(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023088019
(43)【公開日】2023-06-26
(54)【発明の名称】建設機械の集塵機構及びこれを備えた建設機械
(51)【国際特許分類】
F01P 11/12 20060101AFI20230619BHJP
E02F 9/00 20060101ALI20230619BHJP
F01P 11/10 20060101ALI20230619BHJP
【FI】
F01P11/12 D
E02F9/00 M
F01P11/10 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】22
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021202632
(22)【出願日】2021-12-14
(71)【出願人】
【識別番号】504136568
【氏名又は名称】国立大学法人広島大学
(71)【出願人】
【識別番号】000246273
【氏名又は名称】コベルコ建機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100115381
【弁理士】
【氏名又は名称】小谷 昌崇
(74)【代理人】
【識別番号】100109058
【弁理士】
【氏名又は名称】村松 敏郎
(72)【発明者】
【氏名】島田 学
(72)【発明者】
【氏名】渡邊 光
(72)【発明者】
【氏名】中原 涼太
(72)【発明者】
【氏名】林 秀樹
(72)【発明者】
【氏名】後藤 聡
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 拓也
(72)【発明者】
【氏名】大森 敦司
(72)【発明者】
【氏名】組谷 賢次郎
【テーマコード(参考)】
2D015
【Fターム(参考)】
2D015CA02
(57)【要約】
【課題】冷却用の空気の流量を十分に確保しながら当該空気に含まれる異物を除去することが可能な建設機械の集塵機構50を提供する。
【解決手段】集塵機構50は、複数の風路54を形成する複数のパネル部材60を備える。複数のパネル部材60のそれぞれは、空気の流れ方向を変える変向部64と、その下流側で集塵空間68を画定する空間画定部66と、を有する。複数の風路54のそれぞれは、吸気口から冷却器に至るまでの風路54における任意の地点において風路54を流れる空気の方向が順方向Dnのベクトル成分を含む形状を有する。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
吸気口を有する機械室に設けられた冷却器と、前記機械室内で前記吸気口から前記冷却器に向かう順方向の空気の流れを形成する冷却ファンと、を備える建設機械に設けられて前記冷却器の上流側で前記空気中の異物を除去する集塵機構であって、
前記吸気口から前記冷却器への空気の流れを許容する複数の風路を形成し、それぞれがパネル面を有する複数のパネル部材を備え、
前記複数のパネル部材は、前記順方向と交差する配列方向に配列され、前記配列方向に互いに隣接する前記パネル面どうしの間に前記複数の風路をそれぞれ形成し、前記複数の風路のそれぞれは、任意の地点で前記風路を流れる空気の方向が前記順方向のベクトル成分を含む形状を有し、
前記複数のパネル部材のそれぞれは、前記風路を流れる空気の方向を変えるように曲がる変向部を含むパネル本体と、前記変向部で空気から分離された異物を捕捉するための集塵空間を前記変向部の下流側において前記パネル本体との間で画定する空間画定部と、を含む、建設機械の集塵機構。
【請求項2】
請求項1に記載の建設機械の集塵機構であって、前記空間画定部は、前記パネル本体につながることにより前記集塵空間の下流側を塞ぐ下流端部と、前記パネル本体から前記風路の内側に離間して前記集塵空間を上流側に開放する上流端部と、を有する、建設機械の集塵機構。
【請求項3】
請求項1または2に記載の建設機械の集塵機構であって、前記パネル本体は、前記変向部よりも前記順方向の上流側に位置しかつ前記順方向に対して前記風路の内側に傾斜する上流側部を含む、建設機械の集塵機構。
【請求項4】
請求項1~3のいずれかに記載の建設機械の集塵機構であって、前記パネル本体は、前記変向部よりも前記順方向の下流側に位置しかつ前記順方向に対して前記風路の内側に傾斜する下流側部を含む、建設機械の集塵機構。
【請求項5】
請求項1または2に記載の建設機械の集塵機構であって、前記パネル本体は、前記順方向に沿って延びる中間部と、前記中間部の上流側で前記順方向に対し前記風路の内側に傾斜して前記中間部との間に前記変向部を形成する上流側部と、前記中間部の下流側で前記順方向に対して前記風路の内側に傾斜する下流側部と、を含み、前記空間画定部は、前記下流側部から前記順方向の上流側に延びて前記中間部の一部と前記下流側部の少なくとも一部を覆う、建設機械の集塵機構。
【請求項6】
請求項5に記載の建設機械の集塵機構であって、前記空間画定部は、前記下流側部の下流端に繋がって前記集塵空間の下流端を塞ぐ下流側閉塞部と、当該下流側閉塞部から前記下流側部に沿って延びて当該下流側部の全域を覆う下流側覆い部と、前記下流側覆い部から前記中間部に沿って上流側に延びて当該中間部の一部を覆う上流側覆い部と、を含む、建設機械の集塵機構。
【請求項7】
請求項5または6に記載の建設機械の集塵機構であって、前記空間画定部は、前記上流側部と前記順方向に沿って対向する上流縁部を含み、当該上流縁部は、前記風路の内側から見て前記上流縁部と前記上流側部分との間に形成された入口開口の開口幅が前記パネル本体のパネル延び方向の位置によって変化する形状を有する、建設機械の集塵機構。
【請求項8】
請求項1~7のいずれかに記載の建設機械の集塵機構であって、前記複数のパネル部材は、前記パネル面が上下方向に沿うように配置されている、建設機械の集塵機構。
【請求項9】
請求項8に記載の建設機械の集塵機構であって、前記複数のパネル部材のそれぞれは、当該複数のパネル部材の上端から下端に至るまで連続して延び、かつ、前記集塵機構は、前記複数の集塵空間のそれぞれの上端を塞ぐように前記複数のパネル部材の前記上端と接する上側閉塞部材をさらに備える、建設機械の集塵機構。
【請求項10】
請求項8または9に記載の建設機械の集塵機構であって、前記集塵空間を通じて降下する異物を受け止めて貯留する貯留部をさらに備える、建設機械の集塵機構。
【請求項11】
請求項10に記載の建設機械の集塵機構であって、前記貯留部は、貯留容器を有し、当該貯留容器は前記集塵空間に向かって上向きに開放された貯留空間を画定する、建設機械の集塵機構。
【請求項12】
請求項11に記載の建設機械の集塵機構であって、前記貯留容器は、前記集塵空間を降下する異物が前記貯留空間内に進入することが可能な貯留位置と当該貯留位置から外れた位置であって前記貯留空間内に貯留された異物を回収することが可能な回収位置との間で移動可能である、建設機械の集塵機構。
【請求項13】
請求項10に記載の建設機械の集塵機構であって、前記貯留部は、閉塞位置と開放位置との間で移動可能な下側閉塞部材を含み、前記下側閉塞部材は、前記閉塞位置では前記複数のパネル部材によりそれぞれ形成される前記集塵空間の下端を一括して塞ぎ、前記開放位置では前記集塵空間のそれぞれを開放する、建設機械の集塵機構。
【請求項14】
請求項13に記載の建設機械の集塵機構であって、前記下側閉塞部材が前記閉塞位置から前記開放位置まで移動する移動方向は水平方向に沿った方向である、建設機械の集塵機構。
【請求項15】
請求項14に記載の建設機械の集塵機構であって、前記移動方向は、前記配列方向と平行な方向である、建設機械の集塵機構。
【請求項16】
請求項13~15のいずれかに記載の建設機械の集塵機構であって、前記貯留部は、付勢部材をさらに含み、前記付勢部材は、前記閉塞位置にある前記下側閉塞部材が前記複数のパネル部材の下端に接触する状態を保つように前記下側閉塞部材を前記複数のパネル部材の下端に向けて上向きに付勢する、建設機械の集塵機構。
【請求項17】
