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特開2023-87841ロータリースクリーン印刷機用の制御装置、制御方法、及びプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023087841
(43)【公開日】2023-06-26
(54)【発明の名称】ロータリースクリーン印刷機用の制御装置、制御方法、及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   B41F 31/20 20060101AFI20230619BHJP
   B41F 15/40 20060101ALI20230619BHJP
【FI】
B41F31/20
B41F15/40 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021202344
(22)【出願日】2021-12-14
(71)【出願人】
【識別番号】303017679
【氏名又は名称】独立行政法人 国立印刷局
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 智久
【テーマコード(参考)】
2C035
2C250
【Fターム(参考)】
2C035RA24
2C035RA29
2C250DA03
2C250DA04
2C250DB14
2C250DB21
2C250EB17
(57)【要約】
【課題】ロータリースクリーン印刷機の印刷不良を低減することが可能な制御装置を提供する。
【解決手段】本発明に係る制御装置は、スクリーン版胴と、スキージと、インキ回収手段と、インキ量センサと、排出ポンプと、外部タンクと、供給ポンプと、を含むロータリースクリーン印刷機用の制御装置である。この制御装置は、インキ量センサによって検出されたインキ量の経時的変化を示すインキ量変化データと、インキ量に基づいて排出ポンプまたは供給ポンプの状態が変化した時刻を示す状態変化時刻データと、を記録する記憶部と、インキ量変化データを用いてスクリーン版胴内のインキ変化率を算出するとともに、状態変化時刻データを用いて排出ポンプまたは供給ポンプの状態変化の頻度を算出するデータ処理部と、インキ量、インキ変化率、および頻度に基づいて、排出ポンプおよび供給ポンプを制御する駆動制御部と、を備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
円筒状のスクリーン版胴と、前記スクリーン版胴の内面に上向きに接するスキージと、前記スクリーン版胴内でインキを回収するインキ回収手段と、前記インキ回収手段に滞留するインキ量を検出するインキ量センサと、前記インキ回収手段から前記インキを排出する排出ポンプと、前記排出ポンプによって排出された前記インキを貯蔵する外部タンクと、前記外部タンクに貯蔵されたインキを前記スクリーン版胴内に供給する供給ポンプと、を含むロータリースクリーン印刷機用の制御装置であって、
前記インキ量センサによって検出されたインキ量の経時的変化を示すインキ量変化データと、前記インキ量に基づいて前記排出ポンプ及び/又は前記供給ポンプの状態が変化した時刻を示す状態変化時刻データと、を記憶する記憶部と、
前記インキ量変化データを用いて前記スクリーン版胴内のインキ変化率を算出するとともに、前記状態変化時刻データを用いて前記排出ポンプ及び/又は前記供給ポンプの状態変化の頻度を算出するデータ処理部と、
前記インキ量、前記インキ変化率、及び前記頻度に基づいて、前記排出ポンプ及び前記供給ポンプを制御する駆動制御部と、
を備える制御装置。
【請求項2】
前記排出ポンプは、前記インキ量が下限値を下回ったときに停止するとともに、前記インキ量が上限値を上回ったときに作動し、
前記データ処理部は、前記インキ量変化データを用いて前記インキの減少率を算出するとともに、前記状態変化時刻データを用いて前記排出ポンプの停止頻度を算出し、
前記停止頻度が所定回数を上回り、かつ前記減少率の平均値が所定値を上回っている場合、前記駆動制御部は、前記インキの供給量が増加するように前記供給ポンプを制御する、請求項1に記載の制御装置。
【請求項3】
前記供給ポンプは、前記インキ量が上限値を上回ったときに停止するとともに、前記インキ量が下限値を下回ったときに作動し、
前記データ処理部は、前記インキ量変化データを用いて前記インキの増加率を算出するとともに、前記状態変化時刻データを用いて前記供給ポンプの停止頻度を算出し、
