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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023089868
(43)【公開日】2023-06-28
(54)【発明の名称】腐食性評価装置、及び腐食性評価方法
(51)【国際特許分類】
   E02D 31/06 20060101AFI20230621BHJP
   G08C 15/00 20060101ALI20230621BHJP
【FI】
E02D31/06 Z
G08C15/00 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021204634
(22)【出願日】2021-12-16
(71)【出願人】
【識別番号】000004226
【氏名又は名称】日本電信電話株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】800000068
【氏名又は名称】学校法人東京電機大学
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】100153017
【弁理士】
【氏名又は名称】大倉 昭人
(74)【代理人】
【識別番号】100161148
【弁理士】
【氏名又は名称】福尾 誠
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 陽
(72)【発明者】
【氏名】奥津 大
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 博之
【テーマコード(参考)】
2F073
【Fターム(参考)】
2F073AA01
2F073AA12
2F073AB01
2F073BB01
2F073BC02
2F073CC01
2F073CD11
2F073DD06
2F073FG01
2F073FG02
2F073FG14
2F073GG01
2F073GG04
2F073GG08
(57)【要約】
【課題】地下構造物の腐食性の評価の手法を改善する。
【解決手段】
地下構造物の腐食性を評価する腐食性評価装置20は、地下構造物の地上の領域において腐食性に影響を与えるパラメータを示す地上腐食性情報、地上の領域の降水量を示す降水量情報、地上の領域の土地利用状況を示す土地利用情報、地下構造物から所定の範囲内の土壌の腐食性を示す地下腐食性情報、並びに地下構造物の点検状況を示す点検情報を取得する情報取得部211と、地上腐食性情報、降水量情報、土地利用情報、及び点検情報に基づいて地上からの流入物による地下構造物の腐食性を評価した結果である地上腐食性評価と、地下腐食性情報及び点検情報に基づいて地下からの流入物による地下構造物の腐食性を評価した結果である地下腐食性評価と、に基づいて地下構造物の腐食性を評価する評価部212と、を備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
地下構造物の腐食性を評価する腐食性評価装置であって、
前記地下構造物の地上の領域において前記腐食性に影響を与えるパラメータを示す地上腐食性情報、前記地上の領域の降水量を示す降水量情報、前記地上の領域の土地利用状況を示す土地利用情報、前記地下構造物から所定の範囲内の土壌の腐食性を示す地下腐食性情報、並びに前記地下構造物の点検状況を示す点検情報を取得する情報取得部と、
前記地上腐食性情報、前記降水量情報、前記土地利用情報、及び前記点検情報に基づいて地上からの流入物による前記地下構造物の腐食性を評価した結果である地上腐食性評価と、前記地下腐食性情報及び前記点検情報に基づいて地下からの流入物による前記地下構造物の腐食性を評価した結果である地下腐食性評価と、に基づいて前記地下構造物の腐食性を評価する評価部と、
を備える腐食性評価装置。
【請求項2】
前記評価部は、前記地下構造物と異なる他の地下構造物の標高が、前記地下構造物の標高より高い場合には、前記他の地下構造物の腐食性を優先的に評価する、請求項1に記載の腐食性評価装置。
【請求項3】
前記地上の領域に設けられた第1の測定プローブと、前記地下構造物から所定の範囲内の土壌に設けられた第2の測定プローブと通信する通信部をさらに備え、
前記情報取得部は、前記通信部を介して、前記第1の測定プローブによる測定結果を前記地上腐食性情報として取得し、前記第2の測定プローブによる測定結果を前記地下腐食性情報として取得する、請求項1又は2に記載の腐食性評価装置。
【請求項4】
前記第1の測定プローブ又は前記第2の測定プローブは、分極抵抗法を用いた測定プローブである、請求項3に記載の腐食性評価装置。
【請求項5】
前記情報取得部は、前記第1の測定プローブ又は前記第2の測定プローブと無線通信を行う通信部を備える車両から、前記第1の測定プローブによる測定結果又は前記第2の測定プローブによる測定結果を取得する、請求項3又は4に記載の腐食性評価装置。
【請求項6】
地下構造物の腐食性評価装置が実行する腐食性評価方法であって、
前記地下構造物の地上の領域において前記腐食性に影響を与えるパラメータを示す地上腐食性情報、前記地上の領域の降水量を示す降水量情報、前記地上の領域の土地利用状況を示す土地利用情報、前記地下構造物から所定の範囲内の土壌の腐食性を示す地下腐食性情報、並びに前記地下構造物の点検状況を示す点検情報を取得する情報取得ステップと、
前記地上腐食性情報、前記降水量情報、前記土地利用情報、及び前記点検情報に基づいて地上からの流入物による前記地下構造物の腐食性を評価した結果である地上腐食性評価と、前記地下腐食性情報及び前記点検情報に基づいて地下からの流入物による前記地下構造物の腐食性を評価した結果である地下腐食性評価と、に基づいて前記地下構造物の腐食性を評価する評価ステップと、
を含む、腐食性評価方法。
【請求項7】
前記評価ステップは、前記地下構造物と異なる他の地下構造物の標高が、前記地下構造物の標高より高い場合には、前記他の地下構造物の腐食性を優先的に評価する、請求項6に記載の腐食性評価方法。
【請求項8】
前記情報取得ステップは、前記地上の領域に設けられた第1の測定プローブと、前記地下構造物から所定の範囲内の土壌に設けられた第2の測定プローブと通信し、前記第1の測定プローブによる測定結果を前記地上腐食性情報として取得し、前記第2の測定プローブによる測定結果を前記地下腐食性情報として取得する、請求項6又は7に記載の腐食性評価方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、腐食性評価装置、及び腐食性評価方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、地下構造物の腐食性の予測をする技術として、主に土壌の腐食性に基づいて検討する技術が存在する。例えばANSI(American National Standard Institute)の評価指標では比抵抗及びpH値等から土壌の腐食性が予測されている(非特許文献1)。また、地中の埋設鋼材の腐食速度を土壌粒子径と土壌含水率から予測する技術が検討され、特定の含水率で腐食速度が増大することが分かっている(非特許文献2)。一方、地上構造物について、大気環境によって鋼構造物の腐食性が変化することが複数の検討で把握されている(非特許文献3、非特許文献4)。また、地下管路の内面の腐食及び金物の腐食は内部に溜まっている水質に影響されることが示唆されている(非特許文献5)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【非特許文献1】片野幸雄、外2名、“埋設管の腐食と防食”、URBAN KUBOTA、NO.23、pp.52-56、[online]、[2021年11月12日検索]、インターネット<URL:https://www.kubota.co.jp/siryou/pr/urban/pdf/23/pdf/23_3.pdf>
【非特許文献2】大木翔太、外4名、「埋設鋼材の腐食速度に及ぼす土壌粒子径と土壌含水率の影響」、材料と環境、Vol.67、pp.118-120、2018年、[online]、[2021年11月12日検索]、インターネット<URL:https://www.jstage.jst.go.jp/article/jcorr/67/3/67_118/_pdf/-char/ja>
