(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023091605
(43)【公開日】2023-06-30
(54)【発明の名称】基板処理装置、および基板取り出し方法
(51)【国際特許分類】
H01L 21/683 20060101AFI20230623BHJP
H01L 21/31 20060101ALI20230623BHJP
C23C 16/458 20060101ALI20230623BHJP
【FI】
H01L21/68 N
H01L21/31 B
C23C16/458
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021206424
(22)【出願日】2021-12-20
(71)【出願人】
【識別番号】000219967
【氏名又は名称】東京エレクトロン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】栗林 昭博
(72)【発明者】
【氏名】大下 健太郎
(72)【発明者】
【氏名】高 鉉龍
(72)【発明者】
【氏名】菅原 佑道
(72)【発明者】
【氏名】藤尾 丹
【テーマコード(参考)】
4K030
5F045
5F131
【Fターム(参考)】
4K030GA02
4K030GA05
4K030KA39
4K030KA41
5F045AA06
5F045AA15
5F045AB32
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5F131KA22
5F131KA49
5F131KA54
(57)【要約】
【課題】処理容器から基板を取り出す際に、基板の表面へのパーティクルの付着を低減できる技術を提供する。
【解決手段】基板処理装置は、基板を処理する処理容器と、基板を載置する載置面を有する基板支持部と、基板支持部に対して相対移動可能なリフトピン、およびリフトピンを収容するピン収容室を含むリフトピン機構部と、を備える。基板支持部は、リフトピンが通過可能な孔部を有する。リフトピン機構部は、ピン収容室に不活性ガスを流通させることにより孔部の圧力を調整する圧力調整部を有する。圧力調整部は、基板の浮上時に、孔部の圧力を載置面よりも上側の処理空間の圧力以上、かつ載置面に前記基板が継続して載置される浮上用圧力とする。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板を内部に収容して当該基板を処理する処理容器と、
前記処理容器内に設けられ、前記基板を載置する載置面を有する基板支持部と、
前記基板支持部に対して相対移動可能なリフトピン、および前記リフトピンを収容するピン収容室を含み、前記リフトピンを上昇させることで前記基板支持部に載置された前記基板を浮上させるリフトピン機構部と、を備え、
前記基板支持部は、前記リフトピンが通過可能な孔部を有し、
前記リフトピン機構部は、前記ピン収容室に不活性ガスを流通させることにより前記孔部の圧力を調整する圧力調整部を有し、
前記圧力調整部は、前記基板の浮上時に、前記孔部の圧力を前記載置面よりも上側の処理空間の圧力以上、かつ前記載置面に前記基板が継続して載置される浮上用圧力とする、
基板処理装置。
【請求項2】
前記浮上用圧力は、前記処理空間の圧力に対して1.0倍以上2.8倍以下である、
請求項1に記載の基板処理装置。
【請求項3】
前記処理空間の圧力が1[Torr]以上2[Torr]未満の場合に、
前記浮上用圧力は、前記処理空間の圧力に対して1.0倍以上1.66倍以下である、
請求項2に記載の基板処理装置。
【請求項4】
前記処理空間の圧力が2[Torr]以上の場合に、
前記浮上用圧力は、前記処理空間の圧力に対して1.0倍以上1.5倍以下である、
請求項2に記載の基板処理装置。
【請求項5】
前記圧力調整部は、前記ピン収容室に前記不活性ガスを供給するガス供給経路と、前記ガス供給経路に設けられ前記不活性ガスの流量を調整する給気調整器と、を有する、
請求項1乃至4のいずれか1項に記載の基板処理装置。
【請求項6】
前記圧力調整部は、前記ピン収容室に連通して前記ピン収容室の気体を排出するガス排気経路と、前記ガス排気経路の流路の開度を調整する排気調整器と、を有する、
請求項1乃至5のいずれか1項に記載の基板処理装置。
【請求項7】
前記圧力調整部は、前記ピン収容室に前記不活性ガスを供給する前に前記排気調整器を開放する、
請求項6に記載の基板処理装置。
【請求項8】
前記圧力調整部は、前記ピン収容室の圧力を検出する圧力センサを備え、
前記圧力センサの圧力値に基づき前記リフトピン機構部の動作を制御する制御部を有する、
請求項1乃至7のいずれか1項に記載の基板処理装置。
【請求項9】
前記基板の浮上時における前記処理空間の圧力を検出する処理空間側圧力センサを備え、
前記制御部は、前記圧力センサの圧力値と前記処理空間側圧力センサの圧力値とに基づき、前記圧力調整部により前記孔部の圧力を調整する、
請求項8に記載の基板処理装置。
【請求項10】
前記リフトピン機構部は、前記リフトピンの側周囲に前記リフトピンの上昇に伴って前記基板支持部に接触可能な筒部材を有し、
前記圧力調整部は、前記基板の浮上時に前記筒部材が前記基板支持部に接触するまでの間に、前記ピン収容室に前記不活性ガスを供給する、
請求項1乃至9のいずれか1項に記載の基板処理装置。
【請求項11】
前記圧力調整部は、前記リフトピンの上昇により前記基板支持部から前記基板が離間した後に、前記不活性ガスの供給を停止する、
請求項1乃至10のいずれか1項に記載の基板処理装置。
【請求項12】
基板を処理する処理容器の内部において、前記基板を載置した基板支持部から当該基板を取り出す基板処理装置の基板取り出し方法であって、
前記基板処理装置は、
前記基板支持部に対して相対移動可能なリフトピン、および前記リフトピンを収容するピン収容室を含むリフトピン機構部を有し、
前記基板支持部は、前記基板を載置する載置面と、前記リフトピンが通過可能な孔部と、を有し、
基板取り出し方法は、
圧力調整部により前記基板の持ち上げ時に前記ピン収容室に不活性ガスを流通させることで、前記孔部の圧力を、前記載置面よりも上側の処理空間の圧力以上、かつ前記載置面に前記基板が継続して載置される浮上用圧力とする工程と、
前記リフトピンを上昇させることで前記基板支持部に載置された前記基板を浮上させる工程と、を含む、
