IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社リコーの特許一覧

特開2023-90210印刷方法、処理液とインクのセット、及び印刷物の製造方法
<>
  • 特開-印刷方法、処理液とインクのセット、及び印刷物の製造方法 図1
  • 特開-印刷方法、処理液とインクのセット、及び印刷物の製造方法 図2
  • 特開-印刷方法、処理液とインクのセット、及び印刷物の製造方法 図3
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023090210
(43)【公開日】2023-06-29
(54)【発明の名称】印刷方法、処理液とインクのセット、及び印刷物の製造方法
(51)【国際特許分類】
   B41M 5/00 20060101AFI20230622BHJP
   C09D 11/54 20140101ALI20230622BHJP
   C09D 11/30 20140101ALI20230622BHJP
   B41J 2/01 20060101ALI20230622BHJP
【FI】
B41M5/00 100
B41M5/00 120
B41M5/00 132
C09D11/54
C09D11/30
B41J2/01 501
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021205060
(22)【出願日】2021-12-17
(71)【出願人】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(74)【代理人】
【識別番号】100107515
【弁理士】
【氏名又は名称】廣田 浩一
(72)【発明者】
【氏名】寺井 希
(72)【発明者】
【氏名】小飯塚 祐介
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 逸郎
(72)【発明者】
【氏名】堀江 舜介
(72)【発明者】
【氏名】萩原 健太
【テーマコード(参考)】
2C056
2H186
4J039
【Fターム(参考)】
2C056FC01
2H186AB03
2H186AB12
2H186AB27
2H186AB39
2H186AB44
2H186AB47
2H186AB54
2H186AB56
2H186AB57
2H186AB61
2H186BA08
2H186DA09
2H186DA17
2H186FB11
2H186FB15
2H186FB16
2H186FB17
2H186FB22
2H186FB25
2H186FB29
2H186FB30
2H186FB48
2H186FB54
2H186FB57
4J039AD09
4J039AE04
4J039BA20
4J039BA30
4J039BE12
4J039BE22
4J039EA36
4J039EA46
4J039EA47
4J039EA48
4J039GA24
(57)【要約】
【課題】インクの初期吐出安定性、及び形成した画像の耐擦過性に優れ、画像のにじみ及び割れの発生を抑制することができる印刷方法の提供。
【解決手段】多価金属塩及び樹脂Aを含有する処理液を基材に付与する処理液付与工程と、色材、沸点が290℃以上の有機溶剤、シリコーン系界面活性剤、及び樹脂Bを含有し、前記沸点が290℃以上の有機溶剤の含有量が、インク全量に対して、0.5質量%以上であるインクを前記処理液上に付与するインク付与工程と、を含む印刷方法である。
【選択図】なし

【特許請求の範囲】
【請求項1】
多価金属塩及び樹脂Aを含有する処理液を基材に付与する処理液付与工程と、
色材、沸点が290℃以上の有機溶剤、シリコーン系界面活性剤、及び樹脂Bを含有し、前記沸点が290℃以上の有機溶剤の含有量が、インク全量に対して、0.5質量%以上であるインクを前記処理液上に付与するインク付与工程と、
を含むことを特徴とする印刷方法。
【請求項2】
沸点が290℃以上の前記有機溶剤の含有量が、インク全量に対して、0.5質量%以上5質量%以下である請求項1に記載の印刷方法。
【請求項3】
前記シリコーン系界面活性剤の含有量が、インク全量に対して、0.1質量%以上3質量%以下である請求項1から2のいずれかに記載の印刷方法。
【請求項4】
前記樹脂Aが、ウレタン樹脂及びアクリル樹脂の少なくともいずれかを含む請求項1から3のいずれかに記載の印刷方法。
【請求項5】
前記樹脂Aの含有量が、処理液全量に対して、2質量%以上10質量%以下である請求項1から4のいずれかに記載の印刷方法。
【請求項6】
前記多価金属塩が、カルシウム塩及びマグネシウム塩の少なくともいずれかを含む請求項1から5のいずれかに記載の印刷方法。
【請求項7】
前記多価金属塩の含有量が、処理液全量に対して、0.1質量%以上3質量%以下である請求項1から6のいずれかに記載の印刷方法。
【請求項8】
多価金属塩及び樹脂を含有する処理液と、
色材、沸点が290℃以上の有機溶剤、シリコーン系界面活性剤、及び樹脂を含有し、前記沸点が290℃以上の有機溶剤の含有量が、インク全量に対して、0.5質量%以上であるインクと、を有することを特徴とする処理液とインクのセット。
【請求項9】
沸点が290℃以上の前記有機溶剤の含有量が、インク全量に対して、0.5質量%以上5質量%以下である請求項8に記載の処理液とインクのセット。
【請求項10】
多価金属塩及び樹脂を含有する処理液を、基材に付与する処理液付与工程と、
色材、沸点が290℃以上の有機溶剤、シリコーン系界面活性剤、及び樹脂を含有し、前記沸点が290℃以上の有機溶剤の含有量が、インク全量に対して、0.5質量%以上であるインクを前記処理液上に付与するインク付与工程と、
を含むことを特徴とする印刷物の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、印刷方法、処理液とインクのセット、及び印刷物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、インクジェットプリンタは家庭用途のみならず、例えば、布、プラスチックフィルム、壁紙、ウィンドウフィルムなど産業用途にも利用されている。
【0003】
インクジェット方式において、一般的には染料インクや溶剤インク、紫外線硬化型インク(UVインク)が用いられている。
近年では、このようなインクを印刷する前に、基材に処理液を付与し、付与した処理液の上にインクを付与する方法もある。
このような方法に用いられるインクと処理液としては、例えば、顔料、水溶性有機溶剤、界面活性剤、及び水を含有するインクジェットインキと、凝集剤、水酸基を3個以上有する化合物を含有する処理液と、含むインキセットについて提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、インクの初期吐出安定性、及び形成した画像の耐擦過性に優れ、画像のにじみ及び割れの発生を抑制することができる印刷方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記課題を解決するための手段としての本発明の印刷方法は、多価金属塩及び樹脂Aを含有する処理液を基材に付与する処理液付与工程と、色材、沸点が290℃以上の有機溶剤、シリコーン系界面活性剤、及び樹脂Bを含有し、前記沸点が290℃以上の有機溶剤の含有量が、インク全量に対して、0.5質量%以上であるインクを前記処理液上に付与するインク付与工程と、を含む印刷方法である。
【発明の効果】
【0006】
本発明によると、インクの初期吐出安定性、及び形成した画像の耐擦過性に優れ、画像のにじみ及び割れの発生を抑制することができる印刷方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1図1は、本発明の印刷物の製造装置の一例を示す斜視説明図である。
図2図2は、本発明の印刷物の製造装置におけるメインタンクの一例を示す斜視説明図である。
図3図3は、本発明の画像形成方法に用いる画像形成装置の一例を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
(印刷方法及び印刷装置)
本発明の印刷方法は、多価金属塩及び樹脂Aを含有する処理液を基材に付与する処理液付与工程と、色材、沸点が290℃以上の有機溶剤、シリコーン系界面活性剤、及び樹脂Bを含有し、前記沸点が290℃以上の有機溶剤の含有量が、インク全量に対して、0.5質量%以上であるインクを前記処理液上に付与するインク付与工程と、を含み、さらに必要に応じてその他の工程を含む。
