(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023093076
(43)【公開日】2023-07-04
(54)【発明の名称】フェイスマスク及びフェイスマスク用の不織布
(51)【国際特許分類】
A45D 44/22 20060101AFI20230627BHJP
A45D 34/04 20060101ALI20230627BHJP
A61Q 19/00 20060101ALI20230627BHJP
A61K 8/02 20060101ALI20230627BHJP
A61K 8/73 20060101ALI20230627BHJP
A61K 8/85 20060101ALI20230627BHJP
D04H 1/4374 20120101ALI20230627BHJP
【FI】
A45D44/22 C
A45D34/04 535B
A61Q19/00
A61K8/02
A61K8/73
A61K8/85
D04H1/4374
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021208482
(22)【出願日】2021-12-22
(71)【出願人】
【識別番号】000115108
【氏名又は名称】ユニ・チャーム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100139022
【弁理士】
【氏名又は名称】小野田 浩之
(74)【代理人】
【識別番号】100192463
【弁理士】
【氏名又は名称】奥野 剛規
(74)【代理人】
【識別番号】100169328
【弁理士】
【氏名又は名称】藤本 健治
(74)【代理人】
【識別番号】100148253
【弁理士】
【氏名又は名称】今枝 弘充
(72)【発明者】
【氏名】和田 一郎
(72)【発明者】
【氏名】倉田 有里
(72)【発明者】
【氏名】倉本 祐介
【テーマコード(参考)】
4C083
4L047
【Fターム(参考)】
4C083AD092
4C083AD262
4C083BB01
4C083CC02
4C083CC03
4C083CC07
4C083DD12
4C083DD21
4C083DD23
4C083EE07
4L047AA12
4L047AA21
4L047AB09
4L047BA04
4L047CA02
4L047CA05
4L047CB01
4L047CB07
4L047CC03
(57)【要約】
【課題】使用者の肌へ液体化粧料を移行する機能に優れたフェイスマスクを提供する。
【解決手段】フェイスマスク1は、不織布2と、不織布2に含有させた液体化粧料とを備え、平面方向及び厚さ方向Tを有する。不織布2は、フェイスマスク1の肌対向面となる第1面34を有し、平面方向に沿った第1方向Hへ100%伸長可能であり、不織布2の染み出し試験により得られる液量の比が1.2以上である。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
不織布と、前記不織布に含有させた液体化粧料とを備え、平面方向及び厚さ方向を有するフェイスマスクであって、
前記不織布は、前記フェイスマスクの肌対向面となる第1面を有し、前記平面方向に沿った第1方向へ100%伸長可能であり、
前記不織布の染み出し試験により得られる液量の比が1.2以上である、フェイスマスク。
【請求項2】
前記不織布は、疎水性の捲縮繊維と、親水性繊維とを含み、
前記不織布における前記親水性繊維の比率が4質量%以上26質量%以下であり、
前記親水性繊維が少なくとも前記第1面に存在する、請求項1に記載のフェイスマスク。
【請求項3】
前記不織布は、第1繊維層、第2繊維層、及び第3繊維層を、厚さ方向へ順に備え、
前記第1繊維層及び前記第3繊維層はそれぞれ、疎水性の前記捲縮繊維と、前記親水性繊維とを含み、前記親水性繊維の比率が7質量%以上40質量%以下であり、
前記第2繊維層は、疎水性の前記捲縮繊維からなり、
前記第3繊維層における前記親水性繊維の比率は、前記第1繊維層と同じである、請求項2に記載のフェイスマスク。
【請求項4】
前記不織布は、前記第1方向に50%伸長させたときの引張強さが1.3N/25mm以上である、請求項1~3のいずれか1項に記載のフェイスマスク。
【請求項5】
前記第1方向に1.3倍以上伸長させて装着される伸長部を有する、請求項1~4のいずれか1項に記載のフェイスマスク。
【請求項6】
前記不織布は、前記第1方向に間隔を開けて設けられた一対の耳掛け部を有し、前記第1方向に100%伸長させたときの前記第1方向の長さの戻り率が30%以上である、請求項1~5のいずれか1項に記載のフェイスマスク。
【請求項7】
前記液体化粧料は、界面活性剤を含有し、粘度が17.9Pa・s以下である、請求項1~6のいずれか1項に記載のフェイスマスク。
【請求項8】
不織布と、前記不織布に含有させた液体化粧料とを備え、平面方向及び厚さ方向を有するフェイスマスク用の前記不織布であって、
前記不織布は、前記フェイスマスクの肌対向面となる第1面を有し、前記平面方向に沿った第1方向へ100%伸長可能であり、
前記不織布の染み出し試験により得られる液量の比が1.2以上である、不織布。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フェイスマスク及びフェイスマスク用の不織布に関する。
【背景技術】
【0002】
