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特開2023-89548樹脂組成物、成形体及びそれらの製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023089548
(43)【公開日】2023-06-28
(54)【発明の名称】樹脂組成物、成形体及びそれらの製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08L 67/00 20060101AFI20230621BHJP
   C08L 67/02 20060101ALI20230621BHJP
   C08K 3/014 20180101ALI20230621BHJP
   B29B 7/48 20060101ALI20230621BHJP
   C08J 5/18 20060101ALI20230621BHJP
【FI】
C08L67/00
C08L67/02
C08K3/014
B29B7/48
C08J5/18 CFD
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021204121
(22)【出願日】2021-12-16
(71)【出願人】
【識別番号】000002886
【氏名又は名称】DIC株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100177471
【弁理士】
【氏名又は名称】小川 眞治
(74)【代理人】
【識別番号】100163290
【弁理士】
【氏名又は名称】岩本 明洋
(74)【代理人】
【識別番号】100149445
【弁理士】
【氏名又は名称】大野 孝幸
(72)【発明者】
【氏名】山岡 悠太
(72)【発明者】
【氏名】木村 敏樹
【テーマコード(参考)】
4F071
4F201
4J002
【Fターム(参考)】
4F071AA46
4F071AB21
4F071AB24
4F071AB26
4F071AC11
4F071AC15
4F071AE05
4F071AE09
4F071AF30
4F071AF53Y
4F071AH04
4F071BA01
4F071BB06
4F071BC01
4F201AA24
4F201AB06
4F201AB12
4F201AM30
4F201BA01
4F201BC01
4F201BD05
4F201BK02
4F201BK13
4F201BK26
4F201BK73
4J002CF001
4J002CF061
4J002DE147
4J002DE237
4J002DH026
4J002DJ007
4J002DJ017
4J002DJ037
4J002DJ047
4J002DJ057
4J002EJ016
4J002EJ026
4J002EJ036
4J002EJ046
4J002EU176
4J002EU186
4J002EW066
4J002FD056
4J002FD067
4J002FD076
(57)【要約】
【課題】 ポリエステル樹脂に添加物を溶融混錬して樹脂組成物を製造する方法において、当該樹脂組成物を溶融成形して得られる成形体のゲル化を抑制しつつ、かつ、歩留まりを高める方法、特に樹脂フィルムにあってはゲル化を抑制しつつ透明性を維持し、かつ、歩留まりを高める方法を提供する。
【解決手段】ポリエステル樹脂、安定剤および体質顔料を必須成分として配合してなる樹脂組成物であって、該樹脂組成物1g当たりのケミルミネッセンス最大発光強度が、70,000cps以下である樹脂組成物、それを成形してなる成形体およびそれらの製造方法。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリエステル樹脂(a)、安定剤(b)および体質顔料(c)を必須成分として配合してなる樹脂組成物であって、
該樹脂組成物1g当たりのケミルミネッセンス最大発光強度が、70,000cps以下であることを特徴とする樹脂組成物。
【請求項2】
前記ポリエステル樹脂(a)が、ポリエチレンテレフタレート樹脂である、請求項1記載の樹脂組成物。
【請求項3】
ポリエステル樹脂(a)を必須成分として含む樹脂組成物の製造方法であって、
前記樹脂組成物が、ポリエステル樹脂(a)、安定剤(b)および体質顔料(c)を、該樹脂組成物1g当たりのケミルミネッセンス最大発光強度が、70,000cps以下となるように、不活性ガス雰囲気下で、溶融混錬する工程を含む、樹脂組成物の製造方法。
【請求項4】
請求項1記載の樹脂組成物を溶融成形してなる成形体。
【請求項5】
樹脂フィルムである、請求項4記載の成形体。
【請求項6】
請求項3記載の製造方法により製造された樹脂組成物を、溶融成形する工程を含む、成形体の製造方法。
【請求項7】
溶融成形がフィルム成形である、請求項6記載の製造方法。
【請求項8】
ポリエステル樹脂(a)、安定剤(b)および体質顔料(c)を必須成分として配合してなる樹脂組成物を溶融成形する成形体のゲル化抑制方法であって、
該樹脂組成物1g当たりのケミルミネッセンス最大発光強度を70,000cps以下とすることを特徴とする方法。
【請求項9】
ポリエステル樹脂(a)を必須成分として含む樹脂組成物を溶融成形する成形体のゲル化を評価方法であって、
該樹脂組成物のケミルミネッセンス最大発光強度を測定することを特徴とする方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリエステル樹脂を主成分とし、ゲル化が抑制され、かつ、高透明性を有する成形体およびその製造方法と、当該成形体を提供することができる、樹脂組成物およびその製造方法とに関する。さらに本発明は、前記成形体を製造するための樹脂組成物の評価方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリエチレンテレフタレートに代表されるポリエステル樹脂は、熱可塑性樹脂の一種で、重縮合によって生成される。ポリエステル樹脂は、優れた機械的特性、熱的特性、電気的特性を有し、エンジニアリングプラスチックとも称され、産業用途に広く使用され、需要量も増大している。通常、ポリエステル樹脂は、主に繊維、包装、フィルムといった種々の用途に用いられるため、商業的にはブレンド用ポリマーとして使用される。これを目的に応じて添加剤と溶融混錬する工程を経てブレンド物(樹脂組成物)を得、さらに溶融成形して各種用途に応じた成形体を製造する。
