(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023088160
(43)【公開日】2023-06-26
(54)【発明の名称】基板処理装置及び基板処理方法
(51)【国際特許分類】
C23C 14/34 20060101AFI20230619BHJP
【FI】
C23C14/34 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021202854
(22)【出願日】2021-12-14
(71)【出願人】
【識別番号】000219967
【氏名又は名称】東京エレクトロン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】波多野 達夫
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 直樹
【テーマコード(参考)】
4K029
【Fターム(参考)】
4K029BA58
4K029BB02
4K029CA06
4K029DA04
4K029DA08
4K029DA12
4K029DC03
4K029DC07
4K029DC16
4K029DC25
4K029DC46
4K029JA02
4K029JA05
(57)【要約】
【課題】低融点材料をターゲットとして用いることができる基板処理装置及び基板処理方法を提供する。
【解決手段】真空処理容器内に設けられ、低融点材料のターゲットを収容する凹部を有するトレイと、前記トレイを冷却する冷凍機と、基板を保持する基板保持部と、前記基板保持部の上下を反転させる反転駆動部と、前記基板の周方向に前記基板保持部を回転させる回転駆動部と、を備える、基板処理装置。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
真空処理容器内に設けられ、低融点材料のターゲットを収容する凹部を有するトレイと、
前記トレイを冷却する冷凍機と、
基板を保持する基板保持部と、
前記基板保持部の上下を反転させる反転駆動部と、
前記基板の周方向に前記基板保持部を回転させる回転駆動部と、を備える、
基板処理装置。
【請求項2】
前記基板保持部は、
前記基板を吸着する静電チャックを有する、
請求項1に記載の基板処理装置。
【請求項3】
前記基板保持部は、
前記基板を加熱するヒータを有する、
請求項1または請求項2に記載の基板処理装置。
【請求項4】
前記トレイの前記凹部は、複数に区画される、
請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の基板処理装置。
【請求項5】
前記真空処理容器内にガスを供給するガス供給部と、
前記トレイに電圧を印加する電源と、を更に備え、
前記冷凍機は、絶縁部材を介して前記トレイを冷却する、
請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載の基板処理装置。
【請求項6】
前記トレイの裏面側に配置されるマグネットを更に備える、
請求項5に記載の基板処理装置。
【請求項7】
前記低融点材料は、Gaである、
請求項1乃至請求項6のいずれか1項に記載の基板処理装置。
【請求項8】
真空処理容器内に設けられ、低融点材料のターゲットを収容する凹部を有するトレイと、前記トレイを冷却する冷凍機と、基板を保持する基板保持部と、前記基板保持部の上下を反転させる反転駆動部と、前記基板の周方向に前記基板保持部を回転させる回転駆動部と、を備える、基板処理装置の基板処理方法であって、
前記ターゲットを前記冷凍機で冷却した状態で、前記ターゲットをスパッタして前記基板に成膜する、基板処理方法。
【請求項9】
前記トレイの前記凹部に液体の前記低融点材料を導入するステップと、
前記真空処理容器内を真空排気して、液体の前記低融点材料を脱気するステップと、
前記トレイを冷却して、前記低融点材料を固体化するステップと、を有する、
請求項8に記載の基板処理方法。
【請求項10】
前記トレイの前記凹部に収容される前記低融点材料を液化するステップと、
