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特開2023-90251基板処理方法、基板処理装置、およびプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023090251
(43)【公開日】2023-06-29
(54)【発明の名称】基板処理方法、基板処理装置、およびプログラム
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/316 20060101AFI20230622BHJP
   H01L 21/31 20060101ALI20230622BHJP
   C23C 16/40 20060101ALI20230622BHJP
   C23C 16/455 20060101ALI20230622BHJP
【FI】
H01L21/316 X
H01L21/31 B
C23C16/40
C23C16/455
【審査請求】未請求
【請求項の数】18
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021205125
(22)【出願日】2021-12-17
(71)【出願人】
【識別番号】318009126
【氏名又は名称】株式会社KOKUSAI ELECTRIC
(71)【出願人】
【識別番号】000126115
【氏名又は名称】エア・ウォーター株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100145872
【弁理士】
【氏名又は名称】福岡 昌浩
(74)【代理人】
【識別番号】100091362
【弁理士】
【氏名又は名称】阿仁屋 節雄
(72)【発明者】
【氏名】中谷 公彦
(72)【発明者】
【氏名】橋本 良知
(72)【発明者】
【氏名】▲ひろせ▼ 義朗
(72)【発明者】
【氏名】川崎 文男
(72)【発明者】
【氏名】永田 敬輔
(72)【発明者】
【氏名】大塚 保則
【テーマコード(参考)】
4K030
5F045
5F058
【Fターム(参考)】
4K030AA11
4K030AA14
4K030BA44
4K030DA03
4K030DA09
4K030EA04
4K030KA41
5F045AA06
5F045AB32
5F045AC07
5F045AD04
5F045AD05
5F045AE17
5F045AE19
5F045AE21
5F045AE23
5F045DC70
5F045DP19
5F045DP28
5F045DQ05
5F045EF03
5F045EF08
5F045EK06
5F045EM10
5F045GB05
5F045GB06
5F058BC02
5F058BF04
5F058BF27
5F058BF29
5F058BF37
(57)【要約】
【課題】所望の表面上に高い精度で選択的に膜を形成することが可能な技術を提供する。
【解決手段】
表面に導電膜と絶縁膜とが露出した基板を提供する工程と、前記基板に対して、ハロゲン非含有の原料と、酸化剤と、触媒と、をノンプラズマの雰囲気下で供給することにより、前記導電膜および前記絶縁膜のうち前記絶縁膜の表面上に選択的に酸化膜を形成する工程と、を有する。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面に導電膜と絶縁膜とが露出した基板を提供する工程と、
前記基板に対して、ハロゲン非含有の原料と、酸化剤と、触媒と、をノンプラズマの雰囲気下で供給することにより、前記導電膜および前記絶縁膜のうち前記絶縁膜の表面上に選択的に酸化膜を形成する工程と、
を有する基板処理方法。
【請求項2】
前記酸化膜を形成する工程における、前記原料と前記導電膜の表面との反応性は、前記原料と前記絶縁膜の表面との反応性よりも低い請求項1に記載の基板処理方法。
【請求項3】
前記絶縁膜の表面はSi-OH終端を含み、前記導電膜の表面はSi-OH終端非含有である請求項1または2に記載の基板処理方法。
【請求項4】
前記原料は、アルコキシ基を含むか、アルコキシ基とアミノ基とを含むか、もしくは、ヒドリド基とアミノ基とを含む請求項1~3のいずれか1項に記載の基板処理方法。
【請求項5】
前記原料は、Si(OEt)、Si(OMe)、Si(NMe)(OMe)、Si(NMe(OMe)、Si(NMe(OMe)、Si(NMe)(OEt)、Si(NMe(OEt)、Si(NMe(OEt)、Si(NEt)(OMe)、Si(NEt)(OEt)、SiH(NMe、SiH(NEt、SiH(NHt-Bu)、Si(pyrrolidine)(OMe)、Si(pyrrolidine)(OMe)、及びSi(pyrrolidine)(OMe)、SiHN(iPr)、SiHN(iBt)のうち少なくともいずれかを含む請求項1~3のいずれか1項に記載の基板処理方法。
【請求項6】
前記触媒は、ピリジンの共役酸の酸乖離定数を超える共役酸の酸乖離定数を有する環状アミンまたは鎖状アミンを含む請求項1~5のいずれか1項に記載の基板処理方法。
【請求項7】
前記触媒は、共役酸の酸乖離定数が10以上である環状アミンまたは鎖状アミンを含む請求項1~5のいずれか1項に記載の基板処理方法。
【請求項8】
前記触媒は、ピペラジン、ピロリジン、ピペリジン、1,1,3,3-テトラメチルグアニジン、1-メチルピペリジン、ジアザビシクロノネン、2,5-ジメチルピロリジン、1-メチルピロリジン、テトラメチルピロリジン、トリエチルアミン、トリメチルアミン、ジエチルアミン、ジメチルアミン、モノエチルアミン、モノメチルアミン、及びそれらの誘導体のうち少なくともいずれかを含む請求項1~7のいずれか1項に記載の基板処理方法。
【請求項9】
前記酸化膜を形成する工程では、前記基板に対して前記原料を供給する工程と、前記基板に対して前記酸化剤を供給する工程と、を非同時に行うサイクルを所定回数行い、前記原料を供給する工程および前記酸化剤を供給する工程のうち少なくともいずれかでは、前記基板に対して前記触媒を供給する請求項1~8のいずれか1項に記載の基板処理方法。
【請求項10】
前記基板に対して前記酸化剤を供給する時間を前記基板に対して前記原料を供給する時間よりも長くし、前記基板に対して前記酸化剤を供給する工程における前記基板が存在する空間の圧力を、前記基板に対して前記原料を供給する工程における前記基板が存在する空間の圧力よりも高くする請求項9に記載の基板処理方法。
【請求項11】
前記酸化膜を形成する工程を行う前に、前記基板に対して改質剤を供給することにより、前記導電膜および前記絶縁膜のうち前記導電膜の表面に成膜阻害層を形成する工程をさらに有する請求項1~10のいずれか1項に記載の基板処理方法。
【請求項12】
前記成膜阻害層を形成する工程における、前記改質剤と前記導電膜の表面との反応性は、前記改質剤と前記絶縁膜の表面との反応性よりも高い請求項11に記載の基板処理方法。
【請求項13】
前記改質剤は炭化水素基を含み、前記成膜阻害層は炭化水素基終端を含む請求項11または12に記載の基板処理方法。
【請求項14】
前記改質剤はチオール化合物およびホスホン酸化合物のうち少なくともいずれかを含む請求項11~13のいずれか1項に記載の基板処理方法。
【請求項15】
前記導電膜は金属含有膜を含み、前記絶縁膜は金属非含有膜を含む請求項1~14のいずれか1項に記載の基板処理方法。
【請求項16】
前記導電膜は銅膜を含み、前記絶縁膜はシリコン系絶縁膜を含む請求項1~15のいずれか1項に記載の基板処理方法。
【請求項17】
基板が処理される処理室と、
前記処理室内へ基板を提供する提供装置と、
前記処理室内の基板に対してハロゲン非含有の原料を供給する原料供給系と、
前記処理室内の基板に対して酸化剤を供給する酸化剤供給系と、
前記処理室内の基板に対して触媒を供給する触媒供給系と、
前記処理室内に表面に導電膜と絶縁膜とが露出した基板を提供する処理と、前記基板に対して、前記ハロゲン非含有の原料と、前記酸化剤と、前記触媒と、をノンプラズマの雰囲気下で供給することにより、前記導電膜および前記絶縁膜のうち前記絶縁膜の表面上に選択的に酸化膜を形成する処理と、を行わせるように、前記提供装置、前記原料供給系、前記酸化剤供給系、前記触媒供給系を制御することが可能なよう構成される制御部と、
を有する基板処理装置。
【請求項18】
基板処理装置の処理室内に表面に導電膜と絶縁膜とが露出した基板を提供する手順と、
前記基板に対して、ハロゲン非含有の原料と、酸化剤と、触媒と、をノンプラズマの雰囲気下で供給することにより、前記導電膜および前記絶縁膜のうち前記絶縁膜の表面上に選択的に酸化膜を形成する手順と、
をコンピュータによって前記基板処理装置に実行させるプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、基板処理方法、基板処理装置、およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
半導体装置の製造工程の一工程として、基板の表面に露出した材質が異なる複数種類の下地膜のうち特定の下地膜の表面上に選択的に膜を成長させて形成する処理(以下、この処理を選択成長または選択成膜ともいう)が行われることがある(例えば特許文献1,2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2020-155452号公報
【特許文献2】特開2020-155607号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、選択成長を行う際に使用する成膜剤や、その際に生じる副生成物等が、基板の表面に露出した下地膜と反応し、下地膜の材質によってはその下地膜を腐食させ、結果として、選択成長が困難となることがある。
【0005】
本開示の目的は、所望の表面上に高い精度で選択的に膜を形成することが可能な技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様によれば、
表面に導電膜と絶縁膜とが露出した基板を提供する工程と、
前記基板に対して、ハロゲン非含有の原料と、酸化剤と、触媒と、をノンプラズマの雰囲気下で供給することにより、前記導電膜および前記絶縁膜のうち前記絶縁膜の表面上に選択的に酸化膜を形成する工程と、
