(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023090467
(43)【公開日】2023-06-29
(54)【発明の名称】真空処理装置
(51)【国際特許分類】
H01L 21/677 20060101AFI20230622BHJP
C23C 14/50 20060101ALI20230622BHJP
C23C 16/44 20060101ALI20230622BHJP
B65G 49/06 20060101ALI20230622BHJP
【FI】
H01L21/68 A
C23C14/50 K
C23C16/44 F
B65G49/06 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021205433
(22)【出願日】2021-12-17
(71)【出願人】
【識別番号】000231464
【氏名又は名称】株式会社アルバック
(74)【代理人】
【識別番号】110000305
【氏名又は名称】弁理士法人青莪
(72)【発明者】
【氏名】永田 純一
(72)【発明者】
【氏名】吉田 雄一
【テーマコード(参考)】
4K029
4K030
5F131
【Fターム(参考)】
4K029AA09
4K029AA24
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4K030LA18
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5F131KB32
5F131KB38
5F131KB58
(57)【要約】
【課題】被処理基板が配置される搬送トレイを搬送しながら真空処理を施す場合に、各真空チャンバがゲートバルブを介して連設されているか否を問わず、真空チャンバ内に存する各搬送トレイの位置を正確に把握できるようにする。
【解決手段】搬送トレイに取り付けられる長尺のスケール71と、スケールの目量の読み取りが可能な複数個の検出部72a~72oとを有し、各検出部を真空チャンバ内でX軸方向に沿って間隔を存して配置して、搬送トレイのスケールとこれに正対する検出部とでアブソリュートエンコーダを構成する。搬送トレイの搬送が開始される最上流側に位置する検出部を起点検出部とし、この起点検出部を除く他の検出部に起点検出部からの距離に応じたオフセット値を付与し、制御ユニットにより検出部で搬送トレイの目量を読み取ったとき、この読み取った目量とオフセット値とから真空チャンバ内における搬送トレイの座標を特定する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一方の面に被処理基板が配置される搬送トレイを搬送しながら、被処理基板の処理面に対して所定の真空処理を施す真空処理装置であって、
水平面内で互いに直交する二方向をX軸方向及びY軸方向とし、真空チャンバ内で搬送トレイをX軸方向に沿って搬送する搬送手段が設けられるものにおいて、
搬送トレイにX軸方向に沿って取り付けられる長尺のスケールと、このスケールの目量の読み取りが可能な複数個の検出部とを有し、各検出部を真空チャンバ内でX軸方向に沿って間隔を存して配置して、搬送トレイのスケールとこれに正対する検出部とでアブソリュートエンコーダを構成し、
搬送トレイの搬送が開始される最上流側に位置する検出部を起点検出部とし、この起点検出部を除く他の検出部に起点検出部からの距離に応じたオフセット値を夫々付与し、いずれかの検出部で搬送トレイの目量を読み取ったとき、この読み取った目量とオフセット値とから真空チャンバ内における搬送トレイの座標を特定する制御ユニットを更に備えることを特徴とする真空処理装置。
【請求項2】
請求項1記載の真空処理装置であって、真空チャンバ内に複数個の搬送トレイが同時に搬送されるものにおいて、各搬送トレイに、互いに重複しないように前記スケールの目盛値が付与されていることを特徴とする真空処理装置。
【請求項3】
前記制御ユニットは、いずれかの検出部でスケールの目量が新たに読み取られる毎に、そのときの目量から前記搬送トレイの座標を更新するように構成したことを特徴とする請求項1または請求項2記載の真空処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一方の面に被処理基板が配置される搬送トレイを搬送しながら、被処理基板の処理面に対して所定の真空処理を施す(所謂インライン式の)真空処理装置に関し、より詳しくは、真空チャンバ内における搬送トレイの座標(絶対位置)を正確に特定できるようにしたものに関する。