前記トレイの前記凹部に収容される前記低融点材料を固体化するステップと、を有する、請求項8に記載の基板処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板処理装置及び基板処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、バッキングプレートにGaもしくはGa合金を液体状態にして流し込み液体Ga保持バッキングプレートとした後、液体Ga保持バッキングプレートを減圧状態または水素ガス雰囲気中で熱処理してから、GaもしくはGa合金を固体状態となるまで冷却させてGaスパッタターゲットを製造する製造方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、低融点材料のターゲットにArイオンが衝突することにより、ターゲットの温度が上昇して液状化し、固体状態を維持できないおそれがある。
【0005】
一の側面では、本開示は、低融点材料をターゲットとして用いることができる基板処理装置及び基板処理方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、一の態様によれば、真空処理容器内に設けられ、低融点材料のターゲットを収容する凹部を有するトレイと、前記トレイを冷却する冷凍機と、基板を保持する基板保持部と、前記基板保持部の上下を反転させる反転駆動部と、前記基板の周方向に前記基板保持部を回転させる回転駆動部と、を備える、基板処理装置が提供される。
【発明の効果】
【0007】
一の側面によれば、低融点材料をターゲットとして用いることができる基板処理装置及び基板処理方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】基板処理装置の構成を説明する断面図の一例である。
【
図3】基板処理装置を用いた成膜処理の一例を示す図である。
【
図4】基板処理装置におけるターゲットの導入処理の一例を示すフローチャートである。
【
図5】基板処理装置におけるターゲットのエロージョン回復処理の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照して本開示を実施するための形態について説明する。各図面において、同一構成部分には同一符号を付し、重複した説明を省略する場合がある。
【0010】
<基板処理装置1>
基板処理装置1について、
図1を用いて説明する。
図1は、基板処理装置1の構成を説明する断面図の一例である。
【0011】
基板処理装置1は、処理チャンバ10と、基板保持部20と、スパッタ粒子放出部30と、スパッタ粒子放出部40と、遮蔽板50と、制御部60と、を備える。基板処理装置1は、例えば、PVD(Physical Vapor Deposition)装置であって、処理チャンバ10内で、スパッタ粒子放出部30,40から放出されたスパッタ粒子(成膜原子)を基板保持部20に保持された半導体ウエハ等の基板Wの表面に付着させ、成膜するスパッタ装置である。
【0012】
処理チャンバ10は、上部が開口されたチャンバ本体10aと、チャンバ本体10aの上部開口を塞ぐように設けられた蓋体10bと、を有する。処理チャンバ10の内部は、成膜処理が行われる処理空間Sとなる。また、蓋体10bは、取り外し可能に設けられている。
【0013】
処理チャンバ10の側壁には、基板Wを搬入出するための搬入出口が形成されている。搬入出口は、ゲートバルブ11により開閉される。
【0014】
処理チャンバ10の側壁には、処理空間S内にガスを導入するためのガス導入ポート12が設けられている。ガス導入ポート12には、ガス供給部(図示せず)が接続されている。ガス供給部からガス導入ポート12に、ターゲット100をスパッタするスパッタガス(例えば、不活性ガス、Arガス)が導入される。また、ガス供給部からガス導入ポート12に、基板Wの表面に付着したスパッタ粒子と反応する反応ガス(例えば、N2ガス)が導入される。
【0015】
処理チャンバ10の底部には、排気口13が形成されている。排気口13には、排気装置14が接続されている。排気装置14は、圧力制御弁、および真空ポンプを含む。処理空間Sは、排気装置14により、所定の真空度まで真空排気される。
【0016】
処理チャンバ10の側壁には、処理チャンバ10を冷却する冷却機構15を有する。冷却機構15は、処理チャンバ10の側壁に設けられた冷媒流路15aと、冷媒流路15aに冷媒を循環させる循環装置15bと、を有する。
【0017】
基板保持部20は、静電チャック21と、ヒータ22と、を有する。
【0018】
