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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023087514
(43)【公開日】2023-06-23
(54)【発明の名称】定電流回路
(51)【国際特許分類】
   G05F 3/26 20060101AFI20230616BHJP
【FI】
G05F3/26
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021201934
(22)【出願日】2021-12-13
(71)【出願人】
【識別番号】000191238
【氏名又は名称】日清紡マイクロデバイス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002000
【氏名又は名称】弁理士法人栄光事務所
(72)【発明者】
【氏名】吉田 晴彦
【テーマコード(参考)】
5H420
【Fターム(参考)】
5H420NA12
5H420NA16
5H420NA17
5H420NC02
5H420NC14
5H420NC23
5H420NC27
5H420NC38
5H420NE26
(57)【要約】
【課題】起動回路部の定常電流を低減した定電流回路を提供する。
【解決手段】制御回路31は、トランジスタM1,M2の寄生容量に電流を供給するためのトランジスタM5のオンオフを制御する。トランジスタM6は、トランジスタM3にカレントミラー接続され、トランジスタM3に流れる電流を折り返す。抵抗器R2は、トランジスタM6に直列接続され、トランジスタM6に流れる電流が流れる。ディプリーション型のトランジスタM7が、抵抗器R2に電流が流れると負バイアスが印加される。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1のトランジスタと、前記第1のトランジスタにカレントミラー接続され、前記第1のトランジスタに流れる電流を折り返す第2のトランジスタと、前記第2のトランジスタに直列接続された第3のトランジスタと、前記第3のトランジスタにカレントミラー接続され、前記第3のトランジスタに流れる電流を折り返し、前記第1のトランジスタに直列接続された第4のトランジスタとを有する定電流発生部と、
電源投入時に前記第1のトランジスタ及び前記第2のトランジスタの寄生容量に電流を供給して、前記第1のトランジスタ及び前記第2のトランジスタをオンさせるための第5のトランジスタと、前記第5のトランジスタのオンオフを制御する制御回路とを有する起動回路部とを備えた定電流回路であって、
前記制御回路は、前記第3のトランジスタにカレントミラー接続され、前記第3のトランジスタに流れる電流を折り返す第6のトランジスタと、前記第6のトランジスタに直列接続され、前記第6のトランジスタに流れる電流が流れる抵抗器と、前記抵抗器に電流が流れると負バイアスが印加されるディプリーション型の第7のトランジスタを有する、
定電流回路。
【請求項2】
請求項1に記載の定電流回路において、
前記第5のトランジスタは、前記第3のトランジスタと直列接続され、前記第2のトランジスタと並列接続され、
前記制御回路は、前記第5のトランジスタのゲート・ソース間又はベース・エミッタ間に接続され、前記第1のトランジスタにカレントミラー接続された第8のトランジスタと、前記第7のトランジスタと直列接続された第9のトランジスタと、前記第9のトランジスタにカレントミラー接続され、前記第9のトランジスタに流れる電流を折り返す第10のトランジスタとを有し、
前記第8のトランジスタと前記第10のトランジスタとが直列接続された、
定電流回路。
【請求項3】
請求項2に記載の定電流回路において、
前記制御回路は、前記第7のトランジスタ及び前記第9のトランジスタに直列接続され、前記定電流発生部の起動時にオフし、起動後にオンされる第11のトランジスタを有する、
定電流回路。
【請求項4】
請求項3に記載の定電流回路において、
前記第11のトランジスタのゲート又はベースは、前記第5のトランジスタのゲート又はベースに接続されている、
定電流回路。
【請求項5】
請求項3に記載の定電流回路において、
前記第11のトランジスタのゲート又はベースは、前記第3のトランジスタのゲート又はベースに接続されている、
定電流回路。
【請求項6】
請求項2~5の何れか1項に記載の定電流回路において、
前記制御回路は、ゲート又はベースが前記第3のトランジスタのゲート・ドレイン又はベース・コレクタに接続され、ドレイン又はコレクタが前記第10のトランジスタのゲートに接続された第12のトランジスタを有する、
定電流回路。
【請求項7】
