IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社リコーの特許一覧

<>
  • 特開-制御装置及び画像形成装置 図1
  • 特開-制御装置及び画像形成装置 図2
  • 特開-制御装置及び画像形成装置 図3
  • 特開-制御装置及び画像形成装置 図4
  • 特開-制御装置及び画像形成装置 図5
  • 特開-制御装置及び画像形成装置 図6
  • 特開-制御装置及び画像形成装置 図7
  • 特開-制御装置及び画像形成装置 図8
  • 特開-制御装置及び画像形成装置 図9
  • 特開-制御装置及び画像形成装置 図10
  • 特開-制御装置及び画像形成装置 図11
  • 特開-制御装置及び画像形成装置 図12
  • 特開-制御装置及び画像形成装置 図13
  • 特開-制御装置及び画像形成装置 図14
  • 特開-制御装置及び画像形成装置 図15
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023091342
(43)【公開日】2023-06-30
(54)【発明の名称】制御装置及び画像形成装置
(51)【国際特許分類】
   G03G 15/01 20060101AFI20230623BHJP
   G03G 21/00 20060101ALI20230623BHJP
   G03G 21/14 20060101ALI20230623BHJP
   G03G 15/16 20060101ALI20230623BHJP
【FI】
G03G15/01 Y
G03G21/00 510
G03G21/14
G03G15/16
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021206034
(22)【出願日】2021-12-20
(71)【出願人】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(74)【代理人】
【識別番号】100098626
【弁理士】
【氏名又は名称】黒田 壽
(72)【発明者】
【氏名】笠舞 真史
【テーマコード(参考)】
2H200
2H270
2H300
【Fターム(参考)】
2H200FA04
2H200GA12
2H200GA23
2H200GA29
2H200GA30
2H200GA34
2H200JA02
2H200JC04
2H200JC20
2H200LA23
2H200PA10
2H200PA11
2H200PA17
2H200PB14
2H200PB15
2H200PB37
2H200PB39
2H270KA04
2H270LA18
2H270LA22
2H270LA32
2H270LA45
2H270LD03
2H270LD04
2H270MB11
2H270MB25
2H270MB27
2H270MC13
2H270MD05
2H270MD12
2H270MD17
2H270ZC03
2H270ZC04
2H270ZC05
2H300EB04
2H300EB07
2H300EB12
2H300EC05
2H300EH16
2H300EJ09
2H300EJ47
2H300EK03
2H300FF05
2H300GG12
2H300GG23
2H300GG32
2H300QQ08
2H300QQ16
2H300QQ24
2H300RR18
2H300RR38
2H300RR48
2H300RR50
2H300TT03
2H300TT04
2H300TT05
(57)【要約】
【課題】各像担持体の画像間における濃度むらの位相ずれ(色ずれ)の発生を抑制する。
【解決手段】回転駆動される複数の像担持体2Y,2M,2C,2K上に形成される各画像を互いに重なり合うように被転写材1上に転写する画像形成装置100の制御装置37であって、前記複数の像担持体上に形成される各画像の像担持体回転周期濃度むらの位相が前記被転写材上で一致するように、前記複数の像担持体間における相対的な回転位置を補正する補正手段を有し、前記補正手段は、非画像形成動作期間中に、前記複数の像担持体のうちの少なくとも1つの像担持体の回転速度を変更することにより前記相対的な回転位置を補正する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転駆動される複数の像担持体上に形成される各画像を互いに重なり合うように被転写材上に転写する画像形成装置の制御装置であって、
前記複数の像担持体上に形成される各画像の像担持体回転周期濃度むらの位相が前記被転写材上で一致するように、前記複数の像担持体間における相対的な回転位置を補正する補正手段を有し、
前記補正手段は、非画像形成動作期間中に、前記複数の像担持体のうちの少なくとも1つの像担持体の回転速度を変更することにより前記相対的な回転位置を補正することを特徴とする制御装置。
【請求項2】
請求項1に記載の制御装置において、
前記補正手段は、前記複数の像担持体の中から選定される基準の像担持体の回転速度を変更せず、残りの像担持体の回転速度を変更することにより、前記相対的な回転位置を補正することを特徴とする制御装置。
【請求項3】
請求項2に記載の制御装置において、
前記補正手段は、前記残りの像担持体における回転位置の各補正量の最大値が最も小さくなるように、前記複数の像担持体の中から前記基準の像担持体を選定することを特徴とする制御装置。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか1項に記載の制御装置において、
前記補正手段は、前記複数の像担持体を回転駆動する駆動手段の上限駆動速度が該駆動手段の下限駆動速度よりも該複数の像担持体における変更前の回転速度から離れているときには、前記少なくとも1つの像担持体の回転速度を増速することにより前記相対的な回転位置を補正し、前記駆動手段の下限駆動速度が該駆動手段の上限駆動速度よりも前記変更前の回転速度から離れているときには、前記少なくとも1つの像担持体の回転速度を減速することにより前記相対的な回転位置を補正することを特徴とする制御装置。
【請求項5】
回転駆動される複数の像担持体上に形成される各画像を互いに重なり合うように被転写材上に転写する画像形成装置であって、
前記複数の像担持体を回転駆動する駆動手段を制御する制御装置として、請求項1乃至4のいずれか1項に記載の制御装置を用いることを特徴とする画像形成装置。
【請求項6】
請求項5に記載の画像形成装置において、
前記複数の像担持体の各回転位置を検出する回転位置検出手段と、
前記複数の像担持体上に形成される位相検出用パターン画像を検出するパターン画像検出手段と、
前記回転位置検出手段及び前記パターン画像検出手段の検出結果に基づいて、前記複数の像担持体上に形成される各画像の像担持体回転周期濃度むらの位相を検出する位相検出手段とを有することを特徴とする画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、制御装置及び画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、回転駆動される複数の像担持体上に形成される各画像を互いに重なり合うように被転写材上に転写する画像形成装置が知られている。