を行う技術が提供される。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、所望の表面上に高い精度で選択的に膜を形成することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、本開示の一態様で好適に用いられる基板処理装置の縦型処理炉の概略構成図であり、処理炉202部分を縦断面図で示す図である。
図2図2は、本開示の一態様で好適に用いられる基板処理装置の縦型処理炉の概略構成図であり、処理炉202部分を図1のA-A線断面図で示す図である。
図3図3は、本開示の一態様で好適に用いられる基板処理装置のコントローラ121の概略構成図であり、コントローラ121の制御系をブロック図で示す図である。
図4図4は、本開示の一態様における処理シーケンスを示す図である。
図5図5(a)は、表面に導電膜と絶縁膜とを有し、導電膜の表面に自然酸化膜が形成されたウエハの表面部分を示す断面模式図である。図5(b)は、図5(a)の状態から洗浄ステップを行うことで、導電膜の表面から自然酸化膜が除去された後のウエハの表面部分を示す断面模式図である。図5(c)は、図5(b)の状態から改質ステップを行うことで、導電膜の表面に成膜阻害層が形成された後のウエハの表面部分を示す断面模式図である。図5(d)は、図5(c)の状態から成膜ステップを行うことで、絶縁膜の表面上に選択的に膜が形成された後のウエハの表面部分を示す断面模式図である。図5(e)は、図5(d)の状態から熱処理ステップを行うことで、導電膜の表面における成膜阻害層が除去された後のウエハの表面部分を示す断面模式図である。
図6図6は、本開示の変形例1における処理シーケンスを示す図である。
図7図7は、本開示の変形例2における処理シーケンスを示す図である。
図8図8は、実施例1における評価結果を示すグラフである。
図9図9は、実施例2における評価結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
<本開示の一態様>
以下、本開示の一態様について、主に、図1図4図5(a)~図5(e)を参照しつつ説明する。なお、以下の説明において用いられる図面は、いずれも模式的なものであり、図面に示される、各要素の寸法の関係、各要素の比率等は、現実のものとは必ずしも一致していない。また、複数の図面の相互間においても、各要素の寸法の関係、各要素の比率等は必ずしも一致していない。
【0010】
(1)基板処理装置の構成
図1に示すように、処理炉202は温度調整器(加熱部)としてのヒータ207を有する。ヒータ207は円筒形状であり、保持板に支持されることにより垂直に据え付けられている。ヒータ207は、ガスを熱で活性化(励起)させる活性化機構(励起部)としても機能する。
【0011】
ヒータ207の内側には、ヒータ207と同心円状に反応管203が配設されている。反応管203は、例えば石英(SiO)または炭化シリコン(SiC)等の耐熱性材料により構成され、上端が閉塞し下端が開口した円筒形状に形成されている。反応管203の下方には、反応管203と同心円状に、マニホールド209が配設されている。マニホールド209は、例えばステンレス鋼(SUS)等の金属材料により構成され、上端および下端が開口した円筒形状に形成されている。マニホールド209の上端部は、反応管203の下端部に係合しており、反応管203を支持するように構成されている。マニホールド209と反応管203との間には、シール部材としてのOリング220aが設けられている。反応管203はヒータ207と同様に垂直に据え付けられている。主に、反応管203とマニホールド209とにより処理容器(反応容器)が構成される。処理容器の筒中空部には処理室201が形成される。処理室201は、基板としてのウエハ200を収容可能に構成されている。この処理室201内でウエハ200に対する処理が行われる。
【0012】
処理室201内には、第1~第3供給部としてのノズル249a~249cが、マニホールド209の側壁を貫通するようにそれぞれ設けられている。ノズル249a~249cを、それぞれ第1~第3ノズルとも称する。ノズル249a~249cは、例えば石英またはSiC等の耐熱性材料により構成されている。ノズル249a~249cには、ガス供給管232a~232cがそれぞれ接続されている。ノズル249a~249cはそれぞれ異なるノズルであり、ノズル249a,249cのそれぞれは、ノズル249bに隣接して設けられている。
【0013】
ガス供給管232a~232cには、ガス流の上流側から順に、流量制御器(流量制御部)であるマスフローコントローラ(MFC)241a~241cおよび開閉弁であるバルブ243a~243cがそれぞれ設けられている。ガス供給管232aのバルブ243aよりも下流側には、ガス供給管232d,232fがそれぞれ接続されている。ガス供給管232bのバルブ243bよりも下流側には、ガス供給管232e,232gがそれぞれ接続されている。ガス供給管232cのバルブ243cよりも下流側には、ガス供給管232hが接続されている。ガス供給管232d~232hには、ガス流の上流側から順に、MFC241d~241hおよびバルブ243d~243hがそれぞれ設けられている。ガス供給管232a~232hは、例えば、SUS等の金属材料により構成されている。
【0014】
図2に示すように、ノズル249a~249cは、反応管203の内壁とウエハ200との間における平面視において円環状の空間に、反応管203の内壁の下部より上部に沿って、ウエハ200の配列方向上方に向かって立ち上がるようにそれぞれ設けられている。すなわち、ノズル249a~249cは、ウエハ200が配列されるウエハ配列領域の側方の、ウエハ配列領域を水平に取り囲む領域に、ウエハ配列領域に沿うようにそれぞれ設けられている。平面視において、ノズル249bは、処理室201内に搬入されるウエハ200の中心を挟んで後述する排気口231aと一直線上に対向するように配置されている。ノズル249a,249cは、ノズル249bと排気口231aの中心とを通る直線Lを、反応管203の内壁(ウエハ200の外周部)に沿って両側から挟み込むように配置されている。直線Lは、ノズル249bとウエハ200の中心とを通る直線でもある。すなわち、ノズル249cは、直線Lを挟んでノズル249aと反対側に設けられているということもできる。ノズル249a,249cは、直線Lを対称軸として線対称に配置されている。ノズル249a~249cの側面には、ガスを供給するガス供給孔250a~250cがそれぞれ設けられている。ガス供給孔250a~250cは、それぞれが、平面視において排気口231aと対向(対面)するように開口しており、ウエハ200に向けてガスを供給することが可能となっている。ガス供給孔250a~250cは、反応管203の下部から上部にわたって複数設けられている。
【0015】
ガス供給管232aからは、改質剤が、MFC241a、バルブ243a、ノズル249aを介して処理室201内へ供給される。
【0016】
ガス供給管232bからは、原料が、MFC241b、バルブ243b、ノズル249bを介して処理室201内へ供給される。原料は、成膜剤の1つとして用いられる。
【0017】
ガス供給管232cからは、酸化剤が、MFC241c、バルブ243c、ノズル249cを介して処理室201内へ供給される。酸化剤は、成膜剤の1つとして用いられる。
【0018】
ガス供給管232dからは、触媒が、MFC241d、バルブ243d、ガス供給管232a、ノズル249aを介して処理室201内へ供給される。触媒は、成膜剤の1つとして用いられる。
【0019】
ガス供給管232eからは、洗浄剤が、MFC241e、バルブ243e、ガス供給管232b、ノズル249bを介して処理室201内へ供給される。
【0020】
ガス供給管232f~232hからは、不活性ガスが、それぞれMFC241f~241h、バルブ243f~243h、ガス供給管232a~232c、ノズル249a~249cを介して処理室201内へ供給される。不活性ガスは、パージガス、キャリアガス、希釈ガス等として作用する。
【0021】
主に、ガス供給管232a、MFC241a、バルブ243aにより、改質剤供給系が構成される。主に、ガス供給管232b、MFC241b、バルブ243bにより、原料供給系が構成される。主に、ガス供給管232c、MFC241c、バルブ243cにより、酸化剤供給系が構成される。主に、ガス供給管232d、MFC241d、バルブ243dにより、触媒供給系が構成される。主に、ガス供給管232e、MFC241e、バルブ243eにより、洗浄剤供給系が構成される。主に、ガス供給管232f~232h、MFC241f~241h、バルブ243f~243hにより、不活性ガス供給系が構成される。原料供給系、酸化剤供給系、触媒供給系のそれぞれ或いは全てを成膜剤供給系とも称する。
【0022】
上述の各種供給系のうち、いずれか、或いは、全ての供給系は、バルブ243a~243hやMFC241a~241h等が集積されてなる集積型供給システム248として構成されていてもよい。集積型供給システム248は、ガス供給管232a~232hのそれぞれに対して接続され、ガス供給管232a~232h内への各種物質(各種ガス)の供給動作、すなわち、バルブ243a~243hの開閉動作やMFC241a~241hによる流量調整動作等が、後述するコントローラ121によって制御されるように構成されている。集積型供給システム248は、一体型、或いは、分割型の集積ユニットとして構成されており、ガス供給管232a~232h等に対して集積ユニット単位で着脱を行うことができ、集積型供給システム248のメンテナンス、交換、増設等を、集積ユニット単位で行うことが可能なように構成されている。
【0023】
反応管203の側壁下方には、処理室201内の雰囲気を排気する排気口231aが設けられている。図2に示すように、排気口231aは、平面視において、ウエハ200を挟んでノズル249a~249c(ガス供給孔250a~250c)と対向(対面)する位置に設けられている。排気口231aは、反応管203の側壁の下部より上部に沿って、すなわち、ウエハ配列領域に沿って設けられていてもよい。排気口231aには排気管231が接続されている。排気管231には、処理室201内の圧力を検出する圧力検出器(圧力検出部)としての圧力センサ245および圧力調整器(圧力調整部)としてのAPC(Auto Pressure Controller)バルブ244を介して、真空排気装置としての真空ポンプ246が接続されている。APCバルブ244は、真空ポンプ246を作動させた状態で弁を開閉することで、処理室201内の真空排気および真空排気停止を行うことができ、更に、真空ポンプ246を作動させた状態で、圧力センサ245により検出された圧力情報に基づいて弁開度を調節することで、処理室201内の圧力を調整することができるように構成されている。主に、排気管231、APCバルブ244、圧力センサ245により、排気系が構成される。真空ポンプ246を排気系に含めて考えてもよい。
