(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023092140
(43)【公開日】2023-07-03
(54)【発明の名称】冷却装置
(51)【国際特許分類】
F25D 21/06 20060101AFI20230626BHJP
F25B 47/02 20060101ALI20230626BHJP
F28D 1/053 20060101ALI20230626BHJP
F28F 1/14 20060101ALI20230626BHJP
F25B 39/02 20060101ALI20230626BHJP
【FI】
F25D21/06 J
F25B47/02 H
F28D1/053 Z
F28F1/14
F25B39/02 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021207153
(22)【出願日】2021-12-21
(71)【出願人】
【識別番号】000148357
【氏名又は名称】株式会社前川製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【弁理士】
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100175824
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100211122
【弁理士】
【氏名又は名称】白石 卓也
(72)【発明者】
【氏名】阿部 啓太郎
(72)【発明者】
【氏名】忽那 都志夫
(72)【発明者】
【氏名】茅嶋 大樹
(72)【発明者】
【氏名】大須賀 延王
(72)【発明者】
【氏名】山田 浩之
(72)【発明者】
【氏名】山脇 昂
(72)【発明者】
【氏名】福本 浩通
【テーマコード(参考)】
3L046
3L103
【Fターム(参考)】
3L046AA03
3L046CA12
3L046DA04
3L046KA08
3L046LA14
3L046LA15
3L046MA01
3L046MA04
3L103AA20
3L103AA22
3L103BB44
3L103CC18
3L103CC22
3L103DD06
3L103DD33
(57)【要約】
【課題】冷媒として二酸化炭素を用いたチルド冷蔵庫用の冷却装置の場合や、急激に冷蔵庫冷却負荷が増大した場合にも、除霜不良による冷却能力低下を防ぐ。
【解決手段】この冷却装置は、ポンプ40と冷媒コイル10の入口16との間に設けられた膨張弁34と、冷媒コイル10の出口14とレシーバー36との間に設けられた電磁弁30と、制御装置24とを具備し、制御装置24は、除霜運転時に膨張弁34および電磁弁30を共に閉鎖することにより、冷媒コイル10内の冷媒を冷媒コイル10内に閉じ込めて昇温昇圧させる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
保冷運転と除霜運転を切り替えて行う冷却装置であって、
冷媒が循環される冷媒コイルおよび前記冷媒コイルに結合された伝熱フィンを有する蒸発器と、
前記蒸発器に通風するための送風ファンと、
前記冷媒コイルから流出し気化した冷媒を液化する凝縮器と、
前記凝縮器で液化された冷媒を保持するレシーバーと、
前記レシーバーで液化された冷媒を前記冷媒コイルの入口へ注入するためのポンプと、
前記ポンプと前記冷媒コイルの入口との間に設けられた膨張弁と、
前記冷媒コイルの出口と前記レシーバーとの間に設けられた電磁弁と、
前記膨張弁および前記電磁弁の開度を制御する制御装置とを具備し、
前記制御装置は、前記除霜運転時に前記膨張弁および前記電磁弁を共に実質的に閉鎖することにより、前記冷媒コイル内の冷媒を前記冷媒コイル内に閉じ込める工程を実施するようにプログラムされていることを特徴とする冷却装置。
【請求項2】
前記制御装置は、前記除霜運転時に前記膨張弁および前記電磁弁を共に実質的に閉鎖して冷媒コイル内に冷媒を閉じ込めた状態とする一方、前記冷媒の加温により前記冷媒コイルの内部が所定の上限圧力に達した場合には、前記電磁弁を開いて前記冷媒コイル内の圧力を前記上限圧力以下に下げる工程を実施するようにプログラムされていることを特徴とする請求項1に記載の冷却装置。