スキンケアに用いられるフェイスマスクが知られている。フェイスマスクは、不織布と不織布に含有させた液体化粧料とを備え、肌に貼りつけて用いられる。
【0003】
例えば、特許文献1は、立体捲縮を有する立体捲縮繊維を含む不織布と、当該不織布に含浸された液体化粧料とを含み、不織布の少なくとも皮膚と接する側の表面に立体捲縮が存在しており、不織布が繊維同士の交絡によって一体化したフェイスマスクを開示している。
【0004】
また、例えば特許文献2は、厚さ方向において、親水性繊維を主体とする領域Aと、捲縮が顕在化した潜在捲縮繊維を主体とする領域Bと、親水性繊維を主体とする領域Cとを有する不織布からなる液体化粧料含有シート用基布であり、前記領域A及び領域Cが不織布の表面に存在しているとともに、前記領域Bが不織布の内部に存在していることを特徴とする、フェイスマスクを開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010-116374号公報
【特許文献2】特開2014-101320号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記特許文献1のフェイスマスクは、液体化粧料がフェイスマスクの表面に十分に染み出るとはいえず、使用者の肌へ液体化粧料を十分に移行できないという懸念がある。
【0007】
上記特許文献2のフェイスマスクは、不織布の表面に親水性繊維を主体とする領域を有するため、不織布表面の親水性繊維が不織布に含侵させた液体化粧料を吸収した状態で保持することによって液体化粧料が不織布から十分に染み出ず、使用者の肌へ液体化粧料を十分に移行させることができない恐れがある。
【0008】
本発明は、使用者の肌へ液体化粧料を移行する機能に優れたフェイスマスク及びフェイスマスク用の不織布を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、不織布と、前記不織布に含有させた液体化粧料とを備え、平面方向及び厚さ方向を有するフェイスマスクであって、前記不織布は、前記フェイスマスクの肌対向面となる第1面を有し、前記平面方向に沿った第1方向へ100%伸長可能であり、前記不織布の染み出し試験により得られる液量の比が1.2以上である、フェイスマスクである。
【発明の効果】
【0010】
本発明によるフェイスマスク及びフェイスマスク用の不織布は、使用者の肌へ液体化粧料を移行する機能に優れる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】実施形態に係るフェイスマスクを模式的に示す平面図である。
【
図2】実施形態に係るフェイスマスクの断面を模式的に示す部分断面図である。
【
図3】実施形態に係るフェイスマスクの装着例を模式的に示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
[態様1]
不織布と、前記不織布に含有させた液体化粧料とを備え、平面方向及び厚さ方向を有するフェイスマスクであって、
前記不織布は、前記フェイスマスクの肌対向面となる第1面を有し、前記平面方向に沿った第1方向へ100%伸長可能であり、
前記不織布の染み出し試験により得られる液量の比が1.2以上である、フェイスマスク。
本フェイスマスクに係る不織布は、平面方向に沿った第1方向へ100%伸長可能であり、100%伸長させた場合、第1方向の長さが伸びることに伴い、第1方向に直交し平面方向に沿った第2方向の長さが縮むことによって、伸長後の繊維空隙は、伸長前の繊維空隙に比べ、減少する。
本不織布に液体化粧料を含有したフェイスマスクは、不織布の繊維同士の間に液体化粧料を保持しており、フェイスマスクを伸長させると不織布の繊維空隙が減少するので、繊維同士の間に保持されていた液体化粧料が不織布から溢れ、フェイスマスクの肌対向面から染み出る。
フェイスマスクの不織布は、第1方向へ100%伸長させた場合の染み出し試験での液量の比が1.2以上である。したがって、使用時においてフェイスマスクを伸ばすことによってより多くの液体化粧料がフェイスマスクの肌対向面から染み出る。
不織布の染み出し試験は、温度20℃及び湿度60%の環境において、以下の手順で行う。まず、平面方向に沿った互いに直交する第1方向及び第2方向の長さがそれぞれ15cm及び4cmの大きさに不織布を切り出して試験片とする。試験片は不織布の第1面と同じ第1面を有する。次いで、試験片の質量の10倍の質量の試験液に試験片を浸し180秒間放置した後、室温で第1面と反対側の面が平面に接するように試験片を平面上に載置し、試験片の第1面から染み出る試験液の液量F1を測定する。次いで、新たな試験片を用いて試験片の質量の10倍の質量の試験液に試験片を浸し180秒間放置した後、第1面と反対側の面が平面に接するように試験片を平面上に載置し、試験片を第1方向へ100%伸長させた状態で試験片の第1面から染み出る試験液の液量F2を測定する。染み出し液量F1及びF2はそれぞれ、人工皮膚(6cm×6cm)を試験片の第1面に載せたまま60秒放置し、人工皮膚の初期質量と60秒経過後の人工皮膚の質量の差により求めた。そして、得られた染み出し液量の比は、(F2/F1)によって求める。
以上より、本フェイスマスクは、フェイスマスクを伸ばすことによって、より多くの液体化粧料がフェイスマスクの肌対向面から染み出る。結果として本フェイスマスクは、使用者の肌へ液体化粧料を移行する機能に優れる。
【0013】
[態様2]
