IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ユニ・チャーム株式会社の特許一覧

特開2023-90553使用済み吸収性物品からリサイクルパルプ繊維を製造する方法
<>
  • 特開-使用済み吸収性物品からリサイクルパルプ繊維を製造する方法 図1
  • 特開-使用済み吸収性物品からリサイクルパルプ繊維を製造する方法 図2
  • 特開-使用済み吸収性物品からリサイクルパルプ繊維を製造する方法 図3
  • 特開-使用済み吸収性物品からリサイクルパルプ繊維を製造する方法 図4
  • 特開-使用済み吸収性物品からリサイクルパルプ繊維を製造する方法 図5
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023090553
(43)【公開日】2023-06-29
(54)【発明の名称】使用済み吸収性物品からリサイクルパルプ繊維を製造する方法
(51)【国際特許分類】
   D21C 5/02 20060101AFI20230622BHJP
【FI】
D21C5/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021205570
(22)【出願日】2021-12-17
(71)【出願人】
【識別番号】000115108
【氏名又は名称】ユニ・チャーム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100139022
【弁理士】
【氏名又は名称】小野田 浩之
(74)【代理人】
【識別番号】100192463
【弁理士】
【氏名又は名称】奥野 剛規
(74)【代理人】
【識別番号】100169328
【弁理士】
【氏名又は名称】藤本 健治
(72)【発明者】
【氏名】石川 宜秀
(72)【発明者】
【氏名】平岡 利夫
【テーマコード(参考)】
4L055
【Fターム(参考)】
4L055AA11
4L055AH21
4L055BA11
4L055BB02
4L055BB30
4L055DA09
4L055FA04
4L055FA07
(57)【要約】
【課題】分散性が高く、異物の検知や除去が容易なリサイクルパルプ繊維を得ることが可能な、使用済み吸収性物品からリサイクルパルプ繊維を製造する方法を提供する。
【解決手段】本方法は、パルプ繊維を含む使用済み吸収性物品からリサイクルパルプ繊維を製造する方法であって、脱水工程(S03)と、解し工程(S04)と、を備えている。脱水工程は、使用済み吸収性物品から分離され、洗浄されたパルプ繊維を脱水する工程である。解し工程は、脱水により形成された前記パルプ繊維の複数の塊の各々を解して、リサイクルパルプ繊維を生成する工程である。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
パルプ繊維を含む使用済み吸収性物品からリサイクルパルプ繊維を製造する方法であって、
使用済み吸収性物品から分離され、洗浄されたパルプ繊維を脱水する脱水工程と、
脱水により形成された前記パルプ繊維の複数の塊の各々を解して、リサイクルパルプ繊維を生成する解し工程と、
を備える、方法。
【請求項2】
前記解し工程は、前記脱水された前記パルプ繊維の塊の中に存在する異物の細分化を抑制しつつ、前記パルプ繊維の塊を解す工程を含む、
請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記解し工程は、前記脱水により形成された前記パルプ繊維の複数の塊のうちの、予め設定された質量又は体積の範囲に相当する分の前記パルプ繊維の塊を定量する定量工程と、
定量された前記パルプ繊維の塊を解す塊解し工程と、
を含む、
請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記解し工程は、解された前記パルプ繊維内の異物の検出を行い、異物が検出された場合に前記異物の除去を行う異物検出工程を含む、
請求項1乃至3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記異物検出工程は、金属の異物の検出を金属検出装置で行う工程を含む、
請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記異物検出工程は、金属以外の異物の検出を異物検出装置で行う工程を含む、
請求項4又は5に記載の方法。
【請求項7】
前記脱水工程の前に、前記使用済み吸収性物品から分離されたパルプ繊維をオゾン処理するオゾン処理工程を更に備える、
請求項1乃至6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記解し工程後に、生成された前記リサイクルパルプ繊維を、湿潤状態のまま保管する保管工程を更に備える、
請求項1乃至7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記脱水工程の前に、前記使用済み吸収性物品から分離されたパルプ繊維を抗菌剤で処理する抗菌処理工程を更に備える、
請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記解し工程以降の工程は、閉鎖された空間で実施される、
請求項1乃至9のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、使用済み吸収性物品からリサイクルパルプ繊維を製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
