(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023088488
(43)【公開日】2023-06-27
(54)【発明の名称】ガス供給バルブ用の開駆動エアーの制御方法およびその制御装置
(51)【国際特許分類】
H01L 21/3065 20060101AFI20230620BHJP
H01L 21/31 20060101ALI20230620BHJP
B01J 4/00 20060101ALI20230620BHJP
【FI】
H01L21/302 101G
H01L21/31 B
B01J4/00 102
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021203253
(22)【出願日】2021-12-15
(71)【出願人】
【識別番号】501387839
【氏名又は名称】株式会社日立ハイテク
(74)【代理人】
【識別番号】110000350
【氏名又は名称】ポレール弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】小川 芳文
(72)【発明者】
【氏名】高妻 豊
【テーマコード(参考)】
4G068
5F004
5F045
【Fターム(参考)】
4G068AA01
4G068AB01
4G068AB04
4G068AC05
4G068AD40
4G068AF01
4G068AF25
4G068AF31
5F004BA03
5F004BA19
5F004BB18
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5F045EH18
(57)【要約】
【課題】バルブ開閉の制御ができないと、再現性の良い表面処理ができないばかりでなく、不具合の発生を認識しないうちに、被処理物について大量の不良品を生産してしまう。
【解決手段】ガス供給バルブ用の開駆動エアーの制御装置は、プロセス処理用ガスを供給するエアーオペレートバルブの開駆動用のエアー源の供給、分配装置であり、メカニカルバルブと、エアー圧を計測する圧力計もしくは圧力スイッチと、エネルギーカットバルブを備える。メカニカルバルブでの遮断をエアー圧で検知し、さらにエアー圧低下による中途半端な開動作を止めさせるために、下流への開駆動用エアーをエネルギーカットバルブで取り去る。このときシステムにはバルブは閉と認識させるので、エアー再開時に供給ガスバルブは勝手に開くことがない。本発明により、ガス供給の不良を避け、被処理物について不良品の大量生産を回避できる。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被加工物が処理される処理室へガスを供給する複数のエアーオペレートバルブを開放するためのガス供給バルブ用の開駆動エアーの制御方法であって、
オペレータが意図してエアー供給を停止、下流側を大気開放させるメカニカルバルブと、
前記メカニカルバルブより下流に設置されるエアー圧を計測する圧力計、もしくは圧力スイッチと、
前記圧力計、もしくは前記圧力スイッチのさらにエアー回路の下流に設置され、エアーを遮断、下流側を大気開放できるエネルギーカットバルブと、を備え、
前記メカニカルバルブによるエアーの遮断、もしくはエアー圧そのものの低下を前記圧力計、もしくは前記圧力スイッチで検知して、前記エネルギーカットバルブへのソレノイドをOffしてエアーを遮断、下流側を大気開放して、前記エアーオペレートバルブを開放するための前記エネルギーカットバルブの下流側エアーを排除する、
ことを特徴とするガス供給バルブ用の開駆動エアーの制御方法。
【請求項2】
請求項1に記載のガス供給バルブ用の開駆動エアーの制御方法において、
前記エネルギーカットバルブをOffする条件に、他の機器による異常発生の検知信号、もしくは他の機器による正常信号のOffを追加した、
ことを特徴とするガス供給バルブ用の開駆動エアーの制御方法。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載のガス供給バルブ用の開駆動エアーの制御方法において、
ガス供給ライン上に少なくとも2個の前記エアーオペレートバルブを直列状に配置して、前記エネルギーカットバルブによる駆動エアーの遮断で、前記2個の前記エアーオペレートバルブが同時に閉じるように配設した、
ことを特徴とするガス供給バルブ用の開駆動エアーの制御方法。
【請求項4】
請求項1または請求項2に記載のガス供給バルブ用の開駆動エアーの制御方法において、
前記メカニカルバルブ、前記圧力計、もしくは前記圧力スイッチ、および前記エネルギーカットバルブの組み合わせを複数形成して、そのそれぞれの組み合わせによるエアー供給ラインの下流で、ガスをロックアウトする手順に従い、同一タイミングで閉じるガスラインのエアーオペレートバルブの開駆動エアーを供給する複数の電磁弁をグループ分けして割り当てた、
ことを特徴とするガス供給バルブ用の開駆動エアーの制御方法。
【請求項5】
被加工物が処理される処理室へガスを供給する複数のエアーオペレートバルブを開放するためのガス供給バルブ用の開駆動エアーの制御装置であって、
オペレータが意図してエアー供給を停止、下流側を大気開放させるメカニカルバルブと、
前記メカニカルバルブより下流に設置されるエアー圧を計測する圧力計、もしくは圧力スイッチと、
前記圧力計、もしくは前記圧力スイッチのさらにエアー回路の下流に設置され、エアーを遮断、下流側を大気開放できるエネルギーカットバルブと、を備え、
前記メカニカルバルブによるエアーの遮断、もしくはエアー圧そのものの低下を前記圧力計、もしくは前記圧力スイッチで検知して、前記エネルギーカットバルブへのソレノイドをOffしてエアーを遮断、下流側を大気開放して、前記エアーオペレートバルブを開放するための前記エネルギーカットバルブの下流側エアーを排除する、
ことを特徴とするガス供給バルブ用の開駆動エアーの制御装置。
【請求項6】
請求項5に記載のガス供給バルブ用の開駆動エアーの制御装置において、
前記エネルギーカットバルブをOffする条件に、他の機器による異常発生の検知信号、もしくは他の機器による正常信号のOffを追加した、
ことを特徴とするガス供給バルブ用の開駆動エアーの制御装置。
【請求項7】
請求項5または請求項6に記載のガス供給バルブ用の開駆動エアーの制御装置において、
ガス供給ライン上に少なくとも2個の前記エアーオペレートバルブを直列状に配置して、前記エネルギーカットバルブによる駆動エアーの遮断で、前記2個の前記エアーオペレートバルブが同時に閉じるように配設した、
ことを特徴とするガス供給バルブ用の開駆動エアーの制御装置。
【請求項8】
請求項5または請求項6に記載のガス供給バルブ用の開駆動エアーの制御装置において、
