するために評価対象走行面にコーンペネトロメーターを使用するための評価等が不要となる。また、試験車両12が走行した領域について走破性を評価できる。これにより、評価対象走行面を広い範囲とすることができ、かつ、各領域について評価を行うことができる。
【0053】
走破性判定システム10は、走破性の評価を試験車両12よりも大きい建設機械が走破できるかを基準にすることで、悪路でも走行できる試験車両12を走行させた結果で、作業で使用する建設機械が評価対象走行面を走破できるかを評価することができる。
【0054】
また、振動データをフーリエ変換したデータを用いることで、評価対象走行面の地盤をより適切に評価することができる。
【0055】
ここで、図8に示す処理では、鉛直方向の振動に基づいて走破性を評価したが、振動に加え、走行面の形状に基づいて走破性を評価してもよい。図11は、走破性判定システムの判定処理の一例を示すフローチャートである。図11に示す処理は、測定データのうち、挙動検出部26で検出した振動データと形状データに基づいた処理を行う場合である。
【0056】
走破性判定システム10は、測定データを取得する(ステップS32)。具体的には、走破性判定システム10は、試験車両12が評価対象走行面を走行し、走行時にセンサで検出したデータを、通信を介して走破性判定装置14が取得する。
【0057】
走破性判定システム10は、振動データに対してフーリエ変換し、周波数毎の値を算出する(ステップS52)。走破性判定システム10は、振動データの処理と並行して、走行前後の形状データを加工する(ステップS54)。走破性判定システム10は、例えば、同じ範囲の走行前の走行面の形状と走行後の走行面の形状の差分を検出する。なお、形状の評価基準はこれに限定されない。
【0058】
走破性判定システム10は、加工したデータを学習済みプログラムに入力する(ステップS36)。走破性判定装置14は、学習済みプログラムに、ステップS52で算出した各周波数の出力の情報と、ステップS54で算出した形状の差分データを入力する。なお、本実施形態の学習済みプログラムは、算出した各周波数の出力の情報と、算出した形状の差分データを入力とし、その走行面の走破性の判定結果を出力とした学習データで学習して作成したプログラムである。
【0059】
走破性判定システム10は、判定結果を出力する(ステップS38)。本実施形態では、走破性があるか、ないかの判定結果を出力する。
【0060】
このように、測定データに、走行前後の走行面の形状のデータを加えることで、より高い精度で、走破性を評価することができる。なお、走破性判定システム10は、試験車両12の駆動部24の形状のデータも評価の基準に含めてもよい。これにより、走行面と接触している部分の形状の影響を加味して、走破性を評価することができる。
【0061】
ここで、入力層に与えるデータ数は、本実施形態の1Hzから15Hzの場合よりも多いことが好ましい。例えば、15Hzよりも高い値の周波数の出力もデータとして取得してもよい。また、1Hzごとのデータよりも小さい単位でデータを取得してもよい。また、入力層に与えるデータは、15Hzよりも高い周波数も含むことが好ましい。また、適宜入力データに与える周波数帯を選択できることが好ましい。周波数帯を選択できることで、走行面によっては、障害物(石、廃材など)が測定データに含まれた場合に出力が生じる周波数帯を外した周波数帯のデータを解析対象とすることができる。
【0062】
図12は、走破性判定システムの判定処理の一例を示すフローチャートである。図11の処理では、1つの学習済みプログラムに振動データと形状データを入力する処理としたが、これに限定されず、振動データと形状データを別々の学習済みプログラム(振動判定用の学習済みプログラム、形状判定用の学習済みプログラム)で処理して、その結果に基づいて走破性を判定してもよい。
【0063】
走破性判定システム10は、測定データを取得する(ステップS32)。具体的には、走破性判定システム10は、試験車両12が評価対象走行面を走行し、走行時にセンサで検出したデータを、通信を介して走破性判定装置14が取得する。
【0064】
走破性判定システム10は、振動データに対してフーリエ変換し、周波数毎の値を算出する(ステップS52)。走破性判定システム10は、加工したデータを振動判定用の学習済みプログラムに入力する(ステップS65)。走破性判定装置14は、振動判定用の学習済みプログラムに、ステップS52で算出した各周波数の出力の情報を入力する。本実施形態の振動判定用の学習済みプログラムは、算出した各周波数の出力の情報を入力とし、その走行面の走破性の判定結果を出力とした学習データで学習して作成したプログラムである。
【0065】
走破性判定システム10は、振動データの処理と並行して、走行前後の形状データを加工する(ステップS54)。走破性判定システム10は、加工したデータを形状判定用の学習済みプログラムに入力する(ステップS64)。走破性判定装置14は、形状判定用の学習済みプログラムに、ステップS54で算出した形状の差分データを入力する。形状判定用の学習済みプログラムは、算出した形状の差分データを入力とし、その走行面の走破性の判定結果を出力とした学習データで学習して作成したプログラムである。
【0066】
走破性判定システム10は、処理結果に基づいて、評価対象の路面(走行面)の判定処理を行う(ステップS66)。走破性判定システム10は、ステップS65で算出した振動データに基づいた処理結果と、ステップS64で算出した形状データに基づいた処理結果と、の両方に基づいて、走破性についての判定を行う。なお、走破性の判定基準は、特に限定されず、2つの評価結果に重み付けして、結果を判定する。両方が走破性無いと判定した場合、走破性無しとし、少なくとも一方は走破性ありと判定した場合、走破性ありと判定する等の判定基準を適宜設定することができる。
【0067】
走破性判定システム10は、判定結果を出力する(ステップS38)。本実施形態では、走破性があるか、ないかの判定結果を出力する。
【0068】
このように、測定データを別々に処理して、走破性評価を行ってもよい。これにより、例えば、形状データの測定結果を補完的に用い、形状データが測定できない場合、振動データのみで評価することもできる。
【0069】
なお、走破性の判定としては、走破性があるか否かを出力することに限定されない。里えば、学習時に、走破性として、測定データに対して、コーン指数を対応付けることで、走破性の判定結果として、評価対象走行面のコーン指数を算出することができる。また、コーン指数の範囲に応じて、走破性を3つ以上に分類してもよい。例えば、いずれの建設機械も走破できない、条件が厳しい一部建設機械のみ走破できない、全ての建設機械が走破できる、のいずれに該当するかを判定するようにしてもよい。
【0070】
また、試験車両は、1つに限定されず、複数の試験車両や、種類の異なる試験車両を用いて、学習データの蓄積、評価対象走行面での測定データの取得を行ってもよい。この場合、学習時に入力データとして、試験車両の情報を入力することで、試験車両の特性に対応した評価を行うことができる。
【0071】
走破性判定システム10は、評価基準のパラメータ、つまり、入力値として、試験車両の走行条件、振動以外の挙動データを含めてもよい。これにより、試験時の条件によって生じる変動を吸収し、より高い精度で走破性を判定することができる。
【符号の説明】
【0072】
10 走破性判定システム
12 試験車両
13 遠隔操作装置
14 走破性判定装置
22 車体
24 駆動部
26 挙動検出部
28 前方形状検出部
30 後方形状検出部
32、34、36 位置検出部
40 制御部
42、50 通信部
52 情報取得部
54 入力部
56 出力部
58 演算部
60 記憶部
70 機械学習部
72 判定処理部
80 データ処理プログラム
82 判定プログラム
84 学習プログラム
86 測定データ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12