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特開2023-91038粒子解析用データ生成方法、粒子解析用データ生成プログラム、及び粒子解析用データ生成装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023091038
(43)【公開日】2023-06-29
(54)【発明の名称】粒子解析用データ生成方法、粒子解析用データ生成プログラム、及び粒子解析用データ生成装置
(51)【国際特許分類】
   G06V 10/774 20220101AFI20230622BHJP
【FI】
G06V10/774
【審査請求】有
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023079318
(22)【出願日】2023-05-12
(62)【分割の表示】P 2020548018の分割
【原出願日】2019-07-05
(31)【優先権主張番号】P 2018182975
(32)【優先日】2018-09-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000155023
【氏名又は名称】株式会社堀場製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100121441
【弁理士】
【氏名又は名称】西村 竜平
(74)【代理人】
【識別番号】100154704
【弁理士】
【氏名又は名称】齊藤 真大
(72)【発明者】
【氏名】越川 浩行
(72)【発明者】
【氏名】秋山 久
(72)【発明者】
【氏名】森 哲也
(72)【発明者】
【氏名】松尾 公佑
(72)【発明者】
【氏名】中谷 仁
(72)【発明者】
【氏名】勝田 敏広
(57)【要約】
【課題】粒子の画像解析に人工知能を適用するにあたり、例えば実際に粒子の画像を撮像した実画像データを膨大に準備する等といった工数を可及的に削減できるようにしつつ、ユーザの要望に応じた機械学習用のデータを提供できるようにする。
【解決手段】所定の条件に基づいて仮想的な粒子の画像データである仮想粒子画像データを生成し、仮想的な粒子に対するラベルデータを生成し、仮想粒子画像データとラベルデータとを対応付けるようにした。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
粒子の画像解析に用いられる粒子解析用データを生成する方法であって、
所定の条件に基づいて仮想的な粒子の画像データである仮想粒子画像データを生成する仮想粒子生成ステップと、
前記仮想的な粒子に対するラベルデータを生成するラベル生成ステップと、
前記仮想粒子画像データと前記ラベルデータとを対応付ける対応付けステップとを備え、
前記所定の条件には、粒子の外観を示す粒子パラメータ及び粒子画像の撮影条件に基づく光学パラメータの少なくとも1つが含まれており、
前記仮想粒子画像データには、前記粒子パラメータの値または前記光学パラメータの値が互いに異なる複数の粒子が含まれる、粒子解析用データ生成方法。
【請求項2】
前記仮想粒子画像データと、当該仮想粒子画像データに対応付けられた前記ラベルデータとの組を複数用いて機械学習する機械学習ステップをさらに備える、請求項1記載の粒子解析用データ生成方法。
【請求項3】
前記所定の条件には前記粒子パラメータまたは前記光学パラメータの値についての範囲が含まれており、
前記仮想粒子生成ステップにおいて、前記範囲に含まれる複数の値に基づいて複数の前記仮想粒子画像データを生成する、請求項1記載の粒子解析用データ生成方法。
【請求項4】
前記ラベルデータの内容が、前記所定の条件の中から選択された1又は複数のパラメータの値、或いは、当該選択された1又は複数のパラメータの値と基準値とを比較した結果である、請求項1記載の粒子解析用データ生成方法。
【請求項5】
前記ラベルデータが、複数の前記仮想的な粒子からなる仮想粒子群に対する解析結果を示す情報である、請求項1記載の粒子解析用データ生成方法。
【請求項6】
前記仮想的な粒子のモデルとなるモデル粒子の情報を取得するモデル粒子取得ステップをさらに備え、
前記仮想粒子生成ステップにおいて、前記モデル粒子の情報を用いて前記仮想粒子画像データを生成する、請求項1記載の粒子解析用データ生成方法。
【請求項7】
