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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023091943
(43)【公開日】2023-07-03
(54)【発明の名称】積層部材
(51)【国際特許分類】
   C04B 35/84 20060101AFI20230626BHJP
   B32B 3/30 20060101ALI20230626BHJP
   B32B 18/00 20060101ALI20230626BHJP
   C04B 37/02 20060101ALI20230626BHJP
【FI】
C04B35/84
B32B3/30
B32B18/00 A
C04B37/02 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021206834
(22)【出願日】2021-12-21
(71)【出願人】
【識別番号】000000044
【氏名又は名称】AGC株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】391040711
【氏名又は名称】AGCセラミックス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100152984
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 秀明
(74)【代理人】
【識別番号】100168985
【弁理士】
【氏名又は名称】蜂谷 浩久
(74)【代理人】
【識別番号】100148080
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 史生
(74)【代理人】
【識別番号】100149401
【弁理士】
【氏名又は名称】上西 浩史
(72)【発明者】
【氏名】林 瑠衣
(72)【発明者】
【氏名】小川 修平
(72)【発明者】
【氏名】田中 公貴
(72)【発明者】
【氏名】山本 宏行
(72)【発明者】
【氏名】神田 幸一
(72)【発明者】
【氏名】神山 敏久
【テーマコード(参考)】
4F100
4G026
【Fターム(参考)】
4F100AB01B
4F100AB11A
4F100AB11C
4F100AB21B
4F100AD00A
4F100AD00C
4F100AD08A
4F100AD08C
4F100AR00B
4F100BA03
4F100BA10A
4F100BA10C
4F100DD05A
4F100DD05C
4F100DD07A
4F100DD07C
4F100DJ01B
4F100EH462
4F100EH46B
4F100EJ172
4F100EJ261
4F100EJ341
4F100EJ422
4F100JA02A
4F100JA02C
4F100JJ01
4F100JJ01A
4F100JJ01C
4F100JK01
4F100YY00
4F100YY00A
4F100YY00B
4F100YY00C
4G026BA14
4G026BB14
4G026BE01
4G026BF12
4G026BF13
4G026BG02
4G026BH13
(57)【要約】
【課題】従来には無い新規な積層部材を提供する。
【解決手段】本発明の積層部材は、第1セラミックス部材と、中間層と、第2セラミックス部材とをこの順に有する積層部材であって、前記積層部材の厚みは1mm~15mmであり、前記積層部材の最大長さは10cm~45cmであり、前記積層部材の形状は平面視で円形、楕円形、多角形、またはこれらが組み合わされた形状であり、前記第1セラミックス部材は、前記中間層側の第1内側主面と、前記第1内側主面と反対向きの第1外側主面を有し、前記第2セラミックス部材は、前記中間層側の第2内側主面と、前記第2内側主面と反対向きの第2外側主面とを有し、以下の(a)および(b)の少なくとも一方を満たす。
(a)前記第1外側主面の表面粗さと前記第2外側主面の表面粗さが異なる
(b)前記第1外側主面、前記第1内側主面、前記第2外側主面および前記第2内側主面の少なくとも1つに、少なくとも1つの溝部が形成されている
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1セラミックス部材と、中間層と、第2セラミックス部材とをこの順に有する積層部材であって、
前記積層部材の厚みは1mm~15mmであり、
前記積層部材の最大長さは10cm~45cmであり、
前記積層部材の形状は平面視で円形、楕円形、多角形またはこれらが組み合わされた形状であり、
前記第1セラミックス部材は、前記中間層側の第1内側主面と、前記第1内側主面と反対向きの第1外側主面を有し、
前記第2セラミックス部材は、前記中間層側の第2内側主面と、前記第2内側主面と反対向きの第2外側主面とを有し、
以下の(a)および(b)の少なくとも一方を満たす、積層部材。
(a)前記第1外側主面の表面粗さと前記第2外側主面の表面粗さが異なる
(b)前記第1外側主面、前記第1内側主面、前記第2外側主面および前記第2内側主面の少なくとも1つに、少なくとも1つの溝部が形成されている
【請求項2】
前記第1外側主面の表面粗さは0.1μm~10μmであり、
前記第2外側主面の表面粗さは0.001~0.2μmである、請求項1に記載の積層部材。
【請求項3】
前記第1内側主面および前記第2内側主面の少なくとも1つが有する溝部により、少なくとも1つの長孔が形成された、請求項1または2に記載の積層部材。
【請求項4】
前記長孔の断面積は0.16~8.0mmであり、
前記長孔の長さは10cm以上である、請求項3に記載の積層部材。
【請求項5】
前記第1セラミックス部材および前記第2セラミックス部材の熱伝導率は、130W/(m・K)~300W/(m・K)である、請求項1~4のいずれか1項に記載の積層部材。
【請求項6】
前記第1セラミックス部材および前記第2セラミックス部材はいずれもSiSiCから成る、請求項1~5のいずれか1項に記載の積層部材。
【請求項7】
前記中間層の厚みは0.004mm~0.6mmである、請求項1~6のいずれか1項に記載の積層部材。
【請求項8】
前記中間層は、接合部を含み、
前記接合部は、SnおよびInから選択される少なくとも1種の元素を90質量%以上含む、請求項1~7のいずれか1項に記載の積層部材。
【請求項9】
前記中間層は、更に少なくとも1つの小部材を含み、
前記中間層の厚みから前記小部材の厚みを除した値は0.5mm以下である、請求項8記載の積層部材。
【請求項10】
前記接合部は、Snを90質量%以上含む、請求項8または9に記載の積層部材。
【請求項11】
前記接合部は少なくとも1つの気泡を含有し、
前記接合部と前記第1セラミックス部材との界面、または前記接合部と前記第2セラミックス部材との界面において前記気泡を測定したときに、
前記気泡の平均断面積は4cm以下であり、
前記気泡のうち断面積が0.5cm以上であるものの個数は1個/cm以下である、請求項8~10のいずれか1項に記載の積層部材。
【請求項12】
前記積層部材の厚み方向に対して測定した熱伝導率は130W/(m・K)以上である、請求項1~11のいずれか1項に記載の積層部材。
【請求項13】
せん断強度は10MPa以上である、請求項1~12のいずれか1項に記載の積層部材。
【請求項14】
前記第1セラミックス部材および前記第2セラミックス部材の20℃~200℃における平均線膨張率係数は2.4ppm/℃~4.0ppm/℃である、請求項1~13のいずれか1項に記載の積層部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、積層部材に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、薄板形状のセラミックス部材について、両主面の表面粗さが異なることや、長孔や溝部を有することが求められている(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004-296254号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、そのような薄板形状のセラミックス部材を得るための加工を行うと、セラミックス部材において反りや歪みが発生しやすく、これを抑制することは困難であった。
