(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023088094
(43)【公開日】2023-06-26
(54)【発明の名称】成膜装置および成膜方法
(51)【国際特許分類】
C23C 14/54 20060101AFI20230619BHJP
C23C 14/56 20060101ALI20230619BHJP
H01L 21/677 20060101ALI20230619BHJP
【FI】
C23C14/54 A
C23C14/56 G
H01L21/68 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021202745
(22)【出願日】2021-12-14
(71)【出願人】
【識別番号】591065413
【氏名又は名称】キヤノントッキ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003281
【氏名又は名称】弁理士法人大塚国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】松本 行生
(72)【発明者】
【氏名】石井 博
【テーマコード(参考)】
4K029
5F131
【Fターム(参考)】
4K029CA05
4K029DC01
4K029JA01
4K029KA01
5F131AA03
5F131AA33
5F131BA03
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5F131DA02
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5F131KB07
5F131KB12
5F131KB32
5F131KB53
(57)【要約】
【課題】基板の大型化に対応可能な技術を提供すること。
【解決手段】本発明の成膜装置は、成膜装置内を移動し、バッテリを備える移動体を含み、バッテリは、成膜装置内の第1の位置において給電されるとともに、成膜装置内の第2の位置において電力の供給を行うことを特徴とする。
【選択図】
図26
【特許請求の範囲】
【請求項1】
成膜装置であって、
前記成膜装置内を移動し、バッテリを備える移動体を備え、
前記バッテリは、
前記成膜装置内の第1の位置において給電されるとともに、
前記成膜装置内の第2の位置において電力の供給を行う
ことを特徴とする成膜装置。
【請求項2】
前記移動体は前記移動体を移動させる駆動手段をさらに有し、
前記バッテリは、前記移動体が前記第1の位置から前記第2の位置に移動するために前記駆動手段に電力の供給を行うことを特徴とする請求項1に記載の成膜装置。
【請求項3】
前記成膜装置内には複数の前記第2の位置が設けられ、
前記第1の位置は複数の前記第2の位置の間を前記移動体が移動する経路上に配置された充電装置によって充電される位置であることを特徴とする請求項2に記載の成膜装置。
【請求項4】
前記移動体は、成膜材料を放出する蒸着源を備えることを特徴とする請求項1から3の何れか1項に記載の成膜装置。
【請求項5】
前記バッテリは前記第2の位置において前記蒸着源に電源の供給を行うことを特徴とする請求項4に記載の成膜装置。
【請求項6】
基板を保持する基板保持部を備え、
前記第1の位置は、前記基板保持部に保持された基板の直下の領域の外側であり、
前記第2の位置は、前記基板保持部に保持された基板の直下の領域に含まれることを特徴とする請求項5に記載の成膜装置。
【請求項7】
前記移動体は、成膜材料で構成されたスパッタ用ターゲットを備えることを特徴とする請求項1から3の何れか1項に記載の成膜装置。
【請求項8】
前記移動体は基板保持手段を有する基板キャリアであることを特徴とする請求項1または2に記載の成膜装置。
【請求項9】
前記第1の位置において、前記基板キャリアに対する基板の受け渡しが行われ、
前記第2の位置において、前記基板キャリアに保持された基板に対する成膜が行われることを特徴とする請求項8に記載の成膜装置。
【請求項10】
前記第1の位置において、前記基板キャリアに保持された基板に対する成膜が行われ、
前記第2の位置において、前記基板キャリアに対する基板の受け渡しが行われる、
ことを特徴とする請求項8に記載の成膜装置。
【請求項11】
前記基板保持手段は静電気力によって基板を保持する静電チャックを備え、
前記バッテリは前記基板保持手段に電力を供給することを特徴とする請求項8から10の何れか1項に記載の成膜装置。
【請求項12】
バッテリを備える移動体を用いて基板への成膜を行う成膜方法であって、
前記移動体が第1の位置にあるときに、前記バッテリへ給電を行う給電工程と、
前記移動体が第2の位置にあるときに、前記バッテリからの電力の供給を行う供給工程と、
基板への成膜を行う成膜工程と、
を有することを特徴とする成膜方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、成膜装置および成膜方法に関する。
【背景技術】
【0002】
有機ELディスプレイ等の製造設備として、成膜室に基板を搬送して基板に対する成膜を行う装置が知られている。特許文献1には、移動して成膜材料の放出を行うスキャン成膜型の成膜装置が記載されている。特許文献1では、蒸発源に電源ケーブルなどが接続されるため、電源ケーブルが中に通された大気アームが用いられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
基板の大型化に伴い、蒸着源も大きな距離を移動する必要がある。しかしながら、大気アームによって可動域が制限され、成膜装置を大型基板に対応させることが困難であった。
【0005】
本発明は、基板の大型化に対応可能な技術を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明によれば、成膜装置であって、
前記成膜装置内を移動し、バッテリを備える移動体を含み、
前記バッテリは、
前記成膜装置内の第1の位置において給電されるとともに、
前記成膜装置内の第2の位置において電力の供給を行う
ことを特徴とする成膜装置が提供される。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、基板の大型化に対応可能な技術を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の一実施形態に係る成膜システムのレイアウト図。
【
図2】(A)及び(B)は搬送ユニットの平面図と側面図。
【
図3】
図2(A)及び
図2(B)の搬送ユニットのハンドの斜視図。
【
図4】(A)及び(B)は基板の撓みと支柱部材の機能の説明図。
【
図7】(A)及び(B)は基板の受渡動作の説明図。
【
図8】(A)及び(B)は基板の受渡動作の説明図。
【
図9】(A)及び(B)は基板の受渡動作の説明図。
【
図10】(A)及び(B)は基板の受渡動作の説明図。
【
図12】(A)及び(B)はマスク台へのマスクの搬送動作の説明図。
【
図13】(A)及び(B)はマスク台へのマスクの搬送動作の説明図。
【
図14】(A)及び(B)は基板の搬送動作及びアライメント動作の説明図。
【
図15】(A)及び(B)は基板に対する成膜動作の説明図。
【
図16】(A)~(C)は成膜装置全体の動作例を示す説明図。
【
図17】(A)~(C)は成膜装置全体の動作例を示す説明図。
【
図18】(A)~(C)は成膜装置全体の動作例を示す説明図。
【
図19】(A)~(C)は成膜装置全体の動作例を示す説明図。
【
図20】(A)~(D)は成膜装置全体の動作例を示す説明図。
【
図21】(A)~(C)は別の蒸着源及びその移動ユニットの説明図。
【
図22】(A)及び(B)はアライメントユニットの説明図。
【
図23】(A)~(C)は成膜装置の別の構成例の説明図。
【
図25】(A)は有機EL表示装置の全体図、(B)は1画素の断面構造を示す図。
【
図26】(A)は蒸着源の移動を示す側方図、(B)は蒸着源の移動を示す上方図。
【
図27】(A)、(B)は蒸着源の移動ユニットの説明図。
【