使用済み吸収性物品からリサイクルパルプ繊維を製造する方法が知られている。例えば、特開2020-183585号公報には、高吸水性ポリマー、パルプ繊維及び排泄物を含む使用済みの吸収性物品からリサイクルパルプ繊維を製造する方法が開示されている。この方法は、不活化水溶液と使用済み吸収性物品とが混合された混合液から、不活化水溶液とパルプ繊維とをそれぞれ分離する分離工程と、分離された不活化水溶液と第1の酸化剤とを混合し、不活化水溶液に含まれる排泄物を分解して、不活化水溶液の粘度を低下させる低粘度化工程と、不活化水溶液を分離工程へ戻す再供給工程と、を備える。その方法は、分離工程で分離されたパルプ繊維と第2の酸化剤を含む酸化剤水溶液とを混合し、パルプ繊維に含まれる高吸水性ポリマーを分解して、酸化剤水溶液に可溶化する可溶化工程と、酸化剤水溶液とパルプ繊維とを分離する他の分離工程と、を更に備えてもよい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2020-183585号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の方法では、分離されたパルプ繊維は洗浄水で洗浄され、脱水された後、最終的に、リサイクルパルプ繊維として取り出される。ところで、脱水されたパルプ繊維は、例えば、直径数cmの球の大きさ程度の多数の塊を含むことになる。そのようなパルプ繊維の多数の塊の各々を解すのは容易ではないため、取り出されたリサイクルパルプ繊維の分散性が低くなるおそれがある。そうなると、リサイクルパルプ繊維を種々の製品に再利用する際、繊維のダマやムラがその製品に生じ易くなる。
【0005】
また、パルプ繊維の多数の塊の各々を解すのは容易ではないため、塊の中の異物の検出は容易ではなく、検出できたとしても除去が難しくなる。それゆえ、取り出されたリサイクルパルプ繊維に無視できない程度の異物が含まれるおそれがある。そうなると、リサイクルパルプ繊維を含む製品では、異物の影響で性能が低くなり易くなる。
【0006】
特に、取り出されたリサイクルパルプ繊維を乾燥せずに保管する場合、カビ等の発生を抑制すべく、脱水工程で、できるだけ水分を除去するようにパルプ繊維を強く絞るため、繊維同士の結合や絡み合いが非常に強くなるので、塊が解し難くなる傾向は顕著になる。
【0007】
本発明の目的は、分散性が高く、異物の検知や除去が容易なリサイクルパルプ繊維を得ることが可能な、使用済み吸収性物品からリサイクルパルプ繊維を製造する方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様は、パルプ繊維を含む使用済み吸収性物品からリサイクルパルプ繊維を製造する方法であって、使用済み吸収性物品から分離され、洗浄されたパルプ繊維を脱水する脱水工程と、脱水により形成された前記パルプ繊維の複数の塊の各々を解して、リサイクルパルプ繊維を生成する解し工程と、を備える、方法である。
【発明の効果】
【0009】
本発明の方法によれば、分散性が高く、異物の検知や除去が容易なリサイクルパルプ繊維を得ることが可能な、使用済み吸収性物品からリサイクルパルプ繊維を製造する方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】実施形態に係る使用済み吸収性物品からリサイクルパルプ繊維を製造する方法を示すフローチャートである。
図2】実施形態に係る解し工程を実施する装置を示す模式図である。
図3】実施形態に係る解し工程を示すフローチャートである。
図4】実施形態に係る洗浄工程を示すフローチャートである。
図5】実施形態に係るパルプ繊維分離工程を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本実施形態は、以下の態様に関する。
[態様1]
パルプ繊維を含む使用済み吸収性物品からリサイクルパルプ繊維を製造する方法であって、使用済み吸収性物品から分離され、洗浄されたパルプ繊維を脱水する脱水工程と、
脱水により形成された前記パルプ繊維の複数の塊の各々を解して、リサイクルパルプ繊維を生成する解し工程と、を備える、方法。
【0012】
本方法は、脱水により形成されたパルプ繊維の複数の塊の各々を解して、リサイクルパルプ繊維を生成する解し工程を備えている。脱水後のパルプ繊維の複数の塊の各々を解すことで、パルプ繊維、延いてはリサイクルパルプ繊維を分散性が高い状態にすることができる。それにより、生成されたリサイクルパルプ繊維の再利用の際、繊維のダマやムラを生じ難くすることができる。また、分散性が高い状態にすることで、リサイクルパルプ繊維の中に入り込んだ細かい異物の検知や除去を容易に行うことができる。
【0013】
[態様2]
前記解し工程は、前記脱水された前記パルプ繊維の塊の中に存在する異物の細分化を抑制しつつ、前記パルプ繊維の塊を解す工程を含む、態様1に記載の方法。
本方法では、解し工程は、パルプ繊維の塊の中に存在する異物の細分化を抑制しつつ、パルプ繊維の塊を解す工程を含んでいる。それにより、パルプ繊維の塊の中に入り込んだ細かい異物が、更に細分化され難くなり、ある程度の大きさを有するようにすることができる。それゆえ、リサイクルパルプ繊維における細かい異物の検知や除去をより容易に行うことができる。
【0014】
[態様3]
前記解し工程は、前記脱水により形成された前記パルプ繊維の複数の塊のうちの、予め設定された質量又は体積の範囲に相当する分の前記パルプ繊維の塊を定量する定量工程と、定量された前記パルプ繊維の塊を解す塊解し工程と、を含む、態様1又は2に記載の方法。
本方法では、解し工程は、パルプ繊維の複数の塊のうちの、所定の質量又は体積の範囲に相当するいくつかのパルプ繊維の塊ごとに、その塊を解している。すなわち、一度に解すパルプ繊維の塊の量を制限している。それにより、パルプ繊維の塊を確実に解すことができる。それゆえ、リサイクルパルプ繊維における細かい異物の検知や除去をより容易に行うことができる。
【0015】
[態様4]
前記解し工程は、解された前記パルプ繊維内の異物の検出を行い、異物が検出された場合に前記異物の除去を行う異物検出工程を含む、態様1乃至3のいずれか一項に記載の方法。
本方法は、解されたパルプ繊維内の異物の検出及び除去する工程を備えている。解されたパルプ繊維から細かい異物の検出を行うので、異物があれば容易に検出することができ、容易に除去することができる。
【0016】
[態様5]
前記異物検出工程は、金属の異物の検出を金属検出装置で行う工程を含む、態様4に記載の方法。
本方法では、金属の異物の検出を金属検出装置で行うことで、使用済み吸収性物品に含まれていて、パルプ繊維の分離の際に除去できなかった金属の異物を、容易に検出することができ、それにより、容易に除去することができる。
【0017】
