(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023091267
(43)【公開日】2023-06-30
(54)【発明の名称】偏光板及び偏光板用接着剤組成物
(51)【国際特許分類】
G02B 5/30 20060101AFI20230623BHJP
C09J 201/06 20060101ALI20230623BHJP
C09J 11/06 20060101ALI20230623BHJP
【FI】
G02B5/30
C09J201/06
C09J11/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021205925
(22)【出願日】2021-12-20
(71)【出願人】
【識別番号】000002093
【氏名又は名称】住友化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】一宮 宜也
(72)【発明者】
【氏名】安井 未央
【テーマコード(参考)】
2H149
4J040
【Fターム(参考)】
2H149AA02
2H149AA18
2H149AB19
2H149BA02
2H149BA12
2H149CA02
2H149EA12
2H149EA22
2H149FA03W
2H149FA05X
2H149FA08X
2H149FA68
2H149FD25
4J040EC021
4J040EC061
4J040EC081
4J040GA11
4J040HD13
4J040JA02
4J040JB08
4J040KA13
4J040KA16
4J040MA10
4J040MB03
4J040MB09
4J040NA17
4J040NA19
(57)【要約】
【課題】硬化収縮力が低減された偏光板用接着剤組成物及びこれを用いた偏光板を提供する。
【解決手段】偏光板は、偏光子、接着剤層、及び保護フィルムがこの順に積層されている。接着剤層は、接着剤組成物の硬化物層である。接着剤組成物は、硬化性成分及び光カチオン重合開始剤(D)を含む。硬化性成分は、エポキシ当量が100g/eq以上155g/eq以下である第1芳香族エポキシ化合物(A)と、エポキシ当量が155g/eqよりも大きく1000g/eq以下である第2芳香族エポキシ化合物(B)と、分子内に少なくとも1つのオキセタニル基を有するオキセタン化合物(C)と、を含む。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
偏光子、接着剤層、及び保護フィルムがこの順に積層された偏光板であって、
前記接着剤層は、接着剤組成物の硬化物層であり、
前記接着剤組成物は、硬化性成分及び光カチオン重合開始剤(D)を含み、
前記硬化性成分は、エポキシ当量が100g/eq以上155g/eq以下である第1芳香族エポキシ化合物(A)と、エポキシ当量が155g/eqよりも大きく1000g/eq以下である第2芳香族エポキシ化合物(B)と、分子内に少なくとも1つのオキセタニル基を有するオキセタン化合物(C)と、を含む、偏光板。
【請求項2】
前記接着剤組成物において、
前記第1芳香族エポキシ化合物(A)の含有量は、前記硬化性成分の合計量100質量%中、5.0質量%以上40.0質量%以下であり、
前記第2芳香族エポキシ化合物(B)の含有量は、前記硬化性成分の合計量100質量%中、20.0質量%以上60.0質量%以下であり、
前記オキセタン化合物(C)の含有量は、前記硬化性成分の合計量100質量%中、5.0質量%以上60.0質量%以下であり、
前記光カチオン重合開始剤(D)の含有量は、前記硬化性成分の合計量100質量%に対して0.5質量%以上10.0質量%以下である、請求項1に記載の偏光板。
【請求項3】
前記第2芳香族エポキシ化合物(B)は、ビスフェノールA型エポキシ化合物及びビスフェノールF型エポキシ化合物のうちの少なくとも一方である、請求項1又は2に記載の偏光板。
【請求項4】
前記オキセタン化合物(C)は、分子内のオキセタニル基が1つである単官能オキセタン化合物を含む、請求項1~3のいずれか1項に記載の偏光板。
【請求項5】
前記オキセタン化合物(C)は、3-[(ベンジルオキシ)メチル]-3-エチルオキセタンを含み、
前記3-[(ベンジルオキシ)メチル]-3-エチルオキセタンの含有量は、前記硬化性成分の合計量100質量%中、5.0質量%以上40.0質量%以下である、請求項1~4のいずれか1項に記載の偏光板。
【請求項6】
前記硬化性成分は、さらに脂環式エポキシ化合物(E)を含む、請求項1~5のいずれか1項に記載の偏光板。
【請求項7】
前記偏光子は、二色性色素が吸着配向しているポリビニルアルコール系樹脂フィルムである、請求項1~6のいずれか1項に記載の偏光板。
【請求項8】
前記保護フィルムは、(メタ)アクリル系樹脂フィルムである、請求項1~7のいずれか1項に記載の偏光板。
【請求項9】
硬化性成分及び光カチオン重合開始剤(D)を含み、
前記硬化性成分は、エポキシ当量が100g/eq以上155g/eq以下である第1芳香族エポキシ化合物(A)と、エポキシ当量が155g/eqよりも大きく1000g/eq以下である第2芳香族エポキシ化合物(B)と、分子内に少なくとも1つのオキセタニル基を有するオキセタン化合物(C)と、を含む、偏光板用接着剤組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、偏光板及び偏光板用接着剤組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶表示装置及び有機EL表示装置等の表示装置には、偏光板が用いられている。偏光板は、偏光子の片面又は両面に、熱可塑性樹脂フィルム等の保護フィルムが積層された構造を有する。偏光子と保護フィルムとは通常、接着剤を用いて貼合され、このような接着剤として硬化性接着剤組成物が知られている(例えば、特許文献1、2等)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2011-236389号公報
【特許文献2】特許第5446902号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
硬化性接着剤組成物を用いて偏光子と保護フィルムとを貼合して得られた偏光板に、反りが発生する場合があることが見出された。偏光板に発生する反りは、取扱い性の低下を招来したり、表示装置に適用した場合に偏光板が剥離する等の不具合を引き起こしたりする虞がある。本発明者らは、硬化性接着剤組成物が硬化時に大きく収縮すると、硬化性接着剤組成物の硬化収縮力が大きくなり、偏光板に反りが発生しやすいことを見出した。
【0005】
本発明は、硬化収縮力が低減された偏光板用接着剤組成物及びこれを用いた偏光板の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、以下の偏光板及び偏光板用接着剤組成物を提供する。
〔1〕 偏光子、接着剤層、及び保護フィルムがこの順に積層された偏光板であって、
前記接着剤層は、接着剤組成物の硬化物層であり、
前記接着剤組成物は、硬化性成分及び光カチオン重合開始剤(D)を含み、
前記硬化性成分は、エポキシ当量が100g/eq以上155g/eq以下である第1芳香族エポキシ化合物(A)と、エポキシ当量が155g/eqよりも大きく1000g/eq以下である第2芳香族エポキシ化合物(B)と、分子内に少なくとも1つのオキセタニル基を有するオキセタン化合物(C)と、を含む、偏光板。