本発明は、以上の点を鑑みてなされたものであり、従来には無い新規な積層部材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一実施形態に係る積層部材は、第1セラミックス部材と、中間層と、第2セラミックス部材とをこの順に有する積層部材であって、前記積層部材の厚みは1mm~15mmであり、前記積層部材の最大長さは10cm~45cmであり、前記積層部材の形状は平面視で円形、楕円形、多角形、またはこれらが組み合わされた形状であり、前記第1セラミックス部材は、前記中間層側の第1内側主面と、前記第1内側主面と反対向きの第1外側主面を有し、前記第2セラミックス部材は、前記中間層側の第2内側主面と、前記第2内側主面と反対向きの第2外側主面とを有し、以下の(a)および(b)の少なくとも一方を満たす。
(a)前記第1外側主面の表面粗さと前記第2外側主面の表面粗さが異なる
(b)前記第1外側主面、前記第1内側主面、前記第2外側主面および前記第2内側主面の少なくとも1つに、少なくとも1つの溝部が形成されている
【発明の効果】
【0006】
本発明の一実施形態によれば、従来には無い新規な積層部材を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】一実施形態に係る積層部材1を模式的に示す断面図である。
図2】積層部材1に含まれる第1セラミックス部材11の第1外側主面11aの一例を模式的に示す平面図である。
図3】積層部材1に含まれる第1セラミックス部材11の一例を模式的に示す斜視図である。
図4】積層部材1の製造方法の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図面を参照して実施形態の具体的な構成例を説明する。
以下の説明において、「~」を用いて表される数値範囲は、「~」の前後に記載される数値を下限値および上限値として含む範囲を意味する。前記下限値および前記上限値は、四捨五入の範囲を含む。
また、図面中、上下左右等の位置関係は、特に断らない限り、図面に示す位置関係に基づくものとする。図面の寸法比率は図示の比率に限られるものではない。
【0009】
図1は、一実施形態に係る積層部材1を模式的に示す断面図である。積層部材1は、第1セラミックス部材11と、中間層13と、第2セラミックス部材12とが、この順で積層された積層構造を有する。
中間層13は、第1セラミックス部材11と第2セラミックス部材12との間に形成される層であり、第1セラミックス部材11および第2セラミックス部材の少なくとも一方が反りや歪みを有していた場合に、その反りや歪みを吸収し、積層部材1の反りや歪みを解消することができる。
積層部材1は、中間層13により反りや歪みが抑制されており、また、後述するように熱伝導性、機械特性などに優れることから、例えばIH(誘導加熱)調理器などの加熱調理器のトッププレートとして好適に用いられる。加熱調理器のトッププレートとは、鍋などの調理器具が載置される部材である。
加熱調理機器のトッププレートの材料としては、従来からセラミックス等が用いられている。ところが、トッププレートの材料としてセラミックスを用いると、例えば以下のような問題が生じる。
(ア)トッププレートの両主面が異なる表面粗さを有するように、トッププレートの両主面をそれぞれ加工すると、その加工の過程で反りや歪みが生じ、結果として、調理器具を安定に載置できない等の問題が生じる。なお、明細書中、「主面」とは、部材(この場合は、トッププレート)の厚み方向と直交する面である。
(イ)トッププレートに、加熱ヒーター(例えば、ニクロム線加熱ヒーター)を埋め込むことや、滑り止めの機能を得ることを目的として、トッププレートの主面に溝部を形成するための加工を行うと、その加工の過程で反りや歪みが生じ、結果として、調理器具を安定に載置できない等の問題が生じる。
(ウ)トッププレートに、トッププレートおよび調理器具の温度を把握および制御するための熱電対等の棒状部材を差し込むことを目的として、ドリル加工等の通常の穴あけ加工により長孔を形成しようとすると、セラミックスは極めて高硬度であるため、加工工具が破損する、十分な断面積や長さを有する長孔が得られない等の問題が生じる。
他方、トッププレートとして積層部材1を用いれば、積層部材1は、中間層13により反りや歪みが抑制されているので、上記(ア)または(イ)のような問題が発生する恐れがない。
また、トッププレートとして後述する内側溝部14bに由来する長孔を有する積層部材1を用いれば、内側溝部14bの製法は後述するが、ドリル加工等の穴あけ加工をする場合に比べて、上記(ウ)のような問題が発生する恐れがない。
なお、デザイン性や防汚性の向上のために、積層部材1に、他の部材(ガラス部材、セラミックス部材、金属部材など)を接合してもよい。ガラス部材を接合する場合は、積層部材1とガラス部材とを、接合材により接合してもよい。この場合、接合材としては樹脂が好ましく、例えばエポキシ樹脂、シリコーン樹脂、フッ素樹脂が用いられる。ガラス部材を接合した積層部材1は、例えば、システムキッチンのワークトップの一部を構成するトッププレートとして用いられる。
以上、積層部材1の用途について述べたが、積層部材1の用途は加熱調理器のトッププレートに限定されず、その他に、加熱実験用電気炉のヒーター部材、半導体デバイス製造装置用部材等が挙げられる。
【0010】
<セラミックス部材>
第1セラミックス部材11は、中間層13側の面である第1内側主面11bと、第1内側主面11bと対向する面である第1外側主面11aとを有する。
第2セラミックス部材12は、中間層13側の面である第2内側主面12bと、第2内側主面12bと対向する面である第2外側主面12aとを有する。
以下、第1セラミックス部材11および第2セラミックス部材12に共通する特徴については、特に断りのない限り、「セラミックス部材」の特徴として説明する。第1セラミックス部材11および第2セラミックス部材12は、以下に記載する「セラミックス部材」の特徴を満たしていれば、同一のものであってもよく、異なるものであってもよい。
【0011】
(材料)
セラミックス部材は、例えば、窒化アルミニウム(AlN)、窒化ケイ素(Si)、炭化ケイ素(SiC)、またはSiとSiCの複合材料(SiSiC)から成る。
セラミックス部材は、熱伝導性、機械特性などに優れることから、SiCまたはSiSiCから成ることが好ましく、SiSiCから成ることがより好ましい。
セラミックス部材がSiSiCから成る場合、セラミックス部材は、セラミックス部材の全質量に対して、40質量%~92質量%のSiCと、Siを8質量%~60質量%と含むセラミックスであるのが好ましく、50質量%~87質量%のSiCと、13質量%~50質量%のSiとを含むセラミックスであるのがより好ましく、55質量%~82質量%のSiCと、18質量%~45質量%のSiとを含むセラミックスであるのが更に好ましく、60質量%~77質量%のSiCと、23質量%~40質量%のSiとを含むセラミックスであるのが特に好ましく、65質量%~72質量%のSiCと、28質量%~35質量%のSiとを含むセラミックスであるのが最も好ましい。
セラミックス部材におけるSiCおよびSiの含有量が上記範囲内であれば、セラミックス部材は、熱的特性と機械的特性のバランスが優れる。
セラミックス部材は、焼結助剤を由来とする成分や微量の不純物等を含んでいてもよい。不純物は、特に限定されないが、例えば鉄(Fe)である。焼結助剤は、特に限定されないが、例えば酸化ベリリウム(BeO)、炭化ホウ素(BC)、窒化ホウ素(BN)、アルミニウム(Al)が挙げられる。
セラミックス部材の組成は、重量法やICP発行分光分析により測定できる。
【0012】
(平均線膨張係数)
セラミックス部材の20℃~200℃における平均線膨張率係数(以下、単に「平均線膨張係数」とも呼ぶ。)は、2.4ppm/℃以上が好ましく、2.6ppm/℃以上がより好ましく、2.8ppm/℃以上が更に好ましく、3.0ppm/℃以上が特に好ましい。
セラミックス部材の平均線膨張率係数は、4.0ppm/℃以下が好ましく、3.7ppm/℃以下がより好ましく、3.4ppm/℃以下が更に好ましく、3.2ppm/℃以下が特に好ましい。
