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  • 特開-バルブシートユニット 図1
  • 特開-バルブシートユニット 図2A
  • 特開-バルブシートユニット 図2B
  • 特開-バルブシートユニット 図3
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023091516
(43)【公開日】2023-06-30
(54)【発明の名称】バルブシートユニット
(51)【国際特許分類】
   F16K 1/42 20060101AFI20230623BHJP
   F04B 39/10 20060101ALN20230623BHJP
【FI】
F16K1/42 G
F04B39/10 L
F04B39/10 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021206296
(22)【出願日】2021-12-20
(71)【出願人】
【識別番号】000148357
【氏名又は名称】株式会社前川製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110000785
【氏名又は名称】SSIP弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】稲葉 隆成
【テーマコード(参考)】
3H003
3H052
【Fターム(参考)】
3H003AA02
3H003AC03
3H003CC08
3H003CE01
3H052AA01
3H052BA25
3H052BA26
3H052CB11
3H052CB18
3H052CB20
3H052EA11
(57)【要約】
【課題】交換作業において廃棄対象となる部品を低減すると共に、バルブが安定的に着座できるバルブシートユニットを提供する。
【解決手段】本開示の一実施形態に係るバルブシートユニットは、ベースと、バルブが着座するためのシート面を含み、ベースとは別体に構成されるバルブシートと、バルブシートをベースに固定するボルトとを備え、ボルトの頭部は、バルブシートのうちシート面とは反対側に位置するシート背面と、シート面との間に位置する。
【選択図】図2A

【特許請求の範囲】
【請求項1】
バルブが着座するためのシート面と、前記シート面とは反対側に位置するシート背面とを含むバルブシートと、
前記バルブシートとは別体に構成され、前記バルブシートを支持するベースと、
前記バルブシートを前記ベースに固定するボルトと
を備え、
前記ボルトの頭部は、前記シート面と前記シート背面との間に位置するバルブシートユニット。
【請求項2】
前記ベースは、前記シート背面に接触し、前記バルブシートを支持する支持面を含む
請求項1に記載のバルブシートユニット。
【請求項3】
リング状に形成される前記バルブシートは、前記シート背面の径方向の一端に接続される面取り部をさらに含み、
前記ベースは、前記面取り部と対向するベース角部をさらに含み、
前記バルブシートユニットは、前記ベース角部と前記面取り部と間に設けられるOリングをさらに備える
請求項2に記載のバルブシートユニット。
【請求項4】
前記シート面は、
円環状に形成された内側シートと、
前記内側シートを囲むように円環状に形成された外側シートと、を有し、
前記ボルトは、前記内側シートと前記外側シートとの間に位置する
請求項1乃至3の何れか1項に記載のバルブシートユニット。
【請求項5】
前記バルブシートは、金属材料によって形成される請求項1乃至4の何れか1項に記載のバルブシートユニット。
【請求項6】
前記バルブシートは、樹脂材料によって形成される請求項1乃至5の何れか1項に記載のバルブシートユニット。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、バルブシートユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
バルブが着座するためのバルブシートユニットが知られている。特許文献1では、圧縮機の吐出バルブが着座するためのバルブシートとしての弁座板がシリンダと一体的に形成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平09-158878号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記特許文献では、弁座板が例えば摩耗などを理由にして交換する場合に、弁座板と共にシリンダを交換する必要があり、シリンダが廃棄対象となり得る。この点についての解決策を模索するにあたっては、吐出バルブの着座性能が損なわれないことが求められる。