【0003】
例えば、特許文献1には、4つの感光体ドラム(像担持体)上に形成される各画像を、用紙搬送ベルト上に担持されて搬送される用紙(被転写体)上に互いに重なり合うように転写する画像形成装置が開示されている。この画像形成装置では、各感光体ドラムの偏心等に起因して、各感光体ドラムから用紙上に転写される各画像に、感光体ドラムの回転周期をもった濃度むら(像担持体回転周期濃度むら)が発生する。この濃度むらの位相が用紙上で合っていないと、各感光体ドラムの画像間で濃度むらの位相ずれ(色ずれ)が発生する。そのため、この画像形成装置では、基準となる感光体ドラム上の画像の濃度むらの位相に、他の感光体ドラム上の画像の濃度むらの位相を合わせるように、各感光体ドラムの回転停止タイミングを制御する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の画像形成装置では、像担持体回転周期濃度むらの位相ずれ(色ずれ)の発生を抑制するには未だ改善の余地があった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上述した課題を解決するために、本発明は、回転駆動される複数の像担持体上に形成される各画像を互いに重なり合うように被転写材上に転写する画像形成装置の制御装置であって、前記複数の像担持体上に形成される各画像の像担持体回転周期濃度むらの位相が前記被転写材上で一致するように、前記複数の像担持体間における相対的な回転位置を補正する補正手段を有し、前記補正手段は、非画像形成動作期間中に、前記複数の像担持体のうちの少なくとも1つの像担持体の回転速度を変更することにより前記相対的な回転位置を補正することを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、各像担持体の画像間における濃度むらの位相ずれ(色ずれ)の発生を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】実施形態における画像形成装置の全体構成を例示する図。
図2】同画像形成装置の構成を例示するブロック図。
図3】同画像形成装置の補正手段による補正前における各色(Y、M、C)の濃度むらを示す説明図。
図4図3に示す濃度むらをもつ各色トナー像を記録紙に転写したときの色むらを示す説明図。
図5】同補正手段による補正後における各色(Y、M、C)の濃度むらを示す説明図。
図6図5に示す濃度むらをもつ各色トナー像を記録紙に転写したときの色むらを示す説明図。
図7】同画像形成装置による位相合わせ制御の開始時の状態(補正前の状態)を例示する図。
図8】同画像形成装置による位相合わせ制御の終了時の状態(補正後の状態)を例示する図。
図9】同画像形成装置で発生している感光体ドラム上の濃度むらを例示する図。
図10】同画像形成装置の画像形成動作を例示するフローチャート。
図11】実施形態の位置合わせ制御に関わる画像形成装置の動作を例示するタイミングチャート。
図12】実施形態における各感光体ドラムの回転位相の検出動作を例示するフローチャート。
図13】(a)~(c)は、それぞれの感光体ドラムの濃度むらの位相をそれぞれ示す説明図。
図14】演算期間において制御装置による位相補正値の演算処理の流れを示すフローチャート。
図15】感光体ドラムの目標回転速度の一例を示す説明図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明に係る画像形成装置の一実施形態について、図面を参照して説明する。
図1は、本実施形態における画像形成装置100の全体構成を例示する図である。
本実施形態の画像形成装置100は、電子写真方式の画像形成装置であり、4連タンデム型中間転写方式のフルカラー機である。但し、本実施形態は、4連タンデム型直接転写方式のフルカラー機や、1ドラム型中間転写方式のフルカラー機、1ドラム型直接転写方式等のモノクロ機等の他の画像形成装置にも適用可能である。
【0009】
図1に示すように、画像形成装置100は、被転写材としての中間転写ベルト1を備えている。画像形成装置100はまた、中間転写ベルト1の表面移動方向に沿って並設された像担持体としての感光体ドラム2Y,2M,2C,2Kを備えている。なお、符号に付記したY、M、C、Kの添え字はそれぞれ、イエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの色を示している。画像形成装置100には、これらの感光体ドラム2Y,2M,2C,2Kのうちの3つの感光体ドラム2Y,2M,2Cを中間転写ベルト1に対して接離させる接離手段が設けられている。
【0010】
イエローの作像ステーション(作像部)を代表して説明すると、画像形成装置100は、感光体ドラム2Yの周りにその回転方向順に、次に説明する構成を備えている。なお、感光体ドラム2Y,2M,2C,2Kを特に区別しない場合には、添え字を取り除いて感光体ドラム2と総称する。また後述するトナー像検出センサ、帯電チャージャ、光書込ユニット及び現像ユニット等の色ごとに設けられる構成部についても同様に、区別しない場合には添え字を取り除いて総称するものとする。
【0011】
画像形成装置100は、帯電チャージャ3Yと、感光体ドラム2Yの回転位置を検出する回転位置検出手段としてのフォトインタラプタ18Yと、を備える。画像形成装置100はさらに、感光体ドラム2Yに露光を行って静電潜像を書き込む光書込ユニット4Yと、を備える。
【0012】
画像形成装置100はさらに、現像ユニット5Yと、一次転写ローラ6Yと、ブレード及びブラシ等を備えた感光体ドラムクリーニングユニット7Yと、除電ユニットである8Yと、を備える。
【0013】
帯電チャージャ3Y、光書込ユニット4Y及び現像ユニット5Yは、感光体ドラム2Yにトナー像(画像)を形成する形成手段を構成する。画像形成装置100は、形成手段により感光体ドラム2Yに形成されたトナー像を、一次転写ローラ6Yにより中間転写ベルト1に転写できる。他の色においても同様である。
【0014】
中間転写ベルト1は、ローラ11,12,13により回転可能に支持されている。画像形成装置100は、ローラ12に対向する位置に、ブレード及びブラシ等を備えたベルトクリーニングユニット15を備えている。中間転写ベルト1、ローラ11,12,13、並びにベルトクリーニングユニット15は、中間転写ユニット33を構成している。画像形成装置100は、ローラ13に対向する位置に、中間転写ベルト1に形成されたトナー像を記録紙20に二次転写するための二次転写ローラ16を備えている。
【0015】
画像形成装置100は、 光書込ユニット4Y,4C,4M,4Kの鉛直上方に、画像読み取り手段としてのスキャナ部9、および自動原稿供給手段としてのADF(Auto Document Feeder)10等を備えている。
