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特開2023-8946スペクトルデータから試料組成を決定するための方法およびシステム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023008946
(43)【公開日】2023-01-19
(54)【発明の名称】スペクトルデータから試料組成を決定するための方法およびシステム
(51)【国際特許分類】
   G01N 23/2252 20180101AFI20230112BHJP
   G01N 23/2251 20180101ALI20230112BHJP
【FI】
G01N23/2252
G01N23/2251
【審査請求】未請求
【請求項の数】16
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022105440
(22)【出願日】2022-06-30
(31)【優先権主張番号】17/365,832
(32)【優先日】2021-07-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】501233536
【氏名又は名称】エフ イー アイ カンパニ
【氏名又は名称原語表記】FEI COMPANY
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(74)【代理人】
【識別番号】100135079
【弁理士】
【氏名又は名称】宮崎 修
(72)【発明者】
【氏名】オレクシー カプレンコ
(72)【発明者】
【氏名】ヤン クルサチェク
(72)【発明者】
【氏名】トマス トゥマ
(72)【発明者】
【氏名】ミコラ カプレンコ
(72)【発明者】
【氏名】オンドレイユ マチェク
【テーマコード(参考)】
2G001
【Fターム(参考)】
2G001AA03
2G001BA05
2G001BA07
2G001CA01
2G001CA03
2G001DA09
2G001FA08
2G001FA29
2G001HA13
(57)【要約】      (修正有)
【課題】荷電粒子顕微鏡システムによって入手されたスペクトルデータから試料組成を決定するための方法およびシステムが開示される。
【解決手段】試料中の化学元素は、訓練されたニューラルネットワーク(NN)でスペクトルデータを処理することによって識別される。識別された化学元素が試料の既知の元素組成と一致しない場合、訓練されたNNは、試料のスペクトルデータおよび既知の元素組成で再訓練される。再訓練されたNNは、他の試料内の化学元素を識別するために使用することができる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
方法であって、
荷電粒子ビームで第1の試料に照射することと、
前記第1の試料からの第1のタイプの放出物を検出し、前記検出された第1のタイプの放出物から1つ以上の第1のスペクトルを形成することと、
訓練されたニューラルネットワークで前記第1のスペクトルを処理することによって、前記第1の試料内の1つ以上の第1の化学元素を識別することと、
前記第1の試料からの第2のタイプの放出物を検出し、前記検出された第2のタイプの放出物に基づいて生成された試料画像を表示することと、
前記試料画像内の1つ以上のピクセルを選択することと、
前記選択されたピクセルに対応する1つ以上の化学元素を表示することと、
既知の元素組成とは異なる前記表示された化学元素に応答して、前記選択されたピクセルおよび前記既知の元素組成に対応するスペクトルで前記訓練されたニューラルネットワークを再訓練することと、
前記荷電粒子ビームで第2の試料の1つ以上の場所を照射することと、
前記第2の試料からの前記第1のタイプの放出物を検出することによって、1つ以上の第2のスペクトルを入手することと、
前記再訓練されたニューラルネットワークで前記第2のスペクトルを処理することによって、前記第2の試料内の1つ以上の第2の化学元素を識別することと、を含む、方法。
【請求項2】
訓練されたニューラルネットワークで前記第1のスペクトルを処理することによって前記第1の試料内の1つ以上の第1の化学元素を識別することが、
前記第1のスペクトルのうちの1つ以上を前記訓練されたニューラルネットワークに入力することと、
前記訓練されたニューラルネットワークから1つ以上の化学元素および確率を出力することであって、各化学元素が、1つの確率に対応する、出力することと、
前記第1の化学元素として、閾値確率よりも大きい確率を有する前記化学元素を選択することと、を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記第2の試料中の前記第2の化学元素の空間分布を示す、元素マップを生成することをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記第2のスペクトルの各々を、前記第2の化学元素に基づいて、1つ以上のスペクトル成分および存在量に分解することをさらに含み、各成分が、1つの存在量に対応し、各スペクトル成分が、前記第2の化学元素のうちの1つ以上を含む成分のスペクトルである、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記試料画像が、前記第1の化学元素にさらに基づいて表示され、前記試料画像が、前記第1の化学元素の空間分布を示す、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
複数の化学元素の訓練スペクトルでニューラルネットワークを訓練することによって前記訓練されたニューラルネットワークを生成することをさらに含み、前記訓練スペクトルが、シミュレートされたスペクトルおよび/または実験スペクトルを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
ユーザ入力を介して、前記第1の試料の前記既知の元素組成を受信することをさらに含み、前記選択されたピクセルおよび前記既知の元素組成に対応するスペクトルで前記訓練されたニューラルネットワークを再訓練することが、前記選択されたピクセルに対応する前記スペクトルから統合されたスペクトルを生成することと、前記統合されたスペクトルおよび前記既知の元素組成で前記訓練されたニューラルネットワークを再訓練することと、を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記選択されたピクセルに対応する前記第1の化学元素からの前記1つ以上の化学元素と同時に、前記統合されたスペクトルを表示することをさらに含む、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