前記不織布は、疎水性の捲縮繊維と、親水性繊維とを含み、前記不織布における前記親水性繊維の比率が4質量%以上26質量%以下であり、前記親水性繊維が少なくとも前記第1面に存在する、態様1に記載のフェイスマスク。
本不織布は、疎水性の捲縮繊維と、親水性繊維とを含み、不織布における親水性繊維の比率が26質量%以下であるから、不織布全体に対する捲縮繊維の比率が親水性繊維の比率よりも高いので、一方向に伸長しやすい。そのため不織布を備えたフェイスマスクは、より多くの液体化粧料がフェイスマスクの肌対向面から染み出しやすい。
本不織布は、第1面に存在する親水性繊維が不織布の内部に含まれる液体化粧料を第1面(肌対向面)へ吸い上げる効果が期待できる。
本不織布は、不織布における親水性繊維の比率が4質量%以上であるので、親水性繊維が液体化粧料を吸収することによって保液性に優れる。したがって、本フェイスマスクは、親水性繊維を含まないシートに比べ、フェイスマスクの乾燥を遅らせることができる。
結果として、本フェイスマスクは、使用者の肌へ液体化粧料を移行する機能に優れる。
【0014】
[態様3]
前記不織布は、第1繊維層、第2繊維層、及び第3繊維層を、厚さ方向へ順に備え、前記第1繊維層及び前記第3繊維層はそれぞれ、疎水性の前記捲縮繊維と、前記親水性繊維とを含み、前記親水性繊維の比率が7質量%以上40質量%以下であり、前記第2繊維層は、疎水性の前記捲縮繊維からなり、前記第3繊維層における前記親水性繊維の比率は、前記第1繊維層と同じである、態様2に記載のフェイスマスク。
本不織布は、第1繊維層及び第3繊維層に同様に存在する親水性繊維が第2繊維層に含まれる液体化粧料を第1繊維層及び第3繊維層に吸い上げる効果が期待できる。したがって不織布は、第1繊維層側及び第3繊維層側の両方の面から液体化粧料が同様に染み出る。
結果として、本フェイスマスクは、第1繊維層及び第3繊維層のどちらを使用者の肌に貼りつけても同様に使用することができるので使い勝手が向上し、使用者の肌へ液体化粧料を移行する機能に優れる。
【0015】
[態様4]
前記不織布は、前記第1方向に50%伸長させたときの引張強さが1.3N/25mm以上である、態様1~3のいずれか1項に記載のフェイスマスク。
本不織布は、第1方向に50%伸長させたときの引張強さが1.3N/25mm以上であるので、適度な力で肌を押しながら伸びることによって、使用者の肌に対して密着し得る。したがって、液体化粧料が染み出したフェイスマスクが使用者の肌に密着するので、本フェイスマスクは、使用者の肌へ液体化粧料を移行する機能に優れる。
【0016】
[態様5]
前記第1方向に1.3倍以上伸長させて装着される伸長部を有する、態様1~4のいずれか1項に記載のフェイスマスク。
本フェイスマスクは、伸長部を使用者の適切な箇所、例えば、両耳から顎の範囲に、1.3倍以上伸長させて装着することによって、当該伸長部においてより確実に液体化粧料を染み出させることができる。したがって本フェイスマスクは、使用者の肌の適切な箇所へ液体化粧料を移行する機能に優れる。
【0017】
[態様6]
前記不織布は、前記第1方向に間隔を開けて設けられた一対の耳掛け穴を有し、前記第1方向に100%伸長させたときの前記第1方向の長さの戻り率が30%以上である、態様1~5のいずれか1項に記載のフェイスマスク。
本フェイスマスクは、一対の耳掛け部を使用者の顎を介して両耳に掛けて装着した場合に、第1方向に100%伸長させたときの第1方向の長さの戻り率が30%以上であることによって、使用者の耳から顎にかけて使用者の肌に対して密着する。したがって、液体化粧料が染み出したフェイスマスクが使用者の耳から顎にかけて使用者の肌に密着するので、本フェイスマスクは、使用者の肌へ液体化粧料を移行する機能に優れる。
【0018】
[態様7]
前記液体化粧料は、界面活性剤を含有し、粘度が17.9Pa・s以下である、態様1~6のいずれか1項に記載のフェイスマスク。
液体化粧料は、界面活性剤を含有し、粘度が17.9Pa・s以下であるので、疎水性の捲縮繊維にも容易に含侵する。例えば本不織布は、本不織布を八つ折りに折り畳んで袋内に収容した後、当該袋内に液体化粧料を充填した場合でも、液体化粧料が袋内で八つ折り状態の本不織布の全体に十分に含侵する。したがって本フェイスマスクは、液体化粧料がフェイスマスクの全体に行きわたっていることによって、液体化粧料を使用者の肌へ移行する機能に優れる。
【0019】
[態様8]
不織布と、前記不織布に含有させた液体化粧料とを備え、平面方向及び厚さ方向を有するフェイスマスク用の前記不織布であって、前記不織布は、前記フェイスマスクの肌対向面となる第1面を有し、前記平面方向に沿った第1方向へ100%伸長可能であり、前記不織布の染み出し試験により得られる液量の比が1.2以上である、不織布。
本不織布は、フェイスマスクの肌対向面となる第1面を有し、平面方向に沿った第1方向へ100%伸長可能であり、不織布の染み出し試験により得られる液量の比が1.2以上であるので、態様1と同様の効果を得ることができ、フェイスマスクに好適に用いられる。
【0020】
[態様9]
前記不織布は、疎水性の捲縮繊維と、親水性繊維とを含み、前記不織布における前記親水性繊維の比率が4質量%以上26質量%以下であり、前記親水性繊維が少なくとも前記第1面に存在する、態様8に記載の不織布。
本態様に係る不織布は、上記態様2と同様の効果を得ることができ、フェイスマスクに好適に用いられる。
【0021】
[態様10]
