(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023092384
(43)【公開日】2023-07-03
(54)【発明の名称】錠剤状の義歯洗浄剤
(51)【国際特許分類】
A61K 8/19 20060101AFI20230626BHJP
A61Q 11/02 20060101ALI20230626BHJP
A61K 8/31 20060101ALI20230626BHJP
A61K 8/46 20060101ALI20230626BHJP
A61K 8/36 20060101ALI20230626BHJP
A61K 8/362 20060101ALI20230626BHJP
A61K 8/368 20060101ALI20230626BHJP
A61K 8/365 20060101ALI20230626BHJP
A61K 8/55 20060101ALI20230626BHJP
【FI】
A61K8/19
A61Q11/02
A61K8/31
A61K8/46
A61K8/36
A61K8/362
A61K8/368
A61K8/365
A61K8/55
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021207596
(22)【出願日】2021-12-21
(71)【出願人】
【識別番号】000186588
【氏名又は名称】小林製薬株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100124431
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 順也
(74)【代理人】
【識別番号】100174160
【弁理士】
【氏名又は名称】水谷 馨也
(74)【代理人】
【識別番号】100175651
【弁理士】
【氏名又は名称】迫田 恭子
(72)【発明者】
【氏名】辻元 由起
(72)【発明者】
【氏名】吉田 圭佑
【テーマコード(参考)】
4C083
【Fターム(参考)】
4C083AB172
4C083AB282
4C083AB311
4C083AB312
4C083AB412
4C083AC031
4C083AC032
4C083AC132
4C083AC241
4C083AC242
4C083AC301
4C083AC302
4C083AC542
4C083AC781
4C083AC782
4C083AC791
4C083AC792
4C083AD042
4C083AD472
4C083BB01
4C083BB05
4C083BB42
4C083CC42
4C083DD15
(57)【要約】
【課題】本発明の目的は、炭酸化合物、酸、及び界面活性剤を含み、打錠成型時にスティッキングの発生を抑制できる錠剤状の義歯洗浄剤を提供することを提供することである。
【解決手段】(A)炭酸塩、炭酸水素塩、及び炭酸水素塩と炭酸塩の複塩よりなる群から選択される少なくとも1種の炭酸化合物、(B)酸、(C)界面活性剤、並びに(D)リモネンを含有する、錠剤状の義歯洗浄剤。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)炭酸塩、炭酸水素塩、及び炭酸水素塩と炭酸塩の複塩よりなる群から選択される少なくとも1種の炭酸化合物、(B)酸、(C)界面活性剤、並びに(D)リモネンを含有する、錠剤状の義歯洗浄剤。
【請求項2】
前記(C)界面活性剤が、陰イオン性界面活性剤である、請求項1に記載の錠剤状の義歯洗浄剤。
【請求項3】
前記(D)リモネンの含有量が0.001~5重量%である、請求項1又は2に記載の錠剤状の義歯洗浄剤。
【請求項4】
