(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023092968
(43)【公開日】2023-07-04
(54)【発明の名称】光変調器及び光送信装置
(51)【国際特許分類】
G02F 1/035 20060101AFI20230627BHJP
H04B 10/516 20130101ALI20230627BHJP
【FI】
G02F1/035
H04B10/516
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021208306
(22)【出願日】2021-12-22
(71)【出願人】
【識別番号】000183266
【氏名又は名称】住友大阪セメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001081
【氏名又は名称】弁理士法人クシブチ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】宮崎 徳一
(72)【発明者】
【氏名】菅又 徹
【テーマコード(参考)】
2K102
5K102
【Fターム(参考)】
2K102AA22
2K102BA03
2K102BB01
2K102BB04
2K102BC04
2K102BD01
2K102CA04
2K102CA20
2K102CA21
2K102DA05
2K102DB05
2K102DB08
2K102DC04
2K102DC08
2K102DD05
2K102EA03
2K102EA08
2K102EA09
2K102EA16
2K102EA17
2K102EB11
2K102EB12
2K102EB16
2K102EB20
2K102EB30
5K102AA15
5K102AA17
5K102AD15
5K102AH02
5K102AH24
5K102AH27
5K102PH02
(57)【要約】
【課題】複数出力を有する駆動回路の一部の出力を用いて光変調素子を駆動する光変調器において、動作の不安定化を回避しつつ、消費電力を低減し又はそのサイズを小型化する。
【解決手段】光変調器(1)は、基板(30)に形成された光導波路(31)及び光導波路を伝搬する光波を制御する信号電極(41)を備えた光導波路素子と、2つの高周波信号を出力する駆動回路(17)と、駆動回路からの2つの高周波信号出力をそれぞれ終端する2つの終端抵抗と、を備え、駆動回路の一方の高周波信号の出力は、光導波路素子の信号電極を伝搬して、一方の終端抵抗である第1終端抵抗(15)により終端され、駆動回路の他方の高周波信号の出力は、他方の終端抵抗である第2終端抵抗(18)により終端され、第2終端抵抗の抵抗値R2は、第1終端抵抗の抵抗値R1より大きい。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板に形成された光導波路及び前記光導波路を伝搬する光波を制御する信号電極を備えた光導波路素子と、
2つの高周波信号を出力する駆動回路と、
前記駆動回路からの2つの高周波信号出力をそれぞれ終端する2つの終端抵抗と、
を備える光変調器であって、
前記駆動回路の一方の高周波信号の出力は、前記光導波路素子の前記信号電極を伝搬して、一方の前記終端抵抗である第1終端抵抗により終端され、
前記駆動回路の他方の高周波信号の出力は、他方の前記終端抵抗である第2終端抵抗により終端され、
前記第2終端抵抗の抵抗値は、前記第1終端抵抗の抵抗値より大きい、
光変調器。
【請求項2】
前記駆動回路が出力する前記2つの高周波信号は、互いに位相が反転した一対の差動信号である、
請求項1に記載の光変調器。
【請求項3】
前記第1終端抵抗の抵抗値と前記第2終端抵抗の抵抗値との和は、前記駆動回路の、前差動信号を構成する2つの高周波信号出力の差動インピーダンスと等しい、
請求項2に記載の光変調器。
【請求項4】
前記信号電極を駆動する前記一方の高周波信号の出力を終端する第1終端抵抗の抵抗値R1は、当該一方の高周波信号の出力の、前記駆動回路におけるグランド電位との間の出力インピーダンスの値Zlinに対し、
0.4×Zlin<R1≦Zlin
の範囲である、
請求項1ないし3のいずれか一項に記載の光変調器。
【請求項5】
前記出力インピーダンスの値Zlinは50Ωであり、
前記第1終端抵抗の抵抗値R1は45Ω以下である、
請求項4に記載の光変調器。
【請求項6】
前記光導波路素子の前記基板は、XカットのLiNbO3基板である、
請求項1ないし5のいずれか一項に記載の光変調器。
【請求項7】
前記一方の高周波信号の、前記駆動回路の出力から前記第1終端抵抗に至るまでの高周波伝送路の電気長L1と、前記他方の高周波信号の、前記駆動回路の出力から前記第2終端抵抗に至るまでの高周波伝送路の電気長L2と、は互いに異なっている、
請求項1ないし6のいずれか一項に記載の光変調器。
【請求項8】
前記電気長L1およびL2は、前記2つの高周波信号の前記高周波伝送路における平均波長λに対し、
(L1-L2)>λ/2
の関係を有する、
請求項7に記載の光変調器。
【請求項9】
請求項1ないし8のいずれか一項に記載の光変調器と、
前記光導波路素子に変調動作を行わせるための高周波信号である変調信号を生成する電子回路と、
を備える光送信装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光変調器及び光送信装置に関する。
【背景技術】
【0002】
