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特開2023-90617処理液とインクのセット、印刷物、印刷方法、及び印刷装置
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  • 特開-処理液とインクのセット、印刷物、印刷方法、及び印刷装置 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023090617
(43)【公開日】2023-06-29
(54)【発明の名称】処理液とインクのセット、印刷物、印刷方法、及び印刷装置
(51)【国際特許分類】
   D06P 5/30 20060101AFI20230622BHJP
   C09D 11/54 20140101ALI20230622BHJP
   C09D 11/322 20140101ALI20230622BHJP
   D06P 5/00 20060101ALI20230622BHJP
   B41M 5/00 20060101ALI20230622BHJP
   B41J 2/01 20060101ALI20230622BHJP
【FI】
D06P5/30
C09D11/54
C09D11/322
D06P5/00 104
D06P5/00 106
B41M5/00 114
B41M5/00 132
B41M5/00 120
B41J2/01 123
B41J2/01 501
【審査請求】未請求
【請求項の数】20
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022116239
(22)【出願日】2022-07-21
(31)【優先権主張番号】P 2021205057
(32)【優先日】2021-12-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(74)【代理人】
【識別番号】100107515
【弁理士】
【氏名又は名称】廣田 浩一
(72)【発明者】
【氏名】平出 智大
(72)【発明者】
【氏名】小橋 紀之
(72)【発明者】
【氏名】黒沼 慎
【テーマコード(参考)】
2C056
2H186
4H157
4J039
【Fターム(参考)】
2C056EA04
2C056EA13
2C056EE18
2C056FA10
2C056FA13
2C056FB03
2C056FC02
2C056HA42
2C056HA46
2H186AB03
2H186AB05
2H186AB12
2H186AB27
2H186AB31
2H186AB54
2H186AB57
2H186AB64
2H186BA08
2H186DA17
2H186FB11
2H186FB15
2H186FB16
2H186FB17
2H186FB18
2H186FB22
2H186FB25
2H186FB29
2H186FB30
2H186FB48
2H186FB56
4H157AA01
4H157AA02
4H157AA03
4H157BA15
4H157BA27
4H157CA11
4H157CA12
4H157CA22
4H157CA29
4H157CA30
4H157CB09
4H157CB13
4H157CB16
4H157CB18
4H157CB36
4H157CB45
4H157CB46
4H157CB56
4H157CC01
4H157DA01
4H157DA17
4H157DA24
4H157DA34
4H157GA06
4H157JA10
4H157JB03
4J039AE04
4J039AE06
4J039AE07
4J039AE11
4J039BA13
4J039BA35
4J039BB04
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4J039BC33
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4J039EA42
4J039EA43
4J039EA44
4J039EA46
4J039FA03
4J039GA24
(57)【要約】
【課題】印刷された部分の生地のよれを抑制し、優れた洗濯堅牢性及び柔軟性を有する印刷物が得られる印刷方法等の提供。
【解決手段】生地に対して処理液を付与する処理液付与工程と、処理液を付与後の生地に対してインクを付与するインク付与工程と、を含み、前記インクが、顔料、架橋性官能基を有する樹脂、pH調整剤、並びにブロックイソシアネート化合物、カルボジイミド化合物、及びオキサゾリン基含有ポリマーから選択される少なくとも1種を含有する印刷方法である。
【選択図】なし

【特許請求の範囲】
【請求項1】
生地に対して処理液を付与する処理液付与工程と、
処理液を付与後の生地に対してインクを付与するインク付与工程と、
を含み、
前記インクが、顔料、架橋性官能基を有する樹脂、pH調整剤、並びにブロックイソシアネート化合物、カルボジイミド化合物、及びオキサゾリン基含有ポリマーから選択される少なくとも1種を含有することを特徴とする印刷方法。
【請求項2】
前記pH調整剤が炭素数4~8のアミン化合物を含む、請求項1に記載の印刷方法。
【請求項3】
前記pH調整剤が2-アミノ-2-エチル-1,3-プロパンジオールである、請求項1から2のいずれかに記載の印刷方法。
【請求項4】
前記オキサゾリン基含有ポリマーを含有する、請求項1から2のいずれかに記載の印刷方法。
【請求項5】
前記ブロックイソシアネート化合物、カルボジイミド化合物、及びオキサゾリン基含有ポリマーから選択される少なくとも1種の含有量が0.3質量%以上1.5質量%以下である、請求項1から2のいずれかに記載の印刷方法。
【請求項6】
更に、炭素数8~11のポリオール化合物及びグリコールエーテル化合物の少なくともいずれかを含有する、請求項1から2のいずれかに記載の印刷方法。
【請求項7】
前記炭素数8~11のポリオール化合物が2-エチル-1,3-ヘキサンジオールである、請求項6に記載の印刷方法。
【請求項8】
炭素数8~11のポリオール化合物及びグリコールエーテル化合物の少なくともいずれかの含有量が0.5質量%以上2質量%以下である、請求項6に記載の印刷方法。
【請求項9】
前記顔料は、二次粒子径が200nm以上300nm以下の酸化チタンである、請求項1から2のいずれかに記載の印刷方法。
【請求項10】
前記処理液が、凝集剤、保湿剤、及び界面活性剤を含む、請求項1から2のいずれかに記載の印刷方法。
【請求項11】
前記凝集剤が、無機塩、有機塩、及びカチオンポリマーのいずれかである、請求項10に記載の印刷方法。
【請求項12】
前記処理液が、更にワックスを含む、請求項10に記載の印刷方法。
【請求項13】
前記ワックスが酸化ポリエチレン、カルバナワックス、及びシロキサン化合物から選択される少なくとも1種を含む、請求項12に記載の印刷方法。
【請求項14】
前記処理液の付着量が0.8mg/cm以上9mg/cm以下である、請求項1から2のいずれかに記載の印刷方法。
【請求項15】
前記処理液の付与方法がインクジェット方式である、請求項1から2のいずれかに記載の印刷方法。
【請求項16】
前記処理液及び前記インクをウェットオンウェットで付与する、請求項1から2のいずれかに記載の印刷方法。
【請求項17】
前記生地が濃色生地である、請求項1から2のいずれかに記載の印刷方法。
【請求項18】
生地に対して処理液を付与する処理液付与手段と、
処理液を付与後の生地に対してインクを付与するインク付与手段と、
を有し、
前記インクが、顔料、架橋性官能基を有する樹脂、pH調整剤、並びにブロックイソシアネート化合物、カルボジイミド化合物、及びオキサゾリン基含有ポリマーから選択される少なくとも1種を含有することを特徴とする印刷装置。
【請求項19】
生地と、該生地上に請求項1から2のいずれかに記載の印刷方法を用いて形成した印刷層と、を有することを特徴とする印刷物。
【請求項20】
生地上に画像を形成するための処理液とインクのセットであって、
顔料、架橋性官能基を有する樹脂、pH調整剤、並びにブロックイソシアネート化合物、カルボジイミド化合物、及びオキサゾリン基含有ポリマーから選択される少なくとも1種を含有するインクと、
処理液と、
を有することを特徴とする処理液とインクのセット。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、処理液とインクのセット、印刷物、印刷方法、及び印刷装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、捺染分野においても、Tシャツ等の衣類に直接印字するいわゆるDTG(Direct to Garment)分野の市場規模は年々拡大している。また、近年のアパレル業界におけるパーソナルレコメンデーションビジネスの隆盛や、インテリアテキスタイル分野において認められるファインアートとのコラボレーションの活発化といった動向より、ファブリックに対して発色性及び種々堅牢性に優れた画像を形成可能なインクジェット記録システムへの需要がますます高まりつつある。
【0003】
顔料を色材として含むインクを用いて生地に直接インクジェットで作像する捺染方式においては、スクリーン捺染及びその他の従来の捺染とは異なり、版の作製、保管、洗浄等版に関する事柄が必要なく、少量多品種生産に適していること、転写等の工程を含まないため短納期化が可能なこと、耐光性に優れること等の点において優位性を有している。顔料捺染では、印刷物の発色性、堅牢性等向上のため種々の検討がされているが、Tシャツ等の衣類では着脱衣時に生地が伸ばされるように一時的な応力がかかるため、力が除去された際には元の形状に戻る、即ち、「生地のよれ」がないという機能も求められている。特に濃色に着色された有色生地では白インク印刷後にカラーインクを印刷するが、白インクはカラーインクと比べて付着量も多いため印刷物の特性に大きく影響を与える。
【0004】
このため、例えば、破断伸度が高いウレタン樹脂と少量の架橋剤を併用する捺染用インクジェットインク組成物が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
また、水、顔料、有機溶剤、及びポリカーボネートウレタン樹脂粒子を含有するインクジェット用捺染インクが提案されている(例えば、特許文献2参照)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、印刷された部分の生地のよれを抑制し、優れた洗濯堅牢性及び柔軟性を有する印刷物が得られる印刷方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するための手段としての本発明の印刷方法は、生地に対して処理液を付与する処理液付与工程と、処理液を付与後の生地に対してインクを付与するインク付与工程と、を含み、前記インクが、顔料、架橋性官能基を有する樹脂、pH調整剤、並びにブロックイソシアネート化合物、カルボジイミド化合物、及びオキサゾリン基含有ポリマーから選択される少なくとも1種を含有する。
