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特開2023-93004真空蒸着装置、自転角度判定方法及び被蒸着物の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023093004
(43)【公開日】2023-07-04
(54)【発明の名称】真空蒸着装置、自転角度判定方法及び被蒸着物の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C23C 14/54 20060101AFI20230627BHJP
   C23C 14/52 20060101ALI20230627BHJP
【FI】
C23C14/54 C
C23C14/52
【審査請求】未請求
【請求項の数】23
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021208370
(22)【出願日】2021-12-22
(71)【出願人】
【識別番号】000231464
【氏名又は名称】株式会社アルバック
(74)【代理人】
【識別番号】110003339
【氏名又は名称】弁理士法人南青山国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】田中 美和
(72)【発明者】
【氏名】市川 竜弥
【テーマコード(参考)】
4K029
【Fターム(参考)】
4K029AA24
4K029CA01
4K029DA03
4K029DA10
4K029DA12
4K029DB21
4K029JA03
(57)【要約】
【課題】被蒸着物が自公転可能な真空蒸着装置において、被蒸着物の自転角度を正確に判定することができる技術を提供すること。
【解決手段】本技術に係る真空蒸着装置は、複数のホルダと、撮像部と、制御部とを具備する。前記複数のホルダは、蒸着物が蒸着される被蒸着物をそれぞれ保持可能であり、公転軸の周りをそれぞれ自転しながら公転可能とされる。前記撮像部は、被蒸着物を保持した前記複数のホルダのうち少なくとも1つのホルダを撮像可能とされる。前記制御部は、前記撮像部により撮像された画像に基づき、前記被蒸着物の自転角度を判定する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
蒸着物が蒸着される被蒸着物をそれぞれ保持可能であり、公転軸の周りをそれぞれ自転しながら公転可能な複数のホルダと、
被蒸着物を保持した前記複数のホルダのうち少なくとも1つのホルダを撮像可能な撮像部と、
前記撮像部により撮像された画像に基づき、前記被蒸着物の自転角度を判定する制御部と
を具備する真空蒸着装置。
【請求項2】
請求項1に記載の真空蒸着装置であって、
前記制御部は、前記被蒸着物を自公転させながら被蒸着物に蒸着を行う動的蒸着モードと、前記被蒸着物を静止させて被蒸着物に蒸着を行う静的蒸着モードとを切り換える
をさらに具備する真空蒸着装置。
【請求項3】
請求項2に記載の真空蒸着装置であって、
前記制御部は、前記静的蒸着モードにおいて、前記撮像部に撮像を行わせて前記被蒸着物の自転角度を判定する
真空蒸着装置。
【請求項4】
請求項1~3のうちいずれか1項に記載の真空蒸着装置であって、
前記撮像部の画角は、前記ホルダが1回転自転したときに、前記ホルダが公転方向に移動する範囲を少なくとも含む
真空蒸着装置。
【請求項5】
請求項1~4のうちいずれか1項に記載の真空蒸着装置であって、
前記公転軸に垂直な方向の軸回りに前記ホルダを回動させて、前記被蒸着物に対する前記蒸着物の入射角度を調整する入射角度調整機構
をさらに具備する真空蒸着装置。
【請求項6】
請求項5に記載の真空蒸着装置であって、
前記撮像部の画角は、前記入射角度の調整による前記ホルダの回動により、前記ホルダが摂動方向に摂動したときの摂動範囲を少なくとも含む
真空蒸着装置。
【請求項7】
請求項1~6のうちいずれか1項に記載の真空蒸着装置であって、
前記ホルダは、前記被蒸着物の自転角度の判定のためのマークを有する
真空蒸着装置。
【請求項8】
請求項7に記載の真空蒸着装置であって、
前記マークは、前記ホルダの自転軸から外れた位置に設けられ、前記ホルダの自公転に応じて、前記自転軸回りを回転する
真空蒸着装置。
【請求項9】
請求項8に記載の真空蒸着装置であって、
前記ホルダは、フランジ部を有し、
前記マークは、フランジ部に設けられる
真空蒸着装置。
【請求項10】
請求項9に記載の真空蒸着装置であって、
前記マークは、前記フランジ部を貫通する穴部である
真空蒸着装置。
【請求項11】
請求項8~10のうちいずれか1項に記載の真空蒸着装置であって、
前記制御部は、前記画像内におけるマークの位置及びホルダの中心位置に基づき、前記自転角度を判定する
真空蒸着装置。
【請求項12】
請求項1~11のうちいずれか1項に記載の真空蒸着装置であって、
前記制御部は、前記画像内におけるホルダを、前記ホルダの正面から見たように補正する補正処理を実行し、補正処理後の画像に基づいて、前記自転角度を判定する
真空蒸着装置。
【請求項13】
請求項1~12のうちいずれか1項に記載の真空蒸着装置であって、
真空チャンバと、
前記真空チャンバに設けられた第1の窓部とさらに具備し、
前記撮像部は、前記真空チャンバの外側から前記第1の窓部を介して前記ホルダを撮像する
真空蒸着装置。
【請求項14】
請求項13に記載の真空蒸着装置であって、
前記第1の窓部に前記蒸着物が蒸着することを防止する第1の防着部
をさらに具備する真空蒸着装置。
【請求項15】
請求項14に記載の真空蒸着装置であって、
前記第1の防着部は、前記真空チャンバの内部において、前記第1の窓部を遮蔽する遮蔽状態と、第1の窓部を露出させる露出状態とを切り換える第1のシャッタを含む
真空蒸着装置。
【請求項16】
請求項14又は15に記載の真空蒸着装置であって、
前記第1の防着部は、前記真空チャンバの内部において、前記第1の窓部と前記蒸着物の蒸着源との間に介在された防着板を含む
真空蒸着装置。
【請求項17】
請求項1~16のうちいずれか1項に記載の真空蒸着装置であって、
前記撮像部による撮像時に前記ホルダに対して光を照射する照明部
をさらに具備する真空蒸着装置。
【請求項18】
請求項17に記載の真空蒸着装置であって、
真空チャンバと、
前記真空チャンバに設けられた第2の窓部とさらに具備し、
前記照明部は、前記真空チャンバの外側から前記第2の窓部を介して前記ホルダに光を照射する
真空蒸着装置。
【請求項19】
請求項18に記載の真空蒸着装置であって、
前記第2の窓部に前記蒸着物が蒸着することを防止する第2の防着部
をさらに具備する真空蒸着装置。
【請求項20】
請求項19に記載の真空蒸着装置であって、
前記第2の防着部は、前記真空チャンバの内部において、前記第2の窓部を遮蔽する遮蔽状態と、第2の窓部を露出させる露出状態とを切り換える第2のシャッタを含む
真空蒸着装置。
【請求項21】
請求項1~20のうちいずれか1項に記載の真空蒸着装置であって、
前記複数のホルダにおける各自転軸を回転可能に支持し、前記公転軸回りを回転可能な回転体と、
前記ホルダに設けられ、前記ホルダによる自公転に応じて、前記自転軸回りを回転する目視用の第1のマークと、
前記回転体に設けられ、前記回転体による回転に応じて、前記公転軸回りを回転する目視用の第2のマークであって、前記ホルダが所定の自転角度となったときに前記目視用の第1のマークとその位置が一致する目視用の第2のマークと
をさらに具備する真空蒸着装置。
【請求項22】
蒸着物が蒸着される被蒸着物をそれぞれ保持可能であり、公転軸の周りをそれぞれ自転しながら公転可能な複数のホルダにおいて、前記被蒸着物を保持した前記複数のホルダのうち少なくとも1つのホルダを撮像部により撮像し、
前記撮像部により撮像された画像に基づき、前記被蒸着物の自転角度を判定する
自転角度判定方法。
【請求項23】
蒸着物が蒸着される被蒸着物をそれぞれ保持可能であり、公転軸の周りをそれぞれ自転しながら公転可能な複数のホルダにおいて、前記被蒸着物を保持した前記複数のホルダのうち少なくとも1つのホルダを撮像部により撮像し、
前記撮像部により撮像された画像に基づき、前記被蒸着物の自転角度を判定し、
判定された前記被蒸着物の自転角度に基づき、前記被蒸着物に蒸着物を蒸着させる
蒸着物が蒸着された被蒸着物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本技術は、真空蒸着装置などの技術に関する。
【背景技術】
【0002】
真空蒸着法は、真空中において、金属や酸化物などの蒸着材料を加熱して蒸発させ、その蒸気を基板等の被蒸着物に対して付着及び堆積させることで、被蒸着物に成膜を行う技術である。
【0003】
真空蒸着法の一種として、真空チャンバ内で基板などの被蒸着物を自公転させながら成膜を行う技術が知られている(例えば下記特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009-263762号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
被蒸着物が自公転可能な真空蒸着装置において、被蒸着物の自転角度を正確に判定することができる技術が求められている。
【0006】
以上のような事情に鑑み、本技術の目的は、被蒸着物が自公転可能な真空蒸着装置において、被蒸着物の自転角度を正確に判定することができる技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本技術に係る真空蒸着装置は、複数のホルダと、撮像部と、制御部とを具備する。
前記複数のホルダは、蒸着物が蒸着される被蒸着物をそれぞれ保持可能であり、公転軸の周りをそれぞれ自転しながら公転可能とされる。
前記撮像部は、被蒸着物を保持した前記複数のホルダのうち少なくとも1つのホルダを撮像可能とされる。
前記制御部は、前記撮像部により撮像された画像に基づき、前記被蒸着物の自転角度を判定する。
【0008】
これにより、被蒸着物が自公転可能な真空蒸着装置において、被蒸着物の自転角度を正確に判定することができる。
【0009】
上記真空蒸着装置において、前記制御部は、前記被蒸着物を自公転させながら被蒸着物に蒸着を行う動的蒸着モードと、前記被蒸着物を静止させて被蒸着物に蒸着を行う静的蒸着モードとを切り換えてもよい。