請求項13~16のいずれかに記載の建設機械の集塵機構であって、前記貯留部は、ロック部をさらに含み、前記ロック部は、前記閉塞位置から前記開放位置への前記下側閉塞部材の移動を阻止するロック状態と前記移動の阻止を解除するロック解除状態とに切換可能である、建設機械の集塵機構。
【請求項18】
請求項13~17のいずれかに記載の建設機械の集塵機構であって、前記複数のパネル部材のそれぞれの前記空間画定部が、前記パネル本体における前記順方向の下流側の端部において前記風路の一部を塞ぐ下流側閉塞部を有し、前記下流側閉塞部には、前記下側閉塞部材の上に貯留する前記異物が前記順方向の下流側から目視で確認されることを可能にする確認窓が設けられている、建設機械の集塵機構。
【請求項19】
請求項1~18のいずれかに記載の建設機械の集塵機構であって、前記貯留部は、前記吸気口の下端よりも下側に位置している、建設機械の集塵機構。
【請求項20】
請求項1~19のいずれかに記載の建設機械の集塵機構であって、前記複数のパネル部材のうち少なくとも一つのパネル部材の前記変向部の変向角度を変化させる変向角度調節機構をさらに備える、建設機械の集塵機構。
【請求項21】
建設機械であって、
吸気口を有する機械室に設けられた冷却器と、
前記機械室に設けられて前記吸気口から前記冷却器に向かう順方向の空気の流れを形成する冷却ファンと、
前記冷却器の上流側で空気に含まれる異物を除去する集塵機構であって、請求項1~20のいずれかに記載の建設機械の集塵機構と、を備える、建設機械。
【請求項22】
請求項21に記載の建設機械であって、前記機械室及び前記機械室に通ずる扉口を画定する機械室本体と、前記扉口を閉じる閉位置と前記扉口を開く開位置との間で移動可能に前記機械室本体に連結される扉と、を備え、前記扉に前記吸気口が形成され、前記複数のパネル部材は、前記扉と一体に移動するように当該扉に取付けられ、前記扉の前記開位置は前記複数のパネル部材を前記機械室の外部に開放する位置である、建設機械。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建設機械の集塵機構及びこれを備えた建設機械に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、機械室及び集塵機構を備えた建設機械が知られている。前記機械室は、前記建設機械の上部旋回体の後部に配置され、エンジンと、前記エンジンを冷却するための冷却器及び冷却ファンと、を収容する。前記冷却ファンは、吸気口から前記冷却器へ向かって流れる冷却風を発生させる。前記冷却器は、当該冷却器を通過する前記冷却風と当該冷却器内を流れる冷媒(例えば冷却水)との間で熱交換を行わせ、これにより前記エンジンを冷却する。前記集塵機構は、前記冷却器の上流側に配置され、前記冷却器に向かう冷却風に含まれる粉塵等の異物を捕集する。
【0003】
特許文献1は、空気導入側パネル部材と、ガイドパネル部材と、を含む集塵機構を開示する。前記空気導入側パネル部材は上部旋回体における一方の車体側面部に配置されており、複数の空気導入口を有する。前記ガイドパネル部材は、前記空気導入側パネル部材に対向して配置されており、複数の空気導出口を有する。前記複数の空気導入口から前記空気導入側パネル部材と前記ガイドパネル部材との間に空気が取り込まれる。当該空気が前記空気導入側パネル部材及び前記ガイドパネル部材間を通過する間に、その空気の流れ方向が2回反転する。具体的に、一方の車体側面部から導入され前記一方の車体側面部とは反対方向に向かう空気の流れは、前記一方の車体側面部の方向に約180°反転し、それに続いてさらに前記一方の車体側面部とは反対方向に約180°反転する。このように空気が前記空気導入側パネル部材と前記ガイドパネル部材との間を複数回反転しながら流れる間に、その空気に混在している異物が両部材間の周面に衝突して当該周面に付着し、あるいは降下する。このようにして異物が除去された空気は前記ガイドパネル部材の前記空気導出口を介して前記エンジン室に導入される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載の前記集塵機構では、前記空気導入側パネル部材及び前記ガイドパネル部材間において空気の流れが複数回にわたり約180°反転するため、当該空気の圧力損失が大きい。このことは、前記集塵機構を通過して前記冷却器に供給される空気の流量を少なくし、前記エンジン室の十分な冷却を阻むおそれがある。
【0006】
本発明は、冷却用の空気の流量を十分に確保しながら空気に含まれる異物を除去することが可能な建設機械の集塵機構及びこれを備えた建設機械を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
提供されるのは、建設機械に設けられる集塵機構であり、前記建設機械は、吸気口を有する機械室に設けられた冷却器と、前記機械室内で前記吸気口から前記冷却器に向かう順方向の空気の流れを形成する冷却ファンと、を備える。前記集塵機構は、前記吸気口から前記冷却器への空気の流れを許容する複数の風路を形成し、それぞれがパネル面を有する複数のパネル部材を備える。前記複数のパネル部材は、前記順方向と交差する配列方向に配列され、前記配列方向に互いに隣接する前記パネル面どうしの間に前記複数の風路をそれぞれ形成する。前記複数の風路のそれぞれは、任意の地点で前記風路を流れる空気の方向が前記順方向のベクトル成分を含む形状を有する。前記複数のパネル部材のそれぞれは、前記風路を流れる空気の方向を変えるように曲がる変向部を含むパネル本体と、前記変向部で空気から分離された異物を捕捉するための集塵空間を前記変向部の下流側において前記パネル本体との間で画定する空間画定部と、を含む。
【0008】
前記集塵機構は、前記吸気口を通じて前記機械室に取り込まれる冷却用空気の流量を十分に確保しながら、当該空気に含まれる異物を有効に除去することができる。具体的に、前記空気に含まれる異物の一部または全部は、前記変向部において前記空気と前記異物との慣性の差を利用して空気から分離され、その下流側の前記集塵空間内に捕捉される。しかも、前記集塵空間は前記複数のパネル部材により画定された前記複数の風路のそれぞれに形成されているので、これらの集塵空間によって前記異物が効率よく回収される。一方、前記複数の風路のそれぞれは、任意の地点において前記風路を流れる空気の方向が前記順方向のベクトル成分を含む形状を有するので、従来のように、空気が前記順方向と逆方向に流れる、すなわち逆行するような風路に比べると圧力損失は小さい。このことは、前記集塵機構を通過して前記冷却器に至る空気の流量の低減を有効に抑制し、これにより、前記冷却器に十分な風量で空気が供給されることを可能にする。
【0009】
具体的に、前記パネル本体は、前記変向部よりも前記順方向の上流側に位置しかつ前記順方向に対して前記風路の内側に傾斜する上流側部を含んでもよいし、前記変向部よりも前記順方向の下流側に位置しかつ前記順方向に対して前記風路の内側に傾斜する下流側部を含んでもよい。
【0010】
より具体的には、前記パネル本体が、前記順方向に沿って延びる中間部と、前記中間部の上流側で前記順方向に対し前記風路の内側に傾斜して前記中間部との間に前記変向部を形成する上流側部と、前記中間部の下流側で前記順方向に対して前記風路の内側に傾斜する下流側部と、を含み、前記空間画定部は、前記下流側部から前記順方向の上流側に延びて前記中間部の一部と前記下流側部の少なくとも一部を覆うものが、好適である。当該空間画定部は、前記変向部で空気から分離された異物を前記下流側部と協働して効率よく集塵空間内に捕捉することができる。
【0011】
この場合、前記空間画定部は、前記下流側部の下流端に繋がって前記集塵空間の下流端を塞ぐ下流側閉塞部と、当該下流側閉塞部から前記下流側部に沿って延びて当該下流側部の全域を覆う下流側覆い部と、前記下流側覆い部から前記中間部に沿って上流側に延びて当該中間部の一部を覆う上流側覆い部と、を含むものが、好適である。このような空間画定部は、前記中間部と前記下流側部との境界に対応する位置で曲がった集塵空間を画定し、これにより、当該集塵空間の下流側に捕捉された異物が逆流して前記集塵空間から抜け出るのを抑止する。このことは、集塵効率を高めることを可能にする。
