(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023092468
(43)【公開日】2023-07-03
(54)【発明の名称】結晶シリコン膜を形成する方法および装置
(51)【国際特許分類】
H01L 21/205 20060101AFI20230626BHJP
H01L 21/20 20060101ALI20230626BHJP
C23C 16/24 20060101ALI20230626BHJP
【FI】
H01L21/205
H01L21/20
C23C16/24
【審査請求】未請求
【請求項の数】24
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022181677
(22)【出願日】2022-11-14
(31)【優先権主張番号】P 2021206922
(32)【優先日】2021-12-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000219967
【氏名又は名称】東京エレクトロン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099944
【弁理士】
【氏名又は名称】高山 宏志
(72)【発明者】
【氏名】梅澤 好太
(72)【発明者】
【氏名】渡部 佳優
【テーマコード(参考)】
4K030
5F045
5F152
【Fターム(参考)】
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(57)【要約】
【課題】より大粒径の結晶シリコン膜を形成することができる技術を提供する。
【解決手段】結晶シリコン膜を形成する方法は、基板上に第1のアモルファスシリコン膜を形成する工程と、第1のアモルファスシリコン膜が形成された基板に第1のアニールを施し、シリコンの結晶核が形成された結晶核形成膜を形成する工程と、エッチングガスによるエッチングを行う工程と、エッチングを行う工程後に残存し結晶核の上に第2のアモルファスシリコン膜を形成する工程と、第2のアモルファスシリコン膜を形成した後の基板に第2のアニールを施し、結晶核を成長させて結晶シリコン膜を形成する工程とを有する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
結晶シリコン膜を形成する方法であって、
基板上に第1のアモルファスシリコン膜を形成する工程と、
前記第1のアモルファスシリコン膜が形成された基板に第1のアニールを施し、シリコンの結晶核が形成された結晶核形成膜を形成する工程と、
エッチングガスによるエッチングを行う工程と、
前記エッチングを行う工程後に残存した前記結晶核の上に第2のアモルファスシリコン膜を形成する工程と、
前記第2のアモルファスシリコン膜を形成した後の基板に第2のアニールを施し、前記結晶核を成長させて結晶シリコン膜を形成する工程と、
を有する、方法。
【請求項2】
前記基板は、基体上に下地膜が形成され、該下地膜上に前記第1のアモルファスシリコン膜が形成される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記下地膜は絶縁膜である、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記第1のアモルファスシリコン膜の膜厚は15nm以下である、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記第1のアニールは熱処理により行う、請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記第1のアニールは、前記第1のアモルファスシリコン膜を形成する際の温度より高い温度で行う、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記第1のアニールは、前記第1のアモルファスシリコン膜にマイグレーションが生じる温度で行う、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記第1のアニールは、800℃以上の温度で行う、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記第1のアニールは、真空雰囲気中で行う、請求項5に記載の方法。
【請求項10】
前記第1のアニールは、H2ガス雰囲気中で行う、請求項5に記載の方法。
【請求項11】
前記第1のアニールはレーザー照射により行い、レーザーの照射領域に前記結晶核形成膜を形成する、請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記照射領域は、前記第1のアモルファスシリコン膜に選択的に形成される、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記エッチングを行う工程は、シリコンをエッチング可能なエッチングガスを供給することにより行う、請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記エッチングを行う工程は、エッチングガスとしてCl2ガスを用いる、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記エッチングを行う工程は、200~500℃の温度で行われる、請求項13に記載の方法。
【請求項16】
前記第2のアモルファスシリコン膜の膜厚は、1~500nmの範囲である、請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
前記第2のアニールは、前記結晶核を固相エピタキシャル成長により成長させる、請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