前記粒子パラメータが、粒子の形状の種類を示すパラメータ、粒子の形状の種類を変えない変形の度合い或いはサイズを示すパラメータ、粒子表面状態に起因する光学特性に関わるパラメータ、1つの粒子に対して別の粒子が付着する確率、付着することのできる別の粒子の最大数などのパラメータ、又は、粒子の空間的な分布状態を示すパラメータである、請求項1記載の粒子解析用データ生成方法。
【請求項8】
前記光学パラメータが、粒子像のボケ度合、粒子の変形或いは変色、又は、粒子像のコントラスト或いはブライトネスを含む、請求項1記載の粒子解析用データ生成方法。
【請求項9】
粒子の画像解析に用いられる粒子解析用データを生成するためのプログラムであって、
所定の条件に基づいて仮想的な粒子の画像データである仮想粒子画像データを生成する仮想粒子生成部と、
前記仮想的な粒子に対するラベルデータを生成するラベル生成部と、
前記仮想粒子画像データと前記ラベルデータとを対応付ける対応付け部としての機能をコンピュータに発揮させ、
前記所定の条件には、粒子の外観を示す粒子パラメータ及び粒子画像の撮影条件に基づく光学パラメータの少なくとも1つが含まれており、
前記仮想粒子画像データには、前記粒子パラメータの値または前記光学パラメータの値が互いに異なる複数の粒子が含まれる、粒子解析用データ生成プログラム。
【請求項10】
粒子の画像解析に用いられる粒子解析用データを生成する装置であって、
所定の条件に基づいて仮想的な粒子の画像データである仮想粒子画像データを生成する仮想粒子生成部と、
前記仮想的な粒子に対するラベルデータを生成するラベル生成部と、
前記仮想粒子画像データと前記ラベルデータとを対応付ける対応付け部とを備え、
前記所定の条件には、粒子の外観を示す粒子パラメータ及び粒子画像の撮影条件に基づく光学パラメータの少なくとも1つが含まれており、
前記仮想粒子画像データには、前記粒子パラメータの値または前記光学パラメータの値が互いに異なる複数の粒子が含まれる、粒子解析用データ生成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粒子の画像解析に用いられるデータを生成する方法などに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、粒子の解析装置としては、特許文献1に示すように、フローセル中を移動する試料を例えばビデオカメラで撮影し、その静止画像を画像処理することにより、画像中の粒子を解析するものが知られている。
【0003】
かかる解析装置における解析アルゴリズムは、ユーザが解析に要望することに応じて異なり、例えば「粒子群に含まれる所定の粒径よりも大きい或いは小さい粒子の割合」、「長方形状の粒子のアスペクト比」、「粒子群の凝集具合」など多岐にわたる要望それぞれに応じたものを作成しなければならない。
【0004】
このような種々の解析アルゴリズムを作成するにあたり、本願発明者が人工知能による機械学習を用いることを検討したところ、例えば粒子群が撮像された画像データに、その粒子群に対するユーザの評価(例えば、所定の条件を満たすか否かなど)をラベル付けしたものを学習データとして機械学習させることで、ユーザの要望に応じたアルゴリズムを作成できると考えた。
【0005】
しかしながら、そのためには粒子が撮像された画像データを膨大に用意することが必要であり、仮に膨大な数の画像データを用意できたとしても、それらの画像データそれぞれにユーザの評価をラベル付けすることは非常に多くの工数を要してしまう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2010-151523号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
そこで本発明は、実際の粒子が撮像された画像データを膨大に準備する等といった工数を可及的に少なくしつつ、ユーザの要望に応じた解析アルゴリズムを機械学習により作成できるようにすることを主たる課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
すなわち本発明に係る粒子解析用データ生成方法は、粒子の画像解析に用いられる粒子解析用データを生成する方法であって、所定の条件に基づいて仮想的な粒子の画像データである仮想粒子画像データを生成する仮想粒子生成ステップと、前記仮想的な粒子に対するラベルデータを生成するラベル生成ステップと、前記仮想粒子画像データと前記ラベルデータとを対応付ける対応付けステップとを備えることを特徴とする方法である。
【0009】
