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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023090135
(43)【公開日】2023-06-29
(54)【発明の名称】画像形成装置
(51)【国際特許分類】
   G03G 15/01 20060101AFI20230622BHJP
   G03G 21/00 20060101ALI20230622BHJP
   G03G 15/16 20060101ALI20230622BHJP
   G03G 21/14 20060101ALI20230622BHJP
【FI】
G03G15/01 114A
G03G21/00 370
G03G15/16
G03G21/14
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021204933
(22)【出願日】2021-12-17
(71)【出願人】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(74)【代理人】
【識別番号】100098626
【弁理士】
【氏名又は名称】黒田 壽
(72)【発明者】
【氏名】本田 祐樹
【テーマコード(参考)】
2H200
2H270
2H300
【Fターム(参考)】
2H200FA16
2H200FA20
2H200GA12
2H200GA23
2H200GA30
2H200HA02
2H200HB12
2H200HB22
2H200JA02
2H200JB13
2H200JB22
2H200JB32
2H200JC04
2H200JC19
2H200JC20
2H200KA03
2H200KA12
2H200PA10
2H200PA11
2H200PA22
2H200PB14
2H270KA04
2H270KA32
2H270LA18
2H270LA32
2H270LA36
2H270LD03
2H270MC39
2H270MD02
2H270MD05
2H270MD29
2H270ZC03
2H270ZC04
2H300EB05
2H300EB07
2H300EB12
2H300EB27
2H300EC02
2H300EC05
2H300EC16
2H300EF03
2H300EF17
2H300EG02
2H300EH15
2H300EH22
2H300EJ01
2H300EJ09
2H300FF05
2H300GG27
2H300QQ10
2H300QQ12
2H300QQ28
2H300RR38
2H300TT03
2H300TT04
(57)【要約】
【課題】複数の像担持体の表面移動速度に対する被転写材の表面移動速度の速度比を変更しても、複数の像担持体の各画像間における被転写材上の画像位置ずれ(色ずれ)を抑制する。
【解決手段】表面移動する複数の像担持体5,6,7,8に形成された各画像を被転写材(例えば中間転写ベルト21)上で互いに重なり合うように転写する画像形成装置であって、前記複数の像担持体の表面移動速度に対する前記被転写材の表面移動速度の速度比を基準速度比から変更する速度比変更手段と、前記速度比を前記基準速度比から変更することによって生じる前記複数の像担持体の各画像間における前記被転写材上での画像位置ずれが小さくなるように、該複数の像担持体のうちの少なくとも1つの像担持体の画像の前記被転写材への転写開始タイミングを、前記基準速度比のときのものから変更する転写タイミング変更手段(例えば制御部100)とを有する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面移動する複数の像担持体に形成された各画像を被転写材上で互いに重なり合うように転写する画像形成装置であって、
前記複数の像担持体の表面移動速度に対する前記被転写材の表面移動速度の速度比を基準速度比から変更する速度比変更手段と、
前記速度比を前記基準速度比から変更することによって生じる前記複数の像担持体の各画像間における前記被転写材上での画像位置ずれが小さくなるように、該複数の像担持体のうちの少なくとも1つの像担持体の画像の前記被転写材への転写開始タイミングを、前記基準速度比のときのものから変更する転写タイミング変更手段とを有することを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