【請求項3】
前記蒸発器の伝熱フィンは平板状をなし、上下方向へ延びるとともに、前記伝熱フィンの厚さ方向へ間隔を開けて複数配列されており、前記冷媒コイルは、前記複数の伝熱フィンを水平に貫通して延びる複数の直管部と、前記直管部の両端同士を連結する複数のU字管部とを有し、前記伝熱フィンの下端には、前記直管部のうち最も下に位置する最下直管部から下方へ延長された解凍促進部が形成されていることを特徴とする請求項1または2記載の冷却装置。
【請求項4】
前記制御装置は、前記膨張弁および前記電磁弁を共に実質的に閉鎖する工程の直前に、前記膨張弁の開度のみを前記保冷運転時の前記膨張弁の開度よりも小さくして前記冷媒コイル内の冷媒量を前記保冷運転時の冷媒量よりも減少させる工程を実施するようにプログラムされていることを特徴とする請求項1~3のいずれか1項に記載の冷却装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、保冷運転と除霜運転を切り替えて行う冷却装置に関する。
【背景技術】
【0002】
業務用の冷蔵庫などの庫内を冷却する冷却装置として、庫内に配置され冷媒が循環される蒸発器と、前記蒸発器に通風して庫内を冷やすための送風ファンと、前記蒸発器から流出した冷媒を庫外で冷却して液化する凝縮器と、冷媒を保持するレシーバーと、前記レシーバー内の液化された冷媒を冷媒コイルへ注入するためのポンプとを具備するものが知られている。
【0003】
この種の冷却装置では、保冷運転につれて庫内空気中の水分が蒸発器で氷結して霜がつくことが避けられず、霜の堆積量が増えると蒸発器の伝熱性および通気性を阻害して冷却効率が低下する。そこで、一定の保冷運転を行った後には、一日に数回程度の頻度で除霜運転が必要となる。
【0004】
除霜運転の方法として、従来より、熱交換器に散水して霜を溶かす散水式、ヒーターで蒸発器を暖めて霜を溶かすヒーター除霜方式(例えば特許文献1参照)、蒸発器のコイルにホットガスを通して霜を溶かすホットガス方式、および、蒸発器内にヒートパイプを配置して霜を溶かすヒートパイプ方式など、熱源を設けて積極的に蒸発器を加温する方式が採用されているが、庫内温度が+3℃位のいわゆるチルド冷蔵庫の場合には、オフサイクル除霜方式も使用可能である。
【0005】
オフサイクル除霜方式では、除霜運転時に冷媒の給液を停止する一方、送風ファンのみを運転して、庫内の+3℃程度の空気を熱源として蒸発器に通風し、蒸発器を0℃以上に暖めて霜を溶かす。このため、先の熱源を設ける除霜方式に比べて、配管が単純となり、装置が安価で済むメリットを有する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、例えば、冷媒として二酸化炭素を用いたチルド冷蔵庫用の冷却装置の場合、オフサイクル除霜方式を採用すると、二酸化炭素冷媒の送液温度は通常-5℃前後と低いため、庫内温度が+3℃前後の条件下では、蒸発器の隅々まで短時間で0℃以上に暖めることが難しく、蒸発器の伝熱フィンの下端や、伝熱フィンの側面から突出する伝熱コイルのU字管部などに霜が残ってしまい、完全に除霜できない場合があった。
【0008】
また、通常であれば十分に除霜が可能な場合であっても、冷蔵庫への物品の収容量が増えて庫内温度が上昇した場合には、蒸発器への水分の氷結が増えて着霜量が多くなり、オフサイクル除霜運転の間に十分に除霜できなくなるといった問題もあった。
完全に除霜しきれない除霜運転が繰り返されると、それらの箇所に霜が徐々に堆積して氷塊化し、冷却装置の効率を悪化させる原因となる。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る冷却装置としては、以下の各態様が実施可能である。