前記停止頻度が所定回数を上回り、かつ前記増加率の平均値が所定値を上回っている場合、前記駆動制御部は、前記インキの排出量が増加するように前記排出ポンプを制御する、請求項1又は2に記載の制御装置。
【請求項4】
円筒状のスクリーン版胴と、前記スクリーン版胴の内面に上向きに接するスキージと、前記スクリーン版胴内でインキを回収するインキ回収手段と、前記インキ回収手段に滞留するインキ量を検出するインキ量センサと、前記インキ回収手段から前記インキを排出する排出ポンプと、前記排出ポンプによって排出された前記インキを貯蔵する外部タンクと、前記外部タンクに貯蔵されたインキを前記スクリーン版胴内に供給する供給ポンプと、を含むロータリースクリーン印刷機用の制御方法であって、
前記インキ量センサによって検出されたインキ量の経時的変化を示すインキ量変化データを記憶し、
前記インキ量に基づいて前記排出ポンプ及び/又は前記供給ポンプの状態が変化した時刻を示す状態変化時刻データを記憶し、
前記インキ量変化データを用いて前記スクリーン版胴内のインキ変化率を算出し、
前記状態変化時刻データを用いて前記排出ポンプ及び/又は前記供給ポンプの状態変化の頻度を算出し、
前記インキ量、前記インキ変化率、及び前記頻度に基づいて、前記排出ポンプ及び前記供給ポンプを制御する、
制御方法。
【請求項5】
前記排出ポンプは、前記インキ量が下限値を下回ったときに停止するとともに、前記インキ量が上限値を上回ったときに作動し、
前記インキ量変化データを用いて前記インキの減少率を算出し、
前記状態変化時刻データを用いて前記排出ポンプの停止頻度を算出し、
前記停止頻度が所定回数を上回り、かつ前記減少率の平均値が所定値を上回っている場合、前記インキの供給量が増加するように前記供給ポンプを制御する、請求項4に記載の制御方法。
【請求項6】
前記供給ポンプは、前記インキ量が上限値を上回ったときに停止するとともに、前記インキ量が下限値を下回ったときに作動し、
前記インキ量変化データを用いて前記インキの増加率を算出し、
前記状態変化時刻データを用いて前記供給ポンプの停止頻度を算出し、
前記停止頻度が所定回数を上回り、かつ前記増加率の平均値が所定値を上回っている場合、前記インキの排出量が増加するように前記排出ポンプを制御する、請求項4又は5に記載の制御方法。
【請求項7】
円筒状のスクリーン版胴と、前記スクリーン版胴の内面に上向きに接するスキージと、前記スクリーン版胴内でインキを回収するインキ回収手段と、前記インキ回収手段に滞留するインキ量を検出するインキ量センサと、前記インキ回収手段から前記インキを排出する排出ポンプと、前記排出ポンプによって排出された前記インキを貯蔵する外部タンクと、前記外部タンクに貯蔵されたインキを前記スクリーン版胴内に供給する供給ポンプと、を含むロータリースクリーン印刷機を制御する処理をコンピュータに実行させるためのプログラムであって、
前記インキ量センサによって検出されたインキ量の経時的変化を示すインキ量変化データを記憶し、
前記インキ量に基づいて前記排出ポンプ及び/又は前記供給ポンプの状態が変化した時刻を示す状態変化時刻データを記憶し、
前記インキ量変化データを用いて前記スクリーン版胴内のインキ変化率を算出し、
前記状態変化時刻データを用いて前記排出ポンプ及び/又は前記供給ポンプの状態変化の頻度を算出し、
前記インキ量、前記インキ変化率、及び前記頻度に基づいて、前記排出ポンプ及び前記供給ポンプを制御する、プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロータリースクリーン印刷を行う印刷機用の制御装置、制御方法、及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
ロータリースクリーン印刷機において、高精細な画線を、高速で印刷するためには、インキの粘度が低いことが好ましい。特許文献1には、スキージが円筒状のスクリーン版胴の内面に上向きに接する印刷機構を備えるロータリースクリーン印刷機が提案されている。この印刷機によれば、上向きスキージ機構を採用することによって、インキ量を制御しながら、好適な印刷品質を得ることができる。
【0003】
