(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023087962
(43)【公開日】2023-06-26
(54)【発明の名称】洗掘防止構造及びその施工方法
(51)【国際特許分類】
E02B 3/04 20060101AFI20230619BHJP
【FI】
E02B3/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021202545
(22)【出願日】2021-12-14
(71)【出願人】
【識別番号】591224766
【氏名又は名称】ナカダ産業株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】501203344
【氏名又は名称】国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】関谷 勇太
(72)【発明者】
【氏名】石川 祐介
(72)【発明者】
【氏名】田代 洋一
(72)【発明者】
【氏名】常住 直人
【テーマコード(参考)】
2D118
【Fターム(参考)】
2D118AA05
2D118BA01
2D118BA03
2D118BA07
2D118BA14
2D118CA07
2D118GA31
2D118HA04
2D118HB08
(57)【要約】
【課題】保護ブロック底部及び周囲の砂礫の吸出しや漏出を抑え、複数の保護ブロックの設置状態を安定させること。
【解決手段】河床(SB)に、河床(SB)からの砂礫の吸出しを防止するための複数の第1マット(16)が敷設され、各第1マット(16)の内部に中詰材(18)が充填され、複数の第1マット(16)の上側に、河床(SB)を保護するための複数の保護ブロックとしての護床ブロック(22)が敷設され、隣接する各護床ブロック(22)同士は、屈撓可能に連結されている。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
河床、水路底、静水池又は海底の洗掘を防止するための洗掘防止構造であって、
河床、水路底、静水池又は海底に敷設され、内部に中詰材が充填され、河床、水路底、静水池又は海底からの砂礫の吸出しを防止するための複数の第1マットと、
複数の前記第1マットの上側に敷設され、河床、水路底、静水池又は海底を保護するための複数の保護ブロックと、を備え、
隣接する各保護ブロック同士は、屈撓可能に連結されている、洗掘防止構造。
【請求項2】
前記複数の第1マットの先端側に位置するように河床、水路底、静水池又は海底に埋設され、前記第1マットよりも厚くなっており、内部に前記中詰材が充填され、河床、水路底、静水池又は海底からの砂礫の吸出しを防止するための第2マットを備え、
複数の前記保護ブロックは、複数の前記第1マットの上側から前記第2マットの上側にかけて敷設されている、請求項1に記載の洗掘防止構造。
【請求項3】
各第1マット及び前記第2マットは、それぞれ、網籠状に構成されており、各第1マットの網目及び前記第2マットの網目は、それぞれ、河床、水路底、静水池又は海底の砂礫の平均粒径以下になっている、請求項2に記載の洗掘防止構造。
【請求項4】
隣接する各保護ブロック同士のうちの一方の保護ブロックの上部に、凸部が他方の保護ブロック側に突出して形成され、前記他方の保護ブロックの上部に、前記一方の保護ブロックの前記凸部と嵌合可能な凹部が前記一方の保護ブロック側の反対側に窪んで形成されている、請求項1から3のいずれか1項に記載の洗掘防止構造。
【請求項5】
隣接する各保護ブロック同士を屈撓可能に連結する連結部材を備え、
各連結部材は、前記一方の保護ブロックの前記凸部の下側に位置している、請求項4に記載の洗掘防止構造。
【請求項6】
請求項1に記載の洗掘防止構造を施工するための方法であって、
複数の第1マットの内部に中詰材を充填する充填工程と、
前記中詰材を充填した複数の前記第1マットを河床、水路底、静水池又は海底に敷設する第1敷設工程と、
河床、水路底、静水池又は海底を保護するための複数の保護ブロックを敷設済みの複数の前記第1マットの上側に敷設する第2敷設工程と、を含む、洗掘防止構造の施工方法。
【請求項7】
請求項2に記載の洗掘防止構造を施工するための方法であって、
複数の第1マットの内部、及び前記第1マットよりも厚い第2マットの内部に、中詰材をそれぞれ充填する充填工程と、