本発明の印刷方法にかかる印刷装置は、多価金属塩及び樹脂Aを含有する処理液を含む処理液収容部と、前記処理液収容部に収容された処理液を基材に付与する処理液付与手段と、色材、沸点が290℃以上の有機溶剤、シリコーン系界面活性剤、及び樹脂Bを含有し、前記沸点が290℃以上の有機溶剤の含有量が、インク全量に対して、0.5質量%以上であるインクを含むインク収容部と、前記インク収容部に収容された前記インクを前記処理液上に付与するインク付与手段と、を有し、さらに必要に応じてその他の手段を有する。
【0009】
従来技術では、インクジェット記録装置を用いて水性インクジェット用インクの塗膜を形成する際、溶剤量又は活性剤量により、インク滴の初期吐出不良が発生することや、形成した塗膜の耐擦過性が低くなる場合があるという問題があることを本発明者らが見出した。
【0010】
本発明者らが、鋭意検討を重ねた結果、多価金属塩及び樹脂Aを含有する処理液と、色材、沸点が290℃以上の有機溶剤、シリコーン系界面活性剤、及び樹脂Bを含有し、前記沸点が290℃以上の有機溶剤の含有量が、インク全量に対して、0.5質量%以上であるインクとを組み合わせて用いることによって、インクの吐出安定性に優れ、形成した画像の基材への定着性に優れ、画像のにじみ及び割れの発生を抑制することができることを見出した。
【0011】
なお、前記インクを付与する前に、前記処理液を前記基材に付与することから、前記処理液を前処理液と称することがある。
【0012】
<処理液付与工程及び処理液付与手段>
前記処理液付与工程は、多価金属塩及び樹脂Aを含有する処理液を基材に付与する工程である。
前記処理液付与手段は、多価金属塩及び樹脂Aを含有する処理液を含む処理液収容部に収容された処理液を基材に付与する手段である。前記処理液収容部としては、特に制限はなく、公知のインクジェットカートリッジなどを用いることができる。
【0013】
-処理液-
前記処理液は、多価金属塩及び樹脂Aを含有し、さらに必要に応じて、水、有機溶剤、界面活性剤、その他の成分を含有してもよい。
前記有機溶剤、前記界面活性剤、前記その他の成分(例えば、消泡剤、pH調整剤、防腐防黴剤、防錆剤、抗菌剤)は、後述するインクに用いる材料と同様の材料を使用でき、その他、公知の処理液に用いられる材料を使用できる。なお、処理液の有機溶剤としては、沸点を特定することなく、後述するインクで使用可能な有機溶剤を適宜選択することができる。
【0014】
--多価金属塩(凝集剤)--
前記多価金属塩は、凝集剤として機能する。
前記多価金属塩がインク中の成分と反応して画像のにじみ等を抑制することができ、高画質な画像を形成することができる。
また、前記多価金属塩は、インク中の顔料を着滴後に速やかに凝集させ、カラーブリードを抑制するとともに、発色性を向上させる。
【0015】
前記多価金属塩としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、チタン塩、クロム塩、銅塩、コバルト塩、ストロンチウム塩、バリウム塩、鉄塩、アルミニウム塩、カルシウム塩、カリウム塩、マグネシウム塩などが挙げられる。これは1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
これらの中でも、2価の金属塩が好ましく、カルシウム塩、マグネシウム塩などがより好ましい。
前記カルシウム塩としては、炭酸カルシウム、硝酸カルシウム、塩化カルシウム、酢酸カルシウム、硫酸カルシウム、塩化マグネシウム、酢酸マグネシウム、硫酸マグネシウムなどが挙げられる。これは1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0016】
前記多価金属塩の含有量としては、前記処理液の全量に対して、0.1質量%以上5質量%未満が好ましく、0.1質量%以上3質量%以下がより好ましい。前記多価金属塩の含有量が、前記処理液の全量に対して、0.1質量%以上5質量%未満であると、にじみの抑制と、形成した画像の割れを抑制する効果を向上させることができる。また、前記多価金属塩の含有量が、前記処理液の全量に対して、0.1質量%以上3質量%以下であると、画像成立性(色間でにじんだり、塗膜が割れたりすることなく画像として成立していること)を向上させることができる。
【0017】
--樹脂A--
前記樹脂Aとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ウレタン樹脂、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、酢酸ビニル樹脂、スチレン樹脂、ブタジエン樹脂、スチレン-ブタジエン樹脂、塩化ビニル樹脂、アクリルスチレン樹脂、アクリルシリコーン樹脂などが挙げられる。これらの中でも、ウレタン樹脂、アクリル樹脂が好ましい。前記樹脂Aがウレタン樹脂、アクリル樹脂であると、基材への密着性や後述するインクにより形成される画像との密着性及び基材との密着性を向上させることができる。
【0018】
前記樹脂Aの態様としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、樹脂粒子などが挙げられる。
前記樹脂粒子を、水を分散媒として分散した樹脂エマルションの状態で、多価金属塩や有機溶剤などの材料と混合して処理液を得ることが可能である。
前記樹脂粒子としては、適宜合成したものを使用してもよいし、市販品を使用してもよい。前記樹脂Aとしては、1種を単独で使用してもよく、2種類以上を併用してもよい。
【0019】
前記市販品の樹脂微粒子としては、例えば、Xw-Um12(ポリウレタン樹脂、三井化学株式会社製)、Xw-Um3A(ポリウレタン樹脂、三井化学株式会社製)、W6110(ポリウレタン樹脂、三井化学株式会社製、固形分濃度:35質量%)、スーパーフレックス300(ポリウレタン樹脂、第一工業製薬株式会社製、固形分濃度:30質量%)、Xw-Um7(ポリウレタン樹脂、三井化学株式会社製、固形分濃度:30質量%)、モビニール6800(アクリル樹脂、ジャパンコーティングレジン株式会社製、固形分濃度:45質量%)、モビニール6969D(アクリル樹脂、ジャパンコーティングレジン株式会社製、固形分濃度:40質量%)、モビニール6750(アクリル樹脂、ジャパンコーティングレジン株式会社製、固形分濃度:50質量%)、モビニール6810(アクリル樹脂、ジャパンコーティングレジン株式会社製、固形分濃度:40質量%)などが挙げられる。
前記樹脂粒子の体積平均粒径としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、良好な定着性、高い画像硬度を得る点から、10nm以上1,000nm以下が好ましく、10nm以上500nm以下がより好ましく、10nm以上300nm以下が特に好ましい。
前記体積平均粒径は、例えば、粒度分析装置(ナノトラック Wave-UT151、マイクロトラック・ベル株式会社製)を用いて測定することができる。
【0020】
前記樹脂Aの含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、形成する画像の耐擦過性、前記処理液の保存安定性の点から、処理液全量に対して、2質量%以上10質量%以下が好ましく、4質量%以上8質量%以下がより好ましい。前記樹脂Aの含有量が、処理液全量に対して、2質量%以上10質量%以下であると、基材との密着性及び形成した画像との密着性を向上させることができる。
【0021】
前記樹脂Aとしては、ガラス転移温度Tgがウレタン樹脂は-70℃以上0℃以下であることが好ましく、-55℃以上-5℃以下であることがより好ましい。アクリル樹脂は0℃以上100℃以下であることが好ましく、0℃以上80℃以下であることがより好ましい。前記処理液のTgがウレタン樹脂の場合はー55℃以上―5℃以下、アクリル樹脂の場合は0℃以上80℃以下であると、吐出安定性も担保しつつ密着性を向上させることができる。
【0022】
--その他の成分--
前記その他の成分としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
【0023】
前記処理液を付与する方法としては、特に制限無く公知のあらゆる方法を用いる事ができる。例えば、インクジェット法、ブレードコート法、グラビアコート法、グラビアオフセットコート法、バーコート法、ロールコート法、ナイフコート法、エアナイフコート法、コンマコート法、Uコンマコート法、AKKUコート法、スムージングコート法、マイクログラビアコート法、リバースロールコート法、4本ロールコート法、5本ロールコート法、ディップコート法、カーテンコート法、スライドコート法、ダイコート法などが挙げられる。
