(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023092385
(43)【公開日】2023-07-03
(54)【発明の名称】義歯洗浄剤
(51)【国際特許分類】
A61K 8/46 20060101AFI20230626BHJP
A61Q 11/02 20060101ALI20230626BHJP
A61K 8/19 20060101ALI20230626BHJP
【FI】
A61K8/46
A61Q11/02
A61K8/19
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021207597
(22)【出願日】2021-12-21
(71)【出願人】
【識別番号】000186588
【氏名又は名称】小林製薬株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100124431
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 順也
(74)【代理人】
【識別番号】100174160
【弁理士】
【氏名又は名称】水谷 馨也
(74)【代理人】
【識別番号】100175651
【弁理士】
【氏名又は名称】迫田 恭子
(72)【発明者】
【氏名】辻元 由起
(72)【発明者】
【氏名】吉田 圭佑
【テーマコード(参考)】
4C083
【Fターム(参考)】
4C083AB172
4C083AB282
4C083AB311
4C083AB352
4C083AB412
4C083AC132
4C083AC242
4C083AC302
4C083AC532
4C083AC782
4C083AC791
4C083AC792
4C083AD042
4C083AD472
4C083BB05
4C083BB42
4C083BB60
4C083CC42
4C083DD15
4C083EE33
4C083EE34
(57)【要約】
【課題】本発明の目的は、陰イオン性界面活性剤及び炭酸化合物を含み、洗浄後の義歯表面に生じるヌメリを抑制し、更に洗浄後に水で濯ぐ際にヌメリを除去し易い義歯洗浄剤を提供することを提供することである。
【解決手段】(A)陰イオン性界面活性剤、(B)炭酸塩、炭酸水素塩、及び炭酸水素塩と炭酸塩の複塩よりなる群から選択される少なくとも1種の炭酸化合物、並びに(C)アルカノイルオキシベンゼンスルホン酸及び/又はその塩を含有する、義歯洗浄剤。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)陰イオン性界面活性剤、(B)炭酸塩、炭酸水素塩、及び炭酸水素塩と炭酸塩の複塩よりなる群から選択される少なくとも1種の炭酸化合物、並びに(C)アルカノイルオキシベンゼンスルホン酸及び/又はその塩を含有する、義歯洗浄剤。
【請求項2】
前記(C)アルカノイルオキシベンゼンスルホン酸及び/又はその塩のアルカノイルオキシ基の炭素数が8~14である、請求項1に記載の義歯洗浄剤。
【請求項3】
前記(A)陰イオン性界面活性剤が、αオレフィンスルホン酸塩及び/又はアルキル硫酸塩である、請求項1又は2に記載の義歯洗浄剤。
【請求項4】
更に(D)酸を含有する、請求項1~3のいずれかに記載の義歯洗浄剤。
【請求項5】
更に(E)漂白剤を含有する、請求項1~4のいずれかに記載の義歯洗浄剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、陰イオン性界面活性剤及び炭酸化合物を含む義歯洗浄剤であって、洗浄後の義歯表面に生じるヌメリを抑制し、更に洗浄後に水で濯ぐ際にヌメリを除去し易い義歯洗浄剤に関する。
【背景技術】
【0002】
