(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023091187
(43)【公開日】2023-06-30
(54)【発明の名称】化合物の製造方法
(51)【国際特許分類】
C07D 495/14 20060101AFI20230623BHJP
C07D 513/22 20060101ALI20230623BHJP
【FI】
C07D495/14 A
C07D513/22
【審査請求】有
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021205800
(22)【出願日】2021-12-20
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2022-08-10
(71)【出願人】
【識別番号】000002093
【氏名又は名称】住友化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】阿部 柾律
【テーマコード(参考)】
4C071
4C072
【Fターム(参考)】
4C071AA01
4C071AA07
4C071BB02
4C071BB07
4C071CC23
4C071EE13
4C071FF23
4C071GG01
4C071KK08
4C071LL10
4C072AA01
4C072AA06
4C072BB04
4C072BB08
4C072CC04
4C072CC18
4C072EE12
4C072FF19
4C072GG01
4C072JJ02
4C072UU10
(57)【要約】 (修正有)
【課題】縮合環化合物を収率良く得られる製造方法を提供する。
【解決手段】化合物(I)と、水中でのpKaが-9以下であるブレンステッド酸とを反応させる工程を含む、縮合環化合物の製造方法。
(式中、環Ar
A及び環Ar
Bは、独立に、置換基を有していてもよい炭素環又は複素環を表す。R
rは、式(r1)で表される基又は式(r2)で表される基を表す。)
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(1)で表される化合物(I)と、水中でのpKaが-9以下であるブレンステッド酸とを反応させる工程を含む、式(2)で表される化合物(II)の製造方法。
【化1】
(式中、
環Ar
A及び環Ar
Bは、それぞれ独立に、炭素環又は複素環を表し、これらの環は置換基を有していてもよい。
R
rは、式(r1)で表される基又は式(r2)で表される基を表す。
【化2】
(式中、
R
1及びR
2は、それぞれ独立に、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、又は1価の複素環基を表し、これらの基は置換基を有していてもよい。
R
aは、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、シリル基、アルキルカルボニル基、又はシクロアルキルカルボニル基を表し、これらの基は置換基を有していてもよい。))
【化3】
(式中、
環Ar
C及び環Ar
Dは、それぞれ独立に、炭素環又は複素環を表し、これらの環は置換基を有していてもよい。
R
1及びR
2は、前記と同じ意味を表す。)
【請求項2】
化合物(I)が、式(1-1a)、式(1-1b)、式(1-2a)、又は式(1-2b)で表され、化合物(II)が、式(2-1)又は式(2-2)で表される、請求項1に記載の製造方法。
【化4】
(式中、
環Ar
A、環Ar
B、及びR
rは、前記と同じ意味を表す。複数存在する、環Ar
B及びR
rはそれぞれ、同一であっても互いに異なっていてもよい。)
【化5】
(式中、
環Ar
A、環Ar
B、R
1、及びR
2は、前記と同じ意味を表す。複数存在する、環Ar
B、R
1、及びR
2はそれぞれ、同一であっても互いに異なっていてもよい。)
【請求項3】
化合物(I)が、式(1-3)又は式(1-4)で表され、化合物(II)が、式(2-3)又は式(2-4)で表される、請求項1に記載の製造方法。
【化6】
(式中、
環Ar
A1は、炭素環又は複素環を表し、これらの環は置換基を有していてもよい。
環Ar
B及びR
rは、前記と同じ意味を表す。複数存在する、環Ar
B及びR
rはそれぞれ、同一であっても互いに異なっていてもよい。
X
1及びX
2は、それぞれ独立に、酸素原子、硫黄原子、又は-C(R
XA)=C(R
XB)-で表される基を表す。
Y
1及びY
2は、それぞれ独立に、酸素原子、硫黄原子、又は-C(R
YA)=で表される基を表す。
R
XA、R
XB及びR
YAは、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、又は、アリール基を表す。
nは、0又は1を表す。
ただし、
X
1が-C(R
XA)=C(R
XB)-で表される基であるとき、Y
1は酸素原子又は硫黄原子を表す。
X
2が-C(R
XA)=C(R
XB)-で表される基であるとき、Y
2は酸素原子又は硫黄原子を表す。
nが0であるとき、X
1及びX
2の少なくともいずれかが、酸素原子又は硫黄原子を表す。)
【化7】
(式中、
環Ar
A1、環Ar
B、X
1、X
2、Y
1、Y
2、R
1、R
2、及びnは、前記と同じ意味を表す。複数存在する、環Ar
B、R
1、及びR
2はそれぞれ、同一であっても互いに異なっていてもよい。)
【請求項4】
Y1及びY2が、それぞれ独立に、硫黄原子である、請求項3に記載の製造方法。
【請求項5】
Raが、水素原子又はアルキル基である、請求項1~4のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項6】
R1及びR2が、それぞれ独立に、アルキル基又はシクロアルキル基である、請求項1~5のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項7】
前記ブレンステッド酸が、トリフルオロメタンスルホン酸又はビストリフルオロメタンスルホニルイミドである、請求項1~6のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項8】
請求項1~7のいずれか一項に記載の製造方法により式(2)で表される化合物(II)を製造する工程を含む、式(3)で表される構成単位(III)を含む高分子化合物の製造方法。
【化8】
(式中、
環A
C、環A
D、R
1、及びR
2は、前記と同じ意味を表す。)
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、化合物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