【0010】
上記真空蒸着装置において、前記制御部は、前記静的蒸着モードにおいて、前記撮像部に撮像を行わせて前記被蒸着物の自転角度を判定してもよい。
【0011】
上記真空蒸着装置において、前記撮像部の画角は、前記ホルダが1回転自転したときに、前記ホルダが公転方向に移動する範囲を少なくとも含んでいてもよい。
【0012】
上記真空蒸着装置において、前記公転軸に垂直な方向の軸回りに前記ホルダを回動させて、前記被蒸着物に対する前記蒸着物の入射角度を調整する入射角度調整機構をさらに具備していてもよい。
【0013】
上記真空蒸着装置において、前記撮像部の画角は、前記入射角度の調整による前記ホルダの回動により、前記ホルダが摂動方向に摂動したときの摂動範囲を少なくとも含んでいてもよい。
【0014】
上記真空蒸着装置において、前記ホルダは、前記被蒸着物の自転角度の判定のためのマークを有していてもよい。
【0015】
上記真空蒸着装置において、前記マークは、前記ホルダの自転軸から外れた位置に設けられ、前記ホルダの自公転に応じて、前記自転軸回りを回転してもよい。
【0016】
上記真空蒸着装置において、前記ホルダは、フランジ部を有し、前記マークは、フランジ部に設けられてもよい。
【0017】
上記真空蒸着装置において、前記マークは、前記フランジ部を貫通する穴部であってもよい。
【0018】
上記真空蒸着装置において、前記制御部は、前記画像内におけるマークの位置及びホルダの中心位置に基づき、前記自転角度を判定してもよい。
【0019】
上記真空蒸着装置において、前記制御部は、前記画像内におけるホルダを、前記ホルダの正面から見たように補正する補正処理を実行し、補正処理後の画像に基づいて、前記自転角度を判定してもよい。
【0020】
上記真空蒸着装置において、真空チャンバと、前記真空チャンバに設けられた第1の窓部とさらに具備し、前記撮像部は、前記真空チャンバの外側から前記第1の窓部を介して前記ホルダを撮像してもよい。
【0021】
上記真空蒸着装置において、前記第1の窓部に前記蒸着物が蒸着することを防止する第1の防着部をさらに具備していてもよい。
【0022】
上記真空蒸着装置において、前記第1の防着部は、前記真空チャンバの内部において、前記第1の窓部を遮蔽する遮蔽状態と、第1の窓部を露出させる露出状態とを切り換える第1のシャッタを含んでいてもよい。
【0023】
上記真空蒸着装置において、前記第1の防着部は、前記真空チャンバの内部において、前記第1の窓部と前記蒸着物の蒸着源との間に介在された防着板を含んでいてもよい。
【0024】
上記真空蒸着装置において、前記撮像部による撮像時に前記ホルダに対して光を照射する照明部をさらに具備していてもよい。
【0025】
上記真空蒸着装置において、真空チャンバと、前記真空チャンバに設けられた第2の窓部とさらに具備し、前記照明部は、前記真空チャンバの外側から前記第2の窓部を介して前記ホルダに光を照射してもよい。
【0026】
上記真空蒸着装置において、前記第2の窓部に前記蒸着物が蒸着することを防止する第2の防着部をさらに具備していてもよい。
【0027】
上記真空蒸着装置において、前記第2の防着部は、前記真空チャンバの内部において、前記第2の窓部を遮蔽する遮蔽状態と、第2の窓部を露出させる露出状態とを切り換える第2のシャッタを含んでいてもよい。
【0028】
上記真空蒸着装置において、前記複数のホルダにおける各自転軸を回転可能に支持し、前記公転軸回りを回転可能な回転体と、前記ホルダに設けられ、前記ホルダによる自公転に応じて、前記自転軸回りを回転する目視用の第1のマークと、前記回転体に設けられ、前記回転体による回転に応じて、前記公転軸回りを回転する目視用の第2のマークであって、前記ホルダが所定の自転角度となったときに前記目視用の第1のマークとその位置が一致する目視用の第2のマークとをさらに具備していてもよい。
【0029】
本技術に係る自転角度判定方法は、蒸着物が蒸着される被蒸着物をそれぞれ保持可能であり、公転軸の周りをそれぞれ自転しながら公転可能な複数のホルダにおいて、前記被蒸着物を保持した前記複数のホルダのうち少なくとも1つのホルダを撮像部により撮像し、
前記撮像部により撮像された画像に基づき、前記被蒸着物の自転角度を判定する。
【0030】
本技術に係る蒸着物が蒸着された被蒸着物の製造方法は、蒸着物が蒸着される被蒸着物をそれぞれ保持可能であり、公転軸の周りをそれぞれ自転しながら公転可能な複数のホルダにおいて、前記被蒸着物を保持した前記複数のホルダのうち少なくとも1つのホルダを撮像部により撮像し、前記撮像部により撮像された画像に基づき、前記被蒸着物の自転角度を判定し、判定された前記被蒸着物の自転角度に基づき、被蒸着物に蒸着物を蒸着させる。
【発明の効果】
【0031】
以上のように、本技術によれば、被蒸着物が自公転可能な真空蒸着装置において、被蒸着物の自転角度を正確に判定することができる技術を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
図1】本技術の一実施形態に係る真空蒸着装置を示す模式的な側面図である。
図2】真空蒸着装置の内部において、その上部を上側からみた模式図である模式図である。
図3A】各ホルダ及び各ウェハが自公転しているときの様子を上側から見た図である。
図3B】各ホルダ及び各ウェハが自公転しているときの様子を上側から見た図である。
図4】撮像対象ホルダを示す分解斜視図である。
図5】撮像対象ホルダにおける筒部及びフランジ部を上側から見た図である。
図6】撮像対象ホルダにおける他の例を示す図である。
図7】第1のシャッタ及び第2のシャッタを正面側から見た図である。
図8】撮像部による画角を説明するための図であり、撮像部による画像上での撮像対象ホルダ及びウェハの動きを示す図である。
図9】撮像部による画角と、第1のシャッタ及び第2のシャッタとの関係を示す図である。
図10】撮像部による画角と、防着板との関係を示す図である。
図11】制御装置における制御部の処理を示すフローチャートである。
図12】補正処理を説明するための図である。
図13】補正処理を予め記憶させる方法の一例を示す図である。
図14】撮像対象ホルダの自転角度がそれぞれ0°、30°、60°、90°、120°、150°、180°、210°、240°、270°、300°、330°である場合における補正処理後の画像を示す図である。
図15】ホルダ及びウェハの自転角度を判定するときの処理を示す図である。
図16】真空蒸着装置の内部において、その上部を上側からみた模式図であり、目視用のマークを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下、本技術に係る実施形態を、図面を参照しながら説明する。
【0034】
≪第1実施形態≫
<真空蒸着装置100の全体構成>
図1は、本技術の一実施形態に係る真空蒸着装置100を示す模式的な側面図である。図2は、真空蒸着装置100の内部において、その上部を上側からみた模式図である。図1に示すように、真空蒸着装置100は、真空容器としての真空チャンバ20を備えている。
【0035】
真空チャンバ20の内部において、その上側には、ウェハ1(被蒸着物)をそれぞれ保持可能な複数のホルダ10と、各ホルダ10にそれぞれ固定された自転軸21と、各自転軸21にそれぞれ固定された自転用歯車22とが配置されている。
【0036】
また、真空チャンバ20の内部において、その上側には、ホルダ10の自転軸21を回転可能に支持することが可能であり、公転軸23を中心軸として回転可能な回転体24と、ホルダ10の自転用歯車22と噛み合う固定歯車26とが配置されている。
【0037】
ここで、図2において、回転体24の下側のホルダ10や、ホルダ10の下側に保持されるウェハ1等は、回転体24の下側、ホルダ10下側等に隠れて本来見えないが、本実施形態を理解しやすいように、図2では、ホルダ10及びウェハ1等を実線で図示している。これについては、後述の図3A図3B、及び図16においても同様である。
【0038】
また、真空チャンバ20の内部において、その下側には、蒸着源としての蒸着材料を貯蔵する坩堝31と、坩堝31内の蒸着材料に対して電子ビームを照射することで、蒸着材料を加熱する電子ビーム装置32とが配置されている。
【0039】
また、真空チャンバ20の内部において、その下側には、坩堝31及び電子ビーム装置32を覆うように設けられた隔壁33と、隔壁33に設けられた開口を開閉可能な蒸着源用シャッタ34とが配置される。
【0040】
また、真空チャンバ20の外部には、真空チャンバ20の内部を真空排気する真空ポンプ41が設けられている。また、真空チャンバ20の外部には、ウェハ1を保持した複数のホルダ10のうち少なくも1つのホルダ10を撮像可能な撮像部43と、撮像部43による撮像時に撮像対象となるホルダ10(及びウェハ1)に対して光を照射する照明部44とが設けられている。
【0041】
また、真空チャンバ20の外部には、撮像部43により撮像された画像を表示する表示部45と、真空蒸着装置100の各部を統括的に制御する制御装置46とが設けられている。
【0042】
また、真空チャンバ20を構成する外壁部において、撮像部43に対応する位置には第1の窓部47が設けられており、照明部44に対応する位置には第2の窓部48が設けられている。
【0043】
真空チャンバ20内部において、第1の窓部47に対応する位置には、第1の窓部47に蒸着物が付着及び堆積してしまうことを防止するための第1の防着部51が設けられている。第1の防着部51は、第1のシャッタ53と、防着板54とを含む。
【0044】
真空チャンバ20の内部において、第2の窓部48に対応する位置には、第2の窓部48に蒸着物が付着及び堆積してしまうことを防止するための第2の防着部52が設けられている。第2の防着部52は、第2のシャッタ55を含む(防着板を含んでいてもよい)。
【0045】
<真空蒸着装置100の各部の構成の詳細>
固定歯車26は、円盤状に構成された外歯車であり、その外周面の下側には、ホルダ10の自転用歯車22と噛み合う複数の歯部が形成されている。真空チャンバ20内部において、その天面部には複数の支柱27が固定されており、固定歯車26は、これらの支柱27の下端部に固定されている。また、固定歯車26の中心位置には、公転軸23を挿通させるための貫通口が設けられている。