前記第2のアニールは、前記第2のアモルファスシリコン膜がアモルファス状態を保つことができる上限近傍の温度で行う、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記第2のアニールは、400~800℃の範囲の温度で行う、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記第2のアニールは、H2ガス雰囲気または不活性ガス雰囲気で行う、請求項17に記載の方法。
【請求項21】
前記エッチングを行う工程の後、エッチング後の表面のトリートメントを行う工程をさらに有する、請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
前記トリートメントを行う工程は、前記エッチングを行う工程の後の表面に残留するエッチングガス成分を除去する、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記トリートメントを行う工程は、アニールにより表面に吸着したエッチングガス成分を脱離させる、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
結晶シリコン膜を形成する装置であって、
基板を収容する処理容器と、
前記処理容器内にガスを供給するガス供給部と、
前記基板を加熱する加熱機構と、
前記処理容器内を排気する排気機構と、
制御部と、
を具備し、
前記制御部は、
前記処理容器内にシリコン原料ガスを供給して基板上に第1のアモルファスシリコン膜を形成する工程と、
前記第1のアモルファスシリコン膜が形成された基板に第1のアニールを施し、シリコンの結晶核が形成された結晶核形成膜を形成する工程と、
前記処理容器にエッチングガスを供給してエッチングを行う工程と、
前記処理容器内にシリコン原料ガスを供給して前記エッチングする工程後に残存した前記結晶核の上に第2のアモルファスシリコン膜を形成する工程と、
前記第2のアモルファスシリコン膜を形成した後の基板に第2のアニールを施し、前記結晶核を成長させて結晶シリコン膜を形成する工程と、
が実行されるように前記ガス供給部、前記加熱機構、および前記排気機構を制御する、装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、結晶シリコン膜を形成する方法および装置に関する。
【背景技術】
【0002】
結晶シリコン膜は、例えば、半導体装置のチャネルとして用いられている。結晶シリコンは、結晶粒界でキャリアが散乱することによるチャネル抵抗の増加を抑制する等の観点から、大粒径化が指向されている。
【0003】
特許文献1には、大粒径の結晶シリコン膜を形成する技術として、結晶成長が遅い第1のアモルファスシリコン膜の上に、結晶成長が第1のアモルファスシリコン膜よりも速い第2のアモルファスシリコン膜を積層した後、結晶化処理を行う方法が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本開示は、より大粒径の結晶シリコン膜を形成することができる技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一実施形態に係る方法は、結晶シリコン膜を形成する方法であって、基板上に第1のアモルファスシリコン膜を形成する工程と、前記第1のアモルファスシリコン膜が形成された基板に第1のアニールを施し、シリコンの結晶核が形成された結晶核形成膜を形成する工程と、エッチングガスによるエッチングを行う工程と、前記エッチングを行う工程後に残存した前記結晶核の上に第2のアモルファスシリコン膜を形成する工程と、前記第2のアモルファスシリコン膜を形成した後の基板に第2のアニールを施し、前記結晶核を成長させて結晶シリコン膜を形成する工程と、を有する。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、より大粒径の結晶シリコンを形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】結晶シリコン膜の形成方法の第1の実施形態を示すフローチャートである。
【
図3】第1の実施形態におけるステップST1の一例を実施した状態を模式的に示す断面図である。
【
図4】第1の実施形態におけるステップST2の一例を実施した状態を模式的に示す断面図である。
【
図5】第1の実施形態におけるステップST3の一例を実施した状態を模式的に示す断面図である。
【
図6】第1の実施形態におけるステップST4の一例を実施した状態を模式的に示す断面図である。
【
図7】第1の実施形態におけるステップST5の一例を実施した状態を模式的に示す断面図である。
【
図8】微小な結晶粒やアモルファス部分が存在している状態で、第2のアモルファスシリコン膜を形成して固相エピタキシャル成長させる過程を模式的に示す断面図である。
【
図9】
図8の状態から結晶シリコン膜を形成した状態を模式的に示す断面図である。
【
図10】第1の実施形態の実験例により得られた結晶シリコン膜の結晶粒の状態を示すEBSD解析画像である。
【
図11】結晶シリコン膜の形成方法の第2の実施形態を示すフローチャートである。
【
図12】第2の実施形態においてステップST6のレーザーによる第1のアニールを実施する状態を示す断面図である。
【
図13】第1のアモルファスシリコン膜におけるレーザーの照射領域の形状の例を示す図である。
【
図14】第2の実施形態におけるステップST3の一例を実施した状態を模式的に示す断面図である。
【
図15】第2の実施形態におけるステップST4の一例を実施した状態を模式的に示す断面図である。
【
図16】第2の実施形態におけるステップST5の一例を実施した状態を模式的に示す断面図である。
【
図17】第2の実施形態におけるレーザー照射による第1のアニールを行った際における照射領域の結晶核の状態を示すEBSD解析画像である。