ディスプレイ上に前記第1の化学元素を表示することが、周期表内に前記第1の化学元素を表示することを含み、前記ユーザ入力が、前記周期表内に表示される前記第1の化学元素を選択することか、または選択解除することを含む、請求項7に記載の方法。
【請求項10】
荷電粒子顕微鏡システムであって、
試料を位置決めするための試料ホルダと、
荷電粒子ビームを前記試料に向けて照射するための荷電粒子源と、
前記荷電粒子ビームの照射に応答する前記試料からの第1のタイプの放出物を検出するための第1の検出器と、
前記荷電粒子ビームの照射に応答する前記試料からの第2のタイプの放出物を検出するための第2の検出器と、
命令を記憶する非一時的なコンピュータ可読媒体を含む、コントローラであって、前記コントローラのプロセッサによって実行されるとき、前記コントローラに、
前記荷電粒子ビームで第1の試料を照射することと、
前記第1の試料からの前記第1のタイプの放出物を検出し、前記検出された第1のタイプの放出物から1つ以上の第1のスペクトルを形成することと、
前記第1の試料からの前記第2のタイプの放出物を検出し、前記検出された第2のタイプの放出物に基づいて生成された試料画像を表示することと、
前記試料画像内の1つ以上のピクセルの選択を受信することと、
前記選択されたピクセルに対応する1つ以上のスペクトルを取得することと、
訓練されたニューラルネットワークで前記取得されたスペクトルを処理することによって、前記第1の試料内の1つ以上の第1の化学元素を識別することと、
既知の元素組成とは異なる前記第1の化学元素に応答して、前記選択されたスペクトルおよび前記既知の元素組成で前記訓練されたニューラルネットワークを再訓練することと、
前記再訓練されたニューラルネットワークを前記非一時的なコンピュータ可読媒体内に保存することと、を行わせる、コントローラと、を備える、荷電粒子顕微鏡システム。
【請求項11】
前記非一時的なコンピュータ可読媒体が、前記コントローラの前記プロセッサによって実行されるとき、前記コントローラに、
前記荷電粒子ビームで第2の試料の1つ以上の場所を照射することと、
前記第2の試料からの前記第1のタイプの放出物を検出することによって、1つ以上の第2のスペクトルを入手することと、
前記再訓練されたニューラルネットワークで前記第2のスペクトルを処理することによって、前記第2の試料内の1つ以上の第2の化学元素を識別することと、を行わせる、さらなる命令を含む、請求項10に記載の荷電粒子顕微鏡システム。
【請求項12】
前記非一時的なコンピュータ可読媒体が、前記コントローラの前記プロセッサによって実行されるとき、前記コントローラに、前記第2の試料からの前記第2のタイプの放出物を検出することと、前記検出された第2のタイプの放出物に基づいて、前記第2の試料中の前記第2の化学元素の分布を示す組成マップを生成することと、を行わせる、さらなる命令を含む、請求項11に記載の荷電粒子顕微鏡システム。
【請求項13】
前記荷電粒子ビームが、電子ビームであり、前記第1のタイプの放出物が、X線であり、前記第2のタイプの放出物が、散乱電子である、請求項10~12のいずれか一項に記載の荷電粒子顕微鏡システム。
【請求項14】
前記訓練されたニューラルネットワークが、スペクトルを受信し、1つ以上の化学元素および各化学元素に対する確率を出力する、請求項10に記載の荷電粒子顕微鏡システム。
【請求項15】
訓練されたニューラルネットワークで前記第1のスペクトルを処理することによって前記第1の試料内の1つ以上の第1の化学元素を決定することが、前記第1の化学元素として、閾値確率よりも高い確率で前記訓練されたニューラルネットワークから出力された前記化学元素を選択することを含む、請求項14に記載の荷電粒子顕微鏡システム。
【請求項16】
非一時的なコンピュータ可読媒体であって、プロセッサによって実行されるとき、コンピューティングデバイスに、
試料からの第1のタイプの放出物に対応する第1の検出器データにアクセスすることであって、前記第1の検出器データが、荷電粒子ビームでの前記試料の照射に応答して取得される、アクセスすることと、
前記第1の検出器データに基づいて生成された試料画像の表示を引き起こすことと、
前記試料画像内の1つ以上のピクセルの選択を受信することと、
前記選択されたピクセルに対応する1つ以上の試料領域からの第2のタイプの放出物に対応する第2の検出器データにアクセスすることであって、前記第2の検出器データが、前記荷電粒子ビームでの前記試料領域の照射に応答して取得する、アクセスすることと、
訓練されたニューラルネットワークで前記第2の検出器データを処理することによって、前記試料内の1つ以上の化学元素を識別することと、
前記識別された化学元素の表示を引き起こすことと、
既知の元素組成とは異なる前記表示された化学元素に応答して、前記第2の検出器データおよび前記既知の元素組成で前記訓練されたニューラルネットワークを再訓練することと、
前記再訓練されたネットワークを前記非一時的なコンピュータ可読媒体内に記憶することと、を行わせる、命令を含む、非一時的なコンピュータ可読媒体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書は、概して、スペクトルデータから試料組成を決定するための方法およびシステム、より具体的には、荷電粒子ビームで試料に照射することに応答して入手されたスペクトルデータに基づいて、試料組成を決定するための方法およびシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
荷電粒子顕微鏡は、周知であり、微小物体を撮像するために、ますます重要な技術である。荷電粒子照射に応答した、試料からの複数のタイプの放出物は、試料の構造的および組成的情報を提供する可能性がある。例えば、電子ビーム照射に応答するX線放出物のエネルギースペクトルに基づいて、エネルギー分散型X線分光法(EDSまたはEDX)は、元素分析または化学特性評価に使用することができる。
【0003】
