(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023090154
(43)【公開日】2023-06-29
(54)【発明の名称】シリコンウェーハ表面の結晶欠陥検出方法
(51)【国際特許分類】
H01L 21/66 20060101AFI20230622BHJP
C30B 29/06 20060101ALI20230622BHJP
C30B 15/00 20060101ALI20230622BHJP
【FI】
H01L21/66 L
C30B29/06 502Z
C30B15/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021204960
(22)【出願日】2021-12-17
(71)【出願人】
【識別番号】312007423
【氏名又は名称】グローバルウェーハズ・ジャパン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100101878
【弁理士】
【氏名又は名称】木下 茂
(74)【代理人】
【識別番号】100187506
【弁理士】
【氏名又は名称】澤田 優子
(72)【発明者】
【氏名】須藤 治生
(72)【発明者】
【氏名】早川 兼
【テーマコード(参考)】
4G077
4M106
【Fターム(参考)】
4G077AA02
4G077AB01
4G077BB03
4G077EH05
4G077GA06
4G077HA12
4M106AA01
4M106BA05
4M106CB19
4M106DH12
4M106DH32
4M106DH56
4M106DH57
(57)【要約】
【課題】数十nmサイズの微小欠陥を非破壊かつ高精度に検出することができ、半導体デバイス用シリコンウェーハの検査に好適なシリコンウェーハ表面の結晶欠陥検出方法を提供する。
【解決手段】シリコンウェーハ表面の結晶欠陥を検出する方法であって、チョクラルスキー法により空孔優勢型の条件で形成されたシリコン単結晶を育成するステップと、前記シリコン単結晶をスライスしてシリコンウェーハWを得るステップと、前記シリコンウェーハに対し、酸素含有雰囲気下で、1250℃以上1375℃以下の温度で熱処理を行い、ウェーハ表面に3nm以上40nm以下の酸化膜を形成するステップと、前記ウェーハ表面を、レーザ光散乱パーティクルカウンタで検査するステップと、を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリコンウェーハ表面の結晶欠陥を検出する方法であって、
チョクラルスキー法により空孔優勢型の条件で形成されたシリコン単結晶を育成するステップと、
前記シリコン単結晶をスライスしてシリコンウェーハを得るステップと、
前記シリコンウェーハに対し、酸素含有雰囲気下で、1250℃以上1375℃以下の温度で熱処理を行い、ウェーハ表面に3nm以上40nm以下の酸化膜を形成するステップと、
前記ウェーハ表面を、レーザ光散乱パーティクルカウンタで検査するステップと、
を備えることを特徴とするシリコンウェーハ表面の結晶欠陥検出方法。
【請求項2】
前記チョクラルスキー法により空孔優勢型の条件で形成されたシリコン単結晶を育成するステップにおいて、
前記シリコン単結晶に、窒素を5×1013/cm3以上ドープすることを特徴とする請求項1に記載されたシリコンウェーハ表面の結晶欠陥検出方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シリコンウェーハ表面の結晶欠陥検出方法に関し、半導体デバイス用シリコンウェーハの検査に好適なシリコンウェーハ表面の結晶欠陥検出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来からメモリデバイスやロジックデバイスの製造においては、チョクラルスキー法により育成した単結晶シリコンウェーハが多用されている。このシリコンウェーハにおいて、デバイス品質の向上を目的に、特にウェーハ表層の無欠陥化が要求されている。チョクラルスキー法により育成したシリコンウェーハには、育成時の点欠陥(格子間シリコン、空孔)の挙動に関連して、様々な種類のグローン・イン(Grown-in)欠陥、例えば、ボイド欠陥、酸素析出物、転位が形成される。
【0003】
