(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023091406
(43)【公開日】2023-06-30
(54)【発明の名称】シート供給装置及び画像形成装置
(51)【国際特許分類】
B65H 3/48 20060101AFI20230623BHJP
【FI】
B65H3/48 320B
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021206135
(22)【出願日】2021-12-20
(71)【出願人】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(74)【代理人】
【識別番号】100107423
【弁理士】
【氏名又は名称】城村 邦彦
(74)【代理人】
【識別番号】100120949
【弁理士】
【氏名又は名称】熊野 剛
(74)【代理人】
【識別番号】100182453
【弁理士】
【氏名又は名称】野村 英明
(72)【発明者】
【氏名】来栖 由佳
(72)【発明者】
【氏名】橋本 正人
(72)【発明者】
【氏名】高野 悟
【テーマコード(参考)】
3F343
【Fターム(参考)】
3F343FA02
3F343FB01
3F343FC01
3F343FC04
3F343GA03
3F343GB01
3F343GC01
3F343GD01
3F343HA12
3F343HA34
3F343JD03
3F343JD28
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3F343KB04
3F343KB05
3F343KB17
3F343LA04
3F343LA14
3F343LB10
3F343LC08
3F343LD07
3F343LD08
3F343LD27
3F343LD28
3F343MB04
3F343MB09
3F343MC19
(57)【要約】
【課題】モータ又はソレノイドなどの駆動源を用いずに、シートに対するエアの吹き付け位置を調整する。
【解決手段】シートSを載置するシート載置部41と、シート載置部41に載置されるシートSの束の上部にエアを吹き付けてシートSを浮上させる送風部60と、浮上したシートSを給送するシート給送部とを備えるシート供給装置において、送風部60は、エアを供給するエア供給部62と、エア供給部62から供給されたエアをシートSに向かって吹き出す開口部63aを有するノズル部材63と、ノズル部材63を上下方向に案内するガイド部64を有し、ノズル部材63は、エア供給部62から供給されるエアによって昇降する。
【選択図】
図10
【特許請求の範囲】
【請求項1】
シートを載置するシート載置部と、
前記シート載置部に載置される前記シートの束の上部にエアを吹き付けて前記シートを浮上させる送風部と、
浮上した前記シートを給送するシート給送部とを備えるシート供給装置において、
前記送風部は、エアを供給するエア供給部と、前記エア供給部から供給されたエアを前記シートに向かって吹き出す開口部を有するノズル部材と、前記ノズル部材を上下方向に案内するガイド部を有し、
前記ノズル部材は、前記エア供給部から供給されるエアによって昇降することを特徴とするシート供給装置。
【請求項2】
前記送風部は、前記ノズル部材を下方へ付勢する弾性部材を有する請求項1に記載のシート供給装置。
【請求項3】
前記送風部は、前記ノズル部材の上方から前記ノズル部材に向かってエアを吹き付けるエア吹付部を有する請求項1に記載のシート供給装置。
【請求項4】
前記送風部は、前記エア供給部から供給されるエアを分岐させて前記エア吹付部へ誘導する分岐流路を有する請求項3に記載のシート供給装置。
【請求項5】
前記送風部は、前記ノズル部材から前記シートに向かってエアを吹き出す吹き出し口の開放幅を変更する吹き出し幅変更機構を有する請求項1に記載のシート供給装置。
【請求項6】
前記送風部は、浮上した前記シートの上面に接触して前記シートを押さえるシート押さえ部を有する請求項1から5のいずれか1項に記載のシート供給装置。
【請求項7】
請求項1から6のいずれか1項に記載のシート供給装置を備えることを特徴とする画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シート供給装置及び画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