【発明の効果】
【0007】
本発明によると、印刷された部分の生地のよれを抑制し、優れた洗濯堅牢性及び柔軟性を有する印刷物が得られる印刷方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、本発明の印刷装置の一例を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
(印刷方法及び印刷装置)
本発明の印刷方法は、生地に対して処理液を付与する処理液付与工程と、処理液を付与後の有色生地に対してインクを付与するインク付与工程と、を含み、更に必要に応じてその他の工程を含む。
本発明の印刷方法においては、前記インクが、顔料、架橋性官能基を有する樹脂、pH調整剤、並びにブロックイソシアネート化合物、カルボジイミド化合物、及びオキサゾリン基含有ポリマーから選択される少なくとも1種を含有する。
【0010】
本発明の印刷装置は、生地に対して処理液を付与する処理液付与手段と、処理液を付与後の有色生地に対してインクを付与するインク付与手段と、を有し、更に必要に応じてその他の手段を有する。
本発明の印刷装置においては、前記インクが、顔料、架橋性官能基を有する樹脂、pH調整剤、並びにブロックイソシアネート化合物、カルボジイミド化合物、及びオキサゾリン基含有ポリマーから選択される少なくとも1種を含有する。
【0011】
本発明の印刷方法は、本発明の印刷装置により好適に実施することができ、前記処理液付与工程は前記処理液付与手段により行うことができ、前記インク付与工程は前記インク付与手段により行うことができ、前記その他の工程は前記その他の手段により行うことができる。
【0012】
従来技術では、架橋剤を含むインクの貯蔵安定性と、印刷された部分の生地のよれを抑制し、洗濯堅牢性及び柔軟性とを両立させることは困難であった。
【0013】
本発明においては、インクが顔料、架橋性官能基を有する樹脂、pH調整剤、並びにブロックイソシアネート化合物、カルボジイミド化合物、及びオキサゾリン基含有ポリマーから選択される少なくとも1種を含有することにより、印刷された部分の生地のよれを抑制し、洗濯堅牢性及び柔軟性に優れる印刷物が得られる。
【0014】
<処理液付与工程及び処理液付与手段>
処理液付与工程は、生地に対して処理液を付与する工程であり、処理液付与手段により実施される。なお、処理液は、「前処理液」、「先塗液」と称することもある。
【0015】
前記処理液の付与方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、インクジェット法、ブレードコート法、グラビアコート法、グラビアオフセットコート法、バーコート法、ロールコート法、スプレーコート法、ナイフコート法、エアナイフコート法、コンマコート法、Uコンマコート法、AKKUコート法、スムージングコート法、マイクログラビアコート法、リバースロールコート法、4本ロールコート法、5本ロールコート法、ディップコート法、カーテンコート法、スライドコート法、ダイコート法などが挙げられる。これらの中でも、インクジェット法、スプレーコート法が好ましい。
【0016】
処理液の付着量は、0.5mg/cm以上11mg/cm以下が好ましく、0.8mg/cm以上9mg/cm以下がより好ましい。処理液の付着量が0.5mg/cm以上であると、適度なインク凝集により画像濃度が向上し、11mg/cm以下であると、過剰なインク凝集により生地表面への広がりが弱く画像濃度の低下と堅牢性低下を抑制することができる。処理液とインクをウェットオンウェットで印刷する記録方法が好ましく、処理液とインクをウェットオンウェットで印刷することにより画像濃度と堅牢性が向上する。
ここで、ウェットオンウェットで印刷するとは、最初に付着させた処理液の50質量%
以上が生地に残存する状態で次のインクを付着させるか、及び最初に処理液を付着させた後から90秒間以内に生地の表面温度が32℃以下の状態で次のインクを付着させるか、の少なくともいずれかである。
【0017】
処理液を付与された布地に対しては、必要に応じて、布地を加熱して処理液を乾燥させる加熱工程を行うことが好ましい。なお、加熱工程は、例えば、ロールヒーター、ドラムヒーター、温風などの公知の加熱手段により布地を加熱して布地に付与された処理液を乾燥させる工程である。
【0018】
<<処理液>>
前記処理液は、凝集剤、保湿剤、及び界面活性剤を含有することが好ましく、ワックスを含有することがより好ましく、更に必要に応じてその他成分を含有する。
【0019】
-凝集剤-
凝集剤とは、インクと接触したときに、インクにおいて凝集又は増粘を生じさせる成分を表す。具体的には、例えば、インクに含まれる色材又は樹脂などの分散性粒子(主にアニオン性化合物)を凝集させる成分が挙げられる。このような凝集剤を含む処理液を用いることで、処理液が付与された領域と接触したインクにおいて凝集又は増粘を生じさせ、これにより生地表面において色材等のインク成分を留めることができ、印刷物の画像濃度が向上する。
【0020】
凝集剤としては、例えば、無機塩、有機塩、及びカチオンポリマーなどを用いることができる。これらの中でも、材料の安全性の観点から無機塩又は有機塩であることが好ましい。得られる印刷物の洗濯堅牢性の観点からは1価の無機塩又は有機塩であることが好ましく、画像濃度の観点からは2価以上の無機塩であることが好ましい。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0021】
無機塩としては、例えば、塩化ナトリウム、塩化カリウム、硝酸カリウムなどの1価の無機塩、炭酸カルシウム、硝酸カルシウム、塩化カルシウム、酢酸カルシウム、硫酸カルシウム、塩化マグネシウム、酢酸マグネシウム、硫酸マグネシウム、塩化ニッケル、硫酸バリウム、硫化亜鉛、炭酸亜鉛、珪酸アルミニウム、珪酸カルシウム、珪酸マグネシウム、水酸化アルミニウム、硫酸アルミニウム、リン酸アルミニウム、乳酸アルミニウム、ポリ塩化アルミニウム、硫酸鉄(III)、硫酸カリウムアルミニウム、カリウム鉄ミョウバン、アンモニウム鉄ミョウバンなどの2価以上の無機塩が挙げられる。
【0022】
有機塩としては、例えば、酢酸アンモニウム、蟻酸アンモニウム、シュウ酸アンモニウム、乳酸アンモニウムなどが挙げられる。
【0023】
カチオンポリマーとしては、例えば、第4級アンモニウム塩型のカチオン性高分子化合物が好ましく、具体的には、ジアルキルアリルアンモニウムクロライド重合物、ジアルキルアミノエチル(メタ)アクリレート4級アンモニウム塩重合物、変性ポリビニルアルコールジアルキルアンモニウム塩重合物、及びジアルキルジアリルアンモニウム塩重合物などが挙げられる。
また、その他のカチオンポリマーとしては、カチオン性特殊変性ポリアミン化合物、カチオン性ポリアミドポリアミン化合物、カチオン性尿素-ホルマリン樹脂化合物、カチオン性ポリアクリルアミド化合物、カチオン性アルキルケテンダイマー、カチオン性ジシアンジアミド化合物、カチオン性ジシアンジアミド-ホルマリン縮合化合物、カチオン性ジシアンジアミド-ポリアミン縮合化合物、カチオン性ポリビニルホルムアミド化合物、カチオン性ポリビニルピリジン化合物、カチオン性ポリアルキレンポリアミン化合物、及びカチオン性エポキシポリアミド化合物などが挙げられる。
【0024】
凝集剤の含有量は、印刷物における画像濃度向上及び滲み抑制の観点から、第二の処理液の質量に対して0.1質量%以上10質量%以下が好ましく、0.5質量%以上5質量%以下がより好ましい。
【0025】
-保湿剤-
保湿剤としては特に制限されず、水溶性有機溶剤などを用いることができる。水溶性有機溶剤としては、例えば、多価アルコール類、多価アルコールアルキルエーテル類又は多価アルコールアリールエーテル類等のエーテル類、含窒素複素環化合物、アミド類、アミン類、含硫黄化合物が挙げられる。
【0026】
保湿剤の具体例としては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、1,2-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、2,3-ブタンジオール、3-メチル-1,3-ブタンジオール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、1,2-ペンタンジオール、1,3-ペンタンジオール、1,4-ペンタンジオール、2,4-ペンタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,2-ヘキサンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,3-ヘキサンジオール、2,5-ヘキサンジオール、1,5-ヘキサンジオール、グリセリン、1,2,6-ヘキサントリオール、2-エチル-1,3-ヘキサンジオール、エチル-1,2,4-ブタントリオール、1,2,3-ブタントリオール、2,2,4-トリメチル-1,3-ペンタンジオール、ペトリオール等の多価アルコール類、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、テトラエチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル等の多価アルコールアルキルエーテル類、エチレングリコールモノフェニルエーテル、エチレングリコールモノベンジルエーテル等の多価アルコールアリールエーテル類、2-ピロリドン、N-メチル-2-ピロリドン、N-ヒドロキシエチル-2-ピロリドン、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン、ε-カプロラクタム、γ-ブチロラクトン等の含窒素複素環化合物、ホルムアミド、N-メチルホルムアミド、N,N-ジメチルホルムアミド、3-メトキシ-N,N-ジメチルプロピオンアミド、3-ブトキシ-N,N-ジメチルプロピオンアミド等のアミド類、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエチルアミン等のアミン類、ジメチルスルホキシド、スルホラン、チオジエタノール等の含硫黄化合物、プロピレンカーボネート、炭酸エチレンなどが挙げられる。
【0027】
保湿剤としては、炭素数8以上のポリオール化合物、及びグリコールエーテル化合物の少なくともいずれかも好適に使用される。炭素数8以上のポリオール化合物としては、例えば、2-エチル-1,3-ヘキサンジオール、2,2,4-トリメチル-1,3-ペンタンジオールなどが挙げられる。