【
図18】結晶シリコン膜の形成方法の第3の実施形態を示すフローチャートである。
【
図19】第1の実施形態の実験例により得られた結晶シリコン膜と、第3の実施形態の実験例により得られた結晶シリコン膜の結晶粒の状態を比較して示すEBSD解析画像である。
【
図20】実施形態の結晶シリコン膜の形成方法を実施可能な処理装置の一例を示す縦断面である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、添付図面を参照して実施形態について説明する。
【0010】
<第1の実施形態>
最初に、結晶シリコン膜の形成方法の第1の実施形態について説明する。
図1は、結晶シリコン膜の形成方法の第1の実施形態を示すフローチャートである。また、
図2は第1の実施形態に用いる基板を示す断面図、
図3~7は第1の実施形態の各工程の一例を実施した状態を模式的に示す断面図である。
【0011】
本実施形態では、最初に、基板上に第1のアモルファスシリコン膜を形成する(ステップST1)。次いで、第1のアモルファスシリコン膜が形成された基板に第1のアニールを施し、シリコンの結晶核が形成された結晶核形成膜を形成する(ステップST2)。次いで、エッチングガスによるエッチングを行う(ステップST3)。次いで、エッチング後に残存した結晶核の上に第2のアモルファスシリコン膜を形成する(ステップST4)。次いで、第2のアモルファスシリコン膜を形成した後の基板に第2のアニールを施し、結晶核を成長させる(ステップST5)。
【0012】
基板は特に限定されないが、
図2に示すように、基体10上に下地膜11が形成された基板を挙げることができる。基板としては、基体10が半導体基体、例えばシリコン基体である半導体基板(ウエハ)を挙げることができ、下地膜11としては、絶縁膜、例えばSiO
2膜やSiN膜を挙げることができる。
【0013】
ステップST1においては、例えば
図3に示すように、下地膜11の上に第1のアモルファスシリコン膜12を形成する。第1のアモルファスシリコン膜12は、シリコンの結晶核を生成するためのものである。第1のアモルファスシリコン膜12は、シリコン(Si)原料ガスを用いたCVD法により形成される。
【0014】
第1のアモルファスシリコン膜12を形成するためのSi原料ガスとしては、CVD法に適用可能なSi含有化合物全般を用いることができ特に限定されないが、シラン系化合物、アミノシラン系化合物を好適に用いることができる。シラン系化合物としては、例えば、モノシラン(SiH4)、ジシラン(Si2H6)等を挙げることができ、アミノシラン系化合物としては、例えば、BAS(ブチルアミノシラン)、BTBAS(ビスターシャリブチルアミノシラン)、DMAS(ジメチルアミノシラン)、BDMAS(ビスジメチルアミノシラン)等を挙げることができる。結晶核の形成密度を低くすることが望ましいため、例えば、ジシラン、もしくは、ジシラン以上の高次シランを用いることが好ましい。
【0015】
このときの具体的なプロセス条件は、Si原料ガスによって異なるが、基板の温度:200~600℃、圧力:0.1~100Torr(13~13000Pa)程度を用いることができる。具体例を挙げれば、Si原料ガスとしてSi2H6ガスを用いた場合に、基板の温度が350~500℃、例えば425℃、圧力が0.1~10Torr(13~1300Pa)、例えば0.45Torr(
60Pa)である。
【0016】
第1のアモルファスシリコン膜12の膜厚は、シリコンの結晶核を有効に生成できる程度であればよく、50nm以下であってよい。好ましくは1~15nm、例えば10nmである。
【0017】
ステップST2においては、第1のアニールを行うことにより、例えば、
図4に示すように、第1のアモルファスシリコン膜12からシリコンの結晶核13を生成させ、結晶核13が形成された結晶核形成膜14を形成する。なお、12aはアモルファス部分であり、13aは微小結晶核である。
【0018】
ステップST2の第1のアニールは、熱処理により行ってよい。第1のアニールを熱処理により行う場合には、第1のアモルファスシリコン膜12の全体がアニールされ、第1のアモルファスシリコン膜12の全体が
図4に示す結晶核形成膜14となる。第1のアニールを熱処理で行う場合の基板温度は、シリコンの結晶核13が生成する温度であればよく、第1のアモルファスシリコン膜12を形成する温度以上であることが好ましい。形成する結晶核間距離が大きいほど大粒径の結晶シリコンを形成できるため、より大粒径の結晶シリコンを形成するためには、第1のアニールの温度を、シリコンがマイグレーションする温度とすることがより好ましい。マイグレーションさせるためには、アニール温度を800℃以上とすることが好ましく、900℃以上とすることがより好ましい。アニール温度の上限はシリコンの溶融温度であるが、実際には装置の許容温度が上限となる。
【0019】
ステップST2の第1のアニールを熱処理で行う場合の雰囲気は、真空雰囲気、不活性ガス雰囲気、H2ガス雰囲気のいずれであってもよい。真空雰囲気は、例えばアニール処理を行う処理容器内にガスを供給しない状態で、もしくは微量のガスを供給した状態で真空ポンプ(排気装置)を引き切りの状態にすることにより形成することができる。第1のアニールを800℃以上の高温にしてシリコンのマイグレーションを生じさせる場合は、真空雰囲気であることが好ましい。また、H2ガス雰囲気等、ガスを用いる場合は、圧力が高いとマイグレーションが抑制されるので、マイグレーションが生じる圧力にすることが好ましい。
【0020】
ステップST3のエッチングは、シリコンをエッチング可能なガスを用いて行うことができる。このエッチングにより、例えば
図5に示すように、ステップST2のアニール後に残存する、結晶粒の大粒径化の妨げとなるアモルファスシリコン部分12aや微小結晶核13a等(
