(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023090204
(43)【公開日】2023-06-29
(54)【発明の名称】ポリエチレン系樹脂組成物
(51)【国際特許分類】
C08L 23/04 20060101AFI20230622BHJP
C08K 5/09 20060101ALI20230622BHJP
【FI】
C08L23/04
C08K5/09
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021205043
(22)【出願日】2021-12-17
(71)【出願人】
【識別番号】000002093
【氏名又は名称】住友化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100128381
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 義憲
(74)【代理人】
【識別番号】100124062
【弁理士】
【氏名又は名称】三上 敬史
(74)【代理人】
【識別番号】100140578
【弁理士】
【氏名又は名称】沖田 英樹
(72)【発明者】
【氏名】淺井 裕介
【テーマコード(参考)】
4J002
【Fターム(参考)】
4J002BB021
4J002BB031
4J002BB041
4J002BB051
4J002BB161
4J002BB171
4J002EG026
4J002EG036
4J002EG046
4J002FD030
4J002FD100
4J002FD170
4J002GF00
4J002GG00
4J002GM00
4J002GN00
(57)【要約】
【課題】押出成形によって平滑な表面を有する成形品を形成できるポリエチレン系樹脂組成物を提供すること。
【解決手段】ポリエチレン系樹脂と、有機酸金属塩と、を含有し、ポリエチレン系樹脂の密度が880~910kg/m3であり、有機酸金属塩の含有量が、ポリエチレン系樹脂の100質量部に対して、0.025~0.5質量部である、ポリエチレン系樹脂組成物。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリエチレン系樹脂と、有機酸金属塩と、を含有し、
前記ポリエチレン系樹脂の密度が880~910kg/m3であり、
前記有機酸金属塩の含有量が、前記ポリエチレン系樹脂の100質量部に対して、0.025~0.5質量部である、ポリエチレン系樹脂組成物。
【請求項2】
前記ポリエチレン系樹脂のMFRが3.0~8.5g/10分である、請求項1に記載のポリエチレン系樹脂組成物。
【請求項3】
前記ポリエチレン系樹脂の分子量分布Mw/Mnが1.5~2.5であり、
前記ポリエチレン系樹脂の示差走査熱量測定において観測される融解ピークの極大値が示される温度が100℃以下である、請求項1又は2に記載のポリエチレン系樹脂組成物。
【請求項4】
押出成形用である、請求項1~3のいずれか一項に記載のポリエチレン系樹脂組成物。
【請求項5】
当該ポリエチレン系樹脂組成物をダイス孔から吐出させる押出成形により形成される成形体の表面粗さRzが、前記ダイス孔を通過する当該ポリエチレン系樹脂組成物のせん断速度が950~1050s-1であるときに4.5μm以下である、請求項1~4のいずれか一項に記載のポリエチレン系樹脂組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリエチレン系樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリエチレン系樹脂組成物は、押出成形されることにより、シート、フィルム、又はフィラメント等の成形体として加工される。成形体は様々な産業資材として用いられる。ポリエチレン系樹脂組成物としては、(A)密度が0.945~0.970g/cm3で、メルトインデックスが0.1~2.0g/10分のポリエチレン系樹脂100重量部に対して(B)脂肪酸アミド0.01~1.5重量部と(C)有機酸金属塩0.01~1.5重量部と(D)フェノール系酸化防止剤及び/又はリン系酸化防止剤0.01~1.0重量部とを配合してなることを特徴とする押出成形用ポリエチレン系樹脂組成物が知られている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特に人の目に触れやすい用途の成形品、又は肌に触れる成形品の場合、ポリエチレン系樹脂組成物の押出加工により形成される表面の平滑性は、成形体の外観及び肌触り等の観点から、少しでも高いことが望ましい。