【0003】
近年、諸用途の要求特性の高まりに伴って、成形体中のゲル化物を起因とする異物・欠点の低いこと(歩留まりの高いこと)が、製品品質および生産性の両面から注目されるようになってきている。
【0004】
このため、例えば、特許文献1には、ポリマーの重合用触媒由来のアルカリ土類金属量およびアルカリ金属量とリン化合物の量の比(M/P)が特定の範囲内を満たすポリエステル樹脂組成物が溶融押出し時に発生するポリマーゲル化物が少なく、耐熱性や製膜性に優れたポリエステル樹脂組成物およびフィルムを提供することが提案されている。また、特許文献2、3、4には酢酸マンガンや三酸化二アンチモン等をポリマー重縮合用触媒として使用したポリエステルおよびポリエステルフィルムが、ゲル化を抑制し、耐熱性や製膜性に優れることが記載されている。これら特許文献1~4の方法はポリエステル樹脂組成物の成形体中のゲル化抑制を、ポリマー重縮合条件に遡って検討するものである。
【0005】
一般的に、ポリマー製造は、均質なポリマーを大量生産する必要があることから、各種用途に応じてその生産条件を調整することは好まれない。このため、ブレンド時、すなわち、ポリエステル樹脂に添加物を溶融混錬して樹脂組成物を製造する工程において、ゲル化を抑制する方法がより簡便で望まれていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2003-96280号公報
【特許文献2】特開平11-21337号公報
【特許文献3】特開2014-22027号公報
【特許文献4】国際公開第2017/073385号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
そこで、本発明が解決しようとする第一の課題は、ポリエステル樹脂に添加物を溶融混錬して樹脂組成物を製造する方法において、当該樹脂組成物を溶融成形して得られる成形体のゲル化を抑制しつつ、かつ、歩留まりを高める方法、特に樹脂フィルムにあってはゲル化を抑制しつつ透明性を維持し、かつ、歩留まりを高める方法を提供することにある。
【0008】
また、本発明が解決しようとする第二の課題は、ポリエステル樹脂を主成分とする成形体、特に樹脂フィルムの製造方法において、成形体に発生するゲル化を抑制しつつ、かつ、歩留まりを高める方法、特に樹脂フィルムにあっては、ゲル化を抑制しつつ透明性を維持し、かつ、歩留まりを高める方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、不活性ガス雰囲気下、すなわち物質の酸化劣化が生じない条件下で試料が発する微弱な発光を測定することで、ポリエステル樹脂組成物のゲル化要因と相関関係があることを見出した。そして上記目的を達成するために、発明者らは鋭意研究を重ねた結果、ブレンド時、すなわち、ポリエステル樹脂に添加物を溶融混錬して樹脂組成物を製造する工程において、当該樹脂組成物のケミルミネッセンス最高発光強度を測定することで、それを溶融成形する際に発生するゲルの発生を予め評価することができることを見出した。そして、これを利用してポリエステル樹脂を含む樹脂組成物のケミルミネッセンス最高発光強度を特定範囲になるよう、安定剤および体質顔料の配合割合と加熱温度を調整しながら溶融混錬を行うことで、ゲル化が抑制された成形体を歩留まりよく製造できること、特に、ゲル化が抑制され、かつ、透明性を維持した樹脂フィルムを歩留まりよく製造できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0010】
すなわち、本発明は、ポリエステル樹脂(a)、安定剤(b)および体質顔料(c)を必須成分として配合してなる樹脂組成物であって、
該樹脂組成物1g当たりのケミルミネッセンス最大発光強度が、70,000cps以下であることを特徴とする樹脂組成物に関する。
【0011】
また本発明は、当該樹脂組成物を溶融成形してなる成形体に関する。
【0012】
また本発明は、当該樹脂組成物を溶融成形する工程を含む、成形体の製造方法。
【0013】
また本発明は、ポリエステル樹脂(a)を必須成分として含む樹脂組成物の製造方法であって、
前記樹脂組成物が、ポリエステル樹脂(a)、安定剤(b)および体質顔料(c)を、該樹脂組成物1g当たりのケミルミネッセンス最大発光強度が、70,000cps以下となるように溶融混錬する工程を含む、樹脂組成物の製造方法に関する。
【0014】
また本発明は、前記製造方法により製造された樹脂組成物を、溶融成形する工程を含む、成形体の製造方法に関する。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、ポリエステル樹脂に添加物を溶融混錬して樹脂組成物を製造する方法において、当該樹脂組成物を溶融成形して得られる成形体のゲル化を抑制しつつ、かつ、歩留まりを高める方法、特に樹脂フィルムにあってはゲル化を抑制しつつ透明性を維持し、かつ、歩留まりを高める方法を提供することができる。
【0016】
また、本発明によれば、ポリエステル樹脂を主成分とする成形体、特に樹脂フィルムの製造方法において、成形体に発生するゲル化を抑制しつつ、かつ、歩留まりを高める方法、特に樹脂フィルムにあっては、ゲル化を抑制しつつ透明性を維持し、かつ、歩留まりを高める方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態を説明する。本発明は、以下の実施形態に限定されない。
【0018】
本発明の樹脂組成物は、ポリエステル樹脂(a)、安定剤(b)および体質顔料(c)を必須成分として配合してなる樹脂組成物であって、
該樹脂組成物1g当たりのケミルミネッセンス最大発光強度が、70,000cps以下であることを特徴とする。
【0019】