【0016】
画像形成装置100は、装置本体99の下部に、給紙トレイ17を備えている。画像形成装置100は、各給紙トレイ17に収容された記録材としての記録紙20を、ピックアップローラ21および給紙ローラ22により給紙し、搬送ローラ対23により搬送する。画像形成装置100は、記録紙20を、レジストローラ対24により所定のタイミングで中間転写ベルト1と二次転写ローラ16とが互いに対向した二次転写部位であるニップ部N2に送る。
【0017】
画像形成装置100は、ニップ部N2の用紙搬送方向下流側に、定着手段としての定着ユニット25を備えている。図1において、符号26は排紙トレイを、符号27はスイッチバックローラ対を、符号37は制御手段としての制御装置を示している。
【0018】
現像ユニット5Y,5M,5C,5Kはそれぞれ、感光体ドラム2Y,2M,2C,2Kに対し、所定の距離である現像ギャップをとって対向配置された現像剤担持体としての現像ローラ5Ya,5Ma,5Ca,5Kaを備えている。現像ローラ5Ya,5Ma,5Ca,5Kaは、現像ユニット5Y,5M,5C,5K内に収容されているトナーとキャリアとを含む二成分現像剤を担持する。現像ローラ5Ya,5Ma,5Ca,5Kaは、担持した二成分現像剤中のトナーを感光体ドラム2Y,2M,2C,2Kに対向する現像領域において感光体ドラム2Y,2M,2C,2Kに付着させ、感光体ドラム2Y,2M,2C,2K上にトナー像を形成する。
【0019】
本実施形態においては、画像形成装置100は、感光体ドラム2Y,2M,2C,2Kの回転位置を検出する回転位置検出手段として、フォトインタラプタ18Y,18M,18C,18Kを備える。但し、これに限定されず、画像形成装置100はロータリエンコーダ等の回転位置を検出する構成を備えることもできる。
【0020】
光書込ユニット4Y,4C,4M,4Kは、画像情報に基づいて、レーザ制御部によって4つの半導体レーザを駆動させる。光書込ユニット4Y,4C,4M,4Kは、帯電チャージャ3Y,3M,3C,3Kにより暗中にて一様に帯電された感光体ドラム2Y,2M,2C,2Kのそれぞれを照射する4つの書込光を出射する。光書込ユニット4Y,4C,4M,4Kは、この書込光により、感光体ドラム2Y,2M,2C,2Kのそれぞれを暗中にて走査して、感光体ドラム2Y,2M,2C,2Kの表面にY、C、MおよびK用の静電潜像を書き込む。
【0021】
本実施形態では光書込ユニット4Y,4C,4M,4Kとして、半導体レーザから出射したレーザ光によって、次のように光走査を行う。光書込ユニット4Y,4C,4M,4Kとして、レーザ光をポリゴンミラーにより偏向せしめながら、反射ミラーで反射させたり光学レンズに通したりすることで光走査を行う。光書込ユニット4Y,4C,4M,4Kは、半導体レーザに代えて、LEDアレイによって光書込を行うユニットを備えることもできる。
【0022】
次に、画像形成装置100の画像形成動作を一通り説明する。
プリント開始命令が入力されると、感光体ドラム2Y,2M,2C,2Kの周辺、中間転写ベルト1の周辺および給紙搬送経路等にある各ローラが既定のタイミングで回転し始め、給紙トレイ17から記録紙の給紙が開始される。
【0023】
一方、各感光体ドラム2Y,2M,2C,2Kは、帯電チャージャ3Y,3M,3C,3Kによってその表面を一様な電位に帯電され、光書込ユニット4Y,4C,4M,4Kから照射される書込光によってその表面を画像データに従って露光される。露光された後の電位パターンを静電潜像と呼ぶ。この静電潜像を担持した感光体ドラム2Y,2M,2C,2Kの表面に、現像ユニット5Y,5M,5C,5Kからトナーが供給されることにより、感光体ドラム2Y,2M,2C,2Kに担持されている静電潜像が所定の色に現像される。
【0024】
図1の構成においては感光体ドラム2Y,2M,2C,2Kが4色分あるので、それぞれイエロー、マゼンタ、シアン、ブラック(色順はシステムによって異なる)のトナー像が各感光体ドラム2Y,2M,2C,2K上に現像される。
【0025】
各感光体ドラム2Y,2M,2C,2K上に現像されたトナー像は、感光体ドラム2Y,2M,2C,2Kと中間転写ベルト1との接点である一次転写部としてのニップ部N1において、中間転写ベルト1に転写される。すなわち、トナー像は、感光体ドラム2Y,2M,2C,2Kに対向して設置された一次転写ローラ6Y,6M,6C,6Kに印加される一次転写バイアス及び押圧力によって、中間転写ベルト1上に転写される。画像形成装置100は、この一次転写動作を互いにタイミングを合わせながら4色分繰り返すことにより、4色の各トナー像が互いに重なり合って中間転写ベルト1上にフルカラートナー像を形成する。
【0026】
画像形成装置100は、中間転写ベルト1上に形成されたフルカラートナー像を、ニップ部N2において、レジストローラ対24によってタイミングを合わせて搬送されてくる記録紙20に転写する。このとき、二次転写ローラ16に印加される二次転写バイアス及び押圧力によって二次転写が行われる。画像形成装置100は、フルカラートナー像が転写された記録紙20に、定着ユニット25を通過させることにより、その記録紙20の表面に担持されているトナー像を加熱定着させる。
【0027】
画像形成装置100は、片面プリントの場合には、記録紙20をそのまま排紙トレイ26へ直進搬送し、両面プリントの場合には、搬送方向を下向きに変え、用紙反転部に搬送する。画像形成装置100は、用紙反転部へ到達した記録紙20の搬送方向を、ここでスイッチバックローラ対27により逆転し、紙の後端側が先頭になるように用紙反転部から排出する。これをスイッチバック動作と呼び、この動作によって記録紙20の表裏が反転される。表裏反転された記録紙20は定着ユニット25の方には戻らず、再給紙搬送経路を通過して本来の給紙経路に合流する。画像形成装置100は、その後、表面プリントの時と同じようにトナー像を転写し、定着ユニット25を通過させて排紙する。これが両面プリント動作である。
【0028】
また各部の動作を最後まで説明すると、ニップ部N1を通過した感光体ドラム2Y,2M,2C,2Kは、その表面に一次転写残トナーを担持する。画像形成装置100は、感光体ドラムクリーニングユニット7Y,7M,7C,7Kにより一次転写残トナーを除去する。その後、画像形成装置100は、除電ユニット8Y,8M,8C,8Kによってその表面を一様に除電し、次の画像形成のための帯電に備える。また、ニップ部N2を通過した中間転写ベルト1に関しても、その表面に二次転写残トナーを担持している。画像形成装置100は、二次転写残トナーをベルトクリーニングユニット15により除去し、次のトナー像の転写に備える。画像形成装置100は、この様な動作を繰り返すことにより、片面プリント若しくは両面プリントを行う。
【0029】
