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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023089467
(43)【公開日】2023-06-28
(54)【発明の名称】信号処理装置、及び信号処理方法
(51)【国際特許分類】
   G01R 33/07 20060101AFI20230621BHJP
   G01R 33/09 20060101ALI20230621BHJP
   G01R 19/00 20060101ALI20230621BHJP
【FI】
G01R33/07
G01R33/09
G01R19/00 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021203974
(22)【出願日】2021-12-16
(71)【出願人】
【識別番号】303046277
【氏名又は名称】旭化成エレクトロニクス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000877
【氏名又は名称】弁理士法人RYUKA国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】井上 晶博
【テーマコード(参考)】
2G017
2G035
【Fターム(参考)】
2G017AA02
2G017AB09
2G017AD53
2G017AD55
2G017BA05
2G035AA19
2G035AC20
2G035AD20
2G035AD28
2G035AD47
2G035AD52
2G035AD65
2G035AD66
(57)【要約】
【解決手段】信号処理装置は、複数のセンサのそれぞれにより検出される物理量を示すアナログ信号を受信し、複数のセンサのうちの1つのセンサにより検出される物理量を示すアナログ信号を選択的に出力する信号選択部と、複数のセンサのうち第1順序で1つずつ選択されるセンサからのアナログ信号を順次出力させた後、複数のセンサのうち第1順序と逆の第2順序で1つずつ選択されるセンサからのアナログ信号を順次出力させる処理を繰り返すように、信号選択部を制御する制御部と、処理により信号選択部から出力される複数のセンサのそれぞれから出力されるそれぞれのアナログ信号をデジタル信号に変換する変換部と、それぞれのデジタル信号に基づいて複数のセンサのそれぞれで検出されるそれぞれの物理量を導出する導出部とを備えてよい。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のセンサのそれぞれにより検出される物理量を示すアナログ信号を受信し、前記複数のセンサのうちの1つのセンサにより検出される物理量を示すアナログ信号を選択的に出力する信号選択部と、
前記複数のセンサのうち第1順序で1つずつ選択されるセンサからのアナログ信号を順次出力させた後、前記複数のセンサのうち前記第1順序と逆の第2順序で1つずつ選択されるセンサからのアナログ信号を順次出力させる処理を繰り返すように、前記信号選択部を制御する制御部と、
前記処理により前記信号選択部から出力される前記複数のセンサのそれぞれから出力されるそれぞれのアナログ信号をデジタル信号に変換する変換部と、
それぞれの前記デジタル信号に基づいて前記複数のセンサのそれぞれで検出されるそれぞれの物理量を導出する導出部と
を備える信号処理装置。
【請求項2】
前記信号選択部は、前記複数のセンサのうち順次選択される1つのセンサにより検出される物理量を示すアナログ信号を予め定められた間隔で出力する、請求項1に記載の信号処理装置。
【請求項3】
前記処理により前記信号選択部から出力される前記複数のセンサのそれぞれから出力されるそれぞれのアナログ信号を増幅させる増幅器をさらに備え、
前記変換部は、前記増幅器により増幅されたそれぞれのアナログ信号をデジタル信号に変換する、請求項1または2に記載の信号処理装置。
【請求項4】
前記複数のセンサのうち前記第2順序で1つずつ選択されるセンサからのアナログ信号を、前記複数のセンサのうち前記第1順序で1つずつ選択されるセンサからのアナログ信号に対して極性を反転させて前記変換部に向けて出力する反転部をさらに備える、請求項1から3の何れか1つに記載の信号処理装置。
【請求項5】
前記複数のセンサは、第1軸成分の物理量を示すアナログ信号を出力する第1センサ、第2軸成分の物理量を示すアナログ信号を出力する第2センサ、及び第3軸成分の物理量を示すアナログ信号を出力する第3センサを含み、
前記信号選択部は、前記処理により、前記第1センサから第1時点で出力される第1アナログ信号、前記第2センサから前記第1時点に続く第2時点で出力される第2アナログ信号、及び第3センサから前記第2時点に続く第3時点で出力される第3アナログ信号の順にアナログ信号を出力した後、前記第3センサから前記第3時点に続く第4時点で出力される第4アナログ信号、前記第2センサから前記第4時点に続く第5時点で出力される第5アナログ信号、及び前記第1センサから前記第5時点に続く第6時点で出力される第6アナログ信号の順にアナログ信号を出力し、
前記変換部は、前記第1アナログ信号、前記第2アナログ信号、前記第3アナログ信号、前記第4アナログ信号、前記第5アナログ信号、及び前記第6アナログ信号を、第1デジタル信号、第2デジタル信号、第3デジタル信号、第4デジタル信号、第5デジタル信号、及び第6デジタル信号に変換し、
前記導出部は、前記第1デジタル信号、及び前記第6デジタル信号に基づいて第1軸成分の物理量を導出し、前記第2デジタル信号、及び前記第5デジタル信号に基づいて第2軸成分の物理量を導出し、前記第3デジタル信号、及び前記第4デジタル信号に基づいて第3軸成分の物理量を導出する、請求項1から4の何れか1つに記載の信号処理装置。
【請求項6】
前記第1時点、前記第2時点、前記第3時点、前記第4時点、前記第5時点、及び前記第6時点のそれぞれの間隔は、同じである、請求項5に記載の信号処理装置。
【請求項7】
前記複数のセンサは、第1軸成分の物理量及び第3軸成分の物理量を示すアナログ信号を出力する第1センサ、前記第1軸成分の極性を反転させた物理量及び第3軸成分の物理量を示すアナログ信号を出力する第2センサ、第2軸成分の物理量及び第3軸成分の物理量を示すアナログ信号を出力する第3センサ、並びに第2軸成分の極性を反転させた物理量及び第3軸成分の物理量を示す第4センサを含み、
