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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023089545
(43)【公開日】2023-06-28
(54)【発明の名称】導波管変換装置
(51)【国際特許分類】
   H01P 5/107 20060101AFI20230621BHJP
   H01P 5/12 20060101ALI20230621BHJP
   H01P 5/10 20060101ALI20230621BHJP
【FI】
H01P5/107 B
H01P5/12 Z
H01P5/10 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021204118
(22)【出願日】2021-12-16
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)電波資源拡大のための研究開発(JPJ000254)委託研究、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(71)【出願人】
【識別番号】304021277
【氏名又は名称】国立大学法人 名古屋工業大学
(74)【代理人】
【識別番号】110000291
【氏名又は名称】弁理士法人コスモス国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】榊原 久二男
(72)【発明者】
【氏名】ディアウオ アンリ アブ
(57)【要約】
【課題】積層基板と導波管との間での送受信の効率のよい導波管変換装置を提供すること。
【解決手段】本開示技術に係る導波管変換装置1は、積層基板2により構成され導波管の端部に取り付けられる装置であって、導電層4として、アンテナパターンを有するアンテナ層40と、アンテナ層40よりも導波管側に位置し、円環形状の第1リングウィンドウを有する第1リング層41と、第1リング層41よりも導波管側に位置し、第1リングウィンドウの外直径より小さく内直径より大きい直径の円形の第1ラウンドウィンドウが第1リングウィンドウと同心に配置されている第1ラウンド層42と、第1ラウンド層42よりも導波管側に位置し、第1ラウンドウィンドウの直径より大きい外径で第1リングウィンドウの内直径より小さい内直径の円環形状の第2リングウィンドウが第1リングウィンドウと同心に配置されている第2リング層43とを有している。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
絶縁層と導電層とを積層してなる積層基板により構成され、導波路を有する導波管の端部に取り付けられて導波管内の電磁波と入出力信号との変換を行う導波管変換装置であって、前記導電層として、
導波路との間で電磁波の送信または受信を行うアンテナパターンおよび前記アンテナパターンとの間で信号の入出力を行う差動線路パターンを有するアンテナ層と、
前記アンテナ層よりも導波管側に位置し、円環形状の第1リングウィンドウを有する第1リング層と、
前記第1リング層よりも導波管側に位置し、前記第1リングウィンドウの外直径より小さく内直径より大きい直径の円形の第1ラウンドウィンドウが前記第1リングウィンドウと同心に配置されている第1ラウンド層と、
前記第1ラウンド層よりも導波管側に位置し、前記第1ラウンドウィンドウの直径より大きい外径で前記第1リングウィンドウの内直径より小さい内直径の円環形状の第2リングウィンドウが前記第1リングウィンドウと同心に配置されている第2リング層とを有する導波管変換装置。
【請求項2】
請求項1に記載の導波管変換装置であって、
複数枚の前記第2リング層を有する導波管変換装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の導波管変換装置であって、前記導電層として、
前記第2リング層よりも導波管側に位置し、前記第2リングウィンドウの外直径より直径の円形の第2ラウンドウィンドウが前記第1リングウィンドウと同心に配置されている第2ラウンド層をさらに有する導波管変換装置。
【請求項4】