前記不織布は、第1繊維層、第2繊維層、及び第3繊維層を、厚さ方向へ順に備え、
前記第1繊維層及び前記第3繊維層はそれぞれ、疎水性の前記捲縮繊維と、前記親水性繊維とを含み、前記親水性繊維の比率が7質量%以上40質量%以下であり、前記第2繊維層は、疎水性の前記捲縮繊維からなり、前記第3繊維層における前記親水性繊維の比率は、前記第1繊維層と同じである、態様8又は9に記載の不織布。
本態様に係る不織布は、上記態様3と同様の効果を得ることができ、フェイスマスクに好適に用いられる。
【0022】
[態様11]
前記不織布は、前記第1方向に50%伸長させたときの引張強さが1.3N/25mm以上である、態様8~10のいずれか1項に記載の不織布。
本態様に係る不織布は、上記態様4と同様の効果を得ることができ、フェイスマスクに好適に用いられる。
【0023】
[態様12]
前記第1方向に1.3倍以上伸長させて装着される伸長部を有する、態様8~11のいずれか1項に記載の不織布。
本態様に係る不織布は、上記態様5と同様の効果を得ることができ、フェイスマスクに好適に用いられる。
【0024】
[態様13]
前記不織布は、前記第1方向に間隔を開けて設けられた一対の耳掛け部を有し、前記第1方向に100%伸長させたときの前記第1方向の長さの戻り率が30%以上である、態様8~12のいずれか1項に記載の不織布。
本態様に係る不織布は、上記態様6と同様の効果を得ることができ、フェイスマスクに好適に用いられる。
【0025】
以下、実施形態に係る吸収性物品のフェイスマスクについて、図面を参照しながら詳細に説明する。
図1は実施形態に係るフェイスマスクを模式的に示す平面図、
図2は実施形態に係るフェイスマスクの断面を模式的に示す部分断面図、
図3は実施形態に係るフェイスマスクの装着例を模式的に示す斜視図である。
【0026】
(フェイスマスクの構成)
図1に示すフェイスマスク1は、互いに直交する上下方向Lと横方向Hと厚さ方向Tとを有する。上下方向Lは、フェイスマスク1の装着対象として想定される使用者の正中線を、装着されたフェイスマスク1に投射したときの射影の方向とする。フェイスマスク1の厚さ方向Tの上方(非肌対向面側)から見ることを「平面視」といい、平面視で把握される形状を「平面形状」といい、上下方向L及び横方向Hを含む平面内の任意の方向を「平面方向」という。「肌対向面側」及び「非肌対向面側」とはフェイスマスク1の装着時に、フェイスマスク1の厚さ方向Tにおいて相対的に使用者の肌面に近い側及び遠い側をそれぞれ意味する。上下方向L又は横方向Hに「沿う」とは、上下方向L又は横方向Hに対して±30°の範囲の方向を含む。
【0027】
フェイスマスク1は、不織布2と、不織布2に含侵させた液体化粧料とを備えている。不織布2は、互いに分離可能に連結され、不織布2における上下方向Lの上方及び下方にそれぞれ位置する上方部材11及び伸長部としての下方部材12を備えている。
【0028】
上方部材11は、
図3に示すように、フェイスマスク1が使用者に装着されるとき、上下方向Lでは使用者Pの口元Pbから額Paまでの領域を覆う部分であり、横方向Hでは使用者Pの両頬Pd間、好ましくは、両耳元Pe間(顔の一側面から他側面まで)の領域を覆う部分である。上方部材11の形状は、実施形態では下膨れの略楕円形である。上方部材11の形状は、使用者Pの顔における上記領域を覆うことができれば、特に制限はなく、例えば、三次元の顔の口元Pbから額Paまでの領域を二次元の平面に展開した形状、楕円形状、円形状、角の丸い矩形状、それらの組み合わせなどが挙げられる。上方部材11は、一対の耳掛け穴を有していてもよい。
【0029】
下方部材12は、第1方向である横方向Hに間隔を開けて、すなわち横方向Hの両端部分に耳掛け用の一対の耳掛け部としての一対の耳掛け穴24を有している(
図1)。実施形態では、一対の耳掛け穴24は、横方向Hに沿って延びる切れ目として形成されている。耳掛け穴24は、切れ目である場合に限らず、下方部材12を厚さ方向Tに貫通した穴であってもよい。下方部材12は、フェイスマスク1が使用者Pに装着されるとき、使用者Pの顎Pc及び口元Pbから一対の耳元Peまでの領域を覆う部分である。下方部材12の形状は、実施形態では、横長で角の丸い多角形である。下方部材12の形状は、使用者Pの顔における上記領域を覆うことができれば、特に制限はなく、例えば、横方向Hに長い矩形状、角の丸い矩形状、楕円形状、それらの組合せなどが挙げられる。下方部材12は、上下方向Lの下側にやや凸な形状を有していてもよい。下方部材12は、下側にやや凸な形状であることによって、顔の下方部分の形状にフィットさせやすい。
【0030】
上方部材11の上下方向Lの下側の外縁と、下方部材12の上下方向Lの上側の外縁とは、不織布2における使用者Pの口角に対応する位置において互いに連結されている。上方部材11と下方部材12との境界には、境界に沿って弱め線28が形成されている。上方部材11と下方部材12は、弱め線28に沿って切り離すことによって分離可能である。弱め線28は、ミシン目のように、連続した小さな穴が線状に並んだものであり、穴は、不織布2を厚さ方向Tに貫通していてもよく、貫通していなくてもよい。
【0031】
フェイスマスク1は、両目用の目対応領域21、鼻用の鼻対応領域22、及び口用の口対応領域23を有している。これらの構成は、公知のフェイスマスクと同様であるので、説明を省略する。
【0032】
不織布2は、