【背景技術】
【0002】
上記種の真空処理装置は、例えば特許文献1で知られている。このものは、一方向に連設される複数個の真空チャンバを備え、真空チャンバ内には、複数の搬送トレイを順次搬送できる搬送手段が設けられている。そして、搬送トレイが各真空チャンバを通過する間に、被処理基板の処理面に対して成膜処理、エッチング処理や熱処置といった各種の真空処理が順次施される。
【0003】
ここで、いずれかの真空チャンバ内での真空処理中に何等かの原因で各真空処理が中止または中断される場合がある。このような事態を想定しつつ生産状況を管理する上で、真空チャンバ内における各搬送トレイの座標を正確に把握できるように構成しておく必要がある。このような場合、各搬送トレイにエンコーダを搭載し、搬送トレイのエンコーダと、このエンコーダの入力を受けて真空チャンバ内における搬送トレイの位置を特定する制御ユニット(コントローラ)とを引き回し可能な信号ケーブルを介して接続することが考えられる。然し、この種の真空処理装置の中には、互いに隣接する真空チャンバを相互に隔絶できるようにゲートバルブを介在させて連設しているものがあり、このものには、信号ケーブルを用いて接続する方法は適用できないという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、以上の点に鑑み、各真空チャンバがゲートバルブを介して連設されているか否を問わず、真空チャンバ内に存する各搬送トレイの位置を正確に把握できるようにした真空処理装置を提供することをその課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために一方の面に被処理基板が配置される搬送トレイを搬送しながら、被処理基板の処理面に対して所定の真空処理を施す本発明の真空処理装置は、水平面内で互いに直交する二方向をX軸方向及びY軸方向とし、真空チャンバ内で搬送トレイをX軸方向に沿って搬送する搬送手段が設けられ、搬送トレイにX軸方向に沿って取り付けられる長尺のスケールと、このスケールの目量の読み取りが可能な複数個の検出部とを有し、各検出部を真空チャンバ内でX軸方向に沿って間隔を存して配置して、搬送トレイのスケールとこれに正対する検出部とでアブソリュートエンコーダを構成し、搬送トレイの搬送が開始される最上流側に位置する検出部を起点検出部とし、この起点検出部を除く他の検出部に起点検出部からの距離に応じたオフセット値を夫々付与し、いずれかの検出部で搬送トレイの目量を読み取ったとき、この読み取った目量とオフセット値とから真空チャンバ内における搬送トレイの座標を特定する制御ユニットを更に備えることを特徴とする。
【0007】
本発明において、真空チャンバ内に複数個の搬送トレイが同時に搬送されるような場合、各搬送トレイに、互いに重複しないように前記スケールの目盛値が付与されていること、即ち、各搬送トレイのスケールの最小目盛値及び最大目盛値が互いに重複しないように設定される構成を採用することができる。また、本発明においては、前記制御ユニットは、いずれかの検出部でスケールの目量が新たに読み取られる毎に、前記搬送トレイの位置を更新する構成を採用することができる。
【0008】
以上によれば、真空チャンバ内に固定配置される各検出部と制御ユニットとを信号ケーブルで接続しておけば、各検出部で読み取った目量とオフセット値とから真空チャンバ内における搬送トレイの絶対位置(座標)を正確に特定することができる。このとき、真空チャンバ内で信号ケーブルを引き回すといったことが不要にできるので、互いに隣接される真空チャンバがゲートバルブを介して連設されているような場合でも、搬送トレイの座標の特定が阻害されるものではない。しかも、真空チャンバ内で複数個の搬送トレイが同時に搬送されているような場合でも、各搬送トレイの識別するための機器を別途設けることなく、簡単な手法で個々の搬送トレイ(種別)を識別することができ、有利である。なお、真空チャンバ内で搬送トレイを搬送する場合、通常は、搬送トレイの夫々の位置をセンサ等により把握し、これに応じて、搬送用コロや搬送ローラといった搬送手段の搬送部の作動が制御されるが、アブソリュートエンコーダを構成する各検出部で検出したものを兼用して搬送部の制御にも用いれば、部品点数を削減することができる。
【0009】