セラミックス部材の平均線膨張率係数が上記範囲内であれば、温度変化による積層部材1の変形を十分に抑制することができる。また、システムキッチンのワークトップの一部を構成するトッププレートとして、ガラス部材を接合した積層部材1を用いる場合に、ガラスと積層部材1との平均線膨張係数の差を小さくすることができ、平均線熱膨張係数の違いに起因する反りや歪みの発生を抑制することができる。
平均線膨張係数は、測定する温度範囲を-50℃~200℃とした熱膨張計(Dilatometer)や、熱機械分析装置(TMA)により測定できる。
セラミックス部材の平均線膨張係数を上記範囲にする方法としては、SiCとSiとの含有量を上述の範囲内に調節する方法が挙げられる。
【0013】
(熱伝導率)
セラミックス部材の20℃における熱伝導率は、130W/(m・K)以上が好ましく、160W/(m・K)以上がより好ましく、190W/(m・K)以上が更に好ましく、210W/(m・K)以上がより更に好ましく、225W/(m・K)以上が特に好ましい。
セラミックス部材の熱伝導率は、300W/(m・K)以下が好ましく、270W/(m・K)以下がより好ましく、260W/(m・K)以下が更に好ましく、250W/(m・K)以下が特に好ましい。
セラミックス部材の熱伝導率が上記範囲内であれば、加熱部材として均熱性が向上する。また、セラミックス部材の熱伝導率が上記範囲内であれば、セラミックス部材の製造時に熱伝導率がばらつくことによる歩留まりの低下を防ぐことができ、セラミックス部材の品質を安定させやすい。
セラミックス部材の熱伝導率は、レーザーフラッシュ法により求めることができる。具体的には、例えば、セラミックス部材から任意の10箇所を切り出して小片を得た後、 それぞれの小片に対しレーザーフラッシュ法により熱伝導率を測定し、最低値をセラミックス部材の熱伝導率とする。
セラミックス部材の熱伝導率を上記範囲にする方法としては、SiCとSiとの含有量を上述の範囲に調節する方法が挙げられる。
【0014】
(ヤング率)
セラミックス部材のヤング率は、300GPa以上が好ましく、320GPa以上がより好ましく、350GPa以上が更に好ましく、370GPa以上が特に好ましい。セラミックス部材のヤング率が300GPa以上であれば、積層部材1が耐衝撃性に優れる。
セラミックス部材のヤング率は、420Gpa以下が好ましく、410GPa以下がより好ましく、400GPa以下が更に好ましく、390GPa以下が特に好ましい。セラミックス部材のヤング率が420GPa以下であれば、中間層13がセラミックス部材の反りや歪みを吸収しやすくなり、結果として積層部材1の平面度が向上する。
一般に、ヤング率が低いほど耐熱衝撃性は高く、セラミックス部材は、他の炭化ケイ素質のセラミックスに比べヤング率が低くなる傾向にある。
セラミックス部材のヤング率は、日本工業規格(JIS R1602:1995)に記載された弾性率試験方法(超音波パルス法:動的弾性率)により20℃で測定できる。
セラミックス部材のヤング率を上記範囲にする方法としては、SiCとSiとの含有量を上述の範囲に調節する方法が挙げられる。
【0015】
(曲げ強度)
セラミックス部材の曲げ強度は、130MPa以上が好ましく、200MPa以上がより好ましく、220MPa以上が更に好ましく、230MPa以上が特に好ましい。
セラミックス部材の曲げ強度は、300MPa以下が好ましく、260MPa以下がより好ましく、250MPa以下が更に好ましく、240MPa以下が特に好ましい。
セラミックス部材の曲げ強度が上記範囲内であれば、落下物によるセラミックス部材ひいては積層部材1の割れを防止でき、耐衝撃性を高めることができる。
セラミックス部材の曲げ強度は、日本工業規格(JIS R1601:2008)に記載された曲げ強さ試験方法(4点曲げ強さ)により20℃で測定できる。
【0016】
(ビッカース硬さ)
セラミックス部材のビッカース硬さ(Hv)は、20GPa以上が好ましく、21GPa以上がより好ましく、22GPa以上が更に好ましく、23GPa以上が特に好ましい。
セラミックス部材のビッカース硬さは、27GPa以下が好ましく、26GPa以下がより好ましく、25GPa以下が更に好ましく、24GPa以下が特に好ましい。
セラミックス部材のビッカース硬さが上記範囲内であれば、セラミックス部材ひいては積層部材1の耐擦傷性が向上する。
セラミックス部材のビッカース硬さは、ビッカース硬さ計システムにより20℃で測定できる。
【0017】
(形状)
セラミックス部材の形状は、平面視で円形、楕円形、多角形、またはこれらが組み合わされた形状である。セラミックス部材を加熱調理機器のトッププレートとして用いる場合は、円形を含む形状であることが好ましい。
セラミックス部材の最大長さは、10cm以上が好ましく、15cm以上がより好ましく、20cm以上が更に好ましく、25cm以上が特に好ましい。
セラミックス部材の最大長さは、45cm以下が好ましく、39cm以下がより好ましく、37cm以下が更に好ましく、35cm以下が特に好ましい。
セラミックス部材の最大長さが上記範囲内であれば、積層部材1を加熱調理機器のトッププレートとして用いた場合に好適である。
なお、明細書中、「最大長さ」とは、部材の有する最大の長さを意味する。具体的には、例えば、セラミックス部材が平面視で円形である場合はその直径であり、平面視で四角形である場合は最大の対角線の長さであり、平面視で円形と四角形とを組み合わせた形状である場合は当該円形の直径および当該四角形の最大の対角線の長さのうちの長い方である。
セラミックス部材の厚みは、0.5mm以上が好ましく、1mm以上がより好ましく、2mm以上が更に好ましく、2.5mm以上が特に好ましい。セラミックス部材の厚みが0.5mm以上であれば、セラミックス部材が耐衝撃性に優れ、また、後述の溝部14を好適に形成することができる。また、セラミックス部材の厚みが0.5mm以上であれば、後述する加工の工程(ステップS44)の際に、セラミックス部材に反りや歪みが発生するのを抑制することができる。
セラミックス部材の厚みは、12mm以下が好ましく、10mm以下がより好ましく、8mm以下が更に好ましく、7mm以下が特に好ましい。セラミックス部材の厚みが15mm以下であれば、セラミックス部材が放熱性および均熱性に優れる。
セラミックス部材の最大長さおよび厚みは、ノギスやデジタルメジャーにより測定できる。
【0018】
(表面粗さ)
第1外側主面11aの表面粗さRaは、0.1μm以上が好ましく、0.5μm以上がより好ましく、0.8μm以上が更に好ましく、1.0μm以上が特に好ましい。
表面粗さRaは、10μm以下が好ましく、7μm以下がより好ましく、5μm以下が更に好ましく、3μm以下が特に好ましい。
表面粗さRaが上記範囲内であれば、第1外側主面11a側に、ガラス部材等の他の部材を接合させる場合に、第1外側主面11aと接合材との接触面積が十分大きいため、高い接合強度を得ることが出来る。
他方、第2外側主面12aの表面粗さRaは、0.001μm以上が好ましく、0.005μm以上がより好ましく、0.008μm以上が更に好ましく、0.01μm以上が特に好ましい。
表面粗さRaは、0.2μm以下が好ましく、0.15μm以下がより好ましく、0.12μm以下が更に好ましく、0.1μm以下が特に好ましい。
表面粗さRaが上記範囲内であれば、例えば第2外側主面12a上に調理器具を載置した場合に、第2外側主面12aと調理器具との密着性がよいため、効率的にヒーターの熱を調理器具に伝達することができる。
表面粗さRaおよび表面粗さRaは、触診式表面粗さ測定器やレーザー顕微鏡、もしくは原子間力顕微鏡により測定できる。
【0019】
(金属層)
図示しないが、第1内側主面11bおよび第2内側主面12bの少なくとも一方は、金属層を有していてもよい。
金属層は、銅(Cu)、銀(Ag)、金(Au)、白金(Pt)、チタン(Ti)、ニッケル(Ni)、クロム(Cr)から選択される少なくとも1種の元素(以下、単に「元素A」とも呼ぶ。)を主成分とする層である。
金属層における元素Aの含有量は、金属層の全質量に対して、90質量%以上が好ましく、95質量%以上がより好ましく、99質量%以上が更に好ましい。