高速/大容量光ファイバ通信システムにおいては、基板上に形成された光導波路と、光導波路を伝搬する光波を制御する制御電極と、で構成される光導波路素子としての光変調素子を組み込んだ光変調器が多く用いられている。光変調動作を行う光導波路素子としては、InP基板等の半導体基板を用いた半導体光変調素子、およびLiNbO3(以下、LNともいう)を基板に用いたLN光変調素子が実用化されている。
【0003】
特許文献1には、マッハツェンダ光導波路を含む半導体光変調素子を備えた半導体光変調モジュールが開示されている。この半導体光変調モジュールでは、HB-CDM(High Bandwidth Coherent Driver Modulator)という規格化された小型筐体を用い、マッハツェンダ型光導波路を構成する2つの並行導波路上のそれぞれに形成された電極に、互いに位相が反転した一対の差動信号を構成する2つの高周波電気信号(以下、高周波信号)のそれぞれが入力されることにより、光変調動作が行われる。このような半導体光変調素子を駆動するための差動信号を出力する駆動回路素子(高周波ドライバ)は、集積回路の形態で既に実用化され、市販されている。
【0004】
一方で、LN光変調素子は、半導体光変調素子に比べて光の損失が少なく且つ広帯域な光変調特性を実現し得ることから、高速/大容量光ファイバ通信システムに広く用いられているものの、上記HB-CDMに用いられるLN光変調素子を駆動するための専用の駆動回路素子は、その需要数が少ないこと等から未だ商用化されていない。このため、LN光変調素子を備える光変調器においても、半導体光変調モジュール用に開発され既に実用化された駆動回路素子を用いることができれば便宜である。
【0005】
しかしながら、LN基板として特にXカット基板を用いるLN光変調素子の場合には、特許文献2に記載のように、差動信号は不要であり、LN光変調素子を構成する各マッハツェンダ型光導波路の駆動には、2つの並行導波路の間に形成された一つの信号電極に一つの高周波電気信号を入力すれば足りる。
【0006】
このような、差動信号を用いない光変調素子において、上述のような差動信号を出力する駆動回路素子を流用する場合、差動信号を構成する一方の高周波信号の出力端子を上記信号電極に接続し、他方の高周波信号の出力端子を適切な手段で処置する必要がある。
【0007】
しかしながら、上記他方の出力端子の処置の仕方によっては、当該出力端子に接続された回路部品において発生し得る高周波信号の反射により駆動回路素子の動作が不安定となったり、当該出力端子から出力されて消費される不要な信号電力により駆動回路素子の全体としての電力消費が非効率な状態となり得る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2014-164243号公報
【特許文献2】特許第6933287号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上記背景より、本発明の目的は、差動信号のような複数の信号を出力する駆動回路の一部の信号出力を用いて光変調素子を駆動する光変調器において、動作の不安定化を回避しつつ、消費電力を低減し又はそのサイズを小型化することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の一の態様は、基板に形成された光導波路及び前記光導波路を伝搬する光波を制御する信号電極を備えた光導波路素子と、2つの高周波信号を出力する駆動回路と、前記駆動回路からの2つの高周波信号出力をそれぞれ終端する2つの終端抵抗と、を備える光変調器であって、前記駆動回路の一方の高周波信号の出力は、前記光導波路素子の前記信号電極を伝搬して、一方の前記終端抵抗である第1終端抵抗により終端され、前記駆動回路の他方の高周波信号の出力は、他方の前記終端抵抗である第2終端抵抗により終端され、前記第2終端抵抗の抵抗値は、前記第1終端抵抗の抵抗値より大きい、光変調器である。
本発明の他の態様によると、前記駆動回路が出力する前記2つの高周波信号は、互いに位相が反転した一対の差動信号である。
本発明の他の態様によると、前記第1終端抵抗の抵抗値と前記第2終端抵抗の抵抗値との和は、前記駆動回路の、差動信号を構成する2つの高周波信号の出力間の差動インピーダンスと等しい。
本発明の他の態様によると、前記信号電極を駆動する前記一方の高周波信号の出力を終端する第1終端抵抗の抵抗値R1は、当該一方の高周波信号の出力の、前記駆動回路におけるグランド電位との間の出力インピーダンスの値Zlinに対し、0.4×Zlin<R1≦Zlinの範囲である。
本発明の他の態様によると、前記出力インピーダンスの値Zlinは50Ωであり、前記第1終端抵抗の抵抗値R1は45Ω以下である。
本発明の他の態様によると、前記光導波路素子の前記基板は、XカットのLiNbO3基板である。
本発明の他の態様によると、前記一方の高周波信号の、前記駆動回路の出力から前記第1終端抵抗に至るまでの高周波伝送路の電気長L1と、前記他方の高周波信号の、前記駆動回路の出力から前記第2終端抵抗に至るまでの高周波伝送路の電気長L2と、は互いに異なっている。
本発明の他の態様によると、前記電気長L1およびL2は、前記2つの高周波信号の前記高周波伝送路における平均波長λに対し、(L1-L2)>λ/2の関係を有する。
本発明の他の態様は、上記いずれかの光変調器と、前記光導波路素子に変調動作を行わせるための高周波信号である変調信号を生成する電子回路と、を備える光送信装置である。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、差動信号のような複数の信号を出力する駆動回路の一部の信号出力を用いて光変調素子を駆動する光変調器において、動作の不安定化を回避しつつ、消費電力を低減し又はそのサイズを小型化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の第1の実施形態に係る光変調器の構成を示す図である。