ここで、単一の検出部とスケールで構成される一般的なアブソリュートエンコーダの制御部品(サーボアンプ)では、当該検出部がスケール範囲から外れると、検知エラーに基づくアラーム(重故障)を発報する。つまり、アブソリュートエンコーダを搭載する駆動装置の作動中に、アブソリュートエンコーダによる位置検出が不能になると、駆動装置を停止させ、例えばエンコーダの交換を促すアラームを出力することが通常であり、その場合には、制御部品に対する電源の再投入でしかアラームの解除(エラーリセット)ができないようになっている。このため、既存のアブソリュートエンコーダの制御部品を含む制御ユニットによって、真空チャンバ内で順次搬送される搬送トレイの座標を特定しようとすると、常に、アラームを発報し、アラームを解除するために電源の再投入が必要となるので、搬送トレイを円滑に搬送することができない。
【0010】
そこで、本発明では、搬送トレイのスケールに正対してアブソリュートエンコーダを構成している検出部が搬送トレイの搬送に伴ってスケール範囲から外れても、検知エラーを発報せず、制御ユニットに対して特定の値、例えば-1を返すか或いは読み取った最終値を保持して返すようにし、他の検出部でスケールの目量を新たに読み取ると(言い換えると、他の検出部がスケール範囲内に復帰すると)、その座標を更新する構成を採用すれば、制御ユニットに既存のアブソリュートエンコーダの制御部品を含む場合に、当該制御部品に対する制御ユニットからの指令でアラームの発報とエラーリセットが不要になるため、真空チャンバ内での搬送トレイの座標の特定に何らの影響を与えることがない。
【0011】
また、制御部品(サーボアンプ)を、いずれの検出部がスケール範囲から外れたときのアラームを重故障とせず、制御ユニットからの信号でアラームをクリアできるように構成し、他の検出部でスケールの目量を新たに読み取ったとき、即ち、検出部の検知エラー信号が落ちた(オフになった)とき、制御ユニットが制御部品のアラームをクリアして制御に復帰するようにしてもよい。
【0012】
ところで、いずれかの真空チャンバ内での真空処理中に何等かの原因で各真空処理が中止または中断され、このときには、アブソリュートエンコーダを構成する各検出部、制御ユニットや制御部品への給電が停止される場合がある。この場合、一般的なインクリメントエンコーダの制御部品では、給電停止時点における搬送トレイの座標を保持しない。このため、給電再開(電源復帰)後には、何らかの復帰動作が必要となって生産阻害要因となる問題もある。それに対して、本発明では、搬送トレイのスケールとこれに正対する検出部とでアブソリュートエンコーダを構成するようにしたため、給電再開(電源復帰)後にいずれかの検出部でスケールの目量を新たに読み取るだけで、制御ユニットにより真空チャンバ内での各搬送トレイの座標やその種別が正確に把握されるので、復帰動作を可及的速やかに実施することができ、有利である。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の実施形態のインライン式の真空処理装置の縦断面図。
【
図2】
図1に示すインライン式の真空処理装置の横断面図。
【
図4】(a)~(e)は、第1搬送路を搬送される各搬送トレイの位置特定を説明する図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照して、被処理基板をフラットパネルディスプレイの製造に利用される大面積のガラス基板(以下、「基板Sw」という)とし、基板Swの一方の面(処理面)に成膜処理、熱処理、エッチング処理といった各種の真空処理を施すことができるインライン式の真空処理装置に適用したものを例に、本発明の真空処理装置VMの実施形態を説明する。以下においては、搬送路Tp1,Tp2に沿った搬送トレイTrの移動方向をX軸方向、X軸方向に直交する重力加速度方向をZ軸方向、X軸方向及びZ軸方向に直交する方向をY軸方向とする。また、搬送トレイTrに配置された基板Swの一方の面(処理面)がY軸方向一方を向く搬送トレイTr(及び基板Sw)の姿勢を起立姿勢(Z軸に対して所定角度で搬送トレイTrが傾斜する姿勢も含む)、搬送トレイTrに配置された基板Swの処理面がZ軸方向上方を向く搬送トレイTr(及び基板Sw)の姿勢を水平姿勢とする。
【0015】
図1~
図3を参照して、インライン式の真空処理装置VMは、図外の搬送ロボットにより処理前の基板Swを水平姿勢で搬送トレイTrの一方の面に配置し、または、水平姿勢の搬送トレイTrから処理済みの基板Swを取り出すためのポジションチャンバPcを備える。搬送トレイTrは、基板Swより一回り大きな輪郭の板状体11で構成され、板状体11には、起立姿勢にしたときに基板Swの下辺が当接する基板受け部12と、板状体11に対して基板Swの縁部を局所的に押圧するクランプなどの押圧部(図示せず)とが設けられ、真空処理の間、起立姿勢の基板Swを搬送トレイTrに保持することができる。基板Swに対する真空処理によっては、マスクプレートが基板Swと共に取り付けられるようにしてもよい。
