(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023091994
(43)【公開日】2023-07-03
(54)【発明の名称】電気化学セル包装用コーティング剤、それを用いた積層体、包装材、および包装体
(51)【国際特許分類】
H01M 50/121 20210101AFI20230626BHJP
H01M 50/129 20210101ALI20230626BHJP
H01M 50/119 20210101ALI20230626BHJP
H01M 50/105 20210101ALI20230626BHJP
H01G 11/78 20130101ALI20230626BHJP
【FI】
H01M50/121
H01M50/129
H01M50/119
H01M50/105
H01G11/78
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021206927
(22)【出願日】2021-12-21
(71)【出願人】
【識別番号】000002886
【氏名又は名称】DIC株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100177471
【弁理士】
【氏名又は名称】小川 眞治
(74)【代理人】
【識別番号】100163290
【弁理士】
【氏名又は名称】岩本 明洋
(74)【代理人】
【識別番号】100149445
【弁理士】
【氏名又は名称】大野 孝幸
(72)【発明者】
【氏名】中村 英美
(72)【発明者】
【氏名】武田 博之
【テーマコード(参考)】
5E078
5H011
【Fターム(参考)】
5E078AB12
5E078HA02
5E078HA13
5H011AA05
5H011BB03
5H011CC02
5H011CC06
5H011CC10
5H011DD22
(57)【要約】 (修正有)
【課題】内容物である電解液に対する耐性を有し、且つ筐体に電気化学セルを支持するための粘着テープの密着性に優れる、電気化学セル包装用コーティング剤を提供する。
【解決手段】スチレン系熱可塑性エラストマー及びイソシアネート系硬化剤を含有する電気化学セル包装用コーティング剤、及び、樹脂フィルムを含んで形成された基材層と、外層に配して前記基材層を保護する基材保護層と、最内層に配して熱接着性樹脂からなるシーラント層と、前記基材層と前記シーラント層との間に配された金属箔層とを積層して構成される電気化学セル用包装材であって、前記基材保護層が、スチレン系熱可塑性エラストマー及びイソシアネート系硬化剤を含有する電気化学セル包装用コーティング剤の硬化塗膜層で形成されている電気化学セル用包装材。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
スチレン系熱可塑性エラストマー及びイソシアネート系硬化剤を含有することを特徴とする電気化学セル包装用コーティング剤。
【請求項2】
基材上に請求項1に記載の電気化学セル包装用コーティング剤の硬化塗膜層を有することを特徴とする積層体。
【請求項3】
樹脂フィルムを含んで形成された基材層と、外層に配して前記基材層を保護する基材保護層と、最内層に配して熱接着性樹脂からなるシーラント層と、前記基材層と前記シーラント層との間に配された金属箔層とを積層して構成される電気化学セル用包装材であって、前記基材保護層が、スチレン系熱可塑性エラストマー及びイソシアネート系硬化剤を含有する電気化学セル包装用コーティング剤の硬化塗膜層で形成されていることを特徴とする電気化学セル用包装材。
【請求項4】
請求項3に記載の電気化学セル用包装材を用いてなる電気化学セル包装体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気化学セルを包装する電気化学セル包装用コーティング剤、それを用いた電気化学セル包装材、包装体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から腕時計、スマートウオッチ、スマートフォン、ヘッドセット、ウエアラブル機器、補聴器等の小型機器の電源として、リチウムイオン二次電池、電気化学キャパシタ等の電気化学セルが広く活用されている。
近年、この種の電気化学セルへのニーズとして、小型化及び薄型化に対する要求がさらに強くなっている。その一因としては、電気化学セルが実装される各種電子機器におけるIC(集積回路)の極微細化及び低消費電力化による高性能化に伴って、従来にはないハイスペックな機能を具備する電子機器が提案され始めているからである。
この種の電気化学セルでは、電極体を内部に収容する外装体として、例えば金属ケースを利用したものや、ラミネートフィルムを利用したもの等が知られている。
【0003】
一般に電気化学セル外装体には、内容物である電解液が付着しても外観を損なわない耐性は勿論のこと、筐体に電気化学セルを支持するための粘着テープが付着しやすいことや、個々の電気化学セル外装体を識別するために印字を行うための印字適性が要求される。
【0004】
従来のラミネートフィルムを利用した電気化学セル外装体としては、例えば、最外層の基材層、バリア層、最内層の熱接着層が順次積層された積層体であり、熱接着層同士を対向させて周縁部をヒートシールすることにより電気化学セルの包装体が知られている(例えば特許文献1参照)。包装体は電解液、セパレータ等の電池要素を収納するための空間が設けられ、この収納空間は矩形状に断裁された包装材料をプレス成形して形成される。特許文献1では、狭い空間に電気化学セルを収納するために電気化学セルの包装体を薄型でシャープな形状に成型するため、基材層に成形性に優れる延伸ナイロンフィルムが用いられ、更にプレス成形や電解液耐性、印字適性を付与する為、基材層の外表面上にコーティング層を形成することが示されている。しかしながら、水酸基を有する基を側鎖に有するポリエステルポリオール及びアクリルポリオールからなる群から選ばれる少なくとも1種と、脂肪族系イソシアネート硬化剤とで形成され、ガラス転移温度Tgが0℃以上60℃以下のウレタン樹脂では、耐電解液性は向上するが、粘着テープの密着性が劣る傾向にあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の課題は、内容物である電解液に対する耐性を有し、且つ筐体に電気化学セルを支持するための粘着テープとの密着性に優れる、電気化学セル包装用のコーティング剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
即ち本発明は、スチレン系熱可塑性エラストマー及びイソシアネート系硬化剤を含有する電気化学セル包装用コーティング剤を提供する。
【0008】
また本発明は、基材上に前記記載の電気化学セル包装用コーティング剤の硬化塗膜層を有する積層体を提供する。
【0009】
また本発明は、樹脂フィルムを含んで形成された基材層と、外層に配して前記基材層を保護する基材保護層と、最内層に配して熱接着性樹脂からなるシーラント層と、前記基材層と前記シーラント層との間に配された金属箔層とを積層して構成される電気化学セル用包装材であって、前記基材保護層が、前記記載の電気化学セル包装用コーティング剤の硬化塗膜層で形成されている電気化学セル用包装材を提供する。
【0010】
また本発明は、前記記載の電気化学セル用包装材を用いてなる電気化学セル包装体を提供する。
【発明の効果】
【0011】
本発明により、内容物である電解液に対する耐性を有し、且つ筐体に電気化学セルを支持するための粘着テープとの密着性に優れる、電気化学セル包装用のコーティング剤を得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