前記信号選択部は、前記処理により、前記第1センサから第1時点で出力される第1アナログ信号、前記第2センサから前記第1時点に続く第2時点で出力される第2アナログ信号、前記第3センサから前記第2時点に続く第3時点で出力される第3アナログ信号、及び前記第4センサから前記第3時点に続く第4時点で出力される第4アナログ信号の順にアナログ信号を出力した後、前記第4センサから前記第4時点に続く第5時点で出力される第5アナログ信号、前記第3センサから前記第5時点に続く第6時点で出力される第6アナログ信号、前記第2センサから前記第6時点に続く第7時点で出力される第7アナログ信号、及び前記第1センサから前記第7時点に続く第8時点で出力される第8アナログ信号の順にアナログ信号を出力し、
前記変換部は、前記第1アナログ信号、前記第2アナログ信号、前記第3アナログ信号、前記第4アナログ信号、前記第5アナログ信号、前記第6アナログ信号、前記第7アナログ信号、及び前記第8アナログ信号を、第1デジタル信号、第2デジタル信号、第3デジタル信号、第4デジタル信号、第5デジタル信号、第6デジタル信号、第7デジタル信号、及び第8デジタル信号に変換し、
前記導出部は、前記第1デジタル信号、前記第2デジタル信号、前記第7デジタル信号、及び前記第8デジタル信号に基づいて、第1軸成分の物理量を導出し、前記第3デジタル信号、前記第4デジタル信号、前記第5デジタル信号、及び前記第6デジタル信号に基づいて、第2軸成分の物理量を導出し、前記第1デジタル信号、前記第2デジタル信号、前記第3デジタル信号、前記第4デジタル信号、前記第5デジタル信号、前記第6デジタル信号、前記第7デジタル信号、及び前記第8デジタル信号に基づいて、第3軸成分の物理量を導出する、請求項1から4の何れか1つに記載の信号処理装置。
【請求項8】
前記複数のセンサは、第1軸成分の物理量及び第3軸成分の物理量を示すアナログ信号を出力する第1センサ、前記第1軸成分の極性を反転させた物理量及び第3軸成分の物理量を示すアナログ信号を出力する第2センサ、第2軸成分の物理量及び第3軸成分の物理量を示すアナログ信号を出力する第3センサ、並びに第2軸成分の極性を反転させた物理量及び第3軸成分の物理量を示す第4センサを含み、
前記信号選択部は、前記処理により、前記第1センサから第1時点で出力される第1アナログ信号、前記第2センサから前記第1時点に続く第2時点で出力される第2アナログ信号、前記第3センサから前記第2時点に続く第3時点で出力される第3アナログ信号、及び前記第4センサから前記第3時点に続く第4時点で出力される第4アナログ信号の順にアナログ信号を出力した後、前記第4センサから前記第4時点に続く第5時点で出力される第5アナログ信号、前記第3センサから前記第5時点に続く第6時点で出力される第6アナログ信号、前記第2センサから前記第6時点に続く第7時点で出力される第7アナログ信号、及び前記第1センサから前記第7時点に続く第8時点で出力される第8アナログ信号の順にアナログ信号を出力し、
前記変換部は、前記第1アナログ信号、前記第2アナログ信号、前記第3アナログ信号、前記第4アナログ信号、前記第5アナログ信号、前記第6アナログ信号、前記第7アナログ信号、及び前記第8アナログ信号を、第1デジタル信号、第2デジタル信号、第3デジタル信号、第4デジタル信号、第5デジタル信号、第6デジタル信号、第7デジタル信号、及び第8デジタル信号に変換し、
前記導出部は、前記第1デジタル信号、前記第2デジタル信号、前記第7デジタル信号、及び前記第8デジタル信号に基づいて、第1軸成分の物理量を導出し、前記第3デジタル信号、前記第4デジタル信号、前記第5デジタル信号、及び前記第6デジタル信号に基づいて、第2軸成分の物理量を導出し、前記第1デジタル信号、前記第2デジタル信号、前記第7デジタル信号、及び前記第8デジタル信号、あるいは前記第3デジタル信号、前記第4デジタル信号、前記第5デジタル信号、及び前記第6デジタル信号に基づいて、第3軸成分の物理量を導出する、請求項1から4の何れか1つに記載の信号処理装置。
【請求項9】
前記第1時点、前記第2時点、前記第3時点、前記第4時点、前記第5時点、前記第6時点、前記第7時点、及び前記第8時点のそれぞれの間隔は、同じである、請求項7または8に記載の信号処理装置。
【請求項10】
前記複数のセンサのそれぞれは、前記物理量として磁場を検出する磁気センサである、請求項1から9の何れか1つに記載の信号処理装置。
【請求項11】
複数のセンサのそれぞれにより検出される物理量を示すアナログ信号を受信し、前記複数のセンサのうちの1つのセンサにより検出される物理量を示すアナログ信号を選択的に出力する信号選択部を、複数のセンサのうち第1順序で1つずつ選択されるセンサからのアナログ信号を順次出力させた後、前記複数のセンサのうち前記第1順序と逆の第2順序で1つずつ選択されるセンサからのアナログ信号を順次出力させる処理を繰り返すように、制御する段階と、
前記処理により前記信号選択部から出力される前記複数のセンサのそれぞれから出力されるそれぞれのアナログ信号をデジタル信号に変換する段階と、
それぞれの前記デジタル信号に基づいて前記複数のセンサのそれぞれで検出されるそれぞれの物理量を導出する段階と
を備える信号処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、信号処理装置、及び信号処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、3チャンネルの入力電圧を選択切替して後段のA/Dコンバータに出力するためのマルチプレクサが開示されている。特許文献2には、端面に複数のホール素子が配置された磁場コンセントレータと並行方向の磁場と垂直方向の磁場とを同時に検出するセンサが開示されている。特許文献3には、ホール素子のオフセット電圧と増幅器に固有のオフセット電圧を除去する磁気検出装置が開示されている。特許文献4には、磁気センサごとに増幅器を設けて、各磁気センサで同時に磁気成分を検出することが開示されている。
[先行技術文献]
[特許文献]
[特許文献1] 特開2005-65789号公報
[特許文献2] 特開2002-71381号公報
[特許文献3] 特開2005-283503号公報
[特許文献4] 米国特許第6278271号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