このような粒子解析用データ生成方法によれば、仮想的な粒子の画像データである仮想粒子画像データを生成し、その仮想粒子画像データにラベルデータを対応付けるので、実際の粒子が撮像された画像データを膨大に準備する等といった工数を可及的に少なくすることができるうえ、仮想粒子画像データとラベルデータとの組を学習データとして人工知能に入力することで、ユーザの要望に応じた解析アルゴリズムを作成することができる。
【0010】
種々の要望に応じた解析アルゴリズムを作成できるようにするためには、前記仮想粒子画像データと、当該仮想粒子画像データに対応付けられた前記ラベルデータとの組を複数用いて機械学習する機械学習ステップをさらに備えることが好ましい。
【0011】
前記所定の条件には、粒子の外観を示す粒子パラメータ及び粒子画像の撮影条件に基づく光学パラメータの少なくとも1つが含まれていることが好ましい。
これらのパラメータを用いることで、多種多様な仮想粒子画像データを生成することができる。
【0012】
前記所定の条件には前記粒子パラメータまたは前記光学パラメータの値についての範囲が含まれており、前記仮想粒子生成ステップにおいて、前記範囲に含まれる複数の値に基づいて複数の前記仮想粒子画像データを生成することが好ましい。
これならば、例えば外観や写り方などを段階的に変更させた種々の仮想的な粒子の仮想粒子画像データを生成することができる。
【0013】
ユーザ毎の要望に応じたラベルデータを作成するための実施態様としては、前記ラベルデータの内容が、前記所定の条件の中から選択された1又は複数のパラメータの値、或いは、当該選択された1又は複数のパラメータの値と基準値とを比較した結果であることが好ましい。
【0014】
前記仮想粒子画像データには、前記粒子パラメータの値または前記光学パラメータの値が互いに異なる複数の粒子が含まれることが好ましい。
このような仮想粒子画像データを用いれば、粒子群を解析するための解析アルゴリズムをも機械学習により作成することができる。
【0015】
仮想的な粒子を、より実際の粒子らしくするためには、前記仮想的な粒子のモデルとなるモデル粒子の情報を取得するモデル粒子取得ステップをさらに備え、前記仮想粒子生成ステップにおいて、前記モデル粒子の情報を用いて前記仮想粒子画像データを生成することが好ましい。
【0016】
また、本発明に係る粒子解析用データ生成プログラムは、粒子の画像解析に用いられる粒子解析用データを生成するためのプログラムであって、所定の条件に基づいて仮想的な粒子の画像データである仮想粒子画像データを生成する仮想粒子生成部と、前記仮想的な粒子に対するラベルデータを生成するラベル生成部と、前記仮想粒子画像データと前記ラベルデータとを対応付ける対応付け部としての機能をコンピュータに発揮させるものである。
【0017】
さらに、本発明に係る粒子解析用データ生成装置は、粒子の画像解析に用いられる粒子解析用データを生成する装置であって、所定の条件に基づいて仮想的な粒子の画像データである仮想粒子画像データを生成する仮想粒子生成部と、前記仮想的な粒子に対するラベルデータを生成するラベル生成部と、前記仮想粒子画像データと前記ラベルデータとを対応付ける対応付け部とを備えることを特徴とするものである。
【0018】
このような粒子解析用データ生成プログラムや粒子解析用データ生成装置によれば、上述した粒子解析用データ生成方法と同様の作用効果を奏し得る。
【発明の効果】
【0019】
以上に述べた本発明によれば、実際の粒子が撮像された実画像データを膨大に準備する等といった工数を可及的に少なくしつつ、ユーザの要望に応じたアルゴリズムを人工知能による機外学習を用いて作成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本実施形態に係る粒子解析用データ生成装置の使用態様を示す模式図。
図2】同実施形態の情報処理装置の機能を説明する機能ブロック図。
図3】同実施形態の情報処理装置を用いてモデル粒子情報を抽出する方法を説明する図。
図4】同実施形態の粒子解析用データ生成装置の機能を説明する機能ブロック図。
図5】同実施形態の仮想粒子の画像データを説明する図。
図6】同実施形態の機械学習に用いられる学習データを説明する図。
図7】その他の実施形態における情報処理装置の機能を説明する機能ブロック図。
図8】その他の実施形態における粒子解析用データ生成装置の機能を説明する機能ブロック図。
図9】その他の実施形態における画像粒子解析装置の機能を説明する機能ブロック図。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下に本発明の一実施形態について図面を参照して説明する。