グリコールエーテル化合物としては、例えば、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、テトラエチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル等の多価アルコールアルキルエーテル類;エチレングリコールモノフェニルエーテル、エチレングリコールモノベンジルエーテル等の多価アルコールアリールエーテル類などが挙げられる。
【0028】
保湿剤の含有量は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、処理液の乾燥性及び吐出信頼性の点から、処理液の全量に対して、5質量%以上60質量%以下が好ましく、10質量%以上50質量%以下がより好ましい。
【0029】
-界面活性剤-
界面活性剤としては、例えば、シリコーン系界面活性剤、フッ素系界面活性剤、両性界面活性剤、ノニオン系界面活性剤、アニオン系界面活性剤などが使用可能であるが、滑剤と併用した際に印刷物における柔軟性をより向上させることができる観点から、シリコーン系界面活性剤であることが好ましい。なお、界面活性剤は、滑剤と異なり、第一の処理液中において溶解している態様で含有されることが好ましい。
【0030】
シリコーン系界面活性剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。中でも高pHでも分解しないものが好ましい。
シリコーン系界面活性剤としては、例えば、側鎖変性ポリジメチルシロキサン、両末端変性ポリジメチルシロキサン、片末端変性ポリジメチルシロキサン、側鎖両末端変性ポリジメチルシロキサンなどが挙げられる。変性基としてポリオキシエチレン基、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレン基を有するものが、水系界面活性剤として良好な性質を示すので特に好ましい。また、シリコーン系界面活性剤として、ポリエーテル変性シリコーン系界面活性剤を用いることもでき、例えば、ポリアルキレンオキシド構造をジメチルシロキサンのSi部側鎖に導入した化合物などが挙げられる。
【0031】
フッ素系界面活性剤としては、例えば、パーフルオロアルキルスルホン酸化合物、パーフルオロアルキルカルボン酸化合物、パーフルオロアルキルリン酸エステル化合物、パーフルオロアルキルエチレンオキサイド付加物及びパーフルオロアルキルエーテル基を側鎖に有するポリオキシアルキレンエーテルポリマー化合物が、起泡性が小さいので特に好ましい。
パーフルオロアルキルスルホン酸化合物としては、例えば、パーフルオロアルキルスルホン酸、パーフルオロアルキルスルホン酸塩等が挙げられる。パーフルオロアルキルカルボン酸化合物としては、例えば、パーフルオロアルキルカルボン酸、パーフルオロアルキルカルボン酸塩等が挙げられる。パーフルオロアルキルエーテル基を側鎖に有するポリオキシアルキレンエーテルポリマー化合物としては、パーフルオロアルキルエーテル基を側鎖に有するポリオキシアルキレンエーテルポリマーの硫酸エステル塩、パーフルオロアルキルエーテル基を側鎖に有するポリオキシアルキレンエーテルポリマーの塩等が挙げられる。これらフッ素系界面活性剤における塩の対イオンとしては、Li、Na、K、NH、NHCHCHOH、NH(CHCHOH)、NH(CHCHOH)などが挙げられる。
【0032】
両性界面活性剤としては、例えば、ラウリルアミノプロピオン酸塩、ラウリルジメチルベタイン、ステアリルジメチルベタイン、ラウリルジヒドロキシエチルベタインなどが挙げられる。
【0033】
ノニオン系界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエステル、ポリオキシエチレンアルキルアミン、ポリオキシエチレンアルキルアミド、ポリオキシエチレンプロピレンブロックポリマー、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、アセチレンアルコールのエチレンオキサイド付加物などが挙げられる。
【0034】
アニオン系界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル酢酸塩、ドデシルベンゼンスルホン酸塩、ラウリル酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテルサルフェートの塩などが挙げられる。
【0035】
シリコーン系界面活性剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、側鎖変性ポリジメチルシロキサン、両末端変性ポリジメチルシロキサン、片末端変性ポリジメチルシロキサン、側鎖両末端変性ポリジメチルシロキサンなどが挙げられる。変性基としてポリオキシエチレン基、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレン基を有するポリエーテル変性シリコーン系界面活性剤が水系界面活性剤として良好な性質を示すので特に好ましい。
このような界面活性剤としては、適宜合成したものを使用してもよいし、市販品を使用してもよい。市販品としては、例えば、ビックケミー株式会社、信越化学工業株式会社、東レ・ダウコーニング・シリコーン株式会社、日本エマルジョン株式会社、共栄社化学株式会社などから入手できる。
上記のポリエーテル変性シリコーン系界面活性剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、下記の一般式(S-1)で表される、ポリアルキレンオキシド構造をジメチルポリシロキサンのSi部側鎖に導入したものなどが挙げられる。
【0036】
【化1】
(ただし、前記一般式(S-1)中、m、n、a、及びbは、それぞれ独立に、整数を表し、Rは、アルキレン基を表し、R’は、アルキル基を表す。)
【0037】
上記のポリエーテル変性シリコーン系界面活性剤としては、市販品を用いることができ、例えば、KF-618、KF-642、KF-643(信越化学工業株式会社製)、EMALEX-SS-5602、SS-1906EX(日本エマルジョン株式会社製)、FZ-2105、FZ-2118、FZ-2154、FZ-2161、FZ-2162、FZ-2163、FZ-2164(東レ・ダウコーニング・シリコーン株式会社製)、BYK-33、BYK-387(ビックケミー株式会社製)、TSF4440、TSF4452、TSF4453(東芝シリコン株式会社製)などが挙げられる。
【0038】
フッ素系界面活性剤としては、フッ素置換した炭素数が2~16の化合物が好ましく、フッ素置換した炭素数が4~16である化合物がより好ましい。
フッ素系界面活性剤としては、例えば、パーフルオロアルキルリン酸エステル化合物、パーフルオロアルキルエチレンオキサイド付加物、パーフルオロアルキルエーテル基を側鎖に有するポリオキシアルキレンエーテルポリマー化合物などが挙げられる。
これらの中でも、パーフルオロアルキルエーテル基を側鎖に有するポリオキシアルキレンエーテルポリマー化合物は起泡性が少ないため好ましく、下記の一般式(F-1)及び一般式(F-2)で表されるフッ素系界面活性剤がより好ましい。
【0039】
【化2】
上記一般式(F-1)で表される化合物において、水溶性を付与するためにmは0~10の整数が好ましく、nは0~40の整数が好ましい。
【0040】
【化3】
上記一般式(F-2)で表される化合物において、YはH、又はC2m+1でmは1~6の整数、又はCHCH(OH)CH-C2m+1でmは4~6の整数、又はC2p+1でpは1~19の整数である。nは1~6の整数である。aは4~14の整数である。
【0041】
上記のフッ素系界面活性剤としては市販品を使用してもよい。前記市販品としては、例えば、サーフロンS-111、S-112、S-113、S-121、S-131、S-132、S-141、S-145(いずれも、旭硝子株式会社製);フルラードFC-93、FC-95、FC-98、FC-129、FC-135、FC-170C、FC-430、FC-431(いずれも、住友スリーエム株式会社製);メガファックF-470、F-1405、F-474(いずれも、DIC株式会社製);ゾニール(Zonyl)TBS、FSP、FSA、FSN-100、FSN、FSO-100、FSO、FS-300、UR、キャプストーンFS-30、FS-31、FS-3100、FS-34、FS-35(いずれも、Chemours社製);FT-110、FT-250、FT-251、FT-400S、FT-150、FT-400SW(いずれも、株式会社ネオス製)、ポリフォックスPF-136A,PF-156A、PF-151N、PF-154、PF-159(オムノバ社製)、ユニダインDSN-403N(ダイキン工業株式会社製)などが挙げられる。これらの中でも、良好な印字品質、特に発色性、紙に対する浸透性、濡れ性、均染性が著しく向上する点から、Chemours社製のFS-3100、FS-34、FS-300、株式会社ネオス製のFT-110、FT-250、FT-251、FT-400S、FT-150、FT-400SW、オムノバ社製のポリフォックスPF-151N及びダイキン工業株式会社製のユニダインDSN-403Nが特に好ましい。
【0042】
界面活性剤の含有量は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、濡れ性及び吐出安定性に優れる点から、処理液の全量に対して、0.001質量%以上5質量%以下が好ましく、0.05質量%以上5質量%以下がより好ましい。
【0043】
-ワックス-
ワックスとは、印刷物を構成する成分として含まれることで、印刷物の白色隠蔽性、堅牢性及び柔軟性を向上させる機能を有する成分を表す。処理液にワックスを含有させることで、処理液を付与することで形成される印刷物における白色隠蔽性、洗濯堅牢性及び柔軟性を向上させることができる。
【0044】
ワックスは、処理液を生地に付与する際に生じるミストが装置内を汚染することを抑制する観点から、ノニオン性化合物であることが好ましい。なお、ミストの発生は、処理液をインクジェット方式で吐出する場合に顕著になるため、このような場合においてノニオン性化合物を用いることがより好ましい。
【0045】
ワックスとしては、粒子状であることが好ましく、例えば、酸化ポリエチレン、カルバナワックス、シロキサン化合物などが挙げられる。これらの中でも、印刷物の白色隠蔽性、堅牢性及び柔軟性をより向上させることができる観点から、シロキサン化合物が好ましい。
【0046】