金属層の厚みは、0.01μm~100μmが好ましく、0.1μm~25μmがより好ましく、1μm~15μmが更に好ましい。
第1内側主面11bおよび第2内側主面12bの少なくとも一方が上記のような金属層を有することにより、金属層を有する第1内側主面11bまたは第2内側主面12bと中間層13との接合強度を向上させることができる。
【0020】
(溝部)
第1外側主面11a、第1内側主面11b、第2外側主面12aおよび第2内側主面12bの少なくとも1つに、少なくとも1つの溝部14が形成されていてもよい。
溝部14は、第1外側主面11aおよび第2外側主面12aの少なくとも一方に形成された外側溝部14aと、第1内側主面11bおよび第2内側主面12bの少なくとも一方に形成された内側溝部14bを含む。図1では、一例として、外側溝部14aは第1外側主面11aのみに、内側溝部14bは第1内側主面11bのみに形成されている場合を示している。
以下、図1図3を用いて、溝部14の特徴について説明する。なお、方向の説明のために、図1図3に共通するx、y、z方向をそれぞれ定義して説明する場合がある。
【0021】
《外側溝部》
図2は、第1外側主面11aの一例を模式的に示す平面図である。図2では、第1外側主面11aが渦巻状の外側溝部14aを有する場合を示している。
外側溝部14aの形状(xy平面における形状)は、図2では渦巻状であるが、特に限定されず、例えば格子状や縞模様状であってもよく、複数の溝部が交差していてもよい。
外側溝部14aの断面形状(yz平面における断面の形状)は、特に限定されず、例えば矩形状や、矩形状の角部が曲線状となった形状(いわゆるU字型)であってもよい。
外側溝部14aの幅(xy平面における幅)は、1~20mmが好ましく、3~15mmがさらに好ましく、5~12mmが特に好ましい。
外側溝部14aの深さ(z方向の深さ)は、セラミックス部材の厚み等によって適宜選択されるが、例えば1~12mmが好ましく、2~10mmがさらに好ましく、3~6mmが特に好ましい。
外側溝部14aが上記のような形状、幅、深さを有していれば、第1セラミックス部材11に加熱ヒーター(例えば、ニクロム線加熱ヒーター)を埋め込むことや、滑り止めの機能を得ることが可能となる。
【0022】
《内側溝部》
図3は、第1セラミックス部材11の一例を模式的に示す斜視図である。図3では、第1内側主面11bが直線状の内側溝部14bを有する場合を示している。
内側溝部14bの形状(xy平面における形状)は、図3では直線状であるが、特に限定されず、例えば曲線状、渦巻状であってもよい。
内側溝部14bの断面形状(yz平面における断面の形状)は、図3では矩形状であるが、特に限定されず、例えば矩形状の角部が曲線状となった形状(いわゆるU字型)であってもよい。
内側溝部14bの幅w(y方向の幅)は、0.4mm以上が好ましく、0.7mm以上がより好ましく、1.0mm以上が更に好ましく、1.2mm以上が特に好ましい。また、内側溝部14bの幅wは、4.0mm以下が好ましく、3.0mm以下がより好ましく、2.0mm以下が更に好ましく、1.6mm以下が特に好ましい。なお、内側溝部14bの幅は、デプスマイクロメータや三次元測定機により測定できる。
内側溝部14bの深さd(z方向の深さ)は、0.4mm以上が好ましく、0.5mm以上がより好ましく、0.6mm以上が更に好ましく、0.7mm以上が特に好ましい。また、内側溝部14bの深さdは、2.0mm以下が好ましく、1.8mm以下がより好ましく、1.7mm以下が更に好ましく、1.6mm以下が特に好ましい。なお、内側溝部14bの深さdは、デプスマイクロメータや三次元測定機により測定できる。
内側溝部14bの長さl(内側溝部14bの幅wの中心を結んで得られる中心線の長さ)は、10cm以上が好ましく、15cm以上がより好ましく、18cm以上が更に好ましく、20cm以上が特に好ましい。また、内側溝部14bの長さlは、40cm以下が好ましく、38cm以下が好ましく、35cm以下が更に好ましく、32cm以下が特に好ましい。なお、内側溝部14bの長さlは、ノギスやデジタルメジャーにより測定するか、内側溝部14bが曲線状や渦巻状であるときは、画像解析により測定できる。
内側溝部14bの最大変位量α(内側溝部14bの幅wの中心を結んで得られる中心線kの、y方向へ変位量の最大値)は、0.3mm以下が好ましい。内側溝部14bの最大変位量αは、0.25mm以下がより好ましく、0.2mm以下が更に好ましく、0.15mm以下が特に好ましい。
内側溝部14bの最大変位量αは、X線CT測定により求めることができる。具体的には、積層部材1に対し高精度μフォーカスエックス線CT装置(東芝ITコントロールシステム株式会社製:TOSCANER-30000μCM)を用いて得られたX線CT像から解析することができる。
内側溝部14bが上記のような形状、幅、深さ、長さ、および最大変位量を有していれば、積層部材1に、内側溝部14bに由来する長孔が形成され、当該長孔に熱電対などの棒状部材を差し込み、積層部材1の温度を厳密に制御することが可能となる。
【0023】
<中間層>
中間層13は、第1セラミックス部材11と第2セラミックス部材12との間に形成さる層であり、セラミックス部材が反りや歪みを有していた場合に、その反りや歪みを吸収し、積層部材1の反りや歪みを解消することができる。従って、積層部材1は、セラミックス部材を単体で用いる場合に比べて反りや歪みが抑制される。
中間層13は、接合部131を有し、接合部131とは別に、小部材132を更に有していてもよい。また、接合部131は、気泡133を含有していてもよい。なお、図1では図示しないが、中間層13は、必要に応じて、接合部131と小部材132以外にも、他の部分や部材を更に有してもよい。
【0024】
(厚み)
中間層13の厚みは、0.004mm以上が好ましく、0.01mm以上がより好ましく、0.05mm以上が更に好ましく、0.1mm以上が特に好ましい。中間層13の厚みが0.004mm以上であれば、中間層13の作製時に、接合部131に過度に気泡133が混入することを防ぐことができる。また、セラミックス部材同士を十分な強度で接合させることができ、積層部材1の耐衝撃性が優れる。
中間層13の厚みは、0.6mm以下が好ましく、0.5mm以下がより好ましく、0.4mm以下が更に好ましく、0.35mm以下が特に好ましい。中間層13の厚みが0.6mm以下であれば、中間層13に含まれる材料の延性により、セラミックス部材同士を接合させる際にズレが生じる恐れがない。
中間層13の厚みは、ノギスやデジタルメジャーにより測定できる。
【0025】
(接合部)
接合部131は、中間層13において、第1セラミックス部材11と第2セラミックス部材12とを接合させる機能を担う部分である。
【0026】
《材料》
接合部131は、スズ(Sn)およびインジウム(In)から選択される少なくとも1種の元素(以下、単に「元素B」とも呼ぶ。)を主成分とする部分である。
セラミックス部材がSiSiCから成る場合、接合部131が元素Bを主成分とすることで、元素Bは、一般的な接合材料である銅(Cu)やアルミニウム(Al)に比べてSiSiCとの濡れ性に優れるので、セラミックス部材同士を十分な接合強度で接合させることができる。また、SiSiCとの濡れ性に優れる他の元素としてはSiがあるが、Siの融点(約1400℃)に比べて元素Bの融点は低い(Sn:約232℃、In:約156℃)ため、後述する積層部材1を得るための冷却工程において、反りや歪みを抑制することができる。
なお、元素Bとしては、接合部131が高い耐熱性を要する場合は、より高い融点を有するSnが好ましい。一方で、接合部131が高い耐熱性を要さない場合は、融点が低く扱いやすいため、Inが好ましい。
接合部131における元素Bの含有量は、接合部131の全質量に対して、90質量%以上が好ましく、92質量%以上がより好ましく、95質量%以上が更に好ましく、98質量%以上が特に好ましい。
接合部131における元素Bの含有量は、99.9999質量%以下が好ましく、99.999質量%以下がより好ましい。
接合部131の組成は、元素Bを含んでいれば特に限定されず、微量の不純物等を含んでいてもよい。不純物は、特に限定されないが、例えば鉛(Pb)、亜鉛(Zn)、Al、チタン(Ti)、Si、銅(Cu)、インジウム(In)、Fe、ニッケル(Ni)、マンガン(Mn)、リン(P)、硫黄(S)、クロム(Cr)および炭素(C)から選択される少なくとも1種である。