(スチレン系熱可塑性エラストマー)
本発明で使用する前記スチレン系熱可塑性エラストマーは、特に限定されず、公知のスチレン系熱可塑性エラストマーを使用することができる。具体的には例えば、スチレン-ブタジエン-スチレン共重合体、スチレン-エチレン-ブチレン-スチレン共重合体、スチレン-エチレン-プロピレン-スチレン共重合体、スチレン-エチレン-プロピレン共重合体、スチレン-イソプレン-スチレン共重合体、スチレン-エチレン-(エチレン-プロピレン)-スチレン共重合体、スチレン-イソブチレン-スチレン共重合体、及び、これらの変性体や、水添体、側鎖にスチレン構造を有するグラフト共重合体、シェルにスチレン構造を有するコアシェル型多層構造ゴム等を好適に使用することができ、2種以上のブレンド物でもよい。中でも、スチレン-エチレン-ブチレン-スチレン共重合体、スチレン-エチレン-プロピレン-スチレン共重合体、スチレン-エチレン-(エチレン-プロピレン)-スチレン共重合体などが好ましい。
【0013】
またスチレン系熱可塑性エラストマーとして、各種官能基を付与したスチレン系熱可塑性エラストマーを使用してもよい。官能基としては例えば、水酸基、カルボキシル基、カルボニル基、チオカルボニル基、酸ハロゲン化物基、酸無水物基、チオカルボン酸基、アルデヒド基、チオアルデヒド基、カルボン酸エステル基、アミド基、スルホン酸基、スルホン酸エステル基、リン酸基、リン酸エステル基、アミノ基、イミノ基、ニトリル基、ピリジル基、キノリン基、エポキシ基、チオエポキシ基、スルフィド基、イソシアネート基、イソチオシアネート基、ハロゲン化ケイ素基、アルコキシケイ素基、ハロゲン化スズ基、ボロン酸基、ホウ素含有基、ボロン酸塩基、アルコキシスズ基、フェニルスズ基等が挙げられる。中でも本発明においては水酸基を付与したスチレン系熱可塑性エラストマーが好ましい。
【0014】
熱可塑性スチレン系エラストマーの重量平均分子量(Mw)は、100,000以上であることが好ましい。前記スチレン系熱可塑性樹脂の重量平均分子量(Mw)は、120,000以上、1,000,000以下がより好ましく、130,000以上、800,000以下がさらに好ましく、150,000以上、600,000以下が特に好ましい。また、前記スチレン系熱可塑性樹脂の数平均分子量(Mn)と重量平均分子量(Mw)の比(分子量分布)Mw/Mnは、1.00以上、1.50以下が好ましく、1.00以上、1.30以下がより好ましく、1.00以上、1.10以下がさらに好ましい。熱可塑性スチレン系エラストマーの重量平均分子量(Mw)が150,000以上であると、本発明のコーティング剤の硬化塗膜の機械強度が高まり、より優れた粘着テープ密着性を発現する。
【0015】
尚、本願発明において、重量平均分子量(Mw)、数平均分子量(Mn)は、下記条件のゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定される値である。
【0016】
測定装置 ;東ソー株式会社製 HLC-8320GPC
カラム ;東ソー株式会社製 TSKgel 4000HXL、TSKgel 3000HXL、TSKgel 2000HXL、TSKgel 1000HXL
検出器 ;RI(示差屈折計)
データ処理;東ソー株式会社製 マルチステーションGPC-8020modelII
測定条件 ;カラム温度 40℃
溶媒 テトラヒドロフラン
流速 0.35ml/分
標準 ;単分散ポリスチレン
試料 ;樹脂固形分換算で0.2質量%のテトラヒドロフラン溶液をマイクロフィルターでろ過したもの(100μl)
【0017】
本発明で使用する熱可塑性スチレン系エラストマーの配合量は、例えば、本発明の電気化学セル包装用コーティング剤の固形分に対し35~80質量%の範囲で配合することが好ましく、より好ましくは40~70質量%の範囲である。
【0018】
本発明で使用する熱可塑性スチレン系エラストマーは、市販品を使用することもできる。
【0019】
(その他の熱可塑性エラストマー)
本発明においては、前記スチレン系熱可塑性エラストマー以外の熱可塑性エラストマーを併用してもよく好ましい。具体的には例えば、ポリオレフィン系エラストマー重合体、ポリエステル系エラストマー重合体、ポリアミド系エラストマー重合体、ポリウレタン系エラストマー重合体、またはポリブタジエン系エラストマー重合体等が挙げられる。中でも、、ポリウレタン系エラストマー重合体を併用することが好ましい。
【0020】
ポリウレタン系エラストマーとしては、例えば、長鎖ポリオール、短鎖グリコール、ジイソシアナート等を原料として、重付加反応により、分子内にウレタン結合を介して得られるエラストマーを使用できる
長鎖ポリオールとしては、ポリ(エチレンアジペート)、ポリ(ジエチレンアジペート)、ポリ(1,4-ブチレンアジペート)、ポリ(1,6-ヘキサンアジペート)、ポリラクトンジオール、ポリカプロラトンジオール、ポリエナントラクトンジオール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、ポリ(プロピレングリコール/エチレングリコール)、ポリ(1,6-ヘキサメチレングリコールカーボネート)等が挙げられる。長鎖ポリオールの重量平均分子量(Mw)は100~10000であってもよく、500~5000であってもよい。
短鎖グリコールとしては、エチレングリコール、1,2-プロピレングリコール、1,3-プロピレングリコール、1,2-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、2,3-ブタンジオール、2,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,4-キシリレングリコール、ビスフェノールA、ハイドロキノンジエチロールエーテル、フェニレンビス-(β-ヒドロキシエチルエーテル)等が挙げられる。
【0021】
ジイソシアナートとしては、2,4-トリレンジイソシアナート、2,6-トリレンジイソシアナート、フェニレンジイソシアナート、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアナート、4,4’-ジフェニルジイソシアナート、1,5-ナフタレンジイソシアナート、3,3’-ジメチルビフェニル-4,4’-ジイソシアナート、o-キシレンジイソシアナート、m-キシレンジイソシアナート、p-キシレンジイソシアナート、テトラメチレンジイソシアナート、ヘキサメチレンジイソシアナート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアナート、ドデカメチレンジイソシアナート、シクロヘキサンジイソシアナート、ジシクロヘキシルメタンジイソシアナート、イソホロンジイソシアナート等が挙げられる。
【0022】
ポリウレタン系エラストマー、長鎖ポリオールとジイソシアナートでソフトセグメントを、短鎖グリコールとジイソシアナートでハードセグメントを構成していてもよい。
ポリウレタン系エラストマーは、必要に応じて、マレイン化、カルボキシル化、水酸化、エポキシ化、ハロゲン化、スルホン化等の変性処理や、イオウ架橋、過酸化物架橋、金属イオン架橋、電子線架橋、シラン架橋等の架橋処理に付されていてもよい。
ポリウレタン系エラストマーは、3000~200000の、5000~180000の、8000~150000の数平均分子量(Mn)を有していてもよい。
【0023】
これらの熱可塑性エラストマーは、市販品を使用することもできる。
【0024】
(スチレン系樹脂)