シロキサン化合物としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ジメチルポリシロキサンなどのオルガノポリシロキサンや、ポリエーテル変性オルガノポリシロキサン、アミノ変性オルガノポリシロキサン、ヒドロキシ変性オルガノポリシロキサン、エポキシ変性オルガノポリシロキサン、フェニル変性オルガノポリシロキサンなどの変性オルガノポリシロキサンなどが挙げられる。これらの中でも、印刷物の白色隠蔽性、堅牢性及び柔軟性をより向上させることができる観点から、ジメチルポリシロキサン又はアミノ変性オルガノポリシロキサンを用いることが好ましい。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0047】
シロキサン化合物の市販品としては、例えば、ジメチルポリシロキサン(商品名:KM-860A、信越化学工業株式会社製)、ジメチルポリシロキサン(商品名:KM-9737A、信越化学工業株式会社製)、ジメチルポリシロキサン(商品名:KM-9782、信越化学工業株式会社製)、ジメチルポリシロキサン(商品名:KM-862T、信越化学工業株式会社製)、ジメチルポリシロキサン(商品名:KM-9738A、信越化学工業株式会社製)、アミノ変性オルガノポリシロキサン(商品名:POLON-MF-14、信越化学工業株式会社製)、アミノ変性オルガノポリシロキサン(商品名:POLON-MF-51、信越化学工業株式会社製)、エポキシ変性オルガノポリシロキサン(商品名:X-51-1264、信越化学工業株式会社製)、フェニル変性オルガノポリシロキサン(商品名:KM-9739、信越化学工業株式会社製)、ポリエーテル変性オルガノポリシロキサン(商品名:BYK-307、ビックケミー・ジャパン株式会社製)、ジメチルポリシロキサン(商品名:BYK-333、ビックケミー・ジャパン株式会社製)、ジメチルポリシロキサン(商品名:BYK-378、ビックケミー・ジャパン株式会社製)などが挙げられる。
【0048】
ポリエチレンワックスとしては、市販品を用いることができ、例えば、サンノプコ社製のノプコートシリーズ、サンノプコ社製のノプコマルシリーズ、東邦化学工業株式会社製のハイテックシリーズ、ビックケミー・ジャパン株式会社製のAQUACERシリーズ(例えば、AQUACER-515)などが挙げられる。
【0049】
カルナバワックスとしては、市販品を用いることができ、例えば、中京油脂株式会社製のセロゾール524、トラソルCNなどが挙げられる。
【0050】
ワックスの融点は、50℃以上130℃以下が好ましく、60℃以上120℃以下がより好ましい。融点が上記範囲であることで印刷物の白色隠蔽性、堅牢性及び柔軟性をより向上させることができる。
【0051】
ワックスは、処理液において滑剤粒子の形態、言い換えると分散状態で含有されていることが好ましい。処理液中においてワックスの形態を安定して維持できることで、処理液における粘度変化が抑制されて貯蔵安定性が向上し、吐出性能が粘度等の影響を強く受けるインクジェット方式であっても好適に適用できる。なお、ワックスを構成するワックスは液体であっても固体であってもよい。
ワックスの体積平均粒径としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、0.01μm以上が好ましく、0.01μm以上0.2μm以下がより好ましい。体積平均粒径が、0.01μm以上であると、印刷物に柔軟性をより向上させることができる。体積平均粒径は、例えば、粒度分析装置(装置名:ナノトラック Wave-UT151、マイクロトラック・ベル株式会社製)を用いて測定することができる。
【0052】
ワックスの含有量は、処理液の全量に対して、0.1質量%以上10質量%以下が好ましく、0.1質量%以上6質量%以下がより好ましい。含有量が0.1質量%以上であると、印刷物の柔軟性をより向上させることができる。また、含有量が10質量%以下であると、印刷物の洗濯堅牢性が向上する。
【0053】
-水-
水としては、例えば、イオン交換水、限外濾過水、逆浸透水、蒸留水等の純水、及び超純水などを用いることができる。
処理液における水の含有量は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、処理液の乾燥性及び吐出信頼性の点から、処理液の全量に対して、10質量%以上90質量%以下が好ましく、30質量%以上90質量%以下がより好ましく、50質量%以上90質量%以下が更に好ましい。
【0054】
-その他成分-
その他の成分としては、必要に応じて、公知の種々の添加剤用いることができ、例えば、消泡剤、pH調整剤、防腐防黴剤、及び防錆剤などが挙げられる。
【0055】
--消泡剤--
消泡剤としては、特に制限はなく、例えば、シリコーン系消泡剤、ポリエーテル系消泡剤、脂肪酸エステル系消泡剤などが挙げられる。これらは、1種を単独で用いても、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、破泡効果に優れる点から、シリコーン系消泡剤が好ましい。
【0056】
--防腐防黴剤--
防腐防黴剤としては、特に制限はなく、例えば、1,2-ベンズイソチアゾリン-3-オンなどが挙げられる。
【0057】
--防錆剤--
防錆剤としては、特に制限はなく、例えば、酸性亜硫酸塩、チオ硫酸ナトリウムなどが 挙げられる。
【0058】
--pH調整剤--
pH調整剤としては、pHを7以上に調整することが可能であれば、特に制限はなく、 ジエタノールアミン、トリエタノールアミン等のアミンなどが挙げられる。
【0059】
処理液は、凝集剤、保湿剤、界面活性剤、ワックス、及び水、更に必要に応じてその他の成分を混合し、必要に応じて撹拌混合して作製することができる。撹拌混合は、通常の撹拌羽を用いた撹拌機、マグネチックスターラー、高速の分散機などで行うことができる。
【0060】
-処理液の物性-
処理液の物性としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、粘度、表面張力、pH等が以下の範囲であることが好ましい。
処理液の25℃での粘度は、良好な吐出性が得られる点から、5mPa・s以上30mPa・s以下が好ましく、5mPa・s以上25mPa・s以下がより好ましい。ここで、粘度は、例えば回転式粘度計(東機産業株式会社製、RE-80L)を使用することができる。測定条件としては、25℃で、標準コーンローター(1°34’×R24)、サンプル液量1.2mL、回転数50rpm、3分間で測定可能である。
処理液の表面張力としては、布帛上で好適にレベリングされ、乾燥時間が短縮される点から、25℃で、35mN/m以下が好ましく、32mN/m以下がより好ましい。
処理液のpHとしては、インク凝集性と接液する金属部材の腐食防止の観点から、4~7が好ましく、4.5~6がより好ましい。
【0061】
<インク付与工程及びインク付与手段>
インク付与工程は、処理液を付与後の生地に対してインクを付与する工程であり、インク付与手段により実施される。
本発明においては、生地上に処理液を付与した後にインクを付与する。なお、インクの付与は処理液の乾燥前でもよいし、乾燥後であってもよいが、乾燥後が好ましい。
【0062】
前記インクの付与方法としては、特に制限はなく、インクジェット法、ブレードコート法、グラビアコート法、グラビアオフセットコート法、バーコート法、ロールコート法、ナイフコート法、エアナイフコート法、コンマコート法、Uコンマコート法、AKKUコート法、スムージングコート法、マイクログラビアコート法、リバースロールコート法、4本ロールコート法、5本ロールコート法、ディップコート法、カーテンコート法、スライドコート法、ダイコート法などが挙げられる。これらの中でも、機器のメンテナンス性及び作業効率が高い点から、インクジェット方式が好ましい。
【0063】
<<インク>>
インクは、顔料、架橋性官能基を有する樹脂、pH調整剤、並びにブロックイソシアネート化合物、カルボジイミド化合物、及びオキサゾリン基含有ポリマーから選択される少なくとも1種を含有する。
なお、インクにおける有機溶剤、水、界面活性剤、及びその他の成分の詳細(種類、含有量など)は、上記の処理液における説明と同様であるため、説明を省略する。
また、カチオン性であることが好ましい凝集剤を含む上記の処理液に合わせて、顔料及び樹脂から選ばれる少なくとも1つは、アニオン性であることが好ましい(これらを「アニオン性化合物」と総称することもある)。顔料及び樹脂から選ばれる少なくとも1つがアニオン性であることで、インクが処理液に含まれていた成分(凝集剤)と接触した際に、インクが凝集又は増粘を生じ、これにより生地表面において顔料等を留めることができ、画像濃度が向上する。
【0064】
-架橋性官能基を有する樹脂-
架橋性官能基を有する樹脂としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、アクリル系樹脂、酢酸ビニル系樹脂、スチレン系樹脂、ブタジエン系樹脂、スチレン-ブタジエン系樹脂、塩化ビニル系樹脂、アクリルスチレン系樹脂、アクリルシリコーン系樹脂などが挙げられる。これらの中でも、画像堅牢性と柔軟性の観点から、ウレタン樹脂であることが好ましい。また、樹脂は、上記の通り、凝集剤と作用する観点からアニオン性であることが好ましい。
【0065】
架橋性基としては、イソシアネート基又はシラノール基が挙げられ、イソシアネート基が化学的に保護、つまり、キャッピングあるいはブロッキングされているブロックドイソシアネート基を用いることが好ましい。ブロックドイソシアネート基は、熱が加えられることにより脱保護されて活性化し、例えば、ウレタン結合、尿素結合、アロファネート結合等の結合を形成することになる。
【0066】
また、架橋性基を有するウレタン樹脂の架橋性基は、1分子に3つ以上設けられていることが好ましく、そのような場合、架橋性基の反応により、架橋構造が形成される。なお、ウレタン樹脂とは、イソシアネート基が他の反応性の基、例えば、水酸基、アミノ基、ウレタン結合基、カルボキシ基等と反応して形成される、ウレタン結合、尿素結合、アロファネート結合等を含む樹脂のことを指す。
【0067】
樹脂のインク中における形態は特に限定されないが、樹脂粒子の形態で分散されていることが好ましい。樹脂粒子を、水を分散媒として分散した樹脂エマルションの状態で、色材や有機溶剤などの材料と混合してインクを得ることが可能である。樹脂粒子としては、適宜合成したものを使用してもよいし、市販品を使用してもよい。
【0068】
樹脂粒子の体積平均粒径としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、良好な定着性、高い画像硬度を得る点から、10nm以上1,000nm以下が好ましく、10nm以上200nm以下がより好ましく、10nm以上100nm以下が更に好ましい。
体積平均粒径は、例えば、粒度分析装置(ナノトラック Wave-UT151、マイクロトラック・ベル株式会社製)を用いて測定することができる。
【0069】