【非特許文献3】澤田孝、外3名、「電気通信用の構造物や装置に対する腐食防食技術の研究」、NTT技術ジャーナル、2010.11、pp.32-36、[online]、[2021年11月12日検索]、インターネット<URL:https://www.ntt.co.jp/journal/1011/files/jn201011032.pdf>
【非特許文献4】片山英樹、「腐食試験データによる腐食マップの基盤構築」、[online]、[2021年11月12日検索]、インターネット<URL:https://www.nims.go.jp/SIP-infrastructure/pdf/05_katayama.pdf>
【非特許文献5】Akira Ito, Koji Tanaka & Hiroyuki Saito,“Electrochemical measurement to examine influence of ions, DO, and pH on corrosion of early-generation conduits”, Corrosion Engineering, Science and Technology, 53:sup1, 16-20, 2018年,DOI: 10.1080/1478422X.2018.1425602
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、地上及び地下における腐食性に関するデータを用いて地下構造物の腐食性を総合的に評価する技術は存在しておらず、地下構造物の腐食性の評価の手法には改善の余地があった。
【0005】
かかる事情に鑑みてなされた本発明の目的は、地上及び地下における腐食性に関するデータを用いて地下構造物の腐食性を総合的に評価することが可能な技術を提供し、地下構造物の腐食性の評価の手法を改善することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述の課題を解決するため、本発明に係る腐食性評価装置は、地下構造物の腐食性を評価する腐食性評価装置であって、前記地下構造物の地上の領域において前記腐食性に影響を与えるパラメータを示す地上腐食性情報、前記地上の領域の降水量を示す降水量情報、前記地上の領域の土地利用状況を示す土地利用情報、前記地下構造物から所定の範囲内の土壌の腐食性を示す地下腐食性情報、並びに前記地下構造物の点検状況を示す点検情報を取得する情報取得部と、前記地上腐食性情報、前記降水量情報、前記土地利用情報、及び前記点検情報に基づいて地上からの流入物による前記地下構造物の腐食性を評価した結果である地上腐食性評価と、前記地下腐食性情報及び前記点検情報に基づいて地下からの流入物による前記地下構造物の腐食性を評価した結果である地下腐食性評価と、に基づいて前記地下構造物の腐食性を評価する評価部と、を備える。
【0007】
また、本発明に係る腐食性評価方法は、地下構造物の腐食性評価装置が実行する腐食性評価方法であって、前記地下構造物の地上の領域において前記腐食性に影響を与えるパラメータを示す地上腐食性情報、前記地上の領域の降水量を示す降水量情報、前記地上の領域の土地利用状況を示す土地利用情報、前記地下構造物から所定の範囲内の土壌の腐食性を示す地下腐食性情報、並びに前記地下構造物の点検状況を示す点検情報を取得する情報取得ステップと、前記地上腐食性情報、前記降水量情報、前記土地利用情報、及び前記点検情報に基づいて地上からの流入物による前記地下構造物の腐食性を評価した結果である地上腐食性評価と、前記地下腐食性情報及び前記点検情報に基づいて地下からの流入物による前記地下構造物の腐食性を評価した結果である地下腐食性評価と、に基づいて前記地下構造物の腐食性を評価する評価ステップと、を含む。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、地上及び地下における腐食性に関するデータを用いて地下構造物の腐食性を総合的に評価することが可能な技術を提供し、地下構造物の腐食性の評価の手法を改善することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の一実施形態に係るシステムの概略を示す図である。
図2】本開示の一実施形態に係る腐食性評価装置の概略構成を示すブロック図である。
図3】複数の土壌にまたがって位置する地下構造物であって、地上からの流入物の経路と地下からの流入物の経路が複数存在する地下構造物の例を説明するための図である。
図4A】本開示の一実施形態に係る腐食性評価装置の動作を示す図である。
図4B】本開示の一実施形態に係る腐食性評価装置の動作を示す図である。
図5】本発明の一変形例に係るシステムの概略を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本開示の実施形態について適宜図面を参照しながら説明する。なお、以下の説明における「上」、「下」とは、図面に描かれた座標軸表示のZ軸に平行な方向を意味するものとし、「水平」とは、図面に描かれた座標軸表示のXY平面に平行な方向を意味するものとする。各図面中、同一又は相当する部分には、同一符号を付している。本実施形態の説明において、同一又は相当する部分については、説明を適宜省略又は簡略化する。以下に説明する実施形態は本開示の構成の例であり、本開示は、以下の実施形態に制限されるものではない。
【0011】
<システム1の構成>
図1を参照して、本開示の実施形態に係るシステム1の概要について説明する。システム1は、第1の測定プローブ10A及び第2の測定プローブ10Bと、腐食性評価装置20と、を備える。第1の測定プローブ10A及び第2の測定プローブ10Bと腐食性評価装置20とは、例えばインターネット及び移動体通信網等を含むネットワーク30と通信可能に接続される。以下、第1の測定プローブ10Aと第2の測定プローブ10Bとを特に区別しない場合、単に、測定プローブ10のように総称する。
【0012】
第1の測定プローブ10Aは、地下構造物の上部の地表面に設けられる。本実施形態において、「地下構造物」は通信用マンホールMであるがこれに限られず、地下管路、とう道等の任意の地下に埋設された構造物を含む。第2の測定プローブ10Bは、当該マンホールM又は当該マンホールMに接続された地下の管路P等の周辺に設けられる。第1の測定プローブ10A及び第2の測定プローブ10Bは、腐食性の評価に用いる任意のパラメータを検出できる。システム1が備える第1の測定プローブ10A及び第2の測定プローブ10Bのそれぞれの数は、任意に定められてもよい。
【0013】
測定プローブ10は通信部を備え、当該通信部を介して外部装置と通信可能である。測定プローブ10は分極抵抗法を用いて土壌中の金属の腐食速度を測定できる。これに限られず、第1の測定プローブ10A及び第2の測定プローブ10Bは土壌中の含水率、水質、又は設置場所における温度、湿度等を検出できてよい。分極抵抗法を用いた腐食速度の測定、及び測定プローブ10の構成については、以下の参考文献1に記載されており、既知であるため、詳細な説明を省略する。測定プローブ10は、測定した結果を腐食性評価装置20に送信できる。
(参考文献1)宮田義一、外1名、「電気化学的手法を中心とした土壌腐食計測(その2)」Zairyo-to-Kanhyo, Vol. 46, pp.610-619、1997年
【0014】
腐食性評価装置20は、クラウドコンピューティングシステム又はその他のコンピューティングシステムに属するサーバ等のコンピュータである。腐食性評価装置20は、ネットワーク30を介して第1の測定プローブ10A及び第2の測定プローブ10Bと通信可能である。
【0015】
ネットワーク30は、インターネット、少なくとも1つWAN(Wide Area Network)、少なくとも1つのMAN(Metropolitan Area Network)、又はこれらの任意の組合せを含む。ネットワーク30は、少なくとも1つの無線ネットワーク、少なくとも1つの光ネットワーク、又はこれらの任意の組合せを含んでもよい。無線ネットワークは、例えば、アドホックネットワーク、セルラーネットワーク、無線LAN(local area network)、衛星通信ネットワーク、又は地上マイクロ波ネットワークである。