画像形成装置100は、中間転写ベルト1の外周面に形成されたトナー像の濃度を検出し、光学センサ等を含んで構成された光学センサユニットであるパターン画像検出手段としてのトナー像検出センサ30を備えている。このトナー像検出センサ30は、中間転写ベルト1上のトナーの付着量を検出して画像の濃度むらを検出するために中間転写ベルト1上の画像であるトナー像の濃度を検出するトナー付着量検出センサとして機能する。画像形成装置100は、トナー像検出センサ30により、各色画像の濃度むらの位相ずれ(色ずれ)の補正制御に用いるために中間転写ベルト1の表面に形成された補正制御用の画像パターン(位相検出用パターン画像)を検出する。
【0030】
図1に示した構成例では、画像形成装置100は、中間転写ベルト1の、ローラ11に巻き付いている部分に対向する位置である二次転写前の位置P1に、トナー像検出センサ30を備えている。画像形成装置100は、N2の下流側の位置である二次転写後の位置P2にトナー像検出センサ30を備えてもよい。トナー像検出センサ30を位置P2のようなニップ部N2の下流側に配置する場合には次のように構成することが好ましい。中間転写ベルト1の内方に中間転写ベルト1の振れ止めのためのローラ14を設け、このローラ14に対向するようにトナー像検出センサ30を設けることが好ましい。
【0031】
トナー像検出センサ30における2種類の配置位置のうち、二次転写前の位置P1は、二次転写工程前の中間転写ベルト1上のトナーパターンを検出する位置である。マシンレイアウトの制約がなければ、この構成が採用されることが多い。補正制御用の画像パターンのトナー像を形成してすぐに検出するため、待ち時間も少なく、また、画像パターンのトナー像にニップ部N2をすり抜けさせる必要がないため、そのための工夫は不要となる。
【0032】
しかしながら、4色目(図1の例ではブラック)の作像ステーション直後がニップ部N2のような二次転写位置になっている機種も多く、その場合には、位置P1にセンサを設置するのはスペース的に困難である。そのような場合は、二次転写後の位置である位置P2にトナー像検出センサ30を設置し、中間転写ベルト1上に形成した画像パターンのトナー像を、ニップ部N2をスルーさせた後、そのトナー像の濃度をトナー像検出センサ30で検出する。ニップ部N2をスルーさせる方式としては、二次転写ローラ16の中間転写ベルト1からの離間、二次転写ローラ16への逆バイアスの印加等が考えられるが、ここでは特に限定しない。
【0033】
図2は、画像形成装置100の構成を例示するブロック図である。
図2に示すように、画像形成装置100は、転写装置200と、フォトインタラプタ18と、トナー像検出センサ30と、形成手段220と、モータMと、感光体ドラム2と、ロータリエンコーダ230と、を備える。フォトインタラプタ18は、感光体ドラムそれぞれに対応する4つのフォトインタラプタ18K,18C,18M,18Yで構成されている。トナー像検出センサ30は、各色用ではなく、各色に共用されるものである。形成手段220は、各色用の形成手段220Y,220M,220C,220Kで構成されており、モータMも各色用のモータMK,MC,MM,MYによって構成されている。ロータリエンコーダ230も色毎にあり、それぞれのロータリエンコーダ230Y,230M,230C,230Kによって構成されている。転写装置200は、検出装置210と、制御装置37と、を備える。
【0034】
検出装置210は、感光体ドラム2の回転周期に応じて発生するトナー像の濃度むらを検出する。具体的には、検出装置210は、フォトインタラプタ18により検出される各感光体ドラムの回転位置(回転位相)と、トナー像検出センサ30により検出される各感光体ドラム2の補正制御用の画像パターンの検出結果とに基づいて、当該濃度むらを検出する。本実施形態では、検出装置210は、少なくとも2つの感光体ドラム2の回転速度と所定の回転速度との差が所定の範囲内に収まったときに、4つの感光体ドラム2それぞれの回転位置(回転位相)の検出動作を開始する。
【0035】
また検出装置210は、演算手段211を備える。本実施形態において、演算手段211は、4つの感光体ドラム2のうちの少なくとも2つの感光体ドラム2の回転位置(回転位相)を検出する動作が終了したときに回転位置を算出する演算を開始する。
【0036】
制御装置37は、検出装置210による検出結果と、ロータリエンコーダ230により検出される4つの感光体ドラム2それぞれの回転速度とに基づいて、モータMの回転を制御することにより、感光体ドラム2の回転速度を制御する。本実施形態において、制御装置37は、4つの感光体ドラム2が回転を開始するときに、4つの感光体ドラム2のうちの少なくとも2つの感光体ドラム2が所定の回転速度になるように制御する。
【0037】
また制御装置37は、補正手段371を備える。本実施形態において、補正手段371は、4つの感光体ドラム2のうちの少なくとも2つの感光体ドラム2の回転位置(回転位相)の補正値を算出するための演算が終了したときに濃度むらの補正を開始する。
【0038】
検出装置210および制御装置37は、CPU(Central Processing Unit)並びに不揮発性メモリおよび揮発性メモリを備えている。検出装置210および制御装置37は、揮発性メモリを動作領域としてCPUが不揮発性メモリに記憶されているプログラムを実行することにより、それぞれの機能を実現できる。検出装置210および制御装置37は、CPUに代えて、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)又はFPGA(Field Programmable Gate Array)等の電子回路によりそれぞれの機能を実現してもよい。
【0039】
検出装置210および制御装置37のそれぞれが、CPU、ASICまたはFPGA等を備えてもよいし、検出装置210および制御装置37が共通のCPU、ASICまたはFPGA等を用いてそれぞれの機能を実現してもよい。
【0040】
次に、図3から図6を参照して、画像形成装置100における制御内容について説明する。
図3は、補正手段371による補正前における各色(Y、M、C)の濃度むらを示す説明図である。
図4は、図3に示す濃度むらをもつ各色トナー像(画像)を記録紙に転写したときの色むらを示す説明図である。
図5は、補正手段371による補正後における各色(Y、M、C)の濃度むらを示す説明図である。
図6は、図5に示す濃度むらをもつ各色トナー像(画像)を記録紙に転写したときの色むらを示す説明図である。
【0041】
図3から図6の横軸には、中間転写ベルト1上(記録紙20上)における副走査方向(記録紙の搬送方向)の位置をとっている。一方、図3および図5の縦軸には、画像濃度(トナー濃度)をとり、図4および図6の縦軸は、色の評価指標であるL*、a*およびb*をとっている。
【0042】
図3および図4に示すように、各感光体ドラム2の回転周期に応じた各色のトナー像の濃度むら(トナー付着量変動)が発生しているときに各色の感光体ドラム2をそれぞれ独立で駆動させると、2色以上のトナー像を重ね合わせたときに色ずれが発生する。例えば、濃度の高いトナー像部分と濃度の低いトナー像部分とが重なり合うと、これらの色間におけるトナー付着量の比率が本来の比率から大きく外れ、色味が変わってくる。その結果、図3に示すように各色(Y、M、C)のトナー像の濃度むらが発生しているときには、図4に示すように、a*成分やb*成分が周期的に大きく変動し、周期的な色味変動が生じる。