請求項2~6の何れか1項に記載の定電流回路において、
前記第8のトランジスタの閾値電圧が、前記第1のトランジスタ及び前記第2のトランジスタの閾値電圧よりも低い、
定電流回路。
【請求項8】
請求項1に記載の定電流回路において、
前記第5のトランジスタは、前記第1のトランジスタに直列接続され、前記第4のトランジスタに並列接続され、
前記制御回路は、前記第7のトランジスタに直列接続された第13のトランジスタを有し、
前記第7のトランジスタ及び前記第13のトランジスタのドレイン又はコレクタに、前記第5のトランジスタのゲート又はベースが接続された、
定電流回路。
【請求項9】
請求項8に記載の定電流回路において、
前記第13のトランジスタの閾値電圧が、前記第3のトランジスタ及び前記第4のトランジスタの閾値電圧よりも低い、
定電流回路。
【請求項10】
請求項1~9の何れか1項に記載の定電流回路において、
前記トランジスタの少なくとも1つが、バイポーラトランジスタから構成されている、
定電流回路。
【請求項11】
請求項1~10の何れか1項に記載の定電流回路において、
前記トランジスタの少なくとも1つが、電界効果トランジスタから構成されている、
定電流回路。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、定電流回路に関する。
【背景技術】
【0002】
地球温暖化の原因は、COのような温暖効果ガスの濃度上昇により、大気の温室効果が強まったことによると考えられており、通信情報化社会の急速な進展に伴い、電子機器の低消費電力化も大きな課題になってきている。電子機器には多くの半導体集積回路が使用されており、本発明は、半導体集積回路に幅広く使われる定電流回路の消費電流を低減し、地球温暖化の抑制に貢献しようとするものである。
【0003】
半導体集積回路に用いられる定電流回路として、図6に示すような回路が知られている(例えば特許文献1、2など参照)。図6に示されている定電流回路100は、定電流IREFを発生する定電流発生部101と、電源投入時に定電流発生部101を起動する起動回路部102とを有している。
【0004】
定電流発生部101は、カレントミラー接続されたトランジスタM1,M2と、カレントミラー接続されたトランジスタM3,M4と、抵抗器R1とを有している。
【0005】
起動回路部102は、トランジスタM5,M7,M8を有している。トランジスタM7,M8は、正電源端子T1,負電源端子T2間に直列接続されている。トランジスタM5は、トランジスタM3に直列接続され、トランジスタM2及び抵抗器R1に並列接続されている。トランジスタM5のゲートが、トランジスタM7,M8のドレインに接続されている。
【0006】
次に、上記構成の定電流回路100について、その動作を説明する。電源投入後、トランジスタM1のゲート電位となる接合ノードAの電位がトランジスタM8の閾値電圧より低い場合、トランジスタM8はオフ状態,トランジスタM7はオン状態となる。よって、トランジスタM5がオン状態となり、トランジスタM3から励起電流を引き抜く。トランジスタM3とトランジスタM4はカレントミラー接続されているため、トランジスタM4へ励起電流を発生させる。トランジスタM4による励起電流は、接合ノードAと負電源端子T2との間の寄生容量を充電し、トランジスタM1,M2をオフ状態からオン状態に変化させる。
【0007】
ここで、接合ノードAの電位がトランジスタM8の閾値電圧を超えると、トランジスタM8がオン状態となる。トランジスタM8がオン状態となると、トランジスタM5はオフ状態となり、励起電流の引き抜きが終了する。この時点でトランジスタM3,M4とトランジスタM1,M2には十分な電流が流れており、定電流発生部101は定常状態へと移行する。
【0008】
トランジスタM7のゲート電位は、トランジスタM1のゲート・ソース電位差で駆動され、トランジスタM8がオン状態となってもトランジスタM7はオフ状態とならない。トランジスタM7は常時オン状態であり、抵抗器と同様な動作となる。したがって、定電流発生部101が定常状態に移行した後も、トランジスタM7のドレイン電流は起動回路部102の定常電流として流れ続ける。
【0009】
また、トランジスタM1,M2がサブスレッショルド領域で動作した場合、ゲート・ソース電位差の変化に対しドレイン電流は指数関数的に変化する。定電流発生部101で生成される定電流IREFと、その温度係数TCは、下記の式1、式2で表される。
【0010】
【数1】
【0011】
【数2】
【0012】
ここで、Kはアスペクト比(=W/L)、Wはゲート幅、Lはゲート長、Vは熱電圧(=kT/q)、kはボルツマン係数、Tは絶対温度、qは電子の単位電荷、ηはサブスレッショルドスイング係数である。