また、本発明においては、スチレン系樹脂を併用することも好ましい。スチレン系樹脂としては、スチレン系ポリマーであることが好ましいが、スチレン系モノマーとスチレン系ポリマーとの混合物であってもよい。また、上記スチレン系ポリマーは、1種以上のスチレン系モノマーの単独重合体または共重合体であってもよく、1種以上のスチレン系モノマーとスチレン系モノマー以外の他のモノマーとの共重合体であってもよい。
【0025】
前記スチレン系ポリマーとしては、例えば、ポリスチレン、ポリα-メチルスチレン、α-メチルスチレンとスチレンとの共重合体、スチレン系モノマーと脂肪族系モノマーとの共重合体、スチレン系モノマーと芳香族モノマーとの共重合体、α-メチルスチレンとα-メチルスチレン以外のスチレン系モノマーとの共重合体等が挙げられる。なかでも、粘着力、保持力、タック性に優れる点から、スチレン系モノマーの共重合体、スチレン系モノマーと脂肪族系モノマーとの共重合体が好ましい。
【0026】
前記スチレン系モノマーとしては、例えば、スチレン、2-メチルスチレン、4-メチルスチレン、4-エチルスチレン、4-t-ブチルスチレン、2,4-ジメチルスチレン等のアルキル置換スチレン、α-メチルスチレン、α-メチル-4-メチルスチレン等のα-アルキル置換スチレン、2-クロロスチレン、4-クロロスチレン、ヒドロキシスチレン、ビニル安息香酸等の置換スチレン等が挙げられる。
【0027】
また、前記スチレン系モノマー以外の他のモノマーとしては、例えば、脂肪族炭化水素等の脂肪族系モノマー、前記スチレン系モノマーで例示したもの以外の芳香族モノマーが挙げられる。
【0028】
スチレン系樹脂は、軟化点が80~150℃の範囲にあるものが好ましく、90~145℃の範囲にあるものがより好ましい。また重量平均分子量(Mw)が800~3,000の範囲にあるものが好ましい。スチレン系樹脂の配合量は、本発明のコーティング剤固形分に対して、0~20質量%であることが好ましい。
【0029】
これらのスチレン系樹脂は、市販品を使用することもできる。
【0030】
また、上記以外の熱可塑性樹脂を、本発明の効果を損なわない範囲において適宜組合わせることもできる。具体的には、芳香族系炭化水素樹脂、エチレン・プロピレン共重合体、エチレ ン・1-ブテン共重合体、エチレン・α-オレフィン共重合体、プロピレン・1-ブテン 共重合体、プロピレン・α-オレフィン共重合体、1-ブテン・α-オレフィン共重合体、プロピレン・1-ブテン・エチレン共重合体、プロピレン・α-オレフィン・エチレン 共重合体、プロピレン・α-オレフィン・1-ブテン共重合体、1-ブテン・α-オレフィン・エチレン共重合体からなるオレフィン系熱可塑樹脂や、ロジン系又はロジンエステル系樹脂、テルペン系又はテルペンフェノール系樹脂、飽和炭化水素樹脂、クマロン系樹脂、クマロンインデン系樹脂、キシレン系樹脂、フェノール系樹脂、石油系樹脂などが挙げられる。これらはそれぞれ単独で用いても良いし、二種類以上を併用しても良い。
【0031】
(イソシアネート系硬化剤)
本発明で使用するイソシアネート系硬化剤は、特に限定なく汎用のイソシアネート化合物を使用することができる。具体的には例えば、ブタン-1,4-ジイソシアネート、ブテンジイソシアネート、1,3-ブタジエン-1,4-ジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、2,2,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、2,4,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、1,3,6-ヘキサメチレントリイソシアネート、オクタメチレンジイソシアネート、1,8-ジイソシアネート-4-イソシアネートメチルオクタン、1,6,11-ウンデカントリイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、m-テトラメチルキシリレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、リジンエステルトリイソシアネート等の脂肪族ジイソシアネート、
【0032】
シクロヘキサン-1,4-ジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタン-4,4’-ジイソシアネート、1,3-ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン、メチルシクロヘキサンジイソシアネート、イソプロピリデンジシクロヘキシル-4,4’-ジイソシアネート、ノルボルナンジイソシアネート等の脂環族ジイソシアネート、
【0033】
1,5-ナフチレンジイソシアネート、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、4,4’-ジフェニルジメチルメタンジイソシアネート、4,4’-ジベンジルジイソシアネート、ジアルキルジフェニルメタンジイソシアネート、テトラアルキルジフェニルメタンジイソシアネート、1,3-フェニレンジイソシアネート、1,4-フェニレンジイソシアネート、2,4-トリレンジイソシアネート、2,6-トリレンジイソシアネート等の芳香族ジイソシアネートが挙げられる。
【0034】
これらから誘導された化合物、即ち、前記イソシアネートのイソシアヌレート体、アダクト体、ビウレット型、ウレトジオン体、アロファネート体、イソシアネート残基を有するプレポリマー(ジイソシアネートとポリオールから得られる低重合体)、若しくはこれらの複合体等を用いることもできる。
【0035】
上述したようなイソシアネート化合物の一部のイソシアネート基を、イソシアネート基と反応性を有する化合物と反応させて得られる化合物を使用してもよい。イソシアネート基と反応性を有する化合物としては、ブチルアミン、ヘキシルアミン、オクチルアミン、2-エチルヘキシルアミン、ジブチルアミン、エチレンジアミン、ベンジルアミン、アニリン等のアミノ基を含有する化合物類:メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、ヘキサノール、オクタノール、2-エチルヘキシルアルコール、ドデシルアルコール、エチレングリコール、プロピレングリコール、ベンジルアルコール、フェノール等の水酸基を含有する化合物類:アリルグリシジルエーテル、2-エチルヘキシルグリシジルエーテル、フェニルグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、1,6-ヘキサンジオールグリシジルエーテル、シクロヘキサンジメタノールジグリシジルエーテル等のエポキシ基を有する化合物類:酢酸、ブタン酸、ヘキサン酸、オクタン酸、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、フタル酸等のカルボン酸を含有する化合物等が挙げられる。
【0036】
中でも、脂肪族ジイソシアネートが好ましく、より好ましくは、ポリヘキサメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネートのビュレット体、ヘキサメチレンジイソシアネートのヌレート体等を使用すると、より高い電解液耐性を有し好ましい。
【0037】
前記イソシアネート系硬化剤の配合量は、用いるイソシアネート化合物により適宜調整されるが、例えば、前記スチレン系熱可塑性エラストマーに対し20~150質量%の範囲で配合することが好ましく、より好ましくは30~120質量%の範囲である。
【0038】
(有機溶剤)