〔2〕 前記接着剤組成物において、
前記第1芳香族エポキシ化合物(A)の含有量は、前記硬化性成分の合計量100質量%中、5.0質量%以上40.0質量%以下であり、
前記第2芳香族エポキシ化合物(B)の含有量は、前記硬化性成分の合計量100質量%中、20.0質量%以上60.0質量%以下であり、
前記オキセタン化合物(C)の含有量は、前記硬化性成分の合計量100質量%中、5.0質量%以上60.0質量%以下であり、
前記光カチオン重合開始剤(D)の含有量は、前記硬化性成分の合計量100質量%に対して0.5質量%以上10.0質量%以下である、〔1〕に記載の偏光板。
〔3〕 前記第2芳香族エポキシ化合物(B)は、ビスフェノールA型エポキシ化合物及びビスフェノールF型エポキシ化合物のうちの少なくとも一方である、〔1〕又は〔2〕に記載の偏光板。
〔4〕 前記オキセタン化合物(C)は、分子内のオキセタニル基が1つである単官能オキセタン化合物を含む、〔1〕~〔3〕のいずれかに記載の偏光板。
〔5〕 前記オキセタン化合物(C)は、3-[(ベンジルオキシ)メチル]-3-エチルオキセタンを含み、
前記3-[(ベンジルオキシ)メチル]-3-エチルオキセタンの含有量は、前記硬化性成分の合計量100質量%中、5.0質量%以上40.0質量%以下である、〔1〕~〔4〕のいずれかに記載の偏光板。
〔6〕 前記硬化性成分は、さらに脂環式エポキシ化合物(E)を含む、〔1〕~〔5〕のいずれかに記載の偏光板。
〔7〕 前記偏光子は、二色性色素が吸着配向しているポリビニルアルコール系樹脂フィルムである、〔1〕~〔6〕のいずれかに記載の偏光板。
〔8〕 前記保護フィルムは、(メタ)アクリル系樹脂フィルムである、〔1〕~〔7〕のいずれかに記載の偏光板。
〔9〕 硬化性成分及び光カチオン重合開始剤(D)を含み、
前記硬化性成分は、エポキシ当量が100g/eq以上155g/eq以下である第1芳香族エポキシ化合物(A)と、エポキシ当量が155g/eqよりも大きく1000g/eq以下である第2芳香族エポキシ化合物(B)と、分子内に少なくとも1つのオキセタニル基を有するオキセタン化合物(C)と、を含む、偏光板用接着剤組成物。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、硬化収縮力が低減された偏光板用接着剤組成物及びこれを用いた偏光板を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の一実施形態に係る偏光板を模式的に示す概略断面図である。
【
図2】本発明の他の一実施形態に係る偏光板を模式的に示す概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照しつつ本発明の実施形態を説明するが、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。
【0010】
(偏光板)
図1及び
図2は、本発明の一実施形態に係る偏光板を模式的に示す概略断面図である。本実施形態の偏光板1,2は、
図1及び
図2に示すように、偏光子10、第1接着剤層15(接着剤層)、及び第1保護フィルム11(保護フィルム)がこの順に積層されている。偏光子10と第1接着剤層15とは直接接していることが好ましい。第1接着剤層15と第1保護フィルム11とは直接接していることが好ましい。
【0011】
本実施形態の偏光板は、
図2に示す偏光板2のように、偏光子10の第1接着剤層15側とは反対側に、第2接着剤層25及び第2保護フィルム21がこの順に積層されていてもよい。偏光子10と第2接着剤層25とは直接接していることが好ましい。第2接着剤層25と第2保護フィルム21とは直接接していることが好ましい。
【0012】
偏光板は、表示装置に適用することができる。表示装置としては、液晶表示装置及び有機EL表示装置等が挙げられる。表示装置は、スマートフォンやタブレット等の携帯端末であってもよく、テレビ、デジタルフォトフレーム、電子看板、測定器や計器類、事務用機器、医療機器、電算機器等であってもよい。
【0013】
(第1接着剤層)
第1接着剤層15は、接着剤組成物の硬化物層である。接着剤組成物は、偏光子10と第1保護フィルム11とを貼合する第1接着剤層15を形成するための偏光板用接着剤組成物であり、硬化性成分及び光カチオン重合開始剤(D)を含む。硬化性成分は、エポキシ当量が100g/eq以上155g/eq以下である第1芳香族エポキシ化合物(A)と、エポキシ当量が155g/eqよりも大きく1000g/eq以下である第2芳香族エポキシ化合物(B)と、分子内に少なくとも1つのオキセタニル基を有するオキセタン化合物(C)と、を含む。
【0014】
偏光板は、偏光子10と第1保護フィルム11とを上記の接着剤組成物を介して積層し、接着剤組成物を硬化させて第1接着剤層15を形成することによって得ることができる。上記の組成の接着剤組成物を用いて第1接着剤層15を形成することにより、接着剤組成物の硬化時の収縮を抑制でき、接着剤組成物が硬化する際に発生する収縮力である硬化収縮力を低減することができる。そのため、上記接着剤組成物を用いて偏光板1,2を得ることにより、偏光板1,2に反りが発生することを抑制することができると考えられる。
【0015】
第1接着剤層15の温度70℃における貯蔵弾性率は、70MPa以上であってもよく、90MPa以上であってもよく、150MPa以上であってもよく、また、500MPa以下であってもよく、400MPa以下であってもよく、300MPa以下であってもよい。第1接着剤層15の上記貯蔵弾性率が上記した範囲内であることにより、偏光板1,2が高温条件と低温条件とが交互に繰り返される環境下に晒された場合にも、偏光板1,2に割れが発生することを抑制することができる。上記貯蔵弾性率は、後述する実施例に記載の方法によって測定することができる。
【0016】
第1接着剤層15の温度40℃、相対湿度90%RHにおける透湿度は、60g/(m2・24hr)以下であることが好ましく、また、1g/(m2・24hr)以上であってもよく、10g/(m2・24hr)以上であってもよい。特に偏光子10が二色性色素が吸着配向しているポリビニルアルコール系樹脂フィルム(後述)である場合、第1接着剤層15の上記透湿度が上記した範囲内であることにより、偏光板1,2が湿熱環境下に晒された場合に反りが発生することを抑制することができる。上記透湿度は、厚みが60μmの(メタ)アクリル系樹脂フィルム(上記温度及び相対湿度での透湿度65g/(m2・24hr))に、第1接着剤層15を形成して測定したときの値であり、後述する実施例に記載の方法によって測定することができる。
【0017】
第1接着剤層15の厚みは、例えば20μm以下であってもよく、15μm以下であってもよく、10μm以下であってもよく、また、0.5μm以上であってもよく、1μm以上であってもよく、3μm以上であってもよい。
【0018】
上記接着剤組成物に含まれる硬化性成分は、上記した硬化性成分以外のその他の硬化性成分を含んでいてもよい。その他の硬化性成分としては、脂環式エポキシ化合物(E)、及び脂肪族エポキシ化合物等が挙げられる。
【0019】
上記接着剤組成物は、硬化性成分及び光カチオン重合開始剤(D)以外のその他の成分を含んでいてもよい。その他の成分としては、光増感剤、光増感助剤、重合促進剤、イオントラップ剤、酸化防止剤、光安定剤、連鎖移動剤、粘着付与剤、熱可塑性樹脂、充填剤、流動調整剤、可塑剤、消泡剤、帯電防止剤、レベリング剤、色素、有機溶剤等が挙げられる。