【
図2】
図1に示す光変調器に用いられる光変調素子の構成を示す図である。
【
図3】駆動回路素子、信号電極、および終端抵抗が構成する電気回路の回路図である。
【
図4】第1の実施形態の変形例について説明するための図である。
【
図5】本発明の第2の実施形態に係る光送信装置の構成を示す図である。
【
図6】駆動回路素子内に終端抵抗を設ける例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態を説明する。
[1.第1実施形態]
まず、本発明の第1の実施形態について説明する。
図1は、本発明の第1の実施形態に係る、光導波路素子である光変調素子を用いた光変調器1の構成を示す図である。
光変調器1は、筐体2と、筐体2内に収容された光変調素子3と、を有する。光変調素子3は、例えば、DP-QPSK変調器構成である。筐体2は、例えば、業界規格であるHB-CDM規格(“Implementation Agreement for the High Bandwidth Coherent Driver Modulator (HB-CDM) OIF-HB-CDM-02.0”(July 15、2021、OIF発行))に準拠する。なお、筐体2は、最終的にはその開口部に板体であるカバー(不図示)が固定されて、その内部が気密封止される。
【0014】
筐体2には、光変調素子3の変調に用いる高周波電気信号を入力するための信号ピン4と、光変調素子3の動作点の調整等に用いる電気信号を入力するための信号ピン5と、が設けられている。なお、以下において、インピーダンスおよび抵抗値とは、それぞれ、光変調素子3の変調に用いられる上記高周波電気信号の周波数におけるインピーダンスおよび抵抗値をいうものとする。
【0015】
光変調器1は、また、筐体2内に光を入力するための入力光ファイバ6と、光変調素子3により変調された光を筐体2の外部へ導く出力光ファイバ7と、を筐体2の同一面に有する。
【0016】
入力光ファイバ6及び出力光ファイバ7は、固定部材であるサポート8及び9を介して筐体2にそれぞれ固定されている。入力光ファイバ6から入力された光は、サポート8内に配されたレンズ10によりコリメートされた後、レンズ11を介して光変調素子3へ入力される。ただし、これは一例であって、光変調素子3への光の入力は、従来技術に従い、例えば、入力光ファイバ6を、サポート8を介して筐体2内に導入し、当該導入した入力光ファイバ6の端面を光変調素子3の基板30(後述)の端面に接続することで行うものとすることもできる。
【0017】
光変調器1は、また、光変調素子3から出力される2つの変調された光を偏波合成する光学ユニット12を有する。光学ユニット12から出力される偏波合成後の光は、サポート9内に配されたレンズ13により集光されて出力光ファイバ7へ結合される。
【0018】
光変調器1の筐体2内には、また、中継基板14と、所定のインピーダンスを有する4つの終端抵抗15a、15b、15c、15dを備える終端器16が配されている。以下、終端抵抗15a、15b、15c、15dを総称して終端抵抗15ともいうものとする。
【0019】
中継基板14には、光変調素子3の4つのマッハツェンダ型光導波路に設けられた4つの信号電極41(後述)をそれぞれ駆動する4つの駆動回路素子17a、17b、17c、17dが搭載されている。以下、駆動回路素子17a、17b、17c、17dを総称して駆動回路素子17ともいうものとする。駆動回路素子17は、例えば、集積回路の形態で中継基板14に実装されている。
【0020】
駆動回路素子17は、それぞれ、互いに位相が反転した(すなわち、位相が180度ずれた)2つの高周波電気信号(以下、高周波信号という)である差動信号を増幅して2つの増幅された差動信号を出力する、2信号入力2信号出力型の増幅回路である。4つの駆動回路素子17にそれぞれ入力される4つの(すなわち4対の)差動信号は、例えば、信号ピン4を介して外部装置から与えられる。上記差動信号を構成する高周波信号は、例えば、マイクロ波帯の電気信号であって、IEEE規格に規定された例えばGバンド帯の周波数以上、具体的には0.2GHz以上の信号成分を含んだ電気信号である。
【0021】
中継基板14には、また、4つの終端抵抗18a、18b、18c、18dが実装されている。以下、終端抵抗18a、18b、18c、18dを総称して終端抵抗18ともいうものとする。
【0022】
駆動回路素子17が出力する差動信号である2つの高周波信号のうち、一方の高周波信号は、光変調素子3の一の信号電極41に入力され、当該信号電極41を伝搬した後、一の終端抵抗15により終端される。また、駆動回路素子17が出力する差動信号である2つの高周波信号のうち、他方の高周波信号は、中継基板14上に実装された一の終端抵抗18により終端される。
【0023】
光変調素子3と、中継基板14および終端器16と、の間の電気的接続は、例えばワイヤボンディング等により行われる。
【0024】
図2は、DP-QPSK変調器である光変調素子3の構成の一例を示す図である。
図2には、中継基板14の一部と終端器16も示されている。
光変調素子3は、基板30上に形成された光導波路31(図示太線点線の全体)で構成され、例えば200GのDP-QPSK変調を行う。基板30は、例えば、20μm以下(例えば2μm)の厚さに加工され薄膜化された、電気光学効果を有するXカットのLN基板である。また、光導波路31は、薄膜化された基板30の表面に形成された、帯状に延在する凸部で構成された凸状光導波路(例えば、リブ型光導波路又はリッジ型光導波路)である。ここで、LN基板は、応力が加わると光弾性効果により屈折率が局所的に変化し得るため、基板全体の機械強度を補強すべく、一般的にはSi(シリコン)基板やガラス基板、LN等の支持板に接着される。
