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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023089738
(43)【公開日】2023-06-28
(54)【発明の名称】吸収性物品
(51)【国際特許分類】
   A61F 13/532 20060101AFI20230621BHJP
   A61F 13/533 20060101ALI20230621BHJP
   A61F 13/534 20060101ALI20230621BHJP
【FI】
A61F13/532 100
A61F13/533 100
A61F13/532 200
A61F13/534 100
【審査請求】未請求
【請求項の数】19
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021204432
(22)【出願日】2021-12-16
(71)【出願人】
【識別番号】000115108
【氏名又は名称】ユニ・チャーム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100211052
【弁理士】
【氏名又は名称】奥村 大輔
(72)【発明者】
【氏名】馮 雲
(72)【発明者】
【氏名】曾 若塵
(72)【発明者】
【氏名】徐 興旺
(72)【発明者】
【氏名】沈 蓮蓮
(72)【発明者】
【氏名】丹下 悟
【テーマコード(参考)】
3B200
【Fターム(参考)】
3B200AA01
3B200BA01
3B200BB17
3B200CA03
3B200CA08
3B200DB05
3B200DB15
3B200DB16
3B200DB23
(57)【要約】
【課題】体液の漏れを抑制することができる吸収性物品を提供する。
【解決手段】
一態様では、着用者の腹側と背側と結ぶ長手方向、及び、長手方向と直交する幅方向を有する吸収性物品が提供される。この吸収性物品は、高吸水性ポリマーを含み、着用者の肌面側から見て二次元状に分布する複数の吸収領域を有する吸収体を備える。複数の吸収領域の各々は、中心領域と、中心領域を囲むように配置された周辺領域とを含み、周辺領域に存在する高吸水性ポリマーの密度は、中心領域に存在する高吸水性ポリマーの密度よりも高い。
【選択図】図8
【特許請求の範囲】
【請求項1】
着用者の腹側と背側と結ぶ長手方向、及び、前記長手方向と直交する幅方向を有する吸収性物品であって、
高吸水性ポリマーを含み、前記着用者の肌面側から見て二次元状に配置された複数の吸収領域を有する吸収体を備え、
前記複数の吸収領域の各々は、中心領域と、前記中心領域を囲むように配置された周辺領域とを含み、
前記周辺領域に存在する前記高吸水性ポリマーの密度は、前記中心領域に存在する前記高吸水性ポリマーの密度よりも高い、吸収性物品。
【請求項2】
前記複数の吸収領域は、前記長手方向に交差する方向に沿って配列されている、請求項1に記載の吸収性物品。
【請求項3】
前記複数の吸収領域は、前記長手方向及び前記幅方向に沿って二次元的に配列されている、請求項1又は2に記載の吸収性物品。
【請求項4】
前記複数の吸収領域の少なくとも一部は、前記肌面側に突出している、請求項1~3の何れか一項に記載の吸収性物品。
【請求項5】
前記吸収体は、前記着用者の非肌面側に窪む表面凹部と前記非肌面側に突出する裏面凸部とを含む非肌面側エンボス部を含み、
前記非肌面側エンボス部は、前記複数の吸収領域の各々を囲むように形成されている、請求項4に記載の吸収性物品。
【請求項6】
前記非肌面側エンボス部は、前記肌面側から見て断続的に形成されている、請求項5に記載の吸収性物品。
【請求項7】
前記複数の吸収領域の少なくとも一部は、前記着用者の非肌面側に突出している、請求項1~6の何れか一項に記載の吸収性物品。
【請求項8】
前記吸収体は、前記着用者の肌面側に突出する表面凸部と前記肌面側に窪む裏面凹部とを含む肌面側エンボス部を含み、
前記肌面側エンボス部は、前記複数の吸収領域の各々を囲むように形成されている、請求項7に記載の吸収性物品。
【請求項9】
前記肌面側エンボス部は、前記肌面側から見て断続的に形成されている、請求項8に記載の吸収性物品。
【請求項10】
前記周辺領域に存在する前記高吸水性ポリマーの密度は、前記中心領域に存在する前記高吸水性ポリマーの密度よりも10%以上高い、請求項1~9の何れか一項に記載の吸収性物品。
【請求項11】
前記複数の吸収領域は、格子状のパターンによって画成されている、請求項1~10の何れか一項に記載の吸収性物品。
【請求項12】
前記吸収体は、前記格子状のパターンの格子点に対応する位置に配置され、エンボス加工が施されていない非圧搾部を含む、請求項11に記載の吸収性物品。
【請求項13】
前記吸収体は、前記長手方向に延在する一対のチャネル部を更に含み、
前記一対のチャネル部に含まれる前記高吸水性ポリマーの密度は、前記吸収体の他の部分に含まれる前記高吸水性ポリマーの密度よりも低い、請求項1~12の何れか一項に記載の吸収性物品。
【請求項14】
前記一対のチャネル部内の前記周辺領域に存在する前記高吸水性ポリマーの密度は、前記一対のチャネル部内の前記中心領域に存在する前記高吸水性ポリマーの密度よりも50%以上高い、請求項13に記載の吸収性物品。
【請求項15】
前記吸収体は、前記長手方向の一端側に位置する腹側部と、前記長手方向の他端側に位置する背側部と、前記腹側部と前記背側部との間に位置する中間部とを含み、
前記腹側部及び前記背側部の少なくとも一方は、前記吸収体の前記幅方向の両端部の間で延在するエンドエンボス部を含む、請求項1~13の何れか一項に記載の吸収性物品。
【請求項16】
前記腹側部及び前記背側部の厚みの平均値は、前記中間部の厚み平均値よりも小さい、請求項15に記載の吸収性物品。
【請求項17】
前記吸収体は、前記高吸水性ポリマーを含まない非吸収領域を更に含み、
前記非吸収領域は、前記腹側部と前記中間部との境界よりも前記吸収体の前記長手方向の一端側、又は、前記背側部と前記中間部との境界よりも前記吸収体の前記長手方向の他端側に配置されている、請求項16に記載の吸収性物品。
【請求項18】
前記吸収体は、前記着用者の肌面側に位置する第1吸収層、前記着用者の非肌面側に位置する第2吸収層、及び、前記第1吸収層と前記第2吸収層との間に位置する中間層を有し、
前記第1吸収層、前記第2吸収層及び前記中間層は高吸水性ポリマーを含む、請求項1~17の何れか一項に記載の吸収性物品。
【請求項19】
前記中心領域の前記中間層に存在する前記高吸水性ポリマーの密度は、前記周辺領域の前記中間層に存在する前記高吸水性ポリマーの密度よりも高い、請求項18に記載の吸収性物品。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、吸収性物品に関する。
【背景技術】
【0002】
紙おむつや生理用ナプキンといった吸収性物品が広く利用されている。この種の吸収性物品は、尿や血液等、着用者の体液を吸収する高吸水性ポリマーを含む吸収体を備える。吸収体を備える吸収性物品としては、例えば下記特許文献1~3に記載の吸収性物品が知られている。
【0003】
特許文献1には、上面シートと、裏面シートと、上面シートと裏面シートとの間に配置された吸収性パッドとを含む乳児用おむつが記載されている。当該吸収性パッドは、第1の不織布層と、第2の不織布層と、第1の不織布層と第2の不織布層との間に配置され、高吸水性ポリマー(SAP)を含む吸収性コアとを有する。吸収性パッドには、第1の不織布層及び第2の不織布層を接続して、吸収性パッドを複数のセルに区画する格子状のシールが形成されている。複数のセルのうち長手方向の中央ゾーンに配置されたセルの吸収性は、他のセルの吸収性よりも高められている。
【0004】
