(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023089554
(43)【公開日】2023-06-28
(54)【発明の名称】液体組成物及びその製造方法、収容容器、並びに固体電解質層又は電極合材層の製造装置及び製造方法
(51)【国際特許分類】
H01M 4/62 20060101AFI20230621BHJP
H01M 4/139 20100101ALI20230621BHJP
H01G 11/56 20130101ALI20230621BHJP
H01G 11/86 20130101ALI20230621BHJP
H01G 13/00 20130101ALI20230621BHJP
C09D 11/322 20140101ALI20230621BHJP
【FI】
H01M4/62 Z
H01M4/139
H01G11/56
H01G11/86
H01G13/00 391B
C09D11/322
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021204147
(22)【出願日】2021-12-16
(71)【出願人】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(74)【代理人】
【識別番号】100107515
【弁理士】
【氏名又は名称】廣田 浩一
(72)【発明者】
【氏名】梶田 倫正
(72)【発明者】
【氏名】栗山 博道
(72)【発明者】
【氏名】中島 聡
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 良夫
(72)【発明者】
【氏名】竹内 重雄
【テーマコード(参考)】
4J039
5E078
5E082
5H050
【Fターム(参考)】
4J039AD01
4J039AD03
4J039AD09
4J039AD15
4J039AE06
4J039AE07
4J039AE09
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4J039BA06
4J039BA07
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4J039GA24
5E078AB06
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5H050AA19
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5H050CB07
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5H050DA18
5H050GA05
5H050GA10
5H050GA29
5H050HA01
5H050HA05
5H050HA10
5H050HA19
(57)【要約】
【課題】インクジェット方式での良好な吐出性を有しつつ、かつイオン伝導性が良好な固体電解質層を得ることができる液体組成物を提供する。
【解決手段】溶媒と、無機固体電解質と、分散剤と、を含む液体組成物であって、前記分散剤は前記溶媒に溶解し、レーザー回折法により測定される前記液体組成物に含まれる固形分の体積分率10%粒子径(D10)、体積分率50%粒子径(D50)、体積分率90%粒子径(D90)、及びモード径(Dm)は、D90/D10>10、D50<1μm、及びDm<2μmを満たす液体組成物である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
溶媒と、無機固体電解質と、分散剤と、を含む液体組成物であって、
前記分散剤は前記溶媒に溶解し、
レーザー回折法により測定される前記液体組成物に含まれる固形分の体積分率10%粒子径(D10)、体積分率50%粒子径(D50)、体積分率90%粒子径(D90)、及びモード径(Dm)は、下記式(1)から(3)を満たすことを特徴とする液体組成物。
D90/D10>10 ・・・ 式(1)
D50<1μm ・・・ 式(2)
Dm<2μm ・・・ 式(3)
【請求項2】
前記液体組成物の粘度が、200mPa・s以下である請求項1に記載の液体組成物。
【請求項3】
前記液体組成物に含まれる固形分の最大粒子径が、32μm以下である請求項1から2のいずれかに記載の液体組成物。
【請求項4】
インクジェットヘッドを用いて吐出される液体組成物であって、
前記液体組成物は、溶媒と、無機固体電解質と、分散剤と、を含み、
前記分散剤は前記溶媒に溶解し、
レーザー回折法により測定される前記液体組成物に含まれる固形分の体積分率10%粒子径(D10)、体積分率50%粒子径(D50)、体積分率90%粒子径(D90)、及びモード径(Dm)は、下記式(1)から(3)を満たすことを特徴とする液体組成物。
D90/D10>10 ・・・ 式(1)
D50<1μm ・・・ 式(2)
Dm<2μm ・・・ 式(3)
【請求項5】
前記液体組成物の粘度が、インクジェットヘッドのノズルより吐出可能な粘度である請求項4に記載の液体組成物。
【請求項6】
前記液体組成物に含まれる固形分の最大粒子径が、インクジェットヘッドのノズル径よりも小さい請求項4から5のいずれかに記載の液体組成物。
【請求項7】
前記液体組成物に含まれる固形分の最大粒子径と、インクジェットヘッドのノズル径との比が0.8以下である請求項4から6のいずれかに記載の液体組成物。
【請求項8】
前記溶媒の25℃における比誘電率が6.0以下である請求項1から7のいずれかに記載の液体組成物。
【請求項9】
前記液体組成物中の前記無機固体電解質の固形分濃度が15質量%以上である請求項1から8のいずれかに記載の液体組成物。
【請求項10】
請求項1から9のいずれかに記載の液体組成物の製造方法であって、
溶媒中に、無機固体電解質と、前記溶媒に溶解する分散剤とを溶解乃至分散させる溶解乃至分散工程を含むことを特徴とする液体組成物の製造方法。
【請求項11】
機械的処理により、前記液体組成物中の固形分の粒径を調整する調整工程をさらに含む請求項10に記載の液体組成物の製造方法。
【請求項12】
前記機械的処理が、高速回転型ホモジナイザー、湿式ジェットミル、湿式ビーズミル、及びこれらの2種以上の組合せから選択される手段により行われる請求項11に記載の液体組成物の製造方法。
【請求項13】
請求項1から9のいずれかに記載の液体組成物が収容されたことを特徴とする収容容器。
【請求項14】
請求項13に記載の収容容器と、インクジェットヘッドを用いて前記収容容器に収容された前記液体組成物を吐出する吐出手段と、を含むことを特徴とする固体電解質層又は電極合材層の製造装置。
【請求項15】
インクジェットヘッドを用いて請求項1から9のいずれかに記載の液体組成物を吐出する吐出工程を含むことを特徴とする固体電解質層又は電極合材層の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体組成物及びその製造方法、収容容器、並びに固体電解質層又は電極合材層の製造装置及び製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