【0022】
本実施形態に係る粒子解析用データ生成装置100は、図1に示すように、粒子群に含まれる粒子を画像解析法により解析する画像式粒子解析装置Xとともに用いられるものであり、この画像式粒子解析装置Xに用いられる解析アルゴリズムを作成するものである。
【0023】
画像式粒子解析装置Xの一例としては、粒子群を収容するセル、セルに光を照射する光照射装置、セルに収容された粒子群を撮像する撮像装置、及び撮像装置により得られた画像データを画像処理等して解析する画像解析装置などを備えたものが挙げられるが、その他の種々の構成のものを用いて構わない。
【0024】
粒子解析用データ生成装置100は、図1に示すように、入力されたモデル粒子情報を用いて人工知能に機械学習させる学習データを生成し、その機械学習により解析アルゴリズムを作成するものであるが、この粒子解析用データ生成装置100の詳細を説明する前に、まずは入力されるモデル粒子情報及びモデル粒子情報を生成する情報処理装置200について説明する。
【0025】
情報処理装置200は、CPU、メモリ、ディスプレイ、キーボードやマウスなどの入力手段などを有する汎用乃至専用のコンピュータであり、前記メモリに格納されたプログラムに基づいて、図2に示すように、実画像データ取得部21、表示部22、画像処理信号受付部23、モデル粒子抽出部24などとしての機能を発揮するものである。
以下、各部の説明を兼ねて、情報処理装置200の動作を説明する。
【0026】
まず、実画像データ取得部21が、上述した画像式粒子解析装置Xの撮像装置により得られた実画像データを有線、無線、又はUSBメモリ等の記録媒体を介して取得し、その実画像データの示す実画像を表示部22がディスプレイ等に表示する。
【0027】
次いで、図3に示すように、実画像に写された粒子群(実画像中の白い部分)の中から、後述する仮想的な粒子(以下、仮想粒子という)のモデル(仮想粒子を作成するための基礎)となるモデル粒子を選定し、そのモデル粒子の情報であるモデル粒子情報を抽出する。ここでいうモデル粒子情報とは、モデル粒子の像に関する情報であって、実画像データを画像処理等することにより抽出可能な情報である。なお、モデル粒子としては、単一の粒子からなる単独粒子であっても良いし、複数の粒子が凝集してなる凝集粒子であっても良い。
【0028】
より具体的に説明すると、例えばエンジニア等のオペレータが、ディスプレイ等に表示された実画像を確認しながら、例えば鮮明に写された粒子、形状を認識可能な向きの粒子、所望の大きさの粒子などをモデル粒子として選定し、そのモデル粒子の例えばテクスチュアや輪郭線などをモデル粒子情報として実画像データから抽出するための画像処理信号をマウスやタッチパネル等の入力手段を用いて入力する。
【0029】
入力された画像処理信号は、図2に示すように、情報処理装置200が備える画像処理信号受付部23によって受け付けられ、その画像処理信号に基づいて、モデル粒子抽出部24がモデル粒子の少なくともテクスチュア又は輪郭線をモデル粒子情報として実画像データから抽出する。
このとき、モデル粒子抽出部24は、実画像データから抽出可能な例えばモデル粒子の大きさ、形状、色、コントラスト、ブライトネスなどをさらにモデル粒子情報として抽出しても良い。
【0030】
このようにして抽出されたモデル粒子情報は、粒子解析用データ生成装置100に出力される。なお、後述する仮想画像データをより多種多様に生成するためには、実画像データから複数のモデル粒子を選択してそれらのモデル粒子情報を粒子解析用データ生成装置100に出力することが好ましいが、単一のモデル粒子を選択してそのモデル粒子情報のみを出力するようにしても構わない。
【0031】
続いて、粒子解析用データ生成装置100について説明する。
【0032】
粒子解析用データ生成装置100は、CPU、メモリ、AD変換器、キーボードやマウスなどの入力手段などを有する汎用乃至専用のコンピュータである。そして、前記メモリに格納されたプログラムに基づいて、図4に示すように、モデル粒子取得部11、生成条件受付部12、仮想粒子生成部13、ラベル生成部14、対応付け部15、仮想粒子格納部16、機械学習部17などとしての機能を発揮するものである。
以下、各部の説明を兼ねて、粒子解析用データ生成装置100の動作を説明する。
【0033】
まず、上述した情報処理装置200からモデル粒子情報が出力されると、このモデル粒子情報をモデル粒子取得部11が取得して後述の仮想粒子生成部13に送信する。