試料中の化学元素を決定するための1つの方法は、検出された各エネルギースペクトルを化学元素の既知のスペクトルと比較することである。例えば、化学元素は、検出されたスペクトル内のピーク場所を各化学元素の既知のピーク場所と比較することによって識別され得る。しかしながら、出願人は、特に、検出されたスペクトルがスパースであるか、または干渉するピークを有するとき、識別された化学元素が、多数の偽陽性および/または偽陰性を含む可能性があることを認識する。
【発明の概要】
【0004】
一実施形態では、方法は、荷電粒子ビームで第1の試料を照射することと、第1の試料からの第1のタイプの放出物を検出し、検出された第1のタイプの放出物から1つ以上の第1のタイプのスペクトルを形成することと、訓練されたニューラルネットワークで第1のスペクトルを処理することによって、第1の試料内の1つ以上の第1の化学元素を識別することと、第1の試料からの第2のタイプの放出物を検出し、検出された第2のタイプの放出物に基づいて生成された試料画像を表示することと、試料画像内の1つ以上のピクセルを選択することと、選択されたピクセルに対応する1つ以上の化学元素を表示することと、既知の元素組成とは異なる表示された化学元素に応答して、選択されたピクセルおよび既知の元素組成に対応するスペクトルで訓練されたニューラルネットワークを再訓練することと、荷電粒子ビームで第2の試料の1つ以上の場所を照射することと、第2の試料からの第1のタイプの放出物を検出することによって、1つ以上の第2のスペクトルを入手することと、再訓練されたニューラルネットワークで第2のスペクトルを処理することによって、第2の試料内の1つ以上の第2の化学元素を識別することと、を含む。このようにして、化学元素は、高精度で迅速に識別され得る。
【0005】
上記の概要は、発明を実施するための形態でさらに説明される概念の選択を簡略化した形で紹介するために提供されていることを理解されたい。特許請求される主題の主要なまたは本質的な特徴を特定することを意味するものではなく、その範囲は、発明を実施するための形態に続く特許請求の範囲によって一意に定義される。さらに、特許請求される主題は、上記でまたは本開示の任意の部分で言及されたいずれかの欠点を解決する実装形態に限定されない。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1】荷電粒子顕微鏡を示す。
図2】スペクトルデータから試料組成を決定するための例示的な方法のフローチャートである。
図3】元素分析のために訓練されたニューラルネットワークを再訓練するための例示的な方法のフローチャートである。
図4】元素分析結果を表示し、訓練されたニューラルネットワークを再訓練するための例示的なユーザインターフェースを示す。
図5図2の方法の例示的なデータフローを例解する。
図6】元素分析のために訓練されたニューラルネットワークを生成するための例示的な方法のフローチャートである。
【0007】
同様の参照番号は、図面のいくつかの図全体にわたって、対応する部分を指す。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下の説明は、荷電粒子ビームで試料を照射することに応答する放出物を検出することによって取得されるエネルギースペクトルなどのスペクトルデータに基づいて、試料組成を決定するための方法およびシステムに関する。米国特許第9048067号では、Owenは、スペクトルデータを鉱物定義から元素に順次分解することによって鉱物を識別する方法を開示する。分解は、検出されたX線スペクトルに対して元素リストの既知の元素スペクトルを適合させることによって、未知の鉱物中の化学元素の割合を決定し、元素リストは、鉱物データベースにおいて鉱物定義を選択することによって取得される。出願人は、正確な組成分析は、正確な元素リストが必要であることを認識する。入手された未知の試料のX線スペクトルがスパースであるとき(つまり、スペクトル当たりのカウントの総数が少ないとき)、元素リストは、不正確になり得る。スパーススペクトルでは、ピークを正確に位置付けること、または互いに近接もしくは干渉しているピークを区別することは困難である。X線カウントの数を増加させること(したがって、より密なスペクトルを有すること)は、元素の識別精度を改善させることができる。しかしながら、これはまた合計データ入手時間を著しく増加させる可能性がある。さらに、同じ鉱物の検出されたX線スペクトルは、検出器の経年劣化および異なる動作条件を含む要因により、顕微鏡ごとに異なる可能性があるため、既知の元素スペクトルは、検出されたX線スペクトルに適切に適合しない可能性がある。
【0009】
上記の問題に対処するために、特定の顕微鏡のシステム動作条件に適合させた、訓練されたニューラルネットワーク(NN)を使用して、元素分析を実行する。一例では、第1の試料を顕微鏡に装填した後、荷電粒子ビームが、第1の試料の1つ以上の場所を照射する。各場所からのX線などの第1のタイプの放出物が、エネルギースペクトルの形式で取得され、各エネルギースペクトルは、1つの試料場所に対応する。訓練されたNNは、入手したエネルギースペクトルの各々を入力として受信し、スペクトル内で識別された化学元素、および各識別された化学元素の確率を出力する。入手したエネルギースペクトルを処理した後、第1の試料内に含まれる第1の化学元素のリストを、生成することができる。試料からの第2のタイプの放出物が、試料の1つ以上の場所から同時にまたは別々に検出され得る。試料画像は、検出された第2のタイプの放出物に基づいて、生成され得る。試料画像は、試料の構造を示す。試料画像は、光学画像、走査型電子顕微鏡(SEM)画像、後方散乱電子(BSE)画像、または透過型電子顕微鏡(TEM)画像であり得る。いくつかの例では、試料画像はまた、訓練されたNNから決定された化学元素情報も含む。1つ以上のピクセルが、試料画像内で選択される。選択されたピクセルに対応する化学元素が、表示される。いくつかの例では、第1の試料は、既知の元素組成を有する参照試料である。表示された化学元素が、対応する試料場所において既知の元素組成と一致しない場合、訓練されたNNは、選択されたピクセルに対応するスペクトルで再訓練される。再訓練されたNNは、次いで、別の試料からの、顕微鏡から入手されたスペクトルデータの元素分析のために使用される。このようにして、再訓練されたNNは、顕微鏡固有のパラメータおよび動作条件に適合する。例えば、再訓練されたNNは、スペクトルデータ内の検出器によって誘発されるエネルギーシフトに適合されることができる。さらに、再訓練されたNNは、特定の使用の場合に適合する。例えば、再訓練を通じて、NNは特定の鉱物に特徴的な干渉ピークを区別するように適合されているため、化学元素を、より正確に識別し得る。