[態様6]
前記異物検出工程は、金属以外の異物の検出を異物検出装置で行う工程を含む、態様4又は5に記載の方法。
本方法では、金属以外の異物の検出を異物検出装置で行うことで、使用済み吸収性物品に含まれていて、パルプ繊維の分離の際に除去できなかった金属以外の異物を、容易に検出することができ、それにより、容易に除去することができる。
【0018】
[態様7]
前記脱水工程の前に、前記使用済み吸収性物品から分離されたパルプ繊維をオゾン処理するオゾン処理工程を更に備える、態様1乃至6のいずれか一項に記載の方法。
オゾン処理工程でのオゾン処理により、パルプ繊維におけるリグニンや他の不純物の残留を抑制できると共に、パルプ繊維の消臭、殺菌及び漂白ができ、更にフィブリル化を促進することができる。そのため、そのパルプ繊維は、不純物が少なく、菌の発生が抑制され、表面積が大きくなるなど、多様な用途に適するパルプ繊維になっている。ただし、フィブリル化が進んだパルプ繊維は、パルプ繊維同士の結合力が強いため、分散性がより低下した状態である。そこで、本方法では、そのような状態のパルプ繊維で形成された塊を解す解し工程を実施している。それにより、フィブリル化が進んだパルプ繊維を分散性が高い状態にすることができる。したがって、リサイクルパルプ繊維の再利用の際、繊維のダマやムラを生じ難くすることができ、リサイクルパルプ繊維の中に入り込んだ細かい異物の検知や除去を容易にすることができる。
【0019】
[態様8]
前記解し工程後に、生成された前記リサイクルパルプ繊維を、湿潤状態のまま保管する保管工程を更に備える、態様1乃至7のいずれか一項に記載の方法。
本方法では、解し工程後に、生成されたリサイクルパルプ繊維を、湿潤状態のまま保管する。その場合、細かいリサイクルパルプ繊維を乾燥させずに保管することで、乾燥に掛かる設備等を削減できると共に、保管や輸送に要する設備等を低減できる、という利点がある。ただし、リサイクルパルプ繊維を、湿潤状態のまま保管すると、リサイクルパルプ繊維にカビなどの各種菌の発生及び増殖が生じるおそれがある。そのような場合でも、本方法では、オゾン処理により、殺菌などが行われているので、それらの発生及び増殖を抑制できる。それにより、リサイクルパルプ繊維を含む製品では、各種菌などの影響で特性が低くなることを抑制できる。
【0020】
[態様9]
前記脱水工程の前に、前記使用済み吸収性物品から分離されたパルプ繊維を抗菌剤で処理する抗菌処理工程を更に備える、態様8に記載の方法。
本方法では、使用済み吸収性物品から分離されたパルプ繊維を抗菌剤で処理しているため、各種菌の発生及び増殖を抑制することができる。
【0021】
[態様10]
前記解し工程以降の工程は、閉鎖された空間で実施される、態様1乃至9のいずれか一項に記載の方法。
本方法では、解し工程以降の工程が閉鎖された空間で実施されるので、リサイクルパルプ繊維への異物の混入や各種菌の侵入をより抑制することができる。
【0022】
以下、実施形態に係るパルプ繊維を含む使用済み吸収性物品からリサイクルパルプ繊維を製造する方法について説明する。ただし、使用済み吸収性物品は、使用者によって使用された、すなわち使用者の排泄物を吸収・保持した状態の吸収性物品だけでなく、未使用だが廃棄された吸収性物品を含む。吸収性物品としては、例えば使い捨ておむつ、尿取りパッド、生理用ナプキン、ベッドシート、ペットシートが挙げられる。
【0023】
まず、吸収性物品の構成例について説明する。吸収性物品は、表面シートと、裏面シートと、表面シートと裏面シートとの間に配置された吸収体とを備える。吸収性物品の大きさの一例としては長さ約15~100cm、幅5~100cmが挙げられる。なお、吸収性物品は、一般的な吸収性物品が備える他の部材、例えば拡散シート、防漏壁、サイドシート、外装シートなどを更に含んでもよい。
【0024】
表面シートの材料としては、特に制限はなく、公知の表面シートの材料を用いることができる。例えば、液透過性の不織布、液透過孔を有する合成樹脂フィルム、これらの複合シート等が挙げられる。裏面シートの材料としては、特に制限はなく、公知の裏面シートの材料を用いることができる。例えば、液不透過性の不織布、液不透過性の合成樹脂フィルム、これらの複合シートが挙げられる。拡散シートの材料としては、特に制限はなく、公知の拡散シートの材料を用いることができる。例えば、液透過性の不織布が挙げられる。防漏壁やサイドシートの材料としては、特に制限はなく、公知の防漏壁やサイドシートの材料を用いることができる。例えば、撥水性の不織布が挙げられ、防漏壁は糸ゴムのような弾性部材を更に含んでもよい。外装シートの材料としては、特に制限はなく、公知の外装シートの材料を用いることができる。例えば、液不透過性かつ通気性の不織布、液不透過性かつ通気性の合成樹脂フィルム、これらの複合シートが挙げられる。
【0025】
上述の不織布の種類としては、特に制限はなく、例えばメルトブローン不織布、スパンボンド不織布、サーマルボンド不織布、エアレイド不織布、エアスルー不織布などが挙げられる。また、合成樹脂フィルムの種類としては、特に制限はなく、公知のフィルム材料を用いることができる。ここで、不織布や合成樹脂フィルムの材料としては、吸収性物品用として使用可能であれば特に制限はないが、例えばポリエチレン、ポリプロピレン等のオレフィン系樹脂、6-ナイロン、6,6-ナイロン等のポリアミド系樹脂、ポリエチレンタレフタレート(PET)、ポリブチレンテレタレート(PBT)等のポリエステル系樹脂等が挙げられる。これらの不織布や合成樹脂フィルムの材料は、合成樹脂であり、プラスチック材料ということができる。本実施形態では、裏面シートの構成部材をフィルムとし、表面シートの構成部材を不織布とする吸収性物品を例にして説明する。
【0026】
吸収体の材料としては吸収体材料、すなわちパルプ繊維及び高吸水性ポリマーが挙げられる。パルプ繊維としては、例えば、セルロース系繊維が挙げられる。セルロース系繊維としては、例えば木材パルプ、架橋パルプ、非木材パルプ、再生セルロース、半合成セルロース等が挙げられる。パルプ繊維の大きさとしては、繊維の長径の平均値が例えば数十μmが挙げられ(20~40μm)、繊維長の平均値が例えば数mmが挙げられる(2~5mm)。高吸収性ポリマー(SuperAbsorbent Polymer:SAP)としては、例えばポリアクリル酸塩系、ポリスルホン酸塩系、無水マレイン酸塩系の吸水性ポリマーが挙げられる。高吸水性ポリマーの大きさ(乾燥時)としては、粒径の平均値が例えば数百μmが挙げられる(200~500μm)。吸収体は液透過性シートで形成されたコアラップに内包されていてもよい。