【0034】
ここで、モデル粒子の態様、すなわち実画像におけるモデル粒子の像の写りかたは、モデル粒子の例えば大きさ、形状、向きなどといったモデル粒子そのものが備える粒子パラメータによって変わる。さらに、画像式解析装置の例えば撮像方式、撮像装置の設定、光源の種類などの装置条件の下で、撮像視野内でのモデル粒子が存在する位置によっても変わる。
【0035】
そこで、本実施形態の粒子解析用データ生成装置100は、上述した粒子パラメータ及び装置条件の少なくとも一方を仮想粒子を生成するための条件として入力できるように構成されており、ここでは図4に示すように、予め入力された粒子パラメータ及び装置条件を生成条件受付部12が仮想粒子生成条件として受け付ける。
かかる構成により、エンジニア等のオペレータが入力手段を用いて種々の粒子パラメータ及び種々の装置条件を入力すると、入力された仮想粒子生成条件は生成条件受付部12から仮想粒子生成部13に送信される。入力にあたっては、粒子パラメータ及び装置条件の内容に応じて、仮想粒子を種々の態様に変更するための数値範囲を予め入力しても良い。さらに、数値範囲内での各数値を取る頻度(重み付け)を入力しても良い。
【0036】
具体的に粒子パラメータは、モデル粒子の外観、すなわちテクスチュア又は輪郭線の少なくとも一方を変更するための粒子形状パラメータと、粒子の集合状態や空間分布を変更するための粒子分布パラメータを含む。粒子形状パラメータとして、例えば以下に説明にする形状モデル、形状パラメータ、表面状態などが挙げられる。粒子分布パラメータとしては、例えば、凝集性、粒子分布などが挙げられる。
<形状モデル>
多角柱、多面体、多角錐、球体、楕円体、円柱、円錐、不定形(例えばオペレータが任意に作成した形状)などの形状の種類を示すパラメータ。
<形状パラメータ>
粒子の円形度、凹凸度、粒子径、アスペクト比、向き(回転角度)などの、形状の種類を変えない変形の度合いやサイズを示すパラメータ。
<表面状態>
粒子の透過率、反射率などの、粒子表面状態に起因する光学特性に関わるパラメータ。
<凝集性>
1つの粒子に対して別の粒子が付着する確率、付着することのできる別の粒子の最大数などのパラメータ。
<粒子分布>
粒子の濃度、個数、配置などの、粒子の空間的な分布状態を示すパラメータ。
【0037】
また、装置条件は、画像式粒子解析装置Xに対してユーザ毎に選択・設定・使用されるものであり、例えば以下の撮像方式、カメラ設定、加速電圧、光学条件、粒子の配置範囲、ピクセル数・ピクセルサイズなどが挙げられる。これらは、粒子そのものには影響しないが、撮像視野内での粒子の見え方(写り方)に影響する。特に、光学条件は撮像視野内での粒子の位置に応じた見え方の違いに関わっており、焦点位置と空間分解能は粒子像のボケ度合、収差は粒子の変形や変色、照明状態は粒子像のコントラストやブライトネスに関係する。これらのボケ度合、変形、変色、コントラスト、ブライトネスは、仮想粒子を作成するためのパラメータ(光学パラメータ)として仮想粒子生成条件に含まれていても良い。
<撮像方式>
光学式(落射照明、透過照明、周囲照明などを利用する方式)、電子式(二次電子、反射電子、透過、吸収、X線などを利用する方式)、AFM、蛍光X線などの撮像方式に関する条件。
<カメラ設定>
カラー、モノクロ、グレースケール等のカラーモードに関する条件。
<加速電圧>
電子顕微鏡や蛍光X線を用いた場合における管電圧に関する条件。
<光学条件>
粒子を撮像する撮像装置の空間分解能、焦点深度、収差(色収差、球面収差、コマ収差、非点収差、像面湾曲、歪曲収差など)、照明条件などの光学系に関する条件。
<粒子の配置範囲>
撮像装置からの奥行き方向に粒子が存在し得る範囲の条件。
<ピクセル数・ピクセルサイズ>
撮像された実画像のピクセル数やピクセルサイズに関する条件。
【0038】
仮想粒子生成部13は、生成条件受付部12が受け付けた仮想粒子生成条件に基づいて仮想粒子の画像である仮想粒子画像データを生成するものであり、ここでは仮想粒子生成条件に基づいてモデル粒子の態様を変更させた仮想粒子を仮想的に作成して、この仮想粒子の画像データを仮想粒子画像データとして生成する。
【0039】
ここでの仮想粒子生成部13は、仮想粒子生成条件である粒子パラメータ及び装置条件の1又は複数に基づいて、モデル粒子情報に含まれるテクスチュアや輪郭線を画像処理等した単独の粒子を仮想粒子として作成し、その仮想粒子の態様を示す仮想粒子画像データを生成する。
【0040】