義歯は、総義歯、部分床義歯の別に関わらず、細菌、バイオフィルム、その他沈着物等が付着しやすく、洗浄せずに放置しておくと、口臭の原因になるだけでなく、歯周病等の口腔内疾患を誘発する一因になることがある。そのため、口腔ケアの一環として、義歯を洗浄し清潔に保つことが不可欠である。義歯に付着した細菌や汚れは、ブラシによる清掃では十分に除去できないため、義歯洗浄剤による洗浄が重要である。
【0003】
義歯洗浄剤による義歯の洗浄は、一般に、固体の義歯洗浄剤を水に投入して調製された義歯洗浄水に義歯を浸漬放置する方法で行われている。従来、義歯洗浄剤には界面活性剤及び発泡剤(炭酸化合物と酸との組み合わせ)が配合された発泡性のものとして構成されており、水に投入した際に界面活性化作用による化学的洗浄力と発泡作用による物理的洗浄力を発揮させ、洗浄効果が高まるように設計されている。
【0004】
また、陰イオン性界面活性剤は、分散性、泡立ち等が優れており、義歯洗浄剤に配合する界面活性剤として汎用されており、従来、陰イオン性界面活性剤を含む義歯洗浄剤の処方について種々提案されている。例えば、特許文献1には、陰イオン性界面活性剤及びハイドロトロープ剤を含む義歯洗浄剤組成物は、使用時に泡状で義歯表面に適用することができ、更に義歯表面に付着した汚れに対して高い浸透洗浄効果を与え得ることが記載されている。また、特許文献2には、発泡剤、アニオン界面活性剤、メントール、及びシリカを含有し、25℃の水150mlに当該義歯洗浄剤2.65gを溶解させた際のpHが8~11である義歯洗浄剤は、使用時に水の上面で気泡が集積された状態になるのを抑制できることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2021-91621号公報
【特許文献2】特開2014-172895号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
義歯洗浄剤に含まれる陰イオン性界面活性剤は、洗浄後の義歯表面に付着してヌメリ(陰イオン性界面活性剤に起因するぬるぬるした感触)を生じさせる要因になっている。また、義歯洗浄剤を投入した水は、発泡剤の一成分として含まれる炭酸化合物によって中性~弱アルカリ性になるが、このようなpH領域では、洗浄後の義歯表面にヌメリが生じ易くなる。このように、陰イオン性界面活性剤及び炭酸化合物を含む義歯洗浄剤では、汚れが除去された義歯表面に義歯洗浄剤中の成分が付着してヌメリを生じさせるという特有の問題点がある。また、義歯洗浄剤で義歯を洗浄した後に、義歯表面に生じたヌメリは水で濯ぐことによって除去できるが、使用者の利便性を高める上で、濯ぐ際にヌメリを除去し易くすることが重要である。
【0007】
そこで、本発明の目的は、陰イオン性界面活性剤及び炭酸化合物を含み、洗浄後の義歯表面に生じるヌメリを抑制し、更に洗浄後に水で濯ぐ際にヌメリを除去し易い義歯洗浄剤を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、前記課題を解決すべく鋭意検討を行ったところ、陰イオン性界面活性剤及び炭酸化合物と共に、アルカノイルオキシベンゼンスルホン酸及び/又はその塩を配合した義歯洗浄剤は、洗浄後の義歯表面に生じるヌメリを抑制でき、しかも洗浄後に水で濯ぐ際にヌメリが除去し易くなることを見出した。本発明は、かかる知見に基づいて、更に検討を重ねることにより完成したものである。
【0009】
即ち、本発明は、下記に掲げる態様の発明を提供する。
項1. (A)陰イオン性界面活性剤、(B)炭酸塩、炭酸水素塩、及び炭酸水素塩と炭酸塩の複塩よりなる群から選択される少なくとも1種の炭酸化合物、並びに(C)アルカノイルオキシベンゼンスルホン酸及び/又はその塩を含有する、義歯洗浄剤。
項2. 前記(C)アルカノイルオキシベンゼンスルホン酸及び/又はその塩のアルカノイルオキシ基の炭素数が8~14である、項1に記載の義歯洗浄剤。