上向きスキージ機構を採用したロータリースクリーン印刷機では、スキージとスクリーン版胴との間で発生する摩擦及び印刷機が発する熱によってインキの温度が上昇したり、外気の影響でインキの温度が低下したりする場合がある。この場合、インキの粘度が変化して、印刷適性を損なうことが想定される。そのため、特許文献1に記載の印刷機は、スクリーン版胴内と接続され、温度調整機構を備えた外部タンクも具備している。さらに、スクリーン版胴内と外部タンクとの間でインキを循環するために、外部タンクからスクリーン版胴内にインキを供給する供給ポンプと、スクリーン版胴内から外部タンクへインキを排出する排出ポンプも設置されている。供給ポンプ及び排出ポンプの動作は、スクリーン版胴内のインキ量に応じて制御される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009-137094号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
良好な印刷品質を確保するためには、上述した外部タンクから印刷に好適な温度に調整されたインキを絶えずスクリーン版胴内に供給するとともに、スクリーン版胴内のインキを絶えず外部タンクに排出することと、スクリーン版胴内のインキ量を変動させないことが望ましい。
【0006】
例えば、供給ポンプが作動した場合の単位時間当たりのインキ供給量が、排出ポンプが作動した場合の単位時間当たりのインキ排出量と、印刷基材へのインキ転移によって消費される単位時間当たりのインキ消費量との合計に等しければ、スクリーン版胴内のインキ量の変動を抑制することは、常に供給ポンプと排出ポンプとの連続的な作動によって容易に達成することができる。
【0007】
しかし、現実には印刷デザインごとに画線面積は異なるため、印刷基材に転移するインキ量は都度異なる。また、印刷を実施する際の室温や、印刷開始からの時間経過に伴うスクリーン版胴の温度変化によってもたらされるインキ温度の変化が、外部タンクの温度調整機構をもって抑制しきれない場合がある。この場合には、インキ流動特性が変化し、それに伴って供給量と排出量のバランスに変化が生じる。
【0008】
スクリーン版胴内のインキ量は、各ポンプの供給量と排出量との差によって、減少あるいは増加する。また、各ポンプの作動と停止とは、設定値によって切り替わる。そのため、インキ量の変動は、その設定値に基づくポンプの作動と停止の切り替えによって、一定の範囲内に収まる。
【0009】
しかし、各ポンプの作動と停止の切り替えは、インキ量の増加と減少が交互に繰り返される状態をもたらし、本来理想とする供給量と排出量が拮抗する安定状態とは異なる。また、インキ量の増加と減少が交互に繰り返されると、必然的にスキージ先端に供給されるインキ量も増減を繰り返すことになる。
【0010】
スクリーン版胴内で短時間に頻繁なインキ量の増減が繰り返されると、印刷基材に画線欠けや、がさつき等の印刷不良が起こりやすくなる。
【0011】
そこで、本発明は、ロータリースクリーン印刷機の印刷不良を低減することが可能な制御装置、制御方法、及びプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明に係る制御装置は、円筒状のスクリーン版胴と、スクリーン版胴の内面に上向きに接するスキージと、スクリーン版胴内でインキを回収するインキ回収手段と、インキ回収手段に滞留するインキ量を検出するインキ量センサと、インキ回収手段からインキを排出する排出ポンプと、排出ポンプによって排出されたインキを貯蔵する外部タンクと、外部タンクに貯蔵されたインキをスクリーン版胴内に供給する供給ポンプと、を含むロータリースクリーン印刷機用の制御装置である。この制御装置は、インキ量センサによって検出されたインキ量の経時的変化を示すインキ量変化データと、インキ量に基づいて排出ポンプ及び/又は供給ポンプの状態が変化した時刻を示す状態変化時刻データと、を記憶する記憶部と、インキ量変化データを用いてスクリーン版胴内のインキ変化率を算出するとともに、状態変化時刻データを用いて排出ポンプ及び/又は供給ポンプの状態変化の頻度を算出するデータ処理部と、インキ量、インキ変化率、及び頻度に基づいて、排出ポンプ及び供給ポンプを制御する駆動制御部と、を備える。
【0013】
上記制御装置において、排出ポンプはインキ量が下限値を下回ったときに停止するとともに、インキ量が上限値を上回ったときに作動し、インキ量変化データを用いてインキの減少率を算出するとともに、状態変化時刻データを用いて排出ポンプの停止頻度を算出するデータ処理部を有し、停止頻度が所定回数を上回り、かつ減少率の平均値が所定値を上回っている場合、駆動制御部は、インキの供給量が増加するように供給ポンプを制御してもよい。
【0014】