図4参照)が除去され、結果として大粒径化に適した結晶核が低密度で残存する。
【0021】
この場合に、エッチングするガスは、エッチングされやすいアモルファスシリコン部分や微小結晶核のみを除去し、大粒径に成長可能な結晶核を残存させる制御性のよいエッチングが可能なものを用いることが好ましい。すなわち、エッチング作用が強すぎると結晶核も全てエッチングされてしまうため、エッチングされやすいアモルファスシリコンが除去され、結晶シリコンについては微小結晶のみが消失するような制御性のよいエッチングが可能なエッチングガスが好ましい。このような観点からは、エッチングガスとしてCl2ガスを用いることが好ましい。制御性のよいエッチングが可能な他のエッチングガスとして、HBr、F2、ClF3、HF、NF3を挙げることができる。ステップST3のエッチングの際の温度は、エッチングガスに応じて適宜設定すればよく、エッチングガスがCl2ガスの場合には、200~500℃が好ましい。
【0022】
ステップST4においては、例えば
図6に示すように、エッチング後に残存した結晶核13の上に第2のアモルファスシリコン膜15を形成する。第2のアモルファスシリコン膜15は、結晶核を成長させるためのものであり、第1のアモルファスシリコン膜12と同様、Si原料ガスを用いたCVD法により形成される。その際の条件は、第1のアモルファスシリコン膜12を形成する際の条件と同様であってよい。
【0023】
第2のアモルファスシリコン膜15の膜厚は、形成しようとする結晶シリコンの厚さに応じて適宜設定されるが、1~500nmの範囲(例えば30nm)であってよい。
【0024】
ステップST5においては、第2のアモルファスシリコン膜15を形成した後の基板に対して第2のアニールを行うことにより、第2のアモルファスシリコン膜15を用いて
図6の結晶核13を結晶成長させる。これにより、大粒径の結晶シリコン膜を形成することができる。この場合の結晶核13の結晶成長は、固相エピタキシャル成長により行うことができる。これにより、
図7のように、より大粒径のシリコン結晶粒16を有する結晶シリコン膜17が形成される。
【0025】
第2のアニールは熱処理により行うことができ、その際の温度は、結晶核13を固相エピタキシャル成長させることが可能な温度であることが好ましく、第2のアモルファスシリコン膜がアモルファス状態を保つことができる上限近傍の温度であることが好ましい。第2のアニールの温度が高すぎると、新たな結晶核が析出し、エピタキシャル成長が妨げられ、大きな結晶粒を得難くなる。このような観点からは、第2のアニールの温度は、第2のアモルファスシリコン膜15を形成する条件によって異なるが、400~800℃の範囲が好ましく、典型的には600℃程度である。
【0026】
第1のアモルファスシリコン膜12を形成する際の条件と第2のアモルファスシリコン膜15を形成する条件とが同様である場合には、第2のアニール温度は、第1のアニール温度より低い温度とすることが好ましい。
【0027】
ステップST5の第2のアニールを実施する際の雰囲気は、真空雰囲気、H2ガス雰囲気、不活性ガス雰囲気のいずれであってもよい。ただし、真空雰囲気の場合は、第2のアモルファスシリコン膜15にマイグレーションが生じて結晶シリコン膜の表面性状が低下する可能性があるため、H2雰囲気または不活性ガス雰囲気であることが好ましい。この際の、第2のアニールの際の圧力は0.1~100Torr(13~13000Pa)の範囲が好ましい。
【0028】
本実施形態では、以上のようなステップST1~ST5を実施することにより、大粒径の結晶シリコン膜を形成することができる。
【0029】
アモルファスシリコン膜をアニールすることにより結晶化する技術は従来から知られており、条件を調整することにより大粒径化が図られてきた。しかし、得られる結晶シリコン膜の結晶粒径は3μm程度であり、さらなる大粒径化が望まれている。例えば、上述した特許文献1のような2層のアモルファスシリコン膜を積層した後に結晶化する技術は大粒径化を達成できる技術ではあるが、未だ不十分である。
【0030】
大粒径化に有望な技術として、アモルファス膜を成膜後、アニールにより結晶核を生成させ、その後再度アモルファス膜を形成して固相エピタキシャル成長させるヘテロエピタキシャル成長技術が挙げられる。この技術は、例えばGaNやAlNのようなIII-V族半導体に用いられる。この技術を応用して大粒径のシリコン結晶を形成するためには、シリコンの結晶核や固相成長に必要な下地が重要になる。しかし、アモルファスシリコン膜をアニールして生成される結晶核13は粒径が不揃いであり、微小結晶核も存在し、また、アニール後には自然核をもつアモルファスシリコン部分も残存する。シリコンの微小結晶核や自然核をもつアモルファス部分も固相エピタキシャル成長の起点となるため結晶核の密度が高くなり大粒径化に不利になる。アモルファス部分は固相エピタキシャル成長によっても十分に成長せず、シリコンの大粒径化を妨げる。また、このような状態では、結晶核の密度が高くなり大粒径化に不利になる。シリコンにマイグレーションを生じさせることにより結晶核間の距離を広げることはできるものの、微小結晶核や自然核をもつアモルファス部分の存在により大粒径化を妨げる問題は十分には解消されない。
【0031】
具体的には、上述の
図4に示すような、微小な結晶粒13aやアモルファス部分12aが存在している状態で、第2のアモルファスシリコン膜15を形成して固相エピタキシャル成長させると、
図8に示すように、アモルファス部分12aや微小結晶粒13aも起点となって固相エピタキシャル成長する。このため、
図9に示すように、小さい結晶粒16aを有する結晶シリコン膜17aが形成されてしまう。
【0032】