【0016】
まず、本実施形態の概要について説明し、詳細については後述する。腐食性評価装置20は、地下構造物の地上の領域において腐食性に影響を与えるパラメータを示す地上腐食性情報、地上の領域の降水量を示す降水量情報、地上の領域の土地利用状況を示す土地利用情報、地下構造物から所定の範囲内の土壌の腐食性を示す地下腐食性情報、及び地下構造物の点検状況を示す点検情報を取得する。腐食性評価装置20は、地上腐食性情報、降水量情報、土地利用情報、及び点検情報に基づいて地上からの流入物による地下構造物の腐食性を評価した結果である地上腐食性評価と、地下腐食性情報及び点検情報に基づいて地下からの流入物による地下構造物の腐食性を評価した結果である地下腐食性評価と、に基づいて地下構造物の腐食性を評価する。
【0017】
地下構造物の「地上の領域」とは、地下構造物に流入する水が通る地表面と、地下構造物の上空とを含む領域であって、地下構造物から所定の範囲内の領域である。図1中の破線は、地上の領域の範囲の一例を示す。「地上腐食性情報」は、地下構造物の腐食の程度に影響を与える、地上の領域に関する任意のパラメータを含む。具体的には地下構造物の上空の飛塩量、気温、湿度、地表面の通水量、地表面の土壌の腐食速度、含水率、粒度、地下構造物の地上との接続部の部材の材質等を含んでよい。地上との接続部とは、本実施形態におけるマンホールMの首部及び蓋を含んでよい。地上腐食性情報は、以下で説明するように、第1の測定プローブ10Aによって測定された結果を含んでよい。
【0018】
「降水量情報」は、地上の領域への所定の期間の降水量である。降水量は年間降水量、月間降水量等であってよい。「土地利用情報」は、地上の領域の土地利用状況を任意の種類に分類して示す。任意の種類は例えば都市、農村、山林等を含む。
【0019】
「地下腐食性情報」は、地下構造物の腐食の程度に影響を与える、地下構造物から所定の範囲内の土壌に関する任意のパラメータを含む。地下腐食性情報は、当該範囲内の土壌の腐食速度、含水率、粒子径、ANSIによる腐食性評価点数を含んでよい。地下腐食性情報は、以下で説明するように、第2の測定プローブ10Bによって測定された結果を含んでよい。
【0020】
「点検情報」には、任意の項目について予め地下構造物を点検した結果である複数のパラメータが含まれてよい。以下で説明するように、点検情報は、腐食性の評価対象の地下構造物の種類に応じて任意に選択される。マンホールMの点検情報は、地上とマンホールMとの接続箇所における通水量、マンホールMの首部及びマンホールMの蓋部の劣化の有無、マンホールMの内壁部の劣化の有無、マンホールM内の滞留水の量、マンホールM中の滞留水の水質、マンホールM内の湿度又は温度の変化履歴等のパラメータを含んでよい。管路Pの点検情報は管路P本体と管路Pの継手部との内部又は外部の劣化の有無、管路P内の滞留水の量、管路P内の滞留水の水質等のパラメータを含んでよい。
【0021】
地上腐食性情報、地下腐食性情報、降水量情報、土地利用情報、及び点検情報は、外部装置から取得されてよい。腐食性評価装置20は、地上腐食性情報、地下腐食性情報、降水量情報、土地利用情報、及び点検情報について、取得できないパラメータがある場合、平均値等の代わりの値を用いて以下に記載する腐食性の評価を行ってよい。
【0022】
図1を参照すると、地下構造物としてのマンホールMに対する地上からの流入物を黒塗り矢印で、地下からの流入物を白抜き矢印A、B及びCで示す。「流入物」とは、地下構造物の腐食性に影響を与える任意の気体、液体、固体、またはそれらの任意の組合せである。腐食性評価装置20は、地上腐食性情報、降水量情報、土地利用情報、及び点検情報に基づいて、黒塗り矢印で示す流入物による腐食性を評価する。このとき、当該点検情報は地上からの流入物の腐食性の評価に関連するパラメータを含み、例えばマンホールMの首部及びマンホールMの蓋部の劣化の有無を含む。
【0023】
図1の白抜き矢印AはマンホールMの所定の範囲内の土壌からのマンホールM内へ侵入する流入物を示す。白抜き矢印BはマンホールMに接続された管路Pの周囲の土壌から当該管路P内に染み出し、当該管路Pを通ってマンホールMへ侵入する流入物を示す。白抜き矢印Cは、管路Pを介してマンホールMと接続された他のマンホールNから、当該管路Pを経由してマンホールMへ入ってくる流入物を示す。図1を参照すると、他のマンホールNの標高はマンホールMの標高より高い。腐食性評価装置20は、地下腐食性情報、及び点検情報に基づいて、白抜き矢印で示す流入物による腐食性を評価する。このとき、当該点検情報は地下からの流入物の腐食性の評価に関連するパラメータを含み、例えばマンホールMの内壁部の劣化の有無、マンホールMに接続された管路Pの管路P本体と管路Pの継手部との内部又は外部の劣化の有無を含む。
【0024】
このように、本実施形態によれば、地上の腐食性と地下の腐食性とに関するパラメータを用いて、地下構造物の腐食性を評価することが可能となる。これにより、点検するまで不明であった地下構造物内の腐食状況を予測できるようになり、地下構造物の点検及び維持管理の効率化が可能となる。よって、地下構造物の腐食性の評価の手法を改善することができる。
【0025】
<腐食性評価装置20>
【0026】
図2を参照して、本実施形態に係る腐食性評価装置20の構成を説明する。腐食性評価装置20は、制御部21と、記憶部22と、通信部23と、入力部24と、出力部25とを備える。制御部21は情報取得部211と、評価部212とを備える。
【0027】
制御部21は、制御演算回路(コントローラ)により実現される。該制御演算回路は、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、FPGA(Field-Programmable Gate Array)等の専用のハードウェアによって構成されてもよいし、プロセッサによって構成されてもよいし、双方を含んで構成されてもよい。プロセッサは、例えばCPU(Central Processing Unit)若しくはGPU(Graphics Processing Unit)等の汎用プロセッサ、又は特定の処理に特化した専用プロセッサであるがこれらに限られない。制御部21は、腐食性評価装置20の各部を制御しながら、腐食性評価装置20の動作に関わる処理を実行する。制御部21は、外部装置との情報の送受信を、通信部23及びネットワーク30を介して行うことができる。
【0028】
記憶部22は、1つ以上のメモリを含む。メモリは、例えば半導体メモリ、磁気メモリ、又は光メモリ等であるが、これらに限られない。記憶部22に含まれる各メモリは、例えば主記憶装置、補助記憶装置、又はキャッシュメモリとして機能してもよい。記憶部22は、腐食性評価装置20の動作に用いられる任意の情報を記憶する。記憶部22に格納された情報は、例えば通信部23を介してネットワーク30から取得される情報で更新可能であってもよい。記憶部22は、必ずしも腐食性評価装置20が内部に備える必要はなく、腐食性評価装置20の外部に備える構成としてもよい。
【0029】
通信部23は、ネットワーク30に接続する1つ以上の通信用インターフェースを含む。当該通信用インターフェースは、例えば移動通信規格、有線LAN規格、又は無線LAN規格に対応するが、これらに限られず、任意の通信規格に対応してもよい。通信部23は、腐食性評価装置20の動作に用いられる情報を受信し、また腐食性評価装置20の動作によって得られる情報を送信する。本実施形態において、腐食性評価装置20は、通信部23及びネットワーク30を介して測定プローブ10と通信する。
【0030】
入力部24は、少なくとも1つの入力用インターフェースを含む。入力用インターフェースは、例えば、物理キー、静電容量キー、ポインティングデバイス、ディスプレイと一体的に設けられたタッチスクリーン、又はマイクである。入力部24は、腐食性評価装置20の動作に用いられるデータを入力する操作を受け付ける。入力部24は、腐食性評価装置20に備えられる代わりに、外部の入力機器として腐食性評価装置20に接続されてもよい。接続方式としては、例えば、USB(Universal Serial Bus)、HDMI(High-Definition Multimedia Interface)(登録商標)、又はBluetooth(登録商標)等の任意の方式を用いることができる。