請求項1に記載の画像形成装置において、
前記速度比変更手段は、前記被転写材上に転写された画像の表面移動方向における伸び縮み量が少なくなるように、前記速度比を変更することを特徴とする画像形成装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の画像形成装置において、
前記転写タイミング変更手段は、前記少なくとも1つの像担持体上への画像形成開始タイミングを変更することにより、該画像の前記被転写材への転写開始タイミングを変更することを特徴とする画像形成装置。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか1項に記載の画像形成装置において、
前記転写タイミング変更手段は、前記速度比が前記基準速度比である場合、前記複数の像担持体の各画像間における前記被転写材上での画像位置を互いに一致させるための基準位置合わせパラメータを用いて、前記少なくとも1つの像担持体の画像の前記被転写材への転写開始タイミングを決定し、前記速度比変更手段が前記速度比を前記基準速度比から変更する場合、変更後における該被転写材の表面移動速度に対応する調整パラメータを用いて、前記少なくとも1つの像担持体の画像の前記被転写材への転写開始タイミングを決定することを特徴とする画像形成装置。
【請求項5】
請求項4に記載の画像形成装置において、
前記基準位置合わせパラメータは、前記少なくとも1つの像担持体の画像の前記被転写材への転写開始タイミングを決定するタイミング決定パラメータに加算される加算値であり、
前記調整パラメータは、前記基準位置合わせパラメータに乗算される補正係数であることを特徴とする画像形成装置。
【請求項6】
請求項4又は5に記載の画像形成装置において、
前記転写タイミング変更手段は、前記速度比変更手段が前記速度比を前記基準速度比から変更する場合、前記少なくとも1つの像担持体のうち、画像形成に使用する像担持体については前記転写開始タイミングを決定し、画像形成に使用しない像担持体については前記転写開始タイミングを決定しないことを特徴とする画像形成装置。
【請求項7】
請求項1乃至6のいずれか1項に記載の画像形成装置において、
前記少なくとも1つの像担持体は、前記複数の像担持体のうち、基準となる1つの像担持体を除くすべての像担持体であることを特徴とする画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像形成装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、表面移動する複数の像担持体に形成された各画像を被転写材上で互いに重なり合うように転写する画像形成装置が知られている。
【0003】
例えば、特許文献1には、4つの感光体(像担持体)上に形成された各画像を中間転写体(被転写材)上に互いに重なり合うように一次転写した後、シート(記録材)上に二次転写して画像形成を行う画像形成装置が開示されている。この画像形成装置は、4つの感光体及び中間転写体の回転速度を変更することで、複数の画像形成速度での画像形成が可能である。この画像形成装置は、第一の画像形成速度で動作する場合には、この動作に対応する所定の書き出しタイミングに基づいて各感光体への画像形成を行う。一方、この画像形成装置は、第二の画像形成速度で動作する場合には、当該書き出しタイミングを、前記第二の画像形成速度に対する前記第一の画像形成速度の速度比を用いて補正する。この補正した書き出しタイミングで画像形成を行うことにより、第二の画像形成速度で動作する場合でも、4つの感光体の各画像間における中間転写体又は用紙上での画像位置ずれ(色ずれ)が防止される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、従来、複数の像担持体の表面移動速度に対する被転写材の表面移動速度の速度比を変更する場合があり、この場合に発生する色ずれ(複数の像担持体の各画像間における被転写材上での画像位置ずれ)を抑制することができないという課題があった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この課題を解決するために、本発明は、表面移動する複数の像担持体に形成された各画像を被転写材上で互いに重なり合うように転写する画像形成装置であって、前記複数の像担持体の表面移動速度に対する前記被転写材の表面移動速度の速度比を基準速度比から変