(A)炭酸塩、炭酸水素塩、及び炭酸水素塩と炭酸塩の複塩よりなる群から選択される少なくとも1種の炭酸化合物、(B)酸、(C)界面活性剤、並びに(D)リモネンを含有する原料混合物を打錠工程に供する、錠剤状の義歯洗浄剤の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、炭酸化合物、酸、及び界面活性剤を含み、打錠成型時にスティッキングの発生を抑制できる錠剤状の義歯洗浄剤に関する。
【背景技術】
【0002】
義歯は、総義歯、部分床義歯の別に関わらず、細菌、バイオフィルム、その他沈着物等が付着しやすく、洗浄せずに放置しておくと、口臭の原因になるだけでなく、歯周病等の口腔内疾患を誘発する一因になることがある。そのため、口腔ケアの一環として、義歯を洗浄し清潔に保つことが不可欠である。義歯に付着した細菌や汚れは、ブラシによる清掃では十分に除去できないため、義歯洗浄剤による洗浄が重要である。
【0003】
義歯洗浄剤による義歯の洗浄は、一般に、固体の義歯洗浄剤を水に投入して調製された義歯洗浄水に義歯を浸漬放置する方法で行われている。従来、一般的な義歯洗浄剤では、界面活性剤及び発泡剤(炭酸化合物と酸との組み合わせ)が配合された発泡性のものとして構成されており、水に投入した際に界面活性化作用による化学的洗浄力と発泡作用による物理的洗浄力を発揮させ、洗浄効果が高まるように設計されている。
【0004】
また、従来、義歯洗浄剤は、錠剤、顆粒剤、粉末剤等の様々な形態に製剤化して提供されているが、これらの製剤形態の中でも、錠剤は、取扱いが容易であり、消費者に広く受け入れられている。これまでに、錠剤状の義歯洗浄剤について、洗浄力の向上や崩壊性の向上を図るための製剤技術について種々報告されている(例えば、特許文献1及び2等参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特表2001-505195号公報
【特許文献2】特開2005-112640号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
錠剤の打錠成型において、錠剤中の成分同士の結合力が、錠剤中の成分と打錠成型時の杵又は臼との付着力よりも低くなると、スティッキング(杵や臼に原料の一部が付着し、錠剤の一部が剥がれる事象)が生じ易くなるため、錠剤の処方設計には、錠剤中の成分同士の結合力を高めることが重要になる。一方、錠剤状の義歯洗浄剤において、界面活性剤が含まれている場合には、成分同士の結合力が低下し易く、打錠成型時にスティッキングが生じ易いという欠点がある。
【0007】
そこで、本発明の目的は、炭酸化合物、酸、及び界面活性剤を含み、打錠成型時にスティッキングの発生を抑制できる錠剤状の義歯洗浄剤を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、前記課題を解決すべく鋭意検討を行ったところ、発泡剤(炭酸化合物と酸)及び界面活性剤と共に、リモネンを配合した錠剤状の義歯洗浄剤は、打錠成型時にスティッキングの発生を抑制できることを見出した。本発明は、かかる知見に基づいて、更に検討を重ねることにより完成したものである。
【0009】
即ち、本発明は、下記に掲げる態様の発明を提供する。
項1. (A)炭酸塩、炭酸水素塩、及び炭酸水素塩と炭酸塩の複塩よりなる群から選択される少なくとも1種の炭酸化合物、(B)酸、(C)界面活性剤、並びに(D)リモネンを含有する、錠剤状の義歯洗浄剤。
項2. 前記(C)界面活性剤が、陰イオン性界面活性剤である、項1に記載の錠剤状の義歯洗浄剤。
項3. 前記(D)リモネンの含有量が0.001~5重量%である、項1又は2に記載の錠剤状の義歯洗浄剤。
項4. (A)炭酸塩、炭酸水素塩、及び炭酸水素塩と炭酸塩の複塩よりなる群から選択される少なくとも1種の炭酸化合物、(B)酸、(C)界面活性剤、並びに(D)リモネンを含有する原料混合物を打錠工程に供する、錠剤状の義歯洗浄剤の製造方法。
【発明の効果】
【0010】
