(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023090353
(43)【公開日】2023-06-29
(54)【発明の名称】情報処理システム、情報処理方法、及びプログラム
(51)【国際特許分類】
G06Q 30/06 20230101AFI20230622BHJP
【FI】
G06Q30/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021205280
(22)【出願日】2021-12-17
(71)【出願人】
【識別番号】000183646
【氏名又は名称】出光興産株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000752
【氏名又は名称】弁理士法人朝日特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】岩田 恭彰
【テーマコード(参考)】
5L049
【Fターム(参考)】
5L049BB72
(57)【要約】
【課題】電動車両が複数のサービスにおいて共用される場合において充電タイミングを適切に設定する。
【解決手段】情報処理システム1は、第1サービス及び当該第1サービスと料金体系が異なる第2サービスを含む複数のサービスに供される電気自動車EVが使用される地域の気象情報、第1サービスの予約状況、及び第2サービスの予約状況を取得する取得手段12と、気象情報、第1サービスの予約状況、及び前記第2サービスの予約状況に基づいて、電気自動車EVの充電タイミングを決定する決定手段13とを有する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1サービス及び当該第1サービスと料金体系が異なる第2サービスを含む複数のサービスに供される電動車両が使用される地域の気象情報を取得する第1取得手段と、
前記第1サービスの予約状況を取得する第2取得手段と、
前記第2サービスの予約状況を取得する第3取得手段と、
前記気象情報、前記第1サービスの予約状況、及び前記第2サービスの予約状況に基づいて、前記電動車両の充電タイミングを決定する決定手段と
を有する情報処理システム。
【請求項2】
前記決定手段は、前記第1サービス及び前記第2サービスの合計の利益を最適化するように、前記電動車両の充電タイミングを決定する
請求項1に記載の情報処理システム。
【請求項3】
前記気象情報に基づいて充電を推奨する充電推奨期間を特定する特定手段と、
前記第1サービスの予約状況及び前記第2サービスの予約状況の少なくとも一方に基づいて前記充電推奨期間を修正する修正手段と
を有し、
前記決定手段が、前記修正手段により修正された充電推奨期間に基づいて前記充電タイミングを決定する
請求項1又は2に記載の情報処理システム。
【請求項4】
前記第1サービスにおける前記電動車両の稼働予測を取得する第4取得手段
を有し、
前記修正手段は、前記第1サービスにおける前記電動車両の潜在的な稼働可能性の指標に基づいて前記充電推奨期間を修正する
請求項3に記載の情報処理システム。
【請求項5】
前記第2サービスにおける前記電動車両の稼働予測を取得する第4取得手段
を有し、
前記修正手段は、前記第2サービスにおける前記電動車両の潜在的な稼働可能性の指標に基づいて前記充電推奨期間を修正する
請求項4に記載の情報処理システム。
【請求項6】
前記修正手段は、前記第1サービス及び前記第2サービスのうち収益性が高いサービスを優先して前記充電推奨期間を修正する
請求項5に記載の情報処理システム。
【請求項7】
前記決定手段は、単位時間当たりの充電量が低い状態での充電を、単位時間当たりの充電量が高い状態での充電よりも優先して前記充電タイミングを決定する
請求項1乃至6のいずれか一項に記載の情報処理システム。
【請求項8】
第1サービス及び当該第1サービスと料金体系が異なる第2サービスを含む複数のサービスに供される電動車両が使用される地域の気象情報を取得するステップと、
前記第1サービスの予約状況を取得するステップと、
前記第2サービスの予約状況を取得するステップと、
前記気象情報、前記第1サービスの予約状況、及び前記第2サービスの予約状況に基づいて、前記電動車両の充電タイミングを決定するステップと
を有する情報処理方法。
【請求項9】
コンピュータに、
第1サービス及び当該第1サービスと料金体系が異なる第2サービスを含む複数のサービスに供される電動車両が使用される地域の気象情報を取得するステップと、
前記第1サービスの予約状況を取得するステップと、
前記第2サービスの予約状況を取得するステップと、
前記気象情報、前記第1サービスの予約状況、及び前記第2サービスの予約状況に基づいて、前記電動車両の充電タイミングを決定するステップと