【0024】
マニホールド209の下方には、マニホールド209の下端開口を気密に閉塞可能な炉口蓋体としてのシールキャップ219が設けられている。シールキャップ219は、例えばSUS等の金属材料により構成され、円盤状に形成されている。シールキャップ219の上面には、マニホールド209の下端と当接するシール部材としてのOリング220bが設けられている。シールキャップ219の下方には、後述するボート217を回転させる回転機構267が設置されている。回転機構267の回転軸255は、シールキャップ219を貫通してボート217に接続されている。回転機構267は、ボート217を回転させることでウエハ200を回転させるように構成されている。シールキャップ219は、反応管203の外部に設置された昇降機構としてのボートエレベータ115によって垂直方向に昇降されるように構成されている。ボートエレベータ115は、シールキャップ219を昇降させることで、ウエハ200を処理室201内外に搬入および搬出(搬送)する搬送装置(搬送機構)として構成されている。搬送装置は、処理室201内へウエハ200を提供する提供装置として機能する。
【0025】
マニホールド209の下方には、シールキャップ219を降下させボート217を処理室201内から搬出した状態で、マニホールド209の下端開口を気密に閉塞可能な炉口蓋体としてのシャッタ219sが設けられている。シャッタ219sは、例えばSUS等の金属材料により構成され、円盤状に形成されている。シャッタ219sの上面には、マニホールド209の下端と当接するシール部材としてのOリング220cが設けられている。シャッタ219sの開閉動作(昇降動作や回動動作等)は、シャッタ開閉機構115sにより制御される。
【0026】
基板支持具としてのボート217は、複数枚、例えば25~200枚のウエハ200を、水平姿勢で、かつ、互いに中心を揃えた状態で垂直方向に整列させて多段に支持するように、すなわち、間隔を空けて配列させるように構成されている。ボート217は、例えば石英やSiC等の耐熱性材料により構成される。ボート217の下部には、例えば石英やSiC等の耐熱性材料により構成される断熱板218が多段に支持されている。
【0027】
反応管203内には、温度検出器としての温度センサ263が設置されている。温度センサ263により検出された温度情報に基づきヒータ207への通電具合を調整することで、処理室201内の温度が所望の温度分布となる。温度センサ263は、反応管203の内壁に沿って設けられている。
【0028】
図3に示すように、制御部(制御手段)であるコントローラ121は、CPU(Central Processing Unit)121a、RAM(Random Access Memory)121b、記憶装置121c、I/Oポート121dを備えたコンピュータとして構成されている。RAM121b、記憶装置121c、I/Oポート121dは、内部バス121eを介して、CPU121aとデータ交換可能なように構成されている。コントローラ121には、例えばタッチパネル等として構成された入出力装置122が接続されている。また、コントローラ121には、外部記憶装置123を接続することが可能となっている。
【0029】
記憶装置121cは、例えばフラッシュメモリ、HDD(Hard Disk Drive)、SSD(Solid State Drive)等で構成されている。記憶装置121c内には、基板処理装置の動作を制御する制御プログラムや、後述する基板処理の手順や条件等が記載されたプロセスレシピ等が、読み出し可能に格納されている。プロセスレシピは、後述する基板処理における各手順をコントローラ121によって、基板処理装置に実行させ、所定の結果を得ることができるように組み合わされたものであり、プログラムとして機能する。以下、プロセスレシピや制御プログラム等を総称して、単に、プログラムともいう。また、プロセスレシピを、単に、レシピともいう。本明細書においてプログラムという言葉を用いた場合は、レシピ単体のみを含む場合、制御プログラム単体のみを含む場合、または、それらの両方を含む場合がある。RAM121bは、CPU121aによって読み出されたプログラムやデータ等が一時的に保持されるメモリ領域(ワークエリア)として構成されている。
【0030】
I/Oポート121dは、上述のMFC241a~241h、バルブ243a~243h、圧力センサ245、APCバルブ244、真空ポンプ246、温度センサ263、ヒータ207、回転機構267、ボートエレベータ115、シャッタ開閉機構115s等に接続されている。
【0031】
CPU121aは、記憶装置121cから制御プログラムを読み出して実行すると共に、入出力装置122からの操作コマンドの入力等に応じて記憶装置121cからレシピを読み出すことが可能なように構成されている。CPU121aは、読み出したレシピの内容に沿うように、MFC241a~241hによる各種物質(各種ガス)の流量調整動作、バルブ243a~243hの開閉動作、APCバルブ244の開閉動作および圧力センサ245に基づくAPCバルブ244による圧力調整動作、真空ポンプ246の起動および停止、温度センサ263に基づくヒータ207の温度調整動作、回転機構267によるボート217の回転および回転速度調節動作、ボートエレベータ115によるボート217の昇降動作、シャッタ開閉機構115sによるシャッタ219sの開閉動作等を制御することが可能なように構成されている。
【0032】
コントローラ121は、外部記憶装置123に格納された上述のプログラムを、コンピュータにインストールすることにより構成することができる。外部記憶装置123は、例えば、HDD等の磁気ディスク、CD等の光ディスク、MO等の光磁気ディスク、USBメモリやSSD等の半導体メモリ等を含む。記憶装置121cや外部記憶装置123は、コンピュータ読み取り可能な記録媒体として構成されている。以下、これらを総称して、単に、記録媒体ともいう。本明細書において記録媒体という言葉を用いた場合は、記憶装置121c単体のみを含む場合、外部記憶装置123単体のみを含む場合、または、それらの両方を含む場合がある。なお、コンピュータへのプログラムの提供は、外部記憶装置123を用いず、インターネットや専用回線等の通信手段を用いて行ってもよい。
【0033】
(2)基板処理工程
上述の基板処理装置を用い、半導体装置の製造工程の一工程として、基板を処理する方法、すなわち、基板としてのウエハ200の表面に露出した第1下地膜としての導電膜および第2下地膜としての絶縁膜のうち、第2下地膜としての絶縁膜の表面上に選択的に膜を形成するための処理シーケンスの例について、主に、図4図5(a)~図5(e)を用いて説明する。以下の説明では、便宜上、代表的な例として、第1下地膜としての導電膜が、例えば銅膜(Cu膜)により構成され、第2下地膜としての絶縁膜が、例えばシリコン酸化膜(SiO膜、以下、SiO膜とも称する)により構成される場合について説明する。以下の説明において、基板処理装置を構成する各部の動作はコントローラ121により制御される。
【0034】
本態様における処理シーケンスは、
表面に導電膜と絶縁膜とが露出したウエハ200を提供するステップと、
ウエハ200に対して、ハロゲン非含有の原料と、酸化剤と、触媒と、をノンプラズマの雰囲気下で供給することにより、導電膜および絶縁膜のうち絶縁膜の表面上に選択的に酸化膜を形成するステップと、
を有する。
【0035】
なお、図4に示すように、酸化膜を形成するステップでは、ウエハ200に対して原料を供給するステップと、ウエハ200に対して酸化剤を供給するステップと、含むサイクルを所定回数行う。原料を供給するステップおよび酸化剤を供給するステップのうち少なくともいずれかのステップにおいて、ウエハ200に対して触媒を供給するようにしてもよい。なお、図4では、代表的な例として、原料を供給するステップおよび酸化剤を供給するステップの両方のステップにおいて、触媒を供給する例を示している。また、図4に示すように、酸化膜を形成するステップを行う前に、ウエハ200に対して改質剤を供給することにより、導電膜および絶縁膜のうち導電膜の表面に選択的に成膜阻害層を形成するステップをさらに行うようにしてもよい。成膜阻害層を形成するステップでは、改質剤を、ノンプラズマの雰囲気下で供給することが好ましい。
【0036】
すなわち、図4に示す処理シーケンスは、ノンプラズマの雰囲気下で、
ウエハ200に対して改質剤を供給することにより、導電膜および絶縁膜のうち導電膜の表面に選択的に成膜阻害層を形成するステップと、
ウエハ200に対して原料と触媒とを供給するステップと、ウエハ200に対して酸化剤と触媒とを供給するステップと、を含むサイクルを所定回数(n回、nは1以上の整数)行うことで、導電膜および絶縁膜のうち絶縁膜の表面上に選択的に酸化膜を形成するステップと、
を行う例を示している。
【0037】
本明細書では、上述の処理シーケンスを、便宜上、以下のように示すこともある。以下の変形例や他の態様等の説明においても、同様の表記を用いる。
【0038】
改質剤→(原料+触媒→酸化剤+触媒)×n
【0039】
なお、以下に示す処理シーケンスのように、原料を供給するステップおよび酸化剤を供給するステップのうちいずれかのステップにおいて、ウエハ200に対して触媒を供給するようにしてもよい。
【0040】
改質剤→(原料→酸化剤+触媒)×n
改質剤→(原料+触媒→酸化剤)×n
【0041】
また、図4や以下に示す処理シーケンスのように、成膜阻害層を形成するステップを行う前に、ウエハ200に対して洗浄剤を供給することにより、ウエハ200の表面に形成された自然酸化膜を除去するステップをさらに行うようにしてもよい。
【0042】
洗浄剤→改質剤→(原料+触媒→酸化剤+触媒)×n
洗浄剤→改質剤→(原料→酸化剤+触媒)×n
洗浄剤→改質剤→(原料+触媒→酸化剤)×n
【0043】