更する速度比変更手段と、前記速度比を前記基準速度比から変更することによって生じる前記複数の像担持体の各画像間における前記被転写材上での画像位置ずれが小さくなるように、該複数の像担持体のうちの少なくとも1つの像担持体の画像の前記被転写材への転写開始タイミングを、前記基準速度比のときのものから変更する転写タイミング変更手段とを有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、複数の像担持体の表面移動速度に対する被転写材の表面移動速度の速度比を変更しても、複数の像担持体の各画像間における被転写材上の画像位置ずれ(色ずれ)を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】実施形態に係るプリンタの主要部を示す概略構成図。
図2】感光体の表面移動速度に対する中間転写ベルトの表面移動速度の速度比が変更されて、感光体の各画像間における中間転写ベルト上の画像位置ずれ(色ずれ)が発生した様子を示す説明図。
図3】同速度比を変更する前と後における、中間転写ベルト上における感光体の各主走査1ラインの画像位置を示す説明図。
図4】(a)は、中間転写ベルトの表面移動速度の変更後(前記速度比の変更後)において、補正前における各感光体の書込開始タイミングを示すタイミングチャート。(b)は、中間転写ベルトの表面移動速度の変更後(前記速度比の変更後)において、補正後における各感光体の書込開始タイミングを示すタイミングチャート。
図5】実施形態における感光体の書込開始タイミングの補正処理の流れを示すフローチャート。
図6】中間転写ベルトを基準速度で表面移動させた状態で中間転写ベルト上に形成された各色の色合わせ修正パターンの一例を示す説明図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明を、画像形成装置としてのプリンタに適用した一実施形態について説明する。
なお、本実施形態に係るプリンタ50は、被転写材としての中間転写体である中間転写ベルトの表面移動方向に沿って像担持体である4つの感光体が配置された、いわゆるタンデム型の中間転写方式の画像形成装置であるが、本発明はこれに限られない。例えば、複数の感光体(像担持体)上に形成した画像を、記録紙等の記録材(被転写材)上に互いに重なり合うように直接転写して画像を形成する直接転写方式の画像形成装置であってもよい。
【0009】
図1は、本実施形態に係るプリンタ50の主要部を示す概略構成図である。
このプリンタ50は、4つの感光体5,6,7,8の表面上にそれぞれ形成される4色(Y、M、C、K)の単色画像(単色トナー像)を中間転写ベルト21の表面上で互いに重ね合わせることで1ページの画像を形成するものである。4つの感光体5,6,7,8の表面上には、潜像形成手段としての光書込ユニット1,2,3,4によりそれぞれ静電潜像が形成される。形成された静電潜像は、図中矢印Bの方向に回転駆動する感光体の回転に伴って現像手段としての現像装置9,10,11,12と対向する現像領域へ搬送される。各感光体5,6,7,8上の静電潜像には、それぞれの現像装置9,10,11,12により各色のトナーが供給され、各静電潜像はトナー像化される。
【0010】
4つの感光体5,6,7,8は、複数の支持ローラに張架されている中間転写ベルト21のベルト平坦部に接触した状態で、その表面移動方向(図中矢印Aの方向)に沿って並んで配置されている。各感光体と接触する部分の中間転写ベルト裏面側には、一次転写ローラ13,14,15,16が対向している。各一次転写ローラ13,14,15,16には各感光体5,6,7,8上のトナー像を中間転写ベルト21の表面上に一次転写するための一次転写高圧電源17,18,19,20が接続されている。各感光体5,6,7,8の表面上に形成された各色トナー像は、各一次転写ローラ13,14,15,16により中間転写ベルト21の表面上で互いに重なり合うように、中間転写ベルト21の表面上に一次転写される。
【0011】
中間転写ベルト21の表面上に一次転写されたトナー像は、中間転写ベルト21の表面移動に伴って二次転写領域へと搬送される。二次転写領域には、中間転写ベルト21の裏面側に支持ローラである二次転写対向ローラ22が設けられ、中間転写ベルト21の表面側には転写部材としての二次転写ローラ23が設けられている。二次転写ローラ23は、駆動モータ23aにより回転駆動する。
【0012】