を実行させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、電動車両の充電タイミングを制御する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
電気自動車を利用したシステムにおいて、その充電タイミングを制御する技術が知られている。例えば特許文献1は、電気自動車の充電タイミングに合わせたサービスを提供する技術を開示している。特許文献2は、発電余剰期間が予測されるときに、電気自動車の利用料金を低く設定する技術を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2020-119320号公報
【特許文献2】特開2021-157753号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1及び2に記載の技術はいずれも、電気自動車が複数のサービスにおいて共用される場合において充電タイミングを適切に設定できるものではなかった。
【0005】
これに対し本発明は、電動車両が複数のサービスにおいて共用される場合において充電タイミングを適切に設定するための技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様に係る情報処理システムは、第1サービス及び当該第1サービスと料金体系が異なる第2サービスを含む複数のサービスに供される電動車両が使用される地域の気象情報を取得する第1取得手段と、前記第1サービスの予約状況を取得する第2取得手段と、前記第2サービスの予約状況を取得する第3取得手段と、前記気象情報、前記第1サービスの予約状況、及び前記第2サービスの予約状況に基づいて、前記電動車両の充電タイミングを決定する決定手段とを有する。
【0007】
本開示の別の一態様に係る情報処理方法は、第1サービス及び当該第1サービスと料金体系が異なる第2サービスを含む複数のサービスに供される電動車両が使用される地域の気象情報を取得するステップと、前記第1サービスの予約状況を取得するステップと、前記第2サービスの予約状況を取得するステップと、前記気象情報、前記第1サービスの予約状況、及び前記第2サービスの予約状況に基づいて、前記電動車両の充電タイミングを決定するステップとを有する。
【0008】
本開示の別の一態様に係るプログラムは、コンピュータに、第1サービス及び当該第1サービスと料金体系が異なる第2サービスを含む複数のサービスに供される電動車両が使用される地域の気象情報を取得するステップと、前記第1サービスの予約状況を取得するステップと、前記第2サービスの予約状況を取得するステップと、前記気象情報、前記第1サービスの予約状況、及び前記第2サービスの予約状況に基づいて、前記電動車両の充電タイミングを決定するステップとを実行させる。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、電動車両が複数のサービスにおいて共用される場合において充電タイミングを適切に設定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】サービス提供システムの概要を示す図である。
【
図2】サービス提供システムの機能構成を例示する図である。
【
図3】サーバのハードウェア構成を例示する図である。
【
図4】サービス提供システムの動作を例示するフローチャート。
【
図5】充電推奨期間の決定処理の詳細を例示するフローチャート。
【
図7】充電推奨期間の修正処理を例示するフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0011】
1.構成
図1は、サービス提供システム1の概要を示す図である。サービス提供システム1は、電動車両を用いたサービスを提供する。電動車両とは電池により駆動される車両をいう。電動車両は、四輪車(いわゆる電気自動車)又は二輪車(いわゆる電動バイク)など、どのようなものであってもよい。以下では、電動車両が電気自動車EVである例を用いて説明する。電気自動車EVは第1サービス及び第2サービスを含む複数(この例では2つ)のサービスにおいて利用される。第1サービスは、例えばカーシェアリングサービスであり、第2サービスは、例えばいわゆるギグワーカー向けの移動手段貸し出しサービスである。これら2つのサービスは、料金体系及び予約可能な期間が異なっている。例えば、カーシェアリングサービスは利用開始日時より長期間(例えば数ヶ月)前から予約が可能であり、最低利用時間が長く(例えば4時間)、単価は比較的高めである。一方でギグワーカー向けの移動手段貸し出しサービスは、予約可能になるのは利用開始日の直近(例えば24時間前)からであり、最低利用時間が短く(例えば30分)、単価は比較的低めである。これら2つのサービスは同一の事業者により提供されてもよいし、異なる事業者により提供されてもよい。
【0012】