【0043】
本実施形態では、図5および図6に示すように、各感光体ドラム2の回転周期に応じた各色のトナー像の濃度むらの位相が、中間転写ベルト1上(記録紙20上)で互いに一致するように、各感光体ドラム2の相対的な回転位置を補正する位相合わせ制御を行う。この位相合わせ制御により、図5に示すように、濃度の高いトナー像部分同士、濃度の低いトナー像部分同士が、中間転写ベルト1上でそれぞれ重なり合うようになる。その結果、これらの色間におけるトナー付着量の比率が本来の比率から外れることを抑制することができ、色味の変化を抑える。その結果、図5に示すように各色(Y、M、C)のトナー像の濃度むらが発生している状況であっても、図6に示すように、a*成分やb*成分の変動振幅を小さく抑えることができ、色味変動が抑制される。
【0044】
図7は、画像形成装置100による位相合わせ制御の開始時の状態(補正前の状態)を例示する図である。
図8は、画像形成装置100による位相合わせ制御の終了時の状態(補正後の状態)を例示する図である。
図9は、画像形成装置100で発生している感光体ドラム上の濃度むらを例示する図である。
【0045】
本実施形態の位相合わせ制御は、感光体ドラム2を中間転写ベルト1から離間させた状態で行われる。本実施形態の位相合わせ制御は、3つの感光体ドラム2Y,2M,2C上で発生するそれぞれの濃度むらがピークとなる位置を基準とした濃度むらの位相(各感光体ドラム2の回転位置)φtを、中間転写ベルト1上(記録紙20上)で互いに一致させる。具体的には、当該3つの感光体ドラム2Y,2M,2Cの各濃度むらの位相φtが中間転写ベルト1上(記録紙20上)で互いに一致するように、当該3つの感光体ドラムの相対的な回転位置を補正する。各感光体ドラム2の濃度むらの位相φtは、それぞれの感光体ドラム2の基準回転位置(ホームポジション:回転原点)HPとの回転角度差Bによって示される。なお、初期時における各感光体ドラム2の濃度むらの位相φt(回転角度差B)は、別の調整動作によって事前に取得されたものが用いられる。
【0046】
本実施形態では、副走査方向に沿って感光体ドラム2の回転周期をもつ濃度むらについて、各色の濃度むらの位相φtを所定の濃度むら検出タイミングごとに検出する。そして、検出された位相φtを記録紙20上において合わせるように、各感光体ドラム2の相対的な回転位置を図8に示すように補正する。これにより、2色以上の重ね画像の色ずれ(色味変動)を抑制することができる。
【0047】
図10は、画像形成装置100の画像形成動作を例示するフローチャートである。
図10では、Y、M、CおよびKの4色で画像形成を行い、そのうちの3色の感光体ドラム2Y,2M,2Cについて位相合わせ制御を行う場合を一例として説明する。ただし、本実施形態では、画質に最も影響を及ぼすY、M、Cの3色の位相合わせ制御を行うが、K色を含む場合や、Y、M、C、K以外の色(白色、透明色などの特殊色)を含む場合でも適用可能である。
【0048】
画像形成装置100は、PC(Personal Computer)等の外部装置からの画像形成の開始指示、または画像形成装置100が備える操作部への画像形成開始の操作入力等に応じて画像形成動作を開始する。
【0049】
まず、画像形成装置100は、制御装置37により、感光体ドラム2Y,2M,2C,2Kの回転を開始させる(S61)。このとき、3つの感光体ドラム2Y,2M,2Cは中間転写ベルト1から離間した状態である。続いて、画像形成装置100は、制御装置37により、感光体ドラム2Y,2M,2Cの回転速度と所定の回転速度との差が所定範囲内であるか否かを判定する(S62)。所定の回転速度は、予め定められた目標回転速度等である。
【0050】
そして、ステップS62において所定範囲内であると判定されると(S62のYes)、画像形成装置100は、検出装置210により、3つの感光体ドラム2Y,2M,2Cそれぞれの回転位相φHPの検出を開始する(S63)。画像形成装置100は、検出装置210により、3つすべての感光体ドラム2Y,2M,2Cの回転位相φHPの検出が終了したと判定したら(S64のYes)、演算手段211により、感光体ドラム2Y,2M,2Cそれぞれの位相補正値を演算する(S65)。この位相補正値は、感光体ドラム回転周期をもつ3色Y、M、Cのトナー像の各濃度むらの位相φtが、中間転写ベルト1上(記録紙20上)で互いに一致するように、各感光体ドラム2Y,2M,2Cの回転位置を補正するための補正値である。
【0051】
画像形成装置100は、演算手段211による演算の終了後、補正手段371により、演算した位相補正値に基づいて感光体ドラム2Y,2M,2Cの回転位置の補正を開始する(S66)。その後、画像形成装置100は、感光体ドラム2Y,2M,2Cの回転位置の補正を終了したら(S67のYes)、制御装置37により接離手段を制御して、感光体ドラム2Y,2M,2Cを中間転写ベルト1に接触させる(S68)。そして、画像形成装置100は、記録紙20への画像形成を開始し(S69)、画像形成が終了したら、感光体ドラム2を停止させ(S70)、動作を終了する。
【0052】
このようにして、画像形成装置100は、位相合わせ制御を行った後、感光体ドラム2Y,2M,2Cの回転駆動を停止させずにそのまま画像形成動作を実行し、記録紙20に画像を形成できる。
【0053】
なお、画像形成を行う色の数は2色以上であれば特に制限はなく、各感光体ドラム2に対して検出または補正等を行う順番も適宜変更可能である。また、図10の説明では、感光体ドラム2以外の構成部の制御については説明を省略した。
【0054】
図11は、本実施形態の位置合わせ制御に関わる画像形成装置100の動作を例示するタイミングチャートである。
図11に示すように、本実施形態の位置合わせ制御は、立ち上げ期間、位相検出期間、演算期間、位相補正期間、及び、速度制御期間の順に遷移する。
【0055】
立ち上げ期間は、各色の感光体ドラム2の回転が開始され、回転速度が目標回転速度で安定(例えば、目標回転速度の±3%の範囲内に50msの間、連続で入ったら安定したと判断)するまでの期間である。立ち上げ期間では、制御装置37は、位相合わせ制御が行われる感光体ドラム2Y,2M,2CにおけるモータMY,MM,MCの立ち上げ、すなわち感光体ドラム2Y,2M,2Cを所定の回転速度に収束させる動作を行う。
【0056】
位相検出期間は、立ち上げ期間が終了した後に、各感光体ドラム2に取り付けられたフォトインタラプタ18により、各感光体ドラム2の回転位相(回転原点HP)φHPを検出する期間である。位相検出期間では、検出装置210は、位相合わせ制御が行われる感光体ドラム2Y,2M,2Cのフォトインタラプタ18がそれぞれ出力する回転原点HPの検出信号の立ち上がりエッジに基づき、感光体ドラム2の回転位相φHPを検出する。