【0027】
吸収体の一方の面及び他方の面は、それぞれ表面シート及び裏面シートに接着剤を介して接合されている。平面視で、表面シートのうちの、吸収体を囲むように、吸収体の外側に延出した部分(周縁部分)は、裏面シートのうちの、吸収体を囲むように、吸収体の外側に延出した部分(周縁部分)と接着剤を介して接合されている。したがって、吸収体は表面シートと裏面シートとの接合体の内部に包み込まれている。接着剤としては、特に制限はないが、例えばホットメルト型接着剤が挙げられる。ホットメルト型接着剤としては、例えばスチレン-エチレン-ブタジエン-スチレン、スチレン-ブタジエン-スチレン、スチレン-イソプレン-スチレン等のゴム系主体、又はポリエチレン等のオレフィン系主体の感圧型接着剤又は感熱型接着剤が挙げられる。
【0028】
次に、実施形態に係るパルプ繊維を含む使用済み吸収性物品からリサイクルパルプ繊維を製造する方法について、具体的に説明する。なお、使用済み吸収性物品からパルプ繊維を分離、回収して、再利用可能なパルプ繊維を得ることは、再利用可能なリサイクルパルプ繊維を生成することになるので、リサイクルパルプ繊維を製造することといえる。
【0029】
図1は、実施形態に係るパルプ繊維を含む使用済み吸収性物品からリサイクルパルプ繊維を製造する方法を示すフローチャートである。本方法は、脱水工程S03と、解し工程S04と、を備えており、本実施形態では、更に、パルプ繊維分離工程S01と、洗浄工程S02と、保管工程S05と、を備えている。
【0030】
パルプ繊維分離工程S01は、使用済み吸収性物品からパルプ繊維を分離する工程である。洗浄工程S02は、パルプ繊維分離工程S01で得られたパルプ繊維を洗浄する工程である。
【0031】
脱水工程S03は、使用済み吸収性物品から分離され、洗浄されたパルプ繊維を脱水する工程である。使用済み吸収性物品から分離されたパルプ繊維は、洗浄されたのち、すすぎを施され、すなわち水で洗い清められ、その水をできるだけ除去するように脱水される。脱水では、水分を除去するために、パルプ繊維を強く絞る(圧縮する)。それにより、繊維同士が結合し絡み合って、パルプ繊維の複数の塊が形成される。個々の塊の形状は様々であるが、その大きさは、その塊を含む球の大きさで考えると、例えば、直径数cm~10cm程度の大きさが挙げられる。
【0032】
なお、本実施形態では、脱水工程S03で用いるパルプ繊維として、パルプ繊維分離工程S01及び洗浄工程S02を介して得られるパルプ繊維が用いられている。しかし、本発明はその例に限定されるものではなく、他のパルプ繊維、例えば、使用済み吸収性物品からパルプ繊維を分離する別の施設などで回収されたパルプ繊維を取得し、そのパルプ繊維を洗浄工程S02で洗浄して得られるパルプ繊維であってもよい。
【0033】
解し工程S04は、脱水により形成されたパルプ繊維の複数の塊の各々を解して、リサイクルパルプ繊維を生成する工程である。ここで、「解す」とは、パルプ繊維の塊の大きさを、元の大きさよりも小さくすることをいう。本実施形態では、塊の大きさを、塊を含む球の大きさで考えたとき、直径2cm以下、好ましくは1cm以下、更に好ましくは0.5cm以下にする。なお、パルプ繊維の複数の塊の全てを解す必要はないが、少なくとも95%以上の塊を解すことが好ましく、98%以上の塊を解すことがより好ましい。ただし、パルプ繊維の塊の大きさは、以下の方法で測定する。
【0034】
<パルプ繊維の塊の大きさ>
(1)評価対象の複数の塊を含むパルプ繊維の集合を、スキャナーの上に載置する。その際、塊同士が互いに積み重ならないように、かつ、接触しないようにする。ただし、分散した一本一本の繊維のみで接触している場合には接触していないものとする。
(2)パルプ繊維のスキャン画像を取り込む。
(3)ソフトウェアで、スキャン画像を二値化して、連続した領域を一個の塊として、塊を含む円の直径を塊ごとに求める。ただし、分散した一本一本の繊維のみで繋がっている領域同士は別々の塊とする。
【0035】
保管工程S05は、生成されたリサイクルパルプ繊維を、湿潤状態のまま保管する工程である。
【0036】
本方法は、上述のように、脱水工程S03の前に、パルプ繊維を準備する工程である使用済み吸収性物品からパルプ繊維を分離するパルプ繊維分離工程S01、及び、分離されたパルプ繊維を洗浄する洗浄工程S02を備えていてもよい。また、解し工程S04で生成されたリサイクルパルプ繊維を湿潤状態で保管する保管工程S05と、を備えていてもよい。パルプ繊維分離工程S01、洗浄工程S02及び保管工程S05の詳細は後述される。
【0037】
本方法は、脱水工程S03において、パルプ繊維を脱水してパルプ繊維の複数の塊の各々を形成し、解し工程S04において、脱水されたパルプ繊維の複数の塊の各々を解して、リサイクルパルプ繊維を生成している。このように、脱水後のパルプ繊維の複数の塊の各々を解すことで、解し後のパルプ繊維、延いては生成されたリサイクルパルプ繊維を分散性が高い状態にすることができる。それにより、生成されたリサイクルパルプ繊維を種々の製品に再利用する際、その製品に繊維のダマやムラを生じ難くすることができる。また、リサイクルパルプ繊維を分散性が高い状態にすることで、塊を解した後に行われるリサイクルパルプ繊維の中に入り込んだ細かい異物の検知や除去を容易に行うことができる。すなわち、本方法は、分散性が高く、異物の検知や除去が容易なリサイクルパルプ繊維を得ることが可能な、使用済み吸収性物品からリサイクルパルプ繊維を製造することができる。
【0038】
以下、上述された各工程について更に説明する。
【0039】