【0010】
別の例では、第1の試料を顕微鏡に装填した後、電子ビームなどの荷電粒子ビームが、試料の1つ以上の場所を照射する。各場所からのX線などの第1のタイプの放出物が検出され、エネルギースペクトルの形成に使用される。散乱電子などの第2のタイプの放出物は、第1のタイプの放出物と同時に、または別々に検出される。試料画像は、第2のタイプの放出物に基づいて、生成される。試料画像から、オペレータによってなど、1つ以上のピクセルが選択される。一例では、選択されたピクセルに対応する1つ以上のスペクトルが、第1のタイプの放出物に基づいて形成されたエネルギースペクトルから選択される。別の例では、選択されたピクセルに対応する試料領域が、荷電粒子ビームによって照射され、選択されたピクセルに対応するスペクトルが、再収集される。再収集されたスペクトルは、第1のスペクトルよりも密度が高い可能性がある。選択されたピクセルに対応する化学元素は、訓練されたNNを使用して選択されたスペクトルまたは再収集されたスペクトルを処理することによって識別される。識別された化学元素が選択された試料領域で既知の元素組成と異なる場合、訓練されたNNは、選択されたスペクトルおよび既知の組成で再訓練される。
【0011】
別の例では、試料の構造を示す試料画像が、オペレータに表示される。試料画像は、光学画像、SEM画像、BSE画像、またはTEM画像のうちのいずれか1つであり得る。試料画像内の1つ以上のピクセルは、自動的に、またはオペレータによって選択される。次いで、選択されたピクセルに対応する試料領域は、荷電粒子ビームによって照射され、X線などの第1のタイプの放出物を検出することによってスペクトルデータが収集される。選択されたピクセルに対応する化学元素は、訓練されたNNを使用して収集されたスペクトルデータを処理することによって識別される。識別された化学元素が選択された試料領域で既知の元素組成と異なる場合、訓練されたNNは、スペクトルデータおよび既知の組成で再訓練される。
【0012】
再訓練されたNNは、顕微鏡によって入手されたスペクトルデータを処理するために、再訓練のためのスペクトルデータが取得される顕微鏡の非一時的メモリ内などに記憶され得る。再訓練されたNNは、将来の元素分析のために訓練されたNNを置き換えてもよい。いくつかの例では、訓練されたNNおよび再訓練されたNNの両方が、ライブラリ内に記憶される。ライブラリ内のNNは、同じまたは異なる顕微鏡内でさらに再訓練するためのベースライン訓練済みNNとして機能してもよい。顕微鏡は、荷電粒子ビームで第2の試料の1つ以上の場所を照射し、試料場所の各々からエネルギースペクトルを入手し得る。再訓練されたNNは、入手されたスペクトルの各々を処理し、化学元素および対応する確率を出力する。閾値確率よりも高い確率を有する化学元素は、第2の試料の第2の化学元素として識別され得る。組成マップは、第2の化学元素に基づいて、生成され得る。組成マップは、試料中の化学元素または成分の空間分布を示す。一例では、組成マップは、第2の化学元素の空間分布を示す元素マップである。別の例では、試料の入手されたスペクトルは、第2の化学元素に基づいて、複数のスペクトル成分および/または存在量にさらに分解される。各成分は、化学元素、化学元素の混合物、または化学相に対応し得る。各成分は、1つのスペクトル成分および存在量に対応する。スペクトル成分は、成分のスペクトルであり得る。存在量は、成分の量であり得る。一例では、存在量は、試料場所での成分の比である。組成マップは、試料内の成分の空間分布を示してもよい。
【0013】
いくつかの例では、試料の複数の第1の場所の第1のスペクトルは、荷電粒子ビームで試料を走査することによって、入手され得る。試料の化学元素は、訓練されたNNを使用した第1のスペクトルに基づいて、識別される。次いで、第1のスペクトルは、識別された化学元素に基づいて、様々な成分に分解され得る。加えて、または代替的に、各成分の存在量は、分解プロセスを通じて決定され得る。いくつかの例では、試料中の化学元素を識別後、試料の複数の第2の場所の第2のスペクトルが、荷電粒子ビームで試料を走査することによって入手される。第1のスペクトルは、第2のスペクトルよりも密度が高い可能性がある。つまり、カウント数は、第2のスペクトルの各々よりも第1のスペクトルの各々がより多くなる。代替的に、第2の試料場所は、第1の試料場所とは異なり得る。例えば、第2の試料場所は、第1の試料場所よりも広いエリアを覆い、および/またはより高い空間分解能を有する。第2のスペクトルは、識別された化学元素に基づいて分解されて、組成マップを生成することができる。
【0014】
いくつかの例では、訓練されたNNで参照試料の化学元素を識別した後、識別された化学元素は、例えば、周期表で、オペレータまたはユーザに表示される。オペレータは、訓練されたNNを再訓練するために、参照試料の既知の組成/化学元素を顕微鏡に入力してもよい。別の例では、試料画像が、識別された化学元素と同時に表示される。試料画像は、参照試料の構造を示し得る。代替的または追加的に、試料画像は、参照試料中の識別された化学元素の空間分布を示し得る。試料画像は、走査されたすべての試料場所または試料場所のサブセットを含み得る。オペレータは、試料画像内の1つ以上の領域を選択し、統合されたスペクトルおよび選択された領域の既知の元素組成で、NNを再訓練し得る。領域は、試料画像内の線、エリア、または点であり得る。さらに別の例では、統合されたスペクトルが、試料画像および識別された化学元素とともに、例えば、同じウィンドウ内に表示される。統合されたスペクトルは、選択された領域内のすべてのスペクトルの合計である。試料の領域を選択し、統合されたスペクトルを表示することによって、オペレータは、既知の元素組成を正確に反映することができる領域を選択することができる。例えば、オペレータは、化学元素の分布が急激に変化しない領域、または試料の境界を除いた領域を選択してもよい。別の例では、オペレータは、ピークが重なっている領域を選択し、NNを再訓練して、ピークをより良好に識別するか、または差別化してもよい。
【0015】
いくつかの例では、訓練されたNNは、参照試料からスペクトルデータを入手した後、参照試料の既知の元素組成で自動的に再訓練され得る。オペレータが試料画像内の領域を選択する代わりに、試料画像内の領域は、自動的に選択される。次いで、訓練されたNNは、選択された領域からのスペクトルデータに基づいて、再訓練され得る。いくつかの例では、試料構造を示す試料画像が、オペレータに表示されてもよい。オペレータは、試料画像内のスペクトルデータを収集するための場所を選択し得る。試料画像は、光学画像、SEM画像、BSE画像、またはTEM画像であり得る。