静電チャック21は、基板Wを静電吸着することにより、基板Wを保持する。
【0019】
ヒータ22は、基板保持部20に保持された基板Wを加熱する。例えば、ヒータ22は、基板Wを500℃~600℃に加熱可能に設けられている。
【0020】
また、基板処理装置1は、水平方向を回転軸として基板保持部20を回転方向23で回転させることにより、基板保持部20の上下を反転させる反転駆動部(図示せず)を有している。
【0021】
また、基板処理装置1は、垂直方向を回転軸として基板保持部20を回転方向24で回転させることにより、基板保持部20に保持された基板Wの周方向に基板保持部20を回転させる回転駆動部(図示せず)を有している。
【0022】
スパッタ粒子放出部30は、ターゲット100を保持するトレイ31と、トレイ支持部32と、絶縁体33と、伝熱部34と、締結ボルト35と、シャフト36と、冷凍機37と、マグネット39と、電源38と、を有する。
【0023】
ターゲット100は、成膜しようとする膜の構成元素を含む材料からなり、導電性材料であっても誘電体材料であってもよい。ここで、スパッタ粒子放出部30のターゲット100は、常温のターゲット100にArイオンを衝突させてスパッタする際、Arイオンの衝突による温度上昇で固体から液化する低融点材料である。
【0024】
以下の説明において、ターゲット100は、Ga(融点:29.76℃)であるものとして説明する。なお、低融点材料は、これに限られるものではなく、融点が-50℃以上の200℃以下の材料を用いることができる。例えば、低融点材料は、Rb、In、Li等であってもよい。
【0025】
トレイ31は、凹部31aを有し、凹部31a内に液体または固体のターゲット100を保持することができるように構成されている。トレイ31は、非磁性体であって、導電性を有し、熱伝導性が高い材料(例えば、Cu)で形成される。
【0026】
ここで、トレイ31について、
図2を用いて更に説明する。
図2は、トレイ31を上方から見た図の一例である。
【0027】
ここで、ターゲット100が液体から固体となる際の体積変化により、ターゲット100の表面にひび割れが発生するおそれがある。ターゲット100の表面にひび割れが発生すると、電界集中が生じ、異常放電が発生するおそれがある。
【0028】
これに対し、
図2に示すように、凹部31aには仕切り31bが設けられており、凹部31aは複数の区画301~304に区画されている。これにより、各区画301~304内のターゲット100の体積を小さくすることができる。よって、ターゲット100が液体から固体となる際の体積変化量を低減し、ターゲット100の表面にひび割れが発生することを抑制することができ、電界集中による異常放電の発生を抑制することができる。
【0029】
また、基板Wに成膜する膜に添加物を導入する場合、区画301~304のうちの一部または全部の区画において、ターゲット100の材料に添加物を導入してもよい。
【0030】
トレイ支持部32は、トレイ31の裏面側に固定され、トレイ31を支持する。トレイ支持部32は、非磁性体であって、導電性を有し、熱伝導性が高い材料(例えば、Cu)で形成される。
【0031】
絶縁体33は、トレイ支持部32と伝熱部34との間に配置され、トレイ支持部32と伝熱部34との間を絶縁する。絶縁体33は、AlN、Al2O3等の熱伝導性がよい絶縁体で形成される。これにより、トレイ31及びトレイ支持部32は、処理チャンバ10から絶縁されている。
【0032】
伝熱部34は、シャフト36を介して冷凍機37と熱的に接続される。伝熱部34は、熱伝導性が高い材料(例えば、Cu)で形成される。
【0033】
締結ボルト35は、トレイ支持部32、絶縁体33、伝熱部34を固定する。また、締結ボルト35と伝熱部34との間には、絶縁部材35aが設けられている。これにより、トレイ支持部32と伝熱部34との間は、絶縁される。
【0034】
シャフト36は、処理チャンバ10の底壁を貫通し、処理チャンバ10の中に設けられた伝熱部34と処理チャンバ10の外に設けられた冷凍機37とを熱的に接続する。シャフト36は、熱伝導性が高い材料(例えば、Cu)で形成される。
【0035】
冷凍機37は、シャフト36、伝熱部34、絶縁体33、トレイ支持部32及びトレイ31を介して、トレイ31に保持された液体または固体のターゲット100を冷却する。例えば、冷凍機37は、ターゲット100を低融点材料の融点よりも十分に低い温度(例えば、-10℃)に冷却可能に設けられている。