[1]保冷運転と除霜運転を切り替えて行う冷却装置であって、冷媒が循環される冷媒コイルおよび前記冷媒コイルに結合された伝熱フィンを有する蒸発器と、前記蒸発器に通風するための送風ファンと、前記冷媒コイルから流出し気化した冷媒を液化する凝縮器と、 前記凝縮器で液化された冷媒を保持するレシーバーと、前記レシーバーで液化された冷媒を前記冷媒コイルの入口へ注入するためのポンプと、前記ポンプと前記冷媒コイルの入口との間に設けられた膨張弁と、前記冷媒コイルの出口と前記レシーバーとの間に設けられた電磁弁と、前記膨張弁および前記電磁弁の開度を制御する制御装置とを具備し、前記制御装置は、前記除霜運転時に前記膨張弁および前記電磁弁を共に実質的に閉鎖することにより、前記冷媒コイル内の冷媒を前記冷媒コイル内に閉じ込める工程を実施するようにプログラムされていることを特徴とする。
【0010】
前記態様[1]の冷却装置によれば、除霜運転時に前記膨張弁および前記電磁弁を共に実質的に閉鎖することにより、前記冷媒コイル内の冷媒を前記冷媒コイル内に閉じ込めるため、送風ファンにより前記蒸発器に通風すると、前記冷媒コイル内から気化された冷媒ガスが実質的に流出することなく、前記冷媒コイル内の圧力上昇を伴って前記冷媒コイル内の冷媒が効率よく短時間で蒸発し、前記冷媒コイル内の冷媒が蒸発した後に前記蒸発器が昇温していく。したがって、前記冷媒コイル内から気化された冷媒ガスを流出させながら通風する場合に比べて、短時間で蒸発器を0℃以上に昇温することができ、除霜効率を高めることができる。
【0011】
[2]前記制御装置は、前記除霜運転時に前記膨張弁および前記電磁弁を共に実質的に閉鎖して冷媒コイル内に冷媒を閉じ込めた状態とする一方、前記冷媒の加温により前記冷媒コイルの内部が所定の上限圧力に達した場合には、前記電磁弁を開いて前記冷媒コイル内の圧力を前記上限圧力以下に下げる工程を実施するようにプログラムされていてもよい。前記上限圧力は本発明では限定されないが、例えば3.4~4.9MPaであってもよい。
【0012】
前記態様[2]の冷却装置によれば、前記除霜運転時に前記膨張弁および前記電磁弁を共に実質的に閉鎖して冷媒コイル内に冷媒を閉じ込めた状態にあっても、前記冷媒コイルの内部が所定の上限圧力に達した場合には、前記電磁弁を開いて前記冷媒コイル内の冷媒の一部を放出して前記冷媒コイル内の圧力を前記上限圧力以下に下げることができるから、本発明の効果を得つつも安全性を高めることが可能である。
【0013】
[3]前記蒸発器の伝熱フィンは平板状をなし、上下方向へ延びるとともに、前記伝熱フィンの厚さ方向へ間隔を開けて複数配列されており、前記冷媒コイルは、前記複数の伝熱フィンを水平に貫通して延びる複数の直管部と、前記直管部の両端同士を連結する複数のU字管部とを有し、前記伝熱フィンの下端には、前記直管部のうち最も下に位置する最下直管部から下方へ延長された解凍促進部が形成されていてもよい。
【0014】
前記態様[3]の冷却装置によれば、前記直管部のうち最も下に位置する最下直管部から下方へ延長された解凍促進部が伝熱フィンに形成されており、解凍促進部は冷媒コイルから距離が離れているため、除霜運転時に冷媒コイルおよび内部に閉じ込められた冷媒の熱容量によって熱を奪われにくく、除霜運転時は伝熱フィンの他の部分に比べて温度上昇が早くなる。このため、伝熱フィンを伝わって解凍促進部まで垂れてきた水分や霜が、解凍促進部で再び凍り付くことがなく、前記冷媒閉じ込めの効果と相まって、前記蒸発器の除霜をより効果的に行うことが可能である。
【0015】
[4]前記解凍促進部は、前記最下直管部の最下点よりも、前記冷媒コイルの上下に隣接する二本の直管部の間隔の1倍以上であってもよい。また、前記解凍促進部は、前記最下直管部の最下点よりも、前記冷媒コイルの直管部の外径の1倍以上の位置まで延びていてもよい。また、前記解凍促進部は、前記最下直管部の最下点よりも、前記伝熱フィン同士の平均間隙距離の0.5倍以上かつ2倍以下の位置まで延びていてもよい。前記3条件のうち2つまたは3つを同時に満たしていてもよい。
【0016】
前記態様[4]の冷却装置によれば、前記冷媒閉じ込めの効果と相まって、蒸発器からの除霜をさらに効果的に行うことが可能である。
【0017】
