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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023089928
(43)【公開日】2023-06-28
(54)【発明の名称】パッケージ
(51)【国際特許分類】
   H01L 23/02 20060101AFI20230621BHJP
   H01L 25/04 20230101ALI20230621BHJP
   H01L 23/40 20060101ALI20230621BHJP
【FI】
H01L23/02 H
H01L25/04 Z
H01L23/40 F
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022176186
(22)【出願日】2022-11-02
(31)【優先権主張番号】P 2021204430
(32)【優先日】2021-12-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】391039896
【氏名又は名称】NGKエレクトロデバイス株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000004064
【氏名又は名称】日本碍子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088672
【弁理士】
【氏名又は名称】吉竹 英俊
(74)【代理人】
【識別番号】100088845
【弁理士】
【氏名又は名称】有田 貴弘
(74)【代理人】
【識別番号】100134991
【弁理士】
【氏名又は名称】中尾 和樹
(74)【代理人】
【識別番号】100148507
【弁理士】
【氏名又は名称】喜多 弘行
(72)【発明者】
【氏名】河村 卓
(72)【発明者】
【氏名】山口 哲平
(72)【発明者】
【氏名】半田 真規
【テーマコード(参考)】
5F136
【Fターム(参考)】
5F136BA30
5F136BB18
5F136DA31
5F136EA13
5F136FA01
5F136FA02
5F136FA03
5F136FA52
5F136FA53
(57)【要約】
【課題】枠体と放熱板の支持面との間の接合の信頼性を高めることができるパッケージを提供する。
【解決手段】パッケージ50は、蓋体80によって封止されることになるキャビティCVを有している。パッケージ50は、枠体20と、放熱板10と、接合材21とを含む。枠体20は、絶縁体からなり、平面視においてキャビティCVを囲んでいる。放熱板10は、枠体20を支持する支持面H1と、平面視に垂直な厚み方向において支持面H1と反対の底面H2と、支持面H1と底面H2とを互いにつなぐ側面H3と、を有している。接合材21は、枠体20と放熱板10の支持面H1とを互いに接合している。厚み方向に垂直な水平方向において、放熱板10の支持面H1は表面粗さRa1Hを有しており、かつ放熱板10の側面H3は表面粗さRa2Hを有している。Ra1H×10≧Ra2Hが満たされている。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
蓋体によって封止されることになるキャビティを有するパッケージであって、
絶縁体からなり、平面視において前記キャビティを囲む枠体と、
前記枠体を支持する支持面と、前記平面視に垂直な厚み方向において前記支持面と反対の底面と、前記支持面と前記底面とを互いにつなぐ側面と、を有する放熱板と、
前記枠体と前記放熱板の前記支持面とを互いに接合する接合材と、
を備え、
前記厚み方向に垂直な水平方向において、前記放熱板の前記支持面は表面粗さRa1Hを有しており、かつ前記放熱板の前記側面は表面粗さRa2Hを有しており、
Ra1H×10 ≧ Ra2H
が満たされている、パッケージ。
【請求項2】
請求項1に記載のパッケージであって、
前記接合材は金属ろう材または樹脂材である、パッケージ。
【請求項3】
請求項1または2に記載のパッケージであって、
前記厚み方向において、前記放熱板の前記側面は表面粗さRa2Tを有しており、
Ra2T > Ra2H
が満たされている、パッケージ。
【請求項4】
請求項1または2に記載のパッケージであって、
前記放熱板は、前記厚み方向において、第1の材料からなる第1の層と、前記第1の材料とは異なる第2の材料からなる第2の層と、を含む積層構造を有しており、
前記放熱板の前記支持面は前記第1の層からなり、前記放熱板の前記側面は、前記第1の層からなる部分と、前記第2の層からなる部分とを含む、パッケージ。
【請求項5】
請求項1または2に記載のパッケージであって、
前記放熱板は非積層材料からなる、パッケージ。
【請求項6】
請求項1または2に記載のパッケージであって、
Ra2Hは、2μm以下である、パッケージ。
【請求項7】
請求項1または2に記載のパッケージであって、
Ra1H > Ra2H
が満たされている、パッケージ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パッケージに関し、特に、蓋体によって封止されることになるキャビティを有するパッケージに関するものである。