脱水工程S03は、既述のように、使用済み吸収性物品から分離され、洗浄されたパルプ繊維を脱水する。ここで、脱水工程S03を実施する脱水装置としては、脱水が可能であれば特に制限はないが、例えば、スクリュープレス脱水機や、ベルトプレス脱水機や、回転ドラムを有する洗濯槽兼脱水槽が挙げられる。脱水が終了した段階で、脱水時に印加された圧力によって、パルプ繊維の一部又は全部が複数の塊を形成している。そして、複数の塊を含むパルプ繊維を、脱水装置から送出し、解し工程S04へ移す。
【0040】
次いで、解し工程S04は、既述のように、脱水により形成されたパルプ繊維の複数の塊の各々を解して、リサイクルパルプ繊維を生成する。ここで、解し工程S04を実施する解し装置としては、パルプ繊維の塊を解せれば、特に制限はないが、例えば、ピンミル粉砕機が挙げられる。ピンミル粉砕機は、ディスクと、ディスクの表面に垂直に(ディスクの回転軸に平行に)配置された多数のピンとを備え、ディスクの回転により、ピンによる衝撃力や剪断力を塊に与えて塊を解す。解しが終了した段階で、衝撃力や剪断力により、パルプ繊維の複数の塊が解されて減少し、好ましくは消失している。そして、塊をほとんど含まない(好ましくは全く含まない)パルプ繊維を、解し装置から送出し、次の工程へ移す。
【0041】
ここで、解し工程S04について詳細に説明する。図2は解し工程S04を実施する装置を示す模式図であり、図3は解し工程S04を示すフローチャートである。解し工程S04は、塊解し工程S32を備え、本実施形態では、更に、定量工程S31と、検査工程S33と、を備えており、検査工程S33は、金属検査工程S34と、異物検査工程S35と、を含んでいる。そして、塊解し工程S32、定量工程S31、並びに、検査工程S33の金属検査工程S34及び異物検査工程S35を実施する装置は、それぞれ解し装置15、定量装置13、並びに、金属検出装置17及び異物検出装置19と、搬送装置21~25と、である。ただし、搬送装置21は、例えば、ベルトコンベヤ、駆動ローラコンベヤなどのコンベヤが挙げられる。また、解し工程S04では、パルプ繊維は湿潤状態である。
【0042】
本実施形態では、パルプ繊維分離工程S01及び洗浄工程S02を経由したパルプ繊維P0が、搬送装置20を介して、上述の脱水工程S03を実施する脱水装置11(例示:スクリュープレス脱水機)に供給される。脱水装置11により脱水されたパルプ繊維P0は、複数の塊を含むパルプ繊維P1として、搬送装置21を介して、解し工程S04の定量装置13へ供給される。
【0043】
まず、定量工程S31は、定量装置13により実施される。定量工程S31は、脱水工程S03の脱水により形成されたパルプ繊維の複数の塊のうちの、予め設定された質量又は体積の範囲に相当する分のパルプ繊維の塊を定量する工程である。
【0044】
具体的には、定量装置13は、脱水装置11から搬送装置21を介して連続的又は断続的に供給される、複数の塊であるパルプ繊維P1を受領して、そのパルプ繊維P1の質量又は体積を測定する。質量を測定する場合には、パルプ繊維P1の質量が、所定の質量の範囲(例示:50g~100g)に達するか否かを測定する。体積を測定する場合には、パルプ繊維P1の体積が、所定の体積の範囲(例示:500cm~1000cm)に達するか否かを測定する。そして、その質量又は体積が、その所定の質量又は体積の範囲に達したとき、搬送装置21を一時停止し、その所定の質量又は体積の範囲に入っている複数の塊であるパルプ繊維P1を、解し用のパルプ繊維P2として、搬送装置22を介して解し装置15へ送出する。
【0045】
所定の範囲の質量を測定する方法としては、供給される塊を一時的に収容する容器を準備し、容器内の複数の塊の質量が所定範囲の質量に達するか否かを、電子天秤で測定する方法が挙げられる。所定の範囲の体積を測定する方法としては、供給される塊を一時的に収容する、所定の体積の範囲の最大値と同等の容積を有する容器を準備し、複数の塊が例えば容器の8割以上を埋めるか否かを画像センサで計測する方法が挙げられる。
【0046】
別の実施形態では、搬送装置21がスクリューコンベアであり、定量装置13及び搬送装置21を用いずに、脱水装置11から送出されたパルプ繊維P1を解し装置15に直接供給する。その際、スクリューコンベアでは、スクリューが一定スピードで回転していて、搬送方向の下側の面で見たとき、スクリュー羽根とスクリュー羽根との間隔が等しい(スクリュー羽根のピッチが一定である)。そのため、そのスクリュー羽根とスクリュー羽根との間に複数の塊を含むパルプ繊維P1が入ることにより、ほぼ一定の質量又は体積のパルプ繊維P1が解し装置15(解し工程S32)に供給される。この場合、スクリューコンベアは、搬送装置であるが、定量装置(定量工程S31)と見ることもできる。
【0047】
次いで、塊解し工程S32は、解し装置15により実施される。塊解し工程S32は、定量工程S31により定量され、その所定の質量又は体積の範囲に入っているパルプ繊維の塊を解す工程である。
【0048】
具体的には、解し装置15(例示:ピンミル粉砕機)は、定量装置13から搬送装置22を介して供給される、複数の塊であるパルプ繊維P2を、所定の質量又は体積の範囲ごとに受領して、そのパルプ繊維P2を解す。この場合、解し装置15は、バッチ式である。そして、解し終わったパルプ繊維P2を、金属検査用のパルプ繊維P3として、搬送装置23を介して金属検出装置17へ送出する。
【0049】
ただし、定量工程S31(定量装置13)は省略してもよい。その場合、例えば、脱水装置11は複数の塊であるパルプ繊維P0を間欠的に解し装置15へ供給し、解し装置15は間欠的に塊解し工程S32を実施する(バッチ式)。あるいは、脱水装置11がパルプ繊維P0を連続的に解し装置15へ供給し、解し装置15が連続的に塊解し工程S32を実施してもよい(連続式)。
【0050】
本方法では、解し工程S04において、複数の塊であるパルプ繊維P1のうち、定量工程S31で定量された、所定の質量又は体積の範囲に相当するいくつかの塊であるパルプ繊維P2を、塊解し工程S32で解している。すなわち、一度に解すパルプ繊維の塊の量を所定の質量又は体積の範囲に制限している。それにより、パルプ繊維の塊を確実に解すことができる。それゆえ、後段の工程において、リサイクルパルプ繊維における細かい異物の検知や除去をより容易に行うことができる。
【0051】