図2に示すように、第1繊維層30及び第2繊維層32を、この順番に厚さ方向Tに備える。第1繊維層30は、フェイスマスク1の肌対向面となる第1面34を有する。第1繊維層30は、疎水性の捲縮繊維と、親水性繊維とを含む。疎水性の捲縮繊維としては、例えば熱可塑性樹脂繊維が挙げられる。熱可塑性樹脂繊維としては、熱可塑性樹脂を含む繊維であれば、特に制限はない。熱可塑性樹脂としては、例えば、ポチエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、エチレン-酢酸ビニル共重合体(EVA)等のオレフィン系樹脂、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリ乳酸(PLA)等のポリエステル系樹脂、6-ナイロン等のポリアミド系樹脂などの公知の樹脂が挙げられる。これらの樹脂は単独で使用しても、二種類以上の樹脂を併用してもよい。また、このような熱可塑性樹脂からなる繊維の構造は、特に制限されず、例えば、単繊維、芯鞘型繊維、サイド・バイ・サイド型繊維、島/海型繊維等の複合繊維;中空タイプの繊維;扁平、Y字形、C字形等の異形断面型繊維などが挙げられる。これらの構造を有する繊維は単独で使用しても、二種類以上の繊維を併用してもよい。
【0033】
本明細書において、捲縮繊維とは、繊維が縮んで巻いている構造のほか、繊維同士が絡まっている状態など、繊維が単に堆積している状態と比べて繊維間により大きい空隙が形成されている構造を有することをいう。捲縮性繊維は、融点の異なる2種類以上の熱可塑性樹脂からなる芯鞘型繊維又はサイド・バイ・サイド型繊維を用いて、加熱等によって捲縮性を発現させたものでもよいし、機械処理によって捲縮性を発現させたものでもよい。捲縮繊維同士が融着あるいは接着剤などで結合されていることは必要としないが、結合されていてもよい。繊維が捲縮していると、繊維間の空隙(以下、「繊維空隙」という)が大きくなるので、嵩高で低密度になる。また伸縮性が向上するので、フェイスマスク1のフィット性が向上する。捲縮の有無は、繊維を電子顕微鏡観察することにより判別できる。捲縮繊維の捲縮度は、例えば、1本の繊維の長さ1インチ(2.54cm)当たり5~75個、好ましくは10~50個、さらに好ましくは15~50個とすることができる。なお、捲縮度はJIS L1015に規定されている。
【0034】
親水性繊維は、親水性繊維としては、天然繊維、合成繊維、半合成繊維、再生繊維のいずれでもよいが、天然繊維としてはパルプなど、合成繊維としてはポリアミド繊維、ポリエステル繊維、アクリル繊維など、半合成繊維としてはレーヨン、キュポラなど、再生繊維としてアセテートなどを挙げることができる。
【0035】
第1繊維層30は、親水性繊維の比率が7質量%以上40質量%以下であるのが好ましく、10質量%以上40質量%以下がより好ましい。第1繊維層30が親水性繊維を上記比率の範囲内で含むことによって第2繊維層32に含まれる液体化粧料を第1繊維層30に吸い上げる効果が期待できる。親水性繊維は、第1面34に少なくとも一部が存在することが好ましい。第1面34に存在する親水性繊維が不織布2の内部に含まれる液体化粧料を第1面34(肌対向面)へ吸い上げる効果が期待できる。
【0036】
第2繊維層32は、疎水性の捲縮繊維からなる。疎水性の捲縮繊維は、第1繊維層30における疎水性の捲縮繊維と同じものでもよい。第2繊維層32は、フェイスマスク1の非肌対向面となる第2面35を有する。
【0037】
不織布2における親水性繊維の比率は、特に限定されないが、例えば、4質量%以上26質量%以下が好ましく、5質量%以上20質量%以下がより好ましく、及び7質量%以上26質量%以下がさらに好ましい。不織布2における親水性繊維の比率が上記範囲内であると、不織布2全体に対する捲縮繊維の比率が親水性繊維の比率よりも高いので、不織布2は一方向へ伸長しやすい。
【0038】
疎水性の捲縮繊維の繊度は、特に限定されず、例えば、1.8~2.5dtexが挙げられる。疎水性の捲縮繊維の繊維長としては、特に限定されず、例えば、40~55mmがあげられる。親水性繊維の繊度は、特に限定されず、例えば、1.0~1.5dtexが挙げられる。親水性繊維の繊維長としては、特に限定されず、例えば、40~50mmが挙げられる。
【0039】
不織布2は、さらに第3繊維層33を備えてもよい。すなわち不織布2は、第1繊維層30、第2繊維層32、及び第3繊維層33を、この順番に厚さ方向Tへ備えてもよい。第3繊維層33は、疎水性の捲縮繊維と、親水性繊維とを含み、第3繊維層33における親水性繊維の比率は、7質量%以上40質量%以下でもよく、10質量%以上40質量%以下であってもよい。第3繊維層33は、フェイスマスク1の非肌対向面となる第2面35を有する。第3繊維層33は、第1繊維層30と同じ構成であるのが好ましい。第3繊維層33が第1繊維層30と同じ構成である場合、第3繊維層33の第2面35が肌対向面にもなり得る。
【0040】
本実施形態の場合、不織布2は、平面方向に沿った任意の方向に100%伸長可能であり、したがって、平面方向に沿った第1方向(
図1の場合、横方向H)に100%伸長可能である。100%伸長可能とは、自然長に対し第1方向へ引張方向の力を加えた場合、自然長と同じ長さ分だけ伸長可能、すなわち長さが2倍になり得ることをいう。特に不織布2は、下方部材12が横方向Hへ100%伸長可能である。不織布2は、横方向Hへ100%伸長させた場合、第1方向の長さが延びることに伴い、横方向Hに直交する第2方向(