複写機又はプリンタなどの画像形成装置に搭載されるシート供給装置として、積載されるシート束の上部にエアを吹き付けてシートを浮上させる送風部を備えるものが知られている。
【0003】
この種のシート供給装置においては、送風部からシート束の上部に向かってエアが吹き付けられることにより、上部のシートが浮上して分離し、分離した最上位のシートが給送ローラなどの給送部材によって給送される。そして、シートの給送が行われるにつれてシート束の高さが低くなると、シート束が持ち上げられて、最上位のシートが給送部材に対して良好に接触するように維持される。
【0004】
ここで、シート束を持ち上げるために、シート束が載置される載置部を傾斜させると、シート束も傾くため、エアの吹き付けによるシートの分離を安定して行えなくなる虞がある。そのため、特許文献1(特開2013-230926号公報)においては、シート束が持ち上げられて傾いた際に、この傾きに対応してエア吹き出し口の角度及び高さを変更する構成が提案されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献1において提案される構成においては、エア吹き出し口を駆動させるモータなどの駆動源が必要になるため、シート供給装置が大型化したり、高コスト化したりする課題がある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、本発明は、シートを載置するシート載置部と、前記シート載置部に載置される前記シートの束の上部にエアを吹き付けて前記シートを浮上させる送風部と、浮上した前記シートを給送するシート給送部とを備えるシート供給装置において、前記送風部は、エアを供給するエア供給部と、前記エア供給部から供給されたエアを前記シートに向かって吹き出す開口部を有するノズル部材と、前記ノズル部材を上下方向に案内するガイド部を有し、前記ノズル部材は、前記エア供給部から供給されるエアによって昇降することを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、モータ又などの駆動源を用いずに、シートに対するエアの吹き付け位置を調整できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の一実施形態に係る画像形成装置の概略構成図である。
【
図2】本実施形態に係るシート供給装置の概略構成を示す斜視図である。
【
図3】本実施形態に係るシート供給装置の概略構成を示す側面図である。
【
図4】シート束が持ち上げられた状態を示す側面図である。
【
図5】本発明の第1実施形態に係る送風部の構成を示す斜視図である。
【
図12】ノズル開口部の開放面積とノズル部材内のエア圧との関係を示す図である。
【
図13】本発明の第2実施形態に係るシート供給装置の構成を示す図である。
【
図14】本発明の第3実施形態に係るシート供給装置の構成を示す図である。
【
図15】本発明の第4実施形態に係るシート供給装置の構成を示す図である。
【
図16】本発明の第5実施形態に係るシート供給装置の構成を示す図である。
【
図17】吹き出し口の開放幅を変更した場合のノズル部材の動作を説明するための図である。
【
図18】吹き出し口の開放幅を変更した場合のノズル部材の動作を説明するための図である。
【
図19】吹き出し口の開放幅を変更した場合のノズル部材の動作を説明するための図である。
【
図20】本発明の第6実施形態に係るシート供給装置の構成を示す図である。
【
図21】載置トレイが水平状態のまま昇降するシート供給装置の例を示す図である。
【
図22】給送方向の前側と後側の両方にそれぞれ送風部が配置されているシート供給装置の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、添付の図面に基づき、本発明について説明する。なお、本発明を説明するための各図面において、同一の機能もしくは形状を有する部材及び構成部品などの構成要素については、判別が可能な限り同一符号を付すことにより一度説明した後ではその説明を省略する。
【0010】