請求項1から請求項3までのいずれか1つに記載の導波管変換装置であって、前記導電層として、
最も導波管側に位置し、導波管の導波路の断面形状と同一の形状の最終ウィンドウが形成されている最終ウィンドウ層を有する導波管変換装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示技術は,導波管変換装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、電磁波の送信に中空導波管が使用されている。中空導波管においては、その両端における入出力装置との接続が問題となる。この点に関わる先行技術として、特許文献1、特許文献2に記載されているものを挙げることができる。これらの技術では、中空導波管の開口部を塞ぐように基板を配置している。ICチップから基板の線路導体へワイヤを介して給電するようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008-244877号公報
【0004】
【特許文献2】米国特許出願公開2020/0365971号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、前記した従来の技術には次のような問題点があった。積層基板と導波管との間での信号の変換効率がよくないのである。積層基板と導波管とでは構造が大きく異なるためである。このことは送受信のいずれの場合でも同様に問題となる。
【0006】
本開示技術は、前記した従来の技術が有する問題点を解決するためのものである。すなわちその課題とするところは、積層基板と導波管との間での送受信の効率のよい導波管変換装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示技術の一態様における導波管変換装置は、絶縁層と導電層とを積層してなる積層基板により構成され、導波路を有する導波管の端部に取り付けられて導波管内の電磁波と入出力信号との変換を行う装置であって、導電層として、導波路との間で電磁波の送信または受信を行うアンテナパターンおよびアンテナパターンとの間で信号の入出力を行う差動線路パターンを有するアンテナ層と、アンテナ層よりも導波管側に位置し、円環形状の第1リングウィンドウを有する第1リング層と、第1リング層よりも導波管側に位置し、第1リングウィンドウの外直径より小さく内直径より大きい直径の円形の第1ラウンドウィンドウが第1リングウィンドウと同心に配置されている第1ラウンド層と、第1ラウンド層よりも導波管側に位置し、第1ラウンドウィンドウの直径より大きい外径で第1リングウィンドウの内直径より小さい内直径の円環形状の第2リングウィンドウが第1リングウィンドウと同心に配置されている第2リング層とを有するものである。
【0008】
上記態様における導波管変換装置では、第1リングウィンドウおよび第1ラウンドウィンドウにより、アンテナ層と第1ラウンド層との間に、導波管側へ向かうほど狭くなる第1ビアホールが実質的に形成されている。また、第1ラウンドウィンドウおよび第2リングウィンドウにより、第1ラウンド層と導波管との間に、導波管側へ向かうほど広くなる第2ビアホールが実質的に形成されている。このため、積層基板と導波管との間での送受信の効率がよい。
【0009】
本明細書においては、導電層に形成されている円環形状のウィンドウを「リングウィンドウ」と呼び、円形のウィンドウを「ラウンドウィンドウ」と呼ぶ。各導電層には基本的に、リングウィンドウとラウンドウィンドウとのいずれか一方が互いに同心に形成されている。リングウィンドウが形成されている導電層を「リング層」と呼び、ラウンドウィンドウが形成されている導電層を「ラウンド層」と呼ぶ。
【0010】
アンテナ層から見てすぐ導波管側のリングウィンドウを「第1リングウィンドウ」と呼び、第1リングウィンドウを有するリング層を「第1リング層」(例えば図2の「41」)と呼ぶ。アンテナ層と導波管とのほぼ中間辺りに位置するリングウィンドウを「第2リングウィンドウ」と呼び、第2リングウィンドウを有するリング層を「第2リング層」(例えば図2の「43」、「44」)と呼ぶ。第1リングウィンドウと第2リングウィンドウとの中間に位置するラウンドウィンドウを「第1ラウンドウィンドウ」と呼び、第1ラウンドウィンドウを有するラウンド層を「第1ラウンド層」(例えば図2の「42」)と呼ぶ。