リチウムイオン二次電池、リチウムイオンキャパシタ、電気二重層キャパシタ、レドックスキャパシタ等の電気化学素子は、電子機器、電気自動車等に搭載され、幅広く利用されている。とりわけ、車載向けのリチウムイオン二次電池の需要は、近年の低環境負荷のニーズを背景に、拡大していくことが予想されている。その様な背景の中で、リチウムイオン二次電池の安全性やエネルギー密度のさらなる向上が求められており、既存の電解液から固体電解質に代えた全固体電池の実用化の取組が盛んである。
【0003】
全固体電池中の固体電解質層には、Liイオン伝導性が高いという特性が求められている。
【0004】
例えば、イオン伝導抵抗が低く、高充填率の固体電解質層を有する全固体電池を提供することを目的とする技術として、平均粒径の大きい固体電解質粒子と、平均粒径の小さい固体電解質粒子とを用いる技術が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、インクジェット方式での良好な吐出性を有しつつ、かつイオン伝導性が良好な固体電解質層を得ることができる液体組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するための手段としての本発明の液体組成物は、溶媒と、無機固体電解質と、分散剤と、を含む液体組成物であって、前記分散剤は前記溶媒に溶解し、レーザー回折法により測定される前記液体組成物に含まれる固形分の体積分率10%粒子径(D10)、体積分率50%粒子径(D50)、体積分率90%粒子径(D90)、及びモード径(Dm)は、下記式(1)から(3)を満たすことを特徴とする。
D90/D10>10 ・・・ 式(1)
D50<1μm ・・・ 式(2)
Dm<2μm ・・・ 式(3)
【発明の効果】
【0007】
本発明によると、インクジェット方式での良好な吐出性を有しつつ、かつイオン伝導性が良好な固体電解質層を得ることができる液体組成物を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、本実施形態の固体電解質層又は電極合材層の製造方法を実現するための固体電解質層又は電極合材層の製造装置の一例を示す模式図である。
【
図2】
図2は、本実施形態の固体電解質層又は電極合材層の製造方法を実現するための固体電解質層又は電極合材層の製造装置(液体吐出装置)の他の一例を示す模式図である。
【
図3】
図3は、本実施形態の固体電解質層を設けた蓄電素子の一例を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
(液体組成物)
本発明の液体組成物の1つの態様は、溶媒と、無機固体電解質と、分散剤と、を含み、必要に応じて更にその他の成分を含む(以下、「第1の態様」と称することがある。)。また、本発明の液体組成物の他の態様は、インクジェットヘッドを用いて吐出される液体組成物であって、溶媒と、無機固体電解質と、分散剤と、を含み、必要に応じて更にその他の成分を含む(以下、「第2の態様」と称することがある。)。
【0010】
上記したように、全固体電池の固体電解質層には、Liイオン伝導性が高いという特性が求められている。
また生産性という観点では、固体電解質層の製造方法は、ダイコーター、コンマコーター等による湿式塗工プロセスが好ましく、さらにオンデマンドという観点を考慮すると、液体吐出装置を用いて固体電解質をインクジェット吐出により形成することが好ましいと考えられる。
【0011】
しかしながら、インクジェット方式での吐出性を良好に保ちつつ、かつイオン伝導性が良好な固体電解質層を得られるような液体組成物を得ることはこれまで非常に困難であった。例えば、液体組成物中の固体電解質材料を大きな粒子とすると、粒界抵抗を抑制できイオン伝導性を良好に保てる点では好ましいが、インクジェット吐出性の低下を招いてしまう。一方、液体組成物中の固体電解質材料を小さな粒子とすると、インクジェット方式での安定した吐出が可能となるが、粒界数の増加に伴って粒界抵抗が上昇してしまい、イオン伝導度の低下を招いてしまう。
【0012】
本発明者らは、溶媒と、無機固体電解質(以下、「イオン伝導性材料」と称することがある。)と、分散剤と、を含む液体組成物であって、前記分散剤として前記溶媒に溶解可能な分散剤を用い、レーザー回折法により測定される前記液体組成物に含まれる固形分の体積分率10%粒子径(D10)、体積分率50%粒子径(D50)、体積分率90%粒子径(D90)、及びモード径(Dm)が、下記式(1)から(3)を満たすことで、インクジェット方式での良好な吐出性を有しつつ、かつイオン伝導性が良好な固体電解質層を得ることができる液体組成物を得ることができることを見出した。
D90/D10>10 ・・・ 式(1)
D50<1μm ・・・ 式(2)
Dm<2μm ・・・ 式(3)
【0013】
これは、次のような理由から説明される。
実際の液体組成物の乾燥時の粉末充填ではランダムに粒子が充填されると考えられる。理想的な最密充填の場合、すなわち大きな粒子の隙間を小さな粒子が埋める場合では、大きな粒子の隙間を小さな粒子が埋める必要があり、この状況はランダム充填では実現は困難であり、むしろ大きな粒子が存在しない箇所での欠陥の影響が現れ、結果としてイオン伝導率の低下を招き、充填率を上げるために100MPa以上の非常に高圧のプレスが必要であった。
かかる状況の中、連続的に幅広い粒径サイズの粒子が存在し、かつ理想充填の場合とは逆に小さな粒子が多く存在する状況の方が、実際には液体組成物から得られる乾燥粉末の固体電解質膜の充填率が向上し、イオン伝導性の観点で良好に働くことを見出した。
【0014】
本明細書において、インクジェット方式で吐出可能とは、液滴観察装置EV1000(株式会社リコー製)にてインクジェットヘッドの1ノズル(ノズル径:40μm)から吐出を行い、60秒間以上吐出状態を維持できている場合のことをいう。なお、60秒間以上吐出状態を維持できている場合とは、吐出開始から少なくとも60秒間の時点において、液体組成物が吐出されていることをいい、その吐出量は問わない。即ち、吐出開始から少なくとも60秒間の時点において、液体組成物が吐出されている限り、吐出開始時と、吐出開始から60秒間後の時点とにおいて、吐出量は変化していなくてもよいし、変化していてもよい。
【0015】
<溶媒>
-第1の態様-
前記第1の態様における溶媒としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、25℃における比誘電率が、6.0以下である溶媒が好ましい。前記好ましい溶媒であると、硫黄元素を含む無機固体電解質であっても、酸素元素を含む無機固体電解質であっても、溶媒中での無機固体電解質の分散性を高くすることができる点で、有利である。また、前記好ましい溶媒を、硫黄元素を含む無機固体電解質と併用する場合、溶媒と硫黄元素を含む無機固体電解質との反応が生じにくくなり、その結果、有毒な硫化水素の発生を抑制できる点で、有利である。前記溶媒は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。2種以上の溶媒を組み合わせた混合溶媒を用いる場合には、その混合溶媒の比誘電率が6.0以下であることが好ましい。
【0016】