前記処理液は、カラーインクを付与する前の、前処理液として用いることができる。
【0024】
前記基材としては、従来、記録媒体として用いられているものであれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
【0025】
[記録媒体]
記録媒体としては特に制限はなく、普通紙、光沢紙、特殊紙、布などを用いることもできるが、非浸透性基材を用いても良好な画像形成が可能である。
前記非浸透性基材とは、水透過性、吸収性が低い表面を有する基材であり、内部に多数の空洞があっても外部に開口していない材質も含まれ、より定量的には、ブリストー(Bristow)法において接触開始から30msec1/2までの水吸収量が10mL/m以下である基材をいう。
前記非浸透性基材としては、例えば、塩化ビニル樹脂フィルム、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリカーボネートフィルムなどのプラスチックフィルムを、好適に使用することができる。
その他、一般的な記録媒体として用いられるものに限られず、壁紙、床材、タイル等の建材、Tシャツなど衣料用等の布、テキスタイル、皮革等を適宜使用することができる。また、記録媒体を搬送する経路の構成を調整することにより、セラミックスやガラス、金属などを使用することもできる。
【0026】
<インク付与工程及びインク付与手段>
前記インク付与工程は、色材、沸点が290℃以上の有機溶剤、シリコーン系界面活性剤、及び樹脂Bを含有し、前記沸点が290℃以上の有機溶剤の含有量が、インク全量に対して、0.5質量%以上であるインクを前記処理液上に付与する工程である。
前記インク付与手段は、色材、沸点が290℃以上の有機溶剤、シリコーン系界面活性剤、及び樹脂Bを含有し、前記沸点が290℃以上の有機溶剤の含有量が、インク全量に対して、0.5質量%以上であるインクを含むインク収容部に収容された前記インクを前記処理液上に付与する手段である。前記インク収容容器としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
【0027】
-インク-
以下、インクに用いる色材、沸点が290℃以上の有機溶剤、シリコーン系界面活性剤、樹脂B、水、及びその他の成分などについて説明する。
【0028】
--色材--
前記色材としては特に限定されず、顔料、染料を使用可能である。
前記顔料としては、無機顔料又は有機顔料を使用することができる。これらは、1種単独で用いても良く、2種以上を併用しても良い。また、混晶を使用しても良い。
前記顔料としては、例えば、ブラック顔料、イエロー顔料、マゼンダ顔料、シアン顔料、白色顔料、緑色顔料、橙色顔料、金色や銀色などの光沢色顔料やメタリック顔料などを用いることができる。
前記無機顔料として、酸化チタン、酸化鉄、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、水酸化アルミニウム、バリウムイエロー、カドミウムレッド、クロムイエローに加え、コンタクト法、ファーネス法、サーマル法などの公知の方法によって製造されたカーボンブラックを使用することができる。
また、前記有機顔料としては、アゾ顔料、多環式顔料(例えば、フタロシアニン顔料、ペリレン顔料、ペリノン顔料、アントラキノン顔料、キナクリドン顔料、ジオキサジン顔料、インジゴ顔料、チオインジゴ顔料、イソインドリノン顔料、キノフタロン顔料など)、染料キレート(例えば、塩基性染料型キレート、酸性染料型キレートなど)、ニトロ顔料、ニトロソ顔料、アニリンブラックなどを使用できる。これらの顔料のうち、溶媒と親和性の良いものが好ましく用いられる。その他、樹脂中空粒子、無機中空粒子の使用も可能である。
前記顔料の具体例として、黒色用としては、ファーネスブラック、ランプブラック、アセチレンブラック、チャンネルブラック等のカーボンブラック(C.I.ピグメントブラック7)類、または銅、鉄(C.I.ピグメントブラック11)、酸化チタン等の金属類、アニリンブラック(C.I.ピグメントブラック1)等の有機顔料があげられる。
さらに、カラー用としては、C.I.ピグメントイエロー1、3、12、13、14、17、24、34、35、37、42(黄色酸化鉄)、53、55、74、81、83、95、97、98、100、101、104、108、109、110、117、120、138、150、153、155、180、185、213、C.I.ピグメントオレンジ5、13、16、17、36、43、51、C.I.ピグメントレッド1、2、3、5、17、22、23、31、38、48:2、48:2(パーマネントレッド2B(Ca))、48:3、48:4、49:1、52:2、53:1、57:1(ブリリアントカーミン6B)、60:1、63:1、63:2、64:1、81、83、88、101(べんがら)、104、105、106、108(カドミウムレッド)、112、114、122(キナクリドンマゼンタ)、123、146、149、166、168、170、172、177、178、179、184、185、190、193、202、207、208、209、213、219、224、254、264、C.I.ピグメントバイオレット1(ローダミンレーキ)、3、5:1、16、19、23、38、C.I.ピグメントブルー1、2、15(フタロシアニンブルー)、15:1、15:2、15:3、15:4(フタロシアニンブルー)、16、17:1、56、60、63、C.I.ピグメントグリーン1、4、7、8、10、17、18、36、等がある。
前記染料としては、特に限定されることなく、酸性染料、直接染料、反応性染料、及び塩基性染料が使用可能であり、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。 前記染料として、例えば、C.I.アシッドイエロー 17,23,42,44,79,142、C.I.アシッドレッド 52,80,82,249,254,289、C.I.アシッドブルー 9,45,249、C.I.アシッドブラック 1,2,24,94、C.I.フードブラック 1,2、C.I.ダイレクトイエロー 1,12,24,33,50,55,58,86,132,142,144,173、C.I.ダイレクトレッド 1,4,9,80,81,225,227、C.I.ダイレクトブルー 1,2,15,71,86,87,98,165,199,202、C.I.ダイレクドブラック 19,38,51,71,154,168,171,195、C.I.リアクティブレッド 14,32,55,79,249、C.I.リアクティブブラック 3,4,35が挙げられる。
【0029】
インク中の前記色材の含有量は、画像濃度の向上、良好な定着性や吐出安定性の点から、0.1質量%以上15質量%以下が好ましく、より好ましくは1質量%以上10質量%以下である。
【0030】
前記顔料を分散してインクを得るためには、顔料に親水性官能基を導入して自己分散性顔料とする方法、顔料の表面を樹脂で被覆して分散させる方法、分散剤を用いて分散させる方法、などが挙げられる。
前記顔料に親水性官能基を導入して前記自己分散性顔料とする方法としては、例えば、顔料(例えばカーボン)にスルホン基やカルボキシル基等の官能基を付加することで、水中に分散可能とする方法が挙げられる。
前記顔料の表面を樹脂で被覆して分散させる方法としては、顔料をマイクロカプセルに包含させ、水中に分散可能とする方法が挙げられる。これは、樹脂被覆顔料と言い換えることができる。この場合、インクに配合される顔料はすべて樹脂に被覆されている必要はなく、本発明の効果が損なわれない範囲において、被覆されない顔料や、部分的に被覆された顔料がインク中に分散していてもよい。吐出信頼性、塗膜堅牢性の観点から樹脂被覆顔料が好ましい。
前記分散剤を用いて分散させる方法としては、界面活性剤に代表される、公知の低分子型の分散剤、高分子型の分散剤を用いて分散する方法が挙げられる。
前記分散剤としては、顔料に応じて例えば、アニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤、両性界面活性剤、ノニオン界面活性剤等を使用することが可能である。
竹本油脂社製RT-100(ノニオン系界面活性剤)や、ナフタレンスルホン酸Naホルマリン縮合物も、分散剤として好適に使用できる。
前記分散剤は1種を単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
【0031】
[顔料分散体]
前記顔料に、水や有機溶剤などの材料を混合してインクを得ることが可能である。また、顔料と、その他水や分散剤などを混合して顔料分散体としたものに、水や有機溶剤などの材料を混合してインクを製造することも可能である。