【0005】
そこで、本発明の一側面は、平滑な表面を有する成形品を押出成形によって形成できるポリエチレン系樹脂組成物を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一側面は、ポリエチレン系樹脂と、有機酸金属塩と、を含有し、ポリエチレン系樹脂の密度が880~910kg/m3であり、有機酸金属塩の含有量が、ポリエチレン系樹脂の100質量部に対して、0.025~0.5質量部である、ポリエチレン系樹脂組成物に関する。
【発明の効果】
【0007】
本発明の一側面によれば、平滑な表面を有する成形品を押出成形によって形成できるポリエチレン系樹脂組成物を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明は以下の例に限定されるものではない。
【0009】
ポリエチレン系樹脂組成物の一例は、ポリエチレン系樹脂と、有機酸金属塩と、を少なくとも含有する。
【0010】
ポリエチレン系樹脂は、エチレンに基づく単量体単位を含む共重合体である。ポリエチレン系樹脂は、例えば、エチレン-α-オレフィン共重合体であってもよい。ポリエチレン系樹脂は、成形性に優れる観点から、長鎖分枝を有するエチレン-α-オレフィン共重合体であってもよい。ポリエチレン系樹脂は、1種単独であってもよく、2種以上を併用してもよい。
【0011】
エチレン-α-オレフィン共重合体におけるα-オレフィンの炭素原子数は、4~20、5~20、又は6~20であってもよい。α-オレフィンの例としては、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、1-ヘプテン、1-オクテン、1-ノネン、1-デセン、1-ドデセン、4-メチル-1-ペンテン、及び4-メチル-1-ヘキセンが挙げられる。α-オレフィンは1種単独であってもよく、2種以上を併用してもよい。α-オレフィンは、1-ヘキセン、4-メチル-1-ペンテン、又は1-オクテンであってもよい。
【0012】
ポリエチレン系樹脂のエチレンに基づく単量体単位(エチレン単位)の含有量は、ポリエチレン系樹脂の全質量に対して、50質量%以上、70質量%以上、75質量%以上、又は79質量%以上であってもよく、99.5質量%以下、95質量%以下、92質量%以下、又は89質量%以下であってもよい。ポリエチレン系樹脂のエチレンに基づく単量体単位(エチレン単位)の含有量は、ポリエチレン系樹脂の全質量に対して、50~99.5質量%であってもよい。
【0013】
ポリエチレン系樹脂中のα-オレフィンに基づく単量体単位の含有量は、ポリエチレン系樹脂の全質量に対して、0.5質量%以上、5質量%以上、8質量%以上、又は11質量%以上であってもよく、50質量%以下、30質量%以下、25質量%以下、又は21質量%以下であってもよい。ポリエチレン系樹脂中のα-オレフィンに基づく単量体単位の含有量は、ポリエチレン系樹脂の全質量に対して、0.5~50質量%であってもよい。
【0014】
ポリエチレン系樹脂は、エチレンに基づく単量体単位及びα-オレフィンに基づく単量体単位に加え、他の単量体に基づく単量体単位を有していてもよい。他の単量体の例としては、共役ジエン(例えばブタジエンやイソプレン)、非共役ジエン(例えば1,4-ペンタジエン)、アクリル酸、アクリル酸エステル(例えばアクリル酸メチルやアクリル酸エチル)、メタクリル酸、メタクリル酸エステル(例えばメタクリル酸メチルやメタクリル酸エチル)、及び酢酸ビニルが挙げられる。
【0015】