【0013】
式1より定電流IREFは、電源電圧の変動に依存しない。また、式2より熱電圧Vは、正の温度係数となるため、抵抗器R1を正の温度係数となる構成とすることで、温度の変動による定電流IREFの変化量を低減させることができる。
【0014】
トランジスタM7のオン抵抗をRM7とした場合の定常電流IM8は式3で表される。
【0015】
【数3】
【0016】
VDDは正電源端子T1に供給される正電源電圧、VSSは負電源端子T2に供給される負電源電圧である。起動回路部102の定常電流IM8は、トランジスタM5をオンするために、トランジスタM8がオフ状態のリーク電流より大きな電流値に設定する必要がある。式3より起動回路部102の定常電流IM8は、電源電圧の変動や抵抗RM7の変動に大きく依存する。抵抗RM7は、製造プロセスのバラツキや温度変動により抵抗値が変動する。このため、定常電流IM8は、電源電圧、温度、製造バラツキなどの変動量を考慮して、ある程度大きなマージンを持たせた状態でトランジスタM8のリーク電流より大きな電流値に設計する必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0017】
【特許文献1】特開2011-118532号公報
【特許文献2】特許第6329633号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
従来の定電流回路100は、定電流発生部101が定常状態に移行した後も、起動回路部102に大きな定常電流IM8が流れ続けるため、消費電流が大きくなるという課題があった。
【0019】
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、起動回路部の定常電流を低減した定電流回路を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0020】
前述した目的を達成するために、本発明に係る定電流回路は、下記[1]~[11]を特徴としている。
[1]
第1のトランジスタと、前記第1のトランジスタにカレントミラー接続され、前記第1のトランジスタに流れる電流を折り返す第2のトランジスタと、前記第2のトランジスタに直列接続された第3のトランジスタと、前記第3のトランジスタにカレントミラー接続され、前記第3のトランジスタに流れる電流を折り返し、前記第1のトランジスタに直列接続された第4のトランジスタとを有する定電流発生部と、
電源投入時に前記第1のトランジスタ及び前記第2のトランジスタの寄生容量に電流を供給して、前記第1のトランジスタ及び前記第2のトランジスタをオンさせるための第5のトランジスタと、前記第5のトランジスタのオンオフを制御する制御回路とを有する起動回路部とを備えた定電流回路であって、
前記制御回路は、前記第3のトランジスタにカレントミラー接続され、前記第3のトランジスタに流れる電流を折り返す第6のトランジスタと、前記第6のトランジスタに直列接続され、前記第6のトランジスタに流れる電流が流れる抵抗器と、前記抵抗器に電流が流れると負バイアスが印加されるディプリーション型の第7のトランジスタを有する、
定電流回路であること。
[2]
[1]に記載の定電流回路において、
前記第5のトランジスタは、前記第3のトランジスタと直列接続され、前記第2のトランジスタと並列接続され、
前記制御回路は、前記第5のトランジスタのゲート・ソース間又はベース・エミッタ間に接続され、前記第1のトランジスタにカレントミラー接続された第8のトランジスタと、前記第7のトランジスタと直列接続された第9のトランジスタと、前記第9のトランジスタにカレントミラー接続され、前記第9のトランジスタに流れる電流を折り返す第10のトランジスタとを有し、
前記第8のトランジスタと前記第10のトランジスタとが直列接続された、
定電流回路であること。
[3]
[2]に記載の定電流回路において、
前記制御回路は、前記第7のトランジスタ及び前記第9のトランジスタに直列接続され、前記定電流発生部の起動時にオフし、起動後にオンされる第11のトランジスタを有する、
定電流回路であること。
[4]
[3]に記載の定電流回路において、
前記第11のトランジスタのゲート又はベースは、前記第5のトランジスタのゲート又はベースに接続されている、
定電流回路であること。
[5]
[3]に記載の定電流回路において、
前記第11のトランジスタのゲート又はベースは、前記第3のトランジスタのゲート又はベースに接続されている、
定電流回路であること。
[6]
[2]~[5]の何れか1項に記載の定電流回路において、
前記制御回路は、ゲート又はベースが前記第3のトランジスタのゲート・ドレイン又はベース・コレクタに接続され、ドレイン又はコレクタが前記第10のトランジスタのゲートに接続された第12のトランジスタを有する、