前記顔料分散体は、水、顔料、顔料分散剤、必要に応じてその他の成分を混合、分散し、粒径を調整して得られる。分散は分散機を用いると良い。
前記顔料分散体における顔料の粒径については特に制限はないが、顔料の分散安定性が良好となり、吐出安定性、画像濃度などの画像品質も高くなる点から、最大個数換算で最大頻度が20nm以上500nm以下が好ましく、20nm以上150nm以下がより好ましい。顔料の粒径は、粒度分析装置(ナノトラック Wave-UT151、マイクロトラック・ベル株式会社製)を用いて測定することができる。
前記顔料分散体における顔料の含有量は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、良好な吐出安定性が得られ、また、画像濃度を高める点から、0.1質量%以上50質量%以下が好ましく、0.1質量%以上30質量%以下がより好ましい。
前記顔料分散体は、必要に応じて、フィルター、遠心分離装置などで粗大粒子をろ過し、脱気することが好ましい。
【0032】
--沸点が290℃以上である有機溶剤--
前記沸点が290℃以上である有機溶剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、安息香酸ベンジル、グリセリン(グリセロール)、トリエタノールアミンなどが挙げられる。沸点が290℃以上である有機溶剤を含有することによって、前記インクの連続吐出安定性を向上させることができる。
前記沸点が290℃以上である有機溶剤の含有量としては、インク全量に対して、0.5質量%以上であり、0.5質量%以上5質量%以下が好ましい。前記沸点が290℃以上である有機溶剤の含有量が、インク全量に対して、0.5質量%以上であると、前記インクの初期吐出性及び形成される画像の耐擦過性を向上させることができ、0.5質量%以上5質量%以下であると、前記インクの連続吐出安定性及びインクの乾燥性を向上させることができる。
【0033】
なお、前記インクにはその他の有機溶剤を含有させることもできる。
【0034】
---その他の有機溶剤---
前記その他の有機溶剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、水溶性有機溶剤を用いることができる。
前記水溶性有機溶剤としは、例えば、多価アルコール類、多価アルコールアルキルエーテル類や多価アルコールアリールエーテル類などのエーテル類、含窒素複素環化合物、アミド類、アミン類、含硫黄化合物類などが挙げられる。
前記水溶性有機溶剤の具体例としては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、1,2-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、2,3-ブタンジオール、3-メチル-1,3-ブタンジオール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、1,2-ペンタンジオール、1,3-ペンタンジオール、1,4-ペンタンジオール、2,4-ペンタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,2-ヘキサンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,3-ヘキサンジオール、2,5-ヘキサンジオール、1,5-ヘキサンジオール、1,2,6-ヘキサントリオール、2-エチル-1,3-ヘキサンジオール、エチル-1,2,4-ブタントリオール、1,2,3-ブタントリオール、2,2,4-トリメチル-1,3-ペンタンジオール、ペトリオール等の多価アルコール類、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、テトラエチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル等の多価アルコールアルキルエーテル類、エチレングリコールモノフェニルエーテル、エチレングリコールモノベンジルエーテル等の多価アルコールアリールエーテル類、2-ピロリドン、N-メチル-2-ピロリドン、N-ヒドロキシエチル-2-ピロリドン、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン、ε-カプロラクタム、γ-ブチロラクトン等の含窒素複素環化合物、ホルムアミド、N-メチルホルムアミド、N,N-ジメチルホルムアミド、3-メトキシ-N,N-ジメチルプロピオンアミド、3-ブトキシ-N,N-ジメチルプロピオンアミド等のアミド類、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエチルアミン等のアミン類、ジメチルスルホキシド、スルホラン、チオジエタノール等の含硫黄化合物、プロピレンカーボネート、炭酸エチレン等が挙げられる。
湿潤剤として機能するだけでなく、良好な乾燥性を得られることから、沸点が250℃以下の有機溶剤を用いることが好ましい。
【0035】
また、炭素数8以上のポリオール化合物、及びグリコールエーテル化合物も好適に使用される。炭素数8以上のポリオール化合物の具体例としては、2-エチル-1,3-ヘキサンジオール、2,2,4-トリメチル-1,3-ペンタンジオールなどが挙げられる。
グリコールエーテル化合物の具体例としては、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、テトラエチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル等の多価アルコールアルキルエーテル類;エチレングリコールモノフェニルエーテル、エチレングリコールモノベンジルエーテル等の多価アルコールアリールエーテル類などが挙げられる。
炭素数8以上のポリオール化合物、及びグリコールエーテル化合物は、記録媒体として紙を用いた場合に、インクの浸透性を向上させることができる。
【0036】
前記その他の有機溶剤の含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、インクの乾燥性及び吐出信頼性の点から、インク中全量に対して、10質量%以上60質量%以下が好ましく、20質量%以上60質量%以下がより好ましい。
【0037】
--シリコーン系界面活性剤--
前記シリコーン系界面活性剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
前記シリコーン系界面活性剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、側鎖変性ポリジメチルシロキサン、両末端変性ポリジメチルシロキサン、片末端変性ポリジメチルシロキサン、側鎖両末端変性ポリジメチルシロキサンなどが挙げられ、変性基としてポリオキシエチレン基、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレン基を有するポリエーテル変性シリコーン系界面活性剤が水系界面活性剤として良好な性質を示すので特に好ましい。
【0038】
前記シリコーン系界面活性剤としては、中でも高pHでも分解しないものが好ましく、例えば、側鎖変性ポリジメチルシロキサン、両末端変性ポリジメチルシロキサン、片末端変性ポリジメチルシロキサン、側鎖両末端変性ポリジメチルシロキサン等が挙げられ、変性基としてポリオキシエチレン基、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレン基を有するものが、水系界面活性剤として良好な性質を示すので特に好ましい。
【0039】
また、前記シリコーン系界面活性剤として、ポリエーテル変性シリコーン系界面活性剤を用いることもでき、例えば、ポリアルキレンオキシド構造をジメチルシロキサンのSi部側鎖に導入した化合物等が挙げられる。
【0040】
このような界面活性剤としては、適宜合成したものを使用してもよいし、市販品を使用してもよい。市販品としては、例えば、ビックケミー株式会社、信越化学工業株式会社、東レ・ダウコーニング・シリコーン株式会社、日本エマルジョン株式会社、共栄社化学などから入手できる。
【0041】
上記のポリエーテル変性シリコーン系界面活性剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、一般式(S-1)式で表わされる、ポリアルキレンオキシド構造をジメチルポリシロキサンのSi部側鎖に導入したものなどが挙げられる。
一般式(S-1)