図28】(A)は蒸着源の移動を示す説明図、(B)は蒸着源の移動ユニットの説明図。
【
図30】(A)、(B)は保持ユニットの移動を示す説明図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、添付図面を参照して実施形態を詳しく説明する。尚、以下の実施形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものではない。実施形態には複数の特徴が記載されているが、これらの複数の特徴の全てが発明に必須のものとは限らず、また、複数の特徴は任意に組み合わせられてもよい。さらに、添付図面においては、同一若しくは同様の構成に同一の参照番号を付し、重複した説明は省略する。
【0010】
<第一実施形態>
(システムの概要)
図1は成膜システム1のレイアウト図である。なお、各図において矢印Zは上下方向(重力方向)を示し、矢印X及び矢印Yは互いに直交する水平方向を示す。矢印θはZ軸周りの回転方向を示す。
【0011】
成膜システム1は、中間搬送装置101、成膜装置1及び中間搬送装置102がX方向に配列された構成であり、基板Wがこの順番で搬送され、処理される。中間搬送装置101は基板Wの搬送方向で上流側に位置しており、中間搬送装置102は基板Wの搬送方向で下流側に位置している。図示の例では、成膜システム1は、成膜装置1を一つ備えているが、中間搬送装置101の上流側、或いは、中間搬送装置102の下流側にも成膜装置1を設けることができる。制御装置103は、CPU等のプロセッサ、半導体メモリやハードディスクなどの記憶デバイス、入出力インタフェースを備え、成膜システム1を制御する。
【0012】
中間搬送装置101及び102は、搬送ロボット110を備える。搬送ロボット110は、ベース部110a上に二組のアーム110b及びハンド110cが支持されたダブルアーム型のロボットである。二組のアーム110b及びハンド110cは、ベース部110a上でθ方向に旋回し、また、伸縮自在である。中間搬送装置101及び102に隣接して、マスクMが収容されるストッカ104が設けられいる。搬送ロボット110は、基板Wの搬送の他、マスクMの搬送も行う。ハンド110cはフォーク形状を有しており、基板MやマスクMはハンド110c上に載置されて搬送される。
【0013】
成膜装置1は、中間搬送装置101から搬入される基板Wに対して成膜処理を行い、中間搬送装置102へ搬出する装置である。成膜装置1は、基板Wの受渡を行う受渡室2と、受渡室2に隣接して配置された複数の成膜室3とを備える。本実施形態では成膜室3は、二つ設けられており、受渡室2のY方向の両側にそれぞれ一つずつ配置されている。受渡室2及び成膜室3はそれぞれ壁部20、30で囲まれて気密に維持可能である。
【0014】
成膜室では基板Wに蒸着物質が成膜される。基板WにはマスクMを用いて所定のパターンの蒸着物質の薄膜を形成可能である。基板Wの材質は、ガラス、樹脂、金属等の材料を適宜選択可能であり、代表的にはガラス上にポリイミド等の樹脂層が形成されたものが用いられる。本実施形態の場合、基板Wは矩形である。蒸着物質としては、有機材料、無機材料(金属、金属酸化物など)などの物質である。成膜装置1は、例えば表示装置(フラットパネルディスプレイなど)や薄膜太陽電池、有機光電変換素子(有機薄膜撮像素子)等の電子デバイスや、光学部材等を製造する製造装置に適用可能であり、特に、有機ELパネルを製造する製造装置に適用可能である。
【0015】
(受渡室)
受渡室2は、中間搬送装置101及び102と、成膜装置1との間での基板WやマスクMの受け渡しの他、成膜室3に対する基板WやマスクMの振り分けを行う。したがって、受渡室2は仕分室と呼ぶこともできる。
【0016】
(多方向の搬送ユニット)
受渡室2には基板W及びマスクMを搬送する搬送ユニット4が設けられている。搬送ユニット4は、中間搬送装置101から基板W又はマスクMを受け取り、保持ユニット6A~6Dに受け渡す。また、保持ユニット6A~6Dから受け取った基板W又はマスクMを中間搬送装置102へ搬出する。
図2(A)及び
図2(B)は搬送ユニット4の平面図及び側面図である。
【0017】
本実施形態の搬送ユニット4は、X-Y平面上の多方向に基板W等を移動可能な水平多関節型のロボットであり、円筒形状のベース部40と、ベース部40上に支持されたアーム部41と、アーム部41に支持されたハンド44とを備える。ベース部40は駆動軸40aを有し、駆動軸40aのθ方向の回転によるZ1軸周りのアーム部41の旋回と、駆動軸40aの上下の移動によるアーム部41の昇降とを行う。アーム部41は、アーム部材42及び43を有する。アーム部42の一端は駆動軸40aに連結され、他端はアーム部材43の一端に連結されている。アーム部材43はアーム部材42に対してZ2軸周りに旋回可能に連結されている。ハンド44はアーム部材43の他端にZ3軸周りに旋回自在に連結されている。
【0018】
図2(A)及び
図2(B)に加えて
図3を参照する。
図3はハンド44の斜視図である。ハンド44は、板状のハンド本体45と、ハンド本体45に立設され、基板Wを支持する複数の支柱部材46~48と、を備える。支柱部材46~48は、ハンド本体45の中央部に位置する支柱部材46と、周辺部に位置する支柱部材47及び48と、に大別される。基板Wは複数の支柱部材46~48上に載置される。基板Wがハンド44に支持された状態において、支柱部材46は基板Wの中央部に位置し、支柱部材47及び48は基板Wの周縁部に位置する。
【0019】
支柱部材46は、ピン46aと、その先端部に設けられた弾性部材46bとを備える。支柱部材47は、ピン47aと、その先端部に設けられた載置部47bと、載置部47bの上面に設けられ、支柱部材47の先端部に位置する弾性部材47cとを備える。支柱部材48は、複数のピン48aと、複数のピン48aの先端部に設けられた載置部48bと、載置部48bの上面に設けられ、支柱部材48の先端部に位置する複数の弾性部材48cとを備える。
【0020】
こうした支柱部材46~48で基板Wを支持することで、少ない面積で基板Wを支持することができ、基板Wの表面に擦れ等が生じることを防止できる。また、弾性部材46b、47c及び48cは基板Wと接する部分であり、例えば樹脂である。弾性部材46b、47c及び48cが基板Wと接触することで、基板Wの表面に擦れ等が生じることをより確実に防止する。
【0021】
図2(B)に示すように、ハンド本体45からの支柱部材46の高さH1と、支柱部材47及び48の高さH2との関係は、H1>H2の関係にある。これにより、基板Wの中央部が垂れ下がることを防止することができる。
図4(A)及び
図4(B)はその説明図であり、基板Wを保持ユニット6Aがハンド44から受け取る状態を例示している。
【0022】
後述するように本実施形態の場合、保持ユニット6A~6Dは基板Wを静電気力により保持する。保持ユニット6A~6Dが基板Wを受け取る際、その平面度が低いと吸着力が低下する。また、成膜時に膜の形成精度も低下する。
図4(A)は比較例として、ハンド44が支柱部材46を備えず、基板Wが支柱部材47(及び支柱部材48)で支持された場合を想定している。大型の基板Wでは、自重によりその中央部が撓んで垂れ下がる。この状態で保持ユニット6Aが基板Wを吸着すると、基板Wの中央部と保持ユニット6Aの下面(保持面)との間に隙間ができる可能性があり、吸着力の低下を招く。
【0023】
一方、
図4(B)に示す本実施形態では、支柱部材46の高さH1と、支柱部材47及び48の高さH2との関係がH1>H2の関係にあることで、基板Wの中央部が支柱部材46によって支持され、基板Wは中央部が僅かに盛り上がった状態となる。大型の基板Wであっても、自重によりその中央部が撓んで垂れ下がることを防止し、むしろ、基板Wの中央部が周縁部よりも先に保持ユニット6Aに接する。その結果、基板Wの中央部から周縁部へ吸着が広がってゆき、その全体が隙間なく保持ユニット6Aに保持されることになる。
【0024】
(スライド式の搬送ユニット)