基板取り出し方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、基板処理装置、および基板取り出し方法に関する。
【背景技術】
【0002】
基板処理装置は、基板に対するパーティクルの付着を可及的に低減することが求められる。例えば、特許文献1には、基板の搬出時に、基板を斜め上方向に移動させることで、基板支持部の壁部と基板との擦れをなくして、パーティクルの発生を抑制する技術が開示されている。
【0003】
ところで、基板処理装置は、基板処理時の加熱等により基板が伸びることでも、基板と基板支持部とが擦れてパーティクルが生じる可能性がある。基板の取り出し時には、この種のパーティクルを、基板に付着させないようにする必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本開示は、処理容器から基板を取り出す際に、基板の表面へのパーティクルの付着を低減できる技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様によれば、基板を内部に収容して当該基板を処理する処理容器と、前記処理容器内に設けられ、前記基板を載置する載置面を有する基板支持部と、前記基板支持部に対して相対移動可能なリフトピン、および前記リフトピンを収容するピン収容室を含み、前記リフトピンを上昇させることで前記基板支持部に載置された前記基板を浮上させるリフトピン機構部と、を備え、前記基板支持部は、前記リフトピンが通過可能な孔部を有し、前記リフトピン機構部は、前記ピン収容室に不活性ガスを流通させることにより前記孔部の圧力を調整する圧力調整部を有し、前記圧力調整部は、前記基板の浮上時に、前記孔部の圧力を前記載置面よりも上側の処理空間の圧力以上、かつ前記載置面に前記基板が継続して載置される浮上用圧力とする、基板処理装置が提供される。
【発明の効果】
【0007】
一態様によれば、処理容器から基板を取り出す際に、基板の表面へのパーティクルの付着を低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】一実施形態に係る基板処理装置を示す概略断面図である。
【
図2】
図1の基板処理装置の内部構造を示す概略斜視図である。
【
図3】
図1の基板処理装置の内部構造を示す概略平面図である。
【
図4】
図1の基板処理装置のリフトピン機構部を示す概略断面図である。
【
図5】基板取り出し方法の処理フローを示すフローチャートである。
【
図6】リフトピン機構部の動作を示す概略断面図であり、
図6(A)は第1状態、
図6(B)は第2状態、
図6(C)は第3状態である。
【
図7】
図6に続くリフトピン機構部の動作を示す概略断面図であり、
図7(A)は第4状態、
図7(B)は第5状態、
図7(C)は第6状態である。
【
図8】
図7に続くリフトピン機構部の動作を示す概略断面図であり、
図8(A)は第7状態、
図8(B)は第8状態である。
【
図9】処理空間の圧力に対する基板の背面側の各孔部の圧力の比率を例示するグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照して本開示を実施するための形態について説明する。各図面において、同一構成部分には同一符号を付し、重複した説明を省略する場合がある。
【0010】
〔基板処理装置〕
以下では、
図1に示すように、基板処理装置1として原子層堆積(ALD:Atomic Layer Deposition)法または分子層堆積(MLD:Molecular Layer Deposition)法により、酸化シリコン(SiO
2)膜を基板Wに形成する成膜装置を例に説明する。成膜処理が施される基板Wとしては、例えば、半導体ウエハがあげられる。基板Wの表面には、トレンチ、ビア等の窪みパターンが形成されていてもよい。
【0011】
基板処理装置1は、処理容器10、基板支持部20、ガス供給部30、ガス排気部40、ヒータユニット50、リフトピン機構部60および制御部90を備える。
【0012】
処理容器10は、内部空間11を減圧可能な真空容器であり、真空雰囲気下で基板Wに対して成膜処理等の基板処理を行う。この処理容器10は、略円形の平面形状を有する扁平な筒体に形成され、水平方向に複数の基板Wを内部空間11に収容することが可能となっている。処理容器10は、鉛直方向上側を開放した凹状の容器本体12と、容器本体12の上部を覆う天板15と、で構成される。容器本体12および天板15は、例えば、アルミニウム(Al)により形成されることが好ましい。容器本体12と天板15とは、シール部材16によって気密に密着している。
【0013】
容器本体12は、円盤状の底壁13と、底壁13の外周側から鉛直方向上側に突出した側壁14と、を有する。側壁14には、基板Wの搬入および搬出を行うための搬送口14aが形成されている。搬送口14aは、図示しないゲートバルブによって気密に開閉される。ゲートバルブの開放時に、処理容器10の外部に設置された基板搬送用の搬送アームCA(
図3参照)が、搬送口14aを介して進入することにより、処理容器10の外部と内部空間11との間で基板Wを搬入出できる。
【0014】
底壁13には、処理容器10内の気体を外部に排気する複数の排気口13aが設けられている。また、底壁13には、後述するリフトピン機構部60のリフトピン61および不活性ガスを通すための貫通孔13bが複数形成されている。
【0015】
基板支持部20は、処理容器10内において基板Wを支持する回転テーブル21と、回転テーブル21の中心に固定される回転軸22と、回転軸22を回転させる回転駆動部23と、を有する。
【0016】
回転テーブル21は、例えば、石英により形成され、円盤状を呈している。回転テーブル21の中心は、処理容器10の軸心に一致しており、回転軸22の回転下に処理容器10の軸心回りに回転する。
【0017】
回転テーブル21は、基板Wを収容および支持する複数(例えば、5つ)の凹部24を上面に有する。各凹部24は、回転テーブル21の周方向に沿って略等間隔に配置されている。各凹部24は、平面視で正円状に形成され、基板Wの直径よりも僅かに大きな(例えば、基板Wの直径に対して1mm~4mm程度を加えた)内径を有する。複数の凹部24の各々には、基板Wが載置される。回転テーブル21の上面から天板15の天井面までの内部空間11は、基板Wに処理が施される処理空間Sとなる。
【0018】