前記メカニカルバルブ、前記圧力計、もしくは前記圧力スイッチ、および前記エネルギーカットバルブの組み合わせを複数形成して、そのそれぞれの組み合わせによるエアー供給ラインの下流で、ガスをロックアウトする手順に従い、同一タイミングで閉じるガスラインのエアーオペレートバルブの開駆動エアーを供給する複数の電磁弁をグループ分けして割り当てた、
ことを特徴とするガス供給バルブ用の開駆動エアーの制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガス供給バルブ用の開駆動エアーの制御方法およびガス供給バルブ用の開駆動エアーの制御装置に関する。本発明は、特に、エッチング、CVD(chemical vapor deposition)、イオン拡散/イオン打ち込み、アッシングおよび表面改質などのガスを用いて被加工物に処理を施す表面処理装置に接続され、この表面処理装置へのガスの流れや流路を制御するためのガス供給バルブ用の開駆動エアーの制御方法およびその制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、半導体素子や、液晶素子、太陽電池、MEMSとその計測器といった電気部品、および微細メカ部品の製作において、それぞれさまざまなガス特性を有する高純度プロセスガスを用いて、ウエハ等の被加工材料の表面の処理する表面処理装置は、今や世の中で欠くことのできない重要な産業機械である。表面処理装置は、半導体製造装置、基板処理装置、プラズマ処理装置、または、真空処理装置と言い換えることもできる。
【0003】
これらの表面処理装置において、各ガス種は、それぞれの配管の下流側に設けたノーマリークローズ(スプリングリターン式で通常閉)のエアーオペレートバルブ(ガスバルブ)を介してプロセスガスとして供給される。設定された処理レシピの各々のステップの処理情報に従って選択されたプロセスガスが、被加工物である基板(シリコンウエーハ等)が収納されたチャンバー(リアクター)に供給される。当該ステップで使用されるガス種については、その下流側に設けたガスバルブの駆動シリンダー部にエアーを供給して、弁体を持ち上げ流路を形成して(ガスバルブが開き)、当該ガスが供給される。
【0004】
この各ガス種の最終段ガスバルブの上流側には、通常流量制御器が用いられる。サーマルセンサー方式の質量流量制御器(MASS FLOW RATE CONTROLLER)や圧力式流量制御器(PRESSURE FLOW RATE CONTROLLER)などを用いてガス流量が制御される。1種類のガスを単体で流す場合も、他のプロセスガスと混合して流す場合も、通常流量制御されたガスが用いられる。ガスを混合して処理する場合の混合比率もガス流量の比で制御される。
【0005】
このガスバルブの弁体を持ち上げて、ガス流路を形成するためのエアー(圧縮空気)を制御するために、通常これらガスバルブそれぞれに対応して設けられた電磁弁(ソレノイドバルブ)が設けられている。ガスバルブと同様に電磁弁もスプリングリターン式が採用され、通電されない通常時は閉じており、供給先のガスバルブにはエアーが供給されない。
【0006】
あるステップで当該ガスを使用するというレシピ情報に基づき、当該ガスの供給ガスバルブに対応する電磁弁のソレノイドに通電される。すると電磁弁のスプールが磁力で移動してエアー流路が形成されて、この電磁弁に対応した供給ガスバルブに対してエアーが供給され、ガスバルブが開くことでプロセス処理する当該ガスがチャンバーに供給される。
【0007】
通常、これら電磁弁で使用されるエアーは、建屋側のエアー源からの配管で、もしくは減圧弁で減圧された後の下流側配管で、表面処理装置に計装エアーとして供給される。表面処理装置側は、計装エアーを受け取って必要があれば減圧したり、油分や水分を取り除く処置をしたりして電磁弁に供給される。電磁弁は個々にエアーを供給されることもあるが、マニホールドと呼ばれる台座に複数の電磁弁を搭載しておいて、一括してマニホールド側から各電磁弁にエアーを供給することもある。これらマニホールドには、個々の電磁弁のソレノイドを個別に励起するための電力を供給する機能もある。これらマニホールド単位に、例えば当該マニホールドに搭載された電磁弁の電力を一括してOffして、搭載されたすべての電磁弁のガスバルブへのエアー供給が閉じ、替りにガスバルブ内のエアーを大気開放する流路が形成されエアーが抜き取られるので、このマニホールドに搭載された電磁弁に対応する全ての供給ガスバルブは閉じる。このように電気的なインターロック機能をマニホールド単位で持たせることができる。ガスの種類(例えば可燃性や支燃性、および自燃性)ごとに、ガス制御機器を配置する例は、PCT/JP2021/004546号などに記載がある。
【0008】
ところで、通常供給ガスバルブには、前出のようにノーマリークローズ(スプリングリターン式で通常閉)のエアーオペレートバルブが多用されるが、閉じるためのバネ力に打ち勝つだけのエアー圧の供給が無いとガスバルブの弁体が上限まで持ち上がらず、プロセスガスの流路を形成することはできない。またバネ力と平衡するような中途半端な圧力で、上限ストップ位置まで開放できない状態では、動作時間が変動するし、ガス流路が再現性良く形成されない。他のエアー駆動機器の動作によるエアー圧の下降/上昇の変動が発生し、開度(弁体浮上量)や開口部の形状が変わることで、配管内の流れに(乱流の発生等の)変動が生じて、バルブ開閉時間やガス流量が安定しないことがある。こういった変動の発生に対しても、前出の流量制御器がある程度はガス流量で補正し、安定化はできるが、完璧に流量やタイミングまでは補正できない。
【0009】
ここで、ガス供給バルブ用の駆動エアーについてであるが、ガス供給用バルブの弁体を駆動させるガスはエアーだけではない。特許文献3には、エアーに替えて、窒素や炭酸ガスを使用する例が記載されている。本特許ではエアー制御と記載したが、駆動ガスは、エアーに限るものでないことを記載しておく。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】PCT/JP2021/004546号
【特許文献2】特開2000-306839号公報
【特許文献3】特開2015-212565号公報
【特許文献4】特開平06-291007号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
特許文献2は、建屋側のプロセスガスの供給システムの例である。特許文献2では容器ユニットとガス供給ユニットとが、着脱可能となっており、それぞれのユニットに個別にパージ機構が設けられている。ガス供給ユニット側は、容器ユニット内で減圧されたプロセスガスのみの扱いになると記載されている。また同一ガスの複数の容器ユニットからガス供給を途絶えることなく、容器ユニットを交換できる構成が示されている。さらに、閉止弁は遮断弁として用いるので、エアー駆動弁が好ましいこと、適当な位置に圧力トランスミッターのプロセスガスの圧力検知手段も設けることが述べられている。しかしながら、遮断弁として用いるエアー駆動弁の開動作時に用いるエアー源の圧力に対する監視については、何ら述べられていない。