図1に示すように、成膜装置1は、受渡室2から二つの成膜室3に渡って配置された二組の搬送ユニット5A及び5Bを備える。搬送ユニット5Aは保持ユニット6A及び6Cと、これらを独立してY方向に平行移動する移動ユニット7Aを備える。搬送ユニット5Bは、搬送ユニット5Aと同様の構造であり、保持ユニット6B及び6Dと、これらを独立してY方向に平行移動する移動ユニット7Bとを備える。
【0025】
図5は搬送ユニット5A及び5Bのうち、受渡室2に配置された部分を示しており、
図6は搬送ユニット5A(移動ユニット7A及び保持ユニット6A)の断面図を示している。搬送ユニット5A及び5Bは、搬送ユニット4よりも高い位置で保持ユニット6A~6Dを水平姿勢でY方向に独立して往復させるユニットであって、X方向に並設されている。なお、
図6は代表として搬送ユニット5A(移動ユニット7A及び保持ユニット6A)の構造を示すが、保持ユニット6A~6Dは同じ構造を有し、移動ユニット7A及び7Bも同じ構造を有している。
【0026】
本実施形態の移動ユニット7A及び7Bは、保持ユニット6A~6Dを磁力により移動する機構であり、特に磁力により浮上移動する機構である。移動ユニット7A及び7Bは、それぞれ、保持ユニット6A~6DのY方向の移動軌道を規定する一対のガイド部材70を備える。各ガイド部材70はC字型の断面を有し、Y方向に延設されたレール部材である。一対のガイド部材70は互いに、X方向に離間している。
【0027】
各ガイド部材70は、Z方向に離間した一対の磁気要素71を多数備える。多数の一対の磁気要素71は、Y方向に等ピッチで配列されている。一対の磁気要素71のうちの少なくとも一方は電磁石であり、他方は電磁石又は永久磁石である。
【0028】
保持ユニット6A~6Dは、基板WやマスクMを搬送するためのキャリアである。保持ユニット6A~6Dは、それぞれ、平面視で矩形状の本体部材60を備える。本体部材60のX方向の各端部は、対応するガイド部材70に差し込まれている。本体部材60のX方向の各端部の上面、下面にはそれぞれ不図示のヨークが設けられた永久磁石61が固定されている。上下の永久磁石61は本体部材60にY方向に複数設けられている。永久磁石61は、ガイド部材70の磁気要素71と対向している。永久磁石61と磁気要素71との反発力によって保持ユニット6A~6Dに浮上力を生じさせることができる。Y方向に多数設けられた磁気要素(電磁石)71のうち、磁力を発生させる磁気要素71を順次切り替えることにより、永久磁石61と磁気要素71との吸引力によって保持ユニット6A~6DにY方向の移動力を生じさせることができる。
【0029】
なお、本実施形態では、移動ユニット7A及び7Bを、磁気浮上搬送機構としたがローラ搬送機構、ベルト搬送機構、ラック-ピニオン機構等、保持ユニット6A~6Dを移動可能な他の搬送機構であってもよい。
【0030】
ガイド部材70にはY方向に延設されたスケール72が配置されており、本体部材60にはスケール72を読み取るセンサ64が設けられている。センサ64の検知結果により、各保持ユニット6A~6DのY方向の位置を特定することができる。
【0031】
保持ユニット6A~6Dは、それぞれ、基板Wを保持する保持部62を備える。保持部62は本実施形態の場合、静電気力により基板Wを吸着する静電チャックであり、保持部62は保持ユニット6A~6Dの下面に配置された複数の電極62aを含む。保持ユニット6A~6Dは、また、それぞれ、マスクMを保持する保持部63を備える。保持部63は、例えば、磁力によりマスクMを吸着するマグネットチャックであり、保持部62のX方向で外側に位置している。保持部63は、マスクMを機械的に挟持するクランプ機構であってもよい。
【0032】
(基板の受取動作)
搬送ユニット4から搬送される基板WやマスクMの保持ユニット6A~6Dによる受け取りは、受渡室2内の所定の位置で行われる。
図5は保持ユニット6A~6Dが、各受取位置PA~PDに位置している状態を示している。受取位置PA~PDはX-Y平面状でマトリクス状(2×2)に配置されており、成膜室3の外部である受渡室2の内部に設定されている。四か所の異なる受取位置PA~PDがあることで、下流側でのシステム障害が生じた場合に、基板Wを停留させておくバッファとしてもこれら受取位置PA~PDを用いることもできる。
【0033】
図7(A)~
図8(B)は受取位置PBにおける搬送ユニット4からの基板Wの保持ユニット6Bによる受取動作の例を示している。
図7(A)は中間搬送装置101から基板Wを搬送ユニット4が受け取った状態を示している。基板Wはハンド44上に載置されている。換言すると基板Wはその下側からハンド44に支持されている。保持ユニット6Bは移動ユニット7Bによって受取位置PBに移動される。
図7(B)は、搬送ユニット4のアーム部41の動作によりハンド44が保持ユニット6Bの下方に移動した状態を示している。
図7(B)の状態では、
図7(A)の状態に対してハンド44はθ方向に90度旋回している。このため、基板Wはその長手方向がX方向に向いた姿勢(
図7(A))からY方向に向いた姿勢(
図7(B))に変化している。
【0034】
図7(B)の段階で、保持ユニット6Bと基板Wとの位置合わせ(アライメント)を行う。受渡室2にはアライメント用のカメラ21が設けられている。カメラ21の撮像画像から保持ユニット6Bと基板Wとの相対位置を特定し、基板WのX方向、Y方向及びθ方向の位置を搬送ユニット4によって調整する。
【0035】
図8(A)は、搬送ユニット4のアーム部41を上昇させ、基板Wを保持ユニット6Bの保持部62に当接した状態を示している。保持部62の静電力によって基板Wは保持部62に保持される。このように本実施形態では、搬送ユニット4から保持ユニット6Bに対して基板Wを下から上へ渡すようにしている。
図8(B)は、搬送ユニット4のアーム部41を降下させ、保持ユニット6Bによる基板Wの受け取りが完了した状態を示している。
【0036】
搬送ユニット4と他の保持ユニット6A、6C及び6Dとの間での基板Wの受け渡しも同様である。一例として、
図9(A)~
図10(B)は受取位置PAにおける搬送ユニット4からの基板Wの保持ユニット6Aによる受取動作の例を示している。
図9(A)は中間搬送装置101から基板Wを搬送ユニット4が受け取った状態を示している。基板Wはその下側からハンド44に支持されている。保持ユニット6Aは移動ユニット7Aによって受取位置PAに移動される。
図9(B)は、搬送ユニット4のアーム部41の動作によりハンド44が保持ユニット6Bの下方に移動した状態を示している。
図9(B)の状態では、
図9(A)の状態に対してハンド44はθ方向に90度旋回している。このため、基板Wはその長手方向がX方向に向いた姿勢(
図9(A))からY方向に向いた姿勢(
図9(B))に変化している。
【0037】
図9(B)の段階で、保持ユニット6Aと基板Wとの位置合わせを行う。受渡室2に設けられたカメラ21の撮像画像から保持ユニット6Aと基板Wとの相対位置を特定し、基板WのX方向、Y方向及びθ方向の位置を搬送ユニット4によって調整する。
【0038】
図10(A)は、搬送ユニット4のアーム部41を上昇させ、基板Wを保持ユニット6Aの保持部62に当接した状態を示している。保持部62の静電力によって基板Wは保持部62に保持される。
図10(B)は、搬送ユニット4のアーム部41を降下させ、保持ユニット6Aによる基板Wの受け取りが完了した状態を示している。
【0039】
以上は基板Wの受取動作について説明したが、マスクMの受取動作についても同様である。
【0040】
(成膜室)
成膜室3では、マスクMを用いて基板Wに対する成膜を行う。
図1に示すように、二つの成膜室3には、それぞれ、二つのマスク台31が配置されている。合計で四つのマスク台31により、蒸着処理を行う蒸着位置JA~JDが規定される。二つの成膜室3の構造は同じである。各成膜室3には、蒸着源8と、蒸着源8を移動する移動ユニット9とが設けられている。蒸着源8と移動ユニット9の構造及び動作について
図11(A)~
図11(F)を参照して説明する。
【0041】