具体的な一例としては、例えば生成条件受付部12がアスペクト比、粒径などの粒子径パラメータや、ボケ度合などの光学パラメータを所定の数値範囲で受け付けると、仮想粒子生成部13は、モデル粒子における上記のパラメータを所定の数値範囲内で変更させた種々の仮想粒子の仮想粒子画像データを生成する。
【0041】
ラベル生成部14は、仮想粒子に対するラベルデータを生成するものであり、ここでは仮想粒子生成条件に基づいてラベルデータを生成するように構成されている。このラベルデータは、例えば後述する機械学習における仮想粒子画像データに対する答えとなるデータであり、仮想粒子の物性値、仮想粒子に対するユーザの評価、又は仮想粒子を解析した場合の解析結果などを示すものである。
なお、このラベル生成部14は、エンジニア等のオペレータによって入力手段を用いて入力された編集信号に基づいて、ラベルデータを編集するように構成されていて良い。
【0042】
ラベルデータとしては、仮想粒子を画像解析した場合の解析結果を示すものを挙げることができ、その一例としては仮想粒子生成条件の中から予め選択された1又は複数のパラメータの値が挙げられる。
【0043】
より具体的に説明すると、図5(a)に示すように、例えばモデル粒子が柱状のものであり、粒子パラメータとしてアスペクト比が所定の数値範囲で入力されている場合、仮想粒子生成部13は、モデル粒子の形状を種々のアスペクト比に変更した仮想粒子の仮想粒子画像データを生成し、ラベル生成部14は、それらの仮想粒子画像データそれぞれに対応するアスペクト比をラベルデータとして生成する。
【0044】
別の例としては、図5(b)に示すように、粒子パラメータとして粒子の様々な向き(回転角度)が入力されている場合、仮想粒子生成部13は、モデル粒子をそれぞれの向きに回転させた仮想粒子の仮想粒子画像データを生成し、ラベル生成部14は、それらの仮想粒子画像データそれぞれに対応する向き(回転角度)をラベルデータとして生成する。
【0045】
また、ボケ度合いが例えば所定の数値範囲で入力されている場合、図5(c)に示すように、仮想粒子生成部13は、モデル粒子のボケ度合いを入力された数値範囲において段階的に変更させた仮想粒子の仮想粒子画像データを生成し、ラベル生成部14は、それらの仮想粒子画像データそれぞれに対応するボケ度合いをラベルデータとして生成する。
【0046】
上述した例は、仮想粒子生成部13がモデル粒子の態様を示す種々のパラメータのうちの1つを変更して仮想粒子を作成した場合であるが、仮想粒子生成部13は、モデル粒子における複数種類のパラメータ(例えば、アスペクト比とボケ度合など)を所定の数値範囲で変更して仮想粒子を作成しても良い。
【0047】
また、ラベルデータの別の例としては、仮想粒子生成条件の中から選択された1又は複数のパラメータの値と、予め設定された基準値とを比較した結果が挙げられる。このようなラベルデータとしては、例えば仮想粒子に対してユーザが要望する解析結果などである。
【0048】
より具体的に説明すると、例えばユーザが「所定のアスペクト比(例えば0.85)以上であり、所定の粒径(例えば8μm)以上であり、所定のボケ度合以下である場合の粒子を合格、それ以外の粒子を不合格」という解析結果を要望する場合、選択されたパラメータであるアスペクト比、粒径、ボケ度合と、それぞれに対して予め定められた基準値とを比較した比較結果、すなわち「合格」又は「不合格」を示す情報がラベルデータとなる。
【0049】
このようにして生成された仮想粒子画像データ及びラベルデータは、対応付け部15によって対応付けられる。ここでの対応付け部15は、仮想粒子に対して生成されたラベルデータを、当該仮想粒子の仮想粒子画像データにタグ付けして、前記メモリの所定領域に形成された仮想粒子格納部16に格納するように構成されている。なお、別の態様としては、生成された仮想粒子画像データ及びラベルデータを別々に仮想粒子格納部16に格納しておき、対応付け部15が例えばラベルデータと仮想粒子画像データとの対応付けを示すテーブルを用いて、仮想粒子画像データ及びラベルデータを対応付けるようにしても良い。なお、仮想粒子格納部16は、クラウド等の外部メモリに設定されていても良い。
【0050】
機械学習部17は、粒子解析用データ生成装置100が備える人工知能により発揮される機能であって、入力された学習データを用いて例えばディープラーニング等の機械学習するように構成されている。具体的にこの機械学習部17は、対応付け部15により対応付けられた仮想粒子画像データ及びラベルデータが入力されるものであり、これらの仮想粒子画像データ及びラベルデータの組を学習データとして教師あり学習するように構成されている。具体的に機械学習部17は、仮想画像データから割り出した特徴量とラベルデータとの関係性を学習することで、実画像データを画像解析するための解析アルゴリズムを作成する。なお、ラベルデータが対応付けられた実画像データをさらに学習データとして機械学習部17に入力しても良い。