特許文献2には、トップシートと、バックシートと、トップシートとバックシートとの間に配置された吸収体と、トップシートと吸収体の間に配置された捕捉層と、捕捉層と吸収体の間に配置された分配層とを含むおむつが記載されている。この吸収体には、高吸水性ポリマーを実質的に又は完全に含まない一対のチャネルが形成されている。
【0005】
特許文献3には、液透過性シートと、液不透過性シートと、液透過性シートと液不透過性シートとの間に配置された吸収体とを備えるパンツ型おむつが記載されている。当該吸収体は、第1吸収層と、第2吸収層と、第1吸収層と第2吸収層との間に配置された中間層とを含む。第2吸収層には、長手方向に延在する一対のチャネルが形成されている。一対のチャネルに存在する高吸水性ポリマーの坪量は、第2吸収層の他の部分に比べて低くなっている。第1吸収層及び第2吸収層の一対のチャネルを除く部分には、均一の坪量で高吸水性ポリマーが配置されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特表2016-515458号公報
【特許文献2】国際公開第2014/093319号公報
【特許文献3】特開2020-108745号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記特許文献1に記載のおむつでは、シールが形成された部分に高吸水性ポリマーが含まれていないため、着用者によって排泄された尿は、吸収体に十分に浸透せずにシールが形成された部分に沿って流れやすい。したがって、吸収性物品に多量の尿が供給された場合には、シールが形成された部分を通って尿が吸収体の長手方向に流れ、吸収体の長手方向の端部から漏れる恐れがある。
【0008】
そこで本開示は、体液の漏れを抑制することができる吸収性物品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
一態様では、着用者の腹側と背側と結ぶ長手方向、及び、長手方向と直交する幅方向を有する吸収性物品が提供される。この吸収性物品は、高吸水性ポリマーを含み、着用者の肌面側から見て二次元状に配置された複数の吸収領域を有する吸収体を備える。複数の吸収領域の各々は、中心領域と、中心領域を囲むように配置された周辺領域とを含み、周辺領域に存在する高吸水性ポリマーの密度は、中心領域に存在する高吸水性ポリマーの密度よりも高い。
【0010】
中心領域には高吸水性ポリマーが相対的に低い密度で存在しているので、中心領域の吸水速度は周辺領域の吸水速度よりも高い。一方、周辺領域には高吸水性ポリマーが相対的に高い密度で存在しているので、周辺領域の最大吸水量は中心領域の最大吸水量よりも大きい。本態様に係る吸収性物品では、着用者から排出された体液は、高い吸収速度で中心領域に吸収され、吸収体の厚み方向に拡散される。中心領域で吸収された体液の一部は、最大吸水量の大きい周辺領域に移行して吸収される。ここで、高吸水性ポリマーは吸水量が高まるにつれて膨潤して透水性が低下するので、周辺領域に多量の体液が吸収されると周辺領域の透水性は低下して、やがて中心領域の周囲に透水性の低い障壁が形成される。このような障壁が中心領域の周囲に形成されると、着用者から排泄されて長手方向に流れる体液は、透水性の低い障壁に遮られて流れの向きが変化する。そして、流れの向きが変化した体液は、他の吸収領域によって吸収される。上記のように、本態様に係る吸収性物品では、体液を広い範囲に拡散させることができるので、吸収体に体液を効率的に吸収させることができる。したがって、体液の漏れを抑制することができる。
【0011】
一態様では、複数の吸収領域は、長手方向に交差する方向に沿って配列されていてもよい。複数の吸収領域が、長手方向に交差する方向に配列されることにより、長手方向に流れる体液を幅方向に拡散させることができる。したがって、吸収体の長手方向の端部からの体液の漏れを抑制することができる。
【0012】
一態様では、複数の吸収領域は、長手方向及び幅方向に沿って二次元的に配列されていてもよい。複数の吸収領域が長手方向及び幅方向に配列されることにより、体液を長手方向及び幅方向に拡散させることができるので、吸収体に体液を効率的に吸収させることができる。
【0013】
一態様では、複数の吸収領域の少なくとも一部は、肌面側に突出していてもよい。複数の吸収領域の一部が肌面側に突出することにより、吸収体の非肌面側には空隙が形成される。当該空隙に吸収領域において吸収しきれなかった体液が溜められることにより、体液の漏れが抑制される。
【0014】
一態様では、吸収体は、着用者の非肌面側に窪む表面凹部と非肌面側に突出する裏面凸部とを含む非肌面側エンボス部を含み、非肌面側エンボス部は、複数の吸収領域の各々を囲むように形成されていてもよい。本態様では、非肌面エンボス部の表面凹部に沿って体液が流れることで体液を効果的に拡散させることができる。
【0015】
一態様では、非肌面側エンボス部は、肌面側から見て断続的に形成されていてもよい。非肌面側エンボス部が断続的に形成されることにより、体液が非肌面側エンボス部の間を通り抜けることができるので、体液の拡散を促進することができる。
【0016】
一態様では、複数の吸収領域の少なくとも一部は、着用者の非肌面側に突出していてもよい。複数の吸収領域の少なくとも一部が非肌面側に突出することにより、吸収体の肌面側に空隙が形成され、着用者の体液が当該空隙に溜められる。空隙に溜められた体液は、吸収体に浸透して厚み方向に拡散される。したがって、吸収体に体液を効率的に吸収させることができる。
【0017】
一態様では、吸収体は、着用者の肌面側に突出する表面凸部と肌面側に窪む裏面凹部とを含む肌面側エンボス部を含み、肌面側エンボス部は、複数の吸収領域の各々を囲むように形成されていてもよい。本態様では、複数の吸収領域の各々が、肌面側エンボス部によって堰のように囲われるので、複数の吸収領域において体液を確実に吸収することができる。
【0018】
一態様では、肌面側エンボス部は、肌面側から見て断続的に形成されていてもよい。肌面側エンボス部が断続的に形成されることにより、体液が肌面側エンボス部の間を通り抜けることができるので、体液の拡散を促進することができる。
【0019】
一態様では、周辺領域に存在する高吸水性ポリマーの密度は、中心領域に存在する高吸水性ポリマーの密度よりも10%以上高くてもよい。周辺領域の高吸水性ポリマーの密度を中心領域の高吸水性ポリマーの密度よりも10%以上高くすることにより、中心領域の周囲に透水性の低い障壁を形成することができ、吸収体に体液を効率的に吸収させることができる。
【0020】
一態様では、複数の吸収領域は、格子状のパターンによって画成されていてもよい。格子状のパターンによって複数の吸収領域が画成されることにより、体液を吸収体の全体に拡散して、吸収体に体液を効率的に吸収させることができる。
【0021】
一態様では、吸収体は、格子状のパターンの格子点に対応する位置に配置され、エンボス加工が施されていない非圧搾部を含んでいてもよい。格子状のパターンの格子点に対応する位置に非圧搾部が形成されることにより、非肌面側エンボス部に沿った体液の流れが部分的に妨げられることで吸収体に体液が浸透しやすくなる。したがって、体液の漏れを抑制することができる。
【0022】
一態様では、吸収体は、長手方向に延在する一対のチャネル部を更に含み、一対のチャネル部に含まれる高吸水性ポリマーの密度は、吸収体の他の部分に含まれる高吸水性ポリマーの密度よりも低くてもよい。一対のチャネル部は、着用者の体液を素早く吸収して吸収性物品の長手方向に及び幅方向に拡散させる。したがって、吸収体に体液を効率的に吸収させることができる。なお、一対のチャネル部内の周辺領域に存在する高吸水性ポリマーの密度は、一対のチャネル部内の中心領域に存在する高吸水性ポリマーの密度よりも50%以上高くてもよい。
【0023】