電気自動車EVは、施設Fにおいて充電される。施設Fは、太陽光発電設備を有する施設である。施設Fは、例えば太陽光発電事業を行う事業者により所有される。この事業者は、太陽光発電で発電した電力を電力会社に販売する者である。しかし、この事業者は、電力の買い取り価格の低下又は買い取りタイミングの制限等の事情により、電力会社に電力を買い取って貰う動機が低下することがある。これに対しサービス提供システム1は、電気自動車EVを充電したい事業者と、電力を販売したい事業者とのマッチングを支援する。
【0013】
1つの施設Fには、1又は複数の電気自動車EVが対応づけられている。複数の電気自動車EVの各々を区別するときは電気自動車EV[1]、EV[2]、…と表す。これらを区別しないときは単に電気自動車EVと表す。サービス提供システム1は複数の施設Fに対してサービスを提供することができるが、
図1においては単一の施設Fのみを図示している。
【0014】
サービス提供システム1は、サーバ10、ユーザ端末20、サーバ30、及びサーバ40を有する。サーバ10は、電気自動車EVの予約の管理及び充電タイミングの管理を行う。ユーザ端末20は、施設Fの管理者(すなわちサービス提供システム1のユーザ)が、サーバ10等と情報のやり取りをするための端末装置である。サーバ30は、第1サービスを提供するサーバである。サーバ40は、第2サービスを提供するサーバである。
【0015】
図2は、サービス提供システム1の機能構成を例示する図である。サービス提供システム1は、記憶手段11、取得手段12、決定手段13、及び制御手段19を有する。記憶手段11は、各種のデータを記憶する。この例において、記憶手段11が記憶するデータには、データベース111及びデータベース112が含まれる。データベース111は、電気自動車EVの予約状況を記録するデータベースである。データベース112は、施設Fの属性を記録するデータベースである。
【0016】
取得手段12は、電気自動車EVの充電タイミングを決定するために用いられる情報を取得する。この例において、取得手段12が取得する情報には、施設Fが属する地域(すなわち電気自動車EVが使用される地域)の気象情報(第1取得手段の一例)、第1サービスの予約状況(第2取得手段の一例)、及び第2サービスの予約状況(第3取得手段の一例)が含まれる。
【0017】
決定手段13は、気象情報、第1サービスの予約状況、及び第2サービスの予約状況に基づいて、電気自動車EVの充電タイミングを決定する。この例において、決定手段13は、第1サービス及び第2サービスの利益を最適化するように電気自動車EVの充電タイミングを決定する。
【0018】
決定手段13は、設定手段131及び修正手段132を有する。設定手段131は、気象情報に基づいて充電を推奨する充電推奨期間を設定する。修正手段132は、第1サービスの予約状況及び第2サービスの予約状況の少なくとも一方に基づいて充電推奨期間を修正する。決定手段13は、修正された充電推奨期間に基づいて充電タイミングを決定する。制御手段19は各種の制御を行う。
【0019】
図3は、サーバ10のハードウェア構成を例示する図である。サーバ10は、CPU(Central Processing Unit)101、メモリ102、ストレージ103、及び通信IF(Interface)104を有するコンピュータ装置である。CPU101は、プログラムに従って各種の演算を行い、他のハードウェア要素を制御する。メモリ102はCPU101がプログラムを実行する際のワークエリアとして機能する主記憶装置であり、例えばRAM(Random Access Memory)を含む。ストレージ103は、各種のデータ及びプログラムを記憶する補助記憶装置であり、例えばHDD(Hard Disk Drive)又はSSD(Solid State Drive)を含む。通信IF104は、所定の通信規格(例えばイーサネット)に従って他のコンピュータと通信する装置である。
【0020】
この例において、ストレージ103に記憶されるプログラムには、コンピュータをサービス提供システム1のサーバ10として機能させるためのプログラムが含まれる。CPU101がこのプログラムを実行することにより、コンピュータに
図2の機能が実装される。CPU101がこのプログラムを実行している状態において、メモリ102及びストレージ103の少なくとも一方が記憶手段11の一例であり、CPU101が決定手段13及び制御手段19の一例であり、通信IF104が取得手段12の一例である。
【0021】
2.動作
図4は、サービス提供システム1の動作を例示するフローチャートである。以下において、記憶手段11等の機能要素を処理の主体として説明することがあるが、これは、サーバプログラム等のソフトウェアを実行しているCPU110等のハードウェア要素が、他のハードウェア要素と協働して処理を実行することを意味する。
【0022】