縮合環化合物は、有機半導体材料又はその中間体として有用であり、その製造方法の開発が進められている。例えば特許文献1には、ルイス酸の存在下で特定の置換基を有する化合物を環化させる方法が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1の製造方法では、縮合環化合物の収率が低い場合があった。
【0005】
したがって、縮合環化合物を収率良く得られる製造方法が求められている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、前記課題を解決すべく鋭意研究を進めたところ、本発明を完成するに至った。
本発明は、以下を提供する。
【0007】
[1] 式(1)で表される化合物(I)と、水中でのpKaが-9以下であるブレンステッド酸とを反応させる工程を含む、式(2)で表される化合物(II)の製造方法。
【化1】
(式中、
環Ar
A及び環Ar
Bは、それぞれ独立に、炭素環又は複素環を表し、これらの環は置換基を有していてもよい。
R
rは、式(r1)で表される基又は式(r2)で表される基を表す。
【化2】
(式中、
R
1及びR
2は、それぞれ独立に、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、又は1価の複素環基を表し、これらの基は置換基を有していてもよい。
R
aは、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、シリル基、アルキルカルボニル基、又はシクロアルキルカルボニル基を表し、これらの基は置換基を有していてもよい。))
【化3】
(式中、
環Ar
C及び環Ar
Dは、それぞれ独立に、炭素環又は複素環を表し、これらの環は置換基を有していてもよい。
R
1及びR
2は、前記と同じ意味を表す。)
[2] 化合物(I)が、式(1-1a)、式(1-1b)、式(1-2a)、又は式(1-2b)で表され、化合物(II)が、式(2-1)又は式(2-2)で表される、[1]に記載の製造方法。
【化4】
(式中、
環Ar
A、環Ar
B、及びR
rは、前記と同じ意味を表す。複数存在する、環Ar
B及びR
rはそれぞれ、同一であっても互いに異なっていてもよい。)
【化5】
(式中、
環Ar
A、環Ar
B、R
1、及びR
2は、前記と同じ意味を表す。複数存在する、環Ar
B、R
1、及びR
2はそれぞれ、同一であっても互いに異なっていてもよい。)
[3] 化合物(I)が、式(1-3)又は式(1-4)で表され、化合物(II)が、式(2-3)又は式(2-4)で表される、[1]に記載の製造方法。
【化6】
(式中、
環Ar
A1は、炭素環又は複素環を表し、これらの環は置換基を有していてもよい。
環Ar
B及びR
rは、前記と同じ意味を表す。複数存在する、環Ar
B及びR
rはそれぞれ、同一であっても互いに異なっていてもよい。
X
1及びX
2は、それぞれ独立に、酸素原子、硫黄原子、又は-C(R
XA)=C(R
XB)-で表される基を表す。
Y
1及びY
2は、それぞれ独立に、酸素原子、硫黄原子、又は-C(R
YA)=で表される基を表す。
R
XA、R
XB及びR
YAは、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、又は、アリール基を表す。
nは、0又は1を表す。
ただし、
X
1が-C(R
XA)=C(R
XB)-で表される基であるとき、Y
1は酸素原子又は硫黄原子を表す。
X
2が-C(R
XA)=C(R
XB)-で表される基であるとき、Y
2は酸素原子又は硫黄原子を表す。
nが0であるとき、X
1及びX
2の少なくともいずれかが、酸素原子又は硫黄原子を表す。)
【化7】
(式中、
環Ar
A1、環Ar
B、X
1、X
2、Y
1、Y
2、R
1、R
2、及びnは、前記と同じ意味を表す。複数存在する、環Ar
B、R
1、及びR
2はそれぞれ、同一であっても互いに異なっていてもよい。)
[4] Y
1及びY
2が、それぞれ独立に、硫黄原子である、[3]に記載の製造方法。
[5] R
aが、水素原子又はアルキル基である、[1]~[4]のいずれか一項に記載の製造方法。
[6] R
1及びR
2が、それぞれ独立に、アルキル基又はシクロアルキル基である、[1]~[5]のいずれか一項に記載の製造方法。
[7] 前記ブレンステッド酸が、トリフルオロメタンスルホン酸又はビストリフルオロメタンスルホニルイミドである、[1]~[6]のいずれか一項に記載の製造方法。
[8] [1]~[7]のいずれか一項に記載の製造方法により式(2)で表される化合物(II)を製造する工程を含む、式(3)で表される構成単位(III)を含む高分子化合物の製造方法。
【化8】
(式中、
環A
C、環A
D、R
1、及びR
2は、前記と同じ意味を表す。)
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、縮合環化合物を収率良く得られる製造方法、及び当該縮合環化合物の製造方法を含む、高分子化合物の製造方法が提供されうる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
[1.共通する用語の説明]
本明細書において、「高分子化合物」とは、分子量分布を有し、ポリスチレン換算の数平均分子量が、1×103以上1×108以下である重合体を意味する。高分子化合物に含まれる構成単位は、合計100モル%である。
【0010】
本明細書において、「構成単位」とは、高分子化合物中に1個以上存在する単位を意味する。
【0011】
本明細書において、「水素原子」は、軽水素原子であっても、重水素原子であってもよい。
【0012】
本明細書において、「ハロゲン原子」の例としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、及びヨウ素原子が挙げられる。
【0013】
化学式中の「Et」は、エチル基を表す。
【0014】
本明細書において、「Cx~Cy」とは、その直後に記載される基の炭素原子数が、x個~y個であることを意味する。
【0015】
「置換基を有していてもよい」態様には、化合物又は基を構成するすべての水素原子が無置換の場合、及び1個以上の水素原子の一部又は全部が置換基によって置換されている場合の両方の態様が含まれる。
【0016】
別に断らない限り、言及される基が有する炭素原子数は、置換基の炭素原子数を含まない。
【0017】
「置換基」の例としては、アルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、シクロアルケニル基、アルキニル基、シクロアルキニル基、アルキルオキシ基、シクロアルキルオキシ基、アルキルチオ基、シクロアルキルチオ基、アリール基、1価の複素環基、ハロゲン原子、シリル基、アミノ基、ヒドロキシル基、ニトロ基、シアノ基、カルボキシル基、アルキルカルボニル基、シクロアルキルカルボニル基、アルキルオキシカルボニル基、及び、シクロアルキルオキシカルボニル基が挙げられる。
【0018】