前記溶媒の比誘電率の測定方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、Model 871(三洋貿易株式会社製)を用いて、10kHzにおける二重円筒管電流測定を行うことにより測定することができる。
【0017】
前記25℃における比誘電率が、6.0以下である溶媒の具体例としては、例えば、ペンタン、イソペンタン、ヘキサン、ヘプタン、2,2-ジメチルブタン、オクタン、シクロヘキサン、テトラデカン、1,4-ジオキサン、ベンゼン、キシレン、四塩化炭素、メシチレン、トルエン、ジブチルエーテル、アニソール、1,2-ジエトキシエタン、2-メチルアニソール、3-メチルアニソール、4-メチルアニソール、1,2-メトキシベンゼン、1,3-メトキシベンゼン、p-エチルアニリン、4-オクタノール、フェネトール、酢酸2-エチルヘキシル、ブチルフェニルエーテル、イソプロピルベンゼン、1,2,3,4-テトラヒドロナフタレン、デカン酸エチル、酢酸イソブチル、ジイソペンチルエーテル、トリデカン、シクロオクタン、プロピオン酸エチルなどが挙げられる。
【0018】
前記溶媒は、脱水したものを用いることが好ましい。前記脱水の程度としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、カールフィッシャー水分濃度計により測定した水分含有量が、1,000ppm以下であることが好ましく、100ppm以下であることがより好ましく、10ppm以下であることがさらに好ましい。
【0019】
-第2の態様-
前記第2の態様における溶媒は、上記した第1の態様における溶媒と同様である。
【0020】
<無機固体電解質>
-第1の態様-
前記第1の態様における無機固体電解質としては、電子伝導性を有さず、イオン伝導性を有する限り、特に制限はない。前記無機固体電解質の中でも、イオン伝導率の観点で、組成式に硫黄元素を含む硫化物固体電解質、またはアニオンとして酸素元素を含む酸化物固体電解質が好ましく、高い可塑性を有することで、固体電解質粒子間同士、あるいは固体電解質および活物質間の間で、良好な界面を形成することができる点で、硫化物固体電解質がより好ましい。前記無機固体電解質は、1種類でも、2種類以上でもよく、適宜使用することができる。
【0021】
--硫化物固体電解質--
前記硫化物固体電解質は、結晶系硫化物固体電解質とガラス系固体電解質に大別できる。
前記結晶系硫化物固体電解質としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、Li9.54Si1.74P1.44S11.7Cl0.3、Li9.6P3S12、Li9P3S9O3、Li9.81Sn0.81P2.19S12、Li9.42Si1.02P2.1S9.96O2.04、Li10Ge(P1-xSbx)2S12(0≦x≦0.15)、Li10SnP2S12、Li10.35[M11-xM2x]1.35P1.65S12(M1及びM2は、Si、Ge、Sn、As、及びSbのいずれかである、0≦x≦0.15)、Li11Si2PS12、Li11AlP2S12、Li3.45Si0.45P0.55S4、Li6PS5X(Xは、Cl、Br、及びIのいずれかである)、Li5PS4X2(Xは、Cl、Br、及びIのいずれかである)、Li5.5PS4.5Cl1.5、Li5.35Ca0.1PS4.5Cl1.55、Li6+xMxSb1-xS5I(Mは、Si、Ge、及びSnのいずれかである、0≦x≦1)、Li7P2S8I、γ-Li3PS4、Li4MS4(Mは、Ge、Sn、及びAsのいずれかである)、Li4-xSn1-xSbxS4(0≦x≦0.15)、Li4-xGe1-xPxS4(0≦x≦0.15)、Li3+5xP1-xS4(0≦x≦0.3)などが挙げられる。
前記ガラス系硫化物固体電解質としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、Li2S-P2S5、Li2S-P2S5-LiI、Li2S-P2S5-P2O5、Li2S-P2S5-LiCl、Li2S-SiS2、Li2S-SiS2-P2S5、Li2S-SiS2-Al2S3、Li2S-SiS2-LixMOy(Mは、Si、P、及びGeのいずれかである)などが挙げられる。またガラス系硫化物固体電解質の一部が結晶化した、Li7P3S11ガラスセラミクスなども用いることができる。ここで、ガラス系硫化物固体電解質の各原料の混合比は問わない。
【0022】
--酸化物固体電解質--
酸化物系無機固体電解質は、酸素元素(O)を含有し、かつ、周期律表第1族又は第2族に属する金属のイオン伝導性を有し、かつ、電子絶縁性を有する化合物が好ましい。
【0023】
前記酸化物固体電解質は、結晶系酸化物固体電解質とガラス系酸化物固体電解質に大別できる。
前記結晶系酸化物固体電解質としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、Li1+xMxTi2-x(PO4)3(Mは、Al、Cr、Ga、Fe、Sc、In、Lu、Y、及びLaのいずれかである、0≦x≦0.5)、LaxLiyTiO3(0.3≦x≦0.7、0.3≦y≦0.7)、Li7-xLa3Zr2-xMxO12(Mは、Nb、及びTaのいずれかである、0≦x≦1)などが挙げられる。
前記ガラス系酸化物固体電解質としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、Li4SiO4-Li2BO3、Li3BO3-Li2SO4、Li2O-B2O3-P2O5、Li2O-SiO2などが挙げられる。
【0024】
前記無機固体電解質は、公知の方法により調製したものを用いてもよいし、市販品を用いてもよい。
【0025】
前記無機固体電解質の前記液体組成物中における含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、前記無機固体電解質の固形分濃度として、10質量%以上が好ましく、15質量%以上がより好ましく、30質量%以上が特に好ましい。また、上限としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、60質量%以下が好ましい。前記好ましい範囲内であると、生産性がより優れる点で、有利である。
【0026】
-第2の態様-
前記第2の態様における無機固体電解質は、上記した第1の態様における無機固体電解質と同様である。
【0027】
<分散剤>
-第1の態様-
前記第1の態様における分散剤としては、前記溶媒に溶解し、前記無機固体電解質と反応しづらく、かつ前記無機固体電解質を分散できる限り、特に制限はなく、従来公知のもの又は市販されているものを目的に応じて適宜選択することができる。前記分散剤は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0028】
本明細書において、前記分散剤が前記溶媒に溶解するとは、前記溶媒に相溶性があることをいう。より具体的には、前記溶媒に、前記分散剤を3質量%投入し、溶解させた後、10分間静置させた後に、沈降物又は上澄みが確認されていない場合に、溶解したと判断することができる。
【0029】