[5]前記制御装置は、前記膨張弁および前記電磁弁を共に実質的に閉鎖する工程の直前に、前記膨張弁の開度のみを前記保冷運転時の前記膨張弁の開度よりも小さくして前記冷媒コイル内の冷媒量を前記保冷運転時の冷媒量よりも減少させる工程を実施するようにプログラムされていてもよい。
【0018】
前記態様[5]の冷却装置によれば、前記膨張弁および前記電磁弁を共に実質的に閉鎖した時点で、前記蒸発器内に残留する液体冷媒を減らすことができるから、除霜運転時に前記蒸発器内の冷媒液を気化させるための蒸発潜熱にかかる熱量ロスを低減させることができ、前記冷媒コイル内の冷媒が蒸発するまでの時間をさらに短くし、より短時間で蒸発器を0℃以上に昇温することができ、除霜効率を一層高めることが可能である。
【発明の効果】
【0019】
本発明に係る冷却装置によれば、除霜運転時に前記膨張弁および前記電磁弁を共に実質的に閉鎖することにより、前記冷媒コイル内の冷媒を前記冷媒コイル内に閉じ込めるため、送風ファンにより前記蒸発器に通風すると、前記冷媒コイル内から気化された冷媒ガスが実質的に流出することなく、前記冷媒コイル内の圧力上昇を伴って前記冷媒コイル内の冷媒が効率よく短時間で蒸発し、前記冷媒コイル内の冷媒が蒸発した後に前記蒸発器が昇温していく。したがって、前記冷媒コイル内から気化された冷媒ガスを流出させながら通風する場合に比べて、短時間で蒸発器を0℃以上に昇温することができ、除霜効率を高めることができるという優れた効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本発明に係る冷却装置の一実施形態を示すブロック図である。
【
図4】本発明の実施例で得られた除霜効果を示すグラフである。
【
図5】本発明の第3実施形態を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
次に、本発明の冷却装置の一実施形態を図面を用いて詳細に説明する。
図1は一実施形態に係る冷却装置のブロック図であり、この冷却装置1は、チルド冷蔵庫2の庫内を例えば+3℃前後に冷却する保冷運転と、保冷運転により付着した霜を取り除く除霜運転とを、所定の時間毎に切り替えて行うものである。
【0022】
冷蔵庫2の庫内には、庫内の空気を冷却するための蒸発器4が単数または複数設置されている。蒸発器4は、冷風の循環を効率的に行うために、冷蔵庫2の天井面に近い位置に設置されることが好ましいが、本発明では設置位置の限定はされない。蒸発器4には、通風するための送風ファン12(図では2個であるが、数は蒸発器4の大きさに応じて任意である)が設けられている。
【0023】
蒸発器4は、全体として例えば直方体状をなし、筐体内に蒸発器本体6を有する。蒸発器本体6は、二酸化炭素などの冷媒が循環される蛇行形状の冷媒コイル10と、冷媒コイル10に結合された多数枚の伝熱フィン8とを有している。個々の伝熱フィン8は矩形の平板状をなし、長手方向を上下に向けて延びるとともに、厚さ方向へ一定の間隔を開けて、互いに平行に多数配列されている。伝熱フィン8は、完全な平面でなくてもよく、必要に応じてはディンプルを一定間隔毎に形成してもよいし、伝熱フィン8を貫通する小さな貫通孔を一定間隔毎に形成してもよいし、全面に亘って波形の断面形状としてもよい。これらの場合には、表面積の増大により伝熱効果の向上が見込める。
【0024】
冷媒コイル10は、
図2に示すように、前記多数の伝熱フィン8の積層体を伝熱フィン8の厚さ方向に貫通して延びる複数の直管部10(A)と、直管部10(A)の両端同士を、伝熱フィン8の外側で連結する複数のU字管部10(B)とを有し、全体として蛇行形状をなしている。蒸発器4の中には、1本の冷媒コイル10のみが設けられていてもよいし、複数の冷媒コイル10が並列に接続されていてもよい。伝熱フィン8および冷媒コイル10は、アルミニウム、アルミニウム合金、銅、銅合金などの伝熱性に優れた材質からなることが望ましいが、本発明では限定されない。
【0025】
蒸発器4の下端には、廃液回収部18が形成され、除霜運転時に蒸発器4から落下する水分や霜、氷などを受け止め、排液管44を通じて排液として冷蔵庫2の外部へ排出する。
【0026】