本明細書において用いる「ウエハ」という用語は、ウエハそのものを意味する場合や、ウエハとその表面に形成された所定の層や膜との積層体を意味する場合がある。本明細書において用いる「ウエハの表面」という言葉は、ウエハそのものの表面を意味する場合や、ウエハ上に形成された所定の層等の表面を意味する場合がある。本明細書において「ウエハ上に所定の層を形成する」と記載した場合は、ウエハそのものの表面上に所定の層を直接形成することを意味する場合や、ウエハ上に形成されている層等の上に所定の層を形成することを意味する場合がある。本明細書において「基板」という言葉を用いた場合も、「ウエハ」という言葉を用いた場合と同義である。
【0044】
本明細書において用いる「剤」という用語は、ガス状物質および液体状物質のうち少なくともいずれかを含む。液体状物質はミスト状物質を含む。すなわち、改質剤、および成膜剤(原料、酸化剤、触媒)のそれぞれは、ガス状物質を含んでいてもよく、ミスト状物質等の液体状物質を含んでいてもよく、それらの両方を含んでいてもよい。
【0045】
本明細書において用いる「層」という用語は、連続層および不連続層のうち少なくともいずれかを含む。例えば、成膜阻害層は、成膜阻害作用を生じさせることが可能であれば、連続層を含んでいてもよく、不連続層を含んでいてもよく、それらの両方を含んでいてもよい。
【0046】
(ウエハチャージおよびボートロード)
複数枚のウエハ200がボート217に装填(ウエハチャージ)されると、シャッタ開閉機構115sによりシャッタ219sが移動させられて、マニホールド209の下端開口が開放される(シャッタオープン)。その後、図1に示すように、複数枚のウエハ200を支持したボート217は、ボートエレベータ115によって持ち上げられて処理室201内へ搬入(ボートロード)される。この状態で、シールキャップ219は、Oリング220bを介してマニホールド209の下端をシールした状態となる。このようにして、ウエハ200は、処理室201内に提供されることとなる。
【0047】
なお、ボート217に装填されるウエハ200は、図5(a)に示すように、表面に第1下地膜としての導電膜と、第2下地膜としての絶縁膜と、を有する。上述のように、導電膜は、例えばCu膜により構成され、絶縁膜は、例えばSiO膜により構成される。また、導電膜の表面には、図5(a)に示すように、自然酸化膜が形成されている。
【0048】
(圧力調整および温度調整)
ボートロードが終了した後、処理室201内、すなわち、ウエハ200が存在する空間が所望の圧力(真空度)となるように、真空ポンプ246によって真空排気(減圧排気)される。この際、処理室201内の圧力は圧力センサ245で測定され、この測定された圧力情報に基づきAPCバルブ244がフィードバック制御される。また、処理室201内のウエハ200が所望の処理温度となるように、ヒータ207によって加熱される。この際、処理室201内が所望の温度分布となるように、温度センサ263が検出した温度情報に基づきヒータ207への通電具合がフィードバック制御される。また、回転機構267によるウエハ200の回転を開始する。処理室201内の排気、ウエハ200の加熱および回転は、いずれも、少なくともウエハ200に対する処理が終了するまでの間は継続して行われる。
【0049】
(洗浄ステップ)
その後、ウエハ200に対して洗浄剤を供給する。
【0050】
具体的には、バルブ243eを開き、ガス供給管232e内へ洗浄剤を流す。洗浄剤は、MFC241eにより流量調整され、ガス供給管232b、ノズル249bを介して処理室201内へ供給され、排気口231aより排気される。このとき、ウエハ200の側方から、ウエハ200に対して洗浄剤が供給される(洗浄剤供給)。このとき、バルブ243f~243hを開き、ノズル249a~249cのそれぞれを介して処理室201内へ不活性ガスを供給するようにしてもよい。
【0051】
後述する処理条件下でウエハ200に対して洗浄剤を供給することにより、図5(b)に示すように、導電膜の表面に形成された自然酸化膜を除去(エッチング)し、導電膜の表面を露出させることができる。なお、絶縁膜がSiO膜等の酸化膜でない場合は、絶縁膜の表面にも自然酸化膜が形成されている場合があり、この場合は、絶縁膜の表面に形成された自然酸化膜も除去(エッチング)し、絶縁膜の表面も露出させることができる。
【0052】
洗浄ステップにて洗浄剤を供給する際における処理条件としては、
処理温度:50~200℃、好ましくは70~150℃
処理圧力:10~2000Pa、好ましくは100~1500Pa
洗浄剤供給流量:0.05~1slm、好ましくは0.1~0.5slm
洗浄剤供給時間:10~60分、好ましくは30~60分
不活性ガス供給流量(ガス供給管毎):1~10slm、好ましくは2~10slm
が例示される。
【0053】
なお、本明細書における「50~200℃」のような数値範囲の表記は、下限値および上限値がその範囲に含まれることを意味する。よって、例えば、「50~200℃」とは「50℃以上200℃以下」を意味する。他の数値範囲についても同様である。また、本明細書における処理温度とはウエハ200の温度または処理室201内の温度のことを意味し、処理圧力とは処理室201内の圧力のことを意味する。また、供給流量に0slmが含まれる場合、0slmとは、その物質(ガス)を供給しないケースを意味する。これらは、以下の説明においても同様である。
【0054】
導電膜の表面から自然酸化膜を除去し、導電膜の表面を露出させた後、バルブ243eを閉じ、処理室201内への洗浄剤の供給を停止する。そして、処理室201内を真空排気し、処理室201内に残留するガス状物質等を処理室201内から排除する。このとき、バルブ243f~243hを開き、ノズル249a~249cを介して処理室201内へ不活性ガスを供給する。ノズル249a~249cより供給される不活性ガスは、パージガスとして作用し、これにより、処理室201内がパージされる(パージ)。
【0055】
洗浄ステップにてパージを行う際における処理条件としては、
処理圧力:1~30Pa
不活性ガス供給流量(ガス供給管毎):0.5~20slm
不活性ガス供給時間:1~120秒、好ましくは1~60秒
が例示される。なお、本ステップにおいてパージを行う際の処理温度は、洗浄剤を供給する際における処理温度と同様の温度とすることが好ましい。
【0056】
洗浄剤としては、例えば、酢酸(CHCOOH)ガス、ギ酸(HCOOH)ガス、ヘキサフルオロアセチルアセトン(C)ガス、水素(H)ガス等を用いることができる。洗浄剤としては、これらの他、例えば、酢酸水溶液、ギ酸水溶液、フッ化水素(HF)水溶液等を用いることもできる。すなわち、洗浄剤は、ガス状物質であってもよく、液体状物質であってもよい。また、洗浄剤は、ミスト状物質等の液体状物質であってもよい。洗浄剤としては、これらのうち1以上を用いることができる。
【0057】
不活性ガスとしては、窒素(N)ガスや、アルゴン(Ar)ガス、ヘリウム(He)ガス、ネオン(Ne)ガス、キセノン(Xe)ガス等の希ガスを用いることができる。不活性ガスとしては、これらのうち1以上を用いることができる。この点は、後述する各ステップにおいても同様である。
【0058】
なお、処理室201内へウエハ200を搬入する前に、事前に、この基板処理装置とは異なる基板処理装置にて(ex-situにて)、ウエハ200に対して洗浄ステップを行い、導電膜の表面から自然酸化膜を除去し、導電膜の表面を露出させるようにしてもよい。この場合に、絶縁膜がSiO膜等の酸化膜でない場合は、絶縁膜の表面に形成された自然酸化膜も除去し、絶縁膜の表面も露出させることが好ましい。なお、事前に、導電膜や絶縁膜の表面から自然酸化膜が除去され、それらの表面が露出している場合は、洗浄ステップを省略することができる。
【0059】
(改質ステップ)
洗浄ステップを行った後、ウエハ200に対して改質剤を供給する。
【0060】
具体的には、バルブ243aを開き、ガス供給管232a内へ改質剤を流す。改質剤は、MFC241aにより流量調整され、ノズル249aを介して処理室201内へ供給され、排気口231aより排気される。このとき、ウエハ200の側方から、ウエハ200に対して改質剤が供給される(改質剤供給)。このとき、バルブ243f~243hを開き、ノズル249a~249cのそれぞれを介して処理室201内へ不活性ガスを供給するようにしてもよい。
【0061】
後述する処理条件下でウエハ200に対して改質剤を供給することにより、図5(c)に示すように、導電膜の表面に、改質剤を構成する分子の分子構造の少なくとも一部を吸着させて、成膜阻害層を形成するよう導電膜の表面を改質させることができる。すなわち、後述する処理条件下で、ウエハ200に対して導電膜と反応する改質剤を供給することにより、導電膜の表面に、改質剤を構成する分子の分子構造の少なくとも一部を化学吸着させて、成膜阻害層(吸着阻害層)を形成するように導電膜の表面を改質させることができる。これにより、導電膜の最表面を、改質剤を構成する分子の分子構造の少なくとも一部により終端させることが可能となる。例えば、改質剤が炭化水素基を含む場合は、成膜阻害層は炭化水素基終端を含み、導電膜の最表面は、炭化水素基により終端されることとなる。その炭化水素基が、例えばアルキル基である場合、すなわち、改質剤がアルキル基を含む場合は、成膜阻害層はアルキル基終端を含み、導電膜の最表面は、アルキル基により終端されることとなる。
【0062】
なお、本ステップにおける、改質剤と導電膜の表面との反応性は、改質剤と絶縁膜の表面との反応性よりも高いことが好ましい。すなわち、改質剤としては、絶縁膜の表面との反応性よりも、導電膜の表面との反応性の方が高い物質を用いることが好ましい。これにより、導電膜および絶縁膜のうち導電膜の表面に選択的に成膜阻害層を形成することが可能となる。
【0063】
本ステップで形成される成膜阻害層は、改質剤由来の残基である、改質剤を構成する分子の分子構造の少なくとも一部を含む。成膜阻害層は、後述する成膜ステップにおいて、導電膜の表面への原料(成膜剤)の吸着を防ぎ、導電膜の表面上での成膜反応の進行を阻害(抑制)する。
【0064】
改質剤を構成する分子の分子構造の少なくとも一部、すなわち、改質剤由来の残基としては、例えば、炭化水素基を例示することができる。この場合、導電膜の最表面が炭化水素基により終端されることとなる。改質剤由来の残基としての炭化水素基が、例えばアルキル基である場合、導電膜の最表面が、アルキル基により終端されることとなる。導電膜の最表面を終端したアルキル基等の炭化水素基は、成膜阻害層を構成し、後述する成膜ステップにおいて、導電膜の表面への原料(成膜剤)の吸着を防ぎ、導電膜の表面上での成膜反応の進行を阻害(抑制)することを可能とする。