項3. 前記(A)陰イオン性界面活性剤が、αオレフィンスルホン酸塩及び/又はアルキル硫酸塩である、項1又は2に記載の義歯洗浄剤。
項4. 更に(D)酸を含有する、項1~3のいずれかに記載の義歯洗浄剤。
項5. 更に(E)漂白剤を含有する、項1~4のいずれかに記載の義歯洗浄剤。
【発明の効果】
【0010】
本発明の義歯洗浄剤は、陰イオン性界面活性剤及び炭酸化合物を含んでいながらも、洗浄後の義歯表面に生じるヌメリを抑制し、更に洗浄後に水で濯ぐ際のヌメリの除去性を高めることができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
1.義歯洗浄剤
本発明の義歯洗浄剤は、(A)陰イオン性界面活性剤、(B)炭酸塩、炭酸水素塩、及び炭酸水素塩と炭酸塩の複塩よりなる群から選択される少なくとも1種の炭酸化合物、並びに(C)アルカノイルオキシベンゼンスルホン酸及び/又はその塩を含有することを特徴とする。以下、本発明の義歯洗浄剤について詳述する。
【0012】
なお、本発明において、「ヌメリ」とは、義歯洗浄剤に含まれる成分に起因して義歯洗浄後に生じるヌメリ(ぬるぬるした感触)であり、義歯に付着した汚れに起因するヌメリとは異なるものである。
【0013】
[(A)陰イオン性界面活性剤]
本発明の義歯洗浄剤は、陰イオン性界面活性剤を含有する。陰イオン性界面活性剤は、化学的洗浄作用を発揮させる成分等としての役割を果たす。
【0014】
本発明で使用される陰イオン性界面活性剤の種類については、特に制限されないが、例えば、αオレフィンスルホン酸塩、アルキル硫酸塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルスルホ酢酸塩、アルカンスルホン酸塩等が挙げられる。αオレフィンスルホン酸塩としては、具体的には、1分子中に平均8~22の炭素原子、好ましくは平均10~20の炭素原子、より好ましくは平均12~18の炭素原子、更に好ましくは平均14~16の炭素原子を有するαオレフィンスルホン酸塩が挙げられる。アルキルベンゼンスルホン酸塩としては、具体的には、平均炭素数8~16のアルキル基を有する直鎖または分岐鎖アルキルベンゼンスルホン酸塩が挙げられる。アルキルスルホ酢酸塩としては、具体的には、1分子中に平均8~20の炭素原子を有するアルカンスルホン酸塩が挙げられる。アルカンスルホン酸塩としては、具体的には、1分子中に平均8~20の炭素原子を有するアルカンスルホン酸塩が挙げられる。これらの陰イオン性界面活性剤の塩の形態としては、ナトリウムやカリウム等のアルカリ金属塩、マグネシウムやカルシウム等のアルカリ土類金属塩、アンモニウム塩、アミン塩、及び塩酸塩等の酸付加塩等が挙げられる。これらの陰イオン性界面活性剤の中でも、好ましくはαオレフィンスルホン酸塩、及びアルキル硫酸塩が挙げられる。
【0015】
これらの陰イオン性界面活性剤を単独で配合してもよく、また2種以上の界面活性剤を組み合わせて配合してもよい。
【0016】
本発明の義歯洗浄剤で使用される陰イオン性界面活性剤の一態様として、αオレフィンスルホン酸塩とアルキル硫酸塩との組み合わせが挙げられる。αオレフィンスルホン酸塩とアルキル硫酸塩とを組み合わせて使用する場合、これらの比率については、特に制限されないが、例えば、αオレフィンスルホン酸塩100重量部当たり、アルキル硫酸塩が1~10000重量部、好ましくは10~1000重量部、より好ましくは30~500重量部が挙げられる。
【0017】
本発明の義歯洗浄剤における陰イオン性界面活性剤の含有量については、義歯の洗浄時に発泡作用を発揮させ得ることを限度として特に制限されず、使用する陰イオン性界面活性剤の種類、備えさせるべき洗浄力等に応じて適宜設定すればよいが、例えば、界面活性剤の総量で0.1~10重量%、好ましくは0.5~7重量%、より好ましくは1~5重量%が挙げられる。