「アルキル基」は、置換基を有していてもよい。アルキル基は、直鎖及び分岐のいずれであってもよい。アルキル基が有する炭素原子数は、置換基の炭素原子数を含めないで、好ましくは1~50、より好ましくは1~30、更に好ましくは1~20である。
【0019】
アルキル基の例としては、直鎖アルキル基(例、メチル基、エチル基、n-プロピル基、n-ブチル基、n-ペンチル基、n-ヘキシル基、n-オクチル基、n-デシル基、n-ドデシル基、n-テトラデシル基、n-ヘキサデシル基、n-オクタデシル基、n-イコシル基)、分岐アルキル基(例、イソプロピル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、2-エチルヘキシル基、2-エチルオクチル基、3,7-ジメチルオクチル基、2-オクチルデシル基)が挙げられる。
【0020】
アルキル基が有していてもよい置換基の例としては、シクロアルキル基、アルキルオキシ基、シクロアルキルオキシ基、アリール基、及びハロゲン原子が挙げられる。置換基を有するアルキル基の例としては、メトキシエチル基、アラルキル基(例、ベンジル基)、トリフルオロメチル基、及びパーフルオロヘキシル基が挙げられる。
【0021】
「シクロアルキル基」は、置換基を有していてもよい。シクロアルキル基は、単環及び多環のいずれであってもよい。シクロアルキル基の炭素原子数は、置換基の炭素原子数を含めないで、好ましくは3~50であり、より好ましくは3~30であり、更に好ましくは3~20である。
【0022】
シクロアルキル基の例としては、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、及びアダマンチル基が挙げられる。
【0023】
シクロアルキル基が有していてもよい置換基の例としては、アルキル基、シクロアルキル基、アルキルオキシ基、シクロアルキルオキシ基、アリール基、及びハロゲン原子が挙げられる。
【0024】
「アルケニル基」は、置換基を有していてもよい。アルケニル基は、直鎖及び分岐のいずれであってもよい。アルケニル基の炭素原子数は、置換基の炭素原子数を含めないで、好ましくは2~50、より好ましくは2~30、更に好ましくは2~20である。
【0025】
アルケニル基の例としては、ビニル基、1-プロペニル基、2-プロペニル基、1-ヘキセニル基、1-ドデセニル基、1-ヘキサデセニル基が挙げられる。
【0026】
アルケニル基が有していてもよい置換基の例としては、アリール基、ハロゲン原子、シリル基が挙げられる。
【0027】
「シクロアルケニル基」は、置換基を有していてもよい。シクロアルケニル基は、単環及び多環のいずれであってもよい。シクロアルケニル基の炭素原子数は、置換基の炭素原子数を含めないで、好ましくは3~50、より好ましくは3~30、更に好ましくは3~20である。
【0028】
シクロアルケニル基の例としては、1-シクロヘキセニル基が挙げられる。
【0029】
シクロアルケニル基が有していてもよい置換基の例としては、アリール基、ハロゲン原子、シリル基が挙げられる。
【0030】
「アルキニル基」は、置換基を有していてもよい。アルキニル基は、直鎖及び分岐のいずれであってもよい。アルキニル基が有する炭素原子数は、置換基の炭素原子数を含めないで、好ましくは2~50、より好ましくは2~30、更に好ましくは2~20である。
【0031】
アルキニル基の例としては、エチニル基、1-プロピニル基、1-ヘキシニル基、1-ドデシニル基、1-ヘキサデシニル基が挙げられる。
【0032】
アルキニル基が有していてもよい置換基の例としては、アリール基、ハロゲン原子、シリル基が挙げられる。
【0033】
「シクロアルキニル基」は、置換基を有していてもよい。シクロアルキニル基は、単環及び多環のいずれであってもよい。シクロアルキニル基の炭素原子数は、置換基の炭素原子数を含めないで、好ましくは3~50、より好ましくは3~30、更に好ましくは3~20である。
【0034】
シクロアルキニル基の例としては、1-シクロヘキシニル基が挙げられる。
【0035】
シクロアルキニル基が有していてもよい置換基の例としては、アリール基、ハロゲン原子、シリル基が挙げられる。
【0036】
「アルキルオキシ基」は、置換基を有していてもよい。アルキルオキシ基が有するアルキル基は、直鎖及び分岐のいずれであってもよい。アルキルオキシ基の炭素原子数は、置換基の炭素原子数を含めないで、好ましくは1~50、より好ましくは1~30、更に好ましくは1~20である。
【0037】
アルキルオキシ基の例としては、直鎖アルキルオキシ基(例、メトキシ基、エトキシ基、n-プロピルオキシ基、n-ブチルオキシ基、n-ヘキシルオキシ基、n-オクチルオキシ基、n-ドデシルオキシ基、n-ヘキサデシルオキシ基)、分岐アルキルオキシ基(例、イソプロピルオキシ基、イソブチルオキシ基、sec-ブチルオキシ基、tert-ブチルオキシ基、2-エチルヘキシルオキシ基、3,7-ジメチルオクチルオキシ基)が挙げられる。
【0038】
アルキルオキシ基が有していてもよい置換基の例としては、シクロアルキル基、アルキルオキシ基、シクロアルキルオキシ基、アリール基、及びハロゲン原子が挙げられる。
【0039】
「シクロアルキルオキシ基」は、置換基を有していてもよい。シクロアルキルオキシ基が有するシクロアルキル基は、単環及び多環のいずれであってもよい。シクロアルキルオキシ基の炭素原子数は、置換基の炭素原子数を含めないで、好ましくは3~50であり、より好ましくは3~30であり、更に好ましくは3~20である。
【0040】
シクロアルキルオキシ基の例としては、シクロペンチルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基、及びシクロヘプチルオキシ基が挙げられる。
【0041】
シクロアルキルオキシ基が有していてもよい置換基の例としては、アルキル基、シクロアルキル基、アルキルオキシ基、シクロアルキルオキシ基、アリール基、及びハロゲン原子が挙げられる。
【0042】
「アルキルチオ基」は、置換基を有していてもよい。アルキルチオ基が有するアルキル基は、直鎖及び分岐のいずれであってもよい。アルキルチオ基の炭素原子数は、置換基の炭素原子数を含めないで、好ましくは1~50、より好ましくは1~30、更に好ましくは1~20である。
【0043】
アルキルチオ基の例としては、直鎖アルキルチオ基(例、メチルチオ基、エチルチオ基、n-プロピルチオ基、n-ブチルチオ基、n-ヘキシルチオ基、n-オクチルチオ基、n-ドデシルチオ基、n-ヘキサデシルチオ基)及び分岐アルキルチオ基(イソプロピルチオ基、イソブチルチオ基、sec-ブチルチオ基、tert-ブチルチオ基、2-エチルヘキシルチオ基、3,7-ジメチルオクチルチオ基)が挙げられる。
【0044】
アルキルチオ基が有していてもよい置換基の例としては、シクロアルキル基、アルキルオキシ基、シクロアルキルオキシ基、アリール基、ハロゲン原子が挙げられる。
【0045】