従来において、結晶の育成速度(引上速度)vと、固液界面近傍における結晶軸方向の温度勾配Gをコントロールすることで、グローン・イン欠陥の形成を極力少なくする技術が確立されている。
しかしながら、近年の半導体デバイスの微細化、集積化に伴う高品質化に対し、シリコンウェーハ中のグローン・イン欠陥の低減が必ずしも十分とは言えない状況である。このため、シリコンウェーハ表面の欠陥を高感度に検査する手法が要求されている。
【0004】
シリコンウェーハ表面に存在するグローン・イン欠陥を高感度に検査する手法としては、例えば、特許文献1、特許文献2に記載されている。
特許文献1には、基板内又は所定層内に含まれる結晶欠陥に対して高選択比の異方性エッチングによって該基板又は所定層をエッチングし、結晶欠陥に起因した円錐状エッチング残渣を前記基板又は層の表面に露出させ、この円錐状エッチング残渣に基づいて結晶欠陥を評価する結晶欠陥の評価方法が開示されている。
【0005】
また、特許文献2には、半導体基板の表面において成長時導入欠陥を検出する方法が開示されている。
具体的には、先ず、900℃~1250℃の第1の温度で、半導体基板の表面を、水素を含む第1の還元性雰囲気に曝し、半導体基板の表面から酸化物を除去しやすい状態とする。次いで、前記第1の温度より低い800℃~1100℃の第2の温度で、半導体基板の表面を、塩化水素、臭化水素、ヨウ化水素、及び、これらの組み合わせからなる群から選択された気体のエッチャントと水素とを含む第2の還元性雰囲気に曝す。これにより、半導体基板の表面がエッチングされ、この半導体基板に含まれる成長時導入欠陥の位置が示される。そして、位置が示された成長時導入欠陥を有する半導体基板の表面を光学検出装置によりスキャンする。
【0006】
特許文献1、2に開示された方法によれば、ウェーハ表面に存在する結晶欠陥を高感度に検出できる。
しかしながら、これらの方法はウェーハの表面をエッチングする必要があることから、基本的には破壊検査であって、製造されたすべてのウェーハの検査方法には適用できないという課題があった。
【0007】
この課題に対し、特許文献3には、ボイド欠陥(Crystal Originated Particle:COP)を非破壊で検査する方法が開示されている。特許文献3に開示された方法では、シリコンウェーハを熱酸化処理してウェーハ表面に酸化膜を形成した後、そのウェーハ表面をレーザ光散乱パーティクルカウンタで検査するものである。
【0008】
具体的に説明すると、鏡面加工されたシリコンウェーハの表面には、ボイド欠陥などの多数の凹型欠陥(結晶欠陥)が存在する。
このシリコンウェーハを、特許文献3に開示される方法により熱処理し(例えば1000℃)、ウェーハ表面に酸化膜を形成すると、凹型欠陥の内壁が酸化され、凹型欠陥の開口径が拡大する。これは、シリコン(Si)は酸化され、SiO2等の酸化物になると、欠陥体積が約2倍に膨張し、光散乱体(LPD:Light Point Defect)として検出可能なサイズになるためである。尚、欠陥検出に用いるレーザ光は、酸化膜を透過するため酸化膜の除去は不要である。
即ち、特許文献3に開示された方法によれば、微小な凹型欠陥の開口径を拡大して、サイズ0.07μm以上の微小欠陥を検出可能としている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2000-058509号公報
【特許文献2】特表2015-50153号公報
【特許文献3】特開2003-142544号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
上記のように特許文献3に開示された検査方法にあっては、開口径が0.07μm以上、即ち70nm以上の微小欠陥を検出することができる。
しかしながら、近年の先端ロジック領域では、ナノサイズのデバイスの量産が進んでおり、70nmよりも小さな数十nmサイズでの微小欠陥の検出が必要とされている。
即ち、特許文献3に開示された検出方法では、70nmよりも小さいnmサイズの微小欠陥を検出することができないという課題があった。
【0011】
本発明の目的は、数十nmサイズの微小欠陥を非破壊かつ高精度に検出することができ、半導体デバイス用シリコンウェーハの検査に好適なシリコンウェーハ表面の結晶欠陥検出方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