図1の場合、上下方向L)の長さが縮む。伸長後における不織布2の繊維空隙は、伸長前の不織布2の繊維空隙に比べ、減少する。
【0041】
不織布2は、不織布2の染み出し試験により得られる液量の比が1.2以上である。不織布の染み出し試験は、温度20℃及び湿度60%の環境において、以下の手順で行う。まず、平面方向に沿った互いに直交する第1方向及び第2方向の長さがそれぞれ15cm及び4cmの大きさに不織布を切り出して試験片とする。試験片は不織布2の第1面34と同じ第1面を有する。試験片は2つ用意する。次いで、試験片の質量の10倍の質量の試験液に試験片を浸し180秒間放置した後、室温で第2面35が平面に接するように試験片を平面上に載置し、試験片の第1面から染み出る前記試験液の液量F1を測定する。次いで、新たな試験片を用いて試験片の質量の10倍の質量の試験液に試験片を浸し180秒間放置した後、第2面35が平面に接するように試験片を平面上に載置し、試験片を第1方向へ100%伸長させた状態で第1面から染み出る試験液の液量F2を測定する。染み出し液量F1及びF2はそれぞれ、人工皮膚(イデアテックスジャパン株式会社製、PBZ13001、6cm×6cm)を試験片の第1面34に載せたまま60秒放置し、人工皮膚の初期質量と60秒経過後の人工皮膚の質量の差により求めた。そして、得られた染み出し液量の比は、(F2/F1)によって求める。試験液は、PEG-40水添ヒマシ油を2質量%含有する水溶液を用いる。
【0042】
不織布2は、横方向Hに50%伸長させたとき、すなわち自然長の50%の長さ分だけ伸長させたときの引張強さが1.3N/25mm以上である。不織布2は、上記の引張強さを有するので、適度な力で肌を押しながら伸びることによって、使用者Pの肌に対して密着し得る。
【0043】
引張強さは、(株)島津製作所製のオートグラフ、AG-1を用いて測定する。まず、非伸長の不織布から、第1方向の長さ180mm、第2方向の長さ25mmのサイズに切り出し、試料とする。次いでチャック間距離を130mm、引張速度100mm/minで試料の第1方向の破断強度を測定し引張強さとした。「N/25mm」は、幅25mmあたりの引張強さ(N)を意味する。
【0044】
下方部材12は、横方向Hに1.3倍以上伸長させて装着されるのが好ましい。すなわち下方部材12は、自然長の1.3倍以上の長さとなるように横方向Hへ引張り、使用者Pの耳に耳掛け穴24を引っ掛けることによって、両耳から顎Pcの範囲に装着されるのが好ましい。
【0045】
下方部材12は、横方向Hに100%伸長させたときの横方向Hの長さの戻り率が30%以上であることが好ましい。下方部材12は、上記のように横方向Hに伸長させて装着した場合に、横方向Hの長さが一定以上戻ることによって、使用者Pの耳から顎Pcにかけて使用者Pの肌に対して密着する。
【0046】
戻り率は、以下の手順で測定する。まず非伸長の不織布から、第1方向の長さ180mm、第2方向の長さ25mmのサイズに切り出し、試料とする。次いでチャック間距離を130mm、引張速度100mm/minでチャック間距離が260mmとなるまで試料に引張方向の力を加え、試料を伸長させる。その後、引張方向の力をゼロにしたときのチャック間の距離Dを測定する。そして式(130-D)/130*100(%)によって算出した値を戻り率(%)とする。
【0047】
不織布2は、第1繊維層30と第2繊維層32を準備し、当該繊維層同士を結合することによって製造することができる。第1繊維層30及び第2繊維層32の形成方法としては、特に限定されず、カード法、スパンボンド法、メルトブローン法、エアレイド法等の方法を用いることができる。また、それらの方法で形成されたウェブをエアスルー法、サーマルボンディング法、ニードルパンチ法、ケミカルボンディング法、スパンレース法等の方法で構成繊維同士を結合・交絡する方法が挙げられる。第1繊維層30及び第2繊維層32同士を結合する方法は、特に限定されず、ニードルパンチ法、水流交絡法などを用いることができる。
【0048】
液体化粧料は、不織布2の全体に一様に含侵されている。液体化粧料は、スキンケア用に使用可能であれば特に限定されず、公知の液体化粧料を用いることができる。液体化粧料は、親水性のスキンケア剤が挙げられる。本実施形態では、親水性のスキンケア剤として、水分約90%(水、多価アルコール(グリセリン、ブチレングリコール、ペンチレングリコール、ポリエチレングリコール))+油分約5%(エステル油、植物油(オリーブ油)、シリコーン油(ジメチコン))+その他(保湿剤、増粘剤、pH調整剤、防腐剤など)を用いている。
【0049】
液体化粧料は、界面活性剤を含有し、粘度が17.9kPa以下であるのが好ましい。界面活性剤としては、親水性シリコーンオイル等の非イオン界面活性剤、アニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤、両性界面活性剤等が挙げられる。上記液体化粧料は、疎水性の捲縮繊維にも容易に含侵し得る。例えば不織布2は、不織布2を八つ折りに折り畳んで袋内に収容した後、当該袋内に液体化粧料を充填した場合でも、液体化粧料が袋内で八つ折り状態の不織布2の内部を含む全体に十分に含侵する。
【0050】
(測定方法)
上記実施形態における不織布2の坪量及び厚さは以下の方法により計測される。不織布を5cm×5cmの大きさに切り出して試料とし、40~60℃の雰囲気での乾燥処理後に質量を測定する。測定した質量を試料の面積で割り算して試料の坪量を算出する。10個の試料の坪量を平均した値を不織布の坪量とする。