そこで、本実施形態では、ヘテロエピタキシャル成長技術に加えて、第1のアモルファスシリコン膜に対して第1のアニールを行って結晶核を生成した後、第2のアモルファスシリコン膜を成膜する前にエッチングを行う。これにより、アニール後に残存したアモルファス部分および微小な結晶核を選択的に除去することができる。すなわち、アモルファスシリコンは結晶シリコンよりもエッチングされやすいため、アモルファスシリコン部分が優先的にエッチングされ、結晶シリコンについては微小な結晶核のみ消失し、ある程度の大きさの結晶核が比較的大きな間隔を持って残存する。このため、第2のアモルファスシリコン膜を用いて結晶核を固相エピタキシャル成長させる際に、結晶核を十分に成長させることができ、従来よりも大粒径のシリコン結晶を得ることができる。
【0033】
なお、大粒径のシリコン結晶を形成する確立した技術として、Ni触媒を用いた金属誘起横方向成長法(MILC)がある。しかし、この技術は、メタル除去の工程が必要であり、半導体デバイスの製造工程に適用するには現実的ではない。本実施形態では、金属を用いないためメタル除去の工程は不要である。
【0034】
実際に第1の実施形態の効果を確認した実験例について説明する。
まず、比較のため、エッチングを用いずにヘテロエピタキシャル成長技術および固相エピタキシャル成長技術を用いて結晶シリコンを形成した(シーケンス1)。具体的には、基板上にSi2H6ガスを用いて425℃にてCVDにより第1のアモルファスシリコン膜(5nm)を形成し、900℃で第1のアニールを行って結晶核を生成し、引き続き第2のアモルファスシリコン膜(30nm)を成膜後、600℃で第2のアニールを行い、結晶シリコン膜を形成した。得られた結晶シリコン膜のEBSD解析から平均結晶粒径を測定した。平均結晶粒径は6μm×6μmの視野において、面積比による加重平均により求めた。その結果、平均結晶粒径は0.7μmであった。
【0035】
次に、本実施形態に基づいて、ヘテロエピタキシャル成長技術、エッチング、および固相エピタキシャル成長技術を用いて結晶シリコンを形成した(シーケンス2)。具体的には、シーケンス1と同様に第1のアモルファスシリコン膜を形成し、熱処理により第1のアニールを行って結晶核を生成した後、Cl
2ガスによりエッチングを行い、その後はシーケンス1と同様に第2のアモルファスシリコン膜の形成および第2のアニールを行って結晶シリコンを形成した。得られた結晶シリコン膜のEBSD解析から、シーケンス1と同様に平均結晶粒径を測定した。その結果、6μm×6μmの視野ではほぼ全面が単結晶(6μm以上の粒径)となっており、従来の限界であった3μmよりも極めて大きな値となった。また、シーケンス2について100μm×100μmとより広域視野における結晶粒の状態は
図10のEBSD解析画像に示すようになり、同様に平均結晶粒径を求めた結果、12.4μmとさらに大きな値であった。
【0036】
<第2の実施形態>
次に、結晶シリコン膜の形成方法の第2の実施形態について説明する。
図11は、結晶シリコン膜の形成方法の第2の実施形態を示すフローチャートである。
【0037】
本実施形態では、第1の実施形態と同様に、ステップST1の第1のアモルファスシリコン膜の形成後、第1の実施形態におけるステップST2の代わりに、レーザーの照射により第1のアニールを施し、レーザーの照射領域にシリコンの結晶核が形成された結晶核形成膜を形成するステップST6を行う。その後、第1の実施形態と同様、ステップST3のエッチング、ステップST4の第2のアモルファスシリコン膜の形成、およびステップST5の第2のアニールを行い、結晶シリコン膜を形成する。
【0038】
ステップST6のレーザーによる第1のアニールは、
図12に示すように、第1のアモルファスシリコン膜12に対してレーザー照射部21から選択的にレーザーLを照射し、レーザーLの照射領域20を形成する。レーザー照射部位は、N
2ガス等の不活性ガス雰囲気に保持されることが好ましい。レーザーは照射部位のみに制御性良くエネルギーを付与できるため、第1のアモルファスシリコン膜12のレーザーLの照射領域20のみアニールされる。このとき、第1のアモルファスシリコン膜12のレーザーLが照射されない部分はそのままアモルファス状態で残存する。
【0039】
レーザーLの照射領域20は、第1のアモルファスシリコン膜12の予め定められた部分に選択的に、必要に応じてレーザーLをスキャンすることにより形成される。そして、第1のアモルファスシリコン膜12の照射領域20に、
図4に示す、結晶核13が生成された結晶核形成膜14が形成される。第1のアモルファスシリコン膜12に形成される照射領域20としては、例えば、
図13(a)のようなスポット状、
図13(b)のようなライン状のものが例示される。レーザーとしては、アモルファスシリコン膜に対する吸収性が高いものが好ましく、そのような観点からは波長が100~500nmのものが好ましい。このような波長のレーザーとしては、波長が193nmのエキシマレーザー、波長が355nmのUVレーザーを挙げることができる。
【0040】
ステップST3のエッチングは第1の実施形態と同様に行われ、このエッチングにより、
図14に示すように、第1のアモルファスシリコン膜12の照射領域20以外の部分と、照射領域20に形成された結晶核形成膜14中のアモルファス部分12aや微小結晶核13aがエッチング除去される(
図14では便宜上、照射領域20が残存した状態で示す)。そして、照射領域20は、第1の実施形態の
図5と同様、結晶核13が残存した状態となる。
【0041】
ステップST4の第2のアモルファスシリコン膜15の形成も、第1の実施形態と同様に行われ、
図15に示すように、基板の照射領域20(結晶核13)を含む全面に第2のアモルファスシリコン膜15が形成される。
【0042】
ステップST5の第2のアニールも第1の実施形態と同様に行われ、第2のアモルファスシリコン膜15を用いて結晶核13を成長させ、
図16に示すように、基板の全面に結晶シリコン膜17が形成される。本実施形態においても、第1の実施形態と同様、結晶シリコン膜17では結晶核13が成長して大粒径化したシリコン結晶粒が形成される。