【0012】
また特許文献3でも、主に建屋側に設置されるシリンダーキャビネットの構成例が示されている。減圧弁が故障して、プロセスガスが規定圧力より上昇したのを圧力検出器で検知して、その上流に設けてある遮断弁への駆動用ガスの供給を止め排出させて遮断弁を閉じる。また、遮断弁を開くための駆動用ガスの圧力の低下を駆動用ガス圧力検出器に
よって検出され、この信号を元にアラーム手段によって使用者に駆動用ガス源の交換を通知することが述べられている。また第2の駆動用ガス源を設けて、減圧弁の設定値により、第1の駆動源にとって代わるように記載されている。しかしながら、駆動用ガス源は常に供給するのが前提としており、駆動用ガスの供給を断つような制御は実施されていない。
【0013】
特許文献2および特許文献3のように建屋側で減圧されたガスの供給配管、多くは複数のガス供給配管からのガスを、表面処理装置では装置内に取り込んで、前出のように処理レシピに従って制御し、装置内のチャンバーに供給する必要がある。ところが、背景技術に記載したように、中途半端なエアー圧力(駆動用ガス圧力)になったときには、流量制御器では補正できないようなバルブ弁体の開度になりうるので安定した流量の設定、制御ができなくなる。このような状態で処理すると、被処理物(シリコンウエーハ等)に再現性のある表面処理ができず、良品より不具合品ができる(歩留まりを低下させる)生産になるおそれがある。
【0014】
また、プロセスガスの供給ガスバルブを制御する電磁弁(ソレノイドバルブ)のスプールが開の状態で固着するような故障が発生したときに、その電磁弁のソレノイドの励起用の電力が意図的に、もしくはシステムのインターロックでOffされても、その固着停止位置によってはエアー(開駆動用ガス)が流れ続けて、対応する供給ガスバルブが開いたままとなり、プロセスガスが流れ続ける。このときに、電磁弁のこの故障を知らずに、チャンバーを大気開放(通常無害な窒素ガスやアルゴンガス、高純度エアーで大気圧にパージする)すると、チャンバー内にパージ用ガスだけでなく、危険なプロセスガスも流入して混じることになり、メンテナンス作業者が知らずに吸引する危険がある。
【0015】
さらに、表面処理装置のユーザであるデバイスメーカからは、チャンバーの不具合や定期的なメンテナンスを実施する場合は、プロセス用供給ガスバルブは、作業中に流出しないようにロックアウトしたいという要求がある。特許文献4には、表面処理装置のガス処理装置の構成例が示されているが、供給ガスバルブのロックアウトについては触れられていない。その供給用ガスをロックアウトする機能を持たせることは可能である。供給ガスバルブに直列に手動弁を追加配置する、もしくは手動操作を優先させた手動とエアー圧の双方で動作する特殊なバルブを採用するなどである。しかし、いずれもガスライン構築の費用が増大し、前者は占有空間も増大、後者は開時の駆動に必用なエアー圧値が増大し好ましくない。通常プロセス用のガスの制御機器類は、ダクト排気可能な筐体内に収納されている。このためなによりも、作業者がこのロックアウトの操作のために危険な筐体内にアクセスする作業は避けたい。
【0016】
また近年、従来以上の精度で表面加工を施すことが要求されるようになり、パルス的にガス供給することが必要なALD(Atomic Layer Deposition)やALE(Atomic Layer Etching)といった技術が多用されるようになってきた。対象加工面積や、反応リアクターの容積にもよるが、バルブ開の制御時間はサブセコンドのオーダでの制御が必要になっており、前出の中途半端な駆動エアー圧力では、開閉時間のバラツキが生じて、ある程度の圧力より大きなところで、安定した制御ができないといけない。このバルブ開閉の制御ができないと、再現性の良い表面処理ができないばかりでなく、不具合の発生を認識しないうちに大量の不良品を生産してしまう問題がある。
【0017】
ところで、表面処理の量産装置では、異物の増大や処理性能の低下、もしくは消耗品の損傷などでいずれチャンバーを大気開放してのメンテナンス作業が必要になる。一連の製品処理を中断させた表面処理装置のチャンバーを大気開放する際には、通常以下のように表面処理装置が操作される。1)被処理物(ウエハ等)の回収。2)真空排気。3)危険ガス(可燃性、自燃性、毒性ガス)のロックアウト。4)活性ガス(酸素等)によるパージ、プラズマクリーニング、リモートプラズマによるラジカルエッチ。5)前項使用のガスのロックアウト。6)不活性ガス(窒素、アルゴン、高純度エアー等)によるチャンバーが大気圧になるまでのベント。7)大気圧になったあとの窒息性ガス(窒素、アルゴン)のロックアウト。
【0018】
従って、ガスのロックアウトは大気圧開放手順に従って多くて3度、段階的に実施されることが望ましい。例えばクリーニング操作のあとで、危険ガスをチャンバーに流出させて、危険ガスが再びチャンバー内表面に吸着し、そのまま大気開放されるようなことは避けられるべきである。もちろん大気開放の手順はここに記載した以外にも存在する。
【課題を解決するための手段】
【0019】
供給ガスバルブを開くときに使用する駆動エアー源の中途半端な圧力状態を避け、また電磁弁のスプールの固着による駆動開エアー供給を止められない状態を避けるために、駆動エアー圧の低下をモニターし、検知したら駆動エアーの供給を止めて下流の配管/制御機器内に残留する駆動エアーをすべて抜き去ることにした。具体的には供給ガスバルブに対応した電磁弁、もしくはその電磁弁を搭載したマニホールドへのエアー供給の上流側に、通電時には駆動エアーを供給、通電Off時にはエアーを排出できる3ポート電磁弁(エアーカットバルブ、または、エネルギーカットバルブ:102,103,104)を配置した。駆動エアーラインの3ポート電磁弁の上流側に、駆動エアー圧の低下を検知する圧力計(92,93,94)を配置した。
【0020】
これにより、建屋設備側のエアー供給で問題が発生して駆動エアー圧が低下した場合に、また作業者(オペレータ)がメカニカルバルブ(112、113、114)でロックアウトし、エアー供給を止めた場合には、圧力の低下を検知して、前出の3ポート電磁弁(エアーカットバルブ、または、エネルギーカットバルブ)をOffする。それ(3ポート電磁弁のOff)と同時に、表面処理装置の制御システム側では、当該供給ガスバルブの開閉コマンドを閉側に、開閉状態の認識も閉側に変更される。したがって、エアー圧低下状態からの規定エアー圧以上に復旧した時に、再び圧力計が正常圧を検知しても、新たに開のコマンドを発しないかぎりは、供給ガスバルブが開くことはない。予期しない起動の防止が図れる。
【0021】