【0036】
電源38は、トレイ支持部32を介してトレイ31と電気的に接続されている。電源38は、ターゲット100が導電性材料である場合には、直流電源であってよく、ターゲット100が誘電性材料である場合には、高周波電源であってよい。電源38が高周波電源である場合には、整合器を介してトレイ支持部32に接続される。トレイ31に電圧が印加されることにより、ターゲット100の周囲でスパッタガス(例えば、Arガス)が解離する。そして、解離したスパッタガス中のイオンがターゲット100に衝突し、ターゲット100からその構成材料の粒子であるスパッタ粒子が放出される。
【0037】
マグネット39は、トレイ31の裏面側に配置されている。解離したスパッタガス中のイオンは、マグネット39の磁界38aによって引き込まれ、ターゲット100に衝突する。
【0038】
スパッタ粒子放出部40は、ターゲット200を保持するターゲットホルダ41と、電源42と、を有する。
【0039】
ターゲット200は、成膜しようとする膜の構成元素を含む材料からなり、導電性材料であっても誘電体材料であってもよい。以下の説明において、ターゲット200は、Alであるものとして説明する。
【0040】
ターゲットホルダ41は、導電性を有する材料からなり、絶縁部材(図示せず)を介して、処理チャンバ10のチャンバ本体10aに取り付けられている。
図1に示す例において、ターゲットホルダ41は、基板Wの回転方向24の回転軸に対して斜めに設けられている。
【0041】
電源42は、ターゲットホルダ41に電気的に接続されている。電源42は、ターゲット200が導電性材料である場合には、直流電源であってよく、ターゲット200が誘電性材料である場合には、高周波電源であってよい。電源42が高周波電源である場合には、整合器を介してターゲットホルダ41に接続される。ターゲットホルダ41に電圧が印加されることにより、ターゲット200の周囲でスパッタガスが解離する。そして、解離したスパッタガス中のイオンがターゲット200に衝突し、ターゲット200からその構成材料の粒子であるスパッタ粒子が放出される。
【0042】
また、スパッタ粒子放出部40は、ターゲットホルダ41の裏面側に配置されるマグネット(図示せず)及びマグネットを往復運動させるマグネット走査機構(図示せず)を有していてもよい。マグネットを往復運動させることにより、イオンがターゲット200に衝突する位置、換言すれば、スパッタ粒子が放出される位置を変化させることができる。これにより、ターゲットのエロージョンの偏りを抑制することができる。
【0043】
遮蔽板50は、開口部51を有し、遮蔽板回転機構(図示せず)によって回転方向52に回転自在に取り付けられている。これにより、一方のターゲット100(または200)に臨む領域に遮蔽板50の開口部51を位置させた際、他方のターゲット200(または100)は遮蔽板50により覆われる。これにより、一方のターゲット100(または200)にてスパッタリングを実行しているときに、スパッタリングによって発した粒子が他方のターゲット200(または100)に付着することを防止できる。また、ターゲット100及び200から外れた領域に遮蔽板50の開口部51を位置させることにより、ターゲット100及び200は遮蔽板50により覆われる。
【0044】
制御部60は、コンピュータからなり、基板処理装置1の各構成部を制御する。制御部60は、実際にこれらの制御を行うCPUからなる主制御部と、入力装置、出力装置、表示装置、記憶装置とを有している。記憶装置には、基板処理装置1で実行される各種処理のパラメータが記憶されており、また、基板処理装置1で実行される処理を制御するためのプログラム、すなわち処理レシピが格納された記憶媒体がセットされるようになっている。制御部60の主制御部は、記憶媒体に記憶されている所定の処理レシピを呼び出し、その処理レシピに基づいて基板処理装置1に所定の処理を実行させる。
【0045】
<成膜処理>
次に、基板処理装置1を用いた成膜処理の一例について、
図3を用いて説明する。
図3は、基板処理装置1を用いた成膜処理の一例を示す図である。ここでは、基板Wに下地膜としてのAlN膜を成膜した後、GaN膜を成膜する場合を例に説明する。
【0046】
まず、基板保持部20に基板Wを保持させる。