本発明の錠剤状の義歯洗浄剤によれば、炭酸化合物、酸、及び界面活性剤を含んでいながらも、打錠成型時にスティッキングを抑制することができるので、打錠成型工程における製造ロスを抑制でき、工業的製造において高い製造効率を実現できる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
1.義歯洗浄剤
本発明の義歯洗浄剤は、錠剤状であって、(A)炭酸塩、炭酸水素塩、及び炭酸水素塩と炭酸塩の複塩よりなる群から選択される少なくとも1種の炭酸化合物、(B)酸、(C)界面活性剤、並びに(D)リモネンを含有することを特徴とする。以下、本発明の義歯洗浄剤について詳述する。
【0012】
[(A)炭酸化合物]
本発明の義歯洗浄剤は、炭酸塩、炭酸水素塩、及び炭酸水素塩と炭酸塩の複塩よりなる群から選択される少なくとも1種の炭酸化合物を含有する。炭酸化合物は、発泡剤の構成成分となり、義歯の洗浄時に酸と反応して炭酸ガスを発生させる役割を果たす。
【0013】
本発明で使用される炭酸塩の種類については、特に制限されないが、例えば、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム等の炭酸のアルカリ金属塩が挙げられる。炭酸水素塩としては、特に制限されないが、例えば、炭酸水素ナトリウム(重曹)、炭酸水素カリウム等の炭酸水素のアルカリ金属塩が挙げられる。これらの中でも、好ましくは炭酸水素ナトリウムが挙げられる。炭酸塩と炭酸水素塩の複塩としては、特に制限されないが、例えば、セスキ炭酸ナトリウム等が挙げられる。
【0014】
これらの炭酸化合物は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0015】
これらの炭酸化合物の中でも、好ましくは炭酸ナトリウム及び炭酸水素ナトリウムが挙げられる。
【0016】
本発明の義歯洗浄剤における炭酸化合物の含有量については、義歯の洗浄時に発泡作用を発揮させ得ることを限度として特に制限されないが、例えば、炭酸化合物の総量で、5~60重量%、好ましくは10~50重量%、より好ましくは15~30重量%が挙げられる。
【0017】
[(B)酸]
本発明の義歯洗浄剤は、酸を含有する。酸は、発泡剤の構成成分となり、義歯の洗浄時に炭酸化合物と反応して炭酸ガスを発生させる役割を果たす。
【0018】
本発明で使用される酸は、常温で固体状のものが好適に使用される。また、酸は、有機酸又は無機酸のいずれであってもよい。
【0019】
有機酸の種類については、特に制限されないが、例えば、クエン酸、酒石酸、フマル酸、リンゴ酸、マレイン酸、グルコン酸、コハク酸、サリチル酸等が挙げられる。無機酸としては、特に制限されないが、例えば、リン酸、スルファミン酸等が挙げられる。
【0020】
これらの酸は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。これらの酸の中でも、好ましくは有機酸、より好ましくはクエン酸、及びリンゴ酸が挙げられる。
【0021】
本発明の義歯洗浄剤における炭酸塩と酸の比率については、水中で炭酸化合物と反応して二酸化炭素を発生できることを限度として特に制限されないが、例えば、炭酸化合物の総量100重量部当たり、酸が総量で、20~100重量部、好ましくは30~90重量部、より好ましくは40~60重量部が挙げられる。
【0022】
本発明の義歯洗浄剤における酸の含有量については、義歯の洗浄時に発泡作用を発揮させ得ることを限度として特に制限されないが、例えば、酸の総量で、1~30重量%、好ましくは2~25重量%、より好ましくは5~20重量%が挙げられる。
【0023】
[(C)界面活性剤]
本発明の義歯洗浄剤は、界面活性剤を含有する。界面活性剤は、化学的洗浄作用を発揮させる成分等としての役割を果たす。
【0024】
本発明の義歯洗浄剤に配合される界面活性剤の種類については、洗浄剤の成分として使用可能なものであることを限度として特に制限されず、陰イオン性界面活性剤、陽イオン性界面活性剤、非イオン性界面活性剤、及び両性界面活性剤のいずれを使用してもよい。これらの界面活性剤の中でも、好ましくは陰イオン性界面活性剤が挙げられる。