【0046】
公転軸23は、上下方向(Z軸方向)の軸であり、真空チャンバ20の内外に挿通している。公転軸23は、回転導入器62を介して真空チャンバ20の天面部に回転可能に軸支されている。回転導入器62は、フェローシール等により構成されており、公転軸23を回転可能に支持しつつ、真空チャンバ20内の気密性を保持することが可能とされている。公転軸23の上端部側は、モータ61に連結されており、公転軸23の下端部側は、回転体24の中心位置に固定されている。
【0047】
モータ61は、制御装置46(制御部)からの指令に応じて駆動し、その駆動により公転軸23を回転させる。モータ61に対してロータリエンコーダ等の回転角検出器が設けられていてもよく、この場合、回転角検出器による回転角の情報は、制御装置46に対してフィードバックされる。
【0048】
回転体24は、複数のホルダ10における各自転軸21を回転可能に軸支することが可能とされており、また、公転軸23を中心軸として回転可能とされている。回転体24は、円盤状に構成されており、その中心位置が公転軸23の下端部に固定されている。また、回転体24は、径方向の外周側において、周方向に均等な間隔で、各ホルダ10の自転軸21を回転可能に軸支している。
【0049】
回転体24において、ホルダ10の自転軸21を軸支する箇所よりも径方向の内側の位置には、入射角度調整機構25が設けられている。入射角度調整機構25は、公転軸23に垂直な方向の軸回りにホルダ10を回動させて、ウェハ1に対する蒸着物の入射角度を調整する。入射角度は、上下方向(Z軸方向)に対してホルダ10の下面及びウェハ1の表面がなす角度である。
【0050】
入射角度調整機構25は、例えば、ヒンジ機構等により構成される。入射角度調整機構25による入射角度の調整は、モータ等により自動で行われてもよいし、手動で行われてもよい。各ウェハ1における入射角度は、典型的には、各ウェハ1で共通の角度とされるが、一部のウェハ1における入射角度を他のウェハ1の入射角度とは異なるように設定することもできる。
【0051】
自転軸21は、回転体24に回転可能に軸支されている。自転軸21の上端部側は、自転用歯車22の回転中心に固定されており、自転軸21の下端部側は、ホルダ10の回転中心に固定されている。
【0052】
自転用歯車22は、円盤状に構成された外歯車であり、その外周面には、固定自転用歯車22と噛み合う複数の歯部が形成されている。固定歯車26及び自転用歯車22は、入射角度調整機構25によりホルダ10が回動したとしてもそれぞれの歯部が適切に噛み合うように設計されている。
【0053】
ここで、本実施形態におけるホルダ10の回動のための構成(入射角調整機構25、ホルダ回動時の固定歯車25、自転用歯車22の噛み合わせ構造等)は、自転軸21へ適切な駆動力が供せられる状態を保ちつつ、ウェハ1に対する蒸着物の入射角度を調整及び固定できる構成であれば、どのような構成であっても構わない。
【0054】
複数のホルダ10は、ウェハ1をそれぞれ保持可能であり、公転軸23の周りをそれぞれ自転しながら公転可能とされている。
【0055】
ウェハ1は、蒸着物が蒸着される被蒸着物の一例である。被蒸着物は、蒸着物が蒸着される対象物であればどのようなものであっても構わない。ウェハ1は、円盤状に構成されており、一部にオリエンテーション・フラット(以下、省略してオリフラと呼ぶ)による直線的な切り欠きを有している。
【0056】
また、本実施形態においては、ウェハ1には、その表面において特定の角度方向に延在する不図示の突起部又は溝部(あるいはこれらの両方)が設けられており、ウェハ1の表面だけでなく、突起部(特に、一方向に延在する側面)又は溝部(特に、一方向に延在する内壁面)に対しても蒸着物が蒸着される。
【0057】
図3A及び図3Bは、各ホルダ10及び各ウェハ1が自公転しているときの様子を上側から見た図である。図2及び図3を参照して、複数のホルダ10は、周方向に一定の間隔(60°)で配置されており、この一定の間隔を保ったまま、公転軸23の周りを自転しながら公転する。図に示す例では、ホルダ10の数が6つ(60°間隔)である場合の一例が示されているが、ホルダ10の数については、特に限定されず、適宜変更することができる。
【0058】
各ホルダ10(各ウェハ1)が自公転するときの公転速度、及び自転速度は、各ホルダ10(各ウェハ1)において共通である。本実施形態において、各ホルダ10(各ウェハ1)の公転方向は、上側からみて反時計回りである(下側(ホルダ10の正面側)から見て時計回り)。また、各ホルダ10(各ウェハ1)の自転方向は、上側から見て反時計回りである(下側(ホルダ10の正面側)から見て時計回り)。なお、自公転の回転方向は、逆であってもよい。
【0059】
図3A及び図3Bを参照して、各ホルダ10及び各ウェハ1における公転角度及び自転角度について説明する。各ホルダ10及び各ウェハ1における公転角度は、真空チャンバ20基準の座標系において、12時の位置が0°とされており、反時計回り(上側から見て)の方向が、角度が増える方向とされている。各ホルダ10及び各ウェハ1における自転角度は、公転軸23を基準としたオリフラの角度に基づき設定されており、反時計回り(上側から見て)の方向が、角度が増える方向とされている。
【0060】
図3Aの上側の図には、各ホルダ10及び各ウェハ1における公転角度が0°、60°、120°、180°、240°であり、自転角度が0°であるときの様子が示されている。各ホルダ10及び各ウェハ1において、自転角度が0°となるのは、公転軸23の中心と、自転軸21の中心(ホルダ10及びウェハ1の中心)とを結んだ直線が、オリフラによる直線と直交する状態であって、かつ、オリフラが自転軸21よりも径方向の外側になる状態である。
【0061】
図3Aの中央の図には、各ホルダ10及び各ウェハ1における公転角度が15°、75°、135°、195°、255°、315°であり、自転角度が90°であるときの様子が示されている。各ホルダ10及び各ウェハ1において、自転角度が90°となるのは、公転軸23の中心と、自転軸21の中心(ホルダ10及びウェハ1の中心)とを結んだ直線が、オリフラによる直線と平行な状態であって、かつ、オリフラが自転軸21よりも左側(上側から見て)になる状態である。
【0062】
図3Aの下側の図には、各ホルダ10及び各ウェハ1における公転角度が30°、90°、150°、210°、270°、330°であり、自転角度が180°であるときの様子が示されている。各ホルダ10及び各ウェハ1において、自転角度が180°となるのは、公転軸23の中心と、自転軸21の中心(ホルダ10及びウェハ1の中心)とを結んだ直線が、オリフラによる直線と直交する状態であって、かつ、オリフラが自転軸21よりも径方向の内側になる状態である。
【0063】
図3Bの上側の図には、各ホルダ10及び各ウェハ1における公転角度が45°、105°、165°、225°、285°、345°であり、自転角度が270°であるときの様子が示されている。各ホルダ10及び各ウェハ1において、自転角度が270°となるのは、公転軸23の中心と、自転軸21の中心(ホルダ10及びウェハ1の中心)とを結んだ直線が、オリフラによる直線と平行な状態であって、かつ、オリフラが自転軸21よりも右側(上側から見て)になる状態である。
【0064】
図3Bの下側の図には、各ホルダ10及び各ウェハ1における公転角度が60°、120°、180°、240°、300°、360°であり、自転角度が360°であるときの様子が示されている。各ホルダ10及び各ウェハ1において、自転角度が360°となるのは、公転軸23の中心と、自転軸21の中心(ホルダ10及びウェハ1の中心)とを結んだ直線が、オリフラによる直線と直交する状態であって、かつ、オリフラが自転軸21よりも径方向の外側になる状態である。つまり、自転角度360°は、自転角度0°と同じである。
【0065】
図3から理解されるように、各ホルダ10及び各ウェハ1における自転角度は、公転運動に応じて変わるが、その自転角度は、各ホルダ10及び各ウェハ1で共通である。
【0066】
図3に示す例では、各ホルダ10及び各ウェハ1が一回転(360°)自転したとき、各ホルダ10及び各ウェハ1が60°ずつ公転するように設計されている。一方、各ホルダ10及び各ウェハ1が一回転(360°)自転したときに、各ホルダ10及び各ウェハ1が公転する角度は、60°に限られず適宜変更可能である。
【0067】
なお、本実施形態では、各ホルダ10及び各ウェハ1が一回転(360°)自転したときに各ホルダ10及び各ウェハ1が公転する角度(60°)は、各ホルダ10における周方向での間隔(60°)と一致するように設計されている。
【0068】
なお、これらの角度については、必ずしも一致していなくてもよい。この場合には、モータ61のパルス制御による、各ホルダ10及び各ウェハ1の原点位置(後述)への位置合わせは行われず、撮像部43により撮像されたホルダ10及びウェハ1の画像に基づいてその位置合わせが行われる。
【0069】
図2及び図3において、撮像部43による撮像対象となるホルダ10が黒の円で強調表示されている。本実施形態では、撮像対象となるホルダ10が1つ決まっている。この撮像対象となるホルダ10は、真空チャンバ20基準の座標系において、原点の基準となるホルダ10(図2図3Aの上側において、12時の位置のホルダ10)が公転角度0°に位置するときに、公転角度60°に位置するホルダ10である。
【0070】
なお、以降の説明において、撮像対象となるホルダ10を他のホルダ10と区別する場合には、そのホルダ10を撮像対象ホルダ10aと呼ぶ。また、以降の説明では、真空チャンバ20基準の座標系において、原点の基準となるホルダ10(図2図3Aの上側において、12時の位置のホルダ10)が公転角度0°、自転角度0°となり、撮像対象ホルダ10aが公転角度60°、自転角度0°となる位置を原点位置と呼ぶ(図2及び図3Aの上側参照)。
【0071】
図4は、撮像対象ホルダ10aを示す分解斜視図である。図5は、撮像対象ホルダ10aにおける筒部11及びフランジ部12を上側から見た図である。
【0072】
図4及び図5に示すように、撮像対象ホルダ10aは、筒部11と、筒部11の下側に固定されたフランジ部12と、ヒートシンク13とを有している。また、ホルダ10は、筒部11との間でウェハ1及びヒートシンク13を挟み込んで固定する蓋部14と、蓋部14の中心に固定された軸部15とを有している。