【0016】
大気雰囲気に維持されるポジションチャンバPcには、他方の面側から搬送トレイTrを保持した状態で傾動自在な傾動部2が備えられ、水平姿勢と起立姿勢との間で搬送トレイTrの姿勢を変更することができる。傾動部2は保持板21を備え、保持板21の所定位置には、特に図示して説明しないが、バキュームチャックなどの保持機構が設けられ、搬送トレイTrを起立姿勢にしたときでも保持板21から基板Swが離脱しないようにしている。保持板21には、X軸方向に間隔を置いて立設されて、単軸ロボットなどの機構(図示せず)によりZ軸方向上下に同期して伸縮自在な2本のフレーム22に設けた回転軸23が連結され、モータMtにより回転軸23を一方向に回転駆動すると、保持板21が回転軸23回りに回転して搬送トレイTrを傾動するようにしている。各フレーム22の下端は、Y軸方向にのびるようにポジションチャンバPcに設けた単軸ロボットの移動機構24に連結され、Y軸方向左右に往復動自在となっている。
【0017】
ポジションチャンバPcにて水平姿勢の搬送トレイTrに基板Swが配置されると、傾動部2は、搬送トレイTrを持ち上げながら回転して搬送トレイTrを起立姿勢とし、移動機構24により後述の搬送部のZ軸方向上方の位置までY軸方向一方に移動した後、搬送トレイTrを差し込むように搬送部へと受け渡す。一方、後述の搬送部から処理済みの基板Swがある搬送トレイTrを受け取るときには、傾動部2は、他方の面側から搬送トレイTrを保持した後、Z軸方向上方に引き抜くように起立姿勢の搬送トレイTrを持ち上げた後、搬送トレイTrを持ち下げながら搬送トレイTrを回転させて水平姿勢に変更してY軸方向他方に所定位置まで移動し、搬送トレイTrからの処理済みの基板Swの回収が可能となる。
【0018】
ポジションチャンバPcのX軸方向前方には、ゲートバルブGv1を介してロードロックチャンバLcが連設されている。ロードロックチャンバLcには、特に図示して説明しないが、真空ポンプからの排気管とベントガスを導入するベントガスラインとが夫々接続され、ロードロックチャンバLcを真空雰囲気と大気雰囲気とに適宜切り換えることができる。ロードロックチャンバLcのX軸方向前方には、基板Swの処理面に対して実施しようとする各種の真空処理に応じて例えば2個の処理チャンバVc1,Vc2がゲートバルブGv2,Gv3を介して順次連設されている。各処理チャンバVc1,Vc2は、X軸方向に沿ってのびる隔離壁31によってY軸方向で左右2室に隔絶され、各室31a,31bには、例えば、スパッタリングカソードといった各種の真空処理の実施に必要な装置32が夫々設けられている。そして、基板Swの処理面がY軸方向一方(
図2中、下方)を向く起立姿勢で搬送トレイTrが各処理チャンバVc1,Vc2の各室31a,31bを夫々通過する間に、基板Swの処理面に対し各種の真空処理が施される。X軸方向前方で最下流側に位置する処理チャンバVc2には、ゲートバルブGv4を介してターンバックチャンバBcが連設されている。これらポジションチャンバPc、ロードロックチャンバLc、処理チャンバVc1,Vc2及びターンバックチャンバBcが、本実施形態の真空チャンバを構成する。
【0019】
ターンバックチャンバBcには、特に図示して説明しないが、上面に搬送ローラを設けたY軸方向(
図2中、上下方向)に移動自在な移動ステージが設けられ、処理チャンバVc2のY軸方向左側の室31aから受け取った搬送トレイTrを再度処理チャンバVc2のY軸方向右側の室31bに戻すことができる。そして、ポジションチャンバPcとターンバックチャンバBcとの間でX軸方向にのびる2本の搬送路Tp1,Tp2に沿って搬送トレイTrを起立姿勢で夫々搬送できるように搬送手段Tmが設けられている。以下において、互いにX軸方向に連設されたポジションチャンバPcからロードロックチャンバLc、各処理チャンバVc1,Vc2のY軸方向左側の室31aを経てターンバックチャンバBcに通じる、搬送トレイTrがX軸方向前方(
図1、2中、左側から右側)に搬送されるものを行き搬送路Tp1、逆に、ターンバックチャンバTcからY軸方向右側の室31b、ロードロックチャンバLcを経てポジションチャンバPcに通じる、搬送トレイTrがX軸方向後方(