【0025】
基板30は、例えば矩形であり、図示上下方向に延在して対向する図示左右の2つの辺32a、32b、および図示左右方向に延在して対向する図示上下の辺32c、32dを有する。
【0026】
光導波路31は、基板30の図示右方の辺32bの図示上側において入力光ファイバ6からの入力光(図示右方を向く矢印)を受ける入力導波路33と、入力された光を同じ光量を有する2つの光に分岐する分岐導波路34と、を含む。また、光導波路31は、分岐導波路34により分岐されたそれぞれの光を変調する2つの変調部である、いわゆるネスト型マッハツェンダ型光導波路35a、35bを含む。
【0027】
ネスト型マッハツェンダ型光導波路35aおよび35bは、基板30の図示左部分において光の伝搬方向が180度折り返され、出力導波路36aおよび36bにより基板30の辺32bから図示右方へ光を出力する。
【0028】
ネスト型マッハツェンダ型光導波路35a、35bは、それぞれ、一対の並行導波路を成す2つの導波路部分に設けられたそれぞれ2つのマッハツェンダ型光導波路37a、38a、および37b、38bを含む。
【0029】
マッハツェンダ型光導波路37aは、2本の並行導波路37a1、37a2を含み、マッハツェンダ型光導波路38aは、2本の並行導波路38a1及び38a2を含む。また、マッハツェンダ型光導波路37bは、2本の並行導波路37b1及び37b2を含み、マッハツェンダ型光導波路38bは、2本の並行導波路38b1及び38b2を含む。
【0030】
基板30上の図示左部分で折り返されたネスト型マッハツェンダ型光導波路35a、35bの図示上部分には、ネスト型マッハツェンダ型光導波路35a、35bおよび4つのマッハツェンダ型光導波路37a、38a、37b、38bのそれぞれの、いわゆるDCドリフトによるバイアス点の変動を補償して動作点を調整するための、バイアス電極40a、40b、40cが設けられている。これらのバイアス電極40a、40b、40cは、ワイヤボンディングおよび中継基板14の導体パターン(不図示)を介して、筐体2の信号ピン5に接続される。
【0031】
また、基板30上の図示下部分には、ネスト型マッハツェンダ型光導波路35a、35bを構成する合計4つのマッハツェンダ型光導波路37a、38a、37b、38bのそれぞれに変調動作を行わせるための、信号電極41a、41b、41c、41dが設けられている。信号電極41a、41b、41c、41dを総称して信号電極41ともいうものとする。
【0032】
信号電極41a、41b、41c、41dの図示左方は、基板30の図示左側の辺32aまで延在し、それぞれ、パッド42a、42b、42c、42dに接続されている。また、信号電極41a、41b、41c、41dの図示右方は、図示下方へ折れ曲がって基板30の辺32dまで延在し、パッド43a、43b、43c、43dに接続されている。
【0033】
なお、信号電極41a、41b、41c、41dは、従来技術に従い、基板30上に形成されたグランド導体パターン(不図示)と共に、例えば、所定のインピーダンスZmを有するコプレーナ伝送線路を構成している。グランド導体パターンは、例えば、光導波路31の上には形成されないように設けられ、グランド導体パターンのうち光導波路31により分割されて形成される複数の領域間は、例えばワイヤボンディング等により互いに接続されるものとすることができる。
【0034】
信号電極41a、41b、41c、41dの図示左方のパッド42a、42b、42c、42dは、これらのパッドにボンディングされたワイヤおよび中継基板14上の導体パターンを介して、駆動回路素子17a、17b、17c、17dのそれぞれの、差動信号を構成する一方の高周波信号の出力端子50a、50b、50c、50dに接続されている。また、信号電極41a、41b、41c、41dの図示右下方のパッド43a、43b、43c、43dは、ボンディングワイヤを介して終端器16内の終端抵抗15a、15b、15c、15dの一端に接続されている。終端抵抗15a、15b、15c、15dの他端は、それぞれ、例えば、終端器16の構成する基板に設けられたグランドライン(不図示)に接続される。
【0035】
一方、駆動回路素子17a、17b、17c、17dのそれぞれの、差動信号を構成する他方の高周波信号の出力端子51a、51b、51c、51dは、それぞれ、中継基板14上の導体パターンを介して、中継基板14上に実装された終端抵抗18a、18b、18c、18dの一端に接続されている。また、終端抵抗18a、18b、18c、18dの他端は、中継基板14に設けられたグランドパターン(不図示)に接続されている。
【0036】
以下、駆動回路素子17a、17b、17c、17dの出力端子50a、50b、50c、50dを総称して出力端子50ともいい、出力端子51a、51b、51c、51dを総称して出力端子51ともいうものとする。
【0037】
ここで、駆動回路素子17は、例えば、差動信号を構成する2つの高周波信号の出力端子50および51のそれぞれと、グランド電位と、の間で測った出力インピーダンスであるラインインピーダンスが、互いに等しい値Zlinを有している。このラインインピーダンスZlinは、例えば50Ωである。また、駆動回路素子17の、上記差動信号の出力端子50と51との間で測った出力インピーダンスである差動インピーダンスZdifは、100Ωである。
【0038】