【0073】
筒部11は、筒体11aと、筒体11aの下側に設けられた底部11bとを有している。筒体11aは、円筒状に構成されており、内部にウェハ1及びヒートシンク13を収納可能とされる。
【0074】
筒部11の底部11bには、ウェハ1をはめ込むためのはめ込み溝11cが形成されており、このはめ込み溝11cの下側の位置には、ウェハ1を下側から露出させるための露出口11dが設けられている。
【0075】
はめ込み溝11cは、ウェハ1の外形(XY方向)と同様の形状(円形で一部が直線的な形状)を有しており、ウェハ1よりも若干大きなサイズとされている。また、露出口11dは、ウェハ1の外形(XY方向)と同様の形状(円形で一部が直線的な形状)を有しており、ウェハ1よりも若干小さはサイズとされている。
【0076】
筒体11aの上側には、周方向に所定の間隔で3つの係止部3が設けられている。3つの係止部3は、それぞれL字状に構成されており、蓋部14に設けられた3つの突起14aを係止可能とされている。
【0077】
係止部3は、第1の係止部3a、第2の係止部3b及び第3の係止部3cを含む。第1の係止部3a及び第2の係止部3bは、オリフラに対応する側に設けられており、第3の係止部は、オリフラとは反対側に設けられている。
【0078】
本実施形態において、第1の係止部3a及び第2の係止部3bの周方向での間隔は、110°とされている。また、第2の係止部3b及び第3の係止部3cの周方向での間隔は、125°とされており、第3の係止部3c及び第1の係止部3aの周方向での間隔は、125°とされている。
【0079】
つまり、本実施形態では、複数の係止部3の間における周方向での間隔のうち、少なくとも1つの間隔が他の間隔とは異なっている。これにより、ウェハ1をホルダにセットするときに、常に同じ向きにウェハ1をセットすることができる(例えば、原点位置においてウェハ1を自転角度0°でセットできる)。なお、複数の係止部3の間における周方向での間隔を全て同じ間隔(等間隔)とすることもできる(突起14aにおいて同様)。
【0080】
ここでの例では、係止部3の数が3つである場合について説明したが、係止部3の数についてはこれに限られず、適宜変更可能である(突起14aにおいて同様)。
【0081】
フランジ部12は、円環状であり、筒部11よりもその外径が大きく形成されている。フランジ部12には、上下方向に貫通する穴部2が設けられている。この穴部2は、ホルダ10及びウェハ1における自転角度を判定するための基準とされるマークである。
【0082】
穴部2は、自転軸21の中心(ホルダ10及びウェハ1の中心)を通り、かつ、ウェハ1のオリフラによる直線の中心を通る直線上に配置される。穴部2は、撮像対象ホルダ10aの自転軸21から外れた位置に設けられており、撮像対象ホルダ10aの自公転に応じて、自転軸21回りを回転する。
【0083】
図に示す例では、穴部2の形状が円形とされているが、この形状については適宜変更可能である。なお、穴部2のその他の形状としては、楕円、多角形(△、□、☆)、×印、+印等が挙げられる。なお、典型的には、穴部2の直上には、光を反射するような構造物は配置されない。つまり、穴部2を介して背面側の回転体24が見える状態となる。これにより、撮像部43により撮像された画像内において、穴部2と他の部分とのコントラストを大きくすることができる。
【0084】
ヒートシンク13は、ウェハ1の上側に配置され、蒸着時におけるウェハ1による熱を外部へと放出する。なお、ヒートシンク13は省略されてもよい。
【0085】
蓋部14は、円盤状に構成されており、その外径が筒部11の内径よりも若干小さく構成されている。蓋部14の外周面には、その外周面から径方向の外側に向けて突出する3つの突起14aが設けられている。3つ突起14aは周方向に沿って所定の間隔(3つの係止部3と同じ間隔:110°、125°、125°)で形成されている。3つの突起14aは、3つのL字状の係止部3に対して上側からはまり込んだ後に、軸回りに回転されることで、3つの係止部3により係止される。
【0086】
軸部15は、蓋部14の上側において、蓋部14の中心位置に固定されている。軸部15は、自転軸21の下側を構成する部材である。軸部15は、その上側に嵌合部15aを有している。嵌合部15aは、自転軸21の上側を構成する部材(不図示)と嵌合可能に構成されている。嵌合部15aが嵌合することにより、自転軸21の下側を構成する部材である軸部15と、自転軸21の上側を構成する部材とが嵌合し、これにより、一体的な自転軸21が構成される。
【0087】
ここで、撮像対象ホルダ10aとそれ以外のホルダ10の違いは、撮像対象ホルダ10a以外のホルダ10にはフランジ部12及び穴部2が設けられていない点である。なお、全てのホルダ10に対してフランジ部12及び穴部2が設けられていてもよい。
【0088】
図6は、撮像対象ホルダ10aにおける他の例を示す図である。図6に示す例では、フランジ部12が省略されている。また、図6に示す例では、穴部2は、筒部11の底部11bを上下方向に貫通するように設けられている。
【0089】
穴部2は、図4及び図5に示す例と同様に、自転軸21の中心(ホルダ10及びウェハ1の中心)を通り、かつ、ウェハ1のオリフラによる直線の中心を通る直線上に配置される。また、穴部2は、撮像対象ホルダ10aの自転軸21から外れた位置に設けられており、撮像対象ホルダ10aの自公転に応じて、自転軸21回りを回転する。
【0090】
また、例えば、図4及び図5に示す例において、筒部11の筒体11aの厚さ(径方向)が厚くされて、筒体11aの外径がフランジ部12の外径の位置まで広げられてもよい(この場合、フランジ部12は省略される)。この場合、筒体11aに対して穴部2が設けられてもよい。
【0091】
再び図1を参照して、真空チャンバ20の内部において、その下側には、蒸着源としての蒸着材料を貯蔵する坩堝31が配置されている。坩堝31は、公転軸23の真下の位置に配置される。坩堝31は、複数の坩堝31がレボルバーにより切り替えられるタイプであってもよい。この場合、例えば、坩堝31内の蒸着材料が少なくなった場合や、蒸着材料を異なる材料へと切り替える場合等に、レボルバーにより坩堝31が切り替えられる。
【0092】
電子ビーム装置32は、坩堝31の近傍に配置されている。電子ビーム装置32は、坩堝31内の蒸着材料に対して電子ビームを照射することで、蒸着材料を加熱し、蒸着材料を蒸発させる。
【0093】
電子ビーム装置32は、ケーブル64を介して電源63に電気的に接続されている。ケーブル64は、電流導入器65を介して、真空チャンバ20の内外に挿通している。電流導入器65は、ケーブル64を真空チャンバ20の内外に挿通させつつ、真空チャンバ20内の気密性を保持することが可能とされている。電源63は、制御装置46に電気的に接続されており、制御装置46の指令により電子ビーム装置32に対して電力を供給して電子ビーム装置32から電子ビームを出射させる。
【0094】
なお、図に示す例では、蒸着の方式として、電子ビーム方式が用いられているが、蒸着の方式は、抵抗加熱方式、高周波誘導方式、レーザ式、あるいは、2以上の方式の切り替え式等であってもよく、その方式は特に限定されない。
【0095】
隔壁33は、坩堝31及び電子ビーム装置32を覆うように設けられており、真空チャンバ20内部の空間を上側の第1の空間(ウェハ1側)と、下側の第2の空間(蒸着源側)に区分する。
【0096】
隔壁33において、その上部には、第1の窓部47に対応する位置に防着板54が設けられている。防着板54は、真空チャンバ20の内部において、第1の窓部47と蒸着物の蒸着源との間に介在される。防着板54は、樹脂又は金属などの材料により構成された平板状の部材であり、第1の窓部47に蒸着物が付着及び堆積することを防止する。防着板54は、上下方向(Z軸方向)に対して所定の角度傾斜して配置される。
【0097】
なお、第2の窓部48に対応する位置に、第2の窓部48に蒸着物が付着及び堆積することを防止するための防着板が設けられていてもよい。この防着板は、真空チャンバの内部において、第2の窓部48と蒸着物の蒸着源との間に介在される。
【0098】
また、隔壁33において、坩堝31に対応する位置には、開口が設けられている。蒸着源用シャッタ34は、隔壁33に設けられた開口の開閉状態を切り換え可能とされる。蒸着源用シャッタ34は、蒸着材料の加熱の開始直後においては、開口を閉じた状態とし、蒸着材料の蒸発が安定したタイミングで、開口を開放してウェハ1に対する蒸着を開始させる。
【0099】
蒸着源用シャッタ34は、モータなどのアクチュータ66の駆動軸67に固定されている。駆動軸67は、回転導入器68を介して真空チャンバ20の底部に回転可能に軸支されている。回転導入器68は、フェローシール等により構成されており、駆動軸67を回転可能に支持しつつ、真空チャンバ20内の気密性を保持することが可能とされている。
【0100】
アクチュエータ68は、制御装置46に電気的に接続されており、制御装置46の指令により駆動軸67を駆動させることで、蒸着源用シャッタ34を駆動させ、隔壁33における開口の開閉状態を切り換える。
【0101】
真空ポンプ41は、排気管42を介して真空チャンバ20の内部と連結されており、真空チャンバ20の内部を真空排気することが可能とされている。真空ポンプ41は、制御装置46と電気的に接続されており、制御装置46の指令に応じて、真空チャンバ20を真空排気する。
【0102】
表示部45は、例えば、液晶ディスプレイ等により構成され、撮像部43により撮像された画像(静止画、動画を含む)等を制御部(画像処理部)の指令に応じて表示させる。表示部45は、例えば、真空チャンバ20の側壁部の外部において、ユーザが見やすい位置に固定される。
【0103】
撮像部43は、制御部(画像処理部)の指令に応じて、第1の窓部47を介して複数のホルダ10(及び複数のウェハ1)のうち、少なくとも1つのホルダ10(及びウェハ1)を撮像する。本実施形態では、撮像部43は、複数のホルダ10のうち1つのホルダ10(ウェハ1)を撮像するように構成されている。なお、図2及び図3において、撮像対象ホルダ10aは黒い円で強調表示されている。
【0104】