前記分散剤の具体例としては、例えば、ポリエチレン系、ポリエチレンオキシド系、ポリプロピレンオキシド系、ポリカルボン酸系、ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合系、ポリエチレングリコール系、ポリカルボン酸部分アルキルエステル系、ポリエーテル系、ポリエチレンイミン系、ポリアルキレンポリアミン系等の高分子分散剤;アルキルスルホン酸系、四級アンモニウム系高級アルコールアルキレンオキサイド系、多価アルコールエステル系、アルキルポリアミン系等の低分子分散剤;ポリリン酸塩分散剤等の無機分散剤等が挙げられる。
【0030】
前記分散剤の前記液体組成物中における含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、前記分散剤の固形分濃度としては、分散させる固体電解質に対して10質量%以下であることが好ましく、3質量%以下であることがより好ましい。前記好ましい範囲外であると、分散剤濃度が高すぎることによる凝集を生じる懸念がある。
【0031】
-第2の態様-
前記第2の態様における分散剤は、上記した第1の態様における分散剤と同様である。
【0032】
<その他の成分>
前記第1の態様及び第2の態様における液体組成物中のその他の成分としては、本発明の効果を損なわない限り、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、固体電解質層又は電極合材層に用いられる公知の成分などが挙げられる。具体的には、バインダー、活物質、導電助剤などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
前記その他の成分の液体組成物における含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
【0033】
-バインダー-
前記バインダーとしては前記無機固体電解質同士、又は前記無機固体電解質と基体若しくは電極活物質とを結着させることが可能であれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、高分子化合物、高分子粒子などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0034】
前記高分子化合物としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ポリアミド化合物、ポリイミド化合物、ポリアミドイミド、エチレン-プロピレン-ブタジエンゴム(EPBR)、スチレン-ブタジエンゴム(SBR)、ニトリルブタジエンゴム(NBR)、イソプレンゴム、ポリイソブテン、ポリエチレングリコール(PEO)、ポリメチルメタクリル酸(PMMA)、ポリエチレンビニルアセテート(PEVA)等が挙げられる。
【0035】
液体に分散することが可能な高分子化合物として、高分子粒子を用いてもよい。高分子粒子の最大粒子径としては、液体吐出ヘッドのノズル径よりも小さければよい。高分子粒子のモード径としては、0.01~1μmであることが好ましい。前記高分子粒子を構成する材料としては、例えば、ポリフッ化ビニリデン、アクリル樹脂、スチレン-ブタジエンゴム、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリウレタン、ナイロン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリフェニレンスルフィド、ポリエチレンテフタレート、ポリブチレンテフタレート等の熱可塑性樹脂が挙げられる。
【0036】
-活物質-
前記活物質としては、電気化学素子に適用することが可能な正極活物質、又は負極活物質を用いることができる。
【0037】
前記正極活物質としては、アルカリ金属イオンを可逆的に吸蔵及び放出することが可能であれば、特に制限はないが、アルカリ金属含有遷移金属化合物を用いることができる。
【0038】
前記アルカリ金属含有遷移金属化合物としては、例えば、コバルト、マンガン、ニッケル、クロム、鉄及びバナジウムからなる群より選択される1種以上の元素とリチウムとを含む複合酸化物等のリチウム含有遷移金属化合物が挙げられる。
【0039】
前記リチウム含有遷移金属化合物としては、例えば、コバルト酸リチウム、ニッケル酸リチウム、マンガン酸リチウム、ニッケルコバルトマンガン酸リチウムなどが挙げられる。
【0040】
前記アルカリ金属含有遷移金属化合物としては、結晶構造中にXO4四面体(X=P,S,As,Mo,W,Si等)を有するポリアニオン系化合物も用いることができる。これらの中でも、サイクル特性の点で、リン酸鉄リチウム、リン酸バナジウムリチウム等のリチウム含有遷移金属リン酸化合物が好ましく、リチウム拡散係数、電気化学素子の入出力特性の点で、リン酸バナジウムリチウムが特に好ましい。
【0041】
なお、ポリアニオン系化合物は、電子伝導性の点で、炭素材料等の導電助剤により表面が被覆されて複合化されていることが好ましい。
【0042】
前記負極活物質としては、アルカリ金属イオンを可逆的に吸蔵及び放出することが可能であれば、特に制限はないが、黒鉛型結晶構造を有するグラファイトを含む炭素材料を用いることができる。
【0043】
前記炭素材料としては、例えば、天然黒鉛、人造黒鉛、難黒鉛化性炭素(ハードカーボン)、易黒鉛化性炭素(ソフトカーボン)などが挙げられる。
【0044】
前記炭素材料以外の前記負極活物質としては、例えば、チタン酸リチウム、酸化チタンなどが挙げられる。
【0045】
また、電気化学素子のエネルギー密度の点から、前記負極活物質として、例えば、金属リチウム、シリコン、スズ、シリコン合金、スズ合金、酸化シリコン、窒化シリコン、酸化スズ等の高容量材料を用いることが好ましい。
【0046】
前記活物質の前記液体組成物における含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、10質量%以上が好ましく、15質量%以上がより好ましい。液体組成物中の活物質の含有量が10質量%以上であると、所定の目付量の電極合材層を形成するために必要な印刷回数が少なくなる。
【0047】
-導電助剤-
前記導電助剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、導電性カーボンブラック、カーボンナノファイバー、カーボンナノチューブ、グラフェン、黒鉛粒子等の炭素材料を用いることができる。
ここで、導電助剤は、前記活物質と複合化されていてもよい。
【0048】
導電性カーボンブラックは、例えば、ファーネス法、アセチレン法、ガス化法などにより製造することができる。
【0049】
炭素材料以外の導電助剤としては、例えば、アルミニウム等の金属粒子、金属繊維を用いることができる。
【0050】
活物質に対する導電助剤の量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、10質量%以下が好ましく、8質量%以下がより好ましい。
【0051】
[粒径、粒度分布]
前記第1の態様及び第2の態様の液体組成物に含まれる、固体電解質やその他必要に応じて添加される固形成分などの固形分は、レーザー回折法により測定される体積分率10%粒子径(D10)、体積分率50%粒子径(D50)、体積分率90%粒子径(D90)、及びモード径(Dm)が、下記式(1)から(3)を満たす。下記式(1)から(3)を満たすことで、前記液体組成物から得られる乾燥物のイオン伝導性を良好なものとすることができる。