前記中詰材を充填した複数の前記第1マットを河床、水路底、静水池又は海底に敷設する第1敷設工程と、
前記中詰材を充填した前記第2マットが複数の前記第1マットの先端側に位置するように、前記第2マットを河床、水路底、静水池又は海底に埋設する埋設工程と、
河床、水路底、静水池又は海底を保護するための複数の保護ブロックを埋敷設済みの複数の前記第1マットの上側から埋設済みの前記第2マットの上側にかけて敷設する第2敷設工程と、を含む、洗掘防止構造の施工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、河床、水路底、静水池又は海底の洗掘を防止するための洗掘防止構造、及びその施工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
多くの農業用取水堰等の堰は、例えば圃場送水の便から河川の中上流域に設置されている。また、堰の下流側においては、治水や骨材採取の目的で河床掘削されることが多く、その河床低下が上流側に波及する。河床低下が堰直下流に至ると、パイピングや堰直下流の洗掘が生じ、堰底部の砂礫が吸い出されて、堰下流部のコンクリート床(エプロン)の陥没等から堰の損壊を引き起こす。
【0003】
一般に、堰等の構造物の下流側には、河床を保護するための複数の保護ブロックとして複数の護床ブロックが敷設されている。複数の護床ブロックは、河幅方向に沿って複数列になっている。隣接する各護床ブロック同士は、流水等で散逸しないようにシャックル等の連結部材によって屈撓可能に連結されている場合がある。或いは、隣接する各護床ブロック同士が屈撓可能に連結されるように、隣接する各護床ブロック同士は、噛み合う形状に構成されている場合もある。また、護床ブロックの散逸を防ぐため、護床ブロックを大型化もしくは重量化する場合もある。
【0004】
なお、本発明に関連する先行文献として特許文献1に示すものがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
隣接する各護床ブロック同士の間には、例えば5cm程度の隙間が存在している。堰からの放流流速が大きければ、その隙間からブロック底面の砂礫が吸い出され、護床ブロックの沈下が進む。沈下により流れが護床ブロック上へ落下してくるようになると更に吸い出しが進み、堰直下流に大きな洗掘孔を発生させることになる。
【0007】
同様の現象は、堰下流の河床低下により水位が低下した場合、護床ブロック群(護床工)の直下流でも起きる。この場合は、護床工下流の水位の低下により流速が増大するので、護床工直下流の洗掘が拡大し、護床工底部の砂礫が洗掘孔に漏出して、そこから護床工の屈撓(凹凸化)や護床工の傾斜化(傾動)が起きる。洗掘孔の拡大により屈撓や傾斜化は更に著しくなる。護床ブロック間の隙間は、屈撓角度等に応じて広がり、これにより護床ブロック底部及び周囲の砂礫は更に吸い出されやすくなるうえ、傾斜化により護床ブロック上の流速も増すので、この点からも吸い出しが著しくなる。このようにして傾斜化が護床工の上流部に波及し堰直下流に達すると堰直下流の流速も速くなる。これにより堰直下流にも洗掘孔が発生し拡大する。洗掘孔の拡大により堰直下流が落下流となると、洗掘孔は更に拡大し、護床工直下流の洗掘拡大による護床ブロック沈下と相まって、遂には堰下流の河床低下が堰直下流まで波及することになる。
【0008】
以上のような堰直下流の洗掘孔の拡大や堰直下流の河床低下(護床ブロック沈下)によって、堰底面にパイピングが発生したり、エプロン底部の砂礫が漏出し、遂には堰の損壊を来すことになる。
【0009】
護床ブロックの連結化では、下流河床が低下する等、流速が速くなる場合には、護床ブロック隙間からの砂礫の吸い出しを防げないので、堰直下流の洗掘や堰の損壊も防げない。一方、護床ブロックの大型化もしくは重量化でも、下流河床低下に伴う護床工直下流の洗掘拡大は防げず、ゆえに護床工直下流の洗掘孔への護床ブロックの転動や流失も防げず、最終的には護床ブロックが散逸し、堰直下流の洗掘を招くこととなる。すなわち、護床ブロックの連結化や大型化、重量化は堰直下流の洗掘や河床低下を幾分遅らせる効果しかない。また、護床ブロックの流失に対し護床ブロックを補填しても更に流失するだけでほとんど効果がない。
【0010】