【0051】
そして、機械学習部17に多数の学習データを入力して機械学習させることにより、例えば実画像データに写された粒子のアスペクト比や粒径などを解析するための解析アルゴリズムや、実画像データに写された粒子が所定の条件を満たすか否か(合格であるか不合格であるか)を解析するための解析アルゴリズム、実画像データに写された粒子が異物であるか否かを解析するための解析アルゴリズムなどが作成される。
【0052】
このように構成された粒子解析用データ生成装置100によれば、実画像に写されたモデル粒子のモデル粒子情報から、仮想粒子画像データを生成するので、膨大な学習データを準備するうえで必要となる実画像データは少なくて済み、実画像データを膨大に準備する等といった工数を可及的に少なくすることができる。
そして、仮想粒子を上述した画像式粒子解析装置Xにより解析した場合に得られる解析結果など、仮想粒子に対してユーザが要望する解析結果を評価として仮想粒子画像データに対応付けて作成し、その仮想粒子画像データとラベルデータとの組を学習データとして機械学習するので、ユーザの要望に応じた解析アルゴリズムを作成することができる。
【0053】
また、オペレータが入力した種々の入力パラメータや種々の装置条件を用いて仮想粒子情報を生成するので、少ないモデル粒子情報から多種多様な仮想粒子画像データやラベルデータを生成することができ、ひいては膨大な学習データを生成することが可能となる。
【0054】
なお、本発明は前記実施形態に限られるものではない。
【0055】
例えば、前記実施形態の仮想粒子生成部13は、仮想的な単独の粒子の画像データを仮想粒子画像データとして生成するように構成されていたが、仮想粒子生成部13としては、仮想的な複数の粒子からなる仮想粒子群の画像データを仮想粒子画像データとして生成するように構成されていても良い。
【0056】
具体的には、生成条件受付部12は、例えば仮想粒子群に対してユーザが要望する解析結果又はこれに関する情報を仮想粒子生成条件として受け付け、仮想粒子生成部13が、仮想粒子画像データに写された仮想粒子群を上述した画像式粒子解析装置Xにより解析した場合にユーザが要望する解析結果が得られるように、仮想粒子画像データを生成すれば良い。
【0057】
仮想粒子生成条件としては、例えば仮想粒子画像データに写された仮想粒子群が所定の水準を満たすか否かなどを挙げることができ、具体的にはユーザの要望する解析結果が「粒子群全体のうち凝集粒子が所定割合より少ない場合は合格、そうでない場合は不合格」であれば、仮想画像生成条件としては、例えば合格・不合格の水準となる凝集粒子の所定割合が挙げられる。
【0058】
この場合、仮想粒子生成部13は、種々の凝集粒子の仮想粒子画像データや、種々の単独粒子の仮想粒子画像データを予め生成して仮想粒子格納部16に格納しておき、それらの仮想粒子画像データを、図6に示すように、合成等の画像処理をして、凝集粒子の占める割合を様々に変更した場合の仮想粒子群の仮想粒子画像データを生成する。なお、図6に示す仮想粒子としては、モデル粒子の形状、大きさ、ボケ度合などを変更したものが含まれている。
【0059】
ラベル生成部14は、前記実施形態と同様に、仮想粒子生成部13により生成された仮想粒子画像データに対応付けてラベルデータを生成する。
ここでのラベルデータは、例えば仮想粒子群に対してユーザが要望する解析結果を示す情報であり、ここでは仮想粒子群を上述した画像式粒子解析装置Xにより解析した場合に得られる解析結果、すなわち「合格」又は「不合格」を示す情報である。なお、ラベルデータとしては、例えば凝集粒子の割合を示す数値などであっても良い。
【0060】
このような構成であれば、仮想粒子群の仮想粒子画像データとラベルデータとの組を機械学習部17に入力して機械学習させることにより、例えば実画像に写された粒子群が所定の条件を満たすか否か(合格であるか不合格であるか)を解析するための解析アルゴリズムや、実画像データに写された粒子群の粒子径分布を解析するための解析アルゴリズムなどを作成することができる。
【0061】