本発明の電気化学セル包装用コーティング剤は、前記成分に加え、さらに有機溶剤を配合することにより流動性を確保し、適正な塗工性を発現させることができる。有機溶剤としては、コーティング剤塗工時の乾燥工程における過熱により揮発させて除去できるものであれば特に限定されず、例えば、トルエン、キシレン等の芳香族系有機溶剤;n-ヘキサン、n-ヘプタン等の脂肪族系有機溶剤;シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン等の脂環族系有機溶剤;トリクロロエチレン、ジクロロエチレン、クロロベンゼン、クロロホルム等のハロゲン系有機溶剤;メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノンなどのケトン系溶剤;酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル系溶剤;エタノール、メタノール、n-プロパノール、2-プロパノール(イソプロピルアルコール)、ブタノール、ヘキサノール等のアルコール系溶剤;ジイソプロピルエーテル、ブチルセロソルブ、テトラヒドロフラン、ジオキサン、ブチルカルビトール等のエーテル系溶剤;ジエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングルコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル等のグリコールエーテル系溶剤;エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロプレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート等のグリコールエステル系溶剤等が挙げられ、これらは単独で使用しても良いし、2種以上を併用しても良い。
【0039】
中でも、トルエンやメチルシクロヘキサン等の低極性の有機溶剤を好適に使用することができる。
【0040】
有機溶剤の使用量としては、本発明の電気化学セル包装用コーティング剤の固形分と有機溶剤との合計質量に対する、固形分の割合が5~30質量%となる割合であることが好ましい。これにより、塗工性、フィルムへの濡れ性に優れたコーティング剤とすることができる。
【0041】
(マット化剤)
本発明の電気化学セル包装用コーティング剤は、前記成分に加え、マット化剤を含有することも好ましい。マット化剤は、コーティング表面にマット処理を施すことを目的に配合する。コーティング層表面のすべり性が向上し、冷間成型において過度に金型に密着することが抑制されやすくなるので、成型性が向上する効果が期待できる。また、つや消し効果も得られる。
【0042】
マット化剤としては例えば、粒径が0.5nm~20μm程度の微粒子が挙げられる。マット化剤の材質については、特に制限されないが、例えば、金属、金属酸化物、無機物、有機物等が挙げられる。また、マット化剤の形状についても、特に制限されないが、例えば、球状、繊維状、板状、不定形、バルーン状等が挙げられる。マット化剤として、具体的には、タルク,シリカ,グラファイト、カオリン、モンモリロイド、モンモリロナイト、合成マイカ、ハイドロタルサイト、シリカゲル、ゼオライト、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、酸化亜鉛,酸化マグネシウム,酸化アルミニウム,酸化ネオジウム,酸化アンチモン、酸化チタン、酸化セリウム、硫酸カルシウム,硫酸バリウム、炭酸カルシウム,ケイ酸カルシウム、炭酸リチウム、安息香酸カルシウム,シュウ酸カルシウム,ステアリン酸マグネシウム、カーボンブラック、カーボンナノチューブ類、高融点ナイロン、架橋アクリル、架橋スチレン、架橋ポリエチレン、ベンゾグアナミン、金、アルミニウム、銅、ニッケル、カーボン、ガラスビーズ、ガラス粉、珪酸アルミニウ ム、クレー、酸化亜鉛、炭酸カルシウム、窒化硼素、マイカ等等が挙げられる。
またプラスチックの粉末や微粒子を用いることもできる。プラスチックとしては、アクリル、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリカーボネート、塩 化ビニル、塩化ビニリデン、メラミン、オレイン酸アミド、エルカ酸アミド、ステアリン酸アミド、ベヘニン酸アミド、エチレンビスオレイン酸アミド、エチレンビスエルカ酸アミド等の脂肪酸アミドが挙げられる。
これらのマット化剤は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。これらのマット化剤の中でも、分散安定性やコスト等の観点から、好ましくはりシリカ、硫酸バリウム、酸化チタンが挙げられる。また、マット化剤には、表面に絶縁処理、高分散性処理等の各種表面処理を施しておいてもよい。
【0043】
前記マット化剤は、本発明の電気化学セル包装用コーティング剤の固形分に対し0.01~30質量%となるように配合することが好ましく、より好ましくは0.1~20質量%である。
【0044】
(その他の添加物)
本発明の電気化学セル包装用コーティング剤は、その他必要に応じて、酸無水物、硬化促進剤、紫外線吸収剤、紫外線安定剤、難燃剤、可塑剤、リン酸化合物、シランカップリング剤、消泡剤等の各種添加剤を用いることができる。これらの添加剤の含有量は、本発明のコーティング剤の機能を損なわない範囲内で適宜調整すればよい。
【0045】
酸無水物としては、環状脂肪族酸無水物、芳香族酸無水物、不飽和カルボン酸無水物等が挙げられ、1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。より具体的には、例えば、フタル酸無水物、トリメリット酸無水物、ピロメリット酸無水物、ベンゾフェノンテトラカルボン酸無水物、ドデセニルコハク酸無水物、ポリアジピン酸無水物、ポリアゼライン酸無水物、ポリセバシン酸無水物、ポリ(エチルオクタデカン二酸)無水物、ポリ(フェニルヘキサデカン二酸)無水物、テトラヒドロフタル酸無水物、メチルテトラヒドロフタル酸無水物、メチルヘキサヒドロフタル酸無水物、ヘキサヒドロフタル酸無水物、メチルハイミック酸無水物、トリアルキルテトラヒドロフタル酸無水物、メチルシクロヘキセンジカルボン酸無水物、メチルシクロヘキセンテトラカルボン酸無水物、エチレングリコールビストリメリテート二無水物、ヘット酸無水物、ナジック酸無水物、メチルナジック酸無水物、5-(2,5-ジオキソテトラヒドロ-3-フラニル)-3-メチル-3-シクロヘキサン-1,2-ジカルボン酸無水物、3,4-ジカルボキシ-1,2,3,4-テトラヒドロ-1-ナフタレンコハク酸二無水物、1-メチル-ジカルボキシ-1,2,3,4-テトラヒドロ-1-ナフタレンコハク酸二無水物等が挙げられる。
【0046】
また、酸無水物として上述した化合物をグリコールで変性したものを用いてもよい。変性に用いることができるグリコールとしては、エチレングリコール、プロピレングリコール、ネオペンチルグリコール等のアルキレングリコール類;ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポチテトラメチレンエーテルグリコール等のポリエーテルグリコール類等が挙げられる。更には、これらのうちの2種類以上のグリコール及び/又はポリエーテルグリコールの共重合ポリエーテルグリコールを用いることもできる。
【0047】
酸無水物の配合量は、本発明の電気化学セル包装用コーティング剤の固形分に対し0.01質量%以上であることが好ましく、0.8質量%以上であることがより好ましい。また、酸無水物の配合量は、本発明の電気化学セル包装用コーティング剤の固形分に対し10質量%以下であることが好ましく、8質量部以下であることがより好ましく、1.5質量%以下であることがより好ましい。