接合部131における不純物の含有量は、0.0001質量%以上が好ましく、0.001質量%がより好ましい。
接合部131における不純物の含有量は、10質量%以下が好ましく、8質量%以下がより好ましく、5質量%以下が更に好ましく、2質量%以下が特に好ましい。
接合部131における元素Bおよび不純物の含有量が上記範囲内であれば、100℃以上の環境下であっても、接合部131が融解せず、-30℃以下の環境下であっても、元素Bの相転移による接合部131の体積変化が抑制され、結果として接合部131による接合強度を保持することができる。
接合部131の組成は、エネルギー分散型X線分光や誘導結合プラズマ質量分析法により測定できる。
また、接合部131の融点は、400℃以下が好ましく、300℃以下がより好ましい。接合部131の融点が400℃以下であれば、上述のように後述する積層部材1を得るための冷却工程において、反りや歪みを抑制することができる。
【0027】
《気泡》
接合部131は、少なくとも1つの気泡133を含有していてもよい。なお、明細書中、「気泡」とは、接合部131の内部に形成された、気体を含む領域を意味する。
気泡133の平均断面積は、4cm以下が好ましく、3.5cm以下がより好ましく、3cm以下が更に好ましく、2.5cm以下が特に好ましい。
断面積が0.5cm以上である気泡133の個数は、1個/cm以下が好ましく、0.5個/cm以下がより好ましく、0.1個/cm以下が更に好ましい。
気泡133の平均断面積および個数が上記範囲内であれば、接合部131の熱伝導率が均一となり、また、セラミックス部材同士を十分な接合強度で接合させることができる。
気泡133の平均断面積および個数は、接合部131のX線CT測定や超音波探傷測定などにより求めることができる。
超音波探傷測定の場合、具体的には、まず、超音波映像装置(株式会社日立パワーソリューションズ製:Fine SAT V)を用いて、第1セラミックス部材11と中間層13との界面、または第2セラミックス部材12と中間層13との界面に焦点を合わせて、300μmピッチで界面画像を取得する。得られた界面画像において、空包として映った部分を気泡133とみなし、気泡が真円状であると仮定したときの直径を求め、断面積を算出する。これを全ての気泡133に対して算出することで、平均断面積を求めることができる。また、断面積が0.5cm以上である気泡133の個数は、界面画像に含まれていた断面積が0.5cm以上である気泡133の総数を、前記界面の総面積で割ることにより得られる。
【0028】
(小部材)
中間層13は、接合部131とは別に、少なくとも1つの小部材132を更に有していてもよい。小部材132は、積層部材1の製造時に、中間層13の厚みを所望の値にするために用いられる部材である。
【0029】
《材料》
小部材132の材料は、特に限定されないが、ステンレスや超硬合金等の金属から形成されてもよい。
【0030】
《形状》
小部材132の形状は、特に限定されないが、円柱状、直方体状またはワイヤ状であってもよい。
また、中間層13の厚みから小部材132の厚み(x方向の厚み)を減じた値(以下、単に「厚み差分」とも呼ぶ。)は、50μm以下が好ましく、25μm以下がより好ましく、10μm以下が更に好ましく、0μmが最も好ましい。
厚み差分が上記範囲内であれば、中間層13の厚みを任意の厚みに調整することが簡便となり、歩留まりが向上する。
厚み差分は、ノギスやデジタルメジャーにより測定できる。
【0031】
《熱伝導率》
小部材132の20℃における熱伝導率は、接合部131の20℃における熱伝導率よりも大きいことが好ましい。この場合、積層部材1を均一に加熱することが可能となる。
小部材132および接合部131の20℃における熱伝導率は、いずれもレーザーフラッシュ法により測定できる。
【0032】
<積層部材の物性等>
(形状)
積層部材1の最大長さは、10cm以上が好ましく、15cm以上がより好ましく、20cm以上が更に好ましく、25cm以上が特に好ましい。
積層部材1の最大長さは、45cm以下が好ましく、39cm以下がより好ましく、37cm以下が更に好ましく、35cm以下が特に好ましい。
積層部材1の最大長さが上記範囲内であれば、積層部材1を加熱調理機器のトッププレートとして用いた場合に好適である。
積層部材1の厚みは、1mm以上が好ましく、3mm以上がより好ましく、5mm以上が更に好ましく、6mm以上が特に好ましい。
積層部材1の厚みは、15mm以下が好ましく、13mm以下がより好ましく、11mm以下が更に好ましく、9mm以下が特に好ましい。
積層部材1の厚みが上記範囲内であれば、積層部材1が耐衝撃性と放熱性に優れる。
積層部材1の最大長さおよび厚みは、ノギスやデジタルメジャーにより測定できる。
【0033】
(平面度)
積層部材1の平面度は、0.25mm以下が好ましく、0.2mm以下がより好ましく、0.1mm以下が更に好ましく、0.05mm以下が特に好ましい。
積層部材1の平面度が上記範囲内であれば、以下のような点で好適である。
a)積層部材1内に応力が発生した場合に、特定の箇所へ応力が集中することを防ぐことができるため、耐割れ性に優れる;
b)積層部材1を加熱調理機器のトッププレートとして用いた場合に、積層部材1上に調理器具を安定に載置することができ、また、調理器具との密着性が高いので熱効率に優れる;
c)積層部材1に他の部材(ガラス部材、セラミックス部材、金属部材など)を接合する場合に、接合強度に優れる;
d)積層部材1にガラス部材を接合して用いた場合に、映り込みが低減される。
積層部材1の平面度は、例えば、非接触の三次元形状測定装置(三鷹光機株式会社製、NH-5Ns)により測定できる。
【0034】
(長孔の断面積)
第1内側主面11bおよび第2内側主面12bの少なくとも一方に内側溝部14bが形成されているとき、積層部材1は内側溝部14bに由来する長孔を有する。
長孔の寸法は内側溝部14bの寸法に依存するが、後述する積層部材の製造方法により、内側溝部14bより小さくなる場合がある。
長孔の断面積(図1のyz平面における断面積)は、0.16mm以上が好ましく、0.35mm以上がより好ましく、0.6mm以上が更に好ましく、0.84mm以上が特に好ましい。
長孔の断面積は、8.0mm以下が好ましく、5.4mm以下がより好ましく、3.4mm以下が更に好ましく、2.56mm以下が特に好ましい。
長孔の断面積は、ノギスやデジタルメジャーにより測定できる。
長孔の長さ(長孔の始点から終点までのx方向の距離)は、10cm以上が好ましく、15cm以上がより好ましく、18cm以上が更に好ましく、20cm以上が特に好ましい。また、内側溝部14bの長さlは、40cm以下が好ましく、38cm以下が好ましく、35cm以下が更に好ましく、32cm以下が特に好ましい。
長孔の長さは、内側溝部14bの長さに一致する。
【0035】
(熱伝導率)
積層部材1の厚み方向(x方向)に対して測定した熱伝導率Κ(以下、単に「熱伝導率Κ」とも呼ぶ。)は、130W/(m・K)以上が好ましく、170W/(m・K)以上がより好ましく、180W/(m・K)以上が更に好ましく、190W/(m・K)以上がより更に好ましく、200W/(m・K)以上が特に好ましく、210W/(m・K)以上がより特に好ましく、220W/(m・K)以上が最も好ましい。
熱伝導率Κは、270W/(m・K)以下が好ましく、260W/(m・K)以下がより好ましく、250W/(m・K)以下が更に好ましい。
熱伝導率Κが上記範囲内であれば、積層部材1が均熱性に優れる。
熱伝導率Κは、レーザーフラッシュ法により測定できる。
具体的には、例えば、積層部材1から10個の円柱状のサンプル(直径12mm×積層部材1の厚み)を切り出た後、それぞれのサンプルに対し、中間層13を残すように上下面を研削し、セラミックス部材、中間層13、セラミックス部材をこの順に有する10個の試験片(直径12mm×厚さ4mm)を作製する。次に、各試験片に対しレーザーフラッシュ法により熱伝導率の測定を行い、最も低かった値を積層部材1の熱伝導率とする。なお、積層部材1の厚みが4mmに満たない場合は、試験片の厚みを適宜調整して測定することができる。