撮像部43の受光軸は、例えば、上下方向(Z軸方向)に対して30°~60°程度とされる。なお、撮像部43の構成について詳細は、図8図10等を参照して後述する。
【0105】
照明部44は、撮像部43による撮像時において、制御部(画像処理部)の指令に応じて、第2の窓部48を介して撮像対象ホルダ10a(及びウェハ1)に対して光を照射する。照明部44の投光軸は、例えば、上下方向(Z軸方向)に対して、45°~90°程度とされる。
【0106】
図1に示す例では、照明部44による投光軸が撮像部43による受光軸よりも上側(ウェハ1側)に配置されているが、受光軸が投光軸よりも上側(ウェハ1側)に配置されていてもよい。つまり、撮像部43が照明部44よりも上側に配置されていてもよい。
【0107】
また、図1に示す例では、撮像部43による受光軸が照明部44による投光軸と異なっているが、受光軸及び投光軸が一致していてもよい。つまり、撮像部43及び照明部44が同じ位置に配置されていてもよい。撮像部43及び照明部44が同じ位置に配置される場合、第2の窓部48、第2のシャッタ55(及び対応する防着板)を省略することもできる。
【0108】
なお、照明部44は、省略することもできる(例えば、真空チャンバ20に設けられた窓部47、48や、その他の窓部(ユーザが内部の様子を見るための窓部等)から十分に光が取り込まれる場合等)。照明部44が省略される場合、第2の窓部48、第2のシャッタ55(及び対応する防着板)も省略することができる。
【0109】
以上では、可視光領域における光が、撮像部43において十分な精度の画像が得られる光量となる場合について記載している。一方、他の波長領域、特に赤外領域に於ける感度をもつ撮像部43が用いられる場合も照明部44を省略することができる。成膜時に於いては穴部2の表面とその上部との間に温度差が発生することから、赤外線画像において、そのコントラストが高くなり、穴部2の位置を容易に検出することができる。従って、赤外線画像が用いられるこのような手法は、上記温度差が発生する成膜時において、穴部2の位置を検出するという観点から好ましい。
【0110】
第1の窓部47及び第2の窓部48は、ガラス、アクリル系樹脂等により構成された透明の部材であり、真空チャンバ20の側壁部の一部を構成する。
【0111】
第1のシャッタ53は、真空チャンバ20の内部において、第1の窓部47を遮蔽する遮蔽状態と、第1の窓部47を露出させる露出状態とを切り換える。第2のシャッタ55は、真空チャンバ20の内部において、第2の窓部48を遮蔽する遮蔽状態と、第2の窓部48を露出させる露出状態とを切り換える。第1の窓部47及び第2の窓部48は、撮像部43による撮像時に露出状態とされ、それ以外のタイミングでは、遮蔽状態とされる。
【0112】
図7は、第1のシャッタ53及び第2のシャッタ55を正面側から見た図である。図7の上側の図は、第1のシャッタ53及び第2のシャッタ55による窓部47、48の遮蔽状態を示しており、図7の下側の図は、第1のシャッタ53及び第2のシャッタ55による窓部47、48の露出状態を示している。
【0113】
図7に示すように、第1のシャッタ53は、第1の窓部47を遮蔽することが可能なように、第1の窓部47よりも大きなサイズで構成されている。同様に、第2のシャッタ55は、第2の窓部48を遮蔽することが可能なように、第2の窓部48よりも大きなサイズで構成されている。
【0114】
図7に示す例では、第1の窓部47及び第2の窓部48の形状、並びに、第1のシャッタ53及び第2のシャッタ55の形状が円形とさている。一方、これらの形状については、矩形などであってもよく、その形状については特に限定されない。
【0115】
第1のシャッタ53は、外周の一部が駆動軸57に固定されており、第2のシャッタ55も、外周の一部が駆動軸57に固定されている。第1のシャッタ53及び第2のシャッタ55は駆動軸57を挟んで反対側に設けられており、駆動軸57を回転軸として一体的に回転する。
【0116】
駆動軸57は、第1の窓部47及び第2の窓部48における平面に直交する方向の軸である。駆動軸57は、モータなどのアクチュエータ56により駆動される(図1参照)。駆動軸57は、回転導入器58を介して真空チャンバ20の側壁部に回転可能に軸支されている。回転導入器58は、フェローシール等により構成されており、駆動軸57を回転可能に支持しつつ、真空チャンバ20内の気密性を保持することが可能とされている。
【0117】
アクチュエータ56は、制御装置46に電気的に接続されており、制御装置46の指令により駆動軸57を駆動させることで、第1のシャッタ53及び第2のシャッタ55を駆動させ、第1の窓部47及び第2の窓部48の遮蔽状態及び露出状態を切り換える。
【0118】
制御装置46は、真空蒸着装置100に専用の装置であってもよいし、PC(Personal Computer)等の汎用の装置であってもよい。制御装置46は、制御部、記憶部、操作部、通信部等を含む。
【0119】
制御部は、記憶部に記憶された各種のプログラムに基づき種々の演算を実行し、真空蒸着装置100の各部を統括的に制御する。
【0120】
制御部は、ハードウェア、又は、ハードウェア及びソフトウェアの組合せにより実現される。ハードウェアは、制御部の一部又は全部として構成され、このハードウェアとしては、CPU(Central Processing Unit)、DSP(Digital Signal Processor)、GPU(Graphics Processing Unit)、VPU(Vision Processing Unit)、FPGA(Field Programmable Gate Array)、PLC(Programmable Logic Controller)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、あるいは、これらのうち2以上の組合せなどが挙げられる。
【0121】
制御部は、画像処理部を含む。画像処理部は、撮像部による撮像に関する処理や、撮像された画像の画像処理、表示部による画像の表示に関する処理等を実行する。なお、画像処理部は、制御装置46の外部に別体で設けられていてもよい。
【0122】
記憶部は、制御部の処理に必要な各種のプログラムや、各種のデータが記憶される不揮発性のメモリと、制御部の作業領域として用いられる揮発性のメモリとを含む。
【0123】
なお、上記各種のプログラムは、光ディスク、半導体メモリなどの可搬性の記録媒体から読み取られてもよいし、ネットワーク上のサーバ装置からダウンロードされてもよい。
【0124】
操作部は、ユーザによる各種の操作を入力し、制御部へと出力する。通信部は、例えば、ネットワーク上のサーバ装置等の他の装置との間で通信可能に構成されている。
【0125】
<本技術の基本的な考え方>
ここで、本技術の基本的な考え方について触れておく。後述のように、本実施形態では、ウェハ1を自公転させながらウェハ1に蒸着を行う動的蒸着モードと、ウェハ1を静止させてウェハ1に蒸着を行う静的蒸着モードとが切り換えられる。
【0126】
このように、本実施形態では、1つの真空蒸着装置100において、動的蒸着モードと、静的蒸着モードとを切り換えることができるので、例えば、動的蒸着と静的蒸着とを別々の装置により行う場合に比べてコストを削減することができる。
【0127】
動的蒸着モードでは、ウェハ1を自公転させながら蒸着を行うことで、ウェハ1の表面に対して蒸着物を均一に蒸着させる。一方、静的蒸着モードでは、ウェハ1を静止させて蒸着を行うことで、ウェハ1の表面に設けられた、特定の角度方向に延在する突起部又は溝部(あるいはこれらの両方)に蒸着物を蒸着させる。特に、ある角度方向に延在する突起部の立面(側面)に対する成膜方法として、本技術は有効であることから、以降の説明では、静的蒸着モードにおける成膜対象が突起部の側面であるとして説明する。
【0128】
動的蒸着モードにおいては、ウェハ1の自転速度や公転速度は正確に制御する必要はあるが、一方で、ウェハ1の現在の自転角度を正確に制御する必要性はあまりない。一方、静的蒸着モードにおいては、ウェハ1の現在の自転角度を正確に制御する必要がある。
【0129】
これは、ウェハ1の表面上に設けられた突起部の側面が走る方向の関係で、その突起部の側面に蒸着を行うためのウェハ1の自転角度が或る程度決まるためである。つまり、ウェハ1の自転角度を不正確な角度としてしまうと、目的とする突起部の側面に蒸着物を蒸着させることができない。
【0130】
ウェハ1の自転角度の制御は、公転軸23を回転させるモータのパルス制御や、そのモータに設けられた回転角検出器等の情報にのみ基づいて行うこともできるが、この場合、ウェハ1の自転角度が不正確になりやすい。
【0131】
このため、本実施形態では、静的蒸着モードにおいて、撮像対象ホルダ10a及びウェハ1を撮像部43により撮像させ、撮像された画像に基づき、現在の自転角度が目的とする自転角度となっているかどうかを制御部(画像処理部)により判定させることとしている。これにより、静的蒸着モードにおいて、ウェハ1の自転角度を正確に制御することができ、ウェハ1の表面に設けられた突起部の側面に適切に蒸着物を蒸着させることができる。
【0132】
なお、本実施形態では、静的蒸着モードにおいて、撮像部43による撮像及び制御部(画像処理部)によるウェハ1の自転角度の判定が行われるが、動的蒸着モードにおいて、撮像部43による撮像及び制御部(画像処理部)によるウェハ1の自転角度の判定が行われてもよい。
【0133】
<撮像部43による画角>
次に、撮像部43による画角の条件について説明する。図8は、撮像部43による画角を説明するための図であり、撮像部43による画像上での撮像対象ホルダ10a及びウェハ1の動きを示す図である。
【0134】
図8において、点線の矩形は、撮像部43によるが画角を示している。また、一点鎖線は、撮像部43による画像内での撮像対象ホルダ10a及びウェハ1の公転軌道(撮像部43からの見た目上のホルダ10及びウェハ1の公転軌道)を示している。
【0135】
また、図8において2本の点線の曲線は、撮像部43による画像内での撮像対象ホルダ10a及びウェハ1の摂動範囲(撮像部43からの見た目上のホルダ10及びウェハ1の摂動範囲)を示している。なお、摂動については後述する。
【0136】