一態様では、吸収体は、長手方向の一端側に位置する腹側部と、長手方向の他端側に位置する背側部と、腹側部と背側部との間に位置する中間部とを含み、腹側部及び背側部の少なくとも一方は、吸収体の幅方向の両端部の間で延在するエンドエンボス部を含んでもよい。本態様では、腹側部及び背側部の少なくとも一方に形成されたエンドエンボス部によって、腹側部又は背側部に達した尿の長手方向への流れが遮られるので、吸収体の長手方向の端部からの尿漏れを抑制することができる。
【0024】
一態様では、腹側部及び背側部の厚みの平均値は、中間部の厚み平均値よりも小さくてもよい。腹側部及び背側部の厚みの平均値を小さくすることにより、高吸収性ポリマーが体液を吸収して膨張した場合であっても、不織布等、腹側部及び背側部の構成材に損傷が生じにくくなる。
【0025】
一態様では、吸収体は、高吸水性ポリマーを含まない非吸収領域を更に含み、非吸収領域は、腹側部と中間部との境界よりも吸収体の長手方向の一端側、又は、背側部と中間部との境界よりも吸収体の長手方向の他端側に配置されていてもよい。本態様では、吸収体に体液が浸透したときに腹側部及び背側部が膨張しにくくなるので、腹側部及び背側部の構成材に損傷が生じにくくなる。
【0026】
一態様では、吸収体は、着用者の肌面側に位置する第1吸収層、着用者の非肌面側に位置する第2吸収層、及び、第1吸収層と第2吸収層との間に位置する中間層を有し、第1吸収層、第2吸収層及び中間層は高吸水性ポリマーを含んでいてもよい。本態様では、高吸収性ポリマーが第1吸収層、第2吸収層及び中間層に分散して配置されているので、吸収体の厚み方向に体液を分散して保持することができる。
【0027】
一態様では、中心領域の中間層に存在する高吸水性ポリマーの密度は、周辺領域の中間層に存在する高吸水性ポリマーの密度よりも高くてもよい。本態様では、中心領域の中間層の吸水性ポリマーの密度を高めることにより、中心領域の第2吸収層に移行する体液を低減しつつ、周辺領域に体液を拡散させることができる。
【発明の効果】
【0028】
本発明の種々の態様によれば、体液の漏れを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
図1】一実施形態に係る吸収性物品を概略的に示す斜視図である。
図2】肌面側から見た吸収性物品の平面図である。
図3】非肌面側から見た吸収性物品の平面図である。
図4図2のIV-IV線に沿った吸収性物品の断面図である。
図5】肌面側から見た吸収体の平面図である。
図6】非肌面側から見た吸収体の平面図である。
図7図5のVII-VII線に沿った吸収体の断面図である。
図8】吸収体の一部を拡大して示す平面図である。
図9】吸収体の変形例を示す平面図である。
図10】吸収体の変形例を示す断面図である。
図11】第2エンボス部の変形例を概略的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、図面を参照して、本開示の実施形態について説明する。なお、以下の説明において、同一又は相当要素には同一符号を付し、重複する説明は繰り返さない。図面は、理解の容易化のために一部を簡略化又は誇張して描いている場合があり、寸法比率は図面に記載のものに限定されない。
【0031】
以下、一実施形態に係る吸収性物品について説明する。図1は、一実施形態に係る吸収性物品1の斜視図である。図2は、吸収性物品1を肌面側Z1から見た平面図であり、図3は、吸収性物品1を非肌面側Z2から見た平面図である。図4は、図2のIV-IV線に沿った吸収性物品1の断面図である。図1~4に示す吸収性物品1は、着用者の尿を吸収するパンツ型の使い捨ておむつである。なお、吸収性物品1は、パンツ型の使い捨ておむつに限定されず、テープ型の使い捨ておむつ、ペット用使い捨ておむつ、トイレトレーニングパンツ、生理用ナプキン等であってもよい。
【0032】
図2及び図3では、後述する腹側胴回り部3の側端部34及び背側胴回り部4の側端部44において吸収性物品1を切断し、且つ、皺が形成されない状態まで吸収性物品1を展開させた伸長状態の吸収性物品1を示している。肌面側Z1とは吸収性物品1の使用状態(着用状態)のときに着用者の肌面に向けられる側であり、非肌面側Z2とは吸収性物品1の使用状態(着用状態)のときに着用者の肌面とは反対側に向けられる側である(図4参照)。着用者とは吸収性物品1を着用する対象者である。以下の説明では、特段の説明がない限り伸長状態における位置関係について説明する。
【0033】
図2及び図3に示すように、吸収性物品1は、伸長状態のときに幅方向X及び長手方向Yに延在している。長手方向Yは、吸収性物品1が着用されたときに着用者の腹側と背側との間で延びる方向である。幅方向Xは、長手方向Yに直交する方向であり、吸収性物品1が着用されたときに着用者の左右方向に延びる方向である。厚み方向Zは、幅方向X及び長手方向Yと直交する方向である。以下の説明では、吸収性物品1の長手方向Yの一端側を腹側といい、長手方向Yの他端側を背側ということがある。
【0034】
吸収性物品1は、腹側胴回り部3、背側胴回り部4及び本体部10を備えている。本体部10は、吸収性物品1の長手方向Yに長い略長方形の平面形状を有している。図2及び図3に示すように、本体部10は、長手方向Yの一端側に配置された腹側端部10aと、長手方向Yの他端側に配置された背側端部10bと、長手方向Yにおいて腹側端部10aと背側端部10bとの間に配置された股下部10cとを含んでいる。
【0035】
本体部10の腹側端部10aには、非肌面側Z2から腹側胴回り部3が接合されている。本体部10の背側端部10bには、非肌面側Z2から背側胴回り部4が接合されている。吸収性物品1は、腹側胴回り部3と背側胴回り部4とが対向するように本体部10が二つ折りにされ、腹側胴回り部3の幅方向Xの側端部34と背側胴回り部4の幅方向Xの側端部44とが溶着されることにより、腹側胴回り部3及び背側胴回り部4がベルト状に連結される。これにより、図1に示すように、吸収性物品1はパンツ型に形成される。パンツ型の吸収性物品1には、着用者の胴を通す胴回り開口部BHと、着用者の足を通す一対の脚回り開口部LHが形成されている。
【0036】
腹側胴回り部3は、吸収性物品1の幅方向Xを長手方向とする略長方形の平面形状を有しており、本体部10の腹側端部10aよりも非肌面側Z2に配置されている。腹側胴回り部3は、肌面側Z1に配置された肌面シート31と、非肌面側Z2に配置された非肌面シート32と、複数の伸縮部材(第2伸縮部材)33とを含んでいる。肌面シート31及び非肌面シート32は、例えば、スパンボンド、メルトブローン及びスパンボンドが順に積層されたSMS不織布、スパンボンド不織布、エアスルー不織布、プラスチックシート、開孔プラスチックシート又はこれらの不織布の積層体等によって構成されている。肌面シート31及び非肌面シート32は、ホットメルト等の接着剤によって互いに接合されている。
【0037】
複数の伸縮部材33は、肌面シート31と非肌面シート32との間で長手方向Yに間隔を空けて配列されている。これら複数の伸縮部材33は、腹側胴回り部3の幅方向Xの側端部34の間で延在している。したがって、腹側胴回り部3は、着用者の胴回りにフィットした状態で幅方向Xに伸縮する。伸縮部材33は、例えばゴムやスパンデックス等の弾性材料によって構成されている。図2に示すように、複数の伸縮部材33の少なくとも一部は、肌面側Z1から見て、後述する吸収体13を幅方向Xに横断するように延びている。
【0038】
背側胴回り部4は、吸収性物品1の幅方向Xに長い略長方形の平面形状を有しており、本体部10の背側端部10bよりも非肌面側Z2に配置されている。背側胴回り部4は、肌面側Z1に配置された肌面シート41と、非肌面側Z2に配置された非肌面シート42と、複数の伸縮部材(第2伸縮部材)43とを含んでいる。肌面シート41及び非肌面シート42は、例えば、スパンボンド、メルトブローン及びスパンボンドが順に積層されたSMS不織布、スパンボンド不織布、エアスルー不織布、プラスチックシート、開孔プラスチックシート又はこれらの不織布の積層体等によって構成されている。肌面シート41及び非肌面シート42は、ホットメルト等の接着剤によって互いに接合されている。