ポリエチレン系樹脂の例としては、エチレン-1-ブテン共重合体、エチレン-1-ヘキセン共重合体、エチレン-1-オクテン共重合体、エチレン-1-ブテン-1-ヘキセン共重合体、エチレン-1-ブテン-4-メチル-1-ペンテン共重合体、及びエチレン-1-ブテン-1-オクテン共重合体が挙げられる。ポリエチレン系樹脂は、エチレン-1-ヘキセン共重合体、エチレン-1-ブテン-1-ヘキセン共重合体、又はエチレン-1-ブテン-4-メチル-1-ペンテン共重合体であってもよい。
【0016】
ポリエチレン系樹脂の密度は、880~910kg/m3である。ポリエチレン系樹脂の密度は、成形体の剛性を高める観点、荷重による成形体の変形を低減する観点から、881kg/m3以上、882kg/m3以上、883kg/m3以上、884kg/m3以上、885kg/m3以上、886kg/m3以上、887kg/m3以上、888kg/m3以上、889kg/m3以上、890kg/m3以上、891kg/m3以上、892kg/m3以上、893kg/m3以上、894kg/m3以上、895kg/m3以上、896kg/m3以上、897kg/m3以上、898kg/m3以上、899kg/m3以上、又は900kg/m3以上であってもよい。ポリエチレン系樹脂の密度は、成形体の透明性が更に向上する観点、成形体の耐衝撃強度を高める観点から、909kg/m3以下、908kg/m3以下、907kg/m3以下、906kg/m3以下、905kg/m3以下、904kg/m3以下、903kg/m3以下、902kg/m3以下、901kg/m3以下、又は900kg/m3以下であってもよい。ポリエチレン系樹脂の密度は、JIS K7112-1980のA法に規定された方法に従って測定される値を意味する。
【0017】
ポリエチレン系樹脂のMFR(メルトフローレート)は、成形性を高める観点、押出時にかかる負荷を低減する観点から、3.0g/10分以上、3.2g/10分以上、又は3.4g/10分以上であってもよい。ポリエチレン系樹脂のMFRは、成形体の機械的強度を高める観点から、8.5g/10分以下、8.0g/10分以下、7.5g/10分以下、7.0g/10分以下、6.5g/10分以下、6.0g/10分以下、5.5g/10分以下、5.0g/10分以下、又は4.5g/10分以下であってもよい。ポリエチレン系樹脂のMFRは、3.0~8.5g/10分、又は3.0~5.0g/10分であってもよい。ポリエチレン系樹脂のMFRは、JIS K7210-1995に規定された方法において、荷重21.18N、温度190℃の条件で、A法により測定される値を意味する。
【0018】
ポリエチレン系樹脂の分子量分布Mw/Mnは、成形性を高める観点、押出時にかかる負荷を低減する観点から、1.5以上、又は1.7以上であってもよい。ポリエチレン系樹脂の分子量分布Mw/Mnは、成形体の機械強度を高める観点から、2.5以下、又は2.0以下であってもよい。ポリエチレン系樹脂の分子量分布Mw/Mnは、1.5~2.5であってもよい。ポリエチレン系樹脂の分子量分布Mw/Mnは、ゲル・パーミエイション・クロマトグラフ(GPC)法により測定される重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)とから算出される値を意味する。具体的には、後述の実施例に記載の方法によりポリエチレン系樹脂の分子量分布Mw/Mnを算出することができる。
【0019】
ポリエチレン系樹脂の示差走査熱量測定において観測される融解ピークの極大値が示される温度(以下「融解ピーク温度」ということがある。)は、成形性を高める観点、及び押出成形時にポリエチレン系樹脂組成物にかかる負荷を低減する観点から、100℃以下、95℃以下、93℃以下、90℃以下、85℃以下、又は80℃以下であってもよい。ポリエチレン系樹脂の融解ピーク温度は、50℃以上、55℃以上、60℃以上、65℃以上、70℃以上、又は75℃以上であってもよい。ポリエチレン系樹脂の融解ピーク温度は、示差走査熱量計により融解ピークを含むDSCサーモグラムを得て、25℃から150℃までの範囲に存在する融解ピークのうち、最も大きい高さの融解ピークの極大値が示す温度を意味する。具体的には、後述の実施例に記載の方法によりポリエチレン系樹脂の融解ピーク温度の最大値を測定することができる。
【0020】