図1中、右側から左側)に搬送されるものを戻り搬送路Tp2とする。
【0020】
搬送手段Tmは、起立姿勢の搬送トレイTrを非接触でZ軸方向上方に牽引した状態で、X軸方向前方または後方への移動を案内する第1案内部4と、第1案内部4によりその重量の一部が牽引された搬送トレイTrの残余の重量を接触支持してX軸方向前方または後方に搬送トレイTrを搬送する搬送部5と、搬送トレイTrのZ軸方向下部にて非接触でZ軸方向上方に牽引した状態でX軸方向前方または後方への移動を案内する第2案内部6とを備える。第1案内部4は、搬送トレイTrの板状体11のZ軸方向上面にその上辺に沿って取り付けたX軸方向に長手の第1磁石41と、行き搬送路Tp1及び戻り搬送路Tp2に沿ってポジションチャンバPc、ロードロックチャンバLc及び各処理チャンバVc1,Vc2内のZ軸方向上部に夫々配置した第2磁石42とを備える。第1磁石41と第2磁石42とは、その対向面の極性が異なるように着磁され、これにより、搬送トレイTrを非接触でZ軸方向上方に牽引した状態でX軸方向前後への移動を夫々案内する。なお、第1磁石41と第2磁石42とはY軸方向に間隔を置いて複数列で設けることもでき、この場合には、第1磁石41と第2磁石42との互いに向かい合うものの極性を交互に変えることが好ましい。
【0021】
搬送部5は、行き搬送路Tp1及び戻り搬送路Tp2に沿ってポジションチャンバPc、ロードロックチャンバLc及び各処理チャンバVc1,Vc2内の下部にX軸方向に間隔を置いて複数設けられる転動体としての搬送コロ51を備える。各搬送コロ51は、ポジションチャンバPc、ロードロックチャンバLc及び各処理チャンバVc1,Vc2内の所定位置に夫々軸支される軸体51aと、各軸体51aに夫々外嵌されて搬送トレイTrのZ軸方向下面に接触する車輪部51bとで構成される。この場合、単一の軸体51aには、Y軸方向に間隔を置いて少なくとも2個の車輪部51bが取り付けられ、車輪部51bの先端はまた、径方向外方に向かって先細りである楕円状に形成され、車輪部51bが搬送トレイTrのZ軸方向の下面に点接触するようにしている。特に図示して説明しないが、各搬送コロ51の軸体51aには、プーリー、歯車、駆動ベルトやモータといった公知の動力伝達機構が連結され、行き搬送路Tp1及び戻り搬送路Tp2毎に各搬送コロ51が同期して同方向に回転駆動される。
【0022】
第2案内部6は、搬送トレイTrのZ軸方向下部に設けた第3磁石(一方の磁石)61と、行き搬送路Tp1及び戻り搬送路Tp2に沿ってポジションチャンバPc、ロードロックチャンバLc及び各処理チャンバVc1,Vc2内の下部に夫々配置した第4磁石62とを備える。搬送トレイTrの板状体11には、基板Swが配置される一方の面に背向する他方の面側(
図3中、左側)でその下端にその外方に向けて延出させて支持板部13が形成され、支持板部13のZ軸方向上面に第3磁石61が設けられている。他方、行き搬送路Tp1及び戻り搬送路Tp2に沿ってポジションチャンバPc、ロードロックチャンバLc及び各処理チャンバVc1,Vc2内のZ軸方向下部には、搬送トレイTrの支持板部13にZ軸方向に間隔を置いて対峙する水平壁部63aを持つ支持壁63がX軸方向に沿ってのびるように夫々設けられ、水平壁部63aの下面に第4磁石62が設けられている。第3磁石61と第4磁石62とは、その対向面の極性が異なるように着磁され、これにより、搬送トレイTrのZ軸方向下部を非接触でZ軸方向上方に牽引した状態でX軸方向前後への移動を夫々案内する。なお、第3磁石61と第4磁石62とは、上記同様、Y軸方向に間隔を置いて複数列で設けることもでき、この場合には、第3磁石61と第4磁石62との互いに向かい合うものの極性を交互に変えることが好ましい。搬送手段Tmはまた、ポジションチャンバPc、ロードロックチャンバLc、処理チャンバVc1,Vc2及びターンバックチャンバBc内に存する各搬送トレイTrの位置を把握できるようにアブソリュートエンコーダを備える。
【0023】
図4も参照して、各搬送トレイTrの下部には、X軸方向全長に沿って長尺のスケール(符号板)71が夫々取り付けられている。また、ポジションチャンバPc、ロードロックチャンバLc、処理チャンバVc1,Vc2及びターンバックチャンバBcに夫々設けたX軸方向に長手の支持壁63には、X軸方向に沿って所定間隔で複数個の検出部72a~72oが配置されている。そして、各搬送トレイTrのスケール71と各検出部72a~72oとでアブソリュートエンコーダを構成する。以下においては、説明の便宜上、ポジションチャンバPc内で行き搬送路Tp1の受渡位置に設けられる(つまり、起立姿勢の搬送トレイTrの搬送が開始される)最上流側のものを起点検出部72aとし、行き搬送路Tp1の受渡位置からターンバックチャンバBc内に向けて搬送トレイTrを搬送する場合を例に搬送トレイTrの座標の特定を説明する。