前記課題を解決するためになされた、本発明に係るシリコンウェーハ表面の結晶欠陥検出方法は、シリコンウェーハ表面の結晶欠陥を検出する方法であって、チョクラルスキー法により空孔優勢型の条件で形成されたシリコン単結晶を育成するステップと、前記シリコン単結晶をスライスしてシリコンウェーハを得るステップと、前記シリコンウェーハに対し、酸素含有雰囲気下で、1250℃以上1375℃以下の温度で熱処理を行い、ウェーハ表面に3nm以上40nm以下の酸化膜を形成するステップと、前記ウェーハ表面を、レーザ光散乱パーティクルカウンタで検査するステップと、を備えることに特徴を有する。
【0013】
尚、前記チョクラルスキー法により空孔優勢型の条件で形成されたシリコン単結晶を育成するステップにおいて、前記シリコン単結晶に、窒素を5×1013/cm3以上ドープすることが望ましい。
【0014】
このような方法によれば、シリコンウェーハに対する酸化膜形成処理により、ウェーハ表面の凹型欠陥の内壁が酸化され、欠陥自体の体積が増加するともに、急速高温加熱されることによって、凹部内壁の表面エネルギーが最小となるよう作用し、凹型欠陥の形状が球状に変形して、開口径が大きく拡径する。それにより、従来は検出不可能であった数十nmサイズの微小な凹型欠陥(ボイド欠陥、ピット)をレーザ光散乱パーティクルカウンタにより非破壊に、且つ高精度に検出することができる。
また、本発明のシリコンウェーハ表面の結晶欠陥検出方法によれば、非破壊検査を実施できるため、得られたシリコンウェーハ全数を検査することで、品質の悪いシリコンウェーハ(例えば、開口径サイズ14nm以上のLPD数が100箇所以上のウェーハ)を選別して排除することができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、数十nmサイズの微小欠陥を非破壊かつ高精度に検出することができ、半導体デバイス用シリコンウェーハの検査に好適なシリコンウェーハ表面の結晶欠陥検出方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】
図1(a)は、本発明のシリコンウェーハ表面の結晶欠陥検査方法の検査対象となるシリコンウェーハの表層部の一部を模式的に示す断面図であり、
図1(b)は、
図1(a)のシリコンウェーハに対し、所定の酸化加熱処理を施した後のシリコンウェーハの表層部の一部を模式的に示す断面図であり、
図1(c)は、
図1(a)のシリコンウェーハに対し、
図1(b)の場合よりも低い温度で酸化加熱処理を施した後のシリコンウェーハの表層部の一部を模式的に示す断面図である。
【
図2】
図2は、
図1(b)のシリコンウェーハを形成するために用いられる熱処理装置の一例の概要を示す断面図である。
【
図3】
図3は、本発明に係るシリコンウェーハ表面の結晶欠陥検出方法の工程を示すフローである。
【
図4】
図4は、本発明の実施例(実験1)の結果を示すグラフである。
【
図5】
図5は、本発明の実施例(実験2)の結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明にかかるシリコンウェーハ表面の結晶欠陥検査方法の一実施形態について、図面に基づいて説明する。
図1(a)は、本発明のシリコンウェーハ表面の結晶欠陥検査方法の検査対象となるシリコンウェーハWの表層部の一部を模式的に示す断面図である。図示するシリコンウェーハWは、空孔優勢型のニュートラル領域であるNv領域で形成されたシリコン単結晶をスライスし、表面を鏡面研磨加工したものである。このシリコンウェーハWの表層部には、結晶欠陥である微小な凹状欠陥1(開口径をXとする)が複数存在する。この凹状欠陥1は、ボイド欠陥、ピットなどである。
【0018】
図1(b)は、
図1(a)のシリコンウェーハWに対し、所定の酸化加熱処理を施した後のシリコンウェーハW1の表層部の一部を模式的に示す断面図である。
図1(b)に示すようにウェーハ表面には、厚さt、具体的には3nm以上40nm以下の酸化膜2が形成されている。
また、凹型欠陥1の開口径は、酸化加熱処理前の開口径Xから開口径Zに拡径されている。これは、酸素含有雰囲気下の熱処理によって凹型欠陥1の内壁が酸化され、欠陥自体の体積が増加するともに、急速高温加熱されることによって、凹部内壁の表面エネルギーが最小となるよう作用し、凹型欠陥1の形状が球状に変形して、開口径が大きく拡大するためである。