【0031】
出力部25は、少なくとも1つの出力用インターフェースを含む。出力用インターフェースは、例えば、ディスプレイ又はスピーカである。ディスプレイは、例えば、LCD(Liquid Crystal Display)又は有機EL(Electro Luminescence)ディスプレイである。出力部25は、腐食性評価装置20の動作によって得られるデータを出力する。出力部25は、腐食性評価装置20に備えられる代わりに、外部の出力機器として腐食性評価装置20に接続されてもよい。接続方式としては、例えば、USB、HDMI(登録商標)、又はBluetooth(登録商標)などの任意の方式を用いることができる。
【0032】
制御部21の情報取得部211は、腐食性評価の対象の地下構造物の位置を示す位置情報を取得する。本実施形態では、地下構造物はマンホールMである。位置情報には、マンホールMの緯度、経度及び標高の三次元座標が含まれる。位置情報の取得には任意の手法が採用されてよい。例えば複数の地下構造物の位置情報を示すデータベースが記憶部22に予め格納されており、情報取得部211が当該データベースを検索し、対象の地下構造物の位置情報を読み出すことで取得してよい。本実施形態において、情報取得部211はマンホールMの位置情報として緯度X1、経度Y1、標高Z1を読み出したとする。
【0033】
制御部21の評価部212は、腐食性の評価対象の地下構造物と異なる他の地下構造物の標高が、評価対象の地下構造物より高いかを判断する。他の地下構造物は、腐食性の評価対象の地下構造物から所定の距離内に存在する地下構造物であってよい。他の地下構造物は複数あってもよい。評価部212は、予め記憶部22に格納された、複数の地下構造物の位置情報を記録した任意のデータベースを参照し、当該判断を行ってよい。評価部212は、他の地下構造物の標高が評価対象の地下構造物より高いと判断した場合、当該他の地下構造物の腐食性の評価を優先的に行う。他の地下構造物の標高が全て、評価対象の地下構造物より低いと判断した場合、すなわち評価対象の地下構造物が最も高い標高に位置すると判断した場合には、評価部212は、評価対象の地下構造物の腐食性を以下の通り評価する。
【0034】
本実施形態では、評価部212は、マンホールMの標高Z1が、マンホールMから所定の距離内に存在する他のマンホールNの標高より高いとする。この場合、評価部212は、当該マンホールMについて以下の腐食性の評価を行う。評価部212は、他の地下構造物の標高がマンホールMの標高Z1より高い場合には、当該他の地下構造物の腐食性の評価を優先的に行う。
【0035】
情報取得部211は、点検情報を取得する。点検情報の取得には任意の手法が採用されてよい。例えば複数の地下構造物についての点検情報を蓄積したデータベースが記憶部22に予め格納されており、情報取得部211が当該データベースを検索して特定の点検情報を取得してよい。当該データベースは、情報取得部211が、点検作業者が使用する端末装置から受信した点検結果を点検情報として蓄積したものであってよい。これに限られず、例えば情報取得部211は、地下構造物の保守管理業者等に設置されたサーバと通信して当該サーバから点検情報を取得してもよい。
【0036】
情報取得部211は、腐食性の評価対象の地下構造物の種類に応じて点検情報を取得できる。情報取得部211は例えば、腐食性の評価対象の地下構造物がマンホールMである場合、当該マンホールMの点検情報と、当該マンホールMに接続された管路Pの点検情報とを取得する。点検情報の全部又は一部は、以下で説明する地上腐食性評価と、地下腐食性評価とに用いられる。腐食性の評価対象の地下構造物が管路Pである場合、情報取得部211は、当該管路Pの点検情報と当該管路Pに接続されるマンホールの点検情報とを取得してもよい。管路Pに接続されるマンホールとは、図1におけるマンホールMまたはマンホールNの少なくとも一方を含んでよい。これにより、マンホールから管路Pへ流入する流入物により当該管路Pの内部環境が変化することに鑑みて、以下の腐食性の評価を行うことが可能となる。
【0037】
情報取得部211は、点検情報を係数に換算する。情報取得部211は、点検情報のパラメータがマンホールMの腐食への影響の程度が大きい程、高い値の係数に換算する。以下の表1は、点検情報に含まれる、地上とマンホールMとの接続箇所における通水量のパラメータについて、係数に換算する例を示す。以下の表1に示すように、情報取得部211は、通水量が「正常」であれば最も低い値の係数ic1に換算し、通水量が「大」であれば大きい値の係数ic3に換算する。当該点数情報、及び以下で説明する地上腐食性情報、地下腐食性情報、降水量情報、及び土地利用情報のパラメータを「小」「中」「大」等任意の区分に分ける閾値は自由に設定されてよい。
【0038】
【表1】
【0039】
上記表1において、本実施形態では通水量の程度が「中」であるとする。情報取得部211は、これをic2の係数に換算する。情報取得部211は、換算した係数を記憶部22に格納する。当該係数ic2は、以下で説明する地上腐食性評価に用いられる。
【0040】
以下の表2は、点検情報に含まれる、マンホールM内に所定期間に滞留する水量のパラメータについて、係数に換算する例を示す。以下の表2に示すように、情報取得部211は、滞留する水量がXX未満であれば最も低い値の係数is1に換算し、滞留する水量が所定値XX以上XY未満の範囲内であれば係数is2に換算し、所定値XY以上であれば係数is3に換算する。「XX未満」とは、滞留する水量が無し、又は極小である状態に相当する。
【0041】
【表2】
【0042】
上記表2において、本実施形態では滞留する水量が所定値XX以上XY未満の範囲内であるとする。情報取得部211は、これをis2の係数に換算する。情報取得部211は、取得した係数を記憶部22に格納する。当該係数is2は、以下で説明する地下腐食性評価に用いられる。
【0043】
マンホールMに関する点検情報の他のパラメータについて、情報取得部211は例えば、マンホールMの首部及びマンホールMの蓋部の劣化の程度、及びマンホールMの内壁部の劣化の程度が大きい程、高い係数に換算する。情報取得部211は例えば、マンホールM中の滞留水の水質、またはマンホールM内の湿度又は温度の変化によるマンホールMの腐食への影響の程度が大きい程、高い係数に換算する。
【0044】
本実施形態において、情報取得部211はマンホールMの点検情報の他、当該マンホールMに接続された管路Pの点検情報も読み出す。情報取得部211は、点検情報のパラメータがマンホールMの腐食への影響の程度が大きい程高い値の係数に換算する。以下の表3は、点検情報に含まれる、当該マンホールMに接続された管路Pの本体部又は管路Pの継手部との劣化の程度のパラメータについて、係数に換算する例を示す。以下の表3に示すように、情報取得部211は、管路Pの本体部又は管路Pの継手部の劣化の程度が「小」であれば低い値の係数it1に換算し、劣化の程度が「大」であれば大きい値の係数it3に換算する。
【0045】
【表3】
【0046】
上記表3において、本実施形態では管路Pの本体部又は管路Pの継手部の劣化の程度が「中」であるとする。情報取得部211は、これをit2の係数に換算する。情報取得部211は、換算した係数を記憶部22に格納する。当該係数it2は、以下で説明する地下腐食性評価に用いられる。
【0047】
情報取得部211は例えば、管路P内の滞留水の量が多い程、又は、管路P内の滞留水の水質による管路P又はマンホールMの腐食への影響が大きい程、高い係数に換算する。
【0048】
情報取得部211は、上述の点検情報、及び以下で説明する地上腐食性情報、地下腐食性情報、降水量情報、及び土地利用情報のパラメータを、係数ではなく点数に換算してもよい。
【0049】