【0018】
[(B)炭酸化合物]
本発明の義歯洗浄剤は、炭酸塩、炭酸水素塩、及び炭酸水素塩と炭酸塩の複塩よりなる群から選択される少なくとも1種の炭酸化合物を含有する。炭酸化合物は、使用時に水に投入された際にpHを調整したり、更に酸が含まれる場合には使用時に酸と反応して炭酸ガスを発生させたりする役割を果たす。
【0019】
本発明で使用される炭酸塩の種類については、特に制限されないが、例えば、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム等の炭酸のアルカリ金属塩が挙げられる。炭酸水素塩としては、特に制限されないが、例えば、炭酸水素ナトリウム(重曹)、炭酸水素カリウム等の炭酸水素のアルカリ金属塩が挙げられる。これらの中でも、好ましくは炭酸水素ナトリウムが挙げられる。炭酸塩と炭酸水素塩の複塩としては、特に制限されないが、例えば、セスキ炭酸ナトリウム等が挙げられる。
【0020】
これらの炭酸化合物は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0021】
これらの炭酸化合物の中でも、好ましくは炭酸ナトリウム及び炭酸水素ナトリウムが挙げられる。
【0022】
本発明の義歯洗浄剤における炭酸化合物の含有量については、特に制限されないが、例えば、炭酸化合物の総量で、5~60重量%、好ましくは10~50重量%、より好ましくは15~45重量%が挙げられる。
【0023】
[(C)アルカノイルオキシベンゼンスルホン酸及び/又はその塩]
本発明の義歯洗浄剤は、アルカノイルオキシベンゼンスルホン酸及び/又はその塩を含有する。従来技術では、陰イオン性界面活性剤及び炭酸化合物を含む義歯洗浄剤は、洗浄後の義歯表面にヌメリが生じ、更に洗浄後に水で濯ぐ際にヌメリを除去し難いという欠点があるが、本発明の義歯洗浄剤では、アルカノイルオキシベンゼンスルホン酸及び/又はその塩を含有させることによって前記欠点を克服し、洗浄後の義歯表面に生じるヌメリを抑制でき、しかも洗浄後に水で濯ぐ際にヌメリを除去し易くすることができる。
【0024】
アルカノイルオキシベンゼンスルホン酸とは、ベンゼンスルホン酸のベンゼン環にアルカノイルオキシ基が結合している化合物である。
【0025】
アルカノイルオキシベンゼンスルホン酸においてアルカノイルオキシ基の炭素数については、特に制限されないが、例えば、6~18、好ましくは8~14が挙げられる。また、当該アルカノイルオキシ基は、直鎖状又は分岐状のいずれであってもよい。当該アルカノイルオキシ基が分岐状である場合、エステル結合を形成する炭素原子のα位又はβ位、好ましくはα位に側鎖を有していることが好ましい。分岐状のアルカノイルオキシ基の一例として、2-エチルヘキサノイル基が挙げられる。
【0026】
また、アルカノイルオキシベンゼンスルホン酸において、アルカノイルオキシ基が結合している部位は、ベンゼンスルホン酸のオルト位、メタ位、又はパラ位のいずであってもよいが、好ましくはパラ位が挙げられる。
【0027】
アルカノイルオキシベンゼンスルホン酸の塩の種類については、特に制限されないが、例えば、ナトリウムやカリウム等のアルカリ金属塩、マグネシウムやカルシウム等のアルカリ土類金属塩等が挙げられる。これらの塩の中でも、好ましくはアルカリ金属塩、より好ましくはナトリウム塩が挙げられる。
【0028】
本発明の義歯洗浄剤において、アルカノイルオキシベンゼンスルホン酸及びその塩の中から、1種の構造のもの選択して単独で使用してもよく、また2種以上の構造のものを組み合わせて使用してもよい。
【0029】
本発明の義歯洗浄剤におけるアルカノイルオキシベンゼンスルホン酸及び/又はその塩の含有量としては、例えば、これらの総量で0.05~7重量%、好ましくは0.1~5重量%、より好ましくは0.5~2重量%が挙げられる。