図1は、本発明に係る画像形成装置の実施の一形態を示す図である。ここで、本明細書中における「画像形成装置」には、プリンタ、複写機、ファクシミリ、印刷機、又は、これらのうちの二つ以上を組み合わせた複合機などが含まれる。以下の説明では、電子写真方式の画像形成装置を例に挙げるが、作像方式としては、電子写真方式のほか、インクジェット方式などでもよい。また、本明細書中の「画像形成」とは、文字及び図形などの意味を持つ画像を形成するだけでなく、パターンなどの意味を持たない画像を形成することも意味する。まず、
図1を参照して、本実施形態に係る画像形成装置の全体構成及び動作について説明する。
【0011】
図1に示されるように、本実施形態に係る画像形成装置1は、画像読取部2と、画像形成部3と、シート供給部4を備えている。
【0012】
画像読取部2には、原稿を搬送する原稿搬送装置23と、搬送される原稿の画像情報を読み取る画像読取装置24が設けられている。
【0013】
原稿搬送装置23は、原稿を載置する原稿トレイ25と、原稿トレイ25から原稿を1枚ずつ分離して画像読取装置24に向けて搬送する原稿搬送部26と、画像読取装置24によって画像が読み取られた原稿が排出される原稿排出トレイ27を備えている。
【0014】
画像読取装置24は、原稿の画像を読み取る光学走査ユニット31を備えている。光学走査ユニット31は、原稿に光を照射する光源のほか、原稿に照射された光の反射光から画像を読み取るCCD(電荷結合素子)などを備えている。なお、画像を読み取る手段として、CCDに代えて密着型イメージセンサ(CIS)などの他のイメージセンサを用いてもよい。また、画像読取装置24は、画像形成装置1に搭載されたものではなく、画像形成装置1とは離れた別の場所に設置され、有線又は無線によって画像形成装置1との間で通信可能なものであってもよい。
【0015】
画像形成部3には、4つの作像ユニット10K,10Y,10M,10Cと、光書込装置11と、転写装置12と、タイミングローラ対13と、定着装置14と、排紙ローラ対15が設けられている。
【0016】
4つの作像ユニット10K,10Y,10M,10Cは、カラー画像の色分解成分に対応するブラック、イエロー、マゼンタ、シアンの異なる色の現像剤を収容している以外は同じ構成である。具体的に、各作像ユニット10K,10Y,10M,10Cは、像担持体としてのドラム状の感光体16と、感光体16の表面を帯電する帯電装置17と、感光体16の表面に現像剤としてのトナーを供給してトナー画像を形成する現像装置18と、感光体16の表面をクリーニングするクリーニング装置19を有している。
図1においては、ブラックの画像を形成する作像ユニット10Kについてのみ、感光体16、帯電装置17、現像装置18、クリーニング装置19の符号を付しており、その他の作像ユニット10Y,10M,10Cについては符号を省略している。
【0017】
転写装置12は、複数のローラによって張架された無端状の中間転写ベルト20と、各感光体16上のトナー画像を中間転写ベルト20へ転写する4つの一次転写ローラ21と、中間転写ベルト20上に転写されたトナー画像をシートへ転写する二次転写ローラ22を有している。
【0018】
シート供給部4には、シートを供給する複数のシート供給装置5と、各シート供給装置5から給送されたシートを搬送する複数の搬送ローラ30が設けられている。各シート供給装置5は、画像形成用のシートSを収容するシート収容部40と、シート収容部40からシートSを給送するシート給送部50を備えている。シート収容部40には、シートSが載置されるシート載置部としての載置トレイ41などが設けられ、シート給送部50には、シート収容部40に収容されているシートS(シート束)のうち、最上位のシートSを給送する給送ベルト51が設けられている。シート収容部40に収容されるシートSは、例えば、普通紙などの用紙である。なお、用紙には、普通紙のほか、厚紙、はがき、封筒、薄紙、塗工紙(コート紙及びアート紙など)、トレーシングペーパなどが含まれる。
【0019】
また、本実施形態に係る画像形成装置1には、必要に応じて別のシート供給装置6を増設することもできる。
図1において増設されているシート供給装置6は、昇降可能な載置トレイ32が設けられたシート収容部28と、載置トレイ32に載置されるシートSを給送する給送ベルト33が設けられたシート供給部29を備えている。
【0020】
図1を参照しつつ、本実施形態に係る画像形成装置の基本動作について説明する。
【0021】