凹部24の底面は、基板Wを載置する載置面25となっている。また、回転テーブル21は、当該回転テーブル21の下面と、凹部24の載置面25とを貫通するように複数(3つ)の孔部26を備える。各孔部26は、リフトピン機構部60のリフトピン61を通過させる。基板処理装置1は、回転テーブル21の回転停止状態で、各凹部24と搬送アームCAとの間で基板Wの受け渡しおよび受け取りを行う際に、リフトピン機構部60を用いる。
【0019】
また、各凹部24の深さは、基板Wの板厚に等しいか、または基板Wの板厚よりも深く設定される。したがって、基板Wが凹部24に収容された状態で、基板Wの表面と回転テーブル21の上面とは、同じ高さになるか、基板Wの表面が回転テーブル21の上面よりも低くなる。なお、凹部24の深さは、基板Wの厚さの3倍までの深さに設定することが好ましい。
【0020】
また、回転テーブル21は、中心部に円筒状のコア部27を有し、コア部27を介して回転軸22の上端に固定されている。回転軸22は、処理容器10の底壁13を貫通して、その下端が回転駆動部23に連結されている。回転駆動部23は、図示しないモータおよび駆動伝達機構を有し、鉛直方向上側が開口したケース28内に収容されている。ケース28は、処理容器10の底壁13に固定されている。
【0021】
図2および
図3に示すように、基板処理装置1のガス供給部30は、回転テーブル21の上方に、1以上(本実施形態では2つ)の反応ガスノズル31、32、および1以上(本実施形態では2つ)の分離ガスノズル33、34を配置している。反応ガスノズル31、32および分離ガスノズル33、34は、例えば石英により形成され、処理容器10の周方向(回転テーブル21の回転方向)に沿って、互いに間隔をおいて配置される。本実施形態では、搬送口14aから時計回りに沿って順に、分離ガスノズル33、反応ガスノズル31、分離ガスノズル34および反応ガスノズル32が配置されている。
【0022】
各反応ガスノズル31、32および各分離ガスノズル33、34は、各種のガスを導入するためのガス導入ポート35を、処理容器10よりも外側に有する。ガス導入ポート35は、容器本体12の側壁14に固定され、容器本体12の外部に突出している。各反応ガスノズル31、32および各分離ガスノズル33、34は、容器本体12の側壁14から処理容器10内に挿入され、容器本体12の半径方向内側に延出している。
【0023】
各反応ガスノズル31、32は、図示しない配管および流量制御器等を介して、反応ガスの供給源(不図示)に接続される。反応ガスとしては、シリコン含有ガス、金属含有ガス、酸化ガス、窒化ガス等を利用できる。各反応ガスノズル31、32には、回転テーブル21に向かって開口する複数の吐出孔(不図示)が、各反応ガスノズル31、32の軸方向に沿って間隔を開けて配列される。例えば、基板処理装置1は、第1の反応ガスノズル31からシリコン含有ガスや金属含有ガスを吐出し、第2の反応ガスノズル32から酸化ガスや窒化ガスを吐出する構成をとり得る。第1の反応ガスノズル31の下方領域P1では、シリコンや金属が基板Wの表面に堆積され、第2の反応ガスノズル32の下方領域P2では、堆積したシリコンや金属が酸化または窒化される。
【0024】
各分離ガスノズル33、34は、いずれも図示しない配管および流量制御バルブ等(不図示)を介して、分離ガスの供給源(不図示)に接続される。分離ガスとしては、例えば、アルゴン(Ar)ガス、窒素(N2)ガス等の不活性ガスを利用できる。各分離ガスノズル33、34には、回転テーブル21に向かって開口する複数の吐出孔(不図示)が、各分離ガスノズル33、34の軸方向に沿って間隔を開けて配列される。
【0025】
図2および
図3に示すように、処理容器10内には、2つの凸状部36が設けられている。凸状部36は、各分離ガスノズル33、34とともに分離領域を構成するため、回転テーブル21側に向かって突出するように天板15の裏面に取り付けられる。また、凸状部36は、頂部が円弧状に切断された扇型の平面形状を有し、内円弧が天板15の突出部15aに連結し、外円弧が容器本体12の側壁14の内周面に沿うように配置される。
【0026】
各分離ガスノズル33、34から吐出された不活性ガスは、凸状部36に応じて流れが誘導されることで、下方領域P1の第1の反応ガスと、下方領域P2の第2の反応ガスとに対するカウンターフローとして働く。したがって、下方領域P1の第1の反応ガスと、下方領域P2の第2の反応ガスとが分離される。これにより、処理容器10の内部空間11において、第1の反応ガスと第2の反応ガスとが混合して反応することが抑制される。
【0027】
さらに、
図1に示すように、基板処理装置1は、処理容器10の天板15の中心部に分離ガス供給管37を接続しており、天板15とコア部27との間の空間に分離ガスを供給する。分離ガスにより、下方領域P1に供給される第1の反応ガスと、下方領域P2に供給される第2の反応ガスとが、中心を通って混合することが抑制される。
【0028】
また、底壁13に設けられた複数の排気口13aには、ガス排気部40である排気管41が接続されている。この排気管41には、圧力制御器42および真空ポンプ43が設けられている。
【0029】
ヒータユニット50は、底壁13の上面に設けられている。ヒータユニット50は、底壁13から突出して回転テーブル21の下面に近接する筐体51(
図4参照)と、筐体51内に収容される電熱線52(
図4参照)と、を有し、回転テーブル21に載置された基板Wを、レシピで設定された温度に加熱する。また、ヒータユニット50には、底壁13の各貫通孔13bの形成位置と同じ位置に、リフトピン61を通過させる複数の貫通孔50aが形成されている。
【0030】
ヒータユニット50が配置されている空間よりも回転中心寄りの底壁13は、コア部27に接近するように上側に突出した突出部17となっている。この突出部17とコア部27との間、および底壁13を貫通する回転軸22の孔部の内周面と回転軸22との隙間は、ともに狭くなっており、これら狭い空間はケース28に連通している。そして、ケース28には、パージガスである窒素ガスを供給するパージガス供給管29が設けられている。
【0031】
また、ヒータユニット50の下方における処理容器10の底壁13には、当該処理容器10の周方向に沿って所定の間隔毎に複数のパージガス供給管18が設けられている。各パージガス供給管18は、パージガスの供給によりヒータユニット50の配置空間のガスをパージする。
【0032】