(但し、一般式(S-1)式中、m、n、a、及びbは、それぞれ独立に、整数を表わし、Rは、アルキレン基を表し、R’は、アルキル基を表す。)
【0042】
上記のポリエーテル変性シリコーン系界面活性剤としては、市販品を用いることができ、例えば、KF-618、KF-642、KF-643(信越化学工業株式会社)、EMALEX-SS-5602、SS-1906EX(日本エマルジョン株式会社)、FZ-2105、FZ-2118、FZ-2154、FZ-2161、FZ-2162、FZ-2163、FZ-2164(東レ・ダウコーニング・シリコーン株式会社)、BYK-33、BYK-387(ビックケミー株式会社)、TSF4440、TSF4452、TSF4453(東芝シリコン株式会社)などが挙げられる。
【0043】
前記シリコーン系界面活性剤の含有量としては、インク全量に対して、0.001質量%以上5質量%以下が好ましく、0.05質量%以上5質量%以下がよりこの好ましく、0.1質量%以上3質量%以下が更に好ましい。前記シリコーン系界面活性剤の含有量が、インク全量に対して、0.001質量%以上5質量%以下であると、濡れ性及び吐出安定性を向上させ、画像品質を向上させることができる。また、前記シリコーン系界面活性剤の含有量が、インク全量に対して、0.1質量%以上3質量%以下であると、前記インクの初期吐出安定性及び形成した画像の耐擦過性を向上させることができる。
【0044】
なお、前記インクには前記シリコーン界面活性剤以外のその他の界面活性剤を含有させることもできる。
【0045】
---その他の界面活性剤---
前記その他の界面活性剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、フッ素系界面活性剤、両性界面活性剤、ノニオン系界面活性剤、アニオン系界面活性剤のいずれも使用可能である。
前記フッ素系界面活性剤としては、例えば、パーフルオロアルキルスルホン酸化合物、パーフルオロアルキルカルボン酸化合物、パーフルオロアルキルリン酸エステル化合物、パーフルオロアルキルエチレンオキサイド付加物及びパーフルオロアルキルエーテル基を側鎖に有するポリオキシアルキレンエーテルポリマー化合物が、起泡性が小さいので特に好ましい。前記パーフルオロアルキルスルホン酸化合物としては、例えば、パーフルオロアルキルスルホン酸、パーフルオロアルキルスルホン酸塩等が挙げられる。前記パーフルオロアルキルカルボン酸化合物としては、例えば、パーフルオロアルキルカルボン酸、パーフルオロアルキルカルボン酸塩等が挙げられる。前記パーフルオロアルキルエーテル基を側鎖に有するポリオキシアルキレンエーテルポリマー化合物としては、パーフルオロアルキルエーテル基を側鎖に有するポリオキシアルキレンエーテルポリマーの硫酸エステル塩、パーフルオロアルキルエーテル基を側鎖に有するポリオキシアルキレンエーテルポリマーの塩等が挙げられる。これらフッ素系界面活性剤における塩の対イオンとしては、Li、Na、K、NH、NHCHCHOH、NH(CHCHOH)、NH(CHCHOH)等が挙げられる。
前記両性界面活性剤としては、例えばラウリルアミノプロピオン酸塩、ラウリルジメチルベタイン、ステアリルジメチルベタイン、ラウリルジヒドロキシエチルベタインなどが挙げられる。
前記ノニオン系界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエステル、ポリオキシエチレンアルキルアミン、ポリオキシエチレンアルキルアミド、ポリオキシエチレンプロピレンブロックポリマー、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、アセチレンアルコールのエチレンオキサイド付加物などが挙げられる。
前記アニオン系界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル酢酸塩、ドデシルベンゼンスルホン酸塩、ラウリル酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテルサルフェートの塩、などが挙げられる。
これらは、1種を単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
【0046】
--樹脂B--
前記樹脂Bとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、アクリル系樹脂、酢酸ビニル系樹脂、スチレン系樹脂、ブタジエン系樹脂、スチレン-ブタジエン系樹脂、塩化ビニル系樹脂、アクリルスチレン系樹脂、アクリルシリコーン系樹脂などが挙げられる。
また、前記樹脂Bとしては、これらの樹脂からなる樹脂粒子を用いても良い。樹脂粒子を、水を分散媒として分散した樹脂エマルションの状態で、色材や有機溶剤などの材料と混合してインクを得ることが可能である。
前記樹脂粒子としては、適宜合成したものを使用してもよいし、市販品を使用してもよい。
また、これらは、1種を単独で用いても、2種類以上の樹脂粒子を組み合わせて用いてもよい。
基材への定着性の観点から、ウレタン樹脂もしくはアクリル樹脂を含有することが好ましい。
【0047】
前記樹脂Bの含有量としては、インク全量に対して、1質量%以上30質量%以下が好ましく、2質量%以上10質量%以下がより好ましく、2質量%以上6質量%以下が更に好ましい。前記樹脂Bの含有量が、インク全量に対して、1質量%以上30質量%以下であると、インクの保存安定性及び形成する画像の定着性を向上させることができる。また、前記樹脂Bの含有量が、インク全量に対して、2質量%以上10質量%以下であると、吐出安定性及び形成した画像の定着性を向上させることができる。さらに、前記樹脂Bの含有量が、インク全量に対して、2質量%以上6質量%以下であると、インクの粘度を適切な範囲内に収めることができ、吐出安定性を向上させることができる。
【0048】
前記樹脂Bの態様としては、樹脂粒子を用いても良い。前記樹脂粒子を、水を分散媒として分散した樹脂エマルションの状態で、色材や有機溶剤などの材料と混合してインクを得ることが可能である。前記樹脂粒子としては、適宜合成したものを使用してもよいし、市販品を使用してもよい。また、これらは、1種を単独で用いても、2種類以上の樹脂粒子を組み合わせて用いてもよい。
【0049】
前記樹脂粒子の体積平均粒径としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、良好な定着性、高い画像硬度を得る点から、10nm以上1,000nm以下が好ましく、10nm以上200nm以下がより好ましく、10nm以上100nm以下が特に好ましい。
前記体積平均粒径は、例えば、粒度分析装置(ナノトラック Wave-UT151、マイクロトラック・ベル株式会社製)を用いて測定することができる。
【0050】
インク中の固形分の粒径については、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、吐出安定性、画像濃度などの画像品質を高くする点から、最大個数換算で最大頻度が20nm以上1000nm以下が好ましく、20nm以上150nm以下がより好ましい。固形分は樹脂粒子や顔料の粒子等が含まれる。粒径は、粒度分析装置(ナノトラック Wave-UT151、マイクロトラック・ベル株式会社製)を用いて測定することができる。
【0051】
--水--
前記水の含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、10質量%以上90質量%以下が好ましく、20質量%以上60質量%以下がより好ましい。
【0052】
--その他の成分--
前記その他の成分としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、消泡剤、防腐防黴剤、防錆剤、pH調整剤などが挙げられる。
【0053】
---消泡剤---
前記消泡剤としては、特に制限はなく、例えば、シリコーン系消泡剤、ポリエーテル系消泡剤、脂肪酸エステル系消泡剤などが挙げられる。これらは、1種を単独で用いても、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、破泡効果に優れる点から、シリコーン系消泡剤が好ましい。
【0054】
---防腐防黴剤---
前記防腐防黴剤としては、特に制限はなく、例えば、1,2-ベンズイソチアゾリン-3-オンなどが挙げられる。
【0055】
---防錆剤---
前記防錆剤としては、特に制限はなく、例えば、酸性亜硫酸塩、チオ硫酸ナトリウムなどが挙げられる。
【0056】
---pH調整剤---