【0005】
本開示の目的は、交換作業において廃棄対象となる部品を低減すると共に、バルブが安定的に着座できるバルブシートユニットを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の少なくとも一実施形態に係るバルブシートユニットは、
バルブが着座するためのシート面と、前記シート面とは反対側に位置するシート背面とを含むバルブシートと、
前記バルブシートとは別体に構成され、前記バルブシートを支持するベースと、
前記バルブシートを前記ベースに固定するボルトと
を備え、
前記ボルトの頭部は、前記シート面と前記シート背面との間に位置するバルブシートユニット。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、交換作業において廃棄対象となる部品を低減すると共に、バルブが安定的に着座できるバルブシートユニットを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】一実施形態に係るレシプロ圧縮機の概念的な断面図である。
図2A】吸入バルブ用の一実施形態に係るバルブシートユニットの概念図である。
図2B】吸入バルブ用の他の実施形態に係るバルブシートユニットの概念図である。
図3】吐出バルブ用の一実施形態に係るバルブシートの概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、添付図面を参照して本開示の幾つかの実施形態について説明する。ただし、実施形態として記載されている又は図面に示されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対的配置等は、本開示の範囲をこれに限定する趣旨ではなく、単なる説明例にすぎない。
例えば、「ある方向に」、「ある方向に沿って」、「平行」、「直交」、「中心」、「同心」或いは「同軸」等の相対的或いは絶対的な配置を表す表現は、厳密にそのような配置を表すのみならず、公差、若しくは、同じ機能が得られる程度の角度や距離をもって相対的に変位している状態も表すものとする。
例えば、「同一」、「等しい」及び「均質」等の物事が等しい状態であることを表す表現は、厳密に等しい状態を表すのみならず、公差、若しくは、同じ機能が得られる程度の差が存在している状態も表すものとする。
例えば、四角形状や円筒形状等の形状を表す表現は、幾何学的に厳密な意味での四角形状や円筒形状等の形状を表すのみならず、同じ効果が得られる範囲で、凹凸部や面取り部等を含む形状も表すものとする。
一方、一の構成要素を「備える」、「含む」、又は、「有する」という表現は、他の構成要素の存在を除外する排他的な表現ではない。
なお、同様の構成については同じ符号を付し説明を省略することがある。
【0010】
<1.レシプロ圧縮機10の概要>
図1は、本開示の一実施形態に係るレシプロ圧縮機10(以下、「圧縮機10」という場合がある)の概念的な断面図である。圧縮機10は、例えば、凝縮器及び蒸発器などの複数の熱交換器を含んだ冷凍サイクルに組み込まれる。冷凍サイクルとしては、2元冷凍サイクル、2段圧縮冷凍サイクル、または逆ブレイトン冷凍サイクルなどが挙げられる。この場合、圧縮機10によって圧縮されるガスは冷媒ガスである。
他の実施形態では、圧縮機10は内燃機関などに組み込まれてもよく、圧縮機10によって圧縮されるガスは燃焼ガスなどであってもよい。
【0011】
本開示の一実施形態に係る圧縮機10は、クランクケース16と、クランクケース16に収容される複数の気筒40とを備える。各気筒40は、ピストン42が収容されるシリンダ室Scを内側に形成する。各々のピストン42は、クランクケース16に設けられた軸受50によって支持されるクランク軸48に、コネクティングロッド52などを介して接続されている。また、クランク軸48の一端はモータ54に連結されており、モータ54の駆動によって各ピストン42は各気筒40の内部で往復動することができる。
なお、図1で示す例示的な実施形態では、2個の気筒40が並列に設けられ、2個の気筒40内のピストン42は、クランク軸48の回転角度で180°異なる位相で往復動するようにクランク軸48に接続されている。