熱伝導率Κを上記範囲内にする方法としては、第1セラミックス部材11、第2セラミックス部材12、および中間層13(接合部131、小部材132等)の熱伝導率を、上述の範囲に調節する方法が挙げられる。
【0036】
(せん断強度)
積層部材1の、25℃におけるせん断強度(以下、単に「せん断強度」とも呼ぶ。)は、10MPa以上が好まく、12MPa以上がより好ましく、15MPa以上が更に好ましく、20MPa以上が特に好ましい。
せん断強度が上記範囲内であれば、積層部材1が耐熱衝撃性に優れる。
せん断強度は、JISC62137-1-2を参考に求めることができる。
具体的には、例えば、第1セラミックス部材11から切り出した直方体状(15mm×70mm×5mm)の第1試験片部材と、第2セラミックス部材12から切り出した直方体状(15mm×5mm×5mm)の第2試験片部材とを、接合部131(15mm×5mm×任意の厚み)のみにより接合し、せん断強度試験片を作成する。次に、得られたせん断強度試験片を、精密万能試験機オートグラフAG―IS(株式会社島津製作所製)に取り付け、第1試験片部材を固定した状態で、第2試験片部材を速度1mm/minで上方に引き上げる。このとき、第2試験片部材が第1試験片部材から剥離するために必要な荷重から、せん断強度を求めることができる。
【0037】
<積層部材の製造方法>
積層部材1の製造方法について、図4を用いて説明する。
図4は、積層部材1の製造方法の一例を示すフローチャートである。積層部材1の製造方法は、ステップS41~S35をこの順に有する。
なお、図4では、セラミックス部材がSiSiCから成る場合について説明するが、SiSiC以外から成る場合は、公知の方法を適用して、適宜変更することができる。
【0038】
(原料選定)
ステップS41では、SiC成形体原料を選定する。
SiC成形体原料は、少なくともSiC粒子と、バインダとを含む。
【0039】
《SiC粒子》
SiC粒子は、α-SiC粒子またはβ-SiC粒子であり、コストの観点からα-SiC粒子が好ましい。
SiC粒子は、例えば、アチソン法によって合成したSiC粒子を、粉砕して分級し、所望の粒径とした後に、フッ酸と硝酸との混酸および純水を用いて洗浄することによって得られる。このような洗浄により、SiC粒子中に不純物(Fe等)の濃度を5質量ppm以下に抑制することができる。
SiC粒子の平均粒径は、2μm以上が好ましく、3μm以上がより好ましい。SiC粒子の平均粒子径が2μm以上であれば、過度な粉砕による不純物の混入を抑制することができ、洗浄が容易となり、また、ステップS42で得られるSiC成形体が十分な空隙率を有する。
SiC粒子の平均粒子径は、25μm以下が好ましく、15μm以下がより好ましい。SiC粒子の平均粒子径が25μm以下であれば、上記分級において、篩を通過しない粒子が多く生ずることを防ぐことができる。また、ステップS42で得られるSiC成形体の平滑性が良好となり、結果として、ステップS43で得られるセラミックス部材が十分な機械特性(曲げ強度等)を有する。
SiC粒子の粒度分布の幅は、広い方が、成形性が良好となり、ステップS42で得られるSiC成形体の密度も高くできるので、好ましい。
【0040】
《バインダ》
バインダは、SiC粒子同士を結合させることができるものであれば特に限定されないが、例えば、有機質の結合剤である。
有機質の結合剤としては、フェノール樹脂、ポリ酢酸ビニルエマルジョン、アクリル樹脂エマルジョンなどが好ましい。
フェノール樹脂を結合剤として用いた場合、ステップS42で得られるSiC成形体中にカーボンが残留する。このカーボンは、ステップS43(Si含浸)において溶融したSi単体と反応してβ-SiCとなり、SiSiC体の密度を向上させる。これにより、SiSiC体の機械特性も良好となるので、上記結合剤の中では、フェノール樹脂がより好ましい。
【0041】
(SiC成形体の作製)
ステップS42では、セラミックス部材の元となるSiC成形体を作製する。
SiC成形体を作製する方法としては、特に限定されないが、例えば、排泥鋳込成形法、アイソスタチックプレス法、押出成形法、射出成形法が挙げられる。他の方法としては、3D(3次元)印刷法(レーザー照射造形法、バインダジェット造形法など)が挙げられる。
排泥鋳込成形法、アイソスタチックプレス法または押出成形法の場合は、例えば特開平5-32458号公報に記載の方法に準じて作製すればよい。具体的には、上記SiC成形体原料を型に流し込み、乾燥させることにより、SiC成形体を作製する。このとき、SiC成形体原料の固形分濃度は、例えば、5~100質量%の範囲で適宜変更できる。
ステップS42で得られるSiC成形体は、SiC粒子を含有する成形体であり、多数の細孔を有する多孔質体でもある。
SiC成形体の空隙率は、10体積%~60体積%が好ましく、12体積%~50体積%がより好ましく、14体積%~40体積%が更に好ましく、16体積%~30体積%が特に好ましく、18体積%~25体積%が最も好ましい。SiC成形体の空隙率がこの範囲内であれば、ステップS43(Si含浸)を容易に行うことができる。なお、SiC成形体の空隙率は、アルキメデス法によって求めることができる。
SiC成形体の寸法および形状は、特に限定されず、ステップS45で得られる積層部材1の寸法および形状に応じて、適宜加工してよい。
また、ステップS42で得られるSiC成形体は、溝部を有していても良い。SiC成形体における溝部は、後に溝部14となり得る。
【0042】
また、図示しないが、ステップS42で得られたSiC成形体を、乾燥後、不活性雰囲気で加熱することにより、焼結させてもよい。
焼結時の加熱温度は、1500℃以上が好ましい。焼結時の加熱温度が1500℃以上であれば、SiC成形体を緻密化させ、強度を十分に向上させることができるだけでなく、加熱により不純物を揮発させ、純度を向上させることができる。なお、バインダとして、SiC成形体中にカーボンが残留するフェノール樹脂などを使用する場合は、加熱温度を1000℃程度にすることもできる。
焼結時の加熱温度は、2300℃以下が好ましく、2100℃以下がより好ましい。焼結時の加熱温度が2300℃以下であれば、再結晶と呼ばれる結晶成長が進行してSiC成形体の組織が変化すると同時に、SiCが揮発してSiC成形体が減量し、強度や破壊靭性が低下する恐れがない。
【0043】
(Si含浸)
ステップS43では、SiC成形体にSiを含浸させる(以下、これを「Si含浸」ともいう。)。SiC成形体にSi含浸を行うことにより、SiSiC体が得られる。
Si含浸は、例えば、SiC成形体とSi単体とを相互に接触させた状態で、これら(SiC成形体およびSi単体)を加熱して、Si単体を溶融させることにより行われる。これにより、溶融したSi単体が、毛細管現象により、多孔質体であるSiC成形体に含浸される。
上記の方法において、Si単体をSiC成形体の上面に配置した状態で溶融させた方が、重力により溶融したSi単体をSiC成形体により含浸させやすくなるので好ましい。また、Si単体を溶融させる環境は、減圧環境が好ましい。
Si含浸における加熱温度は、Siの融点以上であればよく、1430~1800℃が好ましい。Siの融点は、測定方法により若干異なるが、概ね1410~1414℃である。
ステップS43で得られたSiSiC体は、SiSiC体の全質量に対して、7質量%~35質量%のSiを含有することが好ましく、7質量%~25質量%のSiを含有することがより好ましい。
SiSiC体におけるSi含有量が上記範囲内であれば、ステップS44で得られるSiSiC部材が熱伝導率、ヤング率、曲げ強度、熱膨張率などに優れる。
また、ステップS43で得られるSiSiC体は、Si単体を溶融させる際の加熱によって焼結されている。すなわち、SiC(新たに生成したSiCを含む)同士、および、SiCとSiとが結合した、緻密な焼結体である。従って、得られたSiSiC体は、SiCとSiとを含有する複合材料であり、かつ、焼結体でもある。
【0044】
(加工)
ステップS44では、SiSiC体を任意の寸法および形状に加工し、セラミックス部材を得る。
セラミックス部材の表面粗さを上記範囲内にするために、SiSiC体の表面を、横軸研削盤、ロータリー研削盤、精密平面研削盤、ポリッシング機などを用いて研削および研磨してもよい。また、研削盤を用いて表面を平滑にした後に、ブラスト機を用いて表面を梨地状にしてもよい。