情報取得部211は、地上腐食性情報を取得する。地上腐食性情報の取得には任意の手法が採用されてよい。例えば、地図上の座標位置と対応付けて地上腐食性情報の各種パラメータを蓄積したデータベースが記憶部22に予め格納されているとする。情報取得部211は、当該データベースを参照し、地下構造物の位置情報が示す座標から一定の領域における各種パラメータを地上腐食性情報として取得してよい。これに限られず、情報取得部211は、外部の測定機関に設置されたサーバと通信して当該サーバから、地下構造物の位置に該当する領域の各種パラメータを地上腐食性情報として取得してもよい。
【0050】
情報取得部211はまず、地上腐食性情報に含まれる各パラメータによるマンホールMの腐食への影響の程度が大きい程、高い値の係数に換算する。パラメータは、マンホールMの上空の飛塩量、気温、湿度、地表面の通水量、地表面の土壌の腐食速度、含水率、粒度、マンホールMの地上との接続部の部材の材質等を含んでよい。
【0051】
本実施形態では、情報取得部211は、マンホールMの上空の飛塩量を係数CXに、マンホールMの上空の気温を係数CYに換算するとする。
【0052】
情報取得部211は、通信部23を介して第1の測定プローブ10Aと通信し、第1の測定プローブ10Aにより地表面の土壌の腐食速度を測定した結果を地上腐食性情報として取得する。情報取得部211は、第1の測定プローブ10Aが測定した腐食速度が大きい程、高い値の係数に換算する。本実施形態では、情報取得部211は、第1の測定プローブ10Aが測定した腐食速度を係数CZに換算するとする。
【0053】
次に情報取得部211は、各パラメータの係数を統合した結果に応じて地上腐食性の程度を「小」、「中」、又は「大」と決定し、さらに地下腐食性情報の係数に換算する。地上腐食性の程度を「小」「中」「大」等任意の区分に分ける係数の閾値は自由に設定されてよい。本実施形態では、地上腐食性情報の各パラメータの係数を乗じた結果の値に応じて地上腐食性の程度を決定する。これに限られず、情報取得部211が各パラメータから地上腐食性の程度を決定する手法には任意の手法が採用されてよい。例えば情報取得部211は、任意のパラメータを重み付けして地上腐食性の程度を決定してよい。
【0054】
情報取得部211は決定した地上腐食性の程度をさらに係数に換算する。本実施形態では、各パラメータの係数を乗じた結果の値が大きい程、大きい値の地上腐食性の係数として換算する。以下の表4は、地上腐食性情報を係数に換算する例を示す。表4に示すように、情報取得部211は、地上腐食性が「小」であれば小さい値の係数ca1に換算し、地上腐食性が「大」であれば大きい値の係数ca2に換算する。
【0055】
【表4】
【0056】
本実施形態では、係数CXと、係数CYと、係数CZとを乗じた結果の値に応じて、情報取得部211が地上腐食性の程度を「中」であると決定したとする。情報取得部211は、これを上記表4に従ったca2の係数に換算する。情報取得部211は、換算した係数を記憶部22に格納する。当該係数ca2は、以下で説明する地上腐食性評価に用いられる。
【0057】
情報取得部211は、降水量情報を取得する。降水量情報の取得には任意の手法が採用されてよい。例えば各地の降水量を示す情報を蓄積したデータベースが記憶部22に予め格納されており、情報取得部211が、地下構造物の位置に該当する領域の降水量を読み出して降水量情報として取得してよい。これに限られず、例えば情報取得部211は、外部の気象観測機関に設置されたサーバと通信して当該サーバから、地下構造物の位置に該当する領域の降水量を降水量情報として取得してもよい。
【0058】
情報取得部211は、降水量情報を係数に換算する。情報取得部211は、降水量がマンホールMの腐食へ影響する程度が大きい程高い値の係数に換算する。例えば情報取得部211は、降水量が多い程高い値の係数に換算してよい。
【0059】
以下の表5は、降水量情報が示す年間降水量を係数に換算する例を示す。表5に示すように、情報取得部211は、降水量が所定値MM mm/y未満であれば最も低い値の係数r1に換算し、降水量が所定値MM mm/y以上MN mm/y未満の範囲内であれば係数rに換算し、所定値MN mm/y以上であれば係数rに換算する。
【0060】
【表5】
【0061】
上記表5において、本実施形態では降水量が所定値MM mm/以上MN mm/未満の範囲内であるとする。情報取得部211は、これをrの係数に換算する。情報取得部211は、換算した係数を記憶部22に格納する。当該係数rは、以下で説明する地上腐食性評価に用いられる。
【0062】
情報取得部211は、土地利用情報を取得する。土地利用情報の取得には任意の手法が採用されてよい。例えば各地の土地利用状況を示す情報を蓄積したデータベースが記憶部22に予め格納されており、情報取得部211が、地下構造物の位置に該当する領域の土地利用状況を土地利用情報として取得してよい。これに限られず、例えば情報取得部211は、外部の土地管理機関に設置されたサーバと通信して当該サーバから、地下構造物の位置に該当する領域の土地利用状況を土地利用情報として取得してもよい。
【0063】
情報取得部211は、土地利用情報を係数に換算する。情報取得部211は、土地利用状況がマンホールMの腐食へ影響する程度が大きい程高い値の係数に換算する。以下の表6は、土地利用情報が示す土地利用状況を係数に換算する例を示す。表6に示すように、情報取得部211は、土地利用状況が「都市」であれば小さい値の係数gに換算し、土地利用状況が「山林」であれば大きい値の係数gに換算する。
【0064】
【表6】
【0065】
上記表6において、本実施形態では土地利用状況が「農村」であるとする。情報取得部211は、これをgの係数に換算する。情報取得部211は、換算した係数を記憶部22に格納する。当該係数gは、以下で説明する地上腐食性評価に用いられる。
【0066】
情報取得部211は、地下腐食性情報を取得する。地下上腐食性情報の取得には任意の手法が採用されてよい。例えば、地図上の座標位置と対応付けて地下腐食性情報の各種パラメータを蓄積したデータベースが記憶部22に予め格納されているとする。情報取得部211は、当該データベースを参照し、地下構造物の位置情報が示す座標から一定の領域における各種パラメータを地下腐食性情報として取得してよい。これに限られず、情報取得部211は、外部の測定機関に設置されたサーバと通信して当該サーバから、地下構造物の位置に該当する領域の各種パラメータを地下腐食性情報として取得してもよい。
【0067】
情報取得部211はまず、地下腐食性情報に含まれる、各パラメータによるマンホールMの腐食への影響の程度が大きい程、高い値の係数に換算する。各パラメータは地下構造物から所定の範囲内の土壌に関する。パラメータは例えば、当該土壌の腐食速度、含水率、粒子径、ANSIによる腐食性評価点数等を含んでよい。ANSIによる腐食性評価点数については、非特許文献1に記載されているように既知であるため説明を省略する。パラメータとして、非特許文献2に記載の腐食速度と含水率との関係が用いられてよい。
【0068】
情報取得部211は、通信部23を介して第2の測定プローブ10Bと通信し、第2の測定プローブ10Bにより地下構造物から所定の範囲内に該当する領域の土壌の腐食速度を測定した結果を地下上腐食性情報として取得する。情報取得部211は、第2の測定プローブ10Bが測定した腐食速度が大きい程、高い値の係数に換算する。本実施形態では、情報取得部211は、第2の測定プローブ10Bが測定した腐食速度を係数DXに換算するとする。腐食速度のみに限られず、情報取得部211は、地上腐食性情報の任意のパラメータを係数に変換してよい。
【0069】
情報取得部211は、各パラメータの係数を統合した結果に応じて地下腐食性の程度を「小」、「中」、又は「大」と決定し、さらに地下腐食性情報の係数に換算する。統合は、上述の地上腐食性情報についてと同様の手法で行ってよい。以下の表7は、地下腐食性情報を係数に換算する例を示す。表7に示すように、情報取得部211は、地下腐食性が「小」であれば小さい値の係数s1に換算し、地上腐食性が「大」であれば大きい値の係数sに換算する。
【0070】
【表7】
【0071】
本実施形態では、係数DXから、情報取得部211が地下腐食性の程度を「中」であると決定したとする。情報取得部211は、これを上記表7に従ったs2の係数に換算する。情報取得部211は、換算した係数を記憶部22に格納する。当該係数s2は、以下で説明する地下腐食性評価に用いられる。