堰等構造物の損壊を回避するための対策として、堰等の下流に床止め等の河川横断構造物を付設して傾斜した護床ブロックを元の姿勢に修復する手法と、隣接する各護床ブロック同士の間に間詰コンクリートを注入する手法が考えられる。前者の手法は、堰と同様の河川横断構造物を新たに築造することになるので費用が嵩むうえ、床止め直下流でも洗掘や河床低下の問題が起きるので、床止めの増設を繰り返すことになる。後者の手法は、隣接する各護床ブロック同士の屈撓性が無くなり、護床ブロックが河床地形の変化に追従することができず、護床工直下流の洗掘によって、護床工の下流端から護床工の損壊と護床ブロックの流失が生じ、結局は堰直下流の洗掘を引き起こすことになる。もしくは堰直下流の洗掘を防ぐために、頻繁に護床工直下流の洗掘孔の埋め戻し、護床工の修復を行うことになり、やはり費用が嵩む。
【0011】
つまり、堰下流の河床低下に伴う下流水位の低下と護床ブロック上の流速増大に対して、エプロン直下流の洗掘や河床低下を抑えるのは容易ではない、もしくは費用が嵩むという問題がある。
【0012】
前述の洗掘に係る問題は、堰等の構造物の下流側に設置された洗掘防止構造だけでなく、構造物の上流側に設置された洗掘防止構造においても流速が速ければ生じる。また、下流河床が低下していなくても護床工の設計想定以上に流速が速くなれば生じる。河川に関わらず、水路底、静水池又は海底に設置された洗掘防止構造においても生じる。
【0013】
そこで、本発明の一態様は、保護ブロック等の底部及び周囲の砂礫の吸出しや漏出を抑え、複数の保護ブロック等の設置状態を安定させることで、構造物の上下流等周囲の洗掘や河床等の低下を抑えることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
前述の課題を解決するため、本発明の一態様に係る洗掘防止構造は、河床、水路底、静水池又は海底の洗掘を防止するための洗掘防止構造であって、河床、水路底、静水池又は海底に敷設され、内部に中詰材が充填され、河床、水路底、静水池又は海底からの砂礫の吸出しを防止するための複数の第1マットと、複数の前記第1マットの上側に敷設され、河床、水路底、静水池又は海底と、前記第1マットを保護するための複数の保護ブロックと、を備え、隣接する前記保護ブロック同士は、屈撓可能に連結されている。
【0015】
前述の課題を解決するため、本発明の一態様に係る洗掘防止構造の施工方法は、複数の第1マットの内部に中詰材を充填する充填工程と、前記中詰材を充填した複数の前記第1マットを河床、水路底、静水池又は海底に敷設する第1敷設工程と、河床、水路底、静水池又は海底を保護するための複数の保護ブロックを敷設済みの複数の前記第1マットの上側に敷設する第2敷設工程と、を含む。
【0016】
本発明の一態様に係る洗掘防止構造の施工方法は、本発明の一態様に係る洗掘防止構造を施工するための方法であって、複数の第1マットの内部、及び複数の前記第1マットよりも厚い第2マットの内部に、中詰材をそれぞれ充填する充填工程と、前記中詰材を充填した複数の前記第1マットを河床、水路底、静水池又は海底に敷設する第1敷設工程と、前記中詰材を充填した前記第2マットが複数の前記第1マットの先端側に位置するように、前記第2マットを河床、水路底、静水池又は海底に埋設する埋設工程と、河床、水路底、又は海底を保護するための複数の保護ブロックを埋敷設済みの複数の前記第1マットの上側から埋設済みの前記第2マットの上側にかけて敷設する第2敷設工程と、を含む。
【発明の効果】
【0017】
本発明の一態様によれば、保護ブロックの下側の洗掘による保護ブロックの傾きを抑えて、保護ブロックの設置状態を安定させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】第1実施形態に係る洗掘防止構造の模式的な側断面図である。
【
図2】
図1に示す洗掘防止構造の模式的な平面図である。
【
図7】流れ方向に延びた複数の第1マット及び流れ方向に延びた複数の第2マットを河床に設置した状態を示す模式的な平面図である。
【
図8】河幅方向に延びた複数の第1マット及び河幅方向に延びた複数の第2マットを河床に設置した状態を示す模式的な平面図である。
【
図9】第2実施形態に係る洗掘防止構造の模式的な側断面図である。
【
図10】
図9に示す洗掘防止構造の模式的な平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。なお、本願の明細書及び特許請求範囲において、河床とは、河底の他に、河の法面を含む意である。水路底とは、農業用排水路、ダム放水路等の種々の水路の底の他に、水路の法面を含む意である。海底とは、海岸の近傍の海底の他に、海岸の法面を含む意である。砂礫とは、土砂を含む意である。図面中、「WD」は河幅方向、「FD」は流れ方向をそれぞれ指している。