【0043】
本実施形態においては、第1のアニールをレーザーで行うことにより、局所的に大きなエネルギーを付与することができ、マイグレーションを生じさせることなく、短時間で比較的大きな結晶核を得ることができる。また、第1のアニールにレーザーを用いることにより、
図12に示すように、第1のアモルファスシリコン膜12のレーザーLの照射領域20を選択的に形成することができ、照射領域20のみを制御性良くアニールすることができる。これにより、基板上の第1のアモルファスシリコン膜12に対して選択的に核形成することが可能となる。そして、照射領域20を所望の形状および分布で、例えば
図13に示すようにスポット状やライン状で選択的に形成することにより核密度の制御が可能となる。すなわち、第1のアモルファスシリコン膜12の照射領域20を選択的に形成することにより、第1のアモルファスシリコン膜12の照射領域20以外の領域には結晶核13が形成されないため、第1のアモルファスシリコン膜12全体に対する核密度を低密度化することが可能となる。そして、照射領域20の形状および分布を制御することにより、核密度を所望の低密度に制御することが可能となる。このように核密度を低密度化することにより、第2のアニール後に、結晶核13が第1のアモルファスシリコン膜12の照射領域20の外部にも成長可能となり、より大粒径の結晶シリコンを形成することが可能となる。
【0044】
実際に第2の実施形態の効果を確認した実験例について説明する。
ここでは、基板上にSi
2H
6ガスを用いて425℃にてCVDにより第1のアモルファスシリコン膜(5nm)を形成し、UVレーザーにより第1のアニールを行って選択的に結晶核を生成した。UVレーザーは、パワー:3W、デフォーカス量:16mm、スキャンスピード:1000mm/sec、周波数:30kHzとし、レーザー照射痕の幅が0.2mmになるようにライン状に照射した。第1のアニール後の状態を観察した結果、レーザー非照射領域ではアモルファスのままであったのに対し、レーザー照射領域では結晶核が形成されていることが確認された。
図17はレーザーの照射領域のEBSD解析画像である。EBSD解析から結晶核の平均粒径は0.25μm(面積による加重平均では0.30μm)であった。このことから、その後のエッチング、第2のアモルファスシリコン膜の形成、および第2のアニールにより、第1の実施形態と同等以上の大粒径のシリコン結晶膜の形成が期待できる。
【0045】
<第3の実施形態>
次に、結晶シリコン膜の形成方法の第3の実施形態について説明する。
図18は、結晶シリコン膜の形成方法の第3の実施形態を示すフローチャートである。
【0046】
本実施形態では、第1の実施形態と同様に、ステップST1の第1のアモルファスシリコン膜の形成、ステップST2の第1のアニール、ステップST3のエッチングを行った後、エッチング後の表面のトリートメントを行う(ステップST7)。トリートメントの後は、第1の実施形態と同様、ステップST4の第2のアモルファスシリコン膜の形成、およびステップST5の第2のアニールを行い、結晶シリコン膜を形成する。
【0047】
ステップST7のトリートメントは、表面に残留するエッチングガス成分を除去する処理であってよい。ステップST3のエッチングを行った場合、エッチングガス成分が基板の表面に残留する。例えばCl2ガスは、シリコン表面に塩素分子として直接吸着するか、またはSiClとして解離吸着することが知られている。表面にエッチングガス成分が残留すると、それが不純物となるとともに、シリコンの結晶粒の成長を阻害する。
【0048】
ステップST7のトリートメントは、エッチング後の基板をアニールすることにより行うことができる。アニールによって加熱することにより、表面に残留したCl2ガス等のエッチングガス成分を表面から脱離することができる。この際のアニール温度は、エッチングガス成分が脱離する温度以上であることが好ましい。エッチングガスとしてCl2ガスを用いる場合には、脱離温度が600℃であるため、除去処理の際のアニール温度は600℃以上が好ましい。また、アニールの際の雰囲気は、真空雰囲気、不活性ガス雰囲気、H2ガス雰囲気のいずれであってもよい。
【0049】
このように、トリートメントにより表面に残留するエッチングガス成分を除去することにより、高品質な結晶核を形成することができるとともに、結晶粒の成長が阻害されないため結晶粒をさらに大きくすることができる。
【0050】
なお、本実施形態において、ステップST2の第1アニールの代わりに、第2の実施形態のステップST6のレーザー照射による第1のアニールを行ってもよい。
【0051】
実際に第3の実施形態の効果を確認した実験例について説明する。
ここでは、上記第1の実施形態の実験例におけるシーケンス2と同様の条件で第1のアモルファスシリコン膜を形成し、第1のアニールを行って結晶核を生成し、Cl
2ガスによりエッチングを行った後、トリートメントとしてアニールを行い、表面に残留するCl
2ガスを除去した。その後は、シーケンス2と同様に第2のアモルファスシリコン膜の形成および第2のアニールを行って結晶シリコンを形成した。トリートメントとして真空雰囲気で900℃のアニールを10分間行った。本実験例の100μm×100μmの広域視野における結晶粒の状態を上記第1の実施形態の実験例におけるシーケンス2と比較した結果は
図19のEBSD解析画像に示すようになり本実施形態により結晶粒がさらに大きくなっていることが確認された。また、得られた結晶シリコン膜のEBSD解析の100μm×100μmの広域視野における平均結晶粒径を測定した。平均結晶粒径は上記第1の実施形態の実験例と同様、面積比による加重平均により求めた。その結果、本実験例における結晶シリコン膜の平均結晶粒径は29.2μmとなり、上記第1の実施形態の実験例におけるシーケンス2の12.4μmの約2.4倍もの大粒径化が実現された。最大粒径も第1の実施形態の実験例におけるシーケンス2が25μmであったのに対し、本実験例では49μmと約2倍となった。