前記pH調整剤としては、pHを7以上に調整することが可能であれば、特に制限はなく、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン等のアミンなどが挙げられる。
【0057】
前記インクの物性としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、粘度、表面張力、pH等が以下の範囲であることが好ましい。
インクの25℃での粘度は、印字濃度や文字品位が向上し、また、良好な吐出性が得られる点から、5mPa・s以上30mPa・s以下が好ましく、5mPa・s以上25mPa・s以下がより好ましい。ここで、粘度は、例えば回転式粘度計(東機産業社製RE-80L)を使用することができる。測定条件としては、25℃で、標準コーンローター(1°34’×R24)、サンプル液量1.2mL、回転数50rpm、3分間で測定可能である。
前記インクの表面張力としては、記録媒体上で好適にインクがレベリングされ、インクの乾燥時間が短縮される点から、25℃で、35mN/m以下が好ましく、32mN/m以下がより好ましい。
前記インクのpHとしては、接液する金属部材の腐食防止の観点から、7~12が好ましく、8~11がより好ましい。
【0058】
<その他の工程及びその他の手段>
前記その他の工程としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、乾燥工程などが挙げられる。
前記その他の手段としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、乾燥手段などが挙げられる。
【0059】
<<乾燥工程及び乾燥手段>>
前記乾燥工程としては、前記処理液及び前記インクを乾燥する工程である。
前記乾燥手段としては、前記処理液及び前記インクを乾燥する手段である。
前記乾燥工程においては、特に、記録媒体が非浸透性基材である場合には、非浸透性基材への定着性の向上およびにじみの発生を抑止するために、記録時の乾燥温度は50℃以上が好ましい。記録時の乾燥温度の上限ついては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、吐出信頼性、基材の熱変形の点から120℃以下が好ましい。さらに、インクの基材に対する濡れ性の点から90℃以下がより好ましい。記録前及び記録後の乾燥温度については、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、吐出信頼性、基材の熱変形の点から基材の熱変形の観点から100℃以下が好ましい。
【0060】
[記録物]
本発明のインク記録物は、記録媒体上に、本発明のインクを用いて形成された画像を有してなる。
インクジェット記録装置及びインクジェット記録方法により記録して記録物とすることができる。
【0061】
[記録装置、記録方法]
本発明のインクは、インクジェット記録方式による各種記録装置、例えば、プリンタ、ファクシミリ装置、複写装置、プリンタ/ファックス/コピア複合機、立体造形装置などに好適に使用することができる。
本発明において、記録装置、記録方法とは、記録媒体に対してインクや各種処理液等を吐出することが可能な装置、当該装置を用いて記録を行う方法である。記録媒体とは、インクや各種処理液が一時的にでも付着可能なものを意味する。
この記録装置には、インクを吐出するヘッド部分だけでなく、記録媒体の給送、搬送、排紙に係わる手段、その他、前処理装置、後処理装置と称される装置などを含むことができる。
記録装置、記録方法は、加熱工程に用いる加熱手段、乾燥工程に用いる乾燥手段を有しても良い。加熱手段、乾燥手段には、例えば、記録媒体の印字面や裏面を加熱、乾燥する手段が含まれる。加熱手段、乾燥手段としては、特に限定されないが、例えば、温風ヒーター、赤外線ヒーターを用いることができる。加熱、乾燥は、印字前、印字中、印字後などに行うことができる。加熱温度は40℃以上120℃以下が好ましく、定着性の観点から50℃以上120℃以下がより好ましく、皮革の柔軟性が損なわれないようにするという観点から50℃以上90℃以下がさらに好ましい。
また、記録装置、記録方法は、インクによって文字、図形等の有意な画像が可視化されるものに限定されるものではない。例えば、幾何学模様などのパターン等を形成するもの、3次元像を造形するものも含まれる。
また、記録装置には、特に限定しない限り、吐出ヘッドを移動させるシリアル型装置、吐出ヘッドを移動させないライン型装置のいずれも含まれる。
更に、この記録装置には、卓上型だけでなく、A0サイズの記録媒体への印刷も可能とする広幅の記録装置や、例えばロール状に巻き取られた連続用紙を記録媒体として用いることが可能な連帳プリンタも含まれる。
記録装置の一例について図1乃至図2を参照して説明する。図1は同装置の斜視説明図である。図2はメインタンクの斜視説明図である。記録装置の一例としての画像形成装置400は、シリアル型画像形成装置である。画像形成装置400の外装401内に機構部420が設けられている。ブラック(K)、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)の各色用のメインタンク410(410k、410c、410m、410y)の各インク収容部411は、例えばアルミニウムラミネートフィルム等の包装部材により形成されている。インク収容部411は、例えば、プラスチックス製の収容容器ケース414内に収容される。これによりメインタンク410は、各色のインクカートリッジとして用いられる。
一方、装置本体のカバー401cを開いたときの開口の奥側にはカートリッジホルダ404が設けられている。カートリッジホルダ404には、メインタンク410が着脱自在に装着される。これにより、各色用の供給チューブ436を介して、メインタンク410の各インク排出口413と各色用の吐出ヘッド434とが連通し、吐出ヘッド434から記録媒体へインクを吐出可能となる。
【0062】
この記録装置には、インクを吐出する部分だけでなく、前処理装置、後処理装置と称される装置などを含むことができる。
前処理装置、後処理装置の一態様として、ブラック(K)、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)などのインクの場合と同様に、前処理液や、後処理液を有する液体収容部と液体吐出ヘッドを追加し、前処理液や、後処理液をインクジェット記録方式で吐出する態様がある。
前処理装置、後処理装置の他の態様として、インクジェット記録方式以外の、例えば、ブレードコート法、ロールコート法、スプレーコート法による前処理装置、後処理装置を設ける態様がある。
【0063】
なお、前記インクの付与方法としては、例えば、インクジェット法、ブレードコート法、グラビアコート法、グラビアオフセットコート法、バーコート法、ロールコート法、ナイフコート法、エアナイフコート法、コンマコート法、Uコンマコート法、AKKUコート法、スムージングコート法、マイクログラビアコート法、リバースロールコート法、4本ロールコート法、5本ロールコート法、ディップコート法、カーテンコート法、スライドコート法、ダイコート法などが挙げられる。
【0064】
図3は、本発明の画像形成方法に用いる画像形成装置の一例を示す概略図である。この図3の画像形成装置100は、処理液を付与する手段(処理液塗布装置21)と、インクを吐出する吐出手段(インク吐出ヘッド22)と、搬送ベルト23とを有する。画像形成装置100は、記録媒体11に対して印刷を行う。
【0065】
(処理液とインクのセット)
本発明の処理液とインクのセットは、多価金属塩及び樹脂を含有する処理液と、
色材、沸点が290℃以上の有機溶剤、シリコーン系界面活性剤、及び樹脂を含有し、前記沸点が290℃以上の有機溶剤の含有量が、インク全量に対して、0.5質量%以上であるインクと、を有する。
本発明の処理液とインクのセットにおける処理液とインクは、本発明の印刷方法における前記処理液と、前記インクと同様である。
【0066】
(印刷物の製造方法及び印刷物の製造装置)
本発明の印刷物の製造方法は、多価金属塩及び樹脂を含有する処理液を、基材に付与する処理液付与工程と、色材、沸点が290℃以上の有機溶剤、シリコーン系界面活性剤、及び樹脂を含有し、前記沸点が290℃以上の有機溶剤の含有量が、インク全量に対して、0.5質量%以上であるインクを前記処理液上に付与するインク付与工程と、を含み、さらに必要に応じてその他の工程を含む。