【0025】
陰イオン性界面活性剤としては、例えば、αオレフィンスルホン酸塩、アルキル硫酸塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルスルホ酢酸塩、アルカンスルホン酸塩等が挙げられる。αオレフィンスルホン酸塩としては、具体的には、1分子中に平均8~22の炭素原子、好ましくは平均10~20の炭素原子、より好ましくは平均12~18の炭素原子、更に好ましくは平均14~16の炭素原子を有するαオレフィンスルホン酸塩が挙げられる。アルキル硫酸塩としては、平均炭素数8~20、好ましくは平均炭素数8~16のアルキル基を有するアルキル硫酸塩が挙げられる。アルキルベンゼンスルホン酸塩としては、具体的には、平均炭素数8~16のアルキル基を有する直鎖または分岐鎖アルキルベンゼンスルホン酸塩が挙げられる。アルキルスルホ酢酸塩としては、具体的には、1分子中に平均8~20の炭素原子を有するアルカンスルホン酸塩が挙げられる。アルカンスルホン酸塩としては、具体的には、1分子中に平均8~20の炭素原子を有するアルカンスルホン酸塩が挙げられる。これらの陰イオン性界面活性剤の塩の形態としては、ナトリウムやカリウム等のアルカリ金属塩、マグネシウムやカルシウム等のアルカリ土類金属塩、アンモニウム塩、アミン塩、及び塩酸塩等の酸付加塩等が挙げられる。これらの陰イオン性界面活性剤の中でも、好ましくはαオレフィンスルホン酸塩、及びアルキル硫酸塩が挙げられる。
【0026】
本発明の義歯洗浄剤において、1種の界面活性剤を単独で配合してもよく、また2種以上の界面活性剤を組み合わせて配合してもよい。
【0027】
本発明の義歯洗浄剤における界面活性剤の含有量については、義歯の洗浄時に発泡作用を発揮させ得ることを限度として特に制限されず、使用する界面活性剤の種類、備えさせるべき洗浄力等に応じて適宜設定すればよいが、例えば、界面活性剤の総量で0.1~10重量%、好ましくは0.5~7重量%、より好ましくは1~5重量%が挙げられる。
【0028】
[(D)リモネン]
本発明の義歯洗浄剤は、リモネンを含有する。炭酸化合物、酸、及び界面活性剤を含む錠剤状の義歯洗浄剤は、界面活性剤の作用により打錠成型時にスティッキングが生じ易いという欠点があるが、本発明の義歯洗浄剤では、リモネンを含有させることによって前記欠点を克服し、打錠成型時のスティッキングの発生を抑制することができる。
【0029】
リモネンとは、単環式のモノテルペンであり、香料として公知の成分である。本発明では、リモネンとして、リモネンを含む精油を使用してもよい。リモネンを含む精油としては、具体的には、レモン油、オレンジ油、グレープフルーツ油等が挙げられる。
【0030】
本発明の義歯洗浄剤におけるリモネンの含有量としては、例えば0.001~5重量%、好ましくは0.01~3重量%が挙げられる。打錠成型時のスティッキングの発生をより一層効果的に抑制するという観点から、本発明の義歯洗浄剤におけるリモネンの含有量として、より好ましくは0.005~2重量%が挙げられる。なお、本明細書におけるリモネンの含有量に関する記載は、リモネンを含む精油を使用する場合は、当該精油に含まれるリモネン量に換算した値である。
【0031】
また、本発明の義歯洗浄剤において、界面活性剤とリモネンの比率については、前述する各含有量を満たす範囲であればよいが、例えば、界面活性剤の総量100重量部当たり、リモネンが0.01~100重量部、好ましくは0.3~75重量部が挙げられる。錠成型時のスティッキングの発生をより一層効果的に抑制するという観点から、より好ましくは、界面活性剤の総量100重量部当たり、リモネンが1.5~50重量部が挙げられる。なお、本明細書におけるリモネンの比率に関する記載は、リモネンを含む精油を使用する場合は、当該精油に含まれるリモネン量に換算した値である。
【0032】
[多孔質材料]