【0016】
いくつかの例では、訓練されたNNは、シミュレートされたデータおよび/または実験データを含む、訓練データでナイーブNNを訓練することによって生成される。シミュレートされた訓練データは、複数の化学元素およびそれらの既知のスペクトルに基づいて生成され得る。シミュレートされた訓練データは、個々の化学元素およびそのスペクトル、ならびに化学元素の組み合わせおよび対応する組み合わされたスペクトルを含み得る。例えば、化学元素の組み合わせは、鉱物における元素であり、組み合わされたスペクトルは、鉱物のスペクトルである。実験データは、1つ以上の顕微鏡を使用して既知の組成を有する参照試料を撮像することによって生成され得る。異なる顕微鏡動作条件に対して、異なる訓練されたNNが、生成され得る。動作条件は、加速電圧、ビーム電流、離陸角度、作動距離、および検出器設定(バイアス電圧など)のうちの1つ以上を含み得る。
【0017】
NNは、100などの多くの化学元素、または化学元素の組み合わせを識別するために、オフラインで訓練されてもよい。しかしながら、訓練されたNNは、特に、個々の化学元素のピークが互いに干渉しているとき、化学元素の特定の組み合わせに敏感でない場合がある。訓練されたNNを再訓練することで、NNを調整または適合させて、オペレータが関心を持つ特定のタイプの材料/鉱物を識別することにより敏感になり、したがって、より正確になり得る。
【0018】
いくつかの例では、荷電粒子ビームは、電子ビームおよびイオンビームを含む。エネルギースペクトルは、X線スペクトルおよび電子エネルギー損失スペクトルを含む。他の例では、化学元素分析は、ラマンスペクトルなどの、他のタイプのスペクトルデータの分析に適用されてもよい。
【0019】
図1を参照すると、図1は、本発明が実装される荷電粒子顕微鏡(CPM)の実施形態の非常に概略的な描写であり、より具体的には、走査型電子顕微鏡(SEM)システムの実施形態を示す。システム軸は、軸110として示される。顕微鏡100は、粒子光軸101に沿って伝播する荷電粒子のビーム3(この場合、電子ビーム)を作成する粒子光学カラム1を備える。粒子光軸101は、システムのZ軸と整列されてもよい。カラム1は、試料6を保持/位置決めするための試料ホルダ7および関連付けられたアクチュエータ8を備える真空チャンバ5に取り付けられている。真空チャンバ5は、真空ポンプ(図示せず)を使用して排気される。真空チャンバ5の内部にアイテム(成分、試料)を導入/除去するために開放されてもよい真空ポート9も示されている。顕微鏡100は、必要に応じて、複数のそのようなポート9を備えてもよい。
【0020】
カラム1(この場合)は、電子源10および照明器2を備える。この照明器2は、電子ビーム3を試料6に集束させるためのレンズ11および13と、偏向ユニット15(ビーム3のビームステアリング/走査を実行するため)と、を備える。顕微鏡100は、とりわけ、偏向ユニット15、レンズ11、13、および検出器19、21を制御し、検出器19、21から収集された情報を表示ユニット27上に表示するためのコントローラ/コンピュータ処理装置26をさらに備える。表示ユニットはまた、オペレータ入力を受信するための入力ユニットとしても機能し得る。
【0021】
検出器19および21は、(作用する)ビーム3による照射に応答して、試料6から放射される異なるタイプの「誘導された」放射線を検査するために使用することができる、様々な潜在的な検出器タイプから選択される。検出器19は、試料6から放射されるカソードルミネッセンスを検出するために使用される固体検出器(フォトダイオードなど)であってもよい。代替的に、例えば、シリコンドリフト検出器(SDD)またはシリコンリチウム(Si(Li))検出器などのX線検出器であり得る。検出器21は、例えば、固体光電子増倍管(SSPM)または真空光電子増倍管(PMT)の形態の電子検出器であってもよい。これは、試料6から放射される後方散乱および/または二次電子を検出するために使用され得る。当業者は、例えば、環状/セグメント化された検出器を含む、図示されたような設定において多くの異なるタイプの検出器を選択することができることを理解するであろう。試料6上でビーム3を走査することにより、例えば、X線、赤外線/可視/紫外線、二次電子(SE)および/または後方散乱電子(BSE)を含む誘導放射が、試料6から放射される。そのような誘導放射は、(該走査運動のために)位置に敏感であるため、検出器19および21から取得された情報もまた、位置に依存するであろう。この事実は、(例えば)検出器21からの信号を使用して、試料6(の一部)のBSE画像を作成することを可能にし、この画像は、基本的に、試料6上の走査経路位置の関数としての該信号のマップである。
【0022】
検出器19および21からの信号は、制御線(バス)25を通過し、コントローラ26によって処理され、ディスプレイユニット27上に表示される。そのような処理は、結合、積分、減算、偽色付け、エッジ強調、および当業者に知られている他の処理などの操作を含んでもよい。さらに、(例えば、粒子分析に使用されるような)自動認識プロセスが、そのような処理に含まれてもよい。コントローラは、コンピュータ可読命令を記憶するためのプロセッサ28および非一時的メモリ29を含む。本明細書に開示される方法は、プロセッサ28内で非一時的メモリ29において記憶されたコンピュータ可読命令を実行することによって、実装され得る。
【0023】
顕微鏡100(の比較的大量)内での制御された環境の使用、例えば、(環境SEMまたは低圧SEMで使用される)数ミリバールのバックグラウンド圧力を維持することなど、そのような設定の多くの改良および代替案が当業者に知られていることに留意されたい。
【0024】
図2は、スペクトルデータから試料組成を抽出するための方法200を示す。一例では、スペクトルデータは、図1の顕微鏡100を使用して入手されたEDSスペクトルであり得る。訓練されたNNは、試料中の化学元素を識別するために元素分析を実行した。訓練されたNNは、既知の元素組成を有する試料からの測定値で訓練されたNNを再訓練(または更新)することによって、顕微鏡100および特定の試料タイプに適合させることができる。
【0025】