印刷動作開始の指示があると、各作像ユニット10K,10Y,10M,10Cにおいて、感光体16が回転駆動され、帯電装置17によって感光体16の表面が均一な高電位に帯電される。次いで、画像読取装置24によって読み取られた原稿の画像情報、あるいは端末からプリント指示されたプリント情報に基づいて、光書込装置11が各感光体16の帯電面を露光することにより、露光された部分の電位が低下して静電潜像が形成される。そして、この静電潜像に対して現像装置18からトナーが供給され、各感光体16上にトナー画像が形成される。
【0022】
各感光体16上に形成されたトナー画像は、各感光体16の回転に伴って一次転写ローラ21の位置(一次転写ニップ)に達すると、回転駆動する中間転写ベルト20に順次重なり合うように転写される。そして、中間転写ベルト20上に転写されたトナー画像は、中間転写ベルト20の回転に伴って二次転写ローラ22の位置(二次転写ニップ)へ搬送され、シートに転写される。このシートは、シート供給部4又は増設されたシート供給装置6から供給されたものである。供給されたシートは、タイミングローラ対13によって一旦停止された後、中間転写ベルト20上のトナー画像が二次転写ニップに至るタイミングに合わせて搬送される。かくして、シート上にフルカラーのトナー画像が担持される。また、トナー画像が転写された後、各感光体16上に残留するトナーは各クリーニング装置19によって除去される。
【0023】
トナー画像が転写されたシートは、定着装置14へと搬送され、定着装置14によってシートにトナー画像が定着される。その後、シートは排紙ローラ対15によって装置外に排出されて、一連の印刷動作が完了する。
【0024】
続いて、本実施形態に係るシート供給装置の構成について詳しく説明する。
【0025】
図2に示されるように、本実施形態に係るシート供給装置5は、シートSが収容されるシート収容部40を備えている。シート収容部40には、シートSが載置される上記載置トレイ41のほか、一対のサイドフェンス42と、エンドフェンス43が設けられている。一対のサイドフェンス42は、載置トレイ41に載置されるシートS(シート束)の搬送方向Aに沿った両側端s3の位置を規制する側端位置規制部材である。各サイドフェンス42は、互いに接近したり離間したりしてシートSの幅方向へ移動可能に構成されており、各サイドフェンス42が積載されるシートSの両側端s3に接触することにより、シートSの幅方向の移動が規制される。一方、エンドフェンス43は、載置されるシートS(シート束)の搬送方向Aの後端s2の位置を規制する後端位置規制部材である。エンドフェンス43は、シートSの搬送方向A及びその反対方向に移動可能に構成されており、エンドフェンス43が積載されるシートSの後端s2に接触することにより、シートSの搬送方向Aとは反対方向の移動が規制される。
【0026】
また、各サイドフェンス42には、載置されるシートSの両側端s3にエアを吹き付けてシートSの分離を補助する送風部60が設けられている。各サイドフェンス42は、シート束に対向する面に設けられた吹き出し口61を有し、この吹き出し口61からシート束の上部にエアが吹き付けられることにより、複数枚のシートSが浮上して分離する。そして、分離した最上位のシートSが、給送ベルト51よって送り出される。
【0027】
ところで、シートの給送に伴いシート束の高さが低くなると、最上位のシートの位置も低くなる。このため、本実施形態においては、シート束の高さが低くなると、載置トレイ41が
図3に示される水平状態から
図4に示される状態へ傾斜し、シート束が持ち上げられる。これにより、シート束の前端s1側においては、最上位のシートSが搬送ベルト51によって給送可能な高さに保持される。しかしながら、シート束に対してエアが吹き付けられる位置(シート束の前端s1と後端s2の間の中間位置)においては、シート束があまり押し上げられないため、シートの給送に伴ってシート束の高さが低くなると、これに合わせてエアの吹き付け位置も低くする必要がある。
【0028】
ここで、エアの吹き付け位置を変更する方法として、例えば、モータあるいはソレノイドなどの駆動源を用いて吹き出し口を昇降可能に構成する方法がある。しかしながら、このような駆動源を用いる方法は、装置が高コスト化したり大型化したりする課題がある。そのため、本発明の実施形態においては、次のような構成を採用することにより、モータ又はソレノイドなどの駆動源を用いずに、エアの吹き付け位置を変更できるシート供給装置を実現している。以下、エア吹き付け位置を調整可能な本実施形態に係る送風部の構成について説明する。