3ポート電磁弁(エアーカットバルブ、または、エネルギーカットバルブ)のON状態(つまり、対応する下流供給ガスバルブに駆動エアー圧を供給可能な状態)を維持する条件に、前出の駆動エアー圧を検出する圧力計の圧力接点以外のものを入れても良い。例えば、チャンバーの圧力接点(1000Pa以下等)、排気系の圧力接点(1000Pa以下等)、ガス漏洩なし(ガス漏洩検知器が検知していない接点)、火災検知なし(火災・火炎・煙センサー等検知なし)、液化性ガスの漏洩なし(ガス液タンクの漏洩検知なし)などで、基本的には通電側で制御される。停電時やこれら接点の通電が無くなると、異常となり、3ポート電磁弁(エアーカットバルブ、または、エネルギーカットバルブ)もOff状態(つまり、対応する下流供給ガスバルブに駆動エアー圧を供給不可能な状態)になり、対応した下流の供給ガスバルブが全て閉じる安全側の動作になる。
【0022】
ところで、供給ガスバルブの駆動部の不具合(バルブのエアーシリンダーの固着等)や、バルブシール面の不具合(例えばダイヤフラムの破壊や異物のかみ込み等)などの内部リークを起こしているときは、駆動エアーを取り除いてもプロセスガスの流出を阻止することができない。機械的なロックアウトを実施しても、供給ガスバルブそのものが内部リークしていれば、ロックアウトしても実際はロックアウトできていない。このため、1つのガス種のガスラインに対して、供給ガスバルブを2個直列して設けることにした。たとえ一方の供給ガスバルブが上記のような不具合で閉じることができなくても、他方の供給ガスバルブでガス供給を遮断することができる。1つのガス種のガスラインの双方の供給ガスバルブが同時に閉とならない不具合の発生する確率は大幅に減じられ、ほぼ確実にガスラインからのガスの連続流出は防止できる。また、一方が不具合を起こした時には、表面処理装置のエラー診断システムや、実際の処理される被加工物の処理不具合(ウエハ等の処理パフォーマンス不良)などで、内部リークを発生させている故障不具合内容とバルブを特定し、当該供給ガスバルブを修理および交換することできる。
【0023】
したがって、作業者がチャンバー開放や修理で、ガス供給をロックアウトするためにメカニカルバルブを操作すると、それぞれのガスラインに対して2カ所の供給ガスバルブの駆動エアー圧が断たれて、ガスのチャンバーへの供給が断たれる。上流側の供給ガスバルブが閉じない場合は、ほとんどシステム上の問題にはならない。下流側の供給ガスバルブが閉じずに内部リークの不具合を起こしている場合では、チャンバーの大気開放時のベントガスに混入する可能性があるが、混入量は双方供給ガスバルブの間の配管/機器ボリュームに限定された最低の漏洩量になる。こういった場合も、装置の大気開放シーケンスでは、一旦大気圧、もしくは大気圧近くまでベントしても、再度真空引き、ベントと繰り返す、サイクルパージを実施して数度排出されるので、作業者が最終的に大気開放後にプロセスガスを吸引する機会は限りなく小さくなるように制御できる。
【発明の効果】
【0024】
本発明の実施の形態に係るガス供給バルブ用の開駆動エアーの制御方法およびその制御装置によれば、駆動用エアー圧力低下時、作業者による駆動用エアーのメカニカルバルブによるロックアウト時、およびプロセスガスを流すことができない不具合の発生時には、電気的に電磁弁で供給ガスバルブが閉側になるように安全側にエアーを抜く動作をさせるとともに、供給エアーそのもののエネルギーを取り去る。これにより、3ポート電磁弁(エアーカットバルブ、または、エネルギーカットバルブ)の下流側駆動エアー圧で制御する一連の供給ガスバルブすべてを閉じることができる。また、この3ポート電磁弁(エアーカットバルブ、または、エネルギーカットバルブ)をガスの使用目的ごとに適宜設けることで、チャンバーの大気開放手順に従って順にプロセスガスの流出をロックアウトできる。エアー圧復旧時や、作業者による駆動用エアーのメカニカルバルブによるロックアウトの解除や、建屋エアー供給圧の正常化で再び駆動エアー圧が規定以上に上昇しても、新たにプロセスガスの供給を再開する供給ガスバルブはないので、自動復旧しないという安全要求も満たすことができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】
図1は、供給ガスバルブを含む表面処理装置の一部の機器の構成例を示す図である。
【
図2】
図2は、
図1に示す供給ガスバルブ用の開駆動エアーの上流側の電磁弁とそのマニホールドの構成例を示す図である。
【
図3】
図3は、本発明の実施例に係るガス供給バルブ用の開駆動エアー制御方法およびその制御装置の構成例で、
図2の開駆動エアー源の上流側の構成例を示す図である。
【
図4】
図4は、
図2の開駆動エアー源の上流側の構成例の他の構成例を示す図である。
【
図5】
図5は、
図2の開駆動エアー源の上流側の構成例のさらに他の構成例を示す図である。
【
図6】
図6は、
図2の開駆動エアー源の上流側の構成例のさらに他の構成例を示す図である。
【
図7】
図7は、エアー圧低下時と異常時とで制御を分けて実施する構成例を示す図である。
【
図8】
図8は、本発明の他の応用例を示すエアー供給部の構成例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、実施例および実施形態について、図面を用いて説明する。ただし、以下の説明において、同一構成要素には同一符号を付し繰り返しの説明を省略することがある。なお、図面は説明をより明確にするため、実際の態様に比べ、模式的に表される場合があるが、あくまで一例であって、本発明の解釈を限定するものではない。
【0027】
本発明の対象である表面処理装置200のガスの流れやガス流路と、それを制御するための制御方法および制御装置について説明する。
図1は、供給ガスバルブを含む表面処理装置の一部の機器の構成例である。この表面処理装置200は、プロセス処理装置(ガス処理を実施。全体を図示せず)であり、模式図で示してある。被加工物1が搭載されるステージ2を内部に収蔵し、大気とは隔絶するチャンバー(処理室、リアクター等とも言う)3内で、ガスエッチングや成膜が実施される。ステージ2に対向したチャンバー3の上部には、ガス分散室(副室)4が設けられており、そのガス分散室4の内部には天板5、スペーサ6a、6b、および6c、ガス分散板7aおよび7b、シャワープレート8が設けられている。チャンバー3の斜め上方には周回するようにハロゲンランプ10が赤外光の発生源として大気側に備えられており、透過窓11を介して、発生した赤外光は被加工物1を含めたチャンバー3の内部に照射できる。被加工物1を搬入、搬出するためのゲートバルブ15がチャンバー3の側壁に取り付けられている。
【0028】
チャンバー3の内部、またメインバルブ22とドライポンプ25をつなぐ27の排気配管の圧力は、それぞれの圧力計28、29でモニターされている。
【0029】