【背景技術】
【0002】
電力用半導体素子などの電子部品を収納するために、キャビティを有するパッケージがしばしば用いられる。パッケージのキャビティ中へ電子部品が搭載された後、パッケージに蓋体が接合されることによって、キャビティが気密に封止される。これにより、外部環境から保護された電子部品を有する電子装置が得られる。電力半導体素子用のパッケージは、多くの場合、放熱板(ヒートシンク)を有している。ヒートシンクの底面(電子部品が搭載された面と反対の面)は、通常、それを支持する支持部材へ取り付けられることになる。支持部材は、例えば、実装ボードまたは放熱部材である。支持部材は、ヒートシンクの底面へ熱的に接触させられる。ヒートシンクを介することによって電子部品からの熱が効率的にパッケージの外部へ(典型的には支持部材へ)と排出される。これにより、電子部品の温度上昇が、例えば150℃程度までに抑えられる。
【0003】
特開2003-282751号公報(特許文献1)に開示された技術によれば、ヒートシンクとしてCu(銅)またはCu系金属板が用いられる。Cuは、安価でありながら、300W/m・Kを超える高い熱伝導率を有している。よって、ヒートシンクの材料コストを抑えつつ、ヒートシンクの放熱性能を高めることができる。この技術によれば、まず、ヒートシンク上に半導体素子が、ろう付けによって実装される。次に、予め外部接続端子が接合されている枠体がヒートシンク上に、半導体素子を囲むように接合される。この接合に低融点接合材を用いることによって、半導体素子のろう付け温度未満の温度で枠体が接合される。次に、枠体の上面側に蓋体が接合されることによって、キャビティが封止される。これにより電子装置が得られる。
【0004】
特開2005-150133号公報(特許文献2)は、基体(パッケージ)および蓋体で構成された半導体素子収納用容器を開示している。基体は、ヒートシンク板(放熱板)と、セラミック枠体と、外部接続端子とを有している。ヒートシンク板には、放熱特性と、セラミックとの熱膨張係数の近似性と、が求められる。そこでヒートシンク板には、複合金属板が用いられる。複合金属板は、例えば、銅タングステン(Cu-W)系、銅モリブデン(Cu-Mo)系、または、Cuと他の金属とのクラッドである。クラッドは、例えば、Cu-Mo系の合金金属板の両面にCu板を貼り合わせることによって形成される。セラミック枠体の、ヒートシンク板および金属接続端子に面する面には、メタライズパターンが形成されている。ヒートシンク板には、通常、セラミック枠体のろう付け接合時にろうが半導体素子接合面へ流れ過ぎることを防止するために、Cuめっき被膜が施されている。メタライズパターンを有するセラミック枠体と、ヒートシンク板およびセラミック枠体の各々とは、ろう付け接合される。ろう付けは、例えば、Ag-Cu(銀-銅)などのろう材を約780℃~900℃の高温に加熱することによって行われる。これによって得られた接合体の全金属表面上には、Ni(ニッケル)めっき被膜と、Au(金)めっき被膜とが施される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003-282751号公報
【特許文献2】特開2005-150133号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
パッケージの製造における枠体と放熱板(ヒートシンク板)との接合工程において、接合材がろう材の場合、加熱によって枠体と放熱板との間で接合材が液相化される。この際に、接合材の液体の一部は、枠体と放熱板との間から放熱板の側面へ向かって流れ出す。この流出が過大であると、枠体と放熱板との間に接合材のボイドが形成されやすく、その結果、枠体と放熱板との間の接合の信頼性が低くなってしまう。接合材が樹脂材の場合、接合工程において、液状の樹脂材(接合材)の硬化が行われる。硬化前に、液状の接合材の一部は、枠体と放熱板との間から放熱板の側面へ向かって流れ出す。この流出が過大であると、枠体と放熱板との間に接合材のボイドが形成されやすく、その結果、枠体と放熱板との間の接合の信頼性が低くなってしまう。
【0007】
本発明は以上のような課題を解決するためになされたものであり、その目的は、枠体と放熱板の支持面との間の接合の信頼性を高めることができるパッケージを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
態様1は、蓋体によって封止されることになるキャビティを有するパッケージであって、
絶縁体からなり、平面視において前記キャビティを囲む枠体と、
前記枠体を支持する支持面と、前記平面視に垂直な厚み方向において前記支持面と反対の底面と、前記支持面と前記底面とを互いにつなぐ側面と、を有する放熱板と、
前記枠体と前記放熱板の前記支持面とを互いに接合する接合材と、
を備え、
前記厚み方向に垂直な水平方向において、前記放熱板の前記支持面は表面粗さRa1Hを有しており、かつ前記放熱板の前記側面は表面粗さRa2Hを有しており、
Ra1H×10 ≧ Ra2H
が満たされている。
【0009】
態様2は、態様1に記載のパッケージであって、前記接合材は金属ろう材または樹脂材である。