【0048】
硬化促進剤としては、例えば金属系触媒、アミン系触媒、脂肪族環状アミド化合物、チタンキレート錯体、有機リン系化合物等の触媒を用いることができる。
【0049】
金属系触媒としては、金属錯体系、無機金属系、有機金属系を挙げることができ、金属錯体系として具体的には、Fe(鉄)、Mn(マンガン)、Cu(銅)、Zr(ジルコニウム)、Th(トリウム)、Ti(チタン)、Al(アルミニウム)及びCo(コバルト)からなる群より選ばれる金属のアセチルアセトナート塩であり、例えば、鉄アセチルアセトネート、マンガンアセチルアセトネート、銅アセチルアセトネート、ジルコニアアセチルアセトネート等が挙げられるが、これらのうち、毒性と触媒活性の点から、鉄アセチルアセトネート(Fe(acac)3)又はマンガンアセチルアセトネート(Mn(acac)2)が好ましい。
【0050】
無機金属系触媒としては、Fe、Mn、Cu、Zr、Th、Ti、Al及びCo等から選ばれる触媒を挙げることができる。
【0051】
有機金属系触媒としては、スタナスジアセテート、スタナスジオクトエート、スタナスジオレエート、スタナスジラウレート、ジブチル錫オキサイド、ジブチル錫ジアセテート、ジブチル錫ジラウレート、ジブチル錫ジクロライド、ジオクチル錫ジラウレート、オクチル酸ニッケル、ナフテン酸ニッケル、オクチル酸コバルト、ナフテン酸コバルト、オクチル酸ビスマス、ナフテン酸ビスマス等が挙げられる。これらのうち好ましい化合物としては有機錫触媒であり、更に好ましくはスタナスジオクトエート、ジブチル錫ジラウレートである。
【0052】
アミン系触媒としては、トリエチレンジアミン、2-メチルトリエチレンジアミン、キヌクリジン、2-メチルキヌクリジン、N,N,N’,N’-テトラメチルエチレンジアミン、N,N,N’,N’-テトラメチルプロピレンジアミン、N,N,N’,N”,N”-ペンタメチルジエチレントリアミン、N,N,N’,N”,N”-ペンタメチル-(3-アミノプロピル)エチレンジアミン、N,N,N’,N”,N”-ペンタメチルジプロピレントリアミン、N,N,N’,N’-テトラメチルヘキサメチレンジアミン、ビス(2-ジメチルアミノエチル)エーテル、ジメチルエタノールアミン、ジメチルイソプロパノールアミン、ジメチルアミノエトキシエタノール、N,N-ジメチル-N’-(2-ヒドロキシエチル)エチレンジアミン、N,N-ジメチル-N’-(2-ヒドロキシエチル)プロパンジアミン、ビス(ジメチルアミノプロピル)アミン、ビス(ジメチルアミノプロピル)イソプロパノールアミン、3-キヌクリジノール、N,N,N’,N’-テトラメチルグアニジン、1,3,5-トリス(N,N-ジメチルアミノプロピル)ヘキサヒドロ-S-トリアジン、1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデセン-7、1,5-ジアザビシクロ[4.3.0]ノネン-5、N-メチル-N’-(2-ジメチルアミノエチル)ピペラジン、N,N’-ジメチルピペラジン、ジメチルシクロヘキシルアミン、N-メチルモルホリン、N-エチルモルホリン、1-メチルイミダゾール、1,2-ジメチルイミダゾール、1-イソブチル-2-メチルイミダゾール、1-ジメチルアミノプロピルイミダゾール、N,N-ジメチルヘキサノールアミン、N-メチル-N’-(2-ヒドロキシエチル)ピペラジン、1-(2-ヒドロキシエチル)イミダゾール、1-(2-ヒドロキシプロピル)イミダゾール、1-(2-ヒドロキシエチル)-2-メチルイミダゾール、1-(2-ヒドロキシプロピル)-2-メチルイミダゾール等の3級アミン及びこれら3級アミン類をフェノール、オクチル酸、4級化テトラフェニルボレート塩等でアミン塩にした化合物等が挙げられる。
【0053】
脂肪族環状アミド化合物は、例えば、δ-バレロラクタム、ε-カプロラクタム、ω-エナントールラクタム、η-カプリルラクタム、β-プロピオラクタム等が挙げられる。これらの中でも硬化促進効果に優れる点からε-カプロラクタムが好ましい。
【0054】
チタンキレート錯体は、紫外線照射により触媒活性が高められる化合物であり、脂肪族又は芳香族ジケトンをリガンドとするチタンキレート錯体であることが硬化促進効果に優れる点から好ましい。また、本発明ではリガンドとして芳香族又は脂肪族ジケトンに加え、炭素原子数2~10のアルコールを持つものがより本発明の効果が顕著なものとなる点から好ましい。
【0055】
有機リン系化合物としては、トリブチルホスフィン、メチルジフェニルホスフィン、トリフェニルホスフィン、トリス(4-メチルフェニル)ホスフィン、トリス(4-ブチルフェニル)ホスフィン、ジフェニルホスフィン、フェニルホスフィン等が挙げられる。
【0056】
硬化促進剤としては、トリブチルホスフィン、メチルジフェニルホスフィン、トリフェニルホスフィン、トリス(4-メチルフェニル)ホスフィン、トリス(4-ブチルフェニル)ホスフィン、ジフェニルホスフィン、フェニルホスフィン等の有機ホスフィン化合物、2-メチルイミダゾール、1,2-ジメチルイミダゾール、2-フェニル-4-メチルイミダゾール、2-エチル-4-メチルイミダゾール、1-ベンジル-2-メチルイミダゾール、1-シアノエチル-2-エチル-4-メチルイミダゾール等のイミダゾール化合物、トリエチルアミン、トリエチレンジアミン、N’-メチル-N-(2-ジメチルアミノエチル)ピペラジン、1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデセン(DBU)、1,5-ジアザビシクロ[4.3.0]-ノネン、6-ジブチルアミノ-1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデセン等の3級アミン類及びこれら3級アミン類をフェノール、オクチル酸、4級化テトラフェニルボレート塩等でアミン塩にした化合物、トリアリルスルホニウムヘキサフルオロアンチモネート、ジアリルヨードニウムヘキサフルオロアンチモネート等のカチオン触媒などが挙げられる。これらは単独で使用しても良いし、2種以上を併用しても良い。有機ホスフィン系化合物およびイミダゾール化合物からなる群から選ばれる少なくとも1種を用いることが好ましい。
【0057】
硬化促進剤の配合量は、本発明の電気化学セル包装用コーティング剤の固形分に対し、0.01質量%以上5質量%以下であることが好ましく、より好ましくは0.01質量%以上1質量%以下であることがより好ましく、0.01質量%以上0.5質量%以下であることがより好ましい。
【0058】
紫外線吸収剤としては、例えば、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤、トリアジン系紫外線吸収剤、インドール系紫外線吸収剤などの有機系紫外線吸収剤や、酸化亜鉛などの無機系紫外線吸収剤などの紫外線吸収剤が上げられる。
紫外線安定剤としては、ヒンダードアミン化合物のような紫外線安定剤が好適に用いられる。紫外線吸収剤や紫外線安定剤は、添加剤として硬化性保護塗料に添加しても良いし、官能基を有するような紫外線吸収剤や紫外線安定剤を、アクリル系共重合体と反応させて用いても良いし、他の樹脂と反応させて用いても良い。
これらの紫外線吸収剤や紫外線安定剤は、本発明の電気化学セル包装用コーティング剤の固形分に対し、100質量%に対して、0.1~30質量%、好ましくは1~20質量%用いることが好ましい。
【0059】
可塑剤としては、ポリイソプレン、ポリブテン、プロセルオイル等が挙げられ、熱可塑性エラストマーとしてはスチレン・ブタジエン共重合物(SBS)、スチレン・ブタジエン共重合の水素添加物(SEBS)、SBBS、スチレン・イソプレン共重合の水素添加物(SEPS)、スチレンブロック共重合体(TPS)、オレフィン系エラストマー(TPO)等が、反応性エラストマーはこれらのエラストマーを酸変性したものが挙げられる。