本発明により、ポリエステル樹脂を含む樹脂組成物のケミルミネッセンス最高発光強度を測定することで、それを溶融成形して得られる成形体に発生するゲル化を予め評価することができる。そして、これを利用して樹脂組成物1g当たりのケミルミネッセンス最高発光強度が70,000cps以下となるように、ポリエステル樹脂(a)に、安定剤(b)および体質顔料(c)の配合割合と加熱温度を調整しながら溶融混錬を調整することでゲル化が抑制された成形体を歩留まりよく製造でき、特に、ゲル化が抑制され、かつ、透明性を維持した樹脂フィルムを歩留まりよく製造できる。ここで、ゲル化が抑制された成形体を歩留まりよく製造できること、特に、ゲル化が抑制され、かつ、透明性を維持した樹脂フィルムを歩留まりよく製造できることから、調整する樹脂組成物1g当たりのケミルミネッセンス最高発光強度の範囲は、45,000cps以下がより好ましく、35,000cps以下がさらに好ましく、30,000cps以下が特に好ましい。また、調整する樹脂組成物1g当たりのケミルミネッセンス最高発光強度の範囲の下限は特に限定されないが、好ましくは13,000cpsである。なお、前記樹脂組成物1g当たりのケミルミネッセンス発光強度のバックグランドは500cpsにある。
【0020】
前記樹脂組成物1g当たりのケミルミネッセンス最高発光強度が70,000cpsを超えると、当該樹脂組成物を溶融成形した際の成形体中のゲル化を抑制しつつ、かつ、歩留まりを高めることが難しくなる。また特に樹脂フィルムにあってはゲル化を抑制しつつ透明性を維持し、かつ、歩留まりを高めることが難しくなる。
【0021】
ポリエステル樹脂(a)としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレン-2、6-ナフタレート、ポリプロピレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリへキシレンテレフタレート、ポリシクロヘキシレンジメチレンテレフタレート(PCT)、ポリトリメチレンテレフタレート(PTT)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリブチレンナフタレート(PBN)、ポリシクロヘキサンジメチルフタレート(PCN)、ポリトリメチレンナフタレート(PTN)、非晶性ポリエステル樹脂(PETG、PCTG)、ポリエチレン-1,2-ビス(フェノキシ)エタン-4,4’-ジカルボキシレート、ポリエチレンイソフタレート/テレフタレート、ポリブチレンテレフタレート/イソフタレート等の芳香族ポリエステル系樹脂、及びポリ乳酸などから挙げられる。これらのポリエステル樹脂は1種類であってもよいし、2種類以上であってもよい。
また、ポリエステル樹脂はジカルボン酸単位やジオール単位が共に単一であるホモポリマーでもよく、非晶性を高める目的でジカルボン酸単位やジオール単位の少なくとも一方が複数種である共重合体としてもよい。若しくは2種以上が相溶したポリエステル樹脂のブレンド体であってもよい。
【0022】
ポリエステル樹脂は、(1)ジカルボン酸成分もしくはそのエステル形成性誘導体(以下、「ジカルボン酸成分」ともいう)とジオール成分の重縮合、(2)一分子内にカルボン酸もしくはカルボン酸誘導体部分と水酸基を有する化合物の重縮合、および上記(1)及び(2)の組み合わせにより得ることができる。また、ポリエステル樹脂の重合は常法により行うことができる。
【0023】
上記(1)において、ジカルボン酸成分としては、例えば、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、スベリン酸、セバシン酸、ドデカンジオン酸、ダイマー酸、エイコサンジオン酸、ピメリン酸、アゼライン酸、メチルマロン酸、エチルマロン酸等の脂肪族ジカルボン酸類、アダマンタンジカルボン酸、ノルボルネンジカルボン酸、イソソルビド、シクロヘキサンジカルボン酸、デカリンジカルボン酸などの脂環族ジカルボン酸、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、1,4-ナフタレンジカルボン酸、1,5-ナフタレンジカルボン酸、2,6-ナフタレンジカルボン酸、1,8-ナフタレンジカルボン酸、4,4’-ジフェニルジカルボン酸、4,4’-ジフェニルエーテルジカルボン酸、4,4’-ジフェニルスルホンジカルボン酸、5-ナトリウムスルホイソフタル酸、フェニルエンダンジカルボン酸、アントラセンジカルボン酸、フェナントレンジカルボン酸、9,9’-ビス(4-カルボキシフェニル)フルオレン酸などの芳香族ジカルボン酸、もしくはそのエステル誘導体などが挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、複数種類用いてもよい。
【0024】
ジオール成分としては、例えば、エチレングリコール、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、1,2-ブタンジオール、1,3-ブタンジオールなどの脂肪族ジオール類、シクロヘキサンジメタノール、スピログリコール、イソソルビドなどの脂環式ジオール類、ビスフェノールA、1,3-ベンゼンジメタノール、1,4-ベンセンジメタノール、9,9’-ビス(4-ヒドロキシフェニル)フルオレンなどの芳香族ジオール類等が挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、必要に応じて複数種類用いてもよい。
【0025】
重合されたポリエステル樹脂(a)は、一旦、ストランド状に押出した後に冷却、固化し、切断してペレット状、チップ状などの顆粒状物に賦形されていてもよい。ポリエステル樹脂(a)がブレンド用ポリマーとして使用されるものであるという観点で、本発明の樹脂組成物の製造方法の原料として用いるポリエステル樹脂(a)は顆粒状物であってよい。
【0026】
本発明の樹脂組成物は、安定剤(b)を配合してなる。安定剤は、ポリマーの劣化素反応のいずれかを抑制して安定化する剤である。安定剤としては、酸化防止剤および紫外線吸収剤から選択される1種、または複数種のものが使用可能であり、好ましくは、酸化防止剤としてのリン系化合物(リン系安定剤、リン系酸化防止剤とも称する)、フェノール系化合物(フェノール系安定剤、フェノール系酸化防止剤とも称する)が挙げられ、紫外線吸収剤としては、ベンゾトリアゾール系化合物(ベンゾトリアゾール系安定剤、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤とも称する)、トリアジン系化合物(トリアジン系安定剤、トリアジン系紫外線吸収剤とも称する)等、好ましくはベンゾトリアゾール系等も使用可能である。なお、酸化防止剤は、酸化により発生するラジカルと速やかに反応することによって新たなラジカル発生を抑制して材料を保護することが知られている。また、紫外線吸収剤は紫外線を吸収し化学反応によって影響の小さな熱やエネルギーに変換することで材料を保護するものであるがその際に劣化の根源であるラジカルの発生を抑える効果を有することが知られている。本発明においては、これらの剤によるラジカル発生の抑制効果が、主にポリエステル樹脂の溶融混錬時における熱劣化を抑制し、ゲル化抑制に効果を奏するものと考えられる。