【0052】
<処理装置>
次に、上記実施形態の結晶シリコン膜の形成方法を実施可能な処理装置の一例について説明する。
図20は処理装置の一例を示す縦断面図、
図21はその水平断面図である。
【0053】
本例の処理装置100は、第1の実施形態の方法の全ての工程を実施する装置として構成される。処理装置100は、ホットウォールタイプの縦型バッチ式熱処理装置として構成されており、外管101aおよび内管101bからなる二重管構造の反応管として構成された有天井をなす処理容器101を有している。この処理容器101の全体は、例えば石英により形成されている。処理容器101の内管101bの中には、基板として半導体基板であるウエハWが50~150枚多段に搭載された石英製のウエハボート105が配置される。ウエハWとしては、例えば、シリコン基体上にSiO2膜が形成されたものが用いられる。処理容器101の外側には、下面側が開口する概略円筒型の本体部102が設けられており、本体部102の内壁面には、周方向に亘ってヒーターを有する加熱機構152が設けられている。本体部102はベースプレート112に支持されている。
【0054】
処理容器101の外管101aの下端開口部には、例えばステンレススチールにより円筒体状に成形されたマニホールド103がOリング等のシール部材(図示せず)を介して連結されている。
【0055】
上記マニホールド103は処理容器101の外管101aを支持しており、このマニホールド103の下方から、ウエハボート105が、処理容器101の内管101b内に挿入される。マニホールド103の底部は蓋部109により閉止されるようになっている。
【0056】
ウエハボート105は、石英製の保温筒107に載置されており、保温筒107には蓋部109を貫通して回転軸110が取り付けられており、回転軸110はモータ等の回転駆動機構113により回転可能となっている。これにより、回転駆動機構113により、保温筒107を介してウエハボート105を回転可能となっている。なお、保温筒107を上記蓋部109側へ固定して設け、ウエハボート105を回転させることなくウエハWの処理を行うようにしてもよい。
【0057】
処理装置100は、各種ガスを供給するガス供給機構120を有している。ガス供給機構120は、Si原料ガスであるSi2H6ガスを供給するSi2H6ガス供給源121、エッチングガスであるCl2ガスを供給するCl2ガス供給源122、H2ガス供給源123、不活性ガスであるN2ガスを供給するN2ガス供給源124を有している。なお、Si原料ガスおよびエッチングガスとしては、上述したような他のガスを用いることができる。また、不活性ガスとしては、N2ガスの代わりに、Arガス等の希ガスを用いることができる。
【0058】
Si2H6ガス供給源121には配管126が接続され、配管126にはマニホールド103および処理容器101の内管101bの側壁を貫通して内管101b内で上方向へ屈曲されて垂直に延びる石英製のガス分散ノズル127が接続されている。Cl2ガス供給源122には配管128が接続され、配管128にはマニホールド103および内管101bの側壁を貫通して内管101b内で上方向へ屈曲されて垂直に延びる石英製のガス分散ノズル129が接続されている。H2ガス供給源123には配管130が接続され、配管130にはマニホールド103および内管101bの側壁を貫通して処理容器101内に至る直線状をなす石英製のガスノズル135が接続されている。N2ガス供給源124には配管132が接続され、配管132は配管130に接続されている。なお、石英製のガスノズル135は、内管101b内で上方向へ屈曲されて垂直に延びる石英製のガス分散ノズルであってよい。
【0059】
配管126には、開閉バルブ126aおよびその上流側にマスフローコントローラのような流量制御器126bが設けられている。また、配管128、130、132にも同様に、それぞれ開閉バルブ128a、130a、132aおよび流量制御器128b、130b、132bが設けられている。
【0060】
ガス分散ノズル127および129の垂直部分には、ウエハボート105のウエハ支持範囲に対応する上下方向の長さに亘って、各ウエハWに対応して所定の間隔で複数のガス吐出孔127aおよび129aが形成されている(
図13ではガス吐出孔129aのみ図示)。これにより、各ガス吐出孔127aおよび129aから水平方向に処理容器101に向けて略均一にガスを吐出することができる。
【0061】
処理容器101の内管101bの、ガス分散ノズル127および129の配置位置に対向する部分には、処理容器101内を真空排気するための排気口147が設けられている。この排気口147はウエハボート105に対応して上下に細長く形成されている。一方、処理容器101の外管101aには、排気口147近傍部分に排気ポート111が形成されており、排気ポート111には、処理容器101を排気するための排気管149が接続されている。排気管149には、処理容器101内の圧力を制御する圧力制御バルブ150および真空ポンプ等を含む排気装置151が接続されており、排気装置151により排気管149を介して処理容器101内が排気される。
【0062】
この処理容器101およびその内部のウエハWは、上述した本体部102の内側の加熱機構152に給電されることにより、与えられた温度に加熱される。
【0063】
処理装置100は制御部160を有している。制御部160は、処理装置100の各構成部、例えばバルブ類、流量制御器であるマスフローコントローラ、昇降機構等の駆動機構、加熱機構152等を制御する。制御部160は、CPUを有する主制御部と、入力装置、出力装置、表示装置、および記憶装置を有している。記憶装置には、処理装置100で実行される処理を制御するためのプログラム、すなわち処理レシピが格納された記憶媒体がセットされ、主制御部は、記憶媒体に記憶されている所定の処理レシピを呼び出し、その処理レシピに基づいて処理装置100に所定の処理を行わせるように制御する。