次いで、検査工程S33は、各種の検査装置を用いて実施される。本実施形態では、金属検出装置17及び異物検出装置19である。検査工程S33は、解されたパルプ繊維P3内の異物の検出を行い、異物が検出された場合に異物の除去を行う工程である。本方法は、好ましい態様としてこのような検査工程S33を備えることで、解されたパルプ繊維P3から細かい異物の検出を行うことで、異物があれば容易に検出することができ、容易に除去することができる。本実施形態では、検査工程S33は、金属検査工程S34と、異物検査工程S35と、を含む。
【0052】
まず、金属検査工程S34は、金属検出装置17により実施される。金属検査工程S34は、解されたパルプ繊維P3内に含まれる金属の異物の検出を金属検出装置で行う工程である。
【0053】
具体的には、金属検出装置17は、搬送装置23の途中に配置され、搬送装置23を通過するパルプ繊維P3内に金属の異物が含まれているか否かを検出する。金属検出装置17としては、例えば、搬送装置23におけるパルプ繊維P3の通路の周囲に、一個又は複数個配置された近接センサ(電磁誘導型、静電容量型、磁気型)が挙げられる。
【0054】
金属検査工程S34後のパルプ繊維P4は、搬送装置23から搬送装置24へ移行される。そして、金属検出装置17で金属が検出されたパルプ繊維P4は、搬送装置24により、金属含有のパルプ繊維P5として取り除かれる。そして、図5に図示されていない金属異物除去装置へ受け渡されて、金属の異物を除去される。その後、再び搬送装置23へ戻され、再度、金属検査工程S34を受けてもよい。一方、金属検出装置17で金属が検出されなかったパルプ繊維P4は、搬送装置24により、金属非含有のパルプ繊維P6として、次の異物検出装置19へ供給される。
【0055】
本方法は、このような金属検査工程S34を有することで、使用済み吸収性物品に含まれていて、パルプ繊維の分離の際に除去できなかった金属製の異物を、容易に検出することができ、それにより、容易に除去することができる。
【0056】
次いで、異物検査工程S35は、異物検出装置19により実施される。異物検査工程S35は、金属検査工程S34を通過したパルプ繊維P6に含まれる、金属以外の異物の検出を異物検出装置で行う工程である。
【0057】
具体的には、異物検出装置19は、搬送装置24の途中に配置され、搬送装置24を通過するパルプ繊維P6内に金属以外の異物が含まれているか否かを検出する。金属検出装置17としては、例えば、搬送装置24におけるパルプ繊維P6の通路の周囲に、一個又は複数個配置された画像センサ又はデジタルカメラと画像処理システムとを組み合わせた装置が挙げられる。
【0058】
異物検査工程S35後のパルプ繊維P6は、搬送装置24から搬送装置25へ移行される。そして、異物検出装置19で金属以外の異物が検出されたパルプ繊維P6は、搬送装置25により、異物含有のパルプ繊維P7として取り除かれる。そして、図5に図示されていない異物除去装置へ受け渡されて、金属以外の異物を除去される。その後、再び搬送装置24へ戻され、再度、異物検査工程S35を受けてもよい。一方、異物検出装置19で異物が検出されなかったパルプ繊維P6は、搬送装置25により、異物非含有のパルプ繊維P8として、パルプ繊維を収納する収納容器へ供給される。
【0059】
本方法は、このような異物検査工程S35を有することで、使用済み吸収性物品に含まれていて、パルプ繊維の分離の際に除去できなかった金属以外の異物を、容易に検出することができ、それにより、容易に除去することができる。
【0060】
本実施形態では、好ましい態様として、解し工程S04が、脱水されたパルプ繊維の塊の中に存在する異物の細分化を抑制しつつ、パルプ繊維の塊を解す工程を含んでいてもよい。それにより、パルプ繊維の塊の中に入り込んだ細かい異物が、更に細分化され難くなり、ある程度の大きさを有するようすることができる。それゆえ、リサイクルパルプ繊維における細かい異物の検知や除去(検査工程S33(金属検査工程S34、異物検査工程S35))を、より容易に行うことができる。ただし、塊の中の異物を細分化し難くする方法としては、解し工程S04(塊解し工程S32)をピンミル粉砕機で実施する場合、例えば、ピンの形状を調整することで、異物の細分化を抑制できる。例えば、ピンの形状を、全体を円柱形状としたり、先端部を半球状にしたり、円柱の直径を相対的に太くしたり、本数を相対的に少なくしたりする調整が考え得る。
【0061】
また、本実施形態では、好ましい態様として、解し工程S04以降の工程は、閉鎖された空間で実施される。すなわち、少なくとも定量装置13、解し装置15、金属検出装置17、異物検出装置19、搬送装置21~25は閉鎖された空間に配置されている。好ましくは、発見された異物を除去する装置や各検査後のパルプ繊維を収容容器に収容する装置も閉鎖された空間に配置されている。それにより、少なくとも解されたリサイクルパルプ繊維への異物の混入や各種菌の侵入をより抑制することができる。
【0062】
次いで、本実施形態では、図1に示すように、解し工程S04の後の工程として、保管工程S05が実施される。ここで、保管工程S05を実施する保管装置としては、生成されたリサイクルパルプ繊維を、乾燥させずに湿潤状態のままで、例えば収容容器などに密閉して収容し、その収容容器などを保管設備へ移送する装置が挙げられる。リサイクルパルプ繊維を乾燥させずに保管することで、乾燥に掛かる設備等を削減できると共に、リサイクルパルプ繊維の体積が小さくなるので、収容容器などの容量や、収容容器などを保管する保管設備の大きさや、収容容器などを輸送するのに要する機器等を低減できる。
【0063】
ただし、リサイクルパルプ繊維を、湿潤状態のまま保管すると、リサイクルパルプ繊維にカビなどの各種菌の発生及び増殖が生じるおそれがある。それに対処するために、脱水工程S03でパルプ繊維を強く絞って水分をできるだけ少なくしている。ところが、その場合、繊維を強く絞るため、繊維同士の結合や絡み合いが非常に強くなってしまい、パルプ繊維の塊が解し難くなる傾向は顕著になる。そこで、本方法では、保管工程S05の前に解し工程S04を備えている。それにより、カビなどの各種菌の発生及び増殖を抑制しつつ、パルプ繊維の塊が解し難くなることを抑制できる。