図8では、撮像対象ホルダ10a及びウェハ1が自転角度0°~360°で回転した場合(図3の黒の円参照)における、撮像部43における画像内での撮像対象ホルダ10a及びウェハ1の動き(撮像部43からの見た目上のホルダ10の動き)が示されている。
【0137】
まず、撮像部43の横方向の画角について説明する。撮像部43による横方向の画角は、ホルダ10及びウェハ1の公転方向に対応する。
【0138】
撮像部43の横方向の画角は、ホルダ10及びウェハ1が1回転(360°)自転したときに、ホルダ10及びウェハ1が公転方向に移動する範囲を少なくとも含む。
【0139】
例えば、撮像部43の横方向の画角において、右側の境界線は、自転角度が0°のときの撮像対象ホルダ10aの下面全体(穴部2を含む)及びウェハ1の表面全体を撮像可能なように設定される。また、撮像部43の横方向の画角において、左側の境界線は、自転角度が360°のときの撮像対象ホルダ10aの下面全体(穴部2を含む)及びウェハ1の表面全体を撮像可能なように設定される。
【0140】
次に、撮像部43の縦方向の画角について説明する。撮像部43による縦方向の画角は、ホルダ10及びウェハ1の摂動方向に対応する。
【0141】
ここで、摂動とは、ホルダ10及びウェハ1による公転軌道が摂動方向(径方向)にずれてホルダ10及びウェハ1が摂動方向にずれることを意味する。また、摂動範囲とは、ホルダ10及びウェハ1が摂動方向(径方向)に摂動する範囲を意味する。
【0142】
上述のように、ホルダ10及びウェハ1は、入射角度調整機構25によって回動されてその入射角度が調整される。このとき、ホルダ10及びウェハ1が摂動方向に摂動する。
【0143】
撮像部43による縦方向の画角は、入射角度の調整によるホルダ10及びウェハ1の回動により、ホルダ10及びウェハ1が摂動方向に摂動したときの摂動範囲を少なくとも含む。
【0144】
例えば、撮像部43の縦方向の画角において、上側の境界線は、撮像対象ホルダ10a及びウェハ1が摂動方向において最も内側に摂動したときに、撮像対象ホルダ10aの下面全体(穴部2を含む)及びウェハ1の表面全体を撮像可能なように設定される。また、撮像部43の縦方向の画角において、下側の境界線は、撮像対象ホルダ10a及びウェハ1が摂動方向において最も外側に摂動したときに、撮像対象ホルダ10aの下面全体(穴部2を含む)及びウェハ1の表面全体を撮像可能なように設定される。
【0145】
なお、入射角度の調整によるホルダ10及びウェハ1の回動によってホルダ10及びウェハ1が摂動するとき、撮像部43における画像内において、撮像対象ホルダ10aの下面及びウェハ1表面の見た目上の面積が変わる。
【0146】
つまり、撮像対象ホルダ10aの下面及びウェハ1表面の見た目上の面積は、撮像部43による受光軸に対して撮像対象ホルダ10aの下面及びウェハ1表面が垂直に近づくほど大きくなる。逆に、この見た目上の面積は、撮像部43による受光軸に対して撮像対象ホルダ10aの下面及びウェハ1表面が垂直から遠ざかるほど小さくなる。従って、この点についても考慮されて、撮像部43による縦方向の画角が設定されてもよい。
【0147】
図9は、撮像部43による画角と、第1のシャッタ53及び第2のシャッタ55との関係を示す図である。図9に示すように、第1のシャッタ53及び第2のシャッタ55は、第1の窓部47及び第2の窓部48の露出状態において、撮像部43の横方向の画角外に位置するように、その位置が設定されている。
【0148】
図10は、撮像部43による画角と、防着板54との関係を示す図である。図10に示すように、防着板54は、撮像部43の縦方向の画角外に位置するように、その位置が設定されている(第2の窓部48に対応する防着板が設けられる場合には、この防着板についても同様)。
【0149】
<動作説明>
次に、制御装置46における制御部の処理について説明する。図11は、制御装置46における制御部の処理を示すフローチャートである。
【0150】
図11におけるフローチャートのSTART時の真空チャンバ20の内部初期状態としては、制御装置46の指令に基づき真空ポンプ41が稼働し、蒸着に適した真空度となっていることを前提とする。一方、以下に述べる蒸着シーケンスに基づき、大気開放のステップを含め、蒸着前のステップのいずれかの時点で蒸着に適した真空度とするステップが挿入されてもよい。
【0151】
まず、制御部は、蒸着シーケンスに基づき、次の蒸着モードが、動的蒸着モード及び静的動着モードのいずれであるかを判定する(ステップ101)。
【0152】
蒸着シーケンスにおいては、動的蒸着モード及び静的蒸着モードの順番が予め計画されている。例えば、蒸着シーケンスにおいて、蒸着モードの順番は、動的蒸着モード→静的蒸着モードの順番、静的蒸着モード→動的蒸着モードの順番、動的蒸着モード及び静的蒸着モードが交互に繰り返される順番等により計画されている。
【0153】
ここで、蒸着シーケンスは、例えば、被蒸着物であるウェハ1に求められる成膜(付着や堆積)を実現するための具体的な動作順序を、予め制御部内の不図示の記憶部より読み出すことによって得られる。
【0154】
蒸着シーケンスにおいて、動的蒸着モードは、自公転速度、入射角度、蒸着物の種類(レボルバーによる坩堝31の選択)等の情報と関連付けられている。また、蒸着シーケンスにおいて、静的蒸着モードは、自転角度、入射角度、蒸着物の種類等の情報と関連付けられている。
【0155】
なお、本実施形態の説明では、動的蒸着モードにおいて、入射角度、蒸着物の種類のうちいずれかが異なる場合には、これらは異なる動的蒸着モードであるとする。また、静的蒸着モードにおいて、自転角度、入射角度、蒸着物の種類のうちいずれか1つが異なる場合には、これらは異なる静的蒸着モードであるとして説明する。
【0156】
従って、本実施形態では、蒸着シーケンスにおいて、動的蒸着モード→動的蒸着モードのように、動的蒸着モードが連続する場合がある(入射角度、蒸着物の種類が異なる場合)。また、静的蒸着モード→静的蒸着モードのように、静的蒸着モードが連続する場合がある(自転角度、入射角度、蒸着物の種類が異なる場合)。
【0157】
次の蒸着モードを判定すると、制御部は、その蒸着モードが静的蒸着モードであるかどうかを判定する(ステップ102)。次の蒸着モードが静的蒸着モードではない場合(ステップ102のNO)、つまり、次の蒸着モードが動的蒸着モードである場合、制御部は、動的蒸着モードを開始させる(ステップ122)。
【0158】
動的蒸着モードを開始させると、制御部は、ウェハ1の蒸着物に対する入射角度を変更する必要があるかどうかを判定する(ステップ123)。
【0159】
入射角度を変更する必要がある場合(ステップ123のYES)、制御部は、入射角度調整機構25を駆動させて、各ホルダ10及び各ウェハ1を回動させ、入射角度を変更する(ステップ124)。そして、制御部は、次のステップ125へ進む。
【0160】
一方、入射角度を変更する必要がない場合(ステップ123のNO)、制御部は、ステップ124を飛ばして(入射角度を変更せずに)、次のステップ125へ進む。
【0161】
ステップ125では、制御部は、蒸着物の種類を変更する必要があるかどうかを判定する。蒸着物の種類を変更する必要がある場合(ステップ125のYES)、制御部は、レボルバー(不図示)を駆動させて坩堝31を変更することで、蒸着物の種類を変更する(ステップ126)。そして、制御部は、次のステップ127へ進む。
【0162】
一方、蒸着物の種類を変更する必要がない場合(ステップ125のNO)、制御部は、ステップ126を飛ばして(蒸着物の種類を変更せずに)、次のステップ127へ進む。
【0163】
ステップ127では、制御部は、各ホルダ10及び各ウェハ1を自公転させながら、ウェハ1の表面に対して蒸着物を蒸着させる。次に、制御部は、動的蒸着が終了したかどうかを判定する(ステップ128)。
【0164】
動的蒸着が終了していない場合(ステップ128のNO)、制御部は、ステップ127へ戻り、引き続き、動的蒸着を実行する。動的蒸着が終了した場合(ステップ128のYES)、制御部は、蒸着シーケンスに含まれる全ての蒸着モードが終了したかどうかを判定する(ステップ129)。
【0165】
蒸着シーケンスに含まれる全ての蒸着モードのうち未だ終了していない蒸着モードが残っている場合(ステップ129のNO)、制御部は、ステップ101へ戻り、蒸着シーケンスから次の蒸着モードを判定する。一方、蒸着シーケンスに含まれる全ての蒸着モードが終了した場合(ステップ129のYES)、制御部は、処理を終了する。
【0166】
ステップ102において、次の蒸着モードが静的蒸着モードである場合(ステップ102のYES)、制御部は、静的蒸着モードを開始させる(ステップ103)。静的蒸着モードを開始させると、制御部は、ウェハ1の蒸着物に対する入射角度を変更する必要があるかどうかを判定する(ステップ104)。
【0167】
入射角度を変更する必要がある場合(ステップ104のYES)、制御部は、入射角度調整機構25を駆動させて、各ホルダ10及び各ウェハ1を回動させ、入射角度を変更する(ステップ105)。そして、制御部は、次のステップ106へ進む。
【0168】
一方、入射角度を変更する必要がない場合(ステップ104のNO)、制御部は、ステップ105を飛ばして(入射角度を変更せずに)、次のステップ106へ進む。
【0169】
ステップ106では、制御部は、蒸着物の種類を変更する必要があるかどうかを判定する。蒸着物の種類を変更する必要がある場合(ステップ106のYES)、制御部は、レボルバー(不図示)を駆動させて坩堝31を変更することで、蒸着物の種類を変更する(ステップ107)。そして、制御部は、次のステップ108へ進む。
【0170】
一方、蒸着物の種類を変更する必要がない場合(ステップ106のNO)、制御部は、ステップ107を飛ばして(蒸着物の種類を変更せずに)、次のステップ108へ進む。
【0171】
ステップ108では、制御部は、前回の蒸着モードが静的蒸着モードであるかどうかを判定する。前回の蒸着モードが静的蒸着モードである場合(ステップ108のYES)、制御部は、各ホルダ10及び各ウェハ1の自転角度が、前回の静的蒸着モードにおける自転角度と同じであるかどうかを判定する(ステップ109)。
【0172】