【0057】
演算期間では、感光体ドラム2Y,2M,2Cの位相検出期間が終了した後、検出した各感光体ドラムの回転位相φHPを基準にして、各感光体ドラム2Y,2M,2Cで発生している感光体ドラム回転周期の濃度むらの位相φty,φtm,φtcが演算される。そして、各感光体ドラム2Y,2M,2Cで発生している感光体ドラム回転周期の濃度むらの位相φty,φtm,φtcが中間転写ベルト1上(記録紙20上)で互いに一致するように、各感光体ドラムの回転位置を補正するための位相補正値を演算する。
【0058】
位相補正期間は、演算期間が終了した後、演算された各感光体ドラム2Y,2M,2Cの位相補正値を用いて、各感光体ドラムの回転速度を加速または減速することにより、各感光体ドラム2Y,2M,2Cの回転位置を補正する期間である。位相補正期間では、補正手段371は、演算期間において算出された各位相補正値を対応する駆動命令(加速あるいは減速)をそれぞれの感光体ドラム2Y,2M,2CのモータMY,MM,MCに出力し、各感光体ドラムの相対的な回転位置を補正する。
【0059】
速度制御期間は、位相補正期間が終了した後、各感光体ドラム2Y,2M,2Cの回転速度を、もとの所定回転速度(目標回転速度)に戻す期間である。なお、位相補正期間中は、各感光体ドラム2Y,2M,2C間の回転速度は互いに異なっている状態である。そのため、各感光体ドラム2Y,2M,2Cの中間転写ベルト1への当接は、位相補正期間が終了して速度制御期間に遷移した後、感光体ドラム2の回転速度が所定の回転速度で安定した後に行う。
【0060】
図12は、本実施形態における各感光体ドラム2Y,2M,2Cの回転位相φHPの検出動作を例示するフローチャートである。
画像形成装置100は、位相検出期間において、フォトインタラプタ18が各感光体ドラム2Y,2M,2Cの回転原点HPを検出した信号の最初の割込みを基準にして、それぞれの感光体ドラムの回転位相φHPの検出動作を開始する。
【0061】
具体的には、画像形成装置100は、位相検出期間に入って、いずれかの感光体ドラムの回転原点HPの検出信号の割り込みがあったら、例えば感光体ドラム2Yのロータリエンコーダ230Yの出力パルス数を制御装置37で記憶する処理を開始する(S81)。そして、各感光体ドラム2Y,2M,2Cの回転原点HPの検出信号の割り込みがあった時のロータリエンコーダ230Yの出力パルス数を、各感光体ドラム2Y,2M,2Cにおける回転原点HPの回転位置θy,θm,θcとして、それぞれ取得する。本実施形態における各感光体ドラム2Y,2M,2Cの回転位相φHPは、ロータリエンコーダ230Yの出力パルス数による各感光体ドラムの回転位置θy,θm,θcで表される。
【0062】
図13(a)~(c)は、各感光体ドラム2Y,2M,2Cの濃度むらの位相φty,φty,φtcをそれぞれ示す説明図である。
演算期間では、位相検出期間で検出された各感光体ドラム2Y,2M,2Cの回転位相φHP(=θy,θm,θc)と、事前に取得されている各感光体ドラム2Y,2M,2Cについての回転原点HPの回転位置φHPと濃度むらのピーク位置(濃度むらの位相)φty,φtm,φtcとの関係(θyoffset,θmoffset,θcoffset)とから、各感光体ドラム2Y,2M,2Cの位相補正値を算出する。
【0063】
詳しくは、検出された各感光体ドラム2Y,2M,2Cの回転位相φHP(=θy,θm,θc)を基準にした現時点における各濃度むらのピーク位置(濃度むらの位相)φty,φtm,φtcを算出する。そして、算出した濃度むらの位相φty,φtm,φtcが中間転写ベルト1上(記録紙20上)で互いに一致することになる各感光体ドラム2の回転位置を、位相補正値として演算する。
【0064】
本実施形態では、3つの感光体ドラム2Y,2M,2Cの中から基準の感光体ドラムを選定する。そして、選定した基準の感光体ドラムの回転位置は補正せず、残り2つの感光体ドラムの回転位置を補正することにより、これらの3つの感光体ドラム2Y,2M,2Cの相対的な回転位置を補正する。これにより、回転位置を補正する感光体ドラムの数を減らして、位相合わせ制御を簡略化、迅速化することができる。もちろん、3つの感光体ドラムすべての回転位置を補正することにより、これらの3つの感光体ドラム2Y,2M,2Cの相対的な回転位置を補正することもできる。
【0065】
基準の感光体ドラムの選定方法としては、例えば、当該残り2つの感光体ドラム(回転位置の補正を行う感光体ドラム)についての各補正量のうちの最大値が最も小さくなるように、3つの感光体ドラム2Y,2M,2Cの中から基準の感光体ドラムを選定する。このような選定方法により、3つの感光体ドラム2Y,2M,2Cの相対的な回転位置をより迅速に補正することが可能となり、処理時間の短縮化を図ることができる。
【0066】
図14は、演算期間において、制御装置37による位相補正値の演算処理の流れを示すフローチャートである。
まず、制御装置37は、感光体ドラム2の現時点の目標回転速度V(立ち上げ期間後の感光体ドラム2の回転速度)が、感光体ドラム2の下限回転速度Vminよりも、感光体ドラム2の上限回転速度Vmaxに近いか否かを判断する(S1)。具体的には、制御装置37は、(Vmax-V)≦(V-Vmin)であるか否かを判断する。なお、下限回転速度Vminは、当該感光体ドラム2のモータMの下限駆動速度に相当し、上限回転速度Vmaxは、感光体ドラム2のモータMの上限駆動速度に相当する。
【0067】
このとき、例えば、図15に示すように、感光体ドラム2の目標回転速度Vが、感光体ドラム2の下限回転速度Vminよりも上限回転速度Vmaxに近い場合には(S1のYes)、処理ステップS2を実行する。逆に、感光体ドラム2の回転速度Vが、感光体ドラム2の上限回転速度Vmaxよりも下限回転速度Vminに近い場合には(S1のNo)、処理ステップS3を実行する。
【0068】
処理ステップS2では、3つの感光体ドラム2Y,2M,2Cのそれぞれを基準とする場合の、当該基準の感光体ドラムと残り2つの感光体ドラムとの目標回転位置の差(目標回転位相差)を、それぞれ算出する。
【0069】
具体的には、位相検出期間で検出された各感光体ドラム2Y,2M,2Cの回転位相θy,θm,θcと、事前に取得されている各感光体ドラムについての回転原点HPの回転位置φHPと濃度むらの位相φty,φtm,φtcとの関係(θyoffset,θmoffset,θcoffset)とを用いて、各感光体ドラム2の現時点における濃度むらの位相φty,φtm,φtcが算出される。すなわち、各感光体ドラム2の現時点における濃度むらの位相φty,φtm,φtcは、それぞれ、φty=(θy+θyoffset)、φtm=(θm+θmoffset)、φtc=(θc+θcoffset)より、算出される。
【0070】
したがって、例えばY色の感光体ドラム2Yを基準とする場合、当該感光体ドラム2Yと感光体ドラム2Mとの目標回転位相差eYMは、下記の式(1)より算出される。また、当該感光体ドラム2Yと感光体ドラム2Cとの目標回転位相差eYCは、下記の式(2)より算出される。