以下の説明では、気筒40の軸線方向を単に「軸線方向」という場合がある。本実施形態では、軸線方向が鉛直方向と一致し、クランク軸48は水平方向に延在する。
【0012】
気筒40の一端側(図1では気筒40の上端側)には、吐出バルブ12を支持するための機構が搭載される。この機構は、バルブプレート44と、バルブプレート44とは別体のバルブシート110C(図3参照)と、バルブプレート44に形成される開口の内側に設けられる截頭円錐形のディスチャージバルブシート70とを備える。ディスチャージバルブシート70は、ボルト68によってバルブケージ66と結合されており、ディスチャージバルブシート70とバルブケージ66との間では吐出バルブ12が保持される。さらに、バルブケージ66は、ヘッドスプリング64によって気筒40に向けて付勢されている。また、バルブケージ66に設けられたスプリング穴69に収容されるバルブスプリング(図示外)によって、吐出バルブ12はバルブシート110Cとディスチャージバルブシート70とに向けて付勢されている。
【0013】
本開示の一実施形態に係る圧縮機10は、気筒40のシリンダ室Scの周囲に設けられる吸入バルブ63と、吸入バルブ63が着座するように構成される、吸入バルブシートとしてのバルブシート110A(図2A参照)をさらに備える。吸入バルブ63は、気筒40の軸線を基準とした周方向に亘り連続して延在するOリング状である。なお他の実施形態では、吸入バルブ63は、周方向に沿って配置される複数の板弁であってもよい。
【0014】
図1で示される圧縮機10の動作概要は以下の通りである。
モータ54の駆動に伴いピストン42が下降してシリンダ室Sc内の密閉空間が減圧されると、気筒40の外側に形成されている吸入空間Siの圧力が密閉空間の圧力を一定程度上回る。バルブシート110A(図2A参照)に着座していた吸入バルブ63が押し上げられ、吸入空間Siにあるガスがバルブシート110Aを通ってシリンダ室Scに吸入される。その後、ピストン42が下降を終えて上昇を開始する。ピストン42によってガスが圧縮されて密閉空間が加圧される結果、吸入バルブ63は押し下げられてバルブシート110Aに着座する。ピストン42がさらに上昇して密閉空間の圧力が吐出空間Sdの圧力を一定程度上回ると、吐出バルブ12が押し上げられ、シリンダ室Scにある圧縮ガスは吐出空間Sdに吐出される。その後ピストン42が下降を始めると、シリンダ室Scの密閉空間の圧力が減圧され、吐出バルブ12は、バルブスプリングに付勢されてバルブシート110Cとディスチャージバルブシート70に着座する。
【0015】
<2.バルブシートユニット20>
図2A図2B図3を参照し、圧縮機10の構成要素であるバルブシートユニット20の詳細を例示する。本開示の一実施形態に係るバルブシートユニット20は、バルブ(吸入バルブ63または吐出バルブ12)が着座するためのユニットである。以下では、吸入バルブ63が着座するためのバルブシートユニット20A、20Bを、それぞれ図2A図2Bを参照して説明し、吐出バルブ12が着座するためのバルブシートユニット20Cを、図3を参照して説明する。さらに以下の説明では、バルブシートユニット20A~20Cを総称して「バルブシートユニット20」という場合がある。
【0016】
<2-1.吸入バルブ用のバルブシートユニット20Aの詳細>
図2Aを参照して、吸入バルブ用の一実施形態に係るバルブシートユニット20Aの詳細を例示する。なお、図2Aでは、図面を見易くする都合、ハッチングを施していない構成要素が一部図示されている(図2B図3も同様である。)。
【0017】
バルブシートユニット20Aは、吸入バルブ63が着座するためのシート面111A(111)を有するバルブシート110A(110)と、バルブシート110Aとは別体に構成されたベース80A(80)と、バルブシート110Aをベース80Aに固定するボルト150A(150)と、バルブシート110Aとバルブプレート44との間に介在するガスケット31とを備える。シート面111Aは、一例としてOリング状に形成される。
【0018】
本実施形態のベース80Aは、上記した気筒40と、気筒40と一体的に形成されるフランジ81Aとを含む。また、バルブシート110Aは、シート面111Aとは反対側に位置するシート背面112A(112)を含む。本実施形態のベース80Aは、シート背面112と接触するフランジ81Aを有し、このフランジ81Aがバルブシート110Aを支持している。ボルト150Aは、バルブシート110Aをフランジ81Aに固定する。本例のボルト150Aの軸部152Aは、フランジ81Aを貫通しており、フランジ81Aから突き出る軸部152Aにはナット159が螺合している。ナット159の螺合によりボルト150の頭部151Aがバルブシート110Aをフランジ81Aに押し当てており、これによりバルブシート110Aはフランジ81Aに固定される。