蒸着源8は、蒸着物質の原材料を収容する坩堝や、坩堝を加熱するヒータ等を備え、原材料を加熱してその蒸気である蒸着物質を開口部8aから上方へ放出する。移動ユニット9は、アクチュエータ90と、一対の可動レール94と、一対の固定レール95とを備える。アクチュエータ90は、駆動源93と、アーム部材91と、アーム部材92とを備える。アーム部材91の一端は駆動源93に連結されており、駆動源93によって旋回する。アーム部材91の他端はアーム部材92の一端と回動自在に連結されており、アーム部材92の他端は蒸着源8の底部に回動自在に連結されている。
【0042】
一対の可動レール94は、蒸着源8のY方向の移動を案内する。各可動レール94はY方向に延設されており、一対の可動レール94は互いにX方向に離間している。一対の固定レール95は、一対の可動レール94のX方向の移動を案内する。各固定レール95は、移動不能に固定されており、Y方向に延設されている。一対の固定レール95は互いにY方向に離間している。
【0043】
アクチュエータ90の駆動により、蒸着源8は、蒸着位置JAの下(マスク台31の下)をY方向にスライドし、また、蒸着位置JAの側から蒸着位置JBの側へスライドし、更に、蒸着位置JBの下(マスク台31の下)をY方向にスライドする。具体的に述べると、
図11(A)の位置からアクチュエータ90の駆動によりアーム部材91及び92を旋回させると、
図11(B)に示すように蒸着源8が一対の可動レール94の案内により蒸着位置JAの下をY方向に通過する。この状態からアクチュエータ90の駆動によりアーム部材91及び92を逆方向旋回させると、
図11(C)に示すように蒸着源8が蒸着位置JAの下をY方向に通過して
図11(A)の位置に戻る。
【0044】
アクチュエータ90の駆動によりアーム部材91及び92を更に旋回させると、蒸着源8及び一対の可動レール94は、一対の固定レール95の案内にしたがって蒸着位置JBの側へX方向に移動する。
図11(D)の位置からアクチュエータ90の駆動によりアーム部材91及び92を更に旋回させると、
図11(E)に示すように蒸着源8が一対の可動レール94の案内により蒸着位置JBの下をY方向に通過する。この状態からアクチュエータ90の駆動によりアーム部材91及び92を逆方向旋回させると、
図11(F)に示すように蒸着源8が蒸着位置JBの下をY方向に通過して
図11(D)の位置に戻る。
【0045】
このように本実施形態では、一つの蒸着源8を移動させることで、蒸着位置JAと蒸着位置JBの二つの蒸着位置で蒸着源8を共用できる。
【0046】
次に、マスクMのマスク台31への搭載、マスクMと基板Wとの位置合わせ(アライメント)動作、及び、その後の成膜動作についてについて
図12(A)~
図15(B)を参照して説明する。
【0047】
まず、マスクMをマスク台31に搭載する動作について説明する。
図12(A)~
図13(B)は蒸着位置JAにおいてマスクMをマスク台31に搭載する動作を示している。
図12(A)の状態から、マスクMを保持した保持ユニット6Aが移動ユニット7Aによってマスク台31上に移動してくる。
図13(A)に示すようにマスクMがマスク台31上の所定の位置に到達すると、
図13(B)に示すように移動ユニット7Aの磁気素子71の磁力を調節して保持ユニット6Aの浮上量を下げ、保持ユニット6AによるマスクMの保持を解除する。これによりマスク台31上にマスクMが搭載される。
【0048】
次に、アライメント動作及び成膜動作について説明する。
図14(A)は、蒸着位置JAに、基板Wを保持した保持ユニット6Aが移動ユニット7Aによって移動している状態を示している。基板WがマスクMの上方に到達すると、基板WとマスクMとのX-Y平面上のアライメントを行う。アライメントでは、
図14(B)に示すように、カメラ32により基板WとマスクMにそれぞれ付されているアライメントマークを撮像し、その撮像画像から基板WとマスクMとの位置ずれ量を演算する。そして、演算した位置ずれ量を減少させるように基板Wの位置を調整する。基板Wの位置の調整は本実施形態の場合、移動ユニット7Aの磁気素子71の磁力を調節して行う。X方向、Y方向に離間した各磁気素子71の磁力を調整することで、保持ユニット6Aの位置をX方向、Y方向、θ方向に変位させることができ、これにより保持ユニット6Aに保持されている基板WのX方向、Y方向、θ方向の位置を変位させることができる。例えば、一対のガイド部材70のうちの、一方のガイド部材70に設けられている磁気素子71の磁力を強くすると、保持ユニット6A及び基板Wを、磁力の吸引によって一方のガイド部材70の側に(又は磁力の反発によって他方のガイド部材70の側に)変位させることができる。
【0049】
カメラ32による撮像と、磁気素子71の磁力の調整による基板WとマスクMとのアライメントは、両者の位置ずれ量が許容範囲内になるまで繰り返し行ってもよい。アライメントが完了すると、
図15(A)に示すように移動ユニット7Aの磁気素子71の磁力を調節して保持ユニット6Aの浮上量を下げ、マスクM上に基板Wを重ねる。保持ユニット6Aによる基板Wの保持は解除しない。次に成膜動作を行う。
図15(B)に示すように蒸着源8を移動しつつ、蒸着源8から蒸着物質を基板Wへ放出する。基板WにはマスクMを通過した蒸着物質の膜が形成される。成膜中、基板Wは保持ユニット6Aに保持された状態が維持される。
【0050】
(成膜装置の動作例)
図16(A)から
図20(D)を参照して成膜装置1において複数の基板Wに対して連続的に成膜を行う動作例について説明する。まず、マスクMを各蒸着位置JA~JDのマスク台31に搬送する。
図16(A)は一枚目のマスクMが中間搬送装置101から搬送されてきた状態を示す。搬送ユニット4はハンド44上でマスクMを受け取り、
図16(B)に示すように、受取位置PAにて保持ユニット6AにマスクMを受け渡す。保持ユニット6AはマスクMを、マスクMの上側から保持する。
【0051】
図16(C)に示すように二枚目のマスクMが中間搬送装置101から搬送されてくる。並行して、保持ユニット6Aが移動ユニット7Aによって蒸着位置JAに平行移動される。搬送ユニット4はハンド44上で二枚目のマスクMを受け取り、
図17(A)に示すように、受取位置PCにて保持ユニット6CにマスクMを受け渡す。保持ユニット6CはマスクMを、マスクMの上側から保持する。並行して、一枚目のマスクMが蒸着位置JAにおいてマスク台31上に載置され、保持ユニット6Aは受取位置PAに戻る。
【0052】
図17(B)に示すように三枚目のマスクMが中間搬送装置101から搬送されてくる。並行して、保持ユニット6Cが移動ユニット7Aによって蒸着位置JCに平行移動される。搬送ユニット4はハンド44上で三枚目のマスクMを受け取り、受取位置PBにて保持ユニット6BにマスクMを受け渡す。以上の手順を繰り返すことで、
図17(C)に示すように蒸着位置JA~JDにそれぞれマスクMが配置される。
【0053】
次に、基板Wに成膜を行う一連の動作について説明する。
図18(A)は一枚目の基板Wが中間搬送装置101から搬送されてきた状態を示す。搬送ユニット4はハンド44上で基板Wを受け取り、
図18(B)に示すように、受取位置PAにて保持ユニット6Aに基板Wを受け渡す。保持ユニット6Aは基板Wを、基板Wの上側から保持する。
【0054】
図18(C)に示すように二枚目の基板Wが中間搬送装置101から搬送されてくる。並行して、基板Wを受け取った保持ユニット6Aが移動ユニット7Aによって蒸着位置JAに平行移動される。蒸着位置JAでは基板WとマスクMとのアライメントが行われる。搬送ユニット4はハンド44上で二枚目の基板Wを受け取り、
図19(A)に示すように、受取位置PCにて保持ユニット6Cに基板Wを受け渡す。保持ユニット6Cは基板Wを、基板Wの上側から保持する。並行して、一枚目の基板Wに対して、蒸着位置JAにおいて蒸着源8による成膜動作が行われる。
【0055】
図19(B)に示すように三枚目の基板Wが中間搬送装置101から搬送されてくる。並行して、二枚目の基板Wを受け取った保持ユニット6Cが移動ユニット7Aによって蒸着位置JCに平行移動される。蒸着位置JCでは基板WとマスクMとのアライメントが行われる。搬送ユニット4はハンド44上で三枚目の基板Wを受け取り、