「シクロアルキルチオ基」は、置換基を有していてもよい。シクロアルキルチオ基が有するシクロアルキル基は、単環及び多環のいずれであってもよい。シクロアルキルチオ基の炭素原子数は、置換基の炭素原子数を含めないで、好ましくは3~50であり、より好ましくは3~30であり、更に好ましくは3~20である。
【0046】
シクロアルキルチオ基の例としては、シクロペンチルチオ基、シクロヘキシルチオ基、及びシクロヘプチルチオ基が挙げられる。
【0047】
シクロアルキルチオ基が有していてもよい置換基の例としては、アルキル基、シクロアルキル基、アルキルオキシ基、シクロアルキルオキシ基、アリール基、ハロゲン原子が挙げられる。
【0048】
「アリール基」は、芳香族炭化水素から、環を構成する炭素原子に直接結合する水素原子1個を除いた残りの原子団を意味する。芳香族炭化水素には、縮合環を有する化合物、独立したベンゼン環及び縮合環からなる群から選ばれる2個以上が直接結合した化合物が含まれる。
【0049】
アリール基は、置換基を有していてもよい。アリール基の炭素原子数は、置換基の炭素原子数を含めないで、好ましくは6~50であり、より好ましくは6~30であり、更に好ましくは6~20である。
【0050】
アリール基の例としては、フェニル基、1-ナフチル基、2-ナフチル基、1-アントラセニル基、2-アントラセニル基、9-アントラセニル基、1-ピレニル基、2-ピレニル基、4-ピレニル基、2-フルオレニル基、3-フルオレニル基、4-フルオレニル基、4-フェニルフェニル基が挙げられる。
【0051】
アリール基が有していてもよい置換基の例としては、アルキル基、シクロアルキル基、アルキルオキシ基、シクロアルキルオキシ基、アルキルチオ基、シクロアルキルチオ基、アリール基、1価の複素環基、ハロゲン原子が挙げられる。
【0052】
置換基を有するアリール基の例としては、4-ヘキサデシルフェニル基、及び3,5-ジメトキシフェニル基、ペンタフルオロフェニル基が挙げられる。
【0053】
「1価の複素環基」は、複素環式化合物から、環を構成する炭素原子又はヘテロ原子に直接結合する水素原子1個を除いた残りの原子団を意味する。複素環式化合物には、縮合環を有する化合物、独立した複素環及び縮合環からなる群から選ばれる2個以上が直接結合した化合物が含まれる。
【0054】
1価の複素環基は、置換基を有していてもよい。1価の複素環基の炭素原子数は、置換基の炭素原子数を含めないで、好ましくは2~50であり、より好ましくは3~30であり、更に好ましくは3~20である。
【0055】
1価の複素環基の例としては、2-フリル基、3-フリル基、2-チエニル基、3-チエニル基、2-ピロリル基、3-ピロリル基、2-オキサゾリル基、2-チアゾリル基、2-イミダゾリル基、2-ピリジル基、3-ピリジル基、4-ピリジル基、2-ベンゾフリル基、2-ベンゾチエニル基、2-チエノチエニル基、4-(2,1,3-ベンゾチアジアゾリル)基が挙げられる。
【0056】
1価の複素環基が有していてもよい置換基の例としては、アルキル基、シクロアルキル基、アルキルオキシ基、シクロアルキルオキシ基、アルキルチオ基、シクロアルキルチオ基、アリール基、ハロゲン原子が挙げられる。
【0057】
置換基を有する1価の複素環基の例としては、5-オクチル-2-チエニル基、5-フェニル-2-フリル基が挙げられる。
【0058】
「ハロゲン原子」の例としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が挙げられる。
【0059】
「シリル基」は、置換基を有していてもよい。シリル基が有していてもよい置換基の例としては、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基が挙げられる。置換基を有するシリル基の例としては、トリメチルシリル基、トリエチルシリル基、トリイソプロピルシリル基、tert-ブチルジメチルシリル基、tert-ブチルジフェニルシリル基、トリフェニルシリル基が挙げられる。
【0060】
「アミノ基」は、置換基を有していてもよい。アミノ基が有していてもよい置換基の例としては、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基が挙げられる。置換基を有するアミノ基の例としては、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、ジイソプロピルアミノ基、ジフェニルアミノ基が挙げられる。
【0061】
「アルキルカルボニル基」は、置換基を有していてもよい。アルキルカルボニル基の炭素原子数は、置換基の炭素原子数を含めないで、好ましくは2~50であり、より好ましくは2~30であり、更に好ましくは2~20である。
【0062】
アルキルカルボニル基の例としては、前記アルキル基として例示した基とカルボニル基とが結合した基が挙げられる。アルキルカルボニル基の例としては、直鎖アルキルカルボニル基(例、アセチル基、n-プロパノイル基、n-ブタノイル基、n-ヘキサノイル基、n-オクタノイル基、n-ドデカノイル基、n-ヘキサデカノイル)、分岐アルキルカルボニル基(例、イソブチルカルボニル基、sec-ブチルカルボニル基、tert-ブチルカルボニル基、2-エチルヘキサノイル基)が挙げられる。
【0063】
「シクロアルキルカルボニル基」は、置換基を有していてもよい。シクロアルキルカルボニル基の炭素原子数は、置換基の炭素原子数を含めないで、好ましくは4~50であり、より好ましくは4~30であり、更に好ましくは4~20である。
【0064】
シクロアルキルカルボニル基の例としては、前記シクロアルキル基として例示した基とカルボニル基とが結合した基が挙げられる。シクロアルキルカルボニルの例としては、シクロペンチルカルボニル基、シクロヘキシルカルボニル基が挙げられる。
【0065】
「アルキルオキシカルボニル基」は、置換基を有していてもよい。アルキルオキシカルボニル基の炭素原子数は、置換基の炭素原子数を含めないで、好ましくは2~50であり、より好ましくは2~30であり、更に好ましくは2~20である。
【0066】
アルキルオキシカルボニル基の例としては、前記アルキルオキシ基として例示した基とカルボニル基とが結合した基が挙げられる。アルキルオキシカルボニル基の例としては、直鎖アルキルオキシカルボニル基(例、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、n-プロピルオキシカルボニル基、n-ブチルオキシカルボニル基、n-ヘキシルオキシカルボニル基、n-オクチルオキシカルボニル基、n-ドデシルオキシカルボニル基、n-ヘキサデシルオキシカルボニル基)、及び分岐アルキルオキシカルボニル基(例、イソプロピルオキシカルボニル基、イソブチルオキシカルボニル基、sec-ブチルオキシカルボニル基、tert-ブチルオキシカルボニル基、2-エチルヘキシルオキシカルボニル基)が挙げられる。
【0067】