【0039】
複数の伸縮部材43は、肌面シート41と非肌面シート42との間で長手方向Yに間隔を空けて配列されている。これら複数の伸縮部材43は、背側胴回り部4の幅方向Xの側端部44の間で延在している。したがって、背側胴回り部4は、着用者の胴回りにフィットした状態で幅方向Xに伸縮する。伸縮部材43は、例えばゴムやスパンデックス等の弾性材料によって構成されている。図2に示すように、複数の伸縮部材43のうち少なくとも一部は、肌面側Z1から見て、後述する吸収体13を幅方向Xに横断するように延びている。
【0040】
本体部10は、トップシート11、バックシート12及び吸収体13を含んでいる。トップシート11は、本体部10において着用者に当てられる面を構成し、肌面側Z1に配置されている。トップシート11は、吸収体13を覆うセンターシート11aと、センターシート11aの幅方向Xの両側部を覆うサイドシート11bとを含んでいる。センターシート11aは例えばスパンボンド不織布等の透水性の不織布によって構成されている。サイドシート11bは例えば非透水性の不織布によって構成されている。サイドシート11bの長手方向Yの両端部は、ホットメルト接着剤等によってセンターシート11aに接合されている。
【0041】
サイドシート11bには、防漏ギャザー80が形成されている。防漏ギャザー80は、吸収体13の幅方向Xの外側に配置され、吸収体13に排泄された尿が幅方向Xに漏れることを抑制する。一実施形態では、防漏ギャザー80は、長手方向Yに延在する一対の伸縮部材(第1伸縮部材)71と、一対の伸縮部材71の収縮によって起立する起立部81と、幅方向Xにおける起立部81の起立支点となる横固定部82と、長手方向Yにおける起立部81の起立支点となる縦固定部83とを含んでいる。
【0042】
一対の伸縮部材71は、幅方向Xにおけるサイドシート11bの内側部分に設けられ、長手方向Yに延在している。一対の伸縮部材71は、例えば長さ方向に収縮可能な糸ゴム又は平ゴムである。一対の伸縮部材71は、本体部10の幅方向Xの中心線CLを隔てて互いに離間して配置されており、長手方向Yに伸長した状態でサイドシート11bに固定されている。一対の伸縮部材71の腹側の端部は腹側端部10aに配置されており、一対の伸縮部材71の背側の端部は背側端部10bに配置されている。一対の伸縮部材71は、吸収体13よりも非肌面側Z2に配置されている。
【0043】
横固定部82は、サイドシート11bのうち起立部81の幅方向Xの外側の位置において本体部10の長手方向Yの略全域に形成されていている。横固定部82は、サイドシート11bの一部であり、センターシート11aに固定されている。横固定部82は、幅方向Xにおける起立部81の起立支点となる。
【0044】
縦固定部83は、横固定部82に対して幅方向Xの内側の位置において腹側端部10a及び背側端部10bにそれぞれ形成されている。縦固定部83は、サイドシート11bの一部であり、センターシート11aに固定されている。縦固定部83は、長手方向Yにおける起立部81の起立支点となる。
【0045】
起立部81は、腹側端部10a及び背側端部10bにそれぞれ形成された縦固定部83の間に形成されている。すなわち、起立部81は、横固定部82よりも幅方向Xの内側の位置であって、縦固定部83よりも長手方向Yの内側の位置に配置されている。起立部81は、センターシート11aに対して固定されていないサイドシート11bの一部分である。起立部81には長手方向Yに伸長された伸縮部材71が接続されている。伸縮部材71が長手方向Yに収縮することによって本体部10が閉じる方向に変形し、起立部81が横固定部82を起点として立ち上がる。このように起立部81が、吸収体13を幅方向Xから挟み込む位置において起立することで尿漏れが防止される。
【0046】
サイドシート11bの幅方向Xの外側部分には、長手方向Yに延在する一対の伸縮部材72が設けられている。図2に示すように、一対の伸縮部材72は、一対の伸縮部材71よりも幅方向Xの外側に配置されている。一対の伸縮部材72は、例えば長さ方向に収縮可能な糸ゴム又は平ゴムであり、長手方向Yに伸長した状態でサイドシート11bに固定されている。上記のように、一対の伸縮部材72は、長手方向Yに伸長された状態でサイドシート11bに固定されることによって、本体部10が閉じる方向に変形する力を付与する。一対の伸縮部材72は、吸収体13よりも非肌面側Z2に配置され、本体部10のトップシート11とバックシート12との間で本体部10の側端縁に沿って配置されている。一対の伸縮部材72が長手方向Yに収縮することにより、本体部10の側端縁が着用者の脚周りにフィットする。なお、一対の伸縮部材72は、本体部10のトップシート11及びバックシート12に縫い合わされた状態で長手方向Yに延在していてもよい。
【0047】
図4に示すように、トップシート11と吸収体13との間には、クッションシート22が設けられていてもよい。クッションシート22は、例えばトップシート11よりも高い剛性を有する不織布によって構成されている。トップシート11と吸収体13との間に高い剛性を有するクッションシート22が配置されることにより、後述する吸収体13の表面空隙20にトップシート11が入り込みにくくなり、表面空隙20の容積が維持される。なお、クッションシート22は、例えばホットメルト等の接着剤によってトップシート11及び吸収体13の表面14に接合される。
【0048】
クッションシート22の少なくとも一部分は、長手方向Yの端部に近づくにつれて幅方向Xに縮小するテーパ形状を有していてもよい。図2に示す実施形態では、クッションシート22は、本体部10の股下部10cに配置され、クッションシート22の幅方向Xの幅は、背側端部10bに近づくにつれて縮小されている。クッションシート22がこのような形状を有することにより、クッションシート22上に配置されたトップシート11に皺が発生し、トップシート11と吸収体13との間に空隙が形成される。当該空隙に空気が流れることにより、吸収性物品1の通気性が向上する。
【0049】
また、図4に示すように、トップシート11には、当該トップシート11を厚み方向に貫通する複数の通気孔74が形成されていてもよい。複数の通気孔74は、肌面側Z1から見て、トップシート11に二次元的に形成されている。例えば、肌面側Z1から見て、複数の通気孔74のうち少なくとも1以上の通気孔74は、後述する吸収体13の第1エンボス部16及び第2エンボス部18の少なくとも一方に重なるように配置されていてもよい。
【0050】
バックシート12は、本体部10において着用時に外側に位置する面を構成し、非肌面側Z2に配置されている。バックシート12は、非透水性の裏面フィルム12aと、裏面フィルム12aよりも非肌面側Z2に配置された裏面不織布12bとを含んでいる。裏面フィルム12aの幅方向Xの幅は、裏面不織布12bの幅方向Xの幅よりも小さく形成され、裏面不織布12bが裏面フィルム12aよりも幅方向Xの両側に延出していてもよい。
【0051】
吸収体13は、本体部10のトップシート11とバックシート12との間に配置され、トップシート11を透過した着用者の尿を吸収する。図5は肌面側Z1から見た吸収体13の平面図であり、図6は非肌面側Z2から見た吸収体13の平面図である。図7は、図5のVII-VII線に沿った吸収体13の断面図である。図5に示すように、吸収体13は、肌面側Z1から見て長手方向Yに長い略長方形状を有しており、吸収体13の幅方向Xにおける幅は、本体部10の幅方向Xにおける幅よりも短く形成されている。吸収体13は、本体部10の幅方向Xの略中央に配置されている。吸収体13の腹側の端部は、本体部10の腹側端部10aに配置され、吸収体13の背側の端部は、本体部10の背側端部10bに配置されている(図2参照)。
【0052】