【0010】
態様3は、態様1または2に記載のパッケージであって、前記厚み方向において、前記放熱板の前記側面は表面粗さRa2Tを有しており、
Ra2T > Ra2H
が満たされている。
【0011】
態様4は、態様1から3のいずれか1項に記載のパッケージであって、前記放熱板は、前記厚み方向において、第1の材料からなる第1の層と、前記第1の材料とは異なる第2の材料からなる第2の層と、を含む積層構造を有しており、前記放熱板の前記支持面は前記第1の層からなり、前記放熱板の前記側面は、前記第1の層からなる部分と、前記第2の層からなる部分とを含む。
【0012】
態様5は、態様1から3のいずれか1項に記載のパッケージであって、前記放熱板は非積層材料からなる。
【0013】
態様6は、態様1から5のいずれか1項に記載のパッケージであって、Ra2Hは、2μm以下である。
【0014】
態様7は、態様1から6のいずれか1項に記載のパッケージであって、
Ra1H > Ra2H
が満たされている。
【発明の効果】
【0015】
態様1によれば、表面粗さに関して、下記の関係式
Ra1H×10 ≧ Ra2H
が満たされている。これにより、パッケージの製造における枠体と放熱板との接合工程において、加熱によって枠体と放熱板との間で接合材が液相化された際に、放熱板の側面が、放熱板の支持面に比して、接合材の液体に対して過度に濡れやすいことが避けられる。よって、接合材の液体が枠体と放熱板の支持面との間から放熱板の側面へと流れ出す量が抑えられる。よって、枠体と放熱板の支持面との間に接合材のボイドが形成されにくい。よって、枠体と放熱板の支持面との間の接合の信頼性を高めることができる。
【0016】
態様2によれば、接合材は金属ろう材または樹脂材である。この場合、枠体と放熱板の支持面との間のろう付け接合または樹脂接合の信頼性を高めることができる。
【0017】
態様3によれば、表面粗さに関して、下記の関係式
Ra2T > Ra2H
が満たされている。この場合、本発明者の検討によれば、接合材の液体の厚み方向における流れが抑制される。これにより、枠体と放熱板の支持面との間において、接合材のボイドを、より形成されにくくすることができる。
【0018】
態様4によれば、放熱板は、厚み方向において、第1の材料からなる第1の層と、第1の材料とは異なる第2の材料からなる第2の層と、を含む積層構造を有している。放熱板の支持面は第1の層からなり、放熱板の側面は、第1の層からなる部分と、第2の層からなる部分とを含む。この場合、枠体と、積層構造を有する放熱板の支持面と、の間において、接合材のボイドを形成されにくくすることができる。
【0019】
態様5によれば、放熱板は非積層材料からなる。この場合、枠体と、非積層材料からなる放熱板の支持面と、の間において、接合材のボイドを形成されにくくすることができる。
【0020】
態様6によれば、表面粗さRa2Hは、2μm以下である。この場合、枠体と放熱板の支持面との間において、接合材のボイドを、より確実に、形成されにくくすることができる。
【0021】
態様7によれば、表面粗さに関して、下記の関係式
Ra1H > Ra2H
が満たされている。この場合、パッケージの製造における枠体と放熱板との接合工程において、表面粗さの観点で、放熱板の側面が、放熱板の支持面に比して、接合材の液体に対して濡れにくい。これにより、接合材の液体が枠体と放熱板の支持面との間から放熱板の側面へと流れ出す量を、より抑えることができる。
【0022】
この発明の目的、特徴、態様、および利点は、以下の詳細な説明と添付図面とによって、より明白となる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】実施の形態1に係る電子装置の構成を、キャビティ内部が見えるようにその一部の図示を省略して示す概略斜視図である。
図2図1の電子装置の線II-IIに沿う概略断面図である。
図3】実施の形態1に係るパッケージの構成を示す概略断面図である。
図4】放熱板の側面の形成方法の例を概略的に示す部分断面図である。
図5】実施の形態2に係るパッケージの構成を示す概略断面図である。
図6】実施の形態3に係るパッケージの構成を示す概略断面図である。
図7】実施の形態4に係るパッケージの構成を示す概略断面図である。
図8】比較例のパッケージにおけるヒートシンクの側面上での接合材の流れを示す顕微鏡写真である。
図9】実施例のパッケージにおけるヒートシンクの側面上での接合材の流れを示す顕微鏡写真である。
図10】実施例のパッケージにおける放熱板の側面上の筋模様を示す顕微鏡写真である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、図面に基づいて本発明の実施の形態について説明する。図面において同一または相当する部分には同一の参照番号を付しその説明は繰返さない。図面間での方向関係を理解しやすくするために、いくつかの図にはxyz直交座標が示されている。本明細書において、平面視は、厚み方向に垂直な平面への射影を意味する。言い換えれば、厚み方向は、平面視に垂直な方向である。上記xyz座標系によれば、厚み方向はz方向に対応し、厚み方向に垂直な平面はxy平面に対応する。金属は、特段の記載がない限り、純金属および合金のいずれをも意味し得る。表面粗さは、特段の記載がない限り、日本産業規格(Japanese Industrial Standards:JIS)におけるJIS B 0601-2001で定義される算術平均粗さ(Ra)を意味する。