図1の右側の破線で囲った部分30がガスボックスである。ガスボックス30には、図示していないエアーオペレートバルブの開閉を制御する複数のソレノイドバルブや、ガス漏洩時の検知機能、さらにガス漏洩時にダクトで筐体排気する機能や、常時ガスボックス30の内部空間の陰圧(排気されていること)をモニターする機能およびそのための部品を有する。
図1のガスボックス30では、プロセスガスに直接接触する要素部品のみを記載した。◎は本プロセス装置以外の建屋などから供給されるガス源を示し、そのガスポートには図の上からA~F、L~Qの呼称を付した。
【0030】
ガスボックス30の上半分と下半分は、本実施例においては同じ構成をとった。上半分のブロックを可燃性ガスと不活性ガスの制御に、下半分のブロックを支燃性ガスと不活性ガスの制御に用いた。各ポートのガス名を具体的に記すと、上半分がA:Ar(アルゴン)、B:Ar、C:NH3(アンモニア)、D:Ar、E:CH4(メタン)、およびF:H2(水素)である。下半分のガス名は、L:Ar、M:Ar、N:NF3(三フッ化水素)、O:Ar、P:Cl2(塩素)、およびQ:O2(酸素)である。さらにいっしょには混合できないガス種をまとめて、3系統、4系統とブロックと供給ラインを増設させてもよいが、本
図1では2系統の場合を例として記載した。
【0031】
図1の右側のガス源◎からガスボックス30内に導入されたプロセスガスは、HV*で示す手動バルブを経て、上流側のG3*で示すバルブを経由し、流量コントローラ(FC*で表記)で流量コントロールされて、下流側のG2*で示すバルブへと導かれる。そしてそれぞれのプロセスガスは、チャンバー3に向かうラインのG1C*で示すバルブ、もしくは捨てガスで排気系への向かうラインのG1E*で示すバルブを介して流出させられる。本表面処理装置200では、建屋側とのプロセスガスの取合点は、このHV*で示す手動弁のガス入口である。
【0032】
図1のガスボックス30内の上側の可燃性ガス制御ブロックの集合配管の最奥部(チャンバー3から遠い方)のA系列、並びに支燃性ガス制御ブロックの集合配管の最奥部のL系列は、プロセス処理中、もしくは被加工物1の搬入/搬出中に常時流出させるパージガス(本実施例ではArガス)の制御流路として設けた。以降は上下で同じ構成のブロックを構成しているので、主に上の可燃性制御ラインのブロックについて説明する。
【0033】
ガスバルブにはエアー圧で開駆動させるエアーオペレートバルブ(ダイヤフラム式)を用いた。バルブにベローズでシールするベローズバルブを用いても本発明の方法や装置構成に変わるところはない。A系列は、可燃性ガスラインのパージ、可燃性ガス使用時のベースガス、被加工物1の搬送中のガスパージ、およびチャンバー3の大気開放時のベントを担うガス流路である。例えばこのG3Aのバルブの表記は、ダイヤフラム側からガスが入り、バルブが開くと反ダイヤフラム側(通常中央)から下方にガスが通じることを示す。バルブG1CAにおけるバルブ動作も同じである。次にバルブG1EAは特殊3方弁で、ダイヤフラム側から入ったガスは、そのままバルブG1CAに流れることができる。バルブG1EAが開くと反ダイヤフラム側(通常中央)から下方の集合配管を形成しているラインにガスが通じることを示す。
【0034】
B系列は、プロセスガスCの希釈ガス制御流路、またD系列はプロセスガスEの希釈ガス制御流路である。ステージ2、チャンバー3、ガス配管、バルブ類、また流量コントローラ(FC*で表記)では、使用するガス種の性質により加熱制御手段が必要になる場合があるが、本実施例では加熱制御手段は省略した。またガスボックス30の上半分のブッロクは、可燃性ガスを取り扱っており、処理中は常にガスを流す制御を実施するので、チャンバー3の上部の副室4へガスを供給する9bのノズルの直前には遮断用のガスバルブを設置しなかった。
【0035】
一方でガスボックス30の下半分の支燃性ガスを扱うブロックからのチャンバー3へガスを導入する9aのノズルの直前には、GCF2の最終段の供給ガスバルブを設けた。チャンバー3が大気開放された際に、供給ガスバルブGCF2は閉じており、配管内に大気成分(特に水分)が流入し、配管内等の接ガス部が腐食することを防止している。
【0036】
ここで、各ガス系列のガスをチャンバー3へ流出させる経路におけるストップバルブ(遮断バルブ)を見ていく。
【0037】
A系列(Ar) :G1CA G2A G3A
B系列(Ar) :G1CC G2B G3B
C系列(NH3) :G1CC G2C G3C
D系列(Ar) :G1CE G2D G3D
E系列(CH4) :G1CE G2E G3E
F系列(H2) :G1CF G2F G3F
L系列(Ar) :GCF2 G1CL G2L G3L
M系列(Ar) :GCF2 G1CN G2M G3M
N系列(NF3) :GCF2 G1CN G2N G3N
O系列(Ar) :GCF2 G1CP G2O G3O
P系列(Cl2) :GCF2 G1CP G2P G3P
Q系列(O2) :GCF2 G1CQ G2Q G3Q
以上示したように、
図1に示す表面処理装置200では、全てのガスは、チャンバー3まで到達するガス経路上に少なくとも3つ以上の遮断弁が配置されている。それは、
図1に示す表面処理装置200がガスのパルス状(交互間欠)の供給を目的に構成されているからである。パルス状のガス供給をしないのであれば、供給ガスバルブが減じることが可能ではあるが、この場合も全てのガス系列は、流量制御器FC*の上流側のG3*バルブと流量制御器FC*の下流側のバルブの当該ガス経路上少なくとも2個の遮断弁を配置することにした。
【0038】
図1の表面処理装置200は、ハロゲンランプ10によって被加工物1に熱エネルギーを供給してガスを活性化させ反応を促進させるプロセス装置として記載したが、それに限定されない。他のガス励起手段、例えば高周波電源によって発生させるプラズマを利用したり、ガス分散室4内を加熱したりして予め活性なガスを形成して被加工物1に吹き付けるタイプのプロセス処理装置であっても、その加工のための励起のタイミングなどは異なるが、本発明のプロセスガスの供給装置の構成やそのガスの制御方法に何ら変わるところはない。
【0039】
また、チャンバー3からの排気手段については本実施例においてはドライポンプ25単体を用いて排気したが、チャンバー3との間にターボ分子ポンプ(図示せず)などの更に大排気量を有するプロセス装置としてもよい。またメカニカル・ブースター・ポンプ等の他の排気手段を用いても本発明のガスの供給装置の基本的な構成や制御方法に何ら変わるものではない。
【0040】
図2は、
図1に記載した表面処理装置200の各供給ガスバルブを制御するためのエアー回路の内、電磁弁を搭載するマニホールド部を模式的に示した構成図の一例である。
図2が煩雑になるので、電磁弁のすべてに記号を付してないが、形状が同じものは、記号を付した電磁弁と同一仕様の電磁弁である。電磁弁の制御されたエアーの供給先の対応する供給ガスバルブの符号(名称)を、電磁弁の上部に直接記載した。