【0030】
また、本発明の義歯洗浄剤において、陰イオン性界面活性剤とアルカノイルオキシベンゼンスルホン酸及び/又はその塩の比率については、前述する各含有量を満たす範囲であればよいが、例えば、陰イオン性界面活性剤の総量100重量部当たり、アルカノイルオキシベンゼンスルホン酸及び/又はその塩が総量で0.1~5000重量部、好ましくは1~500重量部、より好ましくは10~75重量部が挙げられる。
【0031】
[(D)酸]
本発明の義歯洗浄剤には、更に酸が含まれていることが好ましい。酸が含まれている場合には、使用時に水に投入された際に、前記炭酸化合物と反応して発泡し、発泡作用による物理的洗浄力を発揮させることが可能になる。
【0032】
本発明で使用される酸は、常温で固体状のものが好適に使用される。また、酸は、有機酸又は無機酸のいずれであってもよい。
【0033】
有機酸の種類については、特に制限されないが、例えば、クエン酸、酒石酸、フマル酸、リンゴ酸、マレイン酸、グルコン酸、コハク酸、サリチル酸等が挙げられる。無機酸としては、特に制限されないが、例えば、リン酸、スルファミン酸等が挙げられる。
【0034】
これらの酸は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。これらの酸の中でも、好ましくは有機酸、より好ましくはクエン酸、及びリンゴ酸が挙げられる。
【0035】
本発明の義歯洗浄剤に酸を含有させる場合、炭酸塩と酸の比率については、水中で炭酸化合物と反応して二酸化炭素を発生できる範囲に適宜設定すればよいが、例えば、炭酸化合物の総量100重量部当たり、酸が総量で、10~100重量部、好ましくは20~90重量部、より好ましくは30~70重量部が挙げられる。
【0036】
本発明の義歯洗浄剤に酸を含有させる場合、その含有量としては、例えば、酸の総量で、1~30重量%、好ましくは2~25重量%、より好ましくは5~20重量%が挙げられる。
【0037】
[(E)漂白剤]
本発明の義歯洗浄剤は、必要に応じて、漂白剤を含んでいてもよい。本発明の義歯洗浄剤において、漂白剤を含有している場合には、漂白作用を付与し、洗浄力を向上させることが可能になる。
【0038】
本発明で使用される漂白剤の種類については、無毒性で生理学上許容されるものであれば特に制限されず、義歯洗浄剤で通常使用されるものを広く用いることができる。
【0039】
漂白剤としては、例えば、モノ過硫酸水素塩、過ホウ酸塩、過硫酸塩、過炭酸塩等が挙げられる。
【0040】
モノ過硫酸水素塩としては、具体的には、モノ過硫酸水素ナトリウム、モノ過硫酸水素カリウム(ビス(ペルオキシ一硫酸)・ビス(硫酸)・五カリウム等)等のモノ過硫酸水素のアルカリ金属塩、モノ過硫酸水素アンモニウム、これらの水和物等が挙げられる。過ホウ酸塩としては、具体的には、過ホウ酸ナトリウム、過ホウ酸カリウム等の過ホウ酸のアルカリ金属塩、過ホウ酸アンモニウム、これらの水和物等が挙げられる。過硫酸塩としては、具体的には、過硫酸ナトリウム、過硫酸カリウム等の過硫酸のアルカリ金属塩、過硫酸アンモニウム、これらの水和物等が挙げられる。過炭酸塩としては、具体的には、過炭酸ナトリウム、過炭酸カリウム等の過炭酸のアルカリ金属塩、過炭酸アンモニウム、これらの水和物等が挙げられる。
【0041】
これらの漂白剤は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0042】
これらの漂白剤の中でも、好ましくはモノ過硫酸水素塩、過ホウ酸塩、より好ましくはモノ過硫酸水素のアルカリ金属塩、及び過ホウ酸のアルカリ金属塩、更に好ましくはモノ過硫酸水素カリウム、及び過ホウ酸ナトリウムが挙げられる。
【0043】