ポリエチレン系樹脂は、通常の重合触媒を用いて、通常の重合方法によって製造することができる。重合触媒の例としては、メタロセン系触媒、バナジウム系触媒、チーグラー・ナッタ系触媒、及びクロム系触媒が挙げられる。重合方法の例としては、液相重合法、スラリー重合法、気相重合法、及び高圧イオン重合法が挙げられる。重合の形式は、例えば、回分重合、連続重合、又は2段階以上の多段重合であってもよい。所定の密度を有するポリエチレン系樹脂の市販品を用いることもできる。
【0021】
メタロセン系触媒の例としては、特開昭58-19309号公報、特開昭60-35005号公報、特開昭60-35006号公報、特開昭60-35007号公報、特開昭60-35008号公報、特開昭61-130314号公報、特開平3-163088号公報、特開平4-268307号公報、特開平9-12790号公報、特開平9-87313号公報、特開平11-80233号公報、及び特表平10-508055号公報に記載の触媒が挙げられる。
【0022】
メタロセン系触媒としては、具体的には、一般式R1
kR2
lR3
mR4
nM(ただし、Mはジルコニウム、チタン、ハフニウム又はバナジウムであり、R1はシクロペンタジエン形アニオン骨格を有する基であり、R2、R3及びR4は、それぞれシクロペンタジエン形アニオン骨格を有する基、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基、アルコキシ基、アリーロキシ基、ハロゲン原子又は水素原子であり、k及びlは1以上の整数であり、k+l+m+n=4である。)で示されるメタロセン系化合物と有機アルミニウムオキシド化合物を有する触媒が挙げられる。
【0023】
上記の一般式で示されるメタロセン系化合物の例としては、ビス(シクロペンタジエニル)ジエチルチタニウム、ビス(シクロペンタジエニル)ジメチルチタニウム、ビス(ペンタメチルシクロペンタジエニル)チタニウム、ビス(シクロペンタジエニル)ジクロロチタニウム、ビス(シクロペンタジエニル)チタニウムモノクロリドモノハイドライド、ビス(インデニル)チタニウムモノクロリドモノハイドライド、ビス(インデニル)チタニウムジクロリド、エチレンビス(インデニル)ジメチルチタニウム、エチレンビス(インデニル)メチルチタニウムクロリド、エチレンビス(インデニル)チタニウムジクロリド、エチレンビス(4,5,6,7-テトラヒドロ-1-インデニル)チタニウムジクロリド、エチレンビス(4,5,6,7-テトラヒドロ-1-インデニル)ジメチルチタニウム、エチレンビス(4-メチル-1-インデニル)チタニウムジクロリド、エチレンビス(2,3-ジメチル-1-インデニル)チタニウムジクロリド、ビス(シクロペンタジエニル)ジエチルチタニウム、ビス(シクロペンタジエニル)ジメチルジルコニウム、ビス(ペンタメチルシクロペンタジエニル)ジルコニウム、ビス(シクロペンタジエニル)ジクロロジルコニウム、ビス(シクロペンタジエニル)モノクロリドモノハイドライド、ビス(インデニル)ジルコニウムモノクロリドモノハイドライド、ビス(インデニル)ジルコニウムジクロリド、エチレンビス(インデニル)ジメチルジルコニウム、エチレンビス(インデニル)メチルジルコニウムジクロリド、エチレンビス(インデニル)ジルコニウムジクロリド、エチレンビス(4,5,6,7-テトラヒドロ-1-インデニル)ジルコニウムジクロリド、エチレンビス(4,5,6,7-テトラヒドロ-1-インデニル)ジメチルジルコニウム、エチレンビス(4-メチル-1-インデニル)ジルコニウムジクロリド、及びエチレンビス(2,3-ジメチル-1-インデニル)ジルコニウムジクロリドが挙げられる。
【0024】
有機アルミニウムオキシド化合物の例としては、テトラメチルジアルミノキサン、テトラエチルジアミノキサン、テトラブチルジアルミノキサン、テトラヘキシルジアルミノキサン、メチルアルミノキサン、エチルアルミノキサン、ブチルアルミノキサン、及びヘキシルアルミノキサンが挙げられる。
【0025】
バナジウム系触媒は、バナジウム化合物と有機アルミニウム化合物とを含む触媒であってもよい。バナジウム化合物としては、一般式VO(OR)nX3-n(ただし、Rは炭化水素基、Xはハロゲン原子、nは0~3の整数を示す。)で示される化合物が挙げられ、具体的には、VOCl3、VO(OCH3)Cl2、VO(OCH3)2Cl、VO(OCH3)3、VO(OC2H5)Cl2、VO(OC2H5)2Cl、VO(OC2H5)3、VO(OC3H7)Cl2、VO(OC3H7)2Cl、VO(OC3H7)3、及びこれらの混合物が挙げられる。