【0072】
評価部212は、上述のように情報取得部211が点検情報、地上腐食性情報、降水量情報、及び土地利用情報を換算した係数の値をそれぞれ記憶部22から読み出す。本実施形態では、制御部21は点検情報の係数ic2、地上腐食性情報の係数ca2、降水量情報の係数r、及び土地利用情報の係数gを読み出す。評価部212は、以下の式1により地上腐食性評価としてyo^を算出する。なお、A^における記号^は、Aの上に付された記号を示すものとする。
【数1】
【0073】
地上腐食性評価は、マンホールMの地上からの流入物によるマンホールMの腐食性を評価した結果である。評価部212は、算出した地上腐食性評価yo^を記憶部22に格納する。
【0074】
地上腐食性評価yo^を算出する手法は上記式1に限られない。情報取得部211が点検情報、地上腐食性情報、降水量情報、及び土地利用情報のパラメータを点数に換算した場合は、評価部212は、当該点数の和をとって地上腐食性評価yo^を算出してもよい。
【0075】
評価部212は、上述のように情報取得部211が点検情報、及び地下腐食性情報を換算した係数の値をそれぞれ記憶部22から読み出す。本実施形態では、評価部212は点検情報の係数is2及びit2、及び地下腐食性情報の係数sを読み出す。評価部212は、以下の式2により地下腐食性評価としてyu^を算出する。
【数2】
【0076】
地下腐食性評価は、マンホールMの地下からの流入物によるマンホールMの腐食性を評価した結果である。評価部212は、算出した地下腐食性評価yu^を記憶部22に格納する。
【0077】
地下腐食性評価yu^を算出する手法は上記式2に限られない。情報取得部211が点検情報、及び地下腐食性情報のパラメータを点数に換算した場合は、評価部212は、当該点数の和をとって地下腐食性評価yu^を算出してもよい。
【0078】
評価部212は、記憶部22から算出した地上腐食性評価yo^と地下腐食性評価yu^とを読み出し、以下の式3により地下構造物の腐食性y^を算出する。
【数3】
【0079】
地下構造物の腐食性y^の算出の手法は式3に限られない。例えば評価部212は、地下構造物に隣接する他の地下構造物がある場合には、当該他の地下構造物の腐食性ynext^を算出し、これを上記式3にさらに加えて地下構造物の腐食性y^として算出してもよい。
【0080】
例えば評価部212は、複数の地上腐食性評価と地下腐食性評価とを統合して地下構造物の腐食性y^を算出してもよい。図3は、マンホールMが二種類の土壌G1と土壌G2とにまたがって位置しており、地上からの流入物の経路と地下からの流入物の経路が複数存在する例を示す。図3中、黒塗り矢印Dと黒塗り矢印Eとは、地下構造物としてのマンホールMに対する地上からの流入物を示す。白抜き矢印Fと白抜き矢印GとはマンホールMの所定の範囲内の土壌からのマンホールM内へ侵入する流入物を示す。この場合、評価部212は、地上腐食性評価と地下腐食性評価とを分割してそれぞれの経路について算出する。例えば評価部212が土壌G1における地下構造物の地上腐食性評価yo1^と地下腐食性評価yu1^と、土壌G2における地下構造物の地上腐食性評価yo2^と地下腐食性評価yu2^とを算出したとする。この場合評価部212は、以下の式4により地下構造物の腐食性y^を算出する。
【数4】
【0081】
本実施形態では、腐食性評価装置20の処理は、対象の地下構造物についての評価が終了した後、次に標高が高い地下構造物の評価の処理に移ることができる。この場合評価部212は、腐食性の評価対象の地下構造物と異なる他の地下構造物、すなわち前回腐食性を評価した地下構造物の存在を加味して対象の地下構造物の腐食性の評価を行ってよい。例えば評価部212は、評価対象の地下構造物より高い標高を有する地下構造物の数だけ重み付けして腐食性を算出してよい。この場合評価部212は、重み付けとして1.1の値を上記の式3又は4で算出した値に乗じることで、地下構造物の腐食性y^を算出してもよい。例えば評価部212は、当該他の地下構造物について算出された腐食性の値を、評価対象の地下構造物について上記の式3又は4により算出した値に加えることで、当該評価対象の地下構造物の腐食性y^を算出してもよい。
【0082】
評価部212は、算出した地下構造物の腐食性y^を記憶部22に格納する。制御部21は、ユーザの指示に応じて、入力部24を介してユーザに対して腐食性y^を表示できる。
【0083】
<プログラム>
上述した腐食性評価装置20として機能させるために、プログラム命令を実行可能なコンピュータを用いることも可能である。ここで、コンピュータは、汎用コンピュータ、専用コンピュータ、ワークステーション、PC(Personal Computer)、電子ノートパッドなどであってもよい。プログラム命令は、必要なタスクを実行するためのプログラムコード、コードセグメントなどであってもよい。
【0084】
コンピュータは、プロセッサと、記憶部と、入力部と、出力部と、通信インターフェースとを備える。プロセッサは、CPU、MPU(Micro Processing Unit)、GPU、DSP(Digital Signal Processor)、SoC(System on a Chip)などであり、同種又は異種の複数のプロセッサにより構成されてもよい。プロセッサは、記憶部からプログラムを読み出して実行することで、上記各構成の制御及び各種の演算処理を行う。なお、これらの処理内容の少なくとも一部をハードウェアで実現することとしてもよい。入力部は、ユーザの入力操作を受け付けてユーザの操作に基づく情報を取得する入力インターフェースであり、ポインティングデバイス、キーボード、マウスなどである。出力部は、情報を出力する出力インターフェースであり、ディスプレイ、スピーカなどである。通信インターフェースは、外部の装置と通信するためのインターフェースである。
【0085】
プログラムは、コンピュータが読み取り可能な記録媒体に記録されていてもよい。このような記録媒体を用いれば、プログラムをコンピュータにインストールすることが可能である。ここで、プログラムが記録された記録媒体は、非一過性(non-transitory)の記録媒体 であってもよい。非一過性の記録媒体は、特に限定されるものではないが、例えば、CD-ROM、DVD-ROM、USBメモリなどであってもよい。また、このプログラムは、ネットワークを介して外部装置からダウンロードされる形態としてもよい。
【0086】
<腐食性評価装置20の動作>
次に、図4A及び図4Bを参照して、本実施形態に係る腐食性評価装置20の動作について説明する。当該動作は、本実施形態に係る腐食性評価方法に相当する。本実施形態では、地下構造物はマンホールMである。
【0087】
ステップS1において、制御部21の情報取得部211は、腐食性評価の対象の地下構造物の位置を示す位置情報を取得する。位置情報の取得には任意の手法が採用されてよい。本実施形態において、情報取得部211は、記憶部22に格納された複数の地下構造物の位置情報を示すデータベースを検索し、マンホールMの位置情報として緯度X1、経度Y1、標高Z1を読み出して取得する。
【0088】
ステップS2において、評価部212は、腐食性の評価対象の地下構造物と異なる他の地下構造物の標高が、評価対象の地下構造物より高いかを判断する。他の地下構造物は、腐食性の評価対象の地下構造物から所定の距離の範囲内に存在する地下構造物であってよい。本実施形態では、評価部212は、予め記憶部22に格納された、複数の地下構造物の位置情報を記録した任意のデータベースを参照し、当該判断を行う。評価部212は、他の地下構造物の標高が評価対象の地下構造物より高い場合には、当該他の地下構造物の腐食性の評価を優先的に行う。具体的には、当該他の地下構造物を対象としてステップS1以降の処理を繰り返す。他の地下構造物の標高が評価対象の地下構造物より低い場合には、すなわち評価対象の地下構造物が最も高い標高に位置する場合には、評価部212の処理はステップS3に進む。
【0089】
本実施形態では、評価部212は他の地下構造物の標高が全て、マンホールMの標高Z1より低いと判断したとする。評価部212の処理はステップS3に進む。このようにして評価部212は、地下構造物と異なる他の地下構造物の標高が、地下構造物の標高より高い場合には、他の地下構造物の腐食性を優先的に評価する。