基板処理装置1の制御部90は、基板処理装置1の各構成に動作を指示し、各構成の動作を制御する。制御部90は、1以上のプロセッサ91、メモリ92、図示しない入出力インタフェースおよび電子回路を有する制御用コンピュータである。1以上のプロセッサ91は、CPU、GPU、ASIC、FPGAもしくは複数のディスクリート半導体からなる回路等のうち1つまたは複数を組み合わせたものである。メモリ92は、不揮発性メモリおよび揮発性メモリを含み、制御部90の記憶部を形成している。不揮発性メモリは、例えばフレキシブルディスク、コンパクトディスク、ハードディスク、フラッシュメモリ、DVD等であってよい。
【0033】
〔リフトピン機構部60〕
次に、基板処理装置1のリフトピン機構部60について説明する。リフトピン機構部60は、搬送アームCA(
図3参照)により基板支持部20に基板Wを搬入出する際に、複数(本実施形態では3つ)のリフトピン61を昇降させて、搬送アームCAとの間で基板Wの受け取りおよび受け渡しを行う。なお、
図1中では、図示の便宜上、2つのリフトピン61を示している。リフトピン機構部60は、リフトピン61の数について特に限定されず、例えば、4つ以上のリフトピン61を備えてもよい。
【0034】
基板処理装置1は、搬送口14a付近の回転テーブル21の対向位置にリフトピン機構部60を備え、回転テーブル21の回転に伴って移動する複数の凹部24の各々に対して基板Wを載置し、また各凹部24から基板Wを浮上させる。リフトピン機構部60は、回転テーブル21の回転に伴って、各凹部24に対向可能となる位置の底壁13に固定されている。リフトピン機構部60は、3つのリフトピン61を各々有する3つ(複数)の上側リフト部62と、3つのリフトピン61を同時に昇降させる1つの下側動作部70と、を含む。
【0035】
図4に示すように、各上側リフト部62は、処理容器10の底壁13の貫通孔13bおよびヒータユニット50の筐体51の貫通孔50aにわたって設置される。各上側リフト部62は、上ケース63と、リフトピン61と、バネ部材64と、筒部材65と、圧力調整部66と、を備える。
【0036】
上ケース63は、底壁13の貫通孔13bおよびヒータユニット50の貫通孔13bに収容可能な円筒状に形成され、適宜の固定手段によって底壁13やヒータユニット50に強固に固定される。この上ケース63内は、リフトピン61および筒部材65を昇降自在に収容可能なピン収容室63aとなっている。上ケース63は、ピン収容室63aに収容されたリフトピン61に対して半径方向外側に離れた位置にあり、リフトピン61の昇降時に当該リフトピン61に対して非接触となっている。
【0037】
また、上ケース63は、取り付け状態で、底壁13の下面よりも鉛直方向下側に突出している。リフトピン機構部60は、この上ケース63の突出部分に圧力調整部66を接続している。
【0038】
リフトピン61は、円柱状(中実の棒状)の部材であり、底壁13の厚みおよびヒータユニット50の厚みを加えた寸法よりも長尺に形成されている。リフトピン61は、その上端部がヒータユニット50の上面よりも下方に位置した下降位置LPと、その上端部が回転テーブル21の上面よりも上方に突出した上昇位置HP(図中、二点鎖線で示す。)との間で変位する。
【0039】
リフトピン61は、大径の円柱状からなる下端基部611と、下端基部611から鉛直方向上側に突出し下端基部611よりも小径の円柱状からなる棒部612と、を有する。下端基部611および棒部612は相互に一体成形されている。リフトピン61を構成する材料は、摩耗耐性が高い金属材料やセラミックスを適用することが好ましく、本実施形態ではアルミナ(Al2O3)を適用している。
【0040】
下端基部611は、後述する下側動作部70のプランジャ71から押圧力を受ける受部となっている。また、下端基部611の外周面には、バネ部材64の下端を固定する座部材613が固定される。棒部612は、一定の外径かつ平滑な外周面を有し、上ケース63の軸心に沿って延在している。棒部612は、回転テーブル21から突出した際に、その上端部において基板Wを接触および支持する。棒部612の上端部は、略半球状に形成されており、基板Wに対して点接触することが可能である。
【0041】
リフトピン61は、ヒータユニット50の上面より下側の下降位置LPに位置することで、回転テーブル21を回転可能とする。回転テーブル21の回転停止状態で、リフトピン61は、回転テーブル21の凹部24に形成された孔部26に対向する。そして、下側動作部70のプランジャ71に押されて上昇することで、リフトピン61は、回転テーブル21の孔部26を通って回転テーブル21の上面よりも上方に露出する。
【0042】
バネ部材64は、リフトピン61の棒部612に側周囲において非接触に設けられ、鉛直方向に伸縮可能なコイルバネが適用される。バネ部材64の下端部は、上記したように座部材613の上端部に固定されている。その一方で、バネ部材64の上端部は、筒部材65に固定されている。
【0043】
筒部材65は、上ケース63の上端部側に配置される。筒部材65は、ヒータユニット50の貫通孔13bの内側に収容可能な円筒状に形成され、リフトピン61の棒部612が配置される筒孔651を内側に有する。筒部材65の下端部は、バネ部材64の上端部を収容可能なバネ座となっている。また、筒部材65の上端部には、筒状部分から半径方向外側に突出し、かつ環状に周回するフランジ部652が設けられている。フランジ部652は、ヒータユニット50の筐体51の上面に引っ掛かるように構成される。フランジ部652がヒータユニット50に引っ掛かることで、筒部材65およびバネ部材64を介してリフトピン61を支持することができ、リフトピン61が上ケース63の底面に対して非接触となる。
【0044】
この筒部材65は、上ケース63に対して相対移動可能であり、リフトピン61の上昇時にバネ部材64を介して上側に押し出されることで、リフトピン61とともに上昇する。筒部材65は、上昇に伴って回転テーブル21の下面にフランジ部652が接触することで、回転テーブル21の孔部26と上ケース63のピン収容室63aとの間を、筒孔651を介して連通させる。筒部材65が回転テーブル21に接触すると、筒部材65の上昇が停止する一方で、リフトピン61は、筒部材65と相対的に上昇を続ける。これにより、リフトピン機構部60は、回転テーブル21の孔部26にリフトピン61を安定して挿入することができる。
【0045】