定電流回路であること。
[7]
[2]~[6]の何れか1項に記載の定電流回路において、
前記第8のトランジスタの閾値電圧が、前記第1のトランジスタ及び前記第2のトランジスタの閾値電圧よりも低い、
定電流回路であること。
[8]
[1]に記載の定電流回路において、
前記第5のトランジスタは、前記第1のトランジスタに直列接続され、前記第4のトランジスタに並列接続され、
前記制御回路は、前記第7のトランジスタに直列接続された第13のトランジスタを有し、
前記第7のトランジスタ及び前記第13のトランジスタのドレイン又はコレクタに、前記第5のトランジスタのゲート又はベースが接続された、
定電流回路であること。
[9]
[8]に記載の定電流回路において、
前記第13のトランジスタの閾値電圧が、前記第3のトランジスタ及び前記第4のトランジスタの閾値電圧よりも低い、
定電流回路であること。
[10]
[1]~[9]の何れか1項に記載の定電流回路において、
前記トランジスタの少なくとも1つが、バイポーラトランジスタから構成されている、
定電流回路であること。
[11]
[1]~[10]の何れか1項に記載の定電流回路において、
前記トランジスタの少なくとも1つが、電界効果トランジスタから構成されている、
定電流回路であること。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、起動回路部の定常電流を低減した定電流回路を提供することができる。
【0022】
以上、本発明について簡潔に説明した。更に、以下に説明される発明を実施するための形態(以下、「実施形態」という。)を添付の図面を参照して通読することにより、本発明の詳細は更に明確化されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1図1は、第1実施形態における本発明の定電流回路を示す回路図である。
図2図2は、第2実施形態における本発明の定電流回路を示す回路図である。
図3図3は、第3実施形態における本発明の定電流回路を示す回路図である。
図4図4は、第4実施形態における本発明の定電流回路を示す回路図である。
図5図5は、第5実施形態における本発明の定電流回路を示す回路図である。
図6図6は、従来の定電流回路の一例を示す回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明に関する具体的な実施形態について、各図を参照しながら以下に説明する。
【0025】
(第1実施形態)
まず、第1実施形態の定電流回路1について図1を参照して説明する。図1に示すように、定電流回路1は、定電流IREFを発生する定電流発生部2と、電源投入時に定電流発生部2を起動する起動回路部3とを有している。
【0026】
定電流発生部2は、トランジスタM1~M4と、抵抗器R1とを備える。トランジスタM1,M2は、Nチャンネルの電界効果トランジスタから構成されている。トランジスタM3,M4は、Pチャンネルの電界効果トランジスタから構成されている。
【0027】
トランジスタM1(=第1のトランジスタ)は、ソースが負電源端子T2に接続されている。負電源端子T2には負電源電圧VSSが供給されている。トランジスタM2(=第2のトランジスタ)は、ソースが抵抗器R1を介して負電源端子T2に接続され、ゲートがトランジスタM1のゲート及びドレインに接続される。すなわち、トランジスタM1,M2は、カレントミラー接続され、トランジスタM1に流れるドレイン電流がトランジスタM2のドレイン電流にコピーされ折り返される。
【0028】
トランジスタM3(=第3のトランジスタ)は、ソースが正電源端子T1に接続されている。正電源端子T1には、正電源電圧VDDが供給されている。トランジスタM3は、ドレイン及びゲートがトランジスタM2のドレインに接続されている。すなわち、トランジスタM2及びM3は、直列接続されている。トランジスタM4(=第4のトランジスタ)は、ソースが正電源端子T1に接続されている。
【0029】
トランジスタM4は、ゲートがトランジスタM3のゲート及びドレインに接続され、ドレインがトランジスタM1のドレインに接続されている。すなわち、トランジスタM3,M4は、カレントミラー接続され、トランジスタM3に流れるドレイン電流が、トランジスタM4のドレイン電流にコピーされ折り返される。また、トランジスタM1及びM4は、直列接続されている。
【0030】