【0090】
ステップS3において、制御部21の情報取得部211は地下構造物の点検状況を示す点検情報を取得する。点検情報の取得には任意の手法が採用されてよい。本実施形態において、情報取得部211は、記憶部22に格納された複数の地下構造物の点検情報を示すデータベースを検索し、マンホールMの点検情報を読み出して取得する。
【0091】
情報取得部211は、腐食性の評価対象の地下構造物の種類に応じて点検情報を取得できる。本実施形態では、情報取得部211は、腐食性の評価対象のマンホールMの点検情報として地上とマンホールMとの接続箇所における通水量のパラメータとマンホールM内に所定期間に滞留する水量のパラメータとを取得し、当該マンホールMに接続された管路Pの点検情報として当該管路Pの本体部又は管路Pの継手部との劣化の程度のパラメータを取得する。
【0092】
ステップS4において、情報取得部211は、点検情報を係数に換算する。情報取得部211は、点検情報のパラメータがマンホールMの腐食への影響の程度が大きい程高い値の係数に換算する。本実施形態では、上記表1の通水量のパラメータについて、通水量の程度が「中」であるとする。情報取得部211は、これを係数ic2に換算する。また、上記表2のマンホールM内に所定期間に滞留する水量のパラメータについて、滞留する水量が所定値XX以上XY未満の範囲内であるとする。情報取得部211は、これを係数is2に換算する。また、上記表3の、管路Pの本体部又は管路Pの継手部の劣化の程度が「中」であるとする。情報取得部211は、これを係数it2に換算する。情報取得部211は、換算した係数を記憶部22に格納する。
【0093】
ステップS5において、情報取得部211は、地上腐食性情報を取得する。地上腐食性情報の取得には任意の手法が採用されてよい。本実施形態において、情報取得部211は、記憶部22に格納された、地図上の座標位置と対応付けて地上腐食性情報に含まれる各種パラメータを蓄積したデータベースを参照し、マンホールMの地上腐食性情報を読み出して取得する。情報取得部211はさらに、通信部23を介して測定プローブ10Aと通信し、測定プローブ10Aにより地表面の土壌の腐食速度を測定した結果を、地上腐食性情報として取得する。
【0094】
ステップS6において、情報取得部211は、地上腐食性情報の各パラメータを係数に換算する。情報取得部211は、地上腐食性情報のパラメータによるマンホールMの腐食への影響の程度が大きい程、高い値の係数に換算する。
【0095】
本実施形態では、マンホールMの上空の飛塩量を係数CXに、マンホールMの上空の気温を係数CYに換算する。情報取得部211は、測定プローブ10Aが測定した腐食速度を係数CZに換算する。情報取得部211は、換算した係数を記憶部22に格納する。
【0096】
ステップS7において、情報取得部211は、地上腐食性情報の各パラメータの係数を統合した結果の値に応じて地上腐食性の程度を「小」、「中」、又は「大」と決定する。本実施形態では、係数CXと、係数CYと、係数CZとを乗じた結果、情報取得部211が地上腐食性の程度を「中」であると決定する。
【0097】
ステップS8において、情報取得部211は、決定した地上腐食性の程度をさらに係数に換算する。本実施形態では情報取得部211は、地上腐食性の程度「中」を上記表4に従ったca2の係数に換算する。情報取得部211は、換算した係数を記憶部22に格納する。
【0098】
ステップS9において、情報取得部211は、降水量情報を取得する。降水量情報の取得には任意の手法が採用されてよい。本実施形態において、情報取得部211は、記憶部22に格納された各地の降水量を示す情報を蓄積したデータベースを検索し、地下構造物の位置に該当する領域の降水量を読み出して降水量情報として取得する。
【0099】
ステップS10において、情報取得部211は、降水量情報を係数に換算する。情報取得部211は、降水量情報のパラメータがマンホールMの腐食への影響の程度が大きい程高い値の係数に換算する。本実施形態では、降水量が所定値MM mm/以上MN mm/未満の範囲内であり、情報取得部211がこれを上記表5に従ってr2の係数に換算する。情報取得部211は、換算した係数を記憶部22に格納する。
【0100】
ステップS11において、情報取得部211は、土地利用情報を取得する。土地利用情報の取得には任意の手法が採用されてよい。本実施形態において、情報取得部211は、記憶部22に格納された各地の土地利用状況を示す情報を蓄積したデータベースを検索し、地下構造物の位置に該当する領域の土地利用状況を読み出して土地利用情報として取得する。
【0101】
ステップS12において、情報取得部211は、土地利用情報を係数に換算する。情報取得部211は、土地利用情報のパラメータがマンホールMの腐食への影響の程度が大きい程高い値の係数に換算する。本実施形態では、土地利用状況が「農村」であり、情報取得部211がこれを上記表6に従ってg2の係数に換算する。情報取得部211は、換算した係数を記憶部22に格納する。
【0102】
ステップS13において、情報取得部211は、地下腐食性情報を取得する。地下腐食性情報の取得には任意の手法が採用されてよい。本実施形態において、情報取得部211は、記憶部22に格納された、地図上の座標位置と対応付けて地下腐食性情報に含まれる各種パラメータを蓄積したデータベースを参照し、マンホールMの地下腐食性情報を読み出して取得する。情報取得部211はさらに、通信部23を介して測定プローブ10Bと通信し、測定プローブ10Bにより地下構造物から所定の範囲内の土壌の腐食速度を測定した結果を、地下腐食性情報として取得する。
【0103】
ステップS14において、情報取得部211は、地下腐食性情報の各パラメータを係数に換算する。情報取得部211は、地下腐食性情報のパラメータによるマンホールMの腐食への影響の程度が大きい程、高い値の係数に換算する。
【0104】
本実施形態では、情報取得部211は、測定プローブ10Bが測定した腐食速度を係数DXに換算する。情報取得部211は、換算した係数を記憶部22に格納する。
【0105】
ステップS15において、情報取得部211は、地下腐食性情報の各パラメータの係数を統合した結果の値に応じて地上腐食性の程度を「小」、「中」、又は「大」と決定する。本実施形態では、係数DXから、情報取得部211が地下腐食性の程度を「中」であると決定する。
【0106】
ステップS16において、情報取得部211は、決定した地下腐食性の程度をさらに係数に換算する。本実施形態では情報取得部211は、地下腐食性の程度「中」を上記表7に従ったsの係数に換算する。情報取得部211は、換算した係数を記憶部22に格納する。
【0107】
ステップS17において、評価部212は、地上からの流入物による地下構造物の腐食性を評価する。本実施形態では、情報取得部211が換算した、点検情報の係数ic2、地上腐食性情報の係数ca2、降水量情報の係数r、及び土地利用情報の係数gを読み出し、上記式1により地上腐食性評価としてyo^を算出する。評価部212は、算出した地上腐食性評価yo^を記憶部22に格納する。
【0108】
ステップS18において、評価部212は、地下からの流入物による地下構造物の腐食性を評価する。本実施形態では、情報取得部211が換算した、点検情報の係数is2及びit2、及び地下腐食性情報の係数sを読み出す。評価部212は、上記式2により地下腐食性評価としてyu^を算出する。評価部212は、算出した地下腐食性評価yu^を記憶部22に格納する。
【0109】
ステップS19において、評価部212は、地下構造物の腐食性を評価する。本実施形態では、評価部212は、記憶部22から地上腐食性評価yo^と地下腐食性評価yu^とを読み出し、上記の式3により地下構造物の腐食性y^を算出する。
【0110】
地下構造物の腐食性y^の算出には任意の手法が採用されてよい。本実施形態では、腐食性評価装置20の処理は、対象の地下構造物についての評価が終了した後、次に標高が高い地下構造物の評価の処理に移ることができる。この場合評価部212は、腐食性の評価対象の地下構造物と異なる他の地下構造物、すなわち前回腐食性を評価した地下構造物の存在を加味して対象の地下構造物の腐食性の評価を行ってよい。