回路規模の増加を抑制し、かつ複数のセンサで検出される磁場などの物理量の測定タイミングのずれを抑制することが望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明の一態様に係る信号処理装置は、複数のセンサのそれぞれにより検出される物理量を示すアナログ信号を受信し、複数のセンサのうちの1つのセンサにより検出される物理量を示すアナログ信号を選択的に出力する信号選択部を備えてよい。信号処理装置は、複数のセンサのうち第1順序で1つずつ選択されるセンサからのアナログ信号を順次出力させた後、複数のセンサのうち第1順序と逆の第2順序で1つずつ選択されるセンサからのアナログ信号を順次出力させる処理を繰り返すように、信号選択部を制御する制御部を備えてよい。信号処理装置は、処理により信号選択部から出力される複数のセンサのそれぞれから出力されるそれぞれのアナログ信号をデジタル信号に変換する変換部を備えてよい。信号処理装置は、それぞれのデジタル信号に基づいて複数のセンサのそれぞれで検出されるそれぞれの物理量を導出する導出部を備えてよい。
【0005】
信号選択部は、複数のセンサのうち順次選択される1つのセンサにより検出される物理量を示すアナログ信号を予め定められた間隔で出力してよい。
【0006】
信号処理装置は、処理により信号選択部から出力される複数のセンサのそれぞれから出力されるそれぞれのアナログ信号を増幅させる増幅器をさらに備えてよい。変換部は、増幅器により増幅されたそれぞれのアナログ信号をデジタル信号に変換してよい。
【0007】
信号処理装置は、複数のセンサのうち第2順序で1つずつ選択されるセンサからのアナログ信号を、複数のセンサのうち第1順序で1つずつ選択されるセンサからのアナログ信号に対して極性を反転させて変換部に向けて出力する反転部をさらに備えてよい。
【0008】
複数のセンサは、第1軸成分の物理量を示すアナログ信号を出力する第1センサ、第2軸成分の物理量を示すアナログ信号を出力する第2センサ、及び第3軸成分の物理量を示すアナログ信号を出力する第3センサを含んでよい。信号選択部は、処理により、第1センサから第1時点で出力される第1アナログ信号、第2センサから第1時点に続く第2時点で出力される第2アナログ信号、及び第3センサから第2時点に続く第3時点で出力される第3アナログ信号の順にアナログ信号を出力した後、第3センサから第3時点に続く第4時点で出力される第4アナログ信号、第2センサから第4時点に続く第5時点で出力される第5アナログ信号、及び第1センサから第5時点に続く第6時点で出力される第6アナログ信号の順にアナログ信号を出力してよい。変換部は、第1アナログ信号、第2アナログ信号、第3アナログ信号、第4アナログ信号、第5アナログ信号、及び第6アナログ信号を、第1デジタル信号、第2デジタル信号、第3デジタル信号、第4デジタル信号、第5デジタル信号、及び第6デジタル信号に変換してよい。導出部は、第1デジタル信号、及び第6デジタル信号に基づいて第1軸成分の物理量を導出し、第2デジタル信号、及び第5デジタル信号に基づいて第2軸成分の物理量を導出し、第3デジタル信号、及び第4デジタル信号に基づいて第3軸成分の物理量を導出してよい。
【0009】
第1時点、第2時点、第3時点、第4時点、第5時点、第6時点のそれぞれの間隔は、同じでよい。
【0010】
複数のセンサは、第1軸成分の物理量及び第3軸成分の物理量を示すアナログ信号を出力する第1センサ、第1軸成分の極性を反転させた物理量及び第3軸成分の物理量を示すアナログ信号を出力する第2センサ、第2軸成分の物理量及び第3軸成分の物理量を示すアナログ信号を出力する第3センサ、並びに第2軸成分の極性を反転させた物理量及び第3軸成分の物理量を示す第4センサを含んでよい。信号選択部は、処理により、第1センサから第1時点で出力される第1アナログ信号、第2センサから第1時点に続く第2時点で出力される第2アナログ信号、第3センサから第2時点に続く第3時点で出力される第3アナログ信号、及び第4センサから第3時点に続く第4時点で出力される第4アナログ信号の順にアナログ信号を出力した後、第4センサから第4時点に続く第5時点で出力される第5アナログ信号、第3センサから第5時点に続く第6時点で出力される第6アナログ信号、第2センサから第6時点に続く第7時点で出力される第7アナログ信号、及び第1センサから第7時点に続く第8時点で出力される第8アナログ信号の順にアナログ信号を出力してよい。変換部は、第1アナログ信号、第2アナログ信号、第3アナログ信号、第4アナログ信号、第5アナログ信号、第6アナログ信号、第7アナログ信号、及び第8アナログ信号を、第1デジタル信号、第2デジタル信号、第3デジタル信号、第4デジタル信号、第5デジタル信号、第6デジタル信号、第7デジタル信号、及び第8デジタル信号に変換してよい。導出部は、第1デジタル信号、第2デジタル信号、第7デジタル信号、及び第8デジタル信号に基づいて、第1軸成分の物理量を導出し、第3デジタル信号、第4デジタル信号、第5デジタル信号、及び第6デジタル信号に基づいて、第2軸成分の物理量を導出し、第1デジタル信号、第2デジタル信号、第3デジタル信号、第4デジタル信号、第5デジタル信号、第6デジタル信号、第7デジタル信号、及び第8デジタル信号に基づいて、第3軸成分の物理量を導出してよい。
【0011】
複数のセンサは、第1軸成分の物理量及び第3軸成分の物理量を示すアナログ信号を出力する第1センサ、第1軸成分の極性を反転させた物理量及び第3軸成分の物理量を示すアナログ信号を出力する第2センサ、第2軸成分の物理量及び第3軸成分の物理量を示すアナログ信号を出力する第3センサ、並びに第2軸成分の極性を反転させた物理量及び第3軸成分の物理量を示す第4センサを含んでよい。信号選択部は、処理により、第1センサから第1時点で出力される第1アナログ信号、第2センサから第1時点に続く第2時点で出力される第2アナログ信号、第3センサから第2時点に続く第3時点で出力される第3アナログ信号、及び第4センサから第3時点に続く第4時点で出力される第4アナログ信号の順にアナログ信号を出力した後、第4センサから第4時点に続く第5時点で出力される第5アナログ信号、第3センサから第5時点に続く第6時点で出力される第6アナログ信号、第2センサから第6時点に続く第7時点で出力される第7アナログ信号、及び第1センサから第7時点に続く第8時点で出力される第8アナログ信号の順にアナログ信号を出力してよい。変換部は、第1アナログ信号、第2アナログ信号、第3アナログ信号、第4アナログ信号、第5アナログ信号、第6アナログ信号、第7アナログ信号、及び第8アナログ信号を、第1デジタル信号、第2デジタル信号、第3デジタル信号、第4デジタル信号、第5デジタル信号、第6デジタル信号、第7デジタル信号、及び第8デジタル信号に変換してよい。導出部は、第1デジタル信号、第2デジタル信号、第7デジタル信号、及び第8デジタル信号に基づいて、第1軸成分の物理量を導出し、第3デジタル信号、第4デジタル信号、第5デジタル信号、及び第6デジタル信号に基づいて、第2軸成分の物理量を導出し、第1デジタル信号、第2デジタル信号、第7デジタル信号、及び第8デジタル信号、あるいは第3デジタル信号、第4デジタル信号、第5デジタル信号、及び第6デジタル信号に基づいて、第3軸成分の物理量を導出してよい。