リフトピン機構部60の圧力調整部66は、上ケース63のピン収容室63aにガスを供給するガス供給部67と、ピン収容室63aからガスを排気するガス排気部68と、を備える。圧力調整部66は、ガスの流通によって、回転テーブル21よりも下側の構成(ヒータユニット50、リフトピン機構部60等)に処理ガスが入り込むことを規制する。ガス供給部67が供給するガスとしては、例えば、アルゴンガスや窒素ガス、ドライエア等の不活性ガスがあげられる。
【0046】
具体的には、ガス供給部67は、底壁13から突出している上ケース63に接続されるガス供給経路671を備える。また、ガス供給部67は、ガス供給経路671の上流側から下流側に向かって順に、ガス源672、マスフローコントローラ673、圧力センサ674、開閉バルブ(不図示)等を有する。ガス供給部67は、制御部90の制御下に、開閉バルブを開閉し、開閉バルブの開放状態でマスフローコントローラ673によりガス源672から供給される不活性ガスの流量を調整することで、適宜の供給量の不活性ガスを上ケース63内に供給する。圧力センサ674は、ガス供給経路671を流通する不活性ガスの圧力を検出して、その圧力値を制御部90に送信する。この圧力値は、ピン収容室63aの圧力を間接的に表している。
【0047】
一方、リフトピン機構部60のガス排気部68は、上ケース63内からガスを排気することで、上ケース63内の圧力を調整する。このガス排気部68は、上ケース63の突出部分に接続されるガス排気経路681を備え、またガス排気経路681の途中位置に、流量調整バルブ682およびポンプ683を有する。ガス排気部68は、制御部90の制御下にポンプ683を動作して上ケース63内の吸引を行うとともに、流量調整バルブ682により排気量を調整することで、ピン収容室63aの圧力を制御することができる。
【0048】
また
図1に示すように、リフトピン機構部60の下側動作部70は、3つの上側リフト部62の下側に設けられる。下側動作部70は、リフトピン機構部60の3つのリフトピン61に対応して3つのプランジャ71を有し、各プランジャ71は、鉛直方向に沿って変位して、上昇時に各リフトピン61の下端基部611をそれぞれ押圧する。つまり、リフトピン機構部60は、基板Wに直接接触する複数のリフトピン61と、各リフトピン61を昇降させる複数のプランジャ71と、を分離して備えた2段構造を呈している。なお、リフトピン機構部60は、各プランジャ71を備えずに各リフトピン61に連結される図示しない駆動部を有し、駆動部により各リフトピン61を直接昇降してもよい。
【0049】
下側動作部70は、3つのプランジャ71を収容可能な下ケース72と、3つのプランジャ71を一体に動作させるプランジャ駆動部73と、を備える。下ケース72は、下側動作部70の各構成を収容可能な適宜の形状(略円盤状)に形成され、上ケース63の下端に固定される。上ケース63と下ケース72は、図示しないシール部材によって気密に固定される。
【0050】
プランジャ駆動部73は、駆動源74と、駆動源74の駆動力をプランジャ71に伝達する駆動伝達部75と、を含む。駆動源74は、制御部90の制御に基づき動作して、その駆動力を駆動伝達部75に出力する。駆動源74の種類は、特に限定されず、例えば、モータ、液圧式または空圧式シリンダ機構、磁気機構等を適用し得る。駆動伝達部75は、駆動源74の駆動力を変換や減速することで、3つのプランジャ71を支持した可動体751を鉛直方向に昇降させる。
【0051】
図4に示すように、各プランジャ71は、細長い中実の棒状に形成され、可動体751に固定されることで、鉛直方向に平行に延びている。上ケース63および下ケース72において各プランジャ71に対向する箇所には、各プランジャ71を通過させる通路76が形成されている。各プランジャ71は、基板Wの受け取りまたは受け渡し時に、可動体751とともに上昇することで、上ケース63のピン収容室63a内を移動する。各プランジャ71は、各リフトピン61の下端基部611に接触することで、当該リフトピン61を押し上げる。
【0052】
〔基板処理装置1の動作〕
本実施形態に係る基板処理装置1は、基本的には、以上のように構成されるものであり、以下その動作について説明する。
【0053】
図1~
図4に示すように、基板処理装置1の制御部90は、成膜処理の準備において、処理容器10の内部に基板Wを搬入するために、ゲートバルブを開放する。基板Wは、搬送アームCAに保持されて処理容器10内に搬送され、回転テーブル21において載置予定の凹部24の直上に配置される。この状態で、制御部90は、基板Wに対向するリフトピン機構部60を動作して、搬送アームCAから基板Wを受け取る。この際、リフトピン機構部60は、下側動作部70の各プランジャ71を同時に押し上げることで、各プランジャ71の上端部が各下端基部611を押圧して、各リフトピン61を上昇させる。各リフトピン61は、基板Wの待機位置(上昇位置HP)まで上昇して、基板Wの下面に接触することで基板Wを受け取る。なおこの際、リフトピン機構部60は、ガス供給部67を介して不活性ガスをピン収容室63aに供給してもよい。これにより、前の成膜処理において残存する反応ガスが回転テーブル21の下側に入り込むことを抑制できる。
【0054】
各リフトピン61による基板Wの受け取り後に、制御部90は、搬送アームCAを処理容器10から離脱させ、リフトピン機構部60を動作して各リフトピン61を下降させることで、回転テーブル21の凹部24に基板Wを載置する。基板処理装置1は、以上の動作を複数の凹部24毎に行うことで、全ての凹部24に基板Wを配置する。
【0055】
回転テーブル21の凹部24に基板Wを収容した後に、基板処理装置1は成膜処理を開始する。例えば、制御部90は、分離ガスノズル33、34から処理容器10内に分離ガスを吐出した状態で、第1の反応ガスノズル31から下方領域P1に第1の反応ガスを吐出し、第2の反応ガスノズル32から下方領域P2に第2の反応ガスを吐出する。さらに、制御部90は、反応ガスおよび分離ガスの吐出時に、回転駆動部23により回転テーブル21を所定速度で回転させる。これにより、回転テーブル21に載置された基板Wが下方領域P1および下方領域P2を繰り返し通過した際に、ALDによる膜が基板Wの表面に堆積する。
【0056】