上記の構成を有する光変調器1では、増幅された差動信号を出力する駆動回路素子17の一方の出力端子50から出力される高周波信号は、それぞれ、対応する信号電極41を伝搬したのち、終端抵抗15により終端される。また、駆動回路素子17の他方の出力端子51から出力される高周波信号は、それぞれ、中継基板14に実装された対応する終端抵抗18により終端される。ここで、終端抵抗15および18は、それぞれ、本開示における第1終端抵抗および第2終端抵抗に対応する。
【0039】
図3は、駆動回路素子17と、その負荷としての信号電極41および終端抵抗15、18と、を回路記号により表したものである。
図3において、第1終端抵抗である終端抵抗15の抵抗値はR1、第2終端抵抗である終端抵抗18の抵抗値はR2、駆動回路素子17が出力する高周波信号の信号周波数における信号電極41のインピーダンスはZmである。また、
図3には、ラインインピーダンスZlinを用いて駆動回路素子17の出力等価回路も示されている。なお、出力端子50と51との間で測った駆動回路素子17の出力の差動インピーダンスZdifは、2×Zlinである。
【0040】
本実施形態では、特に、光変調器1は、第1終端抵抗である終端抵抗15の抵抗値R1に対し、第2終端抵抗である終端抵抗18の抵抗値R2が大きい値に設定されている。すなわち、R1およびR2は、次式の関係を有する。
R2>R1 (1)
【0041】
従来、駆動回路素子17のような2入力2出力型の高周波増幅回路では、2つの出力は、その高周波増幅回路の出力インピーダンスとほぼ同じであって且つ互いに同じインピーダンスを持つ負荷により終端され、ほぼ同じ電力を出力するように用いられる。
これに対し、本実施形態では、駆動回路素子17の2つの高周波信号出力のそれぞれに接続される終端抵抗15および18の抵抗値R1およびR2は、互いに異なった値を持つ。
【0042】
一般に、電流や高周波などの電気エネルギーは抵抗の少ない部分を通り易く、抵抗値の高い所は通り難い性質を持つ。このため、駆動回路素子17のような2出力型の増幅回路の2つの出力にそれぞれ接続される終端抵抗の抵抗値を互いに異なる値にすることによって(すなわち、非対称にすることによって)、増幅回路の2つの出力の出力電力を非対称化することができる。
【0043】
本実施形態では、上記のように、駆動回路素子17の2つの高周波信号出力のうち、一方の高周波信号出力は、光変調素子3の信号電極41を伝搬したのち、抵抗値R1をもつ終端抵抗15により終端され、他方の高周波信号出力はR1より大きな抵抗値R2をもつ終端抵抗18により終端されている。これにより、駆動回路素子17の2つの高周波信号出力のうち、信号電極41を伝搬する一方の高周波信号出力の出力電力に対し、他方の高周波信号出力の出力電力を低減して、駆動回路素子17の消費電力を低減することができる。また、信号電極41を伝搬する高周波信号出力電力が増加する分、駆動回路素子17に供給する電力を低減し、低消費電力化する事も可能である。しかも、この低消費電力化は、駆動回路素子17の差動信号出力に接続される終端抵抗15,18の抵抗値R1、R2を変えるだけで行うことができるので、大きな設計変更を伴うことなく、非常に簡易的に実現することができる。
【0044】
その結果、本実施形態の光変調器1では、駆動回路素子17の2つの高周波信号出力が同じ抵抗値により終端される上記従来の構成に比べて、光変調器1の全体としての消費電力を、容易に低減することができる。
【0045】
また、同様の理由から、駆動回路素子17を従来構成と同じ消費電力で駆動した場合には、従来に比べて、信号電極41へ出力する一方の高周波信号の電力を他方の高周波信号の電力より大きくすることができるので、信号電極41の長さを短くすることができ、光変調器1の変調動作の広帯域化およびサイズの小型化が容易となる。
【0046】
さらに、特許文献1に記載のような、駆動回路素子から出力される差動信号の双方の高周波信号を変調動作に用いる構成では、それぞれの高周波信号出力のラインインピーダンスと終端抵抗とを整合させる(すなわち、2つの終端抵抗の抵抗値の対称性を確保する)と共に、2つ高周波信号出力の差動インピーダンスと上記終端抵抗の合成抵抗値とを整合させる必要があり、これらの整合が不完全な場合には、光変調素子の光変調動作が不安定となり得る。
【0047】
これに対し、本実施形態の光変調器1では、差動信号を構成する2つの高周波信号のうちの一方の高周波信号のみを変調動作に用いるので、上記従来構成に比べて、ラインインピーダンスと終端抵抗とのインピーダンスミスマッチや、2つの終端抵抗の抵抗値の対称性の崩れがあっても、上記光変調動作や増幅動作における不安定性の発生を生じにくい。
【0048】
なお、差動信号を増幅する駆動回路素子の中には、差動信号出力を構成する2つの高周波信号の出力電力を等価する(すなわち、これらの出力電力が互いに等しくなるように制御する)等価回路を備えるものが存在し得る。ただし、本実施形態の構成は、駆動回路素子17の差動信号出力間において、それらの出力に接続される終端抵抗の抵抗値を非対称として出力電力の大きさを非対称とするものであるので、駆動回路素子17としては、上記のような出力電力の等価回路を含まないことが望ましい。
【0049】
以下、本実施形態の光変調器1における、それぞれの駆動回路素子17に接続される終端抵抗15および18の抵抗値R1およびR2の関係についての、いくつかの態様について説明する。なお、光変調器1においては、4つの駆動回路素子17について、以下に示すいずれかの一の態様が共通的に適用されるものとしてもよいし、互いに異なる態様が適用されてもよい。
【0050】
[1.1 第1の態様]