このとき、セラミックス部材の少なくとも一方の主面の表面粗さが0.1μm~10μmであるものを第1セラミックス部材11、0.001μm~0.2μmであるものを第2セラミックス部材12として用いることができる。
SiSiC体に対し溝部を形成することで、溝部14を有するセラミックス部材を得てもよい。溝部14の特徴としては、上述の通りである。
SiSiC体に対し溝部を形成する方法としては、例えば、ステップS42において、SiC成形体原料を流し込む型として、溝部を有する形状を採用する方法がある。他の方法としては、NC(Numerical Control)フライス盤、放電加工機、レーザー加工機などの公知の加工機を用いて、SiSiC体に溝部を後から形成する方法が挙げられる。SiSiC体に溝部を形成した後、更に加熱し、溝部を有するSiSiC体を焼結させてもよい。
ステップS44で得られるセラミックス部材において、上記のような機械加工を行った際に残留応力が発生し、反りや歪みが生じる場合がある。このような反りや歪みを抑制するには、通常、両主面に対し同様の加工を行うが、両主面の表面粗さが異なる場合や、一方の主面にのみ溝部を形成する場合は、反りや歪みを抑制することが困難である。この傾向は、セラミックス部材の厚みが薄いほど顕著となる。
【0045】
(接合)
ステップS45では、ステップ34で得られた第1セラミックス部材11と第2セラミックス部材12との間に、中間層を形成し接合させることで、積層部材1を得る。
具体的には、まず、第1セラミックス部材11および第2セラミックス部材12を加熱した後、第1内側主面11bおよび第2内側主面12bに、元素Bを主成分とする接合部131の原料を塗布する。このとき、加熱温度は、接合部131の原料が溶融する温度よりも高温であれば、特に限定されない。
次に、第1セラミックス部材11の上に第2セラミックス部材12を配置し、または第2セラミックス部材12の上に第1セラミックス部材11を配置し、更にその上に重しを載せた後、冷却する。これにより、第1セラミックス部材11と第2セラミックス部材12とが、中間層13を介して接合され、積層部材1が得られる。なお、冷却過程において、接合部131内に気泡133が形成される場合がある。このときの気泡133の特徴は、上述の通りである。
積層部材1を得る際の冷却速度は、10℃/h~300℃/hが好ましく、20℃/h~200℃/hがより好ましく、30℃/h~100℃/hが更に好ましい。冷却速度がこの範囲内であれば、冷却時にセラミックス部材にかかる残留応力が低減され、セラミックス部材が耐衝撃性に優れる。
【0046】
なお、接合部131の原料を塗布した後に、第1内側主面11bおよび第2内側主面12bの少なくとも一方の上に、小部材132を配置してもよい。このとき、小部材132の配置および個数は特に限定されないが、例えば、図1のように第1内側主面11bの周縁部に1つずつ配置してもよい。小部材132を配置することで、中間層13の厚みを制御しやすく、所望の寸法の積層部材1を得ることが容易となる。
【0047】
また、図示しないが、接合部131の原料を塗布する前に、第1内側主面11bおよび第2内側主面12bの少なくとも一方に、元素Aを主成分とする金属層を形成してもよい。なお、セラミックス部材が溝部14を有する場合は、溝部14の中まで金属層が形成される。
【0048】
また、図示しないが、セラミックス部材が内側溝部14bを有する場合、接合部131の原料を塗布する前に、内側溝部14bに、内側溝部14bの寸法よりも小さなパイプ状部材を設置し、その後接合を行っても良い。
ステップS45において、内側溝部14bに接合部131の原料が入り込み、内側溝部14bにより積層部材1に形成される長孔の一部が塞がってしまい、熱電対などの棒状部材を差し込むための空間を確保できなくなる場合がある。これを回避するために、接合時に重しを載せる前に、内側溝部14bを有するセラミックス部材の方が上になるように配置することが好ましい。この方法をしてもなお内側溝部14bに入り込んだ接合部131があった場合は、これを除去するための加工を行ってよい。
他方、内側溝部14bに予めパイプ状部材を設置しておけば、そのような恐れがない。また、パイプ状部材により積層部材1に長孔が形成されるので、熱電対などの棒状部材を差し込む空間を確保するためには、パイプ状部材を用いた方が、コスト等の観点から好適となる場合がある。
パイプ状部材の材料は特に限定されず、例えば銅(Cu)、カーボン(C)、ステンレス鋼である。
【実施例0049】
次に、表を参照して、下記の手順で作製した例1~例22に係る積層部材について説明する。なお、以下の説明において、例1~例22に係る各パラメータは、上述した測定方法によりそれぞれ得た。
【0050】
表1は、例1~例20の積層部材の各パラメータをまとめたものである。表1中、例1~例17、例19および例20が実施例であり、例18が比較例である。また、表1には示さないが、後述する例21および例22も比較例である。
【0051】
<製造方法>
(例1)
《原料選定》
SiC成形体原料として、α-SiC粒子と、フェノール樹脂を準備した。
なお、α-SiC粒子は、325メッシュの篩で分球され、最大粒子径は44μm、平均粒子径は8μmであった。
【0052】
《SiC成形体の作製》
上記SiC成形体原料を純水に加えて混合し、これを石膏型に流し込んで着肉させた後、石膏型の内部に残留しているセラミックス成形体原料(泥漿)を排出し(排泥鋳込成形法)、更に乾燥させて、平面視で長方形のSiC成形体を得た。
次に、このSiC成形体を、表1に記載の積層部材1の寸法が得られるように適宜加工した。更に、これらを電気炉内に設置し、不活性雰囲気下、1800℃にて5時間加熱した。
【0053】
《Si含浸》
得られたSiC成形体を反応炉内に設置し、更にその上にSi単体を配置し、減圧環境下、1450℃まで加熱した。これにより、Si単体が溶融し、SiC成形体中に含浸された。このとき、SiC成形体中において、略全ての細孔がSiで満たされ、また、フェノール樹脂に由来するβ-SiCが生成された。このようにして、SiSiC体を得た。
【0054】
《加工》
上記SiSiC体を横軸研削機により研削し、両主面の表面粗さを0.5μmとした。このように両主面を研削したSiSiC体を2つ作製した。
次に、上記2つのSiSiC体から、第1セラミックス部材11および第2セラミックス部材を得た。
第1セラミックス部材11を得る際には、研削したSiSiC体の一方の主面に対し、SiC砥粒を用いたサンドブラスト機によりブラスト加工を実施し、表面粗さを0.1μm~10μmとすることで、第1外側主面11aを得た。このとき、SiC砥粒の粒径は、目的の表面粗さに応じて適宜調整した。
他方、第2セラミックス部材12を得る際には、研削したSiSiC体の一方の主面に対し、ラッピングマシンにより粗研磨加工を実施した後、ポリッシングマシンにより精密研磨加工を実施して、表面粗さを0.001μm~0.2μmとすることで、第2外側主面12aを得た。
このようにして得られた第1セラミックス部材11および第2セラミックス部材12の平均線膨張係数は3.1ppm/℃、熱伝導率は330W/(m・K)、ヤング率は380GPa、曲げ強度は232MPa、ビッカース硬さは23.4GPaであった。これらのパラメータは、後に得られる積層部材においても同様であった。
【0055】
《接合》
上記第1セラミックス部材11および第2セラミックス部材12を加熱した後、第1内側主面11bおよび第2内側主面12bに、Snを99.9質量%含有する接合部131の原料を塗布した。このとき、加熱温度は270℃とした。
次に、第1セラミックス部材11の上に第2セラミックス部材12を配置し、更にその上に重しを載せた後、100℃/hで冷却することで、表1に示す各パラメータを有する、平面視で長方形の積層部材1を得た。
【0056】
(例2)
接合部131の原料として、Snを90質量%含有するものを用いたこと以外は、例1と同様の方法により、表1に示す各パラメータを有する積層部材1を得た。
【0057】
(例3)
接合部131の原料として、Inを90質量%含有するものを用いたこと以外は、例1と同様の方法により、表1に示す各パラメータを有する積層部材1を得た。