【0020】
上記接着剤組成物は、紫外線、可視光線、X線、又は電子線等の活性エネルギー線の照射によって、硬化性成分が重合して硬化する活性エネルギー線硬化型接着剤組成物であることが好ましい。上記接着剤組成物は、紫外線の照射によって硬化する紫外線硬化型接着剤組成物であることがより好ましい。
【0021】
上記接着剤組成物が紫外線硬化型である場合、光照射強度の積算量は、例えば10mJ/cm2以上であってもよく、100mJ/cm2以上であってもよく、また、1000mJ/cm2以下であってもよく、800mJ/cm2以下であってもよい。上記接着剤組成物に照射する紫外線は、UVA(波長320~400nm)であってもよく、UVB(波長280~320nm)であってもよい。
【0022】
上記接着剤組成物が電子線硬化型である場合、電子線の照射線量は、例えば5kGy以上であってもよく、10kGy以上であってもよく、また100kGy以下であってもよく、75kGy以下であってもよい。
【0023】
(第1芳香族エポキシ化合物(A))
接着剤組成物に含まれる硬化性成分は、第1芳香族エポキシ化合物(A)を含む。第1芳香族エポキシ化合物(A)は、エポキシ当量が100g/eq以上155g/eq以下である芳香族エポキシ化合物である。芳香族エポキシ化合物は、分子内に少なくとも1つのエポキシ基及び少なくとも1つの芳香環を含む化合物である。第1芳香族エポキシ化合物(A)が分子内に有するエポキシ基は、1つ又は2つであることが好ましい。第1芳香族エポキシ化合物(A)が分子内に有する芳香環は、1つであることが好ましい。接着剤組成物が第1芳香族エポキシ化合物(A)を含むことにより、第1接着剤層15の透湿性を低減することができる。接着剤組成物が第2芳香族エポキシ化合物(B)とともに第1芳香族エポキシ化合物(A)を含むことにより、第1接着剤層15の接着強度を確保しやすくなり、接着剤組成物の硬化時の収縮を抑制しやすくなる。
【0024】
第1芳香族エポキシ化合物(A)のエポキシ当量は、100g/eqよりも大きくてもよく、110g/eq以上であってもよく、115g/eq以上であってもよく、120g/eq以上であってもよく、また、153g/eq以下であってもよく、145g/eq以下であってもよく、135g/eq以下であってもよい。第1芳香族エポキシ化合物(A)のエポキシ当量は、エポキシ基1つあたりの第1芳香族エポキシ化合物(A)の分子量により定義され、JIS K7236に規定された方法により測定することができる。
【0025】
第1芳香族エポキシ化合物(A)としては、例えば、グリシジルフェニルエーテル、レゾシノールジグリシジルエーテル、ナフタレン型エポキシ化合物等が挙げられる。ナフタレン型ポキシ化合物は、ナフタレン又はナフタレン誘導体のポリグリシジルエーテル化物である。第1芳香族エポキシ化合物(A)は、1種又は2種以上を用いることができる。
【0026】
接着剤組成物中の第1芳香族エポキシ化合物(A)の含有量は、硬化性成分の合計量100質量%中、5.0質量%以上であることが好ましく、10.0質量%以上であってもよく、15.0質量%以上であってもよく、また、40.0質量%以下であることが好ましく、35.0質量%以下であってもよく、30.0質量%以下であってもよく、25.0質量%以下であってもよい。接着剤組成物に2種以上の第1芳香族エポキシ化合物(A)が含まれる場合、第1芳香族エポキシ化合物(A)の含有量は、接着剤組成物に含まれる第1芳香族エポキシ化合物(A)の合計量である。
【0027】
(第2芳香族エポキシ化合物(B))
接着剤組成物に含まれる硬化性成分は、第2芳香族エポキシ化合物(B)を含む。第2芳香族エポキシ化合物(B)は、エポキシ当量が155g/eqよりも大きく1000g/eq以下である芳香族エポキシ化合物である。芳香族エポキシ化合物は、上記したように、分子内に少なくとも1つのエポキシ基及び少なくとも1つの芳香環を含む化合物である。第2芳香族エポキシ化合物(B)が分子内に有するエポキシ基は、2つであることが好ましい。第2芳香族エポキシ化合物(B)が分子内に有する芳香環は、2つ以上であることが好ましい。接着剤組成物が第2芳香族エポキシ化合物(B)を含むことにより、第1接着剤層15の透湿性を低減することができる。第2芳香族エポキシ化合物(B)を上記した第1芳香族エポキシ化合物(A)とともに用いることにより、第1接着剤層15の接着強度を確保しやすくなり、接着剤組成物の硬化時の収縮を抑制しやすくなる。
【0028】
第2芳香族エポキシ化合物(B)のエポキシ当量は、170g/eq以上であってもよく、180g/eq以上であってもよく、200g/eq以上であってもよく、また、900g/eq以下であってもよく、700g/eq以下であってもよく、500g/eq以下であってもよく、300g/eq以下であってもよい。第2芳香族エポキシ化合物(B)のエポキシ当量は、エポキシ基1つあたりの第2芳香族エポキシ化合物(B)の分子量により定義され、JIS K7236に規定された方法により測定することができる。
【0029】
第2芳香族エポキシ化合物(B)としては、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS、ビスフェノールM、及びビスフェノールP等のビスフェノール誘導体のグリシジルエーテル化物であるビスフェノール型エポキシ化合物;フルオレン又はフルオレン誘導体のグリシジルエーテル化物であるフルオレン型エポキシ化合物等が挙げられる。第2芳香族エポキシ化合物(B)は、ビスフェノール型エポキシ化合物であることが好ましく、ビスフェノールA型エポキシ化合物及びビスフェノールF型エポキシ化合物のうちの少なくとも一方であることがさらに好ましい。第2芳香族エポキシ化合物(B)はエポキシ樹脂であってもよい。第2芳香族エポキシ化合物(B)は、1種又は2種以上を用いることができる。
【0030】
接着剤組成物中の第2芳香族エポキシ化合物(B)の含有量は、硬化性成分の合計量100質量%中、20.0質量%以上であることが好ましく、25.0質量%以上であってもよく、30.0質量%以上であってもよく、また、60質量%以下であることが好ましく、50.0質量%以下であってもよく、45.0質量%以下であってもよい。接着剤組成物に2種以上の第2芳香族エポキシ化合物(B)が含まれる場合、第2芳香族エポキシ化合物(B)の含有量は、接着剤組成物に含まれる第2芳香族エポキシ化合物(B)の合計量である。
【0031】
接着剤組成物中の第1芳香族エポキシ化合物(A)及び第2芳香族エポキシ化合物(B)の配合比率(第1芳香族エポキシ化合物(A)/第2芳香族エポキシ化合物(B))は、0.1以上であることが好ましく、0.3以上であることがより好ましく、0.4以上であることがさらに好ましく、また、1.4以下であることが好ましく、1.2以下であることが好ましく、1.0以下であることが好ましく、0.8以下であることが特に好ましい。第1芳香族エポキシ化合物(A)及び第2芳香族エポキシ化合物(B)の配合比率が上記範囲であることにより、第1接着剤層15の接着強度を確保しやすくなり、偏光板1,2の高温高湿条件下(例えば、温度80℃、相対湿度90%の湿熱環境下)に載置する耐久試験を行ったときの光学特性の変化を抑制しやすくなる。
【0032】