eYM = φty-φtm
= (θy+θyoffset)-(θm+θmoffset) ・・・(1)
eYC = φty-φtc
= (θy+θyoffset)-(θc+θcoffset) ・・・(2)
【0071】
同様に、M色の感光体ドラム2Mを基準とする場合、当該感光体ドラム2Mと感光体ドラム2Yとの目標回転位相差eMYは、下記の式(3)より算出される。また、当該感光体ドラム2Mと感光体ドラム2Cとの目標回転位相差eMCは、下記の式(4)より算出される。
eMY = φtm-φty
= (θm+θmoffset)-(θy+θyoffset) ・・・(3)
eMC = φtm-φtc
= (θm+θmoffset)-(θc+θcoffset) ・・・(4)
【0072】
同様に、C色の感光体ドラム2Cを基準とする場合、当該感光体ドラム2Cと感光体ドラム2Yとの目標回転位相差eCYは、下記の式(5)より算出される。また、当該感光体ドラム2Cと感光体ドラム2Mとの目標回転位相差eCMは、下記の式(6)より算出される。
eCY = φtc-φty
= (θc+θcoffset)-(θy+θyoffset) ・・・(5)
eCM = φtc-φtm
= (θc+θcoffset)-(θm+θmoffset) ・・・(6)
【0073】
一方、処理ステップS3でも、処理ステップS2と同様、3つの感光体ドラム2Y,2M,2Cのそれぞれを基準とする場合の、当該感光体ドラムと残り2つの感光体ドラムとの目標回転位置の差(目標回転位相差)を、それぞれ算出する。ただし、算出式は、以下の式(7)~(12)を用いる。
【0074】
eYM = φtm-φty
= (θm+θmoffset)-(θy+θyoffset) ・・・(7)
eYC = φtc-φty
= (θc+θcoffset)-(θy+θyoffset) ・・・(8)
eMY = φty-φtm
= (θy+θyoffset)-(θm+θmoffset) ・・・(9)
eMC = φtc-φtm
= (θc+θcoffset)-(θm+θmoffset) ・・・(10)
eCY = φty-φtc
= (θy+θyoffset)-(θc+θcoffset) ・・・(11)
eCM = φtm-φtc
= (θm+θmoffset)-(θc+θcoffset) ・・・(12)
【0075】
次に、以上のようにして算出した目標回転位相差eYM,eYC,eMY,eMC,eCY,eCMの値を、0~360°の値に変換する処理を実行する。具体的には、算出した目標回転位相差の値がゼロよりも小さい値(マイナス値)である場合には(S4のYes)、その値に360°を加算した値に変換する(S5)。また、値がゼロよりも大きい値(プラス値)である場合には(S6のYes)、その値から360°を減算した値に変換する(S7)。
【0076】
その後、上述した目標回転位相差eYM,eYC,eMY,eMC,eCY,eCMの値(変換後の値)を用いて、補正量の最大値が最も小さくなるような基準の感光体ドラムを選定する(S8)。具体的には、例えば、各感光体ドラム2Y,2M,2Cをそれぞれ基準とした場合の残り2つの感光体ドラムの目標回転位相差(変換後の値)のうちの大きい方を、それぞれ選ぶ。そして、選ばれた目標回転位相差の中で値が最小となる場合の感光体ドラムを特定する。このようにして特定される感光体ドラムを基準の感光体ドラムとして選定する。
【0077】
基準の感光体ドラムを選定したら、次に、各感光体ドラム2Y,2M,2Cの濃度むらの位相φty,φtm,φtcが中間転写ベルト1上(記録紙20上)で互いに一致することになる各感光体ドラムの回転位置すなわち位相補正値を決定する(S9)。具体的には、基準の感光体ドラムについては、回転位置を補正しないので、その位相補正値はゼロとなる。残り2つの感光体ドラムについては、当該基準の感光体ドラムとの目標回転位相差(変換後の値)を用いて、その位相補正値を決定する。
【0078】
詳しくは、本実施形態のように、感光体ドラム2の回転速度を変更して感光体ドラム2の回転位置を補正する場合、回転速度を大きく変更できる方が、より早く感光体ドラム2の回転位置を目標の回転位置に補正することができる。そのため、例えば、図15に示すように、感光体ドラム2の目標回転速度Vが感光体ドラム2の下限回転速度Vminよりも上限回転速度Vmaxに近い場合(S1のYes)には、感光体ドラム2の回転速度を減速して補正する方がよい。したがって、この場合には、処理ステップS9において、目標回転位相差(変換後の値)をマイナス値に変換したものを位相補正値として決定する。これによれば、基準の感光体ドラム以外の残り2つの感光体ドラムについては、回転速度を減速して回転位置を補正することになり、より迅速に補正を完了することができる。
【0079】
一方、感光体ドラム2の目標回転速度Vが感光体ドラム2の上限回転速度Vmaxよりも下限回転速度Vminに近い場合には(S1のNo)、目標回転位相差(変換後の値)をプラス値のまま、位相補正値として決定する。これによれば、基準の感光体ドラム以外の残り2つの感光体ドラムについては、回転速度を増速して回転位置を補正することになり、より迅速に補正を完了することができる。
【0080】
ここで、θy=200°、θm=200°、θc=90°、θyoffset=200°、θmoffset=180°、θcoffset=180°、Vmax=420、Vmin=200、V=400である場合において、位相補正値の演算処理を例示すると、以下のようになる。
【0081】
まず、処理ステップS1では、Vmax-V=20、V-Vmin=200となるので、(Vmax-V)≦(V-Vmin)となり(S1のYes)、処理ステップS2に進む。そして、処理ステップS2で算出される各目標回転位相差eYM,eYC,eMY,eMC,eCY,eCMの値は、eYM=-20、eYC=-130、eMY=-20、eMC=110、eCY=-130、eCM=-110となる。
【0082】
これらの各目標回転位相差eYM,eYC,eMY,eMC,eCY,eCMの値は、処理ステップS4~S7において、それぞれ、eYM=340、eYC=230、eMY=340、eMC=110、eCY=230、eCM=250に変換される。その後、処理ステップS8において、各感光体ドラム2Y,2M,2Cをそれぞれ基準とした場合の目標回転位相差(変換後の値)のうちの大きい方を選ぶと、eYM=340、eMY=340、eCM=250が選ばれる。そして、この中で値が最小となるのは、eCM=250であるため、これに対応する感光体ドラム2Cが基準の感光体ドラムとして選定される。
【0083】