202において、試料が、顕微鏡に装填される。204において、システムパラメータが、設定される。システムパラメータは、加速電圧、ビーム電流、作動距離、および検出器設定のうちの1つ以上などの動作条件を含む。検出器の設定は、各試料場所における積分時間を含み得る。システムパラメータはまた、走査パスおよび走査領域などの走査パラメータを含んでもよい。
【0026】
いくつかの例では、試料の構造または寸法を示す試料画像が、オペレータに表示され得る。試料画像は、EM画像であり得る。オペレータは、試料画像内の走査領域を選択し得る。オペレータはまた、荷電粒子ビームに対して試料を移動させて、走査領域の選択を容易にするために、試料を現在の視野(FOV)に移動させてもよい。
【0027】
206において、試料の1つ以上の場所が、荷電粒子ビームで走査される。走査された試料の場所は、204で決定される。各試料の場所において、試料から放出された1つ以上のタイプの荷電粒子が、1つ以上の検出器で入手される。入手された荷電粒子は、選択およびX線を含み得る。X線スペクトルなどのエネルギースペクトルは、各試料の場所に対して取得される。入手された荷電粒子はまた、後方散乱電子または二次電子を含み得る。
【0028】
208において、方法200は、206で入手されたスペクトルデータに対して元素分析が実行される必要があるかどうかを決定する。一例では、現在の試料が訓練されたNNを再訓練するための参照試料である場合、元素分析が必要とされる。別の例では、以前に試料に対して元素分析が実行されている場合、元素分析は必要ではない。さらに別の例では、訓練されたNNが現在の試料と同様の組成を有する参照試料で再訓練されているときなど、試料の元素組成が既知である場合、元素分析は必要ではない。元素分析が必要ではない場合、方法200は、216に移動し、既知の元素組成に基づいて、スペクトルデータを分解する。元素分析が必要とされる場合、方法200は、210に移動して、スペクトルデータに対して元素分析を実行する。
【0029】
210において、試料内の化学元素は、任意選択的に、訓練されたNNで識別される。訓練されたNNは、204において設定された動作条件に基づいて、ベースラインNNなどの訓練されたNNの群から選択され得る。訓練されたNNは、畳み込みNNまたは自然言語処理用のネットワークであり得る。訓練されたNNは、入手されたスペクトルのうちの1つ以上を分析し、各スペクトルに対して、化学元素および対応する確率のリストを出力する。特定の試料場所において識別された化学元素は、閾値確率以上の確率を有する化学元素である。例えば、閾値確率は、0.75である。いくつかの例では、閾値は、1を含む、0~1の任意の数である。いくつかの例では、元素分析は、入手されたスペクトルのサブセットに対して実行され得る。
【0030】
212において、方法200は、NNが再訓練を必要とするかどうかを決定する。訓練されたNNが現在の顕微鏡から入手されたスペクトルデータで再訓練されていない場合は、再訓練が必要とされる場合がある。訓練されたNNが、同様の組成の参照試料を有する顕微鏡から入手されたスペクトルデータで再訓練されているとき、再訓練は必要とされない場合がある。再訓練が必要とされない場合、方法200は、216に進む。再訓練が必要とされる場合、方法200は214に進んで、訓練されたNNを再訓練する。再訓練プロセスの詳細は、図3に示される。
【0031】
訓練されたNNを214において再訓練した後、再訓練されたNNは、保存され得る。再訓練されたNNは、同様の動作条件下で入手された同様の組成またはスペクトルデータで試料を分析するために使用され得る。いくつかの例では、訓練されたNNを再訓練するために使用されるスペクトルデータは、216においてさらに分解され得る。
【0032】
216において、206で入手されたスペクトルデータは、元素情報に基づいて、分解される。元素情報は、試料タイプに基づいて、既知であるか、または事前に決定され、コントローラにロードされ得る。代替的に、元素情報は、210において識別された化学元素であってもよい。一例では、入手されたスペクトルの各々は、1つ以上のスペクトル成分および/または各成分の存在量に分解される。各成分は、1つのスペクトル成分および1つの存在量に対応する。各成分は、元素、元素の混合物、または化学相であり得る。成分は、既知または識別された元素の様々な組み合わせを含み得る。スペクトルデータを分解する1つの方式は、2021年2月3日に出願された、Petr Hlavenkaらによる米国特許出願第17/166,885号内に示され、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0033】
218において、1つ以上の組成画像が、生成される。組成画像は、試料中の識別された化学元素の分布を示す元素マップを含む。組成画像はまた、216において取得されたスペクトル成分および/または存在量に基づいて生成された画像を含む。組成画像では、組成データが、試料の構造画像上に重ね合わせられ得る。構造画像は、206において入手された散乱電子などの散乱荷電粒子に基づいて、生成することができる。
【0034】
220において、方法200は、試料の追加走査が必要かどうかを決定する。追加の走査が、再訓練のためのより多くのスペクトルデータを入手するために必要になる場合がある。いくつかの例では、第1の走査において、複数の第1の試料場所が、元素組成を決定するため、および/または訓練されたNNを再訓練するために走査され得る。試料は、第2の走査において再走査されてもよく、複数の第2の試料場所は、組成画像を生成するために走査され得る。第2の走査におけるシステムパラメータは、第1の走査とは異なり得る。一例では、第2の走査は、第1の走査よりも高い空間分解能を有し得る。別の例では、複数の第1の試料場所が、第2の試料位置とは異なる場合がある。第2の走査における試料場所の数は、第1の走査における試料場所の数よりも大きい場合がある。さらに別の例では、第2の走査の各スペクトルのカウント数は、第1の走査よりも少ない場合がある。追加の走査が必要な場合、方法200は、204に進んで、システムパラメータをリセットする。それ以外の場合、方法200は、終了する。
【0035】
このように、元素分析は、訓練されたNNで実行される。訓練されたNNは、顕微鏡を使用する既知の元素組成を有する1つ以上の参照試料の測定に基づいて、顕微鏡、動作条件、および試料タイプに関して特別に再訓練され得る。NNが再訓練されると、それが記憶され、かつ他の同様の試料の元素分析に使用され得る。元素分析から識別された化学元素に基づいて、スペクトルデータは、分解されて、各試料場所においてスペクトル成分および存在量を取得することができ、これを使用して、試料組成のより多くの洞察を提供するための追加の組成画像を生成することができる。