【0019】
尚、シリコンウェーハWに対する酸化加熱処理温度を1250℃より低い温度とした場合、凹型欠陥1の凹部内壁の表面エネルギーが最小となるように作用せず、
図1(c)に示すように球状に変形しない(特許文献3では1000℃での熱処理が開示されている)。その場合、酸化により欠陥体積が増加し、開口径は酸化熱処理前の開口径Xから開口径Yに拡径するが、その拡径幅は、
図1(b)に示す球状変形の場合(開口径Z)より小さいものに留まる。
本発明の結晶欠陥検査方法では、
図1(b)に示すシリコンウェーハW1の表面に対し、レーザ光散乱パーティクルカウンタで凹状欠陥を検出することになる。
【0020】
図2は、
図1(b)のシリコンウェーハW1を形成するために用いられる熱処理装置の一例の概要を示す断面図である。熱処理装置10は、図示するように、雰囲気ガス導入口20a及び雰囲気ガス排出口20bを備えたチャンバ(反応管)20と、チャンバ20の上部に離間して配置された複数のランプ30と、チャンバ20内の反応空間25にシリコンウェーハWを支持する基板支持部40とを備える。また、図示しないが、シリコンウェーハWをその中心軸周りに所定速度で回転させる回転手段を備えている。
【0021】
基板支持部40は、シリコンウェーハWの外周部を支持する環状のサセプタ40aと、サセプタ40aを支持するステージ40bとを備える。チャンバ20は、例えば、石英で構成されている。ランプ30は、例えば、ハロゲンランプで構成されている。サセプタ40aは、例えば、シリコンで構成されている。ステージ40bは、例えば、石英で構成されている。
【0022】
図2に示す熱処理装置10を用いてシリコンウェーハWに対し熱処理を行う場合、チャンバ20に設けられた図示しない基板導入口より、シリコンウェーハWを反応空間25内に導入し、基板支持部40のサセプタ40a上にシリコンウェーハWを支持する。そして、雰囲気ガス導入口20aから酸素含有ガスを導入すると共に、図示しない回転手段によりシリコンウェーハWを回転させながら、ランプ30により基板表面に対してランプ照射をすることで行う。
【0023】
尚、この熱処理装置10における反応空間25内の温度制御は、基板支持部40のステージ40bに埋め込まれた複数の放射温度計50によってシリコンウェーハWの下部の基板径方向における基板面内多点(例えば9点)の平均温度を測定し、その測定された温度に基づいて複数のハロゲンランプ30の制御(各ランプの個別のON-OFF制御や、発光する光の発光強度の制御等)を行う。
【0024】
続いて、本発明に係わるシリコンウェーハ表面の結晶欠陥検査方法について
図3のフローに沿って説明する。
本発明に係る結晶欠陥検査方法においては、例えばチョクラルスキー法により育成したシリコン単結晶インゴットからスライスされたシリコンウェーハの表面に対して、所定の製造条件により酸化熱処理を行う。
【0025】
先ず、チョクラルスキー法によるシリコン単結晶インゴットの育成を周知の方法にて行う(
図3のステップS1)。
具体的には、石英ルツボに充填した多結晶シリコンを加熱してシリコン融液とし、このシリコン融液の液面上方から種結晶を接触させて、種結晶と石英ルツボを回転させながら引上げ、所望の直径まで拡径して直胴部を育成することでシリコン単結晶インゴットを製造する。このシリコン単結晶の育成においては、引き上げる単結晶インゴットに窒素を5×10
13/cm
3以上ドープすることが望ましい。これは、次の理由による。
【0026】
即ち、単結晶の育成時において、窒素ノンドープ結晶の場合、ボイド欠陥の形状は八面体である。八面体の場合、形状が酸化加熱処理により球体に変化してもその開口径は大きくは変わらない。一方、結晶育成時に窒素を5×1013/cm3以上ドープすると、ボイド欠陥の形状が板状に変わることが知られている。板状の場合、1250℃以上1375℃以下の酸化熱処理で球体に変化した際、板状のときの開口径からの拡径幅が非常に大きいため、より高感度に検出することが可能となる。
また、この単結晶の引き上げにおいて、引上速度vと固液界面の温度勾配Gとの比率v/Gを制御し、空孔優勢型のニュートラル領域であるNv領域で形成されたシリコン単結晶を育成する。
【0027】
こうして得られたシリコン単結晶インゴットは、周知の方法によりシリコンウェーハに加工される(
図3のステップS2)。