【0024】
各検出部72a~72oとしては、光学式、磁気式などの公知のものを利用することができ、各搬送トレイTrに取り付けられるスケール71としては、各検出部72a~72oの種類に応じた公知のものが用いられる。例えば、検出部72a~72oとして光学式のものを用いる場合、スケール71は、例えば、その表面に反射率の異なる複数の層がパターンニング形成されたものである(以下では、
図4に示すように、スケール71の目盛の長さ(目盛の長さは、最大目盛値から最小目盛値を減算することで得られる)を999mmとし、目幅は1mm間隔で付されているものとするが、精度に応じて目幅は適宜設定することができる)。この場合、例えば、最初に搬送される搬送トレイ(これを「第1搬送トレイTr1」とする)に0~999mm、次に搬送される搬送トレイ(これを「第2搬送トレイTr2」とする)に1000mm~1999mm、更に次に搬送される搬送トレイ(これを「第3搬送トレイTr3」とする)に2000mm~2999mmのように、搬送トレイTr1,Tr2,Tr3毎にスケール71の目盛値が互いに重複しないように、即ち、各搬送トレイTr1,Tr2,Tr3のスケール71の最小目盛値及び最大目盛値が互いに重複しないように設定している。
【0025】
互いに隣接する各検出部72a~72o相互の間の間隔は、行き搬送路Tp1及び戻り搬送路Tp2にて、スケール71の目盛の長さ(0~999mm)より小さく夫々設定されている(例えば、800mm)。そして、各検出部72a~72oは、大気雰囲気に設置される制御ユニットCuに信号ケーブルSkを介して接続され、各検出部72a~72oで読み取ったスケール71の目量が制御ユニットCuへと出力される。なお、アブソリュートエンコーダ7自体は、スケール71と検出部72の組み合わせが変更される事象及び、検出部72がスケール71と正対しない事象を除き、公知のものが利用されるため、目盛の形態、読み取った目量(エンコーダ値)の制御ユニットCuへの出力方法(デジタル信号、アナログ信号での出力)や、読み取った目量からの行き搬送路Tp1における座標の演算方法などを含め、これ以上の詳細な説明は省略する。
【0026】
制御ユニットCuは、マイクロコンピュータ、シーケンサやメモリなどを有する公知のものであり、真空ポンプや搬送手段Tmなど真空処理装置VMに設けられる稼働部品の作動を統括制御する。制御ユニットCuはまた、各検出部72a~72oの作動を制御し(即ち、制御ユニットCuは、図示省略の一般的なアブソリュートエンコーダと同様の制御部品(例えば、サーボアンプ)を含む)、各検出部72a~72oからの出力を受けて、行き搬送路Tp1及び戻り搬送路Tp2における個々の搬送トレイTrの座標を特定した後、この特定した位置をディスプレイなどの外部機器や、真空処理装置VMを含む製造ラインを制御する上位統括制御装置などに出力することができる。
【0027】
具体的には、
図4に示すように、各検出部72a~72oが例えば800mmの等間隔で配置されているとして、第1搬送トレイTr1が行き搬送路Tp1に沿って搬送されるとき、先ず、起点検出部72aが第1搬送トレイTr1のスケール71に正対し、起点検出部72aにより第1搬送トレイTr1のスケール71の始点(例えば、最小目盛値0)が読み取られる。第1搬送トレイTr1が更に搬送されると、起点検出部72aで読み取った目量(例えば、200)が制御ユニットCuに出力される。このとき、制御ユニットCuは、読み取った目量(200)から行き搬送路Tp1における第1搬送トレイTr1の座標を特定する(
図4(a)参照)。この場合、制御ユニットCuは、起点検出部72aで読み取ったスケール71の目量を基に特定した第1搬送トレイTrの座標を保持し、起点検出部72aで新たな目量を読み取る毎に第1搬送トレイTrの座標を更新する。
【0028】