樹脂の含有量は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、定着性及びインクの保存安定性の点から、インクの全量に対して、1質量%以上30質量%以下が好ましく、5質量%以上20質量%以下がより好ましい。
【0070】
-ブロックイソシアネート化合物、カルボジイミド化合物、又はオキサゾリン基含有ポリマー-
ブロックイソシアネート化合物、カルボジイミド化合物、及びオキサゾリン基含有ポリマーから選択される少なくとも1種の化合物の中でも、オキサゾリン基含有ポリマーが好ましい。
ブロックイソシアネート化合物、カルボジイミド化合物、及びオキサゾリン基含有ポリマーから選択される少なくとも1種を含むことにより、樹脂粒子同士や顔料分散体の分散剤を介して架橋することに起因して、得られる印刷物の洗濯堅牢性が向上と引っ張り後の生地のよれを低減することが可能である。
【0071】
オキサゾリン基含有ポリマーのオキサゾリン基は、樹脂粒子又は顔料分散体の分散剤等の有するカルボキシ基との反応が進行する。室温においてもカルボキシ基との反応は進行するが、後述するpH調整剤を併用することで反応部位がブロックされインク中において良好な保存安定性が得られるが、インク定着時の加熱により架橋反応が進行する。オキサゾリン基含有ポリマーの具体例としては、株式会社日本触媒製のエマルジョンタイプK-2010E,K-2020E,K-2030E,K-2035E,水溶性対タイプWS-300,WS-500,WS-700が挙げられ、エマルジョンタイプがインク粘度、吐出性、保存安定性の観点から好ましい。これらは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0072】
カルボジイミド化合物は、カルボン酸と反応する架橋剤である。カルボジイミド化合物としては、例えば、日清紡ケミカル株式会社製カルボジライトE-02、E-03Aなどが挙げられる。
ブロックイソシアネート化合物では、活性イソシアネート基はブロック剤で保護されており、通常の状態では安定を保つが、熱処理によってブロック剤が解離し、活性イソシアネート基が再生し、架橋反応をする。ブロックイソシアネート化合物としては、例えば、三井化学株式会社製タケネートWB-3021、第一工業製薬株式会社製エラストロンBN-77、69、11、明成化学工業株式会社製SU-268A、NBP-8730、NBP-211等が挙げられる。これらは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0073】
ブロックイソシアネート化合物、カルボジイミド化合物、及びオキサゾリン基含有ポリマーから選択される少なくとも1種の含有量は0.3質量%以上1.5質量%以下が好ましい。前記含有量が0.3質量%以上であれば、インク定着時に架橋反応が進行し、画像堅牢性の向上と印刷物のよれ低減効果が得られる。また、前記含有量が1.5質量%以下であれば、インク中の架橋反応が抑制されインク保存安定性の低下も生じない。
【0074】
-pH調整剤-
pH調整剤は、pHを7以上に調整するものであり、炭素数4~8のアミン化合物であることが好ましい。pH調整剤としては、例えば、2-アミノ-2-エチル-1,3-プロパンジオール、2-アミノ-2-メチル-1,3-プロパンジオール、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、トリエチルアミンなどが挙げられる。
本発明で用いられる架橋剤のオキサゾリン基含有ポリマーのオキサゾリン基は、前述の通り、水分散性樹脂粒子や顔料分散体の分散剤等の有するカルボキシ基との反応が進行しやすいが、カルボン酸塩とは非常に反応しにくい性質がある。そのため、pH調整剤がインク中に含有されるとインク中ではカルボキシ基がpH調整剤の中和効果によりカルボン酸塩となりブロックされるためインク保存安定性が向上する。これらのpH調整剤の中でも、保存環境下において揮発しにくく良好なインク保存安定性が得られる点から、2-アミノ-2-エチル-1,3-プロパンジオールが好ましい。
【0075】
-炭素数8~11のポリオール化合物又はグリコールエーテル化合物-
炭素数8~11のポリオール化合物及びグリコールエーテル化合物の少なくともいずれかは浸透剤として作用し含有することが好ましい。
炭素数8~11のポリオール化合物は、非湿潤剤性ポリオール化合物であることが好ましい。
ここで、非湿潤剤性とは、25℃の水中において0.2質量%以上5質量%以下の間の溶解度を有することを意味する。
これらの浸透剤の中でも、下記一般式(3)で表される1,3-ジオール化合物が好ましく、2-エチル-1,3-ヘキサンジオール[溶解度:4.2%(25℃)]、2,2,4-トリメチル-1,3-ペンタンジオール[溶解度:2.0%(25℃)]が好ましく、2-エチル-1,3-ヘキサンジオールがより好ましい。
【0076】
【化4】
ただし、前記一般式A中、R’はメチル基又はエチル基を表し、R”は水素原子又はメチル基を表し、R”’はエチル基又はプロピル基を表す。
【0077】
その他のポリオール化合物としては、例えば、2-エチル-2-メチル-1,3-プロパンジオール、3,3-ジメチル-1,2-ブタンジオール、2,2-ジエチル-1,3-プロパンジオール、2-メチル-2-プロピル-1,3-プロパンジオール、2,4-ジメチル-2,4-ペンタンジオール、2,5-ジメチル-2,5-ヘキサンジオール、5-ヘキセン-1,2-ジオールなどの脂肪族ジオールが挙げられる。
【0078】
炭素数8~11のポリオール化合物及びグリコールエーテル化合物の少なくともいずれかの含有量は、インク全量に対して、0.5質量%以上2質量%以下が好ましい。
前記含有量が0.5質量%以上であれば、インクの浸透性効果が得られ、画像堅牢性が向上する。また、前記含有量が2質量%以下であれば、インクに十分に溶解するので、分離したりインク初期粘度が高くなる等の不具合や画像濃度低下も生じない。
【0079】
-顔料-
顔料は、上記の通り、凝集剤と作用する観点からアニオン性であることが好ましく、アニオン性の顔料であることがより好ましい。
【0080】
顔料としては、生地上において白色隠蔽性を得る目的から二次粒子径200nm以上300nm以下の酸化チタンであることが好ましい。他の顔料としては、例えば、ブラック顔料、イエロー顔料、マゼンダ顔料、シアン顔料、白色顔料、緑色顔料、橙色顔料、金色や銀色などの光沢色顔料やメタリック顔料などを用いることができる。
【0081】
無機顔料として、酸化鉄、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、水酸化アルミニウム、バリウムイエロー、カドミウムレッド、クロムイエローに加え、コンタクト法、ファーネス法、サーマル法などの公知の方法によって製造されたカーボンブラックを使用することができる。
【0082】
また、有機顔料としては、アゾ顔料、多環式顔料(例えば、フタロシアニン顔料、ペリレン顔料、ペリノン顔料、アントラキノン顔料、キナクリドン顔料、ジオキサジン顔料、インジゴ顔料、チオインジゴ顔料、イソインドリノン顔料、キノフタロン顔料など)、染料キレート(例えば、塩基性染料型キレート、酸性染料型キレートなど)、ニトロ顔料、ニトロソ顔料、アニリンブラックなどを使用できる。これらの顔料のうち、溶媒と親和性のよいものが好ましく用いられる。その他、樹脂中空粒子、無機中空粒子の使用も可能である。
【0083】
顔料の具体例として、黒色用としては、ファーネスブラック、ランプブラック、アセチレンブラック、チャンネルブラック等のカーボンブラック(C.I.ピグメントブラック7)類、又は銅、鉄(C.I.ピグメントブラック11)、酸化チタン等の金属類、アニリンブラック(C.I.ピグメントブラック1)等の有機顔料が挙げられる。
【0084】
更に、カラー用としては、C.I.ピグメントイエロー1、3、12、13、14、17、24、34、35、37、42(黄色酸化鉄)、53、55、74、81、83、95、97、98、100、101、104、108、109、110、117、120、138、150、153、155、180、185、213、C.I.ピグメントオレンジ5、13、16、17、36、43、51、C.I.ピグメントレッド1、2、3、5、17、22、23、31、38、48:2(パーマネントレッド2B(Ca))、48:3、48:4、49:1、52:2、53:1、57:1(ブリリアントカーミン6B)、60:1、63:1、63:2、64:1、81、83、88、101(べんがら)、104、105、106、108(カドミウムレッド)、112、114、122(キナクリドンマゼンタ)、123、146、149、166、168、170、172、177、178、179、184、185、190、193、202、207、208、209、213、219、224、254、264、C.I.ピグメントバイオレット1(ローダミンレーキ)、3、5:1、16、19、23、38、C.I.ピグメントブルー1、2、15(フタロシアニンブルー)、15:1、15:2、15:3、15:4(フタロシアニンブルー)、16、17:1、56、60、63、C.I.ピグメントグリーン1、4、7、8、10、17、18、36などが挙げられる。
【0085】
顔料の含有量は、インクの用途等によって適宜決定することができるが、インクの全量に対して、0.1質量%以上15質量%以下が好ましく、1質量%以上12質量%以下がより好ましい。
【0086】
顔料を分散させてインクを得るためには、顔料に親水性官能基を導入して自己分散性顔料とする方法、顔料の表面を樹脂で被覆して分散させる方法、分散剤を用いて分散させる方法、などが挙げられる。
顔料に親水性官能基を導入して自己分散性顔料とする方法としては、例えば、顔料(例えばカーボン)にスルホン基やカルボキシ基等の官能基を付加することで、水中に分散可能とする方法が挙げられる。
顔料の表面を樹脂で被覆して分散させる方法としては、顔料をマイクロカプセルに包含させ、水中に分散可能とする方法が挙げられる。これは、樹脂被覆顔料と言い換えることができる。この場合、用いられる顔料はすべて樹脂に被覆されている必要はなく、被覆されない顔料や、部分的に被覆された顔料が含まれてもよい。
分散剤を用いて分散させる方法としては、界面活性剤に代表される、公知の低分子型の分散剤、高分子型の分散剤を用いて分散する方法が挙げられる。分散剤としては、顔料に応じて例えば、アニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤、両性界面活性剤、ノニオン界面活性剤等を使用することが可能である。竹本油脂株式会社製RT-100(ノニオン系界面活性剤)や、ナフタレンスルホン酸Naホルマリン縮合物も、分散剤として好適に使用できる。分散剤は1種を単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