D90/D10>10 ・・・ 式(1)
D50<1μm ・・・ 式(2)
Dm<2μm ・・・ 式(3)
【0052】
前記D90/D10としては、10超であれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、イオン伝導性がより優れる点で、15以上が好ましく、20以上がより好ましい。
【0053】
前記D10としては、前記式(1)を満たす限り、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、イオン伝導性が優れる点で1μm以下が好ましく、0.5μm以下がより好ましい。前記D10の下限としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、0.05μm以上が好ましい。
【0054】
前記D90としては、前記式(1)を満たす限り、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、イオン伝導性が優れる点で2μm以上が好ましく、4μm以上がより好ましい。前記D90の上限としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、10μm以下が好ましい。
【0055】
前記D50としては、前記式(2)を満たす限り、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、イオン伝導性がより優れる点で、1.0μm以下が好ましい。前記D50の下限としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、0.5μm以上が好ましい。
【0056】
前記Dmとしては、前記式(3)を満たす限り、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、イオン伝導性がより優れる点で、2μm以下が好ましく、1.5μm以下がより好ましい。前記Dmの下限としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、0.5μm以上が好ましい。
【0057】
[最大粒子径]
前記第1の態様及び第2の態様の液体組成物に含まれる固形分の最大粒子径としては、本発明の効果を損なわない限り、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、インクジェットヘッドのノズル径よりも小さいことが好ましく、インクジェット吐出性をより高めることができる点で、インクジェットヘッドのノズル径よりも十分小さいことが好ましい。具体的には、前記液体組成物に含まれる固形分の最大粒子径と、インクジェットヘッドのノズル径との比(液体組成物に含まれる固形分の最大粒子径/インクジェットヘッドのノズル径)が、0.8以下であることが好ましく、0.6以下であることがより好ましく、0.5以下であることが更に好ましい。即ち、インクジェットヘッドのノズル径が40μmであるとすると、液体組成物に含まれる固形分の最大粒子径は32μm以下であることが好ましく、24μm以下であることがより好ましく、20μm以下であることが更に好ましい。
【0058】
前記液体組成物に含まれる固形分のD10、D50、D90、Dm、及び最大粒子径の測定方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ISO13320に準じて、測定することができる。前記測定に用いる装置としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、レーザー回折/散乱式粒子径分布測定装置(LA-960、株式会社堀場製作所製)などが挙げられる。
【0059】
なお、液体組成物の原料に用いられる粉末成分の最大粒子径の測定方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、上記した液体組成物に含まれる固形分の最大粒子径の測定方法と同様に、レーザー回折法を用いて測定する方法、走査型電子線回折により得られる画像から求める方法などが挙げられる。
【0060】
[粘度]
前記第1の態様及び第2の態様の液体組成物の粘度としては、本発明の効果を損なわない限り、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、インクジェットヘッドのノズルから吐出可能な粘度であることが好ましい。より具体的には、25℃における粘度が、200mPa・s以下であることが好ましく、100mPa・s以下であることがより好ましく、50mPa・s以下がさらに好ましく、25mPa・s以下が特に好ましい。下限値は特に限定されないがインクジェット方式で吐出できる粘度で適宜設定すればよい。
【0061】
前記液体組成物の粘度の測定方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、B型粘度計(コーンプレート型粘度計)にNo.CPA-40Zのロータを装着して、測定することができる。本明細書において、前記液体組成物の粘度は、25℃における粘度のことをいう。
【0062】
前記液体組成物の製造方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、後述する本発明の液体組成物の製造方法により製造することが好ましい。
【0063】
前記液体組成物の用途としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、全固体二次電池の固体電解質層の材料として又は電極合材層の材料を形成する際の一部として好適に用いることができる。
【0064】
(液体組成物の製造方法)
本発明の液体組成物の製造方法は、上記した本発明の液体組成物を製造する方法であって、溶解乃至分散工程を含み、必要に応じて、更にその他の工程を含む。
【0065】
<溶解乃至分散工程>
前記溶解乃至分散工程は、溶媒中に、無機固体電解質と、前記溶媒に溶解する分散剤とを溶解乃至分散させる工程である。例えば、前記溶媒中に、前記無機固体電解質と、前記分散剤と、必要に応じて前記その他の成分とを投入し、混合することにより調製することができる。
前記溶媒、前記無機固体電解質、及び前記分散剤は、上記した液体組成物の項目に記載の溶媒、無機固体電解質、及び分散剤と同様である。
前記混合の手段としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、超音波ホモジナイザーなどが挙げられる。前記混合の条件としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
【0066】
<その他の工程>
前記その他の工程としては、本発明の効果を損なわない限り、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、調整工程などが挙げられる。
【0067】
-調整工程-
前記調整工程は、機械的処理により、前記液体組成物中の固形分の粒径を調整する工程である。