接着剤組成物中の第1芳香族エポキシ化合物(A)及び第2芳香族エポキシ化合物(B)の合計量は、硬化性成分の合計量100質量%中、40.0質量%以上であることが好ましく、45.0質量%以上であってもよく、50.0質量%以上であってもよく、90.0質量%以下であることが好ましく、80.0質量%以下であってもよく、70.0質量%以下であってもよい。第1芳香族エポキシ化合物(A)及び第2芳香族エポキシ化合物(B)の合計量を上記の範囲で含むことにより、第1接着剤層15の接着強度を確保しやすくなり、接着剤組成物の硬化時の収縮を抑制しやすくなる。
【0033】
(オキセタン化合物(C))
接着剤組成物に含まれる硬化性成分は、オキセタン化合物(C)を含む。オキセタン化合物(C)は、分子内に少なくとも1つのオキセタニル基(オキセタン環)を有する化合物であり、鎖式脂肪族化合物及び脂環式化合物等の脂肪族化合物、並びに芳香族化合物のうちのいずれであってもよい。本明細書でいうオキセタン化合物(C)は、分子内にエポキシ基を有さない化合物である。接着剤組成物がオキセタン化合物(C)を含むことにより、接着剤組成物の硬化速度や粘度を調整することができ、反応性を向上させることができる。
【0034】
オキセタン化合物(C)が分子内に有するオキセタニル基は、1つ又は2つであることが好ましい。オキセタン化合物(C)は、分子内のオキセタニル基が1つである単官能オキセタン化合物を含むことが好ましく、単官能オキセタン化合物と、分子内のオキセタニル基が2つ又は3つ以上である多官能オキセタン化合物との混合物であってもよい。単官能オキセタン化合物は、分子内に芳香環を含む単官能オキセタン化合物であることが好ましい。多官能オキセタン化合物は、分子内のオキセタニル基が2つである脂肪族化合物であることが好ましい。オキセタン化合物(C)は、1種又は2種以上を用いることができる。
【0035】
単官能オキセタン化合物としては、3-エチル-3-(フェノキシ)メチルオキセタン、3-[(ベンジルオキシ)メチル]-3-エチルオキセタン、3-エチル-3-(シクロヘキシルオキシメチル)オキセタン、3-エチル-3-(2-エチルヘキシルオキシメチル)オキセタン、3-エチル-3-ヒドロキシメチルオキセタン、3-エチル-3-(クロロメチル)オキセタン等が挙げられる。単官能オキセタン化合物は、1種又は2種以上を用いることができる。
【0036】
多官能オキセタン化合物としては、3,7-ビス(3-オキセタニル)-5-オキサ-ノナン、1,4-ビス[(3-エチル-3-オキセタニルメトキシ)メチル]ベンゼン、1,2-ビス[(3-エチル-3-オキセタニルメトキシ)メチル]エタン、1,3-ビス[(3-エチル-3-オキセタニルメトキシ)メチル]プロパン、エチレングリコールビス(3-エチル-3-オキセタニルメチル)エーテル、トリエチレングリコールビス(3-エチル-3-オキセタニルメチル)エーテル、テトラエチレングリコールビス(3-エチル-3-オキセタニルメチル)エーテル、1,4-ビス(3-エチル-3-オキセタニルメトキシ)ブタン、1,6-ビス(3-エチル-3-オキセタニルメトキシ)ヘキサン、3-エチル-3{[(3-エチルオキセタン-3-イル)メトキシ]メチル}オキセタン、キシリレンビスオキセタン等が挙げられる。多官能オキセタン化合物は、1種又は2種以上を用いることができる。
【0037】
オキセタン化合物(C)は、3-[(ベンジルオキシ)メチル]-3-エチルオキセタン、3-エチル-3-(フェノキシ)メチルオキセタン、及び3-エチル-3{[(3-エチルオキセタン-3-イル)メトキシ]メチル}オキセタンのうちのいずれかを含むことが好ましく、3-[(ベンジルオキシ)メチル]-3-エチルオキセタン及び3-エチル-3{[(3-エチルオキセタン-3-イル)メトキシ]メチル}オキセタンのうちの少なくとも一方を含むことがより好ましく、3-[(ベンジルオキシ)メチル]-3-エチルオキセタンを含むことがさらに好ましい。
【0038】
接着剤組成物中のオキセタン化合物(C)の含有量は、硬化性成分の合計量100質量%中、5.0質量%以上であることが好ましく、10.0質量%以上であってもよく、15.0質量%以上であってもよく、20.0質量%以上であってもよく、25.0質量%以上であってもよく、また、60.0質量%以下であることが好ましく、55.0質量%以下であってもよく、50.0質量%以下であってもよく、45.0質量%以下であってもよく、40.0質量%以下であってもよい。接着剤組成物に2種以上のオキセタン化合物(C)が含まれる場合、オキセタン化合物(C)の含有量は、接着剤組成物に含まれるオキセタン化合物(C)の合計量である。
【0039】
オキセタン化合物(C)が単官能オキセタン化合物を含む場合、単官能オキセタン化合物の含有量は、硬化性成分の合計量100質量%中、5.0質量%以上であってもよく、10.0質量%以上であってもよく、15.0質量%以上であってもよく、また、40.0質量%以下であってもよく、35.0質量%以下であってもよく、30.0質量%以下であってもよい。接着剤組成物に2種以上の単官能オキセタン化合物が含まれる場合、単官能オキセタン化合物の含有量は、接着剤組成物に含まれる単官能オキセタン化合物の合計量である。
【0040】
オキセタン化合物(C)として3-[(ベンジルオキシ)メチル]-3-エチルオキセタンを含む場合、3-[(ベンジルオキシ)メチル]-3-エチルオキセタンの含有量は、硬化性成分の合計量100質量%中、5.0質量%以上であることが好ましく、10.0質量%以上であってもよく、15.0質量%以上であってもよく、また、40.0質量%以下であることが好ましく、35.0質量%以上であってもよく、30.0質量%以下であってもよい。
【0041】
(脂環式エポキシ化合物(E))
接着剤組成物は、上記した硬化性成分以外のその他の硬化性成分として、脂環式エポキシ化合物(E)を含んでいてもよい。脂環式エポキシ化合物(E)は、脂環式エポキシ基を有する化合物である。本明細書において、脂環式エポキシ基とは、脂環式環に結合したエポキシ基を表し、下記に示す構造においての酸素原子-O-を意味する。下記式中、mは2~5の整数である。脂環式エポキシ化合物(E)は、下記式における(CH
2)
m中の1つ以上の水素原子を除いた形の基が他の化学構造に結合している化合物である。(CH
2)
m中の1つ以上の水素原子は、メチル基及びエチル基等の直鎖状アルキル基で置換されていてもよい。
【化1】
【0042】
脂環式エポキシ化合物(E)が有する脂環式エポキシ基は、1つであってもよく、2つ以上であってもよいが、2つであることが好ましい。
【0043】
脂環式エポキシ化合物(E)としては、3’,4’-エポキシシクロヘキシルメチル 3,4-エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、1,2-エポキシ-4-ビニルシクロヘキサン、1,2-エポキシ-1-メチル-4-(1-メチルエポキシエチル)シクロヘキサン、3,4-エポキシシクロヘキシルメチルメタアクリレート、2,2-ビス(ヒドロキシメチル)-1-ブタノールの4-(1,2-エポキシエチル)-1,2-エポキシシクロヘキサン付加物、エチレンビス(3,4-エポキシシクロヘキサンカルボキシレート)、オキシジエチレン ビス(3,4-エポキシシクロヘキサンカルボキシレート)、1,4-シクロヘキサンジメチル ビス(3,4-エポキシシクロヘキサンカルボキシレート)、3-(3,4-エポキシシクロヘキシルメトキシカルボニル)プロピル 3,4-エポキシシクロヘキサンカルボキシレート等が挙げられる。脂環式エポキシ化合物(E)は、1種又は2種以上を用いることができる。