また、制御部90は、成膜処理時にヒータユニット50を動作させることで、回転テーブル21の基板Wを加熱する。なお、制御部90は、成膜処理時に、リフトピン機構部60のガス供給部67を動作して、上側リフト部62の上ケース63に不活性ガスを供給してもよい。ピン収容室63aに供給された不活性ガスは、処理容器10内の回転テーブル21の下側に流出して、反応ガスが回転テーブル21の下側に入り込むことを抑制できる。さらに成膜処理後に、基板処理装置1は、パージガス供給管18、29を介して処理容器10内にパージガスを供給することで、処理容器10内のガスを排気口13a(ガス排気部40)に導く。
【0057】
以上の処理後に、制御部90は、回転テーブル21の各凹部24に収容された基板Wを、載置面25から上昇位置HPに浮上させて、処理容器10内に進入した搬送アームCAに受け渡す動作(以下、基板取り出し方法という)を行う。既述したように、成膜処理では、加熱等により基板Wが伸びることで、基板Wと回転テーブル21と擦れて、処理容器10内にパーティクルが残存する可能性がある。この種のパーティクルは、基板Wの取り出し時に舞い上がると、基板Wの周縁に付着してしまう。本開示に係る基板処理装置1は、基板取り出し方法において、成膜処理時に生じたパーティクルが基板Wに付着することを抑制するために、基板Wの下面側(各孔部26)の圧力を、基板Wの上側の処理空間Sよりも僅かに高い浮上用圧力に調整する処理を行う。
【0058】
具体的には、
図5に示す基板取り出し方法の処理フローにおいて、制御部90は、まず下側動作部70を動作してリフトピン61の上昇を開始する(ステップS1)。
図6(A)に示すように、プランジャ71から押圧力を受けるまで、リフトピン61は下降位置LPに配置されている。下側動作部70は、制御部90の制御下に各プランジャ71を上昇させて各プランジャ71を各リフトピン61に押し当てる。その後も、下側動作部70は、各プランジャ71を継続して上昇させることにより、各リフトピン61を同時に上昇させる。
【0059】
リフトピン61の上昇時に、制御部90は、ガス排気部68を動作して上ケース63のピン収容室63aからガスの吸引を開始する(
図5のステップS2)。
図6(B)に示すように、リフトピン61および筒部材65が下降位置LPから若干上方に変位した位置が、ピン収容室63aの吸引の開始タイミングとなる。ピン収容室63aのガスを吸引することで、回転テーブル21よりも下側の圧力を低下させることができる。なお、ピン収容室63aの吸引の開始タイミングは、プランジャ71の上昇開始時でもよく、またはプランジャ71の上昇前でもよい。
【0060】
ピン収容室63aの吸引の開始タイミングは、プランジャ71の移動距離によって制御できる(ステップS2以降の動作タイミングも同様である)。一例として、制御部90は、駆動源74の回転数を図示しないエンコーダにより計測して、当該エンコーダの計測値に基づきプランジャ71の位置を認識し、所定位置の到達タイミングでガスの吸引を開始する。また例えば、プランジャ71の動作開始からの時間計測によって制御してもよい。一例として、制御部90は、プランジャ71の動作開始から所定時間の経過後にガスの吸引を開始する。あるいは、基板処理装置1は、プランジャ71またはリフトピン61の位置を検出するセンサ(不図示)を備え、センサの検出位置に基づき動作タイミングを決定してもよい。
【0061】
ピン収容室63aの吸引の開始後に、制御部90は、ガス供給部67を動作して上ケース63のピン収容室63aに対して不活性ガスの供給を開始する(
図5のステップS3)。
図6(C)に示すように、ガス供給部67は、図示しない開閉バルブを開放するとともに、マスフローコントローラ673により不活性ガスの流量を調整することで、適宜の流量の不活性ガスをピン収容室63aに供給する。
【0062】
不活性ガスの供給の開始タイミングは、筒部材65が回転テーブル21の下面に接触する前に設定されるとよい。筒部材65が回転テーブル21の下面に接触すると、
図7(A)に示すように、上ケース63のピン収容室63a、筒部材65の筒孔651、回転テーブル21の孔部26が相互に連通するとともに、上部が基板Wで塞がった空間が形成される。この空間が形成される前に、不活性ガスを供給してガスの供給を安定化しておくことで、ガスの供給圧が基板Wに急にかかって載置面25から基板Wが浮き上がることを抑制できる。
【0063】
不活性ガスを供給した後に、リフトピン61の上昇に伴って筒部材65が回転テーブル21の下面に接触する(
図5のステップS4)。これにより一時的に空間が塞がった状態となる。ただし、制御部90は、不活性ガスの供給において圧力センサ674が検出する圧力値に基づき、マスフローコントローラ673により不活性ガスの供給量を調整するとともに、流量調整バルブ682によりガスの排気量を調整する。したがって、基板処理装置1は、基板Wの背面側の各孔部26の圧力を適切な浮上用圧力に制御できる。
【0064】
具体的には、制御部90は、載置面25よりも上方の処理空間Sの圧力よりも、各孔部26(ピン収容室63a、筒孔651を)の浮上用圧力のほうが、僅かに高くなるように調整する。例えば
図9に示すように、基板処理装置1は、基板処理の実施時にガス供給部30やガス排気部40によって処理空間Sの圧力を1[Torr]以上100[Torr]以下(=133[Pa]~13332[Pa])の範囲に調整する。より好ましくは、基板処理装置1は、成膜処理時の圧力に応じて、搬送時の処理空間Sの圧力を、1[Torr]以上2[Torr](=267[Pa])未満の範囲に設定するとよい。
【0065】
そして、上記のように搬送時の処理空間Sの圧力を1[Torr]以上2[Torr]未満の圧力に設定した場合、制御部90は、処理空間Sの圧力に対する各孔部26の圧力の比率として、1.0倍以上1.66倍以下の範囲に設定することが好ましい。つまり、各孔部26の圧力としては、1[Torr]以上3.32[Torr]以下(=133[Pa]~443[Pa])であるとよい。例えば、処理空間Sの圧力が1.8[Torr]の場合に、各孔部26の圧力が3[Torr](=400[Pa])となるように、ガス供給部67およびガス排気部68を制御する。これにより、載置面25から基板Wが浮上せずに、基板Wに微陽圧をかけることができる。
【0066】
なお、上記の比率の範囲から分かるように、浮上用圧力は、処理空間Sの圧力と同一に設定されてもよい。このように、浮上用圧力と処理空間Sの圧力が同じであっても、処理空間S側のガスが基板Wに圧力をかけることがなくなるので、各リフトピン61の上昇に伴って基板Wを容易に浮上させることができる。また、