本発明の義歯洗浄剤に漂白剤を配合する場合、その含有量については、所望の漂白作用を発揮できる範囲で適宜設定すればよいが、例えば、漂白剤の総量で、1~40重量%、好ましくは5~35重量%、より好ましくは10~30重量%が挙げられる。
【0044】
[その他の成分]
本発明の義歯洗浄剤には、必要に応じて前記成分以外の添加剤を含んでよい。本発明の義歯洗浄剤に配合可能な添加剤としては、陰イオン性界面活性剤以外の界面活性剤、香料、結合剤、消臭剤、防錆剤、キレート剤、pH調整剤、酵素、甘味料、発泡安定化剤、保存剤、抗菌・殺菌剤、防腐剤、滑沢剤、増量剤、賦形剤、崩壊剤、流動化剤、色素等が挙げられる。これらの成分は、1種単独で配合してもよく、2種以上を任意に組み合わせて配合してもよい。
【0045】
[pH特性]
本発明の義歯洗浄剤を水に投入した際に示すpHについては、特に制限されないが、例えば、本発明の義歯洗浄剤2.65gを25℃の水150mlに投入した際のpHが7.0~8.5、好ましくは7.5~8.0が挙げられる。従来の義歯洗浄剤では、陰イオン性界面活性剤及び炭酸化合物を含む場合、水に投入して前記pH範囲になると、洗浄後の義歯表面でヌメリの発生がより顕著になる傾向を示すが、本発明の義歯洗浄剤では、アルカノイルオキシベンゼンスルホン酸及び/又はその塩を含むことにより、前記pH範囲であっても、洗浄後の義歯表面に発生するヌメリを効果的に抑制することができる。
【0046】
本発明の義歯洗浄剤に前記pH特性を充足させるには、配合する炭酸化合物の種類や量、必要に応じて配合される酸の種類や量、その他pHに影響する成分の量等を適宜調整すればよい。
【0047】
[製剤形態]
本発明の義歯洗浄剤は、錠剤、粒剤、顆粒剤等の固形状であればよいが、好ましくは錠剤が挙げられる。本発明の義歯洗浄剤の製剤形態を錠剤にする場合、1錠当たりの重量については、特に制限されず、使用簡便性を踏まえて適宜設定すればよいが、錠剤1個当たりの重量を1回の義歯洗浄に必要な量に設定しておくことが望ましく、具体的には、義歯洗浄剤1錠当たりの重量として、1~4g、好ましくは2~3gが挙げられる。
【0048】
[使用方法]
本発明の義歯洗浄剤は、水に投入し、これに洗浄対象となる義歯を入れると、本発明の義歯洗浄剤が溶解して義歯が洗浄される。本発明の義歯洗浄剤に酸が含まれる場合には、炭酸化合物と酸が反応することによる発泡作用と陰イオン性界面活性剤による化学的洗浄作用を発揮させることができ、洗浄効果を向上させることができる。
【0049】
本発明の義歯洗浄剤を用いて義歯を洗浄する際に使用される水としては、特に制限されないが、水道水、精製水、蒸留水、生理食塩水等が挙げられる。
【0050】
本発明の義歯洗浄剤を用いて義歯を洗浄する際には、水に義歯を浸漬した後に本発明の義歯洗浄剤を加えてもよく、また水に本発明の義歯洗浄剤を加えた後に義歯を浸漬させてもよい。
【0051】
また、義歯の洗浄において、本発明の義歯洗浄剤と水との比率は、本発明の義歯洗浄剤の組成、洗浄対象となる義歯の汚れの程度等に応じて適宜設定されるが、例えば、水100重量部に対して、義歯洗浄剤を通常1~10重量部程度、好ましくは1~5重量部程度とすればよい。より具体的には、1回の義歯の洗浄において、水100~200mLを準備し、これに本発明の義歯洗浄剤1~20g、好ましくは1~10g、より好ましくは1~5gを加えればよい。
【0052】
義歯洗浄時の水温は5~40℃程度とすればよい。また、本発明の義歯洗浄剤を加えた水に義歯を浸漬する時間は、通常5分~12時間程度、好ましくは30分~8時間程度が挙げられる。
【0053】
また、義歯の洗浄中に、義歯洗浄剤を添加した水を攪拌等する必要はないが、必要に応じて攪拌してもよく、またブラシ等の洗浄具で義歯を擦り洗いしてもよい。義歯の洗浄後には、流水で濯ぎ、必要に応じて指等で擦ることにより、義歯に付着している義歯洗浄剤の成分を洗い流せばよい。
【0054】
2.義歯洗浄方法