不織布の厚さの測定方法は以下のとおりである。15cm2の測定子を備えた厚さ計(株式会社大栄化学精器製作所製 型式FS-60DS)を用い、3gf/cm2(0.3kPa)の測定荷重の条件で不織布の厚さを測定する。1つの試料で3か所の厚さを測定し、3か所の厚さの平均値を不織布の厚さとする。
【0051】
(作用及び効果)
フェイスマスク1は、一般的に、不織布2と、液体化粧料とが図示しないが密閉された袋内に収容された状態で出荷され、市場を流通する。当該袋内においてフェイスマスク1は、例えば八つ折りに折り畳まれた不織布2に液体化粧料が含侵した状態で収容されている。使用者Pは、フェイスマスク1の使用に際し、まず、袋を開封し、当該袋から折り畳まれた当該フェイスマスク1を取出して広げる。続いて、使用者Pは、弱め線28に沿ってフェイスマスク1を切り離すことによって、上方部材11と下方部材12とを分離する。次いで、上方部材11を、必要に応じ任意の方向に伸長させ、顔の口元Pbよりも上側の領域に貼りつける。さらに下方部材12を、顎Pc及び口元Pbを中心として一対の耳元Peまで引っ張って伸ばし、一対の耳掛け穴24をそれぞれ一対の耳に引っ掛けることによって、顎Pc及び口元Pbを中心として一対の耳元Peまでの領域に貼りつける。
【0052】
不織布2は、平面方向に沿った横方向H(第1方向)へ100%伸長可能であり、100%伸長させた場合、横方向Hの長さが伸びることに伴い、上下方向L(第2方向)の長さが縮むことによって、伸長後の繊維空隙は、伸長前の繊維空隙に比べ、減少する。
【0053】
不織布2に液体化粧料を含侵させたフェイスマスク1は、不織布2の繊維同士の間に液体化粧料を保持している。フェイスマスク1を伸長させると不織布2の繊維空隙が減少するので、繊維同士の間に保持されていた液体化粧料が、不織布2から溢れ、フェイスマスク1の肌対向面から染み出る。
【0054】
フェイスマスク1の不織布2は、横方向H(第1方向)へ100%伸長させた場合の染み出し試験での液量の比が1.2以上である。したがって、使用時においてフェイスマスク1を横方向Hへ伸ばすことによってより多くの液体化粧料がフェイスマスク1の肌対向面から染み出る。結果としてフェイスマスク1は、使用者Pの肌へ液体化粧料を移行する機能に優れる。
【0055】
好ましい態様において、不織布2は、疎水性の捲縮繊維と、親水性繊維とを含み、不織布2における親水性繊維の比率が26質量%以下である。その場合、不織布2全体に対する捲縮繊維の比率が親水性繊維の比率よりも高いので、横方向Hに伸長しやすい。そのため不織布2を備えたフェイスマスク1は、より多くの液体化粧料がフェイスマスク1の肌対向面から染み出しやすい。
【0056】
好ましい態様において、不織布2は、第1繊維層30に親水性繊維を含み、親水性繊維が少なくとも肌対向面に存在する。その場合、不織布2は、肌対向面(第1面34)に存在する親水性繊維が不織布2の内部に含まれる液体化粧料を肌対向面(第1面34)へ吸い上げる効果が期待できる。
【0057】
好ましい態様において、不織布2は、不織布2における親水性繊維の比率が5質量%以上である。その場合、不織布2は、親水性繊維が液体化粧料を吸収することによって保液性に優れる。したがって、フェイスマスク1は、親水性繊維を含まないシートに比べ、フェイスマスク1の乾燥を遅らせることができる。結果として、フェイスマスク1は、使用者Pの肌へ液体化粧料を移行する機能に優れる。
【0058】
好ましい態様において、不織布2は、第1繊維層30、第2繊維層32、及び第3繊維層33を、この順番に厚さ方向Tに備え、第1繊維層30及び第3繊維層33がそれぞれ親水性繊維を含む。この場合、不織布2は、第1繊維層30及び第3繊維層33に同様に存在する親水性繊維が第2繊維層32に含まれる液体化粧料を第1繊維層30及び第3繊維層33に吸い上げる効果が期待できる。したがって不織布2は、第1繊維層30側及び第3繊維層33側の両方の面から液体化粧料が同様に染み出る。
【0059】
結果として、フェイスマスク1は、第1繊維層30及び第3繊維層33のどちらを使用者Pの肌に貼りつけても同様に使用することができるので使い勝手が向上し、使用者Pの肌へ液体化粧料を移行する機能に優れる。
【0060】
好ましい態様において、不織布2は、横方向Hに50%伸長させたときの引張強さが1.3N/25mm以上である。その場合、不織布2は、適度な力で肌を押しながら伸びることによって、使用者Pの肌に対して密着し得る。したがって、液体化粧料が染み出したフェイスマスク1が使用者Pの肌に密着するので、フェイスマスク1は、使用者Pの肌へ液体化粧料を移行する機能に優れる。
【0061】
好ましい態様において、フェイスマスク1は、下方部材12を使用者Pの両耳から顎Pcの範囲に、1.3倍以上伸長させて装着することによって、当該下方部材12においてより確実に液体化粧料を染み出させることができる。したがってフェイスマスク1は、使用者Pの肌の適切な箇所へ液体化粧料を移行する機能に優れる。
【0062】
好ましい態様において、フェイスマスク1は、一対の耳掛け穴24を使用者Pの顎Pcを介して両耳に掛けて装着した場合に、横方向Hに100%伸長させたときの横方向Hの長さの戻り率が30%以上である。その場合、フェイスマスク1は、使用者Pの耳から顎Pcにかけて使用者Pの肌に対して密着する。したがって、液体化粧料が染み出したフェイスマスク1が使用者Pの耳から顎Pcにかけて使用者Pの肌に密着するので、フェイスマスク1は、使用者Pの肌へ液体化粧料を移行する機能に優れる。