【0019】
本実施形態のボルト150Aの頭部151Aは、シート面111Aとシート背面112Aとの間となる軸線方向位置に配置される。より具体的な一例として、頭部151Aの全部位がバルブシート110Aに設けられる凹部79に収容されている。なお、凹部79の底部に形成された貫通孔に、上述したボルト150Aの軸部152Aが挿通されている。一実施形態に係る凹部79はシート面111Aと一体的に形成されており、シート背面112Aに向けて凹んでいる。
【0020】
バルブプレート44に形成されたバックシート45は、上述のシート面111Aと軸線方向に並ぶように設けられ、吸入バルブ63は、バックシート45とシート面111Aとの間で移動するように構成される(矢印M)。なお、吸入バルブ63とバックシート45との間には、スプリングが設けられてもよい(即ち、吸入バルブ63は、バックシート45に対して直接的に接触しなくてもよい。)。なお、バックシート45は、円環状に形成されるガスケット31の内側に位置する。
【0021】
上記構成を有するバルブシート110Aに吸入バルブ63が着座する動作の詳細は以下の通りである。ピストン42の上昇に伴って気筒40の密閉空間が加圧されると、押し上げられていた吸入バルブ63は、シート面111Aに向けて移動する。吸入バルブ63の少なくとも一部がシート面111Aに接触する場合、種々の力が吸入バルブ63に作用する。例えば、吸入バルブ63の軸線が鉛直方向に対して傾いている場合(図示外)、吸入バルブ63の片面の一部がシート面111Aに対して摺動するようにして吸入バルブ63は自転する(吸入バルブ63の自転に伴い、吸入バルブ63の片面のうちでシート面111Aに接触する部位が変化してもよい。)。そして、吸入バルブ63の自転の勢いが弱まると、吸入バルブ63は静止してシート面111Aに着座する。
吸入バルブ63の着座によって、バルブシート110Aはガスのシール機能を発揮する。即ち、バルブシート110Aは、吸入空間Siと気筒40の密閉空間とを互いに非連通状態とさせ、両空間の間におけるガスの行き来を制限する。
なお、頭部151Aがシート面111Aとシート背面112Aとの間に位置しているので、着座の過程で吸入バルブ63が頭部151Aに接触することはなく、従って、頭部151Aが吸入バルブ63の着座に影響を与えることはない。
【0022】
上記のように、吸入バルブ63とバルブシート110Aとの間で摩擦力が生じるため、圧縮機10が長期間に亘り稼働すると、バルブシート110Aが損耗などによって故障する場合がある。この場合、バルブシート110Aの交換作業が行われる。具体的な交換作業は例えば以下の通りである。
はじめに、バルブプレート44、ガスケット31、及び、吸入バルブ63が順に取り外される。その後、ナット159が緩められてボルト150Aが取り外される。これにより、バルブシート110Aは、ベース80Aから取り外され、新しいバルブシート110Aと交換される。その後、新しいバルブシート110Aがベース80Aに載置されて、ボルト150A、ナット159、吸入バルブ63、ガスケット31、及びバルブプレート44が順に組付けられ、交換作業は完了する。なお上記交換作業において、ナット159が緩められる前に、気筒40を含むバルブシート110Aがクランクケース16から取り外されていてもよい。
【0023】
上記構成によれば、バルブシート110Aが故障した場合であっても、ボルト150Aを外すことによって、バルブシート110Aをベース80Aから取り外し、別のバルブシート110Aに交換することができる。即ち、ベース80Aの交換は不要である。これにより、交換作業に伴い廃棄対象となる部品からベース80Aを除外することができ、廃棄対象となる部品を低減できる。また、ボルト150Aの頭部151Aがシート面111Aとシート背面112Aとの間に位置するので、ボルト150Aは、バルブシート110Aにおける吸入バルブ63の着座に影響を与えない。以上より、交換作業において廃棄対象となる部品を低減すると共に、吸入バルブ63が安定的に着座できるバルブシート110Aが実現する。
【0024】