蒸発器4は、冷媒コイル10の両端である出口14と入口16を有する。出口14には、
図1に示すように冷媒配管20が接続され、冷蔵庫2の外に配置されたレシーバー36の入口に接続されている。冷媒配管20には電磁弁30が設けられ、電磁弁30は制御装置24によって開閉制御されるようになっている。
【0027】
レシーバー36の下部38の出口には冷媒配管32を介してポンプ40が接続されている。このポンプ40により圧送された液体冷媒が、膨張弁34を介して、冷媒流路の入口16へ注入される。膨張弁34も制御装置24によって開閉制御されるようになっている。
【0028】
冷媒流路の出口14の近傍には、冷媒配管20内の冷媒の圧力を測定する圧力センサ22と、冷媒配管20内の冷媒の温度を測定する温度センサ26がそれぞれ設けられ、これら圧力センサ22と温度センサ26は、制御装置24に出力信号を伝達する。制御装置24は各出力信号を受け、それらに応じて、予め設定されたプログラムどおりに電磁弁30、膨張弁34、およびポンプ40を制御する。
【0029】
レシーバー36には、配管37を介して凝縮器35が接続されている。凝縮器35は内部に熱交換器を備え、図示しない冷熱源により、気体冷媒を冷却して液化する。液化された冷媒はレシーバー36へ戻り、レシーバー36内に蓄えられる。レシーバー36に溜まった液体冷媒は、冷媒配管32を通じて再びポンプ40で圧送されて蒸発器4に循環される。これにより、冷蔵庫2の庫内温度が一定の範囲に保たれる。
【0030】
制御装置24は、本実施形態では、以下のようにプログラムされている。
(1)保冷運転時: 蒸発器4が適切な冷却度になるように、制御装置24はポンプ40を稼働し、冷媒流路の出口14側の圧力センサ22または温度センサ26の検出値に基づいて、膨張弁34を適切な開度で開き、かつ、電磁弁30を開く。この保冷運転状態で、制御装置24は冷媒コイル10内を流れている冷媒の総量が、いつ除霜運転が始まってもよい総量となるように調整されている。いつ除霜運転が始まってもよい総量とは、限定はされないが、冷媒コイル10の内容積に対し、例えば液体状態としての冷媒の体積が30~60%になる量である。
(2)保冷運転から除霜運転への切り替え時: 制御装置24はポンプ40を停止し、電磁弁30および膨張弁34を閉じる。電磁弁30および膨張弁34の閉じ方は、急激であっても、ある程度の緩慢さで閉じてもよい。急激に閉じたとしても、前記工程(1)において、冷媒コイル10内を流れている冷媒の総量が、いつ除霜運転が始まってもよい総量となるように調整されているから、冷媒コイル10内の圧力が上がりすぎるなどの問題は生じにくい。
(3)除霜運転時: 電磁弁30および膨張弁34の両者を実質的に閉じ、蒸発器4内の冷媒を閉じ込める。除霜運転時には、膨張弁34および電磁弁30をいずれも閉じて冷媒コイル10内に冷媒を閉じ込めた状態とするが、もしも、冷媒の加温により冷媒コイル10の内部が所定の上限圧力に達した場合には、冷媒コイル10の内部が前記上限圧力未満になるまで電磁弁30を開き、冷媒コイル10内の圧力を下げる。所定の上限圧力は本発明では限定されないが、例えば3.4~4.9MPaであってもよく、例えば4.7MPaであってもよい。
(4)除霜運転から保冷運転への切り替え時: 除霜運転の完了時に電磁弁30および膨張弁34の両者を開く。電磁弁30および膨張弁34の開き方は急激であっても緩慢であってもよく、また、必ずしも両者は同時に開かなくてもよく、一方が他方よりも少し遅れて開いても問題はない。
本実施形態の制御装置24は前記(1)~(4)の工程を定期的に繰り返すようにプログラムされている。また、制御装置24は外部のコンピューターと通信する機能を持っていてもよい。
【0031】
図2および
図3は、蒸発器4をより詳細に示す正面図および側面図である。この実施形態では、伝熱フィン8に直管部10(A)の孔が水平方向に3個(個数は任意)ずつ並んで形成され、U字管部10(B)が3列(個数は任意)に並んで取り付けられている。冷媒コイル10は、入口16から出口14まで全体として1本の流路を形成するように構成されている。但し、本発明では、前記構造に限定されず、伝熱フィン8に直管部10(A)の孔が水平方向に1、2、または4個以上ずつ並んで形成され、U字管部10(B)が1、2、または4列以上に並んで取り付けられていてもよいし、冷媒コイル10は、入口16から出口14まで全体として2本以上の流路を形成するように構成されていてもよい。