前記機械的処理の手段としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、高速回転型ホモジナイザー、湿式ジェットミル、湿式ビーズミル、及びこれらの2種以上の組合せから選択される手段が挙げられる。前記機械的処理の条件としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
前記調整工程は、前記溶解乃至分散工程中に行ってもよいし、前記溶解乃至分散工程の後に行ってもよい。
前記調整工程により、前記液体組成物に含まれる固形分が上記式(1)~(3)を満たすようにすることができる。なお、前記液体組成物に含まれる固形分として、上記式(1)~(3)を満たすものを用いて前記溶解乃至分散工程を行った場合は、前記調整工程を行わなくてもよい。
【0068】
(収容容器)
本発明の収容容器は、上記した本発明の液体組成物が収容された収容容器である。
前記収容容器の形状、構造、及び大きさとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
【0069】
(固体電解質層又は電極合材層の製造装置、固体電解質層又は電極合材層の製造方法)
本発明の固体電解質層又は電極合材層の製造装置は、上記した本発明の収容容器と、インクジェットヘッドを用いて前記収容容器に収容された前記液体組成物を吐出する吐出手段と、を含み、必要に応じて、更にその他の構成を含む。
本発明の固体電解質層又は電極合材層の製造方法は、インクジェットヘッドを用いて上記した本発明の液体組成物を吐出する吐出工程を含み、必要に応じて、更にその他の工程を含む。
【0070】
<吐出手段、吐出工程>
前記吐出手段は、インクジェットヘッドを用いて前記収容容器に収容された前記液体組成物を吐出する手段である。
前記吐出工程は、インクジェットヘッドを用いて前記液体組成物を吐出する工程である。
前記吐出により、対象物上に液体組成物を付与して、液体組成物層を形成することができる。
前記対象物(以下、「吐出対象物」と称することがある。)としては、固体電解質層又は電極合材層を形成する対象であれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、活物質層などが挙げられる。
【0071】
<その他の構成、その他の工程>
前記固体電解質層又は電極合材層の製造装置におけるその他の構成としては、本発明の効果を損なわない限り、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、加熱手段などが挙げられる。
前記固体電解質層又は電極合材層の製造方法におけるその他の工程としては、本発明の効果を損なわない限り、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、加熱工程などが挙げられる。
【0072】
-加熱手段、加熱工程-
前記加熱手段は、前記吐出手段により吐出された液体組成物を加熱する手段である。
前記加熱工程は、前記吐出工程で吐出された液体組成物を加熱する工程である。
前記加熱により、前記液体組成物層を乾燥させることができる。
【0073】
図1は、本実施形態の固体電解質層又は電極合材層の製造方法を実現するための固体電解質層又は電極合材層の製造装置の一例を示す模式図である。
【0074】
図1の固体電解質層又は電極合材層の製造装置は、上記した液体組成物を用いて固体電解質層又は電極合材層を製造する装置である。固体電解質層又は電極合材層装置は、吐出対象物を有する印刷基材4上に、液体組成物を付与して液体組成物層を形成する工程を含む吐出工程部10と、液体組成物層を加熱して固体電解質層又は電極合材層を得る加熱工程を含む加熱工程部30を備える。固体電解質層又は電極合材層装置は、印刷基材4を搬送する搬送部5を備え、搬送部5は、吐出工程部10、加熱工程部30の順に印刷基材4をあらかじめ設定された速度で搬送する。
前記活物質層などの吐出対象物を有する印刷基材4の製造方法としては、特に制限はなく、公知の方法を適宜選択することができる。
【0075】
吐出工程部10は、印刷基材4上に液体組成物を付与する付与工程を実現する付与手段であるインクジェット印刷法に応じた任意の印刷装置1aと、液体組成物を収容する収容容器1bと、収容容器1bに貯留された液体組成物を印刷装置1aに供給する供給チューブ1cを備える。
【0076】
収容容器1bは液体組成物7を収容し、吐出工程部10は、印刷装置1aから液体組成物7を吐出して、印刷基材4上に液体組成物7を付与して液体組成物層を薄膜状に形成する。なお、収容容器1bは、固体電解質層又は電極合材層装置と一体化した構成であってもよいが、固体電解質層又は電極合材層装置から取り外し可能な構成であってもよい。また、固体電解質層又は電極合材層装置と一体化した収容容器や固体電解質層又は電極合材層装置から取り外し可能な収容容器に添加するために用いられる容器であってもよい。
【0077】
収容容器1bや供給チューブ1cは、液体組成物7を安定して貯蔵および供給できるものであれば任意に選択可能である。
【0078】
加熱工程部30は、
図1に示すように、加熱装置3aを有し、液体組成物層に残存する溶媒を、加熱装置3aにより加熱して乾燥させて除去する溶媒除去工程を含む。これにより固体電解質層又は電極合材層を形成することができる。加熱工程部30は、溶媒除去工程を減圧下で実施してもよい。
【0079】
前記加熱装置3aとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、基板加熱、IRヒーター、温風ヒーターなどが挙げられ、これらを組み合わせてもよい。
【0080】
また、加熱温度や時間に関しては、液体組成物7に含まれる溶媒の沸点や形成膜厚に応じて適宜選択可能である。
【0081】
図2は、本実施形態の固体電解質層又は電極合材層の製造方法を実現するための固体電解質層又は電極合材層の製造装置(液体吐出装置)の他の一例を示す模式図である。
【0082】
液体吐出装置300’は、ポンプ310と、バルブ311、312を制御することにより、液体組成物が液体吐出ヘッド306、タンク307、チューブ308を循環することが可能である。
【0083】
また、液体吐出装置300’は、外部タンク313が設けられており、タンク307内の液体組成物が減少した際に、ポンプ310と、バルブ311、312、314を制御することにより、外部タンク313からタンク307に液体組成物を供給することも可能である。
【0084】
固体電解質層又は電極合材層の製造装置を用いると、吐出対象物の狙ったところに液体組成物を吐出することができる。
【0085】
前記固体電解質層又は電極合材層は、例えば、蓄電素子の構成の一部として、好適に用いることができる。前記蓄電素子における前記固体電解質層又は電極合材層以外の構成としては、特に制限はなく、公知のものを適宜選択することができ、例えば、正極、負極、セパレータなどが挙げられる。
【0086】
前記蓄電素子の製造方法としては、固体電解質層又は電極合材層を本発明のものとする以外は、公知の方法を適宜選択することができる。
【0087】
前記蓄電素子の形状としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、