「シクロアルキルオキシカルボニル基」は、置換基を有していてもよい。シクロアルキルオキシカルボニル基の炭素原子数は、置換基の炭素原子数を含めないで、好ましくは4~50であり、より好ましくは4~30であり、更に好ましくは4~20である。
【0068】
シクロアルキルオキシカルボニル基の例としては、前記シクロアルキルオキシ基として例示した基とカルボニル基とが結合した基が挙げられる。シクロアルキルオキシカルボニル基の例としては、シクロペンチルオキシカルボニル基、シクロヘキシルオキシカルボニル基が挙げられる。
【0069】
「ブレンステッド酸」とは、ブレンステッドの定義に従い、プロトンを供与する能力を有する酸を意味する。
【0070】
[2.化合物の製造方法の概要]
本発明の一実施形態に係る化合物(II)の製造方法は、式(1)で表される化合物(I)と、水中でのpKaが-9以下であるブレンステッド酸とを反応させる工程を含む。化合物(I)は、一種単独であってもよく、二種以上の組み合わせであってもよい。
【0071】
[2.1.化合物(I)及び化合物(II)]
化合物(I)は、下記式(1)で表される化合物である。
【0072】
【0073】
環ArA及び環ArBは、それぞれ独立に、炭素環又は複素環を表す。これらの環は置換基を有していてもよい。炭素環及び複素環はそれぞれ、単環であってもよく、縮合環であってもよい。
【0074】
炭素環の例としては、
シクロペンタジエン環、
ベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環、テトラセン環、ペンタセン環、クリセン環、フェナントレン環、フルオレン環、インデン環、及び、
これらの環が縮合した環が挙げられる。
【0075】
複素環とは、炭素原子及びヘテロ原子により構成されている環を意味する。ヘテロ原子の例としては、硫黄原子、窒素原子、酸素原子、セレン原子、及びケイ素原子が挙げられる。
【0076】
複素環の例としては、
チオフェン環、フラン環、ピロール環、セレノフェン環、
チアゾール環、オキサゾール環、イミダゾール環、セレナゾール環、
チアジアゾール環(例、2,1,3-チアジアゾール環)、オキサジアゾール環(例、2,1,3-オキサジアゾール環)、トリアゾール環(例、1,2,3-トリアゾール環)、セレナジアゾール環(例、2,1,3-セレナジアゾール環)、
ピリジン環、ピラン環、ピラジン環、ピリミジン環、
チエノチオフェン環、及びベンゾチオフェン環、並びに、
これらの複素環及び前記の炭素環からなる群から選択される2以上が縮合した環が挙げられる。
【0077】
炭素環及び複素環が有していてもよい置換基の例としては、アルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、シクロアルケニル基、アルキニル基、シクロアルキニル基、アルキルオキシ基、シクロアルキルオキシ基、アルキルチオ基、シクロアルキルチオ基、アリール基、1価の複素環基、ハロゲン原子、シリル基、アミノ基、ヒドロキシル基、ニトロ基、シアノ基、カルボキシル基、アルキルカルボニル基、シクロアルキルカルボニル基、アルキルオキシカルボニル基、シクロアルキルオキシカルボニル基が挙げられる。
【0078】
環ArAは、下記式(S1)で表される置換基を有していてもよい。環ArBは、後述する基Rrとアリール基とを有していてもよく、又は、基Rrと1価の複素環基とを有していてもよい。
【0079】
【0080】
式(S1)中、環ArBは前記と同じ意味を表す。環ArAが、式(S1)で表される置換基を有する場合、化合物(I)が有する複数の環ArBは、同一であっても互いに異なっていてもよく、好ましくは同一である。
【0081】
式(1)及び式(S1)中、Rrは、式(r1)で表される基又は式(r2)で表される基を表す。化合物(I)が、複数のRrを有する場合、複数のRrは同一であっても互いに異なっていてもよく、反応収率を向上させる観点から、好ましくは同一である。
【0082】
【0083】
R1及びR2は、それぞれ独立に、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、又は1価の複素環基を表し、これらの基は置換基を有していてもよい。式(r2)で表される基は、シス体及びトランス体のいずれであってもよい。
【0084】
R1及びR2は、それぞれ独立に、好ましくはアルキル基又はシクロアルキル基であり、より好ましくはアルキル基であり、更に好ましくは、C1~C20アルキル基である。
【0085】
Raは、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、シリル基、アルキルカルボニル基、又はシクロアルキルカルボニル基を表し、これらの基は置換基を有していてもよい。
【0086】
Raは、好ましくは水素原子、アルキル基、又はシクロアルキル基であり、より好ましくは水素原子又はアルキル基であり、更に好ましくはC1~C5アルキル基であり、特に好ましくはメチル基又はエチル基である。
【0087】
Rrは、好ましくは式(r1)で表される基であり、より好ましくはRaが水素原子又はアルキル基である式(r1)で表される基であり、更に好ましくはRaがメチル基又はエチル基である式(r1)で表される基である。
【0088】
化合物(I)を反応させることにより、式(2)で表される化合物(II)を製造しうる。
【0089】
【0090】
式(2)中、環ArC及び環ArDは、それぞれ独立に、炭素環又は複素環を表し、これらの環は置換基を有していてもよい。環ArCは、通常式(1)における環ArAに対応する。環ArDは、通常式(1)における環ArBに対応する。
R1及びR2は、前記と同じ意味を表す。
【0091】
一実施形態において、化合物(I)は、好ましくは、式(1-1a)で表される化合物(I-1a)又は式(1-1b)で表される化合物(I-1b)である。
【0092】
【0093】
式(1-1a)及び式(1-1b)中、環ArA、環ArB、及びRrは、前記と同じ意味を表す。複数存在する環ArB及びRrはそれぞれ、同一であっても互いに異なっていてもよい。
【0094】
式(1-1a)及び式(1-1b)中、複数存在する環ArBは、それぞれ独立して、好ましくはチオフェン環、チエノチオフェン環、チアゾール環、ベンゾチオフェン環又はベンゼン環であり、より好ましくはチオフェン環、又はチエノチオフェン環であり、更に好ましくは、同時に、チオフェン環又はチエノチオフェン環である。
【0095】
化合物(I-1a)又は化合物(I-1b)を反応させることにより、式(2-1)で表される化合物(II-1)を製造しうる。
【0096】
【0097】
式(2-1)中、環ArA、環ArB、R1、及びR2は、前記と同じ意味を表す。複数存在する、環ArB、R1、及びR2はそれぞれ、同一であっても互いに異なっていてもよい。
【0098】
化合物(I)又は化合物(I-1b)の好ましい例として、下記式で表される化合物が挙げられる。式中、Rrは前記と同じ意味を表す。複数存在するRrは、同一であっても互いに異なっていてもよく、好ましくは同一である。