【0020】
〔第1実施形態〕
図1から
図8を参照して、第1実施形態に係る洗掘防止構造10の構成について説明する。
図1は、第1実施形態に係る洗掘防止構造10の模式的な側断面図である。
図2は、
図1に示す洗掘防止構造10の模式的な平面図である。
図3は、
図1におけるIII部の拡大図である。
図4は、
図2におけるIV部の拡大図である。
図5は、複数の第1マット16の模試的な斜視図である。
図6は、第2マット20の模式的な斜視図である。
図7は、流れ方向に延びた複数の第1マット16及び流れ方向に延びた複数の第2マット20を河床SBに設置した状態を示す模式的な平面図である。
図8は、河幅方向に延びた複数の第1マット16及び河幅方向に延びた複数の第2マット20を河床SBに設置した状態を示す模式的な平面図である。
【0021】
図1及び
図2に示すように、第1実施形態に係る洗掘防止構造10は、河床SBの洗掘を防止するための構造であり、堰のエプロン12の直下流側に設置されている。洗掘防止構造10は、河床SBの両側にそれぞれ設置された護岸14の間に位置している。
【0022】
図1から
図5、
図7に示すように、洗掘防止構造10は、河床SBからの砂礫の吸出しを防止するための複数の第1マット16を備えており、複数の第1マット16は、河床SBにおけるエプロン12の直下流側に敷設されている。各第1マット16は、網籠状に構成されている。各第1マット16は、直方体状に形成されており、流れ方向に延びている。複数の第1マット16は、河幅方向に沿って複数列になっている。各第1マット16の内部には、中詰材18が充填されている。中詰材18は、例えば、砕石、割栗石、砂利、玉石等であり、中詰材18の粒径は、例えば20mm~200mmに設定されている。なお、各第1マット16の内部には、その空間を仕切る網状の仕切り部材が流れ方向(第1マット16の長手方向)に間隔を置いて設けられてもよい。仕切り部材の間隔は、例えば250mm~500mmである。
【0023】
各第1マット16の耐摩耗性及び耐久性を確保するために、各第1マット16の素材として、ポリエステル繊維、ナイロン繊維、ポリエチレン繊維、ビニロン繊維のような汎用繊維や超高分子量ポリエチレン繊維、ポリアリレート繊維、アラミド繊維、炭素繊維、ガラス繊維のような高強度繊維が用いられる。各第1マット16の素材は、単一の素材でもよいが、複合化した素材であってもよい。繊維の形状は強度に優れるフィラメント糸が望ましいが、スパン糸やスリットヤーン等でもよい。各第1マット16の材料には主に編物ネットが使われ、編網手法として、通常はラッセル網を用いるが、無結節網又は有結節網を用いてもよい。その他の材料として、織物ネット、合成樹脂ネット、又は金網等を用いてもよい。
【0024】
各第1マット16の網脚の直径(太さ)は、例えば1.0mm~8.0mmに設定されている。各第1マット16の網目の大きさは、中詰材18が各第1マット16網目を通り抜けない大きさであって、河床SBの砂礫の平均粒径以下に設定されている。砂礫の平均粒径とは、ふるい分け法によって求めた粒度分布の積算値60%における粒径のことをいう。具体的には、各第1マット16の網目の大きさは、例えば5mm~25mm以下に設定されている。
【0025】
河幅方向に隣接する各第1マット16同士は、ロープによる点止め連結されている。河幅方向に隣接する各第1マット16同士の連結手法は、ロープによる点止め連結に限らず、隣接する第1マット16同士をロープによる編み込み連結、ファスナによる噛み合わせ連結、その他、公知の連結手法を用いてもよい。
【0026】
図1から
図4、
図6、
図7に示すように、洗掘防止構造10は、河床SBからの砂礫の吸出しを防止するための複数の第2マット20を備えており、複数の第2マット20は、複数の第1マット16の先端側である下流端側に位置するように河床SBに埋設されている。各第2マット20は、網籠状に構成されており、第1マット16よりも厚くなっている。各第2マット20は、直方体状に形成されており、流れ方向に延びている。複数の第2マット20は、河幅方向に沿って複数列になっており、下流側の第2マット20は、2段に重なった状態で配置されている。各第2マット20の内部には、中詰材18が充填されている。なお、各第2マット20の内部には、その空間を仕切る網状の仕切り部材が流れ方向(第2マット20の長手方向)に間隔を置いて設けられてもよい。