【0026】
有機アルミニウム化合物の例としては、一般式R’mAlX3-m(ただし、R’は炭化水素基、Xはハロゲン原子、mは1~3の整数を示す。)で示される化合物が挙げられ、具体的には、(C2H5)2AlCl、(C4H9)2AlCl、(C6H13)2AlCl、(C2H5)1.5AlCl1.5、(C4H9)1.5AlCl1.5、(C6H13)1.5AlCl1.5、C2H5AlCl2、C4H9AlCl2、及びC6H13AlCl2が挙げられる。
【0027】
チーグラー・ナッタ系触媒としては、三塩化チタン、三塩化バナジウム、四塩化チタン及びチタンのハロアルコラートからなる群から選ばれる少なくとも1種をマグネシウム化合物系担体に担持した成分と、共触媒である有機金属化合物からなる触媒、並びに、マグネシウム化合物とチタン化合物の共沈物又は共晶体と共触媒である有機金属化合物からなる触媒が挙げられる。
【0028】
クロム系触媒としては、シリカ又はシリカ-アルミナにクロム化合物を担持した成分と、共触媒である有機金属化合物からなる触媒が挙げられる。
【0029】
ポリエチレン系樹脂の含有量は、ポリエチレン系樹脂組成物の全質量を基準として、95質量%以上、97質量%以上、又は99質量%以上であってもよく、99.9質量%以下、99.5質量%以下、又は99.1質量%以下であってもよい。ポリエチレン系樹脂の含有量は、ポリエチレン系樹脂組成物の全質量を基準として、95~99.9質量%であってもよい。
【0030】
有機酸金属塩は、有機酸と金属とから形成された塩である。有機酸金属塩は、金属石鹸であってもよい。有機酸は高級脂肪酸又は脂肪族オキシ酸であってもよい。金属は、マグネシウム、カルシウム、バリウム、亜鉛、アルミニウム、リチウム、錫、又は鉛であってもよい。
【0031】
高級脂肪酸の例として、炭素数10~22の鎖状モノカルボン酸が挙げられる。脂肪族オキシ酸は、アルコール性水酸基を有する脂肪族カルボン酸であってもよい。
【0032】
有機酸金属塩は、例えば、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸バリウム、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸アルミニウム、ステアリン酸リチウム、クエン酸カルシウム、乳酸カルシウム、12-ヒドロキシステアリン酸カルシウム、ステアリル乳酸カルシウム、及びラウリル乳酸カルシウムからなる群より選ばれる少なくとも1種であってもよい。
【0033】
有機酸金属塩の含有量は、押出成形時にポリエチレン系樹脂組成物にかかる負荷を低減する観点から、ポリエチレン系樹脂の100質量部に対して、0.025質量部以上、0.030質量部以上、0.040質量部以上、0.045質量部以上、又は0.50質量部以上であってもよい。有機酸金属塩の含有量は、成形体の機械強度を維持する観点から、ポリエチレン系樹脂の100質量部に対して、0.5質量部以下、0.4質量部以下、0.3質量部以下、0.2質量部以下、又は0.1質量部以下であってもよい。有機酸金属塩の含有量は、ポリエチレン系樹脂組成物の全質量を基準として、0.025~0.5質量部であってもよい。
【0034】
ポリエチレン系樹脂組成物は、ポリエチレン系樹脂、有機酸金属塩以外の成分を更に含有してもよい。ポリエチレン系樹脂組成物は、例えば、安定剤、滑剤、帯電防止剤、抗ブロッキング剤、染料、顔料等を更に含有してもよい。
【0035】
安定剤の例としては、2,6-ジ-t-ブチル-p-クレゾール(BHT)、テトラキス[メチレン-3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン、n-オクタデシル-3-(4’-ヒドロキシ-3,5’-ジ-t-ブチルフェニル)プロピオネート等のフェノール系安定剤;ビス(2,4-ジ-t-ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、及びトリス(2,4-ジ-t-ブチルフェニル)ホスファイト等のホスファイト系安定剤が挙げられる。