【0041】
71は、電磁弁で、具体的には3位置停止センター排気の5ポート電磁弁であり、二つの電磁弁で二つの供給ガスバルブを制御している。センター位置では二つの供給ガスバルブともエアーが供給されずに閉じており、片側の電磁弁をONして、対応ガスバルブにエアーを供給して開いたときは、反対側に対応するガスバルブにはエアーは供給されないままで開くことがない。したがってこの電磁弁71に対応した供給ガスバルブどうしは、二つが同時に開くことがない。電源がOffされたときは、内部のスプールがセンター位置に戻り、二つの供給ガスバルブ共が閉じた状態になる。つまり、ガス供給ライン上に少なくとも二つの供給ガスバルブ(2個のエアーオペレートバルブ)を直列状に配置して、後述するエネルギーカットバルブ(102、103、および104)による駆動エアーの遮断で、二つの供給ガスバルブ(2個のエアーオペレートバルブ)が同時に閉じるように配設している。
【0042】
73も同じく電磁弁で、3ポート電磁弁であり、マニホールドの長い方向に対して直角に左右に1対ずつ効率的に配置されている。それぞれの電磁弁73を励起すると、対応する供給ガスバルブに開駆動エアーが流れて開く。電源がOffされたときは、内部のスプールがスプリングで戻って、エアー供給を断ち、供給ガスバルブ内部のエアーを抜き去るので、供給ガスバルブが閉じた状態になる。
【0043】
51、52は、マニホールドで、可燃性ガス用の供給ガスバルブに対応する電磁弁が配置されている。63、64はそれぞれのマニホールドのサイレンサーで、エアー抜き時の騒音を低減させている。61、62は、それぞれのマニホールドのエアー源供給口で、上流側エアー回路のF(Flammable gas用)ポート(Fを○で囲んだ記号で示す)に接続されている。マニホールド51、52は、図示していないが、それぞれの電磁弁を励起させる電気回路や配線を有している。
【0044】
同様に、55、56のマニホールドは、支燃性ガス用の供給ガスバルブに対応する電磁弁が配置されており、59のマニホールドは、不活性ガス用の供給ガスバルブに対応する電磁弁が配置されている。この例においては、希釈目的のArガスラインの供給ガスバルブはそれぞれの希釈対象ガスと同一のマニホールド上に配設し、マニホールド59には、供給ガスラインをパージしたり、チャンバー3を大気開放したりする目的で配置した最奥部から供給されるArガスの供給用のガスバルブと、チャンバー3やガス配管27に対して最終段で開放する供給ガスバルブを配設した。マニホールド55とマニホールド56は上流側エアー回路のO(オー)ポート(O(オー)を○で囲んだ記号で示す)に接続されている。またマニホールド59は、上流側エアー回路のIポート(Iを○で囲んだ記号で示す)に接続されている。これらマニホールド55,56および59にも、それぞれの電磁弁を励起させる電気回路や配線を有している。
【0045】
図1の表面処理装置200のそれぞれのガスの使用用途に合わせて、
図2では、供給ガスバルブに対応する電磁弁の配置を振り分けたが、それぞれの装置の目的や、大気開放の作業手順によってマニホールドでの電磁弁の振り分けは適切に配慮されて、変更されるべきである。
【0046】
図3は、マニホールド51,52,55,56および59のそれぞれの上流側エアー回路を模式図で示した。80はエアー源で、建屋側からのエアーを81の入口継手で受け取って、表面処理装置200等の内部機構に82、83、および84のエアー継手部からエアーを分配供給する75のエアー取合(Interface)機構部である。この取合機構部75は、建屋側で準備される場合もあるし、表面処理装置200側で準備される場合もある。取合機構部75の内部で処理されたエアーは、エアー継手部82、83、および84を経由して、各マニホールドに接続される。本実施例においては、供給ガスバルブのエアー圧制御についてのみ記載しているが、入口継手81で受け取ったエアーを、排気系のエアーバルブ22の駆動用エアーとして分岐させる経路が別途あっても良い。
【0047】
112、113、および114は、ロックアウト機能を有するメカニカルバルブで、それぞれの下流へのエアー供給を遮断し、下流側が加圧されていた場合は大気中に放出させて加圧を無くすることのできる3ポート弁で構成されている。92、93、および94は、それぞれメカニカルバルブ112、113、および114の出口圧をモニターする圧力計で、圧力を検知して接点信号を出す圧力スイッチとしてもよい。圧力計が、アナログの圧力値を出力する単なるアナログ計の場合は、120の制御器でこのアナログ値からソフトウエアや判断回路で規定値以上の圧力があることをモニターして、接点信号を形成する。102、103、および104は、それぞれの圧力計92、93、および94の下流側に設けたエアーカットバルブ(エネルギーカットバルブとも言う)で、3ポート電磁弁が使われている。メカニカルバルブ112から供給されるエアーは最終的にエアー継手部82を経て、
図2のFポートとして使用される。同様にメカニカルバルブ113から供給されるエアーは最終的に継手部83で、Oポートとして、メカニカルバルブ114から供給されるエアーは最終的に継手部84で、Iポートとして使用される。
【0048】
次に、このエアー取合機構部75の機能について説明する。説明を可燃性ガス用のエアー供給に限って説明するが、他の支燃性ガス用のエアーライン、および不活性ガス用のエアーラインについても同様の制御を実施する。可燃性用ガスのエアーの圧力計92の規定圧は、この場合、下流に設けた電磁弁71、73や供給ガスバルブの作動圧を参考に、400KPa(ゲージ圧)に設定した。建屋側の供給圧が何らかの理由でこの規定圧より低下したとき、およびメカニカルバルブ112を操作者(オペレータ)が操作し、ロックアウトしたときには大気圧(0KPa:ゲージ圧)まで低下するので、圧力スイッチがOffする。すると制御器120は、エアーカットバルブ102への励起通電をOffする。エアー供給が中断され、加圧されたFポートのエアーが排出される。従って、
図2のマニホールド51、52へのエアー供給が無くなる。また制御器120は、圧力計92での圧力低下を検出すると、マニホールド51、52への電磁弁励起用の電源もOffするので、供給ガスバルブへのエアーが取り去られて、可燃性ガスのチャンバー3への供給がロックアウトできる。仮にどれかの電磁弁が固着して、エアーを対応する供給ガスバルブに供給するエアー回路が形成されていたとしても、エアーそのものがメカニカルバルブ112、もしくはエアー圧低下時にはエアーカットバルブ102で取り去られているので、当該供給ガスバルブも閉じることができる。このように、電気的にもエアー供給を断つ方向に制御され、また供給ガスバルブが開くためのエアー源そのものも取り去られるので、より確実に、安全に供給ガスバルブを閉じて、ガス流出を止めることができる。