図3(a)は、基板保持部20に基板Wが保持された状態を示す図の一例である。具体的には、制御部60は、ゲートバルブ11を開き、基板搬送装置(図示せず)を制御して処理チャンバ10の側壁に設けられた搬入出口から基板Wを処理チャンバ10内に搬送する。制御部60は、基板保持部20からリフタピン(図示せず)を上昇させ、基板搬送装置に保持された基板Wを受け取る。リフタピンに基板Wが受け渡されると、制御部60は、基板搬送装置を搬入出口から退避させ、ゲートバルブ11を閉じる。制御部60は、リフタピンを下降させ、基板保持部20に基板Wを載置する。そして、制御部60は、静電チャック21を制御して、基板Wを基板保持部20に吸着させる。これにより、
図3(a)に示すように、基板保持部20に基板Wが保持(吸着)される。
【0047】
なお、排気装置14によって、処理チャンバ10内は、所定の真空雰囲気に減圧されている。また、冷却機構15によって、処理チャンバ10の側壁は冷却されている。また、冷凍機37によって、ターゲット100は、冷却されている。また、遮蔽板50の開口部51は、ターゲット100,200から外れた領域に位置されている。
【0048】
次に、基板保持部20を回転方向23で180°回転させ、基板Wをターゲット100,200に対向させる。
図3(b)は、基板Wをターゲット100,200に対向させた状態を示す図の一例である。具体的には、制御部60は、反転駆動部(図示せず)を制御して、基板保持部20を回転方向23で回転させることにより、基板保持部20の上下を反転する。
【0049】
次に、基板WにAlN膜を成膜する。
図3(c)は、AlN膜成膜時の基板処理装置1の一例である。具体的には、制御部60は、遮蔽板回転機構(図示せず)を制御して、遮蔽板50を回転させ、ターゲット200に臨む領域に遮蔽板50の開口部51を位置させる。また、制御部60は、基板保持部20の回転駆動部(図示せず)を制御して、回転方向24に基板Wを回転させる。制御部60は、ヒータ22を制御して、基板Wを500℃~600℃に加熱する。制御部60は、ガス供給部(図示せず)を制御して、ガス導入ポート12からArガス及びN
2ガスを処理空間S内に導入させる。また、制御部60は、スパッタ粒子放出部40の電源42を制御してターゲットホルダ41に電圧を印加する。また、制御部60は、マグネット走査機構を制御して、ターゲットホルダ41の裏面側に設けられたマグネットを往復運動させてもよい。
【0050】
これにより、ターゲット200の周囲でArガスが解離し、解離したArガスがターゲット200に衝突することでAlのスパッタ粒子が放出される。これにより、基板Wの表面に付着したAlのスパッタ粒子とガス導入ポート12から導入されたN2ガスとが反応することにより、AlN膜が成膜される。
【0051】
また、ターゲット100は、遮蔽板50によって覆われている。これにより、基板Wからターゲット100への熱放射による伝熱を防止することができる。
【0052】
次に、基板WにGaN膜を成膜する。
図3(d)は、GaN膜成膜時の基板処理装置1の一例である。具体的には、制御部60は、遮蔽板回転機構(図示せず)を制御して、遮蔽板50を回転させ、ターゲット100に臨む領域に遮蔽板50の開口部51を位置させる。また、制御部60は、基板保持部20の回転駆動部(図示せず)を制御して、回転方向24に基板Wを回転させる。制御部60は、ヒータ22を制御して、基板Wを500℃~600℃に加熱する。制御部60は、ガス供給部(図示せず)を制御して、ガス導入ポート12からArガス及びN
2ガスを処理空間S内に導入させる。また、制御部60は、スパッタ粒子放出部30の電源38を制御してトレイ31及びトレイ支持部32に電圧を印加する。
【0053】
これにより、ターゲット100の周囲でArガスが解離し、解離したArガスがターゲット100に衝突することでAlのスパッタ粒子が放出される。これにより、基板Wの表面に付着したGaのスパッタ粒子とガス導入ポート12から導入されたN2ガスとが反応することにより、GaN膜が成膜される。
【0054】
ここで、ターゲット100は、Gaの融点(29.6℃)よりも十分に低い温度(例えば、-10℃)に冷却されている。これにより、スパッタ中のArイオンの衝突による温度上昇でターゲット100が液化することを防止することができる。換言すれば、ターゲット100が液化することで、スパッタ粒子の放出量が減少し、基板Wの成膜レートが減少する。これに対し、基板処理装置1は、ターゲット100が液化することを防止し、基板Wの成膜レートが減少することを防止することができる。