吸収体13は、着用者の肌面側Z1に配置される表面14と、着用者の非肌面側Z2に配置される裏面15とを有する。吸収体の13には、肌面側Z1及び非肌面側Z2からエンボス加工が施されており、これにより吸収体13の表面14及び裏面15は、凹凸形状を有している。吸収体13の表面14及び裏面15に形成される凹凸形状については後述する。
【0053】
図7に示すように、吸収体13は、コア部13a及びコアラップ13bを含む。コア部13aは、例えば植物由来のパルプ繊維及び高吸水性ポリマー(SAP)を含み、吸水性を有する。コアラップ13bは、例えばティッシュ又は不織布シートによって構成され、コア部13aの肌面側Z1及び非肌面側Z2の面を覆っている。コアラップ13bは、例えばホットメルト接着剤によってコア部13aの表面に接着されている。コアラップ13bのコア部13aに接着されている領域の面積は、コアラップ13bのコア部13aに接着されていない領域の面積よりも大きくてもよい。したがって、コアラップ13bは、凹凸形状を有するコア部13aの表面形状に追従するようにコア部13aに接合される。一実施形態では、コアラップ13bの肌面側Z1及び非肌面側Z2の面が、吸収体13の表面14及び裏面15をそれぞれ構成する。
【0054】
図5に示すように、吸収体13には、一対のチャネル部61が形成されていてもよい。一対のチャネル部61は、本体部10の中心線CLを隔てて互いに離間して配置され、長手方向Yに延在している。チャネル部61の坪量は、吸収体13の他の部分の坪量よりも低く設定されている。したがって、一対のチャネル部61に存在するパルプ繊維及び高吸水性ポリマーの密度は、吸収体13の他の部分に存在するパルプ繊維及び高吸水性ポリマーの密度よりも低くなっている。吸収体13に一対のチャネル部61が形成されることにより、着用者から排出された尿が長手方向Yに流れやすくなる。すなわち、一対のチャネル部61は、尿の流れ方向を制御する機能を有する。なお、高吸水性ポリマーの密度とは、吸収体13の単位面積当たりの高吸水性ポリマーの個数の平均値を表している。一実施形態では、チャネル部61は、坪量がゼロであるスリットであってもよい。
【0055】
また、吸収体13は、高吸水性ポリマーを実質的に含まない非吸収領域62を更に有していてもよい。非吸収領域62は、例えば一対のチャネル部61よりも長手方向Yの一端側及び他端側の少なくとも一方に形成されている。非吸収領域62の坪量は、一対のチャネル部61を除く吸収体13の他の部分の坪量よりも低く設定されている。したがって、非吸収領域62の厚みは、吸収体13の他の部分の厚みよりも小さくなっている。
【0056】
吸収体13は、複数の第1エンボス部16及び第2エンボス部(非肌面側エンボス部)18を含んでいる。複数の第1エンボス部16は、エンボス加工によって非肌面側Z2から肌面側Z1に向けて圧搾された部分である。図5に示すように、複数の第1エンボス部16は、肌面側Z1から見て二次元的に配置されている。より具体的には、図5に示すように、複数の第1エンボス部16は、吸収体13の幅方向X及び長手方向Yに間隔を空けて配列されている。さらに、複数の第1エンボス部16は、幅方向X及び長手方向Yに交差する斜め方向に間隔を空けて配列されている。なお、複数の第1エンボス部16は、二次元的に配置されていればよく、幅方向X、長手方向Y及び斜め方向に配列されていなくてもよい。
【0057】
図7に示すように、複数の第1エンボス部16の各々は、肌面側Z1に突出する表面凸部16aと、肌面側Z1に窪む裏面凹部16bとを含んでいる。表面凸部16aは、吸収体13の表面14のうち肌面側Z1に突出した部分であり、裏面凹部16bは、吸収体13の裏面15のうち肌面側Z1に窪んだ部分である。すなわち、複数の第1エンボス部16の表面凸部16a及び裏面凹部16bは、吸収体13の表面14及び裏面15の一部をそれぞれ構成する。限定されるものではないが、複数の第1エンボス部16は、例えば複数の第1エンボス部16の反転形状を有する複数の凸部が形成されたローラを用いて吸収体13を非肌面側Z2から圧搾することによって形成される。第1エンボス部16の表面凸部16a及び裏面凹部16bの少なくとも一方は、平坦面を含んでいてもよい。以下の説明では、厚み方向Zにおいて表面凸部16aと重なる吸収体13の領域を第1エンボス部16という。
【0058】
第2エンボス部18は、着用者の非肌面側Z2に窪む表面凹部18aと非肌面側Z2に突出する裏面凸部18bとを含んでいる。表面凹部18aは、吸収体13の表面14のうち非肌面側Z2に窪んだ部分であり、裏面凸部18bは、吸収体13の裏面15のうち非肌面側Z2に突出した部分である。すなわち、第2エンボス部18の表面凹部18a及び裏面凸部18bは、吸収体13の表面14及び裏面15の一部をそれぞれ構成する。限定されるものではないが、第2エンボス部18は、例えば第2エンボス部18の反転形状を有する凸部が形成されたローラを用いて吸収体13を肌面側Z1から圧搾することによって吸収体13の肌面側Z1に形成された溝である。第2エンボス部18の表面凹部18a及び裏面凸部18bの少なくとも一方は、平坦面を含んでいてもよい。以下の説明では、厚み方向Zにおいて裏面凸部18bと重なる吸収体13の領域を第2エンボス部18という。
【0059】
図7に示すように、第1エンボス部16の表面凸部16aは、第2エンボス部18の表面凹部18aよりも肌面側Z1に配置されている。第1エンボス部16の裏面凹部16bは、第2エンボス部18の裏面凸部18bよりも肌面側Z1に配置されている。第1エンボス部16の裏面凹部16bは、第2エンボス部18の表面凹部18aよりも非肌面側Z2に配置されている。肌面側Z1から見て、第1エンボス部16の裏面凹部16bと第2エンボス部18の表面凹部18aとは互いにずれた位置に形成されている。
【0060】
上記のように、表面凸部16a及び表面凹部18aは、厚み方向Zにおいて異なる位置に配置されているので、吸収体13の表面14には凹凸形状が形成される。同様に、裏面凹部16b及び裏面凸部18bは、厚み方向Zにおいて異なる位置に配置されているので、吸収体13の裏面15には凹凸形状が形成される。したがって、吸収体13の表面14には表面凹部18aによって画成され、肌面側Z1に開口する表面空隙20が形成される。同様に、吸収体13の裏面15には裏面凹部16bによって画成され、非肌面側Z2に開口する裏面空隙21が形成される。これら表面空隙20及び裏面空隙21は、着用者から排出された尿又は空気が流れる流路として機能する。例えば、吸収体13に多量の尿が供給された場合に、裏面空隙21には吸収体13において吸収しきれなかった尿が溜められる。
【0061】
肌面側Z1から見た複数の第1エンボス部16の面積の合計は、肌面側Z1から見た第2エンボス部18の面積よりも大きくてもよい。なお、複数の第1エンボス部16の面積の合計とは、肌面側Z1から見た複数の第1エンボス部16の表面凸部16aの投影面積の合計に相当し、第2エンボス部18の面積とは、肌面側Z1から見た第2エンボス部18の表面凹部18aの投影面積に相当する。
【0062】
図7に示すように、一実施形態では、吸収体13は、第1吸収層26、第2吸収層27及び中間層28を含む多層構造を有している。第1吸収層26は、高吸水性ポリマーを含む吸水層であり、肌面側Z1に配置されている。第2吸収層27は、高吸水性ポリマーを含む吸水層であり、非肌面側Z2に配置されている。中間層28は、第1吸収層26と第2吸収層27との間に配置されている。第1エンボス部16及び第2エンボス部18を形成するときに、中間層28は、第1吸収層26及び第2吸収層27と共に圧搾されて凹凸形状に変形される。
【0063】