二次転写ローラ23は、中間転写ベルト21の表面に対して接離可能に構成されている。画像形成工程時には、図1に示すように、中間転写ベルト21と二次転写ローラ23とが当接状態となり、図中矢印Cで示すように二次転写領域へと搬送されてくる用紙25は、中間転写ベルト21と二次転写ローラ23とに挟まれた状態で二次転写領域を通過する。この際、中間転写ベルト21の表面上に形成されているトナー像は、二次転写高圧電源24により二次転写バイアスが印加された二次転写ローラ23により、その二次転写ローラ23の表面移動により搬送される用紙25上に二次転写される。用紙25上に転写されたトナー像は、定着装置において用紙上に定着され、その後、記録材としての用紙25は機外に排出される。
【0013】
本実施形態においては、例えば、中間転写ベルト21を駆動する駆動ローラ27が摩耗等の経時変化や温度などの環境変化によってローラ径に変化を生じる場合がある。このような場合、中間転写ベルト21の表面移動速度が本来の表面移動速度から変化してしまい、4つの感光体5,6,7,8の表面移動速度に対する中間転写ベルト21の表面移動速度の速度比が変化する。その結果、各感光体5,6,7,8と中間転写ベルト21との各一次転写領域において、感光体表面移動速度と中間転写ベルト表面移動速度との間の速度差が変わり、中間転写ベルト21上の各画像に伸び縮み(副走査倍率誤差)が生じる。
【0014】
具体的には、例えば、温度上昇に伴って駆動ローラ27のローラ経が大きくなると、中間転写ベルト21の表面移動速度が増加する。そのため、感光体5,6,7,8上の各画像の移動速度に対して中間転写ベルト21の表面移動速度が相対的に速くなり、各画像が副走査方向に縮んだ状態で中間転写ベルト21上に形成される。
【0015】
このような中間転写ベルト21上の各画像の伸び縮み(副走査倍率誤差)は、各画像間で一致しているため、各感光体5,6,7,8の表面移動速度に対する中間転写ベルト21の表面移動速度の速度比を変更すれば、当該副走査倍率誤差を抑制できる。この速度比の変更は、例えば、中間転写ベルト21の駆動ローラ27を駆動する駆動モータ27aの回転数を変更するなどして、中間転写ベルト21の表面移動速度を変更する。
【0016】
また、例えば、二次転写ローラ23が摩耗等の経時変化や温度などの環境変化によってローラ径に変化を生じる場合がある。このような場合、二次転写ローラ23によって搬送される用紙25の搬送速度(用紙25の表面移動速度)が本来の搬送速度から変化してしまい、中間転写ベルト21の表面移動速度に対する用紙25の表面移動速度の速度比が変化する。その結果、中間転写ベルト21と二次転写ローラ23との二次転写領域において、中間転写ベルト表面移動速度と用紙表面移動速度との間の速度差が変わり、用紙25上の画像に伸び縮み(副走査倍率誤差)が生じる。
【0017】
このような用紙25上の画像の伸び縮み(副走査倍率誤差)は、例えば、中間転写ベルト21の駆動ローラ27を駆動する駆動モータ27aの回転数を変更するなどして、中間転写ベルト21の表面移動速度を変更することで、抑制することができる。すなわち、中間転写ベルト21の表面移動速度を変更することで、用紙25の表面移動速度に対する中間転写ベルト21の表面移動速度の速度比が変化し、用紙25上の画像の伸び縮み(副走査倍率誤差)が抑制される。ただし、この場合、感光体5,6,7,8の表面移動速度に対する中間転写ベルト21の表面移動速度の速度比が変更されることになる。
【0018】
ここで、上述したように、感光体5,6,7,8の表面移動速度に対する中間転写ベルト21の表面移動速度の速度比が変更されると、感光体5,6,7,8の各画像間における中間転写ベルト21上の画像位置ずれ(色ずれ)が発生してしまう。なお、以下の説明では、前記速度比の変更は、感光体5,6,7,8の表面移動速度を変更しないまま中間転写ベルト21の表面移動速度を変更することにより行うものとする。
【0019】
図2は、感光体5,6,7,8の表面移動速度に対する中間転写ベルト21の表面移動速度の速度比が変更されて、感光体5,6,7,8の各画像間における中間転写ベルト21上の画像位置ずれ(色ずれ)が発生した様子を示す説明図である。
図3は、前記速度比を変更する前と後における、中間転写ベルト21上における感光体5,6,7,8の各主走査1ラインの画像位置(互いに重なるように形成される各画像の位置。例えば各画像の先端位置)を示す説明図である。
【0020】