【0025】
<実施の形態1>
図1は、実施の形態1に係る電子装置90の構成を示す概略斜視図である。図2は、図1の電子装置90の線II-IIに沿う概略断面図である。電子装置90は、パッケージ50と、蓋体80と、電子部品8とを有している。また電子装置90は接着層70を有していてよい。また電子装置90は、ワイヤ9(配線部材)を有していてよい。なお図1においては、パッケージ50が有するキャビティCVの内部が部分的に見えるように、蓋体80および接着層70の図示が部分的に省略されている。電子部品8はパワー半導体素子であってよく、この場合、電子装置90はパワーモジュールである。パワー半導体素子は高周波(RF:Radio Frequency)用であってよく、この場合、電子装置90はRFパワーモジュールである。なお、図1および図2においては1つの電子部品8が図示されているが、パッケージ50へは複数の電子部品8が搭載されていてよい。
【0026】
図3は、電子装置90(図2)の部品としての、本実施の形態1のパッケージ50の構成を示す概略断面図である。電子装置90の製造のためにパッケージ50が準備された時点では、図3に示されているように、電子部品8は未だ実装されていない。パッケージ50は、蓋体80(図2)によって封止されることになるキャビティCVを有している。パッケージ50は、枠体20と、放熱板10と、接合材21とを含む。またパッケージ50は、金属リード30(金属端子)と、接合材22とをさらに含む。
【0027】
枠体20は、平面視においてキャビティCVを囲んでいる。枠体20の外縁は、図1に示されているように矩形形状を有していてよく、その各辺の大きさは、例えば、10mm以上、40mm以下である。枠体20の厚みは、例えば、0.25mm以上、1.25mm以下である。枠体20の厚みが0.25mm未満であると、キャビティCVの高さが不足する可能性が高い。枠体20の厚みが1.25mmより大きいと、枠体20上の金属リード30への接続が必要なワイヤ9(図2)の長さも大きくなり、その結果、ワイヤ9のインダクタンスも大きくなる。ワイヤ9のインダクタンスの増大は、電気特性上、通常は望まれないことである。
【0028】
枠体20は、絶縁体からなる。この絶縁体は、具体的にはセラミック絶縁体であり、例えば、実質的にアルミナである。枠体20の表面の、接合材21および接合材22に面する部分には、接合材21および接合材22との接合を容易とするために、メタライズ膜(図示せず)が設けられていてよい。メタライズ膜は、例えば、タングステン(W)層またはモリブデン(Mo)層と、それを覆うニッケル(Ni)めっき層とによって構成されている。その場合、枠体20のうち接合材21および接合材22に直接接するのは、メタライズ膜である。
【0029】
放熱板10は、枠体20を支持する支持面H1と、厚み方向において支持面H1と反対の底面H2と、支持面H1と底面H2とを互いにつなぐ側面H3と、を有している。支持面H1は、キャビティ部分H1Cと、枠体部分H1Sとを有している。キャビティ部分H1Cは、厚み方向においてキャビティCVに面している。枠体部分H1Sは、厚み方向において枠体20に面しており、接合材21によって枠体20に接合されている。キャビティ部分H1Cは枠体部分H1Sに囲まれている。支持面H1はさらに、枠体部分H1Sの外側に外周部分H1Pを有していてよい。支持面H1は、おおよそ平坦面であってよく、側面H3はこの平坦面におおよそ垂直な面であってよい。放熱板10は、金属を含有する材料からなり、典型的には金属からなる。放熱板10の厚みは、例えば、0.1mm以上、3.0mm以下である。
【0030】
厚み方向に垂直な水平方向において、放熱板10の支持面H1は表面粗さRa1Hを有しており、かつ放熱板10の側面H3は表面粗さRa2Hを有している。なお、水平方向における表面粗さは、水平方向に沿った走査によって得られる表面粗さを意味する。この走査の長さ、すなわち基準長さは、例えば、0.18mmである。また厚み方向において、放熱板10の側面H3は表面粗さRa2Tを有している。厚み方向における表面粗さは、厚み方向に沿った走査によって得られる表面粗さを意味する。厚み方向に沿った走査は、厚み方向において側面H3の両端を含まないように行われる。よってこの走査の長さ、すなわち基準長さは、放熱板10の厚みよりも小さい。放熱板10の厚みが0.18mmよりも大きい場合、この基準長さは、例えば、0.18mmである。放熱板10の厚みが0.18mm以下の場合、この基準長さは、放熱板10の上端および下端が走査されないようにするために、0.18mmよりも若干小さくてよい。表面粗さは、触針式の表面粗さ計によって測定される。表面粗さは、触針式の表面粗さ計に代わって、例えば、レーザー顕微鏡(Keyence社製レーザーマイクロスコープVK-X1000)によって測定されてもよい。
【0031】
表面粗さに関して、Ra1HおよびRa2Hの間で、下記の関係式