【0055】
<ターゲット導入処理>
次に、ターゲット100の導入処理の一例について、
図4を用いて説明する。
図4は、基板処理装置1におけるターゲット100の導入処理の一例を示すフローチャートである。
【0056】
ステップS101において、トレイ31に液体Gaを導入する。まず、制御部60は、冷凍機37を停止させ、トレイ31の温度を常温とする。また、制御部60は、トレイ31を加熱するヒータ(図示せず)を制御して、トレイ31の温度をGaが液体状態になる温度(例えば30℃以上)で保持する。また、制御部60は、遮蔽板50を回転させ、トレイ31の凹部31aに臨む領域に遮蔽板50の開口部51を位置させる。また、制御部60は、遮蔽板回転機構を制御して遮蔽板50を回転させ、トレイ31の凹部31aに臨む領域に遮蔽板50の開口部51を位置させる。また、制御部60は、反転駆動部を制御して基板保持部20を90°回転させることにより、作業空間を形成する。
【0057】
次に、作業者は、蓋体10bを開け、30℃以上に加熱された液体状態のGaをトレイ31の凹部31aに導入する。そして、作業者は、蓋体10bを閉じる。
【0058】
ステップS102において、液体Ga中の溶存ガス(溶存酸素、溶存窒素等)の脱気を行う。ここでは、制御部60は、排気装置14を制御して、処理チャンバ10内を真空排気する。これにより、液体状態のGa中の溶存ガス(溶存酸素、溶存窒素等)を脱気する。
【0059】
ステップS103において、ターゲット100の固体化処理を行う。ここでは、制御部60は、冷凍機37を制御して、ターゲット100を冷却する。
【0060】
これにより、トレイ31に形成された固体のターゲット100中に、気泡が発生することを防止することができる。これにより、気泡がターゲット100の表面に露出した際に、電界集中が生じ、異常放電が発生することを防止することができる。
【0061】
<エロージョン回復処理>
ここで、ターゲット100をスパッタすることにより、ターゲット100の表面にエロージョンが発生して、ターゲット100の表面が不均一になる。ターゲット100の表面が不均一となると、基板Wに向かうスパッタ粒子が減少し、成膜速度が低下する。また、電界集中が発生し異常放電が発生するおそれがある。
【0062】
図5は、基板処理装置1におけるターゲット100のエロージョン回復処理の一例を示すフローチャートである。
【0063】
ステップS201において、ターゲット100の液化処理を行う。ここでは、制御部60は、冷凍機37を停止させる。また、制御部60は、トレイ31を加熱するヒータ(図示せず)を制御して、トレイ31の温度をGaが液体状態になる温度(例えば30℃以上)で保持する。これにより、ターゲット100が溶融し、表面の凹凸が解消される。
【0064】
ステップS202において、ターゲット100の固体化処理を行う。ここでは、制御部60は、冷凍機37を制御して、ターゲット100を冷却する。
【0065】
これにより、トレイ31に形成された固体のターゲット100の表面の凹凸を解消することができる。また、基板Wの成膜レートが減少することを防止することができる。また、電界集中が生じ、異常放電が発生することを防止することができる。
【0066】
以上、基板処理装置を上記実施形態により説明したが、本発明に係る基板処理装置は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の範囲内で種々の変形及び改良が可能である。上記複数の実施形態に記載された事項は、矛盾しない範囲で組み合わせることができる。
【符号の説明】
【0067】
1 基板処理装置
10 処理チャンバ
12 ガス導入ポート
20 基板保持部
21 静電チャック
22 ヒータ
23 回転方向
24 回転方向
30 スパッタ粒子放出部
31 トレイ
31a 凹部
31b 仕切り
32 トレイ支持部
33 絶縁体
34 伝熱部
35 締結ボルト
35a 絶縁部材
36 シャフト
37 冷凍機
38 電源
38a 磁界
39 マグネット
40 スパッタ粒子放出部
41 ターゲットホルダ
42 電源
50 遮蔽板
51 開口部
60 制御部
100 ターゲット
200 ターゲット
W 基板