本実施形態の第1の態様として、終端抵抗18の抵抗値R2は、終端抵抗18における高周波信号の反射を抑制し得るように、駆動回路素子17のラインインピーダンスZlinと同じ値に設定され、終端抵抗15の抵抗値R1は、終端抵抗18の抵抗値R2よりも小さく設定される。すなわち、R1、R2、Zlinが、次式の関係を有するように設定される。
R2=Zlin>R1 (2)
【0051】
具体的には、例えば、駆動回路素子17のラインインピーダンスZlin、信号電極41のインピーダンスZm、および終端抵抗18の抵抗値R2は50Ω、終端抵抗15の抵抗値R1は40Ωに設定される。
【0052】
上述した第1の態様を示す式(2)において、第1終端抵抗である終端抵抗15の抵抗値R1をより小さくすれば、これに伴って駆動回路素子17から信号電極41に出力される高周波信号の信号電力は増加する。したがって、信号電極41に出力される信号電力を増加する観点からは、例えば、駆動回路素子17のラインインピーダンスが50Ωである場合には、終端抵抗15の抵抗値R1は、50Ω未満、例えば45Ω以下であることが望ましく、40Ω以下であれば更に効果的である。
【0053】
ただし、終端抵抗15の抵抗値R1を、駆動回路素子17のラインインピーダンスZlinに比べて大きく下げて設定した場合には、終端抵抗15において、インピーダンスミスマッチによる高周波信号の反射を増大させてしまうこととなり得る。この場合、終端抵抗15において反射された高周波信号(以下、反射高周波信号)が駆動回路素子17の出力端子50に到達し、駆動回路素子17の動作を不安定にしてしまうことともなり得る。したがって、終端抵抗15における高周波信号の反射を抑えて駆動回路素子17の動作の安定性を確保する観点から、駆動回路素子17のラインインピーダンスZlinと、終端抵抗15の抵抗値R1とは、次式の関係を有することが望ましい。
0.4Zlin<R1<Zlin (3)
【0054】
[1.2 第2の態様]
本実施形態の光変調器1における、終端抵抗15、18の抵抗値R1、R2の第2の態様として、終端抵抗15の抵抗値R1は、終端抵抗15における高周波信号の反射を抑制し得るように、駆動回路素子17のラインインピーダンスZlinと同じ値に設定され、終端抵抗18の抵抗値R2が、終端抵抗15の抵抗値R1よりも大きく設定される。すなわち、R1、R2、Zlinが、次式の関係を有するように設定される。
R2>R1=Zlin (4)
【0055】
具体的には、例えば、駆動回路素子17のラインインピーダンスZlin、信号電極41のインピーダンスZm、および終端抵抗15の抵抗値R1は50Ω、終端抵抗18の抵抗値R2は60Ωに設定され得る。
【0056】
式(4)で示される態様によれば、終端抵抗15の抵抗値R1は、駆動回路素子17のラインインピーダンスZlinと整合しているため、終端抵抗15における反射高周波信号の発生が抑制され、したがってこの反射高周波信号により光変調素子3の光変調動作が不安定となることが抑制される。すなわち、本態様は、インピーダンス不整合により光変調動作に悪影響が及ぶのを抑制しつつ、光変調器1として低電力化を図りたい場合等に好適である。
【0057】
[1.3 第3の態様]
本実施形態の光変調器1における、終端抵抗15、18の抵抗値R1、R2の第3の態様として、終端抵抗15および18の抵抗値R1およびR2は、それらの和が駆動回路素子17の差動インピーダンスZdifと同じ値である範囲において、抵抗値R2が、駆動回路素子17のラインインピーダンスZlinより大きく、且つ抵抗値R1が、駆動回路素子17のラインインピーダンスZlinより小さく設定されている。すなわち、R1、R2、Zlin、およびZdifが、次式の関係を有するように設定されている。
R1+R2=Zdif かつ、
R2>Zlin>R1 (5)
【0058】
具体的には、例えば、駆動回路素子17の差動インピーダンスZdifおよびラインインピーダンスZlinは、それぞれ、100Ωおよび50Ω、信号電極41のインピーダンスZmは50Ωであり、終端抵抗15の抵抗値R1は40Ω、終端抵抗18の抵抗値R2は60Ωである。
【0059】
式(5)で示される態様によれば、終端抵抗15および18の合成抵抗値と駆動回路素子17の差動インピーダンスとの整合状態を確保することで駆動回路動作の不安定化が抑制され得るので、抵抗値R1とR2との差をより大きく設定し得る。このため、本態様では、駆動回路素子17から信号電極41へ出力される高周波信号の信号電力に対し、駆動回路素子17から終端抵抗18へ出力される高周波信号の信号電力を、より低減することができる。
【0060】
[1.4 第4の態様]
本実施形態の光変調器1における、終端抵抗15、18の抵抗値R1、R2の第4の態様として、終端抵抗15および18の抵抗値R1およびR2は、共に駆動回路素子17のラインインピーダンスZlinよりも小さく、かつ、上述の式(1)を満たすように設定される。すなわち、R1、R2、およびZlinが、次式の関係を有するように設定されている。
Zlin>R2>R1 (6)
【0061】
具体的には、例えば、駆動回路素子17のラインインピーダンスZlinおよび信号電極41のインピーダンスZmは50Ωであり、終端抵抗15の抵抗値R1は30Ω、終端抵抗18の抵抗値R2は40Ωである。
【0062】
式(6)で示される態様においても、終端抵抗18の抵抗値R2は、終端抵抗15の抵抗値R1より大きな値に設定されるので、駆動回路素子17から信号電極41へ出力される高周波信号の信号電力に比べて、駆動回路素子17から終端抵抗18へ出力される高周波信号の信号電力を低減することができる。ただし、本態様においては、終端抵抗15および18の抵抗値R1及びR2は、いずれも駆動回路素子17のラインインピーダンスと異なるので、終端抵抗15および18における高周波信号の反射によって生ずる反射高周波信号は、他の態様に比べて大きくなり得る。したがって、本態様は、駆動回路素子17が、出力端子50および51から入射する反射高周波信号に対して耐性のある場合に適用され得る。