【0027】
リン系安定剤としては、公知の任意のものを使用できる。例えば、リン酸、ホスホン酸、亜燐酸、ホスフィン酸、ポリリン酸などのリンのオキソ酸;酸性ピロリン酸ナトリウム、酸性ピロリン酸カリウム、酸性ピロリン酸カルシウムなどの酸性ピロリン酸金属塩;リン酸カリウム、リン酸ナトリウム、リン酸セシウム、リン酸亜鉛など第1族または第2B族金属のリン酸塩;ホスフェート化合物、ホスファイト化合物、ホスホナイト化合物などが挙げられるが、ホスファイト化合物が特に好ましい。
【0028】
ホスファイト化合物としては、例えば、トリフェニルホスファイト、トリス(モノノニルフェニル)ホスファイト、トリス(モノノニル/ジノニル・フェニル)ホスファイト、トリス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)ホスファイト、モノオクチルジフェニルホスファイト、ジオクチルモノフェニルホスファイト、モノデシルジフェニルホスファイト、ジデシルモノフェニルホスファイト、トリデシルホスファイト、トリラウリルホスファイト、トリステアリルホスファイト、ジステアリルペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,4-ジ-tert-ブチル-4-メチルフェニル)ペンタエリスリトールホスファイト、ビス(2,6-ジ-tert-ブチルフェニル)オクチルホスファイト、2,2-メチレンビス(4,6-ジ-tert-ブチルフェニル)オクチルホスファイト、テトラキス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)-4,4’-ビフェニレン-ジ-ホスファイト、6-[3-(3-tert-ブチル-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)プロポキシ]-2,4,8,10-テトラ-tert-ブチルジベンゾ[d,f][1,3,2]-ジオキサホスフェピン等が挙げられる。
【0029】
ホスファイト化合物のなかでもトリフェニルホスファイト、トリス(モノノニルフェニル)ホスファイト、トリス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)ホスファイト等が好ましく、とりわけトリス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)ホスファイトがより好ましい。このような、有機ホスファイト化合物としては、具体的には例えば、アデカ社製「アデカスタブ1178」、住友化学社製「スミライザーTNP」、城北化学工業社製「JP-351」、アデカ社製「アデカスタブ2112」、チバ・スペシャルテイ・ケミカルズ社製「イルガフォス168」、城北化学工業社製「JP-650」等が挙げられる。
【0030】
ホスファイト化合物として、なかでもビス(2,4-ジ-tert-ブチル-4-メチルフェニル)ペンタエリスリトールホスファイト、ビス(2,6-ジ-tert-ブチルフェニル)オクチルホスファイトもより好ましい。このような、有機ホスファイト化合物としては、具体的には例えば、アデカ社製「アデカスタブPEP-24G」、「アデカスタブPEP-36」等が挙げられる。
【0031】
リン系安定剤は、上記の1種類を用いても、または2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0032】
フェノール系安定剤としては、例えばヒンダードフェノール系酸化防止剤が挙げられる。その具体例としては、ペンタエリスリトールテトラキス[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、オクタデシル-3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート、チオジエチレンビス[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、N,N’-ヘキサン-1,6-ジイルビス[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニルプロピオナミド)、2,4-ジメチル-6-(1-メチルペンタデシル)フェノール、ジエチル[[3,5-ビス(1,1-ジメチルエチル)-4-ヒドロキシフェニル]メチル]ホスフォエート、3,3’,3’’,5,5’,5’’-ヘキサ-tert-ブチル-a,a’,a’’-(メシチレン-2,4,6-トリイル)トリ-p-クレゾール、4,6-ビス(オクチルチオメチル)-o-クレゾール、エチレンビス(オキシエチレン)ビス[3-(5-tert-ブチル-4-ヒドロキシ-m-トリル)プロピオネート]、ヘキサメチレンビス[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、1,3,5-トリス(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)-1,3,5-トリアジン-2,4,6(1H,3H,5H)-トリオン,2,6-ジ-tert-ブチル-4-(4,6-ビス(オクチルチオ)-1,3,5-トリアジン-2-イルアミノ)フェノール、2-[1-(2-ヒドロキシ-3,5-ジ-tert-ペンチルフェニル)エチル]-4,6-ジ-tert-ペンチルフェニルアクリレート等が挙げられる。
【0033】
なかでも、ペンタエリスリトールテトラキス[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、オクタデシル-3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネートが好ましい。このようなフェノール系酸化防止剤としては、具体的には、例えば、BASF社製「イルガノックス1010」、「イルガノックス1076」、アデカ社製「アデカスタブAO-50」、「アデカスタブAO-60」等が挙げられる。
【0034】