【0087】
-その他の成分-
その他の成分としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、消泡剤、防腐防黴剤、防錆剤、pH調整剤などが挙げられる。
【0088】
インクの物性としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、粘度、表面張力、pH等が以下の範囲であることが好ましい。
インクの25℃での粘度は、印字濃度や文字品位が向上し、また、良好な吐出性が得られる点から、5mPa・s以上30mPa・s以下が好ましく、5mPa・s以上25mPa・s以下がより好ましい。
ここで、粘度は、例えば、回転式粘度計(東機産業株式会社製、RE-80L)を使用することができる。測定条件としては、25℃で、標準コーンローター(1°34’×R24)、サンプル液量1.2mL、回転数50rpm、3分間で測定可能である。
インクの表面張力としては、記録媒体上で好適にインクがレベリングされ、インクの乾燥時間が短縮される点から、25℃で、35mN/m以下が好ましく、32mN/m以下がより好ましい。
インクのpHとしては、接液する金属部材の腐食防止の観点から、7~12が好ましく、8~11がより好ましい。
【0089】
(処理液とインクのセット)
本発明の処理液とインクのセットは、生地上に画像を形成するための処理液とインクのセットであって、顔料、架橋性官能基を有する樹脂、pH調整剤、並びにブロックイソシアネート化合物、カルボジイミド化合物、及びオキサゾリン基含有ポリマーから選択される少なくとも1種を含有するインクと、処理液と、を有する。
【0090】
処理液とインクのセットのインクにおける顔料、架橋性官能基を有する樹脂、pH調整剤、並びにブロックイソシアネート化合物、カルボジイミド化合物、及びオキサゾリン基含有ポリマーから選択される少なくとも1種を含有するは、本発明の印刷方法におけるインクと同様のものを用いることができる。
処理液とインクのセットにおける処理液は、本発明の印刷方法における処理液と同様のものを用いることができる。
【0091】
<含有物質の検出方法>
インク及び処理液中に含有されている有機溶剤、樹脂、色材、及びその他の成分等の定性方法、定量方法としては、例えば、ガスクロマトグラフィー質量分析法(GC-MS)などが挙げられる。ガスクロマトグラフィー質量分析法(GC-MS)による測定装置としては、例えば、GCMS-QP2020NX(株式会社島津製作所製)などが挙げられる。また、インク及び処理液に含有されている水は、一般的な方法として、ガスクロマトグラフィー質量分析法(GC-MS)による揮発成分の定量や、熱重量・示差熱同時測定法(TG-DTA)による質量変動等により測定することができる。
【0092】
<生地>
生地は、上記の処理液、及びインクの被付与物であり、これらを付与されることで印刷物を形成する。本発明において「生地」とは、繊維を、織物、編物、不織布などの形態にしたものを表す。繊維としては、合成繊維、半合成繊維、再生繊維、天然繊維などの有機質繊維であることが好ましい。合成繊維としては、例えば、ポリエステル、ポリアミド、アクリル、ポリオレフィン、ポリビニルアルコール、ポリ塩化ビニル、ポリウレタン、ポリイミドなどの繊維が挙げられる。半合成繊維としては、例えば、アセテート、ジアセテート、トリアセテートなどの繊維が挙げられる。再生繊維としては、例えば、ポリノジック、レーヨン、リヨセル、キュプラなどの繊維が挙げられる。天然繊維としては、例えば、綿、麻、絹、毛などの繊維が挙げられる。
【0093】
また、繊維としては、生分解性ポリエステル組成物を含む繊維を用いてもよい。生分解性ポリエステル組成物は、例えば、生分解性脂肪族-芳香族ポリエステル又はポリ乳酸などを含有し、必要に応じて、有機フィラー又は無機フィラーなど含有してもよい。
生分解性脂肪族-芳香族ポリエステルとしては、例えば、ポリブチレンアジペートテレフタレート(PBAT)、ポリブチレンサクシネートテレフタレート(PBST)、ポリブチレンセバケートテレフタレート(PBSeT)などを挙げることができる。
有機フィラーとしては、例えば、天然澱粉、可塑化澱粉、変性澱粉、天然繊維、木粉などが挙げられる。
無機フィラーとしては、例えば、タルク粉、モンモリロナイト、カオリン、チョーク、炭酸カルシウム、グラファイト、石膏、導電性カーボンブラック、塩化カルシウム、酸化鉄、ドロマイト、シリカ、珪灰石、二酸化チタン、ケイ酸塩、雲母、ガラス繊維、鉱物繊維などが挙げられる。
【0094】
生地の具体例としては、例えば、シャツ、Tシャツ、トレーナー、ハンカチ、手ぬぐい、タオル、のれん、トートバッグなどが挙げられる。
生地に形成する画像としては、文字、絵、写真、文字と絵の組み合わせ、文字と写真の組み合わせ等、いかなる画像であってもよい。
濃色に着色された有色生地とは、白色以外の有色(例えば、黒色、赤色、青色等)で着色された生地であることを意味する。
なお、本発明において「濃色の生地」とは、生地の明度(L*)を分光測色計(例えば、X-rite exact(エックスライト社製))を用いて測定した場合に、60>L*の範囲を満たす生地であることが好ましく、50>L*の範囲を満たす生地であることがより好ましく、40>L*の範囲を満たす生地であることが更に好ましく、30>L*の範囲を満たす生地であることが特に好ましく、20>L*の範囲を満たす生地であることがより特に好ましい。
【0095】
<印刷装置及び印刷方法>
本発明で用いられるインクは、インクジェット記録方式による各種記録装置、例えば、プリンタ、ファクシミリ装置、複写装置、プリンタ/ファックス/コピア複合機、立体造形装置などに好適に使用することができる。
本発明において、印刷装置及び印刷方法とは、記録媒体に対してインクや各種処理液等を吐出することが可能な装置、当該装置を用いて記録を行う方法である。記録媒体とは、インクや各種処理液が一時的にでも付着可能なものを意味する。
この印刷装置には、インクを吐出するヘッド部分だけでなく、記録媒体の給送、搬送、排紙に係わる手段、その他、前処理装置、後処理装置と称される装置などを含むことができる。
印刷装置及び印刷方法は、加熱工程に用いる加熱手段、乾燥工程に用いる乾燥手段を有してもよい。加熱手段、乾燥手段には、例えば、記録媒体の印字面や裏面を加熱、乾燥する手段が含まれる。加熱手段、乾燥手段としては、特に限定されないが、例えば、温風ヒーター、赤外線ヒーター、ヒートプレス装置等を用いることができる。加熱、乾燥は、印字前、印字中、印字後などに行うことができる。
また、印刷装置及び印刷方法は、インクによって文字、図形等の有意な画像が可視化されるものに限定されるものではない。例えば、幾何学模様などのパターン等を形成するもの、3次元像を造形するものも含まれる。
また、印刷装置は、特に限定しない限り、吐出ヘッドを移動させるシリアル型装置、吐出ヘッドを移動させないライン型装置のいずれも含まれる。
更に、印刷装置には、卓上型だけでなく、A0サイズの記録媒体への印刷も可能とする広幅の記録装置や、例えばロール状に巻き取られた連続用紙を記録媒体として用いることが可能な連帳プリンタも含まれる。
【0096】
この印刷装置には、インクを吐出する部分だけでなく、前処理装置、後処理装置と称される装置などを含むことができる。
前処理装置及び後処理装置の一態様として、ブラック(K)、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)、ホワイト(W)などのインクの場合と同様に、前処理液や、後処理液を有する液体収容部と液体吐出ヘッドを追加し、前処理液や、後処理液をインクジェット記録方式で吐出する態様がある。
前処理装置、後処理装置の他の態様として、インクジェット記録方式以外の、例えば、ブレードコート法、ロールコート法、スプレーコート法による前処理装置、後処理装置を設ける態様がある。
【0097】
ここで、図1に、印刷装置の一例を示す。
なお、本発明の印刷方法におけるインクを付与する工程と、前処理液を付与する工程とは同じ印刷機器で実施してもよいし、別々の印刷機器で実施してもよい。
【0098】
図1の印刷装置100は、前処理液付与部110、インク付与部120、後処理液付与部130、乾燥部140、及び搬送部150を有し、前処理液付与部110は記録媒体Mに前処理液を付与する。
なお、前処理液付与部110、後処理液付与部130、乾燥部140、搬送部150は省略してもよい。
【0099】
前処理液を付与する方法としては、特に限定されないが、インクジェット法、ローラー塗布法、ブレードコート法、グラビアコート法、グラビアオフセットコート法、バーコート法、ロールコート法、ナイフコート法、エアナイフコート法、コンマコート法、Uコンマコート法、AKKUコート法、スムージングコート法、マイクログラビアコート法、リバースロールコート法、4本乃至5本ロールコート法、ディップコート法、カーテンコート法、スライドコート法、ダイコート法等が挙げられる。
なお、あらかじめバーコート法等で前処理液を手作業にて記録媒体に塗布した後に印刷装置を用いて印刷してもよいため、前処理液付与部110は省略してもよい。
【0100】
記録に用いる記録媒体Mとしては、特に限定されないが、例えば、普通紙、光沢紙、特殊紙、段ボール、布、フィルム、OHPシート、汎用印刷紙などが挙げられる。
【0101】
インク付与部120は、記録媒体Mの前処理液が付与された面に、インクジェットインクを付与する。
インク付与部120としては、例えば公知のインクジェットヘッドを用いることができる。
インク付与部120は、任意の色のインクを吐出するヘッドであってよく、例えば、必要に応じてY(イエロー)、M(マゼンタ)、C(シアン)、K(ブラック)、W(ホワイト)等の色のインクを吐出するヘッドを設けてもよい。
【0102】
後処理液付与部130は、記録媒体Mのインクジェットインクが付与された面のインクジェットインクが付与された領域に後処理液を付与できればよく、例えば、インクジェットヘッド以外にも、スプレーやローラーなどを用いることができる。
なお、後処理液付与部130は、省略してもよい。
【0103】
後処理液を付与する方法としては、特に限定されないが、例えば、インクジェット法、ローラー塗布法、ブレードコート法、グラビアコート法、グラビアオフセットコート法、バーコート法、ロールコート法、ナイフコート法、エアナイフコート法、コンマコート法、Uコンマコート法、AKKUコート法、スムージングコート法、マイクログラビアコート法、リバースロールコート法、4本乃至5本ロールコート法、ディップコート法、カーテンコート法、スライドコート法、ダイコート法などが挙げられる。
【0104】
乾燥部140は、後処理液が付与された記録媒体Mを乾燥させる。なお、後処理液付与部がない場合には、乾燥部140を省略してもよい。