起動回路部3は、電源投入時にトランジスタM1,M2の寄生容量に電流を供給して、トランジスタM1,M2をオンさせるためのトランジスタM5(=第5のトランジスタ)と、トランジスタM5のオンオフを制御する制御回路31とを有している。トランジスタM5は、Nチャンネルの電界効果トランジスタから構成されている。トランジスタM5は、ソースが負電源端子T2に接続され、ドレインがトランジスタM2,M3のドレインに接続されている。トランジスタM5は、トランジスタM3と直列接続され、トランジスタM2及び抵抗器R1と並列接続される。
【0031】
制御回路31は、トランジスタM6と、抵抗器R2と、トランジスタM7~M11とを有している。トランジスタM6,M9,M10,M11は、Pチャンネルの電界効果トランジスタから構成されている。トランジスタM7,M8は、Nチャンネルの電界効果トランジスタから構成されている。
【0032】
トランジスタM6(=第6のトランジスタ)は、ソースが正電源端子T1に接続され、ゲートがトランジスタM3のゲートに接続される。トランジスタM6は、トランジスタM3にカレントミラー接続され、トランジスタM3に流れる電流を折り返す。抵抗器R2は、一端がトランジスタM6のドレインに接続され、他端が負電源端子T2に接続される。抵抗器R2には、トランジスタM6が折り返した電流が流れる。
【0033】
トランジスタM7(=第7のトランジスタ)は、ゲートが負電源端子T2に接続され、ソースが抵抗器R2を介して負電源端子T2に接続される。トランジスタM7は、ディプリーション型のトランジスタから構成され、抵抗器R2にトランジスタM6が折り返した電流が流れると負バイアスが印加される。
【0034】
トランジスタM8(=第8のトランジスタ)は、ドレインがトランジスタM5のゲートに接続され、ソースがトランジスタM5のソースに接続され、ゲートがトランジスタM1のゲートに接続されている。トランジスタM8は、トランジスタM1にカレントミラー接続され、トランジスタM1に流れる電流を折り返す。
【0035】
トランジスタM9(=第9のトランジスタ)は、ドレインが自身のゲートとトランジスタM7のドレインに接続され、ソースが後述するトランジスタM11を介して正電源端子T1に接続されている。すなわち、トランジスタM7及びM9は直列接続される。
【0036】
トランジスタM10(=第10のトランジスタ)は、ソースが正電源端子T1に接続され、ドレインがトランジスタM8のドレインに接続され、ゲートがトランジスタM9のゲートに接続されている。トランジスタM10は、トランジスタM9にカレントミラー接続され、トランジスタM9に流れる電流を折り返す。トランジスタM8及びM10は直列接続され、そのドレイン同士の接続点である接合ノードCが上述したトランジスタM5のゲートに接続されている。
【0037】
トランジスタM11(=第11のトランジスタ)は、ドレインがトランジスタM9のソースに接続され、ソースが正電源端子T1に接続されている。トランジスタM11は、トランジスタM7,M9と直列接続されている。トランジスタM11のゲートは、接合ノードCに接続されている。
【0038】
次に、上述した構成の定電流回路1の動作について説明する。最初に、電源投入後、トランジスタM1のゲート電位となる接合ノードAの電位がトランジスタM1,M2,M8の閾値電圧より低い場合の動作について説明する。この場合、トランジスタM1,M2,M8はオフ状態となっている。また、ディプリーション型トランジスタM7はオン状態となり、トランジスタM7のドレイン電位が低下するため、トランジスタM10はオン状態となる。
【0039】
トランジスタM8がオフ状態、トランジスタM10がオン状態の場合、接合ノードCの電位がHigh状態となり、トランジスタM5がオン状態、トランジスタM11がオフ状態となる。トランジスタM5がオン状態となると、トランジスタM5は、トランジスタM3からの励起電流を引き抜く。トランジスタM3,M4は、カレントミラー接続されているため、上記励起電流がトランジスタM4のドレイン電流にコピーされる。このトランジスタM4による励起電流は接合ノードAと負電源端子T2との間の寄生容量を充電する。寄生容量を充電した結果、トランジスタM1,M2のゲート・ソース電位差が閾値電圧を超えると、トランジスタM1,M2がオフ状態からオン状態に変化する。
【0040】
また、寄生容量を充電した結果、トランジスタM8のゲート・ソース電位差が閾値電圧を超えると、トランジスタM8がオフ状態からオン状態に変化する。トランジスタM8がオン状態となると、接合ノードCの電位はHigh状態からLow状態に変化し、トランジスタM5はオフ状態となり、励起電流の引き抜きが終了する。この時点でトランジスタM3,M4とトランジスタM1,M2には十分な電流が流れており、定電流発生部2は定常状態へと移行する。
【0041】