【0049】
また、制御器120に、外部からの正常信号、例えばガス漏れ警報器のガス漏れなしの信号、感震器の地震なし、火災報知器の火災なし、および表面処理装置200の内部のガスボックス30内の陰圧(排気されていること)、薬液漏れ警報器の薬液漏れなしなどの、それぞれの正常信号を取り入れておく。そして、これらのどれかひとつでも正常信号が切れたとき、すなわち異常発生時には、エアーカットバルブ102をOffするように制御した。これら異常時にもエアー圧が取り去られて、供給ガスバルブをハードインターロックとして閉じることができる。
【0050】
さらに、制御器120は、自らもしくは他の制御器とともに、個々の供給ガスバルブの開閉も制御しているが、エアーカットバルブ102を閉じたタイミングで、各可燃性供給ガスバルブをすべて閉のコマンドに修正し、また可燃性ガスの供給ガスバルブの状態も閉と認識するように切り替える。これによって、エアー圧が復旧したり、メカニカルバルブ112のロックアウトが解除されたりして、規定圧を取り戻してエアーカットバルブ102が再びONした場合、もしくは異常信号が取り除かれて、エアーカットバルブ102がONして、エアー供給を再開した場合には、このエアー再開だけで供給ガスバルブが開くことはない。いわゆる自動復旧しないという安全要求を満たすことができる。
【0051】
図1、
図2および
図3の構成のガス供給系を有するチャンバー3の大気開放の手順について説明する。ウエットメンテナンス実施するために一連の被加工物1の処理を終了する。その理由は量産ラインで規定した処理枚数だけの処理が完了したから、異物が増加したから、もしくは消耗品の交換時期を迎えたからでも良い。まず被加工物1をチャンバー3から回収してガスの供給を止めて真空排気する。本実施例の場合は、次に可燃性ガスをロックアウトする。具体的には、メカニカルバルブ112を閉操作してロックアウト(施錠封印)する。これでエネルギーカットバルブ102がOffし、エアー回路を断ち、マニホールド51およびマニホールド52に搭載された全ての電磁弁71、73がOffし、対応する可燃性ガス供給ガスバルブのエアーがとり去られて可燃性ガスの供給が止められる。次に支燃性ガスを用いて、チャンバー3やステージ2を加熱しながらパージによるクリーニングを実施する。クリーニングは、プラズマやリモートプラズマを用いたクリーニングであっても良い。クリーニングが終了したら、支燃性ガスをメカニカルバルブ113でロックアウトして、支燃性ガスの場合と同様に供給を停止させる。次に、不活性ガス(この場合はArガス)を用いてチャンバー3が大気圧になるまでベントする。必用があればもう数度の真空排気とベントを繰り返す。もしくはベントしながら排気することでも良い。最終的にチャンバー3を大気に暴露(チャンバー3の上フタを開ける等)する前に、不活性ガスをメカニカルバルブ114でロックアウトする。
【0052】
この本発明によるガス種ごとのロックアウトを実施することで、誤操作によるクリーニング後の間違ったガスの流出や、チャンバー3の暴露中のガス流出が防止できる。また本実施例では、可燃性ガス、支燃性ガス、不活性ガスというガス種の区分で供給ガスバルブを振り分けたが、他に自然性ガスや毒性ガスなどの別の範疇でエアー制御単位を取りまとめても良い。それぞれの表面処理装置200の使用状況によって、適宜に判断、区分されるべきである。
【0053】
図4は、本発明の他の実施例を示すエアー供給部を示す。76のエアー取合機構部は、可燃性ガスと支燃性ガスに対する供給ガスバルブのみロックアウトした。つまり、
図4では、
図3において、入口継手81とIポートのエアー継手部84との間に設けられていた、エアーカットバルブ104、メカニカルバルブ114、および圧力計94が削除されている。
図4の他の構成は、制御器の参照番号が120から121へ変更されている以外は、
図3と同じであるので、繰り返しの説明は省略する。この場合の不活性ガスには、大気開放するためにクリーンエアーを用いており、大気開放後にロックアウトする必要が無かった。また、他の本構成の採用例として以下がある。建屋のクリーンルーム内の換気量に対して、不活性ガスの流量が圧倒的に小さく、あえてチャンバー3内への水分の付着を抑制するために、大気開放後も不活性ガスを流し続けるため不活性ガスに対してロックアウトしない場合がある。このときも
図4と同様の構成が望まれる。
【0054】
図5は、本発明の別の他の実施例を示すエアー供給部を示す。77のエアー取合機構部は、可燃性ガスだけ特に厳重にロックアウトしたいという顧客の要求に対応した構成である。入口継手81とFポートのエアー継手部82との間に、エアーカットバルブ102、メカニカルバルブ112、および圧力計92が設けられている。メカニカルバルブ112とIポートおよびOポートのエアー継手部85とが接続されている。制御器の参照番号が120から122へ変更されている。支燃性ガスや不活性ガスは、ハードインターロックではないが、圧力計92での低圧検知等でソフトインターロックを働かせ、不用意な流出がないように制御されているのは言うまでもない。
【0055】
図6は、本発明のさらに別の他の実施例を示すエアー供給部を示す。78のエアー取合機構部は、大気開放後にすべてのプロセスガスをロックアウトしたいという顧客の要求に対応した構成である。入口継手81とFポート・Iポート・Oポートの3ポートに接続されるエアー継手部86との間に、エアーカットバルブ102、メカニカルバルブ112、および圧力計92が設けられている。この場合、123の制御器は、異常時に前出の正常信号がOffされる信号切れで、エネルギーカットバルブ102をOffしている。
【0056】
図7は、本発明の
図6のエアー回路の他の応用例を示すエアー供給部を示す。78’のエアー取合機構部は、118の3ポート弁が入口継手81とメカニカルバルブ112との間に追加されている。エアー継手部86がエアー継手部87とされ、エアーカットバルブ102がエアーカットバルブ102’とされ、制御器123が制御器123’とされている。大気開放後にすべてのプロセスガスをロックアウトしたいという顧客の要求に対応した構成であるのは
図6と同じである。この場合に、制御器123’は、圧力計92の規定値以下の圧力を検知したらエネルギーカットバルブ102’をOffするだけにし、異常時に、前出の正常信号がOffされる信号切れでは、3ポート弁118の方をOffしている。遮断バルブをエネルギーカットバルブ102’と3ポート弁118に分けて役割を分担させた。
【0057】