第1搬送トレイTr1が行き搬送路Tp1に沿って更に搬送されると、起点検出部72aに加えて、これに隣接する次の検出部72bが第1搬送トレイTr1のスケール71に夫々正対し、次の検出部72bにより第1搬送トレイTr1のスケール71の始点(最小目盛値0)が読み取られる。このとき、起点検出部72aもスケール71の目量(800)を読み取っているが、制御ユニットCuは、検出部72bで読み取ったスケール71の目量を基準に搬送トレイTr1の座標を特定し、保持する。また、制御ユニットCuには、起点検出部72aと検出部72bとの間の距離に応じたオフセット値(800)が記憶され、第1搬送トレイTr1の始点(最小目盛値0)が検出部72bで読み取られると、制御ユニットCuは、この読み取ったスケール71の目量(0)とオフセット値(800)とから行き搬送路Tr1における第1搬送トレイTr1の座標を特定する(
図4(b)参照)。このように起点検出部72aを除く他の検出部72毎に、起点検出部72aからの距離に応じたオフセット値(検出部72相互の間の間隔(800の整数倍)を夫々付与して制御ユニットCuに記憶されている。
【0029】
第1搬送トレイTr1が搬送路Tp1に沿って更に搬送されると、制御ユニットCuは、そのときに検出部72bで読み取ったスケール71の目量(例えば、500)とオフセット値(800)とから第1搬送トレイTr1の座標を特定する(
図4(c)参照)。ここで、第1搬送トレイTr1が更に搬送されると、起点検出部72aが、搬送トレイTrのスケール範囲から外れること(スケール71と検出部72とが正対しない事象)になるが、アブソリュートエンコーダ7の制御部品は、検知エラーを発報せず、制御ユニットCuに対して特定の値として-1を返すようにしている。このとき、検出部72bでスケール71の目量が読み取られているので、アブソリュートエンコーダ7の制御部品に対する制御ユニットCuからの指令でアラームの発報とエラーリセットが不要になるため、行き搬送路Tp1における搬送トレイTr1~Tr3の絶対位置(座標)の特定に何らの影響を与えることがない。以降、上記操作を繰り返しながら、制御ユニットCuは、各検出部72c,72d,72e,72f,72g,72hで第1搬送トレイTr1の目量を夫々読み取り、読み取ったスケール71の目量とオフセット値とから行き搬送路Tp1における搬送トレイTr1の座標を特定する(
図4(d)、第1搬送トレイTr1の座標参照)。
【0030】
上記に併せて、第1搬送トレイTr1に加えて第2搬送トレイTr2が行き搬送路Tp1を搬送されるときには、起点検出部72aにより第2搬送トレイTr2の始点(最小目盛値1000)を読み取る。そして、第2搬送トレイTr2が更に搬送されたとき、起点検出部72aで読み取ったスケール71の目量(例えば、1200)が制御ユニットCuに出力され、行き搬送路Tp1における第2搬送トレイTr2の座標が特定される。なお、座標の特定に際しては、最小目盛値が減算されるプロセスが付与されることが必要である。本実施形態では、最小目盛値が1000単位で増加することから、例えば、読み取った目量を1000で除算し、商を各搬送トレイTr1~Tr3の識別に利用し、その余りを座標特定に使用すればよい。この場合、各搬送トレイTr1~Tr3に付属するスケール71の最小目盛値は整数倍となっていることが、演算処理上で好ましい。
【0031】
ここで、スケール71の目盛値1000(最小目盛値)~1999(最大目盛値)は第2搬送トレイTr2に割り付けたものであることから、例えば、起点検出部72aにより第2搬送トレイTr2の始点を読み取った時点で当該搬送トレイが第2搬送トレイTr2であることが識別される。そして、第2搬送トレイTr2が更に搬送されたときに起点検出部72aで読み取ったスケール71の目量(例えば、1200)から、制御ユニットCuは、現在の行き搬送路Tp1における座標200にあると特定することができる(
図4(d)、第2搬送トレイTr2の座標参照)。更に、第3搬送トレイTr3が搬送されるときも同様に、起点検出部72aで読み取った目量(例えば、2200)が制御ユニットCuに出力され、行き搬送路Tp1における第3搬送トレイTr3の座標と種別が特定される(
図4(e)参照)。このように、搬送トレイTr1~Tr3毎にスケール71の目盛値が互いに重複しないようにしておけば、各検出部72で読み取った目量から制御ユニットCuは、個々の搬送トレイTr1~Tr3の種別を判定することができる。以降、上記操作を繰り返しながら、制御ユニットCuは、行き搬送路Tp1及び戻り搬送路Tp2を搬送されている各搬送トレイTr(Tr1~Tr3)を識別しながら、行き搬送路Tp1及び戻り搬送路Tp2における個々の搬送トレイTrの座標を特定することができる。
【0032】