上記制御装置において、供給ポンプはインキ量が上限値を上回ったときに停止するとともに、インキ量が下限値を下回ったときに作動し、インキ量変化データを用いてインキの増加率を算出するとともに、状態変化時刻データを用いて供給ポンプの停止頻度を算出するデータ処理部を有し、停止頻度が所定回数を上回り、かつ増加率の平均値が所定値を上回っている場合、駆動制御部は、インキの排出量が増加するように排出ポンプを制御してもよい。
【0015】
本発明に係る制御方法は、円筒状のスクリーン版胴と、スクリーン版胴の内面に上向きに接するスキージと、スクリーン版胴内でインキを回収するインキ回収手段と、インキ回収手段に滞留するインキ量を検出するインキ量センサと、インキ回収手段からインキを排出する排出ポンプと、排出ポンプによって排出されたインキを貯蔵する外部タンクと、外部タンクに貯蔵されたインキをスクリーン版胴内に供給する供給ポンプと、を含むロータリースクリーン印刷機用の制御方法であって、
インキ量センサによって検出されたインキ量の経時的変化を示すインキ量変化データを記憶し、インキ量に基づいて排出ポンプ及び/又は供給ポンプの状態が変化した時刻を示す状態変化時刻データを記憶し、インキ量変化データを用いてスクリーン版胴内のインキ変化率を算出し、状態変化時刻データを用いて排出ポンプ及び/又は供給ポンプの状態変化の頻度を算出し、インキ量、インキ変化率、及び頻度に基づいて、排出ポンプ及び供給ポンプを制御する。
【0016】
上記制御方法において、
排出ポンプは、インキ量が下限値を下回ったときに停止するとともに、インキ量が上限値を上回ったときに作動し、インキ量変化データを用いてインキの減少率を算出し、状態変化時刻データを用いて排出ポンプの停止頻度を算出し、停止頻度が所定回数を上回り、かつ減少率の平均値が所定値を上回っている場合、インキの供給量が増加するように供給ポンプを制御してもよい。
【0017】
上記制御方法において、
供給ポンプは、インキ量が上限値を上回ったときに停止するとともに、インキ量が下限値を下回ったときに作動し、インキ量変化データを用いてインキの増加率を算出し、状態変化時刻データを用いて供給ポンプの停止頻度を算出し、停止頻度が所定回数を上回り、かつ増加率の平均値が所定値を上回っている場合、インキの排出量が増加するように排出ポンプを制御してもよい。
【0018】
本発明に係るプログラムは、円筒状のスクリーン版胴と、スクリーン版胴の内面に上向きに接するスキージと、スクリーン版胴内でインキを回収するインキ回収手段と、インキ回収手段に滞留するインキ量を検出するインキ量センサと、インキ回収手段からインキを排出する排出ポンプと、排出ポンプによって排出されたインキを貯蔵する外部タンクと、外部タンクに貯蔵されたインキをスクリーン版胴内に供給する供給ポンプと、を含むロータリースクリーン印刷機を制御する処理をコンピュータに実行させるためのプログラムであって、
インキ量センサによって検出されたインキ量の経時的変化を示すインキ量変化データを記憶し、インキ量に基づいて排出ポンプ及び/又は供給ポンプの状態が変化した時刻を示す状態変化時刻データを記憶し、インキ量変化データを用いてスクリーン版胴内のインキ変化率を算出し、状態変化時刻データを用いて排出ポンプ及び/又は供給ポンプの状態変化の頻度を算出し、インキ量、インキ変化率、及び頻度に基づいて、排出ポンプ及び供給ポンプを制御する。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、ロータリースクリーン印刷機の印刷不良を低減することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明の第1実施形態に係る制御装置の概略的な構成を示す正面図である。
図2】(a)はインキ量変化データの一例を示す図であり、(b)は状態変化時刻データの一例を示す図である。
図3】第1実施形態の制御装置による制御動作の手順の一例を示すフローチャートである。
図4】第1実施形態の制御装置で制御されるポンプの動作と、滞留槽に滞留しているインキ量との関係の一例を示すタイミングチャートである。
図5】本発明の第2実施形態の制御装置による制御動作の手順の一例を示すフローチャートである。
図6】第2実施形態の制御装置で制御されるポンプの動作と、滞留槽に滞留しているインキ量との関係の一例を示すタイミングチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明の実施形態について、図面を参照して説明する。しかしながら、本発明は、以下に述べる実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲記載における技術的思想の範囲内であれば、その他の様々な実施形態が含まれる。