【0012】
第1時点、第2時点、第3時点、第4時点、第5時点、第6時点、第7時点、及び第8時点のそれぞれの間隔は、同じでよい。
【0013】
複数のセンサのそれぞれは、物理量として磁場を検出する磁気センサでよい。
【0014】
本発明の一態様に係る信号処理方法は、複数のセンサのそれぞれにより検出される物理量を示すアナログ信号を受信し、複数のセンサのうちの1つのセンサにより検出される物理量を示すアナログ信号を選択的に出力する信号選択部を、複数のセンサのうち第1順序で1つずつ選択されるセンサからのアナログ信号を順次出力させた後、複数のセンサのうち第1順序と逆の第2順序で1つずつ選択されるセンサからのアナログ信号を順次出力させる処理を繰り返すように、制御する段階を備えてよい。信号処理方法は、処理により信号選択部から出力される複数のセンサのそれぞれから出力されるそれぞれのアナログ信号をデジタル信号に変換する段階を備えてよい。信号処理方法は、それぞれのデジタル信号に基づいて複数のセンサのそれぞれで検出されるそれぞれの物理量を導出する段階を備えてよい。
【0015】
なお、上記の発明の概要は、本発明の特徴の全てを列挙したものではない。また、これらの特徴群のサブコンビネーションもまた、発明となりうる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】第1実施形態に係る信号処理装置の回路構成を示す図である。
図2図1に示す回路構成で、各軸成分が測定されるタイミングと、測定中に変化する各軸の測定対象の信号を表す図である。
図3】第1実施形態における各軸成分が測定されるタイミングと、測定中に変化する各軸の測定対象の信号を表す図である。
図4】第2実施形態に係る信号処理装置の回路構成を示す図である。
図5図4に示す回路構成で、各軸成分が測定されるタイミングと、測定中に変化する各軸の測定対象の信号を表す図である。
図6】第2実施形態における各軸成分が測定されるタイミングと、測定中に変化する各軸の測定対象の信号を表す図である。
図7】第3実施形態における各軸成分が測定されるタイミングと、測定中に変化する各軸の測定対象の信号を表す図である。
図8図7に示す回路構成で、各軸成分が測定されるタイミングと、測定中に変化する各軸の測定対象の信号を表す図である。
図9】第3実施形態における各軸成分が測定されるタイミングと、測定中に変化する各軸の測定対象の信号を表す図である。
図10】第4実施形態に係る信号処理装置の回路構成を示す図である。
図11図10に示す回路構成で、各軸成分が測定されるタイミングと、測定中に変化する各軸の測定対象の信号を表す図である。
図12】第4実施形態における各軸成分が測定されるタイミングと、測定中に変化する各軸の測定対象の信号を表す図である。
図13図2に示す測定タイミングで各軸の磁場を測定した場合の測定データの位相特性を示す図である。
図14図3に示す測定タイミングで各軸の磁場を測定した場合の測定データの位相特性を示す。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、発明の実施の形態を通じて本発明を説明するが、以下の実施形態は特許請求の範囲にかかる発明を限定するものではない。また、実施形態の中で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。
【0018】
図1は、第1実施形態に係る信号処理装置100Aの回路構成を示す図である。信号処理装置100Aは、センサ10A、センサ10B、センサ10C、信号選択部20、切替制御回路30、増幅器40、ADC50、及び演算回路60を備える。
【0019】
センサ10A、センサ10B、及びセンサ10C(センサ10と総称する場合がある)は、磁場を検出する磁気センサである。磁気センサはホール素子、磁気抵抗素子でよい。センサ10Aは、X軸成分の磁場Hxを示すアナログ信号を出力する。センサ10Bは、Y軸成分の磁場Hyを示すアナログ信号を出力する。センサ10Cは、Z軸成分の磁場Hzを示すアナログ信号を出力する。なお、センサ10は、複数の軸成分ごとに物理量を検出するセンサであれば、磁気センサ以外のセンサでもよい。センサ10は、加速度センサ、またはジャイロセンサなどでもよい。
【0020】
信号選択部20は、センサ10A、センサ10B、及びセンサ10Cにより出力されるそれぞれのアナログ信号を受信する。信号選択部20は、センサ10A、センサ10B、及びセンサ10Cのうちの1つのセンサにより検出される磁場を示すアナログ信号を選択的に出力する。切替制御回路30は、信号選択部20を制御する。切替制御回路30は、制御部の一例である。切替制御回路30は、信号選択部20が選択すべきセンサ10を切り替える切替信号SEL_SENSORを信号選択部20に出力する。切替制御回路30は、信号選択部20が複数のセンサ10のうち順次選択される1つのセンサ10により検出される磁場を示すアナログ信号を予め定められた間隔で出力するように、信号選択部20を制御する。
【0021】
増幅器40は、信号選択部20から出力されるアナログ信号を増幅してADC50に向けて出力する。ADC50は、アナログ・デジタル変換回路である。ADC50は、変換部の一例である。ADC50は、増幅器40で増幅されたアナログ信号をデジタル信号に変換する。演算回路60は、ADC50から出力される各センサ10で検出された磁場を示すデジタル信号に基づいて、X軸成分の磁場Hx、Y軸成分の磁場Hy、Z磁場成分の磁場Hzを導出する。演算回路60は、導出部の一例である。
【0022】
図2は、図1に示す回路構成で、各軸成分が測定されるタイミングと、測定中に変化する各軸の測定対象の信号を表す。ΔX、ΔY、及びΔZは、単位測定時間当たりの各軸の変化量を示す。切替制御回路30は、図2に示すように、センサ10A、センサ10B、及びセンサ10Cの順に選択して各センサ10からアナログ信号を出力する処理を繰り返すように、信号選択部20に切替信号SEL_SENSORを送信することで信号選択部20を制御することが考えられる。この場合、(1)のX軸成分の磁場Hxの測定タイミングを起点とすると、各軸成分の磁場の時間変化分を考慮した各軸成分の磁場を示す測定データは、以下のようになる。
【0023】
Doutx=Hx
Douty=Hy+ΔY
Doutz=Hz+2ΔZ
【0024】
上記のように、各軸の測定データの時間変化分は、0、ΔY、2ΔZとなるため、各軸の測定データの時間変化分は揃わない。つまり、各軸の磁場の測定タイミングは異なってしまう。
【0025】