【0027】
各第2マット20の耐摩耗性及び耐久性を確保するために、各第2マット20の素材として、第1マット16と同様の素材が用いられる。各第2マット20の素材は、単一の素材でもよいが、複合化した素材であってもよい。各第2マット20の編網手法として、ラッセル網を用いるが、無結節網又は有結節網を用いてもよい。各第2マット20として、織物ネット、合成樹脂ネット、又は金網等を用いてもよい。
【0028】
各第2マット20の網脚の直径(太さ)は、例えば1.0mm~8.0mmに設定されている。各第2マット20の網目の大きさは、中詰材18が各第2マット20の網目を通り抜けない大きさであって、河床SBの砂礫の平均粒径以下に設定されている。具体的には、各第2マット20の網目の大きさは、例えば5mm~25mm以下に設定されている。
【0029】
河幅方向に隣接する各第2マット20同士は、ロープによる点止め連結されている。河幅方向に隣接する各第2マット20同士の連結手法は、ロープによる点止め連結に限らず、隣接する第2マット20同士をロープで編み込み連結、ファスナによる噛み合わせ連結、その他、公知の連結手法を用いてもよい。また、流れ方向に隣接する第2マット20と第1マット16も公知の連結手法によって連結してもよい。
【0030】
図8に示すように、各第1マット16が河幅方向に延び、複数の第1マット16が流れ方向に沿って複数列になっていてもよい。各第2マット20が河幅方向に延び、複数の第2マット20が流れ方向に沿って複数列になっていてもよい。この場合には、流れ方向に隣接する各第1マット16同士がロープによる点止め連結等の公知の連結手法によって連結される。流れ方向に隣接する各第2マット20同士がロープによる点止め連結等の公知の連結手法によって連結される。
【0031】
図1から
図4に示すように、洗掘防止構造10は、河床SBを保護するための複数の保護ブロックとしての複数の護床ブロック22を備えている。複数の護床ブロック22は、複数の第1マット16の上流端の上側から複数の第2マット20の下流端の上側にかけて敷設されている。各護床ブロック22は、例えばコンクリートからなり、複数の護床ブロック22は、河幅方向に沿って複数列になっている。河幅方向に隣接する護床ブロック22の間隔は、例えば5cm程度の隙間に設定されている。流れ方向に隣接する護床ブロック22の間隔は、例えば5cm程度の隙間に設定されている。
【0032】
各護床ブロック22の形状は、説明を簡単とするために略直方体形状にしているが、既存の護床ブロックと同様に、種々の形状に変更可能である。各護床ブロック22の設置状態を安定させるためには、各護床ブロック22の底面は平坦になっている。また、各護床ブロック22は、その設置箇所の流水の流体力に対して浮き上がらないような大きさ及び重量を有している。
【0033】
図3から
図5に示すように、各護床ブロック22の上部の各角部には、連結配筋(連結環)24が埋設されている。流れ方向及び/又は河幅方向に隣接する各護床ブロック22の各連結配筋24同士は、例えばシャックル等の連結部材26によって屈撓可能に連結されている。換言すれば、洗掘防止構造10は、流れ方向及び/又は河幅方向に隣接する各護床ブロック22同士を屈撓可能に連結する連結部材26を備えている。
【0034】
続いて、
図1から
図8を参照して、第1実施形態に係る洗掘防止構造の施工方法について説明する。
【0035】
図1及び
図2に示すように、第1実施形態に係る洗掘防止構造の施工方法は、洗掘防止構造10を河床SBに施工するための方法であり、充填工程と、第1敷設工程と、埋設工程と、第2敷設工程と、連結工程とを含んでいる。第1実施形態に係る洗掘防止構造の施工方法の具体的な内容は、次の通りである。
【0036】
図5及び
図6に示すように、充填装置によって複数の第1マット16の内部及び複数の第2マット20の内部に中詰材18をそれぞれ充填する(充填工程)。中詰め材18の充填にはバックホウ等、第1マット16及び第2マット20の吊り上げにはバックホウ、クレーン等の建設機械を使用する。なお、各第1マット16の内部に中詰材18を充填する前に、各第1マット16の片端部を開放しておき、各第1マット16の内部への中詰材18充填後に、各第1マット16の端部を網状の蓋部材で閉じておく。同様に、各第2マット20の内部に中詰材18を充填する前に、各第2マット20の端部を開放しておき、各第2マット20の内部への中詰材18充填後に、各第2マット20の端部を網状の蓋部材で閉じておく。