【0022】
(第1実施形態)
図1は、本発明の第1実施形態に係るロータリースクリーン印刷機の概略的な構成を示す図である。図1に示すロータリースクリーン印刷機1は、印刷機構10と、インキ循環機構20と、制御装置30と、を含む。なお、ロータリースクリーン印刷機1は、これらに加えて、被印刷物を印刷機構10へ給紙する給紙部(不図示)や、印刷機構10から被印刷物を排出する排紙部(不図示)等も備える。
【0023】
まず、印刷機構10について説明する。印刷機構10は、スクリーン版胴11と、スキージ12と、滞留槽13と、インキ量センサ14と、を有する。スクリーン版胴11は、円筒状の部材であり、その外周部には、貫通孔が形成されている。印刷時には、スクリーン版胴11が一方向(図1では時計回り)に回転する。これにより、インキが貫通孔から上向きに吐出される。吐出されたインキは、スクリーン版胴11と圧胴(不図示)との間に挟まれた被印刷物へ転移する。
【0024】
スキージ12は、スクリーン版胴11内に設けられている。スキージ12は、支持体(不図示)に固定されている。スキージ12の先端は、インキが上向きに吐出されるように、スクリーン版胴11の内面に上向きに接している。スキージ12は、スクリーン版胴11の貫通孔にインキEを押し込むとともに、余剰インキをかき取る。押し込まれたインキEは、スクリーン版胴11の回転に伴って、被印刷物に転移する。これにより、インキパターンが被印刷物に形成される。
【0025】
滞留槽13も、スクリーン版胴11内に設けられている。滞留槽13は、インキ回収手段の一例であり、被印刷物に転移せずにスキージ12によりかき取られたインキEを回収する。
【0026】
インキ量センサ14は、滞留槽13に滞留したインキ量を検出する。インキ量センサ14は、例えば圧力センサで構成される。滞留槽13に滞留したインキ量が多くなるにつれて、この圧力センサで計測される圧力値が高くなる。すなわち、インキ量センサ14は、計測した圧力値をインキ量に換算して滞留槽13に滞留したインキ量を検出する。なお、インキ量の検出方法は、圧力に限定されず、他の方法であってもよい。
【0027】
次に、スクリーン版胴11の外に設けられたインキ循環機構20を説明する。インキ循環機構20は、排出ポンプ21と、外部タンク22と、供給ポンプ23と、を有し、これらはパイプ24を介して滞留槽13に連通している。
【0028】
排出ポンプ21は、パイプ24を介して滞留槽13内に設けられた回収口131と接続されている。排出ポンプ21は、滞留槽13からインキを排出する。排出されたインキは、パイプ24を通じて外部タンク22へ貯蔵される。
【0029】
外部タンク22には、排出ポンプ21によって排出されたインキEや、未使用のインキが貯蔵されている。この外部タンク22内には、温度調節機構(不図示)が設けられている。温度調節機構は、例えば、外部タンク22の内側面及び底面に設置された帯状のヒータである。なお、このヒータの形状は、帯状に限定されず、外部タンク22の内部に設けることが可能な形状であればよい。また、この温度調節機構は、外部タンク22に貯蔵されているインキの粘度が予め任意に設定された設定値(例えば、2Pa・s以下の値)に保持されるようにインキの温度を制御する機能を有することが好ましい。例えば、外部タンク22内のインキの温度を監視し、温度変化に応じてヒーターを作動させ、外部タンク22内のインキを冷却・加温する。また、インキの温度変化と粘度変化の関係をあらかじめ把握しておき、求める粘度が得られる温度帯でインキの温度を管理してもよい。
【0030】
供給ポンプ23は、パイプ24を通じて、外部タンク22に貯蔵されたインキをスクリーン版胴11内に供給する。供給ポンプ23及び排出ポンプ21は、制御装置30によるインバータ制御によって、単位時間当たりのインキ送り量を調整することができる。すなわち、供給ポンプ23は、スクリーン版胴11内への単位時間当たりのインキ供給量を調整することができ、排出ポンプ21は、滞留槽13からの単位時間当たりのインキ排出量を調整することができる。
【0031】
次に、インキ循環機構20を制御する制御装置30を説明する。制御装置30は、記憶部31と、データ処理部32と、駆動制御部33と、を有する。制御装置30は、例えば、所定のプログラムによってインキ循環機構20を制御するPLC(Programmable Logic Controller)で構成されている。