図2Aで例示される実施形態では、ベース80Aは、バルブシート110Aのシート背面112Aと接触する支持面89を含む。シート背面112Aと直接的に接触する支持面89は、バルブシート110Aを支持する。上記構成によれば、支持面89が、シート背面112Aに直接的に接触するので、吸入バルブ63の着座位置を管理しやすい。より具体的には、ベース80Aとバルブシート110Aのそれぞれの形状を製造工程時に管理するだけで、吸入バルブ63の着座位置を所望の位置にすることができる。従って、吸入バルブ63の安定的な着座を容易に実現することができる。
【0025】
図2Aで例示される実施形態では、リング状に形成されるバルブシート110Aは、シート背面112Aの径方向の一端(本例では内端)に接続される面取り部119A(119)を含む。また、ベース80は、面取り部119と対向するベース角部88A(88)を含む。そして、面取り部119Aとベース角部88Aとの間には、本実施形態のバルブシート110Aの構成要素であるOリング85A(85)が設けられる。Oリング85Aは、面取り部119Aとベース角部88Aとに密着している。上記構成によれば、面取り部119Aとベース角部88Aとの間にOリング85Aが配置される簡易な構成によって、バルブシート110Aは、ガスのシール機能を安定的に発揮することができる。例えば、気筒40の密閉空間において圧縮されたガスが、バルブシート110Aとベース80Aとの間を通過するのを制限することができる。
【0026】
図2Aで例示される実施形態では、シート面111Aは、円環状に形成された内側シート116と、内側シート116を囲むように円環状に形成された外側シート113とを有する。そして、内側シート116と外側シート113との間に、ボルト150A(150)は位置する。換言すると、内側シート116と外側シート113との間の径方向位置に、ボルト150Aの頭部151Aを収容する凹部79は配置される。上記構成によれば、内側シート116と外側シート113との間にあるスペースがボルト150Aの配置スペースとして活用されるので、外側シート113を挟んで内側シート116とは反対側に(即ち、外側シート113よりも径方向外側に)ボルト150Aが配置される場合に比べて、バルブシート110Aをコンパクト化できる。
【0027】
本実施形態では、一例として、吸入バルブ63は金属材料によって形成される。バルブシート110Aの材質は、吸入バルブ63の材質と同一であってもよいし、異なってもよい。例えば、吸入バルブ63とバルブシート110Aの少なくとも一方は鋼材によって形成されてもよい。また、吸入バルブ63の硬度は、バルブシート110Aの硬度よりも高くてもよいし、低くてもよい。
幾つかの実施形態に係るバルブシート110Aは、金属材料によって形成される。上記構成によれば、ボルト150Aが締結されることに伴う締結力がバルブシート110Aに作用する場合であっても、バルブシート110Aの変形が抑制される。これにより、吸入バルブ63の軸線方向における着座位置を所望の位置にすることができる。従って、バルブシート110Aが交換される前後において、吸入バルブ63の着座位置が変動するのを抑制することができる。
【0028】
また、幾つかの実施形態に係るバルブシート110Aは、樹脂材料によって形成される。吸入バルブ63とバルブシート110Aとの間で生じる摩擦によって吸入バルブ63が摩耗して破損すると、圧縮機10において故障するリスクが高い。より詳細には、吸入バルブ63から生じた破片が、吸入バルブ63とシート面111Aとの間に噛み込まれると、バルブシート110Aはシール機能を発揮することはできないおそれがある。別のリスクを挙げると、吸入バルブ63から生じた破片が気筒40の内部に進入して、気筒40の内周面とピストン42との間に噛み込まれると、気筒40及びピストン42が破損するおそれがある。
この点、上記構成によれば、圧縮機10の稼働に伴い吸入バルブ63とバルブシート110Aとの間で摩擦が生じても、バルブシート110Aが樹脂製であるため、吸入バルブ63よりもバルブシート110において摩耗が生じ易く、吸入バルブ63の摩耗に伴う欠損が抑制される。よって、圧縮機10は長期間に亘り、上記のような故障することなく安定的に稼働することができる。
【0029】
<2-2.吸入バルブ用のバルブシートユニット20Bの詳細>
図2Bを参照し、吸入バルブ用の他の実施形態に係るバルブシートユニット20Bの詳細を例示する。図2Bでは、図2Aと同様の構成要素については同じ符号を付与している。以下では、バルブシートユニット20A(図2A参照)と異なるバルブシートユニット20Bの構成を説明する。