磁気センサ及び加速度センサなどの各種センサは、様々な用途で利用される。例えば、スマートフォン、あるいはAR(拡張現実)またはVR(仮想現実)などを実現する機器などに、3軸磁気センサ及び3軸加速度センサが組み込まれることがある。そして、小型かつ数10Hzから100Hzオーダーの磁気変化を検出して、位置を検出する用途で磁気センサが利用されることがある。このような用途で磁気センサ及び加速度センサなどが利用される場合、各軸成分の磁場などの物理量の測定タイミングのずれは、各軸の位置測定の誤差につながる。よって、各軸成分の磁場などの物理量の測定は、同じタイミングで行われることが望ましい。
【0026】
そこで、第1実施形態では、磁気センサを例として、各軸の磁場の測定タイミングのずれを解消させるために、信号選択部20で選択するセンサ10の順番を変更する。
【0027】
図3は、第1実施形態における各軸成分が測定されるタイミングと、測定中に変化する各軸の測定対象の信号を表す。第1実施形態において、切替制御回路30は、センサ10A(Hx)、センサ10B(Hy)、及びセンサ10C(Hz)を、センサ10A(Hx)、センサ10B(Hy)、及びセンサ10C(Hz)の第1順序で1つずつ選択して各センサ10からアナログ信号を順次出力させた後、センサ10C(Hz)、センサ10B(Hy)、及びセンサ10A(Hx)の第1順序とは逆の第2順序で1つずつ選択して各センサ10からアナログ信号を順次出力させる処理を繰り返すように、信号選択部20を制御する。
【0028】
信号選択部20は、この処理により、センサ10Aから第1時点t1で出力される第1アナログ信号、センサ10Bから第1時点t1に続く第2時点t2で出力される第2アナログ信号、及びセンサ10Cから第2時点t2に続く第3時点t3で出力される第3アナログ信号の順にアナログ信号を出力した後、センサ10Cから第3時点t3に続く第4時点t4で出力される第4アナログ信号、センサ10Bから第4時点t4に続く第5時点t5で出力される第5アナログ信号、及びセンサ10Aから第5時点t5に続く第6時点t6で出力される第6アナログ信号の順にアナログ信号を出力する。
【0029】
第1時点t1、第2時点t2、第3時点t3、第4時点t4、第5時点t5、及び第6時点t6のそれぞれの間隔は、同じである。
【0030】
第1アナログ信号は、(Hx)を示す第1デジタル信号に変換される。第2アナログ信号は、(Hy+ΔY)を示す第2デジタル信号に変換される。第3アナログ信号は、(Hz+2ΔZ)を示す第3デジタル信号に変換される。第4アナログ信号は、(Hz+3ΔZ)を示す第4デジタル信号に変換される。第5アナログ信号は、(Hy+4ΔY)を示す第5デジタル信号に変換される。第6アナログ信号は、(Hx+5ΔX)を示す第6デジタル信号に変換される。
【0031】
そして、演算回路60は、以下の式に従って各成分を加算平均することで、各軸成分の磁場を示す測定データを導出する。
【0032】
Doutx=((1)+(6))/2
=(Hx+Hx+5ΔX)/2
=Hx+2.5ΔX
Douty=((2)+(5))/2
=(Hy+ΔY+Hy+4ΔY)/2
=Hy+2.5ΔY
Doutz=((3)+(4))/2
=(Hz+2ΔZ+Hz+3ΔZ)=Hz+2.5ΔZ
【0033】
上記のように、各軸成分の磁場を示す測定データの時間変化分(ΔX、ΔY、ΔZ)の係数は全ての軸において2.5となる。従って、各軸成分の磁場を示す測定データの時間変化分は揃う。このように、1測定サイクルの各軸成分の磁場の測定回数を偶数回、図3に示す例では、2回とすることで、各軸成分の加算平均後の測定データの時間中心を揃えることができる。したがって、軸成分ごとに時分割で測定する場合でも、軸成分を並列に測定する場合と同じように、測定タイミングのずれを実質的になくした測定データが得られる。
【0034】
図4は、第2実施形態に係る信号処理装置100Bの回路構成を示す図である。信号処理装置100Bは、センサ10A、センサ10B、センサ10C、及びセンサ10Dを備える。第1実施形態では、各センサ10は各軸成分の磁場を独立して検出し、各軸成分の磁場をそれぞれ別個に示すアナログ信号を出力する。第2実施形態では、各センサ10が2つの軸成分の磁場を検出し、2つの軸成分の磁場を示す混成信号であるアナログ信号を出力する。
【0035】
センサ10A、センサ10B、センサ10C、及びセンサ10Dは、磁気収束板の端面に配置される。センサ10A、及びセンサ10Bは、互いに対向して配置され、センサ10C、及びセンサ10Dは、互いに対向して配置される。
【0036】
センサ10Aは、X軸成分の磁場Hx及びZ軸成分の磁場Hzを示すアナログ信号を出力する。センサ10Bは、X軸成分の極性を反転させた磁場-Hx及びZ軸成分の磁場Hzを示すアナログ信号を出力する。センサ10Cは、Y軸成分の磁場Hy及びZ軸成分の磁場Hzを示すアナログ信号を出力する。センサ10Dは、Y軸成分の極性を反転させた磁性-Hy及びZ軸成分の磁場Hzを示すアナログ信号を出力する。
【0037】
図5は、図4に示す回路構成で、各軸成分が測定されるタイミングと、測定中に変化する各軸の測定対象の信号を表す。ΔX、ΔY、及びΔZは、単位測定時間当たりの各軸の変化量を示す。切替制御回路30は、図5に示すように、センサ10A、センサ10B、センサ10C、センサ10Dの順に選択して各センサ10からアナログ信号を出力する処理を繰り返すように、信号選択部20に切替信号SEL_SENSORを送信することで信号選択部20を制御することが考えられる。この場合、(1)のX軸成分の磁場Hx(及びZ軸成分の磁場Hz)の測定タイミングを起点とすると、各軸成分の磁場の時間変化分を考慮した演算回路60での演算後の各軸成分の磁場を示す測定データは、以下のようになる。
【0038】
Doutx=((1)-(2))/2=Hx+0.5ΔX-0.5ΔZ
Douty=((3)-(4))/2=Hy+2.5ΔY-0.5ΔZ
Doutz=((1)+(2)+(3)+(4))/4=Hz+1.5ΔZ-0.25(ΔX+ΔY)
【0039】
上記のように、各軸の測定データにおいて測定対象の軸の時間変化分は、0.5ΔX、2.5ΔY、1.5ΔZとなるため、各軸の測定データの時間変化分は揃わない。つまり、各軸の磁場の測定タイミングは異なり、各軸の測定データの時間中心は揃わない。また、測定中に変化する混成信号をセンサ10ごとに時分割で取得して演算回路60で演算する場合、X軸及びY軸の測定データは、測定対象の軸以外に0.5ΔZの誤差成分を含み、Z軸の測定データは、測定対象の軸以外に0.25(ΔX+ΔY)の誤差成分を含む。
【0040】
そこで、第2実施形態でも、各軸の磁場の測定タイミングのずれを解消させるために、信号選択部20で選択するセンサ10の順番を変更する。