【0063】
なお、ラインインピーダンスZlinは、本実施形態では50Ωとしたが、この値に限定されるものでは無く、例えば40Ω等の他の値であっても良い。
【0064】
[2.第1実施形態の変形例]
次に、本実施形態に係る光変調器1の変形例について説明する。
差動信号を増幅して出力する駆動回路素子17のような2入力2出力型の増幅回路では、2つの出力端子にそれぞれ入射する2つの反射高周波信号の位相や強度が揃っていると、反射高周波信号同士の干渉によって、回路動作に大きな影響を受けることとなり得る。
【0065】
このため、一般に、差動信号を出力する増幅回路を用いる場合には、差動信号出力を構成する2つの高周波信号出力のそれぞれに対する終端抵抗の抵抗値も、それらの終端抵抗に至るまでの2つの伝送路の電気長も、互いに同じとなるように設計される。
【0066】
しかしながら、上記従来構成のように2つの伝送路の電気長を互いにほぼ同じ長さにした状態で、本実施形態のように2つの終端抵抗の抵抗値を異なるものとすると、2つの終端抵抗において発生した反射高周波信号は、2つの伝送路を同じ電気長に亘って逆伝搬し、増幅回路の内部において互いに干渉して、増幅動作に悪影響を与え得る。
【0067】
これを避けるため、本変形例では、
図4に示すように、駆動回路素子17の出力端子50から終端抵抗15までの、信号電極41を含む高周波伝送路の電気長L1と、出力端子51から終端抵抗18に至るまでの、中継基板14上における高周波伝送路の電気長L2とを、互いに異ならせる。この構成は、上述した抵抗値R1およびR2についての第1ないし第4の態様のいずれにおいても適用することができる。
【0068】
これにより、終端抵抗15および18において発生し得る反射高周波信号は、駆動回路素子17に到達する際には、異なる位相及び異なる強度を有するものとなるので、駆動回路素子17におけるこれらの反射高周波信号の干渉を抑制して、反射高周波信号(すなわち、戻り電気信号)が回路動作に与える悪影響を効果的に抑制することができる。
【0069】
なお、光変調器1の構成においては、電気長L1の中に光変調素子3の信号電極41の電気長が含まれることから、電気長L1およびL2は、L1>L2の関係となるように設定することが好ましい。
【0070】
また、反射高周波信号の干渉をより抑制する観点から、電気長L1およびL2は、次式の関係を有することが更に好ましい。
(L1-L2)>λ/2 (7)
ここで、λは、駆動回路素子17が出力する差動信号(高周波信号)の、高周波伝送路における波長である。
【0071】
一例として、差動高周波信号の平均周波数が20GHzの場合、真空中のマイクロ波の波長は約15mmであるので、それぞれの高周波伝送路の実行屈折率を2とすれば、λ/2は、3.75mmとなる。よって、この場合には、電気長の差(L1-L2)が3.75mmより長くなるように、終端抵抗15、18までの高周波伝送路を設計することが好ましい。
【0072】
[3.第2実施形態]
次に、本発明の第2の実施形態について説明する。本実施形態は、第1の実施形態に係る光変調器1を搭載した光送信装置60である。
図5は、本実施形態に係る光送信装置60の構成を示す図である。この光送信装置60は、光変調器1と、光源61と、変調信号生成部62と、を有する。変調信号生成部62は、光変調器1に変調動作を行わせるための高周波信号(変調信号)を生成する電子回路である。変調信号生成部62は、例えば、外部から与えられる送信データに基づき、光変調器1が備える光変調素子3の4つの信号電極41に対応する4つの変調信号を、それぞれ差動信号の形で光変調器1に入力する。これにより、光変調器1は、入力光ファイバ6から入射される光源61からの光を変調し、出力光ファイバ7を介して変調光を出力する。
【0073】
上記構成の光送信装置60では、上述した光変調器1を用いているので、装置全体を安価に構成しつつ、その消費電力を低減し又はそのサイズを小型化することができる。
【0074】
[4.他の実施形態]
なお、本発明は上記実施形態の構成およびその代替構成に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の態様において実施することが可能である。
【0075】
例えば、駆動回路素子17が出力する差動信号のうち光変調素子3の駆動に用いられない方の高周波信号を終端する終端抵抗18は、上述した実施形態では、中継基板14上に実装されるものとしたが、
図6に示す駆動回路素子17-1のように、当該素子の内部に備えられていてもよい。
【0076】
また、駆動回路素子17は、上述した実施形態では互いに位相が反転した2つの高周波信号で構成される差動信号を出力するものとしたが、同位相の複数の高周波信号を出力するものであってもよい。この場合でも、そのような複数の高周波信号の一部を用いて光変調素子3を駆動する場合には、上述した実施形態のように、光変調素子3の駆動に用いる高周波信号の終端抵抗の抵抗値に対し、上記駆動に用いない高周波信号の終端抵抗の抵抗値を大きくすることで、光変調素子3の駆動に用いられない高周波信号として消費される電力を低減することができる。これにより、駆動回路素子17の消費電力を低減し、又は駆動に用いられる信号の電力をより大きくして信号電極41の長さを短くすることができるので、光変調器1としての消費電力を低減し、又はそのサイズを小型化することができる。
【0077】
[5.上記実施形態によりサポートされる構成]