ステップS110において、取得手段12は、対象地域の気象情報を取得する。対象地域は対象施設Fの所在地を含む地域である。対象施設Fは処理の対象となる施設Fであり、例えば、サービス提供システム1のユーザである複数の施設Fの中から順番に選択された一の施設Fである。ここでいう気象情報は未来における気象に関する情報であり、いわゆる気象予報又は天気予報に相当するものである。気象情報は、気温、気圧、降水確率、風の向き、及び風速の少なくとも一種について、その時間変化を示す情報を含む。この例においては、予測対象期間があらかじめ決められている(例えば、現在時刻から144時間後まで)。取得手段12は、予測対象期間に対する気象情報を取得する。
【0023】
ステップS120において、取得手段12は、第1サービス(この例においてはカーシェアリングサービス)の予約状況を取得する。この例においてカーシェアリングサービスの予約はサーバ30により管理されており、取得手段12はサーバ30から対象電気自動車EVの予約状況を取得する。予約状況は、電気自動車EVの識別情報、及びその電気自動車EVが予約されている時間帯を示す情報を含む。この例において、データベース112には、各施設Fに対応する電気自動車EVの識別子が記録されている。各電気自動車EVは、その属性に応じて施設に対応付けられる。例えば、A市内にある管理事業所において管理されている電気自動車EVは、A市内にある1又は複数の施設に対応付けられる。すなわち、施設Fと電気自動車EVとの対応関係は1対1でなくてもよく、1対多、多対1、又は多対多であってもよい。
【0024】
ステップS130において、取得手段12は、第2サービス(この例においては移動手段貸し出しサービス)の予約状況を取得する。この例において移動手段貸し出しサービスの予約はサーバ40により管理されており、取得手段12はサーバ40から対象電気自動車EVの予約状況を取得する。予約状況は、電気自動車EVの識別情報、及びその電気自動車EVが予約されている時間帯を示す情報を含む。
【0025】
ステップS140において、決定手段13は、気象情報、第1サービスの予約状況、及び第2サービスの予約状況に基づいて充電タイミングを決定する。この例において、充電タイミングの決定は、充電推奨期間の決定及び充電推奨期間の修正という2つの処理を含む。
【0026】
図5は、充電推奨期間の決定処理の詳細を例示するフローチャートである。ステップS1401において、設定手段131は、対象施設Fに対応する複数の電気自動車EVにおける電池残量の時間変化をシミュレーションする。データベース111には電気自動車EVの予約状況が記録されている。データベース112には、事業所毎に、その事業所において管理されている複数の電気自動車EVの属性情報が記録される。属性情報は、電気自動車EVの識別情報、最新の電池残量、その電池残量を取得した時刻を示すタイムスタンプを含む。設定手段131は、データベース111及びデータベース112を参照して電池残量の時間変化をシミュレーションする。設定手段131は、電池残量の時間変化をシミュレーションするためのモデルを有している。このモデルは、数理モデルであってもよいし機械学習モデルであってもよい。電池残量の時間変化は、対象期間に渡ってシミュレーションされる。対象期間は、現在時刻から所定期間後までの期間である。この所定期間は、例えば、気象情報における予測対象期間と同じ期間である。
【0027】
ステップS1402において、設定手段131は、対象時刻を設定する。対象時刻は、以下の処理の基準となる時刻である。対象時刻の初期値は、例えばその時点の現在時刻である。既に対象時刻が設定されている場合、設定手段131は、従前の対象時刻をインクリメントする。
【0028】
ステップS1403において、設定手段131は、対象時刻における充電環境条件が所定の基準を満たすか判断する。充電環境条件とは電気自動車を充電するための環境に関する条件であり、例えば気象情報により示される日射量に関する条件である。充電環境条件の基準は、具体的には例えば以下のとおりである。
(ア)対象時刻における気象情報により示される日射量(又はこの日射量から推測される発電量)がしきい値Th以上である。
(イ)対象時刻以後の所定期間、(ア)の状態が継続する。
(ウ)充電推奨期間から除外されていない。
なお充電推奨期間から除外される期間とは、例えば既にいずれかの電気自動車EVの充電推奨期間として設定されている期間、又は後述の保護フラグが記録されている期間である。対象時刻における充電環境条件がこの基準を満たすと判断された場合(S1403:YES)、設定手段131は処理をステップS1404に移行する。対象時刻における充電環境条件がこの基準を満たさないと判断された場合(S1403:NO)、設定手段131は処理をステップS1402に移行する。
【0029】