一方、起動回路部3では、接合ノードCの電位がHigh状態からLow状態に変化すると(すなわち定電流発生部2が定常状態へ移行すると)、トランジスタM11がオン状態となり、トランジスタM7,M9に電流が流れる。このとき、トランジスタM6のドレイン電流IM6が抵抗器R2を介して負電源端子T2に流れ込んでいる。このため、トランジスタM7に負バイアスがかかり、ディプリーション型トランジスタM7に流れる電流が低下する。トランジスタM9,M11にはトランジスタM7と同じ電流が流れる。トランジスタM9,M10はカレントミラー接続されているため、トランジスタM10のドレイン電流はトランジスタM9に流れる電流に比例した電流がコピーされる。
【0042】
また、トランジスタM7のゲート・ソース電位差は、負の温度係数となるため、抵抗器R2を正の温度係数となる構造とすることで、温度の変動によるトランジスタM7と抵抗器R2で構成された定電流源の電流IM7の変化量を低減させることができる。
【0043】
このとき起動回路部3の定常電流は、トランジスタM7のドレイン電流IM7と、トランジスタM9にカレントミラー接続されたトランジスタM10のドレイン電流IM10と、トランジスタM6のドレイン電流IM6となる。トランジスタM7及びM10のドレイン電流IM7、IM10は、トランジスタM6のドレイン電流IM6とディプリーション型トランジスタM7との働きにより低減されている。このため、起動回路部3の定常電流としては、トランジスタM6のドレイン電流IM6が支配的となる。
【0044】
図6に示されているような従来の定電流回路100の構成例におけるトランジスタM7のドレイン電流IM7は、式3より電源電圧や温度などの影響による変動量が大きい。しかしながら、第1実施形態における起動回路部3の定常電流として支配的なトランジスタM6のドレイン電流IM6は、定電流発生部2で生成された定電流IREF=IM1=IM2と比例するため、式1,式2より電源電圧や温度などによる変動量は小さい。そのため、トランジスタM6のドレイン電流IM6は、トランジスタM5のリーク電流より大きな電流に設計する際に、電源電圧や温度などによる変動量によるマージンを取る必要がなく、起動回路部3の定常電流を低減させることができる。
【0045】
したがって、第1実施形態における定電流回路1では、起動回路部3の定常電流が電源電圧の変動や温度変動に対し影響を受け難い回路構成となっている。このため、起動回路部3の定常電流としては低く設計することができ、定電流回路1全体の消費電流を低減することが可能となる効果が得られるものとなっている。
【0046】
さらに、トランジスタM8に対して、定電流発生部2を構成するトランジスタM1,M2よりも閾値電圧の絶対値を低くすることで、トランジスタM8がオフ状態からオン状態に変化する時間が短縮され、起動回路部3の起動時間が改善される。
【0047】
(第2実施形態)
次に、第2実施形態の定電流回路1Bについて図2を参照して説明する。なお、図2において、図1に示された回路における構成要素と同一の構成要素については、同一符号を付してその詳細な説明を省略する。
【0048】
同図に示すように、定電流回路1Bは、第1実施形態と同様に、定電流発生部2と、起動回路部3Bとを備えている。定電流発生部2は、上述した第1実施形態と同様であるため、ここでは詳細な説明を省略する。
【0049】
第1実施形態の起動回路部3と第2実施形態の起動回路部3Bとで異なる点は、制御回路31Bの構成である。制御回路31Bは、第1実施形態と同様にトランジスタM6~M11と、抵抗器R2とに加えて、トランジスタM12を有している。トランジスタM12は、Pチャンネルの電界効果トランジスタから構成されている。トランジスタM12(=第12のトランジスタ)は、ソースが正電源端子T1に接続され、ドレインがトランジスタM9,M10のゲートに接続され、ゲートがトランジスタM3,M4のゲートに接続されている。
【0050】
上述した構成の定電流回路1Bの動作は、後述する点を除けば、基本的には、第1実施形態と同様である。すなわち、先の第1実施形態においては、定電流発生部2が定常状態へ移行したときは、ドレイン電流IM7と、ドレイン電流IM10と、ドレイン電流IM6が定常電流として流れる。これに対して、第2実施形態では、定電流発生部2が定常状態の場合、トランジスタM12がオン状態となり、トランジスタM10がオフ状態となるため、トランジスタM10のドレイン電流IM10が遮断される。このため、起動回路部3の定常電流は、ドレイン電流IM6と、ドレイン電流IM7とになる。
【0051】
したがって、第2実施形態における起動回路部3Bの定常電流は、第1実施形態における起動回路部3の定常電流に比べて、ドレイン電流IM10分が低減される。
【0052】