【0044】
接着剤組成物中の脂環式エポキシ化合物(E)の含有量は、硬化性成分の合計量100質量%に対して、1.0質量%以上であってもよく、5.0質量%以上であってもよく、10.0質量%以上であってもよく、また、50.0質量%以下であってもよく、40.0質量%以下であってもよく、30.0質量%以下であってもよい。接着剤組成物に2種以上の脂環式エポキシ化合物(E)が含まれる場合、脂環式エポキシ化合物(E)の含有量は、接着剤組成物に含まれる脂環式エポキシ化合物(E)の合計量である。
【0045】
(脂肪族エポキシ化合物)
接着剤組成物は、上記した硬化性成分以外のその他の硬化性成分として、脂肪族エポキシ化合物を含んでいてもよい。本明細書において、脂肪族エポキシ化合物は、芳香環及び脂環式エポキシ基を有さない化合物である。脂肪族エポキシ化合物が有するエポキシ基は、1つであってもよく、2以上であってもよいが、2以上であることが好ましい。
【0046】
脂肪族エポキシ化合物としては、脂肪族多価アルコール又はそのアルキレンオキサイド付加物のポリグリシジルエーテルが挙げられる。より具体的には、1,4-ブタンジオールのジグリシジルエーテル;1,6-ヘキサンジオールのジグリシジルエーテル;グリセリンのトリグリシジルエーテル;トリメチロールプロパンのトリグリシジルエーテル;ポリエチレングリコールのジグリシジルエーテル;プロピレングリコールのジグリシジルエーテル;エチレングリコール、プロピレングリコール又はグリセリン等の脂肪族多価アルコールに1種又は2種以上のアルキレンオキサイド(エチレンオキサイドやプロピレンオキサイド)を付加することにより得られるポリエーテルポリオールのポリグリシジルエーテル等が挙げられる。脂肪族エポキシ化合物は、1種又は2種以上を用いることができる。
【0047】
接着剤組成物中の脂肪族エポキシ化合物の含有量は特に限定されず、硬化性成分の合計量100質量%に対して、例えば1質量%以上とすることができ、5質量%以上であってもよく、10質量%以上であってもよく、また、例えば50質量%以下とすることができ、40質量%以下であってもよく、30質量%以下であってもよい。接着剤組成物に2種以上の脂肪族エポキシ化合物が含まれる場合、脂肪族エポキシ化合物の含有量は、接着剤組成物に含まれる脂肪族エポキシ化合物の合計量である。
【0048】
(光カチオン重合開始剤(D))
接着剤組成物は、光カチオン重合開始剤(D)を含む。これにより、接着剤組成物に含まれる硬化性成分をカチオン重合で硬化させて硬化物層を形成することができる。光カチオン重合開始剤(D)は、活性エネルギー線の照射によって、カチオン種又はルイス酸を発生し、硬化性成分の重合反応を開始させるものである。光カチオン重合開始剤(D)は光で触媒的に作用するため、硬化性成分に混合しても保存安定性や作業性に優れる。光カチオン重合開始剤(D)としては、例えば、芳香族ジアゾニウム塩;芳香族ヨードニウム塩及び芳香族スルホニウム塩等のオニウム塩;鉄-アレーン錯体等が挙げられる。
【0049】
芳香族ジアゾニウム塩としては、例えば、次の化合物が挙げられる。
ベンゼンジアゾニウム ヘキサフルオロアンチモネート、
ベンゼンジアゾニウム ヘキサフルオロホスフェート、
ベンゼンジアゾニウム ヘキサフルオロボレート、等。
【0050】
芳香族ヨードニウム塩としては、例えば、次の化合物が挙げられる。
ジフェニルヨードニウム テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、
ジフェニルヨードニウム ヘキサフルオロホスフェート、
ジフェニルヨードニウム ヘキサフルオロアンチモネート、
ジ(4-ノニルフェニル)ヨードニウム ヘキサフルオロホスフェート、等。
【0051】
芳香族スルホニウム塩としては、例えば、次の化合物が挙げられる。
トリフェニルスルホニウム ヘキサフルオロホスフェート、
トリフェニルスルホニウム ヘキサフルオロアンチモネート、
トリフェニルスルホニウム テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、
4,4’-ビス(ジフェニルスルホニオ)ジフェニルスルフィド ビスヘキサフルオロホスフェート、
4,4’-ビス〔ジ(β-ヒドロキシエトキシ)フェニルスルホニオ〕ジフェニルスルフィド ビスヘキサフルオロアンチモネート、
4,4’-ビス〔ジ(β-ヒドロキシエトキシ)フェニルスルホニオ〕ジフェニルスルフィド ビスヘキサフルオロホスフェート、
7-〔ジ(p-トルイル)スルホニオ〕-2-イソプロピルチオキサントン ヘキサフルオロアンチモネート、
7-〔ジ(p-トルイル)スルホニオ〕-2-イソプロピルチオキサントン テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、
4-フェニルカルボニル-4’-ジフェニルスルホニオ-ジフェニルスルフィド ヘキサフルオロホスフェート、
4-(p-tert-ブチルフェニルカルボニル)-4’-ジフェニルスルホニオ-ジフェニルスルフィド ヘキサフルオロアンチモネート、
4-(p-tert-ブチルフェニルカルボニル)-4’-ジ(p-トルイル)スルホニオ-ジフェニルスルフィド テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、等。
【0052】
鉄-アレーン錯体としては、例えば、次の化合物が挙げられる。
キシレン-シクロペンタジエニル鉄(II) ヘキサフルオロアンチモネート、
クメン-シクロペンタジエニル鉄(II) ヘキサフルオロホスフェート、
キシレン-シクロペンタジエニル鉄(II) トリス(トリフルオロメチルスルホニル)メタナイド、等。
【0053】
光カチオン重合開始剤(D)は、1種又は2種以上を用いることができる。上記の中でも特に芳香族スルホニウム塩は、300nm付近の波長領域でも紫外線吸収特性を有することから、硬化性に優れ、良好な機械強度や接着強度を有する第1接着剤層15を得ることができるため、好ましく用いられる。
【0054】
接着剤組成物中の光カチオン重合開始剤(D)の含有量(固形分量)は、硬化性成分の合計量100質量%に対して、0.5質量%以上であることが好ましく、1.0質量%以上であってもよく、3.0質量%以上であってもよく、また、10.0質量%以下であることが好ましく、8.0質量%以下であってもよく、5.0質量%以下であってもよい。接着剤組成物に2種以上の光カチオン重合開始剤(D)が含まれる場合、光カチオン重合開始剤(D)の含有量は、接着剤組成物に含まれる光カチオン重合開始剤(D)の合計量である。
【0055】
(第2接着剤層)
第2接着剤層25は、第1接着剤層15を形成するための接着剤組成物を用いて形成された硬化物層であってもよく、当該接着剤組成物以外のその他の接着剤組成物の硬化物層であってもよい。第2接着剤層25が上記した接着剤組成物の硬化物層である場合、第1接着剤層15と第2接着剤層25とは、同じ組成の接着剤組成物の硬化物層であってもよく、異なる組成の接着剤組成物の硬化物層であってもよい。
【0056】
その他の接着剤組成物としては、公知の水系接着剤、及び、上記した接着剤組成物以外の公知の活性エネルギー線硬化型接着剤が挙げられる。
【0057】
水系接着剤としては、例えば、ポリビニルアルコール樹脂又はウレタン樹脂を、水に溶解又は分散させた接着剤が挙げられる。
【0058】