【0064】
次に、処理装置100の処理動作の一例について説明する。
処理装置100における処理は、制御部160において記憶媒体に記憶された処理レシピに基づいて以下のように行われる。
【0065】
最初に、ウエハWを複数枚、例えば50~150枚ウエハボート105に搭載し、そのウエハボート105を処理装置100内の処理容器101内に下方から挿入することにより、複数のウエハWを処理容器101の内管101b内に収容する。次いで、蓋部109でマニホールド103の下端開口部を閉じることにより処理容器101内の空間を密閉空間とする。
【0066】
処理容器101内を排気装置151により真空排気した後、N2ガス供給源124から配管132、130、およびガスノズル135を介して処理容器101内に不活性ガスであるN2ガスを供給して処理容器101内を調圧し、加熱機構152により処理容器101内の温度(ウエハWの温度)を安定させる。そして、N2ガスを供給したまま、Si2H6ガス供給源121から配管126を経て、ガス分散ノズル127へSi2H6ガスを供給し、ガス吐出孔127aから吐出させてCVDによりウエハW表面に第1のアモルファスシリコン膜を形成する。このとき、ウエハWの温度は350~500℃、例えば425℃とし、圧力は
0.1~10Torr(13~1300Pa)とする。
【0067】
第1のアモルファスシリコン膜の形成が終了後、Si2H6ガスを停止して、処理容器101内をN2ガスでパージする。その後、処理容器101内を真空引きして真空雰囲気とし、加熱機構152により、ウエハWの温度を第1のアモルファスシリコン膜を形成する際の温度よりも高い温度(例えば900℃)にしてウエハWに対して第1のアニールを施す。これにより、第1のアモルファスシリコン膜から結晶核を生成させ、結晶核形成膜を形成する。
【0068】
その後、ウエハWの温度を200~500℃とし、N2ガスを供給しつつCl2ガス供給源122から配管128を経て、ガス分散ノズル129へエッチングガスとしてCl2ガスを供給し、ガス吐出孔129aから吐出させてエッチングを行う。
【0069】
エッチングが終了後、Cl2ガスを停止して、処理容器101内をN2ガスでパージする。その後、第1のアモルファスシリコン膜形成時と同様の温度および圧力に設定し、第1のアモルファスシリコン膜形成時と同様にSi2H6ガスを供給してウエハWのエッチング後の結晶核形成膜に第2のアモルファスシリコン膜を形成する。
【0070】
第2のアモルファスシリコン膜の形成が終了後、Si2H6ガスを停止して、処理容器101内をN2ガスでパージする。その後、処理容器101内を真空引きして真空雰囲気とした後、H2ガス供給源123から、配管130およびガスノズル135を介して処理容器101内にH2ガスを供給し、処理容器101内をH2雰囲気とし、第2のアニールを行う。この際に、ウエハWの温度をアモルファスシリコンの結晶化温度付近、例えば600℃とし、圧力は0.1~100Torr(13~13000PaPa)とする。
【0071】
これにより、第1のアニールにより第1のアモルファスシリコン膜表面に生成された結晶核が成長し、大粒径の結晶シリコン膜が得られる。
【0072】
また、エッチングを行った後、第2のアモルファスシリコン膜の形成前に、処理容器101内を真空引きし、加熱機構152によりウエハWの温度を600℃以上として、ウエハWの表面からエッチングガス成分を除去するためのアニールを行ってもよい。これにより、結晶シリコン膜の結晶粒径をさらに大きくすることができる。
【0073】
<他の適用>
以上、実施形態について説明したが、今回開示された実施形態は、全ての点において例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。上記の実施形態は、添付の特許請求の範囲およびその主旨を逸脱することなく、様々な形態で省略、置換、変更されてもよい。
【0074】
例えば、第1のアモルファスシリコン膜および第2のアモルファスシリコン膜を形成する際に、Si原料ガスとともに、不純物含有ガスを用いてもよい。不純物としては、ヒ素(As)、ボロン(B)、リン(P)が例示され、不純物含有ガスとしては、アルシン(AsH3)、ジボラン(B2H6)、三塩化ホウ素(BCl3)、ホスフィン(PH3)を用いることができる。
【0075】
また、上記実施形態では、処理装置として縦型のバッチ式装置を用いたが、これに限らず、横型のバッチ式装置や枚葉式装置等の他の種々の処理装置を用いることもできる。また、全ての工程を一つの処理装置で実施する例を示したが、一部の工程(例えばエッチングやアニール)を他の装置で行ってもよい。例えば、第2の実施形態の方法を実施する際には、レーザー照射による第1のアニールを行う工程のみを、レーザー照射ユニットで行い、他の工程を縦型のバッチ式装置のような一つの処理装置で行うようにすることができる。
【0076】
また、上記実施形態では、基板として半導体基板(ウエハ)を例にとって説明したが、これに限らず、例えば、ガラス基板やセラミック基板等の他の基板であってもよい。
【符号の説明】
【0077】
10;基体
11;下地膜
12;第1のアモルファスシリコン膜
13;結晶核
14;結晶核形成膜
15;第2のアモルファスシリコン膜
16;シリコン結晶粒
17;結晶シリコン膜
20 照射領域
21 レーザー照射部
100;処理装置
101;処理容器
101a;外管
101b;内管
102;本体部
120;ガス供給機構
121;Si2H6ガス供給源
122;Cl2ガス供給源
123;H2ガス供給源
124;N2ガス供給源
147;排気口
151;排気装置
152;加熱機構
160;制御部
L レーザー
W;ウエハ(基板)