Ra1H×10 ≧ Ra2H
が満たされており、好ましくは、下記の関係式
Ra1H×5 ≧ Ra2H
が満たされており、より好ましくは、下記の関係式
Ra1H > Ra2H
が満たされている。
【0032】
また好ましくは、表面粗さに関して、Ra2TおよびRa2Hの間で、下記の関係式
Ra2T > Ra2H
が満たされている。表面粗さRa2Hは、2μm以下であることが好ましい。表面粗さRa2Hは、実質的にゼロであってよい。
【0033】
接合材21は、枠体20と放熱板10の支持面H1(具体的には枠体部分H1S)とを互いに接合している。接合材21は合金からなっていてよい。接合材21は、銀ろう材、アルミニウムろう材、銅ろう材、金ろう材、ニッケルろう材などの金属ろう材であってよい。銀ろう材は、銀(Ag)を含有したろう材であり、Agに加えてさらにCuを含有していてよい。銀ろう材の融点は、例えば、650℃以上、950℃以下である。典型的には、72wt%のAgと28wt%のCuとの共晶組成を有する銀ろう材が用いられ、その融点は780℃である。接合材21の厚みは、枠体20および放熱板10の各々の厚みよりも小さくてよい。
【0034】
また、接合材21は樹脂材であってもよい。樹脂材は、主成分として樹脂を含む。樹脂材は、主成分としての樹脂に加えて、樹脂ではない残部を含んでよい。樹脂は、具体的には、エポキシ樹脂、フェノール樹脂およびシリコーン(silicone)樹脂の少なくともいずれかを主成分として含んでいてよい。特にエポキシ樹脂は、耐熱性、機械的強度および耐薬品性をバランスよく備えている点で好ましい。残部は、硬化剤、無機フィラー、カップリング剤、触媒、低応力剤などの副成分からなってよい。
【0035】
放熱板10は、厚み方向において、第1の材料からなる金属層12a(第1の層)と、第1の材料とは異なる第2の材料からなる金属層11a(第2の層)と、を含む積層構造を有している。放熱板10の支持面H1は第1の層12aからなる。放熱板10の側面H3は、第1の層12aからなる部分と、第2の層11aからなる部分とを含む。本実施の形態においては、放熱板10は、支持面H1から底面H2に向かって順に、金属層12aと、金属層11aと、金属層12bと、金属層11bと、金属層12cとを有している。金属層12a~12cは第1の材料からなり、金属層11a,11bは第2の材料からなる。放熱板10は、クラッド板であってよく、本実施の形態においては、5層構造を有するクラッド材からなる。なおクラッド材の層数は、5層に限定されるものではなく、熱応力のバランスを確保する観点では3層以上が好ましい。第1の材料は、第2の材料の熱伝導率よりも大きな熱伝導率を有していることが好ましい。第2の材料は、第1の材料の熱膨張率よりも小さな熱膨率を有していることが好ましい。第1の材料は、例えば、Cuである。第2の材料は、例えば、Moである。金属層11aの厚みは、金属層12aの厚みより小さくてよい。本実施の形態においては、金属層11aの厚みは、金属層12a~12cの各々の厚みよりも小さい。放熱板10がクラッド材の場合、側面H3の表面粗さRa2H、Ra2Tの測定は、最上層、すなわち支持面H1を有する層、の側面で行うことが望ましい。
【0036】
金属リード30は、キャビティCVの内部と外部との間での電気的接続を得るためのものである。金属リード30は枠体20に支持されている。金属リード30の材料は、例えば、Fe-Ni合金、Cu、またはCu合金である。Fe-Ni合金は、例えば、42アロイである。42アロイは、主成分としてFe原子を含有しており、かつ約42%のNi原子を含有している。
【0037】
接合材22は枠体20と金属リード30とを互いに接合している。接合材22の材料の例は、接合材21の材料について前述した例と同様である。接合材22の材料は、銀ろう材、アルミニウムろう材、銅ろう材、金ろう材、ニッケルろう材などの金属ろう材であってよい。銀ろう材は、銀(Ag)を含有したろう材であり、Agに加えてさらにCuを含有していてよい。銀ろう材の融点は、例えば、650℃以上、950℃以下である。典型的には、72wt%のAgと28wt%のCuとの共晶組成を有する銀ろう材が用いられ、その融点は780℃である。接合材22の厚みは、枠体20および金属リード30の各々の厚みよりも小さくてよい。
【0038】
なお、パッケージ50の表面のうち、金属からなる部分の上には、めっき被膜(図示せず)が設けられていてよい。パッケージ50の製造において、このめっき被膜は、接合材21を用いた接合工程の後に形成される。よって接合材21と放熱板10とは、このめっき被膜を介することなく直接的に接合される。めっき被膜は、典型的には、Niめっき膜と、その上に配置された貴金属めっき膜とを有している。貴金属めっき膜は、例えば、Auめっき膜である。めっき被膜の厚みは合計で5μm以下である。放熱板10に5μm程度のめっき被膜を設ける場合、めっき膜を設ける前に放熱板10の支持面H1もしくは側面H3で測定した表面粗さと、めっき被膜を設けた後に放熱板10の同じ個所で測定した表面粗さとでは、表面粗さの数値はほとんど変わらない。従って、めっき被膜の厚さが5μm以下の場合には、めっき被膜上で表面粗さを測定してもよい。