第1吸収層26及び第2吸収層27に加え、中間層28にも高吸水性ポリマーが含まれていてもよい。元々中間層28には高吸水性ポリマーが含まれていないが、第1エンボス部16及び第2エンボス部18の形成時に吸収体13が圧搾されることにより、第1吸収層26と第2吸収層27に含まれる高吸水性ポリマーの一部が中間層28に移行して、中間層28内に高吸水性ポリマーが配置される。このように、第1吸収層26、第2吸収層27及び中間層28に高吸収性ポリマーが含まれることにより、吸収体13の厚み方向Zに高吸収性ポリマーが分散して配置され、吸収体13の通気性が向上する。なお、中間層28に存在する高吸水性ポリマーの密度は、第1吸収層26及び第2吸収層27に存在する高吸水性ポリマーの密度よりも低くてもよい。
【0064】
第2エンボス部18は、複数の第1エンボス部16の間に形成されている。例えば、図5に示すように、第2エンボス部18は、複数の第1エンボス部16の各々を囲むように形成されている。より具体的には、第2エンボス部18は、図8に示すように、肌面側Z1から見て格子状のパターン24に沿って形成されていてもよい。格子状のパターン24は、幅方向X及び長手方向Yに交差する方向に互いに平行に延在する複数の第1仮想線24aと、幅方向X及び長手方向Yに交差する方向に互いに平行に延在する複数の第2仮想線24bと含んでいる。複数の第1仮想線24a及び複数の第2仮想線24bは、吸収性物品1の中心線CLに対して対称な方向に延在し、互いに交差して格子状のパターン24を形成する。図8に示すように、第2エンボス部18は、複数の第1仮想線24a及び複数の第2仮想線24bに沿って断続的に形成されていてもよい。なお、第2エンボス部18は、複数の第1仮想線24a及び複数の第2仮想線24bに沿って波線状に配置されていてもよいし、ドット状に配置されていてもよい。
【0065】
図8に示すように、格子状のパターン24の格子点(複数の第1仮想線24aと複数の第2仮想線24bとの交点)に対応する位置には、非圧搾部25が形成されている。非圧搾部25は、エンボス加工等の圧搾加工が実質的に施されていない部分である。したがって、厚み方向Zにおいて、非圧搾部25の肌面側Z1の表面14は、第1エンボス部16の表面凸部16aと第2エンボス部18の表面凹部18aとの間に配置され、非圧搾部25の非肌面側Z2の裏面15は、第1エンボス部16の裏面凹部16bと第2エンボス部18の裏面凸部18bとの間に配置される。
【0066】
上記のように、第2エンボス部18が格子状のパターン24に沿って配置されることにより、吸収体13には複数の吸収領域30が形成される。複数の吸収領域30は、格子状のパターン24によって画成された領域であり、肌面側Z1から見て、吸収体13の略全域に二次元的に配置されている。すなわち、吸収領域30は、第2エンボス部18に囲まれた領域である。複数の吸収領域30は、長手方向Yに交差する方向、例えば幅方向X、又は、幅方向X及び長手方向Yに交差する斜め方向に間隔を空けて配列されている。図8に示す例では、複数の吸収領域30は、吸収体13の幅方向X、長手方向Y、及び、斜め方向に配列されるように二次元的に配置されている。複数の吸収領域30のうち少なくとも1つの吸収領域30の幅方向Xにおける最大幅は、吸収領域30の長手方向Yにおける最大幅よりも大きくてもよい。例えば、図8に示す例では、複数の吸収領域30の各々は、長辺が幅方向Xに延在し、短辺が長手方向Yに延在する菱形形状を有している。なお、吸収領域30は、長辺が長手方向Yに延在し、短辺が幅方向Xに延在する縦長の菱形形状を有していてもよいし、円形状、楕円形状、多角形状等、菱形状以外の形状を有していてもよい。
【0067】
一実施形態では、複数の吸収領域30の内側には、複数の第1エンボス部16が形成されている。したがって、複数の吸収領域30は、肌面側Z1に突出している。言い換えれば、複数の吸収領域30の少なくとも一部は、複数の第1エンボス部16によって構成されている。複数の吸収領域30は、第1エンボス部16に含まれるパルプ繊維及び高吸水性ポリマーによって着用者から排出された尿を吸収する。図8に示すように、複数の吸収領域30の各々は、中心領域36と、中心領域36を囲むように配置された周辺領域37とを含んでいる。中心領域36は、各吸収領域30の中心部付近に配置された略円形の領域である。周辺領域37は、吸収領域30の周縁部に配置された略環状の領域である。例えば、第1エンボス部16の中心部は中心領域36に配置され、第1エンボス部16の周縁部は周辺領域37に配置される。
【0068】
中心領域36に存在する高吸水性ポリマーの密度は、周辺領域37に存在する高吸水性ポリマーの密度よりも低くなっている。例えば、周辺領域37に存在する高吸水性ポリマーの密度は、中心領域36に存在する高吸水性ポリマーの密度よりも10%以上高く設定されている。特に、一対のチャネル部61内の周辺領域37に存在する高吸水性ポリマーの密度は、一対のチャネル部61内の中心領域36に存在する高吸水性ポリマーの密度よりも50%以上高く設定されていてもよい。相対的に高吸水性パリマーの密度の低い中心領域36は、相対的に高吸水性パリマーの密度が高い周辺領域37よりも吸水速度が高めらえている。一方、周辺領域37の最大吸水量は、中心領域36の最大吸水量よりも高くなっている。
【0069】
上述した吸収体13では、着用者から排出された尿は、複数の吸収領域30に供給され、吸水速度の速い中心領域36において早期に吸収される。中心領域36に吸収された尿は、吸収体13の厚み方向Zに拡散される。中心領域36において吸収しきれなかった尿は、周辺領域37によって吸収される。このとき、周辺領域37は、高吸水性ポリマーを高い密度で含むので、多量の尿を吸収することができる。ここで、高吸水性ポリマーは吸水量が高まるにつれて透水性が低下する性質を有する。したがって、周辺領域37に吸収される尿の量が増加するにつれて、周辺領域37の透水性が低下し、やがて中心領域36の周囲には透水性の低い障壁が形成される。当該障壁は、吸収体13の他の部分と比べて透水性が低下した領域であり、肌面側Z1から見て環状を呈する。
【0070】
中心領域36の周囲に透水性の低い障壁が形成されると、図8の矢印D1に示す長手方向Yへの尿の流れは、周辺領域37によって遮られて、矢印D2で示すように幅方向Xに広げられる。幅方向Xに広げられた尿は、周囲に存在する相対的に吸水量の低い他の吸収領域30によって吸収される。上記のように、複数の吸収領域30の各々が中心領域36及び周辺領域37を含むことにより、吸収体13の全体に尿を拡散させることができる。したがって、吸収体13の全体で尿を吸収することが可能になり、例えば吸収体13の長手方向Yの端部から尿漏れが発生することを抑制することができる。
【0071】
なお、上記のように、中心領域36に存在する高吸水性ポリマーの密度は、周辺領域37に存在する高吸水性ポリマーの密度よりも低くなっているが、中心領域36の中間層28に存在する高吸水性ポリマーの密度は、周辺領域37の中間層28に存在する高吸水性ポリマーの密度よりも高くなっていてもよい。
【0072】
次に、図7を参照して、第1エンボス部16及び第2エンボス部18の寸法について詳細に説明する。図7中のBW1は表面空隙20の深さを表しており、図7中のBW2は裏面空隙21の深さを表している。すなわち、表面空隙20の深さBW1は、第1エンボス部16の表面凸部16aと第2エンボス部18の表面凹部18aとの厚み方向Zの距離に相当し、裏面空隙21の深さBW2は、第1エンボス部16の裏面凹部16bと第2エンボス部18の裏面凸部18bとの厚み方向Zの距離に相当する。
【0073】
また、図7中のT1は第1エンボス部16の厚みを表しており、図7中のT2は第2エンボス部18の厚みを表している。第1エンボス部16の厚みT1は、第1エンボス部16の表面凸部16aと裏面凹部16bとの厚み方向Zの距離に相当し、第2エンボス部18の厚みT2は、第2エンボス部18の表面凹部18aと裏面凸部18bとの厚み方向Zの距離に相当する。図7中のT3は、吸収体13の厚みを表している。吸収体13の厚みT3は、第1エンボス部16の表面凸部16aと第2エンボス部18の裏面凸部18bの厚み方向Zの距離に相当する。
【0074】