本発明の義歯洗浄方法は、前記義歯洗浄剤を用いて義歯を洗浄する方法である。即ち、本発明の義歯洗浄方法は、前記義歯洗浄剤を入れた水に、義歯を浸漬して義歯を洗浄する方法である。本発明の義歯洗浄方法の具体的実施態様については、前記「1.義歯洗浄剤」の欄に記載の通りである。
【0055】
3.ヌメリ抑制方法
本発明のヌメリ抑制方法は、(A)陰イオン性界面活性剤及び(B)炭酸化合物を含む義歯洗浄剤で義歯を洗浄した後に義歯表面に生じるヌメリを抑制する方法であって、義歯洗浄剤中に、(A)陰イオン性界面活性剤、(B)炭酸化合物、及び(C)アルカノイルオキシベンゼンスルホン酸及び/又はその塩を配合する方法である。本発明のヌメリ抑制方法の具体的実施態様については、前記「1.義歯洗浄剤」の欄に記載の通りである。
【実施例0056】
以下、本発明を実施例等により具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0057】
試験例
表1及び2に示す組成の原料混合物を打錠成型し、錠剤状の義歯洗浄剤(1錠当たり2.65g)を調製した。得られた義歯洗浄剤1錠を25℃の水150mlに完全に溶解した時点で軽く撹拌し、pHを測定した。
【0058】
また、得られた義歯洗浄剤を用いて、洗浄後の義歯表面に生じるヌメリの程度、及び洗浄後に水で濯ぐ際のヌメリの除去容易性について、以下の方法で評価した。
【0059】
<洗浄後の義歯表面に生じるヌメリの程度>
義歯洗浄剤1錠を150mlの水に添加して完全に溶解させた後に、レジンチップ(縦2cm、横2cm、厚さ0.15cm;株式会社ジーシー製)を浸漬させて6時間静置した。その後、レジンチップを取り出し、レジンチップの表面を指で触り、以下の判定基準に従ってヌメリの程度を評点化した。ヌメリの程度の評価は、訓練された5名で実施し、評点の平均値を算出した。
・ヌメリの程度の判定基準
1:ヌメリを全く感じない。
2:ヌメリをほとんど感じない。
3:ヌメリを僅かに感じる。
4:ヌメリを感じる。
5:ヌメリをかなり感じる。
【0060】
<洗浄後に水で濯ぐ際のヌメリの除去容易性>
義歯洗浄剤1錠を150mlの水に添加して完全に溶解させた後に、レジンチップ(縦2cm、横2cm、厚さ0.15cm;株式会社ジーシー製)を浸漬させて6時間静置した。その後、レジンチップを取り出し、流水で濯ぎながら指で擦り、何秒間でヌメリを全く感じなくなるかを計測した。ヌメリの除去容易性評価は、訓練された5名で実施し、ヌメリを全く感じなくなるまでの時間の平均値を算出した。
【0061】
結果を表1に示す。陰イオン性界面活性剤(αオレフィンスルホン酸ナトリウム、ラウリル硫酸ナトリウム)を含み、炭酸ナトリウムを含まない義歯洗浄剤では、洗浄後の義歯表面に生じるヌメリが抑制されており、更に洗浄後に水で濯ぐ際に容易にヌメリを除去できた(参考例1及び2)。また、炭酸ナトリウムを含み、陰イオン性界面活性剤を含まない義歯洗浄剤でも、洗浄後の義歯表面に生じるヌメリが抑制されており、更に洗浄後に水で濯ぐ際に容易にヌメリを除去できた(参考例3)。更に、炭酸ナトリウムと陰イオン性界面活性剤を含む義歯洗浄剤では、洗浄後の義歯表面にヌメリが生じており、しかも洗浄後に水で濯ぐ際にヌメリを除去し難いものであり(比較例1及び5)、更に当該義歯洗浄剤にテトラアセチルエチレンジアミンを含有させても、洗浄後の義歯表面にヌメリ及び洗浄後に水で濯ぐ際のヌメリ除去性を改善できなかった(比較例2~4)。これに対して、炭酸ナトリウムと陰イオン性界面活性剤とアルカノイルオキシベンゼンスルホン酸ナトリウムを含む義歯洗浄剤では、洗浄後の義歯表面に生じるヌメリが抑制されており、更に洗浄後に水で濯ぐ際のヌメリ除去性も良好であった(実施例1~6)。
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