【0029】
図5は、サイドフェンス42に設けられる送風部60の構成を示す斜視図であり、
図6は、その送風部60の断面図である。
【0030】
図5及び
図6に示されるように、送風部60は、エア供給部としてのファン62と、エアを吹き出す開口部63aを有するノズル部材63と、ノズル部材63を上下方向に案内するガイド部64を有している。なお、
図5及び
図6においては、一方のサイドフェンス42のみが示されているが、他方のサイドフェンス42に設けられる送風部60も基本的に同じ構成である。
【0031】
ノズル部材63とガイド部64は、サイドフェンス42内に設けられている。すなわち、ノズル部材63及びガイド部64は、各サイドフェンス42の互いに対向する内側の側壁42aとこれとは反対側の外側の側壁42bの間に設けられている。また、サイドフェンス42の内側の側壁42aには、その下部から上部に渡って、シート束に向かってエアを吹き出す上記吹き出し口61が設けられている。そして、この吹き出し口61に沿ってガイド部64が設けられており、このガイド部64内にノズル部材63が上下方向へ移動可能に収容されている。
【0032】
ノズル部材63は、箱状の部材であり、上壁部63bと、上壁部63bから下方へ伸びる側壁部63cを有している。ノズル部材63の側壁部63cのうち、サイドフェンス42の吹き出し口61に対向する正面側には、エアを吹き出すための開口部63aが設けられている。また、ノズル部材63の底部は、ファン62から供給されるエアをノズル部材63内に導くためのエア導入口63dが設けられている。なお、エア導入口63dは、側壁部63cの一部に設けられていてもよい。
【0033】
ファン62は、サイドフェンス42の外側に設けられている。ファン62とサイドフェンス42は、給気路65を介して連結されており、ファン62から送られるエアが給気路65を通ってノズル部材63内へ供給可能に構成されている。また、ファン62に代えて、ブロワ又はコンプレッサなどのエア供給手段を用いていてもよい。
【0034】
続いて、本実施形態に係る送風部の動作について説明する。
【0035】
図7に示されるように、ファン62が駆動しない状態においては、ノズル部材63がガイド部64の最下部に位置している。そして、この状態からファン62が駆動し、ファン62からノズル部材63内へエアが供給されると、
図8に示されるように、ノズル部材63が、ファン62から供給されるエアによって押し上げられる。すなわち、このとき、載置トレイ41の上にシート束が載置されているため、シート束の側面に接近する(対向する)ノズル部材63の開口部63aはシート束によって閉鎖され、ノズル部材63内にエアが供給されても、開口部63aからエアがほとんど排出されない。このため、ノズル部材63内に供給されるエアの圧力(静圧)が上昇する。そして、エア圧の上昇に伴い、エア圧によるノズル部材63の押し上げ力がノズル部材63の荷重を上回ると、ノズル部材63が押し上げられる。
【0036】
押し上げられたノズル部材63は、ガイド部64に沿って上昇する。そして、
図9に示されるように、ノズル部材63の上壁部63bがシート束の上面よりも上方位置へ達すると、ノズル部材63の開口部63a(以下、「ノズル開口部」という。)の上端がシート束の上面を越えるため、ノズル開口部63aの一部(上部)が開放された状態となる。これにより、ノズル開口部63aからエアが吹き出されるため、ノズル部材63内のエア圧が低下し、エアによる押し上げ力も低下する。その後、
図10に示されるように、ノズル部材63の上昇に伴いノズル部材63が所定の高さに達すると、エアの押し上げ力とノズル部材63の荷重とが釣り合うことにより、ノズル部材63の上昇が停止する。
【0037】
ここで、ファン62から供給されるエアの風量が一定の場合、ノズル部材63内のエア圧は、ノズル部材63の上昇に伴いノズル開口部63aの開放面積が大きくなると小さくなり、反対に、ノズル部材63の降下に伴ってノズル開口部63aの開放面積が小さくなると大きくなる。従って、ノズル部材63が上昇しすぎると、エア圧が小さくなってノズル部材63が降下し、ノズル部材63が降下しすぎると、エア圧が大きくなってノズル部材63が上昇する。このため、上記のように、エアによる押し上げ力とノズル部材63の荷重とが釣り合った状態で、継続してファン62から一定風量のエアが供給されることにより、ノズル部材63がシート束に対して所定の高さに保持され、ノズル開口部63aの開放面積が一定に維持される。