【0032】
記憶部31には、上記プログラムや、種々のデータが記憶されている。ここで、図2(a)及び図2(b)を参照して、記憶部31に記憶されるデータの一例を説明する。
【0033】
図2(a)は、インキ量変化データの一例を示す図である。図2(a)に示すインキ量変化データ311は、インキ量センサ14で検出されたインキ量と、検出時刻とを対応付けて記憶することによって、滞留槽13に貯蔵されたインキ量の経時的変化を示している。
【0034】
一方、図2(b)は、状態変化時刻データの一例を示す図である。図2(b)に示す状態変化時刻データ312は、排出ポンプ21及び供給ポンプ23の状態変化時刻を示す。この状態変化時刻は、各ポンプが作動状態から停止状態に変化した時刻、又は停止状態から作動状態に変化した時刻である。なお、状態変化時刻データ312には、排出ポンプ21及び供給ポンプ23両方の状態変化時刻が記憶されているが、いずれか一方のポンプの状態変化時刻のみが記憶されてもよい。
【0035】
データ処理部32は、記憶部31に記憶されたインキ量変化データ311を用いて、インキ変化率(インキの増加率あるいはインキの減少率)を算出する。
また、データ処理部32は、記憶部31に記憶された状態変化時刻データ312を用いて排出ポンプ21及び/又は供給ポンプ23の状態変化の頻度を算出する。
【0036】
駆動制御部33は、インキ量センサ14で検出されたインキ量、ならびにデータ処理部32で算出されたインキ変化率及び状態変化の頻度に基づいて、排出ポンプ21及び/又は供給ポンプ23を制御する。
【0037】
以下、図3及び図4を参照して、本実施形態に係る制御装置30の動作について説明する。図3は、制御装置30による制御動作の手順の一例を示すフローチャートである。また、図4は、制御装置30で制御されるポンプの動作と、滞留槽13に滞留しているインキ量との関係の一例を示すタイミングチャートである。
【0038】
印刷機構10が印刷を開始したとき、排出ポンプ21は、制御装置30の駆動制御部33から入力された制御信号SG1(図4参照)に基づいて、滞留槽13から外部タンク22へインキを定量的に排出する。このとき、供給ポンプ23は、制御装置30の駆動制御部33から入力された制御信号SG2(図4参照)に基づいて、外部タンク22からスクリーン版胴11へインキを定量的に供給する。
【0039】
また、制御装置30のデータ処理部32は、インキ量センサ14で検出されたインキ量を定期的に取得する(ステップS101)。取得されたインキ量は、インキ量変化データとして記憶部31に記憶される(ステップS102)。
【0040】
印刷が進むと、滞留槽13に滞留するインキ量も減少していく。そのため、データ処理部32は、取得したインキ量が下限値LL(図4参照)を下回っているか否かを判定する(ステップS103)。
【0041】
インキ量が下限値LLを下回った判定結果がデータ処理部32から駆動制御部33に通知されると、駆動制御部33は、排出ポンプ21に対して停止を指令する制御信号SG1を出力する(ステップS104)。このとき、この制御信号SG1の出力時刻が、排出ポンプ21の停止時刻t11(図4参照)を示す状態変化時刻データとして、記憶部31に記憶される(ステップS105)。なお、インキ量が下限値を下回っていない場合には、駆動制御部33は、排出ポンプ21及び供給ポンプ23の作動内容を維持する。
【0042】
ステップS104で排出ポンプ21が停止する一方で、供給ポンプ23は作動し続けるため、滞留槽13に滞留されるインキ量は増加していく。そのため、データ処理部32は、取得したインキ量が上限値UL(図4参照)を上回っているか否かを判定する(ステップS106)。
【0043】
インキ量が上限値ULを上回った判定結果がデータ処理部32から駆動制御部33に通知されると、駆動制御部33は、排出ポンプ21に対して作動を指令する制御信号SG1を出力する(ステップS107)。
【0044】
上述したステップS103~ステップS107の動作、すなわち、駆動制御部33が、インキ量を下限値及び上限値と比較した結果に基づいて排出ポンプ21及び/又は供給ポンプ23を制御する動作は、図4に示すように、ある程度繰り返される。ただし、本実施形態では、上記動作中に、データ処理部32が、記憶部31から読み出したインキ量変化データ311を用いてインキ量の減少率pを算出する(ステップS108)。減少率pは、例えば図4に示すようにΔA/Δtで算出することができる。ここで、Δtは、インキ量が極大値MAXになった時刻、すなわち、上限値ULに達した時刻からの経過時間であり、予め設定されている。一方、ΔAは、Δtの期間で減少したインキ量である。