【0032】
蒸発器4に隣接して、送風ファン12が若干の距離を空けて平行に配置され、モーター46で回転されるようになっている。モーター46も制御装置24に接続され、プログラムで制御されるようになっている。また、これらの運転状況をモニタリングできるように制御装置24は図示しないコンピューターとの間で運転データの通信を行ってもよい。
【0033】
個々の伝熱フィン8の下端には、前記直管部のうち最も下に位置する最下直管部50から、さらに下方へ延長された解凍促進部9が形成されている。すなわち、この実施形態の冷却装置1では、伝熱フィン8が従来の冷却装置よりも下方へ延長されている。従来の同タイプの冷却装置においては、最下直管部の最下点から伝熱フィンの下端まではほぼ隣接しており、解凍促進部9に相当する部分は存在しない。
【0034】
解凍促進部9は、除霜運転時に、最下直管部50の外周面温度よりも、解凍促進部9の下端における表面温度が高くなる部位である。従来の同タイプの冷却装置においては、最下直管部の最下点から伝熱フィンの下端まではほぼ隣接しているから、両者には殆ど温度差が生じない。
【0035】
解凍促進部9の寸法は、本発明では限定されないが、下記のような範囲を満たすことが好ましい。
(a)解凍促進部9は、最下直管部50の最下点よりも、冷媒コイル10の上下に隣接する二本の直管部10(A)の間隔(上下方向の離間距離)の1倍以上の位置まで、下方へ延びていてもよい。上限は規定されないが、現実的には4倍以下が好ましい。前記のような長さの解凍促進部は、通常あり得ない。
【0036】
(b)解凍促進部9は、最下直管部50の最下点よりも、冷媒コイル10の直管部10(A)の外径の1倍以上の位置まで、下方へ延びていてもよい。上限は規定されないが、現実的には4倍以下が好ましい。前記のような長さの解凍促進部は、通常あり得ない。
【0037】
(c)解凍促進部9は、最下直管部50の最下点よりも、伝熱フィン8同士の平均間隙距離の0.5倍以上の位置まで延びていてもよい。上限は規定されないが、現実的には2倍以下が好ましい。前記のような長さの解凍促進部は、通常あり得ない。
前記(a)~(c)の3条件のうち2つまたは3つを同時に満たしていてもよい。そのような構成は通常あり得ない。
【0038】
前記構成からなる冷却装置1によれば、下記のように保冷運転と除霜運転を切り替えて行うことが可能である。
[保冷運転]
保冷運転時には、制御装置24により、膨張弁34および電磁弁30を開いた上で、ポンプ40を作動させ、レシーバー36に溜まっている液体冷媒を圧送する。
【0039】
ポンプ40で圧送された液体冷媒は、開いている膨張弁34を通じて所定の温度と圧力になって入口16から蒸発器4へ入り、蛇行形状の冷媒コイル10を流れて出口14から流出する。その間に、送風ファン12が蒸発器6に連続して通風することにより、空気が冷やされて冷蔵庫2の庫内へ広がり、庫内を所定温度に冷却する。
【0040】
冷媒コイル10を通過する冷媒は、空気により暖められて気化され、出口14から流出する。出口14から流出した直後の冷媒温度を圧力センサ22が測定するとともに、温度センサ26が温度を測定し、それぞれの出力信号を制御装置24に伝達する。制御装置24は庫内温度が所定範囲に収まるように、ポンプ40の吐出量や送風ファン12の総風量、または膨張弁34の開度を、プログラムに応じて制御する。出口14から流出した冷媒気体は、開いている電磁弁30を通過して冷媒配管20を通じて冷蔵庫2の外へ流れ、レシーバー36へ戻る。
【0041】
レシーバー36内の気体冷媒は配管37を通じて凝縮器35へ送られ、凝縮器35内の熱交換器において、図示しない冷熱源により冷却されて液化する。凝縮器35で液化された冷媒はレシーバー36へ戻り、液体冷媒として蓄えられる。レシーバー36に溜まった液体冷媒は、冷媒配管32を通じて再びポンプ40で圧送されて蒸発器4に循環される。これにより、冷蔵庫2の庫内温度を一定の範囲に保つ。