【0060】
リン酸化合物としては、例えば次亜リン酸、亜リン酸、オルトリン酸、次リン酸等のリン酸類、例えばメタリン酸、ピロリン酸、トリポリリン酸、ポリリン酸、ウルトラリン酸等の縮合リン酸類、例えばオルトリン酸モノメチル、オルトリン酸モノエチル、オルトリン酸モノプロピル、オルトリン酸モノブチル、オルトリン酸モノ-2-エチルヘキシル、オルトリン酸モノフェニル、亜リン酸モノメチル、亜リン酸モノエチル、亜リン酸モノプロピル、亜リン酸モノブチル、亜リン酸モノ-2-エチルヘキシル、亜リン酸モノフェニル、オルトリン酸ジ-2-エチルヘキシル、オルトリン酸ジフェニル亜リン酸ジメチル、亜リン酸ジエチル、亜リン酸ジプロピル、亜リン酸ジブチル、亜リン酸ジ-2-エチルヘキシル、亜リン酸ジフェニル等のモノ、ジエステル化物、縮合リン酸とアルコール類とからのモノ、ジエステル化物、例えば前記のリン酸類に、例えばエチレンオキシド、プロピレンオキシド等のエポキシ化合物を付加させたもの、例えば脂肪族又は芳香族のジグリシジルエーテルに前記のリン酸類を付加させて得られるエポキシリン酸エステル類等が挙げられる。
【0061】
シランカップリング剤としては例えば、γ-アミノプロピルトリエトキシシラン、γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-β(アミノエチル)-γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-β(アミノエチル)-γ-アミノプロピルトリメチルジメトキシシラン、N-フェニル-γ-アミノプロピルトリメトキシシラン等のアミノシラン;β-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン等のエポキシシラン;ビニルトリス(β-メトキシエトキシ)シラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、γ-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン等のビニルシラン;ヘキサメチルジシラザン、γ-メルカプトプロピルトリメトキシシラン等を挙げることが出来る。
【0062】
消泡剤としては、シリコーン系、非シリコーン系のいずれも用いることができ、例えばビックケミー社製BYKシリーズ(BYK-051N/052N/053N/054/055/057/063/065/066N/067A/077/081/088/088A/141/354/392/1752/1790/1791/1794/011/012/014/015/017/018/019/021/022/023/024/025/028/038/044/093/094/1610/1615/1650/1710/1711/1730/1740/1770/1780/1785/1798/A530/A555)、共栄社化学株式会社製フローレンシリーズ(AC-202/220F/247/253/265/300/300HF/300VF/303/303HF/324/326F/901/901HF/902/903/903HF/950/970MS/1160/1160HF/1170/1170HF/1190/1190HF/2000/2000HF/2200HF/2230EF/2300C、AO-5/82/98/106/108/108EF)、信越シリコーン社製KF-96、FA-630、X-50-1039A、KS-7708、KS-66、KSP-69、X-50-1105G、KS-602A、KSP-600、KS-508/530/531/537/538/540、東レ・ダウコーニング社製FSアンチフォームシリーズ(DB-110N/EPL/025/92/93/1224/1233/1277/013A)、SH5507、DK Q1-1247、AFE-1530、SM5572F、SM5571、旭化成ワッカーシリコーン社製AKシリーズ(AK-350/12500/60000)、AF98/1000、モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ社製TSAシリーズ(TSA750/720/750S)等が挙げられる。
【0063】
上述した各成分を混合することにより本発明のコーティング剤を調整することができる。この際、各成分は同時に混合してコーティング剤としてもよいし、イソシアネート系硬化剤以外の成分を予め混合してプレミクスチャーを調整しておき、コーティング剤の使用時にイソシアネート系硬化剤を混合する2液型のコーティング剤としてもよい。
【0064】
本発明のコーティング剤の不揮発分は10質量%から25質量%に調整して用いる。不揮発分が25質量%を超えると塗工粘度が安定せず、10質量%を下回ると塗工膜厚が安定しない傾向がある。
【0065】
(積層体)
本発明の積層体は、基材上に本発明の電気化学セル包装用コーティング剤の硬化塗膜層を有することを特徴とする。
【0066】
(基材)
本発明で使用する基材は、電気化学セル包装用に汎用される基材であれば特に限定なく使用することができる。具体的には例えば、絶縁性を有する樹脂により形成された樹脂フィルムが好ましく、ポリエステルフィルム、ポリアミドフィルム、ポリプロピレンフィ ルム等の延伸又は未延伸フィルム等が挙げられる。また基材は、これら樹脂フィルムの単層フィルムであってもよく、これらの樹脂フィルムが2種以上積層された積層フィルムであってもよい。前記した材料のなかでも、成型性に優れることから、ポリアミドフィルムが好ましい。ポリアミドフィルムを形成するポリアミド樹脂としては、ナイロン6、ナイロン11、ナイロン12、ナイロン66、ナイロン610、ナイロン612等が挙げられる。
【0067】
電気化学セル包装用に使用されるこれらの基材の一般的な厚さは、6~40μmの範囲が多く、10~30μmがより好ましい。基材の厚さが下限値(6μm)以上の場合は、耐ピンホール性、絶縁性が向上する。基材の厚さが上限値(40μm)以下の場合は、成型性が向上する。
【0068】
前記基材へ本発明の本発明の電気化学セル包装用コーティング剤をコーティングする方法は特に限定なく、例えばグラビアロールコーティング、リバースロールコーティング、ワイヤーバーコーティング、リップコーティング、エアナイフコーティング、カーテンフローコーティング、スプレーコーティング、浸漬コーティング、はけ塗り法等が採用できる。一般的にはグラビアロールコーティングで行うことが多い。
コーティング剤の塗布量は基材によって適宜決定すればよく、一般的には、0.1μm~10μmであることが好ましく、0.2μm~8μmがより好ましく、0.3μm~7μmが特に好ましい。
【0069】
前記基材へ本発明の本発明の電気化学セル包装用コーティング剤をコーティングした後の塗膜は、適宜乾燥工程を設けた後、25~80℃の範囲内で硬化させることで、当該コーティング剤の硬化塗膜層を得ることができる。
【0070】
(電気化学セル用包装材)
本発明の電気化学セル用包装材の具体的態様の一例について説明する。
電気化学セル用包装材の一般的な構成は、樹脂フィルムを含んで形成された基材層と、外層に配して前記基材層を保護する基材保護層と、最内層に配して熱接着性樹脂からなるシーラント層と、前記基材層と前記シーラント層との間に配された金属箔層とを積層して構成される。