乾燥部140は、温風、赤外線、マイクロ波、ロールヒーター、ヒートプレス等を用いて、後処理液が付与された記録媒体Mを加熱乾燥させてもよいし、乾燥部140を作動させないで後処理液が付与された記録媒体Mを自然乾燥させてもよい。
【0105】
搬送部150は、記録媒体Mを搬送する。
搬送部150としては、記録媒体Mを搬送することが可能であれば、特に限定されない
が、搬送ベルト、プラテンなどが挙げられる。
【0106】
なお、印刷装置100は、記録媒体Mに形成された画像を加熱定着させる定着部を更に有してもよい。定着部としては、特に限定されないが、定着ローラー、ヒートプレスなどが挙げられる。
【0107】
卓上プリンターを印刷装置として用いる場合には、前処理液付与部、後処理液付与部の一態様として、ブラック(K)、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)、ホワイト(W)などのインクの場合と同様に、前処理液や後処理液を有する液体収容部と液体吐出ヘッドを追加し、前処理液や、後処理液をインクジェット記録方式で吐出する態様がある。
【0108】
なお、インク及び処理液の使用方法としては、インクジェット記録方法に制限されず、広く使用することが可能である。インクジェット記録方法以外にも、例えば、ブレードコート法、グラビアコート法、バーコート法、ロールコート法、ディップコート法、カーテンコート法、スライドコート法、ダイコート法、スプレーコート法などが挙げられる。
【0109】
本発明で用いられるインク及び処理液の用途は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、印刷物、塗料、コーティング材、下地用などに応用することが可能である。更に、インクとして用いて2次元の文字や画像を形成するだけでなく、3次元の立体像(立体造形物)を形成するための立体造形用材料としても用いることができる。
立体造形物を造形するための立体造形装置は、公知のものを使用することができ、特に限定されないが、例えば、インクの収容手段、供給手段、吐出手段や乾燥手段等を備えるものを使用することができる。立体造形物には、インクを重ね塗りするなどして得られる立体造形物が含まれる。また、記録媒体等の基材上にインクを付与した構造体を加工してなる成形加工品も含まれる。前記成形加工品は、例えば、シート状、フィルム状に形成された記録物や構造体に対して、加熱延伸や打ち抜き加工等の成形加工を施したものであり、例えば、自動車、OA機器、電気・電子機器、カメラ等のメーターや操作部のパネルなど、表面を加飾後に成形する用途に好適に使用される。
【0110】
また、本発明の用語における、画像形成、記録、印字、印刷等は、いずれも同義語とする。
記録媒体、メディア、被印刷物は、いずれも同義語とする。
【実施例0111】
以下、本発明の実施例を説明するが、本発明は、これらの実施例に何ら限定されるものではない。
【0112】
(処理液の製造例1~5)
-処理液1~5の作製-
下記表1に示す組成及び含有量に基づき、常法により処理液を調製し、平均孔径1.2μmのメンブランフィルター(セルロースアセテート膜)にて濾過を行い、処理液1~5を作製した。なお、表1中の各成分の含有量を示す数値の単位は「質量%」である。
【0113】
【表1】
【0114】
なお、表1中の各成分の詳細については以下の通りである。
-ワックス-
・AQUACER513:三井化学株式会社製、ノニオン性、酸化ポリエチレン、分散粒径150nm
・セロゾール524:中京油脂株式会社製、ノニオン性、カルバナワックス、分散粒径200nm
・KM-9782:信越化学工業株式会社製、ノニオン性、シロキサン化合物、分散粒径200nm
【0115】
-界面活性剤-
・SAG-503A:日信化学工業株式会社製、シリコーン系界面活性剤
【0116】
-消泡剤-
・AD01:エンバイロジェムAD01、エアープロダクツ株式会社製
【0117】
(処理液の製造例6)
以下の組成からなる処理液6を調製した。
・酢酸:1.9質量%
・酸化ポリエチレンワックス(CAS No.68441-17-8)+カチオン界面活性剤(最終組成中に0.55質量%のワックス固形分を含有*1):2質量%
・サーフィノール104:0.2質量%
・イオン交換水:残量(合計:100質量%)
・酢酸ナトリウムによりpH2.5~4に調整した。
*1:ワックスコロイドのストックは、以下のとおりである(ワックスコロイドのストックの総質量の質量パーセントで与えられる)
・CERAFLOUR(登録商標)950ワックス粒子(融点:145℃):35質量%
・Tego Disper(登録商標)750(界面活性剤):15質量%
・イオン交換水:50質量%
【0118】
(処理液の製造例7)
以下の組成からなる処理液7を調製した。
・乳酸(88%):7.5質量%
・酸化ポリエチレンワックス(CAS No.68441-17-8)+カチオン界面活性剤(最終組成中に0.65質量%のワックス固形分を含有*1):2.5質量%
・乳酸アンモニウム塩:2質量%
・プロピレングリコール:55質量%
・モノエチレングリコール(MEG):2.5質量%
・消泡剤(Lumiten(登録商標)):0.2質量%
・湿潤剤(BYK-3410):0.35質量%
・イオン交換水:残量(合計:100質量%)
・酢酸ナトリウムによりpH3~4に調整した。
*1:ワックスコロイドのストックは、以下のとおりである(ワックスコロイドのストックの総質量の質量パーセントで与えられる):
・CERAFLOUR(登録商標)950ワックス粒子(融点:145℃):35質量%
・Tego Disper(登録商標)750(界面活性剤):15質量%
・イオン交換水:50質量%
【0119】
(顔料分散液の調製例1)
-顔料分散液1の調製-
酸化チタン(商品名:JR-405、テイカ株式会社製)40質量部、顔料分散剤(商品名:TEGO Dispers651、エボニック社製)5質量部、及び水55質量部を混合し、ビーズミル(商品名:リサーチラボ、株式会社シンマルエンタープライゼス製)にて、直径0.3mmのジルコニアビーズを充填率60%、8m/sにて5分間分散し、顔料分散液1を得た(固形分40質量%)。
顔料分散液1の体積平均粒径D50をナノトラック Wave-EX1500(マイクロトラック・ベル株式会社製)を用いて測定したところ、210nmであった。
【0120】
(樹脂分散液の調製例1)
-樹脂分散液の調製-
温度計、窒素ガス導入管、及び撹拌器を備えた窒素置換された容器中で、ポリエステルポリオール(商品名:PTMG1,000、三菱化学株式会社製、平均分子量:1,000)200.4g、2,2-ジメチロールプロピオン酸15.7g、イソホロンジイソシアネート48.0g、及び有機溶剤としてメチルエチルケトン77.1gを、ジブチルスズジラウレート(DMTDL、東京化成工業株式会社製)0.06gを触媒として使用して反応させた。反応を4時間継続した後、希釈溶剤としてメチルエチルケトン30.7gを供給し、更に反応を継続した。反応を合計6時間になるように行った後、メタノール1.4gを投入し、反応を終了することによって、ウレタン樹脂の有機溶剤溶液を得た。ウレタン樹脂の有機溶剤溶液に48質量%水酸化カリウム水溶液を13.4g加えることにより、ウレタン樹脂が有するカルボキシ基を中和した。次いで、水715.3gを加え、十分に撹拌した後、エージング及び脱溶剤することによって、固形分濃度が30質量%の樹脂を含む、ポリエステルウレタン樹脂分散液を得た。
【0121】
(インクの製造例1~24)
-インク1~24の作製-
下記表2~表5に示す組成及び含有量に基づき、常法によりインクを調製し、平均孔径5.0μmのメンブランフィルター(セルロースアセテート膜)にて濾過を行い、インク1~24を作製した。なお、表2~表5中の各成分の含有量を示す数値の単位は「質量%」である。
【0122】
【表2】
【0123】
【表3】
【0124】
【表4】
【0125】
【表5】
【0126】
なお、表2~表5中の各成分の詳細については以下の通りである。
-有機溶剤-
・ソルフィットMMB:3-メトキシ-3-メチル-1-ブタノール、株式会社クラレ製
【0127】
-架橋性官能基を有する樹脂-
・タケラックW-6110:ウレタン樹脂、三井化学株式会社製
・スーパーフレックス460:ウレタン樹脂、第一工業製薬株式会社製
【0128】
-架橋剤-
・K-2035E:オキサゾリン基含有ポリマー、株式会社日本触媒製
・K-2010E:オキサゾリン基含有ポリマー、株式会社日本触媒製
・カルボジライトE-02:カルボジイミド化合物、日清紡ケミカル株式会社製
・エラストロンBN-77:ブロックイソシアネート化合物、第一工業製薬株式会社製
・アジリジン化合物:PZ-33、株式会社日本触媒製
【0129】
-界面活性剤-
・SAG-503A:日信化学工業株式会社製、シリコーン系界面活性剤
・BYK-348:BYK社製、シリコーン系界面活性剤
【0130】
-消泡剤-
・AD01:エンバイロジェムAD01、エアープロダクツ株式会社製
【0131】
-防腐防黴剤-
・プロキセルLV:アベシア社製
【0132】
(実施例1)
<印刷物の作製>
インクジェットプリンター(Ri100、株式会社リコー製)に処理液1を充填し、A4サイズに切り出した濃色綿(濃色綿Tシャツ、Printstar 00085-CVT Black、トムス株式会社製)に対して、3.0mg/cmの付着量で処理液を付与した。
その直後に、インクジェットプリンター(Ri2000、株式会社リコー製)にインク1を充填し、濃色綿の処理液1が付与された領域に対して、200mg/cmの付着量でインク1を付与してベタ画像を形成した(ウェットオンウェット)。
その後、160℃に設定した熱風循環型恒温槽にて90秒間乾燥させ、実施例1の印刷物を作製した。
【0133】
(実施例22)
自動スプレー塗布機(EZPrep Pretreatment System for Direct-Garment Printing、M&R社製)に処理液1を充填し、A4サイズに切り出した濃色綿(濃色綿Tシャツ、Printstar 00085-CVT Black、トムス株式会社製)に対して、9.0mg/cmの付着量で処理液1を付与した。
次に、120℃に設定したヒートプレスにて60秒間乾燥させた。
次に、インクジェットプリンター(Ri2000、株式会社リコー製)にインク10を充填し、濃色綿の処理液1を付与された領域に対して、200mg/cmの付着量でインク10を付与してベタ画像を形成した(ドライオンウェット)。
その後、180℃に設定した熱風循環型恒温槽にて90秒間乾燥させ、実施例22の印刷物を作製した。
【0134】
(実施例2~21、24、28~32)
実施例1において、表6に示す条件に変更した以外は、実施例1と同様にして、実施例2~21、24、28~32の印刷物を作製した。
【0135】
(実施例23)