ステップS1404において、設定手段131は、対象時刻において対象電気自動車EVを特定する。この例において、設定手段131は、対象施設に属する電気自動車EVのうち対象時刻における電池残量が最も低く、かつ対象時刻における電池残量がしきい値Th1以下である電気自動車EVを対象電気自動車として特定する。
【0030】
ステップS1405において、設定手段131は、対象電気自動車EVについて充電推奨期間を設定する。充電推奨期間の始期は対象時刻であり、充電推奨期間の終期は対象電気自動車EVの電池残量が満状態になる時刻である。対象電気自動車EVへの充電量は、日射量を用いて推測できる。このとき、電池の劣化を抑制する観点から、設定手段131は、まずはゆっくりと充電するように、単位時間当たりの充電量を低めに設定する。すなわち、設定手段131は、単位時間当たりの充電量が低い状態での充電を、単位時間当たりの充電量が高い状態での充電よりも優先して前記充電タイミングを決定すると言える。この設定では、充電推奨期間は比較的長くなる。ただしこの設定では、長い充電推奨期間を確保できないという事情により、充電しなければその後のサービス提供に支障をきたすほど電池残量が低下している電気自動車EVに対して充電推奨期間を確保できない可能性が考えられる。この事態を避けるため、この設定で電池残量がしきい値Th2(Th2≦Th1)以下である対象電気自動車EVの充電推奨期間を設定できない場合、設定手段131は、単位時間当たりの充電量を1レベル増加させる。この設定変更により、充電推奨期間の長さを短くできる。設定手段131は、対象電気自動車EVに充電推奨期間を設定できるか再度、判断する。こうして設定手段131は、電池残量がしきい値Th2(Th2≦Th1)以下である対象電気自動車EVに充電推奨期間を設定できるまで単位時間当たりの充電量を調整する。すなわちこの例においては、最初は電池の劣化を抑制するために最初はゆっくりとした充電を試み、それでスケジュールを組むことができないときには充電速度を上げていく、という処理が行われる。
【0031】
ステップS1406において、設定手段131は、対象電気自動車EVについて、電池残量の時間変化のシミュレーションをやり直す。すなわちステップS1405において新たに設定された充電推奨期間の終期には対象電気自動車EVの電池残量は満状態になっているので、そこからの電池残量の時間変化が再度シミュレーションされる。
【0032】
ステップS1407において、設定手段131は、対象時刻が対象期間の終期であるか判断する。対象時刻が対象期間の終期であると判断された場合、設定手段131は、処理をステップS1408に移行する。対象時刻がまだ対象期間の終期になっていないと判断された場合、設定手段131は、処理を再度ステップS1402に移行する。
【0033】
ステップS1408において、設定手段131は、対象施設に属する全ての電気自動車EVの、対象期間の終期における電池残量がしきい値以上となっているか判断する。全ての電気自動車EVの電池残量がしきい値以上となっていると判断された場合(S1408:YES)、設定手段131は
図5のフローを終了する。電池残量がしきい値未満の電気自動車EVが存在すると判断された場合(S1408:NO)、設定手段131は、処理をステップS1409に移行する。
【0034】
ステップS1409において、設定手段131は、ステップS1403において用いられるしきい値Thを更新する。具体的には、しきい値Thを1段階低下させる。効率性の観点から電気自動車EVの充電は短時間で行われることが好ましい。すなわち、単位時間あたりの発電量が大きい時間帯(又は日射量の多い時間帯)を充電推奨期間とすることが好ましい。この観点から、しきい値Thは、最初はある程度高い値に設定される。極端な例として、対象期間(例えば144時間=6日間)の日中がずっと晴天であればいつ充電を行ってもよいが、晴れの期間が2時間しかなければその2時間の間に充電をした方がよい。この2時間で全ての電気自動車EVの充電が完了すればよいが、この2時間では全ての電気自動車の充電を完了できない場合、効率が悪くても曇りの期間に充電をしなければならなくなる。そこで、最初にステップS1401~S1407の処理を行うときはある程度高い値のしきい値Thを用い、それで充電しきれないときはしきい値Thを下げて再設定を試みる、というように処理が進む。
【0035】
なお上記で説明した条件以外にも、充電推奨期間についての条件を付加してもよい。例えば、いくら気象条件が良いからといって対象施設が保有する全ての電気自動車EVが一斉に(又は同時に)充電されてしまったらサービス提供に使える電気自動車EVが無くなってしまう。そこで、よい気象条件が継続することが期待される状況であれば(例えば、対象時刻の翌日以降も晴れの予報が続く場合)、設定手段131は、充電推奨期間が分散されるように設定する。具体的には例えば、ある電気自動車EVについて充電推奨期間を設定した場合において、対象時刻から所定期間(例えば24時間)、気象情報が所定条件(例えば晴れの予報が継続する)を満たすときは、設定手段131は、その充電推奨期間の終期から所定期間(この期間は先の所定期間とは独自に設定される。例えば12時間)の間は、充電推奨期間とならないように保護する(例えば保護フラグを記録する)。