ここで、樹脂フィルムを含んで形成された基材層は、前述の通り、電気化学セル包装用に汎用される基材であれば特に限定なく使用することができる。具体的には例えば、絶縁性を有する樹脂により形成された樹脂フィルムが好ましく、ポリエステルフィルム、ポリアミドフィルム、ポリプロピレンフィ ルム等の延伸又は未延伸フィルム等が挙げられる。また基材は、これら樹脂フィルムの単層フィルムであってもよく、これらの樹脂フィルムが2種以上積層された積層フィルムであってもよい。前記した材料のなかでも、成型性に優れることから、ポリアミドフィルムが好ましい。ポリアミドフィルムを形成するポリアミド樹脂としては、ナイロン6、ナイロン11、ナイロン12、ナイロン66、ナイロン610、ナイロン612等が挙げられる。
【0071】
基材層の厚さは、6~40μmが好ましく、10~30μmがより好ましい。基材 の厚さが下限値(6μm)以上の場合は、耐ピンホール性、絶縁性が向上する。基材の厚さが上限値(40μm)以下の場合は、成型性が向上する。
【0072】
前記基材層の最表面には、外層に配して前記基材層を保護する基材保護層として、本発明のコーティング剤の硬化塗膜層が設けられる。硬化塗膜層の形成方法は前述の通り、例えばグラビアロールコーティング、リバースロールコーティング、ワイヤーバーコーティング、リップコーティング、エアナイフコーティング、カーテンフローコーティング、スプレーコーティング、浸漬コーティング、はけ塗り法の方法、一般的にはグラビアロールコーティングで塗膜層を形成した後、適宜乾燥工程を経て、25~80℃の範囲内で硬化させることで、当該コーティング剤の硬化塗膜層を得ることができる。
【0073】
(シーラント層)
最内層に配して熱接着性樹脂からなるシーラント層は、ヒートシールによる封止性を付与する層である。シーラント層としては、ポリオレフィン系樹脂、またはポリオレフィン系樹脂に無水マレイン酸等の酸をグラフト変性させた酸変性ポリオレフィン系樹脂からなる樹脂フィルムが挙げられる。前記ポリオレフィン系樹脂としては、例えば、低密度、中密度または高密度のポリエチレン;エチレン・α-オレフィン共重合体;ホモ、ブロック、またはランダムポリプロピ レン;プロピレン・α-オレフィン共重合体等が挙げられる。これらポリオレフィン系樹脂は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0074】
(金属箔層)
アルミニウム箔に代表される金属箔層は、外部から電気化学セルの内部に特に水蒸気が浸入することを防止するための機能を担う。耐ピンホール、及び成型加工性の点から厚さは20~80μmであることが好ましい。
ピンホールの発生をさらに改善し、成型加工時のクラックの発生防止の点から鉄を0.3~9質量%含有するアルミニウム箔を用いることが好ましく、鉄を0.7~2質量%含有するものを用いることがより好ましい。このようなアルミニウム箔は、鉄を含有していないアルミニウム箔と比較して、展延性がよく、折り曲げによるピンホールの発生が少なくなり、電気化学セルを成型する時に側壁の形成も容易にできる。
また、冷間圧延で製造されるアルミニウム箔は焼きなまし(いわゆる焼鈍処理)条件でその柔軟性・腰の強さ・硬さが変化する。本発明では、焼きなましをしていない硬質処理品より、多少または完全に焼きなまし処理をした軟質傾向にあるアルミニウム箔を用いることが好ましい。アルミニウム箔の焼きなましの条件は、成型の程度に応じ適宜選定すればよい。
【0075】
(腐食防止処理層)
前記シーラント層と前記金属箔層との間には、腐食防止処理層を有していてもよい。腐食防止処理層は、電解液や、電解液と水分の反応により発生するフッ酸による金属箔層の腐食を抑制する役割を果たす。リチウムイオン電池の電解液に用いられるLiPF6、LiBF4等のリチウム塩は、水分による加水分解反応によりフッ酸が発生する。腐食防止処理層を設けることで、金属箔層の内側がフッ酸によって腐食されることも抑制され、該金属箔層の内側での層間剥離を抑制できる。
腐食防止処理層としては、塗布型、または浸漬型の耐酸性の腐食防止処理剤によって形成された塗膜が好ましい。前記塗膜は、金属箔層の酸に対する腐食防止効果に優れる。
【0076】
前記塗膜としては、例えば、酸化セリウムとリン酸塩と各種熱硬化性樹脂からなる腐食防止処理剤によるセリアゾール処理によって形成される塗膜、クロム酸塩、リン酸塩、フッ化物と各種熱硬化性樹脂からなる腐食防止処理剤によるクロメート処理により形成される塗膜等が挙げられる。なお、腐食防止処理層は、金属箔層cの耐食性が充分に得られる塗膜であれば、 前記塗膜には限定されない。例えば、リン酸塩処理、ベーマイト処理等によって形成した塗膜であってもよい。
腐食防止処理層は、例えば前記金属箔層の一方の面に、腐食防止処理剤を塗布、乾燥して形成することができる。塗布方法は特に限定されず、グラビアコート、リバースコート、ロー ルコート、バーコート等、各種方法を採用できる。
【0077】
(接着剤層)
前記樹脂フィルムを含んで形成された基材層と、外層に配して前記基材層を保護する基材保護層と、最内層に配して熱接着性樹脂からなるシーラント層と、前記基材層と前記シーラント層との間に配された金属箔層、あるいは、前記樹脂フィルムを含んで形成された基材層と、外層に配して前記基材層を保護する基材保護層と、最内層に配して熱接着性樹脂からなるシーラント層と、前記基材層と前記シーラント層との間に配された腐食防止処理層と金属箔層とを積層させる方法は、一般的に接着剤が使用される。
例えば、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、アクリルポリオール等の主剤に、硬化剤として2官能以上の芳香族系または脂肪族系イソシアネート化合物を作用させる2液硬化型のウレタン系接着剤を使用することができる。前記ウレタン系接着剤は、塗工後、例えば40℃で4日以上のエージングを行うことで主剤の水酸基と硬化剤のイソシアネート基の反応が進行して強固な接着が可能となる。これらの接着層の厚さは、接着強度、追随性、加工性の点から、0.5~10μmが好ましく、1~7μmがより好ましい。
【0078】
最内層に配して熱接着性樹脂からなるシーラント層を接着する場合、内容物であるリチウムイオン電池の電解液に対する耐性を有する接着剤を選択することもある。
例えば、2液硬化型の接着剤としては、無水マレイン酸変性ポリオレフィン系樹脂、酸無水物を含有してなる主剤に硬化剤として、多官能エポキシ化合物を作用させる2液硬化型のエポキシ系接着剤が挙げられる。
また、接着性樹脂としては、例えばポリオレフィン系樹脂を無水マレイン酸等の酸でグラフト変性した酸変性ポリオレフィン系樹脂の押出成形用の接着性樹脂が挙げられる。
【0079】
酸変性ポリオレフィン系樹脂は、無極性であるポリオレフィン系樹脂の一部に極性基が導入されていることから、シーラント層が無極性のポリオレフィン系樹脂フィルム等で形成され、腐食防止処理層が極性を有する塗膜である場合に、それらの両方に強固に密着できる。また、酸変性ポリオレフィン系樹脂を使用することで、電解液等の内容物に対する耐性が向上し、電池内部でフッ酸が発生しても密着力の低下を防止しやすい。酸変性ポリオレフィン系樹脂に用いるポリオレフィン系樹脂としては、例えば、低密度、中密度または高密度のポリエチレン;エチレン・α-オレフィン共重合体;ホモ、ブロックまたはランダムポリプロピレン;プロピレン・α-オレフィン共重合体等が挙げられる。また、前記したものにアクリル酸やメタクリル酸等の極性分子を共重合させた共重合体、架橋ポリオレフィン等の重合体等も使用できる。
前記ポリオレフィン系樹脂を変性する酸としては、カルボン酸、エポキシ化合物、酸無水物等が挙げられ、無水マレイン酸が特に好ましい。即ちポリオレフィン系樹脂を無水マレイン酸でグラフト変性させた、無水マレイン酸変性ポリオレフィン系樹脂が好ましく、無水マレイン酸変性ポリプロピレンが特に好ましい。