【0036】
滑剤は、有機脂肪酸アミドであってもよい。有機脂肪酸アミドの例としては、飽和脂肪酸アミド、不飽和脂肪酸アミド、飽和脂肪酸ビスアミド、及び不飽和脂肪酸ビスアミドが挙げられる。飽和脂肪酸アミドの例としては、ステアリン酸アミド及びベヘニン酸アミドが挙げられる。不飽和脂肪酸アミドの例としては、オレイン酸アミド及びエルカ酸アミドが挙げられる。飽和脂肪酸ビスアミドの例としては、エチレンビスステアリン酸アミドが挙げられる。不飽和脂肪酸ビスアミドの例としては、エチレンビスオレイン酸アミド、ヘキサメチレンビスオレイン酸アミド、及びN,N’-ジオレイルセバシン酸アミド等が挙げられる。
【0037】
帯電防止剤の例としては、炭素数8~22の脂肪酸のグリセリンエステル、ソルビタン酸エステル、及びポリエチレングリコールエステルが挙げられる。抗ブロッキング剤としては、例えば、シリカ、炭酸カルシウム、及びタルクが挙げられる。
【0038】
ポリエチレン系樹脂組成物は、ポリエチレン系樹脂と有機酸金属塩とを溶融混練することにより製造することができる。ポリエチレン系樹脂組成物は、複数のポリエチレン系樹脂と有機酸金属塩とを溶融混練することにより製造してもよい。
【0039】
ポリエチレン系樹脂と有機酸金属塩とを溶融混練する方法としては、ポリエチレン系樹脂と有機酸金属塩とをヘンシェルミキサー、タンブラーミキサー等の各種ブレンダーで混合した後、単軸押出機、二軸押出機、バンバリ-ミキサー、熱ロール等を用いて溶融混練する方法が挙げられる。ポリエチレン系樹脂及び有機酸金属塩以外の成分の添加方法としては、ポリエチレン系樹脂と有機酸金属塩とともに溶融混練する方法、ドライブレンドする方法、マスターバッチを用意して、このマスターバッチをポリエチレン系樹脂等にドライブレンドする方法が挙げられる。
【0040】
ポリエチレン系樹脂組成物は、押出成形用であってもよい。本開示に係るポリエチレン系樹脂組成物を用いた押出成形により、平滑な表面を有する成形品を容易に形成することができる。例えば、ポリエチレン系樹脂組成物をダイス孔から吐出させる押出成形により形成される成形体の表面粗さRzが、ダイス孔を通過する当該ポリエチレン系樹脂組成物のせん断速度が950~1050s-1であるときに、4.5μm以下、4.0μm以下、3.5μm以下、3.0μm以下、2.5μm以下、2.0μm以下、1.5μm以下、又は1.0μm以下であることができる。ポリエチレン系樹脂組成物が、ポリエチレン系樹脂及び有機酸金属塩を含む原料混合物を押出成形機内で溶融混練することによって形成されてもよい。
【実施例0041】
以下、実施例により本発明を具体的に説明する。ただし、本発明は下記の実施例のみに限定されるものではない。
【0042】
1.ポリエチレン系樹脂
以下のポリエチレン系樹脂を準備した。
ポリエチレン系樹脂P1(エチレン-1ヘキセン共重合体、エチレン単位の含有量:80質量%)
ポリエチレン系樹脂P2(エチレン-1ヘキセン共重合体、エチレン単位の含有量:79質量%)
ポリエチレン系樹脂P3(エチレン-1ヘキセン共重合体、エチレン単位の含有量:79質量%)
ポリエチレン系樹脂P4(エチレン-1ヘキセン共重合体、エチレン単位の含有量:79質量%)
ポリエチレン系樹脂P5(エチレン-1ヘキセン共重合体、エチレン単位の含有量:79質量%)
ポリエチレン系樹脂P6(エチレン-1ヘキセン共重合体、エチレン単位の含有量:79質量%)
ポリエチレン系樹脂P7(エチレン-1ヘキセン共重合体、エチレン単位の含有量:79質量%)
ポリエチレン系樹脂P8(エチレン-1ヘキセン共重合体、エチレン単位の含有量:79質量%)
ポリエチレン系樹脂P9(エチレン-1ヘキセン共重合体、エチレン単位の含有量:79質量%)
ポリエチレン系樹脂P10(エチレン-1ヘキセン共重合体、エチレン単位の含有量:82質量%)
ポリエチレン系樹脂P11(エチレン-1ヘキセン共重合体、エチレン単位の含有量:80質量%)
ポリエチレン系樹脂P12(エチレン-1ヘキセン共重合体、エチレン単位の含有量:83質量%)
ポリエチレン系樹脂P13(エチレン-1ヘキセン共重合体、エチレン単位の含有量:89質量%)
【0043】