本発明の義歯洗浄剤は、リモネンを担持させるために、多孔質材料が含まれていてもよい。多孔質材料としてはリモネンを含浸して担持できるものであればよいが、好適な一例としてケイ酸塩が挙げられる。ケイ酸塩としては、具体的には、二酸化ケイ素、シリカアルミナ、ゼオライト、ケイ酸カルシウム、アロフェン、バーミキュライト、パーライト、シラスバルーン、セピオライト、カオリン、スノーテック、ベントナイト等が挙げられる。これらのケイ酸塩の中でも、好ましくは、二酸化ケイ素が挙げられる。これらのケイ酸塩が1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0033】
本発明の義歯洗浄剤に多孔質材料を含有させる場合、その含有量については、担持させるリモネンの量等に応じて適宜設定すればよいが、例えば0.001~5重量%、好ましくは0.01~3重量%、より好ましくは0.005~2重量%が挙げられる。
【0034】
[その他の成分]
本発明の義歯洗浄剤には、必要に応じて前記成分以外の添加剤を含んでよい。本発明の義歯洗浄剤に配合可能な添加剤としては、漂白剤、リモネン以外の香料、結合剤、消臭剤、防錆剤、キレート剤、pH調整剤、酵素、甘味料、発泡安定化剤、保存剤、抗菌・殺菌剤、防腐剤、滑沢剤、増量剤、賦形剤、崩壊剤、流動化剤、色素等が挙げられる。これらの成分は、1種単独で配合してもよく、2種以上を任意に組み合わせて配合してもよい。
【0035】
[製剤形態]
本発明の義歯洗浄剤は、錠剤状である。錠剤状への製剤化は、一般的に採用されている打錠成型法によって行うことができる。例えば、炭酸化合物、酸、界面活性剤、リモネン、及び必要に応じて配合される他の添加剤を混合した原料混合物を、打錠工程に供すればよい。また、本発明の義歯洗浄剤に多孔質材料を含有させる場合には、リモネン及び必要に応じて配合される他の香料を多孔質材料に含浸させて担持させた後に、他の成分と混合して原料混合物を調製することが望ましい。また、打錠工程に先立って、前記混合物を必要に応じて顆粒状に造粒しておいてもよい。
【0036】
また、本発明の義歯洗浄剤において、1錠当たりの重量については、特に制限されず、使用簡便性を踏まえて適宜設定すればよいが、錠剤1個当たりの重量を1回の義歯洗浄に必要な量に設定しておくことが望ましい。具体的には、本発明の義歯洗浄剤1錠当たりの重量として、1~4g、好ましくは2~3gが挙げられる。
【0037】
[使用方法]
本発明の義歯洗浄剤は、水に投入し、これに洗浄対象となる義歯を入れると、炭酸化合物と酸が反応することによる発泡作用と界面活性剤による化学的洗浄作用は発揮され、義歯が洗浄される。
【0038】
本発明の義歯洗浄剤を用いて義歯を洗浄する際に使用される水としては、特に制限されないが、水道水、精製水、蒸留水、生理食塩水等が挙げられる。
【0039】
本発明の義歯洗浄剤を用いて義歯を洗浄する際には、水に義歯を浸漬した後に本発明の義歯洗浄剤を加えてもよく、また水に本発明の義歯洗浄剤を加えた後に義歯を浸漬させてもよい。
【0040】
また、義歯の洗浄において、本発明の義歯洗浄剤と水との比率は、本発明の義歯洗浄剤の組成、洗浄対象となる義歯の汚れの程度等に応じて適宜設定されるが、例えば、水100重量部に対して、義歯洗浄剤を通常1~10重量部程度、好ましくは1~5重量部程度とすればよい。より具体的には、1回の義歯の洗浄において、水100~200mLを準備し、これに本発明の義歯洗浄剤1~20g、好ましくは1~10g、より好ましくは1~5gを加えればよい。
【0041】
義歯洗浄時の水温は5~40℃程度とすればよい。また、本発明の義歯洗浄剤を加えた水に義歯を浸漬する時間は、通常5分~12時間程度、好ましくは30分~8時間程度が挙げられる。
【0042】
また、義歯の洗浄中に、義歯洗浄剤を添加した水を攪拌等する必要はないが、必要に応じて攪拌してもよく、またブラシ等の洗浄具で義歯を擦り洗いしてもよい。義歯の洗浄後には、流水で濯ぎ、必要に応じて指等で擦ることにより、義歯に付着している義歯洗浄剤の成分を洗い流せばよい。