図19(C)に示すように、受取位置PBにて保持ユニット6Bに基板Wを受け渡す。保持ユニット6Bは基板Wを、基板Wの上側から保持する。並行して、蒸着位置JAにて成膜を終えた蒸着源8が蒸着位置JBの側へ移動される。また、二枚目の基板Wに対して、蒸着位置JCにおいて蒸着源8による成膜動作が行われる。
【0056】
図20(A)に示すように四枚目の基板Wが中間搬送装置101から搬送されてくる。並行して、三枚目の基板Wを受け取った保持ユニット6Bが移動ユニット7Bによって蒸着位置JBに平行移動される。蒸着位置JBでは基板WとマスクMとのアライメントが行われる。また、成膜を終えた一枚目の基板Wを保持する保持ユニット6Aが移動ユニット7Aによって受取位置PAへ移動される。
【0057】
搬送ユニット4はハンド44上で四枚目の基板Wを受け取り、
図20(B)に示すように、受取位置PDにて保持ユニット6Dに基板Wを受け渡す。保持ユニット6Dは基板Wを、基板Wの上側から保持する。並行して、蒸着位置JCにて成膜を終えた蒸着源8が蒸着位置JDの側へ移動され、成膜を終えた二枚目の基板Wを保持する保持ユニット6Cが移動ユニット7Aによって受取位置PCへ移動される。また、三枚目の基板Wに対して、蒸着位置JBにおいて蒸着源8による成膜動作が行われる。
【0058】
成膜を終えた一枚目の基板Wを保持する保持ユニット6Aが移動ユニット7Aに戻ると、
図20(C)に示すように、搬送ユニット4が受取位置PAにおいて、一枚目の基板Wを保持ユニット6Aから受け取る。並行して、四枚目の基板Wを受け取った保持ユニット6Dが移動ユニット7Bによって蒸着位置JDに平行移動される。搬送ユニット4は
図20(D)に示すように成膜を終えた一枚目の基板Wを、中間搬送装置102へ搬出する。以上の手順を繰り返すことで、多数の基板Wに対して順次成膜が行われることになる。
【0059】
以上の成膜装置1によれば、中間搬送装置101から各蒸着位置JA~JDへの基板WやマスクMの搬送は、搬送ユニット4と、搬送ユニット5A又は5Bとの併用により行われる。単一の搬送機構で搬送するよりも、各搬送ユニットの搬送距離を短くしつつ、より長い距離で基板Wを搬送することができる。大型の基板Wを搬送する際に、長い搬送距離を実現しつつ、各搬送ユニットが高剛性化のために大型化することを防止できる。したがって、基板Wの大型化に対応可能な成膜装置1を提供することができる。
【0060】
また、搬送ユニット4と搬送ユニット5A及び5Bとで異なる機構を採用した。すなわち、搬送ユニット4を多関節ロボットで構成したことで、基板Wの搬送先の位置に自由度や、基板Wの姿勢(向き)の自由度を向上することができる。また、搬送ユニット5A及び5Bを基板Wの平行移動機構で構成して、長い搬送距離に対応可能とした。
【0061】
搬送ユニット4から搬送ユニット5A及び5Bへの基板Wの受け渡しは、静電チャックである保持部62で行うようにしたので、搬送ユニット4から保持部62へ基板Wを貼り付けるようにして、基板Wの受け渡しを行うことができる。基板Wを置き換える方式に対して、基板Wの載置が不要となり、受渡時間を短縮できる。これにより生産性を向上できる。
【0062】
受渡室2から成膜室3への基板W及びマスクMの搬送に際し、これらの姿勢を搬送ユニット4によって90度転換し、基板W及びマスクMの長手方向がY方向を指向するようにした。これは成膜装置1のX方向の幅の小型化に寄与する。無論、基板W及びマスクMの姿勢を転換しない構成も採用可能である。この場合、成膜装置1のY方向の幅の小型化に寄与する。
【0063】
<第二実施形態>
第一実施形態では、蒸着源8をX方向とY方向との双方に移動可能な構成としたが、X方向にのみ移動可能な構成であってもよい。
図21(A)~
図21(C)はその一例を示し、蒸着位置JA、JBにおける構成を例示している。蒸着位置JC、JDにおいても同様の構成を採用可能である。
【0064】
蒸着源8に代わる蒸着源8'はY方向に細長い形態を有しており、蒸着物質を放出する開口部8a'は蒸着位置JA、JBのY方向の長さに対応した長さを有している。移動ユニット9に代わる移動ユニット9'は、一対の固定レール96を有している。各固定レール96はX方向に延設され、一対の固定レール96は互いにY方向に離間している。移動ユニット9'は、アクチュエータ90に相当する不図示のアクチュエータを有する。
【0065】
蒸着源8'は、
図21(A)に示すように、蒸着位置JAと蒸着位置JBとの間の位置を待機位置とし、蒸着位置JAにおいて基板Wに対して成膜を行う場合は
図21(B)に示すように蒸着位置JAをX方向に横断する。また、蒸着位置JBにおいて基板Wに対して成膜を行う場合は
図21(C)に示すように蒸着位置JBをX方向に横断する。本実施形態によれば、移動ユニット9'の機構を比較的簡単な機構とすることができる。
【0066】
<第三実施形態>
第一実施形態では、蒸着位置JA~JDにおける基板WとマスクMとのアライメントに際し、磁気素子71の磁力の調整を利用したが、専用のアライメント装置を設けてもよい。
図22(A)及び
図22(B)はその一例を示す。アライメント装置10は、各蒸着位置JA~JDに配置され、図示の例では蒸着位置JAに配置されたアライメント装置10を例示している。
【0067】
アライメント装置10は、保持ユニット6Aから基板Wを受け取り、マスクMと基板Wとのアライメントを行って、基板WをマスクMに重ね合わせる装置である。アライメント装置10は、基板Wを保持する爪を有するアーム部材11を有する。保持ユニット6Aに保持された基板Wは、保持を解除されてアーム部材11に載置される。アーム部材11は、駆動ユニット12により、X方向、Y方向及びθ方向に変位可能であり、これによりアーム部材11に載置された基板WのX方向、Y方向及びθ方向の位置を調整する。駆動ユニット12は昇降ユニット13により昇降可能である。
【0068】
アライメント装置10は、また、プレートユニット14と、プレートユニット14を昇降する昇降ユニット15を備える。プレートユニット14は、基板WとマスクMとを密着させるためのプレートであり、例えば、鉄製のマスクMと引き合う磁石や、基板Wを冷却する冷却器を有する。
【0069】
アライメントに際しては、
図22(A)に示すように、カメラ32により基板WとマスクMにそれぞれ付されているアライメントマークを撮像し、その撮像画像から基板WとマスクMとの位置ずれ量を演算する。そして、演算した位置ずれ量を減少させるように基板Wの位置を調整する。基板Wの位置の調整は、基板WとマスクMとが上下に離間した状態で、基板Wが載置されたアーム部材11を駆動ユニット12が変位させることで行う。
【0070】
カメラ32による撮像と、磁気素子71の磁力の調整による基板WとマスクMとのアライメントは、両者の位置ずれ量が許容範囲内になるまで繰り返し行ってもよい。アライメントが完了すると、
図22(B)に示すように、保持ユニット6Aが蒸着位置JAから退避した後に、昇降ユニット13によって駆動ユニット12及びアーム部材12と共に基板WをマスクM上に降下して両者を重ね合わせ、更に、昇降ユニット15によってプレートユニット14を基板W上に降下して基板WとマスクMとを密着させる。この状態で基板Wに対する成膜を行う。
【0071】
成膜が終了すると、昇降ユニット15によってプレートユニット14を上昇する。保持ユニット6Aが蒸着位置JAに再び移動された後、昇降ユニット13によって駆動ユニット12及びアーム部材12と共に基板Wを上昇して、基板Wを保持ユニット6Aに受け渡す。
【0072】
<第四実施形態>
搬送ユニット5A及び5Bを介さずに、搬送ユニット4のみで基板WやマスクMを成膜室3へ搬送することも可能である。
図23(A)~
図23(D)はその一例を示す。図示の例では、各蒸着位置JA、JCに、対応する保持ユニット6A、6Cが配置されている。保持ユニット6A、6Cは固定的に配置されており、その位置は不動である。各蒸着位置JA、JCは、下から順に、蒸着源8、8、マスク台31、31、保持ユニット6A、6Cが配置された形態である。蒸着源8は固定して配置されるものであってもよいが、本実施形態では、他の実施形態と同様に移動する形態である。マスクMは、マスク台31に予め載置される。