【0099】
【0100】
別の実施形態において、化合物(I)は、好ましくは、式(1-2a)で表される化合物(I-2a)又は式(1-2b)で表される化合物(I-2b)である。
【0101】
【0102】
式(1-2a)及び式(1-2b)中、環ArA、環ArB、及びRrは、前記と同じ意味を表す。複数存在する、環ArB及びRrはそれぞれ、同一であっても互いに異なっていてもよい。
【0103】
化合物(I-2a)又は化合物(I-2b)を反応させることにより、式(2-2)で表される化合物(II-2)を製造しうる。
【0104】
【0105】
式(2-2)中、環ArA、環ArB、R1、及びR2は、前記と同じ意味を表す。複数存在する、環ArB、R1、及びR2はそれぞれ、同一であっても互いに異なっていてもよい。
【0106】
化合物(I)又は化合物(I-2b)の好ましい例として、下記式で表される化合物が挙げられる。式中、Rrは前記と同じ意味を表す。複数存在するRrは、同一であっても互いに異なっていてもよく、好ましくは同一である。Rは、置換基を表す。複数存在するRは、同一であっても、互いに異なっていてもよく、好ましくは同一である。複数存在するRは、独立に、好ましくはアルキル基、シクロアルキル基、又はアリール基であり、より好ましくはアルキル基であり、更に好ましくは同時にアルキル基である。
【0107】
【0108】
【0109】
化合物(I)は、より好ましくは、式(1-3)で表される化合物(I-3)又は式(1-4)で表される化合物(I-4)である。
【0110】
【0111】
式(1-3)及び式(1-4)中、環ArA1は、炭素環又は複素環を表し、これらの環は置換基を有していてもよい。
【0112】
環ArB及びRrは、前記と同じ意味を表す。複数存在する、環ArB及びRrはそれぞれ、同一であっても互いに異なっていてもよい。
式(1-3)及び式(1-4)中、複数存在する環ArBは、それぞれ独立して、好ましくはチオフェン環、チエノチオフェン環、チアゾール環、ベンゾチオフェン環、又はベンゼン環であり、より好ましくはチオフェン環、又はチエノチオフェン環であり、更に好ましくは、同時に、チオフェン環又はチエノチオフェン環である。
【0113】
X1及びX2は、それぞれ独立に、酸素原子、硫黄原子、又は-C(RXA)=C(RXB)-で表される基を表し、好ましくは硫黄原子又は-C(RXA)=C(RXB)-で表される基である。
Y1及びY2は、それぞれ独立に、酸素原子、硫黄原子、又は-C(RYA)=で表される基を表し、好ましくは硫黄原子又は-C(RYA)=で表される基である。
RXA、RXB及びRYAは、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、又はアリール基を表し、好ましくは水素原子又はアルキル基であり、より好ましくは水素原子である。
nは、0又は1を表す。
ただし、
X1が-C(RXA)=C(RXB)-で表される基であるとき、Y1は酸素原子又は硫黄原子を表し、好ましくは硫黄原子である。
X2が-C(RXA)=C(RXB)-で表される基であるとき、Y2は酸素原子又は硫黄原子を表し、好ましくは硫黄原子である。
nが0であるとき、X1及びX2の少なくともいずれかが、酸素原子又は硫黄原子を表し、好ましくは硫黄原子である。
【0114】
化合物(I-3)を反応させることにより、式(2-3)で表される化合物(II-3)を製造しうる。化合物(I-4)を反応させることにより、式(2-4)で表される化合物(II-4)を製造しうる。
【0115】
【0116】
式(2-3)及び式(2-4)中、環ArA1、環ArB、X1、X2、Y1、Y2、R1、R2、及びnは、前記と同じ意味を表す。複数存在する、環ArB、R1、及びR2はそれぞれ、同一であっても互いに異なっていてもよい。
【0117】
化合物(I)又は化合物(I-1a)の好ましい例として、下記式で表される化合物が挙げられる。式中、Rrは前記と同じ意味を表す。複数存在するRrは、同一であっても互いに異なっていてもよく、好ましくは同一である。Rは、置換基を表す。複数存在するRは、同一であっても、互いに異なっていてもよく、好ましくは同一である。複数存在するRは、独立に、好ましくはアルキル基、シクロアルキル基、又はアリール基であり、より好ましくはアルキル基であり、更に好ましくは同時にアルキル基である。
【0118】
【0119】
【0120】
【0121】
【0122】
【0123】
化合物(I)又は化合物(I-2a)の好ましい例として、下記式で表される化合物が挙げられる。式中、Rrは前記と同じ意味を表す。複数存在するRrは、同一であっても互いに異なっていてもよく、好ましくは同一である。Rは、置換基を表す。複数存在するRは、同一であっても、互いに異なっていてもよく、好ましくは同一である。複数存在するRは、独立に、好ましくはアルキル基、シクロアルキル基、又はアリール基であり、より好ましくはアルキル基であり、更に好ましくは同時にアルキル基である。
【0124】
【0125】
【0126】
【0127】
【0128】
【0129】
化合物(I)のさらに好ましい例として、下記の化合物が挙げられる。
【0130】
【0131】
化合物(I)は、公知の方法(例えば、国際公開第2016/013460号に記載の方法)を用いて製造しうる。化合物(I)は、例えば、式(M1)で表される化合物と、式(M2)で表される化合物とを、Suzukiカップリングを用いて反応させることにより製造しうる。式(M1)中、Halはハロゲン原子(好ましくは臭素原子)を表し、M1は、ホウ酸残基又はホウ酸エステル残基を表す。環ArA、環ArB及びRrは、前記と同じ意味を表す。
【0132】
【0133】
[2.2.ブレンステッド酸]
本実施形態の化合物(II)の製造方法では、水中でのpKaが-9以下であるブレンステッド酸を化合物(I)と反応させる。以下、水中でのpKaが-9以下であるブレンステッド酸を、ブレンステッド酸(BA)ともいう。以下、ブレンステッド酸について示すKa値は、水中での値を示す。
【0134】
ブレンステッド酸の、水中でのpKaは、「J.Phys.Chem.A.120(2016)3663-3669」に記載の方法に従い、コンピュータを用いた計算によって求めることができる。
【0135】
ブレンステッド酸(BA)の水中でのpKaは、通常-9以下、好ましくは-10以下、より好ましくは-12以下、更に好ましくは-14以下である。ブレンステッド酸(BA)のpKaは、通常-16以上である。
【0136】
本実施形態の製造方法では、一種単独のブレンステッド酸(BA)を化合物(I)と反応させてもよく、二種以上の組み合わせのブレンステッド酸(BA)を化合物(I)と反応させてもよい。
【0137】
ブレンステッド酸(BA)を化合物(I)と反応させることにより、化合物(I)から化合物(II)を収率良く製造しうる。また、通常は、化合物(I)から化合物(II)を短い反応時間で製造しうる。