【0043】
2.義歯洗浄方法
本発明の義歯洗浄方法は、前記義歯洗浄剤を用いて義歯を洗浄する方法である。即ち、本発明の義歯洗浄方法は、前記義歯洗浄剤を入れた水に、義歯を浸漬して義歯を洗浄する方法である。本発明の義歯洗浄方法の具体的実施態様については、前記「1.義歯洗浄剤」の欄に記載の通りである。
【0044】
3.スティッキング抑制方法
本発明のスティッキング抑制方法は、(A)炭酸化合物、(B)酸、及び(C)界面活性剤を含む錠剤状の義歯洗浄剤のスティッキングを抑制する方法であって、(A)炭酸化合物、(B)酸、(C)界面活性剤、及び(D)リモネンを含む原料混合物を打錠成型に供する方法である。本発明のスティッキング抑制方法の具体的実施態様については、前記「1.義歯洗浄剤」の欄に記載の通りである。
【実施例0045】
以下、本発明を実施例等により具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0046】
試験例
表1~4に示す組成の原料混合物を、径25φの金型と打錠装置(型番:CLEC1518SS7JY、メーカー:菊水製作所)を用いて、予圧2.5t時及び本圧6.5tの条件で打錠成型し、錠剤状の義歯洗浄剤(1錠当たり2.65g)を調製した。なお、原料混合物の調製に際し、香料(リモネン、アネトール、シトラール、香料A、香料B)を二酸化ケイ素に含浸させた状態にして、他の成分と混合した。得られた各錠剤を観察し、以下の判定基準に従って、スティッキング抑制効果を評価した。
<スティッキング抑制効果>
◎:錠剤108個中、スティッキングが生じている錠剤は0個である。
〇:錠剤108個中、スティッキングが生じている錠剤は1個以上3個以下である。
△:錠剤108個中、スティッキングが生じている錠剤は4個以上10個以下である。
×:錠剤108個中、スティッキングが生じている錠剤は11個以上である。
【0047】
結果を表1~4に示す。炭酸水素ナトリウム及び無水クエン酸を含む錠剤状の義歯洗浄剤において、αオレフィンスルホン酸ナトリウムを配合しない場合にはスティッキングの発生を抑制できていた(参考例1及び2)。一方、炭酸水素ナトリウム及び無水クエン酸を含む錠剤状の義歯洗浄剤において、αオレフィンスルホン酸ナトリウムを配合し、且つリモネンを配合しなかった場合には、スティッキングの発生が認められた(比較例1~11)。これに対して、炭酸水素ナトリウム及び無水クエン酸を含む錠剤状の義歯洗浄剤において、αオレフィンスルホン酸ナトリウムを配合し、且つリモネンを配合した場合には、スティッキングの発生を抑制できていた(実施例1~14)。特に、リモネンの含有量が0.05重量%以上である場合には、スティッキング抑制効果が顕著に認められた(実施例3~7及び10~14)。
【0048】
また、比較例1~11及び実施例1~14において、界面活性剤(αオレフィンスルホン酸ナトリウム3重量%及びラウリル硫酸ナトリウム1重量%)をαオレフィンスルホン酸ナトリウム4重量%単独に変更しても、前記と同様の結果であった。更に、比較例1~11及び実施例1~14において、界面活性剤(αオレフィンスルホン酸ナトリウム3重量%及びラウリル硫酸ナトリウム1重量%)をラウリル硫酸ナトリウム4重量%単独に変更しても、前記と同様の結果であった。
【0049】
【0050】
【0051】
【0052】
【0053】
処方例
表5に示す組成の原料混合物を、径25φの金型と打錠装置(型番:CLEC1518SS7JY、メーカー:菊水製作所)を用いて、予圧2.5t時及び本圧6.5tの条件で打錠成型し、錠剤状の義歯洗浄剤(1錠当たり2.65g)を調製した。なお、原料混合物の調製に際し、香料(リモネン、香料A、香料B)を二酸化ケイ素に含浸させた状態にして、他の成分と混合した。得られた錠剤状の義歯洗浄剤を観察したとこと、いずれも、スティッキングの発生を抑制できていた。
【0054】