【0042】
[除霜運転への切り替え]
一定の保冷運転を行った後には、蒸発器4の伝熱フィン8や直管部10(A)、U字管部10(B)にも霜が付着するので、一定の時間経過する毎に除霜運転を行う。一定の時間は冷却装置1の容量などによって変わり、限定されない。また、一回の除霜運転時間は限定されないが、一般には30~60分程度である。保冷運転から除霜運転への切り替え時に、制御装置24はポンプ40を停止し、電磁弁30および膨張弁34を共に実質的に閉じる。電磁弁30および膨張弁34の閉止は急激であっても緩慢であってもよく、また、相互に若干のタイムラグがあってもよい。
【0043】
[除霜運転]
除霜運転時には、制御装置24により、膨張弁34および電磁弁30を共に実質的に閉鎖し、冷媒の循環を停止させる。実質的に閉鎖というのは、冷媒コイル10内に保持された冷媒の圧力が上がっても冷媒コイル10から冷媒が殆ど流出しないようにすることを意味し、圧力に影響を殆ど与えない程度の僅かの冷媒が通過することは問題ない。
【0044】
膨張弁34および電磁弁30を共に実質的に閉鎖することにより、冷媒コイル10内の冷媒が冷媒コイル10内にそのまま閉じ込められる。すると、連続運転している送風ファンにより熱交換器に通風しているため、冷媒コイル10内に冷媒が閉じ込められたまま、冷媒コイル10内の液体冷媒が蒸発していき、液体冷媒が全て気化した後、庫内の空気により暖められて蒸発器4が昇温していく。
【0045】
したがって、冷媒コイル10の両端を解放している場合と異なり、比較的に短時間で蒸発器4を0℃以上に昇温することができ、除霜効率を高めることができる。よって、冷媒として液化時に-5℃程度になる二酸化炭素を用いたチルド冷蔵庫用の冷却装置の場合や、急激に冷蔵庫冷却負荷が増大した場合にも、除霜不良による冷却能力低下を防ぐことができる。
【0046】
なお、この実施形態では、冷媒コイル10として小口径のものを採用することが好ましい。小口径とは、限定はされないが、例えば外径が6mm~13mm程度であってもよい。より好ましくは9mm~10mmである。この場合、蒸発器4の冷媒保有量が削減できるから、冷媒コイル10内の冷媒液を気化させるための蒸発潜熱にかかる熱量ロスをさらに低減させることができ、一層短時間で蒸発器4を0℃以上に昇温することができる。
【0047】
さらに、この実施形態では、直管部10(A)のうち最も下に位置する最下直管部50から下方へ延長された解凍促進部9が伝熱フィン8に形成されており、解凍促進部9の下端は冷媒コイル10から距離が離れているため、解凍促進部9は、除霜運転時に冷媒コイル10およびその内部に閉じ込められた冷媒の熱容量によって熱を奪われにくく、除霜運転時は伝熱フィン8の他の部分に比べて温度上昇が早くなる。このため、伝熱フィン8を伝わって解凍促進部9まで垂れてきた水分や霜が、解凍促進部9で再び凍り付くことがなく効率良く溶かされるため、前記冷媒閉じ込めの効果と相まって、蒸発器4からの除霜をより効果的に行うことが可能である。
【0048】
[第2実施形態]
前記第1実施形態では、制御装置24は電磁弁30および膨張弁34をほぼ同時に締めていたが、第2実施形態の制御装置は保冷運転から除霜運転への切り替え時に、電磁弁30を開いた状態で、膨張弁34を徐々にまたは段階的に閉じていき、蒸発器4の入口16へ注入する冷媒量を減らしていく。これにより、蒸発器4内の液体冷媒を必要最小限に減らして、除霜運転時に蒸発器4内の液体冷媒を気化させるための蒸発潜熱にかかる熱量ロスを低減させる。
【0049】
すなわち、第2実施形態では、まず、電磁弁30を開いた状態で、ポンプ40の吐出量を減少させつつもしくはポンプ40を停止し、膨張弁34を徐々にまたは段階的に閉じていき、殆ど気体の状態で冷媒が蒸発器4の入口16へ導入されるようにし、蒸発器4へ注入される冷媒量を減らしていく。蒸発器4の出口14の電磁弁30は開いているので、蒸発器4内の過剰の冷媒はレシーバー36へ流れる。