【0030】
バルブシートユニット20Bは、バルブシート110B(110)と、バルブシート110Bを支持するベース80B(80)と、バルブシート110Bをベース80Bに固定するボルト150B(150)とを備える。ボルト150Bの頭部151B(151)は、バルブシート110Bの構成要素であるシート面111Bとシート背面112Bとの間に位置する。図2Bの例では、ベース80Bのフランジ81Bに、ボルト150Bの軸部152Bがねじ込まれる締結穴82が形成されている。
【0031】
本実施形態のバルブシートユニット20Bはガスケット97を備える。ガスケット97は、フランジ81Bの支持面89と、バルブシート110Bのシート背面112Bとによって挟まれており、一例として金属製である。また、バルブシート110Bの内周面には、その周方向の全長に亘って、溝87が形成されており、溝87の内側にOリング85B(85)が配置されている。Oリング85Bは、バルブシート110Bの内周面と、気筒40の外周面とに密着しており、バルブシート110Bと気筒40との間をガスが通過するのを制限する。
【0032】
上記構成によれば、バルブシート110Bを別のバルブシート110Bを交換する作業において、バルブシートユニット20Aで例示されるナット159(図2A)を取り外す作業が不要となる。つまり、フランジ81Bを挟んでバルブシート110Bとは反対側(鉛直方向下側)に作業者が手又は工具を届かせる必要がない。これにより、バルブシートユニット20Aで例示した、気筒40をクランクケース16から取り外す作業が必須ではなくなるので、交換作業をより簡易にすることができる。
【0033】
<2-3.吐出バルブ用のバルブシートユニット20Cの詳細>
図3を参照し、吐出バルブ用のバルブシートユニット20C(20)を説明する。バルブシートユニット20Cは、既述のディスチャージバルブシート70と、バルブプレート44とは別体に構成されたバルブシート110C(110)とを備える。ディスチャージバルブシート70が有するディスチャージバルブシート面71と、バルブシート110Cが有するシート面111Cとは、いずれも、吐出バルブ12が着座するためのシートとして機能する。以下の説明では、便宜上、バルブシート110Cを支持する機能を有するバルブプレート44を「ベース80C」という場合がある。本実施形態のバルブシート110C(110)は、バルブシート110Cをベース80C(80)に固定するボルト150C(150)を備える。ボルト150Cの頭部151C(151)は、シート面111Cと、バルブシート110Cのシート背面112C(112)の間となる軸線方向位置に配置される。
【0034】
吐出バルブ12は、吸入バルブ63と同様に摩耗するおそれがある。具体的には、気筒40の密閉空間の減圧に伴って、吐出バルブ12が、ディスチャージバルブシート70とバルブシート110Cに向かって移動するとき、吐出バルブ12の軸線が鉛直方向に対して傾くおそれある。このとき、吐出バルブ12の片面の一部がバルブシート110Cに対して摺動するように吐出バルブ12が自転するため、吐出バルブ12の片面が摩耗して故障するおそれがある。
【0035】
吐出バルブ12が故障した場合には、吐出バルブ12が別の吐出バルブ12に交換する作業が行われる。具体的には、バルブケージ66が外された後、ボルト150Cが緩められ、バルブシート110Cがベース80Cから取り外される。これにより、バルブシート110Cは、別のバルブシート110Cに交換され、ベース80Cの交換は不要となる。
【0036】
なお、図3で例示される実施形態では、リング状に形成されるバルブシート110Cは、シート背面112Cの径方向の一端(本例では外端)に接続される面取り部119C(119)を含み、ベース80Cは、面取り部119Cと対向するベース角部88C(88)を含む。本実施形態のバルブシートユニット20Cは、面取り部119Cとベース角部88Cとの間に設けられたOリング85C(85)を備える。Oリング85Cは、バルブシート110Cとベース角部88Cとに密着しており、バルブシート110とベース角部88Cとの間を、ガスが通過しないように密閉する機能果たす。
【0037】
<3.まとめ>
上述した幾つかの実施形態に記載の内容は、例えば以下のように把握されるものである。
【0038】
1)本開示の一実施形態に係るバルブシートユニット(20)は、