【0038】
その後、シートSの給送が行われ、
図11に示されるように、シート束の高さが低くなると、ノズル開口部63aの開放面積が大きくなるため、ノズル部材63内のエア圧が低下し、これに伴ってエアによる押し上げ力も小さくなる。その結果、エアによる押し上げ力とノズル部材63の荷重とが釣り合わなくなり、ノズル部材63が降下する。そして、ノズル部材63が降下すると、ノズル開口部63aの開放面積が小さくなることにより、ノズル部材63内のエア圧が上昇し、再びエアによる押し上げ力とノズル部材63の荷重とが釣り合う状態となる。その結果、ノズル部材63の降下が停止し、ノズル部材63は、一定の開放面積を確保するようにシート束に対して所定の高さで位置保持される。
【0039】
以降、同じように、シートSの給送に伴ってシート束の高さが低くなると、ノズル部材63が降下し、ノズル部材63が降下した結果、エアによる押し上げ力とノズル部材63の荷重が釣り合うことにより、ノズル部材63の降下が停止する。従って、ノズル部材63は、シート束の高さに合わせて所定の高さに位置保持される。
【0040】
図12は、ファンの駆動を開始してから停止するまでの、ノズル開口部の開放面積と、ノズル部材内のエア圧(静圧)との関係を示す図である。
図12中の実線がエア圧を示し、二点鎖線が開放面積を示す。
【0041】
図12に示されるように、ファンが駆動し、ノズル部材内にエアが供給されると、ノズル内のエア圧がP0からP2へ上昇し(
図12中の時間T0~T1の状態)、ノズル部材が押し上げられる(
図8参照)。そして、ノズル部材がシート束の上面を越えてノズル開口部の一部が開放される(
図9参照)。その後、ノズル部材の上昇に伴って、ノズル開口部の開放面積がB0からB1へ増加すると、ノズル部材内のエア圧がP2からP1へ低下する(
図12中の時間T2~T3の状態)。そして、エアの押し上げ力とノズル部材の荷重とが釣り合った状態となることにより、ノズル部材の上昇が停止する(
図10参照)。
【0042】
その後、ノズル開口部の開放面積が一定(B1)となるようにノズル部材が位置保持される(
図12中の時間T3~T4の状態)。このとき、シートの給送に伴ってシート束の高さが低くなっても、ノズル部材がシート束の高さに合わせて降下するため(
図11参照)、ノズル開口部の開放面積が一定(B1)に維持される。ただし、ノズル部材がガイド部の最下位置に達した後は、ノズル部材の位置(高さ)は変化しないので、シートの給送に伴ってシート束の高さが低くなると、ノズル開口部の開放面積がB1からB2へ大きくなり、これとは反対にノズル部材内のエア圧はP1からP0へ低下する(
図12中の時間T4~T5の状態)。
【0043】
以上のように、本実施形態においては、ノズル部材内にエアを供給することにより、ノズル部材を上昇させ、その後、ノズル開口部の開放面積が一定となるようにノズル部材の位置(高さ)を保持することができる。このため、本実施形態の構成によれば、シート束の高さが変化しても、一定の開放面積を確保してシート束へ均一にエアを吹き付けることができ、シートを良好に分離することができる。
【0044】
また、本実施形態の構成によれば、ノズル部材を昇降させるためのモータ又はソレノイドなどの駆動源を必要としないので、装置の大型化及び高コスト化を回避できる。また、本実施形態においては、ノズル部材の位置(高さ)をシート束の高さに追従させるために、シート束の高さを検知するセンサなどを用いる必要が無いので、このようなセンサなどの検知手段も省略できる。従って、本実施形態の構成によれば、装置の小型化及び低コスト化を図れるようになる。
【0045】
続いて、上記実施形態(第1実施形態)とは異なる本発明の実施形態について説明する。なお、以下の説明においては、主に上記実施形態とは異なる部分について説明し、それ以外の部分については基本的に同じ構成であるので適宜説明を省略する。
【0046】
図13は、本発明の第2実施形態に係るシート供給装置の構成を示す図である。
【0047】