すなわち、シリコン単結晶インゴットを内周刃又はワイヤソー等によりウェーハ状にスライスした後、外周部の面取り、ラッピング、エッチング、鏡面研磨等の加工工程を経て、シリコン基板を製造する。なお、ここで記載された加工工程は例示的なものであり、本発明は、この加工工程のみに限定されるものではない。
【0028】
次に、製造されたシリコン基板の表面に対して、所定の製造条件により熱処理を行う。具体的には、
図2に示したような熱処理装置10において、所望の初期温度で保持されたチャンバ20内に製造したシリコンウェーハWを設置する(
図3のステップS3)。
ウェーハ設置後、チャンバ20内には、雰囲気ガス導入口20aから酸素含有ガス(酸素ガス、水蒸気、酸素ガスと水素ガスの混合燃焼ガス等)を所定の流量で導入する(
図3のステップS4)。
【0029】
そして、ハロゲンランプ30によりチャンバ20内を急速加熱し、ウェーハ温度が1250℃以上1375℃以下で所定時間(例えば30秒)の間、熱処理を行う(ステップS5)。
この熱処理によりシリコンウェーハWの表面には、厚さt(3nm以上40nm以下)の酸化膜2が形成される(酸化膜2が形成されたシリコンウェーハWをシリコンウェーハW1と呼ぶ)。この酸化膜形成処理により、凹型欠陥1の内壁のシリコン(Si)が酸化され、SiO2等の酸化物になって、欠陥体積が増加する。また、それに伴い凹型欠陥1の開口径が拡大する。
尚、酸化膜厚tが3nmより小さい場合、凹型欠陥1の開口径が広がらず検出力の向上が見込めない。一方、酸化膜厚tが40nmより大きい場合は、シリコンウェーハWの表面ラフネスが粗くなるため好ましくない。
【0030】
また、1250℃以上1375℃以下の温度で熱処理することにより、ウェーハ表面の凹型欠陥1において、内壁の表面エネルギーを最小とする作用が働き、凹型欠陥1が球状に変形し易くなる。それにより、開口径がより大きく拡径する。熱処理温度が1250℃より低い場合は、凹型欠陥1の形状が変形し難いため好ましくなく、1375℃より大きい場合は、ウェーハ表面が昇化するため好ましくない。
尚、熱処理空間25における一定のガス流と酸素濃度を制御するため、排出口20bから所定の流量でチャンバ20内の雰囲気が排気される。
【0031】
次いで、熱処理後のシリコンウェーハW1をレーザ光散乱パーティクルカウンタ(図示せず)で検査する(
図3のステップS6)。
レーザ光散乱パーティクルカウンタとしては例えば、KLA-Tencor社のSurfscan SP7を用いることができる。この検査装置は、レーザの侵入深さが約5nmであり、検出可能な欠陥最小サイズが14nm(公称値)である。
レーザ光散乱パーティクルカウンタによるシリコンウェーハW1の検査は、ウェーハ表面にレーザ光を照射し、凹型欠陥を検出し、その位置、サイズ、数を測定する。
検査するシリコンウェーハW1の表面の酸化膜2は、残った状態でもよい。これは、酸化膜2中をレーザ光が透過するためである。或いは、酸化膜2を剥離した後に、レーザ光散乱パーティクルカウンタによる検査を行ってもよい。
【0032】
以上のように本発明に係る実施の形態によれば、シリコンウェーハWに対し酸素含有雰囲気下で1250℃以上1375℃以下の熱処理を行うことにより、シリコンウェーハWの表面に厚さ3nm以上40nm以下の酸化膜2を形成する。
また、この酸化膜形成処理により、ウェーハ表面の凹型欠陥1の内壁が酸化され、欠陥自体の体積が増加するともに、急速高温加熱されることによって、凹部内壁の表面エネルギーが最小となるよう作用し、凹型欠陥1の形状が球状に変形して、開口径が大きく拡径する。それにより、従来は検出不可能であった数十nmサイズの微小な凹型欠陥(ボイド欠陥、ピット)をレーザ光散乱パーティクルカウンタにより非破壊に、且つ高精度に検出することができる。
【0033】
また、本発明のシリコンウェーハ表面の結晶欠陥検出方法によれば、非破壊検査を実施できるため、得られたシリコンウェーハ全数を検査することで、品質の悪いシリコンウェーハ(例えば、開口径サイズ14nm以上のLPD数が100箇所以上のウェーハ)を選別して排除することができる。
【0034】
尚、前記実施の形態においては、シリコンウェーハWの表面に酸化膜2が形成された状態で、レーザ光散乱パーティクルカウンタにより欠陥検出するものとしたが、本発明にあっては、その形態に限定されるものではない。
例えば、シリコンウェーハWの表面に形成した酸化膜2を剥離した後、レーザ光散乱パーティクルカウンタにより欠陥検出するようにしてもよい。