バルブ(吸入バルブ63、吐出バルブ12)が着座するためのシート面(111)と、前記シート面とは反対側に位置するシート背面(112)とを含むバルブシート(110)と、
前記バルブシートとは別体に構成され、前記バルブシートを支持するベース(80)と、
前記バルブシートを前記ベースに固定するボルト(150)と
を備え、
前記ボルトの頭部(151)は、前記シート面と前記シート背面との間に位置する。
【0039】
上記1)の構成によれば、バルブシートが故障した場合であっても、ボルトを外すことによって故障したバルブシートをベースに対して取り外し、別のバルブシートに交換することができる。即ち、ベースの交換は不要である。これにより、交換作業において廃棄対象となる部品からベースを除外することができ、廃棄対象となる部品を低減することができる。また、ボルトの頭部がシート面とシート背面との間に位置するので、ボルトはバルブシートにおけるバルブの着座に影響を与えない。以上より、交換作業において廃棄対象となる部品を低減すると共に、バルブが安定的に着座できるバルブシートユニットが実現する。
【0040】
2)幾つかの実施形態では、上記1)に記載のバルブシートユニットであって、
前記ベースは、前記シート背面に接触し、前記バルブシートを支持する支持面(89)を含む。
【0041】
上記2)の構成によれば、ベースの支持面がシート背面に直接的に接触するので、バルブの着座位置を管理しやすい。より具体的には、ベースとバルブシートのそれぞれの形状を管理するだけで、バルブの着座位置を所望の位置にすることができる。従って、バルブの安定的な着座を容易に実現することができる。
【0042】
3)幾つかの実施形態では、上記2)に記載のバルブシートユニットであって、
リング状に形成される前記バルブシートは、前記シート背面の径方向の一端に接続される面取り部(119)をさらに含み、
前記ベースは、前記面取り部と対向するベース角部(88)をさらに含み、
前記バルブシートユニットは、前記ベース角部と前記面取り部と間に設けられるOリング(85)をさらに備える。
【0043】
上記3)の構成によれば、面取り部とベース角部との間にOリングが配置される簡易な構成によって、バルブシートユニットは、ガスのシール機能を安定的に発揮することができる。例えば、バルブシートユニットが組み込まれた圧縮機がガスを圧縮する行程において、バルブシートユニットは、圧縮ガスがバルブシートとベースとの間を通過するのを抑制できる。
【0044】
4)幾つかの実施形態では、上記1)から3)のいずれかに記載のバルブシートユニットであって、
前記シート面は、
円環状に形成された内側シート(116)と、
前記内側シートを囲むように円環状に形成された外側シート(113)と、を有し、
前記ボルトは、前記内側シートと前記外側シートとの間に位置する。
【0045】
上記4)の構成によれば、内側シートと外側シートとの間にあるスペースがボルトの配置スぺ-スとして活用されるので、外側シート面を挟んで内側シートとは反対側にボルトが配置される場合に比べて、バルブシートユニットをコンパクト化できる。
【0046】
5)幾つかの実施形態では、上記1)から4)のいずれかに記載のバルブシートであって、
前記バルブシートは、金属材料によって形成される。
【0047】
上記5)の構成によれば、ボルトが締結されるときにバルブシートの変形が抑制されるので、バルブの着座位置を所望の位置にすることができる。従って、バルブシートが交換される前後において、バルブの着座位置が変動するのを抑制することができる。
【0048】
6)幾つかの実施形態では、上記1)から5)のいずれかに記載のバルブシートであって、
前記バルブシートは、樹脂材料によって形成される。
【0049】
バルブとバルブシートとの間で生じる摩擦によってバルブが摩耗して破損すると、バルブシートユニットが組み込まれる圧縮機が故障するリスクが高い。この点、上記6)の構成によれば、圧縮機の稼働に伴いバルブとバルブシートとの間で摩擦が生じても、バルブシートが樹脂製であるため、バルブの摩耗が抑制される。よって、圧縮機は長期間に亘り故障することなく稼働することができる。
【符号の説明】
【0050】
20 :バルブシートユニット
80 :ベース
85A :Oリング
85B :Oリング
85C :Oリング
87 :溝
88 :ベース角部
89 :支持面
110 :バルブシート
111 :シート面
112 :シート背面
113 :外側シート
116 :内側シート
119 :面取り部
150 :ボルト
151 :頭部

図1
図2A
図2B
図3