【0041】
図6は、第2実施形態における各軸成分が測定されるタイミングと、測定中に変化する各軸の測定対象の信号を表す。第2実施形態において、切替制御回路30は、センサ10A、センサ10B、センサ10C、及びセンサ10Dを、センサ10A、センサ10B、センサ10C、及びセンサ10Dの第1順序で1つずつ選択して各センサ10からアナログ信号を順次出力させた後、センサ10D、センサ10C、センサ10B、及びセンサ10Aの第1順序とは逆の第2順序で1つずつ選択して各センサ10からアナログ信号を順次出力させる処理を繰り返すように、信号選択部20を制御する。
【0042】
信号選択部20は、この処理により、センサ10Aから第1時点t1で出力される第1アナログ信号、センサ10Bから第1時点t1に続く第2時点t2で出力される第2アナログ信号、センサ10Cから第2時点t2に続く第3時点t3で出力される第3アナログ信号、及びセンサ10Dから第3時点t3に続く第4時点t4で出力される第4アナログ信号の順にアナログ信号を出力した後、センサ10Dから第4時点t4に続く第5時点t5で出力される第5アナログ信号、センサ10Cから第5時点t5に続く第6時点t6で出力される第6アナログ信号、センサ10Bから第6時点t6に続く第7時点t7で出力される第7アナログ信号、及びセンサ10Aから第7時点t7に続く第8時点t8で出力される第8アナログ信号の順にアナログ信号を出力する。
【0043】
第1時点t1、第2時点t2、第3時点t3、第4時点t4、第5時点t5、第6時点t6、第7時点t7、及び第8時点t8のそれぞれの間隔は、同じである。
【0044】
第1アナログ信号は、(Hx+Hz)を示す第1デジタル信号に変換される。第2アナログ信号は、(-(Hx+ΔX)+Hz+ΔZ)を示す第2デジタル信号に変換される。第3アナログ信号は、(Hy+2ΔY+Hz+2ΔZ)を示す第3デジタル信号に変換される。第4アナログ信号は、(-(Hy+3ΔY)+Hz+3ΔZ)を示す第4デジタル信号に変換される。第5アナログ信号は、(-(Hy+4ΔY)+Hz+4ΔZ)を示す第5デジタル信号に変換される。第6アナログ信号は、(Hy+5ΔY+Hz+5ΔZ)を示す第6デジタル信号に変換される。第7アナログ信号は、(-(Hx+6ΔX)+Hz+6ΔZ)を示す第7デジタル信号に変換される。第8アナログ信号は、(Hx+7ΔX+Hz+7ΔZ)を示す第8デジタル信号に変換される。
【0045】
そして、演算回路60は、以下の式に従って各成分を加算平均することで、各軸成分の磁場を示す測定データを導出する。
【0046】
Doutx=((1)-(2)-(7)+(8))/4=Hx+3.5ΔX
Douty=((3)-(4)-(5)+(6))/4=Hy+3.5ΔY
Doutz=((1)+(2)+(3)+(4)+(5)+(6)+(7)+(8))/8=Hz+3.5ΔZ
【0047】
上記のように、各軸成分の磁場を示す測定データの時間変化分の係数は全ての軸において3.5となる。従って、各軸成分の磁場を示す測定データの時間変化分は揃う。また、測定データは、測定対象の軸以外に他の軸の誤差成分を含まない。このように、混成信号において時分割で測定する場合でも、軸成分を並列に測定する場合と同じように、測定データを得られる。
【0048】
なお、演算回路60は、以下の式に従って各成分を加算平均することで、Z軸成分の磁場を示す測定データを導出してもよい。
【0049】
Doutz=((1)+(2)+(7)+(8))/4=Hz+3.5ΔZ
または、
Doutz=((3)+(4)+(5)+(6))/4=Hz+3.5ΔZ
【0050】
図7は、第3実施形態に係る信号処理装置100Cの回路構成を示す図である。信号処理装置100Cは、増幅器40及びADC50で生じるオフセット電圧を除去するためのチョッパスイッチ70を備え、切替制御回路30が、信号選択部20によるセンサ10の選択の制御に加えて、チョッパスイッチ70によるアナログ信号の極性の反転及び非反転の切り替えの制御を行う点で、信号処理装置100Aと異なる。
【0051】
チョッパスイッチ70は、信号選択部20から出力されるアナログ信号の極性の反転及び非反転を切り替えて増幅器40に入力する。増幅器40は、チョッパスイッチ70から出力されるアナログ信号を増幅して、ADC50に向けて出力する。
【0052】
チョッパスイッチ70によって増幅器40への入力の極性を切り替えるのは、増幅器40及びADC50で生じるオフセット電圧Oeを除去するためである。
【0053】
例えば、X軸成分の磁場を示すアナログ信号である非反転信号は、Hx+Oeを示す。反転信号において、センサ10Aからの信号の極性は反転するが、オフセット電圧Oeの極性は反転しない。したがって、反転信号は、-Hx+Oeを示す。この非反転信号、及び反転信号を次式の通り、演算回路60で加算平均することにより、オフセット電圧Oeを除去できる。
【0054】
Dout={(Hx+Oe)-(-Hx+Oe)}×1/2=2Hx×1/2=Hx
【0055】
同様の処理をY軸、及びZ軸の順番で行うことで、オフセット電圧Oeが除去された磁場Hx、Hy、及びHzを示すデジタル信号が得られる。
【0056】
図8は、図7に示す回路構成で、各軸成分が測定されるタイミングと、測定中に変化する各軸の測定対象の信号を表す。ΔX、ΔY、及びΔZは、単位測定時間当たりの各軸の変化量を示す。
【0057】
切替制御回路30は、図8に示すように、信号選択部20及びチョッパスイッチ70を制御することが考えられる。すなわち、センサ10A、センサ10B、及びセンサ10Cの順に選択して各センサ10からアナログ信号を出力する処理を繰り返すように、信号選択部20に切替信号SEL_SENSORを送信することで信号選択部20を制御する。さらに、切替制御回路30は、センサ10Aが選択されている間に、センサ10Aから出力されるアナログ信号を非反転信号として増幅器40に入力し、次いでセンサ10Aから出力されるアナログ信号を反転信号として増幅器40に入力するように、チョッパスイッチ70に切替信号SEL_CHOPを送信することでチョッパスイッチ70を制御する。同様に、切替制御回路30は、センサ10Bが選択されている間に、センサ10Bから出力されるアナログ信号を非反転信号として増幅器40に入力し、次いでセンサ10Bから出力されるアナログ信号を反転信号として増幅器40に入力するように、チョッパスイッチ70に切替信号SEL_CHOPを送信することでチョッパスイッチ70を制御する。次いで、切替制御回路30は、センサ10Cが選択されている間に、センサ10Cから出力されるアナログ信号を非反転信号として増幅器40に入力し、次いでセンサ10Cから出力されるアナログ信号を反転信号として増幅器40に入力するように、チョッパスイッチ70に切替信号SEL_CHOPを送信することでチョッパスイッチ70を制御する。