上記の実施形態および変形例は、以下の構成をサポートする。
【0078】
(構成1)基板に形成された光導波路及び前記光導波路を伝搬する光波を制御する信号電極を備えた光導波路素子と、2つの高周波信号を出力する駆動回路と、前記駆動回路からの2つの高周波信号出力をそれぞれ終端する2つの終端抵抗と、を備える光変調器であって、前記駆動回路の一方の高周波信号の出力は、前記光導波路素子の前記信号電極を伝搬して、一方の前記終端抵抗である第1終端抵抗により終端され、前記駆動回路の他方の高周波信号の出力は、他方の前記終端抵抗である第2終端抵抗により終端され、前記第2終端抵抗の抵抗値は、前記第1終端抵抗の抵抗値より大きい、光変調器。
構成1の光変調器によれば、差動信号のような複数の信号出力を有する駆動回路の一部の信号出力を用いて光変調素子を駆動する場合に、光変調素子の駆動に用いられない信号出力の消費電力を低減することができる。このため、光変調器を、市場において安価に調達し得る差動信号増幅器のような駆動回路を用いて安価に構成しつつ、その消費電力を低減し又はそのサイズを小型化することができる。
【0079】
(構成2)前記駆動回路が出力する前記2つの高周波信号は、互いに位相が反転した一対の差動信号である、構成1に記載の光変調器。
構成2の光変調器によれば、例えば、既に商用化されている安価かつ高信頼な差動信号増幅素子を用いて、消費電力の増加を招くことなく、光変調器を構成することができる。
【0080】
(構成3)前記第1終端抵抗の抵抗値と前記第2終端抵抗の抵抗値との和は、前記駆動回路の、前差動信号を構成する2つの高周波信号出力の差動インピーダンスと等しい、構成2に記載の光変調器。
構成3の光変調器によれば、駆動回路の出力の差動インピーダンスと、第1終端抵抗と第2終端抵抗の合成抵抗値と、が整合するように構成されるので、第1終端抵抗および第2終端抵抗において発生し得る反射高周波信号が駆動回路動作の安定性に与える悪影響を抑制することができる。
【0081】
(構成4)前記信号電極を駆動する前記一方の高周波信号の出力を終端する第1終端抵抗の抵抗値R1は、当該一方の高周波信号の出力の、前記駆動回路におけるグランド電位との間の出力インピーダンスの値Zlinに対し、0.4×Zlin<R1≦Zlinの範囲である、構成1ないし3のいずれかに記載の光変調器。
構成4の光変調器によれば、第1終端抵抗における高周波信号の反射を抑えて駆動回路の動作が不安定となるのを回避することができる。
【0082】
(構成5)前記出力インピーダンスの値Zlinは50Ωであり、前記第1終端抵抗の抵抗値R1は45Ω以下である、構成4に記載の光変調器。
構成5の光変調器によれば、第1終端抵抗における高周波信号の反射を抑えて駆動回路の動作の安定性を維持することができる。
【0083】
(構成6)前記光導波路素子の前記基板は、XカットのLiNbO3基板である、構成1ないし5のいずれかに記載の光変調器。
構成6の光変調器によれば、LN基板を用いた光変調器において、差動信号のような複数の高周波信号の信号出力を有する駆動回路の一部の信号出力を用いて光変調素子を駆動する場合でも、光変調素子としての消費電力を低減し又はそのサイズを小型化することができる。
【0084】
(構成7)前記一方の高周波信号の、前記駆動回路の出力から前記第1終端抵抗に至るまでの高周波伝送路の電気長L1と、前記他方の高周波信号の、前記駆動回路の出力から前記第2終端抵抗に至るまでの高周波伝送路の電気長L2と、は互いに異なっている、構成1ないし6のいずれかに記載の光変調器。
構成7の光変調器によれば、第1終端抵抗および第2終端抵抗において生じ得る2つの反射高周波信号の互いの干渉により駆動回路の動作が不安定となるのを更に回避することができる。
【0085】
(構成8)前記電気長L1およびL2は、前記2つの高周波信号の前記高周波伝送路における平均波長λに対し、(L1-L2)>λ/2の関係を有する、構成7に記載の光変調器。
構成8の光変調器によれば、第1終端抵抗および第2終端抵抗において生じ得る2つの反射高周波信号の互いの干渉により駆動回路の動作が不安定となるのをより効果的に回避することができる。
【0086】
(構成9)構成1ないし8のいずれかに記載の光変調器と、前記光導波路素子に変調動作を行わせるための高周波信号である変調信号を生成する電子回路と、を備える光送信装置。
構成9の光送信装置によれば、構成1ないし8のいずれかに記載の光変調器を用いているので、光送信装置を安価に構成しつつ、その消費電力を低減し又はそのサイズを小型化することができる。
【符号の説明】
【0087】
1…光変調器、2…筐体、3…光変調素子、4、5…信号ピン、6…入力光ファイバ、7…出力光ファイバ、8、9…サポート、10、11、13…レンズ、12…光学ユニット、14…中継基板、15、15a、15b、15c、15d、18、18a、18b、18c、18d…終端抵抗、16…終端器、17、17a、17b、17c、17d…駆動回路素子、30…基板、31…光導波路、32a、32b、32c、32d…辺、33…入力導波路、34…分岐導波路、35、35a、35b…ネスト型マッハツェンダ型光導波路、36a、36b…出力導波路、37a、37b、38a、38b…マッハツェンダ型光導波路、37a1、37a2、37b1、37b2、38a1、38a2、38b1、38b2…並行導波路、40a、40b、40c…バイアス電極、41、41a、41b、41c、41d…信号電極、42a、42b、42c、42d、43a、43b、43c、43d…パッド、50、50a、50b、50c、50d、51、51a、51b、51c、51d…出力端子、60…光送信装置、61…光源、62…変調信号生成部。