実施例22において、表6に示す条件に変更した以外は、実施例22と同様にして、実施例23の印刷物を作製した。
【0136】
(実施例25)
まず、インクジェットプリンター(Ri100、株式会社リコー製)に処理液1を充填し、A4サイズに切り出した濃色ポリエステル(濃色ドライTシャツ、 Glimmer 00300-ACT Black、トムス株式会社製)に対して、6.0mg/cmの付着量で処理液を付与した。
その直後に、インクジェットプリンター(Ri2000、株式会社リコー製)にインク10を充填し、濃色ポリエステルの処理液1が付与された領域に対して、200mg/cmの付着量でインク10を付与してベタ画像を形成した(ウェットオンウェット)。
その後、120℃に設定した熱風循環型恒温槽にて90秒間乾燥させ、実施例25の印刷物を作製した。
【0137】
(実施例26)
自動スプレー塗布機に処理液1を充填し、A4サイズに切り出した濃色ポリエステル(濃色ドライTシャツ、 Glimmer 00300-ACT Black、トムス株式会社製)に対して、9.0cg/cmの付着量で処理液1を付与した。
次に、120℃に設定したヒートプレスにて60秒間乾燥させた。
次に、インクジェットプリンター(Ri2000、株式会社リコー製)にインク10を充填し、濃色ポリエステルの処理液1を付与された領域に対して、200mg/cmの付着量でインク10を付与してベタ画像を形成した(ドライオンウェット)。
その後、120℃に設定した熱風循環型恒温槽にて90秒間乾燥させ、実施例26の印刷物を作製した。
【0138】
(実施例27)
実施例26において、表6に示す条件に変更した以外は、実施例26と同様にして、実施例27の印刷物を作製した。
【0139】
(比較例1及び3~5)
実施例1において、表6に示す条件に変更した以外は、実施例1と同様にして、比較例1及び3~5の印刷物を作製した。
【0140】
(比較例2)
実施例25において、表6に示す条件に変更した以外は、実施例25と同様にして、比較例2の印刷物を作製した。
【0141】
【表6】
【0142】
各実施例及び比較例で用いた「インクの保存安定性」、並びに各実施例及び比較例で作製された印刷物における「引っ張り後のベタ画像部分の生地のよれ」、「印刷物のべたつき」、「白色隠蔽性」、「乾摩擦堅牢性」、及び「柔軟性」を下記のようにして評価した。評価結果を表7に示す。
【0143】
<インクの保存安定性>
実施例及び比較例で用いた各インクをそれぞれ密閉容器に入れ、70℃の恒温槽で2週間静置し、保存前後の粘度変化率を測定し、下記評価基準に基づき、インクの保存安定性を評価した。なお、粘度は、コーンプレート型回転粘度計(装置名:VISCOMETER TV-22、東機産業株式会社製)を用い、恒温循環水の温度が25℃、回転数が50rpm、せん断速度が191.4sec-1の条件で測定した。なお、「B-」以上を実施可能なレベルとした。
[評価基準]
A:粘度変化率が±5%以内である
B+:粘度変化率が±5%を超え、±10%以内である
B-:粘度変化率が±10%を超え、±15%以内である
C:粘度変化率が±15%を超える
【0144】
<引っ張り後のベタ画像部分の生地のよれ>
実施例及び比較例で作成された各印刷物における引っ張り後のベタ画像部分の生地のよれを以下の方法にて評価し、下記評価基準に基づいて引っ張り後のよれを評価した。印刷物を20mm×80mmの大きさにカットした印刷物を万能力学試験機にて治具つかみ間距離を40mmとして、30%(12mm)伸長させて力を取り除いた後の試験片サイズから引っ張り後のよれを評価した。なお、「B-」以上を実施可能なレベルとした。
[評価基準]
A:伸びが15%未満である
B+:伸びが15%以上20%未満である
B-:伸びが20%以上25%未満である
C:伸びが25%以上である
【0145】
<印刷物のべたつき>
実施例及び比較例で作成された各印刷物に対し、下記評価基準に基づき、印刷物のべたつきを評価した。なお、「B-」以上を実施可能なレベルとした。
[評価基準]
A:印刷面に触れても全くべたつきがない
B+:印刷面に触れるとわずかにべたつきを感じる
B-:印刷面に触れるとべたつきを感じる
C:印刷面に触れると触れた部分が濡れる
【0146】
<白色隠蔽性>
実施例及び比較例で作成された各印刷物に対し、X-rite exact(X-rite社製)を用いて測色して白色隠蔽度を以下の式の通り算出し、下記評価基準に基づいて白色隠蔽性を評価した。なお、「B-」以上を実施可能なレベルとした。
白色隠蔽度(%)=[(元生地のOD-ベタ画像のOD)/元生地のOD]×100
[評価基準]
A:白色隠蔽度が93%以上である
B+:白色隠蔽度が88%以上93%未満である
B-:白色隠蔽度が83%以上88%未満である
C:白色隠蔽度が83%未満である
【0147】
<乾摩擦堅牢性>
実施例及び比較例で作成された各印刷物に対し、JIS L0849 II型に基づき乾摩擦堅牢性の試験を実施し、下記評価基準に基づき、乾摩擦堅牢性を評価した。なお、「B-」以上を実施可能なレベルとした。
(評価基準)
A:4.0級以上である
B+:4.0級である
B:3.5級である
B-:3.0級である
C:2.5級以下である
【0148】
<柔軟性>
実施例及び比較例で作成された各印刷物について、JIS L1069 E法に基づき柔軟性(剛軟度)の試験を実施し、下記評価基準に基づき、柔軟性を評価した。なお、「B-」以上を実施可能なレベルとした。
[評価基準]
A:40g未満である
B+:40g以上55g未満である
B-:55g以上70g未満である
C:70g以上である
【0149】
【表7】
【0150】
本発明の態様としては、例えば、以下のとおりである。
<1> 生地に対して処理液を付与する処理液付与工程と、
処理液を付与後の生地に対してインクを付与するインク付与工程と、
を含み、
前記インクが、顔料、架橋性官能基を有する樹脂、pH調整剤、並びにブロックイソシアネート化合物、カルボジイミド化合物、及びオキサゾリン基含有ポリマーから選択される少なくとも1種を含有することを特徴とする印刷方法である。
<2> 前記pH調整剤が炭素数4~8のアミン化合物を含む、前記<1>に記載の印刷方法である。
<3> 前記pH調整剤が2-アミノ-2-エチル-1,3-プロパンジオールである、前記<1>から<2>のいずれかに記載の印刷方法である。
<4> 前記オキサゾリン基含有ポリマーを含有する、前記<1>から<3>のいずれかに記載の印刷方法である。
<5> 前記ブロックイソシアネート化合物、カルボジイミド化合物、及びオキサゾリン基含有ポリマーから選択される少なくとも1種の含有量が0.3質量%以上1.5質量%以下である、前記<1>から<4>のいずれかに記載の印刷方法である。
<6> 更に、炭素数8~11のポリオール化合物及びグリコールエーテル化合物の少なくともいずれかを含有する、前記<1>から<5>のいずれかに記載の印刷方法である。
<7> 前記炭素数8~11のポリオール化合物が2-エチル-1,3-ヘキサンジオールである、前記<6>に記載の印刷方法である。
<8> 炭素数8~11のポリオール化合物及びグリコールエーテル化合物の少なくともいずれかの含有量が0.5質量%以上2質量%以下である、前記<6>から<7>のいずれかに記載の印刷方法である。
<9> 前記顔料は、二次粒子径が200nm以上300nm以下の酸化チタンである、前記<1>から<8>のいずれかに記載の印刷方法である。
<10> 前記処理液が、凝集剤、保湿剤、及び界面活性剤を含む、前記<1>から<9>のいずれかに記載の印刷方法である。
<11> 前記凝集剤が、無機塩、有機塩、及びカチオンポリマーのいずれかである、前記<10>に記載の印刷方法である。
<12> 前記処理液が、更にワックスを含む、前記<10>から<11>のいずれかに記載の印刷方法である。
<13> 前記ワックスが酸化ポリエチレン、カルバナワックス、及びシロキサン化合物から選択される少なくとも1種を含む、前記<12>に記載の印刷方法である。
<14> 前記処理液の付着量が0.8mg/cm以上9mg/cm以下である、前記<1>から<13>のいずれかに記載の印刷方法である。
<15> 前記処理液の付与方法がインクジェット方式である、前記<1>から<14>のいずれかに記載の印刷方法である。
<16> 前記処理液及び前記インクをウェットオンウェットで付与する、前記<1>から<15>のいずれかに記載の印刷方法である。
<17> 前記生地が濃色生地である、前記<1>から<16>のいずれかに記載の印刷方法である。
<18> 生地に対して処理液を付与する処理液付与手段と、
処理液を付与後の生地に対してインクを付与するインク付与手段と、
を有し、
前記インクが、顔料、架橋性官能基を有する樹脂、pH調整剤、並びにブロックイソシアネート化合物、カルボジイミド化合物、及びオキサゾリン基含有ポリマーから選択される少なくとも1種を含有することを特徴とする印刷装置である。
<19> 前記処理液の付着量が0.8mg/cm以上9mg/cm以下である、前記<18>に記載の印刷装置である。
<20> 前記処理液付与手段がインクジェット吐出手段である、前記<18>から<19>のいずれかに記載の印刷装置である。
<21> 前記処理液及び前記インクをウェットオンウェットで付与する、前記<18>から<20>のいずれかに記載の印刷装置である。
<22> 前記生地が濃色生地である、前記<18>から<21>のいずれかに記載の印刷装置である。
<23> 生地と、該生地上に前記<1>から<17>のいずれかに記載の印刷方法を用いて形成した印刷層と、を有することを特徴とする印刷物である。
<24> 前記生地が濃色生地である、前記<23>に記載の印刷物である。
<25> 生地上に画像を形成するための処理液とインクのセットであって、
顔料、架橋性官能基を有する樹脂、pH調整剤、並びにブロックイソシアネート化合物、カルボジイミド化合物、及びオキサゾリン基含有ポリマーから選択される少なくとも1種を含有するインクと、
処理液と、
を有することを特徴とする処理液とインクのセットである。
<26> 前記生地が濃色生地である、前記<25>に記載の処理液とインクのセットである。
【0151】
前記<1>から<17>のいずれかに記載の印刷方法、前記<18>から<22>のいずれかに記載の印刷装置、前記<23>から<24>のいずれかに記載の印刷物、及び前記<25>から<26>のいずれかに記載の処理液とインクのセットによると、従来における諸問題を解決し、本発明の目的を達成することができる。
【符号の説明】
【0152】
100 印刷装置
110 前処理液付与部
120 インク付与部
130 後処理液付与部
140 乾燥部
150 搬送部
M 記録媒体
【先行技術文献】
【特許文献】
【0153】
【特許文献1】特開2019-31611号公報
【特許文献2】特開2018-123235号公報
図1