【0065】
ここで、成膜阻害層(成膜抑制層とも称する)は、成膜阻害作用を有することから、インヒビターと呼ばれることもある。なお、本明細書において用いる「インヒビター」との用語は、成膜阻害層を意味する場合の他、改質剤を意味する場合や、改質剤由来の残基、例えば、改質剤を構成する分子の分子構造の少なくとも一部を意味する場合があり、さらには、これら全ての総称として用いる場合もある。
【0066】
なお、本ステップでは、絶縁膜の表面の一部に、改質剤を構成する分子の分子構造の少なくとも一部が吸着することもあるが、その吸着量は僅かであり、導電膜の表面への吸着量の方が圧倒的に多くなる。このような選択的(優先的)な吸着が可能となるのは、本ステップにおける処理条件を処理室201内において改質剤が気相分解しない条件としているためである。また、改質剤として、絶縁膜の表面との反応性よりも、導電膜の表面との反応性の方が高い物質を用いるためである。本ステップでは、処理室201内において改質剤が気相分解しないことから、絶縁膜の表面には、改質剤を構成する分子の分子構造の少なくとも一部が多重堆積することはなく、改質剤を構成する分子の分子構造の少なくとも一部は、導電膜および絶縁膜のうち、導電膜の表面に選択的に吸着し、これにより導電膜の表面が、選択的に、改質剤を構成する分子の分子構造の少なくとも一部により終端されることとなる。
【0067】
改質ステップにて改質剤を供給する際における処理条件としては、
処理温度:室温(25℃)~300℃、好ましくは60~100℃
処理圧力:1~2000Pa、好ましくは10~1000Pa
改質剤供給流量:0.001~2slm、好ましくは0.01~0.5slm
改質剤供給時間:1秒~60分、好ましくは1~12分
不活性ガス供給流量(ガス供給管毎):0~20slm
が例示される。
【0068】
導電膜の表面に選択的に成膜阻害層を形成した後、バルブ243aを閉じ、処理室201内への改質剤の供給を停止する。そして、上述のパージと同様の処理手順、処理条件により、処理室201内に残留するガス状物質等を処理室201内から排除する(パージ)。なお、本ステップにおいてパージを行う際の処理温度は、改質剤を供給する際における処理温度と同様の温度とすることが好ましい。
【0069】
改質剤としては、例えば、チオール化合物を用いることができる。チオール化合物は、水素化された硫黄(S)を有する有機化合物であり、一般式がR-SH(Rは炭化水素基等の有機基)で表される化学構造を有する。R-SHにおけるRは、例えばアルキル基(-C2n+1、nは1~24の整数)やアルキレン基(-(CH-、nは1~24の整数)等を含む。チオール化合物としては、例えば、ドデカンチオール(CH(CH11SH、略称:DDT)、テトラデカンチオール(CH(CH13SH、略称:TDT)、ヘキサデカンチオール(CH(CH15SH、略称:HDT)、オクタデカンチオール(CH(CH17SH、略称:ODT)等を用いることができる。改質剤としては、これらのうち1以上を用いることができる。
【0070】
また、改質剤としては、例えば、ホスホン酸化合物を用いることができる。ホスホン酸化合物は、リン(P)のオキソ酸を母化合物とする有機リン化合物であり、一般式がR-PO(OH)(Rは炭化水素基等の有機基)で表される化学構造を有する。R-PO(OH)におけるRは、例えばアルキル基(-C2n+1、nは1~24の整数)やアルキレン基(-(CH-、nは1~24の整数)等を含む。ホスホン酸化合物としては、例えば、ドデシルホスホン酸(CH(CH11PO(OH)、略称:DDPA)、テトラデシルホスホン酸(CH(CH13PO(OH)、略称:TDPA)、ヘキサデシルホスホン酸(CH(CH15PO(OH)、略称:HDPA)、オクタデシルホスホン酸(CH(CH17PO(OH)、略称:ODPA)等を用いることができる。改質剤としては、これらのうち1以上を用いることができる。
【0071】
(成膜ステップ)
改質ステップを行った後、ウエハ200に対して、成膜剤として、ハロゲン非含有の原料と、酸化剤と、触媒と、をノンプラズマの雰囲気下で供給することにより、絶縁膜の表面上に酸化膜を形成する。すなわち、ウエハ200に対して絶縁膜の表面と反応する成膜剤を供給し、絶縁膜の表面上に選択的に(優先的に)膜を形成する。具体的には、次の原料供給ステップと、酸化剤供給ステップと、を順次実行する。各ステップでは、ヒータ207の出力を調整し、ウエハ200の温度を、改質ステップにおけるウエハ200の温度以下とした状態、好ましくは、図4に示すように、改質ステップにおけるウエハ200の温度よりも低くした状態を維持する。
【0072】
[原料供給ステップ]
本ステップでは、改質ステップを行った後のウエハ200、すなわち、導電膜の表面に選択的に成膜阻害層を形成した後のウエハ200に対して、成膜剤として、原料(原料ガス)および触媒(触媒ガス)を供給する。
【0073】
具体的には、バルブ243b,243dを開き、ガス供給管232b,232d内へ原料、触媒をそれぞれ流す。原料、触媒は、それぞれ、MFC241b,241dにより流量調整され、ノズル249b,249aを介して処理室201内へ供給され、処理室201内で混合されて、排気口231aより排気される。このとき、ウエハ200の側方から、ウエハ200に対して原料および触媒が供給される(原料+触媒供給)。このとき、バルブ243f~243hを開き、ノズル249a~249cのそれぞれを介して処理室201内へ不活性ガスを供給するようにしてもよい。
【0074】
後述する処理条件下でウエハ200に対して原料と触媒とを供給することにより、原料を構成する分子の分子構造の少なくとも一部の、導電膜の表面への化学吸着を抑制しつつ、原料を構成する分子の分子構造の少なくとも一部を、絶縁膜の表面に選択的に化学吸着させることが可能となる。これにより、絶縁膜の表面に選択的に第1層が形成される。第1層は、原料の残基である原料を構成する分子の分子構造の少なくとも一部を含む。すなわち、第1層は、原料を構成する原子の少なくとも一部を含む。
【0075】
なお、原料を構成する分子の分子構造の少なくとも一部を絶縁膜の表面に選択的に化学吸着させることができるのは、導電膜の表面に成膜阻害層が形成されていること、絶縁膜の表面がSi-OH終端(吸着サイト)を含むこと、導電膜の表面がSi-OH終端(吸着サイト)非含有であること等による。すなわち、絶縁膜の表面がSi-OH終端を含むことにより、絶縁膜の表面への原料を構成する分子の分子構造の少なくとも一部の吸着が促進される。一方、導電膜の表面に成膜阻害層が形成されており、導電膜の表面がSi-OH終端を含まないことにより、導電膜の表面への原料を構成する分子の分子構造の少なくとも一部の吸着を抑制することができる。このように、原料と導電膜の表面との反応性は、原料と絶縁膜の表面との反応性よりも低く、このことが、原料を構成する分子の分子構造の少なくとも一部を絶縁膜の表面に選択的に化学吸着させることができる要因の一つとなっている。なお、原料供給ステップにおいて絶縁膜の表面に形成された第1層は、酸化剤供給ステップにおいて第2層へ変化させられるが、第2層の表面はSi-OH終端を含み、導電膜の表面はSi-OH終端非含有である状態が維持されるので、第2サイクル以降も、第1サイクルと同様、選択的な化学吸着が進行することとなる。
【0076】
本ステップでは、触媒を原料とともに供給することにより、上述の反応を、ノンプラズマの雰囲気下で、また、後述するような低い温度条件下で進行させることができる。このように、第1層の形成を、ノンプラズマの雰囲気下で、また、後述するような低い温度条件下で行うことにより、導電膜の表面に形成された成膜阻害層を構成する分子や原子を、導電膜の表面から消滅(脱離)させることなく維持することが可能となる。
【0077】
また、第1層の形成を、ノンプラズマの雰囲気下で、また、後述するような低い温度条件下で行うことにより、処理室201内において原料が熱分解(気相分解)、すなわち、自己分解しないようにすることができる。これにより、分解した活性な原料による成膜阻害層の破壊(脱離、除去、無効化)を抑制することが可能となる。また、これにより、導電膜の表面および絶縁膜の表面に、原料を構成する分子の分子構造の少なくとも一部が多重堆積することを抑制することができ、原料を構成する分子の分子構造の少なくとも一部を絶縁膜の表面に選択的に吸着させることが可能となる。すなわち、第1層の形成を、ノンプラズマの雰囲気下で、また、原料が自己分解しない処理条件下で行うことも、原料を構成する分子の分子構造の少なくとも一部を絶縁膜の表面に選択的に化学吸着させることができる要因の一つとなっている。
【0078】
なお、本ステップでは、導電膜の表面の一部に原料を構成する分子の分子構造の少なくとも一部が吸着することもあるが、その吸着量は、ごく僅かであり、絶縁膜の表面への原料を構成する分子の分子構造の少なくとも一部の吸着量よりも遥かに少量となる。このような選択的(優先的)な吸着が可能となるのは、本ステップにおける処理条件を、ノンプラズマの条件であって、また、後述するような低い温度条件であって、処理室201内において原料が気相分解しない条件としているためである。また、導電膜の表面の全域にわたり成膜阻害層が形成されているのに対し、絶縁膜の表面の多くの領域に成膜阻害層が形成されていないためである。また、絶縁膜の表面の全域にわたりSi-OH終端が形成されているのに対し、導電膜の表面の多くの領域にSi-OH終端が形成されていないためである。
【0079】
本ステップにて原料および触媒を供給する際における処理条件としては、
処理温度:室温(25℃)~200℃、好ましくは25~150℃
処理圧力:13~13330Pa、好ましくは13~4000Pa
原料供給流量:0.001~2slm
触媒供給流量:0.001~2slm
不活性ガス供給流量(ガス供給管毎):0~20slm
各ガス供給時間:0.1~60秒、好ましくは10~50秒
が例示される。
【0080】
絶縁膜の表面に第1層を選択的に形成した後、バルブ243b,243dを閉じ、処理室201内への原料、触媒の供給をそれぞれ停止する。そして、上述のパージと同様の処理手順、処理条件により、処理室201内に残留するガス状物質等を処理室201内から排除する(パージ)。なお、本ステップにおいてパージを行う際の処理温度は、原料および触媒を供給する際における処理温度と同様の温度とすることが好ましい。