【0058】
この場合、演算回路60は、以下の式に従って各成分を加算平均することで、各軸成分の磁場を示す測定データを導出できる。
【0059】
Doutx=((1)-(2))/2={Hx+Oe-(-(Hx+ΔX)+Oe)}×1/2=Hx+0.5ΔX
Douty=((3)-(4))/2={(Hy+2ΔY)+Oe-(-(Hy+3ΔY)+Oe)}×1/2=Hy+2.5ΔY
Doutz=((5)-(6))/2={(Hz+4ΔZ)+Oe-(-(Hz+5ΔZ)+Oe)}×1/2=Hz+4.5ΔZ
【0060】
しかし、上記のように、各軸の測定データにおいて測定対象の軸の時間変化分は、0.5ΔX、2.5ΔY、4.5ΔZとなるため、各軸の測定データの時間変化分は揃わない。つまり、各軸の磁場の測定タイミングは異なり、各軸の測定データの時間中心は揃わない。
【0061】
そこで、第3実施形態では、各軸の磁場の測定タイミングのずれを解消させるために、信号選択部20で選択するセンサ10の順番、及びチョッパスイッチ70での極性の切り替えのタイミングを変更する。
【0062】
図9は、第3実施形態における各軸成分が測定されるタイミングと、測定中に変化する各軸の測定対象の信号を表す。第3実施形態において、切替制御回路30は、センサ10A(Hx)、センサ10B(Hy)、及びセンサ10C(Hz)を、センサ10A(Hx)、センサ10B(Hy)、及びセンサ10C(Hz)の第1順序で1つずつ選択して各センサ10からアナログ信号を順次出力させた後、センサ10C(Hz)、センサ10B(Hy)、及びセンサ10A(Hx)の第1順序とは逆の第2順序で1つずつ選択して各センサ10からアナログ信号を順次出力させる処理を繰り返すように、信号選択部20を制御する。
【0063】
また、切替制御回路30は、第1順序でセンサ10A、センサ10B、及びセンサ10Cが選択されている間、センサ10A、センサ10B、及びセンサ10Cから出力されるアナログ信号を非反転信号として増幅器40に入力し、次いで第2順序でセンサ10C、センサ10B、及びセンサ10Aが選択されている間、センサ10C、センサ10B、及びセンサ10Aから出力されるアナログ信号を反転信号として増幅器40に入力するように、チョッパスイッチ70に切替信号SEL_CHOPを送信することでチョッパスイッチ70を制御する。
【0064】
すなわち、切替制御回路30は、増幅器40に入力されるアナログ信号を非反転信号に維持するようにチョッパスイッチ70を制御している間に、信号選択部20からセンサ10A、センサ10B、及びセンサ10Cの順でアナログ信号が出力されるように信号選択部20を制御する。次いで、切替制御回路30は、増幅器40に入力されるアナログ信号を反転信号に維持するようにチョッパスイッチ70を制御している間に、信号選択部20からセンサ10C、センサ10B、及びセンサ10Aの順でアナログ信号が出力されるように信号選択部20を制御する。
【0065】
そして、演算回路60は、以下の式に従って各成分を加算平均することで、各軸成分の磁場を示す測定データを導出する。
【0066】
Doutx=((1)-(6))/2={Hx+Oe-(-(Hx+5ΔX)+Oe)}×1/2=Hx+2.5ΔX
Douty=((2)-(5))/2={(Hy+ΔY)+Oe-(-(Hy+4ΔY)+Oe)}×1/2=Hy+2.5ΔY
Doutz=((3)-(4))/2={(Hz+2ΔZ)+Oe-(-(Hz+3ΔZ)+Oe)}×1/2=Hz+2.5ΔZ
【0067】
上記のように、各軸成分の磁場を示す測定データの時間変化分の係数は全ての軸において2.5となる。従って、各軸成分の磁場を示す測定データの時間変化分は揃う。このように、軸成分ごとに時分割で測定する場合でも、軸成分を並列に測定する場合と同じように、測定データが得られる。
【0068】
図10は、第4実施形態に係る信号処理装置100Dの回路構成を示す図である。信号処理装置100Dは、増幅器40及びADC50で生じるオフセット電圧を除去するためのチョッパスイッチ70を備え、切替制御回路30が、信号選択部20によるセンサ10の選択の制御に加えて、チョッパスイッチ70によるアナログ信号の極性の反転及び非反転の切り替えの制御を行う点で、信号処理装置100Bと異なる。
【0069】
図11は、図10に示す回路構成で、各軸成分が測定されるタイミングと、測定中に変化する各軸の測定対象の信号を表す。ΔX、ΔY、及びΔZは、単位測定時間当たりの各軸の変化量を示す。
【0070】
切替制御回路30は、図10に示すように、信号選択部20及びチョッパスイッチ70を制御することが考えられる。すなわち、センサ10A、センサ10B、センサ10C、及びセンサ10Dの順に選択して各センサ10からアナログ信号を出力する処理を繰り返すように、信号選択部20に切替信号SEL_SENSORを送信することで信号選択部20を制御する。さらに、切替制御回路30は、センサ10Aが選択されている間に、センサ10Aから出力されるアナログ信号を非反転信号として増幅器40に入力し、次いでセンサ10Aから出力されるアナログ信号を反転信号として増幅器40に入力するように、チョッパスイッチ70に切替信号SEL_CHOPを送信することでチョッパスイッチ70を制御する。
【0071】
同様に、切替制御回路30は、センサ10Bが選択されている間に、センサ10Bから出力されるアナログ信号を非反転信号として増幅器40に入力し、次いでセンサ10Bから出力されるアナログ信号を反転信号として増幅器40に入力するように、チョッパスイッチ70に切替信号SEL_CHOPを送信することでチョッパスイッチ70を制御する。さらに、切替制御回路30は、センサ10Cが選択されている間に、センサ10Cから出力されるアナログ信号を非反転信号として増幅器40に入力し、次いでセンサ10Cから出力されるアナログ信号を反転信号として増幅器40に入力するように、チョッパスイッチ70に切替信号SEL_CHOPを送信することでチョッパスイッチ70を制御する。加えて、切替制御回路30は、センサ10Dが選択されている間に、センサ10Dから出力されるアナログ信号を非反転信号として増幅器40に入力し、次いでセンサ10Dから出力されるアナログ信号を反転信号として増幅器40に入力するように、チョッパスイッチ70に切替信号SEL_CHOPを送信することでチョッパスイッチ70を制御する。
【0072】
この場合、演算回路60は、以下の式に従って各成分を加算平均することで、各軸成分の磁場を示す測定データを導出できる。
【0073】
Doutx={(1)-(2)-((3)-(4))}/4=Hx+1.5ΔX-ΔZ