【0036】
図6は、決定された充電推奨期間を例示する図である。ここでは、対象施設に電気自動車EV[1]~EV[5]の5台の電気自動車が属する例を示す。対象期間は6日間である。この6日間を以下ではDAY[1]~DAY[6]と表す。天気予報は、DAY[1]は晴れ、DAY[2]は曇り、DAY[3]は雨、DAY[4]及びDAY[5]は晴れ、DAY[6]は雨である。図示はしていないが気象情報には日射量の時間変化の予想が含まれ、この予想に基づいて発電量が計算される。この発電量に基づいて電気自動車EV[1]~EV[5]に充電推奨期間が割り当てられる。各電気自動車EVの充電状態を表す図において、縦軸は単位時間当たりの充電量を示す。すなわち充電状態を表す図における面積(ハッチング部分)が総充電量を示す。
【0037】
図6では充電推奨期間のみを示しているが、後述する修正処理によって、第1サービス及び第2サービスの稼働実績及び予約状況が考慮された状態である。例えばEV[1]はDAY[1]及びDAY[4]において短時間で急に充電するよう受電推奨期間が設定されているが、これは(
図6では図示していない)この前又は後の時間帯において第1サービス及び第2サービスの稼働実績がしきい値より高いか、又は既に予約が入っているため短時間で充電をするように設定されたものである。これに対して例えばEV[4]はDAY[2]においてゆっくりと充電されるが、これはこの前後を含む時間帯において第1サービス及び第2サービスの予約が入っておらず稼働実績も低いので、電池の劣化防止のためゆっくりと充電をしているものである。
【0038】
図7は、充電推奨期間の修正処理を例示するフローチャートである。
【0039】
ステップS1410において、修正手段132は、第1サービスの過去の稼働実績(例えば直近1年分の稼働実績)を取得する。稼働実績は、電気自動車EVの識別情報、及びその電気自動車EVが実際に利用された時間帯を示す情報を含む。この例において第1サービスの稼働実績はサーバ30により管理されており、修正手段132はサーバ30から第1サービスにおける電気自動車EVの稼働実績を取得する。
【0040】
ステップS1411において、修正手段132は、第2サービスの過去の稼働実績(例えば直近1年分の稼働実績)を取得する。稼働実績は、電気自動車EVの識別情報、及びその電気自動車EVが実際に利用された時間帯を示す情報を含む。この例において第2サービスの稼働実績はサーバ40により管理されており、修正手段132はサーバ40から第1サービスにおける電気自動車EVの稼働実績を取得する。
【0041】
ステップS1412において、修正手段132は、対象期間における電気自動車の予約状況を取得する。予約状況は、電気自動車EVの識別情報、及びその電気自動車EVが予約された時間帯を示す情報を含む。この例において電気自動車EVの予約状況はデータベース111に記録されており、修正手段132はデータベース111から電気自動車EVの予約状況を取得する。この予約状況は第1サービス及び第2サービス双方の予約状況を含む。
【0042】
ステップS1413において、修正手段132は、対象期間における電気自動車の第1サービスにおける(予測)稼働率の時間変化を計算する。ここでは、稼働実績から稼働率の時間変化を求める簡単な手法を1つ説明する。修正手段132は、稼働実績を複数のグループに分類する。一例において、修正手段132は、稼働実績を曜日毎の7つのグループに分類する。さらに、修正手段132は、各グループにおいて稼働実績を単位時間(例えば30分)に分割する。修正手段132は、このように分類及び分割された稼働実績において、グループ毎に、単位時間あたりの稼働率を計算する。1年を52週間とすると、過去1年の稼働実績において月曜日は52日分存在する。これを単位時間に分割し、例えば午前9:00-9:30の間に稼働していた日数を計測すれば、月曜の午前9:00-9:30に電気自動車EVが稼働する確率を計算することができる。第1サービス及び第2サービスの営業時間が午前9:00から午後8:00までであった場合、1日は22単位に分割され、営業開始から営業終了まで30分単位で稼働率を得ることができる。さらに、修正手段132は、対象期間のうち第1サービスにおいて既に予約が入っている時間帯については、その電気自動車の稼働率を所定の値(例えば100%)に設定する。
【0043】