なお、フェノール系安定剤は、1種類を用いても、2種類以上を組み合わせて用いることもできる。
【0035】
紫外線吸収剤としては、例えば、酸化セリウム、酸化亜鉛などの無機紫外線吸収剤;ベンゾトリアゾール化合物、ベンゾフェノン化合物、サリシレート化合物、シアノアクリレート化合物、トリアジン化合物、オギザニリド化合物、マロン酸エステル化合物、ヒンダードアミン化合物などの有機紫外線吸収剤などが挙げられる。これらの中では有機紫外線吸収剤が好ましく、シアノアクリレート化合物、ベンゾトリアゾール化合物がより好ましい。
【0036】
ベンゾトリアゾール化合物としては、例えば、2-(2’-ヒドロキシ-5’-メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2-[2’-ヒドロキシ-3’,5’-ビス(α,α-ジメチルベンジル)フェニル]-ベンゾトリアゾール、2-(2’-ヒドロキシ-3’,5’-ジ-tert-ブチル-フェニル)-ベンゾトリアゾール、2-(2’-ヒドロキシ-3’-tert-ブチル-5’-メチルフェニル)-5-クロロベンゾトリアゾール、2-(2’-ヒドロキシ-3’,5’-ジ-tert-ブチル-フェニル)-5-クロロベンゾトリアゾール)、2-(2’-ヒドロキシ-3’,5’-ジ-tert-アミル)-ベンゾトリアゾール、2-(2’-ヒドロキシ-5’-tert-オクチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2,2’-メチレンビス[4-(1,1,3,3-テトラメチルブチル)-6-(2N-ベンゾトリアゾール-2-イル)フェノール]等が挙げられ、なかでも2-(2’-ヒドロキシ-5’-tert-オクチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2,2’-メチレンビス[4-(1,1,3,3-テトラメチルブチル)-6-(2N-ベンゾトリアゾール-2-イル)フェノール]が好ましく、特に2-(2’-ヒドロキシ-5’-tert-オクチルフェニル)ベンゾトリアゾールが好ましい。このようなベンゾトリアゾール化合物としては、具体的には例えば、シプロ化成社製「シーソーブ701」、「シーソーブ705」、「シーソーブ703」、「シーソーブ702」、「シーソーブ704」、「シーソーブ709」、共同薬品社製「バイオソーブ520」、「バイオソーブ582」、「バイオソーブ580」、「バイオソーブ583」、ケミプロ化成社製「ケミソーブ71」、「ケミソーブ72」、サイテックインダストリーズ社製「サイアソーブUV5411」、アデカ社製「LA-32」、「LA-38」、「LA-36」、「LA-34」、「LA-31」、BASF社製「チヌビンP」、「チヌビン234」、「チヌビン326」、「チヌビン327」、「チヌビン328」等が挙げられる。
【0037】
ベンゾフェノン化合物の具体例としては、例えば、2,4-ジヒドロキシベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-メトキシベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-メトキシベンゾフェノン-5-スルホン酸、2-ヒドロキシ-4-n-オクトキシベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-n-ドデシロキシベンゾフェノン、ビス(5-ベンゾイル-4-ヒドロキシ-2-メトキシフェニル)メタン、2,2’-ジヒドロキシ-4-メトキシベンゾフェノン、2,2’-ジヒドロキシ-4,4’-ジメトキシベンゾフェノン等が挙げられ、このようなベンゾフェノン化合物としては、具体的には例えば、シプロ化成社製「シーソーブ100」、「シーソーブ101」、「シーソーブ101S」、「シーソーブ102」、「シーソーブ103」、共同薬品社製「バイオソーブ100」、「バイオソーブ110」、「バイオソーブ130」、ケミプロ化成社製「ケミソーブ10」、「ケミソーブ11」、「ケミソーブ11S」、「ケミソーブ12」、「ケミソーブ13」、「ケミソーブ111」、BASF社製「ユビヌル400」、BASF社製「ユビヌルM-40」、BASF社製「ユビヌルMS-40」、サイテックインダストリーズ社製「サイアソーブUV9」、「サイアソーブUV284」、「サイアソーブUV531」、「サイアソーブUV24」、アデカ社製「アデカスタブ1413」、「アデカスタブLA-51」等が挙げられる。
【0038】
サリシレート化合物の具体例としては、例えば、フェニルサリシレート、4-tert-ブチルフェニルサリシレート等が挙げられ、このようなサリシレート化合物としては、具体的には例えば、シプロ化成社製「シーソーブ201」、「シーソーブ202」、ケミプロ化成社製「ケミソーブ21」、「ケミソーブ22」等が挙げられる。
【0039】
シアノアクリレート化合物の具体例としては、例えば、エチル-2-シアノ-3,3-ジフェニルアクリレート、2-エチルヘキシル-2-シアノ-3,3-ジフェニルアクリレート等が挙げられ、このようなシアノアクリレート化合物としては、具体的には例えば、シプロ化成社製「シーソーブ501」、共同薬品社製「バイオソーブ910」、第一化成社製「ユビソレーター300」、BASF社製「ユビヌル3030」、「ユビヌルN-35」、「ユビヌルN-539」等が挙げられる。
【0040】
トリアジン化合物としては、例えば1,3,5-トリアジン骨格を有する化合物等が挙げられ、このようなトリアジン化合物としては、具体的には例えば、アデカ社製「LA-46」、BASF社製「チヌビン1577ED」、「チヌビン400」、「チヌビン405」、「チヌビン460」、「チヌビン477-DW」、「チヌビン479」等が挙げられる。
【0041】
ベンゾオキサジノン化合物としては、例えば,2,2’-(p-フェニレン)ジ-3,1-ベンゾオキサジン-4-オン等があげられ、このような化合物としては、具体的には例えば、ケミプロ化成社製「KEMISORB 500」等があげられる。
【0042】
オギザニリド化合物の具体例としては、例えば、2-エトキシ-2’-エチルオキザリニックアシッドビスアリニド等が挙げられ、このようなオキザリニド化合物としては、具体的には例えば、クラリアント社製「サンデュボアVSU」等が挙げられる。
【0043】