【0081】
原料としては、アルコキシ基を含むか、アルコキシ基とアミノ基とを含むか、もしくは、ヒドリド基(H基)とアミノ基とを含むハロゲン非含有の原料を用いることができる。ここで、ハロゲンには、塩素(Cl)、フッ素(F)、臭素(Br)、ヨウ素(I)等が含まれる。
【0082】
アルコキシキ基とは、アルキル基(R)が酸素(O)と結合した構造を有するものであり、-ORの構造式で表される1価の官能基のことである。アルコキシキ基には、メトキシ基(-OMe)、エトキシ基(-OEt)、プロポキシ基(-OPr)、ブトキシ基(-OBu)等が含まれる。アルコキシ基は、直鎖状アルコキシ基だけでなく、イソプロポキシ基(-OiPr)、イソブトキシ基(-OiBu)等の分岐状アルコキシ基であってもよい。また、上述のアルキル基には、メチル基(-Me)、エチル基(-Et)、プロピル基(-Pr)、ブチル基(-Bu)等が含まれる。アルキル基は、直鎖状アルキル基だけでなく、イソプロピル基(-iPr)、イソブチル基(-iBu)、セカンダリブチル基(-secBu)、ターシャリブチル基(-tertBu)等の分岐状アルキル基であってもよい。
【0083】
アミノ基とは、アンモニア(NH)、第一級アミン、第二級アミンのいずれかから水素(H)を除去した構造を有するものであり、-NH、-NHR、-NRR’のうちいずれかの構造式で表される1価の官能基のことである。すなわち、本明細書において用いる「アミノ基」という用語は、置換アミノ基をも含む。構造式中に示したR、R’は、メチル基(-Me)、エチル基(-Et)、プロピル基(-Pr)、ブチル基(-Bu)等を含むアルキル基である。R、R’は、直鎖状アルキル基だけでなく、上述した分岐状アルキル基であってもよい。R、R’は、同一のアルキル基であってもよいし、異なるアルキル基であってもよい。
【0084】
原料としては、例えば、Si(OEt)、Si(OMe)、Si(NMe)(OMe)、Si(NMe(OMe)、Si(NMe(OMe)、Si(NMe)(OEt)、Si(NMe(OEt)、Si(NMe(OEt)、Si(NEt)(OMe)、Si(NEt)(OEt)、SiH(NMe、SiH(NEt、SiH(NHt-Bu)、Si(pyrrolidine)(OMe)、Si(pyrrolidine)(OMe)、Si(pyrrolidine)(OMe)、SiHN(iPr)、SiHN(iBt)等を用いることができる。原料としては、これらのうち1以上を用いることができる。なお、原料がアルコキシ基だけでなくアミノ基をも含む場合、原料供給ステップでは、触媒を供給することなく、上述の反応を進行させることが可能となる。
【0085】
触媒としては、炭素(C)、窒素(N)、及び水素(H)を含み、ピリジン(CN、pKa=5.67)の共役酸の酸乖離定数(pKa)を超える共役酸の酸乖離定数を有する環状アミンまたは鎖状アミンを用いることができる。なお、触媒としては、さらに共役酸の酸乖離定数が10以上である環状アミンまたは鎖状アミンを用いることがより好ましい。なお、本明細書における各種触媒のpKaの値は、25℃におけるpKaの値を示している。
【0086】
触媒としては、例えば、ピペラジン(C10、pKa=9.80)、ピロリジン(CN、pKa=11.3)、ピペリジン(C11N、pKa=11.12)、1,1,3,3-テトラメチルグアニジン(C13、pKa=13.6)、1-メチルピペリジン(C13N、pKa=10.08)、ジアザビシクロノネン(C12、pKa=12.7)、2,5-ジメチルピロリジン(C13N、pKa=11.4)、1-メチルピロリジン(C11N、pKa=10.3)、テトラメチルピロリジン(C17N、pKa=12.2)、トリエチルアミン((CN、pKa=10.75)、トリメチルアミン((CHN、pKa=9.8)、ジエチルアミン((CNH、pKa=10.9)、ジメチルアミン((CHNH、pKa=10.73)、モノエチルアミン((C)NH、pKa=10.6)、モノメチルアミン((CH)NH、pKa=10.6)、それらの誘導体等を用いることができる。また、触媒としては、例えば、一般式NR(R=C2n+1(n≧1)、R,R=C2m+1(m≧0))で表されるアミンを用いることもできる。触媒としては、これらのうち1以上を用いることができる。なお、触媒は、非芳香族アミンであることがより好ましい。これらの点は、後述する酸化剤供給ステップにおいても同様である。
【0087】
[酸化剤供給ステップ]
原料供給ステップが終了した後、ウエハ200、すなわち、絶縁膜の表面に選択的に第1層を形成した後のウエハ200に対して、成膜剤として、酸化剤(酸化ガス)および触媒(触媒ガス)を供給する。
【0088】
具体的には、バルブ243c,243dを開き、ガス供給管232c,232d内へ酸化剤、触媒をそれぞれ流す。酸化剤、触媒は、それぞれ、MFC241c,241dにより流量調整され、ノズル249c,249aを介して処理室201内へ供給され、処理室201内で混合されて、排気口231aより排気される。このとき、ウエハ200の側方から、ウエハ200に対して酸化剤および触媒が供給される(酸化剤+触媒供給)。このとき、バルブ243f~243hを開き、ノズル249a~249cのそれぞれを介して処理室201内へ不活性ガスを供給するようにしてもよい。
【0089】
後述する処理条件下でウエハ200に対して酸化剤と触媒とを供給することにより、原料供給ステップにて絶縁膜の表面に形成された第1層の少なくとも一部を酸化させることが可能となる。これにより、絶縁膜の表面に、第1層が酸化されてなる第2層が形成される。
【0090】
本ステップでは、触媒を酸化剤とともに供給することにより、上述の反応を、ノンプラズマの雰囲気下で、また、後述するような低い温度条件下で進行させることが可能となる。このように、第2層の形成を、ノンプラズマの雰囲気下で、また、後述するような低い温度条件下で行うことにより、導電膜の表面に形成された成膜阻害層を構成する分子や原子を、導電膜の表面から消滅(脱離)させることなく維持することが可能となる。
【0091】
本ステップにて酸化剤および触媒を供給する際における処理条件としては、
処理温度:室温(25℃)~200℃、好ましくは25~150℃
処理圧力:13~13300Pa、好ましくは133~13332Pa
酸化剤供給流量:0.001~10slm
触媒供給流量:0~2slm
不活性ガス供給流量(ガス供給管毎):0~20slm
各ガス供給時間:10~300秒、好ましくは30~200秒
が例示される。
【0092】
なお、酸化剤供給ステップにおいてウエハ200に対して酸化剤を供給する時間を、原料供給ステップにおいてウエハ200に対して原料を供給する時間よりも長くすることが好ましい。また、酸化剤供給ステップにおいてウエハ200に対して酸化剤を供給する際における処理圧力を、原料供給ステップにおいてウエハ200に対して原料を供給する際における処理圧力よりも高くすることが好ましい。このように、原料供給ステップにおける処理条件と、酸化剤供給ステップにおける処理条件と、のバランスを制御することにより、原料供給ステップにおいて生じさせる上述の反応と、酸化剤供給ステップにおいて生じさせる上述の反応とを、より効果的に生じさせることができる。
【0093】
絶縁膜の表面に形成された第1層を酸化させて第2層へ変化(変換)させた後、バルブ243c,243dを閉じ、処理室201内への酸化剤、触媒の供給をそれぞれ停止する。そして、上述のパージと同様の処理手順、処理条件により、処理室201内に残留するガス状物質等を処理室201内から排除する(パージ)。なお、本ステップにおいてパージを行う際の処理温度は、酸化剤および触媒を供給する際における処理温度と同様の温度とすることが好ましい。
【0094】
酸化剤としては、例えば、酸素(O)及び水素(H)含有ガスを用いることができる。O及びH含有ガスとしては、例えば、水蒸気(HOガス)、過酸化水素(H)ガス、水素(H)ガス+酸素(O)ガス、Hガス+オゾン(O)ガス等を用いることができる。O及びH含有ガスとしては、これらのうち1以上を用いることができる。
【0095】
なお、本明細書において「Hガス+Oガス」というような2つのガスの併記記載は、HガスとOガスとの混合ガスを意味している。混合ガスを供給する場合は、2つのガスを供給管内で混合(プリミックス)させた後、処理室201内へ供給するようにしてもよいし、2つのガスを異なる供給管より別々に処理室201内へ供給し、処理室201内で混合(ポストミックス)させるようにしてもよい。
【0096】
触媒としては、例えば、上述の原料供給ステップで例示した各種触媒と同様の触媒を用いることができる。
【0097】
[所定回数実施]
上述の原料供給ステップと、酸化剤供給ステップと、を非同時に、すなわち、同期させることなく行うサイクルを所定回数(n回、nは1以上の整数)行うことにより、図5(d)に示すように、導電膜および絶縁膜のうち、絶縁膜の表面上に選択的に(優先的に)酸化膜を形成することができる。例えば、上述の原料、酸化剤、触媒を用いる場合、絶縁膜の表面上に酸化膜としてSiO膜を選択的に成長させることができる。上述のサイクルは、複数回繰り返すことが好ましい。すなわち、1サイクルあたりに形成される第2層の厚さを所望の膜厚よりも薄くし、第2層を積層することで形成される酸化膜の膜厚が所望の膜厚になるまで、上述のサイクルを複数回繰り返すことが好ましい。
【0098】
上述のように、上述のサイクルを所定回数行うことで、絶縁膜の表面上に選択的に酸化膜を成長させることができる。このとき、導電膜の表面には、成膜阻害層が形成されていることから、導電膜の表面上への酸化膜の成長を抑制することができる。すなわち、上述のサイクルを複数回繰り返すことで、導電膜の表面上への酸化膜の成長を抑制しつつ、絶縁膜の表面上への酸化膜の成長を促進させることができる。
【0099】
なお、上述の各ステップを実施する際、導電膜の表面に形成された成膜阻害層は、上述のように導電膜の表面に維持されることから、導電膜の表面上への酸化膜の成長を抑制することができる。ただし、何らかの要因により、導電膜の表面への成膜阻害層の形成が不十分となる場合等においては、導電膜の表面上への酸化膜の形成、成長が、ごく僅かに生じる場合もある。ただし、この場合であっても、導電膜の表面上に形成される酸化膜の厚さは、絶縁膜の表面上に形成される酸化膜の厚さに比べて、遥かに薄くなる。本明細書において、「選択成長における選択性が高い」とは、導電膜の表面上に酸化膜が全く形成されず、絶縁膜の表面上のみに酸化膜が形成される場合だけではなく、導電膜の表面上に、ごく薄い酸化膜が形成されるものの、絶縁膜の表面上にはそれよりも遥かに厚い酸化膜が形成される場合をも含むものとする。