吸収体13の厚みT3は、第1エンボス部16の厚みT1と第2エンボス部18の厚みT2との和よりも小さい。また、第1エンボス部16の厚みT1と裏面空隙21の深さBW2との和は、第2エンボス部18の厚みT2と表面空隙20の深さBW1との和と同程度に設定されている。例えば、第1エンボス部16の厚みT1と裏面空隙21の深さBW2との和と、第2エンボス部18の厚みT2と表面空隙20の深さBW1との和との差|(T1+BW2)-(T2+BW1)|は、吸収体13の厚みT3に対して50%以下、40%以下、30%以下、20%以下、又は、10%以下であってもよい。
【0075】
第1エンボス部16の厚みT1は、第2エンボス部18の厚みT2よりも大きくてもよいし、小さくてもよい。ただし、吸収体13では、第1エンボス部16の厚みT1と第2エンボス部18の厚みT2との差は小さく設定されている。例えば、第1エンボス部16の厚みT1と第2エンボス部18の厚みT2の差は、第1エンボス部の厚みT1に対して50%以下、40%以下、30%以下、20%以下、又は、10%以下であってもよい。このように、第1エンボス部16の厚みT1と第2エンボス部18の厚みT2との差を小さくすることにより、吸収体13では、BW1>|T1-T2|が成立する。すなわち、表面空隙20の深さBW1は、第1エンボス部16の厚みT1と第2エンボス部18の厚みT2との差よりも大きく設定されている。
【0076】
吸収体13に厚みの差が存在すると、厚みの小さい部分に荷重が集中して吸収体13が折れ曲がることがある。これに対し、吸収体13では、第1エンボス部16の厚みT1と第2エンボス部18の厚みT2との差が小さいので、吸収体13の形状を維持しやすくなる。また、吸収体13の密度の不均一性が抑制されるので、尿を吸収体13の全体に高い均一性で吸収することが可能となる。さらに、吸収体13では、表面空隙20の深さBW1を大きくすることにより、着用者の肌面と吸収体13の表面14との間に形成される空隙を大きくすることができる。これにより、吸収体13の表面14に明瞭な表面空隙20の陰影が形成されると共に、吸収体13の通気性が向上する。
【0077】
表面空隙20の深さBW1と裏面空隙21の深さBW2とは同程度の深さであってもよい。例えば、表面空隙20の深さBW1と、裏面空隙21の深さBW2との差|BW1-BW2|は、表面空隙20の深さBW1に対して50%以下、40%以下、30%以下、20%以下、又は、10%以下であってもよい。一実施形態では、表面空隙20の深さBW1は裏面空隙21の深さBW2よりも大きくてもよい。表面空隙20の深さBW1が、裏面空隙21の深さBW2よりも大きい場合には、吸収体13の通気性が向上する。なお、表面空隙20の深さBW1は、裏面空隙21の深さBW2よりも小さくてもよい。
【0078】
第1エンボス部16の厚みT1及び第2エンボス部18の厚みT2は、吸収体13の幅方向Xの位置に応じて異なっていてもよい。例えば、図5及び図6に示すように、吸収体13は、幅方向Xの略中央に配置される中央部45と、中央部45の幅方向Xの両側に配置される両側部46とを含み、第1エンボス部16及び第2エンボス部18は、中央部45及び両側部46に形成される。このとき、中央部45の第1エンボス部16の厚みT1及び第2エンボス部18の厚みT2は、両側部46の第1エンボス部16の厚みT1及び第2エンボス部18の厚みT2と異なっていてもよい。例えば、中央部45の第1エンボス部16の厚みT1は、両側部46に形成された第1エンボス部16の厚みT1より大きくてもよい。また、中央部45の第2エンボス部18の厚みT2は、両側部46の第2エンボス部18の厚みT2よりも大きくてもよい。なお、中央部45の第1エンボス部16の厚みT1は、両側部46に形成された第1エンボス部16の厚みT1より小さくてもよいし、中央部45の第2エンボス部18の厚みT2は、両側部46の第2エンボス部18の厚みT2よりも小さくてもよい。また、中央部45の第1エンボス部16の厚みT1は、中央部45の第2エンボス部18の厚みT2よりも大きくてもよい。
【0079】
これに伴って、第1エンボス部16の厚みT1と第2エンボス部18の厚みT2との差|T1-T2|は、吸収体13の幅方向Xの位置に応じて異なっていてもよい。例えば、中央部45の第1エンボス部16の厚みT1と中央部45の第2エンボス部18の厚みT2との差は、両側部46の第1エンボス部16の厚みT1と両側部46の第2エンボス部18の厚みT2との差よりも大きくてもよい。中央部45の第1エンボス部16の厚みT1と中央部45の第2エンボス部18の厚みT2との差を大きくすることにより、中央部45の厚みの大きい部分で尿を高い吸収速度で吸収することができる。一方、両側部46の第1エンボス部16の厚みT1と両側部46の第2エンボス部18の厚みT2との差を小さくすることにより、着用者の尿を高い均一性で吸収することができる。したがって、着用者の排尿口に近い中央部45では高い吸収速度で尿を吸収することができ、着用者の脚周りに配置される両側部46では尿の拡散を促進することができる。
【0080】
図7中のW1は、第1エンボス部16の裏面凹部16bの幅を表しており、図7中のW2は第2エンボス部18の表面凹部18aの幅を表している。また、図7中のW3は複数の第1エンボス部16のうち隣接する第1エンボス部16の裏面凹部16b間の距離を表しており、図7中のW4は隣接する第2エンボス部18の表面凹部18a間の距離を表している。なお、裏面凹部16bの幅W1、表面凹部18aの幅W2、隣接する裏面凹部16b間の距離W3、及び、隣接する表面凹部18a間の距離W4は、第1仮想線24a又は第2仮想線24bに平行な方向(所定の方向)に沿った断面(図5のVII-VII線に沿った断面)から見たときの幅又は距離を表している。図7に示すように、吸収体13では、隣接する裏面凹部16b間の距離W3は、表面凹部18aの幅W2よりも大きく設定されている。また、隣接する表面凹部18a間の距離W4は、裏面凹部16bの幅W1よりも大きく設定されている。
【0081】
以上説明したように、上述した吸収性物品1では、複数の吸収領域30の各々は、中心領域36と、当該中心領域36を囲むように配置された周辺領域37とを含み、周辺領域37に存在する高吸水性ポリマーの密度は、中心領域36に存在する高吸水性ポリマーの密度よりも高くなっている。これにより、周辺領域37に尿が吸収されたときに中心領域36の周囲に透水性の低い障壁が形成される。このような透水性の低い障壁によって長手方向への尿の流れが遮られ、尿が幅方向Xに拡散される。したがって、吸収体13に尿が効率的に吸収される。例えば、周辺領域37に存在する高吸水性ポリマーの密度を中心領域36に存在する高吸水性ポリマーの密度よりも10%高くした場合には、中心領域36及び周辺領域37の高吸収性ポリマーの密度を同じにした場合と比較して尿の吸収速度が約14%増加する。なお、尿の吸収速度は、例えば水平面に対して45°傾けた吸収体13の表面14に対して試験液を滴下して液流れ性を評価することで測定される。
【0082】
また、吸収性物品1では、第1エンボス部16の表面凸部16aが肌面側Z1に突出し、第2エンボス部18の表面凹部18aが非肌面側Z2に窪んでいるので、第2エンボス部18の表面凹部18aを基準とした第1エンボス部16の表面凸部16aの高さを大きくすることができる。したがって、吸収体13の厚みT3を増加させることなく、着用者の肌面と第2エンボス部18の表面凹部18aとの間に形成される表面空隙20の深さBW1を大きくすることができる。したがって、吸収体13の薄型化及び通気性の向上を両立することができる。
【0083】