各ホルダ10及び各ウェハ1の自転角度が、前回の静的蒸着モードにおける自転角度と同じである場合(ステップ109のYES)(例えば、前回の静的蒸着モードと走る方向が同じ突起部の側面に対して蒸着を行う場合)、制御部は、ステップ110~ステップ115を飛ばして(自転角度の変更、撮像による自転角度の確認等の処理を実行せずに)、ステップ116へ進む。
【0173】
ステップ108において、前回の蒸着モードが動的蒸着モードである場合(ステップ108のNO)、制御部は、ステップ109を飛ばして、次のステップ110へ進む。また、ステップ109において、前回の蒸着モードが静的蒸着モードであるものの、今回の自転角度が前回の自転角度とは異なる場合(ステップ109のNO)(例えば、前回の静的蒸着モードとは走る方向が異なる突起部の側面に対して蒸着を行う場合)、制御部は、次のステップ110へ進む。
【0174】
ステップ110では、制御部は、モータ61により公転軸23を駆動して、各ホルダ10及び各ウェハ1を原点位置に移動させる。
【0175】
なお、上述のように、原点位置とは、真空チャンバ20を基準とした座標系において、原点の基準となるホルダ10(図2図3Aの上側において、12時の位置のホルダ10)が公転角度0°、自転角度0°となり、撮像対象ホルダ10aが公転角度60°、自転角度0°となる位置である(図2及び図3Aの上側参照)。
【0176】
各ホルダ10及び各ウェハ1を原点位置へ移動させると、次に、制御部は、モータ61により公転軸23を回転させて、各ホルダ10及び各ウェハ1を目標とする自転角度となる位置へと移動させる(ステップ111)。なお、目標とする自転角度が、原点位置における自転角度(つまり、自転角度0°)と一致する場合、制御部は、ステップ111の処理を省略する。次に、制御部(画像処理部)は、撮像部43により撮像対象ホルダ10a及びウェハ1を撮像させる(ステップ112)。
【0177】
次に、制御部(画像処理部)は、実際に撮像された撮像対象ホルダ10a及びウェハ1の画像を、撮像対象ホルダ10aの下面及びウェハ1の表面を正面から見たように補正する補正処理を実行する(ステップ113)。
【0178】
図12は、補正処理を説明するための図である。図12において上側の図は、補正処理前の画像を示す図であり、図12において、下側の図は、補正処理後の画像を示す図である。
【0179】
図12の上側の図を参照して、撮像部43の投光軸が、撮像対象ホルダ10aの下面、ウェハ1の表面に対して垂直ではないので、その画像内において、撮像対象ホルダ10aの下面、ウェハ1の表面は楕円形状となる。一方、図12の下側の図を参照して、その画像が補正処理されると、その画像内において、撮像対象ホルダ10aの下面、ウェハ1の表面は円形となり、撮像対象ホルダ10aの下面及びウェハ1の表面を正面から見たように補正される。
【0180】
ここで、ステップ113による補正処理のための事前設定について説明する。制御部(画像処理部)は、実際撮像された画像をどのように補正すると、正面画像のように補正処理を行うとことができるかを、事前設定により、ホルダ10及びウェハ1における自転角度毎、入射角度毎に予め記憶している。
【0181】
図13は、事前設定により、補正処理を予め記憶させる方法の一例を示す図である。図13の一番上を参照して、撮像対象ホルダ10aの下面にチェスボード柄のボードを張り付けた状態で、撮像対象ホルダ10aが或る自転角度及び或る入射角度に設定される。
【0182】
なお、このときの撮像対象ホルダ10aの自転角度のパターンは、例えば、0°、30°、60°、90°、120°、150°、180°、210°、240°、270°、300°、330°の12パターンである。また、このときの撮像対象ホルダ10aの入射角度のパターンは、例えば、60°、70°、80°、90°の4パターンである。この場合、全てのパターンは、12×4で48パターンである。
【0183】
この48パターンにおいて、図13の上側の図のような画像がそれぞれ撮像部43により撮像される。その後、図13の中央の図のように、チェスボードの白マスの部分が検出され、白マス部分の間隔が均等になるように補正処理が行われると、図13の下側の図のように、撮像対象ホルダ10aの下面を正面から見たような画像となる。この補正処理の方法は、48パターンそれぞれについて行われ、48パターンのそれぞれについて関連付けて記憶される。
【0184】
図11のステップの説明に戻る。補正処理を実行すると、次に、制御部(画像処理部)は、補正処理後の画像に基づいて、ホルダ10及びウェハ1の自転角度を判定する(ステップ114)。
【0185】
図14は、撮像対象ホルダ10aの自転角度がそれぞれ0°、30°、60°、90°、120°、150°、180°、210°、240°、270°、300°、330°である場合における補正処理後の画像を示す図である。
【0186】
ステップ114において、制御部(画像処理部)は、補正処理後の画像について、撮像対象ホルダ10a及びウェハ1の中心位置の検出と、穴部2の位置の検出とを行い、これらの位置に基づいて、ホルダ10及びウェハ1の自転角度を判定する。
【0187】
図15は、ホルダ10及びウェハ1の自転角度を判定するときの処理を示す図である。まず、制御部(画像処理部)は、撮像対象ホルダ10aの外形の検出し、撮像対象ホルダ10aの外形から撮像対象ホルダ10a及びウェハ1の中心位置(自転軸の中心位置)を検出する。
【0188】
次に、制御部(画像処理部)は、穴部2の位置を検出する。そして、制御部(画像処理部)は、撮像対象ホルダ10a及びウェハ1の中心位置(自転軸の中心位置)と、穴部2の位置とを結んだ直線に対して直交する方向の直線であって、かつ、撮像対象ホルダ10a及びウェハ1の中心位置(自転軸の中心位置)を通る直線の方向を判定する。
【0189】
この直線の方向は、ウェハ1におけるオリフラと平行な直線となる。制御部(画像処理部)は、画像内におけるこの直線の方向に基づいて、ホルダ10及びウェハ1の自転角度を判定する。なお、制御部(画像処理部)は、画像内においてこの直線の方向がどの方向となったときに、ホルダ10及びウェハ1の自転角度がどの角度となるかについては、予め記憶している。
【0190】
ホルダ10及びウェハ1の自転角度を判定した後、制御部は、次のステップ115へ進む。ステップ115では、制御部(画像処理部)は、ホルダ10及びウェハ1の自転角度が目標値となる自転角度に対して所定の範囲内(例えば、±10°以内)となっているかどうかを判定する。
【0191】
ホルダ10及びウェハ1の自転角度が目標値に対して所定の範囲内(例えば、±10°以内)となっていない場合(ステップ115のNO)、制御部(画像処理部)は、エラー回数を+1とする(ステップ119)。そして、制御部(画像処理部)は、エラー回数が2回以下であるかどうかを判定する(ステップ120)。
【0192】
エラー回数が2回以下の場合(ステップ120のYES)、制御部(画像処理部)は、ステップ110へ戻り、再び、ステップ110以下の処理を実行する。一方、エラー回数が3回である場合(ステップ120のNO)、制御部(画像処理部)は、表示部45の画面上にエラーによる警告を表示させて(ステップ121)処理を終了する。
【0193】
なお、ここでの説明では、エラーとなったときに、各ホルダ10及び各ウェハ1を再び原点位置に戻してから、各ホルダ10及び各ウェハ1を目標となる自転角度の位置に再び移動させる場合について説明した。
【0194】
一方、制御部(画像処理部)は、ステップ114において、各ホルダ10及び各ウェハ1の自転角度を認識している。従って、制御部(画像処理部)は、上記所定の範囲(±10°)に対して現在の自転角度が何度足りない、何度行き過ぎている等の判断を行うことができる。従って、制御部(画像処理部)は、エラーとなったときに、この判断に基づき、差分の分だけ各ホルダ10及び各ウェハ1を自公転させて、自転角度を所定の範囲内に収める処理を実行してもよい。
【0195】
ステップ115において、ホルダ10及びウェハ1の自転角度が目標値に対して所定の範囲内である場合(ステップ115のYES)、制御部は、ステップ116へ進む。ステップ116では、制御部は、各ホルダ10及び各ウェハ1を静止させた状態で蒸着を行い、ウェハ1に設けられた突起部の側面に蒸着物を蒸着させる。
【0196】
次に、制御部は、静的蒸着が終了(目的とする突起部の側面への蒸着が終了)したかどうかを判定する(ステップ117)。静的蒸着が終了(目的とする突起部の側面への蒸着が終了)していない場合(ステップ117のNO)、制御部は、ステップ116へ戻り、引き続き静的蒸着を実行する。
【0197】
一方、静的蒸着が終了(目的とする突起部の側面への蒸着が終了)した場合(ステップ117のYES)、制御部は、蒸着シーケンスに含まれるすべての蒸着モードが終了したかどうかを判定する(ステップ118)。
【0198】
蒸着シーケンスに含まれる全ての蒸着モードのうち未だ終了していない蒸着モードが残っている場合(ステップ118のNO)、制御部は、ステップ101へ戻り、蒸着シーケンスから次の蒸着モードを判定する。一方、蒸着シーケンスに含まれる全ての蒸着モードが終了した場合(ステップ118のYES)、制御部は、処理を終了する。
【0199】
ここで、図11に示す例の場合、前回の蒸着モードが静的蒸着モードであり、今回の蒸着モードが静的蒸着モードである場合において(ステップ108のYES)、かつ、自転角度を変更する必要がある場合(ステップ109のNO)、各ホルダ10及び各ウェハ1が再び原点位置に戻されてから(ステップ110)、各ホルダ10及び各ウェハ1が目標となる自転角度の位置に再び移動される(ステップ111)。
【0200】
一方、制御部(画像処理部)は、ステップ114において、前回の静的蒸着モードにおける各ホルダ10及び各ウェハ1の自転角度を認識している。従って、制御部(画像処理部)は、各ホルダ10及び各ウェハ1の現在の自転角度から、どの程度自公転を行えば、今回の静的蒸着モードにおける自転角度の位置へと各ホルダ10及び各ウェハ1を移動させることができるかを判断することができる。従って、制御部(画像処理部)は、自転角度を変更させるとき、原点位置への復帰処理を省略して、差分の分だけホルダ10及びウェハ1を自公転させて、現在の自転角度を目的とする自転角度へと変更することもできる。
【0201】
なお、自転角度を変更する必要がある場合において、原点位置に一旦復帰させる処理を実行すると、モータ61から自転軸21に至るまでの回転伝達機構におけるバックラッシュやヒステリシス等(非線形部)の不感帯の影響を低減(エラー回数を低減)することができるので、この点で好ましい。