図8は、本発明の他の応用例を示すエアー供給部を示す。79のエアー取合機構部は、エアー源80からのエアーを、まずメカニカルバルブ115を介して、Iポートから不活性ガス用マニホールド59に直接エアーを供給している。圧力計95で検出した低圧の不具合時には、ハードインターロックではないがソフトインターロックで、警報を出し、マニホールド59の電磁弁を閉じる制御を、制御器124で実施している。メカニカルバルブ115でロックアウトするとエアー供給圧の低下を検知し、マニホールド59の全ての電磁弁をOffさせて、不活性ガスの供給ガスバルブが閉じる。メカニカルバルブ115の下流に、2個目のメカニカルバルブ116をシリーズに設置した。圧力計96で低圧(加圧ゼロとなるメカニカルバルブ116でのロックアウトを含む)を検知すると、カットバルブ106がOffして、Fポートの可燃性ガス用とOポートの支燃性ガス用の駆動エアーの供給が断たれる。チャンバー3の大気開放完了後にさらにメカニカルバルブ115でロックアウトすると、不活性ガスのIポートからのエアー供給先のマニホールド59へのエアー供給が断たれるで、全ての供給ガスバルブが閉じられて、チャンバー3へのガス供給を断つことができるようにした。
【0058】
以下に本発明の特徴について説明する。
【0059】
1)被加工物が処理される処理室へガスを供給する複数のエアーオペレートバルブを開放するためのガス供給バルブ用の開駆動エアーの制御方法であって、
オペレータが意図してエアー供給を停止、下流側を大気開放させるメカニカルバルブと、
前記メカニカルバルブより下流に設置されるエアー圧を計測する圧力計、もしくは圧力スイッチと、
前記圧力計、もしくは前記圧力スイッチのさらにエアー回路の下流に設置され、エアーを遮断、下流側を大気開放できるエネルギーカットバルブと、を備え、
前記メカニカルバルブによるエアーの遮断、もしくはエアー圧そのものの低下を前記圧力計、もしくは前記圧力スイッチで検知して、前記エネルギーカットバルブへのソレノイドをOffしてエアーを遮断、下流側を大気開放して、前記エアーオペレートバルブを開放するための前記エネルギーカットバルブの下流側エアーを排除する。
【0060】
2)上記1)において、
前記エネルギーカットバルブをOffする条件に、他の機器による異常発生の検知信号、もしくは他の機器による正常信号のOffを追加した。
【0061】
3)上記1)または上記2)において、
ガス供給ライン上に少なくとも2個の前記エアーオペレートバルブを直列状に配置して、前記エネルギーカットバルブによる駆動エアーの遮断で、前記2個の前記エアーオペレートバルブが同時に閉じるように配設した。
【0062】
4)上記1)または上記2)において、
前記メカニカルバルブ、前記圧力計、もしくは前記圧力スイッチ、および前記エネルギーカットバルブの組み合わせを複数形成して、そのそれぞれの組み合わせによるエアー供給ラインの下流で、ガスをロックアウトする手順に従い、同一タイミングで閉じるガスラインのエアーオペレートバルブの開駆動エアーを供給する複数の電磁弁をグループ分けして割り当てた。
【0063】
5)被加工物が処理される処理室へガスを供給する複数のエアーオペレートバルブを開放するためのガス供給バルブ用の開駆動エアーの制御装置であって、
オペレータが意図してエアー供給を停止、下流側を大気開放させるメカニカルバルブと、
前記メカニカルバルブより下流に設置されるエアー圧を計測する圧力計、もしくは圧力スイッチと、
前記圧力計、もしくは前記圧力スイッチのさらにエアー回路の下流に設置され、エアーを遮断、下流側を大気開放できるエネルギーカットバルブと、を備え、
前記メカニカルバルブによるエアーの遮断、もしくはエアー圧そのものの低下を前記圧力計、もしくは前記圧力スイッチで検知して、前記エネルギーカットバルブへのソレノイドをOffしてエアーを遮断、下流側を大気開放して、前記エアーオペレートバルブを開放するための前記エネルギーカットバルブの下流側エアーを排除する。
【0064】
6)上記5)において、
前記エネルギーカットバルブをOffする条件に、他の機器による異常発生の検知信号、もしくは他の機器による正常信号のOffを追加した。
【0065】
7)上記5)または上記6)において、
ガス供給ライン上に少なくとも2個の前記エアーオペレートバルブを直列状に配置して、前記エネルギーカットバルブによる駆動エアーの遮断で、前記2個の前記エアーオペレートバルブが同時に閉じるように配設した。
【0066】
8)上記5)または上記6)において、
前記メカニカルバルブ、前記圧力計、もしくは前記圧力スイッチ、および前記エネルギーカットバルブの組み合わせを複数形成して、そのそれぞれの組み合わせによるエアー供給ラインの下流で、ガスをロックアウトする手順に従い、同一タイミングで閉じるガスラインのエアーオペレートバルブの開駆動エアーを供給する複数の電磁弁をグループ分けして割り当てた。
【0067】
以上、本発明者によってなされた発明を実施例および実施形態に基づき具体的に説明したが、本発明は、上記実施例および実施形態に限定されるものではなく、種々変更可能であることはいうまでもない。
【符号の説明】
【0068】
1:被加工物
2:ステージ
3:チャンバー
4:ガス分散室
5:天板
6a、6b、6c:スペーサ
7a、7b:ガス分散板
8:シャワープレート
9a、9b:ノズル
10:ハロゲンランプ
11:透過窓
15:ゲートバルブ
16:ゲートバルブ駆動軸
20a、20b:排気口
20:排気配管
21:圧力調整弁
22:メインバルブ
25:ドライポンプ
26:接続配管
27:排気配管
28:圧力計(チャンバー用)
29:圧力計(排気配管用)
30:ガスボックス
35:ベース
38:圧力計(可燃性/チャンバー供給集合配管)
39:圧力計(可燃性/排気系捨てガス集合配管)
48:圧力計(支燃性/チャンバー供給集合配管)
49:圧力計(支燃性/排気系捨てガス集合配管)
42、43:空きポート
HV*:手動バルブ
G3*:流量コントローラの上流側バルブ
FC*:流量コントローラ
G2*:流量コントローラの下流側バルブ
G1C*:チャンバーに向かうラインのバルブ
G1E*:捨てガスで排気系への向かうラインのバルブ
GCF*:チャンバーに向かうラインの最終段ガスバルブ
GCF*:捨てガスで排気系への向かうラインの最終段ガスバルブ
51、52:マニホールド(可燃性ガス供給ガスバルブ制御用電磁弁搭載)
55、56:マニホールド(支燃性ガス供給ガスバルブ制御用電磁弁搭載)
59:マニホールド(不燃性ガス供給ガスバルブ制御用電磁弁搭載)
61、62、65、66、69:エアー源供給口
63、64、67、68、70:サイレンサー
71:電磁弁(3位置停止センター排気の5ポート電磁弁)
73:電磁弁(3ポート電磁弁)
75、76、77,78、78’、79:エアー取合機構部
80:エアー源
81:入口継手
82~89:エアー継手部
92~96:圧力計(圧力スイッチ)
102、102’、103、104、106: エアーカットバルブ(エネルギーカットバルブ)
112、113、114、115、116:メカニカルバルブ
118:3ポート電磁弁
120、121、122、123、123’、124:制御器
200:表面処理装置