無水マレイン酸変性ポリプロピレンの無水マレイン酸による変性率(無水マレイン酸変性ポリプロピレンの総質量に対する無水マレイン酸に由来する部分の質量)は、0.1~ 20質量%が好ましく、0.3~5質量%がより好ましい。
【0080】
前記酸変性ポリオレフィン系樹脂の押出接着剤は、押出し装置で押し出すことで形成できる。前記酸変性ポリオレフィン系樹脂のメルトフローレート(MFR)は、一般的に230℃、2.16kgfの条件において4~30g/10分が好ましい。また前記酸変性ポリオレフィン系樹脂の押出接着剤を使用する場合、得られる接着層の厚さは、2~50μmが好ましい。
【0081】
前記層を、公知の方法で積層させることで、本発明の電気化学セル用包装材を得ることができる。
【0082】
本発明の電気化学セル用包装材は、例えば成形高さの深い直方体形状等の各種形状に成形することにより、腕時計、スマートウオッチ、スマートフォン、ヘッドセット、ウエアラブル機器、補聴器等の小型機器の電源に使用されるリチウムイオン二次電池、電気化学キャパシタ等として使用することができる。
【0083】
成型方法は、特に制限はなく、一例として以下のような方法が挙げられる。
【0084】
・加熱圧空成型法:電気化学セル用包装材を高温、高圧のエアーが供給される孔を有する下型と、ポケット形状の凹部を有する上型に挟み、加熱軟化させながらエアーを供給して凹部を形成する方法。
・プレヒーター平板式圧空成型法:電気化学セル用包装材を加熱軟化させた後、高圧のエアーが供給される孔を有する下型と、ポケット形状の凹部を有する上型に挟み、エアーを供給して凹部を形成する方法。
・ドラム式真空成型法:電気化学セル用包装材を加熱ドラムで部分的に加熱軟化後、ポケット形状の凹部を有するドラムの該凹部を真空引きして凹部を成型する方法。
・ピン成型法:底材シートを加熱軟化後ポケット形状の凹凸金型で圧着する方法。
・プレヒータープラグアシスト圧空成型法:電気化学セル用包装材を加熱軟化させた後、高圧のエアーが供給される孔を有する下型と、ポケット形状の凹部を有する上型に挟み、エアーを供給して凹部を形成する方法であって、成型の際に、凸形状のプラグを上昇及び降下をさせて成型を補助する方法。
【0085】
成型後の底材の肉厚が均一であることから、加熱真空成型法であるプレヒータープラグアシスト圧空成型法が好ましい。
このようにして得られた本発明の電気化学セル包装体は、正極、負極、電解質等の電池素子を密封して収容する電池用容器として好適に使用することができる。
【0086】
(電池)
本発明の電気化学セル包装体を用いた電池は、正極、負極、及び電解質を備えた電池素子を、本発明の電気化学セル包装体で、前記正極及び負極の各々に接続された金属端子が外側に突出させた状態で、電池素子の周縁にフランジ部(シーラント層同士が接触する領域)が形成できるようにして被覆し、前記フランジ部のシーラント層同士をヒートシールして密封させることによって得られる。
【0087】
本発明の電気化学セル包装体を用いて得られる電池としては、一次電池、二次電池のいずれであってもよいが、好ましくは二次電池である。二次電池としては特に制限されず、例えば、リチウムイオン電池、リチウムイオンポリマー電池、鉛蓄電池、ニッケル・水素蓄電池、ニッケル・カドミウム蓄電池、ニッケル・鉄蓄電池、ニッケル・亜鉛蓄電池、酸化銀・亜鉛蓄電池、金属空気電池、多価カチオン電池、コンデンサー、キャパシター等が挙げられる。これらの二次電池の中でも、本発明の電池用包装材の好適な適用対象として、リチウムイオン電池及びリチウムイオンポリマー電池が挙げられる。
【実施例0088】
以下、実施例と比較例により本発明を説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。配合組成その他の数値は特記しない限り質量基準である。
【0089】
(実施例及び比較例)
(コーティング剤の調整方法)
表1に示す配合に従い、分散撹拌機を用いてコーティング剤を調整した。
【0090】
(積層体の製造方法)
実施例1のコーティング剤を、バーコーターを用いて、予めコロナ処理を施した厚さ25μmの延伸ナイロンフィルムのコロナ処理面に塗布し、100℃のオーブン中で1分間乾燥して溶剤類を揮発させた。乾燥後の膜厚が5μmとなるようにバーコーターを選択し、40℃の恒温室に3日間養生して実施例1の積層体を得た。
【0091】
(評価方法)
(粘着テープとの密着性評価)
前記方法で得た、実施例及び比較例の積層体のコーティング硬化塗膜層に対し、粘着テープ(TESA社製の粘着テープ「TESA 67215」)を貼り合わせ、室温にて1時間静置した。株式会社島津製作所の「オートグラフAGS-J」を使用し、剥離速度50mm/min、剥離幅15mm、剥離形態180°剥離の条件で、当該積層体の硬化塗膜層と粘着テープの界面の密着強度を評価した。数値が高いほど密着性に優れていることを示す。
【0092】
(摩擦係数)
前記方法で得た、実施例及び比較例の積層体のコーティング硬化塗膜層に対し、底辺の長さが63mm×63mm、質量200gの表面の平滑なステンレス製ブロック直方体を載せる。引っ張り速度:100mm/minの速度でステンレス製ブロック直方体を引っ張ることで摩擦係数を測定することができる。
【0093】
(電解液耐性評価)
前記方法で得た、実施例及び比較例の積層体のコーティング硬化塗膜層に対し、電解液(エチレンカーボネート/ジメチルカーボネート/ジエチルカーボネート=1/1/1(質量比の液)を数滴滴下し、25℃、65%RHの環境下で24時間放置した後電解液を拭き取り、コーティング硬化塗膜層表面の変質を目視にて確認した。評価は、以下の基準に従って行った。
〇:基材保護層表面の変質が見られなかった。
△:液滴縁が視認された
×:基材保護層表面が変質した。
【0094】
(耐熱性評価)
前記方法で得た、実施例及び比較例の積層体を、190℃1秒間ヒートシールバーを当て、プレス部外観を目視で確認し、2段階で評価した。
〇:ブロッキング無し(プレス部分を がす時の抵抗が無い)
×:ブロッキングあり(プレス部分を剥がす時の抵抗がある)
【0095】
(インキ受容性評価)
前記方法で得た、実施例及び比較例の積層体のコーティング硬化塗膜層に対し、寺西化学工業社製マジックインキNo.500(細書き用)を用いて印字した。印字部にセロハンテープを圧着し、1500gの加重で擦った後、剥離した。セロハンテープの剥離前に対する剥離後の印字部の濃度により、以下の3段階で評価した。
〇:濃度は80%以上保持された。
△:濃度は50%以上80%未満。
×:濃度は50%未満
【0096】
実施例及び比較例の結果を表1に示す。
【0097】
【0098】
表中、略語は以下の通りである。
TU-S5265:株式会社クラレ社製のスチレン系熱可塑性エラストマー
SEPTON HG-252:株式会社クラレ社製のスチレン系熱可塑性エラストマー
PMA-L:東洋紡株式会社製の酸変性オレフィン樹脂
FTR8120:三井化学社製の芳香族炭化水素樹脂
N-3300:住友バイエルウレタン社製のヘキサメチレンジイソシアネートヌレート体
KW-75:DIC株式会社製のトリレンジイソシアネートのアダクト体
シリカ:東ソー・シリカ株式会社製の「NIPGEL AZ-204」
TPP:トリフェニルフォスフィン
【0099】
この結果、実施例1~5のコーティング剤を使用した積層体は、優れたテープ密着性とインキ受容性を示した。また電解液耐性や耐熱性も優れていた。これに対し、比較例1~2は、スチレン系熱可塑性エラストマーを使用しないコーティング剤を用いた例である。比較例1はカーボネート溶剤耐性に優れるものの、テープ密着性は劣っていた。また比較例2は基材密着性が悪く評価できなかった。