【0011】
上記態様における導波管変換装置では、複数枚の第2リング層を有することが望ましい。これにより、第2ビアホールの広がり具合を規定する機能と、第1ウィンドウ層から最も導波管側の第2リング層までの間隔を調整する機能とを分けることができる。複数枚の第2リング層のうちアンテナ層側のものを「第2リング第1層」(例えば図2の「43」)と呼び、導波管側のものを「第2リング第2層」(例えば図2の「44」)と呼ぶ。
【0012】
上記のいずれかの態様における導波管変換装置では、導電層として、第2リング層よりも導波管側に位置し、第2リングウィンドウの外直径より直径の円形の第2ラウンドウィンドウが第1リングウィンドウと同心に配置されている第2ラウンド層をさらに有することが望ましい。これにより、第2リング層から導波管までの間隔を調整することができる。第2リングウィンドウよりも導波管側にラウンドウィンドウがある場合、それを「第2ラウンドウィンドウ」と呼び、第2ラウンドウィンドウを有するラウンド層を「第2ラウンド層」(例えば図2の「45」、「46」)と呼ぶ。第2ラウンド層が複数ある場合、アンテナ層側から、「第2ラウンド第1層」、「第2ラウンド第1層」と呼ぶ。
【0013】
上記のいずれかの態様における導波管変換装置では、導電層として、最も導波管側に位置し、導波管の導波路の断面形状と同一の形状の最終ウィンドウが形成されている最終ウィンドウ層を有することが望ましい。これにより、積層基板と導波管との接合がしやすい。
【発明の効果】
【0014】
本構成によれば、積層基板と導波管との間での送受信の効率のよい導波管変換装置が提供されている。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】実施の形態に係る導波管変換装置の斜視図である。
図2】実施の形態の導波管変換装置における積層基板の構成を示す分解斜視図である。
図3】導電層の1つであるアンテナ層を示す平面図である。
図4】導電層の1つである第1リング層を示す平面図である。
図5】導電層の1つである第1ラウンド層を示す平面図である。
図6】導電層の1つである第2リング第1層を示す平面図である。
図7】導電層の1つである第2リング第2層を示す平面図である。
図8】導電層の1つである第2ラウンド第1層および第2ラウンド第2層を示す平面図である。
図9】導電層の1つである最終ウィンドウ層を示す平面図である。
図10】実施の形態に係る導波管変換装置の断面図である。
図11】実施の形態に係る導波管変換装置の伝送特性を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本開示技術を具体化した実施の形態について、添付図面を参照しつつ詳細に説明する。図1に、本形態に係る導波管変換装置1を示す。導波管変換装置1は、積層基板2により構成されている。積層基板2は、絶縁層3と導電層4とを積層してなるものである。導波管変換装置1は、導波管5に取り付けられるものである。導波管5の内部には導波路6が形成されている。導波路6は、断面形状が矩形とされており、本形態では中空とされている。導波管変換装置1を構成する積層基板2には、導電層4のうちの1つにおける導体パターンとして、アンテナパターン7が含まれている。導波管変換装置1では、アンテナパターン7により、導波路6への電磁波の送信および導波路6からの電磁波の受信を行うことができる。本明細書で「導波管変換装置」とは、導波管5の導波路6内の電磁波と、積層基板2への入出力信号との変換を行う装置をいう。
【0017】
積層基板2に含まれる導電層4について説明する。本形態では図2に示すように、各導電層4がそれぞれ異なる導体パターンを有している。図2では理解の容易のため、積層基板2の各導電層4を互いに間隔を開けた状態で示している。本形態では、積層基板2中に8層の導電層4が存在する。8層の導電層4を区別して、図2中の上のものから順に、40、41、42、43、44、45、46、47の符号で示す。以下、上のものから順に説明する。
【0018】