中間転写ベルト21の表面移動速度の変更前(前記速度比の変更前)、すなわち、中間転写ベルト21の表面移動速度が基準速度である場合であれば、図3の下側に図示された中間転写ベルト21に示すように、色ずれは発生しない。しかしながら、例えば、中間転写ベルト21の表面移動速度が大きくなるように変更された場合(前記速度比が大きくなるように変更された場合)、図3の上側に図示された中間転写ベルト21に示すように、色ずれが発生する。これは、下流側の感光体6,7,8の転写位置Pm,Pc,Pkに対し、当該感光体6,7,8上の画像先端Tm,Tc,Tkよりも、上流側の感光体5,6,7から転写された中間転写ベルト21上の画像先端Ty,Tm,Tcの方が先に到達するためである。
【0021】
そこで、本実施形態では、中間転写ベルト21の表面移動速度の変更(前記速度比の変更)によって生じる色ずれの量が小さくなるように、少なくとも1つの感光体の画像の中間転写ベルト21への転写開始タイミングを変更(補正)する。具体的には、例えば、印刷開始タイミングに対する、各感光体5,6,7,8への光書込ユニット1,2,3,4による静電潜像の書込開始タイミング(画像形成開始タイミング)を(補正)する。
【0022】
図4(a)及び(b)は、中間転写ベルト21の表面移動速度の変更後(前記速度比の変更後)において、各感光体5,6,7,8の書込開始タイミングを補正する前と後におけるタイミングチャートである。
なお、図4(a)は、書込開始タイミングの補正前のタイミングチャートであり、図4(b)は、書込開始タイミングの補正後のタイミングチャートである。
【0023】
図4(a)に示すタイミングチャートは、中間転写ベルト21の表面移動速度の変更前(前記速度比の変更前)、すなわち、中間転写ベルト21の表面移動速度が基準速度である場合(前記速度比が基準速度比である場合)のものである。すなわち、このタイミングチャートでは、中間転写ベルト21の表面移動速度が基準速度である場合に色ずれが発生しようように、印刷開始タイミングに対する各感光体5,6,7,8への書込開始タイミングが決定されている。
【0024】
このとき、中間転写ベルト21の表面移動速度が基準速度から変更された場合、図4(a)のタイミングチャートに従った書込開始タイミングで各感光体5,6,7,8の潜像書き込み(画像形成)を開始すると、上述のとおり、色ずれが発生する。そこで、本実施形態では、この変更によって生じる感光体5,6,7,8の各画像間における中間転写ベルト21上での画像位置ずれ(色ずれ)が小さくなるように、感光体5,6,7,8への書込開始タイミングを変更(補正)する。
【0025】
例えば、中間転写ベルト21の表面移動速度が大きくなるように(前記速度比が大きくなるように)変更された場合、印刷開始タイミングに対する各感光体5,6,7,8への書込開始タイミングを、図4(b)のタイミングチャートのものに変更(補正)する。これにより、感光体5,6,7,8の各画像の中間転写ベルト21への転写開始タイミングがそれぞれ早まり、感光体5,6,7,8の各画像間における中間転写ベルト21上での画像位置ずれ(色ずれ)が小さくなる又はなくなる。
【0026】
本実施形態において、各感光体5,6,7,8への書込開始タイミングは、印刷開始タイミング信号を基準に決定される。詳しくは、印刷開始タイミング信号を基準にして、K色の感光体8への書込開始タイミングを決定し、そして、決定されたK色の感光体8への書込開始タイミングを基準にして、他の各感光体5,6,7への書込開始タイミングを決定する。他の各感光体5,6,7への書込開始タイミングは、K色の感光体8と他の各感光体5,6,7との感光体間距離(両感光体の一次転写位置間の距離)Lky,Lkm,Lkcとプロセス速度(感光体の表面移動速度)とから、求められる。
【0027】
そして、中間転写ベルト21の表面移動速度が基準速度から変更される場合、上述した各感光体5,6,7,8の書込開始タイミング(補正前の書込開始タイミング)に対し、変更後の速度に応じた補正係数を乗算して、各感光体の書込開始タイミングを補正する。すなわち、以下の式(1)に従い、各感光体5,6,7,8の書込開始タイミングをそれぞれ補正する。
補正後の書込開始タイミング=補正前の書込開始タイミング×補正係数 ・・・(1)
【0028】
なお、前記補正係数(調整パラメータ)は、例えば、以下の式(2)のように、中間転写ベルト21の変更前の表面移動速度(基準速度)と変更後の表面移動速度(変更後速度)との比率から求められる。