【0037】
図7及び
図8に示すように、中詰材18を充填した複数の第1マット16をバックホウ又はクレーン等の建設機械によって河床SBにおけるエプロン12の直下流側に敷設する(第1敷設工程)。なお、複数の第1マット16の敷設後又は敷設前に、作業者は、隣接する各第1マット16同士を連結する。
【0038】
また、中詰材18を充填した複数の第2マット20が複数の第1マット16の先端側である下流端側に位置するように、当該箇所を建設機械等を用いて所定の深さに掘削した後に、複数の第2マット20を建設機械によって河床SBに設置(埋設)する(埋設工程)。なお、複数の第2マット20の埋設後又は埋設前に、作業者は、隣接する各第2マット20同士、及び各第2マット20と各第1マット16同士を連結する。
【0039】
その後、
図1及び
図2に示すように、建設機械によって複数の護床ブロック22を複数の第1マット16の上流端の上側から複数の第2マット20の下流端の上側にかけて敷設する(第2敷設工程)。更に、
図3及び
図4に示すように、作業者は、隣接する各護床ブロック22の連結配筋24同士を連結部材26によって屈撓可能に連結する(連結工程)。これにより、洗掘防止構造10の施工が終了する。
【0040】
続いて、第1実施形態の作用効果について説明する。
【0041】
複数の護床ブロック22が複数の第1マット16の上流端の上側から複数の第2マット20の下流端の上側にかけて敷設されている。そのため、隣接する護床ブロック22同士が屈撓して、隣接する護床ブロック22同士の間の隙間が広がっても、その隙間からの河床SBの砂礫の吸出しを防止することができる。特に、各第1マット16の網目の大きさが河床SBの砂礫の平均粒径以下に設定されているため、隣接する護床ブロック22同士の間の隙間からの河床SBの砂礫の吸出しを十分に防止することができる。これにより、護床ブロック22の下側の砂礫の吸出しによる護床ブロック22の傾斜化(傾動)を抑えて、複数の護床ブロック22、の設置状態を安定させることができる。
【0042】
また、複数の第2マット20が複数の第1マット16の下流端側に位置するように河床SBに埋設されている。そのため、第2マット20がアンカー(錘)の役割を果たして、河床SBから捲り上がり難くなり、第2マット20の設置状態だけでなく、複数の第1マット16の設置状態を安定させることができる。これにより、複数の護床ブロック22の設置状態をより安定させることができる。さらに、第2マット20の下流側に洗堀が生じた場合でも、洗堀量が第2マット20の厚みの2倍程度であれば、第2マット20、第1マット16、護床ブロック22は水平を維持する。それ以上の洗堀量が生じた場合でも、第2マット20は自重で河幅方向に均等に沈下し、上流側の第2マット20及び第1マット16の底部にある河床材を抱え込む形となって洗堀の波及を防止し、安定する。
【0043】
従って、第1実施形態によれば、河床SBに設置された堰直下流の洗掘を防止して、エプロン12の陥没等、堰の損壊を回避することができる。
【0044】
〔第2実施形態〕
図9から
図11を参照して、第2実施形態に係る洗掘防止構造28の構成について説明する。
図9は、第2実施形態に係る洗掘防止構造28の模式的な側断面図である。
図10は、
図9に示す洗掘防止構造28の模式的な平面図である。
図11は、
図9におけるXI部の拡大図である。
【0045】
図9及び
図10に示すように、第2実施形態に係る洗掘防止構造28は、河床SBの洗掘を防止するための構造であり、堰のエプロン12の直下流側に設置されている。洗掘防止構造28は、河床SBの両側にそれぞれ設置された護岸14の間に位置している。また、洗掘防止構造28は、前述の洗掘防止構造10(
図1及び
図2参照)と同様の構成を有しており、洗掘防止構造28の構成のうち、洗掘防止構造10の構成と異なる点についてのみ説明する。なお、説明の便宜上、第1実施形態にて説明した部材と同じ機能を有する部材については、同じ符号を付記し、その説明を繰り返さない。
【0046】
図11に示すように、流れ方向及び/又は河幅方向に隣接する各護床ブロック22同士のうちの一方の護床ブロック22の上部には、凸部30が他方の護床ブロック22側に突出して形成されている。流れ方向及び/又は河幅方向に隣接する各護床ブロック22同士のうちの他方の護床ブロック22の上部に、一方の護床ブロック22の凸部30と嵌合可能な凹部32が一方の護床ブロック22側の反対側に窪んで形成されている。また、各連結部材26は、隣接する各護床ブロック22同士のうちの一方の護床ブロック22の凸部30の下側に位置している。