【0012】
前記パネル本体が前記中間部、前記上流側部及び前記下流側部を含む態様では、前記空間画定部は、前記上流側部と前記順方向に沿って対向する上流縁部を含み、当該上流縁部は、前記風路の内側から見て前記上流縁部と前記上流側部分との間に形成された入口開口の幅が前記パネル本体のパネル延び方向の位置によって変化する形状を有することが、好ましい。前記パネル延び方向は、前記順方向及び前記配列方向のそれぞれに対して直交する方向である。前記入口開口の幅が小さいほど当該入口開口を通じて前記集塵空間内に流入する空気の流速が高くなり、より小径の異物を捕捉することが可能となる。従って、当該入口開口の幅が前記パネル延び方向の位置によって変化することは、捕捉することが可能な異物の粒径の範囲を拡大する。
【0013】
前記複数のパネル部材は、前記パネル面が上下方向に沿うように配置されていることが好ましい。このことは、前記集塵空間に回収された異物がその自重により前記パネル面に沿って降下することを可能にし、これにより、当該異物の排出乃至回収を容易にする。
【0014】
この場合、前記複数のパネル部材のそれぞれは、当該複数のパネル部材の上端から下端に至るまで連続して延び、かつ、前記集塵機構は、前記複数の集塵空間のそれぞれの上端を塞ぐように前記複数のパネル部材の前記上端と接する上側閉塞部材をさらに備えることが、好ましい。当該上側閉塞部材は、前記複数の集塵空間のそれぞれの上端を塞ぐことにより、当該集塵空間の中に下向きの気流を形成し、これにより、前記異物の下向きの排出を促進することができる。
【0015】
前記パネル面が上下方向に沿う場合、前記集塵機構は、前記集塵空間を通じて降下する異物を受け止めて貯留する貯留部をさらに備えることにより、空気中から除去された異物を前記貯留部内に効率よく回収することが可能である。
【0016】
前記貯留部は、例えば、貯留容器を有し、当該貯留容器は前記集塵空間に向かって上向きに開放された貯留空間を画定することが好ましい。このことは、前記集塵空間内を降下した異物が前記貯留空間に効率よく貯留されることを可能にする。
【0017】
前記貯留容器は、前記集塵空間を降下する異物が前記貯留空間内に進入することが可能な貯留位置と当該貯留位置から外れた位置であって前記貯留空間内に貯留された異物を回収することが可能な回収位置との間で移動可能であることが好ましい。このことは、前記貯留位置において前記貯留空間内に貯留された異物を作業員が前記回収位置において容易に回収することを可能にする。
【0018】
前記貯留部は、閉塞位置と開放位置との間で移動可能な下側閉塞部材を含むものでもよい。前記下側閉塞部材は、前記閉塞位置では前記複数のパネル部材によりそれぞれ形成される前記集塵空間の下端を一括して塞ぐことにより当該集塵空間を通じて降下する異物が前記下側閉塞部材の上に堆積することを可能にし、前記開放位置では前記集塵空間のそれぞれを開放して前記異物が前記集塵空間の外部に放出されることを可能にする。このことは、前記下側閉塞部材が前記閉塞位置にある状態で当該下側閉塞部材の上に前記異物を堆積させた後、適当なタイミングで当該閉塞部材を前記開放位置に移動させることによりその堆積した異物を外部に放出させることを可能にする。
【0019】
前記下側閉塞部材が前記閉塞位置から前記開放位置まで移動する移動方向は水平方向に沿った方向であることが、好ましい。このことは、前記下側閉塞部材を移動させるために上下方向に大きなスペースを確保することを不要にする。
【0020】
さらに、前記移動方向は、前記配列方向と平行な方向であることが好ましい。このことは、前記移動の過程で前記下側閉塞部材が前記集塵空間を順に開放して異物を少しずつ放出させることを可能にし、これにより、前記下側閉塞部材の移動によって一度に大量の異物が放出されるのを防ぐことができる。
【0021】
前記貯留部は、付勢部材をさらに含み、前記付勢部材は、前記閉塞位置にある前記下側閉塞部材が前記複数のパネル部材の下端に接触する状態を保つように前記下側閉塞部材を前記複数のパネル部材の下端に向けて上向きに付勢することが、好ましい。前記付勢部材は、前記下側閉塞部材の上に堆積した異物が当該閉塞部材と前記複数のパネル部材の下端との間から漏出するのを有効に抑制することができる。
【0022】
前記貯留部は、ロック部をさらに含み、前記ロック部は、前記閉塞位置から前記開放位置への前記下側閉塞部材の移動を阻止するロック状態と前記移動の阻止を解除するロック解除状態とに切換可能であることが好ましい。前記ロック部は、前記下側閉塞部材が不用意に前記閉塞位置から前記開放位置に移動して前記異物が誤って放出されるのを防ぐことができる。
【0023】
前記複数のパネル部材のそれぞれの前記空間画定部が、前記パネル本体における前記順方向の下流側の端部において前記風路の一部を塞ぐ下流側閉塞部を有する場合、前記下流側閉塞部には、前記下側閉塞部材の上に貯留する前記異物が前記順方向の下流側から目視で確認されることを可能にする確認窓が設けられていることが、好ましい。当該確認窓は、前記下流側閉塞部の存在にかかわらず前記異物の貯留状況が把握されることを可能にする。
【0024】
前記貯留部は、前記吸気口の下端よりも下側に位置するのが好ましい。このように配置された前記貯留部は、前記吸気口を通じての吸気性能に著しい影響を与えることなく異物を受け止めることが可能である。
【0025】
前記集塵機構は、前記複数のパネル部材のうち少なくとも一つのパネル部材の前記変向部の変向角度を変化させる変向角度調節機構をさらに備えていることが好ましい。前記変向角度の変更は、前記冷却器に供給される空気の流量と前記集塵空間における異物の回収量とのバランスを変えることを可能にする。
【0026】
前記集塵機構は、前記配列方向に互いに隣接するパネル部材どうしの間隔であるパネル間隔を変化させる間隔調節機構をさらに備えてもよい。前記パネル間隔の調整によっても、前記冷却器に供給される空気の流量と前記集塵空間における異物の回収量とのバランスを変えることが可能である。
【0027】
また、提供されるのは、建設機械であり、当該建設機械は、吸気口を有する機械室に設けられた冷却器と、前記機械室に設けられて前記吸気口から前記冷却器に向かう順方向の空気の流れを形成する冷却ファンと、前記冷却器の上流側で空気に含まれる異物を除去する集塵機構であって、前記のように構成された集塵機構と、を備える。
【0028】
前記建設機械は、前記機械室及び前記機械室に通ずる扉口を画定する機械室本体と、前記扉口を閉じる閉位置と前記扉口を開く開位置との間で移動可能に前記機械室本体に連結される扉と、を備え、前記扉に前記吸気口が形成され、前記複数のパネル部材は、前記扉と一体に移動するように当該扉に取付けられ、前記扉の前記開位置は前記複数のパネル部材を前記機械室の外部に開放する位置であることが、好ましい。このように前記扉に取付けられた前記複数のパネル部材は、当該扉が前記開位置に移動することにより外部に開放され、これにより、前記複数のパネル部材のメンテナンス等を作業者が容易に行うことを可能にする。
【発明の効果】
【0029】
以上のように、冷却用の空気の流量を十分に確保しながら空気に含まれる異物を除去することが可能な建設機械の集塵機構及びこれを備えた建設機械が、提供される。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【
図1】本発明の第1の実施の形態に係る建設機械を示す側面図である。
【
図2】
図1に示される前記建設機械の吸気室の断面平面図であって吸気室扉が閉位置にある状態を示す。
【
図3】前記吸気室の断面平面図であって前記吸気室扉が開位置にある状態を示す。
【
図4】本発明の第1の実施の形態に係る集塵機構の斜視図である。
【
図5】
図2のV-V線に沿った断面を示す側面図である。
【
図6】
図4に示される集塵機構の一部を拡大して示した断面平面図である。
【
図7】本発明の第2の実施の形態に係る集塵機構の斜視図である。
【
図8】
図7に示される前記集塵機構の一部の平面図である。
【
図9】