【0064】
本発明では、脱水工程S03に供給される洗浄されたパルプ繊維については、特に制限されるものではないが、例えば、以下に説明される洗浄工程S02により洗浄されたパルプ繊維が挙げられる。そこで、その洗浄工程S02について詳細に説明する。図4は、実施形態に係る洗浄工程S02を示すフローチャートである。本実施形態では、洗浄工程S02は、オゾン処理工程S21と、すすぎ工程S22と、抗菌処理工程S23と、を備えている。ただし、洗浄工程S02は、すすぎ工程S22を備えていれば、他の工程を備えていなくてもよい。
【0065】
オゾン処理工程S21は、脱水工程S03の前に実施される、使用済み吸収性物品から分離されたパルプ繊維をオゾン処理する工程である。
【0066】
オゾン処理工程S21は、パルプ繊維を、オゾンを含む処理液(例示:オゾンを含む水)で処理する。この処理により、使用済み吸収性物品由来のパルプ繊維の表面や内部に付着している可能性のある高吸水性ポリマーや有機的な不純物(例示:リグニン、排泄物の残渣、菌、カビなど)をオゾンに接触させることができる。それにより、高吸水性ポリマーや有機的な不純物をオゾンで酸化分解し、処理液に可溶化して、パルプ繊維からそれらを容易に除去できるので、不純物の少ないパルプ繊維を得ることができる。また、オゾン処理の強さ(CT値((オゾンの濃度)×(処理時間))の大きさ)によっては、パルプ繊維のフィブリル化を進めることができ、それにより、フィブリル化が更に進み、比表面積が更に増大したパルプ繊維を得ることができる。
【0067】
オゾン処理工程S21のオゾン処理装置は、パルプ繊維を、オゾンに接触させることができれば、その構成は特に限定はない。オゾン処理装置は、例えば、処理液を貯留する処理槽と、処理槽内にオゾン含有ガスを供給するオゾン供給装置と、を備える。オゾン処理装置では、例えば、パルプ繊維が処理槽の上部又は下部から処理液内に投入され、オゾン含有ガスが処理槽の下部から処理液内に供給され、処理槽内でパルプ繊維と処理液中のオゾン含有ガスとが混合され、接触される。オゾン供給装置としては、例えばエコデザイン株式会社製オゾン水曝露試験機ED-OWX-2、三菱電機株式会社製オゾン発生装置OS-25V等が挙げられる。また、オゾンを含む処理液を用いることで、パルプ繊維を殺菌・漂白できる。
【0068】
オゾン処理工程S21では、処理液に含まれるパルプ繊維の濃度は、処理液100質量%に対して、例えば0.5~20質量%が挙げられ、1~10質量%が好ましい。パルプ繊維の濃度が低過ぎると、処理効率が悪くなり、高過ぎるとパルプ繊維の不純物を除去し難くなる。
【0069】
オゾン処理工程S21では、処理液中のオゾン濃度は、好ましくは1~200質量ppmである。濃度が低過ぎると、パルプ繊維の不純物を除去し難く、濃度が高過ぎると、パルプ繊維に損傷を与え易くなる。また、オゾンでの処理時間は、処理液中のオゾン濃度が高ければ短く、オゾン濃度が低ければ長くし、典型的には5~120分である。処理液中のオゾン濃度(ppm)と処理時間(分)の積(以下、「CT値」ともいう。)は、好ましくは100~6000ppm・分である。CT値が小さ過ぎると、不純物を除去し難くなり、CT値が大き過ぎると、パルプ繊維に損傷を与え易くなる。
【0070】
処理液は、オゾンを含んでいれば、又は、オゾンを含むことが可能ならば、特に制限はなく、例えば、水そのものや酸性水溶液が挙げられる。処理液は、酸性(pH2.0~6.0)~中性(pH6.0~8.0)であることが好ましい。より好ましくは、処理液のpHは、2.0~7.0以下であり、さらに好ましくはpH2.5~6.0である。酸性の状態で処理することで、処理液中のオゾンの失活やガス化を抑制することができ、短時間で高吸水性ポリマーを酸化分解できる。処理液のpHを保つために、例えば、処理液のpHをpHセンサで監視し、pHが中性側に変動したときには、所定の酸性溶液を変動幅に応じた量だけ処理液に付加してもよい。
【0071】
オゾン処理工程S21でのオゾン処理により、パルプ繊維における高吸水性ポリマーやリグニンや他の不純物の残留を抑制できると共に、パルプ繊維の消臭、殺菌及び漂白ができ、更にフィブリル化を促進することができる。そのため、そのパルプ繊維は、不純物が少なく、菌の発生が抑制され、表面積が大きくなるなど、多様な用途に適するパルプ繊維になっている。ただし、フィブリル化が進んだパルプ繊維は、パルプ繊維同士の結合力が強いため、分散性がより低下した状態である。そこで、本方法では、そのような状態のパルプ繊維で形成された塊を解す解し工程を実施している。それにより、フィブリル化が進んだパルプ繊維を分散性が高い状態にすることができる。したがって、リサイクルパルプ繊維の再利用の際、繊維のダマやムラを生じ難くすることができ、リサイクルパルプ繊維の中に入り込んだ細かい異物の検知や除去を容易にすることができる。
【0072】
その後、オゾン処理工程S21でオゾン処理されたパルプ繊維は、オゾン処理装置とは別に設けられたふるい(又はメッシュ)を有する分離装置により処理液から分離され(固液分離)、すすぎ工程S22に移行される。
【0073】
すすぎ工程S22は、一般的なすすぎ装置で実施される。オゾン処理されたパルプ繊維を、洗浄水(例示:純水、市水、工業用水)で、すすぐ工程である。それにより、パルプ繊維の表面に存在していた不純物や処理液(オゾンを含む)を洗い流す。その後、すすぎ工程S22ですすぎをされたパルプ繊維は、抗菌処理工程S23に移行される。
【0074】
抗菌処理工程S23は、一般的な抗菌剤散布装置で実施される。脱水工程S03の前に実施される、使用済み吸収性物品から分離されたパルプ繊維を抗菌剤で処理する工程である。例えば、すすぎにより不純物を低減されたパルプ繊維を攪拌しつつ、抗菌剤又は抗菌剤を含む液をそのパルプ繊維に散布する。
【0075】
本方法では、このように、使用済み吸収性物品から分離されたパルプ繊維を抗菌剤で処理しているため、その後の工程、例えば保管工程S05において、各種菌の発生及び増殖を抑制することができる。
【0076】