しかして、この第2実施形態における定電流回路1Bでは、起動回路部3Bの定常電流が電源電圧変動や温度変動に対し影響が受け難い回路構成となっており、起動回路部3Bの定常電流が低減され、定電流回路1B全体の消費電流を低減することが可能となるという効果が得られるものとなっている。
【0053】
(第3実施形態)
次に、第3実施形態の定電流回路1Cについて図3を参照して説明する。なお、図3において、図1に示された回路における構成要素と同一の構成要素については、同一符号を付してその詳細な説明を省略する。
【0054】
同図に示すように、定電流回路1Cは、第1実施形態と同様に、定電流発生部2と、起動回路部3Cとを備えている。定電流発生部2は、上述した第1実施形態と同様であるため、ここでは詳細な説明を省略する。
【0055】
第1実施形態の起動回路部3と第3実施形態の起動回路部3Cとで異なる点は、制御回路31Cを構成するトランジスタM11のゲートの接続先である。第3実施形態のトランジスタM11のゲートは、トランジスタM3,M4のゲートに接続されている。
【0056】
上述した構成の定電流回路1Cの動作は、後述する点を除けば、基本的には、第1実施形態と同様である。すなわち、電源投入時は、定電流発生部2が定常状態へ移行したとき、先の第1実施形態においては、接合ノードCの電位はLow状態のためトランジスタM11はオン状態となり、トランジスタM9とトランジスタM10はカレントミラー接続としての動作となる。これに対して、第3の実施形態においては、トランジスタM4に十分な電流が流れることでトランジスタM11がオン状態となり、トランジスタM9とトランジスタM10はカレントミラー接続としての動作となる。したがって、第3実施形態のトランジスタM11のゲートの接続先は第1実施形態と異なるが、回路動作は同様となる。
【0057】
しかして、この第3実施形態における定電流回路1Cでは、起動回路部3Cの定常電流が電源電圧変動や温度変動に対し影響が受け難い回路構成となっており、起動回路部3Cの定常電流を低く設計でき、定電流回路1C全体の消費電流を低減することが可能となるという効果が得られるものとなっている。
【0058】
(第4実施形態)
次に、第4実施形態の定電流回路1Dについて図4を参照して説明する。なお、図4において、図2に示された回路における構成要素と同一の構成要素については、同一符号を付してその詳細な説明を省略する。
【0059】
同図に示すように、定電流回路1Dは、第2実施形態と同様に、定電流発生部2と、起動回路部3Dとを備えている。定電流発生部2は、上述した第1実施形態と同様であるため、ここでは詳細な説明を省略する。
【0060】
第2実施形態の起動回路部3Bと第4実施形態の起動回路部3Dとで異なる点は、制御回路31Dを構成するトランジスタM11のゲートの接続先である。第4実施形態のトランジスタM11のゲートは、トランジスタM3,M4のゲートに接続されている。
【0061】
上述した構成の定電流回路1Dの動作は、後述する点を除けば、基本的には、第2実施形態と同様である。すなわち、定電流発生部2が定常状態へ移行したとき、先の第2実施形態においては、接合ノードCの電位はLow状態のためトランジスタM11はオン状態となり、トランジスタM9とトランジスタM10はカレントミラー接続としての動作となる。これに対して、第4の実施形態においては、トランジスタM4に十分な電流が流れることでトランジスタM11がオン状態となり、トランジスタM9とトランジスタM10はカレントミラー接続としての動作となる。したがって、第4実施形態のトランジスタM11のゲートの接続先は第2実施形態と異なるが、回路動作は同様となる。
【0062】
しかして、この第4実施形態における定電流回路1Dでは、起動回路部3Dの定常電流が電源電圧変動や温度変動に対し影響が受け難い回路構成となっており、起動回路部3Dの定常電流を低く設計でき、定電流回路1D全体の消費電流を低減することが可能となるという効果が得られるものとなっている。
【0063】
(第5実施形態)
次に、第5実施形態の定電流回路1Eについて図5を参照して説明する。なお、図5において、図1に示された回路における構成要素と同一の構成要素については、同一符号を付してその詳細な説明を省略する。
【0064】
同図に示すように、定電流回路1Eは、第1実施形態と同様に、定電流発生部2と、起動回路部3Eとを備えている。定電流発生部2は、上述した第1実施形態と同様であるため、ここでは詳細な説明を省略する。
【0065】
第5実施形態の起動回路部3Eと第1実施形態の起動回路部3とで異なる点は、トランジスタM5Eの接続と、トランジスタM8~M11に代えてトランジスタM13を設けた点である。トランジスタM5E、M13は、Pチャンネルの電界効果トランジスタから構成されている。