図7に示される前記集塵機構を当該集塵機構の下流端の側から見た断面図であって前記集塵機構の閉塞部材が閉位置にある状態を示す。
【
図10】
図9に示される状態を示す一部断面側面図である。
【
図11】
図7に示される前記集塵機構を当該集塵機構の下流端の側から見た断面図であって前記集塵機構の閉塞部材が集塵空間を順に開放する状態を示す。
【
図13】
図7に示される前記集塵機構におけるパネル部材の上流側部と空間画定部の上流縁部との間に形成される内側開口を示す側面図である。
【
図14】
図13に示される空間画定部の変形例を示す側面図である。
【
図15】前記第1の実施の形態に係る集塵機構に変向角度調節機構が付与された例を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下添付図面を参照しながら、本発明の好ましい実施の形態について説明する。
【0032】
図1は、本発明の第1の実施の形態に係る建設機械10を示す。前記建設機械10は、
図1に示すように、例えば油圧ショベルであり、下部走行体11と、上部旋回体12と、アタッチメント13と、を備える。前記下部走行体11は、左右一対のクローラを含み、地盤上を走行することが可能である。前記上部旋回体12は、前記下部走行体11に旋回自在に搭載される。前記上部旋回体12は、アッパーフレーム20と、キャブ14と、機械室カバー16と、カウンタウェイト22と、を含む。前記キャブ14、前記機械室15及び前記カウンタウェイト22は、前記アッパーフレーム20の上に設置されている。前記アタッチメント13は、前記アッパーフレーム20の前端に起伏可能に連結され、所定の作業動作、例えば掘削動作、を行う。前記キャブ14は、前記アタッチメント13に隣接して運転室を画定する。前記カウンタウェイト22は、前記アッパーフレーム20の後部に搭載され、当該アッパーフレーム20の後端外周縁に沿う形状を有する。
【0033】
前記機械室カバー16は、前記上部旋回体12の後部に設置され、前記カウンタウェイト22とともに機械室本体を構成する。前記機械室本体は、機械室15を画定する。前記機械室カバー16は、前記機械室15を上から覆うように配置される。
【0034】
前記機械室15には
図2に示される仕切り壁17が配置されている。前記仕切り壁17は、前記機械室15をエンジン室15aと吸気室15bとに区画する。
図2に示される例では、前記仕切り壁17は前記上部旋回体12の前後方向に延び、前記エンジン室15a及び前記吸気室15bは前記上部旋回体12の左右方向に並ぶ。前記仕切り壁17は開口部を有し、当該開口部は、前記仕切り壁17を貫通し、これにより、前記吸気室15b内に取り込まれた冷却用の空気が当該吸気室15bから前記開口部を通じて前記エンジン室15aに順方向Dnに流入することを許容する。前記順方向Dnは、この実施の形態では
図2に矢印で示されるように前記吸気室15bから前記エンジン室15aに向かう方向であり、
図2に示される上部旋回体12では左右方向である。
【0035】
前記エンジン室15aは、エンジン31と、油圧ポンプ32と、冷却ファン33と、ファンシュラウド34と、冷却器35と、を収容し、これらは前記順方向Dnに沿ってその上流側から、前記冷却器35、前記ファンシュラウド34、前記冷却ファン33、前記エンジン31及び前記油圧ポンプ32の順に配列されている。前記機械室カバー16には排気口16aが形成され、当該排気口16aは前記順方向Dnの下流側端部に位置する。前記排気口16aは、前記エンジン室15aに送り込まれた空気が当該排気口16aを通じて前記エンジン室15aの外部に排出されることを許容する。
【0036】
前記エンジン31は、前記油圧ポンプ32を駆動するための動力源である。前記エンジン31は、水平方向に延びる駆動軸を有する。前記駆動軸は、両端部を有し、当該両端部は入力端部及び出力端部をそれぞれ構成する。前記油圧ポンプ32は、前記エンジン31において生成される動力を油圧に変換する。具体的に、前記油圧ポンプ32は、前記エンジン31の前記駆動軸の前記入力端部(
図2では右端部)に接続され、前記駆動軸の回転により駆動されて作動油を吐出する。
【0037】
前記冷却器35は、当該冷却器35を通過する空気と、前記エンジン31を冷却するための冷媒、例えばエンジン冷却水、との間で熱交換させ、これにより前記冷媒ひいては前記エンジン31を冷却する。前記冷却器35は、熱交換器、例えばラジエータ、により構成される。前記冷却器35は、コア面を有し、当該コア面が前記順方向Dnを向くように配置されている。
【0038】
前記冷却ファン33は、前記建設機械10の外部から吸気室15bを通して前記エンジン室15aに向かう空気の流れ、を生成する。具体的に、前記吸気室15bには後に詳述される吸気口44が形成され、前記冷却ファン33は、前記順方向Dnの空気の流れを形成する。前記順方向Dnは、前記吸気口44から前記冷却器35に至る方向であり、当該冷却器35を通った空気は前記エンジン31に至る。
図2に示される例では前記冷却ファン33は前記冷却器35の下流側であって前記エンジン31の上流側に位置する。前記冷却ファン33は、前記エンジン31の前記駆動軸の前記出力端部(
図2では左端部)に接続され、前記駆動軸の回転により駆動されて前記順方向Dnの空気の流れを生成する。前記ファンシュラウド34は、前記冷却ファン33を囲むように配置され、前記冷却器35を通過した空気を前記エンジン31に導く。
【0039】
前記吸気室15bは、前記エンジン室15aの前記順方向Dnの上流側に位置する。
図2及び
図3に示すように、前記吸気室15bは、前記機械室本体の一部、具体的には前記機械室カバー16の一部と前記カウンタウェイト22の一部、により画定される。
【0040】
前記機械室本体には、
図3に示される扉口40が形成されるとともに吸気室扉41が連結されている。前記吸気室扉41は、前記扉口40を開閉するための扉である。前記扉口40は、前記吸気室15bの内部と外部とを水平方向(この実施の形態では前記上部旋回体12の左右方向)に連通するように形成される。前記吸気室扉41は、
図2に示される閉位置と
図3に示される開位置との間で回動可能となるように上下方向のヒンジ42を介して前記機械室本体(機械室カバー16)に連結されている。前記吸気室扉41は、前記閉位置では前記扉口40を塞ぎ、前記開位置では前記扉口40を開放する。前記吸気室扉41は、前記閉位置から前記吸気室15bの外側に向かって垂直軸回りに回動することにより前記開位置に至ることが可能である。
【0041】
前記吸気口44は、この建設機械10では前記吸気室扉41に形成されている。前記吸気口44は、前記吸気室扉41が前記閉位置にある状態で前記吸気室15bの内部と外部とを前記順方向Dnと平行な方向に連通し、これにより、前記外部の空気すなわち外気が前記吸気口44を通じて前記吸気室15b内に前記順方向Dnに沿って取り込まれることを可能にする。
【0042】
前記吸気室15bは、吸気ダクト36を収容する。前記吸気ダクト36は、前記順方向Dnについて前記冷却器35の上流側の空間を囲み、前記吸気室15b内に取り込まれた空気を前記冷却器35へ前記順方向Dnに導く。
【0043】
前記建設機械10は、
図2及び
図3に示される集塵機構50をさらに備える。前記集塵機構50は、前記吸気室15b内に配置され、当該吸気室15b内に前記吸気口44を通じて取り込まれた空気が前記順方向Dnに沿って流れるのを許容しながら前記冷却器35の上流側で空気中の異物52(
図6)を捕捉して回収する。このようにして異物52が回収された後の空気が前記吸気ダクト36を通して前記冷却器35に送り込まれることにより、当該冷却器35その他の機器における目詰まりが抑制される。
【0044】
前記集塵機構50は、
図2及び
図3に示される実施の形態では、前記吸気室扉41と一体に移動するように当該吸気室扉41に取付けられている。従って、前記集塵機構50は、前記吸気室扉41が前記閉位置にある状態では
図2に示されるように前記吸気室15b内に位置して前記吸気口44と前記冷却器35との間の位置、すなわち前記冷却器35の上流側の位置、で前記異物52の捕捉を行うことが可能である。一方、前記吸気室扉41が前記開位置にある状態では前記集塵機構50は