【0039】
図4は、放熱板10の側面H3の形成方法の例を概略的に示す部分断面図である。まず、放熱板10(図3)の材料としてのクラッド材10P(図4)が形成される。放熱板10は、二点鎖線(図4)で示すようにクラッド材10Pから切り出されることによって形成される。よって、xy面内方向(厚み方向に垂直な面内方向)において、クラッド材10Pのサイズは放熱板10よりも大きい。クラッド材10Pが十分に大きい場合、1つのクラッド材10Pから複数の放熱板10を切り出すことができる。
【0040】
クラッド材10Pを、二点鎖線(図4)に沿って切断する際に、切断方法を適宜選択することによって、表面粗さに関して前述した関係式を満たすことができる。これらの関係をより容易に満たすことができる切断方法としては、ワイヤーソー加工よりも、ダイシング加工が適している。ダイシング加工は、高速回転する回転刃を押し付けることによる切断方法である。ダイシング加工において、回転刃の形状、材料、回転数などの加工条件が適宜調整されることによって、切断後に特段の仕上げ加工を行わなくても、前述した関係式を満たすことができる。
【0041】
これに対して、ワイヤーソー加工の場合、表面粗さRa2Hが過大になりやすい。また、側面H3の表面プロファイルが2次元的にランダムに形成されることから、表面プロファイルに対して、有意な異方性を与えにくい。よって表面粗さRa2Tと表面粗さRa2Hとの間に有意な差異を与えにくい。
【0042】
表面粗さRa2Tと表面粗さRa2Hとの間の前述した関係式がダイシング加工によって実現された場合、側面H3の光学顕微鏡写真には、側面H3の表面プロファイルを反映しての多数の筋模様が観察される。この筋模様の延在方向は、実質的に、厚み方向に垂直な水平方向に沿っている。ここで、放熱板10の積層構造の界面は、上記の筋模様とはみなさない。
【0043】
なお、上記のように最適化されたダイシング加工を行う代わりに、任意の切断方法が行われ、そしてその後に、側面H3に対して研磨が行われてよい。この研磨は、例えば、グラインダーを用いて行われる。側面H3上でのグラインダーの運動方向は、少なくとも研磨の最終仕上げにおいては、実質的に水平方向に沿っていることが好ましい。
【0044】
次に、電子装置90(図2)の製造方法の例について、以下に説明する。
【0045】
パッケージ50(図3)が準備される。パッケージ50の放熱板10の支持面H1上に電子部品8が搭載される。この搭載は、はんだ付けによって行われてよい。言い換えれば、電子部品8の搭載のための実装材として、はんだ材が用いられてよい。次に、電子部品8が金属リード30に、ワイヤ9によって電気的に接続される。ワイヤ9はワイヤボンディングによって形成されてよい。
【0046】
蓋体80(図1および図2)が準備される。蓋体80は、セラミック材料からなっていてよく、このセラミック材料は主成分としてアルミナを含んでいてよく、例えば、実質的にアルミナである。あるいは、蓋体80は樹脂を含んでいてよい。樹脂は、例えば、液晶ポリマーである。なお当該樹脂中に無機フィラーが分散されていてもよく、無機材フィラーは、例えばシリカ粒である。樹脂中に無機フィラーが分散されていることによって、蓋体80の強度および耐久性を高めることができる。
【0047】
次に、金属リード30が設けられた枠体20上に、蓋体80が接着層70を介して載置される。接着層70は、本例においては熱硬化性樹脂を含み、当該載置の時点では半硬化状態にある。接着層70は、枠体20上にキャビティCVを囲むように設けられる。接着層70は、図2に示されているように、枠体20上に金属リード30を介して設けられる部分を有していてよい。接着層70の、蓋体80とパッケージ50との間での厚みは、例えば、100μm以上、360μm以下である。蓋体80(図2)は、キャビティCVに面する内面81iと、その反対の外面81oとを有していてよく、また典型的には、内面81i上には、枠体20の枠形状におおよそ対応した枠形状を有する突起である枠部81pが設けられている。この場合、接着層70は枠部81pに接する。
【0048】
次に、蓋体80が枠体20へ所定の荷重で押し付けられる。適切な荷重は、パッケージ50の寸法設計に依存するが、例えば500g以上、1kg以下程度である。荷重での押し付けが行われながら、接着層70が加熱される。加熱された接着層70は、まず軟化状態へと変化する。これにより接着層70の粘度が低下する。その結果、接着層70が濡れ広がる。その後、加熱による硬化反応の進行にともなって、接着層70は硬化状態へと変化し、その結果、接着層70は蓋体80と枠体20とを互いに接着する。
【0049】
接着層70は、エポキシ樹脂、フェノール樹脂およびシリコーン(silicone)樹脂の少なくともいずれかを主成分として含んでいてよい。特にエポキシ樹脂は、耐熱性、機械的強度および耐薬品性をバランス良く備えている点で好ましい。これら特性を好適に有するためには、主成分としてのエポキシ樹脂の含有量が20~40wt%であることが好ましく、残部は硬化剤などの副成分からなってよい。具体的には、この副成分は、例えば、1~10wt%の硬化剤と、50~70wt%の無機フィラーと、0.5~2wt%のカップリング剤と、0.5~2wt%の触媒と、0.1~5wt%の低応力剤とであってよい。硬化剤としてはフェノキシ樹脂化合物が用いられてよい。無機フィラーとしてはシリカが用いられてよい。触媒としては有機リンまたはホウ素塩が用いられてよい。低応力剤としてはシリコーンが用いられてよい。接着層70は、蓋体80の曲げ弾性率よりも小さな曲げ弾性率を有していてよい。