活性エネルギー線硬化型接着剤は、紫外線、可視光線、X線、又は電子線等の活性エネルギー線の照射によって硬化する接着剤である。活性エネルギー線硬化型接着剤は、硬化性成分として、カチオン重合によって硬化するエポキシ化合物及び光カチオン重合開始剤を含むもの、ラジカル重合性である(メタ)アクリル系化合物及び光ラジカル重合開始剤を含有するもの等が挙げられる。本明細書において「(メタ)アクリル」とは、アクリル及びメタクリルのうちの少なくとも一方をいう。「(メタ)アクリロイル」等についても同様である。
【0059】
エポキシ化合物及び光カチオン重合開始剤としては、上記したものが挙げられる。(メタ)アクリル系化合物としては、分子内に1つ以上の(メタ)アクリロイルオキシ基を有する(メタ)アクリレートモノマー;官能基含有化合物を2種以上反応させて得られ、分子内に少なくとも2つの(メタ)アクリロイルオキシ基を有する(メタ)アクリレートオリゴマー等の(メタ)アクリロイルオキシ基含有化合物等が挙げられる。光ラジカル重合開始剤としては、アセトフェノン系開始剤、ベンゾフェノン系開始剤、ベンゾインエーテル系開始剤、チオキサントン系開始剤、キサントン、フルオレノン、カンファーキノン、ベンズアルデヒド、アントラキノン等が挙げられる。
【0060】
第2接着剤層25の厚みは、例えば20μm以下であってもよく、15μm以下であってもよく、10μm以下であってもよく、また、0.5μm以上であってもよく、1μm以上であってもよく、3μm以上であってもよい。
【0061】
(偏光子)
偏光子は、無偏光の光を入射させたとき、吸収軸に直交する振動面をもつ直線偏光を透過させる性質を有する。偏光子は、二色性色素が吸着配向しているポリビニルアルコール系樹脂フィルム(以下、「PVA系フィルム」ということがある。)であってもよく、吸収異方性及び液晶性を有する化合物を含む組成物を基材フィルムに塗布して形成した液晶性の偏光子を含むフィルムであってもよい。吸収異方性及び液晶性を有する化合物は、吸収異方性を有する色素と液晶性を有する化合物との混合物であってもよく、吸収異方性及び液晶性を有する色素であってもよい。偏光子は、二色性色素が吸着配向しているPVA系樹脂フィルムであることが好ましい。
【0062】
PVA系フィルムである偏光子は、例えば、ポリビニルアルコールフィルム、部分ホルマール化ポリビニルアルコールフィルム、エチレン・酢酸ビニル共重合体系部分ケン化フィルム等のPVA系フィルムに、二色性色素による染色処理、及び延伸処理が施されたもの等が挙げられる。必要に応じて、染色処理により二色性色素が吸着配向したPVA系フィルムをホウ酸水溶液で処理し、その後に、ホウ酸水溶液を洗い落とす洗浄工程を行ってもよい。各工程には公知の方法を採用できる。
【0063】
ポリビニルアルコール系樹脂(以下、「PVA系樹脂」ということがある。)は、ポリ酢酸ビニル系樹脂をケン化することにより製造できる。ポリ酢酸ビニル系樹脂は、酢酸ビニルの単独重合体であるポリ酢酸ビニルのほか、酢酸ビニルと酢酸ビニルに共重合可能な他の単量体との共重合体であることもできる。酢酸ビニルに共重合可能な他の単量体としては、例えば、不飽和カルボン酸類、オレフィン類、ビニルエーテル類、不飽和スルホン酸類、アンモニウム基を有するアクリルアミド類等が挙げられる。
【0064】
PVA系樹脂のケン化度は、通常85~100モル%程度であり、好ましくは98モル%以上である。PVA系樹脂は変性されていてもよく、例えば、アルデヒド類で変性されたポリビニルホルマールやポリビニルアセタール等も使用可能である。PVA系樹脂の平均重合度は、通常1,000~10,000程度であり、好ましくは1,500~5,000程度である。PVA系樹脂のケン化度及び平均重合度は、JIS K 6726(1994)に準拠して求めることができる。平均重合度が1000未満では好ましい偏光性能を得ることが困難であり、10000超ではフィルム加工性に劣ることがある。
【0065】
PVA系フィルムに吸着配向している二色性色素としては、ヨウ素又は二色性染料が挙げられる。二色性色素はヨウ素であることが好ましい。二色性染料としては、二色性染料としては、レッドBR、レッドLR、レッドR、ピンクLB、ルビンBL、ボルドーGS、スカイブルーLG、レモンイエロー、ブルーBR、ブルー2R、ネイビーRY、グリーンLG、バイオレットLB、バイオレットB、ブラックH、ブラックB、ブラックGSP、イエロー3G、イエローR、オレンジLR、オレンジ3R、スカーレットGL、スカーレットKGL、コンゴーレッド、ブリリアントバイオレットBK、スプラブルーG、スプラブルーGL、スプラオレンジGL、ダイレクトスカイブルー、ダイレクトファーストオレンジS、ファーストブラック等が挙げられる。
【0066】
PVA系フィルムである偏光子の製造方法は、基材フィルムを用意し、基材フィルム上にPVA系樹脂等の樹脂の溶液を塗布し、溶媒を除去する乾燥等を行って基材フィルム上に樹脂層を形成する工程を含むものであってもよい。なお、基材フィルムの樹脂層が形成される面には、予めプライマー層を形成することができる。基材フィルムとしては、後述する第1保護フィルム及び第2保護フィルムを形成するために用いる熱可塑性樹脂として説明する樹脂材料を用いたフィルムを使用できる。プライマー層の材料としては、偏光子に用いられる親水性樹脂を架橋した樹脂等を挙げることができる。
【0067】
次いで、必要に応じて樹脂層の水分等の溶媒量を調整し、その後、基材フィルム及び樹脂層を一軸延伸し、続いて、樹脂層を二色性色素で染色して二色性色素を樹脂層に吸着配向させる。次に、必要に応じて二色性色素が吸着配向した樹脂層をホウ酸水溶液で処理し、その後に、ホウ酸水溶液を洗い落とす洗浄工程を行う。これにより、二色性色素が吸着配向された樹脂層、すなわち、偏光子となるPVA系フィルムが製造される。各工程には公知の方法を採用できる。
【0068】
二色性色素がヨウ素である場合、ヨウ素が吸着配向したPVA系フィルム又は樹脂層を処理するホウ酸含有水溶液におけるホウ酸の量は、通常、水100質量部あたり、2~15質量部程度であり、5~12質量部が好ましい。このホウ酸含有水溶液はヨウ化カリウムを含有することが好ましい。ホウ酸含有水溶液におけるヨウ化カリウムの量は、通常、水100質量部あたり、0.1~15質量部程度であり、5~12質量部程度が好ましい。ホウ酸含有水溶液への浸漬時間は、通常、60~1,200秒程度であり、150~600秒程度が好ましく、200~400秒程度がより好ましい。ホウ酸含有水溶液の温度は、通常、50℃以上であり、50~85℃が好ましく、60~80℃がより好ましい。
【0069】
PVA系フィルム、並びに、基材フィルム及び樹脂層の一軸延伸は、染色の前に行ってもよいし、染色中に行ってもよいし、染色後のホウ酸処理中に行ってもよく、これら複数の段階においてそれぞれ一軸延伸を行ってもよい。PVA系フィルム、並びに、基材フィルム及び樹脂層は、MD方向(フィルム搬送方向)に一軸延伸してもよく、この場合、周速の異なるロール間で一軸に延伸してもよいし、熱ロールを用いて一軸に延伸してもよい。また、PVA系フィルム、並びに、基材フィルム及び樹脂層は、TD方向(フィルム搬送方向に垂直な方向)に一軸延伸してもよく、この場合、いわゆるテンター法を使用することができる。また、上記延伸は、大気中で延伸を行う乾式延伸であってもよいし、溶剤にてPVA系フィルム又は樹脂層を膨潤させた状態で延伸を行う湿式延伸であってもよい。偏光子の性能を発現するためには延伸倍率は4倍以上であり、5倍以上であることが好ましく、特に5.5倍以上が好ましい。延伸倍率の上限は特に限定されないが、破断等を抑制する観点から8倍以下が好ましい。