図3に示されるように前記吸気室15bの外部に開放される。このことは、作業者が前記集塵機構50のメンテナンスを行うことを容易にする。
【0045】
前記集塵機構50は、
図4及び
図5に示すように、複数のパネル部材60と、上側閉塞部材80と、貯留部70と、を備える。
【0046】
前記複数のパネル部材60は、配列方向Daに互いに間隔を空けて配列されている。前記配列方向Daは、前記順方向Dnと交差する方向であり、この実施の形態では前記順方向Dnと直交する水平方向、すなわち前記上部旋回体12の前後方向と平行な方向、である。前記複数のパネル部材60は、複数の風路54を形成し、当該複数の風路54のそれぞれは、前記順方向Dnに沿って前記吸気口44から前記吸気ダクト36に向かって空気が流れることを許容する。前記複数の風路54は、前記複数のパネル部材60のうち前記配列方向Daに互いに隣接するパネル部材60どうしの間にそれぞれ形成される。
【0047】
前記複数のパネル部材60のそれぞれは、パネル本体を有し、当該パネル本体はパネル面60a,60bを有する。前記パネル本体は、前記配列方向Daと平行な厚み方向を有する板材であり、互いに同一の形状を有する。前記パネル面60a,60bは前記パネル本体の前記厚み方向の両側面、すなわち表裏面、であり、この実施の形態では前記パネル面60a,60bがそれぞれ上下方向に沿うように、つまり鉛直面となるように、前記複数のパネル部材60のそれぞれが配置されている。前記複数の風路54のそれぞれは、前記配列方向Daに互いに隣接するパネル部材60のうちの一方のパネル部材60の前記パネル面60aと他方のパネル部材60の前記パネル面60bとの間に形成されている。
【0048】
この第1の実施の形態に係る前記複数のパネル部材60のそれぞれの前記パネル本体は、上流側部61、中間部62及び下流側部63を含み、これらは前記順方向Dnの上流側から順に並びかつ相互に連続する。前記中間部62は、前記順方向Dnに沿って、好ましくは順方向Dnと平行に、延びる。前記上流側部61は、前記順方向Dnについて前記中間部62の上流側に位置し、前記順方向Dnに対して、前記配列方向Daに沿って前記風路54の内側(
図6では下側)に第1の角度θ1だけ傾斜する。前記下流側部63は、前記順方向Dnに対して前記配列方向Daに沿って前記風路54の内側に(つまり前記上流側部61と同じ側に)第2の角度θ2だけ傾斜する。前記第1及び第2の角度θ1,θ2はいずれも鋭角(<90°)である。換言すれば、前記中間部62と前記上流側部61及び前記下流側部63との間でそれぞれ形成される角度はいずれも鈍角である。従って、前記風路54において空気が導かれる方向は当該風路54の全域にわたって前記順方向Dnのベクトル成分を含む。換言すれば、前記空気が流れる方向は前記順方向Dnと反対の方向に空気を逆流させる成分は含んでいない。
【0049】
このように、前記第1の実施の形態に係る前記パネル部材60の前記中間部62とその両側の前記上流側部61及び前記下流側部63との間には、それぞれ第1及び第2の角度θ1,θ2で曲がった部分が形成されている。そして、前記中間部62と前記上流側部61との間に集塵のための変向部64が形成されている。当該変向部64は、前記第1の角度θ1で前記空気の流れを変える。しかし、当該空気に含まれる前記異物52は当該空気よりも大きな慣性を有するため、前記変向部64にて曲がり切らずに前記変向部64の下流側の部分(この実施の形態では前記中間部62)に衝突する。これにより、前記異物52は前記空気から分離されることが可能である。従って、前記上流側部61は前記変向部64よりも前記順方向Dnについて上流側の部分であり、前記下流側部63は前記変向部64よりも前記順方向Dnについて下流側の部分に含まれる。
【0050】
前記変向部64における変向角度、この実施の形態では前記第1の角度θ1、は任意に設定されることが可能であるが、一般には30°~60°の範囲で設定されることが、好ましい。前記変向角度は、風路どうしの間で異なっていてもよい。
【0051】
前記複数のパネル部材60のそれぞれは、空間画定部66をさらに含む。前記空間画定部66は、前記パネル部材60の本体(前記上流側部61、前記中間部62及び前記下流側部63)と同様に板状をなして上下方向の全域にわたり延び、前記変向部64の下流側で前記パネル本体の特定部分を覆うように配置される。これにより、前記空間画定部66は前記特定部分との間に集塵空間68を画定し、前記変向部64で空気から分離された異物52を前記集塵空間68内に捕捉する。
【0052】
この実施の形態に係る前記空間画定部66は、前記順方向Dnについて両端部、すなわち下流側端部及びその反対側の上流側端部、を有し、当該両端部どうしの間で前記順方向Dnに沿って連続して延びる。前記下流側端部は前記下流側部63の中間部位につながり、これにより前記集塵空間68の下流端を塞いで前記集塵空間68内での異物52の進路を断つ。前記上流側端部は、前記中間部62から前記配列方向Daに沿って前記風路54の内側に離間し、これにより前記集塵空間68を上流側に開放して当該集塵空間68内に異物52が進入することを許容する。
【0053】
前記上側閉塞部材80は、前記複数のパネル部材60の上端とそれぞれ接触するように配置され、これにより、当該複数のパネル部材60のそれぞれにより画定される前記集塵空間68の上端を塞ぐ。このことは、当該集塵空間68内に進入した空気が上側に抜けるのを阻み、これにより、当該集塵空間68内に下向きの気流を形成して前記異物52が下向きに排出されることを促す。前記上側閉塞部材80は、
図5に示される例では水平な平板であるが、具体的な形状は限定されない。当該上側閉塞部材80は、前記吸気室扉41の一部、あるいは機械室本体(この実施の形態では吸気室本体)の一部により構成されてもよい。
【0054】
前記貯留部70は、前記複数の風路54のそれぞれにおける前記集塵空間68に捕捉されて降下する異物52を貯留する部分である。前記のように、この実施の形態に係る前記複数のパネル部材60のそれぞれのパネル面60a,60bが上下方向に沿うように配置されているため、前記集塵空間68内に捕捉された異物52は少なくともその自重によって(この実施の形態では前記上側閉塞部材80により形成される下向きの気流も相俟って)当該集塵空間68に沿って降下する。前記貯留部70は、前記複数の風路54のそれぞれの下方(すなわちそれぞれの集塵空間68の下方)に位置するように配置され、前記のように降下する異物52を受け止めて貯留することが可能である。
【0055】
図4及び
図5に示すように、この実施の形態に係る前記貯留部70は、貯留容器71と、容器蓋72と、を有する。前記貯留容器71は、上向きに開口する貯留空間74を画定し、下降する異物52を前記貯留空間74内に受け止めることが可能である。前記容器蓋72は、前記貯留容器71の開口を塞ぐように配置される。前記容器蓋72には、前記集塵空間68のそれぞれに対応する複数の開口73が形成され、当該複数の開口73を通じて異物52が前記貯留容器71内に降下することを許容する。前記貯留部70は、好ましくは、前記容器蓋72の上面が前記複数のパネル部材60のそれぞれの下端と接触するように配置される。
【0056】
この実施の形態に係る前記貯留部70は、貯留位置と回収位置との間で移動可能となるように前記吸気室扉41に取付けられる。前記貯留位置は、前記複数の風路54のそれぞれの下方の位置であって前記集塵空間68を降下する異物52が前記貯留空間74内に進入することが可能な位置である。前記回収位置は、前記貯留位置から外れた位置であって前記貯留空間74内に貯留された異物を作業者が回収することが可能な位置である。この実施の形態では、前記回収位置は、前記貯留位置から水平方向、詳しくは前記配列方向Da、に外れた位置に設定されており、前記貯留部70は前記貯留位置と前記回収位置との間で前記配列方向Daと平行な方向に移動可能、すなわちスライド可能、となるように前記吸気室扉41に取付けられている。
【0057】