【0047】
洗掘防止構造28は、第1実施形態に係る洗掘防止構造の施工方法と同様の方法によって河床SBに施工することができる。
【0048】
続いて、第2実施形態の作用効果について説明する。
【0049】
第2実施形態においては、前述の第1実施形態と同様の作用効果を奏する。また、第2実施形態においては、その他、次のような作用効果を奏する。
【0050】
隣接する各第1護床ブロック22のうちの一方の護床ブロック22の凸部30と他方の護床ブロック22の凹部との嵌合によって、護床ブロック22の上側から流下する砂礫が第1マット16及び第2マット20に到達し難くなる。これにより、護床ブロック22の上側から流下する砂礫による第1マット16及び第2マット20の摩耗を抑えて、第1マット16及び第2マット20の耐久性を向上させることができる。
【0051】
各連結部材26が隣接する各護床ブロック22同士のうちの一方の護床ブロック22の凸部30の下側に位置しているため、護床ブロック22の上側から流下する砂礫による連結部材26の摩耗を抑えることができる。これにより、連結部材26の耐久性を向上させることができる。
【0052】
〔他の実施形態〕
堰のエプロン12の直下流側に設置した洗掘防止構造10(28)に適用した技術的思想を、堰以外の構造物の下流側、堰を含む構造物の上流側に設置した洗掘防止構造に適用してもよい。また、洗掘防止構造10(28)に適用した技術的思想を、水路底、静水池又は海底に設置された洗掘防止構造に適用してもよい。
【0053】
〔まとめ〕
本発明の態様1に係る洗掘防止構造は、河床、水路底、静水池又は海底の洗掘を防止するための洗掘防止構造であって、河床、水路底、静水池又は海底に敷設され、内部に中詰材が充填され、河床、水路底、静水池又は海底からの砂礫の吸出しを防止するための複数の第1マットと、複数の前記第1マットの上側に敷設され、河床、水路底、静水池又は海底を保護するための複数の保護ブロックと、を備え、隣接する前記保護ブロック同士は、屈撓可能に連結されている。
【0054】
前記の構成によれば、複数の前記保護ブロックが複数の前記第1マットの上側に敷設されている。そのため、隣接する前記保護ブロック同士が屈撓して、隣接する前記保護ブロック同士の間の隙間が広がっても、その隙間からの河床等の砂礫の吸出しを防止することができる。これにより、前記保護ブロックの下側の砂礫の吸出しによる前記保護ブロックの傾斜化(傾動)を抑えて、複数の前記保護ブロックの設置状態を安定させることができる。よって、河床等に設置された堰等の構造物直下流の洗掘を防止して、前記構造物の損壊を回避することができる。
【0055】
本発明の態様2に係る洗掘防止構造は、前記態様1において、前記複数の第1マットの先端側に位置するように河床、水路底、静水池又は海底に埋設され、前記第1マットよりも厚くなっており、内部に前記中詰材が充填され、河床、水路底、静水池又は海底からの砂礫の吸出しを防止するための第2マットを備え、複数の前記保護ブロックは、複数の前記第1マットの上側から前記第2マットの上側にかけて敷設されてもよい。
【0056】
前記の構成によれば、前記第1マットよりも厚い前記第2マットが前記複数の第1マットの先端側に位置するように河床等に埋設されている。複数の前記保護ブロックが複数の前記第1マットの上側から前記第2マットの上側にかけて敷設されている。そのため、前記第2マットが河床等から捲り上がり難くなり、前記第2マットの設置状態だけでなく、複数の前記第1マットの設置状態を安定させることができる。これにより、複数の前記保護ブロックの設置状態をより安定させることができる。
【0057】
本発明の態様3に係る洗掘防止構造は、前記態様2において、各第1マット及び前記第2マットは、それぞれ、網籠状に構成されており、各第1マットの網目及び前記第2マットの網目は、それぞれ、河床、水路底、静水池又は海底の砂礫の平均粒径以下になっていてもよい。
【0058】
前記の構成によれば、各第1マット及び前記第2マットの網目が河床等の砂礫の平均粒径以下になっているため、隣接する前記保護ブロック同士の間の隙間からの河床等の砂礫の吸出しを十分に防止することができる。
【0059】