【0050】
以上により、図1および図2に示されているように、蓋体80がキャビティCVを封止する構成が得られる。言い換えれば、電子装置90(図1および図2)が得られる。なお、電子装置90の放熱板10の底面H2(図2)は、支持部材(図示せず)に取り付けられることになる。支持部材は、例えば、実装ボードまたは放熱部材である。放熱板10は、支持部材への取り付けのための固定具(例えば、ねじ)が通る貫通部(図示せず)を有していてよい。
【0051】
本実施の形態によれば、表面粗さに関して、下記の関係式
Ra1H×10 ≧ Ra2H
が満たされている。これにより、パッケージ50の製造における枠体20と放熱板10との接合工程において、加熱によって枠体20と放熱板10との間で接合材21が液相化された際に、放熱板10の側面H3が、放熱板10の支持面H1に比して、接合材21の液体に対して過度に濡れやすいことが避けられる。よって、接合材21の液体が枠体20と放熱板10の支持面H1との間から放熱板10の側面H3へと流れ出す量が抑えられる。よって、枠体20と放熱板10の支持面H1との間に接合材21のボイドが形成されにくい。よって、枠体20と放熱板10の支持面H1との間の接合の信頼性を高めることができる。具体的には、第1に、枠体20と放熱板10の支持面H1との間の接合強度を高めることができる。第2に、枠体20と放熱板10の支持面H1との間での気体のリークを防止することができる。リークの防止は、電子部品8を封止することを目的とするパッケージ50にとって重要である。
【0052】
接合材21は銀ろう材であってよい。この場合、枠体20と放熱板10の支持面H1との間のろう付け接合の信頼性を高めることができる。
【0053】
表面粗さに関して、下記の関係式
Ra2T > Ra2H
が満たされていることが好ましい。この場合、本発明者の検討によれば、接合材21の液体の厚み方向における流れが抑制される。これにより、枠体20と放熱板10の支持面H1との間において、接合材21のボイドを、より形成されにくくすることができる。
【0054】
放熱板10は積層構造を有している。よって、枠体20と、積層構造を有する放熱板10の支持面H1と、の間において、接合材21のボイドを形成されにくくすることができる。
【0055】
表面粗さRa2Hは2μm以下であることが好ましい。この場合、枠体20と放熱板10の支持面H1との間において、接合材21のボイドを、より確実に、形成されにくくすることができる。
【0056】
表面粗さに関して、下記の関係式
Ra1H > Ra2H
が満たされていることが好ましい。この場合、パッケージ50の製造における枠体20と放熱板10との接合工程において、表面粗さの観点で、放熱板10の側面H3が、放熱板10の支持面H1に比して、接合材21の液体に対して濡れにくい。これにより、接合材21の液体が枠体20と放熱板10の支持面H1との間から放熱板10の側面H3へと流れ出す量を、より抑えることができる。
【0057】
<実施の形態2>
図5は、実施の形態2に係るパッケージ50Aの構成を示す概略断面図である。パッケージ50A(図5)は、パッケージ50(図3:実施の形態1)における放熱板10が放熱板10Aに置換された構成を有している。放熱板10Aは、非積層材料からなり、例えば、CuまたはCu系合金からなる。
【0058】
なお、パッケージ50の場合と同様、パッケージ50Aの表面のうち、金属からなる部分の上には、めっき被膜(図示せず)が、接合材21を用いた接合工程の後に形成されていてよい。
【0059】
本実施の形態によれば、枠体20と、非積層材料からなる放熱板10の支持面H1と、の間において、接合材21のボイドを形成されにくくすることができる。
【0060】
<実施の形態3>
図6は、実施の形態3に係るパッケージ50Bの構成を示す概略断面図である。パッケージ50Bは、パッケージ50(図3:実施の形態1)における放熱板10が放熱板10Bに置換された構成を有している。放熱板10Bは、実施の形態1において説明された放熱板10と、その表面に設けられためっき膜18と、を有している。めっき膜18は、放熱板10Bの支持面H1および側面H3にわたって延在している。言い換えれば、放熱板10Bの支持面H1および側面H3は、めっき膜18からなる。パッケージ50Bの製造において、めっき膜18は、接合材21を用いた接合工程の前に形成される。よって本実施の形態2においては、実施の形態1とは異なり、接合材21と放熱板10とは、めっき膜18を介して間接的に接合される。めっき膜18は、例えば、Niめっき膜である。
【0061】
なお、パッケージ50の場合と同様、パッケージ50Bの表面のうち、金属からなる部分の上には、めっき被膜(図示せず)が、接合材21を用いた接合工程の後に形成されていてよい。
【0062】