前記複数のパネル部材60及び前記貯留部70は、図示されない枠体を介して前記吸気室扉41に支持される。前記複数のパネル部材60及び前記貯留部70は、あるいは、前記枠体を介することなく直接、前記吸気室扉41に支持されてもよい。例えば、前記複数のパネル部材60は前記吸気室扉41の内側面に直接接合されてもよいし、前記貯留部70は所定のガイド機構を介してスライド可能に前記吸気室扉41に連結されてもよい。また、前記吸気室扉41がない場合には、前記複数のパネル部材60及び前記貯留部70は機械室本体(この実施の形態では前記吸気室本体)に取付けられてもよい。
【0058】
図5に示すように、前記貯留部70の上面(この実施の形態では前記容器蓋72の上面)は、前記吸気口44の下端よりも下側に位置している。つまり、前記複数のパネル部材60が前記吸気口44に対して前記順方向Dnと平行な方向に対向しているのに対して、前記貯留部70は前記吸気口44から下方に外れた位置にある。このことは、前記複数の風路54を空気が流通する面積を大きく確保することを可能にし、また、前記貯留部70が前記空気の流れを乱すことを抑制する。すなわち、前記貯留部70が前記吸気口44を通じての吸気性能に著しい影響を与えることなく異物52を貯留することを可能にする。
【0059】
次に、前記集塵機構50の作用について説明する。
【0060】
図2に示すように、前記吸気室扉41が前記閉位置にあって前記扉口40を閉じている状態では、前記集塵機構50は前記吸気室15b内に位置している。この状態で前記冷却ファン33が駆動されると、前記建設機械10の外部から前記吸気室扉41の前記吸気口44を通して前記吸気室15bに流れ込む空気の流れが形成される。このようにして取り込まれた空気は、前記集塵機構50における前記複数のパネル部材60により形成された複数の前記風路54及び前記吸気ダクト36を前記順方向Dnに流れて前記冷却器35を通過することが可能である。
【0061】
前記集塵機構50では、前記複数のパネル部材60のそれぞれの前記変向部64において、前記複数の風路54のそれぞれを流れる空気の方向が変化させられる一方、当該空気に含まれる異物52の流れ方向は変化しきれず、当該異物52は前記変向部64の下流側の中間部62に沿って集塵空間68内に進入し、ここで捕捉される。当該集塵空間68の上端及び下流端はそれぞれ前記上側閉塞部材80及び前記空間画定部68の下流側端部によって塞がれているため、当該集塵空間68内に流入する前記異物52は同じく集塵空間68に流入する一部の空気とともに降下し、前記複数の風路54のそれぞれの下方に配置された前記貯留部70に貯留される。詳しくは、前記異物52は前記貯留部70における前記容器蓋72に形成された複数の開口73をそれぞれ通って前記貯留容器71内の貯留空間74内に受け止められる。
【0062】
このように、空気中の異物52はその大きな慣性を利用して前記変向部64で空気から分離され、当該変向部64の下流側に画定された集塵空間68内に捕捉される。このことは、前記集塵機構50の下流側に位置する前記冷却器35その他の機器における目詰まりを有効に抑止する。しかも、前記集塵空間68は、前記複数のパネル部材60のそれぞれによって画定されている、つまり前記複数の風路54のそれぞれに付与されている、ため、全体として十分な捕捉量を確保することができる。
【0063】
一方、前記複数の風路54のそれぞれは、当該風路54の任意の位置における空気の流れ方向が前記順方向Dnのベクトル成分を含む形状を有し、かつ、当該複数の風路54が前記順方向Dnと直交する前記配列方向Daに配列されているので、全体として大きな空気の流通面積を確保して前記集塵機構50における空気の圧力損失を有効に抑えることを可能にする。このことは、前記冷却器35に至る空気の流量の不足による前記エンジン31の冷却不良を回避しながら当該冷却器35の上流側で前記空気に含まれる異物52を捕捉することを可能にする。
【0064】
さらに、この実施の形態では、前記のように集塵空間68のそれぞれにおいて捕捉された異物52を共通の貯留部70に貯留することができ、これにより、当該異物52を作業員が容易に回収することを可能にする。具体的に、前記作業員は、前記吸気室扉41を前記閉位置から前記開位置まで移動させ、前記貯留部70をそれまでの貯留位置から回収位置まで移動させることにより、この回収位置で前記貯留部70における前記貯留空間74内の異物52を容易に回収することができる。このような貯留部70による効果は、前記吸気室扉41ではなく前記吸気室本体に前記集塵機構50が取付けられた場合、例えば当該吸気室本体に前記貯留部70が前記貯留位置と前記回収位置との間で移動可能に取付けられた場合、にも同様に得ることが可能である。
【0065】
前記貯留部70の前記容器蓋72は任意の要素である。すなわち、当該容器蓋72が省略されて前記貯留容器71の開口が常に複数の風路54に向かって開口していてもよい。その一方、前記のように前記集塵空間68のそれぞれに対応した開口73をもつ前記容器蓋72は、前記複数の風路54における空気の流れの乱れを抑止しながら前記集塵空間68内に捕捉された異物52が前記貯留空間74内に貯留されることを可能にする。
【0066】
次に、本発明の第2の実施の形態について説明する。
図7~
図12は、前記第2の実施の形態に係る集塵機構50Aを示す。前記集塵機構50Aは、前記第1の実施の形態に係る前記集塵機構50と同じく
図1に示される建設機械10に搭載され、かつ、次の点において当該集塵機構50と共通する。すなわち、前記集塵機構50Aは、複数のパネル部材60Aと、貯留部90と、を備え、
図10及び
図12に示されるように吸気室扉41の内側面に取付けられて当該吸気室扉41と一体に回動する。前記複数のパネル部材60Aは、複数の風路54を形成するように互いに間隔をおいて配列方向Daに配列され、当該配列方向Daは順方向Dnと直交する水平方向である。前記複数のパネル部材60Aのそれぞれは、パネル本体と、空間画定部66Aと、を有する。当該パネル本体は表裏一対のパネル面60a,60bを有し、互いに前記配列方向Daに隣接するパネル部材60Aのうちの一方のパネル面60aと他方のパネル面60bとの間に前記風路54が形成される。前記パネル本体は、前記第1の実施の形態に係る前記上流側部61、前記中間部62及び前記下流側部63と同様の上流側部61、中間部62及び下流側部63を含み、前記中間部62と前記上流側部64との間に空気の流れを変更する変向部64が形成されている。
【0067】
一方、前記集塵機構50Aは、次の点において、前記集塵機構50と相違する。
【0068】
前記第1の実施の形態では、前記空間画定部66が前記下流側部63の中間部位から前記中間部62と略平行に上流側に延びてストレートな集塵空間68を画定するのに対し、第2の実施の形態に係る前記空間画定部66Aは、前記下流側部63の下流側端から延びて途中で屈曲した集塵空間68Aを画定する。
【0069】
具体的に、前記空間画定部66Aは、下流側閉塞壁66aと、下流側覆い壁66bと、上流側覆い壁66cと、を含む。前記下流側閉塞壁66aは、前記下流側部63の前記下流側端から前記配列方向Daに沿って前記風路54の内側(
図7では右側、
図9及び
図11では左側)に延び、これにより前記集塵空間68Aの下流端を塞ぐ。前記下流側覆い壁66bは、前記下流側閉塞壁66aの内側端から前記下流側部63と略平行に(すなわち前記順方向Dnに対して傾斜した方向に)上流側(
図7では手前側、
図10及び
図12では左側)に延びて前記下流側部63を前記風路54の内側から覆う。前記上流側覆い壁66cは、前記下流側覆い壁66bの上流側端から前記中間部62と略平行に(つまり前記順方向Dnと略平行な方向に)上流側に(つまり前記順方向Dnと逆方向に)延びて前記中間部62の下流側部分を覆う。従って、前記空間画定部66Aは、前記変向部64の下流側において前記中間部62の一部及び前記下流側部63の全域との間に集塵空間68Aを画定し、当該集塵空間68Aは前記中間部62と前記下流側部63との境界部分に相当する位置で屈曲した形状を有する。このことは、前記集塵空間68Aの下流端に捕捉された異物52が逆流して当該集塵空間68Aから抜け出ることを抑止し、これにより、異物52の捕捉の効率が高まることを可能にする。