【0070】
基材フィルムを用いる製造方法で作製した偏光子は、保護フィルムを積層した後に基材フィルムを剥離することによって得ることができる。この方法によれば、偏光子のさらなる薄膜化が可能となる。
【0071】
PVA系フィルムである偏光子の厚みは、1μm以上であることが好ましく、2μm以上であってもよく、5μm以上であってもよく、また、30μm以下であることが好ましく、15μm以下であることがより好ましく、10μm以下であってもよく、8μm以下であってもよい。
【0072】
液晶性の偏光層を含むフィルムは、液晶性及び吸収異方性を有する色素を含む組成物、又は、吸収異方性を有する色素と重合性液晶とを含む組成物を基材フィルムに塗布して得られる偏光子が挙げられる。基材フィルムとしては、例えば後述する第1保護フィルム及び第2保護フィルムを形成するために用いる熱可塑性樹脂として説明する樹脂材料を用いたフィルムが挙げられる。液晶性の偏光層を含むフィルムとしては、例えば特開2013-33249号公報等に記載の偏光層が挙げられる。
【0073】
上記のようにして形成した基材フィルムと偏光子との合計厚みは小さい方が好ましいが、小さすぎると強度が低下し、加工性に劣る傾向があるため、通常20μm以下であり、好ましくは5μm以下であり、より好ましくは0.5~3μmである。
【0074】
(第1保護フィルム、第2保護フィルム)
第1保護フィルム及び第2保護フィルム(以下、両者をまとめて「保護フィルム」ということがある。)としては、例えば、透明性、機械的強度、熱安定性、水分遮断性、等方性、延伸性等に優れる熱可塑性樹脂から形成されたフィルムが用いられる。熱可塑性樹脂の具体例としては、トリアセチルセルロース等のセルロース樹脂;ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル樹脂;ポリエーテルスルホン樹脂;ポリスルホン樹脂;ポリカーボネート樹脂;ナイロンや芳香族ポリアミド等のポリアミド樹脂;ポリイミド樹脂;ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン・プロピレン共重合体等のポリオレフィン樹脂;シクロ系及びノルボルネン構造を有する環状ポリオレフィン樹脂(ノルボルネン系樹脂ともいう);(メタ)アクリル樹脂;ポリアリレート樹脂;ポリスチレン樹脂;ポリビニルアルコール樹脂、並びにこれらの混合物を挙げることができる。
【0075】
保護フィルムは、任意の位相差値を有する位相差フィルムであってもよい。位相差フィルムは、上記した熱可塑性樹脂から形成されたフィルムを延伸(一軸延伸又は二軸延伸等)したり、該フィルム上に液晶層等を形成したりすることによって得ることができる。
【0076】
保護フィルムは、反射防止特性、防眩特性、ハードコート特性等を有するものであってもよい。保護フィルムが上記した特性を有していない場合、偏光板の片面には、反射防止層、防眩層、ハードコート層等の表面機能層が設けられていてもよい。表面機能層は、保護フィルムに直接接するように設けられることが好ましい。表面機能層は、保護フィルムの偏光子側とは反対側に設けられることが好ましい。
【0077】
保護フィルムは、通常5μm以上であり、10μm以上であってもよく、また、通常200μm以下であり、150μm以下であってもよく、100μm以下であってもよく、80μm以下であってもよい。
【0078】
第1保護フィルムと第2保護フィルムとは、同じ種類のフィルムであってもよく、異なる種類のフィルムであってもよい。第1保護フィルムは、上記した接着剤組成物を用いて得られる第1接着剤層15との接着性の観点から、熱可塑性樹脂としてポリメチルメタクリレート等の(メタ)アクリル樹脂を用いた(メタ)アクリル系樹脂フィルムであることが好ましい。第2接着剤層が上記した接着剤組成物の硬化物層である場合、第2保護フィルムも(メタ)アクリル系樹脂フィルムであることが好ましい。
【実施例0079】
以下、実施例及び比較例を示して本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの例によって限定されるものではない。
【0080】
実施例及び比較例で用いた材料は、次のとおりである。
(第1芳香族エポキシ化合物(A))
化合物(A1):レゾルシノールジグリシジルエーテル(ナガセケムテックス(株)から入手した商品名「EX-201」、エポキシ当量:117g/eq)
化合物(A2):フェニルグリシジルエーテル(ナガセケムテックス(株)から入手した商品名「EX-141」、エポキシ当量:151g/eq)
【0081】
(第2芳香族エポキシ化合物(B))
化合物(B1):ビスフェノールAジグリシジルエーテル(ADEKA(株)から入手した商品名「EP-4100E」、エポキシ当量:190g/eq)
化合物(B2):ビスフェノールFジグリシジルエーテル(DIC(株)から入手した商品名「EXA-830CRP」、エポキシ当量:156~168g/eq)
【0082】
(脂環式エポキシ化合物(E))
化合物(E1):3’,4’-エポキシシクロヘキシルメチル 3,4-エポキシシクロヘキサンカルボキシレート(ダイセル化学工業(株)から入手した商品名「CEL2021P」)
【0083】
(オキセタン化合物(C))
化合物(C1):3-エチル-3{[(3-エチルオキセタン-3-イル)メトキシ]メチル}オキセタン(東亜合成(株)から入手した商品名「OXT-221」)
化合物(C2):3-[(ベンジルオキシ)メチル]-3-エチルオキセタン(Toronly(株)から入手した商品名「TCM-104」)
【0084】
(光カチオン重合開始剤(D))
化合物(D1):トリアリールスルホニウム塩系光カチオン重合開始剤の50%プロピレンカーボネート溶液(サンアプロ(株)から入手した商品名「CPI-100P」)
【0085】
〔実施例1〕
(接着剤組成物(x1)の調製)
表1に示す硬化性成分を、表1に示す割合(合計100質量部)で配合し、さらに、表1に示す割合(固形分量としての割合)で光カチオン重合開始剤(D)を配合し、混合することによって、接着剤組成物(x1)を調製した。
【0086】
(接着剤組成物(y)の調製)
3’,4’-エポキシシクロヘキシルメチル 3,4-エポキシシクロヘキサンカルボキシレート(ダイセル化学工業(株)から入手した商品名「CEL2021P」)70質量部に対して、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル(ナガセケムテックス(株)から入手した商品名「EX-211」)20.0質量部、2-エチルヘキシルグリシジルエーテル(ナガセケムテックス(株)から入手した商品名「EX-121」)10.0質量部、及び、トリアリールスルホニウム塩系光カチオン重合開始剤の50%プロピレンカーボネート溶液(サンアプロ(株)から入手した商品名「CPI-100P」)5.5質量部を添加し、混合することによって、接着剤組成物(y)を調製した。
【0087】
(偏光板の作成)
第1保護フィルム(厚み60μmのポリメチルメタクリレート(PMMA)フィルム)の片面にコロナ放電処理を施し、そのコロナ放電処理面に、上記で調製した接着剤組成物(x1)をバーコーターを用いて塗工した。続いて、ニップロールを用いて、第1保護フィルムの接着剤組成物(x1)の塗工面側に、偏光子(厚み約23μmのポリビニルアルコール-ヨウ素系偏光フィルム)を貼合し、第1保護フィルム付き偏光子を得た。