ステップS1414において、修正手段132は、対象期間における充電推奨期間と第1サービスの稼働率の時間変化とを対比し、両者の関係が所定の条件を満たしている時間帯があるか判断する。所定の条件は、稼働が見込まれる時間帯に充電を行うことを避けるための条件である。具体的には、所定の条件は、充電推奨期間であって、かつ稼働率がしきい値(例えば80%)以上である、という条件である。このしきい値は、例えば、対象施設の属性(例えば、所在地、業種、業態、業績、保有している電気自動車の数など)に応じて設定される。あるいは、このしきい値は、全ての施設に対して共通であってもよい。両者の関係がこの条件を満たしている時間帯があると判断された場合(S1414:YES)、修正手段132は、処理をステップS1415に移行する。両者の関係がこの条件を満たしている時間帯が無いと判断された場合(S1414:NO)、修正手段132は、処理をステップS1416に移行する。
【0044】
ステップS1415において、修正手段132は、充電推奨期間を修正する。この修正は、上記の条件を満たしている時間帯を充電推奨期間から外す修正である。例えば、修正手段132は、上記の条件を満たしている時間帯が充電推奨期間とならないように保護する(例えば保護フラグを記録する)。充電推奨期間を修正すると、修正手段132は、処理を再びステップS1401に移行し、再度、充電推奨期間の設定から処理を行う。
【0045】
ステップS1416において、修正手段132は、対象期間における電気自動車の第2サービスにおける(予測)稼働率の時間変化を計算する。具体的な計算手法は例えば第1サービスの稼働率の計算方法と同様である。
【0046】
ステップS1417において、修正手段132は、対象期間における充電推奨期間と第2サービスの稼働率の時間変化とを対比し、両者の関係が所定の条件を満たしている時間帯があるか判断する。所定の条件は、稼働が見込まれる時間帯に充電を行うことを避けるための条件である。具体的には、所定の条件は、充電推奨期間であって、かつ稼働率がしきい値(例えば50%)以上である、という条件である。このしきい値は、例えば、対象施設の属性(例えば、所在地、業種、業態、業績、保有している電気自動車の数など)に応じて設定される。あるいは、このしきい値は、全ての施設に対して共通であってもよい。また、この例において、このしきい値は、第1サービスの稼働率に対するしきい値よりも低い値に設定される。これは第2サービスの方が第1サービスよりも収益性が低いので、充電との対比におけるサービス提供の優先度が第1サービスよりは低いためである。両者の関係がこの条件を満たしている時間帯があると判断された場合(S1417:YES)、修正手段132は、処理をステップS1418に移行する。両者の関係がこの条件を満たしている時間帯が無いと判断された場合(S1417:NO)、修正手段132は、
図7の処理を終了する。
【0047】
ステップS1418において、修正手段132は、充電推奨期間を修正する。この修正は、上記の条件を満たしている時間帯を充電推奨期間から外す修正である。例えば、修正手段132は、上記の条件を満たしている時間帯が充電推奨期間とならないように保護する(例えば保護フラグを記録する)。充電推奨期間を修正すると、修正手段132は、処理を再びステップS1401に移行し、再度、充電推奨期間の設定から処理を行う。
【0048】
図8は、充電推奨期間の修正を例示する図である。ある期間において、電気自動車EV[1]の充電推奨期間が、期間t1と設定された(最初のステップS1409時点)。これを第1サービスの稼働率と対比したところ、稼働率がしきい値を超えている時間帯であった(ステップS1414)。そこで、この期間は充電推奨期間とならないように保護され、再度、充電推奨期間の設定を行ったところ期間t1が充電推奨期間として設定された。
【0049】
サーバ10は、サーバ30及びサーバ40からの要求に応じて、電気自動車EVの予約をデータベース112に記録する。サーバ10は、サーバ30又はサーバ40から、充電推奨期間における予約の要求を受信したときは、その要求を断ることができる。例えば、現在時刻から直近の(30分後)の予約要求であってその電気自動車EVの電池残量がしきい値より低いときは、サーバ10はその要求を断ることができる。あるいはサーバ10は、充電推奨期間の修正ができそうなとき(次の充電推奨期間までの時間がしきい値よりも長いとき)は、その予約を受け付け、充電推奨期間の再設定を行ってもよい。このようにして、サーバ10は、柔軟に電気自動車EVの充電タイミングを設定することができる。
【0050】
充電推奨期間に施設Fにおいて実際に充電が可能かどうか未確定な場合がある。あるいは、同じ地域内に複数の施設Fがある場合において、どの施設Fでも充電できる可能性がある場合がある。このような例に対処するため、サーバ10は、所定のタイミング(例えば、充電推奨期間が更新されたとき)で、施設Fのユーザすなわちユーザ端末20に対し、充電推奨期間が更新された旨、及びこの期間に充電を受けてくれる施設の募集(又は買電の提案)を通知してもよい。この通知を受けたユーザ端末20のユーザは、この募集(又は提案)に対し受諾の意志があるときは、サーバ10にアクセスして自身の施設Fで充電を受け付ける旨を入力する。サーバ10は、データベース111にその充電推奨期間の充電施設としてその施設Fを記録する。その充電推奨期間の直前にその電気自動車EVを利用するユーザは、その施設Fに電気自動車を返却することになる。