図3に示すような形状の他にも、一般的に採用されている各種形状の中から、その用途に応じて適宜選択することができる。前記形状としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、シート電極及び固体電解質層をスパイラル状にしたシリンダータイプ、ペレット電極及び固体電解質層を組み合わせたインサイドアウト構造のシリンダータイプ、ペレット電極及び固体電解質層を積層したコインタイプなどが挙げられる。
【0088】
図3は、本実施形態の固体電解質層を設けた蓄電素子の一例を示す模式図である。
本実施形態に係る蓄電素子110は、
図3に示すように、正極11と、正極11に対向して設けられた負極12と、正極11と負極12との間に配置された固体電解質層13と、を有している。
蓄電素子110は、正極11と、負極12と、電解質層13とを囲繞して保持する外装缶としての容器15と、容器15を貫いて正極11と接続された正極線16と、同様に容器15を貫いて負極12と接続された負極線17と、を有している。
【0089】
<用途>
前記蓄電素子の用途には、特に制限はなく、各種用途に用いることができ、例えば、ノートパソコン、ペン入力パソコン、モバイルパソコン、電子ブックプレーヤー、携帯電話、携帯ファックス、携帯コピー、携帯プリンター、ヘッドフォンステレオ、ビデオムービー、液晶テレビ、ハンディークリーナー、ポータブルCD、ミニディスク、トランシーバー、電子手帳、電卓、メモリーカード、携帯テープレコーダー、ラジオ、モーター、照明器具、玩具、ゲーム機器、時計、ストロボ、カメラ等の電源、バックアップ電源などが挙げられる。
【実施例0090】
以下、実施例に基づき、本発明について、さらに詳細に説明する。なお、本発明は、実施例に限定されるものではない。
なお、以下の操作は、特に断りがない限り、無機固体電解質と大気中の水分との反応を抑制するために、露点環境-70℃以下に維持されたアルゴングローブボックス内で実施した。
【0091】
後述の調製例、実施例、及び比較例におけるイオン伝導度及び粒径、粒度分布は、下記のようにして測定した。
【0092】
[イオン伝導度の測定]
まず粉末体30mgを直径2.5mmのプレス治具に入れ、一軸油圧プレスによって10MPaを印加し、ペレット状試料に成型した。さらにペレット状試料の上下表面に金粉末を添加し、1MPaでプレスすることで電極を形成した。
30℃中の恒温槽中で交流インピーダンス法により、イオン伝導度(S/cm)を算出した。
イオン伝導度の優劣については、下記の評価基準で評価した。
○ : イオン伝導度が優れている(イオン伝導度が、1×10-4S/cm以上である。)
× : イオン伝導度が劣っている(イオン伝導度が、1×10-4S/cm未満である。)
【0093】
[粒径、粒度分布の測定方法]
液体組成物に含まれる固形分のD10、D50、D90、Dm、及び最大粒子径は、ISO13320に準じて、以下のようにして求めた。
まず、液体組成物を、使用している同じ溶媒を用いて、固形分濃度が0.1~10ppmになるように希釈し、希釈液とした。石英ガラス容器に前記希釈液を入れ、パッキンで封をした。次いで、グローブボックス外に、パッキンで封をした石英ガラス容器を取り出し、レーザー回折/散乱式粒子径分布測定装置(LA-960、株式会社堀場製作所製)を用いて、D10、D50、D90、Dm、及び最大粒子径を算出した。ここで、希釈濃度は、レーザー回折/散乱式粒子径分布測定装置の透過光強度が適性範囲に入るように、液体組成物で使用しているものと同じ溶媒により、濃度を調整した。
【0094】
(調製例1~4:無機固体電解質1~4の合成)
無機固体電解質1~4として、文献1(H.-J. Deiseroth, S.-T. Kong, H. Eckert, J. Vannahme, C. Reiner, T. Zaiss and M. Schlosser, Angew. Chem., Int. Ed. 47, 755(2008))に準じて、粒径が異なるアルジロダイト型硫化物固体電解質(Li6PS5Cl)を用意した。
調製例1~4の無機固体電解質について、上記のようにして、イオン伝導度を測定した。また、調製例1~4の無機固体電解質のD10、D50、D90、及びDmを、走査型電子顕微鏡(SEM)で撮影し、求めた。結果を表1に示す。
【0095】
【0096】
(実施例1~2及び比較例1~3:液体組成物及び乾燥粉末の作製)
[液体組成物の作製]
以下の実施例1~2及び比較例1~3では、下記のようにして液体組成物を作製した。
溶媒中に、無機固体電解質及び分散剤(Lubrizol社製、S21000)を投入した。前記無機固体電解質は、液体組成物に対して20質量%となるように溶媒に投入した。前記分散剤は、前記無機固体電解質に対して1質量%の質量比で添加した。
ここで、前記脱水した溶媒として、カールフィッシャー水分濃度計により、100ppm以下の水分含有量であることを確認したものを用いた。
【0097】
[乾燥粉末の作製]
得られた液体組成物を蒸発皿に滴下し、120℃に保持されたホットプレート上で、1時間加熱し、乾燥粉末を得た。
【0098】
下記の実施例1~2及び比較例1~3の液体組成物について、イオン伝導度及び粒径、粒度分布は上記のようにして測定し、液体組成物の粘度及びインクジェット吐出性は以下のようにして評価した。
【0099】
[液体組成物の粘度]
B型粘度計(コーンプレート型粘度計)にNo.CPA-40Zのロータを装着して、液体組成物の100rpmにおける粘度を25℃で計測した。
【0100】
[インクジェット吐出性]
液滴観察装置EV1000(株式会社リコー製)を用いて液体組成物のインクジェット吐出性を以下のように評価した。
評価する液体組成物をEV1000にてインクジェットヘッドの1ノズル(ノズル径:40μm)から吐出を行い、60秒間以上吐出状態を維持できている場合、これを吐出可能と判断した。なお、60秒間以上吐出状態を維持できている場合とは、吐出開始から少なくとも60秒間の時点において、液体組成物が吐出されていることをいい、その吐出量は問わない。即ち、吐出開始から少なくとも60秒間の時点において、液体組成物が吐出されている限り、吐出開始時と、吐出開始から60秒間後の時点とにおいて、吐出量は変化していなくてもよいし、変化していてもよい。
-評価-
○ : 吐出可能(60秒間以上吐出状態を維持できる。)
× : 吐出可能ではない(60秒間吐出状態を維持できない。)
【0101】
<実施例1:液体組成物A及びその乾燥粉末>
オクタン(比誘電率2.1、東京化成社製)中に、前記固体電解質4及び前記分散剤を投入し、高速回転型ホモジナイザー(Kinematica社製、MT3100S2)により、1時間、回転数30,000rpmで処理を行い、液体組成物Aを作製した。
レーザー回折法により求めた液体組成物Aに含まれる固形分のD10、D50、D90、Dm、及び最大粒子径は、それぞれ、0.12μm、0.8μm、2.1μm、1.2μm、及び5.0μmであった。
得られた液体組成物Aの粘度は、8mPa・sであった。
液体組成物Aから得られた乾燥粉末のイオン伝導度は、1.0×10-3S/cmであった。
さらにEV1000を用いて、得られた液体組成物Aのインクジェット吐出性を調べた。60秒間の連続吐出が可能であることを確認した。
【0102】
<実施例2:液体組成物B及びその乾燥粉末>