【0045】
データ処理部32は、上記のように減少率pを算出した後、続いて、記憶部31から読み出した状態変化時刻データ312を用いて、排出ポンプ21の停止頻度fを算出する(ステップS109)。停止頻度fは、例えば図4に示すように所定期間T内でインキ量が下限値LLに達した回数である。この回数は、状態変化時刻データ312に示された停止時刻t11~t14の数をカウントすることによって算出することができる。
【0046】
続いて、データ処理部32は、停止頻度fが所定回数Nを上回っているか否かを判定する(ステップS110)。ステップS110では、現時点と、現時点から所定期間Tだけ遡った時点との間における排出ポンプ21の停止頻度fが許容範囲内であるか否かが判定される。停止頻度fが所定回数Nを上回っている場合、データ処理部32は、所定期間T内におけるインキ量の減少率pの平均値mが所定値Pを上回っているか否かを判定する(ステップS111)。
【0047】
平均値mが所定値Pを上回っている場合、データ処理部32は、その判定結果を駆動制御部33へ通知する。この場合、図4に示すように、駆動制御部33は、排出ポンプ21の作動期間D1中にインキ供給量を増加させる指令を示す制御信号SG2を供給ポンプ23へ出力する(ステップS112)。その結果、インキ量の減少率pが抑制される。
【0048】
したがって、上述した本実施形態によれば、スクリーン版胴11内のインキ量の変動に応じて、排出ポンプ21の作動中に供給ポンプ23がインキ供給量を適切に増加させることによって、スクリーン版胴11内におけるインキ量の急激な減少を抑制することができる。これにより、インキ量の頻繁な増減を回避できるため、ロータリースクリーン印刷機の印刷不良を低減することが可能となる。
【0049】
また、本実施形態では、スクリーン版胴11内でインキ量が増減する頻度が高まった場合には、制御装置30の制御で自動的に対処できるため、オペレータによるポンプの誤操作が発生する可能性を排除することもできる。
【0050】
さらに、インキの種類、インキパターン、ポンプの種類、インキ経路長等の条件が変更されても、その都度設定した各種パラメータに基づいて排出ポンプ21及び/又は供給ポンプ23を自動制御することによって、最適なインキ循環を提供することが可能となる。
【0051】
(第2実施形態)
以下、本発明の第2実施形態について説明する。本実施形態に係るロータリースクリーン印刷機の構成は、上述した第1実施形態に係るロータリースクリーン印刷機1と同じであるため、説明を省略する。本実施形態では、制御装置30の動作内容が第1実施形態と異なる。ここで、図5及び図6を参照して、本実施形態の制御装置30の動作について説明する。
【0052】
図5は、第2実施形態の制御装置30による制御動作の手順の一例を示すフローチャートである。また、図6は、第2実施形態の制御装置30で制御されるポンプの動作と、滞留槽13に滞留しているインキ量との関係の一例を示すタイミングチャートである。
【0053】
印刷機構10が印刷を開始すると、第1実施形態と同じように、制御装置30のデータ処理部32が、インキ量センサ14で検出されたインキ量を定期的に取得する(ステップS201)。取得されたインキ量は、インキ量変化データとして記憶部31に経時的に記憶される(ステップS202)。
【0054】
印刷機構10の印刷中には、第1実施形態と同様に、駆動制御部33が、インキ量センサ14から取得したインキ量を下限値LL又は上限値ULと比較した結果に基づいて排出ポンプ21及び供給ポンプ23を制御する動作が繰り返される。
【0055】
ただし、本実施形態では、データ処理部32が、取得したインキ量が上限値UL(図6参照)を上回っているか否か判定し(ステップS203)、その結果、インキ量が上限値ULを上回った場合、駆動制御部33が、供給ポンプ23に対して停止を指令する制御信号SG2を出力する(ステップS204)。この場合、この制御信号SG2の出力時刻が、供給ポンプ23の停止時刻t21(図6参照)を示す状態変化時刻データとして、記憶部31に記憶される(ステップS205)。なお、インキ量が上限値を上回っていない場合には、駆動制御部33は、排出ポンプ21及び供給ポンプ23の作動内容を維持する。
【0056】