【0100】
洗浄ステップ、改質ステップ、成膜ステップは、同一処理室内にて(in-situにて)行うことが好ましい。これにより、洗浄ステップによりウエハ200の表面を清浄化させた後(ウエハ200の表面に形成された自然酸化膜を除去した後)、ウエハ200を大気に曝すことなく、すなわち、ウエハ200の表面を清浄な状態に保持したまま、改質ステップ、成膜ステップを行うことができ、絶縁膜の表面上への選択的な酸化膜の形成を適正に行うことが可能となる。すなわち、上述の各ステップを同一処理室内にて(in-situにて)行うことで、高い選択性をもって選択成長を行うことが可能となる。ただし、事前にウエハ200の表面から自然酸化膜を除去している場合は、洗浄ステップを省略することができ、この場合は、改質ステップ、成膜ステップを同一処理室内にて(in-situにて)行うことで、高い選択性をもって選択成長を行うことが可能となる。なお、各ステップを行った後のウエハ200の表面を適正に保つことが可能な場合は、洗浄ステップ、改質ステップ、成膜ステップのそれぞれを、異なる処理室内にて(ex-situにて)行うこともできる。
【0101】
(熱処理ステップ)
成膜ステップを行った後、ウエハ200、すなわち、絶縁膜の表面上に選択的に酸化膜を形成した後のウエハ200に対して熱処理を行う。このとき、処理室201内の温度、すなわち、絶縁膜の表面上に選択的に酸化膜を形成した後のウエハ200の温度を、上述の各ステップにおけるウエハ200の温度以上とするように、好ましくは、上述の各ステップにおけるウエハ200の温度よりも高くするように、ヒータ207の出力を調整することが好ましい。
【0102】
ウエハ200に対して熱処理(アニール処理)を行うことで、成膜ステップにて絶縁膜の表面上に形成された酸化膜に含まれる不純物の除去や、欠陥の修復を行うことができる。また、ウエハ200に対してアニール処理を行うことで、導電膜の表面に形成された成膜阻害層を除去または無効化させることができる。図5(e)は、導電膜の表面における成膜阻害層を除去した後のウエハ200の表面部分を示している。
【0103】
なお、このステップを、処理室201内へ不活性ガスを供給した状態で行ってもよく、酸化剤(酸化ガス)等の反応性物質を供給した状態で行ってもよい。この場合の不活性ガスや酸化剤(酸化ガス)等の反応性物質をアシスト物質とも称する。アシスト物質を供給することで、絶縁膜の表面上に形成された酸化膜に含まれる不純物の除去や、欠陥の修復を効率的かつ効果的に行うことができ、また、導電膜の表面に形成された成膜阻害層の除去または無効化を効率的かつ効果的に行うことができる。なお、絶縁膜の表面上に形成された酸化膜に対して不純物の除去や、欠陥の修復が不要である場合や、導電膜の表面に形成された成膜阻害層の除去または無効化が不要である場合には、アニール処理を、省略することもできる。
【0104】
熱処理ステップにて熱処理を行う際における処理条件としては、
処理温度:120~500℃、好ましくは300~400℃
処理圧力:1~120000Pa
処理時間:1~18000秒
アシスト物質供給流量:0~50slm
が例示される。なお、導電膜がCu膜である場合は、熱処理を行う際における処理温度を上述のように設定することが好ましいが、導電膜がCu膜以外の膜である場合は、熱処理を行う際における処理温度を、例えば120~800℃、好ましくは300~650℃とすることができる。
【0105】
(アフターパージおよび大気圧復帰)
熱処理ステップが完了した後、ノズル249a~249cのそれぞれからパージガスとしての不活性ガスを処理室201内へ供給し、排気口231aより排気する。これにより、処理室201内がパージされ、処理室201内に残留するガスや反応副生成物等が処理室201内から除去される(アフターパージ)。その後、処理室201内の雰囲気が不活性ガスに置換され(不活性ガス置換)、処理室201内の圧力が常圧に復帰される(大気圧復帰)。
【0106】
(ボートアンロードおよびウエハディスチャージ)
その後、ボートエレベータ115によりシールキャップ219が下降され、マニホールド209の下端が開口される。そして、処理済のウエハ200が、ボート217に支持された状態でマニホールド209の下端から反応管203の外部に搬出(ボートアンロード)される。ボートアンロードの後は、シャッタ219sが移動させられ、マニホールド209の下端開口がOリング220cを介してシャッタ219sによりシールされる(シャッタクローズ)。処理済のウエハ200は、反応管203の外部に搬出された後、ボート217より取り出される(ウエハディスチャージ)。
【0107】
(3)本態様による効果
本態様によれば、以下に示す1つ又は複数の効果が得られる。
【0108】
(a)成膜ステップにおいて、ハロゲン非含有の原料と、酸化剤と、触媒と、をノンプラズマの雰囲気下で供給することにより、選択成長を行う際に使用する原料や、選択成長の際に生じる副生成物等が、ウエハ200の表面に露出した導電膜と反応し、導電膜を腐食させることを抑制することができる。これによりデバイスの信頼性が低下することを抑制することができる。また、原料や副生成物等が、ウエハ200の表面に露出した導電膜と反応し、選択成長が困難となることを抑制することができる。
【0109】
(b)原料がアルコキシ基を含むことにより、上述した低温条件下での絶縁膜上への成膜が可能となる。また、原料がさらにアミノ基を含むことにより、触媒を用いることなく原料を絶縁膜上に化学吸着させ、上述した低温条件下での絶縁膜上への成膜が可能となる。
【0110】
(c)原料として、Si(OMe)、Si(NMe)(OMe)、Si(NMe(OMe)、Si(NMe(OMe)、Si(NMe)(OEt)、Si(NMe(OEt)、Si(NMe(OEt)、Si(NEt)(OMe)、Si(NEt)(OEt)、SiH(NMe、SiH(NEt、SiH(NHt-Bu)、Si(pyrrolidine)(OMe)、Si(pyrrolidine)(OMe)、Si(pyrrolidine)(OMe)のうち少なくともいずれかを用いることにより、選択成長の際に塩化水素(HCl)等の副生成物を生じさせないようにすることができる。また、選択成長の際に、原料と導電膜との反応や、HCl等の副生成物と導電膜との反応や、原料やHCl等の副生成物による導電膜の腐食を抑制することが可能となる。
【0111】
(d)触媒として、ピリジンの共役酸の酸乖離定数を超える共役酸の酸乖離定数を有する環状アミンまたは鎖状アミンを用いることにより、触媒と導電膜との反応や、触媒による導電膜の腐食を抑制することが可能となる。また、共役酸の酸乖離定数が10以上である環状アミンまたは鎖状アミンを用いることにより、触媒と導電膜との反応や、触媒による導電膜の腐食を十分に抑制することが可能となる。
【0112】
(e)成膜ステップでは、原料供給ステップと酸化剤供給ステップとを非同時に行うサイクルを所定回数行い、原料供給ステップおよび酸化剤供給ステップのうち少なくともいずれかで、ウエハ200に対して触媒を供給することにより、上述した低温条件下で、制御性よく選択成長を行うことが可能となる。
【0113】
(f)成膜ステップを行う前に、改質ステップを行い、導電膜および絶縁膜のうち導電膜の表面に成膜阻害層を形成した場合であっても、選択成長を行う際に使用する原料や、選択成長の際に生じる副生成物等が、成膜阻害層を構成する分子の分子間の隙間を通って導電膜に到達する場合がある。その場合であっても、成膜阻害層を構成する分子の分子間の隙間を通って導電膜に到達した原料や副生成物等が、導電膜と反応し、導電膜を腐食させることを抑制することができる。これによりデバイスの信頼性が低下することを抑制することができる。また、その場合であっても、成膜阻害層を構成する分子の分子間の隙間を通って導電膜に到達した原料や副生成物等が、導電膜と反応し、成膜阻害層を構成する分子が導電膜の表面から脱離して、選択成長が困難となることを抑制することができる。
【0114】
(g)改質ステップにおいて、改質剤と導電膜の表面との反応性を、改質剤と絶縁膜との反応性よりも高くすることにより、導電膜および絶縁膜のうち導電膜の表面に選択的に成膜阻害層を形成することが可能となる。
【0115】
(h)上述の効果は、上述の洗浄剤群、改質剤群、原料群、酸化剤群、触媒群、不活性ガス群から、所定の物質(ガス状物質、液体状物質)を任意に選択して用いる場合においても、同様に得ることができる。
【0116】
(4)変形例
本態様における基板処理シーケンスは、以下に示す変形例のように変更することができる。これらの変形例は、任意に組み合わせることができる。特に説明がない限り、各変形例の各ステップにおける処理手順、処理条件は、上述の基板処理シーケンスの各ステップにおける処理手順、処理条件と同様とすることができる。
【0117】
(変形例1)
図4に示す処理シーケンスでは、原料供給ステップにおいて、原料と一緒に触媒を供給する例について説明したが、図6および以下に示す処理シーケンスのように、原料供給ステップでは、ウエハ200に対して触媒を供給することなく、反応性ガスとして原料を単独で供給するようにしてもよい。このとき、原料と一緒に不活性ガスを供給するようにしてもよい。
【0118】
洗浄剤→改質剤→(原料→酸化剤+触媒)×n
【0119】
特に、原料がアミノ基を含む場合、上述の態様における処理条件と同様の処理条件下であっても、触媒を供給することなく、原料を構成する分子の分子構造の少なくとも一部の、導電膜の表面への化学吸着を抑制しつつ、原料を構成する分子の分子構造の少なくとも一部を、絶縁膜の表面に選択的に化学吸着させることが可能となる。
【0120】
この場合、特に、酸化剤供給ステップにおいてウエハ200に対して酸化剤を供給する時間を、原料供給ステップにおいてウエハ200に対して原料を供給する時間よりも長くすることが好ましい。また、この場合、特に、酸化剤供給ステップにおいてウエハ200に対して酸化剤を供給する際における処理圧力を、原料供給ステップにおいてウエハ200に対して原料を供給する際における処理圧力よりも高くすることが好ましい。このように、原料供給ステップにおける処理条件と、酸化剤供給ステップにおける処理条件と、のバランスを制御することにより、原料と一緒に触媒を供給しない場合であっても、原料供給ステップにおいて生じさせる上述の反応と、酸化剤供給ステップにおいて生じさせる上述の反応とを、より効果的に生じさせることができる。なお、この効果は、原料がアルコキシ基とアミノ基との両方を含む場合に、特に顕著に得られることとなる。