2.ポリエチレン系樹脂の評価
密度
JIS K7112-1980のA法に規定された方法に従ってポリエチレン系樹脂の密度を測定した。
【0044】
メルトフローレート
JIS K7210-1995に規定された方法において、荷重21.18N、温度190℃の条件で、A法によりポリエチレン系樹脂のメルトフローレートを測定した。
【0045】
分子量分布Mw/Mn
ゲル・パーミエイション・クロマトグラフ(GPC)法を用いて、下記の条件(1)~(8)により、ポリエチレン系樹脂の重量平均分子量Mwと数平均分子量Mnとを標準ポリスチレン換算値として測定した。Mw及びMnからポリエチレン系樹脂の分子量分布Mw/Mnを算出した。クロマトグラム上のベースラインは、ポリエチレン系樹脂の溶出ピークが出現するよりも十分に保持時間が短い安定した水平な領域の点と、溶媒溶出ピークが観測されたよりも十分に保持時間が長い安定した水平な領域の点とを結ぶ直線とした。
(1)装置:Waters製、Waters150C
(2)分離カラム:TOSOH TSKgelGMH6-HT
(3)測定温度:140℃
(4)キャリア:オルトジクロロベンゼン
(5)流量:1.0mL/分
(6)注入量:500μL
(7)検出器:示差屈折
(8)分子量標準物質:標準ポリスチレン
【0046】
溶融ピーク温度
ポリエチレン系樹脂を、150℃の熱プレス機により10MPaの圧力で5分間プレスした後、30℃の冷却プレス機で5分間冷却して、厚さ約100μmのシートを得た。シートから切り出した約10mgの試料をアルミニウムパンに封入した。試料を封入したアルミニウムパンを用い、150℃で5分間保持し、10℃/分で150℃から-80℃まで降温し、-80℃で2分間保持し、10℃/分で-80℃から150℃まで昇温する条件の示差走査熱量測定により、融解ピークを含むDSCサーモグラムを得た。測定装置として示差走査熱量計(パーキンエルマー社製、示差走査型熱量計DSC-7型)を用いた。得られたDSCサーモグラムにおいて、25℃から150℃までの範囲に存在する融解ピークのうち、最も大きい高さの融解ピークの極大値が示された温度を、融解ピーク温度とした。
【0047】
3.押出成形試験
フィーダーと、押出機側に設けられたノズルヘッドと、を有する同方向二軸混練押出機(KZW20TW、テクノベル社製)を準備した。二軸混練押出機のホッパー側から押出方向に沿って順に設けられた9個のバレルC1~C9の温度は、バレルC1が100℃であり、バレルC2が170℃であり、バレルC3~C9が210℃であった。二軸混練押出機のバレルC1に設けられたホッパー口に、表1又は表2に示すポリエチレン系樹脂と有機酸金属塩とを投入した。表1及び表2に、ポリエチレン系樹脂の100質量部に対する有機酸金属塩の添加量(単位:質量部)が示される。ノズルヘッドの温度を210℃に、スクリューの回転数を300rpmにそれぞれ設定して、ポリエチレン系樹脂と有機酸金属塩とを溶融混練した。形成された混錬物(ポリエチレン系樹脂組成物)を、二軸混練押出機のダイス孔から5kg/時間の吐出量で吐出した。吐出された混練物を10~35℃の水浴で冷却して、ストランド状の成形体を得た。ダイス孔を通過するポリエチレン系樹脂組成物のせん断速度γを式:γ=32Q/(πD3)により算出したところ、950~1050S-1であった。式中、Qはポリエチレン系樹脂組成物の体積流量(単位:mm3/s)であり、Dはダイス孔の内径(単位:mm)である。
【0048】
外観
作製したストランド状の成形体の外観を目視で観察し、各成形体の外観を透明、半透明、及び不透明に分類した。
【0049】
表面平滑性
マイクロスコープ(RH-2000、HiROX社製)を使用して、成形体の表面粗さを評価した。具体的には、ストランドの押出方向に対して垂直方向に沿って、0.15μmの間隔で成形体表面の写真を撮影し、得られた画像を3Dプロファイルで画像処理することで、表面粗さRzを求めた。
【0050】
メヤニ発生までの時間
ストランド状の成形体を得るときに、ポリエチレン系樹脂と有機酸金属塩とを二軸混練押出機のバレルC1に設けられたホッパー口に投入してから5分後を0分として、ダイス孔へのメヤニの付着が確認されるまでの時間を測定した。
【0051】
【0052】