【0111】
ステップS17からステップS19に示すように、評価部212は、地上腐食性情報、降水量情報、土地利用情報、及び点検情報に基づいて、地上からの流入物による地下構造物の腐食性を評価した結果である地上腐食性評価と、地下腐食性情報及び点検情報に基づいて地下からの流入物による地下構造物の腐食性を評価した結果である地下腐食性評価と、に基づいて地下構造物の腐食性を評価する。
【0112】
ステップS20において、制御部21は、算出した地下構造物の腐食性y^をユーザに対し表示する。ユーザに対する表示は、出力部25を介して表示することで行ってもよいし、ユーザの使用する端末装置に地下構造物の腐食性y^を示す情報を送信し、当該端末装置の出力部を介して表示することで行ってもよい。その後、腐食性評価装置20の動作は終了する。
【0113】
上述のように、本実施形態にかかる腐食性評価装置20は、地下構造物の腐食性を評価する腐食性評価装置であって、地下構造物の地上の領域において腐食性に影響を与えるパラメータを示す地上腐食性情報、地上の領域の降水量を示す降水量情報、地上の領域の土地利用状況を示す土地利用情報、地下構造物から所定の範囲内の土壌の腐食性を示す地下腐食性情報、並びに地下構造物の点検状況を示す点検情報を取得する情報取得部211と、地上腐食性情報、降水量情報、土地利用情報、及び点検情報に基づいて、地上からの流入物による地下構造物の腐食性を評価した結果である地上腐食性評価と、地下腐食性情報及び点検情報に基づいて地下からの流入物による地下構造物の腐食性を評価した結果である地下腐食性評価と、に基づいて地下構造物の腐食性を評価する評価部212とを備える。
【0114】
本実施形態によれば、地下構造物の地上の領域と地下の領域との両方の腐食性を示す情報を用いて、地下構造物の腐食性を総合的に予測することができる。地下構造物それぞれについて点検を行う必要なく腐食性を予測できるため、地下構造物の維持、保守管理が容易となる。よって地下構造物の腐食性の評価の手法を改善することができる。
【0115】
上述のように、本実施形態にかかる腐食性評価装置20において、評価部212は、対象の地下構造物と異なる他の地下構造物の標高が、対象の地下構造物の標高より高い場合には、他の地下構造物の腐食性を優先的に評価する。
【0116】
本実施形態によれば、対象の地下構造物よりも標高の高い他の地下構造物の腐食性を先に算出する。よって先に算出された他の地下構造物の腐食性を加味して、対象の地下構造物の評価を行うことができる。標高を比較することで、対象の地下構造物と他の地下構造物との間の距離が離れている場合であっても、当該他の地下構造物の腐食性と関連付けて、対象の地下構造物の腐食性を評価できる。よって地下構造物の腐食性の評価の手法を改善することができる。
【0117】
上述のように、本実施形態にかかる腐食性評価装置20は、地上の領域に設けられた第1の測定プローブ10Aと、地下構造物から所定の範囲内の土壌に設けられた第2の測定プローブ10Bと通信する通信部23をさらに備える。情報取得部211は、通信部23を介して、第1の測定プローブ10Aによる測定結果を地上腐食性情報として取得し、第2の測定プローブ10Bによる測定結果を地下腐食性情報として取得する。
【0118】
本実施形態によれば、第1の測定プローブ10Aと第2の測定プローブ10Bとによる実測値を用いて、より精度よく地下構造物の腐食性を評価できる。よって地下構造物の腐食性の評価の手法を改善することができる。
【0119】
上述のように、本実施形態にかかる腐食性評価装置20において、第1の測定プローブ10A又は第2の測定プローブ10Bは、分極抵抗法を用いた測定プローブである。
【0120】
本実施形態によれば、地下構造物の腐食性に大きな影響を与える土壌の腐食速度についてより精度よく定量的に測定できる。よって地下構造物の腐食性の評価の手法を改善することができる。
【0121】
本開示を諸図面や実施形態に基づき説明してきたが、当業者であれば本開示に基づき種々の変形や修正を行うことが容易であることに注意されたい。従って、これらの変形や修正は本開示の範囲に含まれることに留意されたい。
【0122】
本開示の変形例として、腐食性評価装置20の制御部21は、第1の測定プローブ10A及び第2の測定プローブ10Bと無線通信を行う通信部を備える車両Vから、第1の測定プローブ10Aによる測定結果又は第2の測定プローブ10Bによる測定結果を取得してよい。図5に本変形例に係るシステム2を示す。図5を参照すると、制御部21は車両Vと通信部23及びネットワーク30を介して情報の送受信を行う。第1の測定プローブ10A及び第2の測定プローブ10Bは、それぞれの通信部及びネットワーク30を介して車両Vと情報の送受信を行う。上述の実施形態と同様、第1の測定プローブ10Aと第2の測定プローブ10Bとは分極抵抗法を用いて土壌中の金属の腐食速度を測定できる。
【0123】
車両Vは作業者が運転してもよいし、任意のレベルで運転が自動化されていてもよい。自動化のレベルは、例えば、SAE(Society of Automotive Engineers)のレベル分けにおけるレベル1からレベル5のいずれかである。
【0124】
車両Vの通信部は、ネットワーク30に接続する1つ以上の通信用インターフェースを含む。当該通信用インターフェースは、例えば移動通信規格、有線LAN規格、又は無線LAN規格に対応するが、これらに限られず、任意の通信規格に対応してもよい。車両Vが腐食性を評価する対象の地下構造物の付近に移動すると、通信部は、無線通信により地下構造物の地上の領域に設けられた第1の測定プローブ10Aと、地下構造物から所定の範囲内の土壌に設けられた第2の測定プローブ10Bと通信し、それぞれの測定結果を受信する。無線通信の手法には、Wi-Fi、Bluetooth(登録商標)等、任意の手法が採用される。
【0125】
車両Vは制御部をさらに備える。当該制御部は、少なくとも1つのプロセッサ、少なくとも1つの専用回路又はこれらの組み合わせを含んで構成され得る。プロセッサは、CPU若しくはGPU等の汎用プロセッサ又は特定の処理に特化した専用プロセッサである。専用回路は、例えば、FPGA又はASIC等である。制御部は、車両Vの各部を制御しながら、車両Vの動作に関わる処理を実行し得る。制御部は、地下構造物の位置情報を取得し、当該位置情報に基づいて、車両Vを自動運転により地下構造物の位置まで移動させることができてもよい。
【0126】
車両Vの制御部は、通信部を介して、腐食性評価装置20に対し、無線通信により受信した第1の測定プローブ10Aと第2の測定プローブ10Bとの測定結果を送信する。測定結果の送信は常に行われていてもよいし、腐食性評価装置20から指示する信号を受信した場合に行ってもよい。腐食性評価装置20は、車両Vから第1の測定プローブ10Aによる測定結果を地上腐食性情報として、第2の測定プローブ10Bによる測定結果を地上腐食性情報として受信することで取得する。
【0127】
上述のように、本変形例にかかる腐食性評価装置20において、情報取得部211は、第1の測定プローブ10A又は第2の測定プローブ10Bと無線通信を行う通信部を備える車両Vから、第1の測定プローブ10Aによる測定結果又は第2の測定プローブ10Bによる測定結果を取得する。
【0128】
本変形例によれば、車両Vが腐食性を評価する対象の地下構造物の付近を移動すると、当該地下構造物の付近に設けられた第1の測定プローブ10Aと第2の測定プローブ10Bとによる測定結果が、車両Vを介して腐食性評価装置20に送信される。これにより、車両Vの移動に合わせて所望の地下構造物の地上腐食性情報及び地下腐食性情報を実測値で取得することが可能となる。よって地下構造物の腐食性の評価の手法を改善することができる。
【符号の説明】
【0129】
1,2 システム
10 測定プローブ
10A 第1の測定プローブ
10B 第2の測定プローブ
20 腐食性評価装置
21 制御部
22 記憶部
23 通信部
24 入力部
25 出力部
211 情報取得部
212 評価部
30 ネットワーク
図1
図2
図3
図4A
図4B
図5