補正係数 = 1 ÷ (変更後速度 ÷ 基準速度) ・・・(2)
【0029】
図5は、本実施形態における各感光体5,6,7,8の書込開始タイミングの補正処理の流れを示すフローチャートである。
画像形成指示(印刷ジョブ)が入力されると、制御部100は、所定の表面移動速度で感光体5,6,7,8を駆動させるとともに、中間転写ベルト21が基準速度で表面移動するように駆動モータ27aを制御し、画像形成動作を開始する(S1)。このときの各感光体5,6,7,8の書込開始タイミングは、制御部100の記憶部に記憶されている基準書込開始タイミングの値(タイミング決定パラメータ)を用いて行われる。
【0030】
この基準書込開始タイミングの値は、初期時においては、色ずれが発生しないように理想的な設計値から算出された値であるが、経時的には、直近に行われた後述の基準書込開始タイミング修正処理によって修正された書込開始タイミングの値である。
【0031】
基準書込開始タイミング修正処理を実行する条件が満たされると、制御部100は、中間転写ベルト21を基準速度で表面移動させた状態で、基準書込開始タイミング修正処理を実行する。基準書込開始タイミング修正処理では、まず、基準書込開始タイミング修正用のパターン画像(以下「色合わせ修正パターン」という。)を中間転写ベルト21上に形成する(S2)。そして、中間転写ベルト21上に形成された色合わせ修正パターンを、検知手段としてのパターン検知センサ26によって検知する(S3)。
【0032】
図6は、中間転写ベルト21を基準速度で表面移動させた状態で、中間転写ベルト21上に形成された各色の色合わせ修正パターンTPy,TPm,TPc,TPkの一例を示す説明図である。
基準となるK色の色合わせ修正パターンTPkについては、所定の基準書込開始タイミング(固定のタイミング)で書き込まれて形成される。一方、他の色の色合わせ修正パターンTPy,TPm,TPcは、制御部100の記憶部に記憶されている基準書込開始タイミングの値に従い、中間転写ベルト21上で副走査方向に規定の間隔が開くように形成される。
【0033】
基準となるK色の感光体8の色合わせ修正パターンTPkに対する他色の感光体5,6,7の色合わせ修正パターンTPy,TPm,TPcの中間転写ベルト21への転写開始タイミング(中間転写ベルト21上の副走査方向位置)は、経時的に変化し得る。例えば、各感光体5,6,7,8の取付位置誤差(感光体間距離の誤差)や、温度変化や摩耗等による部品寸法変化による誤差などが発生し、これにより当該転写開始タイミングが変化し得る。上述した基準書込開始タイミング修正処理は、このような経時的な変化を修正するために行われるものである。
【0034】
制御部100は、中間転写ベルト21上に形成された色合わせ修正パターンTPy,TPm,TPc,TPkのパターン検知センサ26による検知結果に基づいて、K色以外の感光体5,6,7の基準書込開始タイミングの値を修正する(S4)。具体的には、制御部100は、K色の感光体8の色合わせ修正パターンTPkと当該感光体5,6,7の色合わせ修正パターンTPy,TPm,TPcとの間隔をそれぞれ規定の間隔にすることのできるパターン修正値(基準位置合わせパラメータ)を算出する。そして、当該感光体5,6,7の基準書込開始タイミングの値に、それぞれのパターン修正値を加算して、K色以外の感光体5,6,7の基準書込開始タイミングの値の修正を行う。その結果、感光体間距離の誤差や温度変化や摩耗等による部品寸法変化による誤差などの経時的変化によって色ずれが発生する状況になっても、基準書込開始タイミング修正処理の実行により、色ずれの発生が抑制される。
【0035】
ここで、制御部100は、所定の中間転写ベルト速度変更条件が満たされたとき、感光体5,6,7,8の表面移動速度を変更しないまま(プロセス速度を変更しないまま)、中間転写ベルト21の表面移動速度を変更する(S5のYes)。この所定の中間転写ベルト速度変更条件としては、形成される画像の副走査方向長さが、本来の画像よりも長くなる又は短くなるという副走査倍率誤差を修正する処理を実行する条件などが挙げられる。この場合、中間転写ベルト21の表面移動速度を副走査倍率誤差の大きさに応じた速度に変更することで、感光体5,6,7,8あるいは用紙25の表面移動速度に対する中間転写ベルト21の表面移動速度の速度比が変化し、画像の伸び縮みが修正される。
【0036】