図3に示すのは、積層基板2中で最も導波管5から遠い位置にある導電層4であるアンテナ層40である。アンテナ層40は、アンテナパターン7を含む導電層4である。アンテナ層40は、一対のアンテナパターン7と一対の入出力線パターン10とを有している。アンテナパターン7は、導波路6との間で電磁波の送信または受信を行うパターンである。入出力線パターン10は、差動線路を構成しており、アンテナパターン7との間で信号の入出力を行うパターンである。一方のアンテナパターン7と一方の入出力線パターン10とが繋がっており、もう一方のアンテナパターン7ともう一方の入出力線パターン10とが繋がっている。
【0019】
アンテナ層40はさらに、外郭パターン80を有している。外郭パターン80は、アンテナ層40のうちアンテナパターン7および入出力線パターン10以外の大部分を占めている。ただしアンテナパターン7および入出力線パターン10は、絶縁部13により外郭パターン80から分離されている。
【0020】
図4に示すのは、積層基板2中でアンテナ層40のすぐ導波管5側に隣接して位置する導電層4である第1リング層41である。第1リング層41は、外郭パターン81と、アイランドパターン91とを有している。第1リング層41においては、外郭パターン81とアイランドパターン91との間に円環形状の絶縁部である第1リングウィンドウ131が形成されている。第1リングウィンドウ131により外郭パターン81とアイランドパターン91とは分離されている。第1リングウィンドウ131の外周および内周は同心円形状をなしている。
【0021】
図5に示すのは、第1リング層41の導波管5側に隣接して位置する導電層4である第1ラウンド層42である。第1ラウンド層42は、外郭パターン82と、円形の絶縁部である第1ラウンドウィンドウ132とを有している。
【0022】
図6に示すのは、第1ラウンド層42の導波管5側に隣接して位置する導電層4である第2リング第1層43である。第2リング第1層43は、外郭パターン83と、アイランドパターン92とを有している。第2リング第1層43においては、外郭パターン83とアイランドパターン92との間に円環形状の絶縁部である第2リング第1ウィンドウ133が形成されている。第2リング第1ウィンドウ133により外郭パターン83とアイランドパターン92とは分離されている。第2リング第1ウィンドウ133の外周および内周は同心円形状をなしている。
【0023】
図7に示すのは、第2リング第1層43の導波管5側に隣接して位置する導電層4である第2リング第2層44である。第2リング第2層44は、外郭パターン84と、アイランドパターン94とを有している。第2リング第2層44においては、外郭パターン84とアイランドパターン94との間に円環形状の絶縁部である第2リング第2ウィンドウ134が形成されている。第2リング第2ウィンドウ134により外郭パターン84とアイランドパターン94とは分離されている。第2リング第2ウィンドウ134の外周および内周は同心円形状をなしている。第2リング第1層43と第2リング第2層44とはいずれも、第2リング層に相当する。
【0024】
図8に示すのは、第2リング第2層44の導波管5側に隣接して位置する導電層4である第2ラウンド第1層45である。第2ラウンド第1層45は、外郭パターン85と、円形の絶縁部である第2ラウンドウィンドウ135とを有している。第2ラウンド第1層45の導波管5側に隣接して位置する導電層4である第2ラウンド第2層46も、第2ラウンド第1層45のパターンと同様のパターンを有している。第2ラウンド第1層45と第2ラウンド第2層46とはいずれも、第2ラウンド層に相当する。
【0025】
図9に示すのは、積層基板2中で最も導波管5寄りに位置する導電層4である最終ウィンドウ層47である。最終ウィンドウ層47は、外郭パターン87と、長方形の絶縁部である最終ウィンドウ137とを有している。最終ウィンドウ137の長辺長Lおよび短辺長Wは、導波路6の断面形状のサイズと同じである。
【0026】
上記各導電層4中の第1リングウィンドウ131(図4)、第1ラウンドウィンドウ132(図5)、第2リング第1ウィンドウ133(図6)、第2リング第2ウィンドウ134(図7)、第2ラウンドウィンドウ135(図8)の相互関係を説明する。これらの円形のウィンドウはすべて、同軸上に位置している。
【0027】