前記実施形態では、エンジニア等のオペレータが実画像を確認しながらモデル粒子を抽出する場合について説明したが、図7に示すように、情報処理装置200が、実画像に写された粒子群の中からモデル粒子として抽出する粒子を判断する判断部25としての機能を備えていても良い。かかる判断部25の一例としては、実画像に写された粒子の例えば明度や輝度、形状、大きさ等の所定のパラメータを予め設定した閾値と比較することで、粒子群の中から1又は複数の粒子をモデル粒子となり得るものと判断する態様が挙げられる。
このような構成であれば、モデル粒子やモデル粒子情報の抽出を自動化することができ、解析アルゴリズムを作成するうえでの工数をさらに削減することができる。
【0062】
また、モデル粒子情報としては、実画像から抽出した情報に限らず、エンジニア等のオペレータが作成した情報であっても良い。この場合、モデル粒子取得部11は、オペレータが粒子解析用データ生成装置100に入力したモデル粒子情報を取得すれば良い。
【0063】
ユーザが要望する解析結果は前記実施形態で述べたものに限らず、例えば「粒子群に含まれる所定の粒径よりも大きい或いは小さい粒子の割合」、「長方形の粒子のアスペクト比」、「粒子の像であるか、異物の像であるか」、「粒子群の粒子径分布」などを挙げることができ、粒子解析用データ生成装置100としては、それぞれの要望に応じた生成条件を適宜入力できるように構成されていれば良い。
【0064】
また、生成条件としては、例えばMIE散乱理論や動的散乱理論に基づいて粒子径分布を算出する粒子径分布測定装置など、画像式粒子解析装置Xとは別の解析装置から得られた解析結果(測定結果)を用いても良い。具体的には、例えば粒子径分布測定装置により得られた粒子径分布データを生成条件として入力することで、仮想粒子生成部13が、入力された粒子径分布データの示す粒子径分布となるような仮想粒子群の仮想粒子画像データを生成するように構成されていても良い。
【0065】
さらに、仮想粒子生成部13としては、実画像に写された粒子群が、攪拌やブラウン運動などにより動いた場合の粒子像が流れた画像を含む仮想粒子群の仮想粒子画像データを生成するよう構成されていても良い。
【0066】
加えて、ラベル生成部14としては、必ずしも仮想粒子生成条件に基づいてラベルデータを生成する必要はなく、例えばオペレータ等のエンジニアが仮想粒子生成条件とは別に入力した情報に基づいてラベルデータを生成しても良い。
【0067】
また、粒子解析用データ生成装置100としては、図8に示すように、前記実施形態における情報処理装置200の一部又は全部の機能を備えたものであっても良い。
さらに、画像式粒子解析装置Xが、前記実施形態における情報処理装置200や粒子解析用データ生成装置100の一部又は全部の機能を備えたものであっても良い。具体的には、図9に示すように、画像式粒子解析装置Xが人工知能及びこれにより発揮される機械学習部17としての機能を備えており、この機械学習部17に粒子解析用データ生成装置100が生成した仮想画像データを入力しても良い。この場合、粒子解析用データ生成装置100は解析アルゴリズムを作成することなく、仮想画像データの生成にするものである。
【0068】
さらに、仮想粒子生成部13としては、モデル粒子のモデル粒子情報を用いることなく、生成条件受付部12が受け付けた生成条件を用いて仮想粒子画像データを生成しても良い。
【0069】
粒子解析用データ生成装置100は、機械学習により作成された複数の解析アルゴリズムをクラウド等に格納しておき、ユーザの画像式粒子解析装置Xにより撮像された実画像データの解析に用いる解析アルゴリズムを自動的に選択するように構成されていても良い。解析アルゴリズムの選択にあっては、現在の仮想画像生成条件と同じ又は類似した過去の仮想画像生成条件を検索・抽出し、その過去の仮想画像生成条件に対応する解析アルゴリズムを選択することができる。
【0070】
その他、本発明の趣旨に反しない限りにおいて様々な実施形態の変形や組み合わせを行っても構わない。
【符号の説明】
【0071】
X ・・・画像式粒子解析装置
100・・・粒子解析用データ生成装置
200・・・情報処理装置
11 ・・・モデル粒子取得部
12 ・・・生成条件受付部
13 ・・・仮想粒子生成部
14 ・・・ラベル生成部
15 ・・・対応付け部
16 ・・・仮想粒子格納部
17 ・・・機械学習部
21 ・・・実画像データ取得部
22 ・・・表示部
23 ・・・画像処理信号受付部
24 ・・・モデル粒子抽出部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9