本実施の形態によれば、枠体20と、めっき膜18を有する放熱板10Bの支持面H1と、の間において、接合材21のボイドを形成されにくくすることができる。
【0063】
<実施の形態4>
図7は、実施の形態4に係るパッケージ50Cの構成を示す概略断面図である。パッケージ50C(図7)は、パッケージ50B(図6:実施の形態3)における放熱板10が放熱板10Aに置換された構成を有している。
【0064】
なお、パッケージ50の場合と同様、パッケージ50Cの表面のうち、金属からなる部分の上には、めっき被膜(図示せず)が、接合材21を用いた接合工程の後に形成されていてよい。
【0065】
<検討>
図3に示されたパッケージ50の構成として、比較例の試料Aと、実施の形態1の実施例としての試料B~Dとが形成された。試料A~Dに共通して、接合材21および接合材22としては、銀ろう材が用いられた。試料Aの形成においては、接合材21によって接合されることになる放熱板10として、クラッド材10P(図4)からワイヤーソーによって切り出された板が用いられた。よって試料Aの放熱板10の側面H3は、ワイヤーソーによる切断面そのままであった。一方、試料B~Dの形成においては、接合材21によって接合されることになる放熱板10は、上記のようにクラッド材からワイヤーソーによって切り出された板の側面H3をグラインダーによって研磨することによって準備された。
【0066】
試料Aは、図3に示されたパッケージ50の構成を有しているものの、実施の形態1とは異なり、表面粗さに関して、下記の関係式
Ra1H×10 ≧ Ra2H
が満たされていなかった。また、試料Aの放熱板10の側面H3の微細な表面形状を観察したところ、細かな凹凸が2次元的にランダムに形成されていた。言い換えれば、試料Aの放熱板10の側面H3に関しては、厚み方向に沿った表面プロファイルと、水平方向に沿った表面プロファイルとで、特段の差異が観察されなかった。また、試料Aの放熱板10の側面H3の光学顕微鏡写真には、実施の形態1において説明したような筋模様は観察されなかった。
【0067】
一方、試料Aと異なり、試料B~Dは、詳しくは後述するように、表面粗さについての上記の関係式を満たしていた。また、試料B~Dの放熱板10の側面H3の微細な表面形状を観察したところ、厚み方向に沿った表面プロファイルと、水平方向に沿った表面プロファイルとで、差異が観察された。また、試料B~Dの放熱板10の側面H3の光学顕微鏡写真には、前述したような筋模様が観察された。図10は、試料Dの筋模様を示す顕微鏡写真である。
【0068】
上記の試料A~Dの各々の形成において、加熱によって枠体20と放熱板10との間で接合材21(ろう材)が液相化された際に、それによって形成された液体の一部が、枠体20と放熱板10の支持面H1との間から放熱板10の側面H3へと流れ出した。この流出によって厚み方向において接合材21(ろう材)が側面H3上を進行した寸法割合が、光学顕微鏡を用いて観察された。
【0069】
図8は、試料Aにおける放熱板10の側面H3上での接合材21(ろう材)の流れを示す顕微鏡写真である。また図9は、試料Dにおける放熱板10の側面H3上での接合材21(ろう材)の流れを示す顕微鏡写真である。図中の矢印は、厚み方向において、放熱板10の支持面H1(図中の上面)から底面H2(図中の下面)の方に向かって側面H3(図中に示された面)上をろう材が進行した範囲を示す。
【0070】
以上の検討結果を、下記の表1にまとめる。
【0071】
【表1】
【0072】
上記の表1における「ろう材の流れ」は、放熱板10の厚みに対して、ろう材が進行した範囲が占める割合を示している。また上記の表1における「表面粗さ」は、単位μmにおける小数点以下第2位で四捨五入された値を示している。
【0073】
試料Bにおいては、表面粗さに関して、Ra1HおよびRa2Hの間で、
Ra1H×10 = Ra2H
が満たされていた。試料Bでは、試料Aに比して、ろう材の流れが、おおよそ1/2に低減された。
【0074】
試料Cにおいては、表面粗さに関して、Ra1HおよびRa2Hの間で、
Ra1H×5 = Ra2H
が満たされていた。試料Cでは、試料Aに比して、ろう材の流れが、おおよそ1/4に低減された。
【0075】
試料Dにおいては、表面粗さに関して、Ra1HおよびRa2Hの間で、
Ra1H > Ra2H
が満たされていた。試料Dでは、試料Aに比して、ろう材の流れが、顕著に低減された。
【0076】
また試料Dの表面粗さRa2HおよびRa2Tを、単位μmにおける小数点以下第3位で四捨五入して示すと、
Ra2H = 0.05 [μm]
Ra2T = 0.08 [μm]
であった。よって、単位μmにおける小数点以下第3位で四捨五入されて比較された場合において、Ra2HおよびRa2Tの間で、
Ra2T > Ra2H
が満たされていた。
【符号の説明】
【0077】
10,10A~10C:放熱板
11a :金属層(第2の層)
11b :金属層
12a :金属層(第1の層)
12b,12c :金属層
18 :めっき膜
20 :枠体
21 :接合材
50,50A~50C:パッケージ
CV :キャビティ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10