サイズに関しては、次の各関係が成り立つ。
R2 < R3 < R1
R5 < R3 < R4
R7 < R3 < R6
R7 < R5 < R2
R4 ≦ R6
R4 < R8
R6 ≦ R8
【0028】
上記における各記号の意味は次の通りである。
R1:第1リングウィンドウ131の外直径
R2:第1リングウィンドウ131の内直径
R3:第1ラウンドウィンドウ132の直径
R4:第2リング第1ウィンドウ133の外直径
R5:第2リング第1ウィンドウ133の内直径
R6:第2リング第2ウィンドウ134の外直径
R7:第2リング第2ウィンドウ134の内直径
R8:第2ラウンドウィンドウ135の直径
【0029】
図3図8には、最終ウィンドウ137(図9)に相当する長方形を破線で書き加えている。積層基板2において図3図9の各導電層4は、これらの長方形137同士がちょうど重なり合うように積層されている。これらの長方形137の位置は、導波路6の断面形状の長方形とも重なり合うように配置されている。つまり、図4図8の各円形のウィンドウは、導波路6の断面形状の中心に対しても同軸に配置されている。図3図9の各導電層4には、外郭パターン80~87同士を接続するスルーホール12も形成されている。
【0030】
図10に、本形態に係る導波管変換装置1の断面構造を示す。図10中には、計7層の絶縁層3が現れている。このうち厚み方向の中央のもの(第2リング第1層43と第2リング第2層44との間のもの)が他の絶縁層3より厚く描かれている。他より厚いこの絶縁層3は、積層基板2の機械的強度のためのコア層であり、約100μm前後の厚さのものである。それ以外の薄めの絶縁層3は、プリプレグを積層したものであり、それぞれ数十μm程度の厚さのものである。プリプレグ絶縁層3の層数は、コア絶縁層3の両面で同数となっている。
【0031】
図10の導波管変換装置1における積層基板2の内部では、上記図4の第1リング層41から図8の第2ラウンド第2層46までの各円形のウィンドウにより、図10中に破線で示すようなテーパ型ビアホールが実質的に形成されている。第1ラウンド層42よりもアンテナ層40側の第1ビアホール14は、導波管5側へ向かうほど狭くなっている。第1ラウンド層42よりも導波管5側の第2ビアホール15は、導波管5側へ向かうほど広くなっている。
【0032】
積層基板2では、特定の導電層4間の間隔を、送受信しようとする電磁波の波長との関係で設定することが望ましい。図10に示した例は、第1ラウンド層42と第2リング第2層44との間隔T1と、第2リング第2層44との最終ウィンドウ層47との間隔T2とをいずれも、送受信しようとする電磁波の波長λの4分の1に設定した例である。このようにすることで導波管変換装置1は、当該波長の電磁波に対してより優れた伝送特性を発揮することができる。第1ラウンド層42は、第2ビアホール15の起点としての意味を有する。第2リング第2層44、つまり複数の第2リング層のうち最も導波管5寄りのものは、第2ビアホール15の広がり具合を規定する意味を有する。
【0033】
間隔T1、間隔T2は、積層基板2の設計時に、導電層4の枚数あるいは絶縁層3の厚さにより調整することができる。図10に示した例は、間隔T1および間隔T2を、コア絶縁層3に対する各導電層4の配置、第2ラウンド層(45、46)の枚数により調整したものである。これは調整の仕方の一例である。間隔T1、T2については、絶縁層3の厚さや第2リング層の枚数、第2ラウンド層の枚数等により多様な調整の仕方がある。
【0034】
図11に、本形態の導波管変換装置1の伝送特性のグラフを示す。図11には、透過特性と反射特性との2通りの伝送特性が示されている。透過特性とは、アンテナパターン7と導波路6との間での信号の透過のしやすさに関する指標である。送信時でいえば、入出力線パターン10からアンテナパターン7に入力した信号に対する、導波路6へ放射された信号の比率である。受信時でいえば、導波路6内の信号に対する、アンテナパターン7が取得した信号の比率である。反射特性とは、積層基板2の第1ビアホール14、第2ビアホール15の部分と導波路6との間での反射により信号が失われる程度を示す指標である。透過特性と相補的な関係となる。
【0035】