ステップS204で供給ポンプ23が停止する一方で、排出ポンプ21は作動し続けるため、滞留槽13に滞留されるインキ量は減少していく。そのため、データ処理部32は、取得したインキ量が下限値LL(図6参照)を下回っているか否かを判定する(ステップS206)。
【0057】
インキ量が下限値LLを下回った判定結果がデータ処理部32から駆動制御部33に通知されると、駆動制御部33は、供給ポンプ23に対して作動を指令する制御信号SG2を出力する(ステップS207)。
【0058】
また、本実施形態では、上述したステップS203~ステップS207の動作中に、データ処理部32が、記憶部31から読み出したインキ量変化データ311を用いてインキ量の増加率qを算出する(ステップS208)。増加率qは、例えば図6に示すようにΔB/Δtで算出することができる。ここで、Δtは、インキ量が極小値MINになった時刻、すなわち、下限値LLに達した時刻からの経過時間であり、予め設定されている。一方、ΔBは、Δtの期間で増加したインキ量である。
【0059】
データ処理部32は、上記のように増加率qを算出した後、続いて、記憶部31から読み出した状態変化時刻データ312を用いて、供給ポンプ23の停止頻度fを算出する(ステップS209)。停止頻度fは、例えば図6に示すように所定期間T内でインキ量が上限値ULに達した回数である。この回数は、状態変化時刻データ312に示された停止時刻t21~t24の数をカウントすることによって算出することができる。
【0060】
続いて、データ処理部32は、停止頻度fが所定回数Nを上回っているか否かを判定する(ステップS210)。ステップS210では、現時点と、現時点から所定期間Tだけ遡った時点との間における供給ポンプ23の停止頻度fが許容範囲内であるか否かが判定される。停止頻度fが所定回数Nを上回っている場合、データ処理部32は、所定期間T内におけるインキ量の増加率qの平均値Mが所定値Qを上回っているか否かを判定する(ステップS211)。
【0061】
平均値Mが所定値Qを上回っている場合、データ処理部32は、その判定結果を駆動制御部33へ通知する。この場合、図6に示すように、駆動制御部33は、供給ポンプ23の作動期間D2中にインク排出量を増加させる指令を示す制御信号SG2を排出ポンプ21へ出力する(ステップS212)。その結果、インキ量の増加率qが抑制される。
【0062】
したがって、上述した本実施形態によれば、スクリーン版胴11内のインキ量の変動に応じて、供給ポンプ23の作動中に排出ポンプ21がインキ供給量を適切に減少させることによって、スクリーン版胴11内におけるインキ量の急激な増加を抑制することができる。これにより、インキ量の頻繁な増減を回避できるため、ロータリースクリーン印刷機の印刷不良を低減することが可能となる。
【0063】
なお、上述した各実施形態では、スクリーン版胴11内におけるインキ量の減少率又は増加率のいずれか一方を抑制するように、駆動制御部33が、排出ポンプ21及び/又は供給ポンプ23を制御しているが、第1実施形態及び第2実施形態を組み合わせて減少率及び増加率の両方を抑制するように各ポンプを制御してもよい。この場合、インキ量が増減する頻度をさらに抑制できるため、ロータリースクリーン印刷機の印刷不良をより一層低減することが可能となる。
【0064】
また、本実施形態では、データ処理部32は、排出ポンプ21又は供給ポンプ23の停止頻度を算出しているが、各ポンプが停止状態から作動状態に変化する作動時刻に基づいて作動頻度を算出してもよい。この場合、作動頻度及びインキ量の変化率(減少率又は増加率)に基づいて、駆動制御部33が、排出ポンプ21を通じてインキ排出量を制御するとともに、供給ポンプ23を通じてインキ供給量を制御する。このように、駆動制御部33が、排出ポンプ21及び供給ポンプ23を適切に制御することによって、ロータリースクリーン印刷機の印刷不良を低減することが可能となる。
【0065】
また、記憶部31、データ処理部32、駆動制御部33と同等の機能を備えるコンピュータに、前述したロータリースクリーン印刷機のインキ供給及び/又はインキ排出の制御を実行させるためのプログラムを用いて実現することもできる。
【符号の説明】
【0066】
1:ロータリースクリーン印刷機
11:スクリーン版胴
12:スキージ
13:滞留槽(インキ回収手段)
14:インキ量センサ
21:排出ポンプ
22:外部タンク
23:供給ポンプ
30:制御装置
31:記憶部
32:データ処理部
33:駆動制御部
図1
図2
図3
図4
図5
図6