除霜運転時には、第1実施形態と同様に、制御装置24により膨張弁34および電磁弁30を共に実質的に閉鎖し、冷媒の循環を停止させる。後は、第1実施形態と同様の工程を行えばよい。
【0050】
このようにプログラムされた制御装置を有する第2実施形態によれば、蒸発器4内の液体冷媒を必要最小限に減らして、除霜運転時に蒸発器4内の液体冷媒を気化させるための蒸発潜熱にかかる熱量ロスを低減させることが可能である。
【0051】
[第3実施形態]
図5は第3実施形態を示し、この第3実施形態では、電磁弁30と並列に圧力調整弁28が設けられている。圧力調整弁28は制御装置24に接続されており、この実施形態の制御装置24は、除霜運転時に膨張弁34および電磁弁30をいずれも閉じて、冷媒コイル10内に冷媒を閉じ込めた状態で、冷媒の加温により冷媒コイル10の内部が所定の圧力に達した場合に圧力調整弁28を開く。これにより、圧力調整弁28は、冷媒コイル10内が所定の圧力で維持されるよう圧力を調整する役割を果たす。
【0052】
この第3実施形態によれば、除霜運転時に冷媒コイル10内が所定の圧力に達した場合に、過剰な圧力を逃しつつ、冷媒コイル10内の圧力が高い状態、すなわち比較的温度が高い状態を維持することができるため、蒸発器4の除霜を効果的に行いつつ、安全性を確保することが可能である。
【0053】
以上、本発明の実施形態を説明したが、本発明は前記実施形態のみに限定されるものではなく、請求項1に記載された範囲において構成を変更、追加、削除してよい。
例えば、蒸発器4に解凍促進部9を設けない構成としてもよく、その場合にも、冷媒コイル10内に冷媒を閉じ込めて、除霜運転の効率を高めることが可能である。
また、解凍促進部9に、何らかの補強材を入れて、伝熱フィン8の解凍促進部9を相互に固定してもよいし、補強材として送風ファン12からの空気の流路をコントロールするフィン構造を設けてもよい。
【実施例0054】
[実施例]
図1~
図3に示す実施形態の冷却装置を実際に作成し、冷媒として二酸化炭素を用いて、本発明の効果を実証した。
【0055】
保冷運転時間を4時間、除霜時間を30分間に設定し、保冷運転により伝熱フィン8の表面の着霜量が平均で0.5mmに達した際に、膨張弁34および電磁弁30を同時に閉めて除霜運転を行った。その後の冷媒コイル10内の圧力(クーラー内圧力:A)と、蒸発器4に通風される空気温度(クーラー吸込み空気温度:B)と、冷媒コイル10内の冷媒の飽和温度(クーラー内CO2飽和温度:C)の変化を測定した。
【0056】
結果を
図4のグラフに示す。クーラー吸込み空気温度(B)は除霜運転の間は常に+3℃前後に保たれていたが、除霜運転開始後25分でクーラー内CO
2飽和温度(C)が0℃から上昇し始めた。除霜運転開始後25分で同時にクーラー内圧力(A)も約2.6MPaから上昇を開始し、30分経過時には約3.5MPaに達した。除霜運転開始後25分で蒸発器4からほぼ完全に霜が落ち、除霜が完了したことを示していた。
【0057】
[比較例]
次に、除霜運転時に、膨張弁34および電磁弁30を閉めずに、他の条件は前記実施例1と同じにして比較実験を行った。その結果、除霜運転開始後25分を経過してもクーラー内CO2飽和温度が0℃を超えず、除霜運転開始後30分を経過してやっとクーラー内CO2飽和温度が0℃を超えた。
【0058】
上記実験により、実施例では、膨張弁34および電磁弁30を閉めて冷媒を冷媒コイル10に閉じ込めたことにより、比較例に比べて除霜に要する時間を5分間も短縮できることがわかった。
以上説明したように、本発明に係る冷却装置によれば、除霜運転時に膨張弁および電磁弁を共に実質的に閉鎖することにより、冷媒コイル内の冷媒を冷媒コイル内に閉じ込めるため、送風ファンにより蒸発器に通風すると、冷媒コイル内の冷媒が蒸発した後、蒸発器が昇温する。したがって、冷媒コイルを解放している場合と異なり、比較的に短時間で蒸発器を0℃以上に昇温することができ、除霜効率を高めることができる。したがって、冷媒として二酸化炭素を用いたチルド冷蔵庫用の冷却装置の場合や、急激に冷蔵庫冷却負荷が増大した場合にも、除霜不良による冷却能力低下を防ぐことができるという優れた効果を奏する。