【0121】
変形例1においても上述の態様と同様の効果が得られる。さらに、変形例1によれば、成膜ステップにおける触媒の使用量を大幅に低減させることが可能となる。また、それにより、触媒と導電膜との反応や、触媒による導電膜の腐食を、さらに抑制することが可能となる。
【0122】
(変形例2)
図4に示す処理シーケンスでは、成膜ステップを行う前に、改質ステップを行う例について説明したが、図7および以下に示す処理シーケンスのように、改質ステップを省略するようにしてもよい。なお、図7および以下に示す処理シーケンスは、変形例1と同様、原料供給ステップにおいて、ウエハ200に対して触媒を供給することなく、反応性ガスとして原料を単独で供給する例を示している。このとき、原料と一緒に不活性ガスを供給するようにしてもよい。
【0123】
洗浄剤→(原料→酸化剤+触媒)×n
【0124】
改質ステップを省略する場合であっても、すなわち、導電膜の表面に成膜阻害層を形成しない場合であっても、上述の原料、触媒、酸化剤を用いることにより、導電膜および絶縁膜のうち、絶縁膜の表面上に選択的に酸化膜を形成することができる。
【0125】
導電膜の表面に成膜阻害層を形成しない場合であっても、絶縁膜の表面上に選択的に酸化膜を形成することができるのは、絶縁膜の表面がSi-OH終端(吸着サイト)を含み、導電膜の表面がSi-OH終端(吸着サイト)非含有であること等による。すなわち、絶縁膜の表面がSi-OH終端を含むことにより、原料供給ステップにおいて、絶縁膜の表面への原料を構成する分子の分子構造の少なくとも一部の吸着が促進される。一方、導電膜の表面がSi-OH終端を含まないことにより、原料供給ステップにおいて、導電膜の表面への原料を構成する分子の分子構造の少なくとも一部の吸着を抑制することができる。このように、原料と導電膜の表面との反応性は、原料と絶縁膜の表面との反応性よりも低く、このことが、原料供給ステップにおいて、原料を構成する分子の分子構造の少なくとも一部を絶縁膜の表面に選択的に化学吸着させることができる要因の一つとなっている。なお、原料供給ステップにおいて絶縁膜の表面に形成された第1層は、酸化剤供給ステップにおいて第2層へ変化させられるが、第2層の表面はSi-OH終端を含み、導電膜の表面はSi-OH終端非含有である状態が維持されるので、第2サイクル以降も、第1サイクルと同様、選択的な化学吸着が進行することとなる。
【0126】
なお、本変形例においても、以下に示す処理シーケンスのように、原料を供給するステップおよび酸化剤を供給するステップの両方のステップにおいて、ウエハ200に対して触媒を供給するようにしてもよいし、原料を供給するステップにおいて、ウエハ200に対して触媒を供給するようにしてもよい。
【0127】
洗浄剤→(原料+触媒→酸化剤+触媒)×n
洗浄剤→(原料+触媒→酸化剤)×n
【0128】
変形例2においても上述の態様と同様の効果が得られる。さらに、変形例2によれば、改質ステップを省略することができるので、改質剤の使用量をゼロとすることができる。さらに、改質ステップを省略することができる分、トータルでの処理時間を短縮させることができ、スループット、すなわち、基板処理の生産性を大幅に向上させることが可能となる。ただし、上述の態様のように、改質ステップを行う方が、より高い選択性を得ることができる。
【0129】
<本開示の他の態様>
以上、本開示の態様を具体的に説明した。しかしながら、本開示は上述の態様に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能である。
【0130】
例えば、上述の態様では、代表的な例として、第1下地膜としての導電膜が、例えばCu膜により構成され、第2下地膜としての絶縁膜が、例えばSiO膜により構成される例について説明した。導電膜としては、Cu膜の他、例えば、コバルト膜(Co膜)、ルテニウム膜(Ru膜)、チタン膜(Ti膜)、アルミニウム膜(Al膜)、モリブデン膜(Mo膜)、タングステン膜(W膜)、チタン窒化膜(TiN膜)等の金属含有膜であってもよい。導電膜は、これらのうち1以上を含んでいてもよい。絶縁膜としては、SiO膜の他、例えば、シリコン酸炭化膜(SiOC膜)、シリコン酸炭窒化膜(SiOCN膜)、シリコン酸窒化膜(SiON膜)、シリコン窒化膜(SiN膜)、シリコン硼炭窒化膜(SiBCN膜)、シリコン硼窒化膜(SiBN膜)、シリコン硼炭化膜(SiBC膜)、シリコン炭化膜(SiC膜)等の金属非含有膜であってもよい。絶縁膜は、これらのうち1以上を含んでいてもよい。第1下地膜としての導電膜が金属含有膜を含み、第2下地膜としての絶縁膜が金属非含有膜を含む場合、上述の態様に示す効果が特に顕著に得られることとなる。例えば、第1下地膜としての導電膜がCu膜を含み、第2下地膜としての絶縁膜が上述のシリコン系絶縁膜を含む場合、上述の態様に示す効果が特に顕著に得られることとなる。
【0131】
各処理に用いられるレシピは、処理内容に応じて個別に用意し、電気通信回線や外部記憶装置123を介して記憶装置121c内に格納しておくことが好ましい。そして、各処理を開始する際、CPU121aが、記憶装置121c内に格納された複数のレシピの中から、処理内容に応じて適正なレシピを適宜選択することが好ましい。これにより、1台の基板処理装置で様々な膜種、組成比、膜質、膜厚の膜を、再現性よく形成することができるようになる。また、オペレータの負担を低減でき、操作ミスを回避しつつ、各処理を迅速に開始できるようになる。
【0132】
上述のレシピは、新たに作成する場合に限らず、例えば、基板処理装置に既にインストールされていた既存のレシピを変更することで用意するようにしてもよい。レシピを変更する場合は、変更後のレシピを、電気通信回線や当該レシピを記録した記録媒体を介して、基板処理装置にインストールするようにしてもよい。また、既存の基板処理装置が備える入出力装置122を操作し、基板処理装置に既にインストールされていた既存のレシピを直接変更するようにしてもよい。
【0133】
上述の態様では、一度に複数枚の基板を処理するバッチ式の基板処理装置を用いて膜を形成する例について説明した。本開示は上述の態様に限定されず、例えば、一度に1枚または数枚の基板を処理する枚葉式の基板処理装置を用いて膜を形成する場合にも、好適に適用することができる。また、上述の態様では、ホットウォール型の処理炉を有する基板処理装置を用いて膜を形成する例について説明した。本開示は上述の態様に限定されず、コールドウォール型の処理炉を有する基板処理装置を用いて膜を形成する場合にも、好適に適用することができる。
【0134】
これらの基板処理装置を用いる場合においても、上述の態様や変形例における処理手順、処理条件と同様な処理手順、処理条件にて各処理を行うことができ、上述の態様や変形例と同様の効果が得られる。
【0135】
上述の態様や変形例は、適宜組み合わせて用いることができる。このときの処理手順、処理条件は、例えば、上述の態様や変形例における処理手順、処理条件と同様とすることができる。
【実施例0136】
<実施例1>
表面に導電膜としてのCu膜と絶縁膜としてのSiO膜とが露出したウエハに対し、以下に示す処理シーケンスにより、洗浄ステップ、改質ステップ、成膜ステップを順次行った。洗浄剤、改質剤、原料、酸化剤、触媒、不活性ガスとしては、それぞれ、上述の態様に示す各ステップで使用可能な物質を用いた。各ステップを行う際における処理条件は、上述の態様に示す各ステップを実現可能な処理条件とした。
【0137】
洗浄剤→改質剤→(原料→酸化剤+触媒)×n
【0138】
そして、SiO膜上、および、Cu膜(表面に成膜阻害層が形成されたCu膜)上に形成された酸化膜(SiO膜)の膜厚をそれぞれ測定した。その結果を図8に示す。図8の縦軸は、成膜ステップを行うことで形成された酸化膜の膜厚(nm)を、横軸は、酸化膜の下地(SiO膜、Cu膜)をそれぞれ示している。
【0139】
図8に示すように、SiO膜上に形成された酸化膜の厚さは14nm程度であった。これに対し、Cu膜上には酸化膜は形成されていなかった。このように、図6に示す成膜シーケンスによれば、成膜ステップの前に改質ステップを実施することで、非常に高い選択性をもってSiO膜上への酸化膜(SiO膜)の選択成長が可能であることを確認することができた。
【0140】
<実施例2>
表面に導電膜としてのCu膜と絶縁膜としてのSiO膜とが露出したウエハに対し、以下に示す処理シーケンスにより、洗浄ステップ、成膜ステップを順次行った(改質ステップは不実施)。洗浄剤、原料、酸化剤、触媒、不活性ガスとしては、それぞれ、上述の態様に示す各ステップで使用可能な物質を用いた。各ステップを行う際における処理条件は、上述の態様に示す各ステップを実現可能な処理条件とした。
【0141】
洗浄剤→(原料→酸化剤+触媒)×n
【0142】
そして、SiO膜上、および、Cu膜(表面に成膜阻害層が形成されていないCu膜)上に形成された酸化膜(SiO膜)の膜厚をそれぞれ測定した。その結果を図9に示す。図9の縦軸は、成膜ステップを行うことで形成された酸化膜の膜厚(nm)を、横軸は、酸化膜の下地(SiO膜、Cu膜)をそれぞれ示している。
【0143】
図9に示すように、SiO膜上に形成された酸化膜の厚さは14nm程度であった。これに対し、Cu膜上に形成された酸化膜の厚さは7nm程度であった。このように、改質ステップを省略した実施例2においても、所定の選択性をもってSiO膜上への酸化膜(SiO膜)の選択成長が可能であることが確認できた。なお、本実施例によれば、SiO膜上へ形成する酸化膜の膜厚を比較的薄くする場合(例えば7nm以下とする場合)には、改質ステップの実施を省略しても、改質ステップを実施する場合と同程度の高い選択性をもって、すなわち、Cu膜上への酸化膜(SiO膜)の形成を回避しつつ、SiO膜上への酸化膜(SiO膜)の選択成長が可能であることが推察される。
【符号の説明】
【0144】
200 ウエハ(基板)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9