【0138】
ブレンステッド酸(BA)の例としては、トリフルオロメタンスルホン酸(pKa=-14)、ビストリフルオロメタンスルホニルイミド(pKa=-10)、ヨウ化水素(pKa=-10)、臭化水素(pKa=-9)、過塩素酸(pka=-15)が挙げられ、好ましくはトリフルオロメタンスルホン酸又はビストリフルオロメタンスルホニルイミドであり、より好ましくはトリフルオロメタンスルホン酸である。
【0139】
化合物(II)の製造方法では、反応系中の成分(例、水、アルコール)と反応してブレンステッド酸(BA)を発生し得るものも用いることができる。
【0140】
上記化合物の例として、トリフルオロメタンスルホン酸トリメチルシリル、トリフルオロメタンスルホン酸無水物、トリフルオロメタンスルホン酸塩、ビストリフルオロメタンスルホン酸トリメチルシリル、ビストリフルオロメタンスルホン酸無水物、ビストリフルオロメタンスルホン酸塩が挙げられる。
【0141】
化合物(II)の製造方法において、ブレンステッド酸(BA)の使用量は、化合物(I)のモル数に対して、好ましくは0.1当量以上、より好ましくは1当量以上、更に好ましくは5当量以上であり、好ましくは60当量以下、より好ましくは50当量以下、更に好ましくは40当量以下である。
【0142】
[2.3.反応条件]
化合物(I)とブレンステッド酸(BA)とを反応させる工程は、好ましくは溶媒中で行う。
【0143】
反応溶媒の例としては、脂肪族又は脂環式炭化水素溶媒(例、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、シクロヘキサン)、芳香族炭化水素溶媒(例、ベンゼン、トルエン、エチルベンゼン、キシレン)、ハロゲン化炭化水素溶媒(例、ジクロロメタン、1,1-ジクロロエタン、1,2-ジクロロエタン、クロロホルム、四塩化炭素、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン、フルオロベンゼン、トリフルオロベンゼン、塩化トルエン)、アルコール溶媒(例、メタノール、エタノール、1-プロパノール、2-プロパノール、1-ブタノール、2-ブタノール、トリフルオロエタノール、ヘキサフルオロ-2-プロパノール)、カルボン酸溶媒(例、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、トリフルオロ酢酸)、水、及びこれらの混合溶媒が挙げられ、好ましくは芳香族炭化水素溶媒及びハロゲン化炭化水素溶媒である。
【0144】
反応溶媒の量は、反応溶媒に対する化合物(I)の溶解性に応じて適宜決定されうる。例えば、化合物(I)1gに対して、好ましくは0.005L以上、より好ましくは0.01L以上、更に好ましくは0.02L以上であり、好ましくは1L以下、より好ましくは0.5L以下、更に好ましくは0.1L以下である。
【0145】
化合物(I)とブレンステッド酸(BA)とを反応させる工程の反応温度は、好ましくは0℃以上、より好ましくは10℃以上、更に好ましくは20℃以上であり、好ましくは100℃以下、より好ましくは80℃以下、更に好ましくは60℃以下である。
【0146】
化合物(I)とブレンステッド酸(BA)とを反応させる工程の反応時間は、化合物(I)の濃度、ブレンステッド酸(BA)の濃度、化合物(II)の濃度、反応温度などに応じて、適宜決定されうる。例えば、反応終了時は、i)化合物(I)が反応系中消失した時、ii)化合物(I)が反応系中所定の濃度まで減少した時、iii)化合物(II)が反応系中所定の濃度に達した時、及び/又は、iv)化合物(II)の反応系中の濃度が、変化しなくなった時としてもよい。
【0147】
反応系中の化合物(I)及び化合物(II)の濃度は、液体クロマトグラフィー及び/又はガスクロマトグラフィーによる分析により決定しうる。
【0148】
化合物(I)とブレンステッド酸(BA)とを反応させる工程では、通常、化合物(I)とブレンステッド酸(BA)とを接触させる。かかる反応工程では、化合物(I)は、単離された化合物(I)として、反応系中に添加されてもよく、未単離の化合物(I)として反応系中に添加されてもよい。また、反応系中で、化合物(I)を生成させて、ブレンステッド酸(BA)と反応させてもよい。ブレンステッド酸(BA)は、単離された化合物として、反応系中に添加されてもよく、未単離の化合物として反応系中に添加されてもよい。また、反応系中で、ブレンステッド酸(BA)を生成させて、化合物(I)と反応させてもよい。
【0149】
例えば、反応時間は、好ましくは0.5時間以上であり、好ましくは24時間以下、より好ましくは10時間以下、更に好ましくは5時間以下である。
【0150】
[2.4.任意の工程]
本実施形態の化合物(II)の製造方法は、前記の化合物(I)とブレンステッド酸(BA)とを反応させる工程に加えて、任意の工程を含みうる。任意の工程の例としては、化合物(II)を、反応生成物から単離する工程が挙げられる。
【0151】
前記の化合物(I)とブレンステッド酸(BA)とを反応させる工程の後、公知の方法により後処理する工程を行いうる。後処理の工程は、例えば、反応混合物から化合物(II)を溶媒により抽出する工程、化合物(II)と溶媒とを含む組成物から、溶媒を留去する工程、化合物(II)を精製する工程が挙げられる。化合物(II)を精製する方法としては、任意の方法を採用することができ、例えば、カラムクロマトグラフィー、再結晶が挙げられる。
【0152】
また別の任意の工程の例としては、化合物(I)の前駆体から、化合物(I)を生成する工程及びブレンステッド酸(BA)の前駆体からブレンステッド酸(BA)を生成する工程が挙げられる。これらの工程はそれぞれ、前記の化合物(I)とブレンステッド酸(BA)とを反応させる工程と同時に行ってもよく、前記の化合物(I)とブレンステッド酸(BA)とを反応させる工程の前に行ってもよい。
【0153】
前記の化合物(II)は、有機トランジスタ素子、有機光電変換素子(例えば、太陽電池、光検出素子)、有機エレクトロルミネッセンス素子などの材料又は当該材料の中間体として有用である。
前記の化合物(II)を光電変換素子に適用する場合には、活性層の材料として用いることができ、例えば、溶媒、他の有機半導体材料(p型半導体材料)と組み合わせてインク組成物を調製し、インク組成物を用いて塗布法によりバルクヘテロ接合型の活性層を形成して、光電変換素子を製造できる。
【0154】
[3.式(3)で表される構成単位(III)を含む高分子化合物の製造方法]
式(2)で表される化合物(II)は、式(3)で表される構成単位(III)を含む高分子化合物の、中間体として有用である。
【0155】
【0156】
式(3)中、環AC、環AD、R1、及びR2は、前記と同じ意味を表す。
【0157】