オクタン(比誘電率2.1、東京化成社製)中に、前記固体電解質1を10質量%、前記固体電解質2を7質量%、及び前記固体電解質3を3質量%と、前記分散剤とを投入し、超音波ホモジナイザー(日本精機製作所社製、US-300E)で、500W、10分間処理を行い、液体組成物Bを作製した。
レーザー回折法により求めた液体組成物Bに含まれる固形分のD10、D50、D90、Dm、及び最大粒子径は、それぞれ、0.25μm、0.9μm、5.0μm、1.8μm、及び7.0μmであった。
得られた液体組成物Bの粘度は、10mPa・sであった。
液体組成物Bから得られた乾燥粉末のイオン伝導度は、7×10-4S/cmであった。
さらにEV1000を用いて、得られた液体組成物Bのインクジェット吐出性を調べた。60秒間の連続吐出が可能であることを確認した。
【0103】
<比較例1:液体組成物C及びその乾燥粉末>
オクタン(比誘電率2.1、東京化成社製)中に、前記固体電解質2及び前記分散剤を投入し、高速回転型ホモジナイザー(Kinematica社製、MT3100S2)により、1時間、回転数30,000rpmで処理を行い、液体組成物Cを作製した。
レーザー回折法により求めた液体組成物Cに含まれる固形分のD10、D50、D90、Dm、及び最大粒子径は、それぞれ、0.6μm、0.8μm、3.0μm、1.5μm、及び4.5μmであった。
得られた液体組成物Cの粘度は、10mPa・sであった。
液体組成物Cから得られた乾燥粉末のイオン伝導度は、5×10-5S/cmであり、不良であった。
さらにEV1000を用いて、得られた液体組成物Cのインクジェット吐出性を調べた。60秒間の連続吐出が可能であることを確認した。
【0104】
<比較例2:液体組成物D及びその乾燥粉末>
オクタン(比誘電率2.1、東京化成社製)中に、前記固体電解質1を10質量%及び前記固体電解質3を10質量%と、前記分散剤とを投入し、湿式ジェットミル(スギノマシン社製、スターバーストミニモ)により、180MPaで処理を行い、液体組成物Dを作製した。
レーザー回折法により求めた液体組成物Dに含まれる固形分のD10、D50、D90、Dm、及び最大粒子径は、それぞれ、0.2μm、1.1μm、6.5μm、1.9μm、及び16.0μmであった。
得られた液体組成物Dの粘度は、8mPa・sであった。
液体組成物Dから得られた乾燥粉末のイオン伝導度は、7×10-4S/cmであった。
さらにEV1000を用いて、得られた液体組成物Dのインクジェット吐出性を調べた。吐出詰まりが発生し、60秒間の連続吐出ができず、不良であった。
【0105】
<比較例3:液体組成物E及びその乾燥粉末>
オクタン(比誘電率2.1、東京化成社製)中に、前記固体電解質1を15質量%及び前記固体電解質4を5質量%と、前記分散剤とを投入し、超音波ホモジナイザー(日本精機製作所社製、US-300E)で、500W、10分間処理を行い、液体組成物Eを作製した。
レーザー回折法により求めた液体組成物Eに含まれる固形分のD10、D50、D90、Dm、及び最大粒子径は、それぞれ、0.4μm、0.8μm、7.0μm、3.0μm、及び19.0μmであった。
得られた液体組成物Eの粘度は、11mPa・sであった。
液体組成物Eから得られた乾燥粉末のイオン伝導度は、4×10-4S/cmであった。
さらにEV1000を用いて、得られた液体組成物Eのインクジェット吐出性を調べた。吐出詰まりが発生し、60秒間の連続吐出ができず、不良であった。
【0106】
上記した実施例及び比較例の結果を下記の表2に示す。
【0107】
【0108】
本実施形態に係る態様は、例えば、以下のとおりである。
<1> 溶媒と、無機固体電解質と、分散剤と、を含む液体組成物であって、
前記分散剤は前記溶媒に溶解し、
レーザー回折法により測定される前記液体組成物に含まれる固形分の体積分率10%粒子径(D10)、体積分率50%粒子径(D50)、体積分率90%粒子径(D90)、及びモード径(Dm)は、下記式(1)から(3)を満たすことを特徴とする液体組成物である。
D90/D10>10 ・・・ 式(1)
D50<1μm ・・・ 式(2)
Dm<2μm ・・・ 式(3)
<2> 前記液体組成物の粘度が、200mPa・s以下である前記<1>に記載の液体組成物である。
<3> 前記液体組成物に含まれる固形分の最大粒子径が、32μm以下である前記<1>から<2>のいずれかに記載の液体組成物である。
<4> インクジェットヘッドを用いて吐出される液体組成物であって、
前記液体組成物は、溶媒と、無機固体電解質と、分散剤と、を含み、
前記分散剤は前記溶媒に溶解し、
レーザー回折法により測定される前記液体組成物に含まれる固形分の体積分率10%粒子径(D10)、体積分率50%粒子径(D50)、体積分率90%粒子径(D90)、及びモード径(Dm)は、下記式(1)から(3)を満たすことを特徴とする液体組成物である。
D90/D10>10 ・・・ 式(1)
D50<1μm ・・・ 式(2)
Dm<2μm ・・・ 式(3)
<5> 前記液体組成物の粘度が、インクジェットヘッドのノズルより吐出可能な粘度である前記<4>に記載の液体組成物である。
<6> 前記液体組成物に含まれる固形分の最大粒子径が、インクジェットヘッドのノズル径よりも小さい前記<4>から<5>のいずれかに記載の液体組成物である。
<7> 前記液体組成物に含まれる固形分の最大粒子径と、インクジェットヘッドのノズル径との比が0.8以下である前記<4>から<6>のいずれかに記載の液体組成物である。
<8> 25℃における前記溶媒の比誘電率が6.0以下である前記<1>から<7>のいずれかに記載の液体組成物である。
<9> 前記液体組成物中の前記無機固体電解質の固形分濃度が15質量%以上である前記<1>から<8>のいずれかに記載の液体組成物である。
<10> 前記<1>から<9>のいずれかに記載の液体組成物の製造方法であって、
溶媒中に、無機固体電解質と、前記溶媒に溶解する分散剤とを溶解乃至分散させる溶解乃至分散工程を含むことを特徴とする液体組成物の製造方法である。
<11> 機械的処理により、前記液体組成物中の固形分の粒径を調整する調整工程をさらに含む前記<10>に記載の液体組成物の製造方法である。
<12> 前記機械的処理が、高速回転型ホモジナイザー、湿式ジェットミル、湿式ビーズミル、及びこれらの2種以上の組合せから選択される手段により行われる前記<11>に記載の液体組成物の製造方法である。
<13> 前記<1>から<9>のいずれかに記載の液体組成物が収容されたことを特徴とする収容容器である。
<14> 前記<13>に記載の収容容器と、インクジェットヘッドを用いて前記収容容器に収容された前記液体組成物を吐出する吐出手段と、を含むことを特徴とする固体電解質層又は電極合材層の製造装置である。
<15> インクジェットヘッドを用いて前記<1>から<9>のいずれかに記載の液体組成物を吐出する吐出工程を含むことを特徴とする固体電解質層又は電極合材層の製造方法である。
【0109】
前記<1>から<9>のいずれかに記載の液体組成物、前記<10>から<12>のいずれかに記載の液体組成物の製造方法、前記<13>に記載の収容容器、前記<14>に記載の固体電解質層又は電極合材層の製造装置、又は前記<15>に記載の固体電解質層又は電極合材層の製造方法によると、従来における諸問題を解決し、本発明の目的を達成することができる。