【0051】
あるいは、サーバ10は、充電推奨期間を更新したことにより、電気自動車EVの利用可能時間帯が(例えば細切れに)制限されてしまったような場合、例えばサーバ30に対し、利用料金の割引を提案してもよい。サーバ30は、この提案に従って、第2サービスのユーザに割引、クーポン配布、ポイント還元などの特典を提示し、電気自動車EVの利用を促すことができる。
【0052】
図9は、電気自動車EVの稼働予定を例示する図である。本実施形態に係る充電推奨期間の設定並びに第1サービス、第2サービス、及び施設Fの管理者への情報展開により、電気自動車EVの管理者に対しては稼働率を高めることができる。また、施設Fの管理者に対しては売電の機会を提供することができる。
【0053】
3.変形例
本発明は上述の実施形態に限定されるものではなく種々の変形実施が可能である。以下、変形例をいくつか説明する。以下の変形例に記載した事項のうち2つ以上の事項が組み合わせて適用されてもよい。
【0054】
決定手段13が充電推奨期間を決定する方法は実施形態において例示したものに限定されない。例えば、決定手段13は、電気自動車EVの予約状況を最初に参照し、予約が入っている時間帯は充電推奨期間とならないように除外してから充電推奨期間を設定してもよい。あるいは、決定手段13は、第1サービスの予約、第2サービスの予約、及び充電推奨期間のスケジュール決定を、いわゆる組み合わせ最適化問題として解いてもよい。この場合、第1サービス及び第2サービスの合計の利益を最適化するようにスケジュールが決定される。
【0055】
サーバ10が施設Fの管理者(ユーザ)に対し買電の提案をする際、電気自動車の予約状況又は電池残量のシミュレーションを参照して買電価格を提案してもよい。例えば、電気自動車の予約が少ない時期には、電気自動車の予約が多い時期と比較して高い買電価格を提案してもよい。あるいは、電池残量が少なく充電の緊急度が高いときは、電池残量が多いときと比較して高い買電価格を提案してもよい。同様に、サーバ10がサーバ30又はサーバ40に対して電気自動車EVの利用を促すときにも、予約状況又は電池残量を参照して提案をしてもよい。
【0056】
実施形態においては第1サービスの稼働率が第2サービス稼働率よりも優先される例を説明したが、第1サービスの稼働率と第2サービスの稼働率とは等しく扱われてもよい。あるいは、例えば第1サービス及び第2サービスの少なくとも一方がダイナミックプライシングを採用している場合など、その第1サービス及び第2サービスのどちらが利益が高いか固定されていないときは、サーバ10は、対象時刻において利益が高いことが予想されるサービスの稼働率を優先して考慮してもよい。
【0057】
電気自動車EVの稼働率を取得する方法は実施形態において例示したものに限定されない。電気自動車の稼働率は、サーバ10、サーバ30、及びサーバ40以外のサーバにより予測され、サーバ10はこのサーバから稼働率を取得してもよい。また、電気自動車EVの潜在的な稼働可能性を評価する指標は稼働率によるものに限定されない。潜在的な稼働可能性をレベル分けしたものなど、稼働率以外の指標が用いられてもよい。
【0058】
サービス提供システム1のハードウェア構成は実施形態において例示したものに限定されない。要求される機能を実現できるものであれば、サービス提供システム1はどのようなハードウェア構成を有していてもよい。例えば、物理的に複数の装置が協働してサーバ10として機能してもよい。サーバ10は物理サーバでもよいし、仮想サーバ(いわゆるクラウドを含む)であってもよい。
【0059】
機能要素とハードウェアとの対応関係は実施形態において例示したものに限定されない。例えば、実施形態においてサーバ10に実装されるものとして説明した機能の少なくとも一部がユーザ端末20に実装されてもよい。特に、データベース111及びデータベース112は、サーバ10とは別のサーバ装置に実装されてもよい。さらに、
図2において例示した機能要素の一部が省略されてもよい。
【0060】
CPU101等によって実行されるプログラムは、インターネット等のネットワークを介したダウンロードにより提供されるものであってもよいし、DVD-ROM(Digital Versatile Disk Read Only Memory)等のコンピュータ読み取り可能な非一時的記録媒体に記録された状態で提供されてもよい。
【符号の説明】
【0061】
1…サービス提供システム、10…サーバ、11…記憶手段、12…取得手段、13…決定手段、14…制御手段、20…ユーザ端末、30…サーバ、40…サーバ、101…CPU、102…メモリ、103…ストレージ、104…通信IF