ただし、このとき、感光体5,6,7,8の表面移動速度に対する中間転写ベルト21の表面移動速度の速度比が変更されるため、上述したように、感光体5,6,7,8の各画像間における中間転写ベルト21上の画像位置ずれ(色ずれ)が発生してしまう。この色ずれを抑制するため、本実施形態では、中間転写ベルト21の変更後の表面移動速度に応じて、上述したように、各感光体5,6,7,8の書込開始タイミングを補正するための補正係数を算出する(S6)。
【0037】
その後、制御部100は、算出した補正係数を用いて、基準書込開始タイミングを補正する(S7)。そして、制御部100は、所定の表面移動速度で感光体5,6,7,8を駆動させるとともに、中間転写ベルト21が変更後の速度で表面移動するように駆動モータ27aを制御し、画像形成動作を開始する(S8)。このときの各感光体5,6,7,8の書込開始タイミングには、処理ステップS7で補正した補正後の書込開始タイミングを用いる。
【0038】
本実施形態における補正後の書込開始タイミングは、基準となるK色については、以下の式(3-1)のとおりとなる。
補正後の書込開始タイミング(K色)=
K色の基準書込開始タイミング×補正係数 ・・・(3-1)
【0039】
また、他色における補正後の書込開始タイミングは、以下の式(3-2)~式(3-4)のとおりとなる。
補正後の書込開始タイミング(C色)=
(C色の基準書込開始タイミング+パターン修正値)×補正係数 ・・・(3-2)
補正後の書込開始タイミング(M色)=
(M色の基準書込開始タイミング+パターン修正値)×補正係数 ・・・(3-3)
補正後の書込開始タイミング(Y色)=
(Y色の基準書込開始タイミング+パターン修正値)×補正係数 ・・・(3-4)
【0040】
なお、本実施形態では、4つの感光体5,6,7,8のすべてについて補正係数による補正後の書込開始タイミングを算出しているが、画像形成に使用する感光体についてのみ補正後の書込開始タイミングを算出するようにしてもよい。この場合、制御部100における処理負荷を軽減することができる。
【0041】
以上に説明したものは一例であり、次の態様毎に特有の効果を奏する。
[第1態様]
第1態様は、表面移動する複数の像担持体(例えば感光体5,6,7,8)に形成された各画像を被転写材(例えば中間転写ベルト21)上で互いに重なり合うように転写する画像形成装置(例えばプリンタ50)であって、前記複数の像担持体の表面移動速度に対する前記被転写材の表面移動速度の速度比を基準速度比から変更する速度比変更手段(例えば、制御部100、駆動モータ27a)と、前記速度比を前記基準速度比から変更することによって生じる前記複数の像担持体の各画像間における前記被転写材上での画像位置ずれ(色ずれ)が小さくなるように、該複数の像担持体のうちの少なくとも1つの像担持体(例えば感光体5,6,7,8)の画像の前記被転写材への転写開始タイミングを、前記基準速度比のときのものから変更する転写タイミング変更手段(例えば制御部100、光書込ユニット1,2,3,4)とを有することを特徴とするものである。
従来、複数の像担持体の表面移動速度に対する被転写材の表面移動速度の速度比を基準速度比(変更前の速度比)から変更する場合がある。例えば、表面移動する複数の像担持体に形成された各画像を被転写材上で互いに重なり合うように転写する画像形成装置では、種々の要因によって、本来の画像よりも被転写材表面移動方向(副走査方向)に伸びた画像や縮んだ画像が形成されることがある。このような画像の伸び縮みを副走査倍率誤差と呼ぶ。このような副走査倍率誤差が発生する場合、複数の像担持体の表面移動速度に対する被転写材の表面移動速度の速度比を基準速度比から変更することで、各像担持体から被転写材への画像転写時に画像を伸縮させて、副走査倍率誤差を相殺することが可能である。
ところが、このように複数の像担持体の表面移動速度に対する被転写材の表面移動速度の速度比を基準速度比から変更すると、複数の像担持体の各画像間における被転写材上の画像位置ずれ(色ずれ)が発生してしまう。例えば、前記速度比を基準速度比(変更前の速度比)よりも大きくなるように変更すると、被転写材表面移動方向下流側の像担持体の転写位置に対し、当該像担持体上の画像先端が到達するよりも、被転写材表面移動方向上流側の像担持体から転写された被転写材上の画像先端の方が、先に到達する。そのため、複数の像担持体の各画像間における被転写材上の画像位置ずれ(色ずれ)が発生する。