本発明の一実施形態に係る、構成単位(III)を含む高分子化合物(以下、高分子化合物(P)ともいう。)の製造方法は、化合物(I)と、ブレンステッド酸(BA)とを反応させる工程を含む前記の製造方法により化合物(II)を製造する工程を含む。
【0158】
高分子化合物(P)の製造方法は、化合物(II)から高分子化合物(P)を製造する工程を含みうる。化合物(II)から高分子化合物(P)を製造する方法としては、任意の方法を採用しうる。
【0159】
化合物(II)から高分子化合物(P)を製造する工程は、例えば下記工程を含みうる。
・化合物(II)とハロゲン化剤とを反応させて、化合物(II)のハロゲン置換体(置換体H)を製造する工程。
・得られた化合物(II)のハロゲン置換体から、化合物(II)のホウ酸残基置換体又はホウ酸エステル残基置換体(置換体B)を製造する工程。
・置換体(H)及び置換体(B)をカップリング反応させて、高分子化合物(P)を製造する工程。カップリング反応としては、例えばSuzuki反応などの、公知のカップリング反応の条件を用いうる。
【0160】
高分子化合物(P)は、有機トランジスタ素子、有機光電変換素子(例えば、太陽電池、光検出素子)、有機エレクトロルミネッセンス素子などの材料として有用である。
【実施例0161】
以下、実施例を示して本発明について具体的に説明する。ただし、本発明は以下に示す実施例に限定されるものではない。
【0162】
以下の説明において、量を表す「%」及び「部」は、別に断らない限り、重量基準である。また、以下に説明する操作は、別に断らない限り、常温(20℃±15℃)及び常圧(1atm)の条件において行った。
【0163】
ブレンステッド酸の、水中でのpKaは、「J.Phys.Chem.A.120(2016)3663-3669」に記載の方法に従い、コンピュータを用いた計算によって求めた値である。
【0164】
[分析機器]
高速液体クロマトグラフィー分析は、島津製作所製高速液体クロマトグラフィー装置(型番:LC20AD)を用いて行った。
高速液体クロマトグラフィーにより、反応出発物質(化合物(I))の含有率及び反応生成物の含有率を経時的に分析し、反応出発物質が消失しかつ反応生成物の含有率が変化しなくなった場合に、反応の変化が収束(反応が終了)したと判断した。
【0165】
[比較例1]
比較例1では、下記の反応を行った。
【0166】
【0167】
(反応溶液-C1の調製)
反応容器内を窒素ガス雰囲気とした後、反応容器内に、国際公開第2016/013460号に記載の方法で合成した化合物1(0.6g、0.44mmol)及び乾燥塩化メチレン(10mL)を加えた。その後、そこへ、1Mの三臭化ホウ素の塩化メチレン溶液(3.6mL、3.5mmol)を0℃で加え、室温(25℃)まで昇温させた後に反応の変化が収束するまで攪拌して反応液-C1を得た。
【0168】
(サンプル-C1の調製)
パスツールピペットを用いて反応液-C1を少量採取し、水に滴下した後に、有機物をクロロホルムで抽出してサンプル-C1を得た。
【0169】
(LC分析)
得られたサンプル-C1を高速液体クロマトグラフィーによって分析し、化合物2の面積百分率から反応収率を導いた。
【0170】
[比較例2]
(反応溶液-C2の調製)
反応容器内を窒素ガス雰囲気とした後、反応容器内に、化合物1(0.03g、0.02mmol)及び乾燥トルエン(3mL)を加えた。その後、そこへ、濃硫酸(水中でのpKa:-3)(0.09g、0.9mmol)を0℃で加え、室温(25℃)まで昇温させた後に反応の変化が収束するまで攪拌して反応液-C2を得た。
【0171】
(サンプル-C2の調製)
パスツールピペットを用いて反応液-C2を少量採取し、水に滴下した後に、有機物をクロロホルムで抽出してサンプル-C2を得た。
【0172】
(LC分析)
得られたサンプル-C2を高速液体クロマトグラフィーによって分析したところ化合物2の存在は確認されず、化合物5が生成していた。
【0173】
【0174】
[実施例1]
(反応溶液の調製)
反応容器内を窒素ガス雰囲気とした後、化合物1(0.03g、0.02mmol)及び乾燥トルエン(3mL)を加えた。その後、そこへ、トリフルオロメタンスルホン酸(0.01mL、0.11mmol、水中でのpKa:-14)を0℃で加え、室温(25℃)まで昇温させた後に反応の変化が収束するまで攪拌して反応液-1を得た。
【0175】
(サンプルの調製)
パスツールピペットを用いて反応液-1を少量採取し、水に滴下した後に、有機物をクロロホルムで抽出してサンプル-1を得た。
【0176】
(LC分析)
得られたサンプル-1を高速液体クロマトグラフィーによって分析し、化合物2の面積百分率から反応収率を導いた。
【0177】
[実施例2]
(反応溶液の調製)
トリフルオロメタンスルホン酸を(0.08mL、0.88mmol)使用した以外は実施例1の条件と同様に行い反応液-2を得た。
【0178】
(サンプルの調製)
反応液-2を使用した以外は実施例1と同様の方法でサンプル-2を得た。
【0179】
(LC分析)
サンプル-2を用いた以外は実施例1と同様の方法で反応収率を導いた。
【0180】
[実施例3]
実施例3では、下記の反応を行った。
【0181】
【0182】
(反応溶液の調製)
反応容器内を窒素ガス雰囲気とした後、化合物3(0.36g、0.2mmol)及び乾燥トルエン(23mL)を加えた。その後、そこへ、トリフルオロメタンスルホン酸(0.8mL、8.0mmol)を0℃で加え、室温(25℃)まで昇温させた後に反応の変化が収束するまで攪拌して反応液-3を得た。
【0183】
(サンプルの調製)
反応液-3を使用した以外は実施例1と同様の方法でサンプル-3を得た。
【0184】
(LC分析)
サンプル-3を用いた以外は実施例1と同様の方法で反応収率を導いた。
【0185】
[実施例4]
実施例4では、下記の反応を行った。
【0186】
【0187】
(反応溶液の調製)
反応容器内を窒素ガス雰囲気とした後、化合物5(0.1g、0.07mmol)及び乾燥トルエン(10mL)を加えた。その後、そこへ、トリフルオロメタンスルホン酸(0.24mL、0.29mmol)を0℃で加え、室温(25℃)まで昇温させた後に反応の変化が収束するまで攪拌して反応液-4を得た。
【0188】
(サンプルの調製)
反応液-4を使用した以外は実施例1と同様の方法でサンプル-4を得た。
【0189】
(LC分析)
サンプル-4を用いた以外は実施例1と同様の方法で反応収率を導いた。
【0190】
[結果]
比較例1、2、及び実施例1~4の反応収束に要した時間及び反応収率を表1に示す。
【0191】
【0192】
実施例1~2では、化合物1から化合物2を、比較例1よりも短時間で収率良く製造している。水中でのpKaが-9を超えるブレンステッド酸を用いた比較例2では、目的とする化合物2は得られなかった。また、実施例3では化合物3から化合物4を、短時間かつ高い収率で製造している。実施例4では、化合物5から化合物2を、短時間かつ高い収率で製造している。