図13に示される第2実施形態においては、ノズル部材63が、これとは荷重が異なる別のノズル部材66と交換可能に構成されている。一般的に、シートを浮上させるために必要なエアの風量は、シートの材質、大きさ、厚さなどの種類に応じて異なる。このため、シートの種類に応じて風量を異ならせることが好ましい。しかしながら、風量を異ならせると、ノズル部材63を押し上げるためのエア圧(静圧)も変化するため、エアの押し上げ力とノズル部材63の荷重が対合う位置が変化し、ノズル部材63を適切な位置に保持できなくなる虞がある。
【0048】
そのため、
図13に示される第2実施形態においては、ノズル部材63を、これとは荷重が異なる別のノズル部材66と交換可能としている。すなわち、ファン62の風量をシートの種類に応じて多くする場合は、ノズル部材63をこれよりも荷重が大きいノズル部材66と交換することにより、シート束に対してノズル部材の位置が高くなりすぎるのを抑制できる。反対に、ファン62の風量をシートの種類に応じて少なくする場合は、ノズル部材63をこれよりも荷重が小さいノズル部材66と交換することにより、シート束に対してノズル部材の位置が低くなりすぎるのを抑制できる。このように、ファン62の風量に応じてノズル部材63の荷重を変更することにより、シート束に対するノズル部材の位置(高さ)を適切な位置に保持できるようになる。
【0049】
図14は、本発明の第3実施形態に係るシート供給装置の構成を示す図である。
【0050】
図14に示される第3実施形態においては、送風部60が、ノズル部材63を下方へ付勢する弾性部材としてのバネ67を有している。バネ67は、ノズル部材63を下方へ付勢することにより、ノズル部材63が供給されるエアによって上昇しすぎるのを抑制する。従って、シートの種類に応じてファン62の風量を変更する場合、バネ67の加圧力を変更することにより、シート束に対するノズル部材の位置(高さ)を適切な位置に調整できるようになる。バネ67の加圧力は、例えば、バネの圧縮量を変更したり、バネ定位数が異なるバネに交換したりすることにより調整可能である。
【0051】
図15は、本発明の第4実施形態に係るシート供給装置の構成を示す図である。
【0052】
図15に示される第4実施形態においては、ノズル部材63の上方からエアを吹き付けるエア吹付部68が設けられている。本実施形態に係る送風部60は、ファン62から供給されるエアをノズル部材63内へ誘導する主流路70のほか、主流路70から分岐してエアをノズル部材63の上方へ誘導する分岐流路69を有しており、分岐流路69の送風方向下流端には、ガイド部67の上部に位置するエア吹付部68が設けられている。また、分岐流路69の送風方向上流端(分岐箇所)には、分岐流路69を開閉するシャッタ部材71が設けられている。
【0053】
本実施形態においては、シャッタ部材71が開くことにより、ファン62から供給されるエアの一部が分岐流路69へ導かれ、エア吹付部68からエアを吹き出すことができる。このとき、エア吹付部68から吹き付けられるエアによってノズル部材63が下方へ押されることにより、ノズル部材63が上昇しすぎるのを抑制できる。従って、シートの種類に応じてファン62の風量を多くする場合、シャッタ部材71を開くことにより、ノズル部材63の上方からエアを吹き付けて、シート束に対するノズル部材の位置(高さ)を適切な位置に調整できる。さらに、シャッタ部材71の開閉量を調整できるようにしてもよい。この場合、ノズル部材63の位置(高さ)をより細かく調整できるようになる。
【0054】
また、分岐流路69へ送るエアを、主流路70へエアを送るファン62とは別のファンから供給できるようにしてもよいが、その場合、ファンの設置数が増えるため、小型化及び低コスト化を図りにくくなる。このため、小型化及び低コスト化を図る上では、本実施形態のように、同じ(共通の)ファン62から送られるエアを分岐させて供給することが好ましい。
【0055】
図16は、本発明の第5実施形態に係るシート供給装置の構成を示す図である。
【0056】
図16に示される第5実施形態においては、送風部60が、サイドフェンス42に設けられた吹き出し口61の開放幅Wを変更する吹き出し幅変更機構72を有している。なお、ここでいう「開放幅」とは、吹き出し口61のうち、エアを吹き出すことが可能な部分の水平方向の幅を意味する。吹き出し幅変更機構72は、例えば、サイドフェンス42に設けられた一対のスライド部材73などにより構成されている。
【0057】
一対のスライド部材73が移動して、吹き出し口61の開放幅が
図17に示されるW1から
図18に示されるW2へ大きくなると、ノズル開口部63aの開放面積(
図17及び