また、吸収性物品1では、第1エンボス部の厚みT1と第2エンボス部の厚みをT2との差を小さくしつつ、表面空隙20の深さBW1を大きくしているので、密度の不均一性を抑制しつつ吸収体の表面に明瞭な表面凹部18aの陰影を形成することができる。特に、吸収性物品1は、長手方向Yに延在する一対の伸縮部材71と、吸収体13を横断するように幅方向Xに延在する複数の伸縮部材33と、吸収体13を横断するように幅方向Xに延在する複数の伸縮部材43とを備えている。これら一対の伸縮部材71、伸縮部材33及び伸縮部材43が収縮して、吸収体13が幅方向X及び長手方向Yに収縮することにより表面凹部18aの陰影を更に明瞭にすることができる。
【0084】
また、吸収性物品1では、局所的に吸収体13の厚みが小さくなっている部分がないので、吸収体13に破れが生じにくくなる。したがって、吸収体13に含まれる高吸収性ポリマーが漏れ出して着用者に付着することが防止される。さらに、上述した吸収体13では、肌面側Z1から着用者の体圧が付加されることにより、吸収体13の凹凸形状が均され、体圧が緩和されたときに復元力が生じて吸収体13の凹凸形状が復元される。このときに、吸収体13の内外で空気の循環が発生して吸収性物品1内の湿気が外部に放出される。これにより、吸収体13の通気性が更に高められる。
【0085】
また、吸収性物品1では、肌面側Z1から見て、複数の通気孔74のうち少なくとも1以上の通気孔74が、吸収体13の第1エンボス部16及び第2エンボス部18に重なるように配置されていているので、表面凹部18a内の湿気、及び、第1エンボス部16に吸収された湿気を複数の通気孔74を介して外部に放出することができる。したがって、吸収性物品1の通気性を更に向上させることができる。
【0086】
以上、種々の実施形態に係る吸収性物品について説明してきたが、本発明は上述した実施形態に限定されることなく発明の要旨を変更しない範囲で種々の変形態様を構成可能である。すなわち、上述した実施形態は例示説明を目的とするものであり、本発明の範囲を制限するものではないことに留意すべきである。
【0087】
例えば、図5の示す例では、複数の第1エンボス部16及び第2エンボス部18が吸収体13の略全域に形成されているが、複数の第1エンボス部16及び第2エンボス部18は吸収体13の一部にのみ形成されていてもよい。例えば、図9に示すように、吸収体13は、長手方向Yの一端側に位置する腹側部51と、長手方向Yの他端側に位置する背側部52と、腹側部51と背側部52との間に位置する中間部53とを含み、複数の第1エンボス部16及び第2エンボス部18は吸収体13の中間部53のみに形成されていてもよい。
【0088】
また、図9に示すように、腹側部51及び背側部52には、複数のエンドエンボス部55が形成されていてもよい。複数のエンドエンボス部55は、エンボス加工が施されることにより肌面側Z1又は非肌面側Z2に向けて圧搾された部分である。複数のエンドエンボス部55は、長手方向Yに間隔を空けて形成されており、腹側部51及び背側部52の幅方向Xの両端部の間で波線状に延在している。複数のエンドエンボス部55は、腹側部51及び背側部52に達した尿の長手方向Yへの流れを遮ることにより、吸収体13の長手方向Yの端部からの尿漏れを抑制する。ここで、腹側部51及び背側部52に形成された複数のエンドエンボス部55の密度は、中間部53に形成された第2エンボス部18の密度よりも大きくてもよい。なお、複数のエンドエンボス部55の密度とは、腹側部51及び背側部52のうちエンドエンボス部55が形成されていない部分の面積に対するエンドエンボス部55が形成された部分の面積の比率をいい、第2エンボス部18の密度とは、中間部53のうち第2エンボス部18が形成されていない部分の面積に対する第2エンボス部18が形成された部分の面積の比率を表している。なお、複数のエンドエンボス部55は、腹側部51及び背側部52の一方にのみに形成されていてもよい。また、吸収体13には、少なくとも1つのエンドエンボス部55が形成されていてもよい。
【0089】
また、図9に示すように、吸収体13は、高吸水性ポリマーを実質的に含まない非吸収領域62を更に含んでいてもよい。非吸収領域62は、腹側部51及び背側部52に形成されている。より詳細には、腹側部51と中間部53との境界よりも吸収体13の長手方向Yの一端側、及び、背側部52と中間部53との境界よりも吸収体13の長手方向の他端側の少なくとも一方に配置されている。非吸収領域62の坪量は、吸収体13の他の部分の坪量よりも低く設定されている。したがって、腹側部51及び背側部52の厚みの平均値は、中間部53の厚み平均値よりも小さくなっている。
【0090】
さらに、図7に示す実施形態では、第1エンボス部16の裏面凹部16bは、第2エンボス部18の表面凹部18aよりも非肌面側Z2に配置されているが、図10に示すように、第1エンボス部16の裏面凹部16bは、第2エンボス部18の表面凹部18aよりも肌面側Z1に配置されてもよい。裏面凹部16bが表面凹部18aよりも肌面側Z1に配置されることにより、表面空隙20の深さBW1を深くすることができ、その結果、吸収性物品1の通気性を向上させることができる。
【0091】
また、図8に示す実施形態では、第2エンボス部18は格子状のパターン24に沿って断続的に形成されているが、第2エンボス部18は連続的に形成されていてもよい。例えば、図11(a)に示すように、吸収体13に非圧搾部25が形成されず、第2エンボス部18が格子状のパターンに沿って連続的に形成されていてもよい。別の実施形態では、図11(b)に示すように、第2エンボス部18は、波線状又は曲線状に延在していてもよい。この場合には、複数の吸収領域30は、波線状又は曲線状の仮想線を含むパターンによって画成される。この場合であっても、周辺領域37に存在する高吸水性ポリマーの密度を中心領域36に存在する高吸水性ポリマーの密度よりも高くすることにより、尿を吸収体13に効率的に吸収させることができる。なお、複数の吸収領域30は、肌面側Z1から見て二次元状に配置されていればよく、複数の吸収領域30を画成するパターン24の形状は、格子状に限定されるものでない。また、吸収体13は、必ずしも複数の第1エンボス部16を備える必要はなく、少なくとも1つの第1エンボス部16を備えていればよい。
【0092】
また、上述の実施形態では、複数の第1エンボス部16が非肌面側Z2から肌面側Z1に向けて圧搾され、第2エンボス部18が肌面側Z1から非肌面側Z2に向けて圧搾されされているが、一実施形態では、複数の第1エンボス部16が肌面側Z1から非肌面側Z2に向けて圧搾され、第2エンボス部18が非肌面側Z2から肌面側Z1に向けて圧搾されていてもよい。この実施形態では、複数の第1エンボス部16が、非肌面側Z2に窪む表面凹部と非肌面側Z2に突出する裏面凸部を有し、第2エンボス部(肌面側エンボス部)18が、肌面側Z1に突出する表面凸部と肌面側Z1に窪む裏面凹部とを有することとなる。したがって、複数の吸収領域30は、非肌面側Z2に突出し、第2エンボス部18は、複数の吸収領域30の各々を囲むように形成される。この実施形態では、複数の吸収領域30の各々が、第2エンボス部18によって堰のように囲われるので、複数の吸収領域30において体液を確実に吸収することができる。なお、この実施形態においても、第2エンボス部18は、肌面側Z1から見て、格子状のパターン24に沿って断続的に形成されていてもよい。
【0093】
なお、上述した種々の実施形態は、矛盾のない範囲で任意に組み合わせることが可能である。
【符号の説明】
【0094】
1…吸収性物品、13…吸収体、16…第1エンボス部、16a…表面凸部、16b…裏面凹部、18…第2エンボス部(非肌面側エンボス部、肌面側エンボス部)、18a…表面凹部、18b…裏面凸部、22…クッションシート、24…パターン、25…非圧搾部、26…第1吸収層、27…第2吸収層、28…中間層、30…吸収領域、36…中心領域、37…周辺領域、51…腹側部、52…背側部、53…中間部、55…エンドエンボス部、61…チャネル部、62…非吸収領域、Z1…肌面側、Z2…非肌面側。

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11