マロン酸エステル化合物としては、2-(アルキリデン)マロン酸エステル類が好ましく、2-(1-アリールアルキリデン)マロン酸エステル類がより好ましい。このようなマロン酸エステル化合物としては、具体的には例えば、クラリアントジャパン社製「PR-25」、「サンデュポアB-CAP」等が挙げられる。
【0044】
安定剤の配合割合は、ゲル化抑制の観点から所定の前記ケミルミネッセンスの範囲となるように適宜その配合量を調整することができる。さらに、安定化剤の配合割合は、フィルムの耐久性(特に耐候性)を十分に高めることができ、かつ、フィルムの透明性が維持されやすく、かつ、ゲル化抑制の観点からポリエステル樹脂(a)、安定剤(b)および体質顔料(c)の合計に対して、好ましくは0.01質量%以上、より好ましくは0.05質量%以上から、好ましくは10質量%以下、より好ましくは5質量%以下の範囲内である。この範囲において、前記ケミルミネッセンスの範囲となるように適宜配合量を調整することが好ましい。
【0045】
本発明の樹脂組成物は、体質顔料(c)を配合してなる。本発明に用いる体質顔料(c)としては、例えば「顔料便覧、日本顔料技術協会編、1989年発行、pp7-8」に掲載される体質顔料等が挙げられ、具体的には、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、クレー、タルク、ベントナイト、マイカ、硫酸バリウム、シリカ及び水酸化アルミニウム等が挙げられる。体質顔料は樹脂中で無色であり、化学的に安定である。このため、樹脂組成物の透明性を維持しつつ、かつ、主にポリエステル樹脂の溶融混錬時に発生するラジカルを隠蔽する効果(ラジカルの伝播を抑制する効果)を有し、ゲル化抑制に効果を奏するものと考えられる。
【0046】
体質顔料(c)の配合割合は、ゲル化抑制の観点から所定の前記ケミルミネッセンスの範囲となるように適宜その配合量を調整することができる。さらに、体質顔料(c)の配合割合は、フィルムの耐久性(特に耐候性)を十分に高めることができ、かつ、フィルムの透明性が維持されやすく、かつ、ゲル化抑制の観点からポリエステル樹脂(a)、安定剤(b)および体質顔料(c)の合計に対して、好ましくは0.01質量%以上、より好ましくは0.05質量%以上から、好ましくは10質量%以下、より好ましくは5質量%以下の範囲内である。この範囲において、前記ケミルミネッセンスの範囲となるように適宜配合量を調整することが好ましい。
【0047】
本発明の樹脂組成物は、その機能の主旨を逸脱しない範囲において、必須成分であるポリエステル樹脂(a)、安定剤(b)及び体質顔料(c)以外に、任意成分としてその他の成分が配合されていてもよい。その他の成分としては、具体的には、発泡剤、滑剤、難燃剤、充填材、結晶核剤、可塑剤、帯電防止剤、相溶化剤等が挙げられる。これらその他の成分の配合割合は、本発明の樹脂組成物の機能の主旨を逸脱しない範囲であれば特に限定されないが、例えばポリエステル樹脂(a)、安定剤(b)及び体質顔料(c)の合計100質量部に対して、0.01~5質量部であることが好ましい。
【0048】
本発明の樹脂組成物の製造方法は、ポリエステル樹脂(a)、安定剤(b)及び体質顔料(c)を配合して溶融混錬する工程を含む。
【0049】
先ず、上記熱可塑性樹脂(a)、安定剤(b)及び体質顔料(c)の必須成分と、必要に応じて任意の原料成分である前記その他の成分とをバルク状、ペレット状、チップ状などの様々な形態で配合する。次いで、必要に応じて予備混合した後に、溶融混練機に投入して、窒素ガス等の不活性雰囲気下で、該熱可塑性樹脂(a)の融点以上、かつ、ゲル化抑制の観点から所定の前記ケミルミネッセンスの範囲となるように、適宜加熱温度を調整することによって、溶融混練する。その際、フィルムの耐久性(特に耐候性)を十分に高めることができ、かつ、フィルムの透明性が維持されやすく、かつ、ゲル化抑制の観点からポリエステル樹脂の融点以上、かつ、好ましくは305℃以下、より好ましくは295℃以下、さらに好ましくは280℃以下の範囲内である。この範囲において、前記ケミルミネッセンスの範囲となるように適宜加熱温度を調整することが好ましい。溶融混練後は、本発明の効果を損ねなければ特に限定されず、例えば、溶融混錬した物を直接、溶融成形する工程を経て成形体とすることができるし、或いは、一旦、ストランド状に押出した後に冷却、固化して切断してペレット状、チップ状などの顆粒状物に成形する工程を経てから、溶融成形する工程を経て、成形体としてもよい。
【0050】
予備混合は任意工程であるが、本発明の効果を損ねなければ特に限定されず、例えば、リボンブレンター、ヘンシェルミキサー、Vブレンターなどを用いるドライブレンドを挙げることができる。また、溶融混練機としては、本発明の効果を損ねなければ特に限定されないが、バンバリーミキサー、ミキシングロール、単軸または2軸の押出機およびニーダーなどの加熱機構が備えられた溶融混練機を挙げることができる。なお、前記工程の溶融混練機は、装置内に好ましくは100μm以下、より好ましくは50μm以下、さらに好ましくは30μm以下の範囲の目開きを有するフィルターを装填していてもよい。
【0051】
本発明の樹脂組成物は、例えばマスターバッチの形態を経て製造してもよい。すなわち上記ポリエステル樹脂(a)に対する、安定剤(b)及び体質顔料(c)の配合割合を高めたマスターバッチを予め溶融混錬にて製造しておき、次に、当該マスターバッチを希釈用樹脂であるポリエステル樹脂と溶融混錬して、本発明の樹脂組成物を製造することもできる。
【0052】
上記で得られた樹脂組成物を用いて、溶融成形する工程を経て成形体を製造することができる。溶融成形はポリエステル樹脂(a)の溶融温度以上から、前記樹脂組成物の溶融混錬時の加熱温度+25℃以下が好ましく、同加熱温度以下がより好ましく、具体的には、300℃以下が好ましく、295℃以下の範囲とすることがより好ましく、280℃の範囲とすることがさらに好ましく、この条件下で、好ましくは窒素ガス等の不活性ガス雰囲気下、溶融して成形を行えばよい。また滞留時間を少なくすることが劣化を抑える観点から、溶融時間を10分以下とすることが好ましい。
【0053】
成形体は、特に制限されないが、例えば樹脂フィルムや、各種成形部材である。溶融成形の形態は、本発明の効果を損ねなければ特に限定されず、公知の方法で良い。例えば、射出成形、圧縮成形、コンポジット、フィルム、シート、パイプなどの押出成形、引抜成形、ブロー成形、トランスファー成形など各種成形方法が適用可能であるが、特に原料となる樹脂組成物の透明性維持に適することからフィルム成形が好ましい。