【0036】
図3は、訓練されたNNを再訓練するための方法300を示す。訓練されたNNは、入手されたスペクトルデータから生成された、統合されたスペクトル、および統合されたスペクトルに対応する既知の元素組成で再訓練され得る。方法300は、既知の元素を受信するためのユーザインターフェースでオペレータと相互作用し得る。
【0037】
302において、試料構造を示す試料画像が、表示される。試料画像は、図2の206における走査中に入手された散乱電子に基づいて、生成され得る。代替的に、試料画像は、図2の206における走査とは別に入手される。試料画像は、光学画像、SEM画像、BSE画像、またはTEM画像であり得る。一例では、元素分析が、図2の210において実行される場合、試料画像は、試料中の識別された化学元素の空間分布を示す元素マップであり得る。元素マップは、入手された空間的に分解された散乱電子および識別された化学元素の両方に基づいて、生成され得る。例えば、散在する選択からの信号は、試料の構造情報を示すためにグレースケールで表示される。識別された元素は、色分けされ、グレースケール画像上に重ね合わせられ得る。
【0038】
いくつかの例では、図2の210において識別された化学元素が、試料画像とともに表示される。一例では、識別された化学元素は、周期表内に表示され得る。別の例では、識別された化学元素は、リストとして表示される。
【0039】
304において、試料画像内の1つ以上の領域が、選択される。領域は、元素マップを観察した後、オペレータによって選択され得る。代替的に、領域は、自動的に選択されてもよい。例えば、試料の中央領域が、自動的に選択される。選択された領域は、試料画像の1つ以上のピクセルを含有する。一例では、選択された領域は、試料の既知の組成を反映するエリアであり得る。別の例では、選択された領域は、重なり合うピークを有するスペクトルなどの特徴的なスペクトルに対応する。
【0040】
308において、荷電粒子ビームは、任意選択的に、追加のスペクトルデータを収集するために、試料画像内の選択された領域(またはピクセル)に対応する試料領域に方向付けられ、追加のスペクトルデータは、訓練されたNNを使用して分析されて、選択された領域内の化学元素を識別する。システムパラメータは、追加のスペクトルデータを収集するために調整され得る。一例では、検出器の積分時間は、206における積分時間と比較して長く、そのためより高密度のスペクトルが入手される。別の例では、走査ステップが調整される。
【0041】
310において、選択された領域内で識別された化学元素が、310において表示される。化学元素は、210または310のいずれかにおいて識別され得る。一例では、化学元素は、306において表示された識別済み化学元素を更新することによって、表示される。一例では、310において識別された化学元素は、周期表またはリストとして表示され得る。統合されたスペクトル、識別された化学元素、および試料画像のうちの1つ以上は、個別にまたはともに表示ユニット上で選択的に表示され得る。
【0042】
312において、統合されたスペクトルは、選択された領域内で入手されたスペクトルに基づいて、生成される。例えば、選択された領域内の試料場所から入手された1つ以上のスペクトルは、合計されるか、または平均化されて、統合されたスペクトルを生成する。いくつかの例では、統合されたスペクトルが、オペレータに表示される。
【0043】
314において、選択された領域内で識別された化学元素は、選択された領域内の既知の元素組成と比較される。比較は、顕微鏡のコントローラによって、またはオペレータによって実行され得る。識別された化学元素および既知の元素が一致しない場合、方法300は、316に進んで、ユーザ入力からの既知の元素組成を受信する。それ以外の場合、方法300は、322に進む。
【0044】
316において、選択された領域からの既知の元素組成は、ユーザ入力によって受信される。例えば、オペレータは、310において表示された化学元素を選択するか、または選択解除することができる。
【0045】
318において、訓練されたNNは、統合されたスペクトルおよび受信した既知の組成情報で再訓練される。いくつかの例では、再訓練されたNNは、NNの再訓練のために使用されないスペクトルデータで検証され得る。一例では、訓練されたNNは、再訓練されたNNによって置き換えられ、かつ記憶される。いくつかの例では、1つ以上の再訓練されたNNが、ベースラインNNとして記憶される。ベースラインNNは、例えば、異なる試料または異なる顕微鏡システムのための再訓練用の開始点として使用され得る。
【0046】
320において、入手されたスペクトルデータは、任意選択的に、更新された元素マップを生成するために、再訓練されたNNで再処理され得る。更新された元素マップは、再訓練されたNNの精度を評価するために使用され得る。
【0047】
322において、方法300は、現在のスペクトルデータでのNNの追加の再訓練が必要かどうかをチェックする。例えば、オペレータは、更新された元素マップに基づいて、NNを再訓練するかどうかを決定し得る。再訓練が必要な場合、方法300は、306に移動し、NNは、試料の異なる領域からのスペクトルデータで再訓練され得る。追加の再訓練が必要ない場合、または追加のスペクトルデータが再訓練のために必要とされることが必要な場合、方法300は終了する。
【0048】
オペレータが選択した化学元素を受信することによって、NNのオフライン訓練用に使用されていない新しい訓練データが、NNを微調整するために取得されて、特定のユーザケースおよび/または特定の関心のある組成に対してより敏感になり得る。
【0049】
図4は、元素分析からの結果を表示し、および訓練されたNNを再訓練するためのユーザ入力を受信するためのユーザインターフェースの例を示す。元素マップ402、識別された化学元素を示す周期表403、および統合されたスペクトル404が、ディスプレイユニット上のウィンドウ401内に同時に表示される。元素マップは、色分けされ、かつ試料の電子顕微鏡画像上に重ね合わされた、識別された元素を示す。識別された元素Fe、Zn、およびSnは、周期表内で強調表示される。統合されたスペクトル404は、元素マップ402内に示される試料領域内で受信したすべてのスペクトルデータに基づいて、生成され得る。識別された元素に対応する積分スペクトル内のピークは、積分スペクトル内に示され得る。