また、本発明の印刷物の製造方法にかかる印刷物の製造装置は、多価金属塩及び樹脂Aを含有する処理液を含む処理液収容部と、前記処理液収容部に収容された処理液を基材に付与する処理液付与手段と、色材、沸点が290℃以上の有機溶剤、シリコーン系界面活性剤、及び樹脂Bを含有し、前記沸点が290℃以上の有機溶剤の含有量が、インク全量に対して、0.5質量%以上であるインクを含むインク収容部と、前記インク収容部に収容された前記インクを前記処理液上に付与するインク付与手段と、を有し、さらに必要に応じてその他の手段を有する。
本発明の印刷物の製造方法は、本発明の印刷方法と同様である。
前記印刷物の製造装置は、前記印刷装置と同様である。
【0067】
また、本発明の用語における、画像形成、記録、印字、印刷等は、いずれも同義語とする。
【0068】
記録媒体、メディア、被印刷物は、いずれも同義語とする。
【実施例0069】
以下、本発明の実施例を説明するが、本発明は、これらの実施例に何ら限定されるものではない。なお、以下の実施例では、特に記載が無い場合、インクの調製、評価は、室温25℃、相対湿度60%RHの条件下で行った。また、実施例の「部」は「質量部」を表し、「%」は、評価基準中のものを除き「質量%」を表す。
【0070】
<処理液aの調製例>
下記処方の材料を混合し、イオン交換水によって全量が100質量部になるようにした後、混合撹拌した。その後、平均孔径5μmのフィルター(ザルトリウス社製、商品名:ミニザルト)でろ過し、処理液aを得た。
[処方]
・1,2-プロパンジオール(商品名:プロピレングリコール、株式会社ADEKA製)
:35質量部
・3-メトキシ-3-メチル-1-ブタノール(商品名:ソルフィット、株式会社クラレ製) :30質量部
・ポリウレタン樹脂(1)(商品名:Xw-Um12、三井化学株式会社製)
:6.0質量部
・SAG-503A(シリコーン界面活性剤、日信化学工業株式会社製):0.5質量部
・酢酸マグネシウム-水和物(富士フィルム和光純薬株式会社製) :0.5質量部
・イオン交換水 :残量(合計:100質量部)
【0071】
<処理液b~rの調製例>
処理液aの調製例において、表1~表3に示す処方に変更した以外は、処理液aの調製例と同様にして、処理液b~rを調製した。なお、表中の樹脂の含有量は固形分量を示す。
【0072】
【表1】
【0073】
【表2】
【0074】
【表3】
【0075】
次に、インクに用いる顔料分散体の調製例について説明する。
【0076】
[ブラック顔料分散体の調製例]
スチレン11.2g、アクリル酸2.8g、ラウリルメタクリレート12g、ポリエチレングリコールメタクリレート4g、スチレンマクロマー4g、及びメルカプトエタノール0.4gを混合し、65℃に昇温した。
次に、スチレン100.8g、アクリル酸25.2g、ラウリルメタクリレート108g、ポリエチレングリコールメタクリレート36g、ヒドロキシルエチルメタクリレート60g、スチレンマクロマー36g、メルカプトエタノール3.6g、アゾビスメチルバレロニトリル2.4g、及びメチルエチルケトン18gの混合溶液を、2.5時間かけてフラスコ内に滴下した。
滴下後、アゾビスメチルバレロニトリル0.8g及びメチルエチルケトン18gの混合溶液を0.5時間かけてフラスコ内に滴下した。
65℃で1時間熟成した後、アゾビスメチルバレロニトリル0.8gを添加し、さらに1時間熟成した。
反応終了後、フラスコ内にメチルエチルケトン364gを添加し、固形分濃度50%のポリマー溶液Aを800g得た。
次いで、ポリマー溶液Aを28g、カーボンブラック(Cabot Corporation社製、Black Pearls 1000)42g、1mol/Lの水酸化カリウム水溶液13.6g、メチルエチルケトン20g、及び水13.6gを十分に撹拌した後、ロールミルで混練した。
得られたペーストを純水200gに入れて充分に撹拌した後、エバポレータでメチルエチルケトンを除去し、平均孔径5μmのポリビニリデンフロライドメンブランフィルターで加圧濾過した後、固形分濃度が20%になるように水分量を調整し、固形分濃度20%のスチレン-アクリル系樹脂被覆ブラック顔料分散体を得た。
【0077】
[シアン顔料分散体の調製例]
ブラック顔料分散体の調製例において、カーボンブラックの代わりにピグメントブルー15:4(SENSIENT社製SMART Cyan 3154BA)を使用する以外は、ブラック顔料分散体の調製例と同様にして、固形分濃度20%のスチレン-アクリル系樹脂被覆シアン顔料分散体を得た。
【0078】
[マゼンタ顔料分散体の調製例]
ブラック顔料分散体の調製例において、カーボンブラックの代わりにピグメントレッド122(Sun Chemical社製Pigment Red 122)を使用する以外は、ブラック顔料分散体の調製例と同様にして、固形分濃度20%のスチレン-アクリル系樹脂被覆マゼンタ顔料分散体を得た。
【0079】
[イエロー顔料分散体の調製例]
ブラック顔料分散体の調製例において、カーボンブラックの代わりにピグメントイエロー74(SENSIENT社製SMART Yellow 3074BA)を使用する以外は、ブラック顔料分散体の調製例と同様にして、固形分濃度20%のスチレン-アクリル系樹脂被覆イエロー顔料分散体を得た。
【0080】
<インクAの調製例>
下記処方の材料を混合し、イオン交換水によって全量が100質量部になるようにした後、混合撹拌する。その後、平均孔径5μmのフィルター(ザルトリウス社製、商品名:ミニザルト)でろ過し、インクAを得た。
[インク処方]
・ブラック顔料分散体 :20質量部
・1,2-プロパンジオール(商品名:プロピレングリコール、株式会社ADEKA製)
:15質量部
・1,3-ブタンジオール(東京化成工業株式会社製) :4質量部
・2-エチル-1,3-ヘキサンジオール(商品名:EHD、株式会社クラレ製)
:1質量部
・3-メトキシ-3-メチル-1-ブタノール(商品名:ソルフィット、株式会社クラレ製) :5質量部
・3-メトキシ-N,N―ジメチルプロピオンアミド(商品名:M100、出光興産株式会社製) :10質量部
・ポリウレタン樹脂(2)(商品名:Xw-Um3A、三井化学株式会社製)
:4.0質量部
・ポリウレタン樹脂(3)(商品名:W6110、三井化学株式会社製、ポリウレタン樹脂、固形分濃度:35質量%) :6.0質量部
・Triton HW1000、ポリ(オキシエチレン)=アルキルエーテル(ダウ・ケミカル社製、非シリコーン界面活性剤) :0.2質量部
・SAG-503A(日信化学工業株式会社製、シリコーン界面活性剤):1.0質量部
・イオン交換水 :残量(合計:100質量部)
【0081】
<インクB~Rの調製例>
インクAの調製例において、表4~表6に示す処方に変更した以外は、インクAの調製例と同様にして、インクB~Rを調製した。なお、表中の樹脂の含有量は固形分量を示す。
なお、インクC、H、M及びQにおいて使用したポリウレタン樹脂(5)は以下の方法で調製した。
【0082】
[ポリウレタン樹脂(5)の調製例]
温度計、窒素ガス導入管、及び撹拌器を備えた窒素置換された容器中で、ポリエステルポリオール(商品名:ポリライトOD-X-2251、DIC株式会社製、平均分子量2,000)200.4g、2,2-ジメチロールプロピオン酸15.7g、イソホロンジイソシアネート48.0g、有機溶剤としてメチルエチルケトン77.1gを、DMTDL(ジブチルスズジラウレート)0.06gを触媒として使用し反応させた。
前記反応を4時間継続した後、希釈溶剤としてメチルエチルケトン30.7gを供給し、更に反応を継続した。
前記反応物の平均分子量が20,000から60,000の範囲に達した時点で、メタノール1.4gを投入し前記反応を終了することによって、ウレタン樹脂の有機溶剤溶液を得た。
次に、前記ウレタン樹脂の有機溶剤溶液に48質量%水酸化カリウム水溶液を13.4g加えることで前記ウレタン樹脂が有するカルボキシル基を中和し、次いで、水715.3gを加え十分に撹拌した後、エージング及び脱溶剤することによって、固形分濃度が30質量%のポリエステル系ウレタン樹脂エマルジョン(ポリウレタン樹脂(5))を得た。
得られたポリウレタン樹脂(5)について、「造膜温度試験装置」(株式会社井元製作所製)で測定した最低造膜温度(MFT)は74℃であった。
【0083】
【表4】
【0084】
【表5】
【0085】
【表6】
【0086】
なお、処理液及びインクにおいて使用した材料の詳細な内容については、以下のとおりである。
[樹脂]
・ポリウレタン樹脂(1)(商品名:Xw-Um12、三井化学株式会社製)
・ポリウレタン樹脂(2)(商品名:Xw-Um3A、三井化学株式会社製)
・ポリウレタン樹脂(3)(商品名:W6110、三井化学株式会社製、固形分濃度:35質量%)
・ポリウレタン樹脂(4)(商品名:スーパーフレックス300、第一工業製薬株式会社製、固形分濃度:30質量%)