【0073】
図23(A)に示すように、基板Wが中間搬送装置101から搬送されてくると、搬送ユニット4はハンド44上で基板Wを受け取り、
図24(B)及び
図24(C)に示すように、蒸着位置JAにて保持ユニット6Aに基板Wを受け渡す。蒸着位置JAは受取位置PAを兼ねている。保持ユニット6Aは基板Wを、基板Wの上側から保持する。基板Wの受け渡しは、静電チャックである保持部62で行うようにしたので、搬送ユニット4から保持部62へ基板Wを貼り付けるようにして、基板Wの受け渡しを行うことができる。基板Wを置き換える方式に対して、基板Wの載置が不要となり、受渡時間を短縮できる。これにより生産性を向上できる。マスクMと基板Wとのアライメントは搬送ユニット4によって基板Wの位置や姿勢を調整することで行うことができる。
【0074】
その後、
図23(D)に示すように蒸着源8をY方向に移動して、保持ユニット6Aに保持された基板Wに対する成膜を行う。蒸着位置JCにおける成膜動作も同様であり、蒸着位置JAと蒸着位置JCとで並行的に基板Wの搬送と成膜を行える。成膜を終えると、搬送ユニット4は保持ユニット6A又は6Cから基板Wを受け取り、中間搬送装置102へ搬出する。
【0075】
<第五実施形態>
第一実施形態では基板Wを保持する保持部62を静電チャックで構成したが、他の吸着方式であってもよい。
図24はその一例を示し保持部62の下面を示している。保持部62の下面には複数の吸着パッド65が設けられている。吸着パッド65は、例えば、粘着力により基板Wを保持する粘着部材である。或いは、吸着パッド65はバキュームパッドである。
【0076】
<第六実施形態>
次に、電子デバイスの製造方法の一例を説明する。以下、電子デバイスの例として有機EL表示装置の構成及び製造方法を例示する。
【0077】
まず、製造する有機EL表示装置について説明する。
図25(A)は有機EL表示装置50の全体図、
図25(B)は1画素の断面構造を示す図である。
【0078】
図25(A)に示すように、有機EL表示装置50の表示領域51には、発光素子を複数備える画素52がマトリクス状に複数配置されている。詳細は後で説明するが、発光素子のそれぞれは、一対の電極に挟まれた有機層を備えた構造を有している。
【0079】
なお、ここでいう画素とは、表示領域51において所望の色の表示を可能とする最小単位を指している。カラー有機EL表示装置の場合、互いに異なる発光を示す第1発光素子52R、第2発光素子52G、第3発光素子52Bの複数の副画素の組み合わせにより画素52が構成されている。画素52は、赤色(R)発光素子と緑色(G)発光素子と青色(B)発光素子の3種類の副画素の組み合わせで構成されることが多いが、これに限定はされない。画素52は少なくとも1種類の副画素を含めばよく、2種類以上の副画素を含むことが好ましく、3種類以上の副画素を含むことがより好ましい。画素52を構成する副画素としては、例えば、赤色(R)発光素子と緑色(G)発光素子と青色(B)発光素子と黄色(Y)発光素子の4種類の副画素の組み合わせでもよい。
【0080】
図25(B)は、
図25(A)のA-B線における部分断面模式図である。画素52は、基板53上に、第1の電極(陽極)54と、正孔輸送層55と、赤色層56R・緑色層56G・青色層56Bのいずれかと、電子輸送層57と、第2の電極(陰極)58と、を備える有機EL素子で構成される複数の副画素を有している。これらのうち、正孔輸送層55、赤色層56R、緑色層56G、青色層56B、電子輸送層57が有機層に当たる。赤色層56R、緑色層56G、青色層56Bは、それぞれ赤色、緑色、青色を発する発光素子(有機EL素子と記述する場合もある)に対応するパターンに形成されている。
【0081】
また、第1の電極54は、発光素子ごとに分離して形成されている。正孔輸送層55と電子輸送層57と第2の電極58は、複数の発光素子52R、52G、52Bにわたって共通で形成されていてもよいし、発光素子ごとに形成されていてもよい。すなわち、
図25(B)に示すように正孔輸送層55が複数の副画素領域にわたって共通の層として形成された上に赤色層56R、緑色層56G、青色層56Bが副画素領域ごとに分離して形成され、さらにその上に電子輸送層57と第2の電極58が複数の副画素領域にわたって共通の層として形成されていてもよい。
【0082】
なお、近接した第1の電極54の間でのショートを防ぐために、第1の電極54間に絶縁層59が設けられている。さらに、有機EL層は水分や酸素によって劣化するため、水分や酸素から有機EL素子を保護するための保護層60が設けられている。
【0083】
図25(B)では正孔輸送層55や電子輸送層57が一つの層で示されているが、有機EL表示素子の構造によって、正孔ブロック層や電子ブロック層を有する複数の層で形成されてもよい。また、第1の電極54と正孔輸送層55との間には第1の電極54から正孔輸送層55への正孔の注入が円滑に行われるようにすることのできるエネルギーバンド構造を有する正孔注入層を形成してもよい。同様に、第2の電極58と電子輸送層57の間にも電子注入層を形成してもよい。
【0084】
赤色層56R、緑色層56G、青色層56Bのそれぞれは、単一の発光層で形成されていてもよいし、複数の層を積層することで形成されていてもよい。例えば、赤色層56Rを2層で構成し、上側の層を赤色の発光層で形成し、下側の層を正孔輸送層又は電子ブロック層で形成してもよい。あるいは、下側の層を赤色の発光層で形成し、上側の層を電子輸送層又は正孔ブロック層で形成してもよい。このように発光層の下側又は上側に層を設けることで、発光層における発光位置を調整し、光路長を調整することによって、発光素子の色純度を向上させる効果がある。
【0085】
なお、ここでは赤色層56Rの例を示したが、緑色層56Gや青色層56Bでも同様の構造を採用してもよい。また、積層数は2層以上としてもよい。さらに、発光層と電子ブロック層のように異なる材料の層が積層されてもよいし、例えば発光層を2層以上積層するなど、同じ材料の層が積層されてもよい。
【0086】
次に、有機EL表示装置の製造方法の例について具体的に説明する。ここでは、赤色層56Rが下側層56R1と上側層56R2の2層からなり、緑色層56Gと青色層56Bは単一の発光層からなる場合を想定する。
【0087】
まず、有機EL表示装置を駆動するための回路(不図示)及び第1の電極54が形成された基板53を準備する。なお、基板53の材質は特に限定はされず、ガラス、プラスチック、金属などで構成することができる。本実施形態においては、基板53として、ガラス基板上にポリイミドのフィルムが積層された基板を用いる。
【0088】
第1の電極54が形成された基板53の上にアクリル又はポリイミド等の樹脂層をバーコートやスピンコートでコートし、樹脂層をリソグラフィ法により、第1の電極54が形成された部分に開口が形成されるようにパターニングし絶縁層59を形成する。この開口部が、発光素子が実際に発光する発光領域に相当する。
【0089】
絶縁層59がパターニングされた基板53を第1の成膜室に搬入し、正孔輸送層55を、表示領域の第1電極54の上に共通する層として成膜する。正孔輸送層55は、最終的に1つ1つの有機EL表示装置のパネル部分となる表示領域51ごとに開口が形成されたマスクを用いて成膜される。
【0090】
次に、正孔輸送層55までが形成された基板53を第2の成膜室に搬入する。基板53とマスクとのアライメントを行い、基板をマスクの上に載置し、正孔輸送層55の上の、基板53の赤色を発する素子を配置する部分(赤色の副画素を形成する領域)に、赤色層56Rを成膜する。ここで、第2の成膜室で用いるマスクは、有機EL表示装置の副画素となる基板53上における複数の領域のうち、赤色の副画素となる複数の領域にのみ開口が形成された高精細マスクである。これにより、赤色発光層を含む赤色層56Rは、基板53上の複数の副画素となる領域のうちの赤色の副画素となる領域のみに成膜される。換言すれば、赤色層56Rは、基板53上の複数の副画素となる領域のうちの青色の副画素となる領域や緑色の副画素となる領域には成膜されずに、赤色の副画素となる領域に選択的に成膜される。
【0091】