【0050】
オペレータは、元素マップ402内の1つ以上の領域を選択し得る。領域は、試料画像内の線、エリア、または点であり得る。選択中または選択後に、周期表402および統合されたスペクトル404は、識別された元素および選択された領域の更新された統合されたスペクトルで更新される。識別された元素が既知の元素組成と異なる場合、オペレータは、周期表403内の元素を選択すること、および/または選択解除することによって、既知の元素組成を入力し得る。次いで、オペレータは、ウィンドウ内の「学習」ボタン405をクリックして、入力された情報でNNを再訓練し得る。
【0051】
図5は、訓練されたNNでスペクトルデータから試料組成を抽出するための例示的なデータフローを例解する。入手されたスペクトル501は、訓練されたNN502によって処理される。訓練されたNNは、処理された各スペクトルの各化学元素に関して、化学元素504のリストおよび確率505を生成する。化学元素および確率の例示的なリストは、503において示される。リストは、周期表内のすべての化学元素を含有し得る。確率の値は、0~1の範囲である。試料中の化学元素506は、スペクトル501から識別されたすべての化学元素を含有する。例えば、化学元素506は、閾値確率よりも大きい確率を有する化学元素504を含む。次いで、スペクトル501の各スペクトルは、508において、識別された化学元素506に基づいて、スペクトル成分および/または存在量に分解され得る。1つの試料場所での成分および存在量の例が、511内に示される。この例では、試料場所において2つの成分が存在する。各成分は、個々の化学元素の組み合わせである。第1の成分は、濃度0.4のFeおよび濃度0.6の酸素を含有し、第2の成分は、0.33のSiおよび0.66の酸素Oを含有する。各成分は、存在量0.5を有する。つまり、試料場所の組成は、第1の成分半分および第2の成分半分である。元素マップ511は、各試料場所で識別された化学元素506に基づいて、生成することができる。組成画像510は、スペクトル成分および/または走査された試料場所の存在量に基づいて、生成することができる。
【0052】
図6は、訓練されたNNをオフラインで生成するための方法600を示す。次いで、訓練されたNNは、図2の方法200内に示されるように、オンラインで再訓練され得る。
【0053】
602において、様々な動作条件が、定義される。動作条件は、加速電圧、ビーム電流、作動距離、および検出器設定のうちの1つ以上を含み得る。訓練されたNNは、各動作条件に関して生成され得る。
【0054】
604において、訓練データセットは、動作条件に基づいて、決定される。訓練データセットは、訓練スペクトルおよび対応する元素組成を含む。訓練スペクトルは、1つ以上の顕微鏡から入手されたシミュレートされたデータ606および/または実験データ608を含み得る。訓練スペクトルは、単一の化学元素の特徴的なスペクトルおよび/または組み合わされた化学元素のスペクトルを含み得る。
【0055】
610において、訓練データは、ノイズ、非線形性、および調整されたゲインを導入することによって、拡張される。一例では、ノイズは、ピーク場所の特定のエネルギー範囲内で1つ以上のピークをシフトすることによって、訓練データに導入され得る。エネルギー範囲は、100eV未満であり得る。一例では、エネルギー範囲は、50eV未満である。別の例では、ノイズは、訓練スペクトルの振幅に追加されてもよい。
【0056】
612において、ナイーブNNが、訓練データセットで訓練されて、訓練されたNNを生成する。いくつかの例では、訓練されたNNは、602において定義された各動作条件に関して生成される。
【0057】
614において、検証データは、検証スペクトルを含み、および対応する元素組成が生成され、訓練されたNNは、検証データで検証される。検証スペクトルは、訓練スペクトルとは異なる。例えば、検証スペクトルは、異なる顕微鏡から入手された実験スペクトルを含み得る。元素分析は、訓練されたNNで検証スペクトルに対して実行される。訓練されたNNの性能は、検証データ内の元素組成と、訓練されたNNを介する識別された化学元素を比較することによって、決定される。
【0058】
616において、訓練されたNNの性能が許容可能な場合、訓練されたNNは、620において保存される。それ以外の場合、NNの訓練を継続するために、618において、追加の訓練データセットが生成される。
【0059】
元素分析に対してNNを使用する技術的効果は、NNが、スペクトルデータ、特にスパーススペクトルデータに対して、高速かつ正確に元素分析を実行することができることである。参照試料を測定することによって訓練されたNNを再訓練することの技術的効果は、オフラインで訓練されたNNが、特定の使用ケース、システム、および材料に適合させ得ることである。再訓練のために参照試料の領域を選択することの技術的効果は、既知の元素組成を反映する試料領域が選択され得ることである。スペクトルデータを分解する前に元素分析を実行することの技術的効果は、試料成分が、迅速かつ正確に識別され得ることである。
【0060】
表現において、非一時的なコンピュータ可読媒体は、コントローラのプロセッサによって実行されるとき、コントローラに、荷電粒子ビームで第1の試料の1つ以上の場所を照射することと、第1の試料への照射に応答して、第1の試料からの第1の放出物を検出することによって、1つ以上の第1のスペクトルを入手することと、コンピュータ可読媒体内に記憶された訓練されたニューラルネットワークで第1のスペクトルを処理することによって、第1の試料内の1つ以上の第1の化学元素を決定することと、1つ以上の第1の化学元素を表示することと、第1の試料の既知の化学元素組成を受信し、訓練されたニューラルネットワークを、第1のスペクトルおよび第1の試料の既知の元素組成のうちの1つ以上で再訓練することと、荷電粒子ビームで第2の試料の1つ以上の場所を照射することと、第2の試料への照射に応答して、第2の試料からの第1の放出物を検出することによって、1つ以上の第2のスペクトルを入手することと、再訓練されたニューラルネットワークで第2のスペクトルを処理することによって、第2の試料内の1つ以上の第2の化学元素を決定することと、第2の化学元素に基づいて、第2の試料の組成マップを生成することと、を行わせる、命令を含む。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
【外国語明細書】