そこで、本態様では、このような速度比の変更によって生じる複数の像担持体の各画像間における被転写材上での画像位置ずれが小さくなるように、当該複数の像担持体のうちの少なくとも1つの像担持体の画像の被転写材への転写開始タイミングを、前記基準速度比のときのものから変更する。これにより、複数の像担持体の表面移動速度に対する被転写材の表面移動速度の速度比を基準速度比から変更しても、複数の像担持体の各画像間における被転写材上の画像位置ずれ(色ずれ)を抑制することができる。
【0042】
[第2態様]
第2態様は、第1態様において、前記速度比変更手段は、前記被転写材上に転写された画像の表面移動方向における伸び縮み量(副走査倍率誤差)が少なくなるように、前記速度比を変更することを特徴とするものである。
本態様によれば、被転写材上に転写された画像の表面移動方向における伸び縮み量(副走査倍率誤差)を少なくするために前記速度比が変更されても、転写タイミング変更手段により転写開始タイミングが変更され、色ずれが抑制される。
【0043】
[第3態様]
第3態様は、第1又は第2態様において、前記転写タイミング変更手段は、前記少なくとも1つの像担持体上への画像形成開始タイミング(例えば書込開始タイミング)を変更することにより、該画像の前記被転写材への転写開始タイミングを変更することを特徴とするものである。
これによれば、簡易な構成によって転写開始タイミングの変更を実現することができる。
【0044】
[第4態様]
第4態様は、第1乃至第3態様のいずれかにおいて、前記転写タイミング変更手段は、前記速度比が基準速度比である場合、前記複数の像担持体の各画像間における前記被転写材上での画像位置を互いに一致させるための基準位置合わせパラメータ(例えば基準書込開始タイミング)を用いて、前記少なくとも1つの像担持体の画像の前記被転写材への転写開始タイミングを決定し、前記速度比変更手段が前記速度比を前記基準速度比から変更する場合、変更後における該被転写材の表面移動速度に対応する調整パラメータ(例えば補正係数)を用いて、前記少なくとも1つの像担持体の画像の前記被転写材への転写開始タイミングを決定することを特徴とするものである。
これによれば、簡易な制御によって転写開始タイミングの変更を実現することができる。
【0045】
[第5態様]
第5態様は、第4態様において、前記基準位置合わせパラメータは、前記少なくとも1つの像担持体の画像の前記被転写材への転写開始タイミングを決定するタイミング決定パラメータ(修正前の基準書込開始タイミング)に加算される加算値(例えばパターン修正値)であり、前記調整パラメータは、前記基準位置合わせパラメータに乗算される補正係数であることを特徴とするものである。
これによれば、より簡易な制御によって転写開始タイミングの変更を実現することができる。
【0046】
[第6態様]
第6態様は、第4又は第5態様において、前記転写タイミング変更手段は、前記速度比変更手段が前記速度比を前記基準速度比から変更する場合、前記少なくとも1つの像担持体のうち、画像形成に使用する像担持体については前記転写開始タイミングを決定し、画像形成に使用しない像担持体については前記転写開始タイミングを決定しないことを特徴とするものである。
これによれば、不必要な像担持体についての転写開始タイミングの決定を行わないことで、転写タイミング変更手段が行う処理の負荷を軽減することができる。
【0047】
[第7態様]
第7態様は、第1乃至第6態様のいずれかにおいて、前記少なくとも1つの像担持体は、前記複数の像担持体のうち、基準となる1つの像担持体(例えばK色の感光体8)を除くすべての像担持体(例えばK色以外の感光体5,6,7)であることを特徴とするものである。
これによれば、より簡易な制御によって転写開始タイミングの変更を実現することができる。
【符号の説明】
【0048】
1~4 :光書込ユニット
5~8 :感光体
9~12:現像装置
13~16:一次転写ローラ
17~20:一次転写高圧電源
21 :中間転写ベルト
22 :二次転写対向ローラ
23 :二次転写ローラ
23a :駆動モータ
24 :二次転写高圧電源
25 :用紙
26 :パターン検知センサ
27 :駆動ローラ
27a :駆動モータ
50 :プリンタ
100 :制御部
TPy,TPm,TPc,TPk:色合わせ修正パターン
【先行技術文献】
【特許文献】
【0049】
【特許文献1】特開2017-203938号公報
図1
図2
図3
図4
図5
図6