赤色層56Rの成膜と同様に、第3の成膜室において緑色層56Gを成膜し、さらに第4の成膜室において青色層56Bを成膜する。赤色層56R、緑色層56G、青色層56Bの成膜が完了した後、第5の成膜室において表示領域51の全体に電子輸送層57を成膜する。電子輸送層57は、3色の層56R、56G、56Bに共通の層として形成される。
【0092】
電子輸送層57までが形成された基板を第6の成膜室に移動し、第2電極58を成膜する。本実施形態では、第1の成膜室~第6の成膜室では真空蒸着によって各層の成膜を行う。しかし、本発明はこれに限定はされず、例えば第6の成膜室における第2電極58の成膜はスパッタによって成膜するようにしてもよい。その後、第2電極68までが形成された基板を封止装置に移動してプラズマCVDによって保護層60を成膜して(封止工程)、有機EL表示装置50が完成する。なお、ここでは保護層60をCVD法によって形成するものとしたが、これに限定はされず、ALD法やインクジェット法によって形成してもよい。
【0093】
ここで、第1の成膜室~第6の成膜室での成膜は、形成されるそれぞれの層のパターンに対応した開口が形成されたマスクを用いて成膜される。成膜の際には、基板53とマスクとの相対的な位置調整(アライメント)を行った後に、マスクの上に基板53を載置して成膜が行われる。
【0094】
<第七実施形態>
第一実施形態では、蒸着源8が移動ユニット9によってX方向およびY方向の少なくともいずれかに移動させて成膜を行うものとして説明を行ったが、蒸着源8が移動ユニット状に配置され、蒸着源8が基板の下方を移動しながら成膜を行ってもよい。
図26(A)及び
図26(B)、並びに
図27(A)及び
図27(B)はその一例を示す。
【0095】
移動ユニット9''は固定レール95に沿って移動する。移動ユニット9''は、移動位置MA~MB間を移動するためのバッテリ(
図27(A)を参照して後述するバッテリ2704)を備える本実施形態に係る移動体の一例である。また、成膜室3内には、移動ユニット9''のバッテリに充電を行うための充電ユニット261が配置される。移動位置MAは、移動ユニット9''に充電を行う位置であり、点線で示す移動位置MBは、移動ユニット9''が移動位置MAから最も離れた折り返し位置である。
【0096】
なお、
図26(A)の例では、充電ユニット261は移動ユニット9''に直接接続されるように図示されているが、無線給電などによって充電を行ってもよい。また、固定レール95上に充電用の端子が配置され、充電ユニット261は充電用の端子を介して充電を行ってもよい。また、充電ユニット261が配置される位置は
図26(A)に示す位置に限られず、基板Wの搬入出口に近い位置に配置されてもよい。また、複数の充電ユニット261が1つの移動ユニット9''に同時または異なるタイミングで充電を行うために複数配置されてもよい。
【0097】
続いて、
図27(A)および
図27(B)を参照して、移動ユニット9''の構造について説明する。蒸着ユニット8をY方向に移動させるための移動機構である移動ユニット9''は、Y方向である第1方向に延びる2つの第1ガイドレール95A(第1レール部材)、それぞれの第1ガイドレール95A上に設置され、第1方向に移動可能な第1ガイドブロック2703(第1移動可能部材)を含む。第1ガイドブロック2703は蒸着源8を支持する大気ボックス2701を支持し、大気ボックス2701内の第1サーボモーター2705の回転軸端に連結された第1ピニオン2702とベースプレート2752に固定された第1ラック95Bとの連結によって、第1サーボモーター2705から駆動力を受け、第1ガイドレール95A上で、Y方向に移動する。第1ピニオン2702と第1ラック95Bとが、本実施例の第1駆動力転換機構に当たるが、このような駆動力転換機構に限定されず、駆動源であるモーターの回転駆動力を直線駆動力に転換できる他の駆動力転換機構を含むことができる。例えば、ボールねじのような他の駆動力転換機構を含むこともできる。バッテリ2704は第1サーボモーター2705への給電を行い、充電ユニット261からの給電を受ける。
【0098】
第1ガイドレール95Aと第1ガイドブロック2706との間、そして、第1サーボモーター2705の回転軸端に連結された第1ピニオン2702とベースプレート2752に固定された第1ラック95Bとの間には摩擦抵抗を低減させるために、フッ素成分のグリース(grease)のような潤滑部材が加えられる。
【0099】
本実施例による成膜システム1は、蒸着源8をY方向に移動させる移動ユニット9''の潤滑部位(潤滑部材が加えられた部位)基板Wに向かう潤滑部材の飛散経路を遮断するため、少なくとも移動ユニット9''の潤滑部位を覆うように、移動ユニット9''に隣接して設置された第1移動機構カバー部材を含む。具体的に、
図27(b)に図示されたとおり、成膜システム1は、第1移動機構カバー部材として、第1ガイドブロック2703に固定され、第1ガイドレール95Aの上面の少なくとも一部を覆うように第1ガイドブロック2703の第1方向の前端及び後端から第1方向に所定の長さで延びる第1カバー部材2753を含む。
【0100】
第1カバー部材2753は、第1ガイドレール95Aと第1ガイドブロック20との間から被蒸着体に向かう潤滑部材の飛散経路をより確実に遮断するために、
図27(b)に示したように、第1ガイドレール95Aを3つの面(つまり、上面及び第1方向から見た際の両側面)で囲むように形成する。
【0101】
図27(a)に示されたように、第1カバー部材2753の第1方向の長さは基板Wに向かう飛散経路の遮断程度及び成膜室3の他の構成部品との干渉の如何を考慮して決められ得る。すなわち、第1カバー部材2753の第1方向の長さを長くするほど基板Wに向かう飛散経路をより確実に遮断することができるが、第1方向の移動の両端で第1カバー部材2753が例えば、成膜室3の壁面にぶつかる可能性があるので、このような要素のバランスを考慮して第1方向の長さを定めることができる。
【0102】
成膜システム1は第1移動機構カバー部材として、
図27(B)に示すように、第1カバー部材2753以外に、第1ピニオン2702と第1ラック95Bとの間(第1駆動力転換機構の潤滑部位)に加えられた潤滑部材の飛散経路を遮断するための第2カバー部材2751を含むことができる。第2カバー部材2751は、
図27(b)に図示されたとおり、少なくとも第1ピニオン2702と第1ラック95Bと間の潤滑部位を覆うように形成される。第2カバー部材2751は、潤滑部材の飛散経路をより確実に遮断するために、第1ピニオン2702の上面の少なくとも一部だけでなく、第1ピニオン2702と第1ラック95Bとの間の結合部位の外側の側面(第1方向から見て、第1ラック95Bに対して蒸着源8と反対側)の少なくとも一部も覆うように形成される。このため、第2カバー部材2751は、第1ラック95Bの外側から垂直方向(第3方向)に延び、その上端部が、第1ピニオン2702の上部側に(第1方向と交差する第2方向に)曲がった形状を持つ。
【0103】
なお、
図27(A)及び
図27(B)では、バッテリ2704は第1サーボモーター2705に給電を行うものとして説明を行った。一例では、バッテリ2704は成膜位置JA、JBにおいて蒸着源8に電力を供給してもよい。
【0104】
<第八実施形態>
第七実施形態では、蒸着位置ごとに蒸着源8が用意されるものとして説明したが、1つの蒸着源によって複数の蒸着位置で成膜処理が行われてもよい。
【0105】
図28(A)および
図28(B)を参照して、移動ユニット9''の一例について説明する。
図26(A)および
図26(B)の例では、蒸着源8を支持する移動ユニット9''は1ラインごとに設けられ、Y方向で蒸着源8を移動させる。
図28(A)および
図28(B)に示す移動ユニット9''は、X方向である第2方向に移動可能であり、複数のラインに蒸着源8を移動させる。
【0106】
図28(A)は、蒸着源8の上方図である。
図28(A)に示すように、移動ユニット9''は、可動レール94に沿って蒸着源8をY方向に移動させる第1の動きと、固定レール95に沿って蒸着源8および可動レール94をX方向に移動させる第2の動きを実行することができる。また、