図11のグラフの横軸は、電磁波の周波数である。縦軸は、透過特性および反射特性である。透過特性はグラフ中の上方ほど、反射特性は下方ほど、損失が少なく優れていることを意味する。図11中の実線が反射特性のグラフで破線が透過特性のグラフである。実線の反射特性のグラフを見ると、矢印Wで示す広い帯域幅(約100GHz)にわたって損失成分が-10dB以下であることが分かる。この領域内では透過特性も-4dB程度と良好である。
【0036】
導波管変換装置1の伝送特性についてさらに述べる。積層基板2中のリングウィンドウにおいては、その1周の長さと一致する波長の電磁波に対して共振を起こす性質がある。本形態では3つのリングウィンドウ(131、133、134)を備えていることから、図11の反射特性中に3箇所の落ち込み箇所(3重共振)が見られる。これらは、その周波数では共振により反射損失が少ないことを意味している。このように複数の共振周波数があることで、帯域幅Wの全体としての伝送特性の向上に貢献している。
【0037】
さらに本形態では、3つのリングウィンドウ(131、133、134)のうち最もアンテナパターン7に近い第1リングウィンドウ131を、比較的大径でかつ幅の狭い形状としている。そして、各リングウィドウの外直径(R1、R4、R6)をほぼ同じとしつつ、導波管5に近いものほど内直径(R2、R5、R7)が小さくなる設定としている。この設定により、第1リングウィンドウ131から導波管5に向かって徐々に内直径の影響が小さくなり導波管5に繋がる物理構造としている。また、3つのリングウィンドウ(131、133、134)間の厚み方向の間隔があまり大きくは異ならないようにしている。これにより3重共振を実現させつつ、特性の急峻な変化を避け、広い帯域幅Wで良好な伝送特性が得られるようにしている。このように本形態では,前述の構造により優れた伝送特性を有している。むろん前述の、間隔T1、T2と4分の1波長との関係もこれに貢献している。
【0038】
以上詳細に説明したように本実施の形態の導波管変換装置1では、積層基板2におけるアンテナ層40よりも導波管5側の導電層41~47のパターンにより、第1リングウィンドウ131、第1ラウンドウィンドウ132、第2リング第1ウィンドウ133、第2リング第2ウィンドウ134、第2ラウンドウィンドウ135を有している。これにより、積層基板2内に実質的にテーパ型ビアホールが形成されるようにしている。この構成により、送受信の効率のよい導波管変換装置を実現している。
【0039】
本実施の形態は単なる例示にすぎず、本発明を何ら限定するものではない。したがって本発明は当然に、その要旨を逸脱しない範囲内で種々の改良、変形が可能である。例えば、アンテナ層40におけるアンテナパターン7の形状について、図3中では左右から同一直線上にて向き合う形としているが、別の形状でもよい。例えば、左右のアンテナパターン7間に角度が付いている形状が考えられる。また、両アンテナパターン7間の間隔は、種々変更可能である。
【0040】
本実施の形態では、第1リング層、第1ラウンド層、第2リング層、第2ラウンド層の枚数を、1枚、1枚、2枚、2枚としたが、これらの層の枚数はこの通りでなくてもよい。第2ラウンド層45、46および最終ウィンドウ層47は必須のものではない。ただし第2ラウンド層が存在することにより、前述の間隔T2の調整がしやすい。最終ウィンドウ層47が存在することにより、積層基板2と導波管5との接合がしやすい。最終ウィンドウ層47が存在しない場合における間隔T2は、第2リング層(複数枚の場合は最も導波管5寄りのもの)と導波管5の先端との間隔とする。
【符号の説明】
【0041】
1 導波管変換装置 4 導電層
2 積層基板 5 導波管
3 絶縁層 6 導波路
7 アンテナパターン 46 第2ラウンド第2層
10 入出力線パターン 131 第1リングウィンドウ
40 アンテナ層 132 第1ラウンドウィンドウ
41 第1リング層 133 第2リング第1ウィンドウ
42 第ラウンド層 134 第2リング第2ウィンドウ
43 第2リング第1層 135 第2ラウンドウィンドウ
44 第2リング第2層 137 最終ウィンドウ
45 第2ラウンド第1層
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11