【0088】
次に、第2保護フィルム(環状ポリオレフィン系樹脂(ノルボルネン系樹脂)からなる厚み50μmの位相差フィルム〔日本ゼオン(株)製の商品名「ZEONOR」〕)の片面にコロナ放電処理を施し、そのコロナ放電処理面に、上記で調製した接着剤組成物(y)をバーコーターを用いて塗工した。続いて、ニップロールを用いて、第2保護フィルムの接着剤組成物(y)の塗工面側に、上記で得た第1保護フィルム付き偏光子の偏光子側を貼合し、積層体を得た。積層体の第2保護フィルム側から、総積算量(波長320~400nmの波長領域における光照射強度の積算量)が約200mJ/cm2(測定器:FusionUV社製「UV Power PuckII」による測定値)の紫外線(UVB)を照射した。これにより、接着剤組成物(x1)を重合硬化させて第1接着剤層を形成し、接着剤組成物(y)を重合硬化させて第2接着剤層を形成して、偏光板を得た。偏光板は、第1保護フィルム/第1接着剤層/偏光子/第2接着剤層/第2保護フィルムの層構造を有し、第1接着剤層の厚みは約5μmであり、第2接着剤層の厚みは約3μmであった。
【0089】
〔実施例2~6、比較例1及び2〕
表1に示す硬化性成分及び光カチオン重合開始剤(D)の配合量を表1に示すとおりに変更したこと以外は、実施例1と同様にして接着剤組成物(x2)~(x8)を調製した。接着剤組成物(x2)~(x8)を用いたこと以外は、実施例1と同様にして偏光板を得た。
【0090】
実施例及び比較例で調製した接着剤組成物(x1)~(x8)を用いて形成した第1接着剤層及び偏光板について、次の評価を行った。結果を表1に示す。
[第1接着剤層の温度70℃における貯蔵弾性率の測定]
厚み50μmの環状ポリオレフィン系樹脂フィルムの片面に、バーコーターを用いて接着剤組成物(x1)~(x8)のそれぞれを塗工し、塗工面にさらに厚み50μmの環状ポリオレフィン系樹脂フィルムを積層した。接着剤層の厚みは、接着剤組成物の硬化不良を避けるために、20μm以下とした。次に、総積算光量(波長320~400nmの波長領域における光照射強度の積算量)が約200mJ/cm2(測定器:FusionUV社製「UV Power PuckII」による測定値)の紫外線(UVB)を照射することにより接着剤組成物を重合硬化させた。これを5mm×30mmの大きさに裁断し、環状ポリオレフィン系樹脂フィルムを剥がして、接着剤組成物の硬化フィルムである試験片を得た。試験片をその長辺が引張り方向となるように、動的粘弾性測定装置(アイティー計測制御(株)製の「DVA-220」)を用いて、つかみ具の間隔を2cmとして把持し、引張りと収縮の周波数を10Hz、昇温速度を10℃/分に設定して、温度70℃における貯蔵弾性率(MPa)を求めた。
【0091】
[接着剤組成物(x1)~(x8)の硬化収縮力の測定]
接着剤組成物(x1)~(x8)の硬化収縮力は、高輝度水銀キセノンランプ(浜松ホトニクス(株)製、商品名「Lightning Cure」)を備えた回転式粘弾性測定装置(Anton Paar(株)製、商品名「Physica MCR 301」)を用いて測定した。具体的には、ステージ/接着剤組成物(x1)~(x8)のうちのいずれか/メジャーリングシステム(8mmφパラレルプレート)の配置となるように、接着剤組成物(x1)~(x8)を装置にセットした。ステージとメジャーリングシステムのギャップは、50μmに設定した。次に、メジャーリングシステムからはみ出た接着剤組成物(x1)~(x8)をかきとり、Normal Forceが安定した後に、温度25℃、データ取得間隔0.5sec/pointで測定を開始した。測定を開始して10秒後、総積算光量(波長320~400nmの波長領域における光照射強度の積算量)が約50mJ/cm2(測定器:FusionUV社製「UV Power PuckII」による測定値)の紫外線(UVB)を照射することにより、接着剤組成物(x1)~(x8)を硬化させた。硬化時にメジャーリングシステムに生じるNormal Forceの値の絶対値を接着剤組成物(x1)~(x8)の硬化収縮力として求めた。表1に示す硬化収縮力の値は、測定の開始から100秒後のNormal Forceの値の絶対値を示している。Normal Forceの値が小さく、当該値の絶対値が大きいほど、接着剤組成物が硬化するときに大きく収縮することを表す。
【0092】
[第1保護フィルムと偏光子との密着力の測定]
実施例及び比較例で説明した手順で偏光板の第2保護フィルムの表面に、コロナ放電処理を施し、そのコロナ放電処理面にアクリル系粘着剤シートを貼合して粘着剤層付き偏光板とした。得られた粘着剤層付き偏光板から、幅25mm、長さ約200mmの試験片を裁断し、その粘着剤層面をソーダガラス基板に貼合して、測定用サンプルを得た。この測定用サンプルを、温度23℃、相対湿度55%の環境下に24時間保管した。次いで、第1保護フィルムと偏光子との間にカッターの刃を入れ、長さ方向に端から30mm剥離し、その剥離部分を万能引張試験機〔(株)島津製作所製の商品名「AGS-50NX」〕のつかみ部でつかんだ。この状態の試験片を、温度23℃相対湿度55%の雰囲気中にて、JIS K 6854-2:1999「接着剤-はく離接着強さ試験方法-第2部:180度はく離」に準じて、つかみ移動速度300mm/分で180度はく離試験を行い、つかみ部の30mmを除く60mmの長さにわたる平均剥離力を求めて、これを密着力とした。表1中の※1で示す切欠不可とは、測定用サンプルの第1保護フィルムと偏光子との密着力が強く、両者の間にカッターの刃を入れても第1保護フィルムと偏光子とを分離することができなかったことを示す。
【0093】
[第1接着剤層の透湿度の測定]
コロナ処理を施した厚み60μmのPMMAフィルムに、実施例及び比較例で調製した接着剤組成物(x1)~(x8)のそれぞれを接着剤塗工装置を用いて塗工した。接着剤組成物(x1)~(x8)のそれぞれの塗工層上に、厚み50μmの環状ポリオレフィン系樹脂フィルム(日本ゼオン(株)製、商品名「ZEONOR」)を積層し、ニップロールを用いて貼合した。次いで、総積算光量(波長320~400nmの波長領域における光照射強度の積算量)が約200mJ/cm2(測定器:FusionUV社製「UV Power PuckII」による測定値)の紫外線(UVB)を環状ポリオレフィン系樹脂フィルム側から照射することにより塗工層を硬化させて、PMMAフィルム/第1接着剤層/環状ポリオレフィン系樹脂フィルムの層構造を有する積層体を得た。硬化した第1接着剤層の厚みは約5μmであった。その後、環状ポリオレフィン系樹脂フィルムを剥離して、PMMAフィルム/第1接着剤層の層構造を有する透湿度測定用サンプルを得た。透湿度測定用サンプルについて、JIS Z 0208に規定されるカップ法により、温度40℃、相対湿度90%RHにおける透湿度[g/(m2・24hr)]を測定した。測定においては、透湿度測定用サンプルのうちの第1接着剤層が温度40℃、相対湿度90%の環境下になるようにし、透湿度測定用サンプルは、第1接着剤層が外側を向くようにカップに取り付けた。なお、PMMAフィルムについて、上記と同様の方法により測定した温度40℃、相対湿度90%RHにおける透湿度は65g/(m2・24hr)であった。結果を表1に示す。
【0094】
1,2 偏光板、10 偏光子、11 第1保護フィルム(保護フィルム)、15 第1接着剤層(接着剤層)、21 第2保護フィルム、25 第2接着剤層。