更に、本実施形態では、解し工程S04の前の工程として、オゾン処理工程S21が実施される。パルプ繊維のオゾン処理により、パルプ繊維の殺菌や不純物の処理が行われる。それにより、保管工程S05において、湿潤状態のまま保管しても、リサイクルパルプ繊維にカビなどの各種菌の発生及び増殖が生じることを抑制できる。それにより、リサイクルパルプ繊維を含む製品において、各種菌などの影響で特性が低くなることを抑制できる。
【0077】
本発明では、洗浄工程S02に供給される分離されたパルプ繊維については、特に制限されるものではないが、例えば、以下に説明されるパルプ繊維分離工程S01により分離されたパルプ繊維が挙げられる。そこで、そのパルプ繊維分離工程S01について詳細に説明する。図5は、実施形態に係るパルプ繊維分離工程S01を示すフローチャートである。本実施形態では、パルプ繊維分離工程S01は、破砕工程S11と、プラスチック分離工程S12と、異物除去工程S13と、SAP分離工程S14と、を備えている。
【0078】
破砕工程S11は、不活化水溶液中の使用済み吸収性物品(不織布製品)を破砕する工程である。本実施形態では、破砕工程S11において、複数の使用済み吸収性物品、又は、それらを内包した収集袋(以下、単に「使用済み吸収性物品」ともいう。)が、不活化水溶液である酸性水溶液を溜めた溶液槽に供給される。使用済み吸収性物品を含む酸性水溶液は、溶液槽から二軸破砕機(例示:二軸回転式破砕機、二軸差動式破砕機、二軸せん断式破砕機)へ送出される。使用済み吸収性物品は、二軸破砕機により破砕される。それにより、使用済み吸収性物品が破砕された破砕物が生成される。破砕物は単独で又は酸性水溶液と共に、プラスチック分離工程S12へ送られる。
【0079】
使用済み吸収性物品を不活化水溶液中で処理すると、使用済み吸収性物品に含まれる又は含まれていた高吸水性ポリマーは、不活化し、脱水して、小粒径になる。そのため、後続の工程において高吸水性ポリマーの取り扱いが容易になり、処理の効率が向上する。不活化水溶液として酸性水溶液、すなわち無機酸及び有機酸の水溶液を用いるのは、石灰や塩化カルシウムなどの水溶液と比較して、プラスチック材料やパルプ繊維に灰分が残留しないからであり、不活化の程度(粒径や比重の大きさ)をpHで調整し易いからでもある。酸性水溶液のpHとしては1.0~4.0が好ましい。pHを1.0以上にすると、設備が腐食し難く、排水処理時の中和処理に必要なアルカリ薬品も低減できる。pHを4.0以下にすると、高吸水性ポリマーを十分に小さくでき、殺菌能力も高められる。有機酸としては、例えばクエン酸、酒石酸、グリコール酸、リンゴ酸、コハク酸、酢酸、アスコルビン酸、等が挙げられ、クエン酸が好ましい。クエン酸のキレート効果により、排泄物中の金属イオン等がトラップされ除去可能であり、かつクエン酸の洗浄効果で、高い汚れ成分除去効果が期待できる。一方、無機酸としては、例えば硫酸、塩酸、硝酸が挙げられるが、塩素を含まないことやコスト等の観点から硫酸が好ましい。pHは水温により変化するため、本発明におけるpHは、水溶液温度20℃で測定したpHをいうものとする。有機酸水溶液の有機酸濃度は、特に限定されないが、有機酸がクエン酸の場合は、0.5質量%以上4質量%以下が好ましい。無機酸水溶液の無機酸濃度は、特に限定されないが、無機酸が硫酸の場合は、0.1質量%以上0.5質量%以下が好ましい。本実施形態では、不活化水溶液として、無機酸の硫酸を用いている。
【0080】
次いで、プラスチック分離工程S12は、酸性水溶液中で、使用済み吸収性物品を分解して得られる合成樹脂製のプラスチック材料(例示:フィルム、不織布、収集袋など)、高吸水性ポリマー、パルプ繊維及び排泄物の混合物から、プラスチック材料を分離する工程である。本実施形態では、破砕工程S11で生成された破砕物と酸性水溶液(排泄物を含む)との混合物が、パルパー分離機に供給される。パルパー分離機は、洗浄槽及びふるい槽として機能する撹拌分離槽を有している。パルパー分離機において、破砕物と酸性水溶液との混合物は、撹拌されて、破砕物から汚れを除去する洗浄を施されつつ、スクリーンにより、プラスチック材料と、パルプ繊維、高吸水性ポリマー及び酸性水溶液の混合液とに分離される。それにより、スクリーンを通過したパルプ繊維、高吸水性ポリマー及び酸性水溶液は、異物除去工程S13へ供給される。一方、スクリーンを通過しなかったプラスチック材料は、その後、洗浄水で洗浄され、乾燥されて、回収される。洗浄と同時に、又はその前後で除菌剤や殺菌剤で除菌や殺菌をされてもよい。
【0081】
次いで、異物除去工程S13は、少なくとも一台の分離機(例示:スクリーン分離機、サイクロン分離機)により、プラスチック分離工程S12から供給された上記の混合液から、除去しきれなかったフィルム、不織布、収集袋などの異物を分離する。本実施形態では、スクリーン分離機(目開きが相対的に大)、スクリーン分離機(目開きが相対的に小)及びサイクロン分離機がこの順に配置され、混合液から異物が順次分離される。それにより、異物の少ないパルプ繊維及び高吸水性ポリマーが得られる。異物の少ないパルプ繊維及び高吸水性ポリマーと酸性水溶液(排泄物を含む)との混合液は、SAP分離工程S14へ供給される。
【0082】
SAP分離工程S14は、少なくとも一台の分離機(例示:ドラムスクリーン分離機)により、異物除去工程S13から供給された混合液(異物の少ないパルプ繊維及び高吸水性ポリマーを含む)から、高吸水性ポリマーを分離する。本実施形態では、ドラムスクリーン分離機により、混合液が、高吸水性ポリマー及び酸性水溶液(排泄物を含む)と、パルプ繊維(ただし少量の高吸水性ポリマーを含む)とに分離される。それにより、スクリーンを通過した高吸水性ポリマー及び酸性水溶液は、他の分離機(例示:傾斜スクリーン分離機)により、高吸水性ポリマーと酸性水溶液とに分離され、高吸水性ポリマーは洗浄水で洗浄され、乾燥されて、回収される。洗浄と同時に、又はその前後で除菌剤や殺菌剤で除菌や殺菌をされてもよい。一方、スクリーンを通過しなかったパルプ繊維は、洗浄工程S02へ供給される。
【0083】
本発明の吸収性物品は、上述した各実施形態に制限されることなく、本発明の目的、趣旨を逸脱しない範囲内において、適宜組合せや変更等が可能である。
【符号の説明】
【0084】
S03 脱水工程
S04 解し工程
図1
図2
図3
図4
図5