図18におけるハッチング部の面積)が大きくなるため、ノズル開口部63aから吹き出されるエアの量も多くなる。その結果、ノズル部材63内のエア圧が低下し、ノズル部材63が降下する。これにより、
図19に示されるように、ノズル開口部63aの開放面積が小さくなるため、ノズル部材63内のエア圧が上昇し、エアによる押し上げ力とノズル部材63の荷重が再び釣り合うことにより、ノズル部材63の降下が停止する。その結果、ノズル部材63がシート束に対して所定の位置で保持される。
【0058】
このように、吹き出し口61の開放幅Wを広げた場合は、ノズル部材63が降下することにより、シート束に対するノズル部材63の位置(高さ)を変更することができる。また、反対に、吹き出し口61の開放幅Wを縮めた場合は、ノズル部材63内のエア圧の上昇により、ノズル部材63の位置を上昇させることができる。従って、吹き出し口61の開放幅Wを変更することにより、ノズル部材63の位置(高さ)を調整できる。このため、シートの種類に応じてファン62の風量を変更する場合、吹き出し口61の開放幅Wを変更することにより、シート束に対するノズル部材の位置(高さ)を適切な位置に調整することが可能である。
【0059】
図20は、本発明の第6実施形態に係るシート供給装置の構成を示す図である。
【0060】
図20に示される第6実施形態においては、ノズル部材63が、エアの吹き付けにより浮上したシートSの上面に接触してそのシートSを押さえるシート押さえ部74を有している。この場合、エアの吹き付けによりシートSが浮上した際に、シート押さえ部74がシートSに接触することにより、シートSの過剰な上昇を抑制できるため、シートSの給送を円滑に行うことができる。
【0061】
以上、本発明の各実施形態の構成について説明したが、本発明は上記構成に限定されるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲において適宜変更可能である。例えば、
図20に示されるシート押さえ部74は、
図13から
図20に示される各実施形態の構成に適用されてもよい。また、上記実施形態においては、サイドフェンス42に設けられた送風部60に本発明を適用した場合を例に説明したが、本発明は、サイドフェンスに設けられる送風部に限らず、シート(シート束)の前端に対向して配置されるフロントフェンスなどに設けられる送風部にも適用可能である。
【0062】
また、本発明は、
図4に示されるような載置トレイ41が傾斜してシート束を持ち上げるシート供給装置に限らず、
図21に示されるような載置トレイ41が水平状態のまま昇降するシート供給装置にも適用可能である。
【0063】
また、本発明は、
図22に示されるようなシート束の前端側と後端側に送風部60A,60Bを有するシート供給装置にも適用可能である。この場合、特に、後端側に配置される送風部60Bに対して本発明を適用することが好ましい。すなわち、シート束の後端側は、シート束の高さが低くなっても載置トレイ41によって押し上げられないため、シート束の上面と後端側の送風部60Bとの相対的位置が大きく変化する。従って、このような後端側の送風部60Bに本発明を適用し、吹き付け位置をシート束の高さに合わせて追従させることが好ましい。これにより、エア吹き付けによるシートの分離を良好に行えるようになる。なお、本発明は、前側に配置される送風部60Aに対しても勿論適用可能である。
【0064】
また、本発明は、
図2に示されるような画像形成装置1内に配置されるシート供給装置5に限らず、画像形成装置1の横に必要に応じて増設されるシート供給装置6にも適用可能である。
【0065】
さらに、本発明は、紙(用紙)を供給するシート供給装置に適用される場合に限らない。本発明は、紙を供給するシート供給装置のほか、OHPシート又は布帛、金属シート、プラスチックフィルム、あるいは炭素繊維にあらかじめ樹脂を含浸させたプリプレグシートなどを供給するシート供給装置にも適用可能である。
【符号の説明】
【0066】
1 画像形成装置
41 載置トレイ(シート載置部)
50 シート給送部
60 送風部
61 吹き出し口
62 ファン(エア供給部)
63 ノズル部材
63a 開口部
64 ガイド部
67 バネ(弾性部材)
68 エア吹付部
69 分岐流路
72 吹き出し幅変更機構
74 シート押さえ部
S シート
W 吹き出し口の開放幅
【先行技術文献】
【特許文献】
【0067】