また、例えば、本発明の樹脂組成物を、溶融混練機から直接、溶融成形して、樹脂フィルムなどの成形体を得ることができる。或いは、樹脂組成物のペレット状、チップ状などの顆粒状物を、射出成形機に供給し、溶融成形して、前記成形部材を得てもよい。
【0054】
樹脂組成物を用いて樹脂フィルムを溶融成形する場合には、溶融物をスリット状の孔から吐出させる(押出す)ことによりフィルム状ないしシート状にする、いわゆるフィルム成形法を行うことができる。フィルム状ないしシート状の熱可塑性樹脂成形体(フィルム)は、更にプレス成形法又は真空成形法によって成形してもよいし、ベース層上に形成されて多層フィルムを構成してもよい。
【0055】
尚、本明細書において樹脂フィルムとは、フィルム状ないしシート状の熱可塑性樹脂成形体を指し、さらには、フィルムやシートなどの板状のものを厳密に区別することなく総称として表現するものである。樹脂フィルムの厚みは、その用途に応じて異なり、任意の厚さとすることができるが、300μm以下であるのが好ましく、200μm以下であるのがより好ましく、100μm以下であるのが更に好ましい。また、樹脂フィルムの厚みは、0.01μm以上であるのが好ましく、0.1μm以上であるのがより好ましく、0.5μmであるのが更に好ましい。
【0056】
上記製造方法で得られた樹脂フィルムのヘイズは、より高い透明性の観点から、実施例に記載の方法にて、フィルム濁度が、20%以下であるのが好ましく、15%以下であるのがより好ましく、10%以下であるのがさらに好ましく、5%以下であるのが特に好ましい。
【0057】
本発明により、ポリエステル樹脂を含む樹脂組成物のケミルミネッセンス最高発光強度を測定することで、それを溶融成形して得られる成形体に発生するゲル化を予め予測することができるので、本発明により、ポリエステル樹脂(a)、安定剤(b)および体質顔料(c)を必須成分として配合してなる樹脂組成物を溶融成形する成形体のゲル化抑制方法であって、
該樹脂組成物1g当たりのケミルミネッセンス最大発光強度を70,000cps以下とすることを特徴とする方法を提供することができる。また、ポリエステル樹脂(a)を必須成分として含む樹脂組成物を溶融成形する成形体のゲル化を評価方法であって、
該樹脂組成物のケミルミネッセンス最大発光強度を測定することを特徴とする方法を提供することができる。
【実施例0058】
以下、本発明の実施例を説明する。本発明は、以下に示す実施例に限定されるものではない。実施例中、特段の記載がない限り、「部」は質量%を示し、表中の数値の単位は質量部である。
【0059】
(評価)
以下の方法にて測定、評価した。
【0060】
(ケミルミネッセンス測定法)
JIS K 7351に準拠した方法で行い、試験片を窒素雰囲気下、50℃から270℃まで20℃/minで昇温した後、270℃で保持するとともに、昇温開始から20分間測定して、樹脂組成物(1g当たり)のケミルミネッセンス最大発光強度を測定した。
【0061】
(ゲル化率測定)
ペレットサンプルを0.5g秤量した。真空乾燥機を用いて、150℃で2時間真空乾燥した後、空気と窒素の混合気体で酸素濃度1%とし、試料含有容器に酸素濃度1%の混合気体を配管より通し十分に置換された後に、該容器を300℃のオイルバスに浸し、酸素/窒素濃度1%流通下(流量0.5L/分)6時間加熱処理を行った。これを、20mlのオルトクロロフェノール(以下OCP)で、160℃で1時間溶解し、放冷した。この溶液を、メンブレンフィルターを使用しろ過、ジクロロメタンにてフィルターを洗浄した。フィルターを乾燥し、ろ過前後のろ過器の重量の増分より、フィルターに残留した不溶物(ゲル)の重量を算出し、ゲル化率(重量%)とした。
【0062】
得られたポリエステルのゲル化率は、5.0重量%以下を「〇」、3.0重量%以下を「◎」とした。さらに5.0重量%を超える場合はフィルム欠点および製膜工程の生産性の点から「×」とした。
【0063】
(歩留まり評価)
ペレットサンプルを160℃で5時間乾燥後、Tダイ式口金を備えた押し出し機に供給し、300℃で溶融後、口金からキャスティングドラムを回転させながらキャスティングドラム状に押し出し未延伸フィルムを連続的に得た。10時間経過後から11時間経過後の1時間の間、フィルム表面を観察し、フィルム欠点の評価を行った。この間表面に10時間経過するまでは見られなかったスジ状の欠点が新たに観察されれば「×」、観察されなければ「〇」とした。
【0064】
(フィルム濁度)
ヘイズメーターを使い厚み100μmのフィルムのヘイズを測定した。
【0065】
〔実施例1〕
ポリエチレンテレフタレート(ユニチカ社製「MA-2101M」、極限粘度(IV)0.63)100重量部と添加剤(酸化防止剤、クラリアント社製「イルガノックス1010」)0.1重量部、体質顔料(硫酸バリウム、堺化学社製「BF-20」)0.1重量部を事前に混合し、を30mmφの二軸ベント式押出機(設定温度280℃)に窒素を封入して、ペレットへ成形し、ケミルミネッセンス最大発光強度が33,000cpsのペレットサンプル(1)を採取した。
【0066】
作成したサンプルについて、ゲル化率を測定すると0.9%で「◎」であった。またフィルム欠点を測定したところ見られず「〇」であった。得られたフィルムのヘイズを測定したところ5%であった。
【0067】
〔実施例2〕
ポリエチレンテレフタレート(ユニチカ社製「MA-2101M」、極限粘度(IV)0.63)100重量部と添加剤(酸化防止剤、クラリアント社製「イルガノックス1010」)0.1重量部、体質顔料(二酸化ケイ素、富士シリシア社製「サイリシア310P」)0.1重量部を事前に混合し、30mmφの二軸ベント式押出機(設定温度280℃)に窒素を封入して、ペレットへ成形し、ケミルミネッセンス最大発光強度が30,000cpsのペレットサンプル(2)を採取した。
【0068】
作成したサンプルについて、ゲル化率を測定すると0.7%で「◎」あった。またフィルム欠点を測定したところ見られず「〇」であった。得られたフィルムのヘイズを測定したところ3%であった。
【0069】
〔実施例3〕