【0070】
前記貯留部90は、前記第1の実施の形態に係る前記貯留容器71及び前記容器蓋72に代わり、下側閉塞部材92、スライド支持部94、及びロック部96を含む。
【0071】
前記下側閉塞部材92は、例えば水平な平板により構成され、前記複数のパネル部材60Aのそれぞれの下端と接触することが可能な面積を有する。前記下側閉塞部材92は、このように接触した状態で配置されることにより、前記複数の風路54及び前記集塵空間68の下端を塞ぐことが可能であり、かつ、前記集塵空間68内を降下する異物52を前記下側閉塞部材92の上に堆積させることが可能である。
【0072】
前記スライド支持部94は、前記下側閉塞部材92を所定の高さ位置に支持する。前記高さ位置は、前記下側閉塞部材92の上面が前記複数のパネル部材60Aのそれぞれの下端と接触する位置であり、好ましくは
図9及び
図11に示されるように前記上面が前記吸気室扉41に形成された吸気口44の下端と同等又はそれよりも低い高さ位置である。
【0073】
前記スライド支持部94は、このように前記下側閉塞部材92を支持しながら、さらに、当該下側閉塞部材92が閉塞位置と開放位置との間でスライドすることを許容する。前記閉塞位置は、
図9に示されるように前記下側閉塞部材92が前記複数の風路54の全ての下端を閉塞する位置であり、逆に前記開放位置は前記複数の風路54の全ての下端を開放するように前記下側閉塞部材92が前記開放位置から水平なスライド方向に外れた位置である。前記スライド方向は、この実施の形態では
図11に示されるように前記配列方向Daと平行な方向である。
【0074】
前記スライド支持部94は、具体的に、枠体97と複数の付勢部材98とを含む。前記枠体97は、前記吸気室扉41の内側に固定されながら前記下側閉塞部材92を前記スライド方向にスライド可能に支持する。具体的に、前記枠体97は、
図10及び
図12に示されるように、底壁97aと、一対の側壁97bと、一対の拘束壁97cと、を一体に有する。前記底壁97aは前記複数のパネル部材60Aの下方において前記配列方向Daに延び、当該底壁97aの上に前記複数の付勢部材98を介して前記下側閉塞部材92を支持する。前記底壁97aの幅方向(この実施の形態では前記順方向Dnと平行な方向)の中央には当該底壁97aを上下方向に貫通する排出口97dが形成され、当該排出口97dを通じた異物52の降下が許容されている。前記一対の側壁97bは前記底壁97aの前記幅方向の両縁から所定の高さ寸法だけ立ち上がる。前記一対の拘束壁97cは前記一対の側壁97bの上端から前記幅方向の内側に延びて前記下側閉塞部材92を上側から拘束する。前記一対の拘束壁97cによる拘束の領域は、
図10及び
図12に示されるように前記幅方向について前記複数のパネル部材60Aの両外側の領域に設定されている。
【0075】
前記複数の付勢部材98は、前記排出口97dから外れた位置に配置され、前記下側閉塞部材92を上向きに付勢して当該下側閉塞部材92と前記複数のパネル部材60Aの下端との接触を保つ。前記複数の付勢部材98のそれぞれは、上下方向に弾性変形可能な部材、例えば板ばね、により構成され、上下方向に圧縮変形した状態で前記底壁97aの上面と前記下側閉塞部材92の下面との間に介在することにより、当該付勢部材98の弾発力を利用して前記下側閉塞部材92を前記パネル部材60Aの下端に向かって上向きに付勢する。
【0076】
前記ロック部96は、ロック状態とロック解除状態とに切換わることが可能である。前記ロック状態は、前記ロック部96が前記閉塞位置からの前記下側閉塞部材92の移動を阻止する状態であり、前記ロック解除状態は前記移動の阻止を解除する状態である。具体的に、この実施の形態に係る前記ロック部96は、被拘束部96aと、拘束ボルト96bと、を含む。
【0077】
前記被拘束部96aは、前記スライド方向(この実施の形態では前記配列方向Daと平行な方向)についての前記下側閉塞部材92の一方の端部から上向きに延びる。当該端部は、具体的には、前記閉塞位置から前記開放位置に向かう方向についての前記下側閉塞部材92の前端部(
図9及び
図11では右端部)である。前記被拘束部96aには前記拘束ボルト96bの挿通を許容するボルト挿通孔が形成されている。
【0078】
一方、前記複数のパネル部材60Aのうちの特定のパネル部材60Aにはねじ孔60sが形成されている。前記特定のパネル部材60Aは、前記下側閉塞部材92が前記閉塞位置にある状態で前記被拘束部96aと接触することが可能なパネル部材60Aであり、前記ねじ孔60sは前記ボルト挿通孔と合致する位置に形成されている。
【0079】
このように前記特定のパネル部材60Aと前記被拘束部96aとが接触した状態で前記前記ボルト挿通孔に外側から前記拘束ボルト96bが挿入されて前記ねじ孔60sにねじ込まれることにより、前記下側閉塞部材92は前記閉塞位置にロックされる(ロック状態)。逆に、前記ねじ孔60sから前記拘束ボルト96bが取り外されることにより、前記ロックが解除される(前記ロック解除状態)。
【0080】
一方、前記複数のパネル部材60Aのそれぞれは、上流側閉塞壁67をさらに含む。前記上流側閉塞壁67は、前記複数のパネル部材60Aのそれぞれにおけるパネル面60aと前記空間画定部66Aとの間に形成される上流側開口のうちの下端部分のみを塞ぐように配置される。このように配置された前記上流側閉塞壁67は、前記集塵空間68内において前記下側閉塞部材92の上に堆積した異物52が上流側に漏れ出るのを抑止して当該異物52の貯留を促進する。
【0081】
また、前記複数のパネル部材60Aのそれぞれにおける前記下流側閉塞壁66aの下端部には、
図9及び
図11に示される確認窓65が形成されている。当該確認窓65は、前記吸気室扉41を開いた状態で作業者が前記下流側閉塞壁66aの手前の位置から前記確認窓65を通じて異物52の堆積度合いを把握することを可能にする。前記確認窓65は、従って、比較的透明性の高い材料からなるシート材で覆われていることが、好ましい。
【0082】
次に、この第2の実施の形態に係る集塵機構50Aの作用について説明する。
【0083】
前記集塵機構50Aが搭載される建設機械(例えば
図1に示される建設機械10)の運転中は、前記貯留部90の前記下側閉塞部材92は前記閉塞位置にセットされ、前記複数の風路54及び集塵空間68のそれぞれの下端の開口を塞ぐ。このとき、前記ロック部96は前記ロック状態に切換えられて前記下側閉塞部材92を前記閉塞位置にロックすることにより、当該下側閉塞部材92が建設機械10の振動等で不用意に前記閉塞位置から前記開放位置に向かって変位するのを防ぐことができる。
【0084】
この状態で前記第1の実施の形態と同様に前記吸気室扉41の前記吸気口44から前記複数の風路54を通じて吸気室15b内に空気が円滑に流入することが許容されるとともに、当該空気に含まれる異物52が第1の実施の形態と同様に前記変向部64で空気から分離され、その下流側の前記集塵空間68A内に捕捉される。当該異物52は、当該集塵空間68A内を降下して前記下側閉塞部材92の上に堆積する。ここで、前記複数の付勢部材98は、前記下側閉塞部材92を上向きに付勢して当該下側閉塞部材92と前記複数のパネル部材60Aの下端との接触を保つことにより、当該下側閉塞部材92と当該複数のパネル部材60Aの下端との隙間から異物52が漏れ出るのを抑制することができる。また、上流側閉塞壁67は、前記下側閉塞部材92上に堆積した異物52が集塵空間68Aから抜け出るのを抑止する。
【0085】
作業者は、例えば定期的に前記吸気室扉41を開くことにより、前記確認窓65を通じて前記集塵空間68内における前記異物52の堆積状況を確保することができる。そして、当該異物52がある程度堆積した状態で前記ロック部96を前記ロック解除状態に切換えて(この実施の形態では前記拘束ボルト96bを外して)前記下側閉塞部材92を前記閉塞位置から前記開放位置までスライドさせることにより、それまで前記下側閉塞部材92の上に堆積していた異物52を下方に排出することができる。この異物52は、そのまま地面に落とされてもよいし、例えば