本発明の態様4に係る洗掘防止構造は、前記態様1から3のいずれかにおいて、隣接する各保護ブロック同士のうちの一方の保護ブロックの上部に、凸部が他方の保護ブロック側に突出して形成され、前記他方の保護ブロックの上部に、前記一方の保護ブロックの前記凸部と嵌合可能な凹部が前記一方の保護ブロック側の反対側に窪んで形成されてもよい。
【0060】
前記の構成によれば、前記一方の保護ブロックの前記凸部と前記他方の保護ブロックの前記凹部との嵌合によって、前記保護ブロックの上側から流下する砂礫が前記第1マットに到達し難くなる。これにより、前記保護ブロックの上側から流下する砂礫による前記第1マットの摩耗を抑えて、前記第1マットの耐久性を向上させることができる。
【0061】
本発明の態様5に係る洗掘防止構造は、前記態様4において、隣接する保護ブロック同士を屈撓可能に連結する連結部材を備え、各連結部材は、前記一方の前記保護ブロックの前記凸部の下側に位置してもよい。
【0062】
前記の構成によれば、各連結部材が前記一方の保護ブロックの前記凸部の下側に位置しているため、前記保護ブロックの上側から流下する砂礫が前記連結部材を到達し難くなる。これにより、前記保護ブロックの上側から流下する砂礫による前記連結部材の摩耗を抑えて、前記連結部材の耐久性を向上させることができる。
【0063】
本発明の態様6に係る洗掘防止構造の施工方法は、前記態様1に係る洗掘防止構造を施工するための方法であって、複数の第1マットの内部に中詰材を充填する充填工程と、前記中詰材を充填した複数の前記第1マットを河床、水路底、静水池又は海底に敷設する第1敷設工程と、河床、水路底、静水池又は海底を保護するための複数の保護ブロックを敷設済みの複数の前記第1マットの上側に敷設する第2敷設工程と、を含む。
【0064】
前記の構成によれば、複数の前記第1マットを河床等に敷設し、複数の前記保護ブロックを敷設済みの複数の前記第1マットの上側に敷設している。そのため、隣接する前記保護ブロック同士が屈撓して、隣接する前記保護ブロック間の隙間が広がっても、その隙間からの河床、水路底、静水池又は海底の砂礫の吸出しを防止することができる。これにより、前記保護ブロック直下の砂礫の吸出しによる前記保護ブロックの傾斜化(傾動)を抑えて、複数の前記保護ブロックの設置状態を安定させることができる。
【0065】
本発明の態様7に係る洗掘防止構造の施工方法は、前記態様2に係る洗掘防止構造を施工するための方法であって、複数の第1マットの内部、及び前記第1マットよりも厚い第2マットの内部に、中詰材をそれぞれ充填する充填工程と、前記中詰材を充填した複数の前記第1マットを河床、水路底、静水池又は海底に敷設する第1敷設工程と、前記中詰材を充填した前記第2マットが複数の前記第1マットの先端側に位置するように、前記第2マットを河床、水路底、静水池又は海底に埋設する埋設工程と、河床、水路底、静水池又は海底を保護するための複数の保護ブロックを埋敷設済みの複数の前記第1マットの上側から設済みの第2マットの上側にかけて敷設する第2敷設工程と、を含む。
【0066】
前記の構成によれば、複数の前記保護ブロックを埋敷設済みの複数の前記第1マットの上側から設済みの第2マットの上側にかけて敷設する。そのため、隣接する前記保護ブロック同士が屈撓して、隣接する前記保護ブロック間の隙間が広がっても、その隙間からの河床、水路底、静水池又は海底の砂礫の吸出しを防止することができる。これにより、前記保護ブロックの底部及び周囲の砂礫の吸出しによる前記保護ブロックの傾斜化(傾動)を抑えて、複数の前記保護ブロックの設置状態を安定させることができる。
【0067】
また、前記第2マットを複数の前記第1マットの先端側に位置するように河床等に埋設している。そのため、前記第1マットが河床等から捲り上がり難くなり、前記第2マットの設置状態だけでなく、複数の前記第1マットの設置状態を安定させることができる。これにより、複数の前記保護ブロックの設置状態をより安定させることができる。
【0068】
〔付記事項〕
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0069】
10:洗掘防止構造(第1実施形態に係る洗掘防止構造)、12:エプロン、14:護岸、16:第1マット、20:第2マット、18:中詰材、22:護床ブロック(保護ブロック)、24:連結配筋、26:連結部材、28:洗掘防止構造(第2実施形態に係る洗掘防止構造)、30:凸部、32:凹部