図28(A)では充電ユニット261は一方のラインに配置されるものとして図示しているが、複数のラインに配置されてもよい。また、充電ユニット261は、2つのラインの間、例えば、移動ユニット9''が複数の成膜位置間を移動する経路上に配置されてもよい。これによって、移動ユニット9''が充電している間に、成膜位置JAおよびJBへのアクセスが容易になるため、基板のアライメントや、マスクまたは基板の交換などのメンテナンスを容易に行うことができる。
【0107】
図28(B)は、蒸着源8および移動ユニット9''の構造を示す。
図28(B)に示す移動ユニット9''は、
図27(B)に示す移動ユニット9''と同様に、大気ボックス2801内の第1サーボモーター2805の回転軸端に連結された第1ピニオン2802を備える。第1ピニオン2802は、第1サーボモーター2805に駆動されることで可動レール94に沿って移動することができるとともに、X方向における移動ユニット9''と可動レール94との相対位置が変わらないように係合する係合部を有する。第1サーボモーター2805は、大気ボックス内のバッテリ2804から電源の供給を受ける。第1ピニオン2802が第1サーボモーター2805によって駆動されることで、移動ボックス9''は、可動レール94にそってY方向に移動することができる。また、
図28(B)に示す移動ユニット9''は、バッテリ2804から電源の供給を受けて動作する第2サーボモーター2806によって駆動されるローラ2808を備える。ローラ2808は、Z方向にローラ2808のZ方向における位置を調整可能な回転軸2807によって支持される。ローラ2808がベースプレート2752に接している場合には、第2サーボモーター2806がローラ2808を駆動することで、移動ユニット9''およびそれに支持される蒸着源8、並びに第1ピニオン2802の係合構造と係合する可動レール94がX方向に移動することができる。
【0108】
一方、回転軸2807によってベースプレート2752と接しないように支持されている場合は、移動ユニット9''はX方向には移動せず、第1サーボモーター2805によって駆動される第1ピニオン2802によって可動レール94に沿った移動が可能になる。
【0109】
これによって、
図28(A)に示すように成膜室3内に複数の基板Wの成膜のためのレーンがある場合に、1台の成膜源8を複数のレーン間で移動させることができる。
【0110】
<第九実施形態>
基板Wのキャリア(基板キャリア)である保持ユニット6A~6D(まとめて保持ユニット6と呼ぶ)がバッテリを備え、バッテリから供給される電力によって保持ユニット6の搬送または基板やマスクの保持を行ってもよい。
図29は、バッテリを備える保持ユニット6の一例である。
図29に示す保持ユニット6は、バッテリ2901および充電インタフェース2902を備える本実施形態に係る移動体の一例である。
【0111】
バッテリ2901は、静電チャックである保持部62(基板保持部)、または電磁石であるマスクの保持部63への電源供給を行う。一例では、第一実施形態の永久磁石61を電磁石によって構成し、電磁石への電源供給がバッテリ2901から行われてもよい。この場合、リニアモーターのように、バッテリ2901から供給される電圧を変化させる電圧制御部(不図示)を備え、電圧の正負の変化によって保持ユニット6が移動するようにしてもよい。
【0112】
次に、
図30(A)、
図30(B)を参照してバッテリを備える保持ユニット6の移動例について説明する。
図30(A)、
図30(B)では、保持ユニット6がバッテリ2901からの電源供給によって移動するものとして説明する。
【0113】
図30(A)は保持ユニット6が基板Wの受取位置PAから蒸着位置JAに移動している状態の図である。上述したように、
図30(A)では、保持ユニット6は受取位置PAから蒸着位置JAまでバッテリ2901からの電源供給によって移動する。続いて、保持ユニット6は蒸着位置JAに設けられた充電ユニット3001まで移動すると、充電インタフェース2902を介して充電ユニット3001からバッテリ2901への充電を行う。充電ユニット3001からの充電は、蒸着処理と並行して行われてもよい。なお、
図30(B)では充電ユニット3001からの給電は充電ユニット3001と接続する充電インタフェース2902を介して行うものとして図示しているが、無線給電などの非接触給電によってバッテリ2901への充電を行ってもよい。
【0114】
蒸着処理が終了すると、保持ユニット6は基板Wを蒸着位置JAから受取位置PAに搬送する。一例では、受取位置PAにもバッテリ2901の充電ユニット3001が設けられてもよいし、蒸着位置JAではなく受取位置PAのみに充電ユニット3001が設けられてもよい。
【0115】
<第十実施形態>
第一~八実施形態では、移動ユニット9''によって移動される蒸着源8は、蒸着源8は、蒸着物質の原材料を収容する坩堝や、坩堝を加熱するヒータ等を備え、原材料を加熱してその蒸気である蒸着物質を開口部8aから上方へ放出するものとして説明した。しかしながら、成膜材料を放出することができれば他の成膜ユニットを使用してもよい。例えば、移動ユニット9''は、成膜材料に高電圧をかけてグロー放電を発生させ、成膜材料の粒子を弾き出すことで基板Wに薄膜を形成するカソードを備えたスパッタリングによって成膜処理を行う成膜ユニットを保持して移動させてもよい。第九実施形態では、スパッタリングによって成膜処理を行う成膜ユニットを保持して移動させる移動ユニットについて説明する。なお、第一~第八実施形態と同様の構成については同一の参照符号を使用し、説明を省略する。
【0116】
図31(A)にスパッタリング用の成膜ユニット8'を保持して搬送する移動ユニット9''を示す。移動ユニット9''は
図27を参照して説明した移動ユニット9''と同様のため説明を省略する。
【0117】
成膜ユニット8'は、ターゲットユニット3101およびターゲット制御部3102を備える。ターゲットユニット3101は、移動ユニット9''に配置されたベースプレート3100上に固定されたターゲット制御部3102によって支持されている。また、ターゲットユニット3101は、
図31(B)に示すように、円筒形状のターゲット3111とその内周に配置される電極であるカソード3112と、さらに内部に配置される磁石ユニット3113を有する。ターゲット制御部3102によってターゲットユニット3101は回転自在に支持されており、磁石ユニット3113は固定状態で支持されている。なお、ここでは磁石ユニット3113は回転しないものとしたが、これに限定はされず、磁石ユニット3113も回転または揺動してもよい。
【0118】
また、
図31(A)に示すように、バッテリ2704はターゲット制御部3102に電力を供給してもよい。すなわち、移動ユニット9''に備えられたバッテリ2704は、移動ユニット9''の移動と、成膜ユニット8'の成膜処理のために使用されてもよい。別の例では、成膜ユニット8'にもバッテリが配置され、
図26の充電ユニット261によって充電されてもよい。この場合、成膜ユニット8'に設けられたバッテリは成膜処理のために使用され、移動ユニット9''に備えられたバッテリ2704は移動ユニット9''のために使用される。
【0119】
<他の実施形態>
本発明は、上述の実施形態の1以上の機能を実現するプログラムを、ネットワーク又は記憶媒体を介してシステム又は装置に供給し、そのシステム又は装置のコンピュータにおける1つ以上のプロセッサがプログラムを読出し実行する処理でも実現可能である。また、1以上の機能を実現する回路(例えば、ASIC)によっても実現可能である。
【0120】
発明は上記実施形態に制限されるものではなく、発明の精神及び範囲から離脱することなく、様々な変更及び変形が可能である。従って、発明の範囲を公にするために請求項を添付する。
【符号の説明】
【0121】
1 成膜装置、3 成膜室、4 搬送ユニット、5A及び5B 搬送ユニット、6A~6D 保持ユニット、7A及び7B 移動ユニット、8:蒸着源、8':成膜ユニット、9'':移動ユニット