【0058】
(例4~例6)
接合部131の原料を塗布した後に、第1セラミックス部材11の上の任意の8箇所に、それぞれが十分に離れるように、直方体状の小部材132を配置したこと以外は、例1と同様の方法により、表1に示す各パラメータを有する積層部材1をそれぞれ得た。
【0059】
(例7)
接合部131の原料として、Inを99.9質量%含有するものを用いたこと以外は、例4~例6と同様の方法により、表1に示す各パラメータを有する積層部材1を得た。
【0060】
(例8)
例8では、セラミックス部材として、SiCを用いた。
まず、SiC成形体原料として、α-SiC粒子、炭化ホウ素(BC)粒子、フェノール樹脂を準備した。
なお、α-SiC粒子は、325メッシュの篩で分球され、最大粒子径は44μm、平均粒子径は8μmであった。また、BC粒子としては、平均粒子径2.5μmのものを用いた。
次に、α-SiC粒子92.8重量%、BC粒子0.2重量%、フェノール樹脂7.0重量%およびエチルアルコール適量を24時間にわたり湿式粉砕混合してスラリーを調整し、このスラリーをスプレードライヤーによって造粒した。
次に、得られた造粒粉を所定の金型に充填し、30MPaの成形圧で一次成形した後、更に196MPaの成形圧でCIP(Cold Isostatic Pressing)成形することで、平面視で長方形のSiC成形体を得た。
次に、得られたSiC成形体を電気炉内に設置し、アルゴン(Ar)雰囲気下、2000℃にて1時間加熱した。このようにして、SiC焼結体を得た。
次に、上記SiC焼結体を横軸研削機により研削し、両主面の表面粗さを0.5μmとした。このように両主面を研削したSiC焼結体を2つ作製した。
その後は、例1と同様の方法により、第1外側主面11aおよび第2外側主面12aの表面粗さを調整した後に、接合することで、表1に示すパラメータを有する、平面視で長方形の積層部材1を得た。
【0061】
(例9~例10)
加工の工程において、第1セラミックス部材11の第1内側主面11bに、平面視で直線状であり、断面形状が矩形状である内側溝部14bを形成したこと、および、接合の工程において、第2セラミックス部材12の上に第1セラミックス部材11を配置してから重しを載せたこと以外は、例4~例6と同様の方法により、表1に示す各パラメータを有する積層部材1をそれぞれ得た。例9~例10の積層部材1は、内側溝部14bに由来する四角柱状の長孔を有していた。
【0062】
(例11)
接合部131の原料として、Inを99.9質量%含有するものを用いたこと以外は、例9~例10と同様の方法により、表1に示す各パラメータを有する積層部材1を得た。
【0063】
(例12~例14)
内側溝部14bを形成した後に、内側溝部14bに外径1.5mm、内径1.0mm、長さ25cmであるステンレス鋼製のパイプ状部材を設置し、その後接合を行ったこと以外は、例9~例10と同様の方法により、表1に示す各パラメータを有する積層部材1をそれぞれ得た。なお、接合において、内側溝部14bとパイプ状部材との隙間は、接合部131で満たされていた。
【0064】
(例15)
接合部131の原料としてInを99.9質量%含有するものを用いたこと、および、内側溝部14bを形成した後に、内側溝部14bに外径0.95mm、内径0.8mm、長さ25cmであるステンレス鋼製のパイプ状部材を設置し、その後接合を行ったこと以外は、例12~例14と同様の方法により、表1に示す各パラメータを有する積層部材1をそれぞれ得た。なお、接合において、内側溝部14bとパイプ状部材との隙間は、接合部131で満たされていた。
【0065】
(例16)
例1と同様の方法により、表1に示す各パラメータを有する積層部材1を得た。ただし、中間層の厚みは0.003mmとした。
【0066】
(例17)
例4~例6と同様の方法により、表1に示す各パラメータを有する積層部材1を得た。ただし、中間層の厚みは0.81mm、小部材の厚みは0.8mmとした。
【0067】
(例18)
例4~例6と同様の方法により、表1に示す各パラメータを有する積層部材を得た。ただし、第1セラミックス部材11の厚みは0.4mm、第2セラミックス部材12の厚みは0.4mm、中間層の厚みは0.15mmとした。
【0068】
(例19)
例4~例6と同様の方法により、表1に示す各パラメータを有する積層部材1を得た。ただし、気泡の平均断面積は4.9cmとした。
【0069】
(例20)
例9~例10と同様の方法により、表1に示す各パラメータを有する積層部材1を得た。ただし、内側溝部の深さは5mm、長さは25cm、幅は5mmとした。
【0070】
(例21)
例1と同様の方法により、厚みが9.3mm、最大長さが30cm、一方の主面の表面粗さが3.5μm、他方の主面の表面粗さが0.12μmであるセラミックス部材を得た。
ただし、このように得たセラミックス部材は、他のSiCiC部材と接合させなかった。
【0071】
(例22)
例1と同様の方法により、厚みが9.3mm、最大長さが12cm、一方の主面の表面粗さが3.5μm、他方の主面の表面粗さが0.12μmであるセラミックス部材を得た。
次に、セラミックス部材に対し、ドリル加工により、直径が2mm、長さ10cmの円柱状の長孔を形成した。
ただし、このように得たセラミックス部材は、他のSiCiC部材と接合させなかった。
【0072】
<評価>
まず、例1~例20の積層部材について、断面積が0.5cm以上である気泡の個数を求めたところ、いずれも0.2個/cm以下であった。
そして、表1の評価結果から明らかなように、例1~例17、例19および例20の積層部材1は、中間層13を有するため、平面度はいずれも0.25mm以下と良好であり、反りや歪みを有さなかった。
例9~例15の積層部材1は、内側溝部14bまたはパイプ状部材に由来する長孔が形成されており、一般的な熱電対(例えば、直径0.7mmのもの)を好適に差し込むことができた。従って、例9~例15の積層部材1は、温度を厳密に制御することが可能であった。
他方、例16の積層部材は、中間層の厚みが0.003μmと不十分であったため、セラミックス部材同士を十分な強度で接合させることができず、結果として積層部材1のせん断強度は5.3MPaと低い値となった。
また、例17の積層部材1は、中間層の厚みが0.81μmと過剰であったため、中間層に含まれるSnの延性により、積層部材1のせん断強度は9MPaと低い値となった。
また、例18の積層部材は、第1セラミックス部材11および第2セラミックス部材12の厚みが不十分であり、積層部材の厚みが0.95mmと薄かったので、平面度が1.14mmと高い値となった。
また、例19の積層部材1は、気泡の断面積が4.9cmと過剰であったため、積層部材1の熱伝導率は128W/(m・K)と低い値となり、かつ、せん断強度も8.7MPaと低い値となった。
また、例20の積層部材1は、内側溝部の深さが5mm、幅が5mmと過剰であったため、積層部材1の熱伝導率は116W/(m・K)と低い値となった。
また、例21のセラミックス部材は、中間層を介して他のセラミックス部材と接合していないので、平面度が0.28mmと高い値を示しており、反りや歪みが顕著であった。
また、例22のセラミックス部材は、ドリル加工により長孔を形成する際に、最大変位量が0.45mmと高い値となった。すなわち、セラミックスが非常に硬いため、セラミックス部材内部の目的の位置に届く長孔を形成することが困難であり、熱電対を差し込んだ場合に、目的の位置における温度を把握することが困難であった。
【0073】
【表1】
【0074】
以上、本発明に係る積層部材およびその製造方法について説明したが、本発明は上記実施形態等に限定されない。特許請求の範囲に記載された範囲内において、各種の変更、修正、置換、付加、削除、及び組み合わせが可能である。それらについても当然に本発明の技術的範囲に属する。
【符号の説明】
【0075】
1 積層部材
11 第1セラミックス部材
11a 第1外側主面
11b 第1内側主面
12 第2セラミックス部材
12a 第2外側主面
12b 第2内側主面
13 中間層
131 接合部
132 小部材
133 気泡
14 溝部
14a 外側溝部
14b 内側溝部
図1
図2
図3
図4