【0202】
<ユーザによる目視用のマーク4>
次に、ユーザによる目視用のマーク4について説明する。上述の図14において、例えば、ホルダ10及びウェハ1の自転角度が0°の図を参照する。仮に、自転角度0°の画像が表示部45に表示され、ユーザがその画像を目視したとする。しかし、ユーザは、この画像を見たとしても、ホルダ10及びウェハ1の自転角度が0°であると直感的に判断することが難しい。
【0203】
そこで、ユーザがホルダ10及びウェハ1の自転角度を直感的に認識することができるように、目視用のマーク4が設けられていてもよい。
【0204】
図16は、真空蒸着装置100の内部において、その上部を上側からみた模式図であり、目視用のマーク4を示す図である。図16に示すように、目視用のマーク4は、撮像対象ホルダ10aに設けられた第1の目視用のマーク4aと、回転体24に設けられた第2の目視用のマーク4bとを含む。
【0205】
ここで、図16において、第1の目視用のマーク4a及び第2の目視用のマーク4bは、、固定歯車26の下側、回転体24の下側、ホルダ10の下側等に隠れて本来見えないが、本実施形態を理解しやすいように、図16では、第1の目視用のマーク4a及び第2の目視用のマーク4bを実線で図示している。
【0206】
第1の目視用のマーク4aは、撮像対象ホルダ10aによる自公転に応じて、自転軸21回りを回転する。第2の目視用マークは、回転体24による回転に応じて、公転軸23回りを回転し、かつ、撮像対象ホルダ10aが所定の自転角度となったときに目視用の第1のマークとその位置が一致する。
【0207】
第1の目視用のマーク4aは、撮像対象ホルダ10aの下面に形成されている。第1の目視用のマーク4aは、自転軸21の位置を中心として放射状に延びる線状に構成されている。第1の目視用のマーク4aは、自転軸21回りに30°の間隔で設けられている(合計で12本)。
【0208】
第2の目視用のマーク4bは、回転体24の下面に形成されている。第2の目視用のマーク4bは、公転軸23の位置を中心として放射状に延びる線状に構成されている。第2の目視用のマーク4bは、公転軸23回りに15°の間隔で設けられており、原点位置において、公転角度60°75°、90°、105°、120°の位置に設けられている(合計で5本)。
【0209】
第2の目視用のマーク4bは、撮像対象ホルダ10aの自転角度が0°、90°、180°、270°、360°となったときに、第1の目視用マーク3aとその位置が一致する。ユーザは、第1の目視用マーク及び第2の目視用マークが一致しているとき、ホルダ10及びウェハ1の自転角度が、0°、90°、180°、270°、360°等の区切りのよい角度になってると直感的に認識することができる。
【0210】
なお、第1の目視用のマーク4aの周方向の間隔及び本数、並びに、第2の目視用のマーク4bの周方向の間隔及び本数等は、ここで挙げた例に限られず適宜変更することができる。また、第1の目視用のマーク4aは、全てのホルダ10に対して設けられていてもよいし、第2の目視用のマーク4bは、回転体24の全周に亘って設けられていてもよい。
【0211】
<作用等>
以上説明したように、本実施形態に係る真空蒸着装置100は、蒸着物が蒸着されるウェハ1をそれぞれ保持可能であり、公転軸23の周りをそれぞれ自転しながら公転可能な複数のホルダ10と、ウェハ1を保持した複数のホルダ10のうち少なくとも1つのホルダ10を撮像可能な撮像部43と、撮像部43により撮像された画像に基づき、ウェハ1の自転角度を判定する制御部とを備えている。
【0212】
これにより、ウェハ1が自公転可能な真空蒸着装置100において、ウェハ1の自転角度を正確に判定することができる。
【0213】
特に、自公転タイプの真空蒸着装置100は、1つの駆動力(モータ61)から自転軸21に至るまでの回転伝達機構が複数存在するため、バックラッシュやヒステリシス等(非線形部)の不感帯が存在する。従って、駆動力(モータ61)側のパルス制御や、回転角検出器のみに基づく位置検出では、バックラッシュやヒステリシス等の影響は誤差として許容せざるを得ない。なお、バックラッシュやヒステリシス等は、蒸着時に加えられる熱に対処するために設けられているので(これらが存在しない場合、回転伝達機構の早期破壊に繋がる)、これらの存在は、真空蒸着装置100に対して必須の構成となる。
【0214】
すなわち、バックラッシュやヒステリシス等の誤差を許容できないことが条件となる静的蒸着において、本実施形態に係る技術思想は、より効果を発揮する。また、本実施形態では、異なる自転角度条件での静的蒸着や、動的蒸着も併せて実施することができ、これらを連続的に切り替えて蒸着を実行可能な真空蒸着装置100を提供することができる。
【0215】
また、本実施形態では、動的蒸着モードと、静的蒸着モードとが切り替えられるタイプとされている。これにより、動的蒸着モードと、静的蒸着モードとを別々の装置に分担して行わせる場合に比べて、費用を削減することができる。
【0216】
また、本実施形態では、静的蒸着モードにおいて、ウェハ1の自転角度が判定され、その自転角度が制御される。これにより、静的蒸着モードにおいて、ウェハ1の突起部の側面に適切に蒸着物を蒸着させることができる。
【0217】
また、本実施形態では、撮像部43の横方向の画角は、撮像対象ホルダ10aが1回転自転したときに、撮像対象ホルダ10aが公転方向に移動する範囲を少なくとも含んでいる。これにより、ウェハ1の自転角度を正確に判定して、自転角度を正確に制御することができる。
【0218】
また、本実施形態では、撮像部43の縦方向の画角は、入射角度の調整による撮像対象ホルダ10aの回動により、撮像対象ホルダ10aが摂動方向に摂動したときの摂動範囲を少なくとも含んでいる。これにより、ウェハ1の自転角度を正確に判定して、自転角度を正確に制御することができる。
【0219】
また、入射角度調整機構25の別実施形態として、手動の回転導入および直線導入機構を用いて入射角度調整可能とすれば(例えば、ネジを回す事で入射角度が調整可能となる入射角度調整機構を用い、当該ネジ頭に嵌合する軸を用い、この軸について真空チャンバ20内部へと回転および直線導入する手動のマニピュレーション機構を用いる)、真空チャンバ20内部の真空度を保持した状態で手動での入射角度が調整可能となる。このようにすることで、手動であっても真空チャンバ20を大気開放せず、蒸着に適した真空度を保持することができる(例えば、図11のステップ105及び124における入射角度の変更を、自動ではなく手動で行うこともできる)。従って、図11の各ステップにより成膜を実施する上で、工程が短縮され、生産効率を向上させることができる。
【0220】
また、本実施形態では、撮像対象ホルダ10aが、ウェハ1の自転角度の判定のためのマークを有している。これにより、ウェハ1の自転角度をさらに正確に判定して、自転角度を正確に制御することができる。
【0221】
また、本実施形態では、このマークは、フランジ部12を貫通する穴部2とされている。これにより、穴部2と、穴部2以外の部分との間のコントラストを大きくすることができ、ウェハ1の自転角度の判断材料となるマークを容易に検出することができる。
【0222】
本実施形態において、全てのホルダ10に対してマークが設けられていてもよく、この場合、全てのホルダに対して、サイズや形状等が異なるマークがそれぞれ設けられていてもよい。これにより、各ホルダ10を区別することが可能となる。例えば、マークは、同じ形状で異なるサイズとされるか、同じサイズで異なる形状(例えば、円、楕円、多角形(△、□、☆)、×印、+印等)とされるか、あるいは、異なるサイズで異なる形状とされる。
【0223】
このように、各ホルダ10を区別して認識することで、図11のステップ104における原点位置への復帰作業において、撮像部43による画角内に位置するホルダの位置情報を利用することができる。これにより、原点位置への復帰作業に掛かる時間を短縮することができ、生産性を向上させることができる。また、上述のエラー等の異常時において、異常の基となったホルダ10を素早く特定することができる。
【0224】
また、本実施形態では、画像内におけるマークの位置及びホルダ10の中心位置に基づき、自転角度が判定される。これにより、ウェハ1の自転角度をさらに正確に判定して、自転角度を正確に制御することができる。
【0225】
また、本実施形態では、撮像対象ホルダ10a及びウェハ1の画像を、撮像対象ホルダ10aの下面及びウェハ1の表面を正面から見たように補正する補正処理が実行される。これにより、ウェハ1の自転角度をさらに正確に判定して、自転角度を正確に制御することができる。
【0226】
また、本実施形態では、撮像部43における第1の窓部47に対応する位置に、第1のシャッタ53及び防着板54が設けられる。これにより、第1の窓部47に蒸着物が蒸着してしまうことを適切に防止することができる。
【0227】
また、本実施形態では、撮像部43による撮像時にホルダ10に対して光を照射する照明部44が設けられている。これにより、ウェハ1の自転角度をさらに正確に判定して、自転角度を正確に制御することができる。
【0228】
また、本実施形態では、照明部44における第2の窓部48に対応する位置に、第2のシャッタ55(及び防着板)が設けられる。これにより、第2の窓部48に蒸着物が蒸着してしまうことを適切に防止することができる。
【0229】
また、本実施形態において、目視用のマーク4が設けられる場合、ユーザは、その目視用のマーク4を画像を介して間接的、あるいは、直接的に目視することで、ウェハ1の自転角度を直感的に認識することができる。
【符号の説明】
【0230】
1…ウェハ
2…穴部
10…ホルダ
20…真空チャンバ
31…坩堝
43…撮像部
44…照明部
46…制御装置
47…第1の窓部
48…第2の窓部
53…第1のシャッタ
54…防着板
55…第2のシャッタ
100…真空蒸着装置
図1
図2
図3A
図3B
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
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図16