その後、基準の感光体ドラム2Cについては、回転位置を補正しないので、その位相補正値はゼロとなる。残り2つの感光体ドラム2Y,2Mについては、当該基準の感光体ドラム2Cとの目標回転位相差eCY(=230),eCM(=250)を用いて、その位相補正値を決定する。具体的には、本例では、感光体ドラム2の目標回転速度Vが感光体ドラム2の下限回転速度Vminよりも上限回転速度Vmaxに近い(S1のYes)。そのため、処理ステップS9においては、目標回転位相差(変換後の値)をマイナス値に変換したものを位相補正値として決定する。したがって、感光体ドラム2Yの位相補正値(目標回転位置)は-230となり、感光体ドラム2Mの位相補正値(目標回転位置)は-250となる。
【0084】
以上に説明したものは一例であり、次の態様毎に特有の効果を奏する。
[第1態様]
第1態様は、回転駆動される複数の像担持体(例えば感光体ドラム2Y,2M,2C,2K)上に形成される各画像(例えばトナー像)を互いに重なり合うように被転写材(例えば中間転写ベルト1)上に転写する画像形成装置100の制御装置37であって、前記複数の像担持体上に形成される各画像の像担持体回転周期濃度むらの位相φty,φtm,φtcが前記被転写材上で一致するように、前記複数の像担持体間における相対的な回転位置を補正する補正手段371を有し、前記補正手段は、非画像形成動作期間中に、前記複数の像担持体のうちの少なくとも1つの像担持体の回転速度を変更することにより前記相対的な回転位置を補正することを特徴とするものである。
従来の画像形成装置では、像担持体回転周期濃度むらの位相が被転写材上で互いに一致するように、複数の像担持体間における停止時の各回転位置を制御する。この場合、複数の像担持体の回転駆動を再開する時の回転動作(例えば、各像担持体の駆動開始タイミング、目標速度までの立ち上がり速度プロファイルなど)に相対的なずれが発生すると、各像担持体の画像間で濃度むらの位相ずれ(色ずれ)が発生してしまう。
本態様によれば、非画像形成動作期間中に複数の像担持体のうちの少なくとも1つの像担持体の回転速度を変更することにより、像担持体回転周期濃度むらの位相が被転写材上で互いに一致するように、複数の像担持体間における相対的な回転位置を補正する。これによれば、複数の像担持体を回転駆動させながら複数の像担持体間における相対的な回転位置を補正できる。よって、複数の像担持体の回転駆動の開始時に回転動作の相対的なずれが生じたとしても、画像形成動作を開始するまでの非画像形成動作期間中に複数の像担持体間における相対的な回転位置を補正し、この状態で画像形成動作を開始でき、各像担持体の画像間で濃度むらの位相ずれ(色ずれ)の発生を抑制できる。
【0085】
[第2態様]
第2態様は、第1態様において、前記補正手段は、前記複数の像担持体の中から選定される基準の像担持体(例えばC色の感光体ドラム2C)の回転速度を変更せず、残りの像担持体(例えばY色とM色の感光体ドラム2Y,2M)の回転速度を変更することにより、前記相対的な回転位置を補正することを特徴とするものである。
これによれば、回転速度を変更する像担持体の数を減らして、前記相対的な回転位置の補正の制御の簡略化、迅速化を図ることができる。
【0086】
[第3態様]
第3態様は、第2態様において、前記補正手段は、前記残りの像担持体における回転位置の各補正量の最大値が最も小さくなるように、前記複数の像担持体の中から前記基準の像担持体を選定することを特徴とするものである。
これによれば、前記相対的な回転位置の補正の迅速化を図ることができる。
【0087】
[第4態様]
第4態様は、第1乃至第3態様のいずれかにおいて、前記補正手段は、前記複数の像担持体を回転駆動する駆動手段(例えばモータM)の上限駆動速度(例えばVmax)が該駆動手段の下限駆動速度(例えばVmin)よりも該複数の像担持体における変更前の回転速度(例えば目標回転速度V)から離れているときには、前記少なくとも1つの像担持体の回転速度を増速することにより前記相対的な回転位置を補正し、前記駆動手段の下限駆動速度が該駆動手段の上限駆動速度よりも前記変更前の回転速度から離れているときには、前記少なくとも1つの像担持体の回転速度を減速することにより前記相対的な回転位置を補正することを特徴とするものである。
少なくとも1つの像担持体の回転速度を変更して複数の像担持体間の相対的な回転位置を補正する場合、像担持体の回転速度を大きく変更できる方が、複数の像担持体間の相対的な回転位置をより早く補正することが可能となる。本態様によれば、像担持体の回転速度を増速させる方が像担持体の回転速度を大きく変更できる場合には、像担持体の回転速度を増速して補正を行い、逆の場合には像担持体の回転速度を減速して補正を行う。したがって、前記相対的な回転位置の補正の迅速化を図ることができる。
【0088】
[第5態様]
第5態様は、回転駆動される複数の像担持体(例えば感光体ドラム2Y,2M,2C,2K)上に形成される各画像(例えばトナー像)を互いに重なり合うように被転写材(例えば中間転写ベルト1)上に転写する画像形成装置100であって、前記複数の像担持体を回転駆動する駆動手段(例えばモータM)を制御する制御装置37として、上述した制御装置を用いることを特徴とするものである。
本態様によれば、複数の像担持体の回転駆動を再開する時の回転動作の相対的なずれに起因した色ずれの発生がなく、各像担持体の画像間で濃度むらの位相ずれ(色ずれ)の発生を抑制できる。
【0089】
[第6態様]
第6態様は、第5態様において、前記複数の像担持体の各回転位置(例えば各感光体ドラムの回転位相φHP=θy,θm,θc)を検出する回転位置検出手段(例えば、回転原点HP、フォトインタラプタ18)と、前記複数の像担持体上に形成される位相検出用パターン画像を検出するパターン画像検出手段(例えばトナー像検出センサ30)と、前記回転位置検出手段及び前記パターン画像検出手段の検出結果に基づいて、前記複数の像担持体上に形成される各画像の像担持体回転周期濃度むらの位相を検出する位相検出手段(例えば検出装置210)とを有することを特徴とするものである。
これによれば、複数の像担持体上に形成される各画像の像担持体回転周期濃度むらの位相がずれた場合でも、各像担持体の画像間で濃度むらの位相ずれ(色ずれ)の発生を抑制できる。
【符号の説明】
【0090】
1 :中間転写ベルト
2 :感光体ドラム
3 :帯電チャージャ
4 :光書込ユニット
5 :現像ユニット
6 :一次転写ローラ
7 :感光体ドラムクリーニングユニット
8 :除電ユニット
9 :スキャナ部
11~14:ローラ
15 :ベルトクリーニングユニット
16 :二次転写ローラ
17 :給紙トレイ
18 :フォトインタラプタ
20 :記録紙
21 :ピックアップローラ
22 :給紙ローラ
23 :搬送ローラ対
24 :レジストローラ対
25 :定着ユニット
26 :排紙トレイ
30 :トナー像検出センサ
33 :中間転写ユニット
37 :制御装置
100 :画像形成装置
200 :転写装置
210 :検出装置
211 :演算手段
220 :形成手段
230 :ロータリエンコーダ
371 :補正手段
M :モータ
【先行技術文献】
【特許文献】
【0091】
【特許文献1】特開2011-81171号公報
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15