ポリエチレンテレフタレート(ユニチカ社製「MA-2101M」、極限粘度(IV)0.63)100重量部と添加剤(紫外線吸収剤、BASF社製「Uvinul3030」)0.1重量部、体質顔料(二酸化ケイ素、富士シリシア社製「サイリシア310P」)0.1重量部を事前に混合し、30mmφの二軸ベント式押出機(設定温度280℃)に窒素を封入して、ペレットへ成形し、ケミルミネッセンス最大発光強度が27,000cpsのペレットサンプル(3)を採取した。
【0070】
作成したサンプルについて、ゲル化率を測定すると1.3%で「◎」であった。またフィルム欠点を測定したところ見られず「〇」であった。得られたフィルムのヘイズを測定したところ3%であった。
【0071】
〔実施例4〕
ポリエチレンテレフタレート(ユニチカ社製「MA-2101M」、極限粘度(IV)0.63)100重量部と添加剤(酸化防止剤、クラリアント社製「イルガノックス1010」)1重量部、体質顔料(炭酸カルシウム、丸尾カルシウム社製「スーパーSSS」)1重量部を事前に混合し、30mmφの二軸ベント式押出機(設定温度280℃)に窒素を封入して、ペレットへ成形し、ケミルミネッセンス最大発光強度が46,000cpsのペレットサンプル(4)を採取した。
【0072】
作成したサンプルについて、ゲル化率を測定すると2.3%で「◎」であった。またフィルム欠点を測定したところ見られず「〇」であった。得られたフィルムのヘイズを測定したところ9%であった。
【0073】
〔実施例5〕
ポリエチレンテレフタレート(ユニチカ社製「MA-2101M」、極限粘度(IV)0.63)100重量部と添加剤(酸化防止剤、クラリアント社製「イルガノックス1010」)1重量部 、体質顔料(炭酸カルシウム、丸尾カルシウム社製「スーパーSSS」)1重量部を事前に混合し、30mmφの二軸ベント式押出機(設定温度260℃ )に窒素を封入して、ペレットへ成形し、ケミルミネッセンス最大発光強度が38,000cpsのペレットサンプル(5)を採取した。
【0074】
作成したサンプルについて、ゲル化率を測定すると2.0%で「◎」であった。またフィルム欠点を測定したところ見られず「〇」であった。得られたフィルムのヘイズを測定したところ9%であった。
【0075】
〔比較例1〕
ポリエチレンテレフタレート(インドラマ社製「BFL-3067」、極限粘度(IV)0.67)100重量部と体質顔料(炭酸カルシウム、丸尾カルシウム社製「スーパーSSS」)0.1重量部を30mmφの二軸ベント式押出機(設定温度300℃)にて、ペレットへ成形し、ケミルミネッセンス最大発光強度が106,000cpsのペレットサンプル(6)を採取した。
【0076】
作成したサンプルについて、ゲル化率を測定すると5.9%で「×」あった。またフィルム欠点が多く「×」であった。得られたフィルムのヘイズを測定したところ24%であった。
【0077】
〔比較例2〕
ポリエチレンテレフタレート(インドラマ社製「BFL-3067」、極限粘度(IV)0.67)100重量部と添加剤(紫外線吸収剤、BASF社製「Tinuvin234」)0.1重量部と体質顔料(炭酸カルシウム、丸尾カルシウム社製「スーパーSSS」)0.1重量部を事前に混合し、30mmφの二軸ベント式押出機(設定温度300℃)にて、ペレットへ成形し、ケミルミネッセンス最大発光強度が96,000cpsのペレットサンプル(7)を採取した。
【0078】
作成したサンプルについて、ゲル化率を測定すると6.2%で「×」であった。またフィルム欠点が多く「×」であった。得られたフィルムのヘイズを測定したところ22%であった。
【0079】
〔比較例3〕
ポリエチレンテレフタレート(インドラマ社製「BFL-3067」、極限粘度(IV)0.67)100重量部と金属酸化物(二酸化チタン、石原産業社製「CR-60」)0.1重量部を事前に混合し、30mmφの二軸ベント式押出機(設定温度300℃)にて、ペレットへ成形し、ケミルミネッセンス最大発光強度が145,000cpsのペレットサンプル(8)を採取した。
【0080】
作成したサンプルについて、ゲル化率を測定すると7.2%で「×」であった。またフィルム欠点が多く「×」であった。得られたフィルムのヘイズを測定したところ88%であった。
【0081】
〔比較例4〕
ポリエチレンテレフタレート(インドラマ社製「BFL-3067」、極限粘度(IV)0.67)100重量部と体質顔料(炭酸カルシウム、丸尾カルシウム社製「スーパーSSS」)100重量部を30mmφの二軸ベント式押出機(設定温度280℃)にて、ペレットへ成形し、ケミルミネッセンス最大発光強度が221,000cpsのペレットサンプル(9)を採取した。
【0082】
作成したサンプルについて、ゲル化率を測定すると9.9%で「×」あった。またフィルム欠点が多く「×」であった。得られたフィルムのヘイズを測定したところ84%であった。
【0083】
〔比較例5〕
ポリエチレンテレフタレート(インドラマ社製「BFL-3067」、極限粘度(IV)0.67)100重量部と体質顔料(炭酸カルシウム、丸尾カルシウム社製「スーパーSSS」)0.1重量部を30mmφの二軸ベント式押出機(設定温度240℃)にて自己発熱溶融させ、ペレットへ成形し、ケミルミネッセンス最大発光強度が136,000cpsのペレットサンプル(10)を採取した。
【0084】
作成したサンプルについて、ゲル化率を測定すると8.9%で「×」あった。またフィルム欠点が多く「×」であった。得られたフィルムのヘイズを測定したところ18%であった。
【0085】
実施例1~5のいずれでも、樹脂組成物1g当たりのケミルミネッセンス最高発光強度はいずれも70,000cps以下の範囲であり、得られた樹脂フィルムはいずれもゲル化率が低く、フィルム欠点が低くて歩留まりが良く、かつ、フィルム濁度(ヘイズ値)も低く、優れた透明性を示した。
【0086】
これに対して比較例1,3~5では、配合成分の調整が悪く、樹脂組成物1g当たりのケミルミネッセンス最高発光強度はいずれも70,000cps超の範囲となり、得られた樹脂フィルムはいずれもゲル化率が高く、フィルム欠点が多くて歩留まりが悪く、かつ、フィルム濁度(ヘイズ値)も高く、透明性を損ねるものであった。また、比較例2では、樹脂組成物の溶融混錬時の加熱温度が高く、その結果、樹脂組成物1g当たりのケミルミネッセンス最高発光強度は70,000cps超の範囲となり、得られた樹脂フィルムはゲル化率が高く、フィルム欠点が多くて歩留まりが悪く、かつ、フィルム濁度(ヘイズ値)も高く、透明性も損ねるものであった。