図9に示すように、搬送時の処理空間Sの圧力を1[Torr]よりも低い値とする場合には、処理空間Sの圧力に対する各孔部26の圧力の比率を1.66倍より大きな比率としてもよい。この際の比率としては、2.8倍以下に設定することがあげられる。処理空間Sの圧力が小さい場合には、各孔部26にかける圧力が充分に小さくなり、基板Wの自重によって基板Wがそもそも浮上しないようになるからである。逆に、基板処理の圧力に基づき搬送時の処理空間Sの圧力を2[Torr]以上の値とする場合には、処理空間Sの圧力に対する各孔部26の圧力の比率を1.0倍以上1.5倍以下とすることが好ましい。以上の処理空間Sの圧力に対する浮上用圧力の比率の範囲をまとめると、全体としては1.0倍~2.8倍の範囲となる。ただし、比率の範囲は、処理空間Sの圧力が1[Torr]~2[Torr]未満の場合、1.0倍~1.66倍に設定することが好ましく、また処理空間Sの圧力が2[Torr]以上の場合、1.0倍~1.5倍に設定することが好ましい。
【0067】
上記のように、処理空間Sの圧力以上かつ載置面25に基板Wが継続して載置される浮上用圧力に調整することで、基板処理装置1は、載置面25から基板Wを離間し易い状態で待機させることができる。すなわち、各孔部26の圧力が処理空間Sの圧力よりも低いと、載置面25と基板Wの背面とがくっつくことで、各リフトピン61による浮上時に、大きな気流の乱れが生じることになり、成膜処理時に生じたパーティクルが舞い上がり易くなる。これに対して、各孔部26を処理空間Sの圧力よりも僅かに高い微陽圧とすることで、パーティクルの舞い上がりを抑制できる。また、各孔部26に浮上用圧力をかけても載置面25への基板Wの載置が継続可能となるため、基板Wの浮上によって基板Wが凹部24に接触する等の不都合を回避できる。
【0068】
なお、制御部90は、
図1に二点鎖線で示す処理空間側圧力センサ19により処理空間Sの圧力を検出して、この処理空間Sの圧力値と、ガス供給部67の圧力センサ674の圧力値と、に基づき不活性ガスの供給量または排気量を調整してもよい。これにより、制御部90は、各孔部26の浮上用圧力を処理空間Sの圧力よりも僅かに高い微陽圧に精度よく制御できる。
【0069】
制御部90は、各孔部26を浮上用圧力に調整した状態で、下側動作部70の動作下に各リフトピン61を上昇させることで、載置面25から基板Wを浮上させる(
図5のステップS5)。これにより、
図7(B)に示すように、リフトピン機構部60は、各リフトピン61により基板Wを持ち上げた状態とする。
【0070】
この際、各孔部26の浮上用圧力が処理空間Sよりも僅かに高い微陽圧になっていることで、載置面25に対する基板Wの密着を回避して、基板Wをスムーズに離間させることができる。基板Wの浮上によって、各孔部26から処理空間Sに不活性ガスが流出しても、その流れは緩やかであり、パーティクルが処理空間Sに舞い上がることが抑制される。
【0071】
制御部90は、下側動作部70を動作して各リフトピン61の上昇を継続して、搬送アームCAが基板Wを受け取り可能な上昇位置HPまで基板Wを上昇させる(
図5のステップS6)。
図7(C)に示すように、各リフトピン61が上昇している間も、制御部90は、ガス供給部67による不活性ガスの供給と、ガス排気部68によるガスの排気とを継続している。これにより、成膜処理時に残留した反応ガスが上側リフト部62に入り込むことを防ぐことができる。
【0072】
そして、基板Wが上昇位置HPに達すると、制御部90は、ガス供給部67の不活性ガスの供給を停止するとともに、ガス排気部68によるガスの排気を停止する(
図5のステップS7)。
図8(A)に示すように、基板Wが上昇位置HPに位置する状態では、各孔部26が処理空間Sに充分に開放した状態となる。このため、基板処理装置1は、不活性ガスの流通を停止することにより、回転テーブル21を挟んで上下の圧力を早期に均等化することができる。
【0073】
この状態で、制御部90は、上昇位置HPにある基板Wの下側に搬送アームCAを進入させて、各リフトピン61を下降することで、搬送アームCAに基板Wを受け渡す(
図5のステップS8)。この際、
図8(B)に示すように、各孔部26の圧力と処理空間Sの圧力が同じになっていることで、気流が基板Wに対して影響を与えることがなく、搬送アームCAに基板Wを安定して受け渡すことができる。そして、搬送アームCAは、基板Wを受け取ると、処理容器10から基板Wを搬出する。
【0074】
以上のように、基板処理装置1は、基板取り出し方法において、基板Wを載置する載置面25よりも下側の各孔部26の圧力を、処理空間Sよりも高く、かつ基板Wが浮かない浮上用圧力とすることで、基板Wへのパーティクルの付着を抑制できる。
【0075】
〔基板取り出し方法の実施例〕
以上の基板処理装置1を用いて基板取り出し方法を実施し、実際に基板Wにパーティクルが付着しているか否かを確認する実験を行った。実験では、複数の基板Wを用意して、上記した基板取り出し方法を実施する組と、比較の対象とするために基板取り出し方法を行わずに単にリフトピン61により基板Wを浮上させる組とに分けて、基板Wの周縁にパーティクルが付着しているか否かを確認した。
【0076】
単にリフトピン61により基板Wを浮上させる組として、23枚の基板Wに対して同じ実験を行った。実験の結果、7枚の基板Wの表面にパーティクルが付着していた。平均すると約30%の割合でパーティクルの付着が生じていることになる。これに対して、上記した基板取り出し方法を実施する組として、21枚の基板Wに対して同じ実験を行った。実験の結果、表面にパーティクルが付着している基板Wは存在しなかった(パーティクルが付着した基板Wの割合は0%だった)。すなわち、本実施形態に係る基板処理装置1および基板取り出し方法は、パーティクルの付着を大幅に低減できると言える。
【0077】
以上の実施形態で説明した本開示の技術的思想および効果について以下に記載する。
【0078】
本開示の第1の態様に係る基板処理装置1は、基板Wを内部に収容して当該基板Wを処理する処理容器10と、処理容器10内に設けられ、基板Wを載置する載置面25を有する基板支持部20と、基板支持部20に対して相対移動可能なリフトピン61、およびリフトピン61を収容するピン収容室63aを含み、リフトピン61を上昇させることで基板支持部20に載置された基板Wを浮上させるリフトピン機構部60と、を備え、基板支持部20は、リフトピン61が通過可能な孔部26を有し、リフトピン機構部60は、ピン収容室63aに不活性ガスを流通させることにより孔部26の圧力を調整する圧力調整部66を有し、圧力調整部66は、基板Wの浮上時に、孔部26の圧力を載置面25よりも上側の処理空間の圧力以上、かつ載置面25に基板Wが継続して載置される浮上用圧力とする。