【0066】
トランジスタM5E(=第5のトランジスタ)は、ソースが正電源端子T1に接続され、ドレインがトランジスタM1のドレインに接続されている。トランジスタM5Eは、トランジスタM1に直列接続され、トランジスタM3,M4に並列接続される。
【0067】
トランジスタM13(=第13のトランジスタ)は、ソースが正電源端子T1に接続され、ドレインがトランジスタM7のドレインに接続され、ゲートがトランジスタM3,M4のゲートに接続されている。トランジスタM7,M13は直列接続される。トランジスタM5Eのゲートは、トランジスタM7,M13のドレイン同士の接続点である接合ノードDに接続される。
【0068】
次に、上述した構成の定電流回路1Eの動作について説明する。最初に、電源投入後、
トランジスタM1のゲート電位となる接合ノードAの電位がトランジスタM1,M2の閾値電圧より低い場合の動作について説明する。このとき、ディプリーション型トランジスタM7はオン状態となる。一方、トランジスタM3,M4には十分に電流が流れていないため、トランジスタM13はオフ状態となる。
【0069】
トランジスタM7がオン状態、トランジスタM13がオフ状態の場合、接合ノードDの電位がLow状態となるため、トランジスタM5Eがオン状態となる。トランジスタM5Eがオン状態となると、トランジスタM5Eを通じて接合ノードAと負電源端子T2との間の寄生容量に電流が供給され、寄生容量を充電する。寄生容量を充電した結果、トランジスタM1,M2のゲート・ソース電位差が閾値電圧を超えると、トランジスタM1,M2がオフ状態からオン状態に変化し、定電流発生部2は定常状態へと移行する。
【0070】
一方、起動回路部3Eでは、定電流発生部2が定常状態となり、トランジスタM3,M4に十分に電流が流れるとトランジスタM13がオン状態となり、トランジスタM5Eがオフ状態となると共に、トランジスタM7にドレイン電流IM7が流れる。
【0071】
第5実施形態においては、起動回路部3Eの定常電流は、ドレイン電流IM6と、ドレイン電流IM6により低減されたドレイン電流IM7となる。定常電流としては、ドレイン電流IM6が支配的となる。ドレイン電流IM6は、定電流発生部2で生成された定電流IREFと比例するため、電源電圧や温度などによる変動量は小さい。そのため、ドレイン電流IM6は、電源電圧や温度などによる変動量によるマージンを取る必要がなく、起動回路部3Eの定常電流を低く設計することができる。
【0072】
しかして、この第5実施形態における定電流回路1Eでは、起動回路部3Eの定常電流が電源電圧変動や温度変動に対し影響が受け難い回路構成となっており、起動回路部3Eの定常電流を低く設計でき、定電流回路1E全体の消費電流を低減することが可能となるという効果が得られるものとなっている。
【0073】
さらに、トランジスタM13に対して、定電流発生部2を構成するトランジスタM3,M4よりも閾値電圧の絶対値を低くすることで、トランジスタM13がオフ状態からオン状態に変化する時間が短縮され、起動回路部3Eの起動時間が改善される。
【0074】
なお、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、適宜、変形、改良、等が可能である。その他、上述した実施形態における各構成要素の材質、形状、寸法、数、配置箇所、等は本発明を達成できるものであれば任意であり、限定されない。
【0075】
例えば、上述した第1~第5実施形態では、トランジスタM1~M4、M5(E)、M6~M13は、電界効果トランジスタから構成されていたが、これに限ったものではない。M1~M4、M5(E)、M6~M13の少なくとも一つ以上が、バイポーラトランジスタから構成されていてもよい。この場合、トランジスタのゲートをベースに、ソースをエミッタに、ドレインをコレクタに置き換えて説明することができる。
【符号の説明】
【0076】
1、1B~1E 定電流回路
2 定電流発生部
3、3B~3E 起動回路部
31、31B~31E 制御回路
M1 トランジスタ(第1のトランジスタ)
M2 トランジスタ(第2のトランジスタ)
M3 トランジスタ(第3のトランジスタ)
M4 トランジスタ(第4のトランジスタ)
M5、M5E トランジスタ(第5のトランジスタ)
M6 トランジスタ(第6のトランジスタ)
M7 トランジスタ(第7のトランジスタ)
M8 トランジスタ(第8のトランジスタ)
M9 トランジスタ(第9のトランジスタ)
M10 トランジスタ(第10のトランジスタ)
M11 トランジスタ(第11のトランジスタ)
M12 トランジスタ(第12のトランジスタ)
M13 トランジスタ(第13のトランジスタ)
R1、R2 抵抗器
図1
図2
図3
図4
図5
図6