Douty={(5)-(6)-((7)-(8))}/4=Hy+5.5ΔY-ΔZ
Doutz={((1)-(2))+((3)-(4))+((5)-(6))+((7)-(8))}/8=Hz+3.5ΔZ-0.5(ΔX+ΔY)
【0074】
しかし、上記のように、各軸の測定データにおいて測定対象の軸の時間変化分は、1.5ΔX、5.5ΔY、3.5ΔZとなるため、各軸の測定データの時間変化分は揃わない。つまり、各軸の磁場の測定タイミングは異なり、各軸の測定データの時間中心は揃わない。また、測定中に変化する混成信号をセンサ10ごとに時分割で取得して演算回路60で演算する場合、X軸及びY軸の測定データは、測定対象の軸以外にΔZの誤差成分を含み、Z軸の測定データは、測定対象の軸以外に0.5(ΔX+ΔY)の誤差成分を含む。
【0075】
そこで、第4実施形態では、各軸の磁場の測定タイミングのずれを解消させるために、信号選択部20で選択するセンサ10の順番、及びチョッパスイッチ70での極性の切り替えのタイミングを変更する。
【0076】
図12は、第4実施形態における各軸成分が測定されるタイミングと、測定中に変化する各軸の測定対象の信号を表す。第4実施形態において、切替制御回路30は、センサ10A、センサ10B、センサ10C、及びセンサ10Dを、センサ10A、センサ10B、センサ10C、及びセンサ10Dの第1順序で1つずつ選択して各センサ10からアナログ信号を順次出力させた後、センサ10D、センサ10C、センサ10B、及びセンサ10Aの第1順序とは逆の第2順序で1つずつ選択して各センサ10からアナログ信号を順次出力させる処理を繰り返すように、信号選択部20を制御する。
【0077】
また、切替制御回路30は、第1順序でセンサ10A、センサ10B、センサ10C、及びセンサ10Dが選択されている間、センサ10A、センサ10B、センサ10C、及びセンサ10Dから出力されるアナログ信号を非反転信号として増幅器40に入力し、次いで第2順序でセンサ10D、センサ10C、センサ10B、及びセンサ10Aが選択されている間、センサ10D、センサ10C、センサ10B、及びセンサ10Aから出力されるアナログ信号を反転信号として増幅器40に入力するように、チョッパスイッチ70に切替信号SEL_CHOPを送信することでチョッパスイッチ70を制御する。
【0078】
すなわち、切替制御回路30は、増幅器40に入力されるアナログ信号を非反転信号に維持するようにチョッパスイッチ70を制御している間に、信号選択部20からセンサ10A、センサ10B、センサ10C、及びセンサ10Dの順でアナログ信号が出力されるように信号選択部20を制御する。次いで、切替制御回路30は、増幅器40に入力されるアナログ信号を反転信号に維持するようにチョッパスイッチ70を制御している間に、信号選択部20からセンサ10D、センサ10C、センサ10B、及びセンサ10Aの順でアナログ信号が出力されるように信号選択部20を制御する。
【0079】
そして、演算回路60は、以下の式に従って各成分を加算平均することで、各軸成分の磁場を示す測定データを導出する。
【0080】
Doutx={(1)-(8)-((2)-(7))}/4=Hx+3.5ΔX
Douty={(3)-(6)-((4)-(5))}/4=Hy+3.5ΔY
Doutz={((1)-(8))+((2)-(7))+((3)-(6))+((4)-(5))}/8=Hz+3.5ΔZ
【0081】
上記のように、各軸成分の磁場を示す測定データの時間変化分の係数は全ての軸において4となる。従って、各軸成分の磁場を示す測定データの時間変化分は揃う。また、測定データは、測定対象の軸以外に他の軸の誤差成分を含まない。このように、混成信号においてオフセット電圧Oeを除去して時分割で測定する場合でも、軸成分を並列に測定する場合と同じように、測定データを得られる。
【0082】
なお、演算回路60は、以下の式に従って各成分を加算平均することで、Z軸成分の磁場を示す測定データを導出してもよい。
【0083】
Doutz={((1)-(8))+((2)-(7))}/4=Hz+3.5ΔZ
または、
Doutz={((3)-(6))+((4)-(5))}/4=Hz+3.5ΔZ
【0084】
図13は、図2に示す測定タイミングで各軸の磁場を測定した場合の測定データの位相特性を示す。図14は、図3に示す測定タイミングで各軸の磁場を測定した場合の測定データの位相特性を示す。
【0085】
図13に示すように、図2に示す測定タイミングでは、X軸、Y軸、及びZ軸の順番に信号処理を行うため、各軸の位相特性は異なる。一方、図14に示すように、図3に示す測定タイミングでは、X軸、Y軸、及びZ軸の位相特性は同じになる。よって、群遅延の量は全ての軸で同じ量となる。つまり、各実施形態によれば、位相特性の観点でも各軸成分の磁場を同じタイミングで測定することができる。
【0086】
以上、各実施形態によれば、回路規模の増加及び消費電力の増加を抑制し、かつ複数のセンサで検出される磁場などの物理量の測定時間のずれを抑制できる。
【0087】
なお、上記の各実施形態では、センサ10として磁気センサを例に説明した。しかし、センサ10は、複数の軸成分ごとに物理量を検出するセンサであれば、磁気センサ以外のセンサでもよい。センサ10は、加速度センサ、またはジャイロセンサなどでもよい。
【0088】
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されない。上記実施の形態に、多様な変更または改良を加えることが可能であることが当業者に明らかである。その様な変更または改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。
【0089】
特許請求の範囲、明細書、および図面中において示した装置、システム、プログラム、および方法における動作、手順、ステップ、および段階等の各処理の実行順序は、特段「より前に」、「先立って」等と明示しておらず、また、前の処理の出力を後の処理で用いるのでない限り、任意の順序で実現しうることに留意すべきである。特許請求の範囲、明細書、および図面中の動作フローに関して、便宜上「まず、」、「次に、」等を用いて説明したとしても、この順で実施することが必須であることを意味するものではない。
【符号の説明】
【0090】
10A,10B,10C,10D センサ
20 信号選択部
30 切替制御回路
40 増幅器
50 ADC
60 演算回路
70 チョッパスイッチ
100A,100B、100C、100D 信号処理装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14