【0035】
また、本発明はボイド欠陥の検出に限らず、金属不純物起因のピットや加工起因の微小なスクラッチなどの凹状欠陥に対し広く適用することができ、それらを高感度に検出することが可能となる。
【実施例0036】
本発明に係るシリコンウェーハ表面の結晶欠陥検出方法について、実施例に基づきさらに説明する。本実施例では、前記実施の形態に基づき以下の実験を行った。
【0037】
(実験1)
実験1では、シリコンウェーハに対する加熱処理の好ましい温度範囲について検証した。
先ず、チョクラルスキー法により単結晶を育成した。この単結晶の引き上げにおいて、引上速度vと固液界面の温度勾配Gとの比率v/Gを制御し、空孔優勢型のニュートラル領域であるNv領域で形成されたシリコン単結晶を育成した。
そして、育成したシリコン単結晶をスライスして表面を研磨加工し、検査対象とするシリコンウェーハを得た。
【0038】
次いで、
図2に示した構成の熱処理装置を用いてチャンバ内に酸素含有ガスを導入し、複数の温度条件で30秒間、加熱処理を行った。具体的には、加熱温度を、実施例1では1250℃、実施例2では1300℃、実施例3では1350℃、実施例4では1375℃、比較例1では熱処理無し、比較例2では1200℃、比較例3では1220℃、比較例4では1390℃とした。この際、導入ガス中の酸素含有量(アルゴンガスで希釈)と熱処理時間とを調整して、ウェーハ表面に形成される酸化膜の厚さが5nmとなるようにした。
【0039】
その後、レーザ光散乱パーティクルカウンタによりウェーハ表面における凹型欠陥の数を検出した。レーザ光散乱パーティクルカウンタとして、KLA-Tencor社のSurfscan SP7を用いた。この検査装置は、レーザの侵入深さが約5nmであり、検出可能な欠陥最小サイズが14nm(公称値)であるため、検出された凹型欠陥は、開口径が14nm以上の欠陥である。
【0040】
実験1の結果を、
図4のグラフに示す。
図4のグラフに示すように、実施例1では572個の凹型欠陥を検出した。実施例2では604個の凹型欠陥を検出した。実施例3では620個の凹型欠陥を検出した。実施例4では569個の凹型欠陥を検出した。一方、熱処理を実施しない比較例1では、20個の凹型欠陥の検出となった。また、比較例2では57個の凹型欠陥の検出、比較例3では118個の凹型欠陥の検出となった。
また、実験1で検査したシリコンウェーハの表面に対し、走査電子顕微鏡(SEM)を用いて観察した結果、検出したものはボイド欠陥であることを確認した。
この実験1の結果、シリコンウェーハに対する加熱処理の好ましい温度範囲は、1250℃以上1375℃以下であることを確認した。
【0041】
(実験2)
実験2では、シリコンウェーハ表面に形成する酸化膜の好ましい厚さ範囲について検証した。先ず、実験1と同様の条件下で検査対象とするシリコンウェーハを得た。
次いで、
図2に示した構成の熱処理装置を用いてチャンバ内に酸素含有ガスを導入し、1350℃の温度で30秒間、加熱処理を行った。
この際、導入ガス中の酸素含有量(アルゴンガスで希釈)と熱処理時間とを調整し、ウェーハ表面に形成される酸化膜の厚さをウェーハごとに変えて実験条件とした。具体的には、酸化膜厚を実施例5では3nm、実施例6では40nm、比較例5では0nm(酸化膜形成しない)、比較例6では1nm、比較例7では45nm、比較例8では50nmとした。
その後、実験1と同様にレーザ光散乱パーティクルカウンタによりウェーハ表面における凹型欠陥の数を検出した。
【0042】
実験2の結果を、
図5のグラフに示す。
図5のグラフに示すように、実施例5では610個の凹型欠陥を検出した。実施例6では572個の凹型欠陥を検出した。一方、酸化膜を形成しない比較例5では、18個の凹型欠陥の検出となった。また、比較例6では174個の凹型欠陥の検出となった。また、比較例7では1304個の検出結果となったが、これはラフネス悪化による擬似欠陥の検出数が含まれるものと考えられた。比較例8では2472個の検出となり、これも擬似欠陥の検出が含まれるものと考えられた。
この実験2の結果、シリコンウェーハ表面に形成する酸化膜の好ましい厚さ範囲は、3nm以上40以下であることを確認した。
【0043】
以上の実施例の結果、本発明に係る結晶欠陥検出方法によれば、従来よりも格段に高精度な検査を行うことができることを確認した。