以上の実施形態によれば、ポジションチャンバPc、ロードロックチャンバLc、処理チャンバVc1,Vc2及びターンバックチャンバBc内に固定配置される各検出部72a~72oと制御ユニットCuとを信号ケーブルSkで接続しておけば、各検出部72で読み取った目量とオフセット値とから行き搬送路Tp1または戻り搬送路Tp2における搬送トレイTrの絶対位置(座標)を特定することができる。このとき、各チャンバPc,Lc,Vc1,Vc2,Bc内で信号ケーブルを引き回すといったことが不要にできるので、互いに隣接される各チャンバがゲートバルブGv1~Gv4を介して連設されているような場合でも、搬送トレイTrの絶対位置の特定が阻害されるものではない。また、各検出部72で読み取った目量を基に制御ユニットCuが搬送部5の作動、つまり、搬送トレイTrの搬送をフィードバック制御するようにしておけば、部品点数を削減することができ、有利である。
【0033】
また、いずれかの真空チャンバ内での真空処理中に何等かの原因で各真空処理が中止または中断されて、検出部72a~72o、制御ユニットCuや制御部品への給電が停止された場合、給電再開(電源復帰)後にいずれかの検出部72a~72oでスケール71の目量を新たに読み取るだけで、制御ユニットCuにより各搬送トレイTr1~Tr3の座標やその種別が正確に把握されるので、復帰動作を可及的速やかに実施することができ、有利である。即ち、本実施形態のもので説明すれば、給電再開後に各検出部72から得られた目量を最小目盛値の整数倍増加量である1000で除算すれば、原点復帰動作などを実施せずとも、各搬送トレイTr1~Tr3の識別と位置を即時に得られるため、生産効率の面で有利な真空処理装置VMとすることができる。これは、スケール71と検出部72の組み合わせが変更されることを利用し、各搬送トレイTr1~Tr3の識別および絶対位置を即時に把握可能とした搬送トレイ識別および絶対位置検出システムであると言える。
【0034】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明の技術思想の範囲を逸脱しない限り、種々の変形が可能である。上記実施形態では、搬送部5として、搬送トレイTrのZ軸方向の下面に点接触して支持する搬送コロ51を備えるものを例に説明したが、これに限定されるものではなく、球体を用いたものや磁気浮上式のものなど他の公知のものを利用することができる。また、上記実施形態では、2個の車輪部51bを設けたが、1個の車輪部とした構成でも不都合はない。更に、車輪部51bの先端は搬送トレイTrのZ軸方向の下面に点接触するようにし、その点接触部位は、軸体51aを経由して回転駆動力が伝達される機構としたが、この車輪部51bと軸体51aとの嵌合部に例えば等速ジョイントを用いれば、確実に転がり接触によって搬送トレイTrへ駆動力を伝達することもできる。
【0035】
上記実施形態では、第1案内部4と第2案内部6として、互いに引き合うように配置した一対の磁石41,42,61,62を備えるものを例に説明したが、第1案内部4として、搬送トレイTrの重量(基板Sw重量も含む)の大半を牽引できると共に、少なくともX軸方向の自由度、Z軸方向上下の移動とY軸方向左右を軸とした回転(ピッチング)の自由度がある程度制限できるものであれば、これに限定されるものではない。特に図示して説明しないが、例えば、ポジションチャンバPc、ロードロックチャンバLc及び各処理チャンバVc1,Vc2内上部にレール部材を設け、このレール部材に摺動自在に係合するスライダを設け、スライダにX軸方向に間隔を置いて吊設した複数本のワイヤで送トレイTrを牽引した状態で案内するようにしてもよい。他方、第2案内部6もまた、特に、X軸方向前後を軸にした搬送トレイTrの回転(ロール)やY軸方向左右の移動の自由度がある程度制限できるものであれば、これに限定されるものではなく、上記第1案内部と同様の構成を採用するようにしてもよい。また、上記実施形態では、搬送トレイTrを起立姿勢で搬送するものを例に説明したが、これに限定されるものではなく、搬送トレイTrの搬送時の姿勢に関係なく、本発明は適用することができる。
【符号の説明】
【0036】
VM…真空処理装置、Sw…基板(被処理基板)、Tr,Tr1~Tr3…搬送トレイ、Tm…搬送手段、71…スケール、72a~72o…検出部、72a…起点検出部、Cu…制御ユニット、Pc…ポジションチャンバ(真空チャンバ)、Lc…ロードロックチャンバ(真空チャンバ)、Vc1,Vc2…処理チャンバ(真空チャンバ)、Bc…ターンバックチャンバ(真空チャンバ)。