図11に示されるような適当な清掃治具100により受けられて回収されてもよい。
【0086】
前記スライド方向は、任意に設定されることが可能であるが、
図9及び
図11に示されるように前記配列方向Daと平行な方向であることが、好ましい。このことは、前記下側閉塞部材92が前記閉塞位置から前記開放位置までスライドするのに伴って前記集塵空間68が一つずつ順に開放されることを可能にする。これにより、一度に大量の異物52が排出されるのを回避しながら異物52を順に効率よく排出または回収することができる。
【0087】
前記貯留部90は、前記複数の風路54のそれぞれの下端部分を貯留空間として利用することにより、例えば第1の実施の形態に係る貯留容器71を要しない簡素かつ軽量な構造で、異物52の貯留及び回収を行うことが可能である。従って、当該貯留部90は、前記吸気室扉41に取付けられる場合にも当該吸気室扉41の総重量(集塵機構を含めた重量)の著しい増大を防ぎながら集塵を行うことが可能である。
【0088】
本発明は、以上説明した実施の形態に限定されない。本発明は、例えば、以下のような態様を包含する。
【0089】
(A)パネル部材について
前記複数のパネル部材のそれぞれの具体的な形状は限定されない。
【0090】
前記変向部は、異物の捕捉が可能となる程度に空気の流れ方向を変化させるものであればよく、例えば前記変向部64のようにパネル部材が急峻に屈曲する部分に限定されない。当該変向部は、例えば、接線方向が連続的に変化する曲線状であってもよい。
【0091】
前記配列方向は、前記順方向に対して交差する方向であればよく、前記順方向に対して直交する水平方向に限定されない。前記配列方向は、例えば、水平方向であってもよい。すなわち、前記複数のパネル部材が上下方向に間隔をおいて、つまり前記パネル面が略水平となる姿勢で、配列されてもよい。ただし、前記パネル面が上下方向に沿う姿勢での複数のパネル部材の水平方向の配列は、それぞれの集塵空間に捕捉された異物が少なくともその自重により降下して容易に排出乃至回収されることを可能にする。
【0092】
前記空間画定部は、前記パネル本体との間に集塵空間を画定することができるものであればよく、その形状も自由に設定されることが可能である。例えば、
図13に示される入口開口69の開口幅WOの大きさは問わない。当該入口開口69は、前記パネル本体のパネル面60a及び前記空間画定部66を風路54の内側から前記配列方向Daに沿って視たときに空間画定部66の上流縁部66eと仮想入口線66fとの間に形成される開口(集塵空間68の入口)である。前記開口幅WOは前記入口開口69の前記順方向Dnに沿った寸法であり、前記仮想入口線66fは前記上流縁部66eを前記順方向Dnと逆向きに(つまり上流側に向かって)上流側部61に投影した直線である。前記開口幅WOが小さいほど、前記集塵空間68に流入する空気の速度が高くなり、より小径の異物52が捕捉されることが可能となる。
【0093】
従って、前記開口幅WOがパネル延び方向の位置によって変わるように前記上流縁部66eの形状が設定されることにより、前記集塵空間68に捕捉されることが可能な異物52の径の範囲を拡大することが可能である。ここで、前記パネル延び方向は、前記順方向Dn及び前記配列方向Daにそれぞれ直交する方向であり、前記第1の実施の形態では上下方向である。例えば、
図14に示すように直線状の前記上流縁部66eを上下方向に対して傾斜させて前記開口幅WOを最小幅WOminから最大幅WOmaxに至るまで線形的に変化させたり、あるいは、前記上流縁部66eを曲線状または折れ線状に形成したりすることにより、前記開口幅WOを上下方向の位置によって変えることが可能である。
【0094】
また、
図13に二点鎖線で示されるように前記空間画定部66が前記順方向Dnに平行な方向に傾くことが可能となるように配置すれば、その傾き角度によって前記開口幅WOの変化度合いを変えることも可能である。この効果は、前記第2の実施の形態に係るパネル部材60Aについても同様である。
【0095】
前記変向角度(第1の実施の形態では第1の角度θ1)は可変であってもよい。例えば、
図15に示されるように、前記複数のパネル部材60のそれぞれ(あるいは一部)において中間部62と上流側部61とがヒンジ102を介して上下方向の軸回りに回動可能に連結され、当該回動により変向角度が変更されてもよい。当該変向角度を変更可能にすることは、前記冷却器35に供給される空気の流量と前記集塵空間68における異物の回収量とのバランスを変えることを可能にする。具体的に、前記変向角度を小さくすれば、各風路54における圧力損失を抑えて前記冷却器35に供給される空気の流量を増やすことができる。一方、前記変向角度を大きくすれば、変向部64における異物52の分離性能を高めて当該異物52の回収量を増やすことができる。
【0096】
さらに、本発明に係る集塵機構は、前記変向角度を積極的に変更するための変向角度調節機構を備えてもよい。
図15はその例である変向角度調節機構110を示す。当該変向角度調節機構110は、前記複数のパネル部材60のそれぞれの前記上流側部61を配列方向Daと平行な方向に動かすことによりそれぞれの変向部64における変向角度を変化させる。具体的に、前記変向角度調節機構110は、連結部材112と、駆動装置114と、を備える。前記連結部材112は、前記上流側部61のそれぞれの上流側端部に関節部118を介して上下方向の軸回りに回動可能であって限られた範囲で前記上流側部61に沿う方向に相対変位可能に連結される。前記駆動装置114は、例えば前記配列方向Daに伸縮可能なロッド116をもつシリンダ装置により構成され、前記ロッド116の端部に前記連結部材112が連結される。前記駆動装置114は、前記連結部材112を前記配列方向Daに沿って動かすことにより、当該連結部材112のそれぞれに連結されている前記上流側部61のそれぞれを前記中間部62に対して回動させて前記変向角度を変化させることができる。
【0097】
本発明に係る集塵機構は、あるいは、前記配列方向に互いに隣接するパネル部材どうしの間隔であるパネル間隔を変化させる間隔調節機構をさらに備えてもよい。前記パネル間隔の調整によっても、前記冷却器に供給される空気の流量と前記集塵空間における異物の回収量とのバランスを変えることが可能である。このようなパネル間隔の調節は、例えば、前記複数のパネル部材が前記配列方向にスライド可能に配置されることと、当該複数のパネル部材のそれぞれを互いに異なる速度で移動させる駆動機構と、の組み合わせで実現されることが可能である。
【0098】
(B)貯留部について
前記貯留部は、適宜省略されることが可能である。例えば、前記第1または第2の実施の形態において前記貯留部70,90が省略されてもよい。すなわち、前記集塵空間を降下する異物がそのまま地面の上に排出されてもよい。また、前記貯留容器71あるいは前記下側閉塞部材92は移動不能に固定されていてもよい。
【0099】
(C)建設機械を構成する他の要素について
本発明に係る集塵機構が搭載される建設機械での他の要素の具体的な配置は限定されない。例えば、前記冷却ファンの位置は前記第1及び第2の実施の形態における位置に限定されない。前記冷却ファンは、前記順方向に沿って前記冷却器の上流側に位置していてもよい。
【符号の説明】
【0100】
10 建設機械
15 機械室
16 機械室カバー(機械室本体)
22 カウンタウェイト(機械室本体)
33 冷却ファン
35 冷却器
40 扉口
41 吸気室扉
44 吸気口
50,50A 集塵機構
52 異物
54 風路
60,60A パネル部材
60a,60b パネル面
61 上流側部
62 中間部
63 下流側部
64 変向部
65 確認窓
66,66A 空間画定部
66a 下流側閉塞壁(閉塞部)
66b 下流側覆い部
66c 上流側覆い部
68,68A 集塵空間
70,90 貯留部
71 貯留容器
74 貯留空間
80 上側閉塞部材
92 下側閉塞部材
94 スライド支持部
96 ロック部
98 付勢部材
110 変向角度調節機構