【0063】
好ましい態様において、液体化粧料は、界面活性剤を含有し、粘度が17.9Pa・s以下である。その場合、液体化粧料は、疎水性の捲縮繊維にも容易に含侵する。すなわち液体化粧料は、袋内で八つ折り状態の不織布2の全体に十分に含侵する。したがってフェイスマスク1は、液体化粧料がフェイスマスク1の全体に行きわたっていることによって、液体化粧料を使用者Pの肌へ移行する機能に優れる。
【0064】
(変形例)
上記実施形態の場合、伸長部が下方部材12である場合について説明したが、本発明はこれに限定されない。例えば伸長部は上方部材に適用してもよい。この場合、図示しないが、上方部材は、第1方向である横方向に間隔を開けて、すなわち横方向の両端部分に耳掛け用の一対の耳掛け穴を有している。耳掛け穴は、上下方向に沿って延びる切れ目として形成してもよいし、厚さ方向に貫通した穴であってもよい。上方部材は、鼻を中心として一対の耳元まで引っ張って伸ばし、一対の耳掛け穴をそれぞれ一対の耳に引っ掛けることによって、鼻を中心として両頬を通り一対の耳元までの領域に貼りつける。このようにして鼻を中心として両頬を通り一対の耳元までの範囲において上方部材が伸長することによって、液体化粧料が染み出すととともに、使用者の上記範囲の肌にフェイスマスクが密着するので、フェイスマスクは、使用者の肌へ液体化粧料を移行する機能に優れる。
【0065】
上記実施形態の場合、不織布2は、第1繊維層及び第2繊維層を備える二層である場合と、さらに第3繊維層を含む三層である場合について説明したが、本発明はこれに限らず、本発明の主旨の範囲内で適宜変更することができる。例えば、不織布は、平面方向に沿った任意の方向へ100%伸長可能であり、不織布の染み出し試験により得られる液量の比が1.2以上であれば、第1繊維層のみであってもよい。また、不織布は、第2繊維層が二層以上含んでもよい。第2繊維層に含まれる2層以上の各層は、上述した疎水性の捲縮繊維からなり、繊度及び繊維長と、坪量及び厚さの合計とが上述した第2繊維層としての範囲内であればよい。さらに不織布は、第1繊維層及び第3繊維層が二層以上含んでもよい。第1繊維層及び第3繊維層に含まれる二層以上の各層は、疎水性の捲縮繊維と親水性繊維とを含み、各層の疎水性の捲縮繊維と親水性繊維の比率は、各層の繊維の坪量の合計から算出される比率が、上述した第1繊維層及び第3繊維層としての範囲内であればよい。第1繊維層及び第3繊維層の疎水性の捲縮繊維と親水性繊維の繊度及び繊維長は、上述した第1繊維層及び第3繊維層としての範囲内であればよい。
【0066】
上記実施形態の場合、不織布2は、平面方向に沿った任意の方向へ100%伸長可能である場合について説明したが、本発明はこれに限らない。例えば、不織布2は、平面方向に沿った特定の一方向のみ、又は特定の複数の方向にのみ100%伸長可能であってもよい。
【0067】
(実施例)
上記実施形態に対応した不織布2を作製し、評価を行った。以下実施例を示して本発明を説明するが、本発明はこの実施例に限定されない。
【0068】
(1)試料
熱可塑性樹脂繊維としてポリエステルで構成された捲縮繊維(繊度2.3dtex、繊維長51mm)と、親水性繊維としてレーヨン(繊度1.4dtex、繊維長44mm)とを用いて、カード法によって第1繊維層及び第3繊維層を形成した。熱可塑性樹脂繊維としてポリエステルで構成された捲縮繊維(繊度2.3dtex、繊維長51mm)を用いて第2繊維層を形成した。第1繊維層、第2繊維層、及び第3繊維層を、この順番に厚さ方向に重ねて、ウォータージェットによって互いに結合し、その後熱処理で脱水・熱収縮処理を行い、第1繊維層に親水性繊維をそれぞれ30質量%及び40質量%含む実施例1及び2に係る不織布を作製した。
【0069】
参考例としてレーヨン(繊度1.4dtex、繊維長44mm)を用いてカード法によって参考例1に係る不織布を作製した。さらに第1繊維層及び第2繊維層における親水性繊維の比率が異なる以外は実施例1と同様の構成であり、第1繊維層に親水性繊維を60質量%含む参考例2に係る不織布を作製した。
実施例及び参考例に係る不織布の構成は、表1に示す通りである。
【0070】
【0071】
(2)評価方法
上述の方法によって各不織布について染み出し試験を行い染み出し液量の比を測定した。その結果を
図4に示す。
図4は、染み出し試験の結果を示すグラフであり、横軸が第1繊維層における親水性繊維の比率(質量%)であり、縦軸が滲み出し液量の比である。
図4において、第1繊維層における親水性繊維の比率が30質量%及び40質量%の染み出し液量の比はそれぞれ実施例1及び実施例2の結果である。
図4の結果から、実施例1及び実施例2に係る不織布は、染み出し試験での液量の比が1.2以上であることが確認された。一方、参考例1及び2は、いずれも染み出し試験での液量の比が1.2未満であった。
【符号の説明】
【0072】
1 フェイスマスク
2 不織布
11 上方部材
12 下方部材(伸長部)
21 目対応領域
22 鼻対応領域
23 口対応領域
24 耳掛け穴(耳掛け部)
28 弱め線
34 第1面(肌対向面)
35 第2面(非肌対向面)
H 横方向
L 上下方向
D 距離
P 使用者
Pa 額
Pb 口元
Pc 顎
Pd 両頬
Pe 両耳元
Pe 耳元
T 厚さ方向