・ポリウレタン樹脂(6)(商品名:Xw-Um7、三井化学株式会社製、固形分濃度:30質量%)
・アクリル樹脂(1)(商品名:モビニール6800、ジャパンコーティングレジン株式会社製、固形分濃度:45質量%)
・アクリル樹脂(2)(商品名:モビニール6969D、ジャパンコーティングレジン株式会社製、固形分濃度:40質量%)
・アクリル樹脂(3)(商品名:モビニール6750、ジャパンコーティングレジン株式会社製、固形分濃度:50質量%)
・アクリル樹脂(4)(商品名:モビニール6810、ジャパンコーティングレジン株式会社製、固形分濃度:40質量%)
[有機溶剤]
・1,2-プロパンジオール(商品名:プロピレングリコール、株式会社ADEKA製)
・1,3-プロパンジオール(株式会社ADEKA製)
・1,3-ブタンジオール(東京化成工業株式会社製)
・2-エチル-1,3-ヘキサンジオール(商品名:EHD、株式会社クラレ製)
・3-メチル-1,5-ペンタンジオール(東京化成工業株式会社製)
・3-メトキシ-1-ブタノール(商品名:MB、ダイセル株式会社製)
・3-メトキシ-3-メチル-1-ブタノール(富士フィルム和光純薬株式会社製)
・3-メトキシ-N,N-ジメチルプロピオンアミド(商品名:エクアミドM100、出光興産株式会社製)
・3-ブトキシN,N-ジメチルプロピオンアミド(東京化成工業株式会社製)
[沸点が290℃以上の有機溶剤]
・トリエタノールアミン(シグマアルドリッチ社製)
・グリセリン(阪本薬品工業株式会社製)
[界面活性剤]
・Triton HW1000(ポリ(オキシエチレン)=アルキルエーテル、ダウ・ケミカル社製、非シリコーン系界面活性剤)
・BYK348(ビックケミー・ジャパン株式会社製、シリコーン系界面活性剤)
・SAG-503A(日信化学工業株式会社製、シリコーン系界面活性剤)
[凝集剤(金属塩)]
・酢酸カルシウム-水和物(富士フィルム和光純薬株式会社製)
・酢酸マグネシウム-水和物(富士フィルム和光純薬株式会社製)
・塩化アルミニウム(富士フィルム和光純薬株式会社製)
・塩化ナトリウム(扶桑薬品工業株式会社製)
【0087】
(実施例1~11及び比較例1~8)
表7及び表8の組み合わせで、調製したインクを用いて「インクの初期吐出安定性」、処理液及びインクを用いて形成した画像について「画像の耐擦過性」、「画像のにじみ」及び「画像の割れ」について、以下のようにして評価した。
【0088】
<インクの初期吐出安定性>
吐出評価装置(EV2500、ジェネシス製)に設置したインクジェット用吐出用ヘッドに調製したインクを充填し、メンテナンス動作を行った後に吐出を開始する。
評価装置のカメラでインク滴の吐出を観察し、インク滴が吐出されていないノズル(総数:320個、一列)を不吐出ノズルとし、不吐出ノズルの個数を計数した。下記評価基準に基づいて、インクの初期吐出安定性を評価した。なお、○及び◎が実使用可能なレベルである。
[評価基準]
◎:不吐出ノズルの数が、0個以上5個以下(吐出率:97%以上100%以下)
○:不吐出ノズルの数が、6個以上10個以下(吐出率:94.5%以上97%未満)
×:不吐出ノズルの数が、11個以上(吐出率:94.5%未満)
【0089】
[画像形成]
実施例1~11及び比較例1~8では、インクをインクジェットプリンタ(装置名:Ri100、株式会社リコー製)のブラック部に、処理液をマゼンタ部に、それぞれ充填した。被印刷物として、ポリエステルフェルト(平均厚み2mm)、不織布(平均厚み0.3mm)、PET(平均厚み0.2mm)のそれぞれに対し、処理液をTシャツ きれいモードで、付着量が約3.7g/mのベタ画像を印刷した。
次に、インクの付着量が約13.0g/mのベタ画像を印刷し、80℃の温風乾燥機にて印刷物を乾燥させ、定着を行った。
【0090】
<画像の耐擦過性>
ポリエステルフェルト上に得られた画像を2.5cm×20cmの大きさに切り出し、染色物摩擦堅ろう度試験機(型式;AR-2、インテック株式会社製)に設置し、200gの荷重、白布(カナキン3号)、往復速度30回/分にて、乾摩擦の場合は25回、湿摩擦の場合は5回往復させた後、画像及び白布の状態を観察し、下記の基準で評価した。
なお、評価結果が「○」及び「◎」であれば実使用可能なレベルである。なお、評価基準における「画像異常」とは、画像に傷がついていたり、画像(塗膜)が記録媒体からはがれてしまっている状態のことを意味する。
[評価基準]
◎:綿布及び画像共に異常なし
○:綿布が着色されるものの、目立った画像異常がない
△:綿布が着色され、画像異常がすぐ見てわかる(基材の露出はない)
×:綿布が着色され、基材が露出している
【0091】
<画像のにじみ(色境界にじみ)>
基材上に前処理液を塗布後、各色が互いに隣接する画像の印字後、目視で色境界のにじみの様子を確認した。なお、評価結果が「○」及び「◎」が実使用可能なレベルである。
[評価基準]
◎:まったくにじみがない
○:色境界部のがたつき、色の濃淡がよく見るとある(がたつき、濃淡の幅が1.0mm以下)
△:色境界部のがたつき、色の濃淡がすぐわかる
【0092】
<画像の割れ>
基材上に前処理液を塗布後、インク膜を形成し、乾燥過程を経た後の画像の状態を確認し、下記評価基準に基づき評価する。なお、評価結果が「○」であれば実使用可能なレベルである。
[評価基準]
〇:画像上に割れが発生していない
×:画像上に割れが発生している
【0093】
【表7】
【0094】
【表8】
【0095】
本発明の態様としては、例えば、以下のとおりである。
<1> 多価金属塩及び樹脂Aを含有する処理液を基材に付与する処理液付与工程と、
色材、沸点が290℃以上の有機溶剤、シリコーン系界面活性剤、及び樹脂Bを含有し、前記沸点が290℃以上の有機溶剤の含有量が、インク全量に対して、0.5質量%以上であるインクを前記処理液上に付与するインク付与工程と、
を含むことを特徴とする印刷方法である。
<2> 沸点が290℃以上の前記有機溶剤の含有量が、インク全量に対して、0.5質量%以上5質量%以下である前記<1>に記載の印刷方法である。
<3> 前記シリコーン系界面活性剤の含有量が、インク全量に対して、0.1質量%以上3質量%以下である前記<1>から<2>のいずれかに記載の印刷方法である。
<4> 前記樹脂Aが、ウレタン樹脂及びアクリル樹脂の少なくともいずれかを含む前記<1>から<3>のいずれかに記載の印刷方法である。
<5> 前記樹脂Aの含有量が、処理液全量に対して、2質量%以上10質量%以下である前記<1>から<4>のいずれかに記載の印刷方法である。
<6> 前記多価金属塩が、カルシウム塩及びマグネシウム塩の少なくともいずれかを含む前記<1>から<5>のいずれかに記載の印刷方法である。
<7> 前記多価金属塩の含有量が、処理液全量に対して、0.1質量%以上3質量%以下である前記<1>から<6>のいずれかに記載の印刷方法である。
<8> 多価金属塩及び樹脂を含有する処理液と、
色材、沸点が290℃以上の有機溶剤、シリコーン系界面活性剤、及び樹脂を含有し、前記沸点が290℃以上の有機溶剤の含有量が、インク全量に対して、0.5質量%以上であるインクと、を有することを特徴とする処理液とインクのセットである。
<9> 沸点が290℃以上の前記有機溶剤の含有量が、インク全量に対して、0.5質量%以上5質量%以下である前記<8>に記載の処理液とインクのセットである。
<10> 多価金属塩及び樹脂を含有する処理液を、基材に付与する処理液付与工程と、
色材、沸点が290℃以上の有機溶剤、シリコーン系界面活性剤、及び樹脂を含有し、前記沸点が290℃以上の有機溶剤の含有量が、インク全量に対して、0.5質量%以上であるインクを前記処理液上に付与するインク付与工程と、
を含むことを特徴とする印刷物の製造方法である。
【0096】
前記<1>から<7>のいずれかに記載の印刷方法、前記<8>から<9>のいずれかに記載の処理液とインクのセット、及び前記<10>に記載の印刷物の製造方法によると、従来における諸問題を解決し、本発明の目的を達成することができる。
【符号の説明】
【0097】
400 画像形成装置
401 画像形成装置の外装
401c 装置本体のカバー
404 カートリッジホルダ
410 メインタンク
410k、410c、410m、410y ブラック(K)、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)の各色用のメインタンク
411 インク収容部
413 インク排出口
414 収容容器ケース
420 機構部
434 吐出ヘッド
436 供給チューブ
【先行技術文献】
【特許文献】
【0098】
【特許文献1】特開2019-019187号公報
図1
図2
図3