【0079】
上記のように、基板処理装置1は、圧力調整部66により、孔部26の圧力を処理空間Sの圧力以上、かつ載置面25に基板Wが継続して載置される浮上用圧力とすることにより、基板Wの背面側を載置面25から離脱し易くすることができる。このため、基板処理装置1は、リフトピン61により載置面25から基板Wをスムーズに浮上させることが可能となり、基板処理時に生じるパーティクルの舞い上がりを抑制して、基板Wの表面へのパーティクルの付着を低減できる。
【0080】
また、浮上用圧力は、処理空間Sの圧力に対して1.0倍以上2.8倍以下である。これにより、基板処理装置1は、リフトピン61が接触するまでは基板Wを載置面25に安定して載置し続ける一方で、リフトピン61の接触後に基板Wを円滑に浮上させることができる。
【0081】
また、処理空間Sの圧力が1[Torr]以上2[Torr]未満の場合に、浮上用圧力は、処理空間Sの圧力に対して1.0倍以上1.66倍以下である。これにより、基板処理装置1は、処理空間Sの圧力が1[Torr]以上2[Torr]未満の場合でも、基板Wを載置面25に安定して載置し続ける一方で、リフトピン61の接触後に基板Wを円滑に浮上させることができる。
【0082】
また、処理空間Sの圧力が2[Torr]以上の場合に、浮上用圧力は、処理空間Sの圧力に対して1.0倍以上1.5倍以下である。これにより、基板処理装置1は、種々の基板処理において処理空間Sの圧力を2[Torr]以上に設定しても、基板Wの背面側の圧力を適切に調整でき、リフトピン61の上昇時に載置面25から基板Wを容易に離脱させて、パーティクルの付着を抑制できる。
【0083】
また、圧力調整部66は、ピン収容室63aに不活性ガスを供給するガス供給経路671と、ガス供給経路671に設けられ不活性ガスの流量を調整する給気調整器(マスフローコントローラ673)と、を有する。これにより、基板処理装置1は、ピン収容室63aに不活性ガスを供給することで、孔部26の圧力をスムーズに調整できる。
【0084】
また、圧力調整部66は、ピン収容室63aに連通してピン収容室63aの気体を排出するガス排気経路681と、ガス排気経路681の流路の開度を調整する排気調整器(流量調整バルブ682)と、を有する。これにより、基板処理装置1は、孔部26の圧力を安定して調整できる。
【0085】
また、圧力調整部66は、ピン収容室63aに不活性ガスを供給する前に排気調整器(流量調整バルブ682)を開放する。これにより、基板処理装置1は、不活性ガスの供給前にピン収容室63aの圧力が低下し、ピン収容室63aの圧力が急に高まることによる基板Wの浮上を抑制できる。
【0086】
また、圧力調整部66は、ピン収容室63aの圧力を検出する圧力センサ674を備え、圧力センサ674の圧力値に基づきリフトピン機構部60の動作を制御する制御部90を有する。これにより、基板処理装置1は、孔部26の圧力を精度よく調整できる。
【0087】
また、基板Wの浮上時における処理空間Sの圧力を検出する処理空間側圧力センサ19を備え、制御部90は、圧力センサ674の圧力値と処理空間側圧力センサ19の圧力値とに基づき、圧力調整部66により孔部26の圧力を調整する。これにより、基板処理装置1は、処理空間S側の圧力値に応じて孔部26の圧力を適切に調整できる。
【0088】
また、リフトピン機構部60は、リフトピン61の側周囲にリフトピン61の上昇に伴って基板支持部20に接触可能な筒部材65を有し、圧力調整部66は、基板Wの浮上時に筒部材65が基板支持部20に接触するまでの間に、ピン収容室63aに不活性ガスを供給する。これにより、基板処理装置1は、不活性ガスを孔部26に良好に導くことが、孔部26の圧力を効率且つ安定して調整できる。
【0089】
また、圧力調整部66は、リフトピン61の上昇により基板支持部20から基板Wが離間した後に、不活性ガスの供給を停止する。これにより、基板処理装置1は、基板Wへのパーティクルの付着をより確実に抑制できる。
【0090】
また、本開示の第2の態様は、基板Wを処理する処理容器10の内部において、基板Wを載置した基板支持部20から当該基板Wを取り出す基板処理装置1の基板取り出し方法であって、基板処理装置1は、基板支持部20に対して相対移動可能なリフトピン61、およびリフトピン61を収容するピン収容室63aを含むリフトピン機構部60を有し、基板支持部20は、基板Wを載置する載置面25と、リフトピン61が通過可能な孔部26と、を有し、基板取り出し方法は、圧力調整部66により基板Wの持ち上げ時にピン収容室63aに不活性ガスを流通させることで、前記孔部26の圧力を、前記載置面25よりも上側の処理空間Sの圧力以上、かつ載置面25に基板Wが継続して載置される浮上用圧力とする工程と、リフトピン61を上昇させることで基板支持部20に載置された基板Wを浮上させる工程と、を含む。この第2の態様でも、処理容器10から基板Wを取り出す際に、基板Wの表面へのパーティクルの付着を低減できる。
【0091】
今回開示された実施形態に係る基板処理装置1および基板W取り出し方法は、すべての点において例示であって制限的なものではない。実施形態は、添付の請求の範囲およびその主旨を逸脱することなく、様々な形態で変形および改良が可能である。上記複数の実施形態に記載された事項は、矛盾しない範囲で他の構成も取り得ることができ、また、矛盾しない範囲で組み合わせることができる。
【0092】
本開示の基板処理装置1は、Atomic Layer Deposition(ALD)装置、Capacitively Coupled Plasma(CCP)、Inductively Coupled Plasma(ICP)、Radial Line Slot Antenna(RLSA)、Electron Cyclotron Resonance Plasma(ECR)、Helicon Wave Plasma(HWP)のいずれのタイプの装置でも適用可能である。
【符号の説明】
【0093】
1 基板処理装置
10 処理容器
20 基板支持部
25 載置面
26 孔部
60 リフトピン機